1/5日経ビジネスオンライン 上野泰也『トランプ躍進に見る米国人の「復活」願望』について

今週の注目は米大統領選ではなくて台湾総統選+立法委選でしょう。蔡英文の勝利は揺るがないでしょうし、立法委選でも民進党+時代力量で過半数は超えそうです。宮崎正弘氏のメルマガにもそうありました。中共に擦り寄る国民党では日米の信頼は得られませんし、台湾国民の支持も得られないでしょう。

http://melma.com/backnumber_45206_6311539/

本文中の「ミザリー・インデックス」を見れば米景気は悪くなく、それで年末にFRBも利上げしたと思います。では何故共和党でトランプ現象が起きているのか?本文の「エリート政治家に舵取りを任せてきた結果、米国では中間所得層が崩壊し、所得格差(貧富の差)が拡大している。」というのは違うのでは。富の分配がうまく行っていないのかもしれませんが。でも金持ちトランプがそれで支持率を上げているとは考えにくい。やはりオバマの無能にホトホト嫌気がさしているのだろうと思います。レーガンの「強いアメリカ」に戻ってほしいという気持ちの為せるわざでしょう。ただレーガンはスタッフの意見を良く聞く耳を持っていましたが、トランプはワンマンタイプで、大統領になれば躓きを起こすのではと思われます。やはりマルコ・ルビオが良いかと。ただ1/10日経にバーナンキ(共和党支持)がルビオの「大統領になったらイエレン氏の再選は認めない」の発言を受けてか、「共和党をずっと支持してきたが、最近は愛想が尽きた」と自伝で歎いたとありました。

前にブログでも書きましたが、ヒラリーは大統領になる前に、人間的にどうしようもありません。でも米国民が選ぶのでどうしようもありませんが。トランプが「女性大統領はいつの日か出て来るだろう。ただ、ヒラリーではない」との発言をTVで見ました。今回は『ガラスの天井』があればよいのにと思います。

1/5日経には「米のアジア系移民 学歴高く世帯収入多め

 テロの潜在的脅威の中で移民規制を唱える声も出るものの、欧州からの移民中心に建国された米国は依然としてその受け入れ大国であることに変わりはない。

rate of Asian people in US

 中でも存在感が高まるのがアジア系だ。米国勢調査局の推計では2014年の米国の総人口(約3億1800万人)に占めるアジア系移民の比率は5.4%。50年前の1965年には1%に満たなかったが、その年の改正移民法施行で出身国別の移民数の制限が撤廃されたのを機に急増した。

 総人口に占める人種別比率では白人(62.1%)、ヒスパニック(17.4%)、アフリカ系(13.2%)に次ぐ4番目の規模。ただしこれは累計で、新たに入ってくる数ではアジア系が最も勢いがある。米シンクタンクのピュー研究所によると年間移民数に占めるアジア系比率は2000年時点の19%から10年に36%へと高まり、ヒスパニック(31%)を5ポイント上回る。

 同研究所はアジア系の特徴を「学歴と世帯収入の高さ」と指摘する。25歳以上で大学の学位以上を持つ割合は10年時点で49%と全体の28%を上回る。平均世帯収入も6万6千ドル(約800万円)と全体の4万9800ドルより3割強多い。

 アジア系は働く人の半分が企業役員や弁護士、医師といった専門職やその関連職で、この比率も全体の40%より高い。タクーン・パニクガル氏のようなデザイナーは全体ではまだ珍しいが、分母となる人口が膨らんでいけば、今後は多方面で才能を開花させる人たちが増えるだろう。」とありました。

アジア系の移民が2000年以降増えてきているのが分かります。勤勉・優秀な人材が多いので、そういう結果になったのでしょう。将来の大統領選に影響を与えます。中韓は米国で反日活動を活発化してきています。国際社会にアピールするには米国の世論を味方につけるのが手っ取り早いからです。中国は人口が多く、マンパワーを持って世界進出の強みとしています。中国系米国人を大統領にして世界を牛耳ろうと考えていますので、注意していかないと。日本の外務省は土下座外交するしか能がありません。キチンと戦略を立てろと言っても無駄なのが悲しい。

記事

Carson & Trump

2015年12月15日、米国の大統領選で、共和党候補の指名争いを繰り広げる元神経外科医のベン・カーソン氏(左)と不動産王ドナルド・トランプ氏(右) (写真=AP/アフロ)

 米国の共和党大統領候補指名争いで、不動産王ドナルド・トランプ氏の独走状態が長く続いてきた。イスラム教徒の米国への入国を禁止すべきだという発言が物議をかもした後、トランプ氏の支持率はむしろ上昇。モンマス大学が昨年12月14日に発表した調査結果では共和党内での支持率が41%に達し、同党の候補者で初めて4割を超えた。経済問題ではなくテロに対する不安が米国民にとって現在は最大の関心事になっているのが原因だと説明されている。

 2位に付けたのは、草の根の保守派運動「ティーパーティー(茶会)」に加え、キリスト教右派にも支持を広げているテッド・クルーズ上院議員(14%)。3位はマルコ・ルビオ上院議員(10%)。ともに40歳代のクルーズ氏かルビオ氏のどちらかが最終的に共和党の指名争いで勝つだろうという見方が専門家の間では根強い。経歴詐称などが問題視された元神経外科医のベン・カーソン氏はこの調査では9%にとどまり、4位に沈んだ。

 米ワシントンポストとABCテレビが共同実施して昨年12月15日に結果を発表した世論調査では、トランプ氏の支持率が38%に上昇。クルーズ氏は15%で4位から2位に浮上した。

クルーズ氏とトランプ氏がデッドヒート

 もっとも、大統領候補指名争いの皮切りとなる党員集会が2月1日に開かれるアイオワ州では、クルーズ氏がトランプ氏とのデッドヒートを繰り広げている。アイオワ州の地元有力紙が昨年12月7~10日に実施した州内の世論調査では、クルーズ氏が31%の支持を集め、トランプ氏の21%を上回った。

 過去の事例から、アイオワ州やニューハンプシャー州といった序盤の戦いで勝利するかそれなりの健闘を示さないと、支持率が急速に下がって、選挙戦からの撤退を余儀なくされる可能性がある。

 筆者を含む多くの日本人にとり、まさに予想外の「トランプ現象」。市場関係者の間では「トランプ・リスク」がささやかれ始めている。過激な発言で知られるトランプ氏が核のボタンを握ることになるようだと何が起こるのか予想がつかないというわけだ。

 では、型破りの発言を連発するトランプ氏を少なからぬ米国人が支持しているのはなぜだろうか。

多数説は、エスタブリッシュメントと呼ばれる伝統的エリート層による米国の政治支配への失望や強い不満がトランプ氏支持の原動力になっているという見方である。エリート政治家に舵取りを任せてきた結果、米国では中間所得層が崩壊し、所得格差(貧富の差)が拡大している。

 テロや銃撃事件への恐怖も以前より強まっている。そこで、これまでとは違う考え方・出自の人に政治を任せてみてはどうかというムードが広がっているのだという。トランプ氏の歯に衣着せぬ大胆な発言は人々のうっ積した不満のはけ口にもなっているようである。

 だが、本当にそれだけだろうか。筆者は、オバマ政権下で何度も明らかになった国際社会における米国の力や威信の低下に強い不満を抱いた米国人が、「強いアメリカ」復活願望を抱いてトランプ氏に期待している面が、少なからずあるのではないかとみている。

 1980年代に映画俳優出身のロナルド・レーガン氏が共和党から出馬して当選し、大統領を2期務めた。その1期目の前半にヨーロッパを長期フリー旅行していた際、たまたま出会った米国人の女子学生と語り合ったことがある。

 詳しい内容は忘れてしまったが、景気悪化に加えてイラン米大使館人質事件への対応(救出作戦)に失敗した民主党の前大統領カーター氏を徹底的にけなした上で、レーガン大統領の話になると彼女が目を輝かせながら「強いアメリカ」に絶対必要な人物だと熱弁していたことを、今でも記憶している。

本当に国を任せたらかなり危なっかしいが…

 トランプ氏はテレビの人気番組「アプレンティス」で、課題をこなせなかった脱落者に対する「おまえはクビだ!(You’re fired!)」という決めゼリフで人気を集めた人でもある。銃を手にして西部劇映画で活躍した俳優出身のレーガン氏に対する米国民の30数年前の心情と同じようなものが、今回はトランプ氏に寄せられているのではないか。

 昨年12月14日、シリアからの難民受け入れに対してトランプ氏は反対を改めて表明し、自分が大統領になれば「彼らは(シリアに)帰ることになる」と発言。パリ同時テロ事件で犠牲者が拡大したのはフランスの厳しい銃規制のためだという持論も展開した。

 もっとも、内政・外交の両面で経験がまったくないトランプ氏に米国という大国の先行きを本当に委ねることができるかどうかとなると、よく言えば未知数、悪く言えばかなり危なっかしいと言わざるを得ない。

 トランプ氏は、東部ウクライナの親ロシア派による分離運動を支援して国際社会から非難されたロシアのプーチン大統領とは、どうやら緊密な関係を築けそうである。プーチン大統領は昨年12月17日の記者会見で「トランプ氏には花があり、才能があることに疑問の余地はない」「ロシアとの関係を深めたいと(同氏は)発言しており、われわれはもちろん歓迎する」と述べた。

 これに対しトランプ氏は、「内外で尊敬されている人物からこうした賞賛を受けるのは常に大変な名誉だ」「米ロがもっと協力すればテロを根絶でき、世界平和を再構築することができると常に感じている。貿易のみならず、あらゆる恩恵が相互の信頼関係からもたらされる」と返答した。

 ソ連を「悪の帝国」と呼んで強硬姿勢をとったレーガン大統領は1980年代後半になると、重い軍事費負担や計画経済の行き詰まりから経済的に疲弊したソ連のゴルバチョフ書記長との間で、東西冷戦の終結に向けた動きを積極的に推し進めた。仮にトランプ氏が米国の大統領になれば、米ロ関係の改善が進む可能性は確かに高いだろう。米国が方針を転換してアサド政権の存続を認める形で、シリア問題の「交通整理」も進むと予想される。

レーガン時代と比べると

 だが、いまの世界情勢は、レーガン政権の頃とはだいぶ異なっている。中国の影響力が格段に大きくなったことに加え、欧州では統合の動きが進んだ。中東ではイスラム国家やイスラム組織の動向が重要になっており、米ロ2国だけで世界秩序をいかようにもできるわけではない。そうした中でトランプ氏が米国の外交をうまく操ることができるかどうか。筆者は懐疑的である。

 経済問題でも、トランプ氏の主張には危うさがつきまとう。日米などがTPP(環太平洋経済連携協定)で大筋合意に達した昨年10月5日、トランプ氏は「現政権の能力のなさは理解を超えている。TPPはひどい協定だ」と批判。11月10日のテレビ討論会では「恐ろしい合意だ」「承認されれば雇用がますます失われる」「私は自由貿易主義者だが、交渉には頭のいい人があたらなければならない。今の米政府には頭のいい人がいない」と述べた。だが、仮にTPPが再交渉となれば各国の利害が再び噴出することになり、まとめ上げるのは至難の業だろう。

 為替相場についてトランプ氏は、「ドルの競争力が弱い」ことを問題視する立場をとっている。「中国や日本など他の多くの国の通貨切り下げによって、米国の企業がわたりあっていくことが不可能になっている」と述べ、中国や日本の通貨下落を非難した。

 その一方で、FRB(連邦準備理事会)が利上げに動かないことについて、昨年12月の利上げ開始よりも前の11月上旬の時点で、「オバマ大統領が利上げをしないよう要請しているからだ」「オバマ大統領は在職中にバブル崩壊を目の当たりにしたくないためイエレンFRB議長に利上げしないよう要請した」という、明らかに根拠のない発言をした。

 12月19日のアイオワ州での集会では、「バブルが崩壊するなら、次の政権が発足してから2カ月後ではなく、今起きればいいと思う」「今はとんでもないバブルの状態かもしれない。もしそのバブルが崩壊すればやっかいだ」と、他人事のように述べていた。もしトランプ氏が本当に大統領になるようなら、崩壊の前か後かにかかわらず、バブルへの最善の対応策をとっていかなければならないのだが…。

 だが実際には、オバマ大統領が再選を果たした前回2012年の大統領選と同様に、内輪の争いの中で共和党は消耗してしまい、幅広い米国民の支持を得られる候補者を出せないという「負けパターン」に陥りつつあるように見える。今回の大統領選では民主党のヒラリー・クリントン氏が勝利するだろうというのが、筆者の予想である。

 ちなみに、大統領選(特に現職が再選を狙うケース)でその行方を占う際に注目される「悲惨指数(ミザリー・インデックス)」、すなわち失業率と消費者物価上昇率(前年同月比)を足した数字は、2015年11月時点で5.0+0.5=5.5という歴史的な低さである<図>。12月の数字は未発表だが、各年の12月の数字を遡ると1955年(4.6)以来の低水準になる。翌56年の大統領選挙ではアイゼンハワー大統領(共和)が再選を果たした。

■図:米国の「悲惨指数(ミザリー・インデックス)」

misery index

注:各年12月のデータのみ表示。ただし15年は11月のデータ(出所:米労働省資料より筆者作成)

 むろん、既に述べたように雇用の数は増えても賃金の伸びが鈍く、中間所得層が崩壊しつつあるという米国経済の厳しい実情も常に指摘されるのだが、このインデックスで見る限り、オバマ大統領と同じ民主党のクリントン氏には経済状況という面からも追い風が吹いていると言える。