1/18、19、20日経『総統選後の台湾』について

「台湾人意識」は高まっていますが、本文中にありますように、経済がうまく行かなければ、「やはり中国とくっついていた方が良かった」となりかねません。ただ、中国経済は低迷と言うか崩壊寸前です。中国に擦り寄ってもいいことはないでしょう。資源国経済がガタガタとなり、中韓が日本と通貨スワップを協議するくらいですから。中韓の経済がうまく行っていればスワップの話は出て来ないでしょう。日本政府は敵国を助けないように。交渉ではバーを高くして纏まらないようにすれば良い。それこそがタフネゴシエイターでしょう。

TPPに反対する人はどこにでもいます。米国でも日本でも。大きく捉えれば、関税をできるだけ低くして国際分業した方が効率的だし、一国の富も増えます。win-winの関係になります。経済制裁を受けている(た)北朝鮮やイランが貧しいのは貿易ができない(かった)ためです。ただ食糧安全保障の観点から、対策は必要でしょう。

これからは台湾国民の成熟度が試されると思います。中国に隙を見せれば乗っ取られます。何せ南シナ海や東シナ海に領土的野心を持ち、またギリシャのピレウス港も買収しました。経済面だけでなく、軍港として使うつもりです。世界を中国の害毒に塗れさせようと言う魂胆です。やはり、敬して遠ざける方が賢明かと。台湾は自由主義諸国と共に手を携えて、一緒に発展していければ良いと思います。

記事

1/18記事『高まる「台湾人意識」』 

台湾独立志向を持つ民進党が16日の総統・立法院(国会)選挙で大勝し、5月に蔡英文政権が発足することになった。8年ぶりの政権奪回を実現した背景には、若者を中心に広がった中国への警戒感がある。ただ、台湾住民も中国との対立は望んでいない。中国との対話継続や台湾経済の活性化など、課題に挑む蔡次期政権を展望する。

台湾北部、新竹市の清華大学に通う頼郁棻さん(20)は16日、民進党の蔡氏に投票した一人。「投票できる日がほんとに待ち遠しかった」と笑顔で語る。

 2年近く前の2014年3月。頼さんは台北市中心部の立法院に立てこもっていた。中国とのサービス貿易協定の発効に反対する「ヒマワリ学生運動」は立法院への乱入騒ぎに発展し、3週間あまりにわたり立法院を占拠した。事件は台湾世論にも大きな影響を与え、中国への警戒感が高まるきっかけになった。

 頼さんは「台湾は中国とは別の国。国民党のやり方では経済的にのみ込まれてしまう」と話す。

 投票日直前、台湾の若者の意識を逆なでする事件が起きた。台湾人アイドル、周子瑜さん(16)が韓国のテレビ番組で(台湾当局が名乗る中華民国の)「国旗」を振り、中国のネットで「台湾独立派だ」との批判が強まった。中国での芸能活動への影響を懸念した周さんは15日、「私は中国人であることに誇りを持っている」との釈明に追い込まれた。

 自分は中国人でなく台湾人――。政治大学が15年7月に発表した調査では、自分が「台湾人」だと思う人が59%と過去最高水準だった。「台湾人であり中国人」は33.7%、「中国人」は3.3%まで減った。

Opinion poll about Taiwanese-2

 台湾では戦前からの台湾住民とその子孫を指す「本省人」と、国民党と共に戦後、台湾に逃れた中国大陸出身者とその子孫である「外省人」の対立が長く続いたが、若者世代には「台湾人」という意識が強まっている。初の総統直接選挙から20年。有権者にも民主体制で生まれ育った世代が増え続けている。

 

 

 

Lin Shaochi

街頭で支持を訴える「時代力量」の候補者、林少馳氏(台北市)

 今回の選挙ではヒマワリ学生運動のリーダーらが設立した新政党「時代力量(時代の力)」が立法院選で5議席を得た。

 同党は民進党よりも独立志向が強く、台湾の主体性を重んじる。台北市で出馬した林少馳さん(34)は、航空会社に勤務していた香港で民主化デモの挫折を目の当たりにし「きょうの香港はあすの台湾だ」との危機感を強めたという。自身は落選したものの「既存政党と違った声を上げられた」と手応えを語る。

 蔡氏は16日の記者会見で「我々は民主的な選挙を通じ、世界に民主国家の誇りと台湾人の栄誉を再び示した」と語る一方で、「両岸(中台)関係の平和で安定した現状を維持する」との現実路線を改めて強調した。

 台湾独立を党綱領に掲げる民進党に対し、中国は「中国と台湾は不可分の領土である」ことを意味する「一つの中国」を認めるようけん制を続けている。台湾住民の対中警戒感が強まるなかで、どう中国と折り合い、現実的な関係を形作っていくか。蔡次期総統に課された大きな課題になる。

1/19記事『米は、現状維持望む』

maneuver of attack agaist Taiwan 中国の国営中央テレビが2015年7月初めに放送した軍事演習の特集。番組が始まって約4分後のことだった。内モンゴル自治区の訓練基地で、土ぼこりの中を前進する歩兵の左前方に一瞬、台湾の総統府にうり二つの建物が映った。

「選挙へ圧力か」

 「総統選挙への圧力ではないか」。番組内容は台湾でも大きく報道され、改めて台湾住民の対中警戒感を呼び覚ます結果となった。

 中国が08年以降、融和的な国民党・馬英九政権の下で台湾との交流を深めてきたのは、将来の統一につなげる環境づくりが狙いだ。蔡英文次期総統が、民進党が党綱領に掲げる通りに台湾独立に動けば、武力統一する選択肢を捨ててはいない。

 しかし、中国が直ちに強攻策に転じるとの見方は少ない。呉釧昼・民進党秘書長(幹事長)は「中国の習近平国家主席の台湾政策には柔軟性がある」とみる。根拠は中国は総統選が事実上始まった15年春以降も、台湾との様々な協定の協議を続けたことだ。

 15年11月には習氏自らが初の中台首脳会談に応じる積極性をみせた。対中政策の担当閣僚の経験もある呉氏は「交流のある学者などを通じ、習指導部と意思疎通したい」と意欲を見せる。

 中国社会科学院台湾研究所の彰維学所長助理も、習氏の台湾政策を「(台湾は中国の一部だとする)『一つの中国』の立場は決して揺るがないが、一方で包容力がある」と表現する。個別の選挙に一喜一憂せず、長期戦を覚悟し、硬軟両様で台湾統一を目指す構えだ。

 台湾は「海洋強国」を目指す中国が太平洋に進出するルートのど真ん中に位置し、つばぜり合いを続ける米中のはざまで地政学的な重要性を増している。台湾を巡るオバマ政権の本音は2つの動きに象徴される。

 「台湾海峡の平和と安定は米国の基本的な利益で、緊張緩和と関係改善の動きを歓迎する」。アーネスト米大統領報道官は昨年11月、中台首脳会談が固まった直後の記者会見でこう表明した。

 そのわずか1カ月半後。オバマ政権は「台湾が十分な自衛能力を維持することを支援する」(アーネスト報道官)として、4年ぶりとなる台湾への武器売却を決めた。台湾が求めていた「F16C/D」戦闘機など新型の軍用機や兵器は見送るなど中国への一定の配慮を見せながらも、総統選前の武器売却を決めた米国。中台融和を評価するものの、統一は支持しておらず、「現状維持」を望んでいる。

限られる選択

 蔡氏は18日、台北市内の民進党本部を訪れた米国のバーンズ前国務副長官と会談した。「オバマ政権の特使」(台湾紙)とされるバーンズ氏に、蔡氏は「米国とは緊密な友好関係を維持したい」「地域の平和と安定を維持する責任を果たす」と強調した。中台関係が念頭にあるのは明らかだ。

 蔡次期政権が中国と対立すれば、台湾海峡は再び緊張し、東アジアの安全保障体制にも大きな影響が及ぶ。「現状維持」を打ち出した蔡氏が、米中のはざまで選択できる道は限られている。

1/20記事『経済「脱・中国依存」を模索 TPP参加、課題山積み』

台湾有数の観光地である東部の花蓮県。2015年12月下旬、中国人観光客の急増で潤っていたはずの観光スポットは静まりかえっていた。

Cai's speech about TPP

蔡主席(中)は「TPP参加は急務だ」と主張してきた(16日、台北)

 

 

 

export from Taiwan「12月は中国人がぐっと減った。売り上げも4割減」。花蓮駅前のあん入り餅屋の店員、李鈺婷さん(21)は不安げに語る。玉石(宝石)博物館も見学者は11月の半分。「総統選挙前だからしかたない」。受付の男性はあきらめ顔だ。

 馬英九現政権は中国の成長力を取り込もうと、08年の就任直後に中国人の台湾観光を解禁した。15年1~11月は前年同期比2%増の316万人となり、台湾を訪れる観光客の47%を占めた。

中国向け4割に

 観光業に欠かせなくなった中国人観光客は、12年の総統選直前にも急減したことがある。「国民を民主主義に触れさせたくないためだ」というのが台湾側の見方だが、「中国政府の出方次第で観光業が左右される」との不安も強まっている。

 台湾と中国の経済的な結びつきが強まったのは、実は民進党政権時代の00年代だ。台湾の輸出額に占める中国(香港含む)の比率は07年に初めて40%を超えた後も、40%前後で推移しており「中国がくしゃみをすれば台湾が風邪をひく」傾向が強まっている。

 実際、15年は中国の景気減速や中国企業との競争激化から対中輸出額は前年比12.3%減となり、15年の域内総生産(GDP)成長率は6年ぶりの低水準となる1%前後になったもようだ。

 5月に総統に就任する民進党の蔡英文主席は「脱・中国依存」の切り札として、「台湾経済にとって環太平洋経済連携協定(TPP)参加は急務だ」と何度も主張してきた。台湾は中国と実質的な自由貿易協定を締結したものの、多国間の枠組みには交渉にさえ参加できていない。TPP参加をテコに中国以外の国との貿易を拡大するのが狙いだ。

 しかし、道のりは平たんでない。

 「成長促進剤(ラクトパミン)を使った米国産豚肉の輸入解禁には絶対反対だ」。台湾南部の屏東県養豚協会の鍾乃先・副理事長(66)は約1500頭がひしめく豚舎の前でまくしたてた。

新産業育成急ぐ

 台湾は豚肉に平均12.5%の関税を課しているうえ、ラクトパミンを使った豚肉の輸入を禁じている。米政府はラクトパミンを使った豚肉の輸入解禁を強く求めており、台湾のTPP参加の「絶対条件」ともされる。食の安全に対しては消費者の関心も高く、調整は容易ではない。

 主力だったIT(情報技術)産業に陰りが出るなか、新産業の育成も喫緊の課題になる。蔡氏が掲げるのは精密機械やバイオテクノロジーなど5分野を戦略的に育成する計画。海外からの投資も幅広く呼び込みたい考えだが、25年の「原発ゼロ」を掲げる蔡氏に対し、産業界からは電力不足を懸念する声もあがる。

 今回の総統選で蔡氏が大勝したのは、対中警戒感の高まりとともに、低迷する経済に不満が強まっていたことが大きい。早期に成長率を押し上げる青写真を描けなければ、政権交代の熱気は不満に変わる。

 山田周平、吉野直也、山下和成が担当しました。