1/13日経には「オバマ米大統領は12日(日本時間13日)、議会の上下両院合同本会議で内政・外交の施政方針を包括的に示す一般教書演説をした。「米国民と同盟国を守るために必要であれば単独でも行動する」と明言した。4度目の核実験を強行した北朝鮮などを念頭に日韓両国など同盟国への脅威が差し迫った場合の米側の決意を示したものだ。」とありました。NPT体制が崩壊するのを恐れているのでしょう。国連の安全保障理事会も戦争を止めることはできません。ただ、北朝鮮には言えても、中国・ロシアに向かって本当にその通り行動するかは分かりません。ニュークリアシエアリングを米国と結べば良いのですが。ただ、そうすると平気で裏切る韓国も日本と同じということで強請るでしょう。朝鮮民族は本当に扱いにくいです。
今回の爆発は重村氏の言うように水爆ではないでしょう。確かに、米中が北朝鮮を甘やかし、何もしてこなかった咎めが出ています。時間の利益は核開発している北朝鮮にあります。中国が今回何もしなければ、味方に引き寄せて来た韓国が離れていく可能性もあります。THAADも配備されるかも知れません。習近平は内憂(権力闘争)外患(北朝鮮、米国による封じ込め)で苦境にあります。中国も金正恩のやる事は読めないのでは。これで自由主義陣営(日米+韓)の結束が固まり、中国には痛手になりました。
中沢氏の見方は驚きでした。世上、金正恩は金日成の真似をしていると伝えられているのに、毛沢東を真似ているとは。確かに両者とも徹底的に無慈悲です。独裁者の典型です。人の命を何とも思わないタイプです。習近平も毛沢東の真似をしていると言われていますが、流石に政敵の薄熙来や周永康を死刑にはしていません。その点で、張成沢を死刑にした金正恩の方が毛沢東の衣鉢を継ぐのに相応しいと言えるかも。人類にとっては不幸なことですが。習近平がどのように出るのか、本当に見物です。
重村記事
北朝鮮の「水爆実験」に抗議して、韓国の学生がデモを行った(写真:AP/アフロ)
北朝鮮が1月6日、「水爆実験」を行った。なぜ今、行ったのか。何のために行ったのか。本当に水爆なのか。盛んに議論されている。
最初の2つの疑問には、来る5月に開催が予定されている、36年ぶりの朝鮮労働党大会が大きく関係している。党大会は、北朝鮮では歴史的な行事で、この成否が体制の行方を決める。金正恩第一書記の頭には現在、党大会の準備と成功しかない。そして、党大会を成功させるためには、金正恩第一書記の訪中と習近平国家主席との首脳会談が必須となる。これらを実現するための交渉ツールが今回の「水爆実験」だった。
年7000万円の国家予算では水爆は作れない
まずは水爆だったのかどうかについてみよう。
韓国の情報機関と専門家、米政府関係者は「(北朝鮮は)水爆が作れるほどの技術を持っていない」「爆発が小さすぎる、ブースト型核分裂爆弾ではないか」との疑問を示している。ブースト型核分裂弾は、水素爆弾ほどではないが、核爆発を拡大できる「水爆まがい」の技術だ。
開発資金の面から見ても、北朝鮮が水爆を製造するのは難しい。水爆を製造するには1兆円を超える資金が必要と指摘される。北朝鮮の国家予算は、公式の為替レートを適用すると約7000万円程度しかない。
水爆ではないという事実は、実は、北朝鮮の公式声明の中で明らかにされていた。政府声明は、次のように述べている。「我々は新しく開発された試験用水爆の技術的諸元(諸要素)が正確であることを完全に実証し、小型化された水爆の威力を科学的に証明した」。
声明は「試験用水爆」との表現を使っており、今回の実験が「完成した水爆」ではなく「試験」段階でしかない事実を認めている。今回の核爆弾を、朝鮮語では「水爆」と表現することにする、というトリックを使ったわけだ。北朝鮮の技術者は正直なのか、あるいは「水爆でない」とバレるのを見越して、言い訳できる余地を残したのか。
なぜ、こうしたトリックを使ってまで「水爆」と発表したのか。単なる「核爆発」では、国連安保理決議違反になり、国際社会の厳しい批判と新たな制裁を招くだけだ。米国や中国、日本と韓国が大きな衝撃を受けることはない。
「水爆」と発表することでこれらの国々に衝撃を与え、中朝首脳会談を実現するとともに米国を対話に引き込む。恒例の「瀬戸際外交」を展開したわけだ。もしこの駆け引きに失敗しても、「水爆実験」ならば、指導者の「偉大な業績」として国内で宣伝することができる。
さらに、関係者によると、新たな核実験を求める軍の意向に金正恩第一書記は逆らえない事情があるという。裏読みすると、金正恩第一書記は軍を完全には掌握できていないことになる。
党大会の成功には中朝首脳会談が必要
北朝鮮は、1980年以来、労働党大会を一度も開催できていない。社会主義国としては、異常な事態だ。労働党大会は、最高意思決定機関である。当初の党規約は、5年に一度開催することを規定していた。
なぜ開催できなかったのか。その理由は明らかではないが、金正恩第一書記の父である金正日総書記の施政方針と関連していると見ることができる。金正日総書記は党の関与を弱体化させ軍主導の政治を行った。金正日時代は、軍が党を無視する事態が継続した。
金正恩第一書記は、この軍事優先の政治を、労働党が優先する本来の権限行使状態に変えようとしている。だが、これを実現するのは容易なことではない。軍事優先のシステムは、20年も続いてきた。軍は多くの利権を獲得し、党の人事に関与した。これを党優先の政治システムに切り替えるには、党大会による決定がどうしても必要だ。
一方、党大会を成功させるためには、食糧難の解消や国民生活の好転が必要となる。それには、金正恩第一書記が訪中し、習近平国家主席との中朝首脳会談を実現する必要がある。習近平国家主席が労働党大会に出席すれば、党大会は大成功となり、指導者の偉大な業績として評価される。
モランボン楽団のドタキャンも水爆が原因
北朝鮮は「水爆実験」の当日、異例の報道を行った。国営朝鮮中央テレビが、「水爆実験」の命令書に金正恩第一書記が署名する様子を放映したのだ。昨年12月15日と今年1月3日の2回にわたり、同書記が命令書に署名したと明らかにした。
北朝鮮が過去の核実験において、こうした経緯を明らかにしたことはない。この報道には、明らかに目的と意図があったと考えられる。北朝鮮の報道は、厳しく規制されている。宣伝工作の一環と位置づけられており、報道には隠れた真実がある。
昨年12月の命令書は、今年5月の労働党大会に言及するとともに、わざわざ「2016年の壮大な除幕を爆音とともに行うことで、全世界が(北朝鮮)を仰ぎ見るようにせよ」に書いてあると伝えた。「水爆実験」と党大会が関連することの証の一つである。1月3日の命令書には、「党中央は水素爆弾実験を承認する。2016年1月6日に断行する」と金正恩第一書記が自筆で署名した。
この報道で重要なのは、「12月15日」「1月3日」という日付である。北朝鮮が「水爆実験」を実施する原因は中国にあると述べていることになるからだ。
実験に至る経緯は、次のようなものだった。まず、朝鮮中央放送が12月10日、「金正恩第一書記が、(北朝鮮は)核爆弾、水素爆弾の巨大な爆発音を響かせられる強大な核保有国となったと述べられた」と報じた。中国はこれに激怒した。核実験とミサイル発射を中止すれば、金正恩第一書記に訪中の招待状を送り、経済支援も再開すると北朝鮮に伝えていたからだ。
実はこの日、金正恩お気に入りの女性音楽グループ「モランボン楽団」が北京入りしている。12日に公演する予定だった。各国メディアは、「中朝の関係改善の象徴」と報道した。ところが同楽団は、12日の朝に金正恩第一書記の命令で突然帰国。中朝関係が悪化していることが明らかになった。
公演は、なぜドタキャンされたのか。北京に在住する北朝鮮関係者によると、公演には習近平国家主席ら最高幹部が出席すると期待された。ところが、水爆発言に怒った中国側が「指導部は出席できない」と伝えてきた。これを受けて金正恩第一書記は、同楽団に帰国を命じた。
中国指導部はその後も、同書記の訪中に関する交渉に応じなかった。「党大会前に訪中し、偉大な成果を宣伝する」という金正恩第一書記の計画が、崩壊したわけだ。
北朝鮮の労働党機関紙「労働新聞」は、金正恩第一書記が12月15日に水爆実験の命令書に署名をした後、12月17日と23日の2回にわたり、同第一書記による「水爆発言」を報道した。「このままでは、水爆実験をしますよ」と中国を脅し、譲歩を求めた様子がうかがえる。「水爆実験」の署名に関する報道は、この経過を示唆し、「責任は中国にある」と非難しているわけだ。中国は、なんとも子供じみた対応だと受け止めたことだろう。
金正日時代にも、指導者お気に入りの楽団を訪中直前に派遣したことがあった。この時、中国の指導者は、公演に出席し、写真撮影をして歓待した。北朝鮮の外交関係者によると、金正恩第一書記はこの前例にならって中朝関係の改善を実現し、訪中を実現するつもりでいた。
米中の甘い対応が「成功体験」に
金正恩第一書記は、指導者に就任して以来一度も中国を訪問していない。中朝首脳会談も実現していない。5月の党大会を盛り上げるためには、訪中と首脳会談がどうしても必要だ。首脳会談が実現すれば、中国から石油や食料などの大規模援助を期待することができる。党大会を成功させるには、この援助が必要だ。
北朝鮮はこれまでの経験から、中国は核実験やミサイル発射に当初は反発するものの、やがては関係改善に応じると見ている。米国の大統領も、任期最後の年になると、北朝鮮問題で成果を上げようとして、対話に応じてきた。
この「成功体験」が、北朝鮮を「水爆事件」に踏み切らせたわけだ。
だが、金正日時代と現在では、中国と北朝鮮の国力に天と地ほどの差がある。北朝鮮の国内総生産(GDP)は最大でも3兆円しかないと韓国銀行は推測している。一方、中国のGDPは1300兆円を超える。この数字は、中国が決断すれば、北朝鮮の指導体制が弱体化し、やがて崩壊に向かう可能性を物語っている。
金正恩第一書記はこの現実を理解できず、父親時代の感覚のまま「水爆もどき実験」を命令し、習近平国家主席の怒りを買った。金正恩第一書記は、中国と国際社会で尊敬されていない。歴史はいずれ、「水爆実験」が北朝鮮崩壊につながった、と記録するかもしれない。
中沢記事
ちょうど1年前、中国国家主席、習近平は北京の人民大会堂で、中国の「水爆の父」として有名な老科学者に国家最高科学技術賞を授与していた。水爆実験を実施した毛沢東時代には機密保持のため名前が伏せらていた于敏(89)である。そして、この1月11日、朝鮮中央通信は、北朝鮮の第1書記、金正恩が「水爆実験に寄与した」とする核科学者らを朝鮮労働党中央委員会庁舎に招き、記念撮影をしたと伝えた。
毛沢東は文革中でも核開発などは着々と進めさせた
「金正恩は中国の過去の道を同じようにたどるつもりだろう」
「金正恩は毛沢東を意識している。毛は文化大革命(1966~76年)の動乱期でさえ核開発にこだわり続けた」
中国と北朝鮮の動きを大陸でウオッチする関係者らの指摘だ。金正恩が毛沢東を戦略・戦術をまねている、と耳にすると、あの斬新な髪形まで毛を倣っているような気がしてくるから不思議だ。
■東京五輪中に中国が初の核実験
約半世紀の隔たりがある中朝の核開発を振り返ってみよう。
中国 | |
1964年 | 初の核実験 「核実験は世界平和の維持への巨大な貢献だ」 |
67年 | 初の水爆実験 「中国核兵器の新たな飛躍。毛沢東思想の偉大な勝利だ」 |
70年 | 初の衛星打ち上げ成功 「衛星は東方紅(毛沢東をたたえる歌)を放送している」 |
北朝鮮 | |
2006年 | 初の核実験 「核実験は朝鮮半島と周辺地域の平和と安定の維持に貢献する」 |
09年 | “衛星”と称するミサイル発射 「衛星から金日成将軍の歌、金正日将軍の歌が電送されている」 |
16年 1月6日 | “水爆実験成功”と発表 「5千年の民族の歴史に特筆すべき大きな出来事が起き、天地を揺るがしている。水爆まで保有した核保有国の前列に堂々と立った」 |
北朝鮮が水爆実験に本当に成功したかは別として、半世紀を経た両国の発表内容は驚くほど似る。中国は1964年10月、東京オリンピックの最中にあえて初の核実験に踏み切った。日本国内でも放射性物質が確認された。東京には各国要人、選手が集まっていたが、中華人民共和国は蚊帳の外だった。
67年には水爆実験。1990年代まで中国が40回以上も実験を繰り返した場所は、スウェーデン生まれの地理学者、スヴェン・ヘディンが「さまよえる湖」の謎解明に取り組んだ新疆ウイグル自治区のロプノール周辺である。「楼蘭の美女」のミイラ発見でも知られるシルクロードの一角だ。
大阪で万国博覧会が開催中だった70年、中国は人工衛星を打ち上げた。中国内では衛星が発する「東方紅」の曲がラジオから流れ、北京はお祭り騒ぎに。中国の示威行為だった。中国は国際的に孤立していた。今、北朝鮮が置かれている環境に極めて似ていた。
■水爆実験5年後にニクソン訪中
中国に核開発の力がなかった時代、毛沢東は、米国などの核兵器を「張り子の虎」と呼び、虚勢を張った。だが、朝鮮戦争(50~53年)などで現実的に米国による核攻撃の瀬戸際に立たされると、自らの核開発にまい進する。
60年代には、文化大革命の混乱に関係なく、核開発計画だけは着々と動いていた。当時、中国では、将来を見据えた潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「巨浪1号」の開発も本格化した。
毛沢東が喉から手が出るほど欲した「両弾一星」は、原爆、水爆と人工衛星(核運搬手段としてのミサイル技術)を指す。中国は70年までにいわば「三種の神器」を獲得し、対米交渉力を格段に強めた。密使となったキッシンジャーとの秘密交渉を経て、歴史的な米大統領、ニクソンの訪中が72年に実現する。中国の水爆実験の僅か5年後だった。
中国は、対立していたソ連に対抗する手段として、当時は禁じ手と思えた米国と組む道を選んだ。続いて日本も中国と国交を正常化し、国際情勢は激変した。
金正恩の狙いも対米交渉にある。その先には日本との国交正常化も見据えているだろう。とにかく危機をあおって米国の注意を引きつけ、最後は米朝交渉→国交正常化で現体制の保障を勝ち取りたい。金正恩にとって米軍のB52戦略爆撃機が核兵器を積んで韓国上空を飛んだり、日米韓の外交・安全保障上の結束が強まったりするのは、狙い通りかもしれない。
そしてもう一つ。叔父まで粛清し、死刑としてしまった金正恩の恐るべき手法も毛沢東を想起させる。「大躍進」の失敗などで地位が揺らいだ毛沢東は、奪権のため国家主席だった劉少奇まで死に追いやった。
毛沢東の文革的な方法で反腐敗運動を推し進める習近平でも、前最高指導部メンバーの周永康を無期懲役としたものの、死刑にはしていない。あくまで「ミニ文革」にとどまっている。現在の北朝鮮では、文革に似た事象が進行しているとの推測も成り立つ。
習近平にとっては、極めてやっかいだ。6日の核実験の衝撃で北朝鮮国境に近い中国東北部はかなり揺れ、地割れまで生じた。「(北)朝鮮で戦争が始まったのか……」。住民はおびえた。北朝鮮の核実験だと判明すると、今度は放射能被害への恐怖も広がる。
中国には物資供給を止め、北朝鮮と手を切る選択肢もある。だが、それでは地域での影響力が低下するだけだ。それに北朝鮮は今でも形の上では“同盟国”だ。中朝友好協力相互援助条約(1961年)は破棄されていない。米中関係が南シナ海問題などで悪い今、北朝鮮カードを簡単には手放せない。その中国の弱みを金正恩は突いている。
■臆測広がる美女楽団公演ドタキャンとの関係
北朝鮮発表によると、金正恩が“水爆実験”の実施を命じたのは、先に北朝鮮の美女らによる牡丹峰(モランボン)楽団が、北京公演をドタキャンして帰国した直後の12月15日だった。
金正恩氏の昨年の記録映画からカットされた中国序列5位の劉雲山氏(右、15年10月の平壌での軍事パレード、中国中央テレビの映像から)
さらに1月10日、北朝鮮で放送された去年1年間の金正恩の活動をまとめた記録映画からは「中国との蜜月の証し」が消されていた。昨年10月、金正恩と手をつないで軍事パレードを参観した中国序列5位の劉雲山の姿がカットされたのだ。
核実験だけはしないよう圧力をかけ続けた中国は当然、金正恩の挑発と受け止める。中国外務省スポークスマンも金正恩の誕生日である8日に中国が祝電を送ったかについて「知らない」と素っ気ない態度を示し、事実上、否定した。
いざとなれば金正恩は「中国の1960年代の行動を見習っているだけ。自衛のためだ」と開き直ることもできる。自身の誕生日には、水中からのSLBMの発射映像も公開した。これも60年代からの中国のSLBM開発を意識しているかのようだ。中国は何もせず見ているのか。次の一手が見ものである。(敬称略)