『トランプの宿敵NYタイムズを保守派の重鎮が猛批判 「これからどれだけ誤報や虚報が繰り返されるのか」』(1/8JBプレス 古森義久)について

米国と日本を比較して日本にはここまで言える政治家はいないでしょう。「朝日新聞は従軍慰安婦の虚報を世界に訂正・謝罪報道せよ」と堂々と言える政治家が必要です。メデイアは自分に都合の悪いことは「報道しない自由」の権利を行使しているだけかも知れませんが。第4の権力に対して、国民の負託を受けた国会議員が委縮して発言を控えるとしたらおかしいでしょう。それでは単なる「職業としての政治家」に堕しているだけです。

1/10日経では『中国式統治「ゴルバチョフにならない」 独善の罠』の中で、最後に「習の顔色をうかがう党内では、米国が広めた民主主義に代わる価値観として「中国式統治」を世界に広めようと真顔で語る人々まで出ている」とありました。「中国式統治」の基本理念は何でしょうか?少なくとも国民の精神的・物質的な幸福を願っているとは思えません。「一党独裁、No三権分立、人権弾圧、少数民族浄化、拝金教、腐敗、強欲、自己中心、No公共道徳」を世界に蔓延させようとしています。世界を悪で染めようというもの。中国の金に目を眩まされてはならないと思います。特に欧州と新興国は。

また、1/10日経の記事では蔡台湾総統がヒューストンでテッド・クルーズと会った記事が掲載されていました。「同氏は声明で「米国を訪れた人との面会について決めるのはわれわれ自身だと中国は理解する必要がある」と指摘。「中国側が誰と会うか、米側にも拒否権は与えられていない」とも力説した。声明では米国と台湾の関係を「2国家」と表現し、中国と台湾が一つの中国に属するという「一つの中国」政策を無視した」とありました。二国間関係が未来永劫に続くかどうかは国益の観点からのみ判断されるというのは歴史の教える所です。永遠の敵もいなければ永遠の友もいない訳です。ただ、条約は守る必要はあります。中華、小中華、ロシアは反故にする可能性がありますが。米国は中国と対峙することを選択したように見えます。それはそうでしょう。今までの米国の世界覇権に中国が挑戦しようとしている訳ですから。黙って見ているほど米国人はお人好しではありません。トランプはロシアを仲間に引きずり込み、中国と経済戦争を引き起こし、排中移民法案やら経済制裁をして、中国に先に手を出させて、国際社会に中国包囲網を形成し、国際社会からの締め出しを図るのでは。まるで戦前の日本と同じ道ですが。

NYTも朝日新聞と同じで角度をつけて報道するのでしょう。左翼リベラルは皆同じです。真実・事実を報道する姿勢から遙かに遠く、読者・視聴者を一定の方向に誘導しようとするものです。情弱な人達は洋の東西を問わず、権威に弱いという事でしょう。だから嘘の報道が止まないのです。読者・視聴者を馬鹿にしている訳ですが、読者・視聴者も気づいていないのでは馬鹿にされても何も言えないでしょう。経営の屋台骨を揺るがすように、購読は止めるべきです。今度の韓国との外交がこじれた大きな原因は朝日新聞の「従軍慰安婦」の嘘報道が発端です。左翼は平気で嘘をつきます。共産革命の実現の為にはどんな手段を取っても許されるという発想です。大阪朝日の尾崎秀美のように平気で国を裏切り、日本の南進化を勧めて国を敗戦に導きました。売国新聞を読んでいる人に恥の感覚は無いのかと言いたいです。

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米ニューヨーク市にあるニューヨーク・タイムズ紙本社を訪れたドナルド・トランプ氏(2016年11月22日撮影)。(c)AFP/TIMOTHY A. CLARY〔AFPBB News

「ニューヨーク・タイムズはドナルド・トランプ氏の大統領当選の意味を理解できておらず、いたずらに誤報や虚報を発し続けている」――。

米国の大手新聞として長い伝統を誇るニューヨーク・タイムズに対して、米国連邦議会の下院議長も務めたことがある保守派の重鎮が、こんな手厳しい糾弾を表明した。

ニューヨーク・タイムズは左傾リベラリズムの思想に流されて、米国の草の根から誕生したトランプ現象が理解できていない、あるいは意図的な曲解を続けている、という批判だった。現在の米国内の政治的分裂を象徴する動きとしても注目される。

民主党政権に加わる記者も

この批判を公表したのは、連邦議会の下院議員を1979年から20年ほど務め、そのうち95年から99年までは下院議長だったニュート・ギングリッチ氏である。元々は政治学者であり、長年、保守主義思想の論客として知られてきた。

94年の議会選挙では、共和党指導者として「アメリカとの契約」というスローガンを掲げて支持層を広げ、下院での共和党の議席を大幅に増やした。下院はそれまで40年間、民主党が多数派だったが、ギングリッチ氏の活躍により共和党は逆転を果たした。

2016年12月末、ギングリッチ氏は「トランプイズム(トランプ主義)とニューヨーク・タイムズ」と題する論文を保守系新聞の「ワシントン・タイムズ」に寄稿した。ギングリッチ氏のような大物論客が大手新聞の偏向や誤報を正面から批判するのは異例である。

同氏はまず以下のような問題を提起していた。

「トランプイズムは、行動とリーダーシップの哲学がこれまでのワシントン主体の政治システムとはあまりに異なるため、ニューヨーク・タイムズは理解できないようにみえる。そのうえ、ニューヨーク・タイムズはその動きをあまりに嫌うため、トランプイズムの報道や論評には誤報や意図的な虚報がきわめて多い」

確かにニューヨーク・タイムズは長年一貫してリベラル左派の立場をとり、大統領や連邦議員の選挙では常に民主党、リベラル派を支持してきた。同紙の記者や編集者たちも、圧倒的に民主党員や民主党支持者が多い。歴代の民主党政権に加わり、共和党政権が登場するとまた新聞社に戻るというケースも頻繁にあった。そのため共和党側からは「不当に民主党側を応援している」という抗議が絶えなかった。

今回の大統領選挙でも、同紙は早い時期から民主党のヒラリー・クリントン候補支持を鮮明にし、トランプ候補を不利にするようなニュースの発信を続けてきた。選挙結果の予測においても、一貫して「クリントン候補優位」「クリントン候補当選確実」と報じてきた。

しかし、こうしたニューヨーク・タイムズの全面的な応援にもかかわらず、大統領選ではトランプ氏が勝利した。そのため、ニューヨーク・タイムズには、ニュースメディアとしての中立性、客観性はどこにあるのかという非難の声が浴びせられている。ギングリッチ氏の論文はこうした背景の中で公開されたわけだ。

記事は「証拠や根拠のない侮蔑的な推測」

ギングリッチ氏はニューヨーク・タイムズをこう批判する。

「同紙は、この傑出した指導者が新しい政治現象を引き起こしたことをまったく説明しようとはせず、トランプ氏に関する間違った情報、間違った評価を発信し、軽蔑すらも露わにしてきた」

そして、間違った報道の実例として以下のケースを挙げていた。

「12月下旬にドイツのベルリンで起きたテロ事件について、同紙は『トランプ氏のイスラム教徒の米国入国を禁止する提案が原因となってこんな事件が起きた』と書いていた。だが、トランプ氏はイスラム教徒の入国審査の厳格化を提案しただけで、全面的な入国禁止は唱えていない。さらにトランプ氏の提案がテロの原因になったという証拠もない」

「南シナ海で中国軍が米軍の水中測定用無人艦を奪った際にも、同紙は『トランプ氏のデタラメな発言は米国の外交を混乱させ、危機管理に慣れていない退役将軍や石油ビジネスマンを使った折衝はさらに事態を悪化させることになる』と論じた。しかし、証拠や根拠のない侮蔑的な推測にすぎない」

「同紙の記事は、反トランプ派の学者であるバージニア大学教授、フィリップ・ゼリコウ氏の『トランプ氏は大統領になれば、外交面で全世界の4分の3を敵に回してしまうだろう』という言葉を引用していた。この言葉には何の根拠もないのに、同紙はあたかも客観的な事実のように使っていた」

ギングリッチ氏は論文の最後を以下のように結んでいる。

「まだ出発していないトランプ政権にこれほど不正確で偏向した報道や論評で臨んでいるのだとすれば、今後8年は続くかもしれない同政権に対して、どれほどの誤報や虚報が繰り返されるのか想像もつかない。ニューヨーク・タイムズのこの態度は、故意の無知がもたらす傲慢とも言えよう。この姿勢は同紙の読者と米国のジャーナリズムの実直な伝統をひどく傷つけている」

さて、まもなく登場するトランプ政権とこの新聞の戦いはどうなるのか。大いに注目したい。

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『大きすぎるオバマの負の遺産 南シナ海情勢の今 7つの環礁に前方展開基地が誕生、トランプはどう立ち向かうのか』(1/5JBプレス 北村淳)について

オバマのノーベル平和賞は返して貰った方が良いのでは。世界の平和に全然貢献しなかっただけでなく、中国の侵略に対し傍観してきたため、それを許す=手を貸したて来たことになります。オバマは“all talk and no action”なのが、分かっていましたから、中国も安心して侵略してきた訳です。人権弾圧、粛清、虐殺が当たり前の共産国家に好き放題やらせてきました。アジアの不幸の始まりです。

アメリカは歴史上、本当に真の敵を見誤ってきました。満洲に進出した日本を、蒋介石や宋美齢の甘言に乗せられ、中国大陸をスターリンと毛沢東に渡す結果となりました。日本を其の儘の形で残して置けば、朝鮮戦争もベトナム戦争も戦わずに済んだ筈です。共産主義化を食い止めたでしょうから。ただ、それだとアジアの植民地解放まではいかなかったでしょう。欧米列強が植民地から搾取・収奪できる宗主国としての立場を平和的に放棄するとは思えませんので。誰かが戦わなければならなかったと思います。日本も最初は資源確保の為、生存圏(レーベンスラウム)や自給自足圏(アウタルキー)確保を目的として滿洲へ進出しました。五族協和(和(日)・韓・満・蒙・漢(支))を唱えて、欧米の植民地主義に対抗しました。1943年には重光葵主導で、東京で大東亜会議を開き、チャンドラ・ボースからは「日本は非白人世界での希望の灯であり、アジアの希望の灯」と高い評価を受けました。

Henry Scott Stokesの“Fallacies in the Allied Nations’ Historical Perception As Observed by a British Journalist”の中からその部分を紹介したいと思います。

P.81~84抜粋

“The Provisional Government of Free India, together with Japan, declared war against Britain and America. In the fall of the same year,1943, the Greater East Asian Conference was held from November 5 to 6 in Tokyo. This was the first Summit of the colored races held for the first time in the long history of humanity.

Prime Minister Hideki Tojo of Japan met leaders from other Asian countries: Zhang Jinghui (張景恵Prime Minister of Manchuria), Wang Jingwei (汪精衛chairman of the Nanking Government of China), Jose P. Laurel (President of The Philippines),Ba Maw (Prime Minister of Burma), Prince Wan Waithayakon (Acting Prime Minister of Thailand) gathered together. And Subhas Chandra Bose attended as a representative of India.

Today not a few Japanese scholars regard this conference as if it were the gathering of the Japanese military’s “puppet government” leaders for propaganda purposes. But the Japanese who say such a thing are the “puppets”of foreign powers which intend to control the minds of the Japanese people.

At the Conference, the Greater East Asian Joint Declaration was approved unanimously. Bose appealed, “I pray to God that this Joint Declaration … may prove to be a charter for the nations of East Asia and what is more, a charter for the suppressed nations of the whole world. May this Joint Declaration be the new charter of liberty  ” As Bose proclaimed, Japan was “the Light of Hope” for non-white people of the world.”

“JAPAN MUST BE LIBERATED FROM THE CURSE OF THE OCCUPATION

The year 2013 fell on the 70th anniversary of the Greater East Asiatic Conference held in Tokyo in 1943. It also coincided with the second administration of Prime Minister Shinzo Abe. The administration introduced “Abenomics” (economic policies advocated by Abe), and started to turn the Japanese economy around. In the Upper House election in June of the same year, the ruling Liberal Democratic Party won an overwhelming victory. In his first administration, Abe advocated breaking free from the postwar regime, and accomplished a lot in that regard, but Japan has yet to be liberated from the curse of the Occupation. Japan is still under the influence of the historical view of the Tokyo Trials. Japan was labeled as a criminal nation which was guilty of committing a ‘‘war of aggression” and the ‘”Nanking Massacre.” It is vital, therefore, to get rid of the falsehood of the ‘Thanking Massacre,” which was imprinted on the minds of the Japanese as an American war-guilt propaganda campaign to impose a sense of guilt about the war, Chinese propaganda and the nonsensical Tokyo Trials. Japan should tell the world the facts: that Japan did not invade Asia, but liberated Asia from Western colonial rule.

As Chandra Bose declared, “Japan was the light of hope in Asia.” The Japanese Army advanced into Asia and fought against the Western powers, which controlled and oppressed Asians through colonial rule. It expelled the invaders from Asia and started the construction of an Asia for the Asians. Because of that, Asian fighters for independence arose in various Asian countries. Together with those Asian fighters, Japan fought a war for the liberation of Asia.

That was the pinnacle of the Japanese race. When England fought a “lonely war,” all by herself against Hitler’s Germany, Churchill encouraged his nation by saying that “if the British Empire and its Commonwealth last for a thousand years, men will still say, ‘This was their finest hour.'”

Today, how many of those under seventy years old know anything about the Greater East Asiatic Conference? Most Japanese know nothing about the moment when Japan’s history heated up. After WWII, many Asian and African countries attained their independence. I think they did so because Japan fought the Greater East Asian War in order to construct an Asia for Asians.

The notion of breaking free from the postwar regime should be understood that broad historical perspective in order to overcome the historical view based on the Tokyo Trials.”

中国の今やっていることは第二次大戦前の西洋諸国と同じです。資源確保と太平洋進出を狙っての軍事基地確保の為、公海を中国の内海にしようとするものです。21世紀の大国としては相応しくない行動を取る「遅れて来た帝国主義国」です。世界史が人類にとってより良く発展するという前提に立てば、中国の行動は国際社会で許される筈もない。ただ、中国人の発想は強制するものが無い限り、「あなたの物は俺の物、俺の物は俺の物」と思っていますから、世界が中国に経済制裁するようにすれば良いのです。中国のことですから人口の多さを楯に、抜け駆けを誘うとか、難民を送り出し、テロを仕掛けるかもしれません。テロや暴力に屈してはなりません。正義に反する行為です。日共や左翼、在日の動きに注意を市民レベルでもしておかないと。

南シナ海の航行の自由作戦には日本も参加した方が良いです。中国は参加しようがしまいが、いずれにせよ、尖閣と沖縄を取りに来る肚を固めていますので。それなら、日米同盟の絆を日米だけでなくASEAN諸国にも見せつけてオバマ時代に中国寄りに傾きかけた姿勢を軌道修正させた方が良いでしょう。集団的自衛権を行使する場面が出るかもしれません。自衛隊員にも犠牲が出るかもしれません。その時日本人は何と思うのでしょうか?目先自分が助かればよいと?西村眞悟氏は必要なのは「名誉と補償」と言っていました。靖国にも名簿登載が必要でしょう。

何時も言っていますように中国に時間の利益を与えるのはマズイです。経済崩壊させるのが一番良いのですが。

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南シナ海での演習に参加する中国の軍艦(2016年5月10日撮影、資料写真)。(c)AFP〔AFPBB News

オバマ政権最後の年である2016年、中国は南沙諸島に誕生させた7つの人工島の軍事拠点化を急ピッチで進めた。

オバマ政権は中国の軍事的拡張政策に対して強硬策をとらなかった。だが、次の政権が引き続き対中軟弱政策をとる保証はない。そこで、人工島に各種軍事施設を次から次へと建設していったわけである。

結果的にはトランプ政権が誕生することになったため、中国の急速な人工島基地群建設努力は無駄ではなかったことになった。

中国海洋基地建設の進捗状況

2016年当初、中国は南シナ海の7つの人工島のうちスービ礁、ファイアリークロス礁、ミスチーフ礁に、それぞれ3000メートル級滑走路の建設を進めていた。今やそれらの滑走路は、戦闘機から爆撃機や大型旅客機まであらゆる航空機が使用できる状態になっている。

滑走路周辺にはまだ完全には完成していないものの、戦闘機や爆撃機などの格納施設や整備施設も姿を現しており、管制施設やレーダー施設をはじめとする空軍設備群の建設も完成目前である。そのため、2017年中には、それら3カ所の航空基地に人民解放軍海軍あるいは空軍の航空部隊が配備されることは十二分に可能な状態である。

それぞれの人工島には、航空施設に加えて、中国海軍艦艇や中国海警局巡視船艇が拠点とすることができるだけの港湾施設の建設も進められている。いまだ海軍艦艇などが母港化している状態ではないものの、2017年中にはいくつかの人工島港湾に海軍フリゲートやコルベットそれに海警局武装巡視船が配備されるかもしれない。

人工島基地群の働きは不沈空母艦隊以上

海洋戦力の強化にとって、軍艦や航空機といった装備の充実は当然ながら極めて重要であるが、前方展開拠点の確保はこれまた非常に重要な要素である。そのためアメリカ海軍・海兵隊は日本(横須賀、佐世保、沖縄、岩国)やバーレーン、それにディエゴ・ガルシアという海外に設置してある前方展開基地を手放したくないのだ。

ただし、アメリカ海軍にとってそれらの海外前方展開基地はすべて他国の領土内にある。そのため、日本でのいわゆる沖縄基地問題のように未来永劫安定的に確保できる保証はない。

それに反して中国は、ファイアリークロス礁、スービ礁、ジョンソンサウス礁、クアテロン礁、ガベン礁、ヒューズ礁そしてミスチーフ礁と、少なくとも中国の主張によっては自国の領土である7つもの環礁に前方展開基地を手にすることになった。

そのうちの3カ所には本格的軍用飛行場を運用し、大型艦艇や潜水艦の拠点となる施設も手にすることになる。さらに、それぞれの人工島には、地対艦ミサイル部隊や地対空ミサイル部隊が各種レーダー施設と共に配備され始めている。かねてより米海軍戦略家たちが危惧していた通り、南沙諸島に中国海軍が数セットの空母艦隊を展開させたような状況が現実のものとなりつつあるのだ。

人工島は、移動することはできないため定点攻撃目標となってしまうという弱点が存在するが、艦艇と違って撃沈されたり航行不能に陥ることはない。

また、中国が誕生させた人工島には、軍事施設だけでなく巨大灯台や海洋気象観測所、漁業基地、それに大規模リゾート施設の開発まで予定されている。多数の旅行者を含む民間人が滞在し、軍事施設と非軍事民生施設が混在する人工島基地群を軍事攻撃することは、各種ピンポイント攻撃能力を有するアメリカ軍といえども避けざるを得ない。

要するに、南沙諸島に出現した7つの人工島基地群は、中国海洋戦力にとっては不沈空母艦隊以上の働きを期待できる前方展開拠点となるのである。

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南シナ海を睥睨する中国軍事拠点

対抗措置をとらなかったオバマ政権

オバマ政権最後の年ということで、中国は南沙諸島の7つの人工島で軍事施設の建設を加速させただけではなく、西沙諸島の軍事的防衛態勢も強化し、フィリピンから奪取したスカボロー礁の軍事拠点化を進める態勢を明示し始めた。それに対してオバマ政権は(中国側の期待通り)効果的な対抗措置をとることはなかった。

米海軍戦略家の多くは中国による人工島建設の動きを事前に探知し、オバマ政権に「中国の南シナ海における拡張政策にストップをかける諸対策を実施すべき」との進言を繰り返していた。しかしながら、中国との深刻な軋轢を何よりも恐れていたオバマ政権は、そうした提言に耳を貸そうとはしなかった。

2015年後半になって、かなり進展した人工島建設状況をCNNが実況して騒ぎになると、ようやくオバマ政権は中国に対する牽制作戦にしぶしぶゴーサインを出した。しかし、海軍が許可された「FONOP」(公海航行自由原則維持のための作戦)はあくまで中国側を過度に刺激しない限度に制限されたため、さしたる効果が期待できる代物ではなかった。

2016年にオバマ政権がアメリカ海軍に実施を許可したFONOPはわずか3回である。それらは、いずれも中国が実効支配中の島嶼・環礁に接近した海域を、国際法によって軍艦に与えられている無害通航権の範囲内で“平穏無事”に通過するだけの、中国にとっては痛くも痒くもないレベルのデモンストレーションに過ぎなかった。

(関連記事)

・第1回FONOP:2015年10月27日、南沙諸島スービ礁 (本コラム2015年11月5日「遅すぎた米国『FON作戦』がもたらした副作用」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45163

・第2回FONOP:2016年1月30日、西沙諸島トリトン島 (本コラム2016年2月4日「それでも日本はアメリカべったりなのか?」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45947、 3月31日「すでに地対艦ミサイルも配備されていた南シナ」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46469

・第3回FONOP:2016年5月10日、南沙諸島ファイアリークロス礁 (本コラム2016年5月19日「米軍の南シナ海航行で中国がますます優位になる理由」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46862

・第4回FONOP:2016年10月21日、西沙諸島ウッディー島、トリトン島 (本コラム2016年10月27日「オバマの腑抜けFONOP、“中国の”島に近づかず」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/48218

おまけにそれらのFONOPは、中国側にさらに次の行動を起こさせる副作用まで引き起こしてしまった。つまり中国側は、全く軍事的脅威など受けていないにもかかわらず、「アメリカ海軍が中国の領域に軍事的威圧を加えてきたため、中国の領域を守り、島嶼に居住する人民を保護するため」と称して、アメリカがFONOPを行った島嶼環礁やその周辺の人工島に地対艦ミサイル部隊や地対空ミサイル部隊を配備したのである。

このようにオバマ政権の“腰が引けたFONOP”は何の牽制効果ももたらさず、中国がせっせと南沙人工島や西沙諸島で進める軍事施設の充実を後押ししただけの結果に終わった。

トランプ新政権の海軍長官には、以前より南シナ海問題での対中強攻策を主張してきたフォーブス議員(あるいはフォーブス議員と同じ海軍戦略の唱道者の誰か)が就任するとみられる。したがって、南シナ海における中国の軍事的拡張政策に対するトランプ政権の態度が強硬なものとなることは間違いない。

とはいっても、すでに西沙諸島には立派な軍事拠点と政府機関それに商業漁業施設などが誕生している。また、7つの人工島でも軍事施設と民間施設の建設が完成の域に近づいており、スカボロー礁での中国の実効支配態勢も盤石になってきている。したがって、アメリカが中国にそれらの軍事施設や人工島からの撤収を迫ることは、かつて日本に対して満州からの総引き揚げを迫ったのと同様に、戦争を意味することになる。

そのため、いくら対中強硬派がトランプ政権の南シナ海政策を舵取りするとは言っても、アメリカ自身の領土が侵されているわけではない以上、対中軍事衝突といったような選択肢をとるわけにはいかない。なによりも、オバマ政権の8年間でアメリカの海洋戦力は大幅に弱体化してしまっているので、中国との戦闘を覚悟した対中強攻策などは全く論外のオプションである。

当面の間は、トランプ次期大統領が口にする「アメリカ第一」という標語の通り、中国の南シナ海侵攻戦略への対抗以前に、アメリカ自身の海洋戦力再興を推し進めることにプライオリティーが置かれることには疑いの余地はない。あくまでもアメリカの海洋戦力が強力になってから、次の一手が開始されるのだ。

もっとも、オバマ政権と違って、中国の侵略的海洋政策に断固として反対する立場を明示するために、より頻繁に、そしてやや強硬なFONOPを南シナ海で実施することになるであろう。

その際、日本にもFONOPの参加を(オバマ政権とは違って)強く求めてくる可能性が高い。なぜならば、2016年9月に稲田防衛大臣が米国の南シナ海でのFONOPを支持すると明言したからだ。そして何よりも、トランプ政権の考える日米同盟の強化とは、理念的な言葉の遊びではなく、日米双方が実質的に軍事力を出し合って、共通の目的を実現していくことを意味するからである。

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『「世界中の留学生の4人に1人」を占める中国人 8割が帰国も国内評価は低下、「再出国」希望が68%に』(1/6日経ビジネスオンライン 北村豊)について

中国が留学生の数を誇っても、祖国に何を齎すかです。留学生は自由でかつ民主主義の国に来て何を学ぶかです。自国と相対化して見る視点が必要と思います。共産主義なんて三権分立してないため、人権抑圧されるのが当然の「人類を不幸にするシステム」というのに気が付かなければ。「実事求是」の姿勢です。

まあ、中国人は「拝金教」ですから。天安門事件以降、中共の自由や民主化を求める人達に対する弾圧は陰に陽にあるから、誰も声を上げないようになり、金儲けに専念するようになりました。真理を求める心からは程遠いでしょう。海外留学を投資効率の観点で見れば、今中国から出て留学するのは、外国の労働市場と中国の労働市場とも飽和状態にあって、リターンが見込めないといったところでしょうか。中国経済の崩壊が囁かれる中、中国でのビジネスを考えて中国人を雇ってきた外国企業も採用を手控えるし、米国が中国封じ込め政策を採れば、中国人は解雇されるでしょう。労働ビザが抹消されて、中国に帰らざるを得ず、それが益々中国の労働市場の競争を激化させるのでは。

中国国内の大学院に入っても、自由のない国の研究施設では、それほど成果が上がるとは思えません。欧米日の情報を取るくらいでしょう。ただ、軍事に関する研究は軍事国家ですので、予算もふんだんに取れ、やりたいことができるのでは。

問題は日本です。反日教育で育った人間が日本に来れば、彼らの見方が変わるかと言うとそんなことはありません。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」といった価値観を持つ人たちですから。日本の先端技術を大学や企業の研究室に入り盗み取ろうとしますし(日本の大学は余りに無防備すぎます)、中国人教師が大学で中共の都合の良いことを教える構図になっています。単位を取るためには教授の意見に従わざるを得ないというのもありますが、こういう中国人を教授として雇っている大学も大学です。日中が尖閣で戦闘状態になった時に、日本に居る中国人がどういう行動を取るのか。国防動員法で、外国にいる中国人は必ず中国政府の命令に従うことになっています。逆らえば大陸内に居る親戚に危害が及ぶでしょう。中国人の爆買い(もう終わったとも言われていますが)などで喜んでいる場合ではありません。昨日のTV「報道2001」で石平氏は「尖閣で事が起こる可能性は高い。中国は尖閣だけでなく沖縄も取ろうとしている」と言っていました。以前福島香織氏も「憲法上の制約があることを知っている中国は南シナ海より尖閣を狙って来るのでは」と書いていたと思います。まあ、中国が尖閣を攻めてくれば、憲法改正のパンドラの箱を開けることに繋がるでしょう。自衛隊を軍隊にするという事です。三島由紀夫が主張して死んだものです。三島の先見性と感性の偉大さです。なお、徴兵制とは無関係ですが、左翼はそう嘘を言って反対するでしょうけど。左翼の好きな中国は巨大な人民解放軍を持っているというのに。論理矛盾、自家撞着を分かっていても愚民は騙せると思っているのでしょう。朝日新聞を筆頭とする左翼メデイアに騙されないように。

https://matome.naver.jp/odai/2146871824475813701

http://dwellerinkashiwa.net/?p=5467

記事

飲食店やコンビニなど、日本の至る所でアルバイトに励む中国人留学生を目にする機会はすこぶる多い。独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)が2016年3月に発表した『平成27年度外国人留学生在籍状況調査結果』によれば、2015年(平成27年)に日本に滞在した外国人留学生の総数が20万8379人であるのに対して、中国人留学生は9万4111人で、実に全体の45.2%を占め、国別で第1位となっている。第2位のベトナム人留学生が3万8882人で18.2%であるから、中国人留学生の多さは突出している。

中国人留学生126万人、私費が9割

12月12日に“中国社会科学院文献出版社”から出版された『中国留学発展報告(2016)』によれば、2015年に中国は海外留学生が最も多い国になったという。同書は“中国与全球化智庫(中国グローバル化研究センター、略称:CCG)”が、2015年における中国の海外留学の動向を研究した結果を取りまとめた報告書である。報告書の要点は以下の通り。

【1】2015年における中国の海外留学生は126万人で、全世界の海外留学生総数の25%を占めた。これは、世界中の海外留学生の4人に1人が中国からの留学生であることを意味する。一方、2015年における中国で留学中の海外留学生は39.76万人で、全世界の海外留学生総数の8%を占めた。また、2015年に米国に留学中の海外留学生は120万人で、全世界の海外留学生総数の24%を占めた。2014年から2015年の修学期間中に米国から海外へ留学した学生は32万人前後で世界の海外留学生総数の6%を占めた。

【2】2015年までのところ、中国は米国、カナダ、オーストラリアなど英語圏の諸国にとって留学生の最大供給源であると同時に、日本、韓国、シンガポールなどの中国語文化圏の諸国にとっても留学生の最大供給源である。統計によれば、中国の留学生が米国とカナダ両国の留学生総数に占める比率は30%を超えている。

【3】日本、韓国、シンガポールを代表とする中国語の影響を受けている諸国においても、中国の留学生は留学生総数の最多を占めている。韓国を例に挙げると、2015年において韓国に留学している中国の留学生は留学生総数の62%を占めている。

【4】留学費用を誰が負担しているかという観点から見ると、2015年における中国の国家および機関・団体から派遣された公費留学生が4.19万人であるのに対して、私費留学生は48.18万人に上り、私費留学の比率は92%に達している。私費留学の比率は、2001年から常に89%以上を維持しており、最近5年間ではずっと92%を保っている。これは中国において留学がますます一般的なものとなり、庶民でも留学が可能になったことを意味している。

2016年3月16日付で中国政府“教育部”が発表した「2015年中国の海外留学生状況」には以下の内容が記されている。

留学生は年々増加、約8割が帰国

(1)2015年に中国から出国した留学生の総数は52.37万人であり、その内訳は、国家による公費留学生:2.59万人、機関・団体による公費留学生:1.60万人、私費留学生:48.18万人であった。一方、2015年に各種の海外留学から帰国した人の総数は40.91万人であり、その内訳は、国家による公費留学生:2.11万人、機関・団体による公費留学生:1.42万人、私費留学生:37.38万人であった。

(2)2015年と2014年の統計データを比較すると、中国から出国した留学生と海外留学から帰国した人の数は共に増加している。出国した留学生の人数は6.39万人増加し、13.9%増大した。海外留学から帰国した人は4.43万人増加し、12.1%増大した。出国した留学生数と海外留学から帰国した人の数は年を追うごとに増大を続けており、両者の差は徐々に縮小している。年間の出国留学生:帰国者の比率は、2006年の3.15:1から2015年の1.28:1へと大幅に縮小している。

(3)1978年から2015年末まで期間における各種の出国留学生数の累計は404.21万人であった。その内、126.43万人は現在も海外で学習や研究を行っている。残りの277.78万人はすでに学業を終了しており、その内の221.86万人が帰国を選択したが、彼らの比率は79.87%に達している。

上述した2つの資料から分かるのは、2015年時点で126万人の中国人の学生が世界各国に留学しており、毎年出国して海外留学する学生は増大を続けていること、さらに海外留学を終えて帰国する人数も同様に増大していることである。海外留学を終えた約280万人の内で帰国を選択した人が約222万人で、その比率は約80%に達している事実である。本来ならば留学先の国に残りたかった人々も、昨今の経済状況悪化により世界各国で就労ビザの取得が厳しくなっていることから、留学先の国に残留したくともかなわず、帰国を余儀なくされたことも帰国者の増大を促しているものと思われる。

2016年3月に教育部が発表した『“中国留学回国就業藍皮書(中国留学帰国就業白書)”』には、海外留学した人の79.87%が帰国して就業することを選択したとして、彼ら“海帰”あるいは“海亀”<注1>と略称で呼ばれる“海外留学帰来人員(海外留学から帰った人)”の就業状況に関する調査結果がまとめられている。その要点は下記の通り。なお、海外留学帰国者を以下「海亀」と呼ぶ。

<注1>中国語の“帰”と“亀”は共に発音がguiであることから、海外留学帰国者を“海亀”と呼ぶようになった。海外留学帰国者のグループを“海亀族”と呼ぶこともある。

都市部での雇用厳しく、故郷に戻る人が増加

〔1〕4大都市である北京市、上海市、広東省の“広州市”および“深圳市”で雇用の吸引力が低下したことから、実家のある故郷へ戻って働きたいと考える海亀が徐々に増加している。

〔2〕博士号を持つ海亀の月給は主として5000元(約8万4000円)から1万元(約16万8000円)に集中しており、5割近い修士号を持つ海亀の月給は5000元に達していない。2013年に比べて、博士を除いて、海外の学士や修士を持ちながら月給が低い人の数は著しく増大しており、労働市場における海亀に対する評価は低下しつつある。

〔3〕2014年における海亀就業者の男女比率は女性が男性よりも高く、59.16%を占めた。また、学歴別では、修士および修士課程:80.70%、博士:9.49%、大学および専門学校:9.81%であった。

〔4〕専門別に見ると、博士号を持つグループの専門は、主として化学、“材料(建築・土木)”、経済学、電子および電気工学、機械工学、計算機である。これに対して、修士号および修士課程の学歴を持つグループの専門は、主として金融、会計、“工商管理(経営学)”、“国際商務(国際貿易)”、管理学である。大学および専門学校の学歴を持つグループの専門は、修士号および修士課程の学歴を持つグループに近く、主として“工商管理”、経済学、会計などである。

教育部“留学服務中心回国処(留学サービスセンター帰国部)”の“副処長(副部長)”である“斉黙”によれば、海外留学生の帰国比率は上昇を続けているが、その主たる要因は中国国内の発展が吸引力を高めていることにあるという。女性の海亀が比較的多いのは、主として女性には海外での求職、戸籍、個人的な問題などの解決が相対的に困難であることに起因している。

ところで、上記〔2〕に述べたように海外留学から帰国して中国国内で就職した海亀たちの月給の平均は、1万元に到達していないばかりか、5割近い修士が5000元に達していないという。かつて海外留学から帰国した海亀たちは貴重な人材として国内企業から引く手あまたの状態で、就職の条件として通常の給料の倍額が約束されたものだった。ところが、数年前から海外留学生が続々と帰国するようになったことから、海亀たちが職を求めて中国国内の人材市場に大挙して集まるようになった。2016年11月16日付で経済ウェブサイトの“財経網(ネット)”が報じたところによれば、上海市の某金融会社の“人力資源経理(人事課長)”である“張卓婭”は、「3~4年前は求職の履歴書を100部受け取ると、そのうち5~6部が海亀の履歴書だったが、今では100部中の20部が海亀の履歴書である」と述べている。

2016年8月3日に上述の「中国グローバル化研究センター」と「北京海威時代教育コンサルティング」が共同で発表した『“2016中国海帰就業調査報告”』によれば、海亀820人(70%が女性、26~35歳が主体)を対象とした調査では、60%超が目下は“基層員工(平社員)”であり、“高層管理人員(上級管理職)は4.7%、“基層管理人員(下級管理職)”は22.4%、“中層管理人員(中級管理職)”は11.2%であった。また、同報告によれば、調査対象者の収入は、5000元(約8万4000円)から1万元(約16万8000円)が46.9%を占め、1万5000元(約25万2000円)以上が11.3%、1万元から1万5000元が16.6%であり、残りの25.2%は5000元以下であった。

68%が“再帰海”を希望

海亀たちが海外へ留学したのは、外国語の水準を高め、海外の大学や大学院で学ぶことにより博士号や修士号、学士号を取得して箔を付けると同時に、中国国内では習得できない専門性を身に付けるためであった。また、たとえ公費留学生であっても、あわよくば中国国内よりも高給が取れる海外で就職することを心密かに念願していたはずである。しかし、その願いがかなわぬまま帰国した後の現実は、国内の大学卒業生や博士、修士と比べて就職の待遇に大差がなかった。公費留学生は別として、私費留学生は一体何のために高額な費用を負担して海外へ留学したのかという失望感にさいなまれているのが実情である。

文頭の述べた『中国留学発展報告(2016)』によれば、調査対象となった918人の海亀中の68%は“再帰海(再び海外へ戻る)”の願望を抱いているというが、その主たる理由は以下の通り。

・国内の環境汚染が深刻だから(37.8%)  ・国内の給料が低すぎる(28.5%)  ・満足行く仕事が見つからない(26%)  ・食品安全の問題があるから(24.5%)  ・子女に国内で教育を受けさせたくないから(24.5%)  ・住宅価格が高くて買えないから(22.9%)  ・人間関係に適応できないから(19.7%)  ・国内が海亀を受け入れようとしないから(16.2%)

同報告は“再帰海”を希望する海亀たちには共通の特性があると述べているが、それは次の通りである。すなわち、彼らの大部分は地方の中小都市出身で、外国語能力が高く、海外に対し一定の適応力を持ち、帰国前に海外で働いた経験を持っている。彼らは帰国した後に国内より海外の方が発展の可能性が高いことを発見すると同時に、種々の客観的要因から自分が満足行く発展を考えるなら、再度出国して海外で暮らすことを選択している。

ところで、2016年には770万人以上の大学卒業生が就職市場に流入した。これに海外留学から帰国した海亀が約50万人、さらに2015年以前に大学を卒業した就職浪人が加わり、一説には総計1300万人が就職戦線で熾烈な就職活動を展開したと言われる。当然ながら、国内の就職戦線の状況を熟知していない海亀たちは求職活動で苦戦を強いられた。『中国留学発展報告(2016)』によれば、85.9%の海亀が求職活動を始めてから半年以内に就職を果たしたというが、これは2013年の86.4%に比べて若干低下している。その内、1か月以内に就職できた人は3分の1以上、3か月以内は31.6%であったが、これらの合計約65%は2013年の65.3%よりも低下していた。

海亀たちが就職を果たすまでの時間が2013年よりも長引いた原因は、雇用する企業側がコスト削減のため求人条件を引き下げたことで、それが海亀たちには不利に働いた。また、海亀たちの仕事に対する要求が高すぎたこと、さらに海亀たちの大部分は家庭環境が良いために就職を焦る必要がなかったことも大きな要因となったと考えられる。

「国内で大学院」にシフトか

2016年12月24日、中国では“2017年全国碩士研究生招生考試(2017年全国修士課程大学院入学試験)”(以下「大学院入試」)が行われ、201万人が受験した。2004年にわずか94.5万人であった大学院入試の受験生は、2005年(117.2万人)に100万人を突破してから年々増加の一途をたどり、2013年には176万人に達した。その後2年間は減少に転じたが、2016年は177万人と過去最高を記録した。今回は2016年より24万人増大して最高記録を塗り替えた。2016年大学院入試では51.7万人が合格しているので、2017年の合格者も50万人程度と考えられる。

201万人もの受験生が大学院入試に殺到した理由は何なのか。中国では今や大学を卒業した学士の肩書では良い就職を望むことは困難である。それなら箔をつけるために海外へ留学することも一つの方法だが、今や海亀は中国国内に溢れる状況になっており、大金を費やして海外へ留学しても帰国後に就職で有利な待遇を受けられる訳ではない。それなら、中国国内で大学院へ進み、修士号や博士号を取得して就職で優位に立つ方が良いという論理になるのかもしれない。

平成28年(2016年)3月31日に文部省が発表した2013年統計による日本人の海外留学者数は5万5350人であった。それにしても、中国の海外留学者数126万人との差は大きい。中国の人口を日本の10倍と仮定して、5万5350人を10倍しても55万3500人にしかならず、中国の海外留学者数の半分にも及ばない。日本の青年たちには、快適安全な日本国内に安住せず、意を決して海外へ留学し、語学を学び、世界を知って大いに飛躍して欲しいものである。

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『中国の脅威に怯まず、日本の国力を増強する年に 日中対立激化の「凶」を、「吉」に転じる逞しさを持て』(1/1日経ビジネスオンライン 福島香織)について

1/5中国観察<中國“二孩”正跨過大洋 朝着美國滾滾而來(圖)(中国の「子供二人まで可」政策は太平洋を跨いで米国に向けてドンドン出て行く)

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中國人為什麼來美生子?(網絡圖片(中国人は何故米国で子供を産むのか)

據台灣媒體報道,2014年大陸來美生子近3萬人次,2015年,來美生子人數已高達6萬人,以一線城市和沿海省份為主。2016年大陸來美生子人數保守估計超過8萬人次。大陸全面開放二胎以來,2017年的二胎生育潮,將持續炒熱“來美國生孩子”現象,生育潮也將使來美生子費用上漲。美國一些接受現金的非法月子中心、中國助產師、司機和醫生產業,將再次滋生。

2015年,美國對非法月子中心進行了號稱“三月掃蕩”的行動。但是,當時的案件辯護律師說掃蕩月子中心的行動簡直“虎頭無尾”,不但沒有一個月子中心的業主或孕婦被控有罪,就連聯邦檢察官也悄無聲息。這種“虎頭無尾”的結果導致“月子中心”春風吹又生,又一波的孕婦浪潮開始從中國滾滾而來。

但是,月子中心長久盛行的原因,其實更應該追問源頭,中國人為什麼來美生子?

中國最大網絡問答社區知乎網上,也有問題是《為什麼很多人赴美生子?》,其中,點贊最多的答案似乎代表了許多中國家長的心聲。

名為Long Yu的網友,在介紹中說,自己在美學習工作創業十餘年。他認為,許多中國家長來美生子主要有如下心理:(中国人の多くの親の米国で子供を産みたいと思う心理は以下の通り)

1、享受美國13年義務教育。就讀小學到高中完全免費。(米国で13年に亘る義務教育を受けられる。小、中、高と完全にタダ)

2、美國籍寶寶讀大學、研究所學費只要外國學生的10%,而且容易進入知名大學。僅僅四年本科學費就可為您節省上百萬。(米国籍を持てば、なんと外国の留学生の10%の学費で大学や大学院に行け、且つ有名大学に進学でき、4年間の大学生活で学費が100万$?節約できる)

3、在加州,即使沒錢看病,也可享受全面醫療保障,不用擔心被從醫院扔出來(カリフォルニアでは金がなく病院に行っても、全面的な医療保険を受けることができ、病院からつまみ出される心配はしなくても良い)

4、未來可以申請美國公民才能享有的獎學金,1%低利率助學貸款。比起多數自費來美就讀的外國學生,可以節省幾十上百萬人民幣(将来、米国民の申請をして、やっと奨学金を貰えるようになる。1%の低利融資が受けられる。多くの外国学生は私費留学だが、数十百万元を節約できる)

5、未來無條件留在高收入的美國工作(2008年美國人均收入37,363美元,數據來自IMF),可以優先擔任美國政府、公家單位及大型企業重要領導崗位。許多關鍵職位,如官方軍務,國防外交,高科技和核心實驗室,嚴格限於公民。像警察等很多普通職務也是公民優先。(将来無条件で米国での高給の仕事に就ける。(2008年の米国人の平均年収は37363$。IMF調べ)米国政府、公益団体、大企業の指導者の地位に優先的に任用される。多くの指導的立場、例えば軍務、国防・外交、ハイテク・コアラボ勤務は米国民に厳格に制限されている。警察等普通の仕事も米国民が優先される)

6、未來享受全球180多個邦交國入境免簽證和最優惠出入境便利。(将来、世界180国とビザ免除や優先的に入国できて便利である)

7、未來擁有美國社會安全卡、享有美國各種社會福利措施及醫療設備,年老時可領取養老金,包括人在海外。住低價高質量老人公寓。(将来社会保障カードを取れれば米国の福利制度や医療を受けることができ、海外に住んでいても年をとると年金が貰える。安い家賃で質の良い老人マンションに住める)

8、其它國家政局不穩或動蕩時,即使航空封鎖,美國公民也可以在美國政府的保護之下,享有優先搭機離開的權利。(そのほか、国の政情不安や不穏の場合、たとえ空港封鎖になっても、米国人は米国政府の保護下にあり、優先搭乗の権利を持つ)

但要知道的是,不論中國家長來美產子是因為對本國條件的不滿,還是想要不一樣的生活。來美生子本身不違法,違法的是“黑月子中心”。

《華爾街日報》援引美國前移民官杜正宇的話稱,海外孕婦不是聯邦調查的重點,“來美生子本身並不違法。只要他們是通過誠實的手段獲得美國入境的許可,也沒有詐欺美國納稅人錢財。”

“在美國,正規的月子中心必須滿足,首先是具有營業執照、餐飲業資質,包括接送孕婦的司機、月嫂等務工人員的‘工卡’。其次,是經營的場所必須是商業性的,不能是民宅。正是如此絕大多數的DIY—個人來美產子—選擇的民居都是非法的。最後就是,經營的過程中,必須嚴格納稅,不能誘導來美產子的孕婦們申請美國的相關福利。”總部在上海的的一家機構的專業人士明確指出。

《時代周報》報道稱,月子中心黑中介不僅涉嫌簽證欺詐、偷漏稅,赴美生子的孕婦當中,有不少人都申請了美國低保福利,而且其中一部分還是由月子中心老闆背着孕婦申請的。這部分孕婦不給美國政府納稅,卻要享受美國福利。這些黑心中介“兩頭吃”(納税せず米国福利制度を受給できる),既矇騙中國人,又謀取暴利,美國政府當然不能容忍,被查是必然。(中国人を騙して暴利を貪るのは、当然米国政府は認めない。必ずや捜査される)。尤其是申請白卡這種行為尤其激起美國人的反感。在他們眼中,來美國產子的幾乎都是中國的富人,怎麼還能佔用美國的公共福利呢?(米国人から見れば米国に来て子供を産む中国人は金持ちなのに、どうして米国の福利制度を受けようとするのか?)【看中國2017年1月5日訊】>(以上)

トランプ大統領になれば、上記のような産後ケアセンターのようなものは閉鎖されるかも知れません。旅行者の米国出産で生まれた子供に米国籍を与える制度も、一定期間米国在住を要件にするよう改められるかも知れません。或は1924年の排日移民法案のように、出身国別で割当するようになるかもしれません。

出産ツアーは中国の得意な人口侵略です。日本も何も規制が無ければ、中国と戦争になった場合、在日中国人が騒乱を起こすかもしれません。憲法改正の前に、スパイ防止法を成立させ、秩序・安寧破壊について厳罰に処すような法案を作るべきです。また、医療保険や年金保険も受給範囲を良く調べないと。中国に住み、高い医療を被扶養者として日本の健康保険を使って受けているという話も聞きます。厚労省の役人はキチンと調査をしてほしい。

http://familyoffice.hatenablog.com/entry/20150328/1427551220

韓国に対して、一昨日やっと日本政府は厳しい措置を打ち出しました。中国にも主張すべきは主張しなければ。「南京」や「慰安婦」の嘘や、「尖閣」の領土の正統性について世界にアピールしていく必要があります。それと、中韓には『非中・非韓三原則』で臨むべきです。中国も外貨準備が底を突きそうで、翌日物短期金利が100%超となった記事を一昨日日経で読みました。大変困っているようで、日本がAIIBに入っていなくて正解です。通貨スワップで中韓を経済的に助けないように。助ければ、戦争の為の軍事力拡大に手を貸すことになります。戦争をしたく無ければ助けないことです。反日教育をずっとやってきた国で、日本人は殺した方が良いと思っている連中です。

記事

2017年、中国では習近平政権が二期目に突入する第19回党大会が秋に予定されている。米国はトランプ政権が誕生、ともに軍拡路線をほのめかしており、米中新冷戦構造ともいうべき緊張関係が高まりそうだ。外交的にも地政学的にもその米中のはざまにある日本は、ではどうなるだろうか。日中関係について、目下、どのような予想があるかを見てみたい。

日米との対立をテコに国内団結を目論む中国

2016年12月23日に山東大学で開かれた報告会では、中国社会科学院日本研究所の党委書記で所長の高洪が「目下の中日関係の主要な問題と展望」というタイトルで報告を行った。それによると、日中関係には三つの大きな問題をめぐる曲折によって調整局面にあり、闘争と協力が並存する“ニューノーマル”時代に入る、という。

その三つの大きな問題とは、①靖国神社など歴史認識問題②海洋覇権戦略および尖閣(中国語では釣島魚)問題③東シナ海・南シナ海・台湾海峡の“三海聯動”が引き起こす海洋軍事安全問題。この三大問題で、日中関係は対立が先鋭化、緊張時代に入る、としている。

同時に、日本との文化、経済、科学技術、軍事などのソフトパワー競争が、中国の科学技術文化ソフトパワーのレベルアップにつながり、習近平が目指す「二つの百年」の努力目標(建党100年の2021年に所得倍増を実現、建国100年の2049年に社会主義現代国家建設を実現)の達成、最終的には中華民族の偉大なる復興という夢の実現に貢献してくれる、ともいう。

一言でいうと、日本との対立の先鋭化は中国としては国内のソフトパワー強化の原動力となり歓迎している、というわけだ。中国が今、日本に求める役割は戦略的パートナーであることよりも戦略的ライバルなのだ。

これは、米国に対しても、同様の姿勢であり、対中強硬姿勢を明らかにしてきたトランプ政権に対しては、不安がるよりも、愛国心の鼓舞や、大国としての自信を深めるための宣伝にポジティブに利用していこうとしている。

少なくとも中央メディアの報道ぶりはそういう印象である。外敵としての米国を国内でアピールすることによって、習近平政権が今直面している内政的問題、経済の急減速による失業者増、社会不安定化、急激な軍制改革による軍内の不満増大、あるいは反腐敗キャンペーンを建前にした権力闘争の激化による党内分裂といった国内リスクから、人民の目を逸らし、党内の求心力を回復し、国内団結につなげたいのではないか。実際、習近平政権にとっては外交以上に内政の不安定化がアキレス腱だろう。

日本に関していえば、中国の官僚たちの間では、もともと「日本北京ダック説」という言い回しがあるそうだ。北京ダックは一匹のアヒルを三度違う食べ方で楽しめる。皮は味噌とネギで餅(ビン)に巻いて食べ、肉はもやしと炒めて食べ、骨はスープにする。

日本は「三度おいしい北京ダック」

同様に、日本も北京ダックのように三度おいしい。歴史問題を持ち出せば共産党の執政党としての正当性を補強でき、領土問題を持ち出せば愛国心によって党内・国内が団結できる。経済が悪化すれば、真っ先に経済・技術協力を申し出てくれるのは日本。北京ダックのように無駄なく利用し尽くせる国、それが日本だ。

ここにきて、さらに日本というライバルを意識することで、自らのソフトパワーに磨きをかけ、軍拡の原動力にも利用できるという“四度目の食べ方”を発見した、ということだろう。

こうした、現在の習近平政権の思考を考えると、少なくとも日中の対立関係が緩和していくとは考えにくく、またその必要性をおそらく安倍晋三政権側も感じていないだろう。日本側も中国と同様、中国の脅威を実感することで、長年放置されていた安全保障や国防問題、憲法問題の議論を推進したいところではないか。

では、具体的に日中間でどんな問題、事件が発生しやすいか。

まず、2017年は日中戦争80年目という節目であることから、中国も対日歴史情報戦にさらに力を入れてくるだろう。中国が民間人30万人を虐殺されたと主張する「南京大虐殺事件」のさらなる政治利用、第二次大戦中の華人労務者強制連行問題における賠償金請求裁判の活発化、慰安婦問題のアピールや戦時流出の骨董・歴史文物の返還運動などが盛り上がるかもしれない。

さらに言えば、領土問題、三海(東シナ海、南シナ海、台湾海峡)問題は、トランプ・蔡英文の米台トップ直接電話会談の実現や、トランプの「なぜ一つの中国の原則に縛られなければならないのか」発言によって、急激な緊張感の上昇をみている。

三海は中国の海洋覇権戦略の要であり、米国や台湾だけでなく日本の安全保障にも直接的な影響を与える。12月中旬に北京で行われたシンポジウムで、元南京軍区副指令の退役中将・王洪光が発言したように、建党100年の2021年までには台湾を武力統一して、この三海から米軍を排除したいという目標を隠さなくなってきた。このことから考えても、習近平政権の今後を占う党大会の前後にこの三海のいずれかで、中国側が軍事的挑発を急激にエスカレートさせてくる可能性はゼロではなかろう。実際、年末の空母・遼寧の南シナ海入りなども一つのシグナルだ。

ただ、私は、中国が一番安心して挑発しやすい相手は日本ではないかと考えている。なぜなら、日本にはれっきとした国防軍はまだなく交戦権もなく、2016年の尖閣諸島海域での海警船と漁船による領海侵入にしても、日中戦闘機の異常接近事件や“妨害弾”(フレア)発射事件などを振り返っても、挑発に対しては非常に忍耐強い。

中国とて実際に流血の軍事衝突を演じる余裕は、党大会という政治の季節を直近に控えてはまだなく、しかし挑発をし続けることで、習近平政権の対外強硬姿勢をアピールすることは権力闘争上必要である。これが米国相手だと、挑発合戦は一気にキューバ危機レベルにまで発展しかねない。

また尖閣諸島については、施政権返還半世紀を迎える2022年を前に、日本の実効支配の現状を崩し、国際社会に日中紛争海域であるというアピールをしたいところでもあろう。実効支配が半世紀以上続くと、その領有権主張は国際社会において圧倒的に説得力を持つようになる。習近平政権としてはその前に、紛争状態にしておきたいはずだ。

いずれにしろ、内政的に行き詰まったときに、政権の正当性アピール、国内の愛国意識の発揚のために日本をいじるのは常套手段だ。

「政冷文熱」時代へ

しかしながら、日本製アニメ映画「君の名は。」の社会現象的ヒットや日本旅行人気など依然、中国は日本の文化的コンテンツの根強い影響力を受けており、一般中国人の少なからぬ割合が、決して日本のすべてを敵視しているというわけでもない。

完全に手下であるとみくびっていた韓国がTHAADミサイル配備を決め、中国共産党の怒りを買って以降、韓流コンテンツが中国市場から排除され、またトランプ政権の挑発的言動で一般中国人の反米感情も高まるとなると、挑発に挑発で応酬しない日本人や日本文化コンテンツは、韓流やハリウッドよりも政治的に安心して(つまり支持しても反党的と批判されない)受け取りやすいものとして歓迎されるかもしれない。

中国当局側も、文化侵略として徹底排除するよりも、その優秀さに対する競争心をあおることで自国のソフトパワー発展の原動力に変えていきたいというならば、政治・外交上の緊張感と密な文化的人的交流が並存する政冷経熱ならぬ政冷文熱時代という可能性もあろう。

仮に世界秩序がこの数年内に大きく変化して米中新冷戦時代に突入するならば、日本も中国の脅威に怯えるだけでなく、その脅威を自国のソフトパワーや軍事・経済を含む国力の増強に利用していく逞しさが必要かもしれない。

吉凶で言うなら、米中対立や対日攻撃の激化は「凶」。しかしそれをテコに、日本が強かに力を蓄えられれば「吉」に転じる、と見る。

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『2017年、日本が問われる「韓国の見捨て方」 反米・反日の加速は「凶」だが、「中吉」への努力惜しむな』(1/1日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

本記事の表題が良いですね。「日本が問われる「韓国の見捨て方」」と。ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマンが演じた映画『最高の人生の見つけ方』ならぬ「見捨て方」ですから。福沢諭吉の脱亜論と同じ論調になってきました。「悪友は謝絶すべし」と。小生は、今まで何の手も打たず、反日活動を許して来た日本が悪いと思います。敵のハニーやら賄賂攻勢にしてやられて来たのでしょう。政官財、特にメデイアにも。でも“better late than never” でしょう。今年は韓国で大統領弾劾の為、遅くとも8月には大統領選の可能性があり、北の影響が強くなる南の政治に対して、これからの日本の対応が大切になります。

1/5ZAKZAKでは<17年、韓国どう動く 迫る経済危機、止まない政争 だれが大統領になっても鎮痛剤は「激烈な反日」

隣に位置する反日国家・韓国の2017年はどう展開するのだろうか。経済が落ち込む中で、政争は続く。左翼政権の誕生が早いか、決定的な経済危機が早いかの競争かもしれない。  大きなポイントは、憲法裁判所が大統領弾劾にどんな審判を下すかだ。「弾劾決定」となれば、2カ月後には大統領選がある。それまでに「共に民主党」(以下、民主党とする)は大統領候補を決定する。  前回選挙で、朴槿恵(パク・クネ)氏に惜敗した文在寅(ムン・ジェイン)氏が組織を押さえているので最有力だが、「韓国のトランプ」と異名を取る李在明(イ・ジェミョン)城南市長もあなどれない。世論調査で「李氏先行」となれば、民主党分裂もあり得る。潘基文(パン・ギムン)前国連事務総長との三つどもえの選挙になる。  ただ、文、李両氏とも「従北派」だ。北朝鮮の秘密指令があれば、きっと一本化するだろう。  憲法裁判所が棄却、すなわち「弾劾に値せず」の審判を出したら…。文氏は「棄却なら革命しかない」と語っている。  しかし、棄却と同時に、朴「大統領」が復活する。革命行動が過激化したら「戒厳令」だろう。「革命」を煽った野党幹部は「内乱(陰謀)罪」になる。  棄却でも朴氏が「道義的責任」を表明して「早期退陣」する選択もある。その場合、初夏の大統領選になる可能性が高い。保守派はいくらか息を吹き返し、表には出ない形で潘氏の支援に回るだろう。  だれが大統領になろうと、政権引き継ぎ作業は大混乱だ。それまで経済危機が待ってくれるかどうか。しかも3人の有力候補とも「経済音痴」だ。

経済危機の引き金は、(1)米金利の上昇に伴う資本流出を避けるために国内金利を上げて、庶民層の住宅ローンがパンクする(2)住宅ローンを中心とする国内家計負債をパンクさせないため低金利を維持して、外資の流出を招く(3)不動産バブルが崩壊し、企業も庶民も追加担保を出せず、大破産時代に突入する(4)国策銀行の資金繰りがつかなくなり、国際通貨基金(IMF)に救済を求める-などのパターンが想定される。

実質所得は15年第3四半期(7~9月)以降、5四半期連続で減少している。16年末も企業活動は内需不振で縮小したから、おそらく6四半期連続の減少だろう。

そうしたなか、聯合ニュースは昨年12月25日、「カップ麺全盛時代 売り上げ伸びる」との記事を配信した。すでに国民1人当たり、年に70食以上も食べているのに「最近の好調は異例」だと。

「プレミアム製品が相次いで発売されたことで、『小腹がすいたときに食べるもの』というカップ麺に対するイメージが変わった」と“景気が良さそう”な印象を与える。だが、プレミアム製品の価格は1000ウォン(約97円)だ。若年失業者を中心にカップ麺を主食にせざるを得ない層が増えているのではなかろうか。

ヘル・コリアの不満を、どんな手法で緩和するのか。「激烈な反日」が手っ取り早い鎮痛剤であることは、新政権になっても変わらない。

■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に「韓国人の経済学」(ダイヤモンド社)、「悪韓論」(新潮新書)、「呆韓論」(産経新聞出版)、「ディス・イズ・コリア」(同)などがある。>(以上)

1/4CNN<在韓米軍、沖縄へ家族脱出の避難訓練 北朝鮮の侵攻に備え 

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朝鮮半島有事に備え、在韓米軍の家族など60人が避難訓練に参加した=米軍提供

ソウル(CNN) 韓国・ソウルにある龍山米軍基地。冷たい冬空の下、家族連れが集まって雑談したりコーヒーで体を温めたりしている。北朝鮮が韓国に侵攻した事態を想定しての避難訓練とは思えない光景だ。

「実際には全員がマスクをして走り回り、至る所で混乱が起きて、もっと恐ろしいことになるだろう」。2人の子を持つ母親のニコール・マルティネスさんは言う。

ニコールさんはソウルの米軍基地で夫のニックさんと出会って9年前に結婚。今回は6歳と8歳になった娘を連れて、韓国から沖縄へ脱出する避難訓練に参加した。CNN取材班はマルティネスさん一家に同行取材した。

北朝鮮の脅威はかつてなく高まっている。昨年9月には5回目の核実験を実施し、国際社会から非難され、制裁を科されても核開発を止める気配はない。金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は年頭の演説で、近いうちに大陸間弾道ミサイルの実験を行うと表明した。

米軍で避難計画を担当する非戦闘員のジャスティン・スターンさんは、「相手は我々を敵だと公言した」「北朝鮮の言動を考えると、最悪の事態に備える必要がある」と語る。

韓国から沖縄まで到達する避難訓練は2010年以来。今回は関係者の自由意思で米兵の家族など60人が参加した。米兵の家族は常に避難用の荷物をまとめておくことが奨励されているといい、「寝袋と缶詰を詰めたダッフルバッグを常に用意している」とニコールさん。

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生物テロ対策で用意されたマスクを身に着けるマルティネスさんの娘のブリアンナちゃん

持ち出せる私物は1人当たり60ポンド(約27キロ)まで。避難訓練の参加者には居場所を把握するための腕輪が配られて保安検査が行われ、登録の過程では生物テロから最大で12時間身を守れる防護服の装着訓練も行われる。連れて行きたいペットを登録することもできる。

登録を済ませた一行は、ソウルから車で約1時間かけて南部平沢市のハンフリーズ基地へ移動。そこで待機していた軍用ヘリ2機に乗り換える。

ただし実際に非戦闘員を韓国から避難させる事態になれば、何万人もの民間人を5~7日かけて移動させる必要があり、「列車やバス、民間交通機関の方がはるかに効率的だ」と軍幹部は話す。

避難訓練には避難手順を体験してもらうだけでなく、軍が家族の安全を保証することで韓国に残って危機対応に当たる兵士たちを安心させる目的もあるという。実際に避難する事態になれば、日本から米国まで家族を送り届ける。

一行はヘリで大邱にあるウォーカー米軍基地に到着し、そこで夕食を済ませて軍の宿舎に宿泊。翌朝は5時に起床して車で山間部を通って韓国空軍の基地へ行き、米空軍の輸送機に乗り換えて最終目的地の沖縄へ向けて出発した。

無事沖縄に到着した子どもたちは、未知の世界への探検気分で興奮した様子だった。ニコールさんは、非常時の避難がどんな風に感じられるかを実際に体験できたと評価。万が一の時に所持品をすべて韓国に残してくることは苦にならないといい、「最も大事なのは娘たちを安全に避難させること」と強調する。ただ、「夫を残して来なければならないと考えると一番つらい」と打ち明けた。>(以上)

1/6産経ニュース<韓国・釜山の慰安婦像設置に政府が対抗措置 駐韓国日本大使ら一時帰国へ

菅義偉官房長官は6日午前の記者会見で、年末に韓国・釜山の日本総領事館前に慰安婦像が設置された国際法違反行為への当面の対抗措置として、(1)長嶺安政・駐韓日本大使と森本康敬・在釜山日本総領事の一時帰国(2)日韓通貨交換(スワップ)の取り決め協議の中断(3)日韓ハイレベル経済協議の延期(4)在釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合わせ-の4項目を発表した。

菅氏によると、米ワシントンでの日米韓3カ国の外務次官協議に先立ち、杉山晋輔・外務事務次官が5日、韓国の林聖男・外務第1次官と会談し、像設置に強く抗議し、早期の像撤去を求めた。

大使と総領事を同時に一時帰国させるなどの対応を採るのは異例だ。菅氏は会見で、対抗措置は「わが国の立場を明確に示した」と述べ、慰安婦像設置に強い不快感を表明した。

対抗措置は6日未明に韓国側に伝達された。政府関係者によると韓国側は「対抗措置に驚いていた」という。対抗措置を採る期間について菅氏は「総合的に判断する」と語った。

日韓両政府は一昨年末の合意で慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に解決されたことを確認した」。日本側は合意に基づき昨年、元慰安婦支援などへの10億円拠出をはじめとする合意内容を着実に履行。しかし、韓国側はソウルの日本大使館前の慰安婦像は「地方自治体の責任」などと主張して撤去に動かず、さらに釜山の日本総領事館前に2つ目の慰安婦像設置を容認した。

菅氏は「日韓は隣国であり、韓国は極めて重要な国だ。このような措置を採らざるを得なかったのは極めて残念ではあるが、国と国として約束したことは履行してほしい。そういう強い思いだ」と強調した。

釜山の日本総領事館前の慰安婦像設置をめぐっては、昨年12月28日に市民団体によって一旦設置されたが、設置先の釜山市東区庁が撤去していた。ところが、東区庁に抗議が殺到したとして区側が一転して設置を容認したため、30日に再度設置され、31日には除幕式が行われていた。>(以上)

1/6ZAKZAK<韓国慰安婦像新設に菅官房長官激怒 「あの国とは絶交だ」藤岡信勝氏

慰安婦問題の解決を確認した日韓合意を一方的に破るような行為を、韓国側が連発している。「国家間の約束」をほごにする暴挙に対し、政府高官や識者だけでなく日本国民が激怒している。日韓関係は急速に冷え込みそうで、日韓通貨スワップの再開に、国民的理解は得られそうにない。

「極めて遺憾だ」「国際条約の中で国家としてしっかり対応してほしい」

菅義偉官房長官は4日夜、BSフジの「プライムニュース」に出演し、昨年12月28日に韓国・釜山の日本総領事館前に新たな慰安婦像が設置されたことについて、こう語った。静かな口調ながら、怒りがこもっていた。

これだけではない。韓国内では一昨年末の日韓合意後も、慰安婦像の新設が続いており、歴史問題を蒸し返している。

近現代史研究家の細谷清氏が、韓国メディアの報道を分析した結果、韓国には昨年秋時点で40体以上の慰安婦像があり、日韓合意後に最低15体も新たに設置していることが分かっている。

慰安婦問題を追及してきた拓殖大学の藤岡信勝客員教授は「日韓合意自体が問題だった。もはや韓国とは絶交すべきで、関係を持つべきではない」といい、続けた。

「韓国側は合意自体、最初から守る気がなかった。韓国はこれまでも『歴史問題は終わった』といい、日本から援助を引き出してきた。だが、その約束が守られたことは一度もなかった。もはや『韓国には信義がなく、外交的な約束はできない』と思わざるを得ない。一方、韓国側は『日韓通貨スワップの再開』を求めている。仮に再び結んだら、日本は大きな犠牲を払う。韓国経済が破綻したとしても、それは自業自得だ」>(以上)

日本政府も約束を守らない韓国政府(ハナから守る積りもなかったでしょうけど。韓国は事大主義で裏切りの歴史ですから、約束を守らないのは当り前です。小中華と言われる所以です)に厳しい物言いをし出しました。米国も韓国を見捨てる準備に入ったのかもしれません。対米従属外交しかできない日本が厳しく言いだしたという事はですよ。

もう一つの可能性として、米軍の韓国駐留軍人の家族の沖縄避難訓練の記事を見て、米国は裏で韓国軍によるクーデターを考えているのかもしれません。北に呑み込まれることを考えれば、軍が黙っていることは考えにくいです。韓国の歴史で、李承晩→朴正煕→全斗煥とクーデーターを起こして政権を握りました。韓国は内乱状態になるかもしれません。北から兵士が送り込まれ、攪乱するでしょう。炭素繊維工場として900億円、炭素繊維複合材料、ポリプロピレン長繊維不織布、ポリエステルフィルム工場として390億円、絶縁材増産の為200億円をも韓国に投資し続けている東レは真っ青でしょう。経団連会長の地位を利用して日本政府に泣きついても無駄です。日本に投資して、工場を造り、雇用を拡大すべきなのに、よりによって反日国家でかつ戦争が起きやすい国に投資してきたのですから、自業自得でしょう。

「クーデターが悪い」というのは日本人の思い込みで、GHQとその傘下についた者の洗脳によるものです。226事件を悪く描いて歴史の授業で教えるものですから。Henry Scott Stokesの“Fallacies in the Allied Nations’ Historical Perception As Observed by a British Journalist”の中にインドネシアのスカルノが中共に近づきすぎて打倒されることが描かれています。軍人政権が悪い訳ではありません。粛清が当たり前の共産党政権より余程良いと思います。タイを見てみれば分かるように、成熟した国家は軍政から民主制に切り替わることが分かっていますので。

「4. SUKARNO, FOUNDING FATHER OF INDONESIA

Meeting Sukarno Immediately after the September 30th Incident Sukarno, who was respected in Indonesia as the founding father of Indonesia, played a major role in Indonesia’s achieving independence. He was from Surabaya, Java. His father was a schoolteacher, and his mother was from an aristocratic family. His name was taken from Karno, a master martial artist, who appear in Java’s Anecdote. In 1927, he organized the People’s Party of Indonesia and appealed for Indonesian independence. Thus he was often arrested by the Dutch colonial authorities. In December 1941 the Imperial Japanese Army instantaneously swept the Dutch Army from the Dutch East Indies. Sukarno was released from detention, and thus started cooperation with the Japanese Army for Indonesia’s independence. Only two days after the Japanese surrender, Sukarno, together with Hatta, declared Indonesian independence. Then the Dutch invaded Indonesia again to colonize it. Indnesians, who had learned of the spirit of merdeka (independence), and Japanese soldiers who had chosen not to go back to Japan, cooperated and fought against the Dutch Army, finally attaining independence.

Alas, Sukarno then went to the Chinese and came totally under their spell. In 1965 President Sukarno conspired with the Air Force, which was tied to the Communist Party, plotting to make Indonesia a Communist state. He initiated a coup d’etat, and killed six high-ranking Army officials. The Army, led by General Suharto, fought back and destroyed the Communist group. This is referred to as the “September 30th Incident.” Consequently, the Indonesian Communist Party,which was the largest political force in the region, collapsed. Sukarno was asked to take responsibility for his pro-China approach. When demands for his resignation spread through the Army, he transferred power to Suharto.

I met Sukarno in Jakarta immediately after the September 30th Incident. He was under house arrest. His watchdogs were tense. His guards weren’t ordinary male soldiers. They were all females and their beauty was just out of this world.

All Asian heads of state were leading a luxurious lifestyle similar to that seen in movies. Interestingly enough, they all had their own theaters and appreciated the arts, like playboys. They enjoyed their elegant lives, had tremendous money, and were skilled at convincing women to be their mistresses. The scale of the founding fathers’ lifestyles was huge. Mao Zedong, for example, enjoyed a gorgeous life, greedily seeking women and consuming splendid servings of Chinese food and alcohol in Zhongnanhai while tens of millions of people were starving to death due to his failed policies.

When I met Sukarno, he was puffing a thick cigar; I was absorbed by its fantastic aroma. I did not know much about Indonesia back then, so I asked him, “Excellency, what on earth is that which you are smoking?” I thought he was smoking marijuana because in Indonesia, marijuana was widely available. Puffing the cigar, which seemed like he had rolled it himself, Sukarno explained, “This is an Indonesian herb cigar called Kretek.. The man who first asked me this same question was Prince Philip, Duke of Edinburgh. “Then he said in a deep, strong voice, “This is the aroma, Mr. Stokes, which stimulated English people to invade the Far East.” He added, “This is the aroma. Its supreme smell attracted whites from Europe to Asia. That’s the truth of history.” Perhaps China was also attracted by this aroma. If Sukarno’s left-wing revolution bad succeeded, Indonesia would have turned into a communist state under Chinese control. It’s really spine-chilling to think that Japan’s fate would have been if such had been realized.」(以上)

記事

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トランプ次期大統領とフリン次期国家安全保障問題担当補佐官。彼らが示す「対韓政策」はどうなるのか。中国はどう出るのか。米中の動向を先読みするところから、日本が韓国に対して打つべき手が見えてくる(写真:ロイター/アフロ)

前回から読む)

2017年の日韓関係を占えば「凶」だ。韓国で反米・反日政権が誕生する可能性が高いからだ。ただ、「韓国の見捨て方」次第では「中吉」に持って行けるかもしれない。

左派政権登場へ

韓国の憲法裁判所は朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の弾劾訴追を審理中だ。2016年12月9日に国会が同案を可決したことを受けた(「韓国国会、朴槿恵弾劾案を可決」参照)。

憲法裁判所は2017年6月上旬までに、弾劾を認めるか否かの結論を出す。もし弾劾を認めれば朴大統領は罷免され、60日以内に選挙が実施される。

弾劾が棄却されれば論理的には朴政権は続く。ただ、下野を求める声が高まって、罷免されなくとも辞任に追い込まれるかもしれない。仮に大統領の座に「居座って」も、2017年12月には5年間の任期満了に伴う大統領選挙が実施される。

いずれにせよ2017年中に行われる選挙では、左派の候補が当選する可能性が高い。弾劾の原因となった「国政壟断事件」により、保守への不信感が高まっているからだ。

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事件の余波で保守の「セヌリ党」は分裂した。大統領選挙をまともに戦えるか疑問視されている。そもそも、同党は当選できそうな自前の候補者を持たない。

国連事務総長を2016年末に引退したばかりの潘基文(バン・キムン)氏を担ぎたいところだが、潘氏が乗るかは不明だ。

強硬保守には、弾劾可決に伴い大統領権限を代行している黄教安(ファン・ギョアン)首相を推す向きもある。検察の出身で、潘氏同様に選挙の洗礼を受けたことはない。

朴大統領が首相に指名した人でもあり、出馬すれば強い反発が起きるのは間違いない。そんな黄首相に期待せざるをえないほど、保守は人材不足なのだ。

極め付きの「反米・反日」

今年中に誕生するであろう左派政権は極め付きの「反米・反日」政権となりそうだ。「国政壟断事件」を契機に「韓国の国のかたちを正すべきだ」との声が高まっているからだ。

保守政党、検察、財閥から保守系紙に至るまで「既得権集団」は朴大統領に連座する形で「世直し」の対象である(「『ロシア革命』に変容する『名誉革命』」参照)。

「既存路線を否定する」動きは、外交政策にも及ぶ。ほとんどの大統領レース参加者は、THAAD(地上配備型ミサイル防衛システム)配備容認と、日本とのGSOMIA(軍事情報包括保護協定)締結・慰安婦合意――の3点セットを、朴政権の悪行中の悪行と非難する(「『キューバ革命』に突き進む韓国」参照)。

2016年12月28日、野党第1党「共に民主党」の禹相虎(ウ・サンホ)院内代表は党の幹部会議で「政権交代後、必ず合意を無効化するよう努力する」と述べた。世論調査では同党の文在寅(ムン・ジェイン)前代表が次期大統領として1番人気になることが多い。

釜山市東区がいったんは排除した日本総領事館前の慰安婦像の設置を12月30日に認めた。朝鮮日報の社説「東海と西海の向こうの不吉な兆し」(12月31日、韓国語版)は「文・前代表が東区役所を『親日』と非難したうえ『釜山市民らの像設置こそはまさしく独立宣言』と述べたからだ」と書いた。

こうした動きを見て小躍りしたのが中国だ。左派政治家たちの反米・反日政策を後押しし始めた。THAADの配備中断が当面の狙いだが、在韓米軍撤収や米韓同盟の廃棄も射程に収める(「中国が操る韓国大統領レース」参照)。

韓国を「損切り」

2017年1月20日には米国にトランプ(Donald Trump)政権が誕生する。発足前から中国に対する強腰の姿勢を見せる同政権は、朝鮮半島でも「白黒をはっきりさせる政策」を打ち出すと見られる。

朴政権は「米中二股外交」を採用した。中国が台頭し米国からアジアの覇権を奪う時に備えた。オバマ(Barack Obama)政権は韓国の露骨な動きに苦笑しながらも、忍耐強く自分の側に引き戻そうとした。

しかし辣腕の実業家、トランプ氏はそんな穏健な手は使わないだろう。韓国が米中を天秤にかけた瞬間に「どうぞ、中国側にお行き下さい」と言いかねない。

トランプ政権で国家安全保障問題担当補佐官に就任する予定のフリン(Michael Flynn)元陸軍中将は2016年12月、訪米した韓国の外交部と国防部の高官に「米軍とTHAADの(韓国への)配備は、韓米同盟次元の正しい決定であり、韓米同盟の堅固さを象徴するものだ」と語った(「中国が操る韓国大統領レース」参照)。

「韓国がTHAADなど拒否するなら、いつでも同盟を打ち切るぞ」との威嚇である。「朝鮮戦争を共に戦った血盟関係にある米国はわがままを聞いてくれる」という甘えは、もう通用しない。

太平洋戦争が終わった時、米国にとって韓国は防衛線の外側の国だった。朝鮮戦争でたまたま面倒を見ることになった地域に過ぎない。というのに韓国は甘え続けてきた。優れたビジネスマンが「損切り」に出ても決して不思議ではない。

奇襲か妥協か

トランプ政権は北朝鮮の核問題の解決に早急に動く気配だ。5回目の核実験(2016年9月9日)以降、米国の安保専門家は大声で「北の核・ミサイル施設への奇襲攻撃」を語り始めた(「米国が北朝鮮を先制攻撃する日、韓国と日本は?」参照)。

  • 北朝鮮の核実験
回数 実施日 規模
1回目 2006年10月9日 M4.2
2回目 2009年5月25日 M4.7
3回目 2013年2月12日 M5.1
4回目 2016年1月6日 M5.1
5回目 2016年9月9日 M5.3

(注)数字は実験によって起きた地震の規模。米地質研究所の発表による。

奇襲攻撃により北朝鮮の核が除去された場合、韓国の左派政権は米韓同盟の破棄に動く可能性がある。主敵の脅威が減じた以上、中国との関係を悪化させる米韓同盟は邪魔になるからだ。

一方、米国が電撃的に北朝鮮と妥協すると予測する向きもある。北が核・ミサイル開発を凍結すれば、見返りに平和条約を結ぶ、との構想だ。在韓米軍の撤収――さらには米韓同盟廃棄の呼び水となる。韓国に左派政権が誕生すれば、その可能性がぐんと増す。

米韓同盟が消滅すれば日本は盾を失い、直接、大陸と向き合うことになる。日本にとって「凶」だ。

「離米」すれば中国側に

日本はどう動くか。「トランプの米国」が韓国を見捨てるのを食い止めるのは難しい。結局、「韓国の見捨て方」の中で「日本にとって最も有利な形」へと誘導することになろう。まず、国際関係の激変を利用して、北朝鮮から拉致被害者を取り返す必要がある。

もし日本に戦略家がいるなら、朝鮮半島全体の法的な中立化を目指すに違いない。放っておけば、米国から離れた韓国が中国に引き寄せられるのは確実だ。経済的な依存と軍事上の位置、そして長らく中国大陸の王朝に冊封していた歴史からである。

米国から離れた韓国の港湾は中国海軍の根拠地となり、日本の安全を脅かすことになる。北朝鮮の港を含め朝鮮半島にはどこの国の軍艦も出入りできないようにするなど、歯止めが必要だ。

もちろん「法的な中立化」が長続きするかは分からない。朝鮮半島の内部は常に不安定だ。そこに住む人々は周辺大国の力を借りて身内の敵に勝とうとしてきた。「法的な中立化」は一時しのぎの「中吉」に終わるかもしれない。ただ、半島全体が完全に中国化する「凶」よりはまだましなのだ。

※近未来小説『朝鮮半島201Z年』(2010年刊)は韓国の「離米従中」と朝鮮半島の中立化を予想した。

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『中国不動産バブルで日本に押し寄せる失業者 過熱でも崩壊でも行き場のない農民が彷徨い出す』(1/1日経ビジネスオンライン 山田泰司)について

バブルの渦中にある人間には「これがバブル」と意識するのは難しいのかも。日本のバブル時代には、不動産も株も未来永劫上がると信じて、個人も企業も投資しましたから。バブル崩壊後、その反動で投資には慎重になり、リーマンショック時には大きな痛手は被らないで済みました。日本人の性格は自省的で、「羹に懲りて膾を吹く」ような行動を取り、それが20年以上続いたデフレを齎しました。またそれが戦前の反省とやらで、軍を持たないGHQの押付け憲法を受入、GHQの検閲・思想統制による洗脳を其の儘受け入れて早70年以上も経っても、何も変えようとはしません。三島由紀夫も草葉の陰であきれ返っているでしょう。自衛隊の決起を促しても、自衛隊も国民も彼を狂人としか評価して来なかったのですから、諦めているのかも知れませんが。中国の脅威が迫っていても大多数の日本人は無関心です。沖縄県民は翁長知事を筆頭に中国の侵略に手を貸している始末です。

今Henry Scott Stokes の“Fallacies in the Allied Nations’ Historical Perception As Observed by a British Journalist”を読んでいますが、日本人が戦後金を儲けることや享楽についてのみしか考えなくなり、国体の在り方や伝統文化に思いを馳せなくなったことに対して、三島由紀夫の怒りと言うよりは諦念が感じられます。市ヶ谷での割腹は日本国民に対する諌死でしょう。2013年には日本語版が先行発売されて読んだ記憶がありましたが、やはり英語で読んだ方が意味を考え乍ら読みますので、深く頭の中に入ってきます。

豊饒の海の4部作の内、『暁の寺』、『天人五衰』を英語で読みました。それぞれ“The temple of dawn”、“The Decay Of The Angel”と訳されていました。4部に共通するテーマは「輪廻転生」ですが、最終章の『天人五衰』は虚無感が漂い、当時の三島の気持ちが表れていたのではと推察しています。

中国人の宗教意識は薄いと思っています。一応道教や仏教と言われていますが、「拝金教」で現世来世とも利益(実利)追求です。だから、「冥銭」や「陰婚」が風習として残っていると思います。

http://daily.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1456657212/

日本人は多神教“polytheism”と言うよりは汎神論“pantheism”でアニミズムに近いのでは。中国人のすぐに「金」という発想になるのとは違います。

本記事にありますように、こういう人たちがバブルのお蔭で、貧者が生活できなくなり、日本に来るのは御免蒙りたいです。治安は悪化し、刑務所は中国人で一杯、日本人の税金で彼らを喰わしてやらないと行けなくなります。反日国家の面倒を何故日本人が見なくてはいけないのか?中共の棄民政策=入植による侵略と思った方が良いでしょう。戦後日本人は平和ボケして敵がどう発想するか思いが至りません。知識は増えたとしても知恵が足りなくなっています。欧米のマスコミに倣って日本のメデイアも左翼リベラルが主流で、人物金情報の自由な移動を認めるグローバリズムを尊重していますが、人の自由な移動を認めれば却って戦争が起きやすくなると思っています。少なくとも治安が悪くなるでしょう。今の難民受け入れをしている欧州のように。テロリストが沢山紛れ込んでいると考えられます。日本も事実誤認の反日教育で育った人たちが日本に来てテロリストにならないという保証はないというか、可能性は高いと思います。更に言えば韓国人の方がもっと高いというのは、日本に来て事件を起こしているから感じるでしょう。親北大統領が今年韓国に誕生するでしょうから、彼らは日本に逃げ出してこないとも限りません。入れないことです。世界に反日活動を展開してきたのですから、日本も世界に治安の問題で受け入れないことを前もってアピールしておくことです。彼らは恥を知らない連中ですから、今までさんざん反日活動してきても自分の命が危なくなると日本に亡命しに来るでしょう。それで今の忘恩の徒である在日韓国人のように日本にいて反日するようになります。日本政府と国民一人ひとりが我が事のように考えておかなければダメです。民間の自警団を作る必要が出て来るかも知れません。

記事

2017年を占うというお題で何か書かないか、しかも大吉、大凶などの吉凶もつけて、という依頼に、上海を生活のベースに置いている私は恐れおののいた。「科学的なものの見方」を是とする共産党支配下の中国では、占いもおみくじも邪教につながりかねない迷信として禁止しているためである。中国政府のシンクタンクである中国社会科学院が出している『宗教政策法律知識答問』という本では「宗教と迷信の違いは何か」との問いに、風水、厄払い、人相見などとともに占いもおみくじも、民衆を惑わせ財物をだまし取るもので法律の保護を受けられない活動だとして迷信のカテゴリーに入れられている。

ただ、そうして迷信を禁じている官の方こそ、占いやおみくじが実は大好きで信用もしている節がある。上海を東西に貫く延安高架という高速道路と、南北に貫く南北高架という高速道路が交差するジャンクションにある龍の装飾を施した柱にまつわる話は、禁止されているはずの風水を中国人が実際にはいかに気にしているかを表すいい事例だ。

風水で危機を脱した高速道路

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風水のアドバイスで龍の装飾を施したと言われる高速ジャンクションの支柱(上海市内)

1990年代半ばにこの2本の高速道路を建設していた時のこと。工事は「神速」と皆が賞賛するほどのスピードで順調に進み、いよいよクライマックスとも言える2本の道路をつなげるジャンクションの建設に入った。ところが、ジャンクションを支えるのに絶対に必要な中心の柱を地面に打ち込むことができない。土木や設計の精鋭が集められ手を変え品を変え打杭を試みたがビクとも進んでいかない。工期の遅れで面子がつぶれることを避けたい当局は、上海一の高僧と呼び声の高い玉佛寺の僧を訪ね教えを請うた。するとこの僧は、「高速道路に沿って風水で言うところの龍脈が通っている。中でも柱を立てようとしているあのジャンクションの場所は、上海の真の中心で、そこに住む龍が怒っているのだ。経を唱え、柱に龍の装飾を施せば、龍は鎮まり、たちどころに柱は地面に入っていくことであろう」。高僧の言いつけ通りにしてみるとあら不思議、いままで押しても引いても煮ても焼いてもビクともしなかった地面に、スルスルと杭が打ち込まれていきましたとさ、という話である。

この話にはいくつかのバージョンがあり、高僧は静安寺の僧だというものや、僧でなく風水師だというものもある。いずれにせよ、中国当局は、宗教活動は認めているが、先述したように、聖職者が風水を見ることは禁止している。当然、当局は、この話を否定しており真相は分からないが、仮に都市伝説だとしても、いかにもありそうな話だから成り立っているのだろう。

政府要人も占いに夢中

さらに私の個人的な体験もある。中国の最高意思決定機関は、中国共産党の中央政治局常務委員会という組織。1990年代以降の改選では委員が7人か9人で推移していることから、近年、チャイナ7だとかチャイナ9等の言い方が流行っているようだが、1998年当時は7人だった。私はその年香港に住んでいたのだが、さる中国人の友人から、「この7人のうちの1人のお抱え占い師が香港に来ていて、ホテルの1室を借りて、親しい人やその友人だけを集めて運命を鑑定している。私も彼が来る度に見てもらうのだが、あなたも見て欲しいのなら紹介してあげる」と言われた。

この占い師、普段は青海省蘭州に住み修行に励んでいるとのこと。見料は、中国や香港で縁起のいい数字とされる8を並べた888香港ドル(1万5000円)だという。私にとっては十分に高いが、中国のトップ中のトップが信頼するほどの占い師の見料としてはずいぶん安い気もする。それに、さぞ豪華なホテルに泊まっているのかと思いきや、雑居ビルのワンフロアで営業している、今風に言えば民泊のようなゲストハウスだというからいよいよ怪しい。ただ、その占い師を紹介してくれた友人が、中国にまったく関心のない日本人でも、名前を出せばほぼ全員が聞いたことはあると答えるだろう中国共産党の機関紙で副社長を務めた人物の子女で、人柄も知っていたので、この人の勧めなら、少なくともその占い師がまったくのニセモノということもないだろうと思い、話の種にと見てもらうことにした。

ゲストハウスに着き、教えられていた1室をノックすると、ドアの向こうから気のよさそうな50代と思しき男が出てきた。出で立ちもいたって普通で、キョンシーが着るような袖が長くてカラフルないかにもな装束をまとうわけでもなく、紺色のスラックスに、ブルゾンというよりはジャンパー、グレーというよりはねずみ色と形容したい上着を着、かなりくたびれた黒の革靴を履いていた。私が日本人だと知ると、話が聞き取れないだろう、聞き漏らしたらもったいないぞ、書いてやるからノートを出せと言う。言われるままにノートを渡し、聞かれるままに生年月日と生まれた時間を伝えると、大学ノート2ページにわたって細かい文字でビッシリと、当時33歳だった私のそれまでの人生を振り返り、その後の人生についてを書き付けてくれた。

中国要人のお抱え占い師に見てもらうんだということについては周囲に話していた。後日、どうだった? と皆から聞かれる度に、「いやあ、怖いほど当たるらしいから、これからが楽しみだねえ」と答えたのだが、そういう言い方をしたのには理由がある。それまでの私の人生についての占い師の見立てが、当たったと解釈すればそう思えないこともないけれども、外れたと言えばそうとも言える、つまりは、よくある星座占いや干支占いと大枠では大差ないものでしかなかったからだ。

当時香港で在籍していた新聞社で連載していた占いコーナーで私が編集を担当していた大連出身の人相見の先生は、「人相見は、どのような骨格をした人がどのような人生を送ってきたかを顔のパーツ毎に細かく分類して答えを弾き出す統計学。他の占いよりも当たる確率は高いと思うが、それでもせいぜい6割だな」と話しているのを知っていた。それに当てはめれば、私の過去についてのこのお抱え占い師の見立てが、ガッカリするほど的外れだったということはなかった。ただ、人口12億人の国で序列が上から数えて1ケタ台というとてつもない要人が信用するほどの占い師にしては拍子抜けだったというのが正直なところだった。そして、中国のある部分を確実に動かしている人物が、この占い師の見立てを参考にしているのかと思うと、恐ろしくもあり、しかし一方で、それでも日々はつつがなく過ぎていくってことだなと、妙に安心したりもしたのである。

年男年女は赤いパンツで厄除け

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中国では厄除けの赤いパンツの洗濯物が翩翻と翻る光景をよく見る(上海市内)

迷信と言えばこれも迷信になるのだろうが、該当する中国人の限りなく100%近くが信じている迷信がある。それは、厄除けに赤いパンツを履くこと。日本では年男年女というとその1年は勢いに乗り飛躍を図るには絶好の年というような感覚がある。ところが中国ではその年の干支が吉の方角を犯してしまうと見なすことから、年男・年女の年を「本命年」と呼び厄年とするのだが、赤い下着を身に着けることで厄払いになると考える。聞いてみると、年男年女は律儀に厄年を前に赤い下着を購入し、しかも1日、2日ではなく、年を通じてほぼ毎日、赤いパンツを履いているのだ。

去年数えで36の年男だった上海人の友人、シャオワンももちろん、赤いパンツを履いて厄払いに余念が無かったのだが、12月半ばに会うと、「なんとか厄年を乗り切ったと思ったのに、最後の最後になって大厄が来た」と暗い顔をしている。まさか身内に何かあったのかと胸騒ぎを覚えながら尋ねると、「2軒目のマンションを買おうとしていた矢先に新しい規制が発表されて、買えなくなった。儲け話をみすみす逃したんですよ」と言う。さすがは狂ったような不動産バブルの渦中にある上海人の言うことは違うと、思わず苦笑してしまった。

「家は住むものじゃない」とうそぶく庶民

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上海では異常な不動産バブルが続いている

中国では全国の都市部を中心に不動産の高騰に歯止めのかかる気配が見られないことから2016年9月以降、上海や北京など20以上の都市で購入に相次ぎ制限をかけた。上海では11月末、1つの家族が住宅ローンで不動産を購入するにあたり、1軒目については頭金を最低35%、2軒目については価格や面積によって50~70%の頭金を支払わなければ購入できないとする新たな取り決めを発表した。シャオワンが狙っていたのは頭金70%の対象になった物件だとのことで、「買えば確実に上がって儲かったのに、7割だとさすがに無理だ。今年は大凶だ」と嘆く。

3年前、上海郊外に100平米のマンションを150万元(2550万円)で手に入れたときには、「ようやく念願のマイホームを手に入れました。頑張って働いてローンを返していきますよ」としおらしく、それでも嬉しそうに話していた。ところが昨年末当たりから、言うことが変わってきた。「日本人は家って、『住むもの』だと思っているでしょう? 中国人は違いますよ。家は、転売して儲けるための『商品』でしかないんですよ」。

2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災と原発事故を体験し、さらに移民問題や民族問題で激動する昨今の世界情勢を受け、日本人は、確実なものなどないという危機感を、程度の差こそあれ誰もが抱えて生きるようになったのではないかと思う。こうした感覚からすると、家を「転売して儲けるための商品だ」と言い切るシャオワンの考え方はいかにも傲岸不遜に映るが、そういう錯覚を持つのも無理がないと思わせるほどの勢いで上海の不動産価格は急激に上昇している。

狂乱の上海不動産バブル

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不動産にマネーが集中したことで、理財商品を扱う業者が店をたたむケースが増えている(上海市内)

例えば彼の住む都心部から35キロの距離にある青浦区では、新築マンションの平均価格が2016年1月の1平米当たり1万8400元(約31万3000円。Fang.com調べ。以下同)から、12月には3万2722元(55万6000円)と、この1年で77%上昇の上昇を見せた。これが単価の高い都心部になると、静安区では年初の6万6329元(113万円)から直近で8万2475元(140万円)と上昇幅は25%程度になるが、100平米なら824万元で、日本円なら1億4000万円。そしてこれはあくまで平均価格。上海をぐるりと囲む「外環」と呼ばれる高速外郭環状線の内側のエリア、面積にして東京23区の面積619平方キロメートルより幾分広い680平方キロメートルのエリアで100平米の新築マンションを買おうとすれば「600万元ないとまず無理」(上海の不動産業者)、すなわち1億円が最低ラインというところにまで不動産の高騰が進んでいる。

利殖に熱心な中国人のご多分に漏れず、シャオワンも株、不動産、投資信託と一通りのことはやっている。そして、シャオワンが一番熱心にお金を注ぎ込んでいる利殖の手段を見れば、中国でいま、何にお金が集まり、何から逃げているのかが分かって興味深い。6~10%の高利回りをうたう個人向けの金融商品「理財商品」がデフォルト(債務不履行)の危機が取りざたされながらもなお過熱していた2014年ごろには、彼も当然のことのように理財商品をいくつか買っていると話していた。それが2015年後半から2016年にかけて、理財商品を扱うノンバンクや投資信託運用会社の路面店で閉店が目につくようになってきたなと感じていたのだが、シャオワンに聞くと、「2015年夏に上海株が暴落してから、理財商品はダメになった。ボクは持っていた理財商品を今年に入って全部処分しました。いくら儲けたって? 最後に処分したのは5万元(85万円)だったかな」。そして処分した理財商品を今度は不動産に注ぎ込もうとしていた矢先、頭金70%の新たな購入規制が出来、「間一髪で儲け損ねた、大厄だ」と、まったく損をしていないのにこの世の終わりのような顔をして嘆いている、というわけである。

格差の一層の拡大生む購入抑制策

上海サラリーマンの平均像のようなシャオワンのケースを見ると、上海の新たな購入規制は不動産バブルの抑制に一定の効果は生んでいるように思える。ただ、新規制の導入前に転売を繰り返し日本円で千万単位、億単位の売却益を得たという人たちも、庶民層の中にいくらでもいる。

さらに懸念されるのは、頭金の比率を引き上げるという形の購入規制で、複数の不動産を所有できるのはますます富裕層や既得権益層に集中し、格差がとりかえしのつかないほど拡大するだろうということだ。実際、気になる動きも出てきている。それは、過去10年、上海に定着して仕事をしてきた地方の農村出身の低所得者層が、仕事と住む場所を求めて中国国内を彷徨い始めたことである。

私はこの連載で昨年来、中国が2008年の北京五輪や2010年の上海万博の開催に向かって国の建設を進めていたころ、農村からやって来た比較的教育程度の低い出稼ぎの人たちが上海の肉体労働や単純労働を支えてきたこと、その彼らが不動産バブルに伴う家賃の高騰や、経済成長の鈍化に伴う賃金の頭打ちに直面し上海での生活が苦しくなり、その中の一部には、新幹線が開通するなどインフラの整備が進んだ地方の発展に期待を寄せて上海を離れ故郷に戻る人たちが増えていること、しかし、食料など生活必需品の物価は都会と遜色ないにもかかわらず、稼ぎが1500~2000元(4万2000~5万4000円)程度にしかならないのを嫌気し、物価の高騰と就職難で生活して行けなくなった状況が変わらないのを知りつつ、1年程度で上海に戻って来る人たちが出始めていることなどを書いてきた。

給料が頭打ちになった農村出身者

これらの人たちは上海でいま、いくら稼いでいるのか。私の友人の例のみを紹介すると、物流倉庫の電話営業をやっている中卒25歳の男性は基本給が3000元(5万1000円)、廃品回収をしている中卒42歳の男性は先月の稼ぎが3000元、月~土曜に複数の家の家政婦を掛け持ちしている高卒36歳の女性が3750元(6万3000円)、火鍋レストランに住み込みで働いている中卒16歳の少年が3000元、四川特産の麺料理店で週休半日で働く中卒45歳の女性が3000元だ。

中国政府の国家衛生・計画生育委員会が2016年10月19日に発表した「中国流動人口発展報告2016」によると、2015年の流動人口、すなわち農村からの出稼ぎの人たちは2億4700万人で、人口の18%を占め、平均月収は4598元(7万8000円)で前年比34%増だとしている。確かに、先に紹介した中卒25歳3000元の彼は2年前、今とは別の会社だが同じ物流の仕事をして月給は4500元(7万6000円)で、政府統計の示す平均像だった。その彼らがいま、上海で何をやっても3000元台の壁を破れないでいる。中国政府が2016年のものとしてどのような統計を出してくるか分からないが、彼らの収入は減少しているというのが現実だ。

一方で、例えば上海都心部で20平米のワンルームを借りようと思えば、築80年のボロアパートでも4000元(6万8000円)はする。彼らが上海で働きながら1人暮らしをするのはもはや不可能な状況になりつつある。

居場所失う農民たち

先の廃品回収をしている友人、リュウさんは、息子を高校に進ませず、妻と家族3人で最近、上海に戻ってきた。どうして息子を進学させなかったのと聞くと、「上海なら中卒でも不動産屋のビラ配りをすれば1日100元(1700円)、毎日やれば3000元にはなるから、田舎より現金が稼げる。家族全員で働けば月に9000元(15万3000円)。家族で一緒に住めばなんとかなるから」との答え。廃品価格が暴落する前の2014年当時、9000元という金額はリュウさん1人で稼げた額だ。何より、不動産会社のビラ配り、学生がアルバイトでするにはいいが、高校進学を諦めさせ、さあこれからどうしようという16歳の少年がやる仕事としては展望も希望もなさ過ぎる。

狂乱の不動産バブルで彼らは上海で居場所をなくした。一方で、不動産バブルが弾ければ、ビラ配りの仕事もなくなるだろう。

2017年の春節(旧正月)は今月末に来る。先に月の稼ぎを書いた彼ら彼女らは全員、春節を過ごすために帰省する。彼らに、春節明けはいつ上海に戻ってくるのと尋ねた。全員が、「戻るかどうか分からない。故郷で様子を見て考える」と口を揃えた。しかし彼らとて、故郷に彼らが満足できる仕事も収入もないのは、既に分かっている。それでも、そう言わざるを得ない状況に彼らはある。2005年前後に上海にやって来て約10年間、上海に落ち着き生活してきた彼らが、居場所を探して中国を当て所なく彷徨い始めている。その数は、私の友人だけに限ってみても、昨年より確実に、そして急速に増えている。

日本を目指す中国の農民たち

中国政府で華僑政策を管轄する僑務事務室のウェブサイトが2016年12月8日、「日本で毎年消える数千人の中国人はどこに行ったのか?」と題する文章を掲載している。日本の法務省の統計を引用する形で、技能実習生として日本に滞在する外国人が同年6月の時点で21万人おり、うち6割を中国人が占めること、失踪した実習生の数が2014年の4847人から2015年には5803人と過去最多となり、うち3116人が中国人だったと伝え、失踪者の大半がより待遇のいい仕事を求めて日本で不法就労しているようだとしている。

また『日本経済新聞』(2016年6月15日付)は法務省の話として、日本の農家が高齢化と人口減少で深刻な人手不足にあることを背景に、農業分野で外国人の不法就労が急増していると指摘。2015年に強制退去になった不法就労者のうち農業従事者は前年から3倍増の1744人で、全体の3割を占めた他、国籍別では中国、タイ、ベトナムが多いと報じている。さらに最近は、クルーズ船で日本に寄港し失踪する中国人客が増えているとの報道も目につくようになった。

技能実習生を劣悪な環境で働かせる雇用主や、失踪した実習生と知りながら不法に雇用し暴利をむさぼる日本人がいる話は中国でも広く報じられている。よって、日本で実習生として働いたり不法就労したりしても、さして稼げないことも知れ渡っている。ただ、日本で中国の失踪や不法滞在が増加傾向にあることと、中国国内では都会でも故郷でも稼げなくなり彷徨い出す農村出身者が増えていることがまったく無関係には思えない。

先に月収を紹介した友人らの出身地は安徽省と河南省だ。彼らの故郷で日本での技能実習生や不法就労を持ちかける誘いやうわさに遭遇したことはないかを尋ねたところ、全員が聞いたことがないと答えた。成長減速の打撃を大きく受けている鉄鋼や石炭などの産業が多く、しかも気候が厳しい東北地方や、海外移民の気質が根付いている福建省などの出身者が、現時点での実習生や失踪者の主力なのか。

いずれにせよ、不動産バブルが過熱しても弾けても、行き場をなくし彷徨う農村出身者が増えるという状況は、中国にとっては間違いなく大凶。そして日本にとっても2017年は、日本での就労に視線が向かう中国の農村出身者の流入増大という問題に直面する1年になるかもしれない。

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(写真:Imaginechina/アフロ)

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『交渉の達人・トランプに見透かされた安倍首相 レバレッジ効かされ日本はどんな悪条件をのまされるか』(12/30JBプレス 堀田佳男)、『トランプ氏の政策を徹底分析、見えてきたもの 米次期政権の内政、外交政策とその影響』(12/30JBプレス 矢野義昭)について

堀田佳男氏はトランプ当選を外した米国政治の評論家ですから、また予想を外す可能性はあります。ただ、外したことにより頭を丸めたのは彼の誠実さの表れと言えます。外務省出身の宮家などと比べれば真面と言えます。ただ、主張は欧米系のメデイアの主張をなぞっているだけという気がしますが。やはり、トランプの閣僚級の人材と直接インタビューできるようにならなければ、今度のトランプ当選のような予想をするのは難しいと思います。

矢野氏の記事からトランプの政策で見えてきますのは、ビル・クリントン、オバマの民主党政権がやってきたことへの全否定でしょう。強いアメリカを再現するために、米国民の雇用の維持拡大を図る積りです。①米国内への投資の拡大②規制緩和(労働規制、環境保護規制、社会保障政策)③税制の見直し④移民制限⑤国内治安維持⑥対中強硬派政策(通商関係人事:ナヴァロ国家通商会議議長、ウイルビー・ロス商務長官、カール・アイカーン貿易投資国際ビジネス・大統領顧問、ライトハイザー通商代表、軍人:マイケル・フリン国家安全保障担当大統領補佐官、ジェームズ・マティス国防長官、マイク・ポンペオCIA(中央情報局)長官)です。

世界の平和を攪乱する中国に時間の利益を与えてはいけないと思います。日米豪印露による中国包囲網の形成と、経済的締め付けによって中国経済を崩壊させるのが最上策と考えます。無能のオバマの8年間は最悪でした。中国の為すがままで、ロシアにだけ経済制裁を課すアンバランスな政策を採ってきました。ロシアは核・軍事大国ではあるものの、GDP比で米国の1/10しかありません。翻って中国にはどうか。世界から投資資金を集めて、経済発展を軌道に乗せました。本記事にありますように反日政治家ビル・クリントンが中国のWTO加盟を詰めずに認めたからです。裏で中国の金が動いたのだろうと思いますが。1/20以降世界平和に向けて、バランスオブパワーの正常な世界が動き出すことを願っています。日本もその実現に向けて責任を果たさないと。

堀田記事

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中国北部・山西省太原市のショッピングモールに登場した、ドナルド・トランプ次期米大統領に似せた巨大なオンドリ像(2016年12月24日撮影)〔AFPBB News

2017年を迎えるにあたり、ドナルド・トランプ次期大統領(以下トランプ)が政権初期に採ると思われる政策とその因果関係について予測したいと思う。

まずトランプが真っ先に行うと口にしていることから述べていきたい。1月20日の就任式直後、トランプは「オバマケア(米版国民皆保険)」を廃止すると繰り返し発言している。

だが施行されている保険制度を大統領の一存で中止することはできない。「オバマケアを廃止する」との意思を示せても、トランプ政権と共和党は代替案を準備できていないため、すぐに廃止すると健康保険を失う国民が多数出てしまう。

オバマケアが導入される前、米国には約4700万もの人が保険に入っていなかった。施行後、約2000万人が健康保険を手にすることができたが、オバマケアでも全国民はカバーしきれていない。

選挙中の勇ましい言動はどこに

残りの約2700万人は未保険のままである。しかもオバマケアの施行後、多くの加入者の月々の掛け金が上がり、オバマケアに反対する人が増えた。

仮にトランプが共和党主導の健康保険法を成立させたとしても、オバマケアのように多くの未加入者を救済できるとは限らない。

そのため、すぐに廃止するという過激な発言は現実的ではない。しかもトランプは当選後、オバマケアの条項の一部を維持するしており、選挙中の勇ましい言動は失せている。

トランプが就任初日に行動すると明言していることはまだある。環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱である。

選挙中から米国の雇用を奪うとの理由でTPPに反対してきた。11月中旬、ニューヨークで安倍晋三首相と会談した時、トランプは同首相からTPPの思い入れを聞かされたはずである。

ところが商務長官に指名されているウィルバー・ロス氏や、新設された国家通商会議の代表に指名されたピーター・ナバロ氏といった保護主義政策を主張するアドバイザーの声の方がトランプにとっては説得力があったようだ。

北米自由貿易協定(NAFTA)も見直すとはっきり言っているので、多国間での自由貿易協定はトランプ政権下では軽視されることになる。その代わり、日本を含めた特定国で2国間協定を結ぶことになるだろう。

これは実にトランプらしい交渉の進め方だ。

初動で見透かされた安倍首相

子供の頃から、不動産業で成功した父親の事業のイロハを学んで会得したのが、特定相手との交渉術だった。いかに相手にプレッシャーをかけて優位な条件をのませるかにかかっている。多国間による交渉ルールを作るより、2国間交渉を好む理由がここにある。

トランプの日本に関する過去の発言を読むかぎり、日本は手玉に取りやすいという印象のようだ。日本は押しに弱いばかりか、米国が防衛しているという強みをトランプは最大限に生かして交渉に望んでくるはずだ。

駐留米軍の維持費を全額負担しなければ全面撤退もあるという言い分は、選挙中だけの論理ではないだろうい。これがトランプの本音であり、彼の言う「レバレッジ(テコ)」なのである。

つまり、「日本を防衛してあげる」というテコを使って、2倍も3倍も大きな成果を得ようというのだ。

彼の言葉を借りるならば「できるだけ優位に立って取引をすること」を念頭に置いているのだ。さらに「相手がこれなしでは困るというものをもつこと」を意識してさえいる。

日本が独自防衛できないということは、すでにトランプに弱みを握られていることに等しい。著書『トランプ自伝:アメリカを変える男』ではこうも書いている。

「交渉でやっていけないことは、何がなんでも成功させたいという素振りを相手に見せることだ。こちらが必死になれば相手はすぐに察知する。相手にこの姿勢を見せたら交渉はこちらの負けである」

安倍首相はたぶん11月のニューヨーク会談で、TPPを何としてもまとめたいと必死に説明したはずだ。その時点でトランプの術中にはまっている。会談後に撮られた写真で見せたトランプの笑顔は、「安倍はたやすい」という思いの表れだったのかもしれない。

不法移民政策については、しばらく強硬路線を採るだろう。シリア難民には門戸を閉ざし、国内の不法移民を追い返す方策を練るはずだ。同時に中南米からの不法移民と麻薬密売者を入国させないために、本当にメキシコ国境に壁を作る努力をし始めるだろう。

だが3100キロに及ぶ国境で本当に高い壁が必要とされるのは数百キロ。すでに高いフェンスが築かれている場所もある。多額の予算が必要になるが、連邦議会は来年から上下両院とも共和党が多数議席になるので、壁建設計画は可決されると思われる。

トランプノミクスへ集まる期待

繰り返しトランプが述べているメキシコ政府に工事費の全額を負担させる案は多難だが、トランプがどういったレバレッジを使うのかは見ものである。

経済の話題にも触れておきたい。

トランプが当選した直後から、為替相場はほぼ全通貨でドル高の動きを見せている。米国債の利回りは急上昇し、株式市場も記録的な高値をつけている。だが、まだ新政権がスタートしていないので実態経済が伴っていない。

本格的な冬に入る前に狂い咲きした桜のようにも見える。桜はすぐに散る運命にあるので、機関投資家につり上げられた株価はある時期に来て、急落することもある。

それでも、過去1カ月半で筆者が話を聞いた複数のエコノミストの中には、来るべきトランプ政権に楽観的な見通しを立てている人もいた。輸出に頼っている中国や日本にはマイナス要因は少なく、経済成長はむしろ上向くというのだ。

特質すべきなのは、トランプがドナルド・レーガン大統領を踏襲する政策を打ち出している点だ。レーガノミックスではなく「トランプノミクス」である。特徴は以下の4点。

(1)大型減税 (2)インフラ投資 (3)保護主義政策 (4)金融規制の緩和

これらによって米経済は好況が持続する可能性がある。当選前は「トランプショック」が世界経済を襲うと恐れられたが、専門家の見方も変われば変わるものである。

バブル再来の危険性も

トランプノミクスが導入されると米経済は数年、好景気に沸くかもしれない。日本も製造業を中心に景気が上向き、1980年代後半に訪れたバブルに似た成長が到来する可能性がある。

そうなると、米国はいずれ貿易赤字と財政赤字の双子の赤字が拡大してくるだろう。しかも日米で共通するのは、好況を本当に実感できるのは企業だけとの見方が強いことだ。

米国では中流層以下の実質所得が20年前と同じレベルにまで下落し、社会格差は縮まっていない。日本でも消費者の買い控えは貯蓄率の高い高齢者にも広がっており、相変わらず市場でのカネの回りが悪い。

トランプ政権はプラス・マイナスの両要因を抱えながらスタートする。大統領は今後4年間トランプのままなので、日本はトランプ政権といかにうまくつき合き、交渉していくかを一から練っていく必要がある。

矢野記事

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米ペンシルベニア州ハーシーで演説するドナルド・トランプ次期大統領(2016年12月15日撮影)〔AFPBB News

ドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利は、ピープルによるエスタブリッシュメントに対する反乱という「革命」の側面と、グローバリズムに対するナショナリズムの反撃という側面がある。

この両側面は、英国のEU離脱決定、イタリアでの「五つ星」運動の躍進などにも共通してみられる、世界的な潮流と言えよう。

中でも今回の米大統領選挙の結果は、世界と日本の将来にとり、最も深刻な影響を及ぼす。

トランプ氏の勝利の背景には何があったのか、トランプ候補は何を訴え新政権はどのような政策を採ろうとしているのかを、主に国内政策について、選挙期間中のトランプ氏の発言などから分析する。

1 背景となった深刻な米国内経済情勢

大方の予想に反してトランプ氏が勝利した背景には、米国内各州の深刻な経済、とりわけ雇用喪失がある。

2016年6月、メーン州での演説で、トランプ氏は、以下のように米国内の雇用喪失の深刻さを訴え、米国の労働者の利益のために自由貿易協定を見直すことを訴えている。

米国はここ20年間で、5000万人人口が増加したにもかかわらず、製造業の雇用は3分の2に減少した。家計所得は2000年から4000ドル減少し、失業率は1970年以来最も高くなっている。

「クリントンはワシントンのエリートのために闘っているが、私は、米国の労働者の利益のために、より公正でバランスのとれた貿易取引を創り出す」

9月にロスアンゼルスでは、以下のように演説し、バラク・オバマ政権の自由貿易政策とリーダーの無能を厳しく批判している。

「米国は、日本、中国、メキシコに対し毎年大規模な貿易赤字を出している。米国に対し、中国は毎年1000億ドルの貿易赤字を出し、日本は毎年数千台の車を輸出し、メキシコからは不法移民が流入している。中国人も数百万人が流入している」

「日本、中国、メキシコの指導者たちは賢明だ。彼らには豊富な交渉力もある。我々にも、交渉のできる有能な賢いリーダーが必要だ。善良だが米国のために何もできないリーダーはもういらない」

「アラバマ州では3万1000人、(テキサス州)ダラスでは2万人が集会に参加した。サイレント・マジョリティは私を信じている。彼ら『ピープル』はもう黙ってはいない。政治家に怒り、国のあり方について論じている」

また9月30日付の『ザ・ヒル』誌は、以下のように、オバマ政権下での一般国民の窮状を訴え既存の民主・共和両党の経済政策を批判し、既存政治にとらわれない実業家トランプ大統領候補の雇用創出政策、財政再建への期待を報じている。

「オバマ大統領が去る頃には、米国の連邦財政赤字は20兆ドルになり、6割以上の米国民の貯蓄は1000ドル以下になるだう。ヒラリー・クリントンと左派の官僚たちは、政府の介入を増やし、自由市場への規制を強化すればするほど、問題解決になると信じていた」

「他方、大半の右派は、単に減税し、補助金をバラまいて、わずかの雇用を生み出せばよいと信じていた。どちらも間違っている。幸い今、実業家出身の大統領候補トランプ氏がいる」

「雇用の創出とは、それぞれの地区議会で工場を閉鎖させないように訴え、税制の環境を維持強化することだ。また、破滅的な貿易協定を再交渉することである」

「トランプ氏の税制計画は、製造業の対外競争力を高め、雇用の海外流出を止め、事業を継続するものだ。また、大幅な減税と米国内での雇用に寄与した企業に対する報奨金により、米国を世界中から雇用を招き寄せる国にするものだ。我々は二度と奪われる立場に立ってはならない」

「赤字急増を生む宣戦布告なき戦争を続けてでも産油国を守るべきだという共和党エスタブリッシュメントの主張に反対する。戦争は最後の手段であり、豊かな国には公平な資金分担を求めるべきであり、米国の納税者を彼らの踏み石にさせるべきではない」

本選挙直前の2016年11月7日にトランプ陣営は次のように、米国内の雇用を喪失させ国内の製造業、畜産業などの主要産業の流出、崩壊をもたらしたとして、NAFTA(北米自由貿易協定)、中国のWTO(世界貿易機関)加盟、米韓自由貿易協定、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)など、既存の貿易協定への反対姿勢を、具体的にデータを上げて明確にしている。

「TPPにより米国の自動車産業は一掃されるだろう。NAFTAにより、ミシガン、オハイオ、ペンシルベニア各州の自動車産業はメキシコに行ってしまった」

「ミシガン州では、クリントンとオバマの政策により、米国の雇用と工場は他国に流出した。ミシガン州では、NAFTAと中国との貿易協定により、全雇用の4分の1以上、21万人分の雇用が失われた。2014年に再雇用された人の5人に3人は給料が減り、3人に1人は給料が2割以上減り、NAFTA締結以来ミシガン州では15万7000人分の雇用が失われた」

「農民も甚大な被害を受けた。ミシガン州の主要畜産品であった牛の、メキシコとカナダへの輸出はNAFTA締結後21年間に46%減少した」

「韓国との自由貿易協定締結以来、ミシガン州が韓国に輸出していた、自動車、機械類など上位10品目の貿易赤字は54%も増加した」

「ヒラリー・クリントンが進めているTPPにより、より多くのミシガン州の雇用が失われ、自動車産業と部品製造工場が中国や東南アジアに行ってしまうだろう」

「オハイオ州では、NAFTA締結と中国のWTO加盟以来、30万7000人分、3分の1の雇用が失われた。オハイオ州でも2014年に再雇用された労働者の5人に3人は給料が減り、3人に1人は20%以上給料が減った」

「NAFTA締結以来オハイオ州では14万5000人分の雇用が失われた。オハイオ州からメキシコ、カナダへの主要輸出品であった牛と豚の輸出は、NAFTA締結以来、それぞれ46%、76%減少した。韓国との自由貿易協定により、ヒラリー・クリントンは7万人分の雇用が創出されると言ったが、締結後の4年間で上位10品目の対韓輸出は58%も減少した」

「ペンシルベニア州では、NAFTAと中国のWTO加盟により、製造業の雇用は30万8000人分、3分の1が失われた。メキシコとカナダへの牛の輸出は46%減少し、対韓貿易では、米韓自由貿易協定締結後、赤字額が54%増加した」

「同様に、ノースカロライナ州では、製造業の雇用は34万8600万人分、43%減少した。特に繊維産業は壊滅し、ハイテク産業も打撃を受けた。この18年間で、ノースカロライナ州の最大の輸出産業であったコンピューターと電子部品は、390億ドルの赤字に転落した」

「この新産業での赤字と、NAFTAによる自動車産業、製造業の赤字とあいまって、ノースカロライナ州の貿易は赤字になった。牛のメキシコ、カナダへの輸出額は、NAFTAの22年間で59%減少した」

「米韓自由貿易について、クリントン長官は7万人分の雇用を生み、輸出を増加させると言っていたが、協定締結以来4年間で対韓貿易赤字は64%増加した」

「ニューハンプシャー州では、製造業の雇用は23万人分、3分の1が失われた。牛のメキシコ、カナダへの輸出額は、NAFTAの22年間で59%減少した」

「クリントン長官は、『新たな改善された米韓貿易協定』により、より多くの雇用が生み出され輸出は増加すると言っていたが、実際には対韓貿易赤字は154億ドル、99%増加した」

「このことは、10万2500人分の米国人の雇用が失われたことに相当する。米韓自由貿易協定締結以来、対韓貿易赤字は23%増加した。特に主要農畜産品であるリンゴとミルクの輸出は、それぞれ4年間で8%と88%減少した」

「TPPによりニューハンプシャー州は、雇用を喪失し、高価な訴訟沙汰に晒されることになるだろう。TPPは、外国企業に同州や米国に対する訴訟における秘密国際法廷での特別な権利を保障している。そのため、外国企業は米国の納税者から際限なく賠償金を得ることができる」

上に挙げられているミシガン、オハイオ、ペンシルベニア、ノースカロライナ、ニューハンプシャーの諸州はいずれも、スウィング・ステイトと呼ばれる、民主党か共和党かいずれか票が割れる州であり、大統領選挙本選挙の帰趨を決する諸州でもある。

中でも、ミシガン、オハイオ、ペンシルベニアなどの各州は、かつては米国の中核的産業地帯であった。しかし、20世紀の中頃から、産業の西部への移転、産業構造の変化、国際化など、種々の要因により衰退してきた。

そのため、「ラストベルト(錆びついた地帯)」と呼ばれている。これらラストベルトの3州の衰退に、近年さらに拍車がかかっている。

これらの3州では、スウィング州の中でも、これまでは、自動車労組組合員などを中心とする民主党支持者が比較的優勢を占めていた。

しかし、ビル・クリントン大統領時代以来民主党政権が積極的に進めてきたNAFTAその他の自由貿易協定の結果、これらの州は、自動車産業の衰退、関連企業の海外移転、雇用の喪失、賃金の伸び悩みなど、深刻な経済危機にさらされてきた。他のノースカロライナ、ニューハンプシャー州も同様の状況にある。

上記の5州のもう1つの主要産業である農畜産業も同様であり、大幅な貿易赤字と減産、雇用喪失を強いられている。これら5諸州は、このようにNAFTA、中国のWTO加盟、米韓自由貿易協定などで最も深刻な打撃を受けてきた諸州でもある。

上記のトランプ陣営の本選挙直前の文書では、これらの自由貿易協定を推進したオバマ政権、ヒラリー・クリントン国務長官の責任を厳しく糺している。本選挙では、ニューハンプシャー州を除き、すべてトランプ候補が制し、大統領選勝利を決定づけた。

その背景には、上記の、自由貿易体制のもとで米国内の産業の空洞化と雇用の喪失が一般の労働者や農民に深刻な打撃を与え、既存の政治家、エスタブリッシュメントに対する憤懣として鬱積していたという事情がある。

トランプ候補は、「ピープル」の憤懣の声を聴き取り、そのエネルギーを「アメリカ・ファースト」のスローガンのもと、結集することに成功した。同時に彼は、既存の政治に染まらない、しかも実業家としての実績を持つ有能なリーダーという、自らのイメージ創りにも成功している。それらが彼を勝利に導いたと言える。

言い替えれば、トランプ氏がくみ上げることに成功した、国内経済問題に対する一般の労働者や農民の憤懣、特に雇用問題が、大統領選挙の勝敗を決する決定的要因となったと言えよう。

2 国内雇用回復、国内産業再生への期待

2016年6月30日付の『フォーブス』誌は、トランプ氏の経済政策について、以下のように論じている。

「トランプ氏が主張する、中間層を代表して貿易と移民について交渉する際の出発点は、貿易は自由であるべきだが、公正(fair)でなければならない。移民は歓迎されるべきだが、評価(measured)されねばならないというものであった」

「トランプ氏こそ、所得格差と地域不安が取り返しのつかない点に達する前に、高まるナショナリズムの感情を正しく導ける、現実主義的な起業家精神を持つ希望の星である」

「英国民がEUからの離脱に賛成票を投じ、米国の有権者がエスタブリッシュメントの候補者にノーを突きつけたのは、数十年にわたる賃金の伸び悩み、生活費の高騰、治安の悪化などをもたらした戦後の経済政治秩序に対する拒絶を反映したものである」

「ビル・クリントン大統領は、統一した労働基準や為替操作を統制する規則を強制することもなく、中国のWTO加盟を承認した。移民受け入れは、慎重に実行する必要があったにもかかわらず、欧米の経済を成長させ繁栄をもたらすとして、軽率に拡大された」

「官僚主義的なEUは、英国民にほとんど離脱交渉の余地を与えなかったが、英国民は投票を通じて変化を要求した。同様に、トランプ氏は、米国民の貿易と移民問題で、これ以上誤った政策を続けたくないという、草の根の声に耳を傾けた」

「トランプ氏は孤立主義者ではない。彼は、グローバルな国際的エリートの利益ではなく、米国民の最善の利益を代表する賢明なグローバリストである」

「EU離脱という投票結果は、英国と大陸との関係のあり方についての交渉の始まりを示しているが、同様にトランプ氏の主張は、米国の政治的エスタブリッシュメントに対し、労働者階層の窮状に対応するよう強いるものだ」

「米国民は、英国のEU離脱による経済落ち込みに陥ることなく、現状からの経済再生を達成できる。トランプ氏の起業家精神に基づく解決策は、そのための最大の希望の星である」

このように、トランプ大統領候補が一般国民の期待に応えて、米国に雇用を取り戻し、経済再生を可能にする最善の人物であることを強調している。

選挙直前に行われたミシガン州での演説で、トランプ氏は、ラストベルトの経済再生策について、以下のように約束している。

「ミシガン州こそ私の最後の演説の場所として最もふさわしい。私が大統領になれば、ミシガン州が外部委託によって失った雇用を取り戻し、ミシガン州を経済の原動力とすることを約束する」

「かつては、地元のフリントで車が作られ、皆さんはメキシコで水を飲むことはなかった。今ではフリントでは車が作られず、皆さんはフリントの水を飲めなくなっている。我々が勝利すれば、自動車工場を造り拡張する。私は皆さんのためにしなければならないことをよく分かっている。それは、これまでよりも大きく、より良く、より強い自動車策業をミシガン州に取り戻すことだ」

さらに「ミシガン州は歴史的な岐路に立っている。もしも我々がミシガンで勝利すれば、我々はこの歴史的選挙で勝利し、我々が望んできたものをすべて実行することができる」と、参加者に本選挙の歴史的な意義を強調している。

また、2016年11月6日のミネソタ州での選挙直前の演説では、有権者に対して、以下のように訴えている。

「我々の失敗を重ねてきたエスタブリュッシュメントは家庭での貧困と海外からの災厄以外に何物ももたらさなかった。我々はこの国を貧血状態にしてきた経済と政治には飽き飽きした。今こそ真の変化、人々を責任ある地位に就ける変化の時だ」

「この選挙で、腐敗した政治支配層か、あなた方『アメリカ人民』か、いずれがこの国を運営するかが決まる。彼女(クリントン)は彼らとともにある。私はあなた方とともにある。これが最後のチャンスだ」

「オバマケアを直ちに撤廃し取り換えるための真の変化が始まっている。オバマケアをそのままにしておけば、ミネソタ州の住民は、保険料の60%の引き上げを経験することになるだろう」

「真の変化とは、我々の政府に正直さを取り戻すことを意味する」

「私が米国の有権者にする第1の約束は、政府の腐敗を終わらせ、この国を特殊利益から解放することだ」

「トランプ政権は、米国から雇用が流出するのを止めるとともに、ミネソタ州から雇用が逃げ出すのを止める。もしある企業が、ミネソタを離れ、労働者を解雇し、別の国に移り、その製品を米国に輸入しようとするなら、35%の税を課する」

「我々は、シェール、原油、天然ガス、クリーンな石炭などの国産エネルギーを、規制から解き放つ。我々は、ミネソタの農民、労働者、小規模事業家にとり有害な、オバマ政権による規制をすべて撤廃する」

以上のように、トランプ候補は選挙戦の最終段階でも、企業の海外流出阻止と規制緩和により雇用を創出することを強調し、経済再生を誓っている。他方でトランプ候補は、大統領選挙直前のミネソタ州での演説でも、レーガン政権以来の大減税を行うと表明している。

このような大減税と、後述するインフラ投資、国防費の削減停止を、20兆ドルに上る連邦財政赤字の中、同時に達成するのは容易ではないと思われる。規制緩和、国内のインフラと軍事への投資、保護主義的な貿易政策により、経済が活性化され、必要な財源が確保できるかが注目される。

3 各種の規制緩和政策

トランプ氏は、経済再生の切り札として各種の規制緩和を進めることを、具体例を挙げて選挙期間中一貫して訴えている。規制緩和全般については、不要な規制をあぶり出し、その1割を止め、ビジネスを活性化するとしている。

(1)銀行業務の規制緩和

トランプ氏は、選挙期間中は銀行やウォール街を攻撃し、ポピュリスト的な発言をしてきた。しかし大統領選挙の最終段階では、ポピュリスト的色彩を薄め、ウォール街寄りの政策を打ち出している。

金融面では、政権移行チームは、金融危機後に銀行規制のために制定され、オバマ大統領が署名した2010年の「ドッド・フランク法」を見直すとしている。また不況期に商業銀行と投資銀行の分離を規定し、メガバンクを破壊した「グラス・スティーガル法」の再導入という選挙期間中の主張も、触れられなくなった。

2016年初めのアイオワの選挙運動でも、トランプ氏は、「ウォール街を、罰を受けずに逃れさせてはならない。ウォール街にも課税すべきだ。ヘッジファンドの減税措置はなくすべきだ。他の候補は銀行に操られている」と主張してきた。

しかしトランプ氏の選挙期間中の財務責任者であったスティーブン・ミニューチン氏は、ヘッジファンドのマネージャーであり、元ゴールドマン・サックスの銀行家でもあった。ミニューチン氏は、財務長官に指名されている。

移行チームの財務政策担当のポール・アトキンス氏はトランプ氏について、「彼は長年にわたり金融規制と企業に対する制裁に反対してきたので、金融関係の経営者とマーケットは、彼の当選を喜んでいるだろう」と述べている。

トランプ政権では、規制緩和が重大な政策項目となるとの移行チーム財務担当者の発言が伝えられると、ニューヨークのダウ平均株価は約4%上昇した。

トランプ氏は減税よりも税体系の見直しを重視している。特に、税体系の見直しにおいては、会社や投資家にとり、株式買い取りよりも投資を魅力的なものにしなくてはならないとみている。

(2)労働政策の規制緩和

労働政策については、トランプ氏は、労働省の新規制には反対するとしている。

顧客にとり最善の利益となり、顧客とアドバイザーの間の利益対立を解消するために、すべての仲介業者と財務アドバイザーに対して消費者側にとり有利になる基準を定めるための、労働省の新しい規制にも反対するとみられている。

(3)国内エネルギー産業の規制緩和

国内エネルギー産業へのインフラ投資については、積極的である。

ジョージ・W・ブッシュ政権の政府高官でトランプ氏に近い人物の発言によれば、これまで環境保護と安全性の観点からオバマ政権下では開発が中止されてきて論争となっている、キーストーンXLやダコタ・アクセスのパイプライン計画について、トランプ新大統領は就任早々にも前進させるだろうと語っている。

キーストーンXLはカナダのアルバータ州のタールサンドとメキシコ湾岸にある米国の精油所を結ぶパイプラインで、専門家は誰もが最高のものだと称賛する設備である。パイプラインの安全性を判定する権限を持つ連邦機関も安全性に問題はないとみている。

それにもかかわらず、オバマ大統領は、パリの気候変動会議を1か月後に控えているとの理由で、2015年、パイプラインの開発認可を拒否した。パイプラインを敷設しているトランスカナダ会社は、敷設を拒否している米連邦政府を現在訴えている。

現在使用中のパイプラインは鉄道よりも安全であることは立証されている。それにもかかわらずオバマ政権は、連邦のパイプラインの安全性を確認する担当機関には意見を求めず、実情を知らない司法省にパイプライン開発の許認可権を与え、パイプラインの専門家の発言は封じられている。

オバマ政権のもとで一部の活動家たちは、陸軍工兵団がパイプライン建設に許可を与える前に、環境評価が不十分として反対するという戦略を採っている。しかし、166ページに及ぶ陸軍工兵団の環境評価報告の内容は、事実に基づき詳細に記されたものであり、活動家たちが主張するような問題はない。

しかしオバマ政権は、水質汚濁を理由にパイプライン計画に反対するネイティブ・アメリカンと活動家たちが2度も法廷で敗訴したにもかかわらず、彼らを擁護して、パイプライン計画の中止を命じている。

トランプ氏の移行チームは、元のブッシュ政権やレーガン政権のメンバーから多くの制度上の知見を得ている。しかし、前政権の関係者の多くは、トランプ新政権での地位を得るために協力しているわけではない。それほど、オバマ政権の行き過ぎた政策に対する、保守良識派の不満は鬱積していると言える。パイプライン問題はその点を象徴している。

(4)社会保障関連法の規制緩和

トランプ政権は。オバマ政権のもとで制定された「可能介護(affordable care)法」に盛られた、大量の実施規則、指針を、来年早々に修正または削除する。健康介護法と保険金支払いを巡る訴訟を含め、司法省が係争中の法案について、トランプ政権は、共和党員に有利なように法案を修正するであろう。

トランプ政権は以下のような方法により、オバマケアの規制を緩和しあるいは修正することになる。

・下院の共和党員が、オバマ政権は、議会の承認を得ることなく、非合法の、コスト分担に対する補償金支払いを命じているとして、法務省を訴えている。トランプ政権は、この訴訟について、法務省側に法廷闘争を止めさせ、市場を弱めるような保険者への補償金の支払いを止めるだろう。

・最も重篤な患者にかかる費用をカバーするためのリスク・コリダー(回廊)保険金の支払いについて、オバマ政権は保険者に支払わせるように訴訟を決着させようとした。これに対し、議会の共和党は、リスク・コリダー保険は、予算に対し中立的でなければならないとの法律に違反する違法な補償金だとして強硬に反対している。トランプ政権は、司法省に対し、この訴訟についても共和党の意向に沿うように決着させるだろう。

・トランプ政権は、誰もがいずれ必要とする個人の医療介護保険の適用範囲拡大を保証するために、個人が義務的に支払うべき保険金に、より多くの例外規定を設けるであろう。

・トランプ政権は、オバマケア基金に対する、奉仕または登録による支援を中止するであろう。

・トランプ政権は、オバマ政権がすべての企業に対し、その保険計画に避妊法を含めるよう雇用者に要求していた、保健福祉省による義務規定を見直すであろう。最高裁は、より多くの事業者に例外を認める判決を出している。

4 トランプ新大統領の移民政策、対テロ政策

トランプ候補は2015年5月、メキシコとの国境に壁を造ると明言している。その際、不法移民には善良な人もいるが、「一部には強姦者、殺人者、麻薬密輸人も含まれ、彼らは南部の国境から入ってくる」と、メキシコからの不法移民の危険性を訴えている。

トランプ候補は、壁を造る理由として、メキシコ国境が乗り越えられるため、米国に安全保障上の危機がもたらされているとの危機感を指摘している。また、壁の建設に対しては1億人の米国民の暗黙の支持があり、バチカンにも壁があるが誰も法王を非難はしないと、正当性を主張している。

さらに、壁建設の資金は「メキシコに払わせるべきだ」、なぜなら、メキシコが、「米国をかじり取り、国境と経済の両面で利益を得ているからだ」と主張している。

トランプ候補は、具体的にどのようにしてメキシコに壁建設の資金を出させるかについては言及していないが、米国がこれ以上不法移民を受け入れられない、我慢の限界にきているとし、壁建設などの強硬策の必要性を説いている。

また建設業者としての実績のあるトランプ氏は、「誰にも自分のような壁は作れない」とも表明し、壁建設実現への自信を見せている。

2015年2月にトランプ候補は、オバマ大統領の不法移民に対する恩赦を違法として、一刻も早く撤廃するよう主張した。メキシコからの不法移民には、テロ組織とつながりを持つ数千人に上る者も含まれており、事態はさらに悪化していると訴えている。

2016年11月にはミネソタ州で移民対策について、以下のように具体的に述べている。

「トランプ新政権は、受け入れ先の地域住民の了解なく海外からの難民を受け入れない。テロに好意的な地域からの難民については、全面的な審査が終り、受け入れのための態勢が保証されない限り入国許可を出さない。我々は国境の安全を守り防衛する。もちろん、巨大な壁も建設する」

「我々は、不法移民の流入を止め、外国人犯罪者を追放し、市民への脅威となっている犯罪者と犯罪組織を最後の一人まで排除する」

ムスリム移民についても、米国の指導者が何が起こっているか分かるまで、ムスリム移民の米国への流入を全面的に禁止すべきだと主張している。世論調査結果によれば、米国人の25%が米国内での暴力行為の一部はジハードとして正当化されていると感じ、51%が、米国のムスリムには、(米国を捨てて)イスラム法で統治されるとの選択肢が与えられるべきだという考えに同意している。

このように米国民の間でムスリム移民に対する反感が高まっている。

トランプ氏は、このような世論を踏まえ、米国民の間で憎悪が理解を上回っていることは明らかであり、この問題とそのもたらす脅威について我々が理解し対応策を決める前に、ジハードを妄信する連中のテロの犠牲者になるわけにはいかないとし、ジハードから米国民を守るべきだと訴えている。そのための決定的な方法がムスリム移民の全面入国禁止であると主張している。

2015年3月、イランとの交渉について、トランプ氏は、ジョン・ケリー国務長官はイランに対し、我々の要求はこれだと突きつけ、もしイラン側が受け入れないなら交渉を打ち切るべきだ、オバマ政権はイランと長々と交渉しているが、こんなものは交渉とは言えない、私なら、イランとの交渉は一日で片付けられると、対イラン強硬論を主張している。

また、オバマ政権はあまりにも絶望感にとらわれ過ぎて、イランと悪い交渉をしてしまった、イスラエル寄りとは思われないと非難している。

イスラエルについてトランプ候補は、エルサレムはイスラエルの首都であり、市民の安全上首都は分割されるのは望ましくないとし、「私はイスラエルの真の友である」と発言し、クリントン氏が引き継ごうとしているオバマ政権のイスラエルたたきの政策を止めさせると約束している。

銃規制については、国民に武器保持の権利を認めた憲法修正第二条を尊重するとして、銃規制反対の姿勢を明示している。また、最高裁判所判事については、堕胎に反対し生命を尊重する保守派の判事を任命することを約束している。

これらの国内での銃規制反対、堕胎反対などはいずれも共和党の伝統的な支持層である全米ライフル協会、キリスト教福音派などの主張に沿った政策である。

黒人層のトランプ支持率は8%、クリントン支持率が88%とも報じられており、黒人は最も反トランプの多いマイノリティだが、その中でも、黒人の若者の大半が独立派を支持しているとの、次のような声もネットを通じて寄せられている。

「クリントン氏は自分が最善と思うことをするだけ、民意に迎合するだけで、黒人の若者の気持ちが分かっていない。トランプ氏は、若者の悩みに応える政策を提示してきた」

「オバマ政権の8年間がたっても、4割の黒人の少年少女が貧困のうちに暮らしており、黒人は持ち家比率が白人よりも低く、失業者の比率も高い。黒人の若者の多くは、失うものはないと感じている。オバマ政権の8年間の政策は何ももたらさず、黒人層の傷を深めただけだ。クリントン氏がオバマの政策を継承するのは我慢ならない」

このような黒人の若者の声は少数意見とみられるが、オバマ政権の政策が黒人層にすら十分な恩恵を与えず、失望を招いている一面を伝えている。なお、トランプ氏は、黒人の若者に対しては、特に教育の機会の拡大を訴えている。

ネイティブ・アメリカンも民主党支持が多数派のマイノリティであるが、保護区内の石油などの数十億ドルに上るエネルギーに対する備蓄規制を緩和し、ネイティブが主体的に事業に取り組めるようにしてもらいたいとの要望もある。

この点では、トランプ氏の主張が一部のネイティブ・アメリカンにも受け入れられるものであることを示している。

ヒスパニック系のトランプ候補に対する支持率は28%と報じられている。しかし、ヒスパニック系の米国人の中にも、米国は法治国であり、メキシコ出身者でも不法移民は不法なことに変わりはなく、彼らのおかげで、米国の市民として立派に責務を果たしているヒスパニック系の市民の職が脅かされ、あるいは地域の治安が悪化するなど迷惑を受けているとして、壁の建設を支持する声もある。

このように、トランプ候補の移民政策やテロ対策に関する主張は、過激に聞こえても、各種エスニックグループの本音の要求に応えた面も多い。そのため、マイノリティも含めて幅広い支持を集めることができたと言えよう。その意味で、トランプ氏の主張が米国の分断を深めたという指摘は、必ずしも正確とは言えない。

5 高い軍、法執行機関への評価と期待

トランプ氏は2016年年9月15日、ロスアンゼルスの海軍艦艇「アイオワ」艦上の演説で、以下のように、軍の再建と退役軍人、国境警備隊、警察官に配慮した政策をとることを明言し、国防や治安の第一線に立つ人々に相応の処遇を与え、強い米国を再建することを約束している。同時に、対外的にも交渉力のある有能なリーダーの必要性を訴えている。

「退役軍人が多くの場合、不法移民よりも冷遇されているのは不公正だ。退役軍人用病院の不適切な管理、長い待ち時間を是正し、システムを改革する。民間病院の利用を進め、サービスを向上し、治療水準を改善する。米国を再び強くし、軍を強化し、退役軍人のための社会保障を充実する」

「私を77人の中将、200人以上の軍人、22人の名誉勲章受章者が支持している。シークレットサービス、ニューヨーク市警にも感謝している。私は、『米国第一』を信条とし、再び米国に誇りをもたらす」

「イランやプーチンから尊敬されるような大統領では駄目だ。イランとの取引にオバマは1500億ドル以上をつぎ込み、核兵器を保有する権利を約束した。クリントンとケリーは世界中で破綻を招いている」

「国内にも多くの問題がある。不法移民により米国民の所得が失われ、麻薬が密輸入され、富が国外に流出した」

軍については、オバマ政権の国防費の強制削減措置を止め、強い軍を再建すると表明している。また法執行機関についても、「国境警備隊も自らが無力なことにどうすればよいか議論している。

不法移民の子供たちを85年間も面倒を見る必要があるのだろうか?」と演説し、理解と支援の姿勢を明確にしている。尋問方法として問題になっていた水責めについても、拷問に当たらないとして、法執行機関の活動への拘束を緩めている。

まとめ

以上から、トランプ候補の主張が、いかに、一般国民の各層、各州、各種エスニックグループ、軍・法執行機関など、幅広い国民の支持を得るような内容であり、またそれに応じるきめ細かな訴えを、選挙期間を通じて、演説会やメディアを使い様々の機会に展開してきたかが分かる。

また、単なるポピュリストではなく、ウォール街、銀行、エネルギー産業、軍需産業など、経済界の要望も踏まえた現実的政策を当選直後から正面に打ち出すようになっており、今後の政権基盤が財界主流を巻き込んだ堅固なものになる兆候を見せている。

トランプ氏は政治歴も軍歴もない実業家出身の初の米大統領であり、選挙期間中に主張していた政策も内政が主である。内政面の政策運営については、選挙期間中の公約から一部乖離することはあっても、その支持基盤を為す一般の労働者、農民、小規模企業家などの声を反映した政策をとらねばならないとみられる。

もともと共和党内でも主流派から外れ、党組織の支持はあまり期待できないトランプ新大統領としては、2期目を目指すためにも、雇用の確保、企業の海外移転阻止、各種の規制緩和、減税、自由貿易政策の見直し、壁の建設を含めた移民対策と国境管理の強化、治安維持とテロ対策、国内インフラ投資の拡大など、支持層の利害に直結した政策については、概ね選挙間の公約に沿って実行されるとみられる。

他方、一般の民衆には直接影響の少ない、外交、国防など安全保障面の問題は、トランプ政権に入る専門家グループの意見がかなり反映されるとみられ、今後の政策は不透明な部分が多い。

しかし、いずれにしても、「米国の国益第一」を追求し、「米国を再び偉大にする」との大目的に沿う政策になるであろう。

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『トランプ氏の「一つの中国」見直し論がもたらす衝撃 なぜ米中関係の根幹を揺るがすことになるのか』(12/29JBプレス 阿部純一)について

1/3日経<アジア通貨防衛を強化 ドル融通枠、3兆円拡大へ 

アジア各国が通貨防衛で協調する。日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)は2017年中にも各国の合意で貸し借りできるドルの融通枠を現在の720億ドル(約8兆円)から960億ドル(約11兆円)へ約3兆円増やす。今年は世界の政治情勢が変わり、米国の追加利上げや欧州の選挙次第で新興国通貨に急落の恐れがある。アジアの通貨交換協定をテコに一段と関係を深め、金融危機を防ぐ備えを厚くする。

financial-safety-net

アジア各国は5月、横浜市でアジア開発銀行(ADB)総会と日中韓・ASEAN財務相会議を開く。こうした場を使い、各国は金融危機の際に多国間でドルを貸し借りする「チェンマイ・イニシアチブ」という枠組みの拡充で合意する方向だ。

同枠組みは1997年のアジア通貨危機を踏まえ、アジア各国が整備した。ドルを借りた国は外国為替市場で「ドル売り・自国通貨買い」の為替介入を実施して自国通貨の急落を抑える。

ドルの融通枠は全体で2400億ドル(約28兆円)あるが、このうち各国の合意だけで貸し出せるのは3割、約8兆円だ。残り7割は国際通貨基金(IMF)の金融支援後に融通する仕組みとなっている。IMFの支援決定には一定の時間がかかるため、ASEANは急速な資金移動へ柔軟に対応するには各国の合意だけで融通できる割合を引き上げるべきだとする。

資金の貸し手となる日中韓は資金の焦げつきを懸念し、合意だけの融資枠を3割に固定してきたが、16年末の事務レベル会合で歩み寄りの機運が生まれた。物価上昇率や外貨準備高など経済財政運営やドルの流動性に関する指標を支援の条件とし、貸し倒れリスクを防ぐことで各国が一致。日韓も野放図な貸し出しは防げるとみて、合意のみの融資枠を3割から4割に上げる姿勢に転じた。

各国が協調姿勢に転じたのは米連邦準備理事会(FRB)の追加利上げの影響が大きい。FRBが16年12月に追加利上げに動くとの観測が強まるとマレーシア通貨のリンギ相場は1ドル=4.4リンギ台と1998年以来の水準に下落。タイのバーツも対ドルで昨年秋に比べ約5%安い。

FRBは17年に利上げを3回実施するとしており、アジア金融市場に一定の影響が出ることは避けられない。欧州ではフランスやドイツなどでトップを選ぶ選挙が相次ぎ、結果次第では金融市場に動揺が広がるリスクもある。

チェンマイ・イニシアチブと並行して、日中は2国間の通貨交換協定も進める。日本はマレーシアやタイと協定締結の交渉に入っている。中国は15年11月にインドネシアと資金枠を拡大。マレーシアやタイと協定の期限を延長している。ただ中国は2国間協力を重視し、ドル融通枠の拡大に反発する可能性もある。>(以上)

中国の軍事膨張主義や韓国の反日活動(慰安婦像)を止めさすには経済的に追い込む必要があるのに、それを助けるというのは日本政府には大局観がないとしか言いようがありません。日本がチェンマイ・イニシアチブを使うことはないし、約束を反故にするのが当たり前の中韓は融資しても踏み倒す可能性が高いでしょう。形を変えた通貨スワップでしょう。日本政府の当局者はハニーか金で籠絡されたとしか思えません。戦争を避けるなら、中韓の経済を崩壊させるのが一番です。

本記事にありますように「一つの中国」は虚構で、それを今まで米国はさも「実体」があるように演じてきました。対ロ戦略上必要だったのでしょうが、逆に怪物を作り上げてしまいました。そもそも、中国国民党も中国共産党も中国人の政権ですから、独裁になり、粛清がごく普通に行われました。228事件や大躍進、文化大革命を見れば分かります。

台湾は国姓爺合戦で有名な鄭成功を大清帝国が打ち破り、清に属したとはいえ、「化外の地」扱いでした。日本が統治したのは日清戦争後の1895年から第二次大戦敗戦後の1945年までの50年間ですが、台湾に与えた影響は大きいです。でなければこんなに親日国になっていないでしょう。反日教育を国家政策としている中韓とは違います。

中共は漢人の政権で少数民族を弾圧しています。チベット、ウイグル、モンゴル人がその対象です。清は満州族の政権で、漢民族の政権ではありません。漢人は領土についていいとこどりをしています。漢人に東北三省、チベット、ウイグル、内モンゴルを統治する権利はありません。況してや台湾においてをや。戦後は蒋介石の国民党亡命政権が統治しましたが、次の蒋経国国民党政権で民主化が進められ、李登輝総統が選ばれたり、陳水扁民進党首が総統になったりしました。独裁の中共とは違いますし、誰も人権が保証されない国と一緒になりたいとは思っていないでしょう。香港住民が今そう思っている筈です。英国との「一国二制度」の約束すら守れない国です。日米豪印露で中国の暴発を抑え、台湾を守るようにしなくては。いつも言っていますように、時間の利益を中国に与えるのは下の策です。

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台湾・台北でスピーチをする蔡英文総統(2016年10月10日撮影)。(c)AFP/SAM YEH〔AFPBB News

米国の次期大統領となるドナルド・トランプ氏による「米国が“一つの中国”に縛られるのはおかしい」という発言が注目されている。

米「フォックス・ニュース」の12月11日のインタビューに応えた発言であり、「中国の貿易・外交政策次第では」という条件付きのものであった。しかし、たとえ条件付きの発言であるにしても、「一つの中国」に疑義が示された衝撃は大きい。言うなれば米中関係の根幹を揺るがすことにもなるからだ。

現状の米中関係に不満を抱いているトランプ氏

1979年1月の国交樹立以降、歴代の米政権が遵守してきた「一つの中国」政策にはそれなりの重みがある。しかも、それは台湾の現状を維持するために米中がギリギリの妥協を重ねて生み出したものだった。

少し詳しく論じてみよう。

米国はカーター政権時に、同盟関係にあった台湾(中華民国)と国交ならびに相互防衛条約を断ち、中華人民共和国を唯一正当な政府として認め、その代わりに中国は台湾に対する「武力解放(武力統一)」を「平和統一」に改めた。米国と中国はそうやって台湾の扱いについて折り合いをつけ、以来、歴代の米政権は「一つの中国」政策を採り続けてきた。

米国はまた、中台の交渉による平和的統一への期待を表しつつ、台湾への防衛用兵器の供与などを盛り込んだ「台湾関係法」を米国内で成立させ、台湾の安全保障に引き続き関与する姿勢をとった。もちろん、台湾関係法は台湾の「独立」を助長するものではなく、あくまで台湾海峡両岸の現状維持を目指すものであった。

では、トランプ氏は米中関係をどうしたいのだろうか。

トランプ氏や彼の周辺にいる政策アドバイザーには、台湾が置かれている状況への不安と同時に、現状の米中関係への不満がある。つまり、米国が不必要な譲歩を重ねてきた結果が中国の現状変更を伴う拡張主義的行動を許し、民主主義体制下にある台湾が中国の経済的・軍事的圧力にさらされている事態を生んだと見ているのである。

たしかに、間もなく退場するオバマ大統領が、台湾が望む兵器、例えばF-16戦闘機C/D型の新規供与などを却下してきた事実も含め、中国に毅然とした態度を取ってきたとは言い難い。

同様に、台湾内部でも、もはや「一つの中国、台湾は中国の一部」という考え方を支持するのはごく少数派で、大多数の人は台湾が「事実上独立した政治主体」であるという現状を支持している。米国がそうした状況にある台湾に同調すれば、中国の言う「一つの中国」はすでに虚構化しているのであって、実態は「一つの中国、一つの台湾」となっている以上、米国が中国の主張に追随するのはおかしいと考えても不自然ではない。

中国人にとって台湾とは?

しかし、中国人のメンタリティーはおそらく違うのだろう。台湾は日清戦争で中国(清)が敗れた結果、日本に割譲されたが、もともとは中国に帰属していた。だから第2次世界大戦で日本が敗れた結果、蒋介石の中華民国が台湾を取り返したのは当然のことであった。その中華民国を、毛沢東が中国革命で台湾に追いやったが、米国が蒋介石を庇護した結果、今日まで台湾に中華民国が命脈を保っている。「中国革命を成就させること、つまりは台湾を中国に統一するという中国(中華人民共和国)の悲願を成就させることは、中国に課せられた神聖な使命だ」ということなのだろう。中国にとって、台湾はあくまでも「不可分の領土」なのである。

中国のこの「一つの中国」の論理をよく理解している米国人なら、トランプ氏の発言がいかに危険なものであるかが分かっているだろう。

もし米国が、台湾の「独立」を助長するような動きに出れば、米国との戦争の危険を冒してでも中国は阻止する行動を取るだろう。逆に、もし中国の指導部が拱手傍観するようであれば、愛国ナショナリズムに駆り立てられた中国人民が指導部を厳しく突き上げることは想像に難くない。つまり、中国はいずれにしても暴れ出すことになる。

中台が歩み寄れる余地はどんどん消滅

とはいっても、こうした中国側の事情を現在の台湾の人たちは懸念こそするだろうが、だからといってそのまま受け入れ、おとなしく我慢し続けるとは思えない。

中国の台湾との「平和統一政策」は、香港で先行適用された「一国二制度」である。だが、香港の現状が示すようにうまく機能していない。台湾はこの政策を当初から拒否し続けてきた。しかも人口の大多数が台湾で生まれ、台湾で育った人々であるから、中国は彼らにとってたまたま言葉が通じる「外国」にすぎない。要するに、中国と台湾とでは、お互いの認識が果てしなく乖離してしまっていると言っていいだろう。

お互いに歩み寄れる余地が時間の経過とともに消滅していく中で、経済的にも軍事的にもパワーでまさる中国が、台湾を経済的に従属させ、軍事的に戦意を喪失させることで、軍門に下ることを強要しようとしていると、台湾の人々は受け止めている。米国に頼り、防衛面ではあまり期待できない日本にも頼るのは、台湾にとって日米同盟以外に、他に寄る辺がないからである。

その台湾では、2016年5月に発足した民進党の蔡英文政権が、「一つの中国」で中台が合意したとされる「92年コンセンサス」を認めない姿勢を堅持している。そのため、中国側は台湾への観光客を制限したり、台湾を国際機関の会議から締め出そうとしたり、様々な形で圧力を強めている。トランプ発言は、そうした状況下で発せられた。

米国内で高まっていた台湾へのシンパシー

こうした背景を理解した上で、あらためて今年の米大統領選挙を振り返ってみると、米国内での台湾へのシンパシーの高揚が見えてくる。

今年の米大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン候補も、共和党のトランプ候補も、共に中国には厳しい姿勢を取っていた。それは、米国全体に中国に厳しい目を向ける雰囲気があったからである。

それに加えて、米政界には今年に入って「台湾寄り」の姿勢が目立っていた。南シナ海における中国の人工島建設など、米中関係にマイナスになることを承知の上で、中国は勢力拡張政策を取ってきた。米国内の動きはそれに対する反動と見ることができる。

2011年、台湾総統選挙を翌年に控え、民進党の総統候補として蔡英文が訪米した時、米国側はけんもほろろの対応をした。米中の協調を図る上で、海峡両岸の接近に積極的な国民党の馬英九総統の続投が望ましいとの判断があったのだろう。ところが、翌年の総統選挙をにらんだ2015年に蔡英文が訪米した際は、米国側は手のひらを返すように歓待した。米国がいかに中国との関係に苛立っていたかが分かる。

その動きは今年になっても止まらず、米上下両院では6月から7月にかけて、台湾関係法と台湾に対する「6つの保証」を再確認する決議案が全会一致で採択された(決議案の正式名称は「『台湾関係法』と台湾に対する『6つの保証』を米台関係の基礎とすることを再確認する両院一致決議案」)。

(「6つの保証」とは、レーガン政権時代の1982年に議会に対して説明された6項目からなる台湾政策。(1) 台湾への武器供与の終了期日を定めない、(2) 台湾への武器売却に関し、中国と事前協議を行なわない、(3) 中国と台湾の仲介を行わない、(4) 台湾関係法の改正に同意しない、(5) 台湾の主権に関する立場を変えない、(6) 中国との対話を行うよう台湾に圧力をかけない、を指す。)

こうした動きがトランプ次期大統領の対中政策を形作っていると言っても過言ではない。

この議会決議を受け、米共和党は政策綱領にこの「6つの保証」を書き込んだ。これに関与したとされるのが、共和党系シンクタンクであるヘリテージ財団のフェローを務めるスティーブン・イェーツ氏である。彼はトランプ氏の政権移行チームのメンバーとなっている。

また、同じく政権移行チームでトランプ氏の外交・経済アドバイザーを務め、このほどトランプ次期政権がホワイトハウス内に新設する「国家通商会議」の委員長に指名されたカリフォルニア大学アーバイン校教授のピーター・ナバロ氏も台湾寄りの姿勢が明確だ。彼は、今年7月「ナショナル・インタレスト」のウェブサイトで「米国は台湾を見捨てることはできない」を掲載し、台湾の置かれた立場に対する深い同情の念と米国にとっての高い戦略的価値を論じている。ナバロ教授は米中の通商政策の専門家だが、今後は米中外交へも影響力を行使しうる立場になる。

抜本的見直しが求められている対中政策

では、トランプ政権下の米中関係はどうなるのか。台湾への高まるシンパシーが「一つの中国」政策を揺るがすことになるのか。

はっきり言えることは、これまでの米国による「一つの中国」政策が歴代政権の対中「関与(engagement)」政策と相まって、中国の経済大国化、軍事強国化の手助けをしてきたことだ。その中国が一方的な「現状変更」勢力となっている現在、米国に対中政策の抜本的見直しが求められているということだ。

米国の穏健派は「一つの中国」を見直す危険を指摘するが、その立場が往々にして中国の立場を代弁することになっている点に気づかずにきた。そうした状況に一石を投じたトランプ氏の発言は議論を広げ、深める機会となった。問題は、いかに政策にまで高めるかだ。米国外交の知恵に期待したい。

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『習近平主席は本当に強いのか~日経大予測2017  編集委員 中沢克二』(12/30日経)について

今年は習近平VSトランプの争いが本格化するのではないかと思っています。

12/21ロイターによれば、「トランプの閣僚として新政権の主要ポストに名前が挙がった候補者と、すでに指名が決まった新閣僚の顔ぶれは以下の通り。

<すでに指名が決まったポスト>●国土安全保障長官 *ジョン・ケリー(海兵隊退役大将)●環境保護局(EPA)局長 *スコット・プルイット(オクラホマ州の司法長官)●労働長官 *アンディー・パズダー(ファストフード大手CKEレストランツ・ホールディングスの最高経営責任者)●住宅都市開発長官 *ベン・カーソン(元神経外科医)●大統領首席補佐官 *ラインス・プリーバス(共和党全国委員長)●首席戦略官兼上級顧問 *スティーブン・バノン(保守系メディア「ブライトバート・ニュース」の元トップ)●司法長官 *ジェフ・セッションズ(アラバマ州選出共和党上院議員)●中央情報局(CIA)長官 *マイク・ポンペオ(カンザス州選出共和党下院議員)●国家安全保障担当の大統領補佐官 *マイケル・フリン(退役陸軍中将、元国防情報局長)●国連大使 *ニッキー・ヘイリー(サウスカロライナ州知事)●教育長官 *ベッツィー・デボス(共和党の献金者。党の元ミシガン州委員長)●厚生長官 *トム・プライス(ジョージア州選出共和党下院議員)●運輸長官 *イレイン・チャオ(元労働長官。夫は共和党のマコネル上院院内総務)●財務長官 *スティーブン・ムニューチン(元ゴールドマン・サックス(GS.N)幹部、選挙戦でのトランプ陣営の財務責任者)●商務長官  *ウィルバー・ロス(著名投資家、ファンド「WLロス」会長)●国防長官 *ジェームズ・マティス(元中央軍司令官)●エネルギー長官 *リック・ペリー(前テキサス州知事)●国家経済会議(NEC)委員長 *ゲーリー・コーン(ゴールドマン・サックス社長兼最高執行責任者)●国務長官 *レックス・ティラーソン(エクソンモービル(XOM.N)の会長兼最高経営責任者) ●中小企業庁長官 *リンダ・マクマホン(プロレス団体の共同創業者で元最高経営責任者)●内務長官 *ライアン・ジンキ(モンタナ州選出共和党下院議員)●陸軍長官 *ビンセント・ビオラ(高頻度取引企業バーチュ・ファイナンシャル(VIRT.O)創業者)●行政管理予算局(OMB)局長 *ミック・マルバニー(共和党下院議員、サウスカロライナ州)●国家通商会議(新設、National Trade Council) *ピーター・ナバロ(対中強硬派エコノミスト)

<名前が挙がっている候補者>

●米通商代表部(USTR)代表 *ダン・ディミッコ(米鉄鋼大手ニューコア(NUE.N)元CEO)」(以上)

オバマ時代に不遇を託った軍経験者とMBA出身の実業家で構成されています。オバマの口先だけの”change, yes, we can”とは違うものを感じさせます。米国の世界覇権に挑戦して来る中国に甘い顔はしないという事です。中国に時間の利益を与えるのは米国にとって不利になります。=日本にとっても不利になるという事です。南シナ海に日本の自衛隊も「航行の自由作戦」に参加すべきです。尖閣を日米共同で守るには中国に日米の絆を見せつけた方が良いでしょう。国際法に違反している訳でなく、中国の主張する九段線は国際仲裁裁判所で否定された訳ですから。中国が嫌がっているのが分かりますから、どんどんやるべきです。南スーダンに自衛隊を派兵するのは中国の為になるだけで意味がありません。早く撤退した方が良く、南西諸島に配備した方が良いと考えます。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201608/CK2016082102000111.html

本記事にあります、チャイナ7で習=太子党、李=団派、張徳江=江派、兪正声=太子党、劉雲山=江派、王岐山=太子党、張高麗=江派です。常務委員の68歳定年制を破り、王岐山を継続任用させるには理由が必要になりますが、「理屈は後から貨車でやってくる」のでしょう。それを認めれば、習の任期2期というのもあっさり破られるのでは。何せ反腐敗運動で政敵を沢山作りましたので、政権を手放した瞬間に粛清されるかも知れませんし。王岐山を重用すれば、彼が寝首を掻く可能性もあります。

経済的に中国を追い込むのが戦争を避けるためには一番かと思います。勿論気の狂った中共が暴発する可能性もありますが。中国に進出している日本企業も痛みを受けますが、授業料です。諦めるべきです。人権弾圧、粛清が当たり前の共産主義国家が世界制覇を狙っています。その野望を押しとどめなければなりません。日本人にとって、覚悟が試される1年となりそうです。

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2017年、日本と世界の経済・政治はどう変わっていくのか。日経新聞のベテラン編集委員の見通しを、このほど出版した『これからの日本の論点 日経大予測2017』(日本経済新聞出版社)をもとに紹介する。

■共産党大会の人事に注目

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習近平・中国国家主席(左)とトランプ・米国次期大統領=AP

中国の2017年最大の焦点は、秋以降の共産党大会人事である。「チャイナ・セブン」といわれる7人の最高指導部=党政治局常務委員の顔ぶれがどうなるかは、今や世界の関心事だ。世界第2位の経済大国で、軍事面の実力も向上している。中国がどうなるかは世界の政治・経済に直接、大きな影響を与える。

中国国家主席、習近平は、17年最高指導部人事で多数派を形成したい。それが、5年にわたり苛烈な「反腐敗」運動を展開した目的だった。7人中4人を自派で固められればベストである。現在の7人の中で、習と、首相の李克強を除く5人は年齢制限により引退するはずだ。68歳という年齢制限には張徳江、兪正声、劉雲山、王岐山、張高麗の5人がひっかかる。彼らは引退を迫られる。その穴をいかに埋めるかの勝負になる。

もう一つの焦点は、「ポスト習近平」を担う新世代の指導者が決まるのかどうかだ。これは、現在の50代の「革命第6世代」の戦いになる。習としては、自らの意向を尊重する従順な人物を自派から選びたい。だが、なかなかそれに適当な人物はいない。

注目すべきグループに、高級幹部の子弟らを指す「太子党」がある。1949年の新中国の建国前の革命戦争を戦ってきた紅(あか)い幹部の子息らを指す「紅二代」もこの一派である。習近平自身もこのグループから抜てきされた。重要な基盤であり、この勢力から誰をエースとして引き上げるかも面白い。

■「南シナ海」、米トランプ政権の出方次第

南シナ海への中国の海洋進出を巡りフィリピンが提訴した裁判でオランダ・ハーグの仲裁裁判所は16年7月12日、中国が管轄権の根拠とする「九段線」には国際法上の根拠がないとの判決を下した。その後、フィリピンのドゥテルテ政権の急速な中国接近などで、南シナ海問題は一見、中国の思惑通りに動いているかのように見える。

だが、次期米大統領、トランプの出方次第で事態は大きく変化する。「中国は要塞を築いている」。当選後、たびたび南シナ海に言及するトランプが、本格的にアジアの安全保障問題に取り組むかどうかは、なお推移を見極める必要がある。これは「一つの中国」に必ずしも縛られない、というトランプの驚くべき発言の今後にも関係する。南シナ海問題、台湾問題、北朝鮮問題……。これらは全て予想が難しいトランプがカギを握る。

そして日中関係も米中関係の動きをにらむ展開になる。17年は、日中国交正常化から45周年に当たる。日中が交流を強化する名目は存在する。これをどう生かすか。16年9月、中国・杭州の20カ国・地域(G20)首脳会議で日中首脳会談を実現させた、首相の安倍晋三と習近平の間でさらなる信頼関係の構築が必要だ。

自民党総裁任期の延長を固めた安倍。その政権の基盤は安定している。習近平指導部としても当面続く安倍政権を無視できない。この状況を日本側もうまく利用し、対中関係を軟着陸させる必要がある。

中国経済の減速が続いている。17年も警戒が必要だ。中国経済の現状分析で注目すべき動きがある。習の経済ブレーンとみられる人物が共産党機関紙、人民日報で語った中身だ。紙面上、匿名の語り手は「権威人士」と呼ばれる。

■「L字型経済」の衝撃

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中国経済は下降した後に当面上向かない「L字型」をたどるとの観測もある(上海市の証券会社)

「中国経済はU字型回復などあり得ない。もっと不可能なのはV字型回復だ。それはL字型の道をたどる」「L字型は一つの段階で、1、2年で終わらない。数年は需要低迷と生産能力過剰が併存する難局を根本的に変えられない」

「L字」とは、下降した後に当面は上向かないことを意味する。従来の中国政府のこれまでの公式説明とは根本的に違う。

「古い手法によるテコ入れ策はバブルを生み、問題を大きくする」「断行すべきはサプライサイド中心の大胆な構造改革だ」。こうも指摘している。

中国の社会全体の債務額は15年末で168兆4800億元(約2700兆円)。これを国内総生産(GDP)で割った比率は249%となる。中国が「全社会レバレッジ率」と呼ぶこの比率は極めて高い。中国で最も大きな債務問題は非金融部門の債務で、そのレバレッジ率は15年末で131%に達するという。融資プラットフォーム債務(政府債務との重複もある)を加えるなら156%である。

中国政府は、貯蓄率が高いためコントロールできると説明している。だが、巨額の債務処理には長い時間を要する。返済に追われる民間部門はかなり長い期間、設備投資を控えざるをえない。こうした深刻さの認識が、権威人士による先の「中国経済は当面、『L字』に」という表現だった。今後とも比較的好調な新車販売、インターネット通販などを含めた消費の後押しが必要だ。注意すべきは、リーマン・ショック時の4兆元対策のようなバラマキ、大盤振る舞いに陥らないようにすることだ。この過剰投資こそが現在の苦境をつくった元凶だった。

中長期的な中国経済の行方を左右するのは、イノベーションによる構造転換である。中国政府は、技術集約度と付加価値が高い産業の発展戦略を描く。「メード・イン・チャイナ(中国製造)2025」と名付けた戦略では、製造大国から製造強国への転換を目指している。

■注目の「メード・イン・チャイナ2025」

中国の製造業の実力は確実に上がっている。家電の海爾集団(ハイアール)、通信技術の華為技術(ファーウェイ)などが代表例だ。ハイテク製品の輸出でも中国は世界一である。しかし、中国の自主ブランドの輸出はその1割にも達していない。8、9割が、外資系企業が中国で生産した製品だ。自動車にしても、大半がドイツ、日本、米国の企業のブランドだ。民族企業の技術はまだまだ劣る。この現状を打開できるかが中国の将来を決める。

これらは国務院を統括する首相の李克強がリーダーシップを発揮できる分野だ。しかし、それは習近平と李克強のコンビが次の次の党大会がある22年まで、うまく力を発揮すればの話である。

話題となった「権威人士」の正体は、中央財経指導小組の弁公室主任、劉鶴だった。彼は、習政権のマクロ経済の司令塔として絶大な力を持つ。時には李克強より影響力は大きい。経済政策を巡って路線対立があるのは明らかだ。

中国の16年の成長目標は6.5~7%である。首相の李克強は中国経済について「楽観しており、自信がある」としている。これも習の経済ブレーンの指摘とはニュアンスが違う。それでも中国はこの数字を必ず達成するだろう。そうでなければ20年までに国民所得を倍増する目標は達成できない。

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大都市の不動産価格は暴騰が続いているが、住宅市場は過剰在庫が目立つ(重慶市)

一連の経済政策での対立が、17年の中国経済全体にどんな影響を及ぼすのか。純粋な政策上の対立というより、政治が絡むため予想は難しい。しかし、この経済論争の帰趨(きすう)が、17年の共産党大会での最高指導部人事に影響する。

■不動産バブルは崩壊の兆し

中国の住宅市場は過剰在庫がなお目立つ。だが、16年まで大都市では価格が暴騰していた。特に、深圳では住宅価格が前年に比べて5割も上がった。おかしな現象だ。その理由は、行き場を失った流動資金がどっと住宅市場に流入したことだ。中国人はつい最近まで、住宅価格は右肩上がりで、下がることはないと信じ込んでいた。バブル景気までの日本の土地神話と極めて似ていた。公有制だった中国に民間住宅市場が誕生したのは1990年代末のことだ。まだ、20年の歴史もない。

その頃、中国人は、政府や国有企業などから極めて安値で住宅の割り当てを受けた。ちょっと目先の利く人々は、この住宅を担保に銀行から巨額の資金を借り入れ、2軒目の家を買った。それが数年もたたずに2、3倍の値になった。これを転売すれば値上がり益は大きい。この行為を繰り返せば、大金持ちになってしまう。実際、彼らはそうなった。保有している家は、農村などから出てきた人々に貸せば、かなりの賃貸収入も得られる。

社会主義を掲げる中国は、住宅に関する限り、資本主義以上に資本主義的だ。とはいえ、土地そのものは国のものである。30、50、70年間という期限つきの使用権しかない。これを売買しているのだ。定期借地権付き住宅と考えればよい。本当の資産価値は住宅の上物にしかない。冷静に考えれば、今のような高値はおかしい。日本で言う「土地転がし」。ゆがんだゲームはどこかで終わる。誰かが必ずババを引くのだ。17年にかけて不動産相場は大都市でも天井を打ち、下落傾向が強まるだろう。(敬称略)

[2016年10月21日発行の『これからの日本の論点 日経大予測2017』の一部を抜粋、加筆・再構成]

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『嘘つき中国、学術研究で対処しても逆効果 福沢諭吉の教える「議論の本位」を定めることが大切』(12/28JBプレス 森清勇)について

過去の歴史を断罪する場合、渡辺惣樹氏の言う「民事裁判での比較衡量の証拠“the preponderance of evidence”ではなく、もっと厳格な刑事裁判で要求される合理的疑いのない証拠“beyond a reasonable doubt of evidence”」で議論すべきと思います。

http://dwellerinkashiwa.net/?p=4624

中国は賄賂社会で上から下に至るまで賄賂を取るのが当たり前になっています。中国駐在8年間の経験でそう断言できます。その彼らが外国人にも賄賂を贈らないことは考えにくいです。南シナ海の国際仲裁裁判所の判決が出る前に、裁判官に賄賂を贈ろうとして拒絶され、それが為に中国にとって厳しい判決が出たと言われています。さもありなんと思います。中国国内で人民法院は行政の一部で、裁判官は当然賄賂を取ります。国連で日本をなきものにしようといろんな国に賄賂を贈って中国の言い分を通そうとしているのは理解できるでしょう。日本の外務省はやられっ放しではダメです。キチンと外国に日本の立場を伝えねば。

米国との和解がオバマ大統領の広島訪問と安倍首相の真珠湾訪問で為されたと思っています。日本は容共FDR政権によって太平洋戦争に巻き込まれたと思っていますが(=日本は、侵略戦争はしていない)、そのことは日米ともに言い分があるでしょう。時間をかけて米国の歴史家の見方を変えるようにしていってほしい。

中国の嘘、韓国の嘘に日本が何時までも唯々諾々と従う必要はありません。安倍首相は“The brave respect the brave”と言いました。中国は孫子の兵法で詐術で以て勝利するのがベストという発想をします。日米の「敵ながらあっぱれ」という敵を褒め讃える文化は中国にはありません。杭州にある秦檜像のように唾を吐きかけ、汪兆銘の墓を蒋介石が爆破したように敵は死んでも侮蔑の対象です。日本人は韓国人のように自分の保身の為に外国勢力を招き入れて内乱を起こす民族とも違います。中国大陸と朝鮮半島とは関わらない方が良いです。ただ、相手の不条理な攻撃に対しては、キチンと反撃、世界に対して日本の正当性をアピールしなければ。それが第二次大戦で学んだことでしょう。いくら日本国内で「正しい」と言っても自己満足で終わり、敵にしてやられます。ヘンリー・ストークスの“Fallacies in the Allied Nations’ Historical Perception As Observed by a British Journalist”を今読んでいますが、米国でも出版されたとのこと。こういう動きが世界で広がっていけば日本への誤解も少なくなると思います。

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色のスモッグに覆われる南京市。ここでも大気汚染が深刻だ〔AFPBB News

南京事件について、日本では民間人20万人以上を虐殺したという意見から、戦争に伴う殺戮はあったが意図的な虐殺はなかったとする意見まで存在する。

歴史的な問題なので、日本では学術的に戦史家を含めた歴史家が主体になって研究するテーマであるが、中国は日本の反対を押し切って「南京大虐殺」として宣伝し、ユネスコの「世界の記憶」にまで登録した。

中国の主張は政治的な面が濃厚で、日本を犯罪国家に貶めることによって自国の犯罪歴の相対化を図り、同時に格差社会の内部矛盾によって生じる危険なエネルギーを日本に向けて発散させる意図があるとみられる。

こうした中国の目的や意図に照らすと、日本の関係者が精力的に行っている学術研究の成果は二の次三の次である。現に、日本人の真摯な研究には一切耳を傾けようとしない。

聞く耳を持たない以上、日本が学問的研究で対処しても中国を納得させることはできない。日本で「ああでもない、こうでもない」と議論が盛り上がれば上がるほど、「虐殺があった証拠」とか、「虐殺を隠蔽しようとしている」と、巧みに宣伝に取り入れられるだけである。

以下では、中国の「政治的」主張にいかに対処するべきかを考える。

事件を報道する記者魂

日清戦争の時、旅順虐殺事件(1894年11月21~23日)があった。日本の騎兵斥候隊約20人が捕えられ、隊長や兵士を惨殺して首をはねて晒し、遺体の傷口からは石を入れ、あるいは睾丸を切断するなど、その惨状は見るに堪えないものであったと言われる。

これを見た一部の日本軍は激高し、便衣兵となって逃げ込んだ中国人兵士を旅順市内で掃討する一方で、隠匿などで加勢していた市民もいたことから、多数の市民を惨殺した事件である。

3日間の行動であるが、参加した軍人たちの日記や手記、10人前後の内外記者の報道、画家やカメラマンの記録、そして陸奥宗光外相(当時)をはじめとして外交に携わった者たちの報告などの資料が多数残されている。

被害者である中国側でも同様に多くの記録が残されている。記録の内容は千差万別であるが、いずれの記述からも鬼気迫るものが感得される。

通州事件でも同様である。支那事変の発端とされる盧溝橋事件(1937年7月7日)の3週間後の7月29日、通州の日本人居留民を保護する任務の中国人保安隊が、日本の民間人を惨殺する事件が起きた。

午前3時頃、通州の城門が閉じられ、異常を感じた日本人もいたが、日本人が訓練した中国人保安隊でもあり信頼し切っていたところに最大の誤算があった。

日本人家族のみが襲われたことからも、周到な準備の下に実行されたもので、半日間に385人中223人が残虐な方法で殺されてしまった。

かろうじて生き残った記者や居留民の手記、救出に向かった軍隊・軍人の報告書や証言、外交ルートでの記録などが、ここでも多数残されている。

東京朝日新聞や東京日日新聞(現毎日新聞)、読売新聞、その他雑誌なども含めて多くのメディアが競って報道している。事件後1か月過ぎても、記者や作家、そして何よりも関係者たちが真実を求めて現地や関係者を訪ね、訪問記やいろんな形で関係記録を残している。

このような事件について、従軍記者は言うに及ばず、関係した多くの者が、立場の違いによって記述内容や精粗の違いなどはあっても、読むに堪えないような生々しい記録を残している。

記者たち約200人が無関心?

ところが、南京は中華民国の首都でもあり、攻略戦のとき東京朝日新聞、東京日日新聞、同盟通信社それぞれ50人前後の記者を派遣しており、また地方紙も派遣しており、少なくも200人近い記者がいたことになる。

作家や画家、カメラマンなども数十人はいた。もちろん中国人で報道に携わっていた者も同様に多数いたであろう。内外の外交官もいたし、南京市民たちの安全を保障すべく活躍していた外国人教授や宣教師なども40人近くいた。

これほど多くの記者らが虐殺を見逃していたとみること自体、上記の旅順事件や通州事件と対比して合理的でない。

石川達三氏のような作家たちが、日本兵の暴行など幾つかの事象を書き残している。褒められた行為ではないが、これらは決して軍隊が組織的かつ計画的に行ったものではなく、戦争の流れの中での兵士らの蛮行である。

それより何よりも、虐殺されたという中国の軍隊や中国人の将兵が日本人同様にいたであろう。被害の立場の旅順事件でも加害の立場の通州事件でも、彼らも多くの現場記録などを残してきた。しかし、南京事件に関しては、「虐殺」の記録を何も残さなかったというのだろうか。

虐殺の報道どころか、朝日は12月20日朝刊では半ページを費やして「甦る平和都市南京」と題する写真特集を組んでいる。

新聞紙面やアサヒグラフなどを飾った写真は、日本軍の入場を歓迎する場面や、道路上で静かに散髪したり、中国人の子供たちが嬉々としてお菓子を受け取っているような写真がほとんどである。どこにも虐殺を報じる紙面は見られない。

外紙が日本人の暴行を伝えたとされるが、日本人記者の誰一人として気に留めていない。南京戦の終始を通じて現地にいた同盟通信社の前田雄二氏は、「南京大虐殺はなかった」と公言している。

「彼が南京城内を1人で見ていたわけではないだろう」と疑問を呈する向きもあろう。当然1人で、四六時中城内や安全区を見ておれるはずがない。

しかし、彼は、同社が派遣していた同僚約50人の誰彼となくいつも意見交換をしている。些細なことでも記者の間で必ず話題になるが、誰一人として虐殺を話題にした者はいなかったと述べている。

他社の記者たちともしばしば一緒になることがあったようである。前田氏1人の目ではなく、カメラマンも含めて張り巡らされた多くの目を代表して、いや通信社や新聞社を代表して、それはまた日本を代表してともみていいだろうが、「大虐殺はなかった」と断言しているに等しいのである。

報道されるはずもない「幻の虐殺」

日本軍の入城(12月7日)から1週間後の状況を「ロンドン・タイムズ」は18日付で「14日・・・通りには死体が散在したが女性の死体は無かった」と報道している。ちなみに、この時期の南京市民は国際安全委員会が設定した安全区(避難区)に保護されており、死体は南京攻略戦で生じたもの以外ではない。

ところが、東京裁判を控えて連合国最高司令部・民間情報教育局監修のラジオ番組「眞相箱」では「陥落寸前の南京」の掲題で、「日本が南京で行った暴行についてその真相をお話し下さい」という質問を設けて次のように解説している。

「我が軍が南京城壁に攻撃を集中したのは、昭和12年12月7日でありました。(中略)その1週間後、その恨み(上海の中国軍から手痛い抵抗を蒙ったこと)を一時に破裂させ、怒涛の如く南京城内に殺到したのであります。この南京大虐殺こそ、近代史上稀に見る凄惨なもので、実に婦女子2万名が惨殺されたのであります」と。

先述のロンドン・タイムズは現地情報として「女性の死体はなかった」と、わざわざ付け加えていたのに、東京裁判を前にした8年後のラジオ放送で突如として「婦女子2万名の惨殺」が登場するのである。

朝日新聞記者の本多勝一氏が1971年に、「中国人に与えた暴虐を日本人が忘れてはならない」として中国を訪ね歩き、北支から中支にかけて中国側が受けたと主張する暴虐(『中国の旅』)や、上海戦から南京攻略戦へ移行する途中での話(『南京への道』)を連載するが、これらは南京大虐殺のことではない。

中国の30万人虐殺主張は、決して北支から中支までの累計でも、あるいは上海戦から南京戦までの累計(中国軍の戦死傷9万8340人、ちなみに日本側7万3000余人)でもなく、どこまでも南京攻略戦で市民が無法に惨殺されたとして告発しているのである。

国際安全委員会の宣教師たちが伝聞として伝える事件情報を聞いた日本の兵士が現場に行ってみると、何も起きていなかったという報告もしばしばである。

宣教師たちは、自分たちが見たと言えば、現場の確定も必要であろうだが、「伝聞」としての情報であれば、必ずしも自分たちに責任はない。こうして、多くの伝聞情報が創作されていったと言える。

国民党の何應欽軍政部長(国防相に相当)が著した一級史料『中国現代史料叢書=対日抗戦』(盧溝橋事件から日本敗戦までの8年間にわたる軍事報告)の「南京之失陥」には、「日本軍の暴虐も〝南京虐殺″も何処にも出てこない」し、当時の中国共産党の軍事雑誌を集めた『抗戦中の中国軍事』中の南京の戦闘記録にも「日本軍による市民の虐殺とか捕虜の大量殺戮のことなど出てこない」(田中正明『「南京事件」の総括』)。

ことから田中氏は、「南京事件について、日本人が知らなかったと同様、中国人も―中国共産党も国民党も―知らなかった。知らなかったのではない、このことはそうした大事件などなかった何よりの証拠である」と確言する。

議論の焦点は何か

南京大虐殺を強く肯定するのは日本人の一部で、中国はこれ幸いと乗っかって、今では国際社会に向けて日本は犯罪国家だと言いふらしている。日本にとっては百害あって一利なしである。

ここで、思い出すのが、福沢諭吉が『文明論之概略』で、正しい議論をするには「議論の本位を定める事」が重要であると述べていることである。

「軽重、長短、善悪、是非等の字は、相対したる考えより生じたるものなり。軽あらざれば重あるべからず。(中略)かくの如く相対して重と定まり善と定まりたるものを議論の本位と名づく」と定義する。

そして、「背に腹は代え難し」や「小の虫を殺して大の虫を助く」という諺を引用しながら、背に傷を被っても腹を守る方が大切であり、鶴の餌には鰌(どじょう)を用いても妨げがないではないかと述べながら、議論の本位とは何かを分かりやすく説明する。

日本が封建制度の大名や藩士を廃したことに関して、「徒に有産の輩を覆して無産の難渋に陥れたるに似たれども、日本国と諸藩とを対すれば、日本国は重し、諸藩は軽し、藩を廃するはなお腹の背に替えられざるが如く、大名藩士の禄を奪うは、鰌を殺して鶴を養うが如し」というのである。

「すべて事物を詮索するには、枝末を払いてその本源に遡り、止まる所の本位を求めざるべからず」という。こうして「議論の箇条は次第に減じて、その本位は益々確実なるべし」と述べる。逆に「議論の本位を定めざれば、その利害得失を談ずべからず」ともいう。

一度、議論の本位を定めたからには、次には「敵のためか、味方のためか、何れにてもその主とする所の本を定めざるべからず」と主張する。

例えば神仏の説を挙げてみると、神道は現在の吉凶をいうが、仏法は未来の禍福を説いているのだから、議論の本位を異にしており、議論がかみ合わないのは当然であるという具合である。

また「事物の本に還らずして末のみを談」じているのは、あたかも武器として弓矢剣槍の得失を争うようなものであり、小銃が出てくれば弓矢剣槍の論争は忘れられてしまうだろうというのである。

中国が主張しているのは、日本は犯罪国家であるということである。そのために、日本でやるべき議論の中心は、日本は「犯罪国家か、そうではないか」ということである。

数百人でも数千人でも日本軍が南京市民を「虐殺」したと言えば、中国にとっては御の字で、「日本が虐殺を認めた」、「日本は犯罪国家だ」となり、白髪三千丈式に拡大していき、最初は2万人と言っていたのが、南京虐殺記念館では30万人と書かれ、今では40万人という数字さえ聞かれる状況である。

ちなみに、筆者が考える本位や枝末などは以下の通りである。

本位:日本を虐殺国家に仕立てたい中国 ⇒ 日本は「犯罪国家か否か」が焦点 枝末:日本が虐殺数を学術的に求めること ⇒ (学問的には重要であるが)中国は求めていない 本源:虐殺したとされる地域・時機・態様 ⇒ 安全区内(広くは城内)で37年12月7日~38年2月の間に、幾人の市民惨殺(基本的に最も重要)があったか その他:戦時か平時か、惨殺場所はどこか、惨殺したのは捕虜か・便衣兵か・市民かなど

おわりに

林思雲博士は「西洋の科学的観点に基づけば、梅汝こう(王へんに敖)が自著(『極東国際軍事法廷』)の中で書いている出鱈目(大要:幕府山で捕えられた老若男女5万7418人のうち、生きている者を針金で縛って下関に追い立て銃殺や斬殺したうえ、死体に石油をかけて燃やし証拠隠滅した)は、悪質な行為である。

しかし、中国の『避諱』(日本の悪事を暴露すること)の観点に基づけば、・・・真の愛国行為なのである」(北村稔・林思雲著『日中戦争―戦争を望んだ中国 望まなかった日本』と述べる。

同様に「アイリス・チャンがこの本(『ザ・レイプ・オブ南京』)を書いた目的は歴史の真相の研究ではなく、愛国の目的で歴史を編纂したのである。従って西洋の科学的方法による検証をパスしないのは当然である」という。

日中間の歴史共同研究がいかに惨めな結果をもたらすかが分かろうというものである。事実を追求しようとする日本側(西洋側と言ってもいいだろう)と、国家の体面を傷つけないようにしたい中国側との共同研究に〝意見の一致″などの「成果」を期待するべきではないのだ。

共同研究で得ることがあるとすれば、学問の世界における中国のやり方、すなわち「政府の太鼓持ち」の実情を知り得るということではないだろうか。

日本側が幾ら学術的研究で対処しても致し方ないとなれば、福沢がいう議論の本位に戻り、中国を含めた国際社会に向かって「大虐殺はなかった」と、胸を張って喧伝することであろう。

 

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