『トランプ台風直撃の台湾海峡、波高し 「一つの中国」という“虚構”をいかに越えるか』(1/11日経ビジネスオンライン 福島香織)について

1/11中国観察記事より<北京明暗兩線試探川普 馬雲肢體語言有玄機?(北京は表裏併せてトランプの出方を探る、ジャック・マーのボデイランゲージは微妙さを現している。)

近日,中國商人馬雲到紐約會見美國當選總統川普,引發各方關注。會談結束後,兩人並肩出現在了媒體面前。外界注意到馬雲有緊攥雙手的肢體語言,有評論認為這出賣了他會見川普的〝政治使命〞。

 1月9日,川普在紐約川普大廈會見了阿里巴巴集團創辦人馬雲。據稱,馬雲的新計劃是想通過促進美國小型企業與中國消費者之間的貿易,為美國創造100萬個就業機會。

會談結束後,川普和馬雲兩人一起下樓與記者見面,並通過網路視頻進行了直播。有細心的人士發現,馬雲在直播過程中出現了攥雙手的肢體語言,這表明馬雲有緊張的情緒,壓力很大。(ジャック・マーが実況中継時、両手を握ったボデイランゲージは彼の緊張感を表し、圧力が大きいことを示している)。

有觀察人士認為,馬雲在距離川普總統就職典禮不到半個月的時間點上訪美,雖然名義上是〝化身全球小企業的推銷員,向川普描繪一幅以小企業為核心的新商業文明圖景〞,但其背後的政治信號意義不言而喻,也難怪承擔著政治使命的馬雲有壓力。

外界還有分析稱,中方面對不按常理出牌的美國〝新總統〞,正試圖通過民間層面的外交手段實現中美實質性接觸。而川普和馬雲發表的會談感言,實際上也包含了政治信息。

川普對媒體說,他和馬雲會一起做一些很棒的事情,馬雲則插話補充:中小企業,關於中小企業。

馬雲表示,將幫助、支持美國100萬個小企業,尤其是中西部的農場主。他還提到:〝我們認為中美關係應該加強——應該更加友好〞,〝討論關係與貿易議題的門是打開的,我認為候任總統非常聰明,樂於傾聽〞。

另外,近期關於〝川普女婿和中國安邦集團吳小暉談生意〞的報導,也引發了各界的猜測。(安邦保険グループの呉董事長がクシュナーとビジネス談義の報道は各界に疑いの眼差しを引き起こした)

《紐約時報》稱,川普的女婿賈里德-庫什納正與中國安邦保險集團董事長吳小暉,商談了紐約第五大道一座41層高摩天大樓的翻新工程等項目。

報導還稱,吳小暉是中國政治人脈最強的人物之一,他的妻子卓芮是鄧小平的外孫女。吳小暉的一個居於中心地位的生意夥伴是一位中共元帥的兒子,他還把幾名曾在政府的保險監管機構任職的人招攬進了公司董事會。(報道によれば、呉は中国政治の人脈の中で最強の一人である。(3人目の)妻が鄧小平の外孫で(既に離婚したと言われる)、呉のビジネスパートナーは中共の元帥だった陳毅の息子、陳小魯で、彼は政府の保険監督機構のCEOである)。有觀察認為,吳小暉的生意經比馬雲的〝幫助全球小企業主〞目標,顯得更加隱秘。馬雲、吳小暉一明一暗的動作正是北京在試探川普。(観察人士は、「呉のビジネスはマーの世界中の小企業主を助けるという目標と比べ裏があるのかも。呉とマーは表と裏の動きである」と思う)。【新唐人2017年01月11日訊】>(以上)

1/11の日経報道(抜粋)では<「アリババ会長トランプ詣で」 偽造品問題打開狙う

【上海=小高航】中国 のネット通販最大手、アリババ集団(浙江省)の馬雲会長が9日、トランプ次期米大統領と会談した。馬会長は「米国で100万人の雇用を創出する」と確約。いち早く「トランプ詣で」し、偽造品問題などでぎくしゃくする米政府との関係の立て直しを狙う。馬氏は習近平指導部の「民間外交」の担い手であり、対中強硬姿勢を強める卜ランプ氏の腹の内を探る思惑もありそうだ。(3面参照)

「すばらしい会談だった。彼は偉大な起業家だ」。ニユーヨークのトランプタワーで約40分間の会談を終えたトランプ氏は、馬氏を伴って記者団の前に姿を現した。ただ笑みは少なく、大げさな身ぶり手ぶりの「トランプ節」も乏しい。1分ほどで記者の質問を遮ると、執務室に戻った。

1人残された馬氏。普段はラフな格好でユーモアあふれる経営者だが、この日は濃紺のスーツ姿 で表情も硬い。「米製品を中国の消費者に届ける橋渡しをし、中小企業を支援する」と語った。 アリババは会談後に発表した声明で、中国には 3億人以上の中間所得層と海外商品への旺盛な需要があるとしたうえで、 自社のネット通販サイトを通じ米国の農産品やワイン、衣料品などを中国で販売支援する方針を示 した。結果として今後5年で100万人の雇用創出が見込めるとする。>(以上)

ジャック・マーは共産党から「トランプを中国に対し宥和姿勢を取るよう工作する」使命を帯びてきたのでしょう。100万人の米国人の雇用なんて口で言うのは誰でもできますし、況してや平気で嘘がつける中国人であれば猶更です。トヨタの豊田章男社長が約束した5年で1兆円投資するのと重みが違います。ソフトバンクの孫社長も東日本大震災で100億円寄付の話をしましたが、その後どうしたのかと言うと、小中華の子孫ですから利が先に来ます。それでも立派は立派ですが。でも、中国人がmade in USAを喜んで買うかどうかです。“天猫”モールで昨年の双十一(独身の日)に短時間の内に最も売れたのはユニクロでした。米国も日本企業を買収しないと中国市場には受け入れられないと思います。

https://www.k2wave.com/tatemae_41.html

日経の報道によれば、1分間くらいしかトランプタワーのロビーに同席しなかったのは、孫社長の時とは明らかに差をつけています。あの時はトランプが孫社長と肩を組んで話し、その後見送りました。敵国から派遣された者に対して「警戒しているぞ」というサインを中共に送ったと思います。それで、マーは一層緊張したのでしょう。会談も友好的に終わった訳ではないのでは。「100万人の雇用創出と言うができるならやって見ろ」といったところでしょうか。中国は人口の多さを武器に相手を籠絡、入植・侵略のツールとします。流石にトランプは見切っていると思います。これから、南シナ海か東シナ海で激突する覚悟を持っていますので。テイラーソン次期国務長官とマテイス次期国防長官の上院での公聴会も終了しました。多分承認されると思います。

ジャック・マーの「馬」と言う姓は祖先が「回族」=イスラム教徒であると、北京在勤時代に聞いたことがあります。中国の歴史の中で、宗教に寛容な時代があったという事でしょう。まあ、中国大陸を漢人以外が統治した時代が長いので、寛容だったのかもしれませんが。今の中共政権が最悪です。「宗教は阿片」其の儘の政策を採っています。フランシスコ・ローマ法王も中共と変な妥協(中共が指名した僧侶をバチカンが指名する)はしてほしくありません。地下教会は一層弾圧されるでしょう。

福島氏の記事を読んで感じることは、トランプも台湾を南シナ海の軍事拠点撤去の身代わりにしかねない危惧を持ちました。勿論、台湾を売るという事ではなく、撤去しない限り「一つの中国」政策は認めないとデイールするのではと不安に思います。福島氏の言うように、国民党支持の外省人も中国大陸に帰って、台湾人とは別な生き方した方が良いでしょう。反日在日も韓国へ帰るべきです。

下の石平氏の記事のような中共が滅亡するシナリオが理想です。日本の黒船と同じ効果を果たして、軍事膨張と言う世界に受け入れられない政策転換ができれば良いですが。傲慢な中国人にできるとは思えません。

1/13石平氏メルマガ<習近平政権を襲うトランプ政権という「黒船」 3つの戦い…負ければ政権崩壊も

中国の習近平政権にとって2017年は文字通り、内憂外患の年となりそうだ。まず、その「外患」について論じたい。中国政府に降りかかってくる最大の外患はやはり、今月誕生する米トランプ政権の対中攻勢であろう。大統領選で中国のことを、「敵」だと明言してはばからないトランプ氏だが、昨年11月の当選以来の一連の外交行動と人事布陣は、中国という敵との全面対決に備えるものであろうと解釈できる。

トランプ氏は日本の安倍晋三首相と親しく会談して同盟関係を固めた一方、ロシアのプーチン大統領やフィリピンのドゥテルテ大統領とも電話会談し、オバマ政権下で悪化した両国との関係の改善に乗り出した。見方によっては、それらの挙動はすべて、来るべき「中国との対決」のための布石と理解できよう。

そして昨年12月初旬、トランプ氏は米国外交の長年のタブーを破って台湾の蔡英文総統との電話会談を敢行し、中国の「一つの中国の原則」へ挑戦状をたたき付けた。対中外交戦の外堀を周到に埋めたトランプ氏はいきなり、北京の急所をついて本丸へと攻め込もうとする構えを見せたのである。

人事面では、トランプ氏は新設の国家通商会議委員長と米通商代表部代表のそれぞれに、対中強硬派の面々を任命して対中国貿易戦の準備を整えた一方、国防長官のポストには強硬派軍人のマティス元中央軍司令官を起用した。南シナ海での中国の軍事拡大を断固として封じ込める姿勢を示したのである。

おそらく政権発足直後から、トランプ政権は日米同盟を基軸とする対中包囲網を固めた上で、中国の急所となる台湾問題を外交カードに使い、習政権に強烈な揺さぶりをかけながら、南シナ海問題と米中貿易の両戦線において未曽有の大攻勢をかけていくのであろう。

一方の習近平政権は、情勢の激変に心の準備も戦略上の布陣もできていないまま、退路のない「背水の陣」を強いられる羽目になっている。貿易戦争の展開によって中国の対米貿易が大きく後退すれば、輸出こそが命綱の中国経済は深刻な打撃を受け、既に危険水域にある経済の衰退に

さらなる拍車をかけることとなろう。

そして南シナ海では、今まで「有言不実行」のオバマ政権の生ぬるさを幸いに中国の軍事拡大がやすやすと進んできたが、トランプ政権と米海軍が中国の封じ込めに本気になって当たれば、習政権の拡大戦略は頓挫し立ち往生してしまう可能性も十分にあろう。

習政権にとって政治的リスクが最も高いのは台湾問題への対処だ。ニクソン訪中以来、対米外交を含めた中国外交の土台は台湾というれっきとした国を国として認めない虚構の上に成り立っている。

トランプ政権が台湾問題を米中間の争点として持ち出し攻勢をかけてくると、中国からすればそれこそ「外交崩壊」につながる深刻な事態である。台湾問題への対処を間違えば、国内政治的にも

習政権にとっても命取りとなりかねない。

結局、トランプ政権が仕掛けてくる「貿易戦争」「南シナ海の対決」、そして「台湾問題の争点化」という3つの戦いに、習政権は今後、いや応なく応戦していくしかない。

今の中国にとっては3つの戦いのすべてを制し、トランプ政権の攻勢を食い止めることはまず無理であろう。北京ができることはせいぜい、どこかで折り合いを見つけて「1勝2敗」か「2勝1敗」に持ち込むことであろう。

問題は3つの戦いの1つにでも敗退してしまえば、中国国内の経済危機・政治危機の発生を誘発し、習政権を窮地に追い込むことになりかねないことだ。

「習近平幕府」にとっての「黒船」はやはり太平洋から襲ってくる。>(以上)

記事

「一つの中国」という“国際的フィクション”に、いかに決着をつけるか。米中のせめぎ合いが台湾を揺らし続ける(写真:ロイター/アフロ)

 台湾総統の蔡英文が中米訪問の経由地・米ヒューストンでテキサス州知事のグレッグ・アボットや米上院議員のテッド・クルーズと面談した。クルーズは中国側から蔡英文に面会しないように要請する書簡を受け取ったことを明らかにし、「誰と会おうか決めるのは私たちだ」「この件に中国は関係ない」と不快感をあらわにしたとか。

 とにかく中国が今、トランプ政権に関して最も神経をとがらせているのは、台湾問題であろう。トランプが正式に大統領就任前とはいえ、「一つの中国になぜ縛られなければならないのか」と、米中関係の前提となっている「一つの中国」原則を、対中交渉カードに持ち出したことは、中国にとっては共産党体制の存続にすら影響を与えかねないからだ。

 トランプ政権がどこまで本気で言っているのか測りかねている中国では、とりあえず台湾武力統一論を盛り上げ、台湾と米国に揺さぶりをかけてきている。折しも、台湾では今年が2・28事件という国民党の白色テロ事件から70周年を迎え、台湾の民主と自由を勝ち取るまでの長い道のりを振り返る節目の年でもある。今年の中台関係の行方を少し考えてみたい。

揺らぐ国際的フィクション

 国共内戦の末、勝利した中国共産党が今の広大な中国の土地を支配し中華人民共和国を建国したわけだが、台湾に敗走した中華民国国民党政府も大陸反攻を今に至るまで建前上は放棄したわけではない。中台統一というのは、孫文をともに国父と掲げる国民党・共産党の悲願だ。

 実際には台湾にすでに国民党政府は存在せず、選挙で選ばれた台湾土着の民進党政権が台湾を統治している。そもそも新疆、チベット、モンゴルまで自国の領土だとする中華民国の主張がフィクションであることは、1971年の国連脱退と、その後の台湾の民主化の道程の中で誰の目にも明らかになっていた。

 だが「一つの中国」であったものが分裂したのが、中華民国と中華人民共和国であり、もともと一つだったものが元に戻るのが一番望ましいという考えを国民党、共産党とも持ち続けてきた。そして、国際社会もすでにフィクション、虚構とわかっていながら、その前提を受け入れてきた。

それが、トランプという率直な男が、一つの中国の原則なんてものはとうの昔に破綻していたという事実を口にしてしまったわけだ。中国としては狼狽せざるをえない。

 というのも、選挙による人民の支持も取り付けずに中国共産党が執政党としての地位に居座り続けている根拠の一つに、侵略者・日本と戦い、中国を守った紅軍から生まれた政党であるという点がある。実際のところは、旧日本軍に中国正規軍として相対したのは国民党軍であり、カイロ宣言に署名したのも中華民国政府の蒋介石である。

 中華人民共和国と中華民国が別の国であったならば、国連の常任理事国に中華人民共和国がなることも、尖閣諸島(釣魚島)を自国の領土と主張することも実は無理がある。中国としては、何が何でも台湾は台湾省であり、釣魚島は台湾省の一部と主張しなければならないのだ。ちなみに中華民国からみれば、大陸は中華民国共産党区という建前だが、国民党員ですら、この主張に無理があることは承知している。

40年続いた戒厳令を越えて

 台湾の歴史を軽く振り返れば、中華民国国民党政府は連合国の委託を受けて、日本の植民地であった台湾の行政権を預かることになった。だが、日本統治下でハイレベルの教育文化水準にあった台湾の人々は、汚職や強奪を当然のように行う国民党の官僚や軍人を嫌悪し、その嫌悪と抵抗感が2・28事件の勃発を招く。それが台湾人の抵抗を武力で鎮圧する白色テロへと発展し、このとき発令された戒厳令は、実に40年、1987年まで続いたのだった。

 中国大陸での国共内戦で敗れた中華民国政府がまるごと台湾に敗走し蒋介石独裁時代が始まるなか、台湾エリートたちへの迫害はさらに苛烈なものになっていく。一方で、米ソ冷戦時代の対立のなかで、中華人民共和国を陣営に取り込もうとした米国の電撃的な米中国交回復によって、蒋介石は国際社会で立場を失う。

 やがて蒋介石の死をきっかけに、李登輝ら日本統治時代に教育を受けたエリート政治家たちが台頭、国民党独裁下での迫害に耐え抜いた民主化運動家、独立運動家たちの長きにわたる奮闘が実を結び、1996年に統治者を直接選挙で台湾人自身が選ぶ総統選の実施をもって台湾の民主を確立した。

 話はそれるが、この2・28事件で台南の若者の命を守るために自らの命をなげうって非暴力で戦った、台南の弁護士・湯徳章(坂井徳章)の生涯をまとめたノンフィクション『汝、ふたつの故国に殉ず』(門田隆将著、角川書店刊)が最近、日台同時に出版された。これを読めば、2・28事件と日本の台湾統治の歴史の関係がよくわかる。台湾の民主確立までの苦闘の歴史に、日本は少なからぬ関わりがある。

 台湾の民主が確立した段階で、台湾人にとっての脅威は国民党ではなく、中台武力統一も辞さぬという中国共産党になった。1996年の台湾海峡ミサイル危機など、中国の露骨な武力恫喝に対し、国民党の白色テロを戦い抜いてきた台湾人はおびえるよりも抵抗姿勢をあらわにし、2000年には初の民進党政権である陳水扁政権が誕生する。

 江沢民政権の台湾に対する恫喝政策が失敗とみた胡錦濤政権は、2005年国家反分裂法を制定し、台湾が憲法や中華民国名を変えるなどの現状変更をすれば武力行使も辞さぬという条項を含みながらも基本的には平和統一を模索する姿勢を前面に打ち出し、ECFA(両岸経済協力枠組み協定)を推進、台湾経済の対中依存度を進めて、経済でからめとる戦略に転換する。中台統一のスローガンも封印し、経済を通じて台湾メディアをコントロールして台湾世論を誘導していく戦略を組んだ。馬英九政権という親中派政権の登場もあって、胡錦濤政権時代まではこれがうまくいき、中国が台湾を飲み込む形で平和統一されるのは時間の問題と、少なくとも中国人たちは見ていたことだろう。

露骨な独裁志向が若者たちを起こす

 この状況が大きく変わったのは習近平政権になってからで、習近平と馬英九が任期中の中台平和協定の実現を乱暴に急ぎすぎたこと、習近平政権の露骨なまでの独裁志向に、台湾の若者が危機感を取り戻したことで、ひまわり学生運動などが起きたわけだ。その学生運動への対応も相当まずかったので、台湾人の国民党政権や中国共産党への拒否感はますます高まり、蔡英文政権の登場につながった。

 蔡英文は慎重な人で、国民党の1992年コンセンサス、つまり中国側と「一つの中国」原則についての条件付き合意については、うまくはぐらかし、否定もしなかった。だが、彼女の政策の方向性が行き過ぎた対中経済依存からの脱却と、台湾アイデンティティの確立であることは比較的はっきりしていて、中国サイドには平和統一の機会は逸しつつあるという認識が広まっている。さらに、米国に登場したトランプ政権が、ひょっとすると「一つの中国」原則を放棄するかもしれないという懸念が出てきて、いま焦りまくっている。

 仮に米国が「一つの中国」に縛られない、として台湾との関係を正常化すれば、日本だっておそらくそれに続くだろう。中国にすれば台湾の統一機会も建前も完全に失われる。釣魚島の領有権主張の根拠も崩れる。胡錦濤政権まで中台統一は時間の問題だと思い込んでいたのに、習近平政権になって統一機会は完全に失われた、となっては習近平のメンツはまるつぶれだ。習近平政権どころか共産党体制の存続も危うい。台湾が中国とは違う国家だというならば、チベット独立派や東トルキスタン独立派も大人しくはしていられまい。それこそ、中国が五つか七つに分裂しかねない危機に見舞われる可能性もあるだろう。

 そう考えれば、習近平政権とて、決死の覚悟で台湾武力統一に動くというのは、単なる脅し以上の可能性がある。

上策は北平モデル、中策は武力統一

 中国台湾研究会の副会長で元国務院台湾事務弁公室副主任の王在希が環球時報のインタビューに答えた台湾統一の手法は、上策として「北平モデル」、つまり戦わずして勝利した1949年1月31日の北平解放のように、開戦の準備をしつつ台湾政権内部の矛盾を突いて解体を画策し、台湾サイドに戦わず降参を選択させる方法だという。

 そして中策が武力統一。最も短時間で両岸統一が実施できる。被害を最小限にとどめるには中国解放軍サイドが圧倒的に台湾軍よりも実力が大きいことが求められるが、この点については、軍部は自信を持っているようだ。ただ、王在希に言わせれば中国人同士が戦うことが後々に禍根を残す、としている。武力統一については2021年までの実行を元解放軍南京軍区副指令の王洪光が提案していた。「武力統一はもはや最悪の選択ではない。ずるずると分裂状態を維持することの方が下策」と王在希も語っている。

 ただこれは、中国サイドの考えであって、今の中国に蔡英文政権の内部矛盾やスキャンダルを暴き人心を離れさせ、武力の威嚇の前に降参を選択させるだけの工作能力が本当にあるのか、本当に短期決戦で台湾を武力統一できるだけの実力があるのか、という部分ははっきり言ってわからない。中国が奇襲作戦を行ったとしても、台湾関係法を結ぶ米国が何もアクションを起こさないということもないだろう。

人民大学国際関係学院副院長の金燦栄は「トランプは商人だ。台湾は商品にすぎない。商品はいつでも売られる可能性がある。…台湾は気をつけなければならない。彼らの前途は大変まずい。状況はふたつあって、トランプに売られるか、大陸を激怒させるか。大陸はもう昔のお遊びは終わりだと思っている」(環球時報)と語っており、台湾がトランプに期待を寄せすぎると裏切られるのだと決めつけている。実際、共和党内でも「一つの中国」原則をカードに振りかざすことに対しては意見が割れていて、政権がスタートすればトランプの姿勢も変わるかもしれない。

 しかしながら、トランプの周辺には、「一つの中国」原則は旧冷戦時代の遺物であり放棄すべきだ、ニクソン・キッシンジャー時代の米中枠組みは終わらせるべきだと強く主張するアジアアドバイザーもいるようでもある。新設の国家通商会議代表に指名されているエコノミスト、ピーター・ナヴァロもそうだし、共和党系シンクタンクのアメリカンエンタープライズ公共政策研究所のランダル・シュライバーやダン・ブルメンタールといった名前も挙がっている。彼らは台湾が民主主義国家として存在し続けることが中国の太平洋進出を阻み、中国の米国に対する挑戦を封じ込める重要なカギだとしている。

「一つの中国」より「二つの政党」

 トランプが本気で、中国の覇権主義に脅威を感じ、かつての旧ソ連を解体に追い込んだやり方で中国共産党体制を解体に追い込むつもりならば、この「台湾カード」は、南シナカードやロシアカード、経済貿易カード以上に強烈な切り札になる。

 「一つの中国」原則がないがしろにされれば、共産党は執政党としての求心力を維持できず、これを阻止しようと武力恫喝を続けるために軍拡に走れば、レーガン政権時代のSDI(戦略防衛構想)に対抗する軍拡競争で旧ソ連の財政が疲弊したように中国経済にとどめを刺すかもしれない。万が一、台湾有事が発生しても、中国の台湾統一は成功しない確立の方が高いだろう。いずれにしても、中国共産党はひどくメンツを失う結果になるだろう。

 ただ、あの小さい台湾が米中間の荒波にもまれるのはあまりに気の毒なので、中国は早々に台湾統一などという夢想を諦めて、それよりも国民党を中国に迎えて、行き詰まりつつある共産党一党システムに見切りをつけ、国共二大政党制への政治改革を研究したほうが、共産党も国民党も中国人民もハッピーになるのではないかと意見したい。

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