北村氏の記事でエデルマン指数と言うのが挙げられていますが、1位インド、2位インドネシア、3位中国と言うのを見て、「居住する国の政府、企業、メディア、NGOに対する信頼度」でなく、腐敗度の世界ランキングかと思いました。北朝鮮が28ケ国に入っているかどうか不明ですが、入っていればダントツの1位になるのでは。銃剣を突き付けられて政府を信任するでしょうから。中国が今まで1位だったという事は、独裁国家の方が政府への信頼が厚いという事でしょう。順位を下げた今年は調査のやり方を変えたのかどうか。日本が低いのは健全な証拠。政府を批判できる言論の自由があるからです。アパホテルについて中国政府を始めとして国を挙げて批判する体制より余程良いでしょう。所詮、グローバリストの基準に合わせた評価ですから、こんなものは論評する価値はないと思っています。
遼寧省のデータ捏造の記事で、日本でも1/27日経電子版に「改ざんに計上ミス…揺らぐ政府統計 」と言う記事が載りました。
<政府の統計が揺れている。経済産業省の繊維流通統計では改ざん、国土交通省の建築着工統計では計上ミスが相次いで発覚。政府内で統計の司令塔的な役割を担う総務省の統計委員会は27日、これらの事態を重くみて、両省が報告した原因と再発防止策を検証した。浮かび上がるのは各省で統計に基礎的な知識を持つ人材の不足と統計軽視の姿勢だ。
■「限りなく犯罪に近い」
27日に開かれた統計委員会(東京・新宿)
「はっきり言って捏造(ねつぞう)ですよ。犯罪に限りなく近い」。統計委員会の西村清彦委員長は怒りをあらわにした。出席した有識者からは「政府一丸となって統計改善に取り組む矢先の問題」「公的統計全体の信頼を揺るがす」などと危惧する声が相次いだ。「信頼性を損ないかねない、心からわびる」。経産省の糟谷敏秀製造産業局長が事態を報告して謝罪。統計法の研修、チェック機能の強化といった再発防止策を説明した。「局長が出るのは極めて異例。それだけ事態が重大ということだ」(統計委員会幹部)。会議は予定の終了時刻より30分長引いた。
事態は調査票の電子化などを請け負っていた業者が昨年11月に経産省を訪れ、集計結果と公表結果が違うと指摘して発覚した。調査対象は約730社としているが、うち315社は指定された名簿に載っていない業者を形式的に追加。実際に回答が得られたのは257社しかなかったため、担当者が過去の回答を流用して回答数を水増し。さらに6年間かけて水増しした分を徐々に減らそうとした。改ざんは12年からなされていたことが確認されたが、それ以前のデータは既に破棄され、改ざんの有無も把握できなかった。
経産省の内部の調査によると、報告書では一連の処理が課長まで了解を得た上での組織ぐるみの対応であることが明らかになった。さらに経産省は「実態に近づける目的で実施した」と理由を説明したが「調べてもいないのに実態って何なのか」といった反論を招き、報告書を再度提出することになった。経産省は16年9月分をもって同統計の廃止を発表。繊維産業が盛んだったころは景気動向の把握に役立ったが、近年は「ほとんどユーザーがいなかった」(関係者)。ニーズを考えず、惰性で調査を続けていたという現実も浮き彫りになった。
国土交通省は昨年12月、建築着工統計を13年までの過去に遡り、4カ月分修正した。国内総生産(GDP)の推計に使う部分も一部含まれており、額の大きさによってはGDPの修正につながる恐れもある。同統計は建築業者などが出す工事届の内容から都道府県が調査表をまとめ、国交省が集計する。都道府県が工事費予定額を1ケタ誤ったり、着工月から2年遅れて集計したりしていた。
■集計ミス、日銀が指摘
国交省は「外部からの指摘で判明した」と説明したが、複数の関係者によると、指摘したのは日銀だ。商業施設など大きな工事は不動産業者が投資額含め公表する場合が多い。「リリースと統計の前月からの動きを照合すれば気づけたはず」と関係者はみる。
今回の問題が発覚したのは、いずれも統計を公表している政府自身ではなく、統計作成の請負業者と金融政策における統計ユーザーという外部だった。「自浄作用が働かなかったのは非常に深刻」(西村氏)。今でこそ統計改善への関心が高まり、予算や人員の配分増を訴える声も多い。だが長年の統計軽視の姿勢は、国の統計職員数が10年間で7割減ったことからも明らかだ。「公務員の総数を増やせないなか、統計部署は各省のスクラップ源となってきた」(内閣府幹部)。ビッグデータの活用など新たな分野開拓に沸く裏で、人材育成という地道に取り組むべき課題が待ち受けている。(大島有美子)>(以上)
日本も劣化が進んでいるという事です。東芝やタカタ、三菱自動車、東洋ゴムの問題は氷山の一角で他の日本企業も隠れた問題は沢山あるのでは。役員が不正に気付いても、自分の任期中は明らかにしない姿勢で蓋をし、誤魔化しきれない時点になって発覚するようになるのでは。コンプライアンス重視なんて口先だけです。経営者が自分の利益を優先させる米国式経営管理法や不正が当たり前の中国式経営管理法にドップリ浸かった為でしょう。「朱に交われば赤くなる」です。ただ、トランプ大統領になって米国も国民への分配重視に変わる可能性があります。日本の経営者も海外で稼いだ利益を日本に還流させ、社員に厚く分配することをしなければ国内消費も伸びないでしょう。
中国のデータの改竄は本ブログで何度も言ってきていますので、遼寧省のデータ改竄について別に驚きはありません。高橋洋一氏も田村秀男氏も中国のGDPは▲3%程度と発言しています。ただ、遼寧省と言う所がミソで習近平が遼寧省書記だった李克強に対する嫌がらせでヤラしたものと思われます。日経が北村氏の記事に合わせてこの記事を載せたのは、中国に「日本でもやっている」と中国内で記事にして不正の印象を薄めるためでは。北村氏も中国の新聞を読んで本記事に引用していると思われます。日銀出身の西村清彦氏主導で会議を運営し、中国様を大事にする日経に書かせたと睨んでいます。それとJBプレスの瀬口氏も日銀出身です。何となく平仄が合うような気がします。
瀬口氏は「日本企業にもっと中国へ投資、技術支援しろ」と言いたいのでしょう。でも米中対決が囁かれる中、誰が敵国の中国に投資しますか?資産接収されるのが分かっていて。瀬口氏は自分の退職金を担保にして、中国の銀行から融資を受けて投資すれば良い。間違った方向に議論を誘導するのは止めてほしい。中国は軍拡に邁進し、尖閣はおろか沖縄、日本、西太平洋、南シナ海への領土拡張の野望は留まる所を知りません。戦争と言う手段でなく、経済と言う手段で中国を封じ込めるのが一番良いという発想に何故立てないのでしょうか?それは平和ボケだからです。日本人は権威に弱いので、多数の人は彼の意見を鵜呑みにするかも知れませんが。平和主義者が戦争を引き起こす事例となるでしょう。
「騙すのが賢く、騙されるのが馬鹿」という基本的価値観の中国で、反日を煽ってきたのをかなぐり捨てて日本に支援を求めて来た(「日本に学べ」なんてお世辞以外の何物でもない。心にもないことを言うなと言いたい)のは如何に中国の台所事情が苦しくなってきたかという事を表していると思います。真水の外貨準備も少なくなってきているようで(表面の外貨準備が2.8兆$を切ると危ないと言われています)、日本は間違っても通貨スワップ等で中国を助けないように。『非韓三原則』同様『非中三原則』が正しい姿勢です。でも、東大卒のエリートと言われる人は学力だけが高く、大局観がありません。軍事や歴史に無知だからでしょう。中国の手先になっているという自覚がありません。
北村記事
1月16日、米国のPR会社「エデルマン(Edelman)」は2017年の「エデルマン信頼度バロメーター( Edelman Trust Barometer)」(以下「信頼度指標」)を発表した。エデルマン社は、毎年年初の1~2月にスイスの保養地「ダボス(Davos)」で開催される世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議(World Economic Forum Annual Meeting)」に合わせて信頼度指標を発表し、ダボス会議初日の朝に行われるエデルマン社主催の朝食会で同社CEOが当該指標について報告を行うのが慣例となっている。今年のダボス会議は1月17日から20日までの4日間開催されたが、初日の17日朝にエデルマン社CEOによる信頼度指標に関する報告が行われた。
「政府に対する信頼度」中国が第1位?
2017年の信頼度指標は、2016年10月13日から11月16日までの期間に世界28か国の約3万300人を対象に各人が居住する国の政府、企業、メディア、NGOに対する信頼度について評価してもらった結果を取りまとめたものである。4項目を総合した信頼度(28か国平均:47%)は、第1位:インド(72%)、第2位:インドネシア(69%)、第3位:中国(67%)であった。中国は2016年の信頼度指標では73%で第1位であったから、2017年は信頼度が前年に比べて6%低下したことになる。<注1>
<注1>2017年信頼度指標で日本は4項目総合では28か国中の第25位(35%)であったが、後述する政府に対する信頼度では37%で第14位であった。
さて、上述の通り、中国は2017年信頼度指標の4項目総合では第3位であったが、そのうちの政府に対する信頼度(28か国平均:41%)では76%で第1位であった。中国の政府に対する信頼度指標を過去に遡って調べると、2010年:74%、2011年:88%、2012年:75%、2013年:81%、2014年:76%、2015年:82%、2016年:79%であり、基本的に第1位から第3位の間に位置していて、政府に対する信頼度は非常に高く、盤石という結果になっている。
今年のダボス会議には中国“国家主席”の“習近平”が初参加し、会議初日の1月17日に基調講演を行い、3日後に迫るトランプ次期米大統領の就任を念頭に、欧米諸国に蔓延する保守主義的傾向に懸念を表明し、経済グローバル化の重要性を強調した。エデルマン社が発表した2017年信頼度指標のうちの「政府に対する信頼度」で中国が世界28か国中の第1位であったことを習近平が知っていたかどうかは分からないが、国民の中国政府に対する信頼度の高さが習近平の発言に重みを持たせる役割を幾ばくか果たした可能性は否定できない。
ところで、多少なりとも中国の国情を知っている者なら、「政府に対する信頼度」で中国が世界28か国中の第1位(76%)であるとするエデルマン社の2017年信頼度指標に疑問を抱かざるを得ないし、上述した過去の信頼度指標の数字も到底信じられないだろう。エデルマン社の中国における信頼度調査の対象者は一体どのような基準で選定されているのか。選定されて調査対象者となった人々がいかなる圧力も受けることなく、自分の考えを素直に表明していれば、政府の対する信頼度が上述したような高い数字を示すはずはないと思うのだが、これは間違っているだろうか。
さて、話は本題に入る。2017年1月17日、遼寧省の第12期人民代表大会第8回会議が省都“瀋陽市”の“遼寧人民会堂”で人民代表571人出席の下で開幕した。開幕直後に“遼寧省党委員会副書記”兼“遼寧省長”の“陳求発”が遼寧省政府を代表して「“省政府工作報告(業務報告)”」を行い、「2016年に遼寧省は多大な困難を克服し、財政収入は前年比3.4%増の2199億元(約3兆6720億円)を実現し、予算超過で目標を達成した」と述べた。
遼寧省、データねつ造を公式に発表
2016年の財政収入は前年比3.4%増であったが、2014年の財政収入は前年比23%増であったから、両者を比較すれば財政収入の伸びは20%も減少したことになる。この点について、陳求発は「このような差異が生じたのは、過去に出現した問題による数字の食い違いを回避することができなかった」と述べた後に、2016年に“国家審計署(会計検査院)”が発行した報告書を引用して、「遼寧省の管轄下にある“市”および“県”には、2011年から2014年まで財政データのねつ造が普遍的に存在した。それは長期間にわたって継続し、関係する範囲も大きく、多種多様な手法が用いられていたなどの特色があった」と言明した。すなわち、陳求発は、2011年から2014年の4年間に“官出数字, 数字出官(役人が数字を作り、数字が役人を出世させる)”問題が存在し、経済データに“水分(水増し)”が加えられたことを遼寧省として初めて公式に確認したのだった。
今から10年以上前の2005年8月28日付でニュースサイト「人民網(ネット)」が報じた「人民日報」編集員“夏長勇”の『人民時評:“官出数字, 数字出官”はいつ終わるのか』という記事には次のような記載がある。
【1】少し前にメディアが報じたところによれば、関係部門はすでに統計法改正指導グループを組織しており、統計法の改正作業は具体的な実施段階に入っている。統計法を改正したとしても、現在統計数字の水増し現象は絶えず深刻さを増している。
【2】“政績不够, 数字来凑, 官出数字, 数字出官(政務上の業績が不足なら、数字をかき集めれば良い。役人が数字を作り、数字が役人を出世させる)”。この有名な“順口溜(早口言葉)”は何年も前に流行したものだが、悲しいことに今日でもまだ時代遅れになっておらず、役人は数字をねつ造してさらに大きな官職を盗み取る。こうした事件は常に報じられるが、古い話であっても蒸し返して十分分析することが必要である。
【3】数字の水増しは個別の現象だろうか。そうは言えまい。今年(2005年)の年初、メディアが報じたニュースには驚かされた。2004年の各省・自治区・直轄市が中央政府に報告した通年のGDP(国民総生産)<注2>を取りまとめた数字は、“国家統計局”が発表したGDPの伸び率に比べて3.9%も高かった。この差は2兆6582億元(約44兆1260億円)だった。今年はすでに半分以上を経過したが、この方面の状況は改善されたのか。私は楽観していない。それは目下、“数字出官(数字が役人を出世させる)”という奥義を熟知している人は少数ではないからである。少なからぬ地方では、役人の上から下までが数字のねつ造に狂奔しており、それが出世への通行手形となっている。これは非公開の事実であり、多くの幹部たちはそれを見慣れてしまっている。
<注2>中国では一級行政区(省・自治区・直轄市)のGRP(域内総生産)をGDP(国内総生産)と呼び、それらを取りまとめたものを国家のGDPとして発表している。
上記の記事からも分かるように、“官出数字, 数字出官”は長年にわたって培われた役人が出世するための奥義であり、非公開のものだったが、陳求発はこの事実を白日の下に晒したのだった。遼寧省の経済専門家によれば、遼寧省の一部の“県”や“区”は過去に経済データを少なくとも20~30%水増ししていた。瀋陽市周辺のある県では、2013年の財政収入は24億元(約400億円)であったが、“国家審計署”の検査後に修正した金額は11億元(約180億円)に満たなかった。また、2015年に“国家審計署”が発表した資料によれば、2013年に遼寧省“鞍山市”に属する“岫岩満族自治県”の財政収入は8.47億元(約140億円)であったが、これは大幅な水増しによるもので、実際の財政収入を127%も上回っていた。
順繰りの水増しで膨れ上がる
この点について、腐敗に取り組む国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)」アジア太平洋地区責任者の“寥然(Liao Ran)”は、次のように述べている。すなわち、中国大陸では、役人による統計データのねつ造は、中国共産党が政権を打ち立てた時から今日までずっと存続している。高い成長を示す経済データは政務上の業績である。要するに、役人は上部機関から与えられた目標値の達成を義務付けられ、目標値をどれだけ上回ることができるかで業績を評価され、昇進が促される仕組みになっている。
そうであれば、「馬鹿正直に正確な数字を提出するより、適当に水増しした数字を上部組織に提出して、出世コースに乗るに越したことはない」と考えるのは世の常で、水増しが露見したら露見した時のことと腹をくくり、誰もがやっているから皆で渡れば怖くないと、各地・各階級の役人が数字の水増し競争に現(うつつ)を抜かすことになる。GDPや財政収入などの業績として考慮される数字が、末端の“鎮”・“郷”から“県”、“市”を経て“省”へ報告されるまでには、順繰りに水増しされて膨れ上がり、最終的なねつ造数字が形成されるのである。
機密情報公開サイト「ウィキリークス」は、2010年に李克強にまつわる米国務省のメモを公開した。それは、まだ李克強が遼寧省のNo.1である“遼寧省党委員会書記”であった2007年3月12日に、当時北京市で開催中であった“両会(全国人民代表大会と中国人民政治協商会議)”に参加していた李克強は米国駐中国大使館の招待を受けて、同大使館内でランド大使(Clark. T. Randt, Jr.)と会食したというものであった。
「李克強指数」以外は参考まで
この会食の席上で、遼寧省の経済状況に言及した李克強は、「中国のGDPは人為的に作られたもので、信憑性が低い。遼寧省の経済状況を把握するには、〔1〕電力消費量、〔2〕鉄道運輸量、〔3〕銀行融資総額の3項目に重点を置いて分析すれば、比較的正確な経済成長速度を算定することができる」と述べた上で、笑いながら「その他の数字、とりわけGDPのような統計データは参考でしかない」と言明したという。これを受けて、2012年12月9日付の英誌「エコノミスト」は、上記の内容を報じ、李克強が提起した3項目の数字を中国経済分析のための「李克強指数(Keqiang Index)」<注3>と命名した。
<注3>李克強のローマ字表記は“Li Keqiang”。
一方、“中国共産党中央委員会”の機関紙「人民日報」は2016年12月8日付で国家統計局長の“寧吉喆”が寄稿した『法に基づき統計し、法に基づき統計を管理することを堅持し、統計データの真の正確性を確保する』と題する文章を掲載した。寧吉喆はこの文章の中で、統計データのねつ造について次のように述べている。
『“中国共産党紀律処分条例”』は、“弄虚作假(ねつ造)”行為に対しては、直接責任者と指導責任者をその情状の程度に応じて、“警告”あるいは“留党察看(党籍保留のまま謹慎)”の処分を与えると規定している。総書記の習近平、国務院総理の李克強、同じく副総理の“張高麗”は、基礎データの質を高め、統計のねつ造を厳罰に処さねばならないと、幾度も指示を出している。それにもかかわらず、現在も一部の地方では統計のねつ造が時々発生している。これは統計法規違反の行為であり、党の思想路線に背き、最低限守るべき党規約に抵触している。
中国の統計をつかさどる国家統計局の最高責任者が、地方政府による統計データねつ造の存在を公式に認めたのは前代未聞のことであり、「一部の地方」と言葉を濁しているが、実際は統計データのねつ造が全国的に蔓延している可能性を伺わせたのだった。
上述した遼寧省長の陳求発による遼寧省内の一部の県や区で過去に数字の水増しによる統計データのねつ造が行われていたとの発言は、1か月前に統計データのねつ造が存在することに言及した国家統計局長の寄稿文に誘発されたものと言えるのかもしれない。
監視下ではマイナス成長に
2016年第1四半期(1~3月)のGDPは、遼寧省が全国31省・自治区・直轄市の中で唯一マイナス成長となり、GDP成長率はマイナス1.3%となった。なお、遼寧省の2015年通年のGDP成長率は3.0%であったが、これも全国31省・自治区・直轄市の中で最低の成長率であった。実は、2014年に“中央巡視組(中央巡視チーム)”<注4>が遼寧省を巡視した際に、すでに遼寧省の経済データに虚偽があることを確認していた。遼寧省に対する中央巡視チームによる再検査は2年後の2016年2月27日から4月28日までの2か月間行われたが、経済データに水増しのねつ造が存在することを改めて確認する結果となり、過去2年間に遼寧省が水増し分を絞り出してねつ造問題の徹底的な解決を図った形跡が全くないことが判明した。
<注4>中国共産党の“中央紀律検査委員会(党の監督機関)”と“中央委員会組織部(人事の担当機関)”が連合して設立した中央政府や地方政府による党紀違反や法律違反を査察する組織。
上述した2016年第1四半期のGDPは同年5月26日までに遼寧省と黒龍江省を除く29の一級行政区が数字を公表していたが、当該第1四半期に中央巡視チームの検査を受けていた遼寧省と黒龍江省はGDP数字の発表時期を大きく後ろにずらさざるを得なかった。遼寧省は中央巡視チームが検査する中では、経済データをねつ造することができず、最終的には実際に近い数字を出したため、GDPはマイナス成長に転落したのだった。ちなみに、遼寧省のGDP成長率は、2016年上半期がマイナス1.0%、第3四半期がマイナス2.2%であった。2017年1月24日時点では2016年通年の各一級行政区のGDPは公表されておらず、遼寧省のGDP成長率がどうなったかは分からないが、恐らくマイナス成長からの脱却は不可能だろう。
遼寧省では2015年に財政収入が二桁の落ち込みを示した。遼寧省長の陳求発は、2016年1月に行った「省政府工作報告」でその原因に言及した後、「我々は面子上みっともないという圧力を受けつつ、真剣に水増し分の除去に努め、2015年の財政データを確固たるものとし、2016年以降はその他の経済データも確かなものとするよう努力する」と述べていた。
しかし、遼寧省は水増し分の除去努力を怠ったばかりか、旧態依然の“官出数字, 数字出官”の発想から脱却できなかったために、全国最下位のGDP成長率、しかもマイナスの成長率で呻吟(しんぎん)している。中国経済が下降線をたどる中、遼寧省に危機が迫っている。
瀬口記事
2015年、フランスを訪問した中国の李克強首相。右はフランスのフランソワ・オランド大統領と〔AFPBB News〕
1.本年の経済政策運営の基本方針
中国の李克強総理は2016年12月16日、中央経済工作会議において翌2017年の経済政策運営の基本方針を発表した。
昨年は成長率目標達成重視か構造改革推進重視かで政府内部の意思統一が徹底できておらず、2016年5月に共産党上層部から国務院(行政府)および全国の地方政府に対して、改革推進への注力を促す意見が人民日報に掲載されるなど、習近平政権内部の不協和音が表面化した。
それだけに、今年の経済政策運営の基本方針がどのような形で発表されるか注目されていた。発表された基本方針は構想改革推進を重視する内容となっている。
3大方針の第1は「新常態」だ。これは2014年8月に人民日報に掲載されて有名になった言葉であるが、2012年11月に習近平政権が発足した当初から現在に至るまで、同政権の経済政策運営は一貫してこの方針に基づいていると言っていい。
その中身を簡潔に表現すれば、経済成長速度の適正化と経済構造の筋肉質化である。この大方針の下で2012年以降、中国経済は雇用と物価の安定を保持し、マクロ経済政策面では良好なパフォーマンスを持続している。
一方、経済構造改革面では前政権が先送りした問題が山積している。特に重工業を中心とする過剰設備の問題と中小都市における不動産過剰在庫問題は深刻だ。
それらの削減を加速して、肥満体質の非効率な経済構造をスリムで効率的なものに改善するというのが「新常態」が目指すゴールである。
第2は「サプライサイド改革」である。これは「新常態」という大方針の中核をなす政策方針であり、構造改革により経済の質向上、効率改善、経済社会の公平化、持続的発展などの実現を目指す概念である。
第3は中国語で「穏中求進」と表現されている方針である。経済の安定を保持しながら前進を目指すという意味である。これは「新常態」の下でのマクロ経済政策運営の基本的な考え方を表現したものである。
以上の基本方針を見る限り、本年の経済政策運営方針は基本的に昨年の方針を継承する姿勢が示されたと言える。ここまでの内容に関する限り、特に目新しいサプライズはなく、昨年1年間の政策運営を踏まえた穏当な中身であると感じられた。
2.重要方針となった「日本企業に学べ」の大号令
ところが、この基本方針の次に掲げられた4つの重点施策の中にサプライズがあった。前述の3つの基本方針の下、政策運営の中身について4つの重点施策が掲げられている。
1つ目は昨年の重点施策と同じで、過剰設備の削減と不動産過剰在庫の削減を主とするリストラの推進とそれを補完する政策の推進である。2つ目は農業構造改革の推進、3つ目は実体経済の振興、4つ目は不動産市場の健全な発展促進である。
このうち、サプライズがあったのは3つ目に掲げられた実体経済振興の中身である。
その実現のためには品質向上が何よりも重要であると強調し、その実現のために「匠の精神」の発揚、ブランド構築の強化、「百年老舗」の育成、製品競争力の強化を目指すと述べている。
「匠の精神」と「百年老舗」はまさに日本企業の代名詞であり、「日本企業に学べ」を確実に想起させる表現である。
この表現について、中国政府の産業政策担当の関係者に直接尋ねてみると、この部分は日本とドイツをイメージしていると解説してくれた。確かにドイツも日本と並んで職人気質が国民の間に広く共有されており、創業100年を超える企業も約8000社と日本(約3万社)と米国(約1.2万社)に次いで多い。
しかもドイツはアンゲラ・メルケル首相が2005年11月の就任以来、9回も訪中し中国重視の姿勢を貫いており、様々な分野で国を挙げて中独経済交流を推進してきた。そうした関係から見て中国がドイツに学べという方針を掲げるのは当然とも言える。
一方、日本については、2012年9月の尖閣問題の発生により、日中関係は戦後最悪の状況に陥った。
2015年4月に行われた安倍晋三首相-習近平主席の日中首脳会談以降、徐々に改善の方向に向かい、2016年9月のAPEC閉幕後の首脳会談では双方とも融和的な姿勢を示した。
その後も10月に経済界の訪中団が張高麗副総理と会見した際に予想以上に融和的な長時間の歓迎を受けた。さらに翌11月には4年ぶりに閣僚級での日中省エネ・環境総合フォーラムを開催するなど、日中関係は一歩ずつ改善に向かっている。
とは言え、2008年に胡錦濤主席が訪日し福田首相と会談を行った頃に比べれば、両国の関係は依然不安定である。ましてや1992年10月の天皇皇后両陛下のご訪中時の蜜月関係には遠く及ばない。
それにもかかわらず、中国人の有識者が見れば誰もが日本を示していると分かる表現で「日本企業に学べ」という大号令を今年の経済政策運営の重点施策としたのは大きなサプライズである。
なぜこのタイミングで「日本企業に学べ」という方針が掲げられたのか。
それは中国政府にとって背に腹は代えられない事情が生じているからであると推察される。
昨年の中国経済を振り返ると、経済成長率は6%台後半で安定を保持したが、年初から大きな不安材料を抱えていた。それは民間設備投資の伸びが大幅に鈍化して回復の目処が立たないことである。
中国の民間設備投資の伸びは近年、緩やかな低下傾向を辿りながらも一貫して政府・国有企業・住宅などを含む固定資産投資全体の伸びを大幅に上回る高い伸びを示していた。
ところが、2015年は固定資産投資全体と同じ10%程度の伸びにとどまり、2016年は全体の伸びも8%台前半に低下したが、民間設備投資はそれを大きく下回り2%台半ばにまで下落した。
その下落の原因は、第1に輸出の伸びが毎年20%を上回る高い伸びを続けていた以前に比べて大幅に低下し、今後は高くて数%程度の伸びにとどまると見られているため、輸出関連企業の投資が伸び悩んでいること。
第2に、過剰設備削減の促進に伴い、投資削減対象企業と関連する企業の設備投資が抑制されていること。
第3に、金融機関の民間企業に対する融資姿勢が厳しくなり、資金調達難に陥っていること。
その背景には、金融自由化の進展に伴って預金金利と貸出金利の利ザヤが縮小し、金融機関の収益が伸び悩み、融資姿勢が慎重化しているという事情がある。金融機関は政府が債務を保証すると期待される国有企業向け融資を優先させ、相対的に貸し倒れリスクの高い民間企業向け融資を絞っている。
以上の3つの要因はいずれもすぐには解決できないことから、民間設備投資が回復する見通しは立っていない。
一方、大半の国有企業は経営効率が低いことから、その業績は成長率の低下とともに徐々に悪化していくと予想される。このため、民間企業の産業競争力が改善しなければ、民間設備投資が回復せず、中国経済は国有企業の業績悪化とともに停滞に向かう可能性が高い。
そうした将来リスクを緩和する1つの方法として、中国政府は2015年以降、製造業の競争力強化を目指して「中国製造2025」という方針の下に、イノベーションの促進を重視し、重点産業分野の強化を図っている。
しかし、これを中国地場企業の力だけで実現することは難しい。
1980年以降の中国の目覚ましい経済発展の原動力は「改革開放」であり、その重要な部分は外資企業の投資拡大による技術移転だった。
特に日米韓3国の果たした役割が大きかったが、最近は中国の技術水準が向上し、米国および韓国企業とは競合関係が強まっている。一方、日本およびドイツ企業とはまだ技術力の格差があり、その2国から技術を学ぶニーズは依然強い。
特に日本は従来から対中投資金額が大きく、技術移転にも協力的である。日本企業も中国地場企業に技術を移転し、協力関係を強化し、ともに発展を目指す経営方針をとる企業が多かった。こうした日本企業の経営方針は沿海部を中心に中国各地で高く評価されている。
民間設備投資伸び悩みの解決の糸口がつかめず、国有企業の業績が徐々に低下していく見通しの中、中国企業の品質向上、競争力強化を図るには「改革開放」の原点に回帰し、日本企業とともに発展を目指すことへの期待が大きくなるのは当然である。
以上のような背景から、今年の経済政策方針の重点施策として「日本企業に学べ」という大号令が掲げられたと推測される。
4.日本企業との協調発展のための条件
中国政府が「日本企業に学べ」という重点施策を本格的に実践に移すためには、日本企業の対中直接投資の回復が不可欠である。
ちょうど昨秋以降、自動車、小売関連を中心に日本企業の対中投資が数年ぶりに積極化する兆しが見られ始めている。
この日本企業の姿勢の変化に合わせて中国政府が明確かつ具体的な日本企業重視方針を打ち出せば、多くの日本企業が中国ビジネスに対する過度な慎重姿勢を見直す可能性も出てくる。
しかし、そのためにはそれにふさわしい注目を集める政策が必要である。知的財産権の保護、資金回収リスクの軽減、政府の突然の政策変更によって生じる損失に対する一定の救済措置などが従来から期待されている中国政府への要望である。
それらに加え、今後日本企業の進出が大いに期待される、自動車、ロボット・合理化機械、小売、環境、医療・介護、食品関連等の分野において、日本企業が注目する政策を打ち出すことが有効である。
昨年11月の本稿でも提案した、ハイブリッド車の環境保護車指定、環境基準の日本並みへの引き上げなどがその一例である。
日本企業は今も横並び意識が強いため、いったん中国投資積極化の流れができれば、多くの企業が再び中国に向かう可能性が十分ある。
しかし、2012年以降の対中感情の悪化を考慮すれば、かなり強力な施策が実施されなければ、大きな流れが生まれにくいのも事実である。
今年は日中国交正常化45周年にあたることから、政治面から日中関係改善によって後押しし、経済面で日中両国企業による協調発展プロジェクトを立ち上げて日本企業の対中投資を拡大させることができれば大きな成果が得られる可能性も高まる。
「日本企業に学べ」という大号令が現実のものとなり、中国経済に明るさを取り戻す土台形成に寄与することを期待したい。
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