『習近平主席は本当に強いのか~日経大予測2017  編集委員 中沢克二』(12/30日経)について

今年は習近平VSトランプの争いが本格化するのではないかと思っています。

12/21ロイターによれば、「トランプの閣僚として新政権の主要ポストに名前が挙がった候補者と、すでに指名が決まった新閣僚の顔ぶれは以下の通り。

<すでに指名が決まったポスト>●国土安全保障長官 *ジョン・ケリー(海兵隊退役大将)●環境保護局(EPA)局長 *スコット・プルイット(オクラホマ州の司法長官)●労働長官 *アンディー・パズダー(ファストフード大手CKEレストランツ・ホールディングスの最高経営責任者)●住宅都市開発長官 *ベン・カーソン(元神経外科医)●大統領首席補佐官 *ラインス・プリーバス(共和党全国委員長)●首席戦略官兼上級顧問 *スティーブン・バノン(保守系メディア「ブライトバート・ニュース」の元トップ)●司法長官 *ジェフ・セッションズ(アラバマ州選出共和党上院議員)●中央情報局(CIA)長官 *マイク・ポンペオ(カンザス州選出共和党下院議員)●国家安全保障担当の大統領補佐官 *マイケル・フリン(退役陸軍中将、元国防情報局長)●国連大使 *ニッキー・ヘイリー(サウスカロライナ州知事)●教育長官 *ベッツィー・デボス(共和党の献金者。党の元ミシガン州委員長)●厚生長官 *トム・プライス(ジョージア州選出共和党下院議員)●運輸長官 *イレイン・チャオ(元労働長官。夫は共和党のマコネル上院院内総務)●財務長官 *スティーブン・ムニューチン(元ゴールドマン・サックス(GS.N)幹部、選挙戦でのトランプ陣営の財務責任者)●商務長官  *ウィルバー・ロス(著名投資家、ファンド「WLロス」会長)●国防長官 *ジェームズ・マティス(元中央軍司令官)●エネルギー長官 *リック・ペリー(前テキサス州知事)●国家経済会議(NEC)委員長 *ゲーリー・コーン(ゴールドマン・サックス社長兼最高執行責任者)●国務長官 *レックス・ティラーソン(エクソンモービル(XOM.N)の会長兼最高経営責任者) ●中小企業庁長官 *リンダ・マクマホン(プロレス団体の共同創業者で元最高経営責任者)●内務長官 *ライアン・ジンキ(モンタナ州選出共和党下院議員)●陸軍長官 *ビンセント・ビオラ(高頻度取引企業バーチュ・ファイナンシャル(VIRT.O)創業者)●行政管理予算局(OMB)局長 *ミック・マルバニー(共和党下院議員、サウスカロライナ州)●国家通商会議(新設、National Trade Council) *ピーター・ナバロ(対中強硬派エコノミスト)

<名前が挙がっている候補者>

●米通商代表部(USTR)代表 *ダン・ディミッコ(米鉄鋼大手ニューコア(NUE.N)元CEO)」(以上)

オバマ時代に不遇を託った軍経験者とMBA出身の実業家で構成されています。オバマの口先だけの”change, yes, we can”とは違うものを感じさせます。米国の世界覇権に挑戦して来る中国に甘い顔はしないという事です。中国に時間の利益を与えるのは米国にとって不利になります。=日本にとっても不利になるという事です。南シナ海に日本の自衛隊も「航行の自由作戦」に参加すべきです。尖閣を日米共同で守るには中国に日米の絆を見せつけた方が良いでしょう。国際法に違反している訳でなく、中国の主張する九段線は国際仲裁裁判所で否定された訳ですから。中国が嫌がっているのが分かりますから、どんどんやるべきです。南スーダンに自衛隊を派兵するのは中国の為になるだけで意味がありません。早く撤退した方が良く、南西諸島に配備した方が良いと考えます。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201608/CK2016082102000111.html

本記事にあります、チャイナ7で習=太子党、李=団派、張徳江=江派、兪正声=太子党、劉雲山=江派、王岐山=太子党、張高麗=江派です。常務委員の68歳定年制を破り、王岐山を継続任用させるには理由が必要になりますが、「理屈は後から貨車でやってくる」のでしょう。それを認めれば、習の任期2期というのもあっさり破られるのでは。何せ反腐敗運動で政敵を沢山作りましたので、政権を手放した瞬間に粛清されるかも知れませんし。王岐山を重用すれば、彼が寝首を掻く可能性もあります。

経済的に中国を追い込むのが戦争を避けるためには一番かと思います。勿論気の狂った中共が暴発する可能性もありますが。中国に進出している日本企業も痛みを受けますが、授業料です。諦めるべきです。人権弾圧、粛清が当たり前の共産主義国家が世界制覇を狙っています。その野望を押しとどめなければなりません。日本人にとって、覚悟が試される1年となりそうです。

記事

2017年、日本と世界の経済・政治はどう変わっていくのか。日経新聞のベテラン編集委員の見通しを、このほど出版した『これからの日本の論点 日経大予測2017』(日本経済新聞出版社)をもとに紹介する。

■共産党大会の人事に注目

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習近平・中国国家主席(左)とトランプ・米国次期大統領=AP

中国の2017年最大の焦点は、秋以降の共産党大会人事である。「チャイナ・セブン」といわれる7人の最高指導部=党政治局常務委員の顔ぶれがどうなるかは、今や世界の関心事だ。世界第2位の経済大国で、軍事面の実力も向上している。中国がどうなるかは世界の政治・経済に直接、大きな影響を与える。

中国国家主席、習近平は、17年最高指導部人事で多数派を形成したい。それが、5年にわたり苛烈な「反腐敗」運動を展開した目的だった。7人中4人を自派で固められればベストである。現在の7人の中で、習と、首相の李克強を除く5人は年齢制限により引退するはずだ。68歳という年齢制限には張徳江、兪正声、劉雲山、王岐山、張高麗の5人がひっかかる。彼らは引退を迫られる。その穴をいかに埋めるかの勝負になる。

もう一つの焦点は、「ポスト習近平」を担う新世代の指導者が決まるのかどうかだ。これは、現在の50代の「革命第6世代」の戦いになる。習としては、自らの意向を尊重する従順な人物を自派から選びたい。だが、なかなかそれに適当な人物はいない。

注目すべきグループに、高級幹部の子弟らを指す「太子党」がある。1949年の新中国の建国前の革命戦争を戦ってきた紅(あか)い幹部の子息らを指す「紅二代」もこの一派である。習近平自身もこのグループから抜てきされた。重要な基盤であり、この勢力から誰をエースとして引き上げるかも面白い。

■「南シナ海」、米トランプ政権の出方次第

南シナ海への中国の海洋進出を巡りフィリピンが提訴した裁判でオランダ・ハーグの仲裁裁判所は16年7月12日、中国が管轄権の根拠とする「九段線」には国際法上の根拠がないとの判決を下した。その後、フィリピンのドゥテルテ政権の急速な中国接近などで、南シナ海問題は一見、中国の思惑通りに動いているかのように見える。

だが、次期米大統領、トランプの出方次第で事態は大きく変化する。「中国は要塞を築いている」。当選後、たびたび南シナ海に言及するトランプが、本格的にアジアの安全保障問題に取り組むかどうかは、なお推移を見極める必要がある。これは「一つの中国」に必ずしも縛られない、というトランプの驚くべき発言の今後にも関係する。南シナ海問題、台湾問題、北朝鮮問題……。これらは全て予想が難しいトランプがカギを握る。

そして日中関係も米中関係の動きをにらむ展開になる。17年は、日中国交正常化から45周年に当たる。日中が交流を強化する名目は存在する。これをどう生かすか。16年9月、中国・杭州の20カ国・地域(G20)首脳会議で日中首脳会談を実現させた、首相の安倍晋三と習近平の間でさらなる信頼関係の構築が必要だ。

自民党総裁任期の延長を固めた安倍。その政権の基盤は安定している。習近平指導部としても当面続く安倍政権を無視できない。この状況を日本側もうまく利用し、対中関係を軟着陸させる必要がある。

中国経済の減速が続いている。17年も警戒が必要だ。中国経済の現状分析で注目すべき動きがある。習の経済ブレーンとみられる人物が共産党機関紙、人民日報で語った中身だ。紙面上、匿名の語り手は「権威人士」と呼ばれる。

■「L字型経済」の衝撃

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中国経済は下降した後に当面上向かない「L字型」をたどるとの観測もある(上海市の証券会社)

「中国経済はU字型回復などあり得ない。もっと不可能なのはV字型回復だ。それはL字型の道をたどる」「L字型は一つの段階で、1、2年で終わらない。数年は需要低迷と生産能力過剰が併存する難局を根本的に変えられない」

「L字」とは、下降した後に当面は上向かないことを意味する。従来の中国政府のこれまでの公式説明とは根本的に違う。

「古い手法によるテコ入れ策はバブルを生み、問題を大きくする」「断行すべきはサプライサイド中心の大胆な構造改革だ」。こうも指摘している。

中国の社会全体の債務額は15年末で168兆4800億元(約2700兆円)。これを国内総生産(GDP)で割った比率は249%となる。中国が「全社会レバレッジ率」と呼ぶこの比率は極めて高い。中国で最も大きな債務問題は非金融部門の債務で、そのレバレッジ率は15年末で131%に達するという。融資プラットフォーム債務(政府債務との重複もある)を加えるなら156%である。

中国政府は、貯蓄率が高いためコントロールできると説明している。だが、巨額の債務処理には長い時間を要する。返済に追われる民間部門はかなり長い期間、設備投資を控えざるをえない。こうした深刻さの認識が、権威人士による先の「中国経済は当面、『L字』に」という表現だった。今後とも比較的好調な新車販売、インターネット通販などを含めた消費の後押しが必要だ。注意すべきは、リーマン・ショック時の4兆元対策のようなバラマキ、大盤振る舞いに陥らないようにすることだ。この過剰投資こそが現在の苦境をつくった元凶だった。

中長期的な中国経済の行方を左右するのは、イノベーションによる構造転換である。中国政府は、技術集約度と付加価値が高い産業の発展戦略を描く。「メード・イン・チャイナ(中国製造)2025」と名付けた戦略では、製造大国から製造強国への転換を目指している。

■注目の「メード・イン・チャイナ2025」

中国の製造業の実力は確実に上がっている。家電の海爾集団(ハイアール)、通信技術の華為技術(ファーウェイ)などが代表例だ。ハイテク製品の輸出でも中国は世界一である。しかし、中国の自主ブランドの輸出はその1割にも達していない。8、9割が、外資系企業が中国で生産した製品だ。自動車にしても、大半がドイツ、日本、米国の企業のブランドだ。民族企業の技術はまだまだ劣る。この現状を打開できるかが中国の将来を決める。

これらは国務院を統括する首相の李克強がリーダーシップを発揮できる分野だ。しかし、それは習近平と李克強のコンビが次の次の党大会がある22年まで、うまく力を発揮すればの話である。

話題となった「権威人士」の正体は、中央財経指導小組の弁公室主任、劉鶴だった。彼は、習政権のマクロ経済の司令塔として絶大な力を持つ。時には李克強より影響力は大きい。経済政策を巡って路線対立があるのは明らかだ。

中国の16年の成長目標は6.5~7%である。首相の李克強は中国経済について「楽観しており、自信がある」としている。これも習の経済ブレーンの指摘とはニュアンスが違う。それでも中国はこの数字を必ず達成するだろう。そうでなければ20年までに国民所得を倍増する目標は達成できない。

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大都市の不動産価格は暴騰が続いているが、住宅市場は過剰在庫が目立つ(重慶市)

一連の経済政策での対立が、17年の中国経済全体にどんな影響を及ぼすのか。純粋な政策上の対立というより、政治が絡むため予想は難しい。しかし、この経済論争の帰趨(きすう)が、17年の共産党大会での最高指導部人事に影響する。

■不動産バブルは崩壊の兆し

中国の住宅市場は過剰在庫がなお目立つ。だが、16年まで大都市では価格が暴騰していた。特に、深圳では住宅価格が前年に比べて5割も上がった。おかしな現象だ。その理由は、行き場を失った流動資金がどっと住宅市場に流入したことだ。中国人はつい最近まで、住宅価格は右肩上がりで、下がることはないと信じ込んでいた。バブル景気までの日本の土地神話と極めて似ていた。公有制だった中国に民間住宅市場が誕生したのは1990年代末のことだ。まだ、20年の歴史もない。

その頃、中国人は、政府や国有企業などから極めて安値で住宅の割り当てを受けた。ちょっと目先の利く人々は、この住宅を担保に銀行から巨額の資金を借り入れ、2軒目の家を買った。それが数年もたたずに2、3倍の値になった。これを転売すれば値上がり益は大きい。この行為を繰り返せば、大金持ちになってしまう。実際、彼らはそうなった。保有している家は、農村などから出てきた人々に貸せば、かなりの賃貸収入も得られる。

社会主義を掲げる中国は、住宅に関する限り、資本主義以上に資本主義的だ。とはいえ、土地そのものは国のものである。30、50、70年間という期限つきの使用権しかない。これを売買しているのだ。定期借地権付き住宅と考えればよい。本当の資産価値は住宅の上物にしかない。冷静に考えれば、今のような高値はおかしい。日本で言う「土地転がし」。ゆがんだゲームはどこかで終わる。誰かが必ずババを引くのだ。17年にかけて不動産相場は大都市でも天井を打ち、下落傾向が強まるだろう。(敬称略)

[2016年10月21日発行の『これからの日本の論点 日経大予測2017』の一部を抜粋、加筆・再構成]

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