米国大統領選も混沌としてきました。ヒラリーの代わりに社会主義者と言われるサンダースがアイオワ、ニューハンプシャーで勝つ可能性が出て来たとは。以前、原丈人がアメリカで「公益資本主義」を唱えたときに、「君は社会主義者か?」と聞かれたという話を思い出しました。隔世の感があります。自由を尊ぶアメリカで政府の規制を大きくしようとする社会主義者が大統領選でいい線まで来るのは初めてではないかと思います。それもこれも8年間のオバマの失政が大きく、アメリカの威信をずっと傷つけて来ましたから。プーチン、習近平の為すが儘。ノーベル平和賞を貰っても世界平和に全然貢献していません。「世界の警察官を止める」発言が尾を引いています。1/29日経には『ハリス太平洋軍司令長官が「南シナ海航行拡大 オバマ氏への不満代弁」、中国の軍事拠点化止まらず』とありました。民主党と名が付く政党は日米ともにダメです。
ヒラリーはベンガジ疑惑(メールの私的利用)が、選挙が本格化すれば共和党から何度も蒸し返し追及されるでしょう。隠蔽工作をしたことが明るみになれば大統領選の候補となる前に、政治家としては終わりです。FBIもしっかり捜査して公表してほしい。
共和党のトランプは世論調査の数字のように本当に勝てるのかどうかです。遊説会場には追っかけや面白いかと思い物見遊山の気分で来ている人も多く見受けられます。それで焦って、女性キャスターの拒否、討論会不参加となったのかと。かなりナーバスになっている感じです。共和党はマルコ・ルビオが選ばれるのが理想です。
記事
民主党の大統領候補に名乗りを挙げているバーニー・サンダー氏。アイオワ州で行われた世論調査で、クリントン氏を上回る支持を得た(写真=AP/アフロ)
—米大統領選の予備選が2月1日、アイオワ州で火ぶたを切ります。それを前に、CBSが民主党員・支持者を対象に実施した世論調査で、バーニー・サンダース上院議員(47%)がヒラリー・クリントン前国務長官(46%)を抜いてトップに立ちました(1月26日現在、以下同)。サンダース氏はニューハンプシャー州でも支持率57%を獲得してクリントン氏(38%)を突き放しています。盤石といわれたクリントン氏に何が起こっているのですか。 (“Poll: Sanders edges Clinton in Iowa, leads big in New Hampshire,” Anthony Salvanto, CBS News, 1/24/2016)
高濱:米ニューヨーク・タイムズも「民主党指名争いは緒戦から民主党のあり方を巡る画期的な戦い(An epochal battle)になってきた」と驚いています。CNNが1月21日に公表した世論調査でも、サンダース氏(51%)はクリントン氏を8%リードしています。アイオワ州の民主党党員集会でサンダース氏が勝つ可能性が出てきました。 (“Hillary Clinton and Bernie Sanders Battle for Party’s Future,” Patrick Healy, New York Times, 1/25/2016)
伏兵サンダースが躍進
「党員集会での投票は、接戦になることは間違いない。サンダースが勝つ可能性も限りなく強まってきた」と予想する民主党アイオワ州支部幹部もいます。 (“Sanders: Clinton is running a ‘desperate’ campaign that lacks excitement,” John Wagner, Washington Post, 1/24/2016)
ただ最後の最後まで接戦が続くことは間違いありません。CBS世論調査の後にフォックス・ニューズが公表した世論調査では、クリントン氏が48%でサンダース氏が42%とひっくり返っています。 (“Latest Election Polls, RealclearPolitcs, 1/25/2016)
ニューハンプシャー州でサンダース氏が勝つのはほぼ間違いありませんから、クリントン氏は予備選緒戦で連敗スタートになるかもしれません。
ただし、問題は獲得する票数とそれに基づく獲得代議員数です。第2位になってもそれなりの票数を獲得できれば、後に続く州の予備選で逆転が可能だからです。 (“Iowa CNN/ORC Poll: Full Results, 1/21/2016)
アイオワ党員は「民主党エスタブリッシュメント」に反発
—これまで絶対優勢と言われていたクリントン氏はなぜ予備選が始まる直前で支持率を落としているのでしょう。
高濱:CBSとCNNの世論調査を詳細に見ていくと、いくつかのことが分かります。
第一にクリントン氏を支持するアイオワ州の民主党員・支持者は、外交と銃規制、テロ対策に対する同氏の姿勢を評価しています。
一方サンダース氏を支持する人は「ウォール・ストリート改革」、つまり大企業優遇政策の是正と税制改革をその理由に挙げています。「クリントン氏は民主党系大企業・労組から大口の選挙資金を集めている」と見る民主党員・支持者が多く、彼らは「クリントン氏には、ジョージ・W・ブッシュ時代から続いている大企業優遇税制を撤廃することなどできない」と判断しています。
CBS世論調査は、「あなたは、クリントン氏とサンダース氏のどちらが『今あなたが感じていることを一番とらえているか』(Gets it)」と党員・支持者に質問しています。これに対して、「サンダース氏だ」と答えた人は85%、「サンダース氏ではない」と答えた人は15%。「クリントン氏だ」と答えた人は65%、「クリントン氏ではない」と答えた人は35%となっています。「Gets it」ではサンダース氏がクリントン氏に20%も差をつけています。
面白いのは、「民主党の伝統的な価値観を誰が堅持しているか」との問いに、リベラル派のサンダース氏と答えた人が57%、クリントン氏と答えた人が38%だったことです。これがニューヨーク・タイムズが指摘する「画期的な戦い」なのです。
共和党でも一般党員・支持者は、不動産王のドナルド・トランプ氏やテッド・クルーズ上院議員を支持し、「共和党エスタブリッシュメント」(共和党穏健保守本流)が推すジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事やクリス・クリスティ・ニュージャージー州知事らに反発しています。ある選挙専門家は、それと似た現象が民主党内にも起こっていると筆者に指摘しました。つまり「民主党エスタブリッシュメント」(民主党穏健リベラル本流)に対する一般党員の反発がサンダース氏支持になっているというのです。1972年に急進リベラル派のジョージ・マクガバン上院議員が民主党の大統領候補になった時を彷彿させます。
それでいながら、民主党員・支持者は現状を理解しています。「本選挙で共和党候補に勝てるのはどちらか?」との問い対する回答は、「クリントン氏」が60%、「サンダース氏」が38%でした。こうした認識も共和党支持者の多くが「トランプ氏では本選挙には勝てない」と言っているのと似ています。
CNNの世論調査に答えた民主党員・支持者のうち、「投票する候補者を最終的に決めている」「ほぼ決めている」と回答した人が80%(男性の82%、女性の77%)に上っています。従って、この世論調査の結果がそのまま投票結果を示す可能性が大です。
NH州はサンダース勝利が確実
—ニューハンプシャー州の予備選はどうなりますか。
高濱:ニューハンプシャー州でも、サンダース氏への支持がクリントン氏を上回っています。その差は、CNNの世論調査では3%、CBS世論調査は19%。リベラル派が多くいる同州でサンダース氏が勝つことが確実になってきました。1月13日以降、現在までに実施された7つの世論調査でサンダース氏はすべてリードしています。各種世論調査の平均値を見ると、その差は14.6%になっているのです。 “New Hampshire 2016 Democratic Primary,” RealClearPolitics, 1/24/2016
クリントン氏はかってはリベラル派と呼ばれましたが、今の彼女をリベラル派と呼ぶ人は少なくなってきています。外交ブレーンの中に歴史学者のロバート・ケーガン氏のようなネオコン(新保守主義者)がいる、といったことが指摘されているからです。 (“The Next Act of the Neocons,” Jacob Heilbrunn, New York Times, 6/5/2014)
一方、米連邦捜査局(FBI)はクリントン氏の「メールゲート」に伴う国家機密漏えい容疑に依然として関心を持っているとする保守系メディアの報道もあります。サンダース氏が政治家として徹底してリベラリズムを貫き通してきたのに比べて、クリントン氏のリベラリズムは色あせて見えるわけです。 (“Page and Mclaughlin: The FBI will recommend prosecution for Hillary,” Ian Hanchett, Breitbart, 1/23/2016)
そこへいくと、自らを「民主社会党員」と呼ぶサンダース氏のクリーンなリベラリズムは、民主党の一般支持者にとって一服の清涼剤になっているのかもしれません。
尾を引くメールゲート疑惑
—緒戦でクリントン氏が連敗すると、その後の予備選はどうなるのでしょうか。
高濱:2月20日には西部ネバダ州、27日には南部サウスカロライナ州でそれぞれ予備選があります。そして3月1日には11州が同時に予備選、党員集会投票を行う「スーパーチューズデー」が待ち構えています。
CBSがサウスカロライナ州で行った世論調査ではクリントン氏60%、サンダース氏38%という結果が出ています。クリントンびいきの黒人票がクリントン支持率を押し上げているからです。緒戦で連敗してもサウスカロライナ州で挽回、そこで勢いをつけて「スーパーチューズデー」に臨む考えでしょう。その間にFBIが「メールゲート」捜査で追及の手を強めることがなければですが。
—不測の事態が起こったら?
高濱:その時はその時。出馬を断念したジョー・バイデン副大統領が急きょ立候補する可能性もあるでしょうし、無所属で立候補する可能性を探っている元ニューヨーク市長のマイケル・ブルンバーグ氏が大統領選に加わる可能性が高まるかもしれません。まさに政治の世界は「一寸先は闇」です。 “Michael Bloomberg Mulling Run for President as Independent,” Mara Gay, Wall Street Journal, 1/23/2016