『それでもサンダース氏が降りない理由 最も好感度の低い2人による激戦が始まった』(6/10日経ビジネスオンライン 高濱賛)について

6/10「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」

< 『もしサンダースがクリントンとチケットを組めば。。。。  トランプの当選は覚束なくなる』 

 オバマ大統領の秘策は、民主党予備選で最後までクリントンを猛追したバーニー・サンダースを説得し、「副大統領」のチケットを組ませることになる。そのために、オバマはサンダースをホワイトハウスに招く。

 民主党がふたつに分裂するほどの戦果をあげたサンダースが、もし、この仲介案を受けると民主党は一気に団結するため、トランプの当選の可能性は稀薄となる秘策である。

 予備選の結末はでた。残る問題は党大会での正副大統領チケットが、どのようなコンビとなるか、其れが次の見所だろう。>(以上)

6/12「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」

< 『役者はそろったが、帷幄は不協和音でギシギシと   トランプ、組織が団結に遠く、そして資金集めは立ち後れ

 人気投票ではヒラリー・クリントンと五分五分のドナルド・トランプ陣営、しかしクリントン陣営と決定的な差違は、組織化の立ち後れ、資金集めがようやく開始されるという泥縄的な遅れである。

 まず帷幄をみるとメンバーは揃いつつある。

 戦略チーフはフィクサーとして著名なポール・マニフォート、主将格は真っ先にトランプを支持したクリス・クリスチーヌ(ニュー・ジャージー州知事)。

 資金集めの応援団長格にブッシュ陣営の責任者だったウッディ・ジョンソンとジョン・カスティマテイディスが加わって、共和党からもベテランのライス・プライパスが急遽加わり、なんとか陣営の中核部分が形成された。

 選挙スタッフはと言えば、トランプは70名しかしない。

一方のクリントン陣営にはウォール街や労組からの派遣組で732名のもスタッフ。十倍の開きがある。

 資金面はどうか。クリントンはすでに10億ドルを集めた。

 トランプはこれまでの予備選で5600万ドルを使い果たし、資金切れとなる。

ようやく本格的な資金集めを開始するが、目標は10億ドル。半分も集まらないと予測されている。

 ウォール街と金持ちが依然としてトランプに冷淡だからだ。

 この遅れを取りもどそうと、トランプ陣営は6月10日にニューヨークのフォーシーズンズ・ホテルに幹部を集め、初めての資金キャンペーン対策会議を開催した。

 しかしカスティマティデスはいう。「彼の効果的なテレビ出演をCM費用に換算すれば、優に10億ドルに値する」と強気である。

 さて最大の難題は組織化だろう。

 共和党組織が強いのはニュー・ジャージー州、メリーランド州、そしてカリフォルニア州だが、選挙本番で死命を制するほどの影響力を持つフロリダ、ウィスコンシン、ペンシルバニア、オハイオ州でトランプ選対の組織化が遅れに遅れている。

 ところでバーニー・サンダースはまだ民主党の予備選から撤退しないが、もし「副大統領候補」としてのチケットを引き受けるとなると、トランプの勝ち目はまずなくなると見られている。

しかしサンダース支持者は「それなら棄権する」「トランプに入れる」というウィング現象も予測される状況下、直近の「ワシントンポスト」(6月11日)の世論調査では、第三候補のグレイ・ジョンソン(リバタリアン党)へ投票が相当数流れそうだという。

 1980年のカーター vs レーガンではアンダーソンが第三候補として出馬し、7%を取った。

92年にはブッシュ vs クリントンにロス・ペローが出馬し、19%もとって、優位といわれていたブッシュ落選となった。

 2000年にはラルフ・ネーダーが「緑の党」からでて、3%だったが、こんどはクリントン、トランプともに「嫌い」「大嫌い」とする反応があまりにも強力であり、思わぬ第三党の大飛躍があれば、予測はさらに難しくなる。>

①副大統領に誰が指名されるかによって投票行動が変わるかも・・・民主はサンダースになればトランプに勝ち目はないでしょう。ただヒラリーが受け入れるかです。選挙戦中、互いに遣り合ってきた関係で、プライドの高いヒラリーが呑むかどうかです。6/12日経には「エリザベス・ウオーレン上院議員」の名前が副大統領候補として挙がっていました。これが実現すれば、民主党は大統領・副大統領とも女性になります。ただ、ウオーレンは反ウオール街の立場ですので政策の擦り合わせには苦労するでしょう。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48069

共和党はコンドリーザ・ライスを副大統領にすれば黒人・女性で民主党に対抗できると思いますが、ライスは人種差別主義者と目されるトランプでは受けないでしょう。誰にするのかは予想がつきません。

②第三党の存在・・・リバタリアン党のジョンソンが出れば間違いなく共和党にはダメージで民主党が勝つことになるでしょう。トランプを支持しない共和党員の票が流れますので。

③ヒラリーへのFBIの聴聞・・・ベンガジ事件や私用メールアドレス使用問題で嘘をついてきたヒラリーにどこまでFBIが迫れるかです。この結果如何では大統領候補から辞退も考えられます。そうなれば民主党候補は誰になるのか?

ヒラリーの腐敗も槍玉に挙がっています。中国人から違法に献金を受けたのではないかとの疑惑です。彼女が大統領になれば中国にキツイことは言えないでしょう。共和党が勝ってほしいと思います。

http://www.sankei.com/world/news/160610/wor1606100002-n1.html

記事

—カリフォルニア州などの予備選・党員集会が6月7日に終了。民主、共和両党の大統領候補が事実上決定しました。もっとも、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官(64)も共和党のドナルド・トランプ氏(69)も7日の予備選前に、指名に必要な代議員数を獲得していましたから何となく拍子抜けした感がありますが…。 (6月7日実施された両党の予備選・党員集会の投票結果、各候補者が獲得した代議員の総数はこちら

Hillary Rodham Clinton-3

米民主党の大統領候補への指名を確実にしたクリントン氏(写真:The New York Times/アフロ)

高濱:これで2月1日にアイオワ州から始まった予備選は、6月14日に行われるワシントン特別区を残すのみとなりました。長い長い闘いでした。

 史上初の女性大統領が誕生するのか、それとも政治歴ゼロのビジネスマンが第45代大統領になるのか――どちらが大統領になっても前代未聞の米大統領が誕生することになります。

史上最も好感度の低い候補者同士が対決

 もう一つ、クリントン、トランプ両候補ともに米国民からものすごく嫌われている点が気になるところです。5月中旬に実施された世論調査によると、クリントン氏の「非好感度」(unlikeability)は61%、トランプ氏は56%でした。

 なぜそれほど嫌われているのか。

 政策ではなく性格や態度が対象になっているようです。クリントン氏は「傲慢さ」「お高い」、トランプ氏は「人を見下した態度」「品のなさ」といった項目が上がっています。

 もっとも、「非好感度」が高いからといって大統領になる資格がないわけではありません。「好感度」が低くかったリチャード・ニクソン氏が第37代大統領になった例もあります。ただ一般有権者の目線で見ると、「好感度」はある意味で政策面より重要かもしれません。

 米有力紙の政治エディターの一人は筆者にこう述べています。「本選挙に勝つにはクリントン、トランプともにいかに好感度を高めていくかが極めて重要になる。が、一度有権者のマインドに入り込んだ好き嫌いの感覚を払しょくするのは至難の業だ」 (”Clinton’s negatetives surpass Trump’s,” Dana Blanton, FoxNews.com, 5/18/2016)

ヒラリー、トランプの「アキレス腱」はこれだ

 指名に必要な代議員数を獲得したあともトランプ氏の無責任な毒舌は続いています。これが続くようですと、クリントン氏の思うつぼになりかねません。

 当初、泡沫候補と見なされていたトランプ氏の発言は、半ばエンターテインメントとして、ある程度見過ごされてきました。しかし、いやしくも今は、共和党という二大政党の一つの大統領候補への指名を確実にしました。これからは、これまでのようにはいきません。一つ一つの発言が厳しくチェックされます。

 多民族・多文化国家の米国には数々の禁句(タブー)があります。とくに人種、宗教、性別に関する禁句は法的にも禁じられています。

 トランプ氏の暴言に政治的行動を起こした地方議会があります。カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のアナハイム、ディズニーランドのある町です。その市議会に4月下旬、トランプ氏の発言を非難する決議案が上程されました。

 賛否両論が拮抗し、結局、同決議案は棚上げされました。「主要政党の大統領候補の発言をめぐって地方議会が非難決議案を論議するのは前代未聞」(同市議会関係者)だそうです。 (”Anaheim City Council to consider resolution denouncing Donald Trump,” Jason Song, Los Angeles Times, 4/25/2016)

 またトランプ氏には詐欺疑惑も浮上しています、自らが不動産投資オンライン講座と称して設置した「トランプ大学」の授業料返還訴訟問題です。この事件を担当した判事(メキシコ系)について、トランプ氏はテレビのインタビューで人種的侮蔑発言をしました。それでなくともメキシコ系移民を「レイプ犯」と言ってのけるトランプ氏のこと、米メディアは「トランプ氏はレイシスト(人種差別主義者)だ」とレッテルを張っています。

 一方のクリントン氏はいまだに「メールゲート」疑惑を引きずっています。私的メールで国家機密が漏えいしたかどうか、真相究明を進めてきた米連邦捜査局(FBI)が近日中に最終判断を下すようです。

 また、夫君と一緒に創設した「クリントン財団」への寄付金を外国政府などから集めるため、国務長官としての職権を乱用したのではないか、といった疑惑も指摘されています。サンダース氏は選挙演説の中でこの問題を取り上げました。 (”Sanders finally raises challenge to Clinton Foundation cronyism,” Larry O’Connor, hotair.com., 6/6/2016)

サンダースが副大統領になる可能性

—民主党全国党大会は7月18~21日までフィアディルフィアで、共和党大会は7月25~28日までクリーブランドでそれぞれ開かれますね。

高濱:クリントン氏とトランプ氏にとって、11月8日の本選挙までの約150日は二つのステージに分けられます。第一ステージは、それぞれが党大統領候補に正式に指名される全国党大会までの約50日間。第二ステージは党大会から11月8日の本選挙までの約100日です。

 第一ステージにクリントン氏がやらねばならない最大の仕事は、撤退を拒否しているバーニー・サンダース上院議員(74)を説得して候補者から降りてもらうこと。そして出来るだけ早期に党内一致結束体制を確立したいところです。

 指名を事実上獲得したとはいえ、同じ党の候補者に連日、自分を批判する発言をされるのは、クリントン氏にとって厄介です。反論せざるを得ませんが、すればするほど党内の亀裂が深まってしまう。トランプ氏との一騎打ちに注がねばならないエネルギーが削がれてしまいます。

 6月7日に6州予備選・党員集会が終わったあとも、サンダース氏は最後まで戦うと息巻いています。全く撤退する気はなさそうです。

 サンダース氏に降りてもらうため、クリントン氏はなんらかの条件を出さねばならないでしょう。可能性の一つはサンダース氏を処遇面で優遇すること。クリントン氏の周辺では「サンダース副大統領起用説」がまことしやかに流れているそうです。

 サンダース氏は5月29日、副大統領候補を受け入れる可能性があるかをテレビ・インタビューでただされて、こう答えています。「今、私の頭は民主党大統領候補の指名を勝ち取ることでいっぱいだ。そのあとどうなるか、わからない」。

 インタビューアーはこう応じました。「典型な政治家の発言だ。それで十分だ。あなたはその(副大統領候補を受け入れる)可能性を否定していない」 (”Bernie Sanders Is Sounding A lot Like A Guy Who May Want To Be Vice preesident,” Jason Easley, politicalusa.com., 5/29/2016)

トランプにとっての「時の氏神」は誰か

 一方のトランプ氏はクリントン批判のオクターブを一気に上げたいところです。が、それよりもなによりも党大会前にどうしてもやらなければならない最優先課題は、党内エスタブリッシュメント(保守本流)との和解にメドをつけることです。

 全国党大会を取り仕切るポール・ライアン下院議長の支持は取り付けました。しかし前々回の大統領選で共和党大統領候補に指名されたジョン・マケイン上院議員や、前回の候補となったミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事のほか、ブッシュ一家が党大会欠席を早々と決めています。トランプを指名する党大会なんかには出られるか、というわけです。

 政治的、道義的、個人的理由からトランプ氏を忌避する共和党員はこうした大物だけではなさそうです。そっぽを向いている共和党の大幹部たちとどうやったら和解できるのか。誰が仲介役になってくれるのか、トランプ氏にとっての「時の氏神」は誰なのか、注目されます。

サンダースが最後まで撤退しない三つの理由

—話を民主党に戻します。サンダース氏は指名獲得が不可能になったのに、どうして撤退しようとしないのですか。

高濱:三つほど理由があると思います。一つは、「貧富の格差を是正する」という自身の政治理念を最後の最後まで訴えたいのです。大統領選ほど効果的に訴えられる場はありません。

 その政治理念に照らして見てみると、「貧富の格差是正」に不熱心なクリントン氏は既成体制派であり、「ウォール・ストリート」に象徴される大企業の代弁者ということになります。

 サンダース氏は自らを社会民主主義者だと言って憚りません。一方のクリントン氏は自らをリベラル派と言わずに、むしろ「プログレッシブ」(改革者)と呼んでいます。

 最近発行された「Alter Egos: Hillary Clinton, Barack Obama, and The Twilight Struggle over American Power」の著者、ニューヨーク・タイムズのマーク・ランドラー氏はクリントン氏を評してこう書いています。「ヒラリー自身、かって『私の政治信条は生まれ育った保守主義的環境に根付いている』とまで言っている。その後民主党に転向、リベラル派の弁護士として社会の不正義や女性差別、人種差別に立ち向かってきた。だがヒラリーのプログレッシブな言動はあくまで保守的な基盤に根差していたと言える」

 社会民主主義者のサンダース氏からしてみれば、同じ民主党員とはいえ、保守主義的の基盤に根差したクリントン氏とは相いれないものがあるのでしょう。

 そのクリントン氏を当初から全面的に支援してきたのは党内エスタブリッシュメントです。サンダース氏が大統領選に立候補して改めて認識したのは、クリントン氏が一般民主党員の票とは無関係な「特別代議員」の票を独占的に集め、指名に必要な代議員数を獲得した事実です。確かにクリントン氏は特別代議員712人のうち571人(6月7日現在)を獲得しています。

 サンダース氏は、民主党のこうした旧態依然としたルールを変えるべきだと主張しています。けれども党執行部は現段階では耳を貸そうとしていません。

 二つ目は、サンダース氏自身が口癖のように言っている以下の理由です。「ここで引き下がるわけにはいかない。撤退は民主主義の常識の範囲を著しく侵す行為につながるからだ」。

 政治ジャーナリストのダニエル・デペトリス氏はこのサンダース氏の発言を次のように読み解いています。「サンダース自身、代議員獲得争いで負けたことは十分わかっている。ただし、予選選挙が進む中で、『代議員数争い』とか『従来からの選挙常識』といったものが、有権者のパッションや現状に対する憤りによってかき消され、隅に追いやられた」。

 「確かにサンダースは、(民主党大統領候補には指名されることのない)死人が歩き続けているようなものだ。彼は選挙運動を、民主党内の旧態依然とした悪習を外部に暴露する伝達手段として使っているのだ。自分の始めたことは、『党を改革する』という道義に基づく本物の一揆だと信じて疑うことがない」 (”Wjy Bernie Sanders Won’t guit,” Daniel R. DePetris, The National Interest, 5/26/2016)

 三つ目は、この「老兵」を最初から今まで支持し続けてくれた若者たちへの「仁義」(Duty)のようなものかもしれません。

 世論調査で、サンダース氏は17~29歳までの若年層から150万票を獲得していることが判明しました。これに対して、クリントン、トランプの両氏に流れた若年層の票の合計は120万票。つまり、二人の合計よりも30万票多い票を得たことになります。若者はどこの国でも理想を追い求めます。「貧富の格差是正」もさることながら、「公立大学授業料免除」も若者にアピールしたのでしょう。 (”Updated–Total Youth Votes in 2016 Primaries and Caucuses,” The Center for Information & Research on Civil Learning and Engagement, 4/28/2016)

 2月以降、サンダース氏を密着取材してきたソーシャルメディアの記者は筆者にこう述べています。「若者たちは手弁当で選挙運動を続けている。サンダースはこれまでついてきた若者たちを裏切るわけにはいかない。代議員獲得争いでは敗れたが、自分を応援してくれ、票を投じてくれた党員990万人の生の声を7月の党大会会場に届けなければならないと考えているのだ」。

第三の党「リバタリアン党」はトランプ票を食うか

—第三政党「リバタリアン党」から6月29日、ゲーリー・ジョンソン元ニューメキシコ州知事が立候補しました。クリントン氏とトランプ氏の一騎打ちに影響を与えるでしょうか。

高濱:リバタリアン党は共和党と同じく「小さな政府」を目指しています。連邦政府の支出を削減することで均衡財政と減税を実現すると主張する「財政保守」の党です。ただし社会政策は民主党寄りです。同性結婚の権利を擁護しており、人工妊娠中絶にも寛容です。

 リバタリアン党を取材するテレビ局の政治記者の一人は筆者にこう解説しています。「ジョンソンは08年大統領選でロン・ポール下院議員(16年の大統領選に共和党から立候補したランド・ポール上院議員の父親)を支持するなど共和党穏健派とのつながりが深い。今回の出馬はトランプに乗っ取られた共和党の反トランプ分子の受け皿になろうとする意味合いがある」。

 となると、ジョンソン氏の立候補によって票を奪われる可能性があるのはトランプ氏です。NBCとウォールストリート・ジャーナルが5月19日に実施した世論調査では「第三の候補に投票するか」との質問に、「検討する」と答えた人が47%もいました。 (”More Americans Consider Third-party Options,” Byron Tau, Wall Street Journal, 5/24/2016)

 また前述のFoxニュースの世論調査の支持率では、トランプ氏42%、クリントン氏39%に続き、ジョンソン氏は10%を獲得しています。トランプ氏を忌避する共和党支持者がジョンソン氏に流れることは十分考えられます。 (”Fox News Poll: Trump tops Clinton, both seen as deeply flawed,” Dana Blanton, FoxNews.com., 5/18/2016)

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『北京の地下住民「ネズミ族」と止まらない格差 上海ディズニーと格差(4) 「持つ者」の心の葛藤と現実主義』(6/9日経ビジネスオンライン 山田泰司)について

鼠族について『互動百科』(中国版Wiki)には「“鼠族”指靠租地下室来生活的一群人,他们大多像老鼠一样生活在地下。因为收入不高,又为了在大城市生活,只能待在地下室。2014年1月,外媒报道:高房价催生“鼠族”,北京28万人住地下室。另有同名漫画作品《鼠族》,作品讲述了阿特父母从纳粹大屠杀中逃生的真实经历,曾获得普利策奖项。」(鼠族は地下室を借りて生活する人を指す。彼らの大部分は鼠と同じような生活を地下でしている。収入が高くないのに、大都市で生活したいので、地下室で暮らすしかない。2014年1月、海外の報道によると「不動産の高騰が鼠族を生ぜしめた。北京では28万人が地下で暮らしている。他には同名の漫画で鼠族というのもあり、作品中作者のアトの父母がナチの大虐殺(そう言えば南京大虐殺記念館も“侵华日军南京大屠杀遇难同胞纪念馆”と表記されています。日本語表記は屠殺になります)から逃げる真実の体験が述べられていて、ピューリッツァー賞を獲得しました」とありました。以前には蟻族もいて「中華人民共和国の都市部に生活する安定的な職を得られない大卒者集団」とのこと。

http://matome.naver.jp/odai/2137427535216293801

鼠族の数は『互動百科』では28万人とありますが、本記事の100万人が実数に近いでしょう。中国は都合の悪い数字は少なく公表するからです。

日本でも貧困ビジネスが話題になりました。タコ部屋に押し込み、生活保護を受給させ、その中から家賃を払わせるもの。大阪では中国人の生活保護の不正受給が問題になったことがありました。日本は外国スパイに甘いだけでなく、外国の一般人にも甘いです。日本人の本当に困っている人には手が差し伸べられていないのでは。もっと外国人の生活保護受給者を監督し、必要に応じ本国に帰還させるべきと思います。

http://www.yawaran.net/news/column7.shtml

http://ironna.jp/article/502

本記事に出て来る中国人の姿は普通でしょう。公の概念がなく、自己中心なのは当たり前です。世話になっても恩を感じず、場合によっては九州の身元保証をしていた社長夫婦を襲い、夫を殺害、妻に重傷を負わせるようなことさえ起こります。

http://c212pv76.jugem.jp/?eid=1227

自由のない国ですから、兄のように米国に行けば、中国には戻らないでしょう。ただ、家族が人質になる可能性もありますが。鄧小平の「先富論」は間違いだったことが明らかになってきました。自己中な中華民族の特質を無視、経済的自由だけを認め、政治的自由を認めないため、格差は広がるばかり、かつ腐敗も底なし沼の様相を呈するまでになりました、仮初の豊かさ(30兆$の負債を抱えた中国経済)であっても、軍事で暴走、他国を侵略するに至りました。自己中の極みです。鼠族・蟻族とも社会矛盾を解決するため立ち上がらなければならないのに、自分の利益しか考えないので難しいでしょう。

記事

ジンジン(26)から去年の秋、「弟のハンション(23)が北京で地下室アパートの経営をするようになった」と聞かされた時には、へえ、あの出前の仕事も続かなかったハンションが、今やアパートのオーナーになったのか、成功したものだ、結婚も決まったし、出稼ぎ労働者として身を粉にして働いてきた両親もこれで一安心だろう、とまず思った。

上海で働く両親と離れ、祖母と2人で暮らしていた安徽省の農村にある自宅で私が初めてハンションに会ったのは彼が中学2年生の時だった。その後、大学に進んで欲しいという両親の希望に反し、「勉強が嫌いだから」と高校にも進学せず両親のいる上海に出て来て飲食店の出前など短期間で職を転々とした彼だったが、専門学校ぐらいは出ていないとどうにもならないと周囲に説得され、田舎に戻って自動車修理の専門学校に進み、内陸の重慶で米国の自動車会社系列の自動車修理工場に修理工として就職した。

堅い仕事に就いたと周囲が喜んだのもつかの間、長時間の重労働に耐えられずすぐに辞めてしまった。ちょうどそのころ、北京で駐車場の管理の仕事を請け負う会社を立ち上げた親戚が見かねて、北京に来いと声をかけてくれ、その仕事を手伝うようになったが、今度はいつまで続くのだろうかと両親は案じていた。

 このような経緯を知っていただけに、ハンションがアパートの経営をするようになったと聞いた時には、反射的に、ああ、北京での生活は順調なのだな、学歴もないのによく短期間で頭金を貯めて中古のアパートが買えたものだ、よく頑張っているなと、単純に彼の今の境遇を喜んだのだ。

 ただ、少し落ち着いてから、ジンジンの言葉を改めて反芻してみた。アパートはアパートでもハンションが経営するのは「地下室」だという。「地下室」という言葉が、私の口の中にザラリとした苦いものを残した。

 中古のアパートを購入しそれを貸しに出しているのだろうと勝手に思い込んでいたが、どうやらそうではないらしい。

 北京の地下室のアパートは、お金さえあれば買える、という類いのものではない。「権力」というにはいささか大げさだが、お金で買うことができない「権利」を持った人間との絡みを持たなければ、地下室のアパート経営にかかわることはできないのである。

basement in Beijing

地下室アパートの入り口と階段。暗い闇の先に部屋が並んでいる(北京市内)

100万人が地下に住む

 不動産の高騰に拍車がかり、「地上」に家を借りることができない地方出身の低所得者が、本来住居用でない地下の空間に設けられた狭い部屋に住み始めているということが最初にクローズアップされたのは、2008年の北京五輪前後のことだろうか。その後、地下居住者の数は増え続け、ピーク時には100万人にまで膨れ上がったと言われる。これら地下住民は、地下に巣を作って暮らすネズミのようだとして「鼠民」という呼ばれ方をする。

北京にあるこうした地下のスペースは、冷戦時代の1950~60年代にかけて、ソ連(当時)の侵攻を警戒して防空壕として掘られたものだという。当初、これら防空壕に住居を設けることに制限はなかったというが、地方から北京への人口流入が続き、地下に居住する人の数が膨張するにつれ、治安や防災の面から問題視されるようになった。そして2011年の条例改正で、本来は居住用途でない地下の空間を住居として貸し出すことが禁止された。ただその後も地下居住者が目に見えて減少したということはない。中国当局は春節(旧正月)や国慶節(建国記念日)などに合わせて毎年、犯罪などの撲滅キャンペーンを張るが、地下室もこうした節目に合わせて年に数回、取り締まりが強化され、キャンペーンが終わると緩むということが繰り返されているようである。

地下室ビジネス参入の条件

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平均的な地下室アパートの1室

 とはいえ、条例で禁止されているのだから、誰でもがこの「市場」に参入できるわけではない。マンションの管理を請け負う不動産会社が地下室の賃貸の元締めであるケースが大半だ。管理会社はさらに別の会社や個人に店子探しや家賃の徴収などを下請けに出す。ハンションはまさにこの部分に位置している。そして、徴収した家賃は管理会社と折半する。さらに管理会社はこの中から、その地域を管轄する「組織」に必要に応じて一部を上納するという図式である。

 北京の賃貸住宅の平均価格は2015年、4463元(約7万6000円。偉業我愛我家市場研究院調べ)。これに対して、ハンションは2カ所の地下スペースに計13室を管理しているが、家賃は平均すると月額600元(約1万円)だ。

 つい最近、私は北京でハンションに地下室を案内してもらった。今年の春節に例年にないほどの大規模な取り締まりがあって、いったん住民が全員出て行ってしまったとのことだったが、それでも8割が既に埋まっていた。4畳半から6畳ほどのスペースに入り切らない家財道具を廊下に並べている光景は地上の安アパートと同じだが、空気は澱んでいる。自然光がまったく入らない真の闇の奥に潜む自分の住み処に向かって毎日、階段を下りて行くのは想像するだけでも気が滅入る。ただ、600元という家賃は、地上の相場からするとやはり格安だ。

「共食い」の葛藤と現実の選択

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各戸の家財道具が並ぶ廊下。電灯を点けると暗闇に造花が浮かび上がった

 ハンションが地下室ビジネスをしていると聞いて、私は正直、「条例で禁止されている商売をやっている」という点を咎める気持ちはまったく起こらなかった。「上に政策あれば、下に対策あり」と言われる中国である。これと類似するケースは日常茶飯に存在するのだから。

 ただ、北京の地下住民の問題には、都会の人間が、地方から出て来た人たちの窮状につけ込んで食い物にしている、という構図がある。ジンジンとハンションの両親が働く上海では、北京のような地下住居は多くないのだが、それに代わる存在が、やはり居住が許されてない取り壊しが決まった廃虚だ。ジンジンとハンションの両親も、正規の住宅に比して格安の廃虚を転々とし、ひっそりと生活してきた。

それだけに、自分の両親や自分自身と同じ境遇にある人たちを相手に地下室ビジネスをやるのは、ハンションにとって、共食いをするに等しいことだとも言える。その点について、ハンションに葛藤はないのかが気になった。聞けば、800台を収容する「正業」の駐車場の管理の仕事だけで、ハンションは毎月1万5000元(約25万円)前後の収入があるのだという。臨月の妻は産休に入っているが、やはり仕事を持っている。それだけの収入があれば、何も地下室の経営をしなくても、比較的余裕のある暮らしができるはずだ。駐車場経営の実績を評価して、管理会社はハンションに地下室管理を持ちかけたのだろう。ただ、余裕の出た地方出身者が、格差を利用した商売をしていたら、都市の人間と地方出身者、強者と弱者の格差はこの国から未来永劫、なくならないだろう。

個人の利益の最大化

 とは言え、面と向かってハンションにこの気持ちをぶつける勇気は、私にはなかった。そこで、より交流がある兄のジンジンに私の考えを伝えてみた。するとジンジンは、「北京に家のない、地方から裸一貫で出て来た若者が、4000元や5000元(6万8000~8万5000円)の給料から5000元の家賃をどうやったら出せると言うんですか? 安い住宅を提供して、弟は住人たちから感謝されていますよ」と気色ばんだ。

 北京を発つ前、お兄さんは、安いお金で住居を提供してくれているあなたに住民たちは感謝している、と言っていたけど、あなた自身もそう思う? とハンションに聞いた。するとハンションは、「兄貴はそんなこと言ったの?」と苦笑いし、すぐに真顔になって、「感謝なんかされてないよ」とつぶやいた。そして、「地下室アパートの件は、運に恵まれて、それをつかんだ、そういうことなんだ」と言った。

 ジンジンは、国の研究所に付属する大学院の博士課程で大気汚染の改善を研究している。学費は全額免除、かつ研究所の業務を補佐しているということで、月2000元(約3万4000円)程度だが報酬も得ている。卒業後も研究所に残って就職するには海外に3年間留学するのが条件だとのことで、ジンジンも米国に留学する予定だが、「チャンスがあれば、そのまま米国に移住したい」という希望を常に口にする。

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地下室で見かけた人影

 それを聞く度に私は、あなたのようなエリートが海外に移住してしまったら、PM2.5に苦しむ中国の問題はだれが解決するの? 国に尽くすのがあなたのような若いエリートの使命ではないのか。ある程度の条件が揃ったり権利が手に入ったりすると、問題を解決しようとしないでひたすら権利を行使する側に回ってしまうのが、中国の最大の問題だと言って説教する。ジンジンは、オジサンの説教を「うーん。それはそうですね」と毎回真面目に聞いてくれるし、理解もしてくれているようだ。

 しかし、ジンジンも、そしてハンションも、実際に取る行動は恐らく、国よりも、格差の是正よりも、個人の権利や利益を最大化するかどうかに基準を置いて判断するのだろうと、彼らの話を聞いて思う。そしてそれが、中国のリアルに基づいた彼らにとっての最適解なのだろうな、とも。

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『「米国から免罪符を貰った日本」に憤る韓国 「オバマは韓国人慰霊碑を無視した」(1)』、『「コリアン・ロジック」で逆恨みする韓国 「オバマは韓国人慰霊碑を無視した」(2)』(6/9・10日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

6/10日経朝刊で小原凡司氏は中国の軍艦の尖閣接続水域侵入について、「日ロ双方の艦艇に対抗か」として「中国は尖閣を中国領と明記した領海法を制定し、国連海洋法条約に規定する無害通航を認めていない。中国海軍の艦長は中国が主張する「領海」に進出する可能性があるロシア海軍の艦艇と、それを警戒監視する海上自衛隊の護衛艦に対処したのではないか。ロシアと共同で行動したのではないだろう。中国が接続水域に入ったと言っても、尖閣諸島の久米島と大正島の付近をなめるような抑制的な動きだ。中国が事態をエスカレートさせる意図はないように思える」とありました。それなら、南シナ海も無害通航を認めないのでしょう。現実には尖閣も南シナ海も米艦艇、海自艦が遊弋しています。抑止できないのは中国海軍の実力が伴っていないからでしょう。

接続水域侵入はアドバルーンの一種で、当然中国政府と一体となってやっていると思われます。斎木次官が程駐日大使へ「政府と軍は連携を取れているのか」という抗議(6/10日経朝刊)したのは、政府と軍が別々な行動を取っているという前提です。胡錦濤時代は上海派が軍の中枢を握っていて江沢民が嫌がらせで胡錦濤の知らない所で軍を動かしていましたが、習は軍の人事を自派で固めました。勿論、上海派の軍人の怨念は物凄いものがあると思われますが。接続水域侵入は、6/6小生のブログで書いた「サラミ・スライス戦略」の一環で、日本と米国の対応の仕方をジックリ見極めようとしているのでは。ただ「民間漁船」を侵入させてという「キャベツ戦術」には反します。軍艦が出れば海自艦が出動し、ひいては米軍の出動も可能となりますので。

韓国の歴史を加害者と被害者と区別して見る見方はおかしいのでは。それであれば韓国の最大の加害者は中国ではないか。中国に文句も言わず、日本にだけ難癖をつけるのは二重基準です。そもそも、加害者と被害者の区別を誰がするのか?判断基準は法律or道徳になるのでしょう。それは世界各国で違いがあります。中華・小中華の自己中と韓国の事大主義の為せる業でしょう。日本人の誰もがオバマの訪広で免罪符を貰ったなんて思っていないでしょう。「和解が進んだ」とだけ。中韓は日本との歴史戦で日本の名誉を失わせ、金を強請り取ることしか考えていません。欧州の和解はドイツに対して寛容な国があったればこそです。「千年たっても加害者と被害者の立場は変わらない」という国家元首のいる国とは永遠に和解できないだけでなく、正真正銘の敵国と認識すべきです。戦争の善悪はともかく、戦争は人類の歴史上繰り返されて来たもので、今も世界のどこかしこで起きています。国際法上も戦争は「国際紛争の解決手段」として違法ではありません。侵略戦争は違法ですが、自衛戦争と侵略戦争の区別は難しく定義も明確ではありません。実質、戦争は現実的に起きていることを見ると、国際法上合法と見るしかないのでは。石川明人准教授は『戦争は人間的な営みである』という本を書いています。小生は、他の動物には見られない同種の生物への攻撃をするのは多分人間だけと思っています。知的レベルの高い動物としての性かも。

http://okigunnji.com/?p=1052

韓国国民は特異体質の持主です。「妬み」「嫉み」「恨み」「駄々こね」「嘘つき」「強請り」「タカリ」と挙げればキリがありません。「火病持ち」で合理的精神のない未熟な民族です。韓国・中国がここまで増長した原因は日米の甘やかしにもあります。日米両国はもっと毅然たる態度で臨むべし。カーター国防長官の韓国外しは当然です。韓国はレッド・チームも同然な行動を取ってきた訳ですから。もう後戻りはできないのでは。時すでに遅しです。韓国は中国の属国に、北朝鮮は米国と平和条約を結び、捻じれが起きるかもしれません。日本とロシアも対中包囲網として平和条約締結が必要となるでしょう。山縣有朋ですら、ロシアと結んで英米に対抗し、中国には武力を用いて積極的に介入しようという意図を有していたのですから。(川田稔 著『原敬と山県有朋―国家構想をめぐる外交と内政』)

6/9記事

carter in Singapore

6月4日、シンガポールで開催されたアジア安全保障対話で、米国のカーター国防長官が列挙した「安全保障のネットワークに前向きな国」に韓国は含まれなかった(写真=AP/アフロ)

前回から読む)

「やはり、オバマ(Barack Obama)は日本に免罪符を与えた」と韓国で不満が渦巻く。

たった150メートルなのに

—オバマ大統領が5月27日、広島の平和記念公園を訪れました。韓国メディアはどう反応しましたか?

鈴置:どの新聞の社説も「オバマ大統領が韓国人被爆者に十分に気を配らなかったこと」を中心に論じました。

半面「米中の間で韓国が二股外交を展開し得る空間が一気に狭まった」との指摘は見当たりませんでした。

朝鮮日報の姜天錫(カン・チョンソク)論説顧問が「大局を見落とすな」と懸念した通りになりました(「韓国は『尊敬される国』になるのか」参照)。

保守系紙、中央日報の社説(5月28日、日本語版)の見出しは「惜しまれるオバマ大統領の広島訪問=韓国」でした。

「惜しまれた」のは、韓国人被爆者の慰霊碑に大統領が足を運ばなかったことです。その部分を引用します。

  • オバマ大統領は原爆犠牲者慰霊碑に献花し、故人を追悼した。しかしそこからわずか150メートルの距離にある韓国人犠牲者慰霊碑には足を運ばなかった。演説で「数万人の韓国人」に言及しただけだ。韓国人の慰霊碑に行って韓国人の霊を慰めるべきだった。
  • オバマ大統領は韓半島の非核化にさえ言及しなかった。米国の核兵器が韓国人に残した傷と、韓半島の厳然たる現実に背を向けたまま日本との歴史的な和解に傍点を打った(強調した)広島訪問が、我々を残念な気持ちにさせた。

安倍に与えた免罪符

—オバマ大統領は演説で「数万人」ではなく「数千人の朝鮮半島出身の人々」と語っていませんでしたか。

鈴置:韓国では、広島と長崎を合わせて3万人の韓国人が原爆によって亡くなったとされています。中央日報は米大統領の発言を「韓国説」に合わせて書き変えたと思われます。

東亜日報も5月28日に社説を載せました。日本語版では「原爆慰霊碑を訪れた米大統領、北朝鮮の核を頭上に載せて暮らす韓国」の見出しで掲載されました。

ただ、大元の韓国語版の「日本の原爆慰霊碑を訪れた米オバマ、北の核の解決はどうするのか」と内容がかなり異なります。そこで韓国語版をテキストにし、ポイントを翻訳します。

  • オバマ大統領は韓国人原爆被害者にも言及したが、150メートル離れた韓国人慰霊碑にはついに訪れなかった。我々としては物足りなさを感じる他はない。
  • 彼は原爆投下に対し謝罪の発言はしなかった。しかし安倍晋三総理と並んで献花し、日本人被害者を抱擁する姿を全世界に見せた。
  • これにより「被害者イメージ」を政治的に利用しようとする安倍政権に免罪符を与えたと言えよう。

左派も保守もオバマに不満

—いまだに「日本の被害者コスプレ」「米国から免罪符」と書いているのですね。

鈴置:韓国メディアはオバマ大統領の広島訪問前から、小ずるい日本がうまく立ち回って免罪符を得ようとしている、と報じてきました(「日本の『被害者なりすまし』を許すな」参照)。

広島訪問の後は「オバマが韓国人慰霊碑を無視した」と強調されたこともあって「ずるい日本」と「日本を許した米国」への憤まんが増幅したのです。

左派系紙、ハンギョレの社説は「オバマ大統領は原爆投下で民間人が被害を受けたことに関し明確に謝罪していない」と書きました。これは保守系紙にない批判でした。が、基本的な主張は保守系紙と同じ「韓国にはちゃんと謝らなかった」との難詰でした。

「方向を誤ったオバマ大統領の広島訪問」(5月28日、日本語版)のポイントが以下です。

オバマ大統領が韓国人慰霊碑に足を運ばなかったのは言い訳の余地がない。韓国人被爆者は日本の植民地支配と原爆の被害を同時に受けた、まさに最も罪とは無縁の民間人だ。

オバマ大統領は式典に日本人被爆者を参加させながら、現地を訪れた韓国人原爆被害者とは会おうともしなかった。

安倍政権は早くも今回の訪問を「被害者日本」のイメージ作りに活用している。

なお、「被害者日本のイメージ作り」に関し、この社説は具体例を挙げていません。記事の中でこの文章だけがぽつんと浮いています。

ハンギョレも声を大にして「被害者コスプレ」と批判してきたので、それを裏付ける事実が出て来なくとも「安倍がコスプレに活用し始めた」と書かざるを得なかったのでしょう。

音無しの朝鮮日報

—最大手の朝鮮日報の社説は「広島訪問」をどう書いたのですか?

鈴置:それが何と、社説では一切取り上げなかったのです。ほぼすべての韓国紙が社説で論じたというのに……。異様でした。

冒頭でも触れたように「広島訪問」2週間前の5月13日、姜天錫論説顧問が「広島での米日の平和ショーを見守る韓国人慰霊碑」(韓国語版)を書いたばかりでした。

「我々はオバマ広島訪問に関し『韓国人も謝罪の対象になるのか』という点にこだわっている。米中が対決姿勢を明確にするという世界の大勢の変化を見落とせば、また、国を滅ぼす」との主張です。

大記者がそう論陣を張ってしまった以上「韓国はちゃんと謝ってもらえなかった」ことを軸にした社説はさすがに書きにくかったと思われます。

もちろん「韓国人被爆者」には一切触れずに、姜天錫顧問張りの「大局論」を載せる手もあります。でも、そんな社説を載せたら「韓国人被爆者をなぜ無視したのか」と抗議が殺到したでしょう。

そこで朝鮮日報の論説委員会はこの日「広島」に関してはパスすることにしたと思われます。

保険をかけた?

—少数説は語りにくいのですね。

鈴置:それは日本でも同じことです。反対に、他の人と同じことを言っておけば、誰からも文句は来ない。

ただ、朝鮮日報も「保険」をかけたくなったのかもしれません。5月30日になって「萬物相」という名物コラムに、姜仁仙(カン・インソン)論説委員が「広島のオバマ」(韓国語版)を書きました。

このコラムは「オバマ大統領は150メートル離れた朝鮮人の慰霊碑は訪れなかった」と一言だけ韓国人被爆者に触れた後、以下のように――他紙の社説と同様の主張を展開しました。

  • 原爆で被害を受けた最初の国とのイメージが強くなるほど、日本が第2次世界大戦の加害者であるとの歴史は曖昧になる。
  • 米国は、広島訪問は謝罪ではないと明言した。だが、日本の被害国のイメージを浮き彫りにした。日本が誠意ある謝罪をしていないという事実は薄れた。

一犬、虚に吠ゆれば

—なるほど。大記者、姜天錫論説顧問の「顔」は立てつつも「免罪符論」では他紙に追従したのですね。

鈴置:韓国では一度、被害者に認定してもらえば相手を高みから攻撃できます。だから当然、日本もその作戦で来ると思い込んでいる。

そこでメディアは、謝罪はなかったのに、その事実には目を向けず「また、日本にやられた」と悔しがっているのです。韓国人は「自分の影」に怯えたのです。

でも、皆が怯えたので韓国では「日本が免罪符を得た」ことになってしまいました。まさに「一犬、虚に吠ゆれば万犬、実を伝う」です。

—そう言えば中央日報の社説が、日本の政府だけではなくメディアに対しても「オバマが広島へ行っても、免罪符を貰ったといい気になるなよ」と予め威嚇していましたね。

鈴置:「オバマ大統領の性急な広島訪問は遺憾=韓国」(5月12日、日本語版)です。その部分は以下です。

  • 日本の世論はオバマ大統領の広島訪問自体を謝罪として受け止める可能性が高い。すでに日本メディアはオバマ大統領の広島訪問を「歴史的事件」として特筆大書している。
  • 戦犯国が被害者に化けるという、あきれるような事態が生じないよう、日本政府・メディアは我田引水式の解釈や過度な意味付けを自制しなければいけない。

日経も朝日も

—日本のメディアは「謝罪はなかった」と書いています。

鈴置:実際、そうだったからです。別段、中央日報に脅されたから「謝罪はなかった」と書いているわけではありません。

日経新聞の大石格編集委員は5月28日の1面のコラム「『歴史的訪問』どう生かす」で「オバマ大統領は謝罪のために被爆地に足を運んだのではない」とはっきり書きました。

朝日新聞は5月28日付の社説「核なき世界への転換点」でオバマ大統領が謝罪はもちろん、原爆投下への責任に触れることもなかったとして「失望の声も上がった」と書きました。

日経の記事が「それでもなお、今回の訪問が日米双方の心に残るわだかまりを解きほぐす大きな一歩になった」と前向きに評価したのとは異なります。

でも日本では――米国でもそうですが、広島訪問への評価は様々であるにしろ「謝罪はなかった」という事実は共有されたのです。

というのに韓国だけが「事実上の謝罪により、日本は免罪符を得た」と信じ「自分は外された」とひとり不満を募らせているのです。

始まった「本当の韓国外し」

—韓国は、大丈夫でしょうか。

鈴置:大丈夫ではないと思います。「日米から外された」と韓国が勘違いして怒っているうちに、本当に米国から外され始めました。

カーター(Ashton Carter)米国防長官は6月4日、シンガポールで開かれた安全保障対話での演説で「原則に立脚した安全保障のネットワーク(principled security network )」の重要性を繰り返し強調しました。

米国とアジアの国々が安全保障に関する多国間の協力体制を作る――との構想です。もちろん、軍事力でアジアの海に勢力を拡大する中国が念頭にあります。演説のテキストと動画はこちらで見られます。

カーター長官は安全保障のネットワークに前向きな国の名をいちいち挙げ、その国と米国の具体的な協力の中身も紹介しました。挙げられた国は日本、豪州、フィリピン、インド、ベトナム、シンガポールの6カ国です。

ここには韓国の名は出てこず「北朝鮮の挑発に対応するための米日韓3国協力」のくだりでチラリと登場しただけでした。

米韓同盟はいつまで持つのか

—露骨な「韓国外し」ですね。

鈴置:米国が「外す」のは当然です。韓国は中国と敵対するのを避けようと、米韓同盟を対北朝鮮専用に変えようとしている。韓国自身がこっそりと外れようとしているのです。事実上の対中包囲網の参加国リストに、韓国の名がないのは驚くべきことではありません。

今回のカーター演説のニュースは「韓国は枠外の国」と米国がはっきりとさせたことです。これを聞いて「米韓同盟がいつまで持つか分からない」と考える日本の専門家が増えました。

というのに韓国人は「憎い日本に免罪符を出した米国」に、ひとり身を焦している。お門違いのうえ、世界の流れを見落とした議論に没頭しているのです。姜天錫論説顧問が「韓国人よ、目を覚ませ!」と叫びたくなるのは当然でしょう。

(次回に続く)=6月10日に掲載予定

6/10記事

Abe and OBama in Hiroshima-2

日米両国政府は「謝罪」を抜きにすることで、オバマ大統領の広島訪問を乗り切った(写真=AP/アフロ)

前回から読む)

感情のまま、思い付きで動く韓国外交。それを懸念する声が、さすがに内側から出てきた。

謝罪はオバマでなく安倍に求めよ

前回は、韓国は自分たちだけで通じる独自の世界観と理屈で動いている、との話でした。

鈴置:それを誰かが指摘するのかな……と思って見ていたら、6月1日に朝鮮日報の蘇于鉦(ソヌ・ジョン)論説委員が「ベトナム、広島、リ・スヨン」(韓国語版)を書きました。

2005年から2010年まで東京特派員を務めた後、国際部長などを歴任した記者で、名文家としても名高い。この記事は実に興味深いのです。

主張の骨格は前回にも紹介した、朝鮮日報の姜天錫論説顧問の「オバマ広島訪問の本質を見落とすな」と同じです。

ただ、枝葉に当たる部分で「韓国人特有のロジックが外国では奇妙に受け止められるであろう」と指摘したのです。

記事の構成上は「枝葉」に当たりますが、その割には書き込んであるので筆者は、本当はこれを書きたかったのではないかと思えます。以下、その部分を引用します。

  • 米大統領の広島行きで日本の戦争責任と植民地支配の責任が薄らぐ可能性がある。だから韓国は反対し、懸念してきた。だが、その思い通りにはならなかった。
  • すると今度は反対側の歴史を持ち出した。米国の原爆により数万人の韓国人が命を落とした。韓国は被害国だ。だから米大統領が広島に行くなら、韓国人慰霊碑も参拝せねばならない、という理屈だ。
  • 我々はこうした論法を当然だと考えている。しかし、支配・被支配の善悪論理に慣れていない他国は二律背反的に聞くかもしれない。
  • 韓国は「原爆投下を招いたのは日本だ」と信じている。「韓国人の犠牲が出たのも日本のせい」だ。
  • そうだとするなら、韓国人慰霊碑への訪問を要求する相手は日本の総理ではないのか。なぜ米大統領に韓国人慰霊碑への訪問を要求するのか。米大統領の広島訪問を懸念して反対する一方で、韓国人慰霊碑への訪問を要求するのは矛盾ではないのか――。
  • こうした視点から、米大統領に様々の要求をする韓国をおかしいと考える人々が世の中には存在する。

日本になら何をしてもいい

—全くその通りですね。日本がすべて悪いと言うのなら、韓国人被爆者への謝罪を米国の大統領ではなく、日本の首相に要求すべきでした。韓国人はなぜ、こんな奇妙な理屈をこねるのでしょうか。

鈴置:蘇于鉦論説委員は理由をはっきりと書いていません。以下はあくまで私の見方です。

オバマ(Barack Obama)大統領が広島に行くかもしれないと聞いて「日米関係が深化する」と恐れ、本能的に反対した。行くことが決まった後は、少しでも「深化」の度合いを減らそうと「謝るな」と米国に要求した。「行くこと自体が謝罪だ」との意見が出たので、今度は「自分がのけ者になる」と慌て「韓国にも謝れ」と言い出した……。

韓国は『尊敬される国』になるのか」で説明したように、韓国という国は日本が得になると見たら、理屈抜きでとにかく邪魔をします。その結果、しばしば言動のつじつまが合わなくなってしまうのです。

蘇于鉦論説委員は「支配・被支配の善悪論理」という抽象的な表現を使っています。これは「我が国を植民地化した日本に対してなら何をしてもよいとの韓国人の行動原理」を指していると思われます。

米国の「うんざり」が「嫌韓」に

—日本が絡むと冷静に考えられなくなる、ということですね。

鈴置:簡単に言えばそういうことです。特に、朴槿恵(パク・クンヘ)政権は条件反射的に動きます。しかし韓国人はその脈絡のなさと言いますか、奇妙さに気づかず「自分を無視する世界」に不満を募らせるのです。

2015年にも朴槿恵政権は、安倍首相の米上下両院議会演説を阻止しようと執拗に米国に働きかけ、失敗しました(「『安倍演説阻止』に向けた韓国の動き」参照)。

「安倍演説阻止」に向けた韓国の動き(2015年)

2月14日 聯合ニュース「在米韓国人、安倍首相の議会演説阻止に動く」と報道
3月4日 訪米した韓国国会の鄭義和議長、安倍首相の米議会演説に関し米下院議長に「日本の真の謝罪と行動が必要」
3月19日 聯合ニュース「米議会、安倍総理の上下院合同演説を許可する方向」と報道
3月20日 韓国外交部「安倍首相は米議会演説で歴史への省察を示すべきだ」
3月29日 韓国の尹炳世外相「安倍首相の米議会演説と70年談話が日本の歴史認識の試金石になる」
4月2日 鄭議長、訪韓した民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務に「日本の首相は米議会演説で過去を認め謝罪すべきだ」
4月2日 尹外相、ペロシ総務に「安倍演説は侵略、植民地支配、慰安婦に関しすでに認めた立場を具体的な表現で触れねばならない」
4月2日 朴槿恵大統領、ペロシ総務に「慰安婦問題の解決は急務」
4月16日 日米韓外務次官協議で韓国の趙太庸第1次官「安倍演説は正しい歴史認識を基に」と注文
4月21日 韓国国会の羅卿瑗・外交統一委員長、リッパート駐韓米大使に安倍首相の歴史認識について懸念表明
4月21日 WSJ「韓国政府が安倍首相の米議会演説に韓国の主張を反映させるべく米広報会社と契約」
4月22日 韓国の柳興洙駐日大使、戦後70年談話で「(侵略、植民地支配、反省の)3つの言葉を使うよう期待」
4月22日 韓国外交部、バンドン会議での安倍演説に関し「植民地支配と侵略への謝罪と反省がなかったことが遺憾」
4月23日 米下院議員25人「安倍首相が訪米中に歴史問題に言及し、村山・河野両談話を再確認する」ことを促す書簡送る
4月23日 韓国系と中国系の団体、元慰安婦とともに米議会内で会見し「安倍首相は演説で謝罪を」と要求
4月24日 韓国外交部「尹外相とケリー米国務長官が電話、歴史対立を癒す努力で一致」と発表
4月24日 ブラジル訪問中の朴大統領「日本に、正しい歴史認識を基にした誠意ある行動を期待」
4月24日 ローズ米大統領副補佐官「安倍首相に対し、過去の談話と合致し、地域の緊張を和らげるよう働きかけている」
4月24日 メディロス米NSCアジア部長「歴史問題は最終解決に達するよう取り組むことが重要」
4月28日 安倍首相、ワシントンでオバマ大統領と会談
4月29日 安倍首相、米上下両院で議会演説。日米同盟の強化を訴え万雷の拍手受ける

「日本の肩ばかり持つ米国」に怒った韓国人は「それなら我々は中国側に行こう」とも言い出しました。逆恨みです(「『ヴォーゲル声明』に逆襲託す韓国」参照)。

一方、日米離間を図る韓国に対し、米国の外交界は大いに不信感を抱きました。安倍演説阻止を狙った官民挙げての活動に「韓国疲れ」(Korea Fatigue)という単語までできたのです(「米国の『うんざり』が『嫌韓』に変わる時」参照)。

なお、韓国独特の奇妙な主張を――つじつまが合わず、時には韓国自らに損をもたらす論理を「コリアン・ロジック」と呼ぶ日本のビジネスマンもいます。

「広島訪問」では「米議会演説」の時ほどには、朴槿恵政権は露骨な反対運動を繰り広げませんでした。ただ、韓国メディアによると、水面下では米国政府に訪問に対し「強い懸念」を伝えたり、韓国人慰霊碑へのオバマ大統領への献花を要求したりしたようです。

「議会演説阻止」の失敗に懲りて政府は表に出ず、メディアに米国説得の応援を頼んだ感もあります。「日本の『被害者なりすまし』を許すな」で説明したように、韓国各紙の「ヒロシマ・キャンペーン」には異様な熱が入っていました。

たった1行も書いてないのに

蘇于鉦論説委員は、こんなことをやっていると世界から――ことに米国から奇異の目で見られるぞ、と警告したのです。このコラムでは、以下のくだりが続きます。

  • ホワイトハウスは、大統領の広島訪問は原爆投下に対する反省や謝罪を意味するものではないと何度も主張してきた。日本の戦争責任に免罪符を与えるものでないとも言った。
  • 日本の政府と主要メディアはやはり、たった一言も、1行もそうした解釈をしなかった。事実、オバマ大統領は謝罪しておらず、頭を下げもしなかった。ひたすら、「核兵器のない世界」を強調した。
  • オバマ大統領が韓国人慰霊碑を訪問しなかったことも、同じ脈絡で理解できる。韓国を無視しているからではなく、自身の訪問が歴史問題、特に植民地支配問題として解釈されたくなかったからではないか。そんな友邦をできるだけ理解すべきではないだろうか。

蘇于鉦論説委員は、韓国は事実関係及び、米国の真意を誤認していると指摘、「現実を素直に見ようではないか」と呼び掛けたのです。

「日本政府と主要メディアはたった一言も、1行もそうした解釈をしなかった」とのくだりに、その思いがこもっています。

勘違いし続ける韓国人

日米両国政府は「謝罪なしの広島訪問」で合意していたのです。「歴史をどう見るか」あるいは「歴史の責任」に関する議論に足をとられることを避けるためでした。

広島訪問は、任期満了間際のオバマ大統領の実績作りの側面が大きかった。しかも日米関係悪化という巨大なリスクもあった。

そこで両国政府は、双方の責任を露骨に問うことのない「謝罪なし」によって乗り切ったわけです(「日本の『被害者なりすまし』を許すな」参照)。

もし、韓国が米国を批判したいのなら「米国が日本に対し謝罪しなかったのは不当だ。それにより日本も謝罪を逃れたではないか」と言うべきだったのです。

というのに韓国人は勘違いして「事実上の謝罪だった。けしからん」と米国へのフラストレーションを高めてしまいました。蘇于鉦論説委員はそれを諌めたのです。

オバマは日本ばかり可愛がる

—韓国人の誤認により、何か問題が起きたのですか。

鈴置:まだ、表面化はしていません。しかし、この手の誤認は、韓国にとって極めて危険です。韓国の唯一の同盟国である米国への不信感をどんどん膨らますからです。

新聞記事はともかく、それへの書き込み欄や交流サイト(SNS)は「オバマは日本に騙されて免罪符を渡した」「結局、米国は日本ばかり可愛がる」「韓国はいつも無視される」「それなら我々は中国側に行こう」といった韓国人の怒りで満ちています。もちろん、韓国メディアの虚報が原因です。

前回、東亜日報の社説の日本語版と韓国語版が大きく異なると説明しました。早版に「まずい部分」があったために大きく書き直した。しかし早版を翻訳して作る日本語版では、そのまま掲載されてしまった――のではないか、と思われます。

以下は、日本語版の「原爆慰霊碑を訪れた米大統領、北朝鮮の核を頭上に載せて暮らす韓国」(5月28日)だけに載っている文章、つまり遅版になって削除されたと見られる部分です。

(1)韓国は、日本が加害者から被害者に化ける状況に拍手することはできないということを米国は知らなければならない。 (2)核のない世界を主張しながらも、いざ北朝鮮の核に対しては「戦略的忍耐」で一貫したオバマ大統領が、今回朴槿恵大統領を招待して北朝鮮(の)核への日米韓共同対応を強調しなかったことは残念だ。

米国に八つ当たり

—米国に対し高飛車ですね。

鈴置:東亜日報もオバマ大統領に対し「韓国人慰霊碑に行け」と強硬に要求していました。5月12日の「米オバマ大統領の初の広島訪問を注視する」(韓国語版)では以下のように書いています。

  • オバマ大統領は韓国人慰霊碑も訪れ、日本の過ちに間接的にでも警告することを望む。

韓国人読者の前でこれだけ突っ張って見せたのに完全に無視された。そこで「高飛車」に書いたのでしょう。ただ、あまりの高姿勢に、どこかからモノ言いが付いて慌てて差し替えたのではないかと思います。

ことに(2)はめちゃくちゃな理屈です。「オバマが広島へ行くなら我が国の大統領も誘うべきだった。誘いがないのはけしからん」との難癖です。

朴槿恵大統領は中国の目を気にして「日米韓」の協調行動を徹底的に避けています。誘われたら広島へ行ったと考える外交関係者は、まずいないでしょう。

今回の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)にも日本から招待されたのに、アフリカ歴訪の先約があることを理由に断ったとされています。もちろん「中国包囲網」に加わったと見なされないためです。

現実から完全に遊離した主張――八つ当たりそのものでした。早版の社説のまま行っていたら、東亜日報はソウルでも物笑いの種になっていたでしょう。

ますます現実と遊離

—韓国人の、現実とはかけ離れた世界観や奇妙なロジック。知れば知るほどに驚きます。

鈴置:前回も話しましたように、米国が韓国を見限る可能性も出てきた。それでも韓国では天動説的な議論が続いているのです。

—6月4日のカーター(Ashton Carter)米国防長官のシンガポール演説のことですね。

鈴置:軍事力で勢力を拡大する中国を念頭に、カーター国防長官は「原則に立脚した安全保障のネットワーク(principled security network )」の結成を呼び掛けました。

米国とすでに協力を進めている国の名を挙げましたが、そこに「韓国」はありませんでした。同盟を結んでいる日本、豪州、フィリピンはもちろん、同盟のないインド、ベトナム、シンガポールまで「リスト」入りしたというのに。

「韓国の天動説」は最近、特にひどくなっている感じです。趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムのヴァンダービルド氏は孤軍奮闘、声をからして警告を発してきました。

こんな中、ようやく大手紙にも自分たちの「奇妙な現実認識」への反省が載り始めたというわけです。懸念するのは蘇于鉦論説委員だけではありません。

(次回に続く)

良ければ下にあります

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『北京震撼、習主席が狙う次の超大物』(6/8日経電子版 編集委員 中沢克二)について

中沢氏は宮崎氏のメルマガを読んで、確認の上で安心して記事にしている気がします。

6/1宮崎正弘の国際ニュース・早読み」  常軌を逸してきたのか、習近平の反腐敗キャンペーン 次の標的は李源潮(国家副主席)か。団派と正面衝突へ

 江沢民率いた上海派を敵に回して、政敵を次々と葬り、国民の喝采をうけてきた習近平だが、この反腐敗キャンペーンも軍人からは恨みを買い、つぎに連立政権のパートナーだった団派と、正面衝突する愚を犯した。  胡錦涛率いる団派(共産主義青年団)は、李克強首相が経済政策立案のポストから外されて、怒り心頭。ふたりが全人代の雛壇でお互いにそっぽを向いている写真は、ひろく世界に配信された。この写真から読み取れるのは太子党vs団派という対立構造が深化し、後戻り出来ない状況へ陥った現実を象徴している。  さきに習近平は胡錦涛の懐刀だった令計画を失脚させた。この余波で令の弟である令完成が秘密ファイルを持ち出して米国へ亡命した。  そしてまた団派に衝撃が走った。 李源潮(国家副主席、政治局員)の側近六人を、取り調べ、失脚させようとしていることだ。彼は江蘇省書記を務めたキャリアがある。  かつて李源潮が江蘇省書記時代に、かれの周りを固めて「ダイヤモンドの六人衆」と言われたのが、李雲峰(江蘇省副省長兼党委常任委委員)、仇和(雲南省副書記)、王眠(遼寧省書記)、楊玉沢(南京市委員会書記)、季建業(南京市長)、趙少康(江蘇省前秘書長)である。  博訊新聞網(5月30日)によれば、この六人が近く中央紀律委員会の調査対象になると報じている。  李源潮は次期党大会(2017年秋)で政治局常務委員会入りが確実とされる団派のホープである。 もし李の側近連中を失脚させる目的があるとすれば、最終の標的は団派の一角を崩す、習近平の深謀遠慮であり、李克強首相の顕著なばかりの影響力低下とあいまって、団派を正面の敵と見据えたことでもある。  しかし一方において、習近平の反腐敗キャンペーンの元締めとなって精力的な活動をつづけてきた王岐山が、最近、習から離れつつあり、習近平政権の権力基盤は大きく揺らいできたとう観測がある。  王岐山の習近平から離脱ともいえる最近の動きに多くのチャイナウォッチャーが注目している。>(以上)

中国と言うのはつくづく三国志の世界だと思います。昨日の敵は今日の友、くっついたり離れたりです。合従連衡策で独りの強いパワーを持つ国が出ないように牽制し合います。習が党書記になった当初は団派+太子党VS上海派だったのが、今は太子党VS団派+上海派となっています。習+王岐山が本当にしっかり結びついているのかも気になる所です。胡錦濤、江沢民、曽慶紅の反撃が北載河会議を前にしてどのように演じられるかです。共産党宣伝部は劉雲山(上海派)が握っています。習の近辺のスキャンダルが出て来るかも知れません。或は米国にいる令計画の弟・完成が重大機密をリークするかもしれません。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160607/frn1606071140001-n1.htm

記事

「習近平(国家)主席が狙うのは超大物だ。とんでもないことが起きかねない」。5月末から北京の政治関係者らは、集まればこんなひそひそ話をしている。減速が目立つ経済などそっちのけだ。震撼(しんかん)が走ったきっかけは、5月30日の共産党中央規律検査委員会の発表。江蘇省の常務副省長、李雲峰が重大な規律違反の疑いで拘束された。彼は党中央委員会の候補委員でもある。

 虎退治の隊長、王岐山はどこに――。中国のインターネットメディアは李雲峰の摘発直後にこう発信した。中央規律検査委トップは4月20日に演説をした後、1カ月以上も動静が伝えられていなかった。報道は行間に「王岐山の潜伏は大物摘発の準備」という事実をにおわせた。

■「本丸は国家副主席、李源潮」説

 なぜ、この江蘇省副省長が大物なのか。話は2000年前後に遡る。李雲峰は江蘇省の交通の要衝にして酢の名産地である鎮江市近郊の出身だ。昨年6月、このコラムで「『江沢民を鎮める』 主席の旅に隠された呪文」と題し、鎮江を舞台にした習近平による元国家主席、江沢民けん制の構図を紹介した。この物語に李雲峰は絡んでいる。

Li Yuanchao

全国政治協商会議の開幕式に出席した李源潮政治局委員(3月3日、北京の人民大会堂)=写真 小高顕

 江沢民への配慮から「江を鎮める」と読める鎮江の名を冠した大橋とするのを取りやめた頃、李雲峰は、江蘇省共産党委員会の副秘書長だった。省内の重要な政治調整を担っており、江蘇省出身の時のトップ、江沢民への様々な根回しにも一役買った。

 その頃、李雲峰が直接、仕えた江蘇省のトップは現在の国家副主席で党政治局委員の李源潮だった。12年の党大会では「チャイナ・セブン」の有力候補だったが、夢はついえ、国家副主席という外向けの顔の地位に就いた。65歳の李源潮は5月5日、自民党副総裁、高村正彦を団長とする日中友好議員連盟訪中団と会談している。9000万人近い共産主義青年団(共青団)要の人物だ。

 李雲峰は江蘇省を基盤とする李源潮の側近として出世の階段を昇った。李源潮の地元、江蘇省での「大秘書」で、言わば官房長官役。カネの流れを含め、全ての秘密を知る人物だ。彼を失った李源潮のショックは大きい。

 習と王岐山のコンビが、李雲峰を通じて李源潮をけん制する真意はなにか。そこには今、習が置かれた厳しい状況が関係する。5月3日、党機関紙、人民日報は、習が4カ月も前に中央規律検査委の会合で演説した全文を公表した。反攻への烽火(のろし)だった。

 「ある者は交代期に組織が彼を処遇しないと知り、なお側近を送って説き伏せ、票をかき集め、非組織活動をする。地方に独立王国を築き、中央の決定に面従腹背の態度をとる。己の政治上の野心のため手段を選ばない」

 極めて激しい口調だ。断罪された元重慶市トップ、薄熙来(前政治局委員)の例が、現状を指摘している。つまり習が口にした活動をしたとみなされれば、すぐに塀の中に送られる。李雲峰はそれに該当した。では誰のためにやったのか……。

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全国政治協商会議の開幕式を終えて習近平国家主席(左)に話しかける王岐山政治局常務委員(3月3日、北京の人民大会堂)=写真 小高顕

■起死回生の大粛正

 「習近平による大々的な巻き返しだ。夏の『北戴河会議』の時期も近い。王岐山と組み、来年の党大会まで突っ走ろうとしている」。北京の政治ウオッチャーは起死回生に向けた大粛正を予感する。

 習は、今年1月から配下の地方指導者らを通じて、自らが別格の指導者であることを示す「核心意識」を定着させる運動に踏み切った。従来の集団指導制ではなく、習による「一局体制」を目指す練りに練った策だった。

 だが、これはいったん頓挫する。対抗勢力ばかりか、身内のはずの「紅二代」からも「一連の手法は党規約が禁じる個人崇拝の臭いがする」との批判が巻き起こったのだ。メディア締め付け、経済減速の深刻化への不満も相まって風当たりは強まる。習の独走に「待った」がかかった。3年間、飛ぶ鳥を落とす勢いだった習は初めて立ち往生した。

 ここで習と距離がある共青団が揺さぶりをかけた。標的は王岐山だった。共青団の有力者で前国家主席、胡錦濤の側近だった令計画まで手にかけた実動部隊トップへの当て付けである。共青団系のネットメディアは、王岐山一家と極めて親しい任志強を執拗に攻撃した。

 任志強は「紅二代」の不動産王にして、ネット言論界で著名なブロガーだった。歯に衣を着せぬ舌鋒(ぜっぽう)は、党中央宣伝部によるメディア統制を厳しく批判した。ネット上では「正論だ」と注目を集めたが、党中央宣伝部が黙っていなかった。

 加勢したのが共青団系メディア。「任志強が強気なのはなぜか」とあえて指摘したのだ。彼と親しい王岐山の存在を暗示していた。結局、任志強は党の末端組織から一定の処分を受けたが、その結果は、党中央宣伝部系+共青団系VS王岐山、の構図でみると痛み分けの印象だ。

 習の旗色が思わしくない中、注目すべき動きがあった。共青団出身で党序列ナンバー2の首相、李克強がかつてなく活動的になったのだ。李克強は習の母校、清華大学にまで乗り込む。縄張りを侵したばかりでなく、習の専権事項のはずの「反腐敗」にも積極的に言及し始めた。しかし、ここでひるむ習と王岐山のコンビではなかった。それが、いきなりの李雲峰の摘発である。

 李雲峰のボスである李源潮と、李克強は、中国の経済学の泰斗、厲以寧の教え子だ。北京大学で薫陶を受けた同門である。2人には共青団以外に学問上の縁もあった。李源潮への圧力は、李克強へのけん制にもなる。

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全人代が開幕し、政府活動報告をする李克強首相(3月5日、北京の人民大会堂)=写真 小高顕

 とはいえ習が警戒するのは政治センスに乏しいとみる李克強本人より、共青団を仕切る実力者らの動きだ。「胡錦濤が引退し令計画も消された今、共青団の重要な核の一人は李源潮」。共青団関係者が令計画の摘発直後に語っていた。李源潮は党中央組織部長も務めた切れ者である。

 習は既に手を打っていた。党組織部長時代に李源潮が精魂を傾けて作り上げた党幹部登用を規範化するルールを骨抜きにしたのだ。年齢、試験の成績、仕事上の実績・評定などを核とする評価方法は、唯一、絶対的なものではない、との宣言だった。李源潮ルールなら、数に勝る共青団から“成績優秀”な人材が必ず高級幹部の地位に上がって来る。習はこれを良しとしなかった。

 能力ある人材を登用し、能力がないものは首にしたり降格したりできる――。これが習時代の新しい基準だという。つまり、習は自分の近い人材を自在に登用できる。年齢制限に柔軟性を持たせた点も臆測を広げた。

■李克強首相、そして江沢民派へのけん制

 実は、江蘇省の虎退治には、李克強ら共青団へのけん制の他にもう一つ意味があった。同じく江蘇省を基盤にする江沢民グループへの圧力である。

 李雲峰は李源潮の側近ではあるが、江蘇省の地元人脈から江沢民閥にもつながる。江蘇は長く「江沢民王国」だった。習としては、万が一にも、李克強や李源潮が属する共青団系と江沢民系が連携して自分に対抗する事態は避けたい。だからこそ共青団と江沢民の派閥が交錯する江蘇省を再び徹底的に攻めた。

 既に江蘇省無錫出身で江沢民派の元最高指導部メンバー、周永康は断罪した。江沢民や周永康に近い南京市トップだった楊衛沢も塀の中だ。彼らの末路を見た李源潮はおいそれとは動けまい、とみての一手だ。李源潮は側近が拘束された直後の6月1日、あえて共青団中央などが主催する座談会に出席し、健在をアピールした。闘いは始まったばかりだ。

 仮に現職の政治局委員である国家副主席、李源潮本人に手を付けるなら、2012年の薄熙来以来の大事件になる。当時、北京では中南海周辺での銃声事件やクーデター騒ぎもあった。習には二つの道がある。一つは李源潮を実際に摘発する選択肢だ。リスクも高いが、来年に迫る党大会人事を考えれば効果は絶大だろう。一方、李源潮と共青団が恭順の意を示すなら、「寸止め」にする手もある。

 もう一人、鍵を握るのは共青団の裏にいる前国家主席、胡錦濤の動きだ。そして江沢民ら長老の思惑も絡む。夏の「北戴河会議」に向けて、複雑かつ危うい駆け引きが続く。(敬称略)

良ければ下にあります

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『天安門から27年、香港「独立派」乱立の意味 6月4日、混乱の追悼集会で考える香港の今と未来』(6/8日経ビジネスオンライン 福島香織)について

宮崎正弘氏も天安門事件について触れていますので本記事と比較して読んでみると面白いでしょう。

6/7「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」  天安門事件から27年を閲し、学生運動はどこへ消えたか? 香港も東京も反中国共産党の気勢はあがらず 

六月四日、天安門事件から二十七年が経って香港では十三万人規模の集会が開催された。  ただし民主派団体がばらばらで結束せず、学生らは香港大学、中文大学でそれぞれが独自の集会を拓いた。 「反中国共産党」だけが合意点で全体の運動はダイナミズムを欠き、整合性はなかった。  香港の民主諸派の分裂は中国の工作員の潜入や脅し、嫌がらせなどが原因であり、しかし若者達はかえって反抗心を高めた。  欧米でも留学生等による集会があった。  さて日本でも四谷で数百人の在日中国人、留学生、これを支援する日本人が「六四天安門事件27周年記念集会」に集まり気勢を挙げた。  おりから来日中だったラビア・カディール女史も駆けつけ、ウィグルにおける人権弾圧の現状を報告した。このほかダライラマ猊下日本代表のルントック氏も演壇に立った。  なかでも注目されたのが天安門事件当時北京大学一年生、学生指導者として指名手配第一号となった王丹氏が記念講演に立ったことだろう。  ところが、である  筆者は王丹氏の講演を聞いて苛立ちを隠せず、おおきな違和感を抱いた。  彼は六月三日に現場を離れたので、実際に広場で何が起きたかは知らないと言った。また潜伏先に関しては公開しないのがルールだからおくにしても、なぜ米国に亡命できたのか背後の力関係や米国のコネクションに関しては語ることがなかった。  そればかりか中国共産党を「打倒する」との決意表明がなく、語彙はきわめて撰ばれたもので活動家の言辞としては迫力にかけた。本人は自らを歴史学者と言った。  かれは「理想」「勇気」「希望」という三つのキーワードを用い、中国の民主化を説くのだが、「国家は悪」「政府は必要悪」という立場で、中国の学生運動は「五四運動」の影響を受けたと語りだした。  五四運動は、今日の解釈では学生、労働者が立ち上がった反日の原点ということになっているが、実態はアメリカの宣教師が背後で日本のイメージ劣化を仕掛けたもので、当時、中国に学生は少数、企業は殆ど存在せず、したがって労働者はいない。 米国に仕組まれた五四運動が天安門事件の学生運動の思想的源泉というのは納得しがたい。 つまり米国の歴史解釈の立場を援用しているにすぎない。  ▼天安門広場の学生運動の指導者らは詩を忘れたカナリアか さらに王丹氏は「民主主義の基本は三権分立だけでは足りず、第四の権力としてのメディア、そしてメディアを監視する社会運動が必要である」となんだか、日本の左翼が訊いたら喜びそうなことを述べた。  そのうえで台湾の「ひまわり学生運動」と香港の「雨傘革命」が「日本の安保法制反対のシールズ運動に繋がった」と総括し、会場はやや騒然となった。 日本の実情を知らないからか、それとも本質的にこの人物は反日家なのか。いや、あるいはアメリカでの生活が長すぎたためにすっかり民主主義なるものをアメリカのリベラリズムの主張と取り違えたのか。   理想とはなにかと問えば「北斗七星に喩えられ、いつも空を見上げ目標を失わない指標であり、どういう形態であろうが、学生運動は支持する」とした。  アメリカで十年、ハーバード大学で歴史学の博士号を取得し、いま台湾の清華大学で教鞭を取る王丹氏にはアメリカ流の民主主義ドグマが染みつき、市民社会(中国語では「公民社会」)の実現が夢であるという。 「市民」とは、これまた胡散臭い語彙である。  その昔、サルトルが「アンガージュ」(参加)と言いつのって若者を左翼運動に誘う煽動をしたように、あるいはサルトル亜流の大江健三郎のヘイワの念仏のように中国の民主化という大目標はそこで論理が空回りするだけで会場には虚しい空気が漂っていた。  天安門事件当時の学生指導者たちは、ウ(ア)ルカイシが台湾で孤立し、芝(柴の間違いです)玲ともう一人はファンドマネジャーとしてウォール街で活躍し、少数をのぞいて「詩を忘れたカナリア」となった。>(以上)

天安門の生き残りでまともなのはウアルカイシ(ウイグル人)ぐらいで後は堕落した人たちでしょう。ウアルカイシが台湾内で孤立と言うのは、国民党政府が牛耳ってきたせいもあるという気がします。今後、政権は民進党に変わり、香港・チベット・ウイグルとも連携していってほしい。日本も共産党が潰れるようにいろんな工作をして行ったらよい。明石元二郎の例もあるでしょう。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20140609/frn1406091140003-n1.htm

王丹は、所詮は中国人でその限界が見えます。SEALDSを評価するなど、余りに無知としか言えず、容共的な姿勢は民主化追求の夢と矛盾します。宮崎氏の言ってるように、ハーバードで歴史を学んだ影響もあると思います。ハーバードで米国の3大原罪であるインデイアン虐殺、黒人奴隷、原爆投下をどう教えているのか王丹に聞いてみたいものです。

福島氏の記事で、香港人の台湾移住が人気急上昇中とのこと、この流れは止まらないでしょう。言葉の問題(広東語と台湾語の違いはありますが、使用する漢字はどちらも繁体字(日本の旧字体とほぼ同じ)、普通話で意思疎通できます)で苦労しなくて済みますので。李嘉誠も香港から英国へ資産を移していると言われていますし、香港に優秀な人材はいなくなってしまうかも。台湾も中国共産党の言う一国二制度がどんなものかハッキリ分かったでしょう。英国との約束も反故にされつつあります。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という国柄ですのでくれぐれも騙されないように。

http://soneaozora.jugem.jp/?eid=1303

本記事中、「解放軍香港駐留部隊に対し、いざというときの覚悟をしておくようにという通達はすでに雨傘革命のときに出されている。」とあり、第二の天安門事件が起きるかも知れません。当時と違い、今はSNSが発達、ましてや米国衛星がその映像をリアルタイムで全世界に発信するでしょう。そうなれば中国共産党の命運は尽きたものになるでしょう。

記事

meeting for a memorial of Tenanmen incident in Hongkong

6月4日、香港で開かれた「天安門事件」追悼集会。参加者減少が意味することとは…(写真:AP/アフロ)

 例年、6月4日の天安門事件紀念日の前後になると中華圏は落ち着きがなくなる。27年目の今年、私は香港でこの日を迎えた。というのも今年の香港はとくにざわついて、不安定な気がしたからだ。2014年秋の雨傘革命はその目的を達成できなかったという意味で“挫折”というかたちで終わったのだが、その後の香港では、民主派とは別の主張の独立派が台頭している。これをどう見ればよいのか。今回は香港の今とこれからについて考えてみたい。

学生会が追悼集会欠席、形骸化を批判

 6月4日の夜、恒例の天安門事件犠牲者追悼のキャンドル集会がビクトリアパークで行われた。キャンドルを掲げながら香港市民たちが天安門事件の犠牲者への哀悼を捧げ、民主と自由への希求の気持ちを新たにする集会だ。主催者の香港市民支援愛国民主運動連合会(支聯会)によれば参加人数は12万5000人。2009年以来最低の参加人数となった。年々天安門事件に対する香港人の記憶が薄れていることは確かで、例えば6月2日のニュース番組で新興香港メディアの香港01の記者が街角で若者らに天安門事件の発生年はいつ? 胡耀邦って誰? と突撃取材しても、正しく答えられる人はほとんどいなかった。

 同時に、天安門事件を追悼するやり方に対しても、異論が出始めており、例えば例年この集会に参加していた学生会(全香港大学専門学院学生会)はこの集会が形骸化していると批判して今年初めて集団欠席を決めた。学生たちは支聯会の根本主張の一つである「中国に民主を建設する」という部分に抵抗感を持っていた。

 民主党や支聯会らいわゆる民主派とよばれる人々の考え方は、香港は中国返還以降、中国の一部でありながら一国二制度のもと民主と自由、法治という核心的価値が守られている高度の自治が保障されるのであって、この「高度の自治」を決めた中英共同宣言の適応期限である2047年までに、中国を民主化させることが、香港の民主と自由、法治という価値を守るただ一つの道というものだ。

 だが、これに対して「独立派」という考え方が、特に雨傘革命以降に台頭してきた。学生会を含む若者たちの多くが、すでに「一国二制度」など崩壊しており、英中共同宣言など無効と考えている。彼らが望むのは、香港の独立、すなわち中国と縁を切ることだという。中国の民主化については口を出さないかわり、香港の中国化に対して激しく抵抗するという立場である。

 今年のビクトリアパークでの追悼キャンドル集会では式典中、この独立派の一番過激な主張の若者たちが数人乱入して、支聯会側ともみ合いになった末、つまみ出されるアクシデントもあった。こんな事件も、前代未聞であった。

この“独立派”とはどんな人たちなのか。

 独立派を名乗る政党・団体の中で、一番過激なのは今年3月に設立した香港民族党だ。代表は陳浩天。香港はいま、中国の植民地状態であると考え、この中国支配から独立すべきだとして、「民族自強」「香港独立」を中心思想に掲げる。独立のために武力革命も辞さないという立場であり、低層の若者に人気がある。

 同じく過激なのは本土民主前線。香港大学文学院の学生である梁天琦が2015年1月に結成し、主に90年代生まれの若者で構成される。梁天琦は2016年1月の立法会新界東地方選挙区補選に出馬し、得票率15・38%、第三位の票数で落選した。非暴力運動の雨傘革命の失敗を反省して「武をもって暴を制す」を戦略の中心におく。「我々の目的は、いかなる手段をとろうとも、完全な自由・正義・平等を確立することだ」といったマルコムXの格言をしばしば標語に掲げる。今年春節の夜に、旺角で警察と暴力衝突を起こしたのもこの団体で、補選の選挙費用の一部でガソリンを購入し放火した疑いも持たれているのだが、一部の若者の間では非常に強い支持を集めている。

「ピカチュウを広東語に戻せ」

 比較的穏健な独立派としては、現在、作家の黄洋達が代表を務める熱血公民。文化による中国共産党への抵抗を掲げて2012年に結成した。任天堂の「ポケモン(ポケットモンスター)ゲーム」の中国語表記が広東語ではなくて普通話(中国語)であることに抗議していた青少年の声を受けて、5月30日に香港の日本領事館前の抗議デモを主催したのはこの熱血公民である。

 ポケットモンスターのキャラクターのピカチュウは過去20年近く、香港で「比卡超(広東語の発音はピカチュウ)」と呼ばれていたが、任天堂は香港を含む中華圏マーケットでの公式名として中国語の皮卡丘(広東語発音はぺイカーヤウ、中国語発音はピカチュウ)とした。香港の若者たちは自分たちの愛するピカチュウを中国語表記で呼びたくない、と大反発し、任天堂宛てに香港で発売する製品の名前を広東語表記に直すように請願書を出していた。

 黄洋達はポケモンゲームのファンでもなんでもないのだが、これを中国による文化侵略ととらえて、抵抗運動を展開。一部のファンからはポケモンの政治利用、と批判もあるのだが、中国の経済圧力によってテレビメディアの字幕が繁体字から簡体字に代わるといった事件がしばしば起きている中国で、広東語・繁体字防衛は香港アイデンティティの根幹にかかわるテーマにもなっている。

現役立法会議員の黃毓民が2011年に社会民主連戦から分裂して創設した普羅政治学苑、「香港城邦論」の著者で元嶺南大学の助教授である陳雲が2014年に香港基本法の改憲を訴えて作った香港復興会も穏健独立派に分類されるだろう。熱血公民と合わせてこの三政党は「独立に反対しない」という立場で、公民投票による行政長官のリコール制度や香港市民による新しい憲法制定を訴えている。

 このほか、雨傘運動参加者が設立した新政党としては、すでに補選で九龍城区の区議1議席を獲得している青年新政、雨傘革命の学生リーダーとしてメディアによく登場した香港学生連盟(香港専上学生聯会=学連)の前事務局長・周永康(アレックス・チョウ)らが結成した香港列陣、やはり雨傘革命で時の人となった元学民思潮のリーダー、黄之鋒らが結成した香港衆志(デモシスト)がある。

「独立派」小政党が大乱立

 彼らは非暴力を主張し、香港前市民による公民投票によって独立するか否かを決める「民主自決」を訴えている。過激派の民族党などよりは比較的幅広い支持を得ているが、一部の若者の間では「(雨傘の失敗で非暴力では何もできないとわかっているのに)何がやりたいのかいまひとつわからない」「雨傘革命のリーダーとして持ち上げられて調子に乗っている」との批判も聞こえた。

 これに加えて人民力量、社会民主連戦などが香港本土化主義(香港こそが本土であるという主張)の穏健派独立派として40代以降の中年層に人気がある。もともと汎民主派に分類されていた新民主同盟も、雨傘以降は香港本土化主義路線に転向した独立派といえる。さらに汎民主派から分離して中間派を名乗る新思維、民主思路などがある。このほか、英国で運動家の馬駿朗が香港独立党を設立し、香港の英国回収による英連邦制を訴えている。

 こうした「汎独立派」の小政党が乱立する中、今年9月の立法会(議会)選挙にどれだけの独立派候補が送り込めるかは、今の段階では推測もできない。しかも、これら「汎独立派」は独立という言葉でひとくくりにするには、その定義の差が「武力革命」から、「赤化(中国化)を防ぐ」、「香港の言語と文化を守る」の程度までと幅が広く、独立派政党・団体同士がその主義主張を批判しあい、微妙にいがみ合っている。旧来の一国二制度維持の前提に立つ民主派とも分裂しているので、実のところ香港市民の中国共産党による支配、政治的経済的影響力に抵抗する団結力という意味ではむしろ弱まっているのかもしれない。

だが、注意すべきことは、2012年以前には「香港独立」という言葉を口にする香港市民などほとんどいなかったのが、雨傘革命をきっかけに、「独立」というものを考える人が出てきたということなのだ。

「D&G」で目覚め、「雨傘の挫折」の先に

 2012年を節目とするのは2012年1月の尖沙咀D&G(ドルチェアンドガッパーナ)事件が、香港本土意識の目覚めのきっかけであったとする説が有力だからだ。これは人気ブランド店D&Gの店内写真を香港人が撮影しようとしたら、「知財権保護」のルールを理由にガードマンに制止されるのに、中国人観光客の写真撮影は許されているという不平等の実態が香港蘋果日報記者らの取材で明らかになり、この香港人と中国人に対する店側の不平等対応に怒った香港市民がD&G店に一斉に写真撮影にいくという抗議活動に発展した。

 D&Gイタリア本社が謝罪声明を出すことで騒ぎは収まったが、これは経済を牛耳る中国人が香港の法を無視できるという現実をあぶりだすことになり、一気に香港人の嫌中感情が高まり、香港と中国は違うという本土意識に火をつけることになったという。この年の夏に、香港人の小中高校生に中国人として愛国心を育成するカリキュラム「国民教育」義務化に抵抗する学民思潮の大規模デモが起き、秋に義務化が撤回されるのだった。

 こうした反中・嫌中感情が次第に高まる中で2014年に中国国務院の香港統治に関する白書の発表、全人代による普通選挙のやり方を規定する選挙改革案の発表が行われ、これに抵抗する雨傘革命が起きるのである。

 この雨傘革命という「非暴力の抗議」は79日という長期にわたって続いたが、中国の強硬な態度を変えることができず、その後、中国公安当局による銅鑼湾書店株主書店員拉致事件という香港の司法の独立を完全に無視した事件も発生。一国二制度はすでに崩壊しているという現実が突き付けられた。

 多くの香港市民が狼狽し、経済力やコネがあるものは海外移住を模索し、金もコネもない低所得層の若者の間では「雨傘のような非暴力でだめなら、暴力で戦うしかないではないか」という過激な考えがでてきた。香港の知人たちにも意見を聞いて回ったが、経済的余裕のない人ほど「戦うしかない」という考えに傾いている。一方、海外脱出できる人たちは、真剣にその算段を考えている。最近はカナダやオーストラリアではなく、民進党政権になった台湾が移民先として人気急上昇中だという。

 熱血公民の黄洋達に直接意見をうかがう機会があったが、彼は「市民の3割前後が広い意味での“独立派”」と分析している。「D&G事件前までは、ほとんどの香港市民は香港が中国の一部であるという現実を踏まえて、香港の将来を考えていた。だが雨傘革命以降は、香港は中国の一部ではない、この現実を変えたい、変えなければという人は増えている。今後、その数は増えていくだろう」。2月半ばから4月5日までに民主思路が外部機関に委託して行った世論調査では18~29歳の若者で香港独立の支持者は20%で、うち多くが暴力的抗争手段を受け入れるという立場だったという。

民主希求の団結力が乱れる一方で、過激な意見の台頭が見えている香港のこうした現状について、中国の良心的知識人から「これはかなり危険な状況だ」と不安を耳打ちされることが多くなった。香港の某大学に客員教授として滞在していたある著名中国人知識人は「香港民族党のような主張が台頭してくると、いまの習近平政権は忍耐力がないので、何をするかわからない。香港は一線を越えようとしている」と警告する。

 実際、全国政治協商会議の委員(中国の参院議員に相当)でもある香港基本法研究センター主席・胡漢清は4月12日の記者会見で、香港民族党の発足について「これは言論の自由の保障の範囲を超えている」「反逆罪、扇動罪に当たる」「香港民族党が(立法会選挙で)勝つようなことがあれば、それは香港人の敗北である」と極めて強い恫喝を行っている。また公民投票で香港独立を問うこと自体が扇動意図の罪に当たるとも言っている。

 こうした中国側の脅しはおそらくは口先だけではない。というのも、この香港の独立派台頭の背景には全米民主主義基金(NED)の支援が疑われているからだ。香港紙巴士的報が今年3月9日の香港本土民主前線の梁天琦と黄仰台の二人と駐香港米国領事館員の密会写真をスクープしており、その後、中国系香港紙「大公報」などが密会内容を匿名のタレこみメールとして報じている。

 それによると米領事館の政治経済部領事が、活動費不足を訴える彼らに対し、NEDを通じた経費支援の申請のやり方をアドバイスしていたという。中国は少なくとも、いまの香港の独立派台頭の背後に米国の仕掛けがあると考えている。万が一「アラブの春」のような状況が香港でおこれば、それを鎮圧することに躊躇はないはずだ。解放軍香港駐留部隊に対し、いざというときの覚悟をしておくようにという通達はすでに雨傘革命のときに出されている。

“革命的”変化は同時多発的に

 香港市民はもともと争いの嫌いな人たちである。動乱があるたびに中国から、戦わずに逃げ延びてきた人たちであり、英国植民地統治のもとで与えられた自由を謳歌してきた人たちだった。もし、本当に今後、過激な独立派が台頭していくとしたら、それは明らかに中国の対香港政策の失策である。中国政府が穏やかな香港人をそこまで追いつめたのである。逆にいえば、中国政府の統治能力はこの数年の間に急激に衰えているということなのか。

 香港滞在中、現役の立法会議員で一番過激な発言で知られる長毛こと梁国雄にお会いし、彼に「独立派が台頭し、中国政府と香港市民の対立が激化して、武力鎮圧がおきるという懸念はないか」と尋ねたら、「香港と中国政府の対立よりも、ウイグル族と中国政府、チベットと中国政府の対立の方がよっぽど危険じゃないか。台湾もあるぞ」と笑っていた。

 香港独立など、普通に考えれば冗談でもありえない。だが、中国政府の統治能力が急激に衰えてきているということはいえるかもしれない。香港の独立派がどれほど広がっていくかは、さておき、中国全体とその周辺に今何か変化の兆しがないか、改めて観察してみることはタメになるかもしれない。過去の歴史を振り返れば、“革命”的変化というのは中核となる勢力の弱体化に伴って同時多発的に起きるものだから。

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『広く伝えたいアフリカに対する日本の貢献 8月27~28日にTICAD(アフリカ開発会議)が開催』(6/6日経ビジネスオンライン 御立尚資)について

6/5日経朝刊記事「風見鶏 なぜ同日選は消えたのか」の中で、最後のセンテンスに「内閣支持率は上昇し、自民党中堅議員はなお悔しげだ。「衆院解散はいつやるのか。絶好の機会を逃したのではないか」」とあるし、また6/6日経朝刊記事には「総裁選も絡む「衆院解散」 浮かぶ3シナリオ」の記事では早期の衆院解散もあるようです。小生の5/31ブログで衆院解散・参院同日選もあるのではと書きましたが、残念ながらそうなりませんでした。日経記事を読みますと「何故」と思いましたが。公明党の横槍では。何せ法律通り3ケ月だけ住民票を移動して候補者を当選させ、その後また元に戻すことをしていますので。同日選は彼らにしてみれば重点候補選択の余地が狭まる訳で避けたい思惑があります。また、軽減税率(小生は旧民主党の給付付き税額控除の方が優れていると思っています)の手柄を選挙で訴えたかったのに消費税増税延期され、一矢報いたかったこともあるのでは。自民党も公明党の力を借りないと当選できないのでは嘆かわしいですが。

「総裁選も絡む「衆院解散」 浮かぶ3シナリオ

expectation of dissolution of the Diet

安倍晋三首相が7月の参院選に合わせた衆参同日選を見送ったことで、永田町の関心は次の衆院解散・総選挙の時期に移ってきた。2017年4月に予定していた消費税率10%の引き上げは19年10月まで2年半延期され、解散時期の自由度は増した。参院選の結果を踏まえ、18年9月の自民党総裁の任期延長を視野に入れると、衆院選と総裁選の密接な関連が浮かび上がる。

 (1)年内~17年1月の通常国会冒頭

 「確実に勝ちが見込める機会はそう多くない。解散するなら早い方がよい」。首相に衆参同日選の実施を進言していた首相周辺は、経済が比較的好調で、野党の支持率が低いうちに解散した方が有利と主張する。民進党の岡田克也代表も3日、「年内の可能性が高い」との見方を示した。

 議席占有率6割を超える勝利を収めた12年と14年の衆院選はいずれも12月。自民党若手議員は「政治は縁起が大事だ」と話し、参院選で勝利した場合、12月中の選挙が有力との見方を示す。12月に予定するロシアのプーチン大統領の来日時に北方領土問題を前進させ、その成果を掲げて解散に踏み切るとの説も取り沙汰される。

 ただ、次期臨時国会では、環太平洋経済連携協定(TPP)関連法案や、消費増税延期を盛り込む税法改正案など重要法案が山積し、その後には17年度予算編成が控える。政治日程への影響を考えれば、17年度予算の審議が始まる前の来年1月の通常国会冒頭解散も有力になってくる。

 (2)17年通常国会~臨時国会

 首相が17年4月からの消費税率10%への引き上げを再延期したため、これまでは困難とされてきた17年中の解散も選択肢となった。17年度予算を成立させた同年4月以降の衆院選でも増税の影響がないからだ。

 ただ、この場合のハードルは高い。1つが先の通常国会で成立した改正公職選挙法の影響だ。小選挙区を「0増6減」する新しい区割りは来年夏以降の適用となり、一般的に制度変更の前後は解散・総選挙はしにくいとの見方がある。仮に新しい区割りの適用前であれば「定数削減を回避する思惑があるのでは」と批判され、適用後であれば「候補者調整が間に合わない」との問題が出てくるためだ。

 2つ目は連立を組む公明党が国政選挙並みに重視している東京都議会選が17年夏に予定されていることだ。支持母体の創価学会が大規模な組織戦を展開するため、同党はこの時期の衆院解散・総選挙になれば集票力が分散しかねないとして消極的な姿勢を示す。

 (3)18年の自民総裁任期満了前

 現在の衆院議員の任期は18年12月までだが、首相の総裁任期はその前の9月末までだ。自民党則は延長を認めないが、過去には中曽根康弘氏が任期切れまで3カ月となった1986年夏、衆参同日選挙に踏み切って大勝し、その功績が認められ、特例で総裁任期を1年延長した例がある。今回も任期切れ直前で解散し、大勝すれば任期延長にも道を開くとの計算が働く。

 東京五輪を2020年夏に控え、首相が任期中の実現に意欲を示す憲法改正も任期延長が不可欠だ。消費税率10%への引き上げ時期が任期切れ後の19年10月となったことも任期延長論の根拠となる。稲田朋美政調会長は5日のフジテレビ番組で安倍首相の総裁任期延長について「自民党内のルールなので安倍首相が首相(総裁)を続行している可能性は十分ある」と述べた。

 もっとも総裁任期満了前の解散の場合、いったん年内から年明けにかけて衆院解散に踏み切り、さらに総裁任期満了前に2度目の解散に踏み切る「小刻み解散」のタイミングとなる可能性もある。首相は14年に衆院任期を2年以上残して解散して圧勝した。衆院選の間隔を短くして党内の求心力を保つと同時に、野党の選挙準備が整わないようにする狙いだ。

 一方、党内には「衆院で3分の2を失わないために今回は同日選を見送ったのだから当分、解散はないだろう」(ベテラン議員)として18年まで解散できないとの見方もある。ただ同年12月までの衆院の任期満了時期に近づくほど有利なタイミングで解散できる余地が狭まり、実質的な解散権を行使できぬまま「追い込まれ解散」になりかねないリスクをはらむ。>(以上)

TICADは1993年~今度で6回目となり、初のアフリカ開催とのこと、もっともっと外務省はマスメデイアに働きかけてPRすべきです。アフリカに植民地支配のなかった日本、勤勉で親切かつ誠のある日本人はアフリカ人に信頼されていると思います。経済成長著しい上、人口増も予測されている中、日本の持っている資金・技術だけでなく和の精神も伝えられたらと思っています。中韓の得意とする賄賂では一部の人間しか豊かになれず、協調して物つくりに励むことにより豊かになる実感を得て貰えればと思っています。ただいざと言うときの自衛隊の海外派兵の保証と武器使用のネガテイブリスト化は必須です。

2014年9月にチュニジアへカルタゴ遺跡を見に旅行しました。その時のガイドさんはチュニジアの大学の英文科卒のエリートで日本の奨学金を得て日本に留学したことがあるとのことでした。(2009年にトルコに行ったときのガイドさんも英文科卒でした。トライリンガルは当り前のようです)。2008年にエジプトへ行ったときのガイドさんは敬虔なイスラム教徒で、客が我々夫婦二人でしたので宗教の議論をいろいろとした記憶があります。また、小生が支援しています上橋泉柏市議のご子息もチャドで活躍しています。

アフリカも国連の票数で大きな役割を果たします。小生は、日本は常任理事国入りに拘ることはないと思っていますが、(それより国連憲章の敵国条項を早く削除せよ、これはロシアとの平和条約締結後か?)中韓の国連を舞台にした反日活動に大きな抑止力になると思います。中国のように資源奪取だけが目的で、地元の人の雇用もなく=技術移転無し、場合によっては囚人を送り込むような国のやり方と違ったやり方をすれば信頼を勝ち得ると思います。日本のビジネスマンももっと頑張らねば。

記事

TICAD 5

(写真:AP/アフロ)

 今年8月27日から28日の2日間、ケニアのナイロビでTICAD Ⅵ(第6回アフリカ開発会議)が開催される。

 伊勢志摩サミット、そしてそれに続くオバマ大統領の広島訪問という大きな外交イベントの陰に隠れる形であまり注目を浴びていないが、今後10~20年を考えると、G7、G20だけでなく、アフリカ諸国と日本の関係強化につながるTICADに、もっと光が当たってもいいはずだと考えている。

 人類全体にとって重要な貧困や飢餓撲滅、あるいは感染症対策――。こういった課題の解決のためにアフリカの開発が重要であることは論をまたない。

 さらに、今世紀中にも世界全体の人口がピークを打つと考えられる中、数少ない人口増加が見込まれ、所得レベルの向上とあいまって、「次の成長市場」としてのアフリカの重要度は極めて高い。以前のコラムでも紹介したが、2040年にはアフリカの労働人口はインドや中国を上回ると想定されているのだ。総人口も、その頃には20億人を超えると推定されている。

 さて、6回目を迎えるTICAD(Tokyo International Conference on African Development)。この会議は、名称にTokyoと冠している通り、日本政府主導で、1993年以来、5年に一度日本で開催されてきた。共催者として、アフリカ連合委員会、国連、UNDP(国連開発計画)、世界銀行が名を連ねている。

 日本が、国際機関や民間セクターを巻き込み、「アフリカの経済開発」を促進するための会議を20年以上にわたって実施してきたわけだ。

 前回のTICAD Ⅴには、39名の国家元首クラスがアフリカ51カ国から参加、開発パートナーとなる域外諸国31カ国、国際機関72機関、さらにはNGO/NPOも多数参加した。

 植民地時代の旧宗主国ではない日本が主導するということにも大きな価値があるのだが、これだけ続けてくると単に集まって話し合うというだけでなく、さまざまなポジティブな結果が具体的に出てきている。

 アフリカの成長を考える上では、それを担う人材の育成がカギとなる。

500人の若者がTICADプログラムで日本に留学

 たとえば、資源開発の専門的知識を教育するプログラムが設けられ、2016年1月までに2000人以上が参加し、研修を修了している。また、2014年、15年だけでも500人弱のアフリカの若者が、TICADから発生したプログラムで、日本に留学してきている。現地での学校教育環境を改善するプログラムに至っては、2014年末の数字だが、実に770万人の子供たちへの支援が行われてきた。

 これ以外にも、安全な水へのアクセスを担保するための給水整備支援など、単純なODAやインフラ建設だけでなく、実にさまざまな意味のある開発支援が日本主導でおこなわれてきている。

 さて、こういった価値を生んできたTICADなのだが、正直なところ、日本国内では十二分に知られていない。もっと言うと、アフリカの現地、さらには開発やビジネス上のパートナーとなる欧米諸国でも、アフリカにおける日本の貢献は、ごく一部にしか伝わっていないのが実状だと感じている。

 メディア等でも、よく中国や韓国のアフリカ進出との比較がなされるが、こと開発支援とそのポジティブな結果だけに絞っても、日本の貢献が知られていないのはもったいないこと、この上ない。今後一層、ビジネス上も外交上も重要度を増す地域で、日本の国としてのブランド価値を高めていくための、広報・マーケティングへの徹底的な注力が必要なのではないだろうか。

 この広報・マーケティング下手は、アフリカについての日本国内での知識と理解が不足していることもその一因である。アフリカの変化は速く、さらにアフリカ54カ国の中での違いも大変大きいため、具体的なイメージが伝わりにくいのだ。

 旧宗主国だった欧州各国では、メディアでアフリカ諸国が取り上げられる頻度が(日本と比較すると)非常に高い。この点でも、新興経済については、アジア中心の情報流通となりがちな日本では、もう一段深いレベルでのアフリカ各国についての知識獲得と普及を、意思をもっておこなうことが不可欠だ。

経済の成長スピードが速いサブサハラ各国

 少しだけ、実例を挙げておこう。

 まず、変化の速さ。低開発イメージが強いサブサハラ各国。具体的にはサハラ砂漠以南の49カ国を指すのだが、2000年代には、実に年率5.8%の経済成長を遂げている。十数年で、経済規模が倍になるスピードだ。その後、世界的な資源価格下落の影響下でも、2015~17年に年3~4%の成長が予想されている。

 アフリカ各国間の違いも、イメージのずれが生じる原因となる。

 IMFの2014年ベースの統計によれば、購買力平価ベースでの一人当たりGDPアフリカ上位3カ国は、 赤道ギニア 3万2千ドル セイシェル 2万6千ドル ガボン   2万3千ドル と、中進国以上、先進国に極めて近いレベルに達している。

 ところが、下位3カ国を見ると、 中央アフリカ 607ドル コンゴ    704ドル マラウィ   780ドル とアフリカ内上位国の30分の1以下であり、地域内でも極端な違いがあることが明白だ。

 さらに、各国ごとの違いと変化の速さとが掛け算になることも多い。たとえば、1990年代半ばに民族紛争、その後の大虐殺が大きく報道されたルワンダ。21世紀に入り、民主選挙が行われ、政情や治安はまったく違ったレベルで安定している。女性の社会進出も大きく進み、閣僚の26%、国会議員の57.5%が女性だ。世界銀行のビジネスのしやすさのランキング(Doing business)でもルクセンブルグについで62位。中国の84位やベトナムの90位よりもはるかに上に位置づけられている。

 今回のTICAD Ⅵは、実は初めて日本ではなくアフリカ、ケニアで開催される。これに合わせ、日本のさまざまな企業が参画するアフリカ域内の国を超えた地域インフラ整備のイニシアティブも打ち出される模様だ。

 日本で行われたサミットとは違い、放っておくと、メディアでもあまり取り上げられずに終わってしまうかもしれないが、ぜひぜひ、我々も注視し、さまざまな広報・マーケティングを世界各地で行ってほしいと思う。これを通じて、アフリカの変化、そして各国さまざまな実状について、少しでも日本国内での理解が進むことを期待したい。

 さらに、ぜひとも日本のこれまでの貢献も含め、広く日本ブランドを高める機会になれば良いなと考えている。もちろん、読者のみなさまの中にも、非常に詳しい方はいらっしゃるだろうが、より広い方々がアフリカと日本について、知見を高めてくださることを期待してやまない。

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『英離脱が招く破壊ドミノ チーフ・ポリティカル・コメンテーター フィリップ・スティーブンズ』(6/5日経 FT)について

欧米で起きている政治現象は、国民の政治に対する怒りでしょう。米国のトランプ&サンダース現象は正しくそうです。エスタブリッシュに繋がる政治家に対し、国民の望んでいること、特に豊かな生活を送りたいのに格差は広がるばかりで、それを掬い取ることに対して何も手を打てていないことに異議申し立てしているのが本質でしょう。欧州でも極右(実際は移民反対なだけ、国際金融資本のグローバリストに対して国民国家の役割を重く見る)の議席が伸びています。仏では来年の大統領選でマリーヌ・ルペン国民戦線党首が大統領になるかもしれませんし、オーストリアでは極右と言われるノルベルト・ホーファー大統領候補が本当に僅差で敗れました。相手と50:50ですから。

http://www.news24.jp/articles/2016/01/02/10318763.html

http://wien.cocolog-nifty.com/operette/2016/05/post-85bc.html

ドイツはインフレを極度に恐れる(第一次大戦後のハイパーインフレの経験から)体質と法律でナチズムを禁止していることがあります。中国と韓国による日本イジメに通じるものが、欧州諸国のドイツいじめにあるような気がします。でも第四帝国と言われるようにドイツがEUの経済を牛耳るようになりました。

http://thutmose.blog.jp/archives/34662377.html

http://europeanlife.web.fc2.com/other/nazi-verbot.html

ただ真偽のほどは分かりませんが、下記の情報もあります。これが真実でしたら米国のリーマン・ショックどころではないでしょう。単にドイツ銀行だけでなく、欧州全体と中国に大打撃を与え一時的に大パニックになるでしょう。株式市場も大暴落するでしょう。ドイツと中国が誤魔化しきれるかどうかですが。債券の償還期限があってもロールオーバーしてしまえば分からなくなるのでは?中国の債券(サブプライム以下と思われる)にはCDSのような評価する手段はついていないでしょう。一応「検討する」とロイターの記事にありましたが、そうすれば透明度を上げねばならず、誤魔化しが効かなくなると思います。人民元のIMFのSDR通貨バスケット入りは達成されましたが、透明度を上げる義務を負い、また「市場経済国」は鉄鋼の問題で認定されないと思いますが、WTO違反を繰り返し、南シナ海の問題で国際司法裁判所の判決に随うこともしない国に、おいしい所だけを与える必要はありません。経済制裁すべきです。まあ、経済破綻すれば必然的にそうなるでしょうけど。何せ「ない袖は振れない」で通せばよい国ですから。小生も駐在時代そうした経験がありますので。

http://ameblo.jp/eccentricbear/entry-12167137642.html

http://jp.reuters.com/article/china-bonds-cds-idJPKCN0WW20W

http://www.yomiuri.co.jp/world/20160605-OYT1T50052.html

英国のEU離脱は、EU経済について上記の話を知っていて真実に近いと感じているのなら、ありうるかもしれません。ただ国民レベルでの話にはなっていませんので。離脱派は単に欧州をドイツに牛耳られるのが面白くないというだけでしょう。離脱はないと思っています。

記事

 欧州連合(EU)離脱を問う6月23日の英国の国民投票は、EUと英国両方の運命を左右する。離脱となれば、EUの残る27加盟国にも深刻な結果を及ぼす。ドイツとフランスは間違いなく、英国以外の加盟国の結束をどう高めるか必死に考えている。より深刻なのは、離脱によって分裂の危機にさらされる英国だ。

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EU残留を訴えるキャメロン英首相=ロイター

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EU離脱を訴える英国独立党のファラージュ党首=ロイター

ballot on the secession of EU

英国の国民投票は今月23日に実施(投票用紙のイメージ)=ロイター

 離脱派の背景には強力なナショナリズムがある。保守党の離脱派は自分たちのロジックを打ち捨て、ファラージュ党首率いるポピュリスト(大衆迎合主義者)の英国独立党と運命を共にしようとしている。両者に共通しているのは移民、支配階級、知識人などあらゆるものへの反発。怒り作戦とでも呼ぶべきものだ。

 結果がどうであろうと、有権者の票は地域によって割れるだろう。ロンドン、北アイルランド、スコットランドの3地域はEUとの関係を維持しようとしているはずだ。ウェールズは予想が難しい。

□   □

 ロンドンが欧州寄りの立場を取るのは欧州と同様、グローバル都市として、欧州や世界から労働者や移民を受け入れてきたからだ。30万人のフランス人を受け入れ、フランス第6の都市とも呼ばれる。イタリア、ポーランド、スペイン、ポルトガルやもっと遠くの国々から来た人々にとっても第2の故郷になっている。

 多様性も享受してきた。5月の市長選では保守党のザック・ゴールドスミス氏が恥知らずな反イスラム運動を繰り広げたが、市民は圧倒的に英国生まれのイスラム教徒、サディク・カーン氏を支持した。

 英国らしさを意識しすぎ、離脱に傾いている周辺地域とは一線を画する。ロンドンには貧困も存在するが、イングランド南部の東海岸の一部の町に見られるような民族対立はない。私が思うに、ロンドン市民は「どちらかを選べ」と迫られたら、ポーランド人医師やインド人技師が来るのを拒絶するよりも、英国の地方から移ってくる英国人の流入を厳しくするはずだ。

 北アイルランドでは、最近の世論調査で残留派が大多数を占めることがわかった。大まかに言うと、カトリックは残留派で、プロテスタントは離脱派と残留派にほぼ二分しているが、全体でみると、この地域は残留を選ぶだろう。

 それでも国民投票で離脱が決まれば、様々な懸念が生じる。かつて北アイルランドが英国に属すべきと主張するユニオニストと、アイルランドへの帰属を訴えるナショナリストを長年の対立から和平に向けて説得できたのは、英国とアイルランドの両国がEU加盟国だったからだ。以来、北アイルランドが経済的発展を遂げてきたのも、アイルランドと開かれた国境を持ち、EUからかなり多くの補助金や投資優遇策を得られてきたことによる。

 しかし離脱となれば、今は無きに等しいアイルランドとの国境が、EU加盟国でなくなった英国とEUの境界線になる。つまり単一市場から離れ、英国として移民制限を強行すれば、アイルランドとの往来にも貿易にも国境審査が必要になる。英国では、北アイルランドを経済的な重荷だという人も出てくるだろう。

 スコットランドは保守党に近いせいか、欧州懐疑派が根付いたことはない。ファラージュ氏の英国独立党も限定的な支持を得ているだけだ。ロンドンや北アイルランドと同様、スコットランドでも残留派が多数を占めそうだ。だが国民投票で離脱が決まれば、英国からの独立を求める一派を勢い付かせることになる。

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 スコットランドの独立は2014年の住民投票で否決された。独立推進派のスコットランド国民党は5月の議会選でも敗北した。過半数を失い、独立を再度問う住民投票を行うことができなくなった。英国の離脱が決まれば、独立を求める議論が再燃するだろう。欧州大陸にバリケードを築くような英国に縛られているぐらいなら、今は英国の一部でいいと思っているスコットランド人も考え直すのではないか。

 英国がEUの一部であり続けるのがいいのと同じように、英国も連合王国として結束しているべきだ。その方が国家としての能力を高められるからだ。イングランドがEUを離脱したなら、スコットランドは英国の一部でいるより、EUに加盟した方がいいと考えてもおかしくない。

 ロンドンの独立の可能性を論じるのは現時点では早すぎるが、離脱が決まればこの都市が自治の拡大を求めるのは当然だ。明白なのは離脱が連合王国の分裂につながっていくということだ。EU加盟国でなくなった英国は、もはや魅力的ではなくなる。

(3日付)

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『中国の「不戦而勝」戦略に勝つための処方箋 米国を中心とした対中連合でサラミスライスを許さない姿勢を』(6/3JBプレス 渡部悦和)について

6/4産経ニュース<米国防長官が「中国は孤立の長城築いている」と名指しで批判、仲裁裁判所判断の尊重迫る

3日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議の会場で、中国の孫建国・連合参謀部副参謀長(左)と握手するカーター米国防長官(米国防総省提供・共同)

Carter & Sun

【シンガポール=吉村英輝】カーター米国防長官は4日午前(日本時間同)、シンガポールで開催中のアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で講演し、中国による南シナ海の軍事拠点化が、周辺国に脅威を与えていると名指しで批判した。さらに、中国が地域で「自らを孤立させる万里の長城」を築く結果になると警告し、国際社会による圧力を中国に示した。

カーター氏は、南シナ海で中国と領有権を争うフィリピンから提訴を受けたオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が近く示す判断が、中国や周辺国にとり、国際法にのっとった緊張緩和への「好機だ」とも指摘。中国に対し、裁判所の判断に反発せず、尊重するよう迫った。

また、中国が「領海」と主張する人工島などから12カイリ(約22キロ)内に米艦艇を派遣する「航行の自由」作戦を継続するとし、航行や飛行の自由は誰にも保証されていると強調した。

そのうえで、オバマ政権によるアジア重視政策は、米国内の党派を超えて維持されていくと述べ、最新鋭の潜水艦や爆撃機を展開していく方針を表明。数十年かけて築いた地域での米軍の能力に他国が追いつくには「数十年はかかる」と指摘し、存在感をアピールした。>(以上)

本記事結言にあります通り、オバマ大統領の訪広は評価しますが、「世界の警察官を止める」と公言したこと(そう行動したとしても、公言する必要はない。抑止の概念が希薄。空手でこの攻撃はしませんと言うのと同じで、相手は攻撃しやすくなる。世界平和を破壊する発言)やシリア介入中止、ロシアのウクライナ問題と中国の南シナ海問題の弱腰な対応(ロシアに経済制裁したのだから、中国にも経済制裁すべき、如何に米中が経済的に結びついていたとしても、ロシアと欧州の経済的結びつきが強くても米国は欧州に制裁させたのだから)こそが中国の傲慢な対応をさせてきた訳です。そういう意味でオバマ大統領はリアリストでなくノーベル平和賞には値しない人物と思っています。まあ、リアリストと言われるキッシンジャーだって中国の賄賂に負けてしまっている訳ですから、リアリストが正しい判断ができるという事ではありませんが。

ただ、「力なき正義は無力なり」と言われますように、外交の背景には武力の存在が必要です。日本の外務省は戦前戦中、軍に外交のイニシャテイブを取られたため、国益ではなく、単なる省益追求のための外交しかしていません。普通に考えて、国際的に日本の発言を高めようと思ったら、憲法を改正し、自衛隊を軍にすると思うのですが。戦後は栗山や小和田のハンデイキャップ国家論が幅を利かせてきました。メデイアと連動して改正の動きを潰してきました。国賊で、財務省と並んで売国組織です。

サイバーアタックは投資コストが懸らず、経済後進国でも先進国を簡単に攻撃できます。中国とか北朝鮮が得意なのはそういう理由からです。5/29「士気の集い」の講演で、サイバー研究・実践者として高名な名和利男先生の話では「ハッカーと防御側では圧倒的にハッカー側のレベルが高い。米国の防御のレベルも上がってきたがまだまだ。日本は論外。ただ、言葉(漢字、ひらがな)の問題があり、攻撃側は制約を受ける。個人のPCのウイルス対策ソフトは(凄腕の)ハッカーには役に立たない。ただハッカーの多くは子供。サーバーのping送信を受けて、繋がりの確認をするためサーバーから必ずpong送信する性格を利用して、ping送信を一斉多数にするとサーバーがダウンする。子供のハッカーに対してウイルス対策ソフトは有効。ただ日本の会社はハッキングを受けても「なかったことにしてくれ」と言われる。而も上から下まで。」とのことでした。日本の経営者は失敗を許さないのと何が大切かが分かっていない人間がなっていると感じました。

いつも言ってますように、中国の野心を挫くためには、日本の大東亜戦争の逆をすれば良い訳です。

①中国包囲網を敷く。そのためには

②米日豪印台+ASEAN+露(ABCD包囲網と同じ、韓国を入れていないことに注意。ロシアとは平和条約締結。TPPが経済ブロックとなる)

③レッドドラインではなく、原状回復要求。日本にも満州撤退を要求したではないか。

④準軍事プロセスとして中国向け石油禁輸発動。(中国沿岸に中国船自動識別機雷敷設)

⑤中国大陸に中国語で「封じ込めに至った理由と戦争の危機、共産党打倒」のチラシを空から撒く。

⑥民主化組織を応援

といったところでしょうか。

記事

Obama in summit

伊勢志摩サミットで採択された首脳宣言は南シナ海情勢に言及し、緊張が高まっている現状に「懸念」を示した。写真は協議に臨む各国首脳(2016年5月27日撮影)(c)AFP/Carolyn Kaster〔AFPBB News

本稿は、4月20日付の拙稿「中国への見方を大きく変えた米国、日本は再評価:2030年のグローバルトレンドと日米対中国戦略」(http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46626)の続編である。

前稿では元太平洋軍司令官デニス・C・ブレア大将の論文“Assertive Engagement:AN UPDATED U.S.-JAPAN STRAREGY FOR CHINA(主張する関与:最新の米国および日本の対中国戦略)”を紹介し、その中国認識と日米共通の対中国戦略「主張する関与」について紹介した。

ブレア大将は、米国の同盟国としての日本の重要性を深く認識した上で、日米同盟関係を背景として「日米共通の対中国戦略を構築すべきである」と主張している。

わが国にとっては非常にありがたい主張であると同時に、日本の真価が問われる厳しい主張でもある。さて、本稿ではブレア論文などを踏まえて、前稿で予告した具体的な対中国戦略についてその一端を、特に南シナ海情勢を焦点に紹介する。

1 台頭する中国への対応は米国を中心とした対中連合が基本

中国は、海洋強国を宣言しているが、一帯一路構想などを見ると大陸国家と海洋国家の二兎を追っているように思えてならない。

しかし、アルフレッド・セイヤー・マハンが主張するように大陸国家と海洋国家の両立は難しく、中国は大風呂敷を広げすぎてしまっているのではないかというのが筆者の評価である。

また、中国は東シナ海と南シナ海の2正面作戦を実施している。わが国は、尖閣諸島を巡り中国と領土問題を抱えるが、東シナ海の問題は南シナ海問題と密接不可分な関係にあることを認識する必要がある。

わが国は、東シナ海問題を巡り単独で中国と対抗する愚は避けるべきであり、米国などと協力して中国の2正面作戦を余儀なくさせ、その弱点を利用することが重要である。

中国は、南シナ海で九段線を根拠に過大な領土要求を実施し、人工島を建設しその軍事拠点化を進め、米軍の航行の自由作戦にも抵抗するなど確かに手強い。

手強い中国に対しては、米国でさえ単独で対応するには荷が重く、米国を中心とした対中連合(coalition)で対処することが基本戦略となる。その連合は、米国を中心として日本、オーストラリア、フィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシア、台湾などで構成すればいい。

中国は、現在、経済の失速に伴う諸問題に直面しているし、権力闘争も激化している。過去の経済力、特にお金の力を利用した膨張的な対外政策は曲がり角に来ている。さらに、中国は、領土問題を抱える周辺諸国すべてと対立関係にある。

米国を中心とする対中連合により、中国の強圧的な政策をより協調的な政策に転換させる必要がある。

以上が筆者の基本的な認識であるが、この認識は日本政府が現在実施している諸施策と一致していると思う。

伊勢志摩サミットにおいて、中国の強烈な反発を受けながらも東シナ海問題や南シナ海問題を討議したことに賛辞を送りたい。そして、バラク・オバマ米大統領のベトナム訪問とベトナムへの武器輸出禁止の解除は対中連合形成にとって大きな成果である。

以下、日米共通の対中国戦略について説明する。

2 不戦而勝(戦わずして勝つ)

本稿においては、「不戦而勝(ふせんじしょう)」(中国語で「不战而胜」)をキーワードとして、中国の強圧的な台頭にいかに対処するかを考えてみる。

「不戦而勝」は、孫子の兵法の「戦わずして勝つ」を出典とするが、中国の専売特許ではなく、米国をはじめとして多くの国で活用されている。なぜなら、不戦而勝は各国の抑止戦略そのものであるからである。

冷戦終結後の戦略環境では、経済的な相互依存関係などにより大国間の戦争の蓋然性が低下していると言われている。

軍事力を使った戦争が不可能であれば、各国はいかにして自らの国益を防護し実現していくか。その方策が「戦争には至らない手段を駆使して相手を屈服させる」戦略、つまり「不戦而勝」戦略なのである。

中国は、米国との決定的な軍事衝突を避けて、目的を達成しようとしている。現時点で、中国の軍事力が米国の軍事力よりも劣っていると認識しているからである。

私が注意喚起したいしたい点は、中国はぶれることなく長期にわたり「不戦而勝」戦略を貫徹している点である。だから手強いのである。

日本をはじめとする民主主義国家においては、政権が交代するたびに安全保障政策が変わり、長期にわたる一貫した安全保障政策の追求が困難である。しかし、マイケル・ピルズベリーが「100年マラソン」で指摘するように、中国は100年単位の長期的スパンで終始一貫した政策を追求してきたのである*1

中国は、「不戦而勝」の考えに基づき、軍事力の直接的な使用を避け、非軍事的な手段を用いて中国の国益を追求する戦略を採用している。

その具体的な方策が、地経学(geoeconomics)、サラミ・スライス戦略(salami-slicing strategy)、「戦争には至らない準軍事的作戦」[POSOW(Paramilitary Operation Short of War)]、サイバー戦、三戦(世論戦、心理戦、法律戦)などの活用である。

前述のブレア論文のみならず、ワシントンDCに所在する著名な安全保障関係シンクタンクの各種論文、例えばCSISとSPF USA共同の“The U.S.- Japan Alliance to 2030”、ランド研究所の“The Power to Coerce”*2(強制のためのパワー)、カーネギー国際平和基金に所属する戦略家アシュレイ・テリスの“Balancing without Containment*3”などの対中国戦略の結論も不戦而勝である。

そもそもこれらの論文の前提が「戦争以外の方法で中国の強圧的な台頭をいかに抑止し、いかに対処するか」であるがゆえに、経済、外交などの非軍事的手段を使った活動などに焦点を当てた政策が多い。結果的に中国の「不戦而勝」と米国の「不戦而勝」の戦いの構図となっているのである。

米国における戦争以外の方法で対中国戦略を考えるトレンドの背景には、オバマ大統領の対外政策の特徴である「世界の諸問題の解決において、まず外交などの非軍事的な手段で対処し、軍事力の使用を努めて避ける」という方針があると思う。

このオバマ大統領の非軍事的な手段による問題解決には米国内でも賛否両論がある。

ブレア論文をはじめとした各論文に共通するのは、オバマ大統領の対中国関与政策が軟弱すぎて効果的ではない、より強い関与政策が必要であるという主張である。

オバマ政権7年半にわたる対中政策は、中国の「不戦而勝」戦略により、特にサイバー戦および南シナ海問題において敗退してきたというのが筆者の結論である。

それでは今後、いかなる不戦而勝戦略をもって対処すべきかを考えてみたい。まず、ランド研究所の“The Power to Coerce”の論文を紹介しながら議論を進めていく。

*1=Michael Pillsbury、“The Hundred-year Marathon”

*2=David C. Gompert、Hans Binnendijk、The Power to Coerce、 RAND Arroyo Center

*3=Ashley J. Tellis, Balancing without Containment, Carnegie Endowment for International Peace

3 強制力(P2C)の活用(ハードでもソフトでもない第3のパワー)

ランド研究所の“The Power to Coerce”に記述されている「目的達成のためのパワー」(下図1を参照)を見てもらいたい。

パワーを単純に区分すると、ハードパワー(軍事力)と、ソフトパワー(文学・美術・教育などの文化、民主主義などの価値観、国家が採用する人権政策などの政策)になる。

しかし、ランド研究所のユニークな点は、強制力(P2C:Power to Coerce、例えば経済制裁などの地経学的手段)という造語を導入した点であり、このP2Cを不戦而勝の手段として駆使しようというのである。

米国の意思を中国に強要するために、ハードパワーである軍事力を使い戦争を実施するという選択肢はあるが、ハイリターンの可能性がある一方で、あまりにもハイリスクでハイコストであり、現時点で採用できない選択肢である。

ソフトパワーは、ローリターンであるが、ローリスク、ローコストであり、各国において頻繁に使用されている。

P2Cは、その中間で、ハイリターンであるが、ローリスク、ローコストで必要な時にいつでも実施できる非暴力の手段で、時に軍事力の代替となり得る。

P2Cの手段としては、地経学的な要素が中心で、例えば経済制裁、兵器・技術の禁輸、エネルギーの供給または停止、攻撃的サイバー戦、海上阻止行動、敵の敵(Adversaries’ Opponents) に対する支援(例えば、中国と南シナ海の領有権を争うフィリピンに対する支援)などである。

P2Cは、平時において我が意思を相手に強制することのできる有力なパワーである。

power for achievement of purpose

図1「目的達成のためのパワー」出典:The Power to Coerce

4 地経学(Geoeconomics)による対処

ここで、P2Cの代表的な手段である地経学的手段について考えてみる。

地経学は、地政学と共に長い歴史を持ち、国家安全保障戦略の重要な要素である。最近、地経学の重要性が再認識されているように思う。例えば、オバマ大統領が多用する経済制裁の発動(クリミアを併合したロシアに対する経済制裁)や経済制裁の解除(イラン核合意に伴う経済制裁の解除)はその典型例である。

そして、地経学の復権を象徴するかのように、著名なシンクタンクCFR(Council on Foreign Relations:外交問題評議会)に所属するロバート・ブラックウィル(Robert D. Blackwill)とジェニファー・ハリス(Jennifer M. Harris)*4の共著で出版された“ War by Other Means(他の手段による戦争)”は読むに値する良書である。以下、“ War by Other Means”を紹介しながら対中不戦而勝戦略を考えてみる。

  • 地経学とは何か?

地経学とは、「国益を増進し防護するためおよび有益な地政学的結果を得るために、経済的手段を使用することや、ある国の地政学的目標に対する他の諸国の経済的活動の効果*5」を研究する学問である。

  • 主要な地経学の手段

貿易政策、投資政策、経済制裁、サイバー戦(例:中国が米国などの企業秘密を窃取するために実施しているサイバー戦による情報窃取)、経済援助、財政および金融政策、エネルギーおよび商品(commodities)を管理する国家政策(例:ロシアが欧州に対する天然ガスの供給を政治的理由により50回以上停止した)、主要な地経学的資質(例:対外投資をコントロールする能力、国内市場の規模・国内市場をコントロールする程度)

  • 地経学に基づく政策的処方箋

ブラックウィルとハリスは、20もの地経学に基づく処方箋を提示しているが、主要なもののみを列挙する。

米国の力強い経済成長、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の批准、政治的・軍事的脅威に焦点を当てた同盟国の地経学的行動、中国に対処するための長期的な地経学的政策の構築、国家が主導する地経学的なサイバー攻撃への対処である。

以上のような地経学の政策的処方箋が平時における対中国戦略の中心になる。そして、平時から有事までを含んだ国家安全保障戦略の重要な政策になるのである。

  • 中国による地経学的手段の活用

中国こそ経済力を徹底的に利用した地経学的手段を使った対外政策を行っている国家である。例えば、北朝鮮に対する経済支援(石油や食糧)は、北朝鮮の崩壊阻止や中国の影響力の保持などを狙いとしていて、朝鮮半島情勢に大きな影響を及ぼしている。

わが国に対しても何度も経済制裁などを実施してきた。

例えば、2001年の小泉純一郎首相の靖国神社参拝に反発して、日本車の輸入を年間40~60%削減した。尖閣諸島における漁船衝突事件(2010年)に対する報復として、日本に対するレアアースの対日輸出制限を実施した。

2011年には日本企業の生産拠点と技術の中国への移転を強要する為に再度レアアースを手段に使った。2012年の尖閣諸島国有化の際には、中国からの経済制裁や日本製品不買運動を受けた。

さらに、日本の企業特に防衛産業に対するサイバー戦による情報窃取を繰り返しているが、中国によるサイバー戦はわが国にとって現在も大きな脅威となっていて対策が急務となっている。

しかし、日本は、レアアースを武器とした中国側の攻撃に対して、代替物の開発や入手先の多様化で対応し、結果的にはその後のレアアースの暴落で中国側にも大きな損害が出た。

また日本は、市場を中国外のベトナムなどに求めたために、中国にとってもマイナスの側面が出てきている。いずれにしろ、中国の経済力を利用した攻撃的な対外政策には、こちらも経済的要素を活用した政策で対抗しなければいけない。

  • 地経学に基づく具体的な対中国政策

“ War by Other Means”と前述の各シンクタンクの対中戦略を総合して地経学に基づく具体的な対中国政策を導き出すと以下の様な政策になる。

この政策が対中「不戦而勝戦略」の重要な要素になる。

改めて強調するが、地経学的な政策は、日本や米国の国家安全保障戦略の核となる重要な要素であり、わが国においても政府およびNSC(国家安全保障会議)を中心として体系的かつ総合的に検討されるべきものである。

・地経学的政策に関する日米のコンセンサスの構築。日本単独ではなく、米国との協調が不可欠であり、日米のNSCなどにおける緊密な調整が不可欠である。

・強い日本経済および米国経済の維持・増進。これは地経学の基盤である。

・米国の同盟国および友好国に対する国力増強を支援[例えば、経済援助、沿岸警備隊(coast guard)の能力構築に対する支援]する。これにより中国のパワーを相殺する。

・サイバー戦能力の向上による中国のサイバー戦への実効的な対処を実施する。防御的なサイバー戦のみでは限界があり、より積極的なサイバー戦により中国のサイバー戦を抑止すべき。

・中国に対する経済制裁、特に中国のサイバー戦による情報窃取(cyber theft、cyber espionage)に対する経済制裁、WTO(世界貿易機関)の規則に違反した鉄鋼などのダンピングに対する制裁を実施する。

・中国に対する投資や技術協力を戦略的に実施する。

・中国に対して有利な経済関係を構築する。選択的にグローバリゼーション(TPPやアジアインフラ投資銀行AIIBへの関与など)を深化させ、中国が完全に市場を開放した時のみこれを受け入れる。市場を開放しなければ中国を除外する。

・中国国内の民主主義グループに対する支援を実施する。

*4=Robert D. Blackwill, Jennifer M. Harris, “War by Other Means”, Belknap Press of Harvard University Press

*5=“War by Other Means”、P20

5 中国の不戦而勝戦略=サラミ・スライス戦略にいかに対処するか?

  • 中国のサラミ・スライス戦略の成功

中国の不戦而勝戦略の具体的な戦略の1つがサラミ・スライス戦略(salami-slicing strategy)であり、サラミ・スライス戦略の具体的な作戦の1つが「戦争には至らない準軍事作戦」POSOW(Paramilitary Operations Short Of War)であり、POSOWの具体的な戦術の1つがキャベツ戦術である。それぞれの戦略、作戦、戦術にいかに対処するかを考えていきたい。

中国の不戦而勝戦略の具体的な戦略は、サラミ・スライス戦略(salami-slicing strategy)である。

私がサラミ・スライス戦略という言葉を初めて使用したのは、2014年6月末、中華民国の国防部に招待されて国際安全保障フォーラムに参加した時であった。出典は、ロバート・ハディック(Robert Haddick)の “Salami Slicing in the South China Sea”である。

サラミ・スライス戦略とは、1本のサラミを丸ごと一挙に盗めばすぐにばれるが、薄くスライスして盗んでいけばなかなかばれない。このように、相手の抵抗を惹起しない小さな行動を積み重ねることにより、最終目標を達成しようとする戦略である。

南シナ海を最終的に中国の海にするために、長い時間をかけて一つひとつの成果を積み重ねてきていて、もしも米国が真面目に介入しなければ、中国の目標は達成されることになるであろう。

China's claim for territorial water

図2「中国の領海の主張と各国のEEZ」

中国の南シナ海や東シナ海におけるサラミ・スライス戦略の経緯を概説する(図2参照)。

1950年代にフランス軍の撤退に伴い中国がパラセル諸島(西沙諸島)の半分を占拠、米軍のベトナム撤退に伴い75年ベトナム軍との戦いに勝利しパラセル諸島全域を支配、80年代に在ベトナムソ連軍縮小に伴いスプラトリー諸島(南沙諸島)に進出。

1988年スプラトリー諸島6か所を占領、在フィリピン米軍撤退に伴い95年フィリピンのミスチーフ礁を占拠、2012年にスカボロー礁において中国船とフィリピン沿岸監視船の睨み合いの末にフィリピンが撤退し、中国がスカボロー礁を事実上支配。

2014年からスプラトリー諸島で大規模な人工島を建設、2015年から2016年にかけて人工島の軍事拠点化(3000メートル級の滑走路の建設、対艦ミサイルや地対空ミサイルの配備など)を進めている。

これらの事実の一つひとつがスライスされたサラミの一片であり、60年以上をかけて中国の南シナ海の聖域化が進行しているのである。

人工島については、中国のみが構築しているのではなくて、図3が示すように各国が建設しているが、その規模と機能が圧倒的に違うのである。3000メートル級の滑走路を保有することによりいかなる航空機でも離発着可能となるし、港湾の整備により大型艦艇の利用も可能となる。

comparison of runway

図3「滑走路比較」 出典:AMTI、CSIS

distance of monitoring Shouth China Sea

図4 「南シナ海における海上監視距離」出典:AMTI、CSIS

図4を見てもらいたい*6。各国の航空機がスプラトリー諸島の滑走路を使用した場合の飛行半径である。中国は、ファイアリー・クロス礁の滑走路を洋上監視機Y-8Xが使用したとして1000マイル、爆撃機H-6Gが使用したとして3500マイルの戦闘半径を有する。

また、戦闘機J-11の場合は870マイルの戦闘半径を有する。人工島を利用して何が可能かを以下に数点列挙する。

・洋上監視機Y-8X、レーダー設置などによる海上監視能力の向上が期待できる。

・やがて対艦ミサイル及び対空ミサイルを配備することによりA2/AD能力の向上が期待できる。

・戦闘機部隊の訓練基地とし活用する(日本の硫黄島と同じ)。

・中国が海の万里の長城と呼ぶ海底監視網の構築の作業拠点として活用できる。

  • 中国のサラミ・スライス戦略への対処要領

・米国が、中国に対して越えてはいけない線(レッドライン)を明確に引き、レッドラインを越えると軍事行動を辞さないことを外交などを通じ中国に警告し続けることが重要である。

レッドラインの設定と相手がレッドラインを越えた時の軍事行動の決意がないと、中国のサラミ・スライス戦略を打破することはできない。

中国の狙いは、人工島を領土、その周辺12カイリを領海、その上空を領空であると主張し、その主張を軍事力で強制することである。結果的に南シナ海の大部分が中国の領海やEEZになってしまう。

米軍のみならずすべての国家の艦船や航空機が航行の自由および飛行の自由を制限される事態になる。

このような事態は絶対に避けるべきである。中国が尖閣諸島周辺の日本の領海内に侵入をしつこく繰り返しているが、その行動を我々も見習うべきである。

米国が設定すべき南シナ海におけるレッドラインは、「FONOPを実施する米軍の艦艇や航空機に対する中国PLAによる攻撃」である。FONOPに対する軍事力をもってする攻撃だけは絶対に許してはいけない。

結論として、米海軍は、航行の自由作戦FONOPを頻繁にしつこく継続することが重要である。

オバマ大統領は、東シナ海や南シナ海におけるFONOPに関する権限を米海軍に完全に分権し、過度の統制を加えるべきではない。米海軍の行動に連携して海上自衛隊やオーストラリア海軍もFONOPを実施すると一層効果的である。

・東シナ海におけるレッドラインは、「航空機による領空侵犯および尖閣諸島への上陸」である。絶対にこの2つを許してはいけない。

・さらに、米国を中心として米国の同盟国(日本、オーストラリア、韓国、フィリピン、タイ)と友好国(インドやASEAN=東南アジア諸国連合など)で連合を形成し中国の地域覇権を抑止するべきである。

・紛争当事国であるフィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどの対処能力の向上である。当事国自身の自助努力を前提として、日米はこれらの諸国の能力構築に協力すべきである。

・日米は、南シナ海の領土及びEEZ問題全ての多国間による解決をサポートすべきである。この行動は、中国を除くすべての関係国の支持を得なければいけない。多国間での解決は、国際規準に則った合理的な解決のための努力であるが、中国をさらに孤立させることになろう。

・日米は、伝統的な共同演習、ISR(情報・監視・偵察)を十分な頻度と規模で実施すべきである。その行動は、前例となり権利を確立することになる。

・米国は、国連海洋法条約(UNCLOS)を批准すべきである。米国はUNCLOS批准国でないために中国に十分に反対できてない。

*6=この図では台湾のP-3Cがスプラトリー諸島のItu Aba 島の滑走路を使用したら1549マイルを監視できるとしている

China's cubbage tactics

図5「中国のキャベツ戦術」出典:渡部作成

6 中国の「準軍事組織による戦争に至らない作戦」への対処

中国は、サラミ・スライス戦略の一手段としてPOSOW(Paramilitary Operations Short Of War) *7(準軍事組織による戦争に至らない作戦)を南シナ海やわが国周辺海域で多用している。

POSOWの特徴は、軍事組織であるPLAN(人民解放軍海軍)を直接使用しないで、非軍事組織(海上民兵=武装した漁民、海洋調査船)および準軍事組織(中国の沿岸警備隊である海警局)を使用して目的を達成する点にある。

図5「中国のキャベツ戦術」を見てもらいたい。中国が得意なキャベツ戦術では、以下のような戦術がとられている。

①武装した漁民が乗った漁船で攻撃目標(例えば、フィリピンの漁船、奪取したい島)を取り囲む。

②漁船や海洋調査船の保護を名目に海警局の舟艇が漁船の周りを取り囲む、しばしば相手国の沿岸警備部隊の舟艇の活動を妨害する。

③PLAN(人民解放軍海軍)が海警局の舟艇の外側で、特に相手国の海軍艦艇を警戒監視する。

中国のPOSOWは日米に対して極めて効果的な作戦である。POSOWは、日米の法的不備をついた作戦である。軍事組織でない漁船や海警局の舟艇に対する直接的な対応が取れない。

最近の実例を紹介する。

米太平洋艦隊司令官のスコット・スウィフト大将によると、航行の自由作戦を実施した昨年10月のイージス艦ラッセンと今年1月のイージス艦カーティス・ウィルバーの周辺に海上民兵が乗った船が近寄ってきて、両艦艇を取り囲んだという。

当然ながら漁船の周辺にはPLANの艦艇がいた。2014年5月、中国が西沙諸島で石油掘削リグをベトナムとの調整なく設置した際にも、キャベツ戦術を活用した。

それでは、キャベツ戦術をはじめとする中国のPOSOWにいかに対処するか。

最も重要なことは、紛争当事国であるフィリピン、ベトナム、インドネシア、マレーシアなどの対処能力の向上である。

海軍・空軍、沿岸監視部隊の能力向上などの当事国の自助努力を前提として、日米はこれらの諸国の能力構築に協力すべきである。日本のフィリピンやベトナムに対する海上保安庁の中古船舶の譲渡や売却は有力な案であるし、共同訓練による能力向上に寄与することも重要である。

*7=Mohan Malik, “America and China’s Dangerous Game of Geopolitical Poker”, The National Interest, June 18, 2014

結言

ワシントンD.C.所在の著名なシンクタンクの提言には、オバマ政権の南シナ海などにおける対外政策があまりにも中国に対して寛容すぎたことへの批判が背景にあり、各シンクタンクの対策は中国に対し厳しいものである。

私は、オバマ大統領の広島訪問時のスピーチに代表される高邁な人格には敬意を表する者であるが、南シナ海問題に対する米国大統領としての言動や決心には問題があると思っている。

中国の南シナ海での強圧的行動に対するオバマ大統領の姿勢は、中国に対する配慮が強調され過ぎ、同盟国の懸念や不信感を引き起こしてきた。

例えば、2014年4月の東アジア訪問における日本やフィリピンにおけるオバマ大統領の言動が典型的であるが、オバマ大統領はフィリピンにおいて、「我々の目標は、中国に対抗しようというものでも、中国を封じ込めようというものでもない。我々の目標は、国際的なルールや基準を尊重することであり、それは海洋における論争にも適用される。そして、我々は、国家間の論争において特定の立場に立たない」と発言している。

彼の領土問題で中立的であろうとする態度が中国を大胆な行動に駆り立ててきた側面がある。南シナ海の中国の領有権の主張は南シナ海の大部分に及び、周辺諸国の排他的経済水域(EEZ)の大部分を侵害する形になっている。中国の主張がいいかに荒唐無稽であるかが分かる。

シカゴ大学のミアシャイマー教授は、大国間の勢力均衡において、相手国に明確なレッドラインを明示することの重要性を指摘している。南シナ海や東シナ海におけるレッドラインの設定と中国がレッドライを越えた時の断固たる軍事力の発揮は極めて重要である。

このレッドラインの設定に関してオバマ大統領は、2013年8月、シリアによる化学兵器の使用はレッドラインを越えるものであると軍事的介入を警告しておきながら、最終的には軍事力の使用を断念してしまい、米国の威信を失墜してしまった。

二度と同じ過ちをアジアにおいて犯してもらいたくはない。

結論として、中国に対する不戦而勝戦略の重要な要素が、米国を中心とした対中国連合の構築であり、地経学的手段の活用(経済制裁、経済援助など)、中国のサラミ・スライス戦略に対するレッドラインの設定とレッドラインを越えた場合の軍事力の使用を中国へ明示すること、南シナ海におけるFONOPの継続的かつ頻繁な実施による航行の自由の確保である。

冒頭で言及したデニス・ブレア大将は、日米同盟関係を背景として日米共通の対中国戦略を構築すべきであると主張している。

アジアの安全保障を考えた場合、日米同盟が核となって、米国の同盟国や友好国との連携のもとに中国の強圧的な台頭に対処しなければいけないと改めて思うのである。

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『韓国人による震韓論』(シンシアリー著)

この本は、韓国人の冷徹な目で、日本人は韓国人とどう付き合ったら良いのかを示唆してくれています。一言で言って韓国は敵国、その位置は千年経っても変わらないという事でしょうか。福沢諭吉は早くから中国・朝鮮半島は信頼するに値しないことを見抜いていました。三田の卒業生は是非この本を読んで、韓国と絶交するようにしてほしい。

さて、昨年4月安倍首相の米・上下院合同演説→昨年8月首相戦後70年談話→昨年12月慰安婦合意→本年5月オバマ訪広というシナリオは日米共同で中韓の歴史戦を粉砕するために描かれて来たような気がします。米国は”Korea fatigue”と、中国と手を組み米国への裏切りで、韓国を相手にしなくなってきていると思います。

歴史戦の延長で言えば、今回三菱マテリアルの強制徴用した(単なる契約、銃剣を突き付けた訳でない、従軍慰安婦と同じ構図)と主張する中国人との和解はすべきではなかったです。岡本行夫辺りが智恵ならぬ間違ったアイデアを授けた所でしょうか?彼は三菱マテリアル取締役で、北米一課長の時に、湾岸戦争時の日本の支援金をくすねた男です。日高義樹氏の本に書いてありました。また彼は朝日新聞の誤報・虚報の第三者委員会の委員で朝日の言いなりにしかならない根性のない男です。国際的な謝罪報道すら要求しませんでした。第三者の如何わしさは舛添を見てれば分かるでしょう。でもサイモン・ウィーゼンタール・センターというのはユダヤ人の強力な組織です。ユダヤと中国が手を握り歴史戦を仕掛けてきているとしか思えません。日本も杉原千畝だけでなく、東条英機や樋口季一郎がユダヤ人を救ったことをPRしなければ。

http://toyokeizai.net/articles/-/79307

また、歴史戦で民間も頑張っています。今後はUNESCOを舞台に慰安婦や南京虐殺を否定し、天安門事件やチベット人虐殺を世界記憶遺産に載せるように攻めの姿勢で臨んでいかねば歴史戦に勝てません。相手の嫌がることをしなければ。

6/2松林利一氏のFacebook

今年この(注:慰安婦)申請をするため中国がUNESCOに働きかけ3月末の締め切りを5月末に引き延ばしたらしい。これに対しては日本政府が本気で取り組みUNESCOに善処させる必要がある。外務省や文科省を初めとする関係省庁のやる気溢れる行動を見たい。

上記は「守り」となるが守りだけでは面白くない。「攻め」が必要になる。「文化大革命」「天安門事件」材料には事欠か無い。この攻めに関しては民間人が中心となる。私としても是非とも応援していきたい。

今回別途「20世紀中国大陸における政治暴力の記録」をテーマとして、チベットと日本が共同で申請を行った。具体的には120万人を超えるチベット人の虐殺事実と200人を超える日本人虐殺の通州事件。この2つを併せ「中国の政治暴力」として括り長く世界記憶遺産に残す趣旨での申請である。

ある面「史実と捏造の対決」がUNESCOを舞台に開始された。真実が虚構に負ければ道理が引っ込む。道理を通すため勝たねばならない。>(以上)

http://www.sankei.com/world/news/160601/wor1606010023-n1.html

本書によれば「韓国は日本と戦争したいが力がないからやらないだけ」と思っているとのこと。こんな国に日本は支援してきました。利敵行為で、愚かとしか言いようがありません。政治家だけでなく、国民の監視が行き届いていなかったためです。偏向メデイアの果たした役割は大きいでしょう。

<5/26Asahi.com「独島」と旭日旗めぐり日韓で混乱も 潜水艦救出訓練

 日米韓などが参加して韓国近海で25日から始まった潜水艦救出訓練で、海上自衛隊韓国軍揚陸艦「独島(トクト)(竹島の韓国名)」への乗艦に難色を示した。一方、韓国側では海自の救難艦が通常使う旭日旗を掲げたことに反発する声も出て、日韓防衛協力の難しさを改めて見せつけた。

 日米韓など6カ国が参加し、潜水艦の遭難事故を想定した脱出と救助の訓練を行う。7回目の今年は韓国がホスト国で、当初は大型艦で収容能力がある「独島」に各国の参加者を招き、訓練の状況を逐次解説する方針だった。

 だが、海自は独島への乗艦に消極的だった。領有権争いで韓国の主張に譲歩した印象を持たれることを嫌ったとみられる。これには韓国側が譲歩し、別の艦船に変更されたという。

 一方、海自の救難艦などは24日、旭日旗を掲げて韓国南部の鎮海(チネ)海軍基地に入港。これを問題視する韓国メディアの報道が相次いだ。ハンギョレ新聞(電子版)は旭日旗について「かつての日本軍国主義の象徴だ」とした。(ソウル=牧野愛博)>(以上)

韓国経済も断末魔を迎えています。「6/3韓国危ない33社 造船大手破綻で始まった“ゾンビ財閥”破綻ラッシュ」という記事や「米、強引すぎる韓国圧迫 WTO韓国人上級委員の再任拒否&FTA完全履行要求」と韓国への米国の怒りが目に見えるようです。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160603/frn1606031550001-n1.htm

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160603/frn1606031845005-n1.htm

慰安婦も韓国国内で意見を纏められるとは思えません。国際協約違反は世界に知れることになるでしょう。平気で日韓基本条約を反故にする国ですから。

http://japan.hani.co.kr/arti/international/24295.html

日本は間違っても通貨スワップで韓国を助けてはなりません。言って来たら、公衆の面前での土下座と慰安婦の虚偽の発表を要求すべき。それと反日を止めることを。でも彼らはいつでも裏切るので、約束はすぐ反故にされるでしょう。「非韓三原則」こそが正しい道です。中国側に行こうが日本の知ったことではありません。共産国になればよい。米国ももう見限っているでしょう。

内容

P.33~35

日本はどこの国よりも韓国との武力衝突の可能性に備えるべき         

もちろん、その道に反対している国もあります。その中でも、もっとも反対している が、隣国である大韓民国です。「何もするな。何も変えるな。絶対に変わるな!」ともっとも日本に要求している国、それが韓国です。

マスコミなど、日本側のメディアの記事に目を通していると、先に「縛り」の一つだと書いた七十年前の戦争のことで、「韓国」という字が異常なほど目立つことを、私は憂いています。韓国に対する必要以上の配慮を、無条件の協力を強いる論調も目立っています。まるで、国家間の出来事を、善悪論で押し通そうとしているようです。

どうでしょう。「韓国に、力が足りないという現状以外に、日本を侵略しない理由などない」というのが私の持論です。力が足りないというのは、韓国が安全保障をアメリカに頼っているという意味です。

日本は、韓国という国についてもっと警戒心を持つ必要があります。

歴史上、大きな「聖戦」は「聖地」にまつわるものでした。「独島(竹島)」という韓国人の「反日の聖地」のことも含め、ここだけの話、「局地的な武カ衝突など全ての可能性に備える」必要があります。

どちらかというと、私はもし日本がどこかの国と武力衝突するなら、その相手は中国やロシア、いや北朝鮮より、韓国のほうが可能性が高いと思っています。

韓国のこだわりの正体は「謝罪表現」の有無

詳しくはこれから書いていくことになりますが、韓国の「対日観」は、「韓国が上で、 日本が下」を基本とします。日本が上がることは、韓国が下がることです。韓国が日本に対してそこまで一方的な上下関係を信じて疑わない土台は、「善悪論」、具体的には「日本の謝罪」です。

韓国人の精神世界では、謝罪は「歪」を認めることであり、「歪」は「正」より下です。 謝罪した人は「格下」になります。安倍談話において韓国がもっとも気を尖らせる「謝罪」表現の有無。そのこだわりの正体でもあります。

私はこう思っています。安倍談話によって、韓国がこだわっている日本との関係の基本が破壊されるだろうと。それが「良い意味での破壊」であることを信じています。

「安倍談話」の内容がなぜ両国関係を「良い意味で破壊する」のか

本名も出せずに「シンシアリー」という場違いなポジションにある私ですが、場違いだからこそできることもあります。

日本が「普通の国」への重い一歩を踏み出した二〇一五年二月から八月の間、日本の「縛り」たる韓国で何が起こったのか。どんな心理が人々の頭の中をよぎったのか。安倍談話の内容がなぜ両国関係を「良い意味で破壊する」ものなのか。

それを書籍としてまとめることも、意味があるのではないでしようか。それがこの本を書いた理由です。

さて、そういうことで、あくまで一冊の「読み物としての楽しさ」を失わないよう気をつけながら、これから始めてみたいと思います。韓国にとってとても長かった六力月の話を。

P.72~75

朝鮮日報がニ○一一年に連載したシリーズコラム(2011韓国人よ、幸せになれ)の五回目(ニ〇一一年一月七日)に、面白い内容が書いてあります。

コラムの諮問委員会に参加した海外の専門家たちは、韓国人を「お金が好きでありながら、大金持ちは嫌いだという、富に対して二重の態度を持っている」と分析しました。朝鮮日報がアンケート調査を行った結果、韓国人は九十三%が「お金が幸せに必要だ」と思っていることがわかりました。

しかし、その理屈だと「幸せになっているはず」である大金持ちの人たちに対しては韓国人はかなり批判的で、「親のおかげだろう」、「何か不正をやった結果」としか見ていないこともわかりました。これは、外国の專門家たちには大変珍しく、興味深い結果だったようです。

KDIの報告書に戻ると、「上」になれなかった人たちは、「剥奪感」を主張しています。 報告書によると、他人と比べる「比較傾向」の強い人であればあるほど、「目標至上王義」、 「利己主義」な態度を見せたとなっています。また、彼らは自分を幸せだと感じていない側面が強く、自分が不幸な理由を「相対的な剥奪感」によるものだと思っていました。

剥奪感というのは、韓国の国語辞書によると、「権利や資格など、当然自分にあるべきいくつかのものを奪われたように感じること」という意味です。

「下」になった人たちは、「上」になった人たちに素直に拍手を送ることができないでいるのです。不当な何かによって、負けてしまった。そう思っています。スポーツの試合などでも韓国人は「きれいな負け方」ができないことで有名ですが、それとも関係していま す。

「憤怒調節障害を病んでいる大韓民国」

上は下を人間扱いしないし、下は上に何かを奪われたと思っている社会には、「憤怒」 だけが残ります。

二〇一五年三月二十六日の中央日報は〈憤怒調節障害を病んでいる大韓民国〉という切ない題の記事で、「このところ韓国社会は憤怒で溢れかえっている。特定の問題が話題になると、多くの人たちがその問題の本質を見るよりも、ただ不満を吐露するのに忙しい。

いや、不満を超え、憤怒を表出するといった表現が合っているかもしれない。とくに強者が弱者に不適切な方式で権威を振るう『甲の横暴』のことになると、こうした葛藤と憤怒は極に達する……」と伝えています。 「甲」というのは、大企業が不公平な契約を中小企業に要求する「契約書の甲乙表」から きた表現だと言われています。まるで、革命前夜みたいな雰囲気ですね。

相手を赦せば自分が「下」になるから決して赦さない

怒り狂い泣き狂う人に「それは残念でしたね」と言ってやれないこともないですが、すこし考えてみると、「当然、肖分にあるべきものを奪われた」の「当然」の基準は誰が決めたのか?気になります。法律などちゃんとした基準によるものならわかりますが、も し「自分自身の基準」によるものなら、大問題です。

自分が不幸な理由は、奪われただけではなく、自分自身に原因がある可能性だってあるのですが、そういう見方が欠けているからです。そんなのは、ただの被害者意識です。 「慰安婦」や「セウォル号」などのニユースをご踅になった方なら、「被害者を自称しながら、なんであんなに偉そうに上からの目線なんだろう」と思われたことはないでしょうか。

被害者は邪悪な何かによって権利を剥奪された人たちだから、すなわち「正」で、「上」 だ。韓国には、そういう妙な「共感帯(連帯感)」ができています。上になれなかった人たちが自分自身のために残した最後の予防線、“私は何も悪くない。私は正しい。だから、本当は私が上なのだ”。その感覚の副作用であると言えるでしょう。 お気づきでしょうか。これが「恨(ハン)」の正体です。

「悪」を設定することで、自分が「善」になれます。「歪(下)」を設定することで、自分 が「正(上)」になれます。逆に、相手を赦せば、自分の格が下がります。だから赦しません。

言い換えれば、恨(ハン)は、永遠に赦せないから終わらないのではなく、赦そうとしないから終わらないのです。

P.80~85

集団利己主義の原点は「白か黒かだけ。中間地帯がない」

「終わらない」と合わせてもう一つ、「恨」の現れ方として「両非論を認めない」を覚えておく必要があるでしょう。

両非論は「両方に責任がある」という意味ですが、自分にも非があると認めると「格が下がる」ため、恨の世界では両非論は認められません。結果、「善」か「悪」か、「白」か「黒」かだけが存在できます。だから韓国社会はほとんどの事案が「極端な二つの意見(ニ元論的)」に分かれることになります。

文化体育観光部公式ブログによると、「ニ〇一三年韓国人の意識•価値観調査(文化体育観光部が二〇一三年十月十一日〜十一月十日まで全国の十九歳以上の男女二千五百三十七人を対象に実施したアンケート調査)」の結果、「富裕層と庶民層の葛藤(対立)が大き いと思いますか?」という質問に「はい」と答えた人が八十九•六%。「企業家と労働者の間の葛藤が大きいと思いますか?」に「はい」八十五• 一%。「進歩(左翼)と保守 (右翼)の間の葛藤が大きいと思いますか?」に「はい」八十三•四%でした。

それもそのはず、単純に「葛藤」があるだけでなく、政治でも経済でも、韓国社会では「妥協は負け」です。自分の正しさを諦めることだからです。だから、「中間地帯」の役割が果たせるような「中道派」の存在もありません。

この問題が指摘されたのは、ずいぶん前からです。ちょっと古い情報源ですが、一九九〇年に東亜日報が一年間連載した〈韓国人診断〉というシリーズコラム、その八回目となる 「白か黒かだけ。中間地帯がない(一九九〇年三月二十五日/東亜日報)」をまとめてみます。

  • 私たちの周辺には、中間地帯の存在を許容せず、両極端だけが対立する風潮が蔓延している。ある主題において賛成か反対かの意思表示を強要するだけで、妥協点を見つけようとする努力は無視される

・考えが違うと敵となる。韓国人は他人と違う考えを持っていても余程のことがないとそれを表に出さない。他人と違う意見を出しても、返ってくるのは討論の相手としての関係ではなく、感情的な敵対関係であるからだ。

・「画一」が、「統一」や「団結」と勘違いされている社会。その社会で置いてけぼりにされないためには、対立している両極端のどちらかを選んだほうが楽だ。その間に存在する多様な選択の行動パ夕―ンは、たとえそれが中庸でも、「灰色主義(どちらでもない)」 と非難されるからだ。このような「黒白主義」、「二分法的思考傾向」のせいで、私たちの社会では政治的、社会的、個人的活動において多元主義が成熟できずにいる

・韓国人の両極端さは、「民族性」にその理由がある。「地政学的」には、厳しい国際関係の中で、急いで一つの結論を出さないといけなかった。「文化的」には、「王宮文化(極めて高貴で富裕な文化)」と「農民文化(低質で貧困な文化)」という両極端な文化しか存在しなかった。今のソウルすらも、過去の農民文化の集合体であるだけで、独自の都市文化を創造できなかったという指摘を受けている

・宗教や学問的にも•中国や日本のように、多様な宗教や学問が共存することはできなかった。朝鮮時代からは「儒教」、「朱子学」だけが認められた。政治の世界にもまた、「対立」だけが存在した。「日帝時代(併合時代のこと)」には「親日か、反日か」だけだった。「軍事政権時代(朴正熙〜盧泰愚政権まで)」には「政権の言いなりか、闘争か」しかなかった。「極右」が「極左」を生む結果になったのだ

・そんな中、「両極端性」が深化していった。そして、民族性として内面化されたのだ

この現象は、日本側のネットでよく「ウリ(私たち)とナム(他人)」と呼ばれる、韓国特有の「集団利己主義」となりました。二十五年前の新聞で大々的に扱うくらいなら問<題意識があったようですが、診断はできたのに処方案は効かなかったようで残念です。

「異なる」ことを永遠に受け入れられない民族

一九九六年六月二十九日のハンギョレ新聞に載っている、韓国文化政策開発院の金文煥 (キム•ムンファン)、ソウル大学美学(※aesthetics。美の本質や形態、構造などを追求する学問)部教授のインタビューから、同じ見解を見出すことができます。日本文化の輸入規制をなくすべきかどうか議論が起きていた頃の記事です。

  • (質問)韓国文化と日本文化を比べるなら:

「(教授の答弁)韓国文化には儒教主義的文化の遺習が比較的強く残っている。日本も儒教を受け入れたが、『真似をした(表面的にやっただけという意味)』だけで、比較的、 多くの固有の伝統を生かしてきた。その結果、規範に縛られない風土ができた」

「韓国は儒教的伝統が強すぎて、『対抗文化』としての本質が強くなりすぎた。一時、韓国社会で『克日』という言葉が流行したことがあるが、それも『対抗文化』としての我らの文化の性質が反映された結果だ。日本文化と韓国文化は、ニつの民族の生活と歴史が異なるから、異なっていて当たり前だ。『異なる』を認めると、正しいか間違っているかの価値判断から自由になれる」

・韓国文化のそのような属性はどこに起因するのか:

「韓国人は倍達民族(韓国民族の呼び方の一つ)や単一民族など、同類意識が強いため、『異なる』を認めることができず、つい『異なる』を「間違っている』と扱う傾向がある」

恨(ハン)とはもともと、自分と他人を比べることから始まるものです。比較にこだわり過ぎるのは、自分自身に自信がないからでもあります。韓国人は他国の文化の起源を主張することで有名ですが、それと似ています。自国の文化に自信がないという意味です。

自分に自「信」がないから、誰かと信じ合うことなど成立しません。信じ合わないから、妥協もありません。自分の主張だけが絶対的に正しくて他人の意見は間違っているという、 余裕のない認識になってしまいます。 「異なるを認めることで正誤の判断から自由になれる」。正しさは一つではないこと。韓国人はそれが認められないでいます。

それが、「兩非論など認めない」という流れになるわけです。

P.203~205

第三節 国全体か恐ろしい反日人間量産施設」

韓国人はなぜ「約束」を守れないのか?

この本を読まれている読者の皆さんは、「韓国人って約束は守るベきだという基本的な教育もしていないのか?」と思われるでしょう。それはもう、していますよ。韓国は決して教育インフラが乏しい国ではありません。

では、どうして日本との約束を守らないのか?また同じ話になりますが、「上下関係」が原因です。

韓国人は、ある規則において「例外になる(規則を守らなくてもいい)ことが、自分がその規則を守っている他の人たちより「上」になった、何か特別な待遇を受ける資格を得たことだと思っています。校則でも社会規範でもビジネスでもスポーツの試合でも国間の条約でも、この考え方は変わりません。

すなわち「社会の配慮の中には自分も主体として含まれている。自分も他人に対し配慮を行うべきだ」とする価値観ができていません。「社会には配慮が必要だけど、私は例外で、配慮は他人が私に対して行うべきだ」と思っています。

この「自分だけ例外になりたい」という願望は、「自覚がない」、「責任感がない」、「信頼できない」という結果に繋がったりします。

「下」は「上」に何もできず、隙さえあれば「上」を引きずり下ろすことしか考えていない。「上」は「下」に何をしても構わず、隙さえあれば「下」をこき使うことしか考えていない。

それが韓国の「上下関係」です。韓国社会の「二元論的構造」を象徴していると言えましょう。

「恨(ハン)」とは、相手と比べたがる歪みからできたもので、負けを認められず、自分は不正な方法で負けた被害者だから実は「上」であると信じ続けることである・・・と第二章に書きました。ある意味、「あらゆる規則から例外になれる資格」こそ、恨(ハン)が追求するものであるとも言えます。

(韓国にとっては)絶対的な上下関係を基本とする日本との関係においての約束事など、守るはずがありません。韓国関連のニュースなどを見て、皆さんは「この人たち、は何をしてもいいと思っているのか」と不快に思われたことはありませんか?その認識でほぼ正解です。

恨の価値観に囚われている韓国にとって、日本が上がることは韓国が下がることです。日本が下がることは韓国が上がることです。韓国にとってはその比較が何より優先します。 「反日」という名の、最後先順位です。

韓国は、「約束は守らないといけない」と平気で話しながらも、「日本との約束は守らなくていい」と思っています。韓国が日本より上だからです。

そもそも、韓国は、日本に悪いことをしたという自覚そのものがありません。日本との約束を破るのは韓国にとって当然の権利だから、日本に悪いことをしたと思う理由がないのです。

どちらかというと、韓国で反日は、そのまま愛国であり、一種の「道徳」です。

P.218~226

安倍談話が気になって仕方がない」韓国人の異常行動

日本が被害者に化けようとしている」と原爆関連の式典を「拒否」

異常に暑かった二〇一五年七月~八月。

「安倍談話が気になって仕方がない」韓国の異常行動も熱く続きました。 マスコミは「安保法案のせいで安倍の支持率が落ちた」と狂喜する報道を連発しながら、「安倍政権の立場が弱くなったから、安倍談話の内容も韓国に有利になるだろう」という、根拠のわからない期待を示したりしました。

新聞記事などを引用するとキリがないので、八月になってからの韓国の動きだけを、一部まとめてみます(※以下、安倍談話が発表された二〇一五年八月十四日を前後しての記事からの引用が多いため、年度表記を省略します。記述のないものは、全て二〇一五年です)。

八月四日は朴槿恵(パク•クネ)大統領が岡田克也民主党代衣と接見した際、安倍談話を意識し、安倍総理は村山談話や河野談話などをもう一度明らかに認める必要がある、今こそが慰安婦問題を解決できる事実上の最後の機会だと話しました(同日の国:民日報)。岡田代表はいわゆる慰安婦問題に関連し、「日本の政治家として申し訳がなく、恥ずかしい」と話しています(八月三日/聯合ニュース)。

八月六日にはクアラルンプールで開かれたASEAN関連会議で、尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官(外相)が日本の岸田文維外相に「安倍談話と関連し、歴代内閣の明確な歴史認識継承を明らかにし、日韓最大の懸案である日本軍慰安婦問題の解決のための日本側の進展した態度」を要求したとのことです。(同日の聯合ニュース)。

外交部長官が日本に「進展」を要求していた八月六日は、ちょうど広島に原爆が投下された七十周年目の日でした。

広島の追悼式には、日本で行われた原爆犠牲者追悼行事に初めて本国の高官(ローズ米国務省軍備管理・国際安全保障担当次官)を派遣したアメリカを始め、核保有「大」国であるイギリス、フランス、ロシアなど世界百カ国から、最多の五万五千人が参席しました。しかし、韓匡の柳興洙(ユ・フンス)駐日大使は、姿を見せませんでした(八月六日聯合ニュース。中国側も参列していません)。

韓国側は「日本が被害者に化けようとしている」との理由で、原爆関連の式典などを拒否しつつあります。

大韓言論賞を受賞したこともある論説貪が「原爆は神罰だった」、「まだ日本への罰が足りないと思うの.は神の自由だ」(ニ〇一三年五月二十日/中央日報という記事を載せたことは有名ですが、この日(八月六日)にもまた、東亜日報が「日本は被害者を名乗る資格はない。その理由は単純に日本は加害者だからだ」、「日本人の原爆の日に対する感情は安っぽい感傷に過ぎない」と批判しています。

朝鮮日報も原爆で亡くなった方に対する日本の追悼、慰霊ムードを「日本が東アジアで信頼を獲得し、平和国家と認められるためには、犠牲者コスプレ(犠牲者のふりをすること) はそれくらいにして、相手の立場から考えることも学ぶべきだ」と書いています(八月十四日)。

韓国は原爆のことを、「セムトン(イイザマ)」だと、どこか喜んでいます。日本の「進展」を要求する前に、こういう韓国側の「セコさ」を何とかしてほしいものですが・・・。

「安倍談話、安倍談話、安倍談話」・・・政府を挙げて、もはや病的な執着

八月八日の朝鮮日報の報道内容はさらに傑作です。

「……朴槿患大統領が発表する光復節(八月十五日)演説文を準備している大統領府と外交部の実務担当者らは今、緊急態勢に入っている。今後の韓日関係にかなりの影響を与えることになる日本の安倍晋三総理の戦後七十年談話が光復節の前日に発表されるからだ ……(中略)……予想される安倍談話の内容に合わせ複数の演説文を準備しているとのことだ……」

安倍談話が気に入らなかったらキツイ内容を、気に入ったら柔らかい内容を選ぶという意味です。早くも「反撃」を用意していたわけですね。

八月十日には、また朴槿恵大統領が、大統領府首席秘書官会議で、「日本政府が歴代内閣の歴史認識を確実に継承するという点を明らかにすることにより、我が国をはじめとする周辺国との関係を新たに出発させようとする成熟した姿勢を示していてほしい」と話しました。

同日の聯合ニユースは、「朴大統領の発言は、安倍晋三日本総理の戦後七十年談話に村山談話や小泉談話などで指定された「侵略」、「謝罪」、「痛切な反省」、「植民地支配」の四つの核心表現を込めて、真の反省と謝罪の意を示すことを促したものと見られる。また、安倍総理の談話が期侍に満たなかった場合、韓国と中国など日本の植民地支配と侵略被害国との関係がさらに悪化することもありえるという警告メッセージを送ったとも解釈される」と報道しています。

八月十一日には、朴槿恵大統領が訪韓したハモンド英外相と会い、安倍談話について「歴代内閣の歴史認識の継承を明確にすれば、未来志向の関係発展の基礎になる」と述べました(同日の産経新聞)。記事によると、朴大統領は植民地支配と侵略への反省を明記「(それらの談話が)韓日関係の発展を可能にした」と説明したとのことです。

八月十二日には、なんと潘基文(パン•ギムン)国連事務総長が、安倍談話に対して 「日本は過去の歴史に対する真の反省に墓づいた真の和解と協力を通じてより良い末来に進まなければならない」と国連報道官を通じて話しました(八月十三日/聯合ニュース)。 国連事務総長が特定国家の過去歴史問題を公に「反省」を要求するのは、極めて異例です。潘事務総長本人は否定しているものの、韓国の次期大統領候補だという噂もあります。

八月十三日には、魯光鎰(ノ .グァンィル)外交部スポークスマンが、「日本内閣の歴代談詁で表明された歴史認識が後退してはならず、継承されなければならないという点を強調しながら、それが何を意味するかは、日本政府が明確に知っているだろう」と強調しました(同日のKBS)。

潘基文事務総長はともかく、こうしてみると、ほほニ日おきに、安倍談話に関連した韓国「政府」の見解が披露されていることがわかります。安倍談話、安倍談話、安倍談話 ……別に韓国人に向けて発せられる談話でもないのに、ここまでくると、もはや病的な執着です。

韓国が「舌なめずりして」待った発表当日

そして、韓国が(望ましくない意味で)待ち焦がれていた、談話発表の日が来ました。 八月十四日、十七時頃に閣議で決された「安倍談話」は、ちょうど十八時に発表されました。

私はすでに三月の時点で「次の本(本書)は『価値観』をキーワードにする」と決め、「その象徴は安倍談話になる」と信じていました。そして、この六力月間の記録を本としてまとめるのは、十分に意味のあることだと。その六カ月のクラィマックスになるであろう安倍談話に期待していたのは言うまでもありません。

しかし、率直に言って、不安もありました。

談話の内容を決めるまで、安倍総理周辺では、自民党の内部から外部から、想像を絶するほど様々な意見がぶつかり合ったことでしょう。その中でも、私は「閣議決定」がもっとも心配でした。

六月二十一日には読売新聞が「安倍首相は今夏に発表する戦後七十年談話について、閣議決定を見送る方針を固めた。政府の公式見解としての意味合いを薄め、過去の談話にとらわれない内容とする狙いがあるとみられる」と報道したこともあります。

閣議決定はあったほうがいい形になります。言うまでもないでしょう。しかし、その分、内容への制約も増えます。閣議決定のためには、満場一致が必要になるからです。閣僚の中には公明党の方もいるわけでして。

談話発表の一週間前、安倍総理が談話の草案について谷垣禎一自民党幹事長、菅義偉官房長官、公明党の山ロ那津男代表と話し合ったとのことですが、その場で山口代表は、

  • 謝罪と反省が必要
  • 世界各国にちゃんと謝罪が伝わるように

・中国、韓国との関係改善のための内容

などを要求したとのことです(八月九日/聯合ニユース)。

公明党には公明党の考え方があるでしょうけど、日本の総理の日本のための談話について話し合いながら、どうしてこうも他国を気にしすぎるのか・・・これは別に山口代表の問題だけでもなく、日本のマスコミの論調も同じでした。非常に残念なことです。

星の数ほどの意見があれど、総理は一人、談話は一つだけです。全てに配慮すると「ヌルい!」と叩かれ、片方に突っ走ると「極右だ」と叩かれるでしょう。そのバランスをどう取ればいいのか。私のような凡人には「賴みます—安倍総理」とお願いすることしかできず・・・。

八月十四日、早めに診療を終えた私は、自分の部屋でワールドブレミアム(海外向けNHK放送。韓国でも一部のケーブルテレビで放送されています)チャンネルをつけました。

歌って踊る楽しい子ども番組が終わり、午後六時。総理自ら戦後七十年談話を発表する、生放送が始まりました。

〈戦後七十年談話、いわゆる安倍談話の全文は、本書には載せません。全文は首相官邸サイト(http://www.kantei.go.jp/)にありますので、「首相官邸トツプ〉総理大臣〉総理指示・談話など>平成二十七年八月十四日内閣総理大臣談話」でお読みください〉

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『ロボット100万台と工員14人飛び降りの因果 鴻海の中国工場で、まずは工員7万人を削減』(6/3日経ビジネスオンライン 北村豊)

98年~2000年まで深圳で勤務しました。その時にビール壜の洗壜工場へ見学に行きました。台湾人の経営という事でその非人間的なやり方に吃驚しました。当時は外省人と本省人の区別もついていませんでしたので、多分外省人が経営していたのだと思います。従業員の宿舎は、コンクリ-トでできた建物の大部屋に3段ハンモックを吊るし、ぎゅうぎゅう詰めにし、それでも足りなければ廊下に莚を敷いて寝かせていたりしていました。(深圳は暑い地域です)。仕事は市場から帰ってきた壜を手洗いするのですが、出来高払いで1本0.01元。しかも手袋をしないので、手がふやけてしまいます。いくら山奥から人を引っ張ってきても、当時逃げ出す人は多かったです。

鴻海の郭会長も勿論、外省人です。外省人(蒋介石が連れて来た台湾に住む中国人の子孫)と本省人(台湾人)では性格が違います。Facebookの記事を見ましたら、蒋介石が台湾に逃げ込んできて70年近くなりますので、外省人の本省人化、本省人の外省人化が出てきているとありましたが、大勢は外省人(台湾に住む中国人)と本省人(台湾人)と思えば良いのでは。鴻海の郭会長のやり方は洗壜工場のやり方と同じだったのでしょう。ですから、14人も飛び降り自殺(?)者が出たのです。普通は2,3人自殺者が出れば、監督官庁やマスコミが放っておくはずがありません。地方政府は雇用で文句が言えないのと、同じ中国人同士賄賂付けになっていたと思います。流石に14人にもなって放置できなくなったのでしょう。最初の飛び降りをした“馬向前”の後の報道がされたのかどうか?中国では金で報道させないこともできますので。

鴻海のシャープ買収で約束はすぐに反故にされました。当たり前です。日本人は中国人の性格を理解していないからです。契約とか約束とかは自分に都合の良いときだけ守ると。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という民族的特質を持ちますので。

http://www.sankei.com/economy/news/160514/ecn1605140026-n1.html

http://www.itmedia.co.jp/business/articles/1605/23/news062.html

人員合理化のための機械化・ロボット化は合成の誤謬を引き起こすでしょう。マクロで見れば、失業増、消費減となります。中進国の罠と北村氏は言っていますが。郭会長が台湾を愛するなら、中国大陸でなく、台湾に投資すべき。元々安い人件費狙いで大陸に進出したはずです。2000年に上海にいた台湾人カメラマンに聞いた話ですが、中国人の女子大生を囲っているとのこと。小生にも別な女性を紹介すると言われましたが勿論断りました。経営者で数人囲っているのは当り前です。台湾から離れて女性囲い狙いもあったのでしょう。言葉が通じますので。しかし、今や大陸の人件費も上がり、ロボットを増やすのであれば、別に大陸で投資する必要はありません。郭会長は台湾人ではなく、中国人だからでしょう。

記事

中国の国営ラジオ放送局“中国人民広播電台(中央人民放送)”のウェブサイト“央広網(ネット)”は5月26日付で、「ロボットの展開で富士康昆山の工員11万人が5万人に削減」と題する記事を掲載した。「富士康昆山」とは“富士康科技集団(英文名:Foxconn)”(以下「富士康」)の江蘇省“昆山市”にある工場を指す。その概要は以下の通り。

ロボットが人に取って代わる現実

【1】ロボットが人間に取って代わることは、いまや趨勢ではなく、広く展開されている現実である。富士康はすでにロボット技術を採用し、昆山工場の工員を2013年の11万人から5万人まで削減し、人件費の大幅な削減に成功した。

【2】典型的な労働集約型企業である富士康に対する外部の印象は、無数の生産ラインがあり、出入りが激しい工員と厳しいコスト管理下で行われる連続の超過勤務である。しかし、周期的な工員不足、人的コストの上昇に伴う工場の遠隔地への移転などの各種圧力に直面して、富士康は生産形態の転換なくしては破滅に至ることを認識していた。それなら、どうやって行員数を半減して、営業額を増大させることができるのか。

【3】仮に一般工員の給与を年間5万元(約85万円)、工業用ロボットの市場価格を約12万元(約204万円)とした場合、生産ラインの改造を通じて、多数の工員をロボットに置き換えることができる。ロボットは24時間操業を可能とするし、誤差は小さく、製品率はさらに高いので、3年程度で富士康昆山工場は削減あるいはその他の方法で工員を半分に減らすことができる。

【4】江蘇省昆山市のほか、浙江省、広東省などの東部、東南部の経済発展地区でもますます多くの地域でロボットが人に取って代わる現象が出現している。広東省の2015年を例に挙げると、ロボットの保有量は4.14万台で、全国の18.8%を占め、全世界の2.49%であった。そのうち、2015年に新たに増加したロボットは1.82万台で、全国の4分の1、全世界の6.9%を占めた。一口で言えば、広東省はロボットが人に取って代わる有力な省になりつつある。

【5】ロボットの導入が盛んになっている背景には、労働力市場の矛盾が浮かび上がる。2015年の1~9月に広東省の定点観測企業2万社における工員不足の平均人数は38人であった。「世界の工場」として名を馳せた“東莞市”はかつて工員不足に悩んだが、ロボットの導入後は工員不足が大幅に緩和された。

【6】コストの上昇もロボットの導入を後押ししている。2008年より前の30数年間、珠江三角州の労働者の賃金水準は年に100元(約1700円)程度しか上昇しなかったが、2008年以降の7年間に広東省“広州市”の最低賃金水準は月額800元(約1万3600円)から1895元(約3万2200円)に上昇して毎年1.2倍の伸びを示したが、製靴、家具などの業界では倍増したところもあった。仏山市経済・情報化局副局長によれば、普通工員の平均月給が3500元(約6万円)として、ロボットを導入した後に、ロボット1台が平均して工員8人分の仕事をすれば、1年間で30万元(約510万円)の人件費を節約することができる。また、ロボットを導入すれば、製品の品質が向上する。ロボットは精度が安定しており、製品の品質を大幅に高めることができる。

【7】多くの人々が心配するのは、ロボットが導入された後に流れ作業の生産ラインの工員たちが大挙して失業することになるのではないかということである。ある家具生産工場を例に挙げれば、1台20万元(約340万円)のロボットは年俸10万元(約170万円)の熟練工2人に取って変わることができる。言い換えれば、1年間でロボットの購入費用を回収できることになる。あるネットユーザーは富士康昆山工場で6万人の工員が削減された記事を見て、工員の失業時代が間もなく到来するという思いを深くしたという。

シャープ買収の台湾・鴻海が推進

 さて、今年3月30日に台湾の“鴻海精密工業股份有限公司”(以下「鴻海精密工業」)が3888億円の第三者割当増資を引き受ける形で日本の家電大手であるシャープを買収したことは大きな話題となったが、富士康はその鴻海精密工業が中国本土へ投資することを目的に設立した企業である。実質的には台湾の鴻海精密工業を中核とする“鴻海科技集団”が、中国では富士康という企業名で運営されているもので、鴻海科技集団と富士康は表裏一体の関係にあると言ってよい。富士康はアップルの委託を受けてiPhoneやiPadを生産していることで知られるが、アップルのみならず世界の大手メーカー各社から電子機器の生産を請け負う世界最大の電子機器受託生産サービス(EMS)企業である。なお、鴻海精密工業は米フォーチュン誌の世界企業番付「Fortune Global 500」2015年版の31位(2014年版では32位)にランクされている。<注>

<注>2015年版で鴻海精密工業の同業者は、韓国サムソン13位、米国アップル15位。ちなみに、日本企業で最高位のトヨタ自動車は9位。

鴻海精密工業は1988年に富士康の名義で対中投資を行い、広東省“深圳市”に最初の工場を建設した。その後、冨士康の業績は順調に拡大したことから、深圳工場だけでは生産が需要に追い付かず、同じ広東省で深圳市に近い“恵州市”、“中山市”、“仏山市”などの珠江三角州周辺に工場を建設したが、さらなる増産の必要性から中国各地に工場を建設し、今では中国全土に合計35カ所もの工場を持つに至っている。工場数の増大に伴い工員数も飛躍的に増大し、中国国内だけで最高時は150万人に達していたと考えられている。

 鴻海精密工業が上述した世界企業番付「Fortune Global 500」に初めてランクインしたのは2005年版で371位であった。この輝かしき栄誉を礎として、さらに上位を目指して業績の拡大を図っていた富士康科技集団を突然襲ったのが、2010年1月から11月までの11か月間に連続して発生した14件の工員飛び降り事件だった。

若手工員14人が飛び降り

 最初の事件が発生したのは1月23日の早朝だった。深圳市“宝安区”にある富士康の“華南培訓処(華南訓練所)”の宿舎で19歳の工員“馬向前”が階段の上り口で死亡しているのが発見された。警察は馬向前の死因を高所から墜落したことによる外傷性ショック死と断定したが、これは宿舎の高い所から飛び降りたということを意味していた。しかし、馬向前の遺族は馬向前がすでに会社へ辞表を提出済みで、2月9日には富士康から去る予定だったとして、警察発表の死因に異議を唱えてメディアに訴えたことから事件は大きく報じられ、冨士康は世論の厳しい追及の矢面に立たされることとなった。但し、メディアが事件を大きく報じた裏には、冨士康が台湾の投資企業であることも大きく影響していた。

 この事件を皮切りとして、わずか11か月間に工員の飛び降り事件が合計14件発生したのだった。その内訳は、3月11日(飛び降りた工員の年齢・性別:20歳・男)、3月17日(不明・女)、3月29日(23歳・男)、4月6日(19歳未満・女)、4月7日(18歳・女)、5月6日(24歳・男)、5月11日(不明・女)、5月14日(21歳・男)、5月21日(21歳・男)、5月25日(29歳・男)、5月26日(23歳・男)、8月4日(22歳・女)、11月5日(22歳・男)であった。なお、彼らが飛び降りた結果は死亡12件、負傷2件であったが、このうち自殺あるいは自殺の可能性と判断されたものは8件で、不明が4件だった。

 上記から分かるように飛び降りた工員は“80后(1980年代生まれ)”あるいは“90后(1990年代生まれ)”と呼ばれる若者であり、彼らの全てが農村の出身者で、冨士康へ入社してから時間はそれほど経過していなかった。彼らは富士康の厳しい管理体制の下で機械のように単純な生産作業に長時間従事することで精神のバランスを崩し、思い詰め、逃げ場を求めて飛び降り自殺に走ったものと考えられる。

employees in a Chinese manufacturing

2010年、若手工員の連続飛び降り事件が発生した際、鴻海は広東省の工場を国内外のメディアに公開した(写真=ロイター/アフロ)

2010年当時の調査によれば、富士康の給与は的確に支払われていたし、工員に対する福利厚生も他社に比べて遜色のないものだった。但し、労働環境は非人間的な単純作業の繰り返しであり、トイレに立つ回数すら制限する奴隷労働に近いものだった。富士康の本拠地である深圳市の工場では、わずか3平方キロメートル足らずの土地に40万人以上の工員がひしめき、退勤時間には深圳市で最も繁華な地区以上に込み合う様相を見せていた。富士康が工員に求めるのは、ひたすら速度と効率であり、生産ライン上では、自由な発言や携帯電話を受けることは禁止され、交代者が来ない限り持ち場を離れることは許されなかった。これに加えて、工員を監督する現場管理者の態度は極めて悪く、横柄であった。工員が命令に従わない時には暴力を振るい、暴言を吐き、首にするぞと脅して従わせる。要するに富士康の職場には働くことの喜びもなければ、夢も希望も見い出せなかった。

 中国がまだ貧しかった時代に生まれ育った“60后(1960年代生まれ)”や“70后(1970年代生まれ)”の工員たちは、富士康のような外資系企業の工場で働くことで、国内企業よりも良い給与を得ることに喜びを感じた。しかし、物心付く頃に中国が飛躍的な経済成長を遂げた“80后”や“90后”の工員たちは、一人っ子政策が生み出した「一人っ子」であるために親に大切に育てられた。このため、彼らは厳しく単調な労働に耐える力が無かったし、深圳市のような大都市の生活に憧れる抱いて富士康へ入社したのだった。そうした彼らが夢と現実の乖離に絶望を感じて、飛び降り自殺を図ったことは想像に難くない。

3年以内に100万台のロボットを導入

 メディアは富士康で起こった14件の連続飛び降り事件を“14連跳”と名付けて、富士康叩きに狂奔した。富士康は全ての工員宿舎に自殺防止ネットを設置し、70人の心療内科医を常駐させることで、工員の飛び降りを抑止する措置を講じた。その後、富士康は工員に対する大幅な賃上げを実施し、1日当たりの超過勤務を3時間に制限する規定を作ることで、“14連跳”による企業存亡の危機を乗り越えた。この“14連跳”を契機として、2011年頃に鴻海精密工業の創業者で、鴻海精密工業と富士康の“董事長(会長)”を兼ねる“郭台銘”が提起したのが、機械が人に取って代わる“機器人(ロボット)計画”だった。郭台銘は3年以内に100万台のロボットを導入して富士康の生産ラインを改良すると公言したのだった。

 郭台銘がロボット開発計画を提起したのは2006年だった。彼は米国マサチューセッツ工科大学から技術者グループを招聘して富士康の生産ラインに適合するロボットの開発を要請した。2007年には富士康の「AR(Automation Robotics:自動化ロボット)事業部」を深圳市に発足させ、本格的に工業用ロボットの研究開発をスタートさせた。2008年には開発された富士康製ロボットを生産ラインへ投入してテストを行い、2009年には“Foxbot”と命名された富士康製ロボット15台が完成し、塗装、組立、運搬などのラインに配備された。こうした過程を経て、郭台銘は日産1000台のペースでロボットを生産すれば年間30万台という確信を持ち、2011年に3年以内に100万台のロボット導入を公言したのだった。

2015年5月24日付の上海紙「新聞晨報」が報じた富士康の関連記事によれば、富士康は2010年から2015年5月までに、3億元(約51億円)を投入して昆山工場生産ラインの自動化改造を進めており、すでに採用している自主開発のロボットは2000台以上に上っている。同紙に掲載された富士康の自主開発ロボットには、“富士康深圳一号”の文字が書かれていた。

 上記の記事には、“中国機器人産業聯盟(中国ロボット産業連盟)”の統計データが紹介されていた。同データによれば、2014年に中国市場で販売された工業用ロボットは約5.7万台で、前年比で55%増大した。5.7万台は全世界の販売量の4分の1を占め、中国は2013年・2014年と2年連続で世界一のロボット市場となった。このうち、中国の国内企業のロボット販売量は1万6945台で前年比76.6%の増大、外資企業のロボット販売量は約4万台で、前年比47%の増大であった。

中進国の罠に、はまり込む

 上述したように、中国では人間に取って代わるロボットの導入が積極的に進められているが、その大部分は設備投資の資金に余裕がある、あるいは、資金を借りる能力のある大企業が主体である。これに対して、中小企業は銀行からの借入は困難で、資金調達能力に限界があるため、ロボットを導入したくてもできない状態にある。こうした状態が進めば、ロボット導入を果たした大企業はますます富み、導入ができない中小企業はますます窮することになり、企業間格差はより一層拡大しよう。

 一方、ロボット導入が進めば、大量の工員たちが職場を追われ、失業者が増大することは火を見るよりも明らかである。中国では経営破たんしながら政府や銀行の支援を受けて存続している国営のゾンビ企業を整理する方針が出され、数百万人規模の失業者が出る可能性が高い。ロボット導入はさらなる失業者の増大を加速させることになるが、中国政府はこうした失業者にどのように対処する積りなのか。その根底にあるのは、中国政府が最低賃金水準を年々大幅に引き上げたことによる賃金上昇が企業業績を悪化させ、人件費節約のためにロボット導入を余儀なくさせたことにある。

 こうして見ると、中国が中進国の罠(わな)にはまる可能性は極めて高く、容易には罠から抜け出せないように思えてならない。

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