中国の極悪非道ぶりは留まるところを知りません。米国だって昔はパナマのノリエガ将軍やホンジュラスのマヌエル・セラヤ大統領の拉致・拘束がありました。大国は身勝手ですが、まだ政府を批判できるメデイアの存在があるから良い。日本のメデイアのように反政府だけを唱えるのでなく、二重基準でもない所が良い。中国のメデイアは「党の喉と舌」ですからプロパガンダで人民抑圧機構の一つです。
日本にも旅行客のフリをして中国・公安の人間が入ってきて在日中国人の監視はしていると思います。朱建栄だって上海で7ケ月間拘束されましたが、日本でチエックしていて中国入国と同時に拘引したと思います。
人権侵害という概念が中国の為政者にはないと思います。中国の長い歴史の中で、民主的に為政者を選ぶ時代はありませんでした。ですから選挙で国民の代表を選ぶシステムを取っている台湾と中国は全く違った国と言えるでしょう。通貨発行権、関税自主権、独自の軍の存在、パスポートの発行権等どれをとっても中国とは別な国としての実体があります。ここまで違うものを何故無理やり一つの国と認めなければならないのでしょうか?香港も一国二制度の約束を反故にされました。雨傘革命は挫折しましたが、台湾の「時代力量党」の躍進で、香港でも新たな動きがあるようです。
記事
以前、このコラムで紹介した銅鑼湾書店関係者失踪事件は、恐れていたことが現実になった。中国当局が筆頭株主の桂民海(桂敏海)と李波を拘束していることを認めたのだ。タイのパタヤにいたスウェーデン国籍の桂民海や、香港にいた英国籍の李波が、中国公安当局の手元にいる。しかも、そのあとも、タイでネットニュースサイトの元編集者が忽然と消え、おそらくは中国公安に拘束されていると見られている。香港を含めた東南アジアで、次々と起こる「中国の越境拘束」。日本を含む国際社会は、なぜこの無法を問題視しないのか。事件の続報も含めて、今の中国や中華圏で起きている状況をまとめてみたい。
「中国のテレビで懺悔」の不自然
10月中旬、タイのパタヤのリゾートマンションから謎の中国人に連れ去れらたと伝えられていた香港の禁書書店・銅鑼湾書店の筆頭株主・桂民海は、1月17日、なぜか桂敏海という漢字一文字を入れ替えた名前で中国公安の拘束下にあることが公式に発表された。中国側によれば桂民海は通名であり、桂敏海が本名であるという。
例によって1月17日、本人がCCTVのニュース番組中で、罪を認め、懺悔した。彼は自ら2003年に起きた飲酒運転による女子学生死亡交通事故の犯人であることをテレビ画面に向かって告白し、2004年8月に懲役2年、執行猶予2年の判決を受けるも、怖くなって逃亡した。だが、遺族の気持ちを思うとやましくなり、自らの意志で中国に渡り中国公安当局に自首したのだという。
彼は「この件にスウェーデン政府が干渉することを望まない」と強調。「自分が1人の中国人であると感じている」と涙ながらに訴えた。
この顛末の不自然さは、多くの人が気づいている通りだ。本当に裁判で執行猶予付きであったならば、桂民海に逃亡の必要性はない。それよりも、2003年の事件について執行猶予付き判決を受けたのは本当に桂民海であったのか。事故記録にある桂敏海の名前と桂民海は同一人物なのか。23歳の寧波紡績学院の女子学生が飲酒運転の車にはねられて死亡したこの事件は当時、中国でも盛んに報じられた。
この時の報道では、犯人の名前は”桂某”と匿名であったが、事件を報じるCCTVの画面にちらりと「事故調査報告書」が映っている。それには容疑者は「桂敏海、46歳」とあった。公式の資料によると、桂民海は1964年生まれ、1985年に北京大学を卒業。とすれば2003年の事故当時、彼は39歳であり、桂民海と桂敏海は名前が一字違うだけでなく、年齢が合わない、ということになる。この不自然さに、一部の中国ネットユーザーから「中国公安当局のシナリオが甘い!」とダメ出しが出ている。
文革時代の「批闘大会」の現代版
そもそも、正式の起訴、裁判の前に、容疑者をCCTVのテレビカメラの前に連れ出し、弁護士の立ち合いもなく、自白と懺悔を行わせるというのは当然、中国の司法プロセスにおいてもおかしい。だが、習近平政権になってから、建前の司法ですら、尊重されなくなっており、この3年の間、人権派弁護士やジャーナリスト、知識人ら、中国当局にとって都合の悪い思想やイデオロギーを持つ著名人物を起訴前にテレビ画面上で自白、懺悔させ、世論に対する有罪印象を植え付けてから起訴、裁判を行うというやり方が常態化しつつある。
良識ある知識人はこれを文革時代の「批闘大会」(つるし上げ)の現代版だと鼻白む。一方で、国際的にも著名な知識人や企業家、弁護士といった”成功者”が、テレビ画面上で涙を流して懺悔する様子は、暮らしが一向に良くならず漠然と不満を抱える庶民にとっては中々の娯楽となっているという側面もある。
続いて、昨年12月30日、香港の書店の倉庫に行ったまま忽然、姿を消していた銅鑼湾書店のオーナーで作家の李波も、中国公安当局に身柄を抑えられていることが明らかになった。李波は23日午後、中国国内のホテルで妻と面会したと香港警察が発表した。妻は香港警察に対して、李波は証人の立場で中国の警察の捜査に協力しており、香港警察はこの問題にかかわらないようにと申し入れたという。
香港紙・星島日報はさらに、スクープとして李波が香港警察宛に書いた直筆の手紙と、李波と妻が面会した証拠として一緒に写っている写真を公開している。その手紙では、「自分は拉致されたのではなく、また買春によって警察に捕まったわけでもなく、香港警察は警察力を浪費する必要はない。内地(中国)で捜査に協力しているのは自発的なものだ。まだしばらく時間はかかりそうなので、どうか家族の安全を守って、これ以上騒ぎ立てないでください」と、訴えていた。
李波は17日に桂民海がCCTVで懺悔した翌日、妻に手紙を送っているが、それによると、「桂民海の来歴は非常に複雑で、それに私も巻き込まれた」という。
銅鑼湾書店関係者の失踪はこの2人以外に、店長の林栄基ら3人いるが、彼らの安否はまだ確認が取れていない。
「主権侵害」の知識人狩りが横行
たとえ李波の手紙が真実であっても、あるいは桂民海の懺悔が真実であっても、中国公安当局がとったプロセス自体は、明らかに香港やタイの司法、主権を無視したものである。いくら本人が望んだからといって、香港出入境管理当局や香港警察当局が知らない間に、香港から香港人あるいは外国人を中国国内に連れ出すようなことが許されて良いわけがない。ましてや、タイのような完全な独立国から、中国人を密出国という形で勝手に連れ出すなど、明らかな主権の侵害である。
タイではこの事件に続いて、中国人元編集者が失踪する事件が起きている。香港に拠点を置くラジオフリーアジアによれば、元南都ニュースサイトの編集者、李新が1月半ばにタイで失踪。妻は中国当局に拉致されたと考えており、知人を通じて、タイ警察に捜査を求めているが、タイ警察はこれを拒否しているという。
李新は中国政法大学法学部を卒業後、2007年に公民社会ネットという公民社会を提唱する情報サイトを設立。2010年にインドに留学し、2012年に帰国後、国家安全当局に軟禁され、海外における情報収集に協力するよう迫られた。早い話が、公民運動家としての人脈を持つ李新は、中国国家安全当局から半ば脅しによってスパイにリクルートされたわけだ。2013年から南都ネットの編集者を務めながらスパイ活動をしていたが、仲間への裏切り行為に耐えられず、昨年10月、中国から逃亡、各地を転々としたのち1月1日にタイに入った。妻は、1歳の子供をつれて昨年12月、香港経由で出国しようとしたが、深圳で足止めされたという。
実は、こういう事件は初めてではない。習近平政権の知識人狩りが始まって以来、雲南国境からミャンマーやベトナムを経由しタイに脱出を図る中国人政治亡命希望者は急増しているが、彼らが次々とタイやベトナムで拘束されているのだ。
2015年10月28日、タイ・バンコク市内で2人の亡命中国人民主活動家が逮捕された。姜野飛と董広平だ。2人は中国から政治犯として国際指名手配を出されていたが、2015年春までに国連の難民認定を受けていた。逮捕したのはタイ警察で、逮捕理由は不法滞在であるが、明らかに中国当局の差し金である。中国当局はタイ政府に強制送還費用や保釈金を出していた。
11月13日には中国政府の要請に従って強制送還された。この時、氏名は明らかにされていないが、バンコクにいた3人の中国人”難民”も一緒に送還されたという。
姜野飛は、風刺漫画家としてネットに習近平政権を揶揄するコラージュ写真や漫画を発表していた。董広平は「鄭州十君子」の1人でもある著名人権活動家。天安門事件、趙紫陽紀念などの活動に参加。2人とも何度も逮捕され拷問にもあったが、なんとかタイに逃げおおせ、難民認定されたのだった。
タイ、ベトナム、ミャンマー、香港で
タイはもはや、中国に対して国家としての主権を守るつもりもなく、タイ国内では中国当局に都合の悪い人間は失踪したとしても、タイ警察は捜査もしてくれないし、国連が難民と認定した人間に対しても不法移民として拘束して中国に強制送還する。こうした中国に対して主権を守り切れない国が東南アジアでは増えてきており、タイだけでなく、ベトナム、ミャンマー、1国2制度で司法が独立しているはずの香港でも同じような事件が起こっているし、これからも起こりそうなのだ。
余談ながら、タイでこうした政治難民華人が次々と捕まる背景には、李新のように、当局によってスパイにリクルートされて仲間に情報を売っている人間がいると見られており、東南アジアの政治難民華人ネットワークの間では、さまざまな疑心暗鬼とパニックも広がっている。
これは、非常に恐ろしいことで、習近平政権に批判的な言論活動を行っている中国人、あるいは外国人がタイや香港に旅行中に失踪したり、あるいは飲酒運転死亡事故を起こしたとして逮捕されたり自首したりするような事件が、これからどんどん起きるかもしれないのだ。中国に行くときは、それなりに注意深くなる人も、まさかタイのリゾートで中国当局に嵌められるとは思っていまい。
台湾の尊さ、改めて実感
先日、”中国関連ライター”の集まりのときに、中国のみならず香港や東南アジアに旅行するときも危なくなってきたな、という話になった。「クスリも買春も飲酒運転も絶対にやらないので、もしその手の容疑で私が逮捕されたと報じられたら、メディアに『そんなことをするような人ではない』とコメントしてほしい」と冗談まじりに言い合っていた。
中国の知識人狩りはもはや国内にとどまらず、海外にまで手を広げている。しかも外国籍の知識人までがターゲットになっている。それを許しているのはチャイナマネーに屈服し、中国の価値観、秩序に染まってゆく周辺国である。
そういうアジアの中で、民主選挙という方法で、有権者の意思で、中国経済依存にブレーキをかけた台湾は、だから本当に貴い主権国家だと思う。