1/10日経 伊奈久喜『オバマ氏を褒め殺しする』について

米国の「瓶の蓋」論(日本封じ込めの米中密約)が如何に愚かだったかです。対華21カ条条約(1915年)は密約部分(5号条項)をわざと中国が洩らしました。国際世論に日本の横暴さをイメージつけるためです。中国人は平気で約束を破ります。別に密約を破ったとして咎められるわけはありません。後は米国の態度の問題でしょう。尖閣は米軍自体が射爆場として使用していたことがあり、中国に領有権があればそんな行動は取れなかったはずです。台湾も領有権を主張していたので(今も国民党は主張していますが)、米軍が射爆場として使わなくなったときに、素直に日本領有とは言えなかっただけ。オバマもレガシー作りで尖閣の日本領有を明言して、大統領職を去ればよいと思います。

一昨日はグアム発でB-52機がソウル近郊の烏山(オサン)上空まで威圧飛行しました。北朝鮮だけでなく、中国に対して目に見える形での恫喝でしょう。本来、米軍原潜は日本海を遊弋している可能性が高く(軍事作戦上のことなので、当然公表するはずがありません)、わざわざグアムからB-52を飛ばす必要はないでしょう。また以前ブログでも書きましたが、キャプター型の機雷を朝鮮半島に沿って海底に敷設するだけで、海上封鎖と同じ効果が得られます。http://dwellerinkashiwa.net/?p=1983

ここでも米国の意思がどうであるかだけです。米国経済に中国経済は必要なのかどうか?中国の門戸開放を巡って日米は戦争しましたが(スターリンの謀略に乗せられたFDRが開戦したかっただけと小生は思っています)、安価な労働力でなくなった中国、AIIBを作り米国に金融面で挑戦する中国、自由・民主主義、法治、基本的人権のない中国に肩入れする必要があるのか聞きたい。米国要人に賄賂まがいの金を送っているので、そういう人(キッシンジャーやブレジンスキー)の意見は中国擁護でしょう。金を受け取っているかどうかを見分けるリトマス試験紙になります。

B-52

記事

Senkaku,Xi & Obama

2016年の世界が最も注目するニュースが11月8日の米大統領選挙であることは論をまたない。民主、共和両党の候補者がどんな組み合わせの対決になるにせよ、外交政策の焦点は、中東、ロシア、中国などだろう。

 このうち日本が最も深い関心を持つ対中政策には米政治に一種の公理めいたものがある。どの政権も選挙中は中国に厳しく、政権に就けば現実的対応に変わる点である。

 典型的だったのが01年に発足したブッシュ政権だった。選挙中は中国を「戦略的競争相手」と警戒し、政権末期の08年8月8日には、中国の人権状況に絡めた米国内の批判を承知で北京五輪開会式に参加した。

 例外はオバマ政権だった。08年の選挙中のオバマ氏は「中国も含めた包括的なアジア安保体制」を志向した。日米同盟の相対化であり、共和党のマケイン候補は日米同盟を「アジア外交の中核」に据えていた。

 中国に対しては「世界の課題解決により責任ある立場をとるべきだ」と、責任ある行動に期待する言い方をしていた。これらの政策の「対中融和度」を考えれば、70程度だったろうか。この点ですでにオバマ政権は異質であり、公理を覆していた。

 政権に就いてからも、中国が主張する新型大国関係論に反論せず、融和度は90以上になった。しかし15年10月27日、逆方向に再び公理を覆す。イージス艦「ラッセン」が南シナ海で中国が建設した人工島から12カイリの領海と主張する海域を航行した。融和度は40程度に落ちた。

 だが、日本の月刊誌が形成する外交論壇では懐疑的な意見が目立つ。「中央公論」の1月号(以下同じ)で外交評論家の佐藤優氏は、米艦は国際法で認められる無害通航をしただけであり、「なんらかの明示的、もしくは合意があったうえでの行動」と述べた。

 評論家の桜井よしこ氏も「正論」で「一番望ましい形の進入は、中国が、自分の領海だと主張している十二海里の海域に進んで、そこで軍事行動、軍事訓練をすること」とする。それがなかったから「既に負けている現状」と、厳しい。

 一方、「Voice」は、矢板明夫産経新聞北京総局長の「外洋拡張路線の挫折」を掲載した。副題には「米軍と爆撃機の派遣により傷ついた習主席の権威」とある。中国の敗北、米国の勝利との見立てだ。

 矢板氏の意図を離れ、これはオバマ大統領に対する褒め殺しになる。狙いは小欄でも何回かとりあげてきた尖閣諸島の領有権である。立場をとらないとする米国の態度を変更させ、日本領と認めさせるには、いまが好機であり、それにはオバマ氏に対する褒め殺しが効果的だからだ。

 1970年代初め、米国が尖閣領有権で立場をとらないとしたのは、北京政府ではなく、当時国交のあった台湾への配慮だった。15年の中台首脳会談をみれば、国民党はもはや北京に近い。国民党への配慮は無用である。

 では対中配慮か。融和度がすでに40まで下がっているとすれば、仮に尖閣問題で30に下がっても大差はない。冷戦時代の米ソ関係もそうだったが、2つの大国に世界を共同管理する意識がある時、直接衝突は寸止めで避けられてきた。

 尖閣でオバマ政権が日本の領有権を認めれば、日米間の不信のとげは抜け、対中抑止力も増す。中国は米国との軍事衝突を選べないから、米国は失うものはない。それはオバマ政権が歴史に残すレガシー(遺産)として輝く。