『『炎黄春秋』停刊宣言は中国の良心の断末魔 右派知識人排除の先に待つのは、絶望への下り坂』(7/27日経ビジネスオンライン 福島香織)について

7/28~7/30まで万座温泉に出かけました。湯質が非常に良く、何度もお風呂に入ったり、出たりしました。長期滞在して湯治する人もいて、80過ぎたお婆さんで、熱海で旅館を経営されている方も1ケ月の湯治に来ているとのことでした。建物は古いのですが、食事はバイキングで野菜が美味しく、お腹いっぱい食べられます。また行きたくなるところでした。

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万座温泉日進館

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対面に見える禿山、硫黄分のせいで植物は育たず

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日進館の源泉、硫黄泉で近くは立ち入り禁止でした

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禿山の上から見た日進館

さて、本記事ですが、福島氏は最後に「「炎黄春秋」停刊宣言は、中国の良心の断末魔であり、中国の未来が絶望の坂を転がり始める、ポイント・オブ・ノーリターンのように感じた。」と述べています。共産中国に言論の自由を求めるのは、八百屋で魚を求めるのに同じで、あり得ない話です。共産党支配をなくさない限り中国人には幸せは来ないという事ですが、果たして今の中国人でそれをどれだけ自覚している人間がいるかどうかですが。自己中が多いので。

人類の不幸が中国国内だけに留まるだけならまだしも中共は世界制覇に向けて着々と準備を進めています。ASEANも日本もチベット、ウイグル、モンゴルのように侵略されるのが嫌であれば、大同団結して中国の野心を挫かないとダメでしょう。日本政府・官邸も沖縄に中国が手を伸ばしてきているのにもっと危機感を持たないと。沖縄独立運動は裏で中国が金を出していると思います。「琉球民族独立総合研究学会」なるものも中国が作らせたのでしょう。中国国内でも「琉球・沖縄最先端問題国際学術会議」なるものを作ってPRし出しました。日本の外務省は何もせず。腐った組織です。米大統領がトランプになり、日米同盟破棄となった時に日本は中国の軍門に下るつもりでしょうか?温泉地でケント・ギルバート&ロバート・D・エルドリッジの『危険な沖縄』を読みました。日本の左翼は良く「米国の戦争に巻き込まれる」という言い方をしますが、国際関係論の中では「見捨てられるか、巻き込まれるか」のどちらかとエルドリッジ氏は言っています。ノホホンと暮らし、左翼プロパガンダ紙の言うように生きれば間違いなくなく中国の属国です。日米同盟を確固たるものにするには「自国は自国民が守る」ことを決意し、そのため国民一人ひとりができることから行動すべきです。

liberation of Okinawa in China

http://www.mag2.com/p/news/212497

記事

1991年の創刊以来、中国知識人の良心を代表するとして愛読されてきた中国の改革派雑誌『炎黄春秋』がついに停刊に追い込まれた。おそらくは文革発動50周年に関する5月号の記事が最終的なきっかけとなったのだろう。習近平政権になってから何度も停刊危機がささやかれたが今年7月17日になって、社長だった杜導正の署名で停刊声明が出された。過去25年19回にわたって当局から圧力を受け続け停刊の危機に瀕しながらも耐え続けた雑誌が、このタイミングで停刊に追いやられた背景に何があったのか。炎黄春秋停刊から見えてくる中国の未来を考える。

当局による雑誌社乗っ取り

 停刊声明は、このような文面だった。

 「7月12日、中国芸術研究院が一方的に炎黄春秋雑誌社との契約書「中国芸術研究院と炎黄春秋雑誌社協議書」を破毀し、わが社指導機構の総入れ替えを宣言したことは、憲法第35条が与えた“公民の出版の自由”の権利を厳重に侵犯するものである。また明確にわが社の人事、出稿、財務における主権を約定している協議書にも違反している。7月15日、中国芸術研究院が派遣した人員がわが社に強硬に侵入すると、『炎黄春秋』のオフィシャルサイトのパスワードを盗み取り変更し、我らが雑誌の基本的編集出版条件を喪失させた。

 これに鑑み、炎黄春秋雑誌社委員会の討論を経て決定したことは、きょう7月17日即日停刊し、今後いかなるものも『炎黄春秋』名義で発行する出版物は、“本社”と関係ないこととする」

 これはどういうことか。炎黄春秋の主管は一昨年から国務院文化部直属機関である中国芸術研究院となり、その主管機関の研究院がいきなり25年間、社長を務めていた杜導正を解任し、人員を派遣して、編集局を占拠し、雑誌社の資産800万元を差し押さえ、資料や荷物を勝手に運び出し、オフィシャルサイトのパスワードを奪い勝手に変えて、雑誌社から編集権、出版権を奪ったわけだ。そして幹部、編集者を総入れ替えして、雑誌の性質を完全に変えてしまおうと試みたということだ。ちょうど杜導正が妻を看取り、体調を崩して入院したスキをついての、当局による雑誌社乗っ取り事件である。

杜導正はこの声明発表の直前、香港有線電視のインタビューに答えて「これは“公開強盗”と変わらない」「いや文革大革命と全く一緒だ」と激しく非難した。そして、弁護士を立てて、当局のこの無法に抵抗すべく、訴訟の準備をしているという。

 炎黄春秋という雑誌は創刊以来、何度も政治的に敏感なテーマを取り上げてきたアグレッシブな改革派誌だ。もともと天安門事件で失脚した趙紫陽に近い党中央老幹部たちが創刊。当初の主管は解放軍長老・蕭克上将が主導した中華炎黄文化研究会で、研究会の機関誌という体裁だった。このため共産党中央宣伝部がこの雑誌の人事や編集に直接介入できず、編集権の独立がかなり守られていた。社長の杜導正は今年93歳の老体だが、国務院新聞出版総署長などの閣僚経験者で現在の政治局常務委員・劉雲山(思想宣伝担当)の上司に当たる。

「八つのタブー」を守りつつ

 創刊当初は中道左派に位置するポジションだったが2001年2月25日、習近平の父親である開明派(中国的には右派)習仲勲が「炎黄春秋、弁得不錯(炎黄春秋はすばらしい)」との賛を贈ったことから、これを「丹書鉄契」(特権を付与されたというお墨付き)として、次第に右派色を強め、政治体制改革や文化大革命などの敏感なテーマに関する切り込んだ論評や史実の掘り起こしを特色とするようになっていった。

 主に中国共産党史、軍史、国史の重要な歴史事件の当事者の回顧録を通じて、近代史を見直し、中国共産党の歴史的錯誤、例えば飢饉や文革などに対する検証を行い、未来のよりよい党政にフィードバックさせることが目的だ。重大な理論問題や中国の発展方針を示唆するオピニオンも多く載せ、特に政治改革に対しては積極推進派の姿勢を示していた。

 もちろん体制内雑誌としての守るべき一線は心得ていた。雑誌社と当局の間では「八つのタブー」が決められていたという。その八つのテーマとは①軍の国軍化問題②三権分立③天安門事件④党・国家指導者及び家族の批判・スキャンダル⑤多党制⑥法輪功⑦民族・宗教問題⑧劉暁波――。習近平政権以降は⑧は劉暁波から憲政に変わった。それ以外は、雑誌で取り上げてよいということになっており、炎黄春秋はこの八つのタブーを守りながらもぎりぎりのところを狙った原稿を果敢に掲載してきた。

 たとえば天安門事件は八つのタブーに入っているが、天安門事件で失脚した故・趙紫陽の手記や回想録を最初に中国国内の公式メディアで取り上げたのはこの雑誌だ。天安門事件そのものに触れないが、趙紫陽をポジティブに取り上げることで天安門事件にかするようなエッジボール記事を掲載したのだ。

 最近では習近平の個人崇拝傾向にもどこよりも早く警鐘を鳴らしてきた。もちろん習近平を直接批判するような記事ではないが、ロシア語から翻訳された「個人崇拝」の元の言葉について劉少奇が「個人迷信」と翻訳すべきだと主張するものの毛沢東に却下された歴史エピソードなどを載せれば、個人崇拝の危うさを伝えるには十分だろう。炎黄春秋はそういう高度な洞察ができる知的レベルの高い読者を想定した雑誌だった。

しかしこうした果敢な記事を何度も載せてきたせいで、党中央宣伝部からは何度も強い圧力を受けてオフィシャルサイトが閉鎖されたり、雑誌の印刷や配送が妨害されたりした。停刊の危機にさらされたのは、わかっているだけで19回に及ぶ。だが顧問に元毛沢東秘書の李鋭や、農村改革の父として習近平も地方幹部時代に教えを請うた杜潤生を抱え、党の老幹部らの支持も広くあり、中国国内および党内高級幹部の良識的知識人にも愛読者が多いことが幸いして、これまで何とか耐え抜いてきた。

「南方週末」は全面降伏

 共青団派の政治家もおおむね支持者だ。2008年にこの雑誌の最大の庇護者であった蕭克が死去、その年の12月に趙紫陽についてポジティブに取り上げた記事が原因で、社長の杜導正が江沢民派(党中央宣伝部)から猛攻を受けて失脚しそうになったとき、最後に彼を守ったのは胡錦濤だ。ウィキリークスが後に漏らした米大使館公電の中にその詳細があった。

 こうして時の権力者や党の老幹部たちの強い庇護もあって、圧力を受けるたびにそれをはねのけ、部数を伸ばし、最近の発行部数は20万部に上っていた。南に南方週末あれば、北に炎黄春秋あり、そういわれた中国の数少ない良心的メディアだった。

 習近平政権になってこうした良心的メディアに対する弾圧が激しくなり、南方週末は2013年春節特別号の「社説差し替え事件」をはじめ度重なる報道弾圧を受け続けた。また習近平政権は炎黄春秋の編集権にも介入しようとし、老齢の杜導正に引退を迫った。杜導正は2014年10月、同誌をしっかり守れる後継の社長に、開明派政治家・胡耀邦の息子であり、習近平とも話をつけられる胡徳平をつけようとしたが、習近平からの圧力を受けた胡徳平がYesと言わなかった。

 2014年暮れに同誌の主管は文化部傘下の芸術研究院に変更され、いよいよ、雑誌の命である編集権が奪われようとしていた。こういったごたごたの中で、2015年7月に長年編集長を務めていた楊継縄が圧力に屈する形で辞任。彼が2015年の間に雑誌に掲載した記事のうち37本が事前の許可を受けなければならない内容であったと、当局から警告を受けたことを最後の読者への手紙で明らかにしていた。続いて、顧問の杜潤生が2015年10月9日、102歳で死亡、今の党中央指導部にも、影響力を持つような良心的知識人が次々鬼籍に入り、炎黄春秋を守れる立場の人がいなくなってしまった。

 南方週末は、2015年12月3日に「習近平改革三年」と題したごますり長編記事を掲載、これをもって国内外知識人は南方週末が習近平政権に全面降伏した、とささやいた。そして、「炎黄春秋」が習近平に屈するのも時間の問題となっていた。

炎黄春秋の代理人を引き受けている弁護士・莫少平がロイターやRFI(フランス国営放送)などのメディアに語っているところを総合すると、炎黄春秋は目下、中国で唯一真実を語る雑誌であるが、今の共産党はその存続に耐えられないでいるという。弁護士として提訴する努力は続けているが、裁判所は根本的に提訴を受理する気はない。しかも弁護士にまで、警察や国内安全保衛局などから強い圧力がきているという。

 今回の当局のやり方は違法性が高く、悪質であり、社会秩序擾乱に抵触する。公正な法的プロセスを経て、雑誌の復刊と救済が望ましいが、それができるかは今のところなんともいえない、としている。

 また炎黄春秋雑誌社委員会内部筋の話では、「まず停刊して、条件を満たせば復刊の可能性もあるが、条件を認めてもらえねばそのまま廃刊になる」という。杜導正はかつて「玉砕瓦全」(堕落するくらいなら玉砕を選ぶ)と語り、炎黄春秋のプライドを失うくらいなら、中国当代雑誌史上に一部の栄光を残したまま、停刊する選択をする、という姿勢を示していた。今の状況ではそれが現実になりそうだ。

父が賞賛した雑誌に、息子がトドメ

 顧問の李鋭が一部メディアに語ったところよれば、以前に炎黄春秋の主管部門の紛争について、党の老幹部たちが意見書を習近平に送ったところ「封鎖しないで、引導せよ」という指示を出したという。つまり、管理組織の改編によって雑誌の編集方針を当局の都合に合うように変えよ、ということだ。今行われていることは、まさしく習近平政権の方針だと言える。習近平の父親が「すばらしい」と褒めたたえた雑誌に息子の習近平がトドメを指すわけだ。

 炎黄春秋の停刊は、一つの雑誌の終焉というだけではなく、おそらくは中国共産党内右派の敗北、そして排除につながる、中国の行方の左右を決する歴史的な事件といえるだろう。

 この半年、何度か私的に匿名を条件に中国のメディア関係者や知識人との意見交換を行っているが、共通して訴えているのは、文革以来の厳しい知識人弾圧、メディア弾圧が起きているということである。江沢民政権時代、胡錦濤政権時代に許されていた「エッジボール」といわれる、共産党メディアとしてのタブー報道ラインにぎりぎりかするような記事は今ではすべてアウト判定になる。それどころか、明白にコートに入っているボールですら審判は、打ち手が気に入らなければアウトの判定を下して失脚させる状況であり、それはまるで文革時代の右派狩りに似ている。

 なぜそうなっているのか。

それは習近平政権の目指す方向に少なくとも、従来の中国、胡錦濤政権時代に可能性が検討されていた政治改革の目がないからだと思われる。習近平政権樹立後、炎黄春秋内部の改革派知識人たちの仲には、習近平は「隠れ改革派である」という根強い希望的観測があった。実際、習近平は胡徳平とも昵懇であった。

メディア統制の先は、破たん

 だが、その後3年の知識人に対する迫害の事実をみると、その可能性はゼロだということが誰の目にも明らかになった。最近、習近平の内部講話集というものを読み返しているのだが、その中で習近平はこんなことをいっている。

 「私はゴルバチョフのようにはならない。…皆、旧ソ連共産党の失政を歴史上の教訓として学ばねばならない」「政治体制改革はいったん始めればもう、後戻りはできず、またコントロールも不可能になる。その時、私が総書記でおられるか、党の指導的地位を維持できるかわからない。簡単に改革に手を付けて、誰が責任をとるのだ」(2013年2月27日 中南海)。

 中国を旧ソ連のようにしない、政治改革を行わない、という方針は実は習近平は幾度となく主張しており、そのために、軍権を掌握すること、ありていにいえば軍事と政治を一元化することが必要だと何度となく訴えている。胡錦濤政権時代まで党内の隠れたテーマであった解放軍の国軍化問題は完全に封印され、むしろ党と軍の一体化を習近平は目指している。

 今、習近平にとって目障りなのは、改革を期待する勢力、つまり右派知識人であり、右派知識人が集まるメディアである。彼らを弾圧して排除し、世論をコントロールするためのメディア統制を強化しつつ、軍制改革や南シナ海などでの対外強硬姿勢を利用して党と軍の一体化を進め、共産党の執政と指導的地位を維持していく、それが習近平のシナリオではないか。

 だが、そういうやり方では、中国経済が回復に必要な条件である法治の徹底や市場の自由化は遅れ、あるいは逆進し、経済失速に歯止めがかかることは習近平政権が続く限りないだろう。共産党体制は力技で維持できても、息詰まるような言論弾圧の中で、経済も悪化すれば、人々の不満が募る。その不満を対外戦争の興奮に誘導にするにしても、強力な治安維持力によって抑え込むにしても、そういうやり方では、必ずどこかで国家は破たんする。

 「炎黄春秋」停刊宣言は、中国の良心の断末魔であり、中国の未来が絶望の坂を転がり始める、ポイント・オブ・ノーリターンのように感じた。

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『裁定が出ても中国が一歩も引くわけにはいかない理由 「無謬性」の虜となった習近平』(7/25JBプレス 阿部純一)について

習と毛の近似性を筆者の阿部氏は捉えています。共産党政権の初代が毛沢東なら、ラストエンペラーが習近平となるかも知れません。「無謬性」が唱えられるのは絶対神だけで、小賢しき人間が言えるハズもありません。そういう自覚が習には欠けているのでしょう。驕りは身を滅ぼします。

中国の政権が考えているのは「中国共産党の存続が第一で、後のことは重要性から言って大したことがない」と織田邦男氏が言っていました。当然、中国国民のことはどうでもよく、共産党の延命のためには自国民だって簡単に虐殺できるという事です。ですから毛沢東が大躍進・文化大革命を、鄧小平が天安門事件を起こすことが平気でできた訳です。習近平は何事件を起こすのでしょうか?中国大陸は共産党と言う寄生虫に寄生、乗っ取られています。中国国民も気づいていないのでしょう。人民解放軍は共産党の軍隊ですので簡単に国民を殺すことができる訳です。

ASEANの全会一致の原則は逆に結束を弱めることになるのでは。共同声明で中国を名指しして非難できないようでは中国の思いのままになるだけです。南シナ海は中国のものになるでしょう。自分の国の領土・領海は自分で守る努力をしなければなりませんが、ASEANの各国が一国で中国に立ち向かっても個別撃破されるだけです。属国にされて初めて気が付くのかもしれませんが。中国の鼻薬が効いているのでしょう。フィリピンもドウテルテ大統領になってから態度が怪しくなってきています。

7/27日経に小原凡司氏は「軍事拠点化今後も続ける・・・中国は9月に杭州で開く20カ国・地域(G20)首脳会議までは過度な挑発行動は避けるかもしれないが、今後も南シナ海で軍事拠点化する動きは続けるだろう。南シナ海で防空識別圏(ADIZ)を設定する可能性はある。米軍が中国の人工島の12カイリを航行する「航行の自由作戦」に対しては中国海軍に行動基準があるはずで、挑発的な行動には出ないだろう。東シナ海で積極的な動きを見せることは考えられる」と述べています。米軍と戦えばすぐにも中国海軍は壊滅しますし、日本は憲法9条の制約があることを知り抜いているので、ロックオンなどの挑発行動を活発化させるという事でしょう。ヘタレオバマは何もできないし、トランプはアメリカ・ファーストで中国にそれほど関心がないし、ヒラリーに至っては中国の賄賂付けになっているので足元を見てドンドン傍若無人に振る舞っていくのでは。気づいたときには手遅れになっているのかも。

記事

Philippin Embassy in Beijing

北京でフィリピン大使館につながる道路を封鎖する中国の警官(2016年7月12日撮影、資料写真)。(c)AFP/NICOLAS ASFOURI〔AFPBB News

7月12日、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、フィリピンによって提起された南シナ海の国際法上の解釈をめぐる裁定を下した。裁定は中国の主張をことごとく否定する内容であり、中国側の「全面敗訴」と言っていい内容であった。

中国はフィリピンの常設仲裁裁判所への提訴そのものを不当なものとし、裁判への参与も行ってこなかった。事前の予想で、中国に不利な裁定となることは予想されていたが、それは中国も織り込み済みのことであっただろう。

ただし、中国側が主張してきた「古来中国のものであった」ことを根拠に、南シナ海の管轄権の範囲を示す「九段線」についてまで裁定が及ぶとは想定外だったかもしれない。

裁定が出ても一歩も引かない中国

中国は不利な裁定が出ても対応できるように、中国側の南シナ海をめぐる主張に賛同する国家を多数集める工作に励んできた。同時に、自らの主張の正当性を改めて強調するための「白書」まで多言語版で用意していた。

中国によれば、南シナ海における中国の立場を支持する国は70カ国に上るとされている。だが、その多くが南シナ海の領有権をめぐる問題に関心のないアフリカ、中東、中央アジアの国々である。その中にはインドも含まれていたが、インド政府は「すべての関係国に対し、仲裁裁判所への最大限の敬意を示すよう求める」との声明を発表しており、中国の立場を支持などしていないことが分かる。70カ国の支持というのは、かなりの誇張が盛り込まれていると見てよい。

常設仲裁裁判所の裁定では、中国の主張する九段線の「歴史的経緯」は根拠なしとして否定され、南沙諸島には「島」はなく「岩(礁)」と満潮時には水没する「低潮高地」があるだけであり、「岩(礁)」は領海12海里を宣言できるが排他的経済水域(EEZ)は設定できず、「低潮高地」はどちらもその権限を持たないとされた。要するに、中国の主張する南シナ海の管轄権が否定されたのである。

問題は、中国はいかなる裁定が出されようとも、南シナ海問題で一歩も引かない姿勢を貫く意思を明確にしていたことである。

そこまで中国が決意した背景は何なのか。

それは「党・指導者の無謬性」へのこだわりであり、ひいては習近平主席を「常に正しい判断をする指導者」であることを確保するためであったと言っていいだろう。

「無謬性」にこだわり過ぎて政策が硬直化

今年3月、新疆ウイグル自治区のネットニュースサイト「無界新聞」に「忠誠なる共産党員」の名で習近平の政策的誤謬を羅列し辞任を求める「公開書簡」が出され、大騒ぎとなったことは記憶に新しい。

民主主義国家では言論の自由があり、政権批判など当たり前の現象だが、一党独裁の中国ではそれが許されない。党とそのトップリーダーは「常に正しい」ことにされているから、党や習近平を名指しで批判することなど許されてはいないのである。

「無界新聞」の件については、当局が血眼になって犯人探しを行ったことは言うまでもないが、いまだに首謀者は見つかっていない。

中国では、現在に至るも「無謬性」の神話が生きている。毛沢東は死後、文化大革命の責任を問われたものの、1981年の歴史決議で「功績第一、誤り第二」の結論となった。鄧小平に関しては、1997年に死去して今年で19年になるが、依然として1989年の天安門事件の責任さえ正式に問われてはいない。

では習近平の場合はどうか。「中華民族の偉大な復興」を「中国の夢」であるとする習近平主席は、東南アジアの「小国」に蚕食された南シナ海、とりわけ南沙諸島を「取り戻す」ことが自らに課せられた歴史的使命であるとともに、東アジア地域秩序を形成する盟主としての中国の地位確立にとってもきわめて重要な事業であると位置づけた。

そのために、これまで台湾やチベットなど「分離独立」の気配のある地域に限って使っていた「核心的利益」という修辞を南シナ海にも援用し、「領土主権に関わる問題について一切譲歩しない」姿勢を明確にしてきた。

つまり習近平政権は、南シナ海の領有をめぐる紛議に関して「退路を断つ」政策を強行してきたのである。南シナ海での中国の政策が「正しいもの」だとする「無謬性」へのこだわりが政策を硬直化させ、状況の変化に対し柔軟な軌道修正をする余裕を失わせてしまったと言える。

米中の緊張関係はさらに高まることに

今回の常設仲裁裁判所の裁定は、「南シナ海の島嶼が誰のものか」について明確にしていない。もともと裁定の目的はそこにはなかったわけであり、今回の裁定で、中国の南シナ海の島嶼の領有権の主張までは排除されていないのである。これは中国にとって幸いであり、中国にはこれまで通りの主張を展開する余地が残されたことになる。

とはいえ、国際法廷で下された「最終判断」は、それなりに重く習近平政権にのしかかる。いわば「国際的圧力」であり、今後中国が参加する国際会議で繰り返し「裁定順守」のプレッシャーがかけられることになる。

それにもかかわらず、「無謬性」を確保しなければならない中国としては、独自の論理で2つの行動を追求するしかないであろう。

第1に、国内対策である。今回の裁定は、広く国内でも報道されており、政権の主張を「鵜呑み」にすることに慣らされてきた人民に対し、国際社会の圧力に屈する姿勢は見せられない。下手に妥協すれば「裏切られた」人民による政権批判を招くからである。

一方、知識人を中心に、裁定を「中国外交の大失敗」と醒めた目で見る「民意」にも対抗しなければならない。いずれにおいても政権批判を封じ込めるには、習近平政権の「無謬性」を証明するために南シナ海における中国の拡張主義をさらに進めるしかない。

第2に、対外政策である。中国では内政がそのまま外交に反映されるから、外交も強硬路線で突っ走るしかない。領有権問題をめぐって中国は「裁定を棚上げした上での二国間協議」を主張するが、当事国であるフィリピンは言うに及ばず、もはやそんな中国に都合のいい条件で協議に応じる国はないだろう。

南シナ海における「航行の自由」作戦を展開する米国は、裁定を追い風にさらに南シナ海における米軍のプレゼンス強化を目指すかもしれない。また、裁定を歓迎する日本が南シナ海の航行の自由へ参画することを歓迎するであろう。それを嫌う中国は、日本を牽制するために東シナ海で緊張を造成するかもしれないし、南シナ海上空の「防空識別圏」設定を急ぐかもしれない。現状では、中国の空中哨戒能力は十分とは思えないが、域外国の干渉排除のため無理をする可能性は排除できない。

結局、南シナ海をめぐる常設仲裁裁判所の裁定は出たものの、それが南シナ海の緊張を解決するものとはならず、一層緊張を高める結果になりそうである。

裁定は確かに中国を窮地に追い込んだが、だからといって「引くわけにはいかない」中国と、海洋覇権国家・米国との雌雄を決する危険性は裁定前よりも高まっていると言えるだろう。

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『日本も直撃「失われる10年」 “ミスター円”が語る「分裂の時代」 重視すべきは、成長ではなく「成熟」』(7/25日経ビジネスオンライン 杉原淳一)について

7/26日経<上期輸出額大幅減、数量には回復の芽 問われる持続力、半導体・対米の動向カギ

日本の輸出に「デフレ圧力」が強まっている。財務省が25日発表した貿易統計によると、1~6月期の輸出額は前年同期比8.7%減と、6年半ぶりの大きな落ち込みとなった。新興国経済の減速に加えて円高が円換算の輸出額を押し下げている。数量ベースでは輸出が底打ちする兆しもあり、今後の持続力が試される。

amount of export for the first half in 2016 in Japan

1~6月期の貿易収支は、原油安で燃料輸入のコストが下がり1兆8142億円の黒字だった。輸出よりも輸入の減少が大きく、東日本大震災直前の2010年7~12月期以来、5年半ぶりに黒字を確保した。

単月でも輸出額は低迷している。6月の輸出額は7.4%減と9カ月連続で減少。通関ベースの為替レートが6月は1ドル=108円48銭と前年同月比で11.8%も円高に振れたことが輸出額を大きく押し下げた。

輸出の「実力」を示す数量の伸びからは、円高によるデフレ圧力が鮮明になる。為替変動の要因を除いて輸出の数量取引を示す日銀の実質輸出(季節調整値)は、6月に前月比で4.3%上昇。伸び率は中国の春節商戦が輸出を押し上げた15年1月(4.6%上昇)以来の大きさだ。4~6月期でみても2四半期ぶりにプラスに転じた。

シティグループ証券の相羽勝彦エコノミストは「熊本地震の挽回生産で、4~5月に落ち込んでいた自動車関連の輸出が回復してきた」と指摘する。同社の分析では、6月は米国向けが5カ月ぶりに増加するなど、東南アジア諸国連合(ASEAN)を除く各地域で増えた。ただ先行きは英国が欧州連合(EU)からの離脱を決めた影響や中国の過剰設備問題など不透明な要素が多く、「日本の輸出が基調的に増加しているとは言いがたい」(相羽氏)。

輸出が持ち直すかどうか、商品別で鍵を握るのが半導体など電子部品の動向だ。IC(集積回路)の輸出数量は15年7月以降、減少か横ばいが続いてきたが、6月に9.1%増と大幅に増加。SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミストは「先行指標となる米国や台湾のIT(情報技術)製品の指標は改善しており、輸出が持ち直す」と分析する。

地域別では米国向けの輸出が回復するかどうかに注目が集まる。財務省によると、6月の米国向け輸出数量は1年2カ月ぶりに前年同月比で増加。輸出が上向く可能性がある。

原油価格が足元で反転していることも輸出の押し上げ材料となりそうだ。通関ベースの原粗油の価格は1バレル45.3ドル。前年同月比で29.3%低下したが、前月比で見ると11.6%上昇した。低迷する中東経済や米国での資源関連投資に好影響を及ぼすとの見方もある。>(以上)

7/27日経<EUは生き残れるか(上)相次ぐ矛盾、存続の危機 国境管理の再導入は必至 竹森俊平 慶応義塾大学教授

6月23日の国民投票での英国の「欧州連合(EU)からの離脱」という選択は欧州には衝撃だった。ショイブレ独財務相は結果を受け「ともかく、問題を解決する能力がEUにはあることを示さなければならない。もし欧州委員会にできないなら、少数の国の話し合いで進めるべきだ」とインタビューに答えている。

stock price of Italian bank

Shunpei Takemori

シリア難民やテロリズムの問題は「国境審査の撤廃」をうたったシェンゲン協定により複雑化している。6年前に発生したギリシャ債務問題は未解決だ。今や銀行危機すら再燃しかねない。何も問題を解決できず、先送りするだけの無策ぶりが、英国をはじめ欧州国民の失望を生み、政治の不安定をもたらしている。

従来の統合戦略を見直し、必要なら後退すべきだ。一つの分野を選び、そこを超国家組織の管理下に統合すると、隣接する分野をなおも国家に管理させていては矛盾が生じるので、矛盾の解消のため、隣接する分野にも統合が及ぶというのがこの戦略だった。

例えば通貨だけを統合し財政を統合しないユーロは、矛盾を引き起こすと予想されていたが、矛盾はやがて財政統合により解消されると期待されていた。「統合の後退はできない」という前提がこの戦略の鍵だった。通貨を共通化して矛盾が生じるなら、自国通貨に戻す選択もあるはずだが、それには莫大なコストがかかるので、いや応なしに財政統合に進むというのだ。

だがユーロができてから金利低下を享受した一部の国が過剰な借り入れをしたため経済危機が起き、問題国が財政援助を必要としても、財政統合は進まなかった。ドイツなど財政に余裕のある国が援助を拒んだからだ。他方、ユーロ離脱の莫大なコストを勘案し、昨年ギリシャもユーロ離脱の直前で妥協した。欧州は前進も後退もできない状態に陥り、矛盾の山に埋もれた。

欧州統合からの離脱という後退については、過去グリーンランドという特殊なケースはあるが、域内総生産第2位の英国の離脱とは重要性が違う。「英国離脱」は欧州統合に、後退という選択を与えた。

英国経済の立場からすれば明らかに「残留」が賢明だった。英国が「ユーロ」「シェンゲン協定」を選択しなかったのは好判断だった。その一方で欧州の単一市場は、英国内で認可された金融商品をそのまま大陸欧州でも販売できる「パスポート制度」の恩恵を与えた。その恩恵を捨ててEUを離脱するのは無謀だ。

だが今回、EU残留を支持した地域は、特殊な事情のある北アイルランド、スコットランドを除くとロンドン市だけだ。つまり英国社会は、グローバル化で金融業が潤うロンドンと、恩恵が少ないそれ以外の2つに分裂していた。そこで国民投票を実施するのは、ガスの充満した部屋でマッチを擦るのと同じだった。

事実、大爆発が起き、国民投票後、英国社会の分裂が鮮明になる一方、二大政党とも指導体制が混乱する。今後EU離脱交渉を進めるには、リスボン協定第50条による離脱申請が必要だが、混乱により申請まで時間がかかろう。

英国には、金融業に利益となる単一市場は維持したいが、移民の管理もしたいという思惑がある。EUは、単一市場には労働も含まれ、移民の管理だけを認めるわけにいかないと考える。

加えて、英国のメイ新首相はスコットランド独立のための再度の住民投票は認めないが、EU離脱についてはその同意を重視すると公言する。スコットランド行政府のスタージョン首相は、英国がEU離脱をするなら、住民投票を再度実施すると公言する。どちらの場合も、両方の立場に折り合いのつかない矛盾があり、解決策がみつけにくい。

もっとも、EUに残留すればほとんどの矛盾は解消するから、「メイ首相の本音は残留」という解釈も可能だ。

いずれにしろ時間を置けば、方針がいつまでも決まらないことで余計に困る側が折れ初めて決着に向かう。EUと英国の駆け引きでは、金融業での外国企業の撤退を恐れる英国が先に折れるという観測が強いようだが、EUにも銀行業、とりわけイタリアの銀行業という弱みがある。

現在イタリアの銀行が抱える不良債権は約40兆円にのぼり、自己資本の減少を招いている。特に第3位のモンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ(MPS)は資本不足の懸念から、今年に入り株価が下落している。さらに国民投票の結果を受けて金融市場が不安定になって以来急落した(図参照)。

EUでは今年できた銀行ルールで、国が銀行に公的資金を注入する際には、国民負担の軽減のため、銀行債などの減免が義務付けられている。国内銀行の銀行債依存が大きいイタリアの政府はこれを嫌い、主力行の出資で民間ファンドをつくり、資本注入を代行させる計画を進めてきた。しかし主力行にも余裕がなくファンドの資本金が不十分なため、問題の解決は遠い。

最近、イタリア政府は銀行危機回避のため、ルールを無視してでも公的資本の注入を断行する姿勢をみせている。

イタリアで銀行危機が起きた場合、欧州だけでなく世界経済に及ぼす影響は甚大だ。英国では、イタリアの銀行危機を見越して、今後のEUとの駆け引きの切り札にすべきだという議論が盛んだった。EUは英国との交渉を考えても銀行問題を放置できない。

結局、欧州中央銀行(ECB)が、欧州銀行のストレステストの結果を発表する7月29日の前後に、イタリアの問題行への、銀行債の減免なしでの公的資金の注入が特例として認められるというのが市場の予想のようだ。それを反映してイタリアの銀行株は反転している。銀行問題への対応は、まさにショイブレ財務相が指摘するEUの問題解決能力を示す試金石になる。

英国に続き、EUを離脱する可能性が一番高いのもイタリアといわれる。だがユーロ圏の国の離脱は通貨ユーロからの離脱も意味し、国内通貨の入れ替えが必要だからハードルは高い。政府が離脱をにおわせば、国民は信用のあるユーロ紙幣の確保に走り、預金の取り付けが起きる。対応策がなければ離脱は無理だ。

他方、シェンゲン協定を停止し、各国が独自に国境管理を再導入するのは不可避になりつつある。7月15日のトルコでのクーデター未遂事件をきっかけに、バルカン半島ルートをたどったシリア難民の流入が再開しそうだからだ。

昨年ドイツには100万人を超える難民の流入があり、歓迎の姿勢を示したメルケル独首相の支持率を急落させた。その後EUとトルコの間で、トルコ国民のビザ(査証)なしでのEU訪問などの便宜を与えるのと引き換えに、難民をいったんトルコが管理する協定について合意ができた。それで難民数は激減した。

だがクーデター未遂事件後トルコのエルドアン大統領は民主主義の抑圧と反対勢力の弾劾を強めている。ビザなしでの訪問を認めた場合、今度は人口約8千万人のトルコから難民が押し寄せかねない。トルコとの難民協定が白紙になるのは確実だ。それでEUへのシリア難民が急増したら国境を設け、国ごとの方針で受け入れるしかないだろう。

現在のEUは、一つの厄介な問題を解決できても(実際には全くできていないが)、すぐ次の厄介な問題が発生するという状況だ。問題解決能力を飛躍的に高めない限り、存続は難しいだろう。

ポイント ○問題解決先送りする無策ぶりが失望生む ○EUもイタリアの銀行業という弱み持つ ○トルコとの難民協定は白紙になる公算大

たけもり・しゅんぺい 56年生まれ。慶大卒、ロチェスター大博士。専門は国際経済学>(以上)

榊原氏は旧民主党支持者で、円高賛成論者のイメージがあります。1$60円の円高を予想しました。浜矩子氏のように1$50円の円高説を唱える現実を見ない学者同様です。6/26日経記事を見ますと、やはり、日本では純輸出でもGDPの数字を稼いでいるのが分かります。円高になれば日本の企業の利益が円換算で減り、社員や株主への還元も減り、消費にも影響を与えます。所得収支でも円高になれば日本に還元する時点で目減りします。急激な円高や円安は望ましくありません。

http://thutmose.blog.jp/archives/60349371.html

竹森・榊原両氏の記事はEUの終わりの始まりという気がします。やはり人工的に作った擬制国家には無理が付きまとうという事でしょう。通貨統合しても財政統合は難しいと両氏とも主張しています。これではドイツの独り勝ちになるだけです。他の国から不満が出て、離脱する国は増えて行くのでは。ユーロから自国通貨に戻すハードルは高いと竹森氏は言っていますが。竹森氏はシェンゲン協定も崩れていくとの見通しです。人・物・金・情報の自由な移動を主張してきたグローバリズムが敗れ、ナショナリズムの世界に戻っていくという事でしょう。ショービニズムなしで真の多文化尊重の姿勢があればナショナリズムの方が自然です。

英国の国民投票の結果は日本の憲法改正の国民投票の危険性も示唆しています。政府が国民にキチンと説明して受け入れられる時期まで待たないと否決される可能性が高くなります。特に偏向マスメデイアの影響を高齢者は受けやすいので。政府は中国の脅威について正確に国民に伝えていかないといけないでしょう。北野幸伯氏メルマガに例が挙がっていましたので紹介します。

http://jp.sputniknews.com/japanese.ruvr.ru/2012_11_15/94728921/

記事

日経ビジネス7月25日号は「英離脱後の世界 日本も直撃『失われる10年』」と題した特集で、欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国の現状と、今後の世界経済に与える影響を分析した。  欧州に亀裂を生んだ通貨統合の問題や、世界経済が抱える低成長という共通課題について、元財務官で「ミスター円」の異名を持つ榊原英資・青山学院大学特別招聘教授に話を聞いた。

(聞き手は杉原 淳一)


 

Eisuke Sakakibara

榊原英資氏(さかきばら・えいすけ)。 1941年生まれ。東京大学経済学部卒、65年に大蔵省(現・財務省)へ。理財局総務課長や国際金融局長(現・国際局長)などを経て97~99年に財務官。積極的な為替介入で円高を是正し、「ミスター円」と呼ばれる。榊原氏の次に財務官に就任したのが、黒田東彦氏(現・日銀総裁)だった。 (撮影:北山 宏一)

榊原:識者の目から見れば、あの選択は明らかに間違いなんです。キャメロン前首相の言っていたことの方が正しいわけですよ。でも、国民投票にしてしまうと、どうしても身近な問題に左右されて、単純化してこういう結果になってしまう。やっぱり、代議制というのはそれなりの意味があるんです。国民投票なんて、しょっちゅうやってはいけないんですよ。(笑)

英ポンドとユーロが相当値下がりしており、英国及び欧州には中長期的にネガティブな影響が間違いなく及ぶでしょう。英・欧州と貿易量の多い中国は、以前から成長率が下がってきていますから、これをさらに下押しする可能性があります。そうなってくると、ドミノ式に日本への影響も出てきます。

ドル円相場はいずれ1ドル=100円を突破すると思います。今は介入警戒感もあって何とかもっていますが、流れとしては緩やかな円高でしょう。さらに90円に向かうというのがいま想定されるシナリオです。為替介入もしにくいですしね。

「黒田日銀は年末までにもう一回、緩和する」

—財務官時代には積極的な為替介入に踏み切りました。介入の可能性についてはどうお考えですか。

榊原:単独介入は効き目がありません。だから米国の合意が必要になるのですが、今の為替水準では無理でしょう。市場に見透かされると、もう介入そのものが効かなくなる。介入の規模は、為替市場から見ればそんなに大きな額ではないです。だからこそ、「これが効くんだ」ということを何らかの形で市場に示さないといけないわけですよね。市場が「もう参った」と言うまでやらなければ介入なんて意味はないんです。

—日銀の黒田東彦総裁は「円安誘導ではない」と否定していますが、そうなると追加金融緩和に期待が集まりますね。

榊原:もう緩和効果が賞味期限切れなんですよ。2013年に黒田さんが就任して、当初の金融緩和は成功しました。円安・株高になったんですが、それが足元では逆に円高・株安になってきています。「金融政策を打ってもそれほど効かないだろう」という、雰囲気になってきてしまいました。

離脱問題を受けて円高が進むと、日本経済の予想成長率が下がるので、景気回復を後押しするための金融緩和だということになる。おそらく、年末にかけて黒田さんはもう一回、緩和するでしょう。でも、これは既に織り込まれていますよね。だから、市場の予想を上回るようなことをやらないといけないから、なかなか難しいでしょう。

やらないと、市場では逆にショックと受け止められます。円高・株安がさらに進行するような事態になりかねない。市場に押されて動くのを黒田さんは好まないでしょうけど、やらざるを得ないでしょうね。

大きな政府で再配分を

—アベノミクスでいう「第3の矢」、つまり成長戦略や構造改革の具体性がないという批判の声もあります。

榊原:成長戦略といっても非常に不透明ですよね。構造改革も、日本経済にはもうそれほど強い規制は残っていないんですよ。細かい規制はあるでしょうけど、それを除いたから効果がある、ということを実証している人はいません。

だからこそ「成熟戦略」が必要だと言っています。1%前後の成長を前提に、どういう政策を取るのか考えるべきです。1990年代に入ってからはずっと1%成長でしょう。それを3~4%にしようなんて無理です。先進国はみんな低成長、低インフレの時代に入ってきています。

今の低金利というのは世界的な現象で、16世紀ごろにもありました。でも、その時は技術革新や新たなフロンティアを開拓することで復活できましたが、今度はそれがないんです。

資本主義が新しいフロンティアを見つけてどんどん伸びていくという時代はもう終わったということですよね。そうなってくると、ゼロ成長の時代にどう適合するかが重要になってきます。

経済政策も配分の重要性が増します。欧州は既にそうですが、例えば消費税を20%取って、それを原資に再配分を進めるなどの施策が考えられます。日本もそういう局面に次第に入ってきているんだと思いますね。

EU分解の歯車が回り始めた

—統合通貨ユーロの存在が欧州に亀裂を生んだという見方もあります。

榊原:ユーロが誕生したことで欧州内の格差が非常に広がりました。例えば、ギリシャが旧通貨のドラクマで、ドイツがマルクであれば、一方が切り下がって、もう一方は切り上がることで調整できたわけです。

同じ通貨だとドイツの1人勝ちになってしまう。ただ、ユーロを解体するわけにはいきません。欧州統合の象徴ですから。理論的には、解決の道は財政統合しかない。しかし、違う国だからそれは非常に難しいと思います。ギリシャなど南ヨーロッパの国々には抵抗があるし、ドイツだって、逆にギリシャの面倒を見るのは嫌でしょう。

解はないが、元に戻るわけにいかない。そういう意味で、非常に欧州は難しい状況にあります。中途半端な統合でにっちもさっちもいかなくなったが、それでも問題を抱えたまま中長期的に走っていかざるを得ないわけです。

—今回の離脱問題を機に、EUはどうなっていくのでしょうか。また、米大統領選でドナルド・トランプ氏が共和党の候補に選出されるなど、自国第一主義を掲げる動きが広がっているように感じます。

榊原:世界的なトランプ現象でしょうね。つまり、トランプ氏は米国第一主義で、世界にどう貢献するかという発想が全くない。分離というか、分裂の時代になってきているということでしょう。欧州が第2次世界大戦後、70年近くずっと続けてきた統合の流れが逆転し始め、それが世界的な傾向になる可能性があるわけですね。

直ちにではないにしても、緩やかにEUが分解に向かう可能性があります。スピードは分かりませんが、少なくとも歯車はそっちの方向に回り始めたということです。

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『米大統領選に影を落とす人種差別と暴力の連鎖 権威ある機関は、早くも「クリントン圧勝」を予測』(7/25日経ビジネスオンライン 高濱賛)について

7/26朝9時のNHKニュースでは

トランプ氏 世論調査で僅かにクリントン氏を抜く

アメリカ大統領選挙に向けて、最新の世論調査の平均値で、共和党のトランプ氏の支持率が民主党のクリントン前国務長官を僅かに上回り、2人の争いが激しさを増しています。

アメリカ大統領選挙に向けて、政権奪還を目指す野党・共和党は先週18日から21日までの4日間、党大会を開き、トランプ氏が党の大統領候補として正式に指名されました。アメリカの政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」が25日出した最新の世論調査の平均値では、トランプ氏が44.3%、クリントン氏が44.1%とトランプ氏の支持率が2か月ぶりに僅かに上回りました。共和党の党大会前の今月17日に出された平均値と比べて、トランプ氏が3.7ポイント上昇したのに対し、クリントン氏は0.3ポイントの上昇とほぼ横ばいで、トランプ氏の支持率の伸びが逆転につながっています。 これについて、アメリカのCNNテレビは、党大会を通じてトランプ氏の好感度が僅かに改善した側面があったほか、クリントン氏を信用できないと答える人が7割近くに達しており、両者の支持率に影響していると分析しています。通常、党大会の直後にはその党の候補者の支持率が上昇する傾向があり、今後、トランプ氏が勢いを維持するのか、それとも党大会が始まったクリントン氏が盛り返すのか注目されます。>(以上) 

7/27日経では「米CNNテレビがトランプ氏指名後の22~24日に実施した世論調査ではトランプ氏の支持率は48%でクリントン氏の45%を上回った。」とあり、高濱氏記事のいうクリントンが76%の確率で勝つと言った圧勝とは違った数字が出ています。

今回の米国大統領選は歴史に残る、稀に見る最低の大統領選でしょう。余りにも候補が悪すぎます。嘘つき且つ強欲ヒラリーVS人種差別主義者且つビジネス発想だけのトランプでは余りに見ごたえがありません。リーダーからは世界観・歴史観・理想を聞きたいと思いますが、両人にはそれがありません。あるのは選挙戦術だけ。トランプは終盤になって軌道修正を図るかと思いきや、圧倒的支持者を前にそれも叶わず、以前のような発言を繰り返すだけ。確かに、白人男子にターゲットを絞ったのかも知れませんが、女子や黒人・ヒスパニックの層が逃げるのでは。これでは勝てない気がします。

子ブッシュの反動としてのオバマ、その反動としてトランプが選ばれるとしたら米国政治は振り子のようになります。これも偏にグローバリズムが蔓延し、富を米国から移転或は一部の人間に偏在させる仕組みに変えたことが祟っているのだと思います。米国民は豊かな生活を実感できなくなり、アンチウオール街、サンダースの躍進はそれが理由でしょう。富裕税の創設、タックス・インバージョン防止のための国際協調、中国からの輸入品の国内産業化等の手を打って少しでも問題を解消しなくてはトランプのいうアメリカ・ファーストにはなりません。

『評決のとき』(ジョン・グリシャム著)を英語で読み始めました。1992年の作品ですから、今から20数年前です。その時代から差別については何も変わっていない印象です。『評決のとき』は1996年に映画化され、マシュー・マコノヒー、サンドラ・ブロック、サミュエル・L・ジャクソン達が出ていました。テーマは人種差別、報復殺人、陪審制度、裁判管轄で、KKKなども登場させながらリーガルサスペンスの面白さを堪能できる小説に仕立て上げました。黒人の10歳の女の子が白人二人にレイプされ殺されかかったので、その父親が復讐の為、裁判所で二人を射殺、主人公弁護士が父親を弁護し、無罪を勝ち取るというもの。イスラムの同害報復以上の罪を犯しても許される所がミソでしょう。それはそうです。現実は今でも簡単に白人警察官から黒人が殺されてしまい、警察官が無罪を勝ち取るのですから。日本への原爆投下も基本的には白人の人種差別によるものと思っています。元KKKの幹部が上院選に出るようです。人口動態で2042年の白人のマジョリテイが崩れるのを見越した白人の焦りの表れでは。

http://www.afpbb.com/articles/-/3095015

http://www.afpbb.com/articles/-/2506773?pid=3219621

記事

Black Lives Matter

「Black Lives Matter」の標語を掲げる青年(写真:AP/アフロ)

—米共和党は党大会で、ドナルド・トランプ氏とマイク・ペンス氏(インディアナ州知事)をそれぞれ正副大統領候補に正式決定しました。民主党もヒラリー・クリントン大統領候補が事実上決定。22日にはティム・ケーン上院議員(バージニア州選出、前民主党全国委員長、元バージニア州知事)を大統領候補に内定しました。25日に開幕する民主党大会で正副大統領が正式に決まり、いよいよ本選挙に突入します。ところで本選挙の主要な争点は何でしょうか。

高濱:予備選段階で両党の候補者は次のアジェンダを挙げていました――人々の暮らし、つまり経済や雇用の問題、メキシコ系不法移民問題やイスラム教徒の入国問題、さらには同性婚や妊娠中絶問題。

オバマ政権7年半で深まる白人と黒人の確執

 しかし、選挙というものはどこの国でも、今の国際国内情勢に左右されます。米国では、警官による黒人射殺や、黒人による警官射殺事件が相次ぎ、黒人と警察当局との対立が激化しました。これが発端となり、これまでくすぶり続けていたものの、発火点には至っていなかった黒人と白人の「人種戦争」に火がついてしましました。

 米史上初の黒人大統領が2008年に誕生し、当初は、白人と黒人の確執が緩和されるのではないかという期待がありました。ところが、オバマ大統領が再選され、2期目に入ったあたりから人種対立が表面化してきました。

 ロスアンゼルス近郊パサデナのバーで会った白人の中年男性(保険会社勤務)が筆者にこう語ってくれました。「オバマが大統領になったために、それまであまり目立たなかった人種対立が一気に噴き出した。黒人大統領のお陰で白人のレイシスト(人種差別主義者)がクローゼットから日の当たる場所へ出てきたんだ。もし大統領が黒人じゃなかったら、こうはならなかったはずだ」。

 「ラジオのトークショーで誰かが言っていた。白人警官が黒人を射殺するなんていうのは日常茶飯事だった、と。警官が否定すれば、正当防衛や公務執行妨害だったということでケリがついていた」

「ところが今や警官に暴行を受けた黒人の被害者や目撃者は、待っていましたとばかりに現場動画をスマホで撮り、オンラインで流す。ビジブリティ(可視範囲)が拡大したんだ」

トリガーは黒人を射殺した白人への無罪評決

 米国は一応「法と秩序」の国です。人を殺せば裁判にかけられる。裁判で有罪か無罪かを決めるのは一般市民から選ばれた陪審員による評決です。2012年以降、黒人を射殺した非黒人が裁判で相次いで無罪判決を受けました。

 1つは、フロリダ州で起こった事件。白人とラティーノの混血の自警団員が、無抵抗の黒人少年を射殺したのです。裁判所は無罪を言い渡しました。

 「オバマが大統領だというのになぜ判決になるんだ」。黒人たちは怒りを露わにしました。全米各地で判決に抗議するデモが起こりました。

 2013年にはミズーリ州のファーガソンで白人の警官が黒人を射殺。ニューヨークでも2人の黒人が警官(中国系)に射殺されました。警官はみな無罪となりました。

「Black Lives Matter」が台頭

—最近日本のメディアにもしきりと出てくる「Black Lives Matter」(BLM=黒人の命も大切だ)はどのような組織ですか。

高濱:黒人の若者たちの間で自然発生的に生まれたグループです。警官による「残忍な行為」を許している政治体制に公然とチャレンジして、ソーシャルメディア上で批判してきました。ミズーリ大学などのキャンパスで黒人学生を中心とした集会などを重ねながら、全米各地に23の支部を結成。動きはカナダやアフリカ・ガーナなどにも飛び火しました。

 と言ってもこのグループには司令塔のようなものはなく、命令系統も統一した組織もありませんが。

—黒人公民権運動といえば、マーチン・ルーサー・キング師や全米黒人地位向上協会(NAACP)、黒人過激派団体には武装した「ブラック・パンサー」などがありましたね。BLMはどんな団体なのですか。

高濱:この運動の特徴は、公民権運動を行ってきた既成の黒人指導者、例えばアル・シャープトン師やジェッシー・ジャクソン師といった中高年層とは一線を画していることです。黒人公民権運動の歴史は、キリスト主義を軸にした無抵抗主義です。キング師はその典型と言えるでしょう。シャープトン師やジャクソン師はこの流れを継いでいます。

 しかしBLMのメンバーは20代、30代の若年層。集会にはミュージシャンが必ず登場してラップ音楽でムードを盛り上げます。著名なメンバーの一人に、ボルティモア出身のデロイ・マクケソンという31歳の政治運動家がいます。ただし、彼があれこれ指示を出しているわけではありません。デモに参加する黒人の若者たちはソーシャルメディアを通じて連絡を取り合っているようです。

 この4月、メリーランド州ボルティモアで黒人男性が白人警察官に拘束された後、死亡しました。それに抗議するため、BLMがデモを主導。このデモが暴徒化しました。さらに8月には、ミズーリ州ファーガソンで昨年起きた事件の一周忌に行なわれた追悼デモで一部が暴徒化。非常事態宣言が出される事態に発展しました。

 さらに今年7月に入ると、ルイジアナ州バトンルージュとミネソタ州セントポールで、BLMが主催するデモや集会の場で、参加者ではない黒人が白人警官を銃撃しました。一部の白人は「奴らはBLMを隠れ蓑にして警官を狙撃した」と主張しています。また、「BLMは白人警官を公然と殺害するテロリスト集団だ」という白人もいます。 (“Formally recognize Black Lives Matter as a terrorist organization,” We the PEOPLE, 7/6/2016)

警官射殺犯は精神障害に罹った帰還兵

 もう一つ注目すべきは、バトンルージュのケースもセントポールのケースも、警官を狙撃したのは、アフガニスタン戦争やイラク戦争に従軍した経験を持つ元兵士の犯行でした。

 使用されたのはAK-15という攻撃用自動小銃。元兵士にとって、アフガニスタンやイラクでの戦闘で使い慣れた銃器でした。銃撃戦になれば、警官よりも正確に銃撃することができるという指摘もあります。

 今月、米復員軍人省が発表したデータによると、2014年の1年間に自殺した復員軍人は7400人。1日に22人が自殺している計算になります。全米の自殺者の18%を占めるもの。その大半が精神障害から命を自ら断っているというのです。

 警官を射殺した黒人はみな撃ち殺されているので、その動機や背景を解明するのは容易ではありません。が、警察当局は2人が精神障害者だったと発表しています。一つ言えることはアフガニスタンやイラクの戦場での経験が彼らの精神に大きな影響を与えたという点です。 (“New VA study finds 20 veterans commit suicide each day,” Leo Shane III, Military Times, 7/7/2016)

 バトンルージュで警官2人を殺した元兵士は、実行する前日、警官を殺す理由を理路整然と語る姿を撮影し、ソーシャルメディアにアップしていました。「歴史を振り返ってもわかる通り、あらゆる変革には血を伴うのだ」。なにやら、過激組織「イスラム国」(IS)の戦闘員が口にする「ジハード」(聖戦)の理由に似た響きを感じます。

公民権法施行から52年経っても変わらないもの

—人種差別を禁じた公民権法が施行されてから50年以上たっているのに、なぜ差別はなくならないのですか。

高濱:米国における人種問題は何も今始まったものではありません。米国は「人種のるつぼ」と言われる多民族国家です。しかし、実際に住んでみると、白人と黒人がるつぼで溶け合っているとは思えません。お互いに棲み分けているにすぎません。

 公民権法が成立したのは1964年。これによって人種差別は法的に禁じられました。公的な場所、例えば職場とか学校などで白人が黒人を差別すれば訴えられます。しかし、プライベートな場では人種的差別や偏見は歴然として残っています。嫌いなものは嫌い、と感じるのは人間の性(さが)です。

—史上初の黒人大統領の下、黒人と白人との確執は解消され、黒人の地位は向上したのではないのですか。

高濱:7月13日に公表されたニューヨーク・タイムズの世論調査によると、69%の人が「人種関係は悪化した」と答えています。これはロサンゼルスで黒人暴動が起きた時(1992年) 以来の高い数字です。バトンルージュで黒人が警官2人と副保安官1人を射殺した事件の直後に行った世論調査ですから、事件の生々しさが影響した可能性もありますが。

 回答を人種別にみると、「白人警官が黒人に対して蛮行を振るっている」という問に対して「イエス」と答えた人は、黒人で4分の3、白人で半分でした。「警官はよく任務を全うしている」と答えた白人は5人中4人。黒人は5人中2人。

また「BLMの活動に理解を示す」と答えた黒人は70%、白人は37%でした。 (“Race Relations Are at Lowest Point in Obama Presidency, Poll Finds,” Giovanni Russonello, New York Times, 7/13/2016)

—オバマ氏が大統領になって、なぜ人種問題は悪化したのですか。

高濱:カリフォルニア大学アーバイン校のマイケル・テスラー教授は次のように指摘しています。「オバマが大統領になって白人は、オバマ政権は黒人に有利な政策を取るのではないかと警戒心を持ち始めた。白人の論理はこうだ。<黒人大統領だから『人種差別が白人と黒人の貧富の差を生んでいる』と考えるに違いない>と」。

 「基本的には白人の大半は、オバマが嫌いだ。それをスレートには口に出せない。というのも白人が黒人に対して持つレイシズムは米国内で最もパワフルなタブーになっているからだ」

 「そこで白人はなんと言っているか。いまだに<オバマは外国生まれだ><オバマはイスラム教徒だ>と信じて疑わない白人がそれぞれ20%、29%もいる。<オバマは黒人だから嫌いだ>という代わりに、こうした表現で嫌悪感を表していると言える」 (“For Whites Sensing Decline, Donald Trump Unleases Words of Resistance,” Nicholas Confessore, New York Times, 7/13/2016) (“One in Five Americans Still Think Obama is Foreign-Born, According to Poll,” Sam Frizell, Time, 9/14/2015)

 こうした白人のホンネは、今回のように白人警官が黒人に射殺されると爆発します。オバマ大統領は7月12日、テキサス州ダラスで射殺された警官5人の追悼式に出席しました。同大統領は席上で「米国の刑事司法制度には人種による格差が存在する」と明言しました。それをとらえて、白人保守派の一部は「殉死した警官の追悼式の席で不適切な発言だ」と激しく批判しました。

—「暴力の連鎖を断ち切るうえで最大の障害になっているのは人種差別と銃だ」と指摘する識者が少なくありません。

高濱:その通りだと思います。公の場での人種差別を一掃するにはさらなる措置が必要かもしれません。

 まず学校教育です。人種差別をなくす教育は小学校からです。

 次に警察官への教育。米国の警察機構は州単位、群単位で警官を育成します。「法と秩序」を守る公僕としての自覚と常識を、州や郡のポリス・アカデミー(警察学校)で徹底する必要があります。

 銃の問題は、独立戦争の時から米国人が堅持してきた「武器を保持する権利」への執着が背景にあります。この権利は憲法修正第2条に明記されています。侵略してきた英国兵士から自分と家族を守るために、農民も商人も銃を取り戦った歴史があるのです。自分の身は自分でしか守れないという信念なのです。我々日本人にはなかなか理解できないことなのですが。

 銃愛好家は全米に1億人います。彼らを束ねるロビー団体「全米ライフル協会」(NRA=会員数約500万人)が民主・共和両党の垣根を超えて政治家たちを支援しています。

 銃による殺人を少しでも減らす手短な対処策は、AK-47の販売・所持を禁止する銃規制法(1994年に10年間の時限立法として成立、その後廃止)を復活させることです。AK-47は、最近起きている多くのテロや乱射事件に使われているもの。クリントン氏はこの政策を実行すべきと予備選段階ですでに言及しています。

—次期大統領になりうるクリントン氏、トランプ氏は「人種戦争」についてどんな発言をしているのですか。

高濱:クリントン氏は、相次ぐ警察官射殺事件を受けて、「われわれは暴力を拒否し、社会で結束していくべきだ」「米国を分断させるのはトランプ氏だ」と訴えています。

 一方のトランプ氏は、自身のツィッターで「米国は犯罪に引き裂かれ、悪くなるばかりだ」「法と秩序を徹底させる大統領は私以外にいない」と指摘しています。

 一方のトランプ氏は、共和党大統領候補指名受諾演説で、こう述べています。 「われわれ(トランプ大統領と共和党)はこの国を安全と繁栄と平和の国へと導く。寛大さと温情のある国へ導く。そして法と秩序の国にさせる」。

 「われわれは国家が危機にある時にこの党大会を迎えた。われわれの警察官は攻撃を受け、街はテロに襲われ、われわれの日常生活は脅かされている。この危険さを把握できない政治家は我が国をリードするのには適していない」

 「今晩、私の演説を聞いている米国民は、われわれの街で最近起こっている暴動の現状や、われわれのコミュニティが無秩序な状況に置かれていることを知っている。その多くは、自らそれを目撃しているだろうし、その犠牲者もいるにちがいない」

 「あなた方(米国民)への私のメッセージはこれだ。わが国を今悩ましている犯罪と暴力はまもなく終わりを告げるだろう。17年1月20日(私が大統領に就任する日)2017年1月20日、安全は回復されるだろう」 (“ Donald Trump’s prepared speech to the Republican National convention, annotated,” Philip Bump, Washington Post, 7/21/2016)

 米国人が「法と秩序」という表現を使う時、それは国家権力に対する非合法な活動の取り締まり強化を意味します。おそらくトランプ政権はMLB運動に対して、徹底した警察力の行使をすることになるでしょう。黒人はこれに反発するでしょう。「人種戦争」は激化するに違いありません。

全米黒人地位向上協会(NAACP)の全国大会が7月19日、シンシナティで開かれました。参加した黒人指導者たちは口々にトランプ氏が大統領になることへの危惧を表明していました。

 ミシガン州から来た元ロビーストは、こう述べています。「人種差別主義者トランプが大統領になったら米国は今以上にバラバラになってしまう。米国は今以上に人種分裂国家になってしまう」 (“Black Americans fear Trump will incite a race war,” Agence France-Presse, rawstory.com, 7/19/2016)

クリントンが勝つ可能性は76%?

—クリントン氏とトランプ氏の一騎打ちはどのような展開になるのでしょうか。

高濱:各種世論調査は日めくりカレンダーのように、その時々の瞬間風速的な情報を報じています。どちらが何%リードしたとか、抜き返したとか。ですが、権威ある2つの選挙分析によると、クリントン氏が勝利する可能性が76%前後となっています。

 一つはニューヨーク・タイムズの7月19日段階での予想です。 (“Who Will be President? Hillary Clinton has almost a 76% chance of winning the presidency,” Josh Katz, TheUpshot, New York Times, 7/19/2016)

 もう一つは、バージニア大学政治研究センターが公表した6月23日時点の予想です。同センターは、米国屈指の選挙予測家であるラリー・サバト教授の下、膨大なデータに基づいて大統領選選挙人の数の動向を占っています。

 それによると、ヒラリー氏は選挙人538人中347人を獲得する見込みです。一方のトランプ氏は191人。当選に必要な選挙人数は270人ですからクリントン氏は圧勝ということになります。 (“The Electoral College: Map No. 2,” Larry J. Sabato, Center for Politics, University of Virginia, 6/23/2016)

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『洪水を防げぬ三峡ダムで私腹を肥やしたのは誰か 長江氾濫で広がる被害、国家的愚行の深刻』(7/22日経ビジネスオンライン)、『寝静まった中国の村を洪水襲う 住民憤慨「ダム放流の連絡なかった」「共産党は何やってる」』(7/24 ZAKZAK)、『集中豪雨+ダム放水で甚大な被害 多くの地域が孤立無援に=河北省』(7/24大紀元日本語版)についてについて

本記事にありますように、三峡ダムは洪水防止のために造られた訳ではありません。李鵬が賄賂を取るためだけです。電力関係は李鵬の利権ですから。江沢民はそれに乗っただけです。1997年に三峡下りをした時に、下船して白帝城の遺跡(劉備が死ぬときに諸葛孔明に、自分の息子が能力が無ければ孔明に国を任せると遺言した場所。人形が飾られていた)を見ましたが、後に水没しました。「歴史を鑑に」と何度も言う割には、歴史を大切にしない国です。まあ、捏造・改竄が当たり前の国ですから。

1993年、李鵬は豪・キーティング首相と会見した時に「日本は取るに足るほどの国ではない。20年後には地上から消えていく国となろう」と言いましたが、残念ながら日本は生き残り、暴力団国家・中国と対峙する国となりました。でも日本も李鵬にそこまで言われながら、中国に金と技術支援を続けてきたのですから、狂っているとしか言いようがありません。親中派政治家を選んで来た国民、人口の多さに幻惑され中国進出した(或はハニーにかかった)企業経営者の何と愚かなことか。今や中国は、南シナ海はおろか東シナ海の尖閣、沖縄を奪おうとしています。それが、実現すれば太平洋2分割で日本は共産中国の属国となり、次のステップで中国は米国を打倒して世界制覇を目指すでしょう。モンスターを作った製造物責任は米国と日本にあります。キッシンジャーの見通しが大きく間違っていたことが証明されました。キッシンジャーもクリントンも中国から多大のマネーを受け取っています。中国は賄賂とハニーで外国や相手を籠絡しようとする国・国民という事を覚えておかないと。

本記事を読んで、真っ先に思い出したのは、蒋介石が日本軍の追跡を防ぐため黄河の花園口を決壊させ、日本軍のせいにしようとしましたが、救出に当たった日本軍を見て誰も信じませんでした。今回の件はこれを彷彿とさせます。中国国民は為政者にとって虫けら以下という事です。自分が助かることだけを考え、他人はどうなろうと関係ないと言う発想です。南京陥落時の唐智生将軍、韓国のセウオル号の船長と通じる精神構造です。日本人の武士道精神とは全く違います。日本は封建領主の切腹と城の開け渡しだけで領民にはお咎めなし、部下を撤退させ「艦と運命を共にする」艦長、玉砕時の将軍の切腹と中韓とは美学の違いがあります。

日本人は日本に生まれた幸せをもっと感じられるようにしていかないと。他国と相対比較すればすぐに分かることですが。日本のマスメデイアの報道だけを聞いていると分かりません。外国で長く暮らす体験をすれば一発で分かります。日本に帰ってくるときになれば必ずや愛国者になって帰ってきます。日本にいる在日は、日本を貶めるためだけに存在するのであれば祖国に帰って貰った方が良いでしょう。他国に住んで反政府活動するのは以ての外。中国や朝鮮でそんなことをする外国人の運命は聞かずもがなでしょう。日本は優しすぎというか勇気がない国になってしまったという気がします。偏向マスコミとそれを恐れる政治家や役人が多すぎます。都知事選の桜井誠候補をもっとメデイアは取り上げるべきですが、在日に牛耳られている現状を見ますと望むべくもありません。日本人は情弱状態から抜け出す努力をすべきです。もっとネット、SNSを活用しましょう。特に高齢者の方は。

日経ビジネスオンライン記事

7月17日付の“中国天気網(ネット)”は、「増水期に入って以来、“長江(=揚子江)”流域では降水量がすこぶる多く、多数の地域で累積の降水量が平年同期の水準を遥かに上回っている。昨日(15日)から大雨がまたもや長江流域を襲っているが、この雨は17日まで持続し、今日、明日の両日、南部地方の5省では一部地区で大雨または暴風雨になる可能性があり、現地では大雨がもたらす二次災害の警戒と洪水防止活動の強化に注意が必要」と報じた。

最近の1か月間、長江流域では累積の降水量が多いだけでなく、降水日数も多かった。特に湖北省西南部、湖南省西北部、江蘇省西部、安徽省南部、浙江省北部などの長江の中・下流域では、6月15日から7月14日までの1か月間に降水日数が20日を上回った。このうち、湖北省“武漢市”では当該1か月間の降水日数19日のうち6日が大雨で、降水日数に対する大雨日数の比率は32%に達した。また、同様に安徽省“合肥市”では降水日数18日のうち7日が大雨で大雨日数の比率は39%、江蘇省“南京市”では降水日数17日のうち9日が大雨で大雨日数の比率は53%に達した。

洪水頻発の長江

それでは長江流域の降水量はどれほどなのか。7月15日付の“中国気象網(ネット)”は「梅雨入り以来、長江流域の平均降水量は1949年以来同期で最多」と題して次のように報じた。

【1】今年の梅雨入り(6月19日)から7月13日までの長江流域における平均降水量は249mmで1949年以来最も多く、平年および1998年<注1>の同期に比べてそれぞれ46%と17%多かった。目下、長江の中・下流域は新たな暴風雨の影響を受けており、梅雨が依然として続くものと予想されることから、長江の洪水防止の状況は楽観を許さない。

<注1>中国では1998年の夏に長江、東北地方の“松花江”や“嫩江”などの主要河川で大規模な洪水が発生し、死者4150人、直接経済損失2551億元(約4兆816億円)を出した。この時に長江で発生した洪水は20世紀で2番目の規模で、1954年に次ぐものだった。

【2】今年、長江流域の増水期入りは早く、流入する水量が多く、増水が急激であるなどの特徴がある。長江流域でも中・下流域の平均降水量は298mmと突出して多く、平年および1998年の同期に比べてそれぞれ65%と47%多く、1954年以来最も多かった。江蘇省南部と浙江省北部の境界にある太湖の流域では、梅雨入り以来の平均降水量は340mmで平年同期に比べて76%多く、1999年以来最も多かった。

上記を総合してみると、今年の梅雨入り以来、長江の中・下流域では豪雨に見舞われる日数が多く、平均降水量は298mmに達し、平年同期の平均降水量を遥かに上回ったのみならず、1998年夏に大規模洪水が発生した時の平均降水量をも大幅に上回ったという事が分かる。この結果がどうなったのかと言うと、長江の中・下流域に連日のように降った雨水は一斉に長江へ流れ込み、長江沿いの各地で氾濫による大規模な洪水を発生させた。

7月5日に安徽省“民政庁”が発表したところによれば、7月5日午前9時までの統計で、安徽省の累計被災人口は1053万人に上り、死者は29人、直接経済損失は220億元(約3520億円)を上回った。また、湖北省武漢市“防汛指揮部(洪水防止指揮部)”の責任者は、6月30日20時から7月6日10時までの武漢市における豪雨の累積降水量は561mmに達したと述べた。この降水量は、武漢市が気象記録を取り始めて以来最大の週間降水量であった、1998年7月17日から23日までの累積降水量539mmを上回った。

7月6日12時までの時点で、豪雨により武漢市では12の市街区で75.7万人が被災し、延べ16万7897人が安全な場所に避難し、8万207人が依然として避難場所に留まっていた。農作物の被害は9万7404ヘクタール(ha)に及び、そのうち3万2160ヘクタールは収穫が絶望となった。倒壊家屋は2357戸の5848部屋、重大な損壊家屋は370戸の982部屋、一般的な家屋損壊は130戸の393部屋に及んだ。直接経済損失は23億元(約368億円)で、死者14人、行方不明は1人だった。

7月11日に中国政府“民政部”が発表した統計によれば、6月末から7月10日までの長江の洪水による被災者は3100万人で、死者164人、行方不明者26人、直接経済損失670億元(約1兆720億円)であった。

最大効能は洪水防止?

こうした洪水による被災状況を知るにつれ、中国国民が疑問を投げかけたのは“三峡大壩(三峡ダム)”である。三峡ダムは2000億元(約3兆2000億円)もの巨資を投じて建設された、中国が世界に誇る巨大プロジェクトであり、秦の始皇帝が建設した万里の長城に匹敵する壮大な建設事業であるが、建設に当たってのうたい文句は「1万年に一度の大洪水をも防ぎ止めることが可能な三峡ダム」ということではなかったのか。

2006年5月6日、“中国工程院(The Chinese Academy of Engineering)”の“院士(アカデミー会員)”で、“長江水利委員会”の“総工程士(技師長)”でもある“鄭守仁”は、三峡ダム建設工事完成の記者会見で、「三峡ダムの最大の効能は洪水防止である」と何回も強調して次のように言明したのだった。すなわち、三峡ダムが完成した暁には、その洪水防止能力は百年に一度の大洪水を食い止めるまで引き上げられるが、三峡ダムの洪水防止能力は1000年に一度の洪水防止基準に基づいて設計してあり、たとえ1万年に一度の特大洪水が起こったとしても、三峡ダムは補助的な措置を採ることにより防ぎ止めることができる。

但し、これは鄭守仁が口から出まかせを言った訳ではなかった。これより3年前の2003年6月1日に国営通信社の“新華社”は、「三峡ダムは“固若金城(守りがこの上もなく堅固)”であり、1万年に一度の洪水を防ぎ止めることができる」と題する文章を発表していた。ところが、上述した鄭守仁の発言から1年後の2007年5月8日に新華社が発表した文章では『三峡ダムは今年以降千年に一度の洪水を防ぐことができる』になり、1万年だったはずの洪水規模が千年に縮小された。さらに、2008年10月21日に新華社が発表した文章では「三峡ダムは百年に一度の特大洪水を防ぎ止めることができる」になり、千年の洪水規模が百年に縮小された。そして、2010年7月20日に“央視網(中央テレビネット)”が報じたのは「三峡ダムの“蓄洪能力(洪水防止のための貯水能力)”には限りがあり、希望の全てをダムに託すな」であった。

“北京大学”法学部教授の“賀衛方”は、「当時の論証では三峡ダムの長所は下流の水量を有効的に調整できるとされた。しかし、現在の状況は正に逆で、長江の下流が干ばつの時は、三峡ダムは貯水を必要とし、下流に水害が発生した時は、三峡ダムは増水により水門を開いて放水をする必要がある」と述べているが、これは現実を的確に言い当てている。

現実は逆

要するに、現実の三峡ダムは建設当初の最大目的であったはずの洪水防止機能を全く果たしていないのである。長江の中・下流域に大雨が降れば、中流域に所在する三峡ダムは満水により水門を開けて放水することを余儀なくされる。下流域はただでさえも大雨による増水で氾濫直前にあるのに、三峡ダムから排出された膨大な水量が加わることで、長江沿いの地域に甚大な洪水被害をもたらしているのだ。一方、長江の下流が干ばつに襲われて水を必要とする時期には、三峡ダムは一定の水量を貯水しておく必要性から放水を行っておらず、下流域の水不足を知りながら見殺しにしているのが実情である。

三峡ダムの建設費は主として「三峡プロジェクト建設基金」(以下「三峡基金」)によってまかなわれた。三峡基金は全国の電気料金をキロワット・アワー(kwh)当たり4厘(約0.064円)引き上げることで調達されたもので、国民から強制的に徴収したものだった。2013年6月7日に“国家審計局(日本の会計検査院に相当)”が発表した「長江三峡プロジェクト竣工財務決算草案検査結果」によれば、2011年12月末までに投入された三峡プロジェクト建設資金は2079億元(約3兆3264億円)で、そのうちの78%に相当する1616億元(約2兆5856億円)を三峡基金が占めた。その後、1000億元(約1兆6000億円)以上の三峡基金が追加投入されたことから、三峡ダムの建設に当たっては中国国民が負担した金額は1人当たり200元(約3200円)という計算になる。それにもかかわらず、三峡ダムが完成すれば安くなるという話だった電気料金は逆に高くなったのだった。

三峡ダムを建設するために、200万人近い人々が移転を余儀なくされただけでなく、完成した三峡ダムの貯水湖周辺では土砂崩れや陥没が多発し、汚泥の沈殿や水質汚染が進んでいる。また、従来は長江の渇水期でも水をたたえていた“洞庭湖”や“鄱陽湖”などの湖沼は干上がることが多くなったばかりか、増水期には例年のように洪水が発生している。最終的には3000億元(約4兆8000億円)もの巨資を投じて建設した三峡ダムが最大目的であったはずの洪水防止機能を果たせないなら、その建設は一体何のためだったのか。<注2>

<注2>一口に4兆8000億円と言うが、当時の人民元の価値は日本円に換算すれば10倍の値打ちがあったので、実質的な総工事費は48兆円と考えることができる。

三峡ダムの建設は1994年12月14日に着工された。これを推進したのは、1989年6月4日に発生した“六四事件(天安門事件)”の直後に開催された中国共産党第13期中央委員会第4回全体会議で“中央委員会総書記”に選出された“江沢民”だった。当時すでに中国共産党“中央政治局常務委員”で“国務院総理”の地位にあった“李鵬”は党総書記となった江沢民と同盟を結び、江沢民・李鵬のコンビは権力をほしいままにした。

5大目標の百年夢想

1989年6月に総書記に就任した江沢民は、1991年頃から総理の李鵬と手を組んで三峡ダムの建設に向けて活動を開始した。1991年7月6~14日、江沢民の意を受けた李鵬は国務院の名目で「三峡プロジェクト事業化検討会」を招集したが、その席上で江沢民は三峡プロジェクトの建設支持を表明し、それを契機に党“宣伝部”に命じて三峡ダム建設の利点を大いに言いはやした。その論法は、「三峡ダムを建設して洪水をダムに封じ込めれば、下流に洪水はなくなると言ったのは“毛沢東”である。歴史的に見ても、長江と洪水は切っても切れない関係にあるが、三峡ダムを建設しさえすれば、洪水の制御は可能となる」というもので、三峡ダムは中国の“百年夢想(百年の夢)”であり、その建設は洪水防止、発電、水上輸送、“南水北調”<注3>および地域発展という5大目標の達成を可能にするという良いこと尽くめの宣伝を行ったのだった。

<注3>南方にある長江の水を北方へ引いて、水不足の解消に役立てること。

江沢民を中核とする三峡ダム建設賛成派に対して建設反対を表明した専門家たちは言論を封殺され、文章を発表することも、意見を述べることも妨げられた。著名な水利専門家で“清華大学”教授の“黄万里”は、地質、環境、生態などの観点から三峡ダムの建設に反対し、中国政府に対して幾度となく意見書を提出したが一切無視された。こうして反対派を黙殺する形で三峡ダム建設の世論形成を図った江沢民と李鵬は、1992年4月3日に第7期全国人民代表大会第5回全体会議で『三峡プロジェクト建設に関する決議』を67%の賛成票で通過させることに成功した。但し、これはラバースタンプと揶揄される中国の議案票決では史上最低の賛成率であった。

1993年1月3日、国務院に三峡プロジェクトの最高政策決定機関である「三峡プロジェクト建設委員会」が設立されたことにより、三峡プロジェクトは本格的に動き出すこととなった。しかし、それでも頑なに三峡ダム建設の危険性を憂いた黄万里は、1993年の2月と6月に江沢民を始めとする国家指導者宛に書状を送り、三峡ダム建設を再考するよう訴えたが、返書が届くことはなく、1994年12月14日に三峡プロジェクトは着工された。

2006年5月18日付の“新華網(ネット)は、「李鵬:三峡プロジェクト決議の内幕を披露」と題する文章を掲載したが、その中で李鵬は、「江沢民が総書記就任後に最初の地方視察を行った場所は三峡ダムの予定地だった。1989年以降の三峡プロジェクトに関する重要政策の決定は全て江沢民主宰の会議で決定されたものだった」と言明し、江沢民が三峡ダム建設にいかに執着していたかと述べると同時、三峡ダム建設に対する自身の責任を回避した。

有責必問、問責必厳?

江沢民が三峡ダム建設に並々ならぬ情熱を持っていたことは、総書記就任後の最初の地方視察地に三峡ダム建設予定地を選んだことからも分かるが、彼を三峡ダム建設に突き動かした物は何だったのか。筆者は1995年から2000年まで商社の駐在員として中国に滞在し、三峡プロジェクト関連の国際入札にも関与した経験を持つが、三峡プロジェクトを江沢民や李鵬を筆頭とする国家指導者から末端の地方役人までが私腹を肥やす絶好の機会と見て、それぞれの地位や身分に応じた形で賄賂を受け取り、公金を横領していたと考える。三峡プロジェクトに関わる機材の国際入札で、日本企業の受注が確定したと聞いて、当該企業のトップが事業主に御礼の挨拶に出向いたら、急きょフランス企業の受注に変更となっていたというような話は多々あった。「地獄の沙汰も金次第」とは良く言ったもので、そうした大型入札の背後には国家指導者の影が見え隠れしていた。

江沢民や李鵬が三峡プロジェクトを通じてどれほどの富を得たかは定かではないが、彼らが三峡ダム建設反対派の意見に耳を貸さずに建設に邁進した理由は明らかに私腹を肥やすためだった。1992年に「三峡プロジェクト建設に関する決議」が全国人民代表大会を通過してから24年が経過した現在、中国国民は三峡ダムの役割に疑問を投げかけている。

2014年10月23日、中国共産党第18期中央委員会第4回全体会議はコミュニケを発表して、重大政策決定の責任追究制度および責任遡及原則を制定して全面的に行政執行責任制度を実施する旨を表明した。これを踏まえて、2016年6月28日、総書記の“習近平”が主宰する中国共産党中央政治局会議は審議を経て「党内問責条例」を採択したが、これは問責制度の強化を意味し、“有責必問、問責必厳(責任があれば必ず追及し、責任を追及したら必ず厳しく罰する)”という強いシグナルなのだという。習近平が最大の目的であった洪水防止に役割を果たさない三峡ダムの建設を強引に推し進めた江沢民と李鵬にその責任を問う可能性は極めて小さいが、中国国民は責任の所在が誰に有るかを知っている。

ZAKZAK記事

Xingtai city in China

23日、洪水被害を受けた中国河北省邢台市大賢村は、道路に泥水が残り、がれきが散乱していた(西見由章撮影)

生活道路を歩くとくるぶしまで泥で埋まり、トウモロコシ畑では横転した乗用車が無残な姿をさらしていた。人々が寝静まった未明に突然洪水が襲い、大きな被害を出した河北省邢台市に23日、記者が入った  洪水の発生から3日以上たったこの日午後。邢台市大賢村の集落では、住民らが家の中に入り込んだ泥をかき出す作業に追われていた。路上は衣類などの家財が散乱し、ごみの集積場所はハエが飛び交い、異臭が鼻をつく。  夫と2人暮らしの李さん(75)は洪水が発生した20日午前2時ごろ、平屋建て住宅のベッドで寝ていた。「突然水が家の中に入ってきて、あっという間に腰までつかったよ」。夫とはしごを登って屋根の上に逃げた。自宅から完全に水が引くまで10時間ほどかかったという。  洪水を起こした河川、七里河に向かって集落を南に歩いていくと、建物に残された洪水の痕がだんだん高くなり、2メートルを超える場所も。高さ5メートルほどの街路樹がなぎ倒され、水流のすさまじさをうかがわせる。  洪水の原因は現時点では明確になっていない。中国メディアの財新ネットは、30キロ以上離れた上流のダムの水が放流されて水量が増え、川幅が急に狭くなる同村で洪水が起きたとの見方を伝えた。  邢台市の副市長は23日、原因は人為的なものではないと否定した。ただ、多くの住民は「ダムの水を放流した地元政府が、住民に何も通知しなかった」(30代の男性)と認識しており、不満が高まっている。

被災者対応にあたる地元の中国共産党幹部は発生直後の20日、地元テレビ局の取材に「被災者の救出を進めており、死傷者はいない」と回答。その後ネット上で子供の遺体の写真などが拡散し、ようやく地元当局が犠牲者の情報を公表した。

農業を営む男性(26)は村全体で顔見知りの子供ら約20人ほどが犠牲になったと話し、こう憤った。「これほど時間がたっても慰問にもこない。住民なんかどうでもいいんだ」

ただ、地元政府は職員が不足し、被害の全容も把握できていないようだ。自宅玄関で泥を掃除していた20代の男性は「党が調査に来たらたくさん言いたいことがある」と吐き捨てた。

住民の避難所となった病院には、「政府の救援に感謝します」と書かれた赤い横断幕が掲げられていた。(邢台市 西見由章、写真も)

大紀元記

Handan city in China

7月18日から2日連続の集中豪雨により、河北省邯鄲市周辺の県、町、村に甚大な被害が見られるほか、連絡の取れない多くの地域が孤立無援の状態に置かれている。(ネット写真)

集中豪雨+ダム放水で甚大な被害 多くの地域が孤立無援に=河北省

2016/07/24 21:30

7月上旬に中国南部を襲った水害に続き、18日には中国北部の多くの省が連続的な集中豪雨により広範囲の被害を受けた。河北省邯鄲市周辺の県、町、村に甚大な被害が見られるほか、多くの地域が連絡が取れず孤立無援の状態に置かれている。被災者の数は相当数とみられているが、当局は死傷者情報も含めた正確な人数を把握しきれていない。

 渉県で過去最大級の集中豪雨

中国メディアの報道によると、18日から2日間にわたって降り続いた豪雨により、邯鄲市郊外に深刻な水害がもたらされた。特に同市渉県では12時間で460mmという過去最高の降雨量を記録したほか、交通網が寸断されたため同県内の多くの村が孤立した状態に置かれている。

渉県龍虎郷村出身だという出稼ぎ労働者の張さんは、大紀元の取材に対し、19日の夜10時過ぎから家族と連絡が取れなくなったと語り、心配を隠せないようだ。押し寄せた洪水が橋や土手の樹木、そして村民も押し流し、人口約4000~5000人の村民全体の安否が、現在も確認できない状態だという。

 甘泉村では通信網が寸断 断水と停電が続く

渉県西達鎮甘泉村も同様に交通が寸断されている。加えて村全体の通信網も寸断され停電と断水が続き、500人余りの村民が孤立を余儀なくされた。甘泉村出身の劉さんは村を離れており何の手助けもできないため、ネットで逐次、村の状況を発信し救援を求め続けているという。

また住民の話によると、渉県の治水本部は19日正午、各村民に対し4時間以内に村 から避難するよう通達を出した際、8月10日までに本部からの通達無しに村に帰ることはできないと発表したことが明らかになった。

地元の張さんは、なぜ8 月10日より前に帰村できないのか理由が分からないと不信感をあらわにしている。他の地域において予告なしにダム放水した事による人災の可能性が取り沙汰されているが、今のところ、村を襲った洪水がダムの放水の影響を受けているかどうかは不明。

 武安市郊外でも孤立化

河北省邯鄲市の県級市、武安市郊外などでも深刻な被害が広まり、渉県同様孤立した地域が点在しているが、死傷者の数は明らかになっていない。

同市在住のある人物は取材に対し、10か所くらいの村が甚大な被害を受け、通信網と電力網、交通網すべてが寸断され、多くの村民が流されている、固義村では商店が丸ごと押し流され、4人が行方不明になるなどの被害が出ているという。

武安市当局の災害速報によると、今回の大型豪雨は武安市史上まれにみる規模で、10カ所余りのがけ崩れが起きたほか、複数の橋梁が押し流された。

Handan city in China-2

7月18日から2日連続の集中豪雨により、河北省邯鄲市周辺の県、町、村に甚大な被害が見られるほか、連絡の取れない多くの地域が孤立無援の状態に置かれている。(ネット写真)

 河北省では豪雨赤色警報が発令 県内全18カ所のダムが放水

河北省南部の邯鄲、邢台、石家庄でも、場所により腰の高さほどの深刻な冠水が見られ、交通網もほぼ麻痺した状態にある。

また連日の豪雨により、ほとんどの貯水施設が警戒水域に達しており、県内18カ所のダムがすべて水門を開けて放水を行っているという。

 北部6省に渡る広範囲の被害 今後の予測

中国メディアの報道によると、今回の豪雨は河北省、山西省、山東省、陝西省、甘粛省などの北部6省市にわたって広範囲な災害をもたらした。中央気象台は、今後雨雲は東北地方に移動すると予測している。

(翻訳編集・島津彰浩)

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『南シナ海問題でロシアが中国を支持しない理由 蜜月演出の裏に透ける、危うい中ロ関係』(7/22日経ビジネスオンライン 池田元博)について

7/25日経朝刊には<ロシアのリオ五輪参加、競技ごとに判断 IOC決定

【ジュネーブ=原克彦】国際オリンピック委員会(IOC)は24日に緊急理事会を開き、国家主導のドーピングが問題視されるロシアのリオデジャネイロ五輪への参加について、競技ごとの国際連盟に判断を委ねることを決めた。薬物の使用状況は競技により濃淡があると判断し、全面的な参加禁止処分は見送った。今後は各国際連盟の決定が焦点になる。五輪開幕を8月5日に控え、一部競技では混乱が避けられない。

Russian national flag

リオ五輪の選手村に掲げられているロシア国旗(中央)=24日(共同)

IOCのバッハ会長は理事会後の電話による記者会見で「組織での連帯責任と、個人が持つ権利のバランスを取った」と説明した。緊急理事会ではリオ五輪からロシアを全面除外する処分は見送り、出場の可否の判断は各国際連盟に委ねることを決めた。

ただ、出場には厳しい条件を付けた。過去にドーピングを使用して制裁を受けた選手の参加は認めないとした。スポーツ仲裁裁判所(CAS)の専門家の支持を得たり、参加が決まった後も規定の検査以外に検査を受けたりすることを求めた。

ロシアの五輪参加には米欧などが強く反発し、14カ国の反ドーピング機関は連名でバッハ会長に全競技でロシアを資格停止にするよう求める文書を送っていた。IOCの決定に対しては米欧などから批判が出そうだ。

Russian entry of Rio olimpic

今後は陸上を除く27競技の各国際連盟が結論を出す。リオ五輪の開催が近づいており、急な対応を迫られることになる。

ロシアは既に参加禁止が決まった陸上のほか、レスリング、柔道、体操などで多くのメダルを獲得してきた。世界反ドーピング機関(WADA)報告書で不正が指摘されなかった体操は国際連盟が早くからロシアの参加を認めるよう要請。国際柔道連盟会長も全面参加禁止に反対する声明を発表している。

一方、08年北京と12年ロンドンでの五輪で多くのドーピングが発覚した重量挙げは6月、ロシアなど3カ国の資格を停止する準備を始めている。

ロシアの薬物使用では2015年11月、WADAが陸上競技で組織ぐるみの不正があったと指摘、国際陸連が同国選手を五輪などの国際大会に参加させないことを決めた。ロシア選手68人がCASに取り消しを求めたが、訴えは却下された。

5月には同国の反ドーピング機関の幹部が過去の不正を米国メディアに暴露した。WADAはパラリンピック競技を含む30の競技で国家主導の薬物使用と隠蔽が行われていたと報告し、ロシアをリオ五輪に参加させないよう勧告した。

IOCは19日の緊急理事会でロシア参加の是非を協議。いったん判断を見送っていた。

五輪憲章は制裁の取り決めを記した59条で、IOCが五輪憲章や国際的な反ドーピング規則に違反した国のオリンピック委員会の資格を停止できると定めている。人種差別政策を理由に南アフリカの資格を停止した例などがあるが、薬物問題では前例がない。

ロシア側は一貫して政府の関与を否定。陸上界の問題が表面化してからは検査強化などの対策を公表し、22日には外国人を含む独立検査機関を設けるなど追加策も打ち出した。五輪からの締め出しについては「西側諸国によるスポーツへの政治介入」と批判してきた。

■IOC決定骨子、参加に厳しい条件 ○ロシア選手の五輪参加は競技ごとの国際連盟が個々に判断 ○各連盟の決定は国際的な反ドーピング規則と6月の五輪サミットでの合意に従う ○過去に薬物使用で制裁を受けた選手は参加を認めない ○参加にはさらにスポーツ仲裁裁判所の専門家の支持を必要とする ○ロシア選手は追加の検査を受ける ○規律委員会の報告内容によっては追加の制裁もあり得る>(以上)

IOCも責任を下部機関に押し付けただけの感があります。今回はロシアの地でのオリンピック開催ではないのでソチでのような不正はできません。オリンピックを目指して練習に励んできた選手を前回の不正で一律に不参加にするのは公平性を欠くと思います。前回のソチのドーピング不正者のメダルを剥奪するのが合理的と思います。ただ現実的にロシアが自己申告することはないでしょうから、この手は使えませんが。

領有権の問題については、米国も当事者間の争いには関与しないとの立場です。本記事を読む限り、中国、ロシアも同じするこ立場でしょう。ただ米国が「尖閣は日米安保の対象」と言っていますのはサンフランシスコ講和条約で尖閣は日本の領土と認識し、一部を射爆場として利用していたこともあり、今でもそうすることができることがあるからだと思います。ただ、ルトワックによると「無人島のために最初から米軍が出るのではなく、中国が尖閣を奪いに来たら日本が守り切るか奪還してからの出動になる。」とのこと。中国は最初から軍艦を派遣することはせず、民間の船か海警の船を出してくるでしょうから、日本も海保や警察の装備と人材の層を厚くする必要があります。

http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/senkaku/qa_1010.html#q11

http://www.nippon.com/ja/editor/f00036/

http://jp.wsj.com/articles/SB12387842356326593464804580638370900220984

日本は中国封じ込めの完成の為(日本の独立維持に必須)にはロシアの協力が死活的に重要と言うのがルトワックの考えであり、為に安倍首相はプーチンとの関係を良くしようとしています。

南シナ海の問題も台湾問題もサンフランシスコ講和条約で日本に領有権を放棄させ、その後の領有を米国が曖昧な態度でいたことが問題を惹起してきた大きな原因です。南シナ海は「新南群島」として一時日本の領土としていた時期がありました。戦後日本人は歴史を知らないし、知る努力を怠ってきました。もっともっと知るようにしないと敵国の主張を論破できません。特に中韓は歴史の捏造・改竄は当り前ですから。反日日本人はすぐに中韓の立場を擁護しますが、中韓の国際的な問題での行動をみればどちらが正しいかは自明の理です。

http://www.ioc.u-tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19510908.T1J.html

2016/2/16ZAKZAK 日本の領土だった南シナ海「南沙諸島」 終戦まで実効支配

南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島が、元は日本の領土だったことをご存じですか。南シナ海問題をめぐる背景知識の一つとして紹介したいと思います。  中国は今、南沙諸島で、国際法(国連海洋法条約)に照らして領土にはできない暗礁を勝手に埋め立てて「人工島」を造り、滑走路を造るなど軍事基地化を進め、領土であると強弁しています。  南沙諸島の領有権を中国と争っているフィリピン、ベトナムといった沿岸国はもとより、日本や米国など多くの国々が中国を批判しています。しかし、中国は今年1月に入って、人工島の一つ、ファイアリークロス礁に造った滑走路で航空機を離着陸させました。中国の傍若無人な振る舞いは、今年も国際社会を悩ませそうです。  1952(昭和27)年4月発効のサンフランシスコ平和条約第2条のf項にこうあります。  「日本国は、新南群島及び西沙群島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する」  ここでいう新南群島が南沙諸島を指すのです。  新南群島は、1918(大正7)年に海軍中佐の小倉卯之助という探検家が発見し、島の一つに標柱を立てています。いわば南方領土の発見です。ちなみに小倉が探検に使った帆船は、明治時代に千島探検で名を馳(は)せた元海軍大尉、郡司成忠の所有でした。郡司は作家、幸田露伴の実兄です。  その後、ラサ島燐礦(りんこう)会社(現・ラサ工業)という日本の会社が、大正期から1929(昭和4)年にかけて、新南群島で肥料の原料となるリン資源グアノの採掘をしていました。最盛期には140人ほどの日本人が働いていました。  また、日本統治下にあった台湾の高雄を根拠とする漁業者が、マグロ漁の中継点にしたり、貝の採取をしたりしていました。

ラサ島燐礦会社は、政府に領土編入を陳情しましたが、外務省がぼやぼやしていたのか領有宣言をしていなかったのです。  すると1933(昭和8)年になって、インドシナ(今のベトナムなど)を支配していたフランス(仏印当局)が、新南群島のうち9つの島の領有を宣言しました。これに日本と中華民国が抗議しています。  大阪毎日、東京日日の両新聞社(現毎日新聞社)はこのとき、新南群島へ探検隊を派遣し、日本の領土だと大々的に報じています。  結局、1939(昭和14)年に平沼騏一郎内閣が日本の領有を宣言し、台湾の高雄市に組み込みました。日本の主張は正当であり、1945(昭和20)年の敗戦まで日本は実効支配をしています。  日本の敗戦で再びフランスが占領しましたが、同国がベトナムから引き揚げたことに伴って1950年代には空白の地となり、領有権争いの対象になったのです。  中国(中華人民共和国)が今、領有権を主張しているのは、中華民国の立場を踏襲したからなのですが、戦前に中華民国や清朝が南沙諸島を領有していた事実はありませんでした。  また、日本が、台湾の行政区画に属させたことから、南沙諸島は台湾のもの、中国のものと主張することも成り立ちません。  日本は、台湾に付属する島々だから高雄市に編入したのではないからです。台湾とは別に日本人が発見し、日本の会社が利用していたことから領土とし、たまたま地理的に近い台湾・高雄市の行政区画に入れただけだったのです。  日本が領有権を主張することはもはやできませんが、南沙諸島は、日本と無縁の島々ではないのです。  もし、日本の領土のままであれば、今、南シナ海で中国の横暴がまかり通るようなことはなかったでしょう。(論説委員 榊原智)>(以上)

記事

中ロ関係は「蜜月」とされる。先の在韓米軍への米ミサイル防衛システム配備決定にそろって非難の声を上げるなど、外交分野でも連携を強めている印象を受ける。ただ実態はどうか。むしろ両国関係の危うさが随所にうかがえる。

Putin & Xi

6月末のプーチン大統領訪中の際には、共同声明から個々の経済協力の覚書まで含めて、両国が調印した合意文書は合計で37に上ったが…(写真:Kremlin/Sputnik/ロイター/アフロ)

「強烈な不満と断固たる反対を表明する。中国の戦略安全利益を損ねることをしてはならない」(中国外務省声明)

「この決定に深刻な懸念を表明する。米国は同盟国の支持を得て、アジア太平洋地域でも世界的なミサイル防衛(MD)システムの構築を進め、その内外の領域の戦略的なバランスを崩そうとしている」(ロシア外務省声明)

中国とロシア両政府は今月8日、そろって激しい非難声明を出した。米国と韓国政府が同日、最新鋭の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の在韓米軍への配備を決めたことに、すかさず反応したものだ。

米韓がTHAADを在韓米軍に配備するのは、北朝鮮の核・ミサイルの脅威に対し、抑止力を高めるのが狙いだ。米領グアムや在日米軍基地なども射程に入る中距離の「ムスダン」や「ノドン」、さらに短距離の「スカッド」といった弾道ミサイルの迎撃を想定している。北朝鮮以外の「いかなる第三国も対象にしない」というのが米韓の説明だ。

しかし、中ロはいずれも、自国の弾道ミサイルを無力化するのが米国の真の狙いだとみて猛反発しているわけだ。

「我々の立場は極めて近いか、完全に一致している」

実はこのTHAAD配備をめぐっては、中ロが連携して事前に警告を発してきた経緯もある。ロシアのプーチン大統領が6月25日、北京を公式訪問し中国の習近平国家主席と首脳会談を開いた時だ。両首脳は会談後、合意文書のひとつとして「世界の戦略的安定強化に関する共同声明」を発表したのだ。

声明で両首脳は、世界では今、特定の「国家」や「軍事政治同盟」が国際的な戦略的安定に否定的な影響を及ぼす不穏な動きが広がっていると警鐘を鳴らした。その上で、とくに欧州や北東アジアでのMDシステム配備に反対する立場を鮮明にした。いわば中ロが共闘して、米国とその同盟国、あるいは北大西洋条約機構(NATO)の動きをけん制したわけだ。

中国軍とロシア軍は5月末には米国に対抗し、コンピューターを使ったミサイル防衛演習も初めて共同で実施している。

中ロはかねて「蜜月」の関係とされる。プーチン大統領は先の中国訪問に先立ち、新華社とのインタビューで「外交問題をめぐる我々(中ロ)の立場は極めて近いか、あるいは完全に一致している」と述べている。こうして見てみると確かに、外交や安全保障分野でも両国は連携を深めている印象を受ける。

折から先月8~9日、ロシア海軍の駆逐艦など3隻と中国海軍のフリゲート艦1隻が相次ぎ、沖縄県・尖閣諸島の接続水域内に一時的に入る“事件”も起きた。この問題をめぐっても当時、中ロが連携して日本をけん制したのではないか、といった噂が流れた。

しかし実際は、中ロ海軍の連携は確認されていない。むしろ中国海軍が尖閣諸島の接続水域内に意図的に入る理由付けとして、ロシア海軍がたまたま利用されたというのが真相のようだ。

「原則としてどの国の側にも立たない」とロシア

中ロは米国への対抗意識が強いが、外交・安保のあらゆる面で連携を強めているわけではない。むしろTHAADのように、自国の国益にともに負の影響を及ぼす案件に限り、協調姿勢を誇示しているだけだと見るべきなのだろう。

それを如実に示したのが、南シナ海問題をめぐる対応だ。

オランダ・ハーグの仲裁裁判所は今月12日、中国が主張する主権や管轄権、歴史的権利に根拠がないと認定した。人工島を造成するなど、南シナ海で実効支配を強める中国の主張に国際法上の根拠がないと断定したわけだ。

「判決に基づくいかなる主張や行動も受け入れない」。習主席は北京を訪問していた欧州連合(EU)のトゥスク大統領にこう語った。とはいえ、中国にとって決して寝耳に水の判決ではなかった。中国は自国に不利な結果をあらかじめ想定し、親中派の国々への外交的な説得を積極的に進めていたからだ。

6月23~24日、ウズベキスタンの首都タシケントで開かれた「上海協力機構」の首脳会議も、その格好の場となった。中国とロシア、さらに中央アジア5カ国のうちトルクメニスタンを除く4カ国が参加する同機構は、もともと地域の安保面での信頼醸成を主眼にしていたが、近年は中国が経済支援をテコに加盟各国との関係を深める場としても利用されてきたからだ。

実際、習主席はタシケントで精力的に2国間会談も行った。新華社によれば、このうちタジキスタンのラフモン大統領は習主席との会談で南シナ海紛争を「国際問題化する試みに反対する」と表明し、中国の立場を全面的に支持したという。

ところがロシアはどうか。仲裁判決後も公式声明は出さず、外務省のザハロワ情報局長が14日の記者会見でようやく、「原則としてどの国の側にも立たない」との公式的な立場を明らかにした。この問題では中立的な姿勢を堅持し、中国を支持しなかったわけだ。

国連総会決議でロシアを支持しなかった中国

国際社会では、中国が南シナ海で実効支配を強める動きはしばしば、ロシアが2年前、ウクライナ領クリミア半島を併合した経緯と同列視される。ともに国際法を順守せず、軍事的な圧力で一方的に「領土」を拡張したという趣旨だ。

では、クリミア併合に対する中国の反応はどうだったか。国連総会はクリミア併合直後の2014年3月末、「ウクライナの領土一体性」を支持する決議を採決している。ロシアはもちろん、アルメニアやベラルーシ、北朝鮮など11カ国がこの決議に反対したが、中国は「棄権」だった。中国もまた、ロシアの行動を支持しなかったわけだ。

クリミアと南シナ海――。中国とロシアが真の「蜜月」関係であれば、国際的な批判の矢面に立たされている両国が共闘してもおかしくないわけだが、そんなレベルには到底、至っていないのが実情といえるだろう。

進まない経済連携

中ロ関係は本当に「蜜月」なのか。相互の疑心は経済協力にも垣間見られる。

中ロは両国間の貿易額を15年に1000億ドル、20年に2000億ドルに伸ばす目標を掲げてきた。しかし、昨年の実績はおよそ635億ドルにとどまり、前年比で30%近くも減少した。

ロシアの中国専門家によれば、15年の中国の対外投資に占める対ロ投資の比率は0・5%にも満たなかったという。プーチン大統領も新華社との会見で、「両国関係がうまく発展するための努力が足りない」と認めている。

確かに、6月末のプーチン大統領訪中の際には、中ロは親密な関係を改めて誇示した。共同声明から個々の経済協力の覚書まで含めて、両国が調印した合意文書は合計で37に上った。

ただ、プーチン大統領が首脳会談後の共同記者発表で例示した両国の協力案件は、東西のパイプラインを通じたロシア産天然ガスの対中供給、モスクワとカザン間の高速鉄道建設など、以前から合意済みのものも多かった。しかも「供給条件を詰めている」と大統領が言及した西ルートの天然ガス供給は、いったん覚書に調印したものの、中国側が難色を示して交渉がほとんど進んでいないのが実情だ。

中央アジアでの中ロの覇権争いに激化の恐れ

さらに懸念材料がある。両首脳が今回、ロシアが主導する経済連合の「ユーラシア経済同盟」と、中国が進める新ユーラシア経済圏構想「一帯一路」の協力に向けた交渉を開始することで合意したことだ。この路線は一歩間違えば旧ソ連、とくに中央アジア地域での中ロの覇権争いを一段と激化させかねない。

ユーラシア経済同盟にはロシア、ベラルーシ、アルメニア、中央アジアのカザフスタン、キルギスが加盟し、さらなる拡大をめざしている。一方の中国もかねて、資源の豊富な中央アジアとの関係強化を進めてきた。中央アジア5カ国の対外貿易額はすでに、ほとんどの国でロシアより中国が上回っている。中央アジアを自国の裏庭とみるロシアと、「一帯一路」を通じて一層の浸透を狙う中国は、水面下で激しい火花を散らしているのが現状だ。

trade amang central Asia & China, Russia

表面的な「蜜月」の裏に、中ロの様々な確執がくすぶる。偶然かもしれないが、ロシアの新聞メディアでは最近、中ロ関係について「失望」(ベドモスチ紙)、「中国は虚構の同盟国」(独立新聞)といった専門家の指摘が目立つようになっている。

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『「中国陣営入り」寸前で踏みとどまった韓国 THAAD配備巡り米中代理戦争』(7/20日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

7/22ZAKZAKによれば、すぐに中国が報復措置を言いだしたとのこと。「千年属国が宗主国に何を言うか」という事です。こうなることは中学生でも分かること。A、B両君が争っている時に、両方に近づいて、A君にはB君の悪口を、B君にはA君の悪口を言っていればA、B両君から信用されないのは当り前です。韓国人の頭は国家レベルでも中学生以下という事でしょう。

<7/22ZAKZAK 中国、THAAD配備で韓国バッシング 環球時報は“対韓報復5カ条”を提唱

米軍の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)」の配備を決めた韓国に対し、中国の「報復5カ条」が浮上した。中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)でも韓国人副総裁を更迭、習近平政権と朴槿恵(パク・クネ)政権は亀裂を深めている。

「THAADは(配備に反対する)中国やロシアの攻撃対象になる」-。韓国のソウル駅前で21日、THAADの配備先に決まった南部の慶尚北道星州の住民ら約2000人が配備に反対するデモを行った。

韓国がTHAAD配備を正式決定した今月8日以降、中国外務省や国防省が相次いで対抗措置に言及。中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は社説で「THAADへの5つの対抗策」として、(1)THAAD配備に関与した韓国政府や企業の取引の禁止(2)韓国政治家の入国禁止(3)人民解放軍による対THAAD技術の研究(4)北朝鮮への制裁の見直し(5)中国とロシアによる米韓共同行動の検討-を中国政府に訴えた。

韓国のハンギョレ新聞は5カ条について「大胆に要約すれば『北朝鮮制裁』から抜け出し『韓国制裁』へと政策の重点を移すべきだという提案だ」と警戒する。

貿易の約2割を占め、最大の取引先である中国が実際に経済制裁を発動すれば、韓国経済に大打撃となる懸念もある。

ジャーナリストの室谷克実氏は「THAAD配備は以前から事実上決まっていたのにいまになって報復の話が出てきたのは、中国が怒っていることを示して、韓国国内を動揺させること自体が目的ではないか」とみる。

AIIBでも中国による韓国外しは露骨だった。韓国が送り込んだ洪起沢(ホン・ギテク)副総裁が事実上更迭され、韓国は副総裁ポストを失う見通しだ。新たにフランス出身者が副総裁に就くとみられる。

韓国たたきの背景に、中国外交の焦りがあるとみるのは、週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏だ。

「中国はTHAAD配備も止められず、南シナ海問題をめぐるハーグ裁定でも孤立化が進むなど、米国による包囲網が狭まっている。中国は、米国に追従する韓国を見捨てようとしているのではないか」

前出の室谷氏は、韓国の外交スタンスは相変わらずだという。

「韓国にとってはTHAADも米中間の“コウモリ外交”の一環に過ぎない。中国としても、制裁を持ち出して韓国をじわじわと痛めつけて、再びすり寄って来るのを待っているというところだろう」と指摘している。>(以上)

7/24産経ニュースでは

朴槿恵&習近平の中韓蜜月はどこへやら…THAAD配備で中国は韓国を恫喝・罵倒 韓国メディアは及び腰 久保田るり子

中国メディアが韓国に“空中戦”を展開中だ。北朝鮮のミサイル脅威に備えるため米韓が在韓米軍への高高度防衛ミサイル(THAAD)配備を決断したことに猛反発、中国メディアが「韓国に制裁を」などと攻撃を繰り返している。これに対し韓国側は、メディアも政界も反発より心配が先立つようで、“中国の報復”を懸念している。朴槿恵大統領が中国・北京の抗日戦勝70周年行事を観覧して10カ月。習近平氏との中韓蜜月はどこへやらだ。

経済報復を示唆する中国

中国は、在韓米軍にTHAADが配備されると主力装備のXバンドレーダーで中国大陸の軍事情報が米国に捕捉されるとして極度に警戒、その配備に猛反発してきた。

米韓両国は、今年2月の北朝鮮による長距離弾道ミサイル発射を受け、かねてから検討していたTHAAD配備の協議開始を決めた。これに中国はさっそく駐中韓国大使を呼び出して抗議、韓国でも駐韓中国大使が「中韓関係は一瞬のうちに破壊されかねない」などと韓国を脅した。その後も中国高官が折に触れては韓国政府にTHAAD問題で圧力をかけ続け、7月8日に米韓が配備を正式発表すると、王毅外相が「冷静に考えてもらいたい」などとさらに恫喝じみた発言を行い、中国国防省が反対声明を出した。

決定後、中国はさらに攻撃的になった。環球時報などのメディアを使って「韓国の政界関係者の入国制限を」「企業に制裁を」「韓国から裏切られた」「THAADをミサイルで狙え」などとと刺激的な言葉で経済報復などを示唆して韓国攻撃を始めたのだ。

だが、韓国メディアの反撃はどこか弱々しい。「韓国は中国のアジアインフラ銀行(AIIB)にも加盟している」「中国が韓国を報復すれば失うものの方が多い」など専門家の意見を取り上げ、沈静化を図ろうとしているが、真正面から中国による干渉を批判する論調はない。

朴槿恵大統領は配備決定後、モンゴルで開かれたアジア欧州会議(ASEM)の夕食会で李克強首相と同席したが、2人は目も合わさず言葉も交わさなかった。同じタイミングで訪中していた韓国与野党の訪中団は、予定していた中国共産党中央対外連絡部主催の昼食会を突然、キャンセルされるなどの嫌がらせを受けている。

蜜月は終わった…しかし歴史戦では中韓協力

朴槿恵氏は就任以来、約3年半で習近平氏と6回の首脳会談を行った。朴氏は昨年9月、国際社会の批判的な声を知りながらも北京の抗日戦勝70周年に参加、軍事パレードを観覧した。蜜月にみえた中韓関係は張り子のトラだった。今年1月に北朝鮮が第4回目の核実験後、構築したはずの中韓首脳のホットラインに中国側は応じず無視した。朴氏は結局、日本の安倍首相と米国のオバマ大統領と電話会談した。

当初、中韓関係接近に好意的だった韓国世論も、最近は「朴槿恵外交は中国に裏切られた」と急激に冷めた。メディアの論調は「問われる対中外交」「重大局面の中韓関係」に変わったが、「中国がTHAAD配備で、『韓国が一方的に米国の肩を持っている』と解釈したら、中韓関係はさらに悪化しかねない」(有力紙「朝鮮日報」7月9日付)と中国批判より韓国の立場への懸念が前に出ている。

THAAD問題に続き、中国の南シナ海領有権問題でも、韓国外交は腰が引けている。オランダ・ハーグの仲裁裁判所で出た中国に対する厳しい裁定について、韓国外務省は「すべての当事国は『DOC』(南シナ海紛争当事国の行動宣言)の完全かつ効果的な履行に取り組むべき」などのコメントをしているが、そこに中国の名指しや批判はなかった。

南シナ海は、韓国にとっても重要なシーレーンで中国の力による現状変更や軍事的緊張は韓国の国益にも直結している。だが、日米と歩調を合わせた積極的は中国批判には出ず、「戦略的なあいまい性」を維持している。中国経済への依存が高いことや、北朝鮮問題での中国の影響力を考慮せざるを得ない、歴史的、地政学的な背景のためだ。

日本にはこうした韓国の曖昧性への不満が強い。日本政府高官は「立場は分かるが、韓国もすでにアジアで影響力のある強国になっている。言うべき時には主張すべきだ」と苦々しい。

しかし一方、中韓は歴史問題では連携している。最近は韓国の英雄である「義士」と呼ばれる安重根(日本の伊藤博文首相を殺害した暗殺者)の遺骨発掘強力で合意した。中国遼寧省での発掘を行う計画だ。歴史問題や反日は両国政府にとって、愛国主義の核心的な共通利益というわけだ。(産経新聞編集局編集委員)>(以上)

ブログ「みずきの女子知韓宣言」によれば

7/23 パククネ政府発足当時の5大錯覚~日本と米国と中国について

趙甲濟(チョ・ガプジェ)の超少数派サイトから井戸の外のバンダービルドさん

錯覚1、

中国はすぐに米国と肩を並べるだろう

⇒最大の勘違い。現実はその逆。中国はほぼ経済危機で、むしろ米国との差が広がる雰囲気。強化されたのは中国の経済ではなく、中国の覇権主義。

錯覚2、

日本は終わった

⇒「錯覚1」に次ぐ大きな勘違い。現実にはほとんどこの正反対。経済、安全保障、科学、文化など、全分野にわたって日本がルネッサンス期(再跳躍)に入る雰囲気。

錯覚3、

米国が過去の歴史問題で、日本をずっと圧迫する

⇒韓国の非理性的な行動(反日)に飽き飽きした米国が、むしろ韓国に向かってしっかり警告してきた状態。

錯覚4、

韓国が強く出れば、日本はひざまずくだろう

⇒慰安婦問題に関連して、日本の追加の謝罪と補償があるまで首脳会談はしないと大きな話をしていたが、最終的には韓国がひざまずいて韓日首脳会談をまず実施。

錯覚5、

米国と中国の両方からラブコールを受ける

⇒現実は「両方から胸ぐらを掴まれた」状態。両方から事実上「コウモリ」扱いを受けて、悪口を言われて、信頼を全部失った状態。

☞錯覚が深かっただけに、発足3年半が経過した現在、不安感や喪失感が非常に大きい状態。

– 歴代政権のうち、パククネ政府ほど国際情勢を大きく誤判して勘違いしていたケースはなかった。

– ほとんど正反対の予測をしていた。確率上、ここまで完全に間違うのも難しいが、最終的にすべてが間違いだった。

– 国際情勢を完全に間違って読み、国が困難な状況に陥るなど、異常な状態が進行。(=旧韓末を繰り返す政府)

バンダービルド 引用ソース https://www.chogabje.com/toron/toron22/view.asp?idx=&id=136073&table=TNTRCGJ&sub_table=TNTR01CGJ&cPage=1

*これ5つ全部ホントその通りですね。 「錯覚2」の「日本がルネッサンス期に入る」というのは正直違うだろうと思いますが、「日本が完全終了した」と韓国が思っていたというのは正しい。 この勘違いをもたらした最大の原因は、韓国メディアがずっと続けてきた「日本を貶める」報道が原因だと思います。 発足時にパククネが出した外交計画については、私、過去に何度か緑文字で書いてきたので、いくつか改めてここに貼っておきますね。 「外交上手」と賞賛されてたパククネが、就任時に掲げていた三つの外交構想は、完全に終わりましたね。

パククネの外交構想は「東アジア平和協力構想」「韓半島信頼プロセス」「ユーラシアイニシアチブ」です。

「東アジア平和協力構想」は、米中のあいだでバランス外交して実利を得つつ、日本を歴史問題で謝罪させて這いつくばらせるというもの。→日本列島に嫌韓が広まり、米国に「反対側に賭けるな」と嫌味をいわれ、中国には「朝貢外交に戻らない?ww」と言われました。

韓半島信頼プロセスは、北朝鮮に約束を守らせ、世界中から圧迫を加えて、統一へ…みたいな。→北発狂。

ユーラシアイニシアチブは、アジアとロシアとEUを繋ぐ(日本は排除)列車をひいて、ウンヌンカンヌン…みたいな。→ウクライナ問題勃発。

さて、パククネはどうするつもりなんでしょうか。

新たに構想を立て直せるだけの柔軟性はあるんでしょうか。

そもそもこんな構想をする時点で、外交音痴極まりないと思いますけど。

日本を舐めすぎなんだよ。

日本もいい加減、「舐めんなボケ」って態度を見せてほしいもんです。 引用 http://oboega-01.blog.jp/archives/1003300689.html おさらいしておくと、そもそもパククネ政権発足後、韓国という国は本格的に二股外交に乗り出しましたが、そこには「米国と中国の二国をウリナラの味方にして、米中韓の三国で日本と北朝鮮を圧迫し、言うことを聞かせる」という計画があったんです。その先には「ウリナラがバランサーとして、米国から中国、ロシアやEUなど、すべての国を繋ぐ存在となる」というさらに壮大な計画もありました。

パククネが発表した韓国の外交の三つの柱は「韓半島信頼プロセス」「北東アジア平和協力構想」「ユーラシア・イニシアチブ」で、いろいろ美しい言葉で飾ってますが、単純に説明すれば私が説明したことに集約できます。

①米中二股して、北朝鮮と日本に圧力をかけて叱りつけて言うことを聞かせる。→「韓半島信頼プロセス」「北東アジア平和協力構想」

②ウリナラがバランサーとして、米国から中国、ロシアやEUなど、すべての国を繋ぐ存在となる→「ユーラシア・イニシアチブ」

シロウトの私が見ても、まったく現実の国際政治を見てないアホみたいな計画としか思えないんですが、パククネが当初「外交大統領!」と誉めたたえられてた大きな理由は、この壮大な計画に対する賞賛でしょう。

韓国人のかゆいところを見事に掻いてくれる計画なんですよ。

韓国メディアも大絶賛して、その計画の路線を歩んでることを当初は賞賛してました(告げ口外交もこの計画のための歩み)。

「日本を米中韓で圧迫できる」と彼らが考えた大きな原因は、もちろん「歴史」です。

韓国と中国と米国は、歴史問題で日本という国を仮想敵にし、日本をサンドバックにすることで楽しく仲良く協調していけると考えたんですね。米国は今も真珠湾のことなどで、日本に対する「恨」を持っているだろうと考えていた。

もちろん米国という国こそ日本の戦後レジーム脱却に立ちはだかる最大の壁だけど、その壁はべつに、韓国人の考えるような「恨」ではない。また米国は、米国民をまとめるために今この段階で日本を仮想敵に置くことなどまったく考えてないでしょう。米国に韓国と同じような「恨」は存在しない。日本の戦後レジーム脱却に立ちはだかる米国という壁は、そういうものとは質の違う壁だ。でも、韓国人にはそういうことが分からない。

結局今もわかってないんだろうと思います。

「ジャパンマネーやロビーのせい」「対中国のため」「永遠の敵も味方もない」などと一生懸命言ってるけど、本質的に分かってない──韓国以外の国の持つ「歴史に対する感覚」というものが、まったく理解できないんだろうなとつくづく思います。

自民党の勉強会発足をビッグニュースとして報道し、米国側の反応(米国が日本を叱りつけてくれること)をワクテカしながら待っていた韓国ですが、結果はコレです。ワクテカしながら待ってただろうに、この報道の小ささには笑うしかないでしょ。

あの国の対日感情・歴史への執着は、西側諸国には理解できないでしょう。

まあ、そもそも日本人も大半が理解できてないといえばできてないんだけどさ。

米国の中央政府は、韓国が提起してくる歴史問題について、もう完全に方向を決めたとみていいかもしれません。もちろん安心はできませんが。

現状、米国の問題は地方ですね。慰安婦像設置には、中央政府は絡んでないんだろうし。中央政府のこういった流れが地方へと波及していけばいいんですが、米国という国の特性(州ごとの自治権の大きさ、中韓移民層の多い地域の存在、短絡的な正義感など)を考えると、まだまだ相当に難しいだろうと思います。

引用 http://oboega-01.blog.jp/archives/1048204908.html

*韓国メディアでもほぼ取り上げられなくなったパククネの壮大な外交構想ですが、日本は覚えておくべきだと思います。 なぜなら韓国はこれを捨ててないし、今後も捨てないからです。 パククネ政府じたいに背を向けたとしても、パククネ政府の外交構想そのものは韓国にとっての「究極に理想の形」なので、いったん収めたように見えたとしても、心情的に捨てられないんです。 韓国はこれを究極の最終目標として持ち続けるんじゃないかなと私は思ってます。 過去の緑文字を掘って、改めてupした理由です。日本は覚えておくべき。>(以上)

鈴置氏同様、韓国は日米に擦り寄り始めたが、それは形だけ。心の中は別のことを考えているので、いつまた逆戻りするかもしれないという事です。日本人はそれをしっかり覚えておく必要があります。『非韓三原則』こそが正しい道です。韓国人は「日本が攻めて来る」と妄想を逞しくし、「北と一緒になって核で日本を這いつくばらせる」と夢見ています。今の日本で侵略戦争したいと思っている人はいないでしょうし、日本の統治時代のように韓国人と付き合いたいと思っている日本人は少ないでしょう。せいぜい、在日とか左翼だけです。日本の主流ではありません。

韓国は真の敵が分からない。だから判断がぶれ、間違う訳です。真の敵は共産主義です。人権を抑圧し、簡単に粛清できるシステムなのに、「北の核で日本を脅せる」というだけでそちらに飛びつくというのは、北の工作の浸透の凄さを物語りますが、北と一緒になれば「先ず自分が粛清される」という事を何故考えないのでしょうか?未熟としか言いようがありません。まあ、日本の左翼も「自分だけは助かる」と思って中国の侵略の手先となって動いている輩が多いので余り言えませんが。でも日本の国民は今度の参院選でも改憲勢力が2/3を超える結果を導き出しました。左翼メデイアが跋扈する中でです。左翼を支持する老人が世代交代すればもっとこの傾向は強まるでしょう。朝日新聞はその時にどう生き延びるのでしょうか?30年後が楽しみです。存在すればの話ですが。

記事

announcement about deployment of THHAD

韓国へのTHAAD配備が正式決定。唐突な発表が意味することとは?(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

米国による地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の配備を韓国が正式に認めた。予想よりも早い動きだった。

政権内でせめぎ合う

—7月8日、在韓米軍へのTHAAD配備が正式に決まりました。

鈴置:韓国国防部と在韓米軍が共同で記者会見し「2017年末までに配備する」と発表しました。極めて唐突感のある発表でした。

米韓両国は3月、THAAD配備に関する協議を始め、6月28日の段階で韓民求(ハン・ミング)国防相は「年末までに決定する」と国会で述べていました。7月5日になっても「時期、場所ともに未定」と答弁していたのです。

というのにその3日後に「配備決定」が発表されたのです。7月13日には配備する場所も、慶尚北道・星州(ソンジュ)の山上の韓国軍対空ミサイル基地内と発表されました。

前回説明した通り、配備拒否派が世論を盛り上げて朴槿恵(パク・クンヘ)大統領を動かそうとした。慌てた賛成派が巻き返し、大統領の裁可を取り付け急きょ発表に持ち込んだ――のです。

前者は中国との関係を、後者は米国との同盟を重視する人々です。韓国を舞台に米中の代理戦争が勃発したのです。

表「THAAD配備決定直前の動き」を見れば、7月1日から8日まで、朴槿恵政権内の拒否派と配備派がせめぎ合ったことがよく分かります。

6月28日 韓民求国防相、国会で「配備は年内に決定」
6月29日 習近平主席、訪中した黄教案首相に配備反対を伝える
7月1日 中央日報の金永煕大記者「放棄」を訴える記事を掲載
趙甲済ドットコムの金泌材記者「放棄論」を厳しく批判
7月4日 朝鮮日報のユ・ヨンウォン軍事専門記者「配備発表を前倒し」
7月5日 東亜日報「漆谷に配備」と報道、社説で「中国の顔色見るな」
韓民求国防相、国会で「時期、地域とも未定」
7月7日 韓国政府、NSCを開催し配備を決定
7月8日

 

 

 

 

国防部と在韓米軍「2017年末に配備」と午前に正式発表
尹炳世外相、配備の正式発表と同時刻に百貨店で買い物
中国外交部、米韓の発表30分後に「強力な不満」と声明
中国国防部「国の安全と地域の均衡のため必要な措置を考慮」
ロシア外務省「地域の緊張を高める」と米国を批判
韓国証券市場で中国関連株が急落、防衛関連株は上げる
共に民主党「密室の決定」と批判、国民の党は「反対」
7月9日  
Global Times社説、外交・安保・経済で「5つの対韓制裁」主張
王毅外相「配備のどんな弁明も説得力がない」
北朝鮮、SLBMを水中から1発発射
7月11日  
北朝鮮軍「配備場所が決まれば物理的に対応」と警告
尹外相、国会で「中ロには対北朝鮮用と重ねて説明済み」
7月12日 仲裁裁判所「南シナ海の中国の主権を認めず」と判決
7月13日 国防部「星州に配備」と正式発表。直前に一度は「発表中止」
7月15日 星州訪問の黄首相ら、反対派3000人に6時間包囲され動けず
「THAAD配備決定」前後の動き(2016年)

米国から見捨てられるところだった

—もし、大統領が「配備拒否」に傾いていたら、どうなったのですか。

鈴置:米韓同盟が大きく傷ついたでしょう。米国は同盟を直ちに破棄するわけではない。が、これを機に在韓米軍の大幅な撤収に動いた可能性が大きい。

韓国を守るために在韓米軍がいるのです。それを防御するためのTHAADを持ち込ませないと韓国が言うのなら「では、出ていきます」と米国が言い出しても不思議はありません。

「配備」の正式な発表を受け、中央日報は解説記事の見出しを「苦悩の末に……朴槿恵政権、韓米同盟を選んだ」(7月9日、韓国語版)としました。日本語版もほぼ同じです。

「配備拒否か賛成かは、米国との同盟を拒否するか続けるかの選択だった」との前提で書いたのです。これが多くの韓国人の実感でしょう。

ある親米保守の韓国の識者に感想を聞いたら「実に危なかった。米国から見捨てられるところだった。中国圏に引き込まれるのを際どいところで踏みとどまった」と胸をなでおろしていました。

「中国陣営入り」寸前で踏みとどまった韓国

THAAD配備巡り米中代理戦争

外交部と国防部が抗争

—今回の「騒動」の火付け役となったのは中央日報でした。

鈴置:その通りです。7月1日の紙面で、同紙の金永煕(キム・ヨンヒ)国際問題大記者が「配備拒否」を訴えたのです(「『南シナ海』が加速させる『韓国の離脱』」参照)。

この中国に近いシニア記者は「THAADを拒否しても、韓米同盟はなんとか維持できる。半面、配備すれば韓中関係は危機的状況に陥る」と主張し、韓国人を説得しようとしました。

しかし、配備拒否を主張したその中央日報でさえ、今となっては「拒否すれば米韓同盟を毀損すると政権が判断した」と書いているのです。

—韓国の国防部が配備発表を急いだのに対し、外交部は反対したと聞きました。

鈴置:左派系紙のハンギョレが「外交部長官の反対にもかかわらず『THAAD決定』強行」(7月13日、韓国語版)という特ダネを書きました。これにより「国防部VS外交部」の抗争が世間に知られました。

ハンギョレは同じ日に日本語版でも「外交部長官の反対押し切り『THAAD配備決定』強行」との見出しで、英語版では「Source: Foreign Minister was opposed to THAAD deployment」と報じました。朴槿恵政権内の米中代理戦争は世界に向け、発信されたわけです。

次期政権がひっくり返す?

—外交部は中国の顔色を見て反対したと言うことですか。

鈴置:ええ、もちろん中ロとの外交摩擦が反対の理由です。ハンギョレ・日本語版の記事から引用します。

  • 政府のある関係者は「尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官は北朝鮮の4回目の核実験と相次ぐ弾道ミサイル発射に対抗し、対北朝鮮制裁の国際協力を構築して強化していかなければならない時期にTHAAD配備を早期決定するのは、中国とロシアの反発など国際協力を損ねるおそれがあるという理由を挙げ、反対意見を明らかにしたと聞いている」と伝えた。

なお、記事にもあるように厳密に言えば、外交部は「配備するな」と主張したのではなく「配備の早期決定」に反対したのです。

中国の厳しい対北制裁を引き出すため、米国が「THAAD」をカード化し、すぐには配備に動かないと踏んだこともあるのでしょう(「米国から『ピエロ役』を押し付けられた朴槿恵」参照)。

実際、7月8日の発表でも「配備は2017年末」と1年半も先に設定したのです。日本の専門家に聞くと、配備にそれほどの時間はかかりません。

国防部は反対派を抑え込むために「配備はもう決めた」と急いで発表した。しかし米国は、中国に対する交渉材料を可能な限り長く使い続けるために「2017年末」に設定したのでしょう。実際に配備してしまえば「外交カード」として使い勝手が悪くなります。

ただ、それ以上遅らすと韓国の次の政権が決定をひっくり返すリスクが出てきます。次期大統領選挙は2017年12月で、政権交代は2018年2月25日です。

「ズボンが破れた」と弁解

—一方で、決定があまりに長引くと、中ロの反発や国内の反対世論が強まると国防部は危惧したのですね(「『南シナ海』が加速させる『韓国の離脱』」参照)。

鈴置:ええ、朝鮮日報のユ・ヨンウォン軍事専門記者が「THAAD、1-2カ月内に配置発表を検討」(7月4日、韓国語版)で、そう指摘しています。

「負けた」外交部が「すねて見せる」事件も発生しました。7月8日午前11時に国防部と在韓米軍が配備を正式に発表したのですが、何と同じ時刻に、尹炳世外相はソウルの新世界デパート江南店で洋服を誂えていたのです。

翌7月9日、毎日経済新聞が「『THAAD配備』発表のその瞬間、江南の百貨店に行った尹炳世」(韓国語版)ですっぱ抜きました。同紙は「外交の責任者としてふさわしい行動ではない」と批判しました。

配備決定に怒った中国とロシアがどんな報復をしてくるか、と韓国人が怯え切っている中での「ショッピング」でした。実際、発表の約30分後に中国外交部は「強力な不満」を表明したのです。

毎日経済新聞の取材に対し、尹炳世外相は「数日前に役所で転び、ズボンが破れた」と奇妙な言い訳をして疑惑を自ら深めました。もちろん他紙もこの特ダネを後追いし、尹炳世外相の無責任さを追及しました。韓国のある識者は、私に対し以下のように語りました。

  • THAAD配備には国防部だけではなく外交部も絡むのだから、尹炳世外相が「配備決定」の記者会見に参加してもおかしくはなかった。それなのに敢えて会見中に買い物をしている姿を世間に見せたのだ。
  • 大統領が自分の意見を受け入れなかったことに対する間接的な抗議だ。中国やロシアに対し「私は配備に反対しました」と弁解する狙いもあったのだろう。
  • ここまで踏み込んで書く新聞はほとんどないが、平均的な韓国人はこう見ている。

米中対立に巻き込まれるな

—韓国メディアは「配備決定」をどう評価したのですか?

鈴置:大きく割れました。7月9日、ハンギョレは社説「パンドラの箱を開けた韓国のTHAAD配備」(日本語版)で政府の決定を厳しく批判しました。

理由は「外交・安保」と「経済」の2点。いずれも中ロとの関係です。その部分を要約しつつ引用します。

  • 第1に、北朝鮮の核問題解決がさらに難しくなり、朝鮮半島周辺で「韓米対朝中ロ」の新冷戦構図が一層強化される。第2に、中国とロシアの反発は韓国経済にも深い暗雲をもたらす可能性がある。

ただ「中ロ」を強調し過ぎると「韓国人の生命がかかる問題で大国の顔色を見るとは弱腰だ」と批判されてしまいます。

そこで先ほど引用した記事のように、政権内部の亀裂を暴くことで「外交部も反対するほどの性急な判断だった」との空気を醸しているのでしょう。

一方、保守系紙のうち、朝鮮日報と東亜日報は「国を守るためのTHAAD配備は当然のこと」と賛成の論陣を張りました。朝鮮日報の7月9日の社説の見出しは「『軍事主権次元のTHAAD配備』 中ロに堂々と」(韓国語版)でした。

ただ、両紙とも、配備により米中対立に巻き込まれないようにすべきだと注文を付けました。容易ではない話です。

THAADこそは米中対立の象徴です。配備決定発表の4日後の7月12日には、南シナ海の問題で、オランダ・ハーグの仲裁裁判所が判断を下すことになっていました。これも米中対立を加速します。

それに巻き込まれるな、というのは現実から完全に遊離した話です。しかし、新聞は建前で説教するものですから、両紙の論説委員ともにこう書かざるをえなかったのでしょう。

揶揄された中央日報

—保守系紙ながら、配備拒否を唱えていた中央日報はどう書いたのですか。

鈴置:そこに注目が集まりました。中央日報は最も親中的であり、かつ最も朴槿恵政権に近いとされる新聞です。THAAD配備を巡り、中国と朴槿恵政権が対立すればどちらの味方をするのか――と誰しも思います。

親米保守の趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムも、配備の発表直後に「明日の中央日報社説が気になる」(7月8日、韓国語)という見出しの記事――揶揄を載せました。無署名の記事でした。要点は以下です。

  • 今日、韓米両国が配備を決定したことに対し、中央日報はどう書くのか。「それでもTHAADは放棄すべきだ」と言うのか「我々の判断が誤っていた」とするのか、あるいは「配備はあくまで中国の了解を得るべきだ」と主張するのか?

「正解」は3番目でした。中央日報は翌7月9日の社説「THAAD韓国配備……精巧な管理で副作用の最小化を」(日本語版)で「まず、中国とロシアの反発を払拭することが急がれる」と主張したのです。

7月11日の社説でも「THAADの配備に先立ち中国の説得に最善を尽くすべき=韓国」(日本語版)と訴えました。中国が「ウン」と言うわけはないので「配備はするな」と言っているのと同然です。

国論は分裂へ

—さて、配備は粛々と進むのでしょうか?

鈴置:韓国でも難しいと見られています。予想されたことですが、配備予定地域の住民が反対運動に乗り出しました。THAADを構成する強力なレーダーが健康被害を起こす、との理由です。

7月15日、黄教案(ファン・ギョンアン)首相と韓民求国防部長官が配備に関し了解を求めるために予定地の慶尚北道・星州を訪れました。しかし、3000人の反対派に取り囲まれ、バスの中に6時間も閉じ込められました。卵やペットボトルも浴びました。

保守系紙は北朝鮮に近い運動家が星州に入り込んで騒ぎを大きくしていると一斉に報じています。国を挙げての「保守対左派」の対立に膨らむ可能性が出てきました。

野党の国会議員の中にもTHAAD配備に賛成する人がいます。このため最大野党の共に民主党は配備そのものには反対せず、決め方の不透明性を批判するに留めていました。

しかし、反対闘争が長期化するなど対立が激しくなれば、それに引きずられて同党は配備自体に反対の姿勢に転じるかもしれません。

5つの対韓制裁

もう1つの障害は中ロ、ことに中国の脅しです。7月8日、中国の外交部は「強烈な不満」を表明しましたし、国防部は「国の安全と地域の均衡を守るための必要な措置をとる」と報復攻撃も示唆しました。

中国共産党の対外威嚇用メディア、環球時報も「5つの対韓制裁」を発表しました。その英語版、Global Timesの社説「China can Counter THAAD Deployment」(7月9日)から引用します。

  • 我々は以下の反撃方法を政府に建議する。まず、THAADに関与する企業の製品が中国市場に入り込むことを禁止する。
  • 配備に賛成した政治家への制裁を実施することもできる。彼らの中国入国と、彼らのファミリービジネスの中国展開の禁止である。
  • 加えて中国軍は(韓国配備の)THAADにミサイルの照準を合わせるなど、その脅威を最小化する。
  • THAAD配備による(軍事)バランスの変化と対北朝鮮制裁の関連を考慮し、中国は対北制裁が北東アジアに及ぼす長期的影響を再評価すべきである。
  • 中国はロシアと共に反撃行動に出ることも検討可能である。

朴槿恵に指導力はあるか

—外交・安保と経済の両面に渡る「対韓制裁」ですね。

鈴置:中国からどうやって苛められるか、韓国人が戦々恐々としているところに、中国はちゃんと具体例を挙げて脅したのです。

なお「政治家の入国だけではなく、そのファミリービジネスも中国では禁止する」とはいかにも中国らしい。政治家が権力を利用して商売するのは当たり前――と中国人が考えていることがよく分かります。

—結局、韓国がTHAAD配備を認めたとは言っても、いつひっくり返るか分からなのですね。

鈴置:その通りです。東亜日報が7月15日に社説「朴槿恵外交チーム、THAAD論議を切りぬける力があるのか」(日本語版)を掲載しました。見出し通り、リーダーシップに乏しい朴槿恵政権がこの難問を乗り切れるのか――との不安の表明でした。

「THAADでの決断を見てほしい。韓国は『離米従中』から反転、海洋勢力側に戻った」と言ってくる韓国人が多い。でも、それを安易に信じるべきではありません。彼らだって本心ではそう思っていないのですから。

(次回に続く)

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『「3つの対立」から読むトルコのクーデター騒動 エルドアン政権に挑んだのは誰か』(7/20日経ビジネスオンライン 池田 信太郎)について

トルコのクーデターはエルドアンの自作自演と言う説もありましたが、マルマリスのホテルで、間一髪難を逃れた所を見ますと、自作自演ではないでしょう。ゴルバチョフが休暇を取っていた時に、身柄を押えられ、エリツインがいなければ保守派の天下となり、共産主義の締め付けが厳しくなったかも知れません。クーデターが成功するかどうかは国家のトップの身柄を押えるか、追放or暗殺するかです。エジプト(モルシを逮捕、裁判で死刑判決)やタイ(タクシン、インラック追放)の例を見てもそうです。今回のトルコのようにトップを逃すと反撃されますので。クーデター側は放送局を押えましたが、エルドアンはSNSを使って市民に蜂起を呼びかけ、軍部に支持が広がりませんでした。欧米はエルドアンが死刑復活を述べたのに対し、「EU加盟はできない」と脅しましたが、エルドアンはEU加盟をもう魅力的とは思っていないでしょう。英国のEU離脱やそれに続く国が出て来るかも知れないような情勢では。今までトルコの加盟を引き延ばして来たキリスト教国の組織が今更何を言うかという所でしょう。EU国へのビザなし渡航も認められなければ、難民受け入れも反故にするかも知れません。

http://www.yomiuri.co.jp/world/20160719-OYT1T50079.html

<2016/07/21(木) NNA EUROPE トルコのビザなしEU渡航、年内実現は困難か

欧州委員会のギュンター・エッティンガー・デジタル経済・社会担当委員は、トルコ国民の欧州連合(EU)へのビザ(査証)なし渡航が年内には実現しないとの見通しを明らかにした。15日夜のクーデター未遂後の政府の強硬姿勢を受けたもの。ロイター通信が18日伝えた。

EUとトルコは3月、トルコ経由でギリシャに密航した移民・難民を国籍にかかわらずトルコに送還することで合意。この協力への見返りとして、ビザなし渡航の実現を約束していた。

同委員は、ビザなし渡航の原案が現在、EU議会で審議されているとした上で、法案が年内に可決される公算は小さいとコメント。エルドアン大統領が国会議員の免責特権の廃止に向け憲法改正を決めたことに加え、野党系の新聞社を閉鎖したり、政府に批判的なジャーナリストを脅迫したりといった強権的な手法を取っていると非難した。

トルコ政府はクーデター後に2万人以上の警察官や公務員、裁判官、軍関係者を更迭あるいは拘束しているほか、同大統領は死刑制度の復活を示唆している。エッティンガー委員はこれについても「政府が望ましくないと見なす裁判官数千人を免職するなど到底許されない」と批判。死刑制度のある国はEUへの加盟は認められないと強調した。>(以上)

イスタンブールは旧名コンスタンテイノープルで東ローマ帝国の首都、東方教会の総本山でした。1453年にオスマン帝国に征服され、イスラムに変わりましたが、教会を破壊することなく上塗りで偶像を閉じ込めるようにしました。そこが今のタリバン(バーミヤンの石仏遺跡の破壊)と違います。バンダリズムです。イスラムも無差別テロを当然とする過激派が出て来るに至り、ムハンマドの教えから遠くなってきている感がします。昔のように異教徒の教会にも上塗りで建物を残したように知恵を働かせば良いのに。思い出しますのは、韓国の日本の総督府の建物の爆破です。彼らもバンダリズムを平気でします。歴史を改竄・捏造する民族ですから仕方がありませんが。

トルコはロシア機撃墜事件で関係が悪化しましたが、エルドアンの謝罪である程度修復したと思われます。トルコのNATO脱退はないと思われます。核を持たないトルコがロシアと対抗は出来ませんので。ただトランプが大統領になれば、NATOとの関係がどうなるのか、ただトランプもやり過ぎれば軍産複合体からの標的になるかも知れません。EUも米国も将来どうなるか見通しできません。その間隙をぬって中国が好き勝手していますが。日本はトルコを含めた友好国を今以上に増やしていかねば。中国のように札束で言うことを聞かせるやり方でなく、地道にニーズにあった技術・資金援助で。

記事

Erdoğan

エルドアン大統領はクーデター失敗を受けて国民に向けて演説した(写真=Abaca/アフロ)

 異なる「2つの潮流」がぶつかり、勢いのあるものが力を失っていくものを書き換えていく。けれども上塗りされた下には、失われたものがなおも力を失わずに眠っている。ふとした瞬間に塗料が剥がれ、裂けた傷口のような隙間から、失われたはずのそれが姿を見せることがある――。

 7月15日に発生したクーデター騒動の報道を見ながら、記者は、トルコという国の文化が抱える独特の「構造」を思っていた。

 記者は2013年、反政府デモで揺れるイスタンブールを訪れた。その様子を「ルポルタージュ・イスタンブール騒乱 「強権の首相よ恥を知れ、建国の父は泣いている!」」として執筆した。当時まだタイイップ・エルドアン大統領は首相だった。

 その取材の折、イスタンブールの旧市街地に位置する「アヤソフィア」を訪れた。史上、この大堂ほど数奇な運命をたどった建物はないだろう。上記の記事に詳解したが、537年、東ローマ(ビザンツ)帝国の皇帝によってキリスト教の大聖堂として建造されたこの建物は、1453年にこの地を陥落させたオスマン帝国のスルタン(王)によってイスラム教のモスクに作り変えられた。さらに20世紀、トルコ共和国を樹立した「トルコ建国の父」ケマル・アタトゥルクは、この建物を宗教施設ではなく「文化遺産」として位置づけ、博物館にしてしまった。

 「キリスト教の大聖堂(東ローマ帝国)」→「イスラム教のモスク、大霊廟(オスマン帝国)」→「博物館(トルコ共和国)」。この“非連続の連続”を、アヤソフィアの壁面に描かれた絵が何より雄弁に物語っていた。

Ayasofya

アヤソフィアの宗教画

 イスラム教では偶像崇拝が禁じられており、モスクの内部で人物画を見ることはない。20世紀の初頭までイスラム教のモスクだったはずの建物の壁面に人物画が描かれているのは、かつてはこの建物がキリスト教の聖堂だったからだ。オスマン帝国によって「上塗り」された塗料が剥がれ落ち、その裏にひそかに息づいていたキリスト教時代の宗教画が露出したのだろう。そして、そもそも私のようにイスラム教徒ではないアジア人がその奥まで足を踏み入れて壁画を眺められるのは、この建物がすでに宗教施設ではなく博物館になっているからだ。

 地理的にはボスポラス海峡で「欧州」と「アジア」を接し、歴史的には「キリスト教」と「イスラム教」、そして「世俗主義(政教分離)」と上塗りされ続けて来たトルコ。しかしアヤソフィアの宗教画がそうであるように、上塗りされた塗料の底には失われたはずのものが息づいており、裂け目から時折顔をのぞかせる。新しいものと古いものとのせめぎ合いこそが、トルコという国の文化の特異さを生み出している。

 トルコのクーデターをどう評価すべきかどうか、情報が錯綜しておりにわかには断じられない。だから本稿では、「異なる潮流がぶつかり合う場所」であるトルコという国の「構造」を説きつつ、クーデター報道を読み解くために前提となる基礎知識をお伝えできればと思っている。

 以下にトルコの政治が抱える3つの「対立構造」を挙げる。いずれもお互いが絡み合っている問題圏であり、単純に切り出せるものではないが、構造を明確にするためにあえて単純化を試みた。

対立その1:世俗主義vsイスラム

 世俗主義(セキュラリズム)とは、政治・社会システムにおいて「政治」と「宗教」を分離すべきという考え方を指す。トルコ国民の大半はイスラム教徒だが、トルコの政治体制は政教分離の考え方を原則としている。

 オスマン帝国が第1次世界大戦に敗れ大幅に国力を衰退させたのちに、帝国を打倒してトルコ共和国を樹立したのが、上記のようにアヤソフィアから宗教色を取り除いたアタトゥルクだ。明治維新後の日本が「脱亜入欧」の欧化政策を進めて近代化を目指したように、アタトゥルクは「脱イスラム入欧」を進めて国力を取り戻そうと努めた。オスマン帝国末期の因習を打破して新しい技術や制度を取り入れなければ国が滅びるという危機感があったのだろう。アタトゥルクはトルコ語を表記するのに用いられていたアラビア文字の使用をやめて、アルファベットを使うようにしたり、公共の式典や公職の勤務中に宗教的な発言をすることすら禁じたりした。

 トルコ共和国にとって建国以来の国是が、この「世俗主義(政教分離)」だったと言っていい。スルタン(王)とカリフ(宗教指導者)が一致している「スルタン=カリフ制」、すなわち「政教一致」政策を採っていたオスマン帝国の政治体制は、アタトゥルクによって導入された世俗主義、「政教分離」政策によって「上塗り」されたわけだ。

 ところが、塗料が剥がれて、その底に息づいていた宗教画が姿を見せるように、トルコの近代政治史には、イスラム色の強い政権が立ち上がり、世俗主義が上塗りしたはずのイスラム主義が首をもたげる瞬間が何度かあった。

 その芽を「クーデター」という手段で潰してきたのが「軍」だった。これまで国軍は3回、クーデターによりイスラム色の強い政権を転覆させている。最近では1997年にネジメッティン・エルバカン政権を退陣に追い込んだ。

 本サイトが配信した新井春美氏による記事「トルコでクーデター未遂、国民の支持得られず」を含む多くの報道で「軍」を「世俗主義の擁護者」「世俗主義の守り手」などと表現しているのは、上記のような理由からだ。

 AKP(公正発展党)を与党とし、エルドアン大統領が率いている現政権は、近代トルコ史上、最もイスラム色の強い政権と言っていいだろう。上でも紹介したルポルタージュから一部を引用するのでその雰囲気の一端に触れていただきたい。

 イスタンブール市長在任時(1994年選出)の言動に、その原点を見ることができる。当時、エルドアン氏はNATO(北大西洋条約機構)からの脱退やEU(欧州連合)への加盟交渉中止を繰り返し主張した。さらに1997年には、政治集会で朗々とイスラム賛美の詩を詠み上げた。

 「モスクはわが兵舎。(モスクの)ドームはわがヘルメット。(モスクの)尖塔はわが銃剣。忠実なるはわが兵士」

 この行為は宗教や人種差別の扇動を禁じる刑法の規定に反するものとして告発された。エルドアン氏は逮捕され、服役し、被選挙権を剥奪されている。

 エルドアン大統領も、自らを脅かし得るのは軍のクーデターであることは予見していた。ゆえに、権力を握る過程で軍の文民統制を徐々に進め、意向に沿わない司令官を更迭するなどして軍を自らの権力下に置くことに腐心して来た。結果、エルドアン大統領は軍を完全に掌握した――つまりトルコ軍は「世俗主義の擁護者」としての牙を抜かれ、現政権の権力に「上塗り」されてしまった、と見られていた。

 つまり「世俗主義vsイスラム」は、「軍vsエルドアン政権」と相似形をなしている。

 新井春美氏は上記の記事で、「上塗り」された軍が勢いを取り戻す土壌をこう説いている。

 一度は骨抜きにされた軍であるが、エルドアン政権に反発する力を徐々に取り戻しつつある。トルコは現在、過激派「イスラム国(IS)」とPKK(クルディスタン労働者党、トルコからの自治を掲げるクルド系武装組織)に対して、二正面作戦を続行中だ。これは、軍の協力がなければどうにも進まない。このように安全保障問題が国家の優先課題になれば軍の発言力は増す。

 2015年に就任したアカル参謀総長は、エルドアン大統領と友好な関係を維持しており、同大統領の娘の結婚式に出席するほどの仲である。とはいえ軍内部には、世俗主義と民主主義の擁護者としての意識を強く持ち、イスラーム政党であるAKP政権と独裁化するエルドアン大統領による治世を快く思わない勢力が相当数、存在している。

 この視点で今回のクーデターを見るならば「世俗主義の擁護者としての力を奪われ、息を潜めていた軍の一部が立ち上がってエルドアン政権に挑戦した」と位置づけることができるだろう。現地報道によるとすでにクーデター勢力は力を失っているとのことなので、結果として、「しかしエルドアン政権の統帥は崩れず、クーデターに参加した勢力は軍の中では主流派にならなかった」という結末になった。

対立その2:都市部vs地方

 民主主義とは何か、あるいは資本主義とは何か、ということをつまびらかに書く紙幅はないし、必要もないだろう。ただ、ここでは以下のように単純化を試みたい。「1票(1人)の下の平等」を礎とするのが民主主義であり、「1円(1トルコリラ)の下の平等」を礎とするのが資本主義である、と。

 エルドアン大統領は、この2つのシステムのズレを知悉している政治家と言える。

 トルコ最大の都市であるイスタンブール、首都のアンカラなど、政治・経済の中心は欧州側、つまりトルコの西部に位置している。一方、アジア側、つまりトルコの東部にはそうした国際都市はない。ただし、広大な国土に多くの国民が生活している。

 単純化して書くならば、「1トルコリラの下の平等」を是とする資本主義の観点から言えば、1人当たりの経済力が強い、つまり豊かな都市生活者に力が集中する。ところが「1票の下の平等」を是とする民主主義の観点から言えば、頭数の多い地方在住者に力が宿ることになる。市民ひとりひとりがどれだけ貧しくても、1票は1票だからだ。

 エルドアン大統領は、保守的、イスラム的な傾向の強い地方在住者の支持を背景に、都市生活者やインテリ層から支持される旧来の政治勢力を打ち破ることで権力を握った政治家だ。ゆえに一般に都市部で人気に乏しく、トルコ東部では圧倒的に支持が強い。記者が2013年に取材したイスタンブール騒動(記事)の折も、同時期に発生したデモの大半が都市部で発生し、東部の地方ではむしろ「反・反政府デモ」が繰り広げられていた。

 エルドアン大統領は、都市生活者の視点からは「地方在住者に迎合しつつ権力を握るポピュリスト」として映り、地方生活者の視点からは「民主主義の力を借りて都市部の既得権益者やそれに連なる軍に挑む改革者」と映る。いずれか一方の描き方では描ききれない。だが、敵対する勢力からすれば、民主主義最高の意思決定ツールである「選挙」で勝ち続ける政権に挑むには、軍という「力」を用いるほかないのは確かだ。

 この政治構造は、例えばタイで地方在住者から支持を集めたタクシン・チナワット氏が政権を握った経緯と重なる。2014年6月、記者はタイ・バンコクで起きたクーデターの様子を取材して、この構造を記事「タイのクーデターを肯定する罪」として書いた。

 ところが今回の報道で、イスタンブールなどの都市部でクーデター勢力に反発するデモが発生したと伝えられた。記者が現地にいたわけではないし、現地の報道機関にはクーデター勢力とエルドアン政権の両者が様々な圧力を及ぼしているため、状況が把握しにくい。だが、いくつかの報道を総合するに、2013年に大規模な反政府デモに身を投じた都市生活者の大半が、今回のクーデターには賛同しなかった可能性が高いと言えそうだ。

 反エルドアン政権の志を持っている都市生活者をしても、クーデターという暴力的な手法に抵抗を覚えたのか。3年間でエルドアン政権の権力掌握がさらに進み、市民が反政府の声を上げられないほどに萎縮しているのか。そもそもクーデター勢力が弱く、政府軍にすぐに鎮圧されてしまったのか。都市部の市民がクーデターを支持しなかった理由は分からない。

 いずれにしても、上記の観点から今回のクーデータを見るならば、「軍の一部が反エルドアン政権を掛け声に立ち上がったが、呼応すべき都市生活者たちの支持を集めることができず、大きな反政府のうねりを生み出せなかった」ということは言えそうだ。

対立その3:「エルドアン政権vsギュレン師」

 休暇で首都を離れていたエルドアン大統領は、クーデター発生直後、CNNの取材に応じて、クーデターがギュレン運動の影響を受けた勢力によるものと非難した。

 「ギュレン運動」とは何か。1941年にトルコ東部に生まれたフェトフッラー・ギュレン氏が提唱し、トルコ全土に支持者を持つ社会運動だ。その思想は、イスラム復興運動にも見え、貧困撲滅などを目指した社会活動にも見える。政治システムとしての世俗主義と、生活と精神のよりどころとしてのイスラムは矛盾しない、という穏健な思想とも説明される。その玉虫色のごとき懐の深さゆえに、イスラム保守層から世俗主義者まで幅広く支持を集めて来た。

 ただ、上記エルドアン大統領の発言を理解する上で重要なのは、その思想の内容ではない。このギュレン氏が、エルドアン大統領が属するAKP設立当初はその強力な支持者であったという事実と、しかし今はエルドアン大統領と袂を分かち、米国に亡命しているという事実だ。

 上で述べたように、エルドアン氏はクーデターで追われることのないように国軍から政治力を奪って権力下に置いた。その過程で、エルドアン氏はギュレン氏の影響力を後ろ盾のひとつとした。かつて両者は蜜月の関係だったと言っていい。

 しかしエルドアン氏が権力を掌握し、政権が強権的な色彩を帯びてゆくなかで両者の関係は次第に悪化。2013年末、エルドアン政権に、閣僚やその親族を巻き込んだ大規模汚職事件が起き、ギュレン派が浸透していると言われる捜査当局がこの捜査に本腰を入れたことで亀裂は決定的になった。2015年、エルドアン政権は、かつて最大の支持勢力だったギュレン派を、国家転覆を企むテロ組織として指定した。いまや両者は明確に「政敵」となっているのだ。

 ただし、ギュレン氏は今回のクーデターに対する関与を否定している。

 上記の経緯から今回のクーデター報道を見るなら「エルドアン政権は、今回のクーデターを、かつての支持母体であり今は政敵となったギュレン派による巻き返しであると見ているが、ギュレン氏は関与を否定した」という理解になるだろう。

3つの対立が複雑に絡み合う

 ここまでトルコの社会に横たわる3つの断絶について書いてきた。世俗主義とイスラム。都市部と地方。そして、ギュレン派とエルドアン政権。いずれも大雑把に要約してしまえば「反政府vs政府」となってしまうが、それぞれの勢力は必ずしも反政府的とは限らないし、重なりもしない。これらの断絶や対立が重層的にせめぎ合いながら一方に寄らずバランスするのが、トルコの政治システムに安定をもたらして来た。バランスが取れないほどに蓄積されたひずみを解消するために採られてきた手法の一つがクーデターだった。

 ひずみは頂点に達していたと言えるだろう。ますますイスラム色を強めるエルドアン政権に対して、「世俗主義者」たちは対抗する術を持てずにいた。2013年にイスタンブールなどで大規模な反政府デモに参加した「都市生活者」たちも、政権の強権にもはや沈黙を守っていた。テロ組織に指定された「ギュレン派」は監視下に置かれ、力を失っていた。エルドアン政権は誰の目にも強くなりすぎていたのだ。

 クーデターがどのような勢力によるものであれ、この圧倒的な構造をリセットする力が働こうとした政治現象と考えて差し支えないだろう。「上塗り」された政治構造の下で息を潜めていた何者かが、つかの間覗いた綻びから現れて弓を引いた。だが、失敗した。リセットの機構は働かなかった。働かないほどにエルドアン政権は強くなっていた。

 クーデターの失敗によって、エルドアン勢力は反政府勢力をさらに追う政治的な理由を手に入れた。すでに政権はクーデターに関与した疑いで反政府的な勢力を拘束し、クーデター防止の名目で「死刑」の復活にも言及している。これまでも報道機関などに対して監視体制を敷くなど言論の自由を認めない姿勢を見せてきたが、その傾向に拍車がかかる可能性もあるだろう。経済的なダメージは別として、一部欧州のメディアが「クーデター騒動はエルドアン大統領の自作自演」と陰謀論を書きたくなる気持ちも分かるほどに、政治的にはエルドアン政権を利するばかりの騒動だった。

 上記のように、エルドアン大統領はかつてEUとNATOの離脱を訴え、「強いトルコ」を取り返そうという政治姿勢が「新オスマン主義」とも称された。その強権の宰相の姿は、英国はEUから離脱すべきと説いた政治家や、「強い米国を再び」と保護主義を訴える大統領候補とも重なって見える。

 民主主義を基盤とした欧州的な価値観を持ち、宗教や文化はイスラムに礎を置き、民族としては中央アジアに近い。いわば、文化と宗教と民族の結節点。コンスタンティノープルがイスタンブールに名を変えたように、異なるものが入れ替わり、交じり合い、その多様性の中でたくみにバランスを取って自在に姿を変えるのがトルコの強さだった。このバランサーが一方に偏ることの地政学的なリスクは世界にとって小さくない。だが、このクーデターによってますます、その可能性は避けがたいものになったと言っていいだろう。

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『「人口問題」では、日本より中国と韓国が有利? 中国に居住する朝鮮族、就職のため韓国へ』(7/19日経ビジネスオンライン 上野泰也)について

日経でも中国の南シナ海の内海化の狙いが載るようになりました。軍事を知らなくては相手の行動の予測もできないし、平和を守るための行動もできないという事です。左翼は中国共産党の手先ですから、「平和」と言う念仏を唱えさせることで、国民を考えさせないようにしてきています。民主主義の主人公は国民ですから、国民が正しい情報を持ち、選挙で相応しい人物を選ばないと亡国になります。

「アメリカでは、人差し指で鼻持ち上げるポーズは、人を見下しているの意味」を持つとネットで読みました。呉勝利がリチャードソン作戦部長に人差し指を立てたとのこと。鼻を持ち上げる動作をしなくても小馬鹿にした動作でしょう。米国もここまで舐められたかという事です。早くオバマから代わった方が良いとしか言いようがありません。

<7/22日経 波立つ海の攻防(3)口をつぐむオバマ氏

「南シナ海の仲裁裁判所の判決に続け」。米副大統領のジョー・バイデン(73)は中国の海洋権益を否定した判決が下った2日後の14日、南シナ海からハワイに戻ったばかりの原子力空母「ジョン・C・ステニス」に乗り込んで乗員を鼓舞した。

Biden on the aircraft carrier

14日、米空母に降り立ったバイデン米副大統領=米軍提供

 米が2015年10月に南シナ海で始めたのが「航行の自由」作戦だ。中国が軍事拠点化する人工島の12カイリ(約22キロメートル)以内に同空母などを送り、この海域が中国の原子力潜水艦にとっての聖域になるのを抑え込む。中国原潜が搭載する核弾頭を積んだ弾道ミサイルは射程8千キロメートルで、南シナ海から太平洋に出て米本土をうかがう動きを野放しにはできないからだ。

 温暖化対策などで米中連携に熱心だった米大統領バラク・オバマ(54)は当初作戦に消極的で「世界の二大経済大国として米中には特別な責任がある」と中国国家主席の習近平(63)を持ち上げていた。だが中国の人工島造成が急ピッチで進んだのを知りゴーサインを出した。

 オバマはその後、ベトナムへの武器輸出の全面解禁、インドへの軍事技術供与、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の韓国配備を矢継ぎ早に決め、対中包囲網を強めた。フィリピンには四半世紀ぶりに米軍が事実上の駐留を始める。

 ただ中国の全面敗訴ともいえる判決にオバマは口をつぐむ。政権末期でこれ以上の大胆な動きが取りづらいのを見透かすように、中国は強気を貫く。

 「南シナ海は中国の核心的利益だ。いかなる軍事挑発も恐れない」。18日に北京で米海軍作戦部長ジョン・リチャードソンを迎えた中国海軍司令官の呉勝利(70)は人さし指を突き立て相手をにらみつけるように言い放った。中国は5~11日に続き、19~21日に軍事演習を実施、軍事拠点化も加速する構えだ。

 「ナトゥナ諸島の軍備を増強する」。インドネシア国防相のリャミザルド・リャクドゥ(66)は18日、南シナ海の自国領に触れた。

 中国が主権の範囲内と主張する「九段線」の外にあるが、同諸島からのインドネシアの排他的経済水域(EEZ)に一部かかり、中国が「伝統的な漁場だ」と漁船や公船を送り込み始めた。中国との争いを避けてきたインドネシアも業を煮やし、兵士を大幅に増やし軍事施設も拡張して権益の保護に動く。

 年明けにオバマから引き継ぐ次期大統領の安保政策がアジアの安定を左右する。

(敬称略)>(以上)

中国の発表する統計データは信頼できません。GDPが6%もある訳はありません。石炭も鉄も余っているというのに。EUも市場経済国に認定しませんでした。まあ、平気で嘘がつける民族ですから。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」ですので。ですから、ハーグの判決も何のその。世界に賄賂を振りまいて、「判決がおかしい」と平気で言える訳です。「勝てば官軍」という事を良く理解している国です。欧米が世界を牛耳ってきた国際基準に異議申し立てしている訳ですが、武力を以て、それを実現しようとするのは時代遅れです。経済制裁すれば分かるでしょう。人民元はボロ屑になるだけです。

<日経ビジネス2016年7月25日号 MARKET 中国「8月ショック」再び?

中国国家統計局が2016年4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率を発表した。市場予想を上回る前年同期比6.7%増。景気減速を予想していた市場に安心感が広がる。しかし足元で続く人民元安が改めて材料視され、世界経済が混乱する可能性は否定できない。

SM in China

経済成長に占める割合が大きい消費に「ゆがみ」が出ている

 中国の国家統計局が7月15日に発表した今年4~6月期の実質GDP(国内総生産)は前年同期比6.7%増で、1~3月期と横ばいだった。事前の予測は6.6%増と、1~3月期(6.7%増)からさらに落ち込むとの見方が多かっただけに、世界の市場では安心感が広がった。もっとも昨年8月に世界市場が混乱するきっかけとなった「中国ショック」が再び起きる懸念はなお消えない。

「新常態」は定着しつつあるが… ●中国の成長率の推移(実質GDPの対前年同期比増加率)

transition of China's GDP

出所:中国国家統計局

 経済成長に占める消費の割合は重みを増している。2016年1~6月のGDPの増加分に占める消費の割合は73.4%と前年同期に比べて13ポイントも高まった。消費主導経済への転換を目指す中国政府の方針に沿った動きだが、中身はいびつだ。「1~6月期の消費を見ると、家具と建築・内装用品が前年同期比15%増と高い伸びを示している。不動産市場の盛り上がりと関係しているのではないか」(東洋証券上海代表処の奥山要一郎首席代表)。

人民元安に目が向く可能性

 中国の不動産価格は広東省深圳市や上海市、北京市といった大都市を中心に急騰している。景気対策のための金融緩和と不動産規制の緩和が不動産販売の拡大と価格急騰を生んでいる。家具などの伸びは、「新たなバブル」と称されることもある不動産価格の高騰と関連しているとの見立てだ。

 一方、堅調な消費を支える所得の上昇にも陰りが見えてきた。米ゴールドマン・サックスの推計によると、2013年に10%を超えていた賃金上昇率は、2016年1~3月期には7.3%に低下。2017年には6%台後半にまで下がるとしており、牽引役としての力強さは確実に失われつつある。

 昨年8月、中国人民銀行が突然、人民元の切り下げを発表。これが世界市場の混乱を招いた。「中国ショック」は今年1月にも再燃。原因として、上場企業の大株主による株式売却禁止措置の期限切れや、サーキットブレーカー制度の導入といったテクニカルな要素が指摘されたが、根底にあったのは人民元相場の下落だった。

 6月の米雇用統計が市場予想を大幅に上回ったほか、英国では新首相が決まったことなどで、世界の金融市場に安心感が広がりつつある。しかし足元の人民元の対米ドル相場は5年半ぶりの元安水準。投資家の脳裏に中国からの資本逃避がよぎる環境ではある。

 「8月は米連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれないため、世界の投資家の目は米国から離れやすい。その目が昨年と同じように中国に向くかもしれない」と外資系証券会社幹部は指摘する。「中国の人民元安はいずれ市場の混乱につながる」(STAウエルス・マネジメント)。その時期は8月ではないのか。市場関係者にはそんな見立てが浮上している。

(上海支局 小平 和良)>(以上)

上野氏、日経の主張する野放図な移民の受入には反対です。日本は米国のように国の成り立ちが移民の国ではありません。上野氏、日経は経済的観点だけで物事を考えているだけでしょう。歴史や文化の重みを故意に軽んじている気がします。今の在日の問題も解決できていないのに、新たに民族問題を惹起するような政策は採るべきではありません。東京都知事選で桜井誠氏が掲げている公約は下記の通りです。

一.外国人生活保護の廃止

二.都内の不法滞在者を半減

三.反日ヘイトスピーチ禁止条例制定

四.総連、民団施設への課税強化

五.違法賭博パチンコ規制の実施

六.韓国学校建設中止

七.コンパクトな東京五輪の実施

これに中韓からの留学生の受入を中止し、国内学生の奨学金の充実(授業料免除も含む)に充てるというのも入れて貰えば。中韓は日本の敵国です。世界に日本の名誉を汚す活動をしている訳ですから。経済だけの発想は「揉み手をする商人」のイメージです。高潔なイメージは全然ありません。「武士道」の世界から遠い世界です。何時も言ってますように、人口減があっても、AI、ITによる生産性向上と海外での所得収支の増加に目を向けるべきです。

記事

 アベノミクスの新3本の矢では、「希望出生率1.8」を目指すという矢が追加されたものの、そもそも1.8では人口減は止まらない。一方で、海外の優秀な人材や移民を積極的に受け入れようという機運もあまり盛り上がらない。人口対策の議論が、参院選においてもなかなか活発化しなかったのは残念である。

shuttered shops in Japan

日本の人口は2008年をピークに減少に転じた。消費や、投資、街の活気も人口減少と無縁ではない

島根県、2040年までに合計特殊出生率2.07を目指す

 日銀が6月27日にホームページに掲載した広報誌「にちぎん」No.46 2016年夏号に、溝口善兵衛・島根県知事と布野幸利・日銀審議委員の対談が含まれていた。

 溝口知事は、元財務省財務官。在任時に多額の円売りドル買い介入を実施したことから「ミスター・ドル」と米国の経済誌が名付けたことがあった。あるマスコミ記者によると、取材で財務官室を訪れたところ、キャラメルを勧められるというユニークな経験をしたという。閑話休題。今回の対談の中で筆者が興味を抱いたのは、溝口知事が島根県で展開している人口対策である。同知事の発言の一部を以下に引用したい。

 「2015年に策定した戦略には、二つの大きな目標があります。一つは、将来、一定のレベルで人口を安定させることができるように、2040年までに合計特殊出生率を2.07まで引き上げること。もう一つは、若者の転出による社会減が少なくなるように、雇用を増やして、2040年までに社会移動を均衡させることです」

 「この二つの目標を長期的展望として見据えながら、今後5年間に取り組む人口減少対策として、4つの大きな施策を推進しています。一つ目は、若者たちが安心して住み、子育てができるような職場を増やすため、産業の振興と雇用の創出を進めること。二つ目は、そうした中で増える若者たちの結婚、出産、子育てを支援していくこと」(以降略)

安倍首相の「希望出生率1.8」では、人口減は止まらず

 安倍晋三首相が掲げる「新たな三本の矢」に含まれている希望出生率1.8では、日本の総人口の減少を食い止めることはできない。溝口知事が言及した2.07(ないし2.08)という「人口置換水準」まで出生率を引き上げる必要があり、政府の人口対策は明らかに踏み込み不足である。

では、この点について安倍首相はどう説明したのだろうか。

 2015年9月24日の記者会見で首相は、「三本の矢」の2番目に「『夢』を紡ぐ『子育て支援』」を掲げた上で、「そのターゲットは、希望出生率1.8の実現です」「多くの方が『子どもを持ちたい』と願いながらも、経済的な理由などで実現できない残念な現実があります」(中略)「そうすれば、今1.4程度に落ち込んでいる出生率を、1.8まで回復できる。そして、家族を持つことの素晴らしさが、『実感』として広がっていけば、子どもを望む人たちがもっと増えることで、人口が安定する『出生率2.08』も十分視野に入ってくる。少子化の流れに『終止符』を打つことができる、と考えています」と発言した。

 政府によって想定されているのは、中間目標的な1.8をまず実現し、その時に世の中の雰囲気が変わっていれば最終目標2.08も「十分視野に入ってくる」という、「たられば」的な道筋である。

 そうした中、政府が海外からの労働力受け入れで門戸を部分的に開いていることについても、アジア全体の状況が見えておらず優秀な人の吸引力は弱いという、興味深い指摘が出てきている。

日本で看護師になった人材は結局、東南アジアへ帰国

 日本経済新聞が5月1日に掲載したコラム「アジアに民族大移動の波  際立つ日本の労働鎖国(けいざい解読)」に、以下の記述があった。

 「バンコクやシンガポールなど東南アジアの大病院で受診すると、必ずといっていいほど日本語が堪能な看護師さんに出会う。尋ねると日本との経済連携協定(EPA)を使って日本で学び国家試験も通ったが、結局は東南アジアに戻って働いているという」

 「日本人の海外居住者を相手にする医療サービスは付加価値が高く、給与でも厚遇される。何も苦労して日本で暮らすことはない。日本が労働市場に『入れてあげた』つもりでも、優秀な人材の働き場は日本国内だけにあるわけではない」

「民族大移動」の向かう先は、製造業大国タイ

 「インバウンド消費の観光客は大歓迎だが労働者はお断り。扉を閉ざす日本の姿は、アジア各国の目には労働鎖国と映る。対照的に東南アジア諸国連合(ASEAN)では『民族大移動』とも呼べる大規模な人口現象が起きている。人を引き寄せる強力な磁力を放つのが製造業大国タイだ」

 「労働人口が薄くなる一方、経済発展で賃金は上がる。先進国経済に移行する前に成長が鈍る『中所得国のわな』の典型だ。難局を脱する一つの選択肢が、内需を支える消費者と生産を担う労働者に『来てもらう』政策。こうしてタイは域内の移民センターとなった」

 「メコン地域ではカンボジア、ラオス、ミャンマーからタイを目指し続々と人が動いている。バンコク近郊の水産加工場で働くミャンマー出身の工員に聞くと、両国の賃金格差は3倍。だがそれ以上に、寛容性や多様性を重んじる仏教の土壌と、タイ独特の『ゆるさ』も魅力だという」

 「日本はどうだろう。寛容を誇れる国だろうか。昨年末に発足したASEAN経済共同体(AEC)は、貿易と投資に注目しがちだが、人の移動の大波もすさまじい。変容するアジアの現実と成長の知恵にも学びたい」

海外からの人の受け入れコストは「投資」

 タイはどうやら、オーストラリア、シンガポール、ドイツなどと同様に、海外からの人の受け入れによる経済力の強化に成功しつつあるようである。

 また、移民ではなく難民の受け入れについても、それにかかるコストは経済成長に向けた「投資」と認識すべきだという声が、少し前の話だが、国際機関の幹部から出ていた。この面でも、日本は明らかに動きが鈍い。

 来日したOECD(経済協力開発機構)デュモン国際移民課長は2月5日、欧州に殺到する難民の問題について「難民は将来的に受け入れ国の経済に貢献する」とした上で、受け入れにかかるコストは「投資と見なすべきだ」と強調した。デュモン氏によると、スウェーデンに到着した難民申請者の約40%は高校卒業以上の学歴があり、職業スキルも持っている。「高齢化する欧州社会で、人手が足りない分野での助けになる」「難民を『負担』と位置付けてはならない」とした。

中国と韓国は、同胞が近隣国にいる点で有利

 日本の後を追う形で、中国や韓国もまた、人口減・少子高齢化への対応策に悩んでいる。だが、日本ではまだほとんど気付かれていないことだが、中国と韓国には海外から優秀な人を呼び集めようとする際に有利な点が1つある。それは、同じ言葉を話す(ないし話せる)人々が、近隣の国々にかなりの数で住んでいるという事実である。

 中国語を話す人々は、アジア各国に少なからず居住しており、華僑が代表例である。一方、韓国の場合、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との関係は冷え込んでいるが、南北統一が将来実現した場合には、労働力不足の問題は数の上では緩和されるはずである。さらにその北にある中国・延辺朝鮮族自治州などにも同じ言葉を話す人がいる。筆者は2015年夏、中国・北朝鮮国境の都市である延吉と丹東を訪れた。延吉は上記自治州の中心である(当コラム 2015年9月8日配信「中国側から眺めて分かった『北朝鮮のいま』」をご参照ください)。

就職のため韓国内で急増、中国の朝鮮族

 韓国の聯合ニュースは5月30日、下記のニュース「居住中国人が100万人突破 外国人全体の半分」を配信した(前半部分のみ引用)。

 「韓国法務部出入国・外国人政策本部が30日公表した統計によると、4月末現在、韓国に居住している中国人は100万0138人(中国籍の朝鮮族の63万0998人含む)で過去最多を記録した。韓国に居住する外国人(197万2580人)の50.7%に当たる」

 「中国人の増加は、就職のため来韓する朝鮮族が急増しているためとされる。中国人は昨年1月末に90万人を突破してから1年3か月で100万人の大台を記録した。このうち朝鮮族は昨年1月の59万5,810人から同12月には62万6,655人と増加傾向にある」

今後、日本の人口はどんどん減り続けるが…

 総務省が6月29日に発表した平成27年(2015年)国勢調査の抽出速報集計結果によると、同年10月1日現在の日本の総人口は1億2711.0万人。大正9年(1920年)の調査開始以来、初めての減少が国勢調査で記録された。

 日本経済の成長力を見ていく上で重要な15~64歳の人口(生産年齢人口)は7591.8万人。ピークだった20年前(1995年)の8716.5万人からの変化は▲1124.7万人である。

 参議院議員選挙のさなかだったにもかかわらず、こうした数字に危機感を抱いて人口対策に真剣に取り組もうという気運が盛り上がってこなかったのは、筆者から見ればなんとも残念なことである。

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『BREXITが深める英国とドイツの亀裂』(7/19日経ビジネスオンライン 熊谷徹)について

ドイツはアフガンからの移民の少年が列車でテロを起こされても未だ移民の受入を継続するつもりでしょうか。学習能力が足りないとしか言いようがありません。ヒットラーを選挙で選び、ユダヤ人の虐殺をしたから(ドイツは国家として虐殺謝罪せず、ヒットラーのせいにして個人賠償しました。ボスニアがカラジッチのせいにして売ったのと同様。日本で戦前は戦争を煽り、戦後は軍部のせいにして反日に邁進している朝日新聞みたいなもの。卑怯者の世界です)とか、第二次大戦後ドイツ人の1200万人の強制移住が発生した時の苦しみとかは過去の話です。それが為に現在起きている問題に目を瞑り、解決を模索しないのでは何をか況やでしょう。政治家が国民の思いを汲み取っていません。ですから欧州では極右と言われる(実は反EU、反移民なだけです)政党の支持率が伸び、米国ではトランプが出てくるわけです。ロシアのプーチンは愛国的で国民の支持率も高いです。中国は一党独裁で国民の意思は関係ありません。都合が悪くなれば弾圧できますので。

ドイツ人がEU離脱を考えないのは当り前のこと。第四帝国と揶揄されるようにEUの仕組み、特に通貨問題で(マルクを止めてユーロ共通通貨にしたことにより)、技術の遅れている国からも富を移転することが可能となりました。

http://ameblo.jp/yopsd905724/entry-11777744427.html

英国も移民反対のメイが首相になり、ボリス・ジョンソンを外相にしたところから、EU離脱を後戻りさせることはないでしょう。ただ離脱交渉がすんなりいくかどうかですが。やはり年数がかかるのでは。ただ、メルケルは英国がEUの義務を果たさず、特権を享受して、引き延ばしすることは許さないでしょう。駆け引きが見ものです。

記事

parliament square in London

7月2日、ロンドンの議会広場でBREXITに抗議する残留派市民。(撮影=熊谷 徹)

 6月23日に英国で行われた国民投票で、過半数の投票者がEU離脱に賛成した。ドイツでは多くの経済学者、報道関係者の間に、「この投票結果によって、欧州は以前の欧州ではなくなった」という沈鬱な空気が流れている。

激動期に戻った欧州

 筆者も、EU第2の経済大国における国民投票でEU離脱派が勝利を収めたことは、1998年にベルリンの壁が崩壊したことに匹敵する「パラダイム・チェンジ(座標軸を覆す出来事)」だと考えている。2つの出来事の間の大きな違いは、ベルリンの壁崩壊が欧州に大きな利益をもたらしたのに対し、BREXITが欧州の地位を大幅に低下させることだ。

 ベルリンの壁崩壊以来約20年間にわたり、欧州は国家間の垣根を取り払い、「連邦」への道を着々と歩んでいた。だがユーロ危機が表面化した2009年末からEUの病が深刻化し、EU離脱派が英国で勝ったことによって「欧州合衆国」の夢は潰えた。筆者は、約20年間続いた欧州の安定期が終わり、再び激動期に入ったという印象を持っている。

英国に厳しい態度を示したメルケル

 国民投票から時間が経つにつれて、「離婚」の当事者たちはお互いに失うものの大きさをひしひしと感じつつある。

 そのことは、ドイツの首相、アンゲラ・メルケルが6月28日に連邦議会で行った演説にはっきり表れている。メルケルは「英国の国民投票の結果は、欧州に深い傷を与えた。この決定を極めて残念に思う。欧州はこれまで様々な危機に遭遇してきたが、過去60年間でこれほど深刻な事態は一度もなかった」と述べ、この決定がEUの将来にとって大きな分水嶺になるという見方を打ち出した。

 メルケルはその上で「EUの家族から去る者に対する扱いは、EUに残る者とは明確に異なる。EUから離脱するのに、EUの良い点だけ享受し続けることは、許されない」と明言した。

英国政府は、EUの「域内での移動と就職の自由」の原則を拒否する一方で、関税同盟などEU単一市場の利益は、将来も引き続き享受したいと考えている。メルケルは演説の中で、「そのような虫の良い話は許されない」として、英国の希望をきっぱりと拒絶したのである。

 さらに、「英国が(EU憲法に相当する)リスボン条約第50条に基づくEU離脱申請を正式に提出しない限り、EUは英国と離脱後の条件について交渉するべきではない」と述べた。

 メルケルによると、英国が引き続きEU単一市場に参加し続けたいのならば、移動と就職の自由などEUの基本的原則を受け入れなくてはならない。ノルウェーとスイスがEUに加盟していないにもかかわらず、単一市場の恩恵を享受しているのは、これらの条件を受け入れているからだ。さらに単一市場に参加する非加盟国は、EUの首脳会議や閣僚理事会に参加する権利はないにもかかわらず、EUに対する「拠出金」は払わなくてはならない。

メイ政権はBREXITを目指す

 英国では7月13日に、内務大臣のテリーザ・メイがキャメロンの後継者として首相に就任した。メイはボリス・ジョンソンほど攻撃的な離脱派ではなく、「EUに懐疑的な残留希望派」だった。だがメイは、移民の制限をすでに公約として掲げている。つまりメイが、「単一市場にアクセスしたいならば、移動の自由を認めよ」というドイツ側の主張を受け入れる可能性は、極めて低い。

 さらにメイは、保守党内の離脱派の急先鋒ボリス・ジョンソンを外務大臣に任命。メイ政権は、離脱を選んだ52%の投票者の意向を尊重せざるを得ないだろう。このため、移動の自由などをめぐって英独が正面衝突し、多くの人々が恐れるBREXITが実現してしまう危険は高い。

 リスボン条約第50条によると、加盟国が離脱を申請してから2年が経過すると、その国の加盟国としての地位は消滅する。この間に英国は、離脱後の関税や市民の滞在権など、複雑かつ膨大な数のテーマについて個別に、EUと交渉しなくてはならない。ドイツ政府部内では、「英国が全ての個別案件について、2年間でEUと合意に至るのは、技術的に不可能だ」という見方が強まっている。

不確実性という「毒」

 ドイツの財界関係者の間では、「欧州経済にとって最も悪いのは、今後2年間にわたり、英国経済の先行きについて不確実な状態が続くことだ」と見る向きが多い。不確実性は、企業が最も忌み嫌う物である。

 企業は、特定の国の前途について不確実性が高まった場合、その国にからむ将来の事業計画の見直しを迫られ、投資計画や雇用計画をストップさせるかもしれない。欧州が第二次世界大戦後、一度も経験したことがない事態なので、2年後に英国がどういう状態になっているかを予測することは、極めて難しい。この予測不可能性と不確実性が、ユーロ危機から回復する過程にある欧州経済にとって、ブレーキとなる危険が高まっている。

 その典型的な例が、フランクフルトのドイツ証券取引所とロンドン証券取引所の合併計画だ。これらの取引所を経営する英独の企業は合併して本社をロンドンに置く計画を進めていた。両社は合併によって世界有数の証券取引所となり、年間経費を4億5000万ユーロ節約する方針だった。しかし国民投票でEU離脱派が勝ったことから、ドイツ証券取引所の株主から「新会社の本社をEU圏外に置くことは、問題だ」という声が浮上。合併計画は暗礁に乗り上げる可能性が強まっている。

BREXITは敗者しか生まない

 英国の国内総生産において工業が占める比率は約10%であり、ドイツよりも大幅に低い。このため物づくり大国ドイツにとって、英国は世界で3番目に重要な輸出先だった。ドイツ商工会議連合会(DIHK)のエリック・シュヴァイツァー会頭は「BREXITは、ドイツ経済にとって大変な打撃だ。ドイツ企業は甚大な変化を経験するだろう。ユーロに対してポンドが下落することで、ドイツ製品の価格が英国にとって割高になるので、売上高は減ると思う。さらに、英国への投資をためらう企業が増えるだろう」。

 ドイツの経済学者、経済団体の幹部たちは、一様に「BREXITは欧州経済に長期的に大きな悪影響をもたらす」という悲観的な見方を打ち出している。

 ミュンヘンに拠点を置くIFO経済研究所のクレメンツ・フュスト所長は、英国での国民投票の結果を「理性の敗北」と呼び、欧州諸国はBREXITのダメージを最小限に抑えるための対策を取らなくてはならないと訴えた。同研究所は、7月初めに発表した研究報告書の中で「英国の貿易額のうち、EU加盟国との貿易額は約50%を占めている。このためBREXITが英国に及ぼす影響は、EUが受ける影響よりも大きくなるだろう」と指摘する。

 そしてIFO研究所は「英国とEUの交渉が不調に終わり、EU離脱後の英国が単一市場にアクセスできなくなった場合、2030年の英国民1人あたりの国内総生産(GDP)は、BREXITが起きなかった場合に比べて、0.6%~3.0%減るだろう。これに対し、ドイツ国民1人あたりのGDPの減少幅は、0.1%~0.3%にとどまる」と予測している。

 今回の国民投票で英国の投票者の約52%がEU離脱に賛成したが、ドイツでは異なる。フォルサ研究所が今年6月中旬に行った世論調査によると、ドイツのEU離脱を望むと答えた回答者は17%にすぎなかった。ドイツは第二次世界大戦後にEUやNATO(北大西洋条約機構)などの国際機関に身を埋めることで、今日の繁栄と安定を築き上げた。同国経済は、ユーロの導入やEU単一市場によって大きな恩恵を受けている。このため英国に比べて、EU加盟国であることに利点を見出す市民が英国よりも多いのだ。

EU改革が喫緊の課題

 経済的な不利益が生じるのを覚悟の上で、EUに背を向ける道を選んだ英国と、共同体に属すことで生じるシナジー効果に期待するドイツの生き方は、水と油のように異なる。ドイツ人の間では、英国が国民投票で下した決断を「不可解」と見る人が圧倒的に多い。

 ドイツにとって、他のEU加盟国が英国にならって離脱への道を歩むことは、最悪のシナリオだ。それは、ドイツの繁栄の基盤である共同体を侵食する動きだからだ。EUが崩壊して、群雄割拠の時代が再来した場合、欧州の力は今に比べて大幅に弱まる。フランス、オランダなど多くの欧州諸国で、EUに反旗を翻す右派ポピュリスト政党が支持率を高めつつあり、EU離脱をテーマにした国民投票の実施を求めている。ドイツは、EUに対する加盟国市民の信頼感を回復させ、他国の離脱を防ぐために、欧州委員会委員の人選に関する透明性の向上や、EUの権限の一部を各国政府・議会に返還することを含めた、EU改革に本腰を入れざるを得ないだろう。

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