『北京震撼、習主席が狙う次の超大物』(6/8日経電子版 編集委員 中沢克二)について

中沢氏は宮崎氏のメルマガを読んで、確認の上で安心して記事にしている気がします。

6/1宮崎正弘の国際ニュース・早読み」  常軌を逸してきたのか、習近平の反腐敗キャンペーン 次の標的は李源潮(国家副主席)か。団派と正面衝突へ

 江沢民率いた上海派を敵に回して、政敵を次々と葬り、国民の喝采をうけてきた習近平だが、この反腐敗キャンペーンも軍人からは恨みを買い、つぎに連立政権のパートナーだった団派と、正面衝突する愚を犯した。  胡錦涛率いる団派(共産主義青年団)は、李克強首相が経済政策立案のポストから外されて、怒り心頭。ふたりが全人代の雛壇でお互いにそっぽを向いている写真は、ひろく世界に配信された。この写真から読み取れるのは太子党vs団派という対立構造が深化し、後戻り出来ない状況へ陥った現実を象徴している。  さきに習近平は胡錦涛の懐刀だった令計画を失脚させた。この余波で令の弟である令完成が秘密ファイルを持ち出して米国へ亡命した。  そしてまた団派に衝撃が走った。 李源潮(国家副主席、政治局員)の側近六人を、取り調べ、失脚させようとしていることだ。彼は江蘇省書記を務めたキャリアがある。  かつて李源潮が江蘇省書記時代に、かれの周りを固めて「ダイヤモンドの六人衆」と言われたのが、李雲峰(江蘇省副省長兼党委常任委委員)、仇和(雲南省副書記)、王眠(遼寧省書記)、楊玉沢(南京市委員会書記)、季建業(南京市長)、趙少康(江蘇省前秘書長)である。  博訊新聞網(5月30日)によれば、この六人が近く中央紀律委員会の調査対象になると報じている。  李源潮は次期党大会(2017年秋)で政治局常務委員会入りが確実とされる団派のホープである。 もし李の側近連中を失脚させる目的があるとすれば、最終の標的は団派の一角を崩す、習近平の深謀遠慮であり、李克強首相の顕著なばかりの影響力低下とあいまって、団派を正面の敵と見据えたことでもある。  しかし一方において、習近平の反腐敗キャンペーンの元締めとなって精力的な活動をつづけてきた王岐山が、最近、習から離れつつあり、習近平政権の権力基盤は大きく揺らいできたとう観測がある。  王岐山の習近平から離脱ともいえる最近の動きに多くのチャイナウォッチャーが注目している。>(以上)

中国と言うのはつくづく三国志の世界だと思います。昨日の敵は今日の友、くっついたり離れたりです。合従連衡策で独りの強いパワーを持つ国が出ないように牽制し合います。習が党書記になった当初は団派+太子党VS上海派だったのが、今は太子党VS団派+上海派となっています。習+王岐山が本当にしっかり結びついているのかも気になる所です。胡錦濤、江沢民、曽慶紅の反撃が北載河会議を前にしてどのように演じられるかです。共産党宣伝部は劉雲山(上海派)が握っています。習の近辺のスキャンダルが出て来るかも知れません。或は米国にいる令計画の弟・完成が重大機密をリークするかもしれません。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160607/frn1606071140001-n1.htm

記事

「習近平(国家)主席が狙うのは超大物だ。とんでもないことが起きかねない」。5月末から北京の政治関係者らは、集まればこんなひそひそ話をしている。減速が目立つ経済などそっちのけだ。震撼(しんかん)が走ったきっかけは、5月30日の共産党中央規律検査委員会の発表。江蘇省の常務副省長、李雲峰が重大な規律違反の疑いで拘束された。彼は党中央委員会の候補委員でもある。

 虎退治の隊長、王岐山はどこに――。中国のインターネットメディアは李雲峰の摘発直後にこう発信した。中央規律検査委トップは4月20日に演説をした後、1カ月以上も動静が伝えられていなかった。報道は行間に「王岐山の潜伏は大物摘発の準備」という事実をにおわせた。

■「本丸は国家副主席、李源潮」説

 なぜ、この江蘇省副省長が大物なのか。話は2000年前後に遡る。李雲峰は江蘇省の交通の要衝にして酢の名産地である鎮江市近郊の出身だ。昨年6月、このコラムで「『江沢民を鎮める』 主席の旅に隠された呪文」と題し、鎮江を舞台にした習近平による元国家主席、江沢民けん制の構図を紹介した。この物語に李雲峰は絡んでいる。

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全国政治協商会議の開幕式に出席した李源潮政治局委員(3月3日、北京の人民大会堂)=写真 小高顕

 江沢民への配慮から「江を鎮める」と読める鎮江の名を冠した大橋とするのを取りやめた頃、李雲峰は、江蘇省共産党委員会の副秘書長だった。省内の重要な政治調整を担っており、江蘇省出身の時のトップ、江沢民への様々な根回しにも一役買った。

 その頃、李雲峰が直接、仕えた江蘇省のトップは現在の国家副主席で党政治局委員の李源潮だった。12年の党大会では「チャイナ・セブン」の有力候補だったが、夢はついえ、国家副主席という外向けの顔の地位に就いた。65歳の李源潮は5月5日、自民党副総裁、高村正彦を団長とする日中友好議員連盟訪中団と会談している。9000万人近い共産主義青年団(共青団)要の人物だ。

 李雲峰は江蘇省を基盤とする李源潮の側近として出世の階段を昇った。李源潮の地元、江蘇省での「大秘書」で、言わば官房長官役。カネの流れを含め、全ての秘密を知る人物だ。彼を失った李源潮のショックは大きい。

 習と王岐山のコンビが、李雲峰を通じて李源潮をけん制する真意はなにか。そこには今、習が置かれた厳しい状況が関係する。5月3日、党機関紙、人民日報は、習が4カ月も前に中央規律検査委の会合で演説した全文を公表した。反攻への烽火(のろし)だった。

 「ある者は交代期に組織が彼を処遇しないと知り、なお側近を送って説き伏せ、票をかき集め、非組織活動をする。地方に独立王国を築き、中央の決定に面従腹背の態度をとる。己の政治上の野心のため手段を選ばない」

 極めて激しい口調だ。断罪された元重慶市トップ、薄熙来(前政治局委員)の例が、現状を指摘している。つまり習が口にした活動をしたとみなされれば、すぐに塀の中に送られる。李雲峰はそれに該当した。では誰のためにやったのか……。

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全国政治協商会議の開幕式を終えて習近平国家主席(左)に話しかける王岐山政治局常務委員(3月3日、北京の人民大会堂)=写真 小高顕

■起死回生の大粛正

 「習近平による大々的な巻き返しだ。夏の『北戴河会議』の時期も近い。王岐山と組み、来年の党大会まで突っ走ろうとしている」。北京の政治ウオッチャーは起死回生に向けた大粛正を予感する。

 習は、今年1月から配下の地方指導者らを通じて、自らが別格の指導者であることを示す「核心意識」を定着させる運動に踏み切った。従来の集団指導制ではなく、習による「一局体制」を目指す練りに練った策だった。

 だが、これはいったん頓挫する。対抗勢力ばかりか、身内のはずの「紅二代」からも「一連の手法は党規約が禁じる個人崇拝の臭いがする」との批判が巻き起こったのだ。メディア締め付け、経済減速の深刻化への不満も相まって風当たりは強まる。習の独走に「待った」がかかった。3年間、飛ぶ鳥を落とす勢いだった習は初めて立ち往生した。

 ここで習と距離がある共青団が揺さぶりをかけた。標的は王岐山だった。共青団の有力者で前国家主席、胡錦濤の側近だった令計画まで手にかけた実動部隊トップへの当て付けである。共青団系のネットメディアは、王岐山一家と極めて親しい任志強を執拗に攻撃した。

 任志強は「紅二代」の不動産王にして、ネット言論界で著名なブロガーだった。歯に衣を着せぬ舌鋒(ぜっぽう)は、党中央宣伝部によるメディア統制を厳しく批判した。ネット上では「正論だ」と注目を集めたが、党中央宣伝部が黙っていなかった。

 加勢したのが共青団系メディア。「任志強が強気なのはなぜか」とあえて指摘したのだ。彼と親しい王岐山の存在を暗示していた。結局、任志強は党の末端組織から一定の処分を受けたが、その結果は、党中央宣伝部系+共青団系VS王岐山、の構図でみると痛み分けの印象だ。

 習の旗色が思わしくない中、注目すべき動きがあった。共青団出身で党序列ナンバー2の首相、李克強がかつてなく活動的になったのだ。李克強は習の母校、清華大学にまで乗り込む。縄張りを侵したばかりでなく、習の専権事項のはずの「反腐敗」にも積極的に言及し始めた。しかし、ここでひるむ習と王岐山のコンビではなかった。それが、いきなりの李雲峰の摘発である。

 李雲峰のボスである李源潮と、李克強は、中国の経済学の泰斗、厲以寧の教え子だ。北京大学で薫陶を受けた同門である。2人には共青団以外に学問上の縁もあった。李源潮への圧力は、李克強へのけん制にもなる。

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全人代が開幕し、政府活動報告をする李克強首相(3月5日、北京の人民大会堂)=写真 小高顕

 とはいえ習が警戒するのは政治センスに乏しいとみる李克強本人より、共青団を仕切る実力者らの動きだ。「胡錦濤が引退し令計画も消された今、共青団の重要な核の一人は李源潮」。共青団関係者が令計画の摘発直後に語っていた。李源潮は党中央組織部長も務めた切れ者である。

 習は既に手を打っていた。党組織部長時代に李源潮が精魂を傾けて作り上げた党幹部登用を規範化するルールを骨抜きにしたのだ。年齢、試験の成績、仕事上の実績・評定などを核とする評価方法は、唯一、絶対的なものではない、との宣言だった。李源潮ルールなら、数に勝る共青団から“成績優秀”な人材が必ず高級幹部の地位に上がって来る。習はこれを良しとしなかった。

 能力ある人材を登用し、能力がないものは首にしたり降格したりできる――。これが習時代の新しい基準だという。つまり、習は自分の近い人材を自在に登用できる。年齢制限に柔軟性を持たせた点も臆測を広げた。

■李克強首相、そして江沢民派へのけん制

 実は、江蘇省の虎退治には、李克強ら共青団へのけん制の他にもう一つ意味があった。同じく江蘇省を基盤にする江沢民グループへの圧力である。

 李雲峰は李源潮の側近ではあるが、江蘇省の地元人脈から江沢民閥にもつながる。江蘇は長く「江沢民王国」だった。習としては、万が一にも、李克強や李源潮が属する共青団系と江沢民系が連携して自分に対抗する事態は避けたい。だからこそ共青団と江沢民の派閥が交錯する江蘇省を再び徹底的に攻めた。

 既に江蘇省無錫出身で江沢民派の元最高指導部メンバー、周永康は断罪した。江沢民や周永康に近い南京市トップだった楊衛沢も塀の中だ。彼らの末路を見た李源潮はおいそれとは動けまい、とみての一手だ。李源潮は側近が拘束された直後の6月1日、あえて共青団中央などが主催する座談会に出席し、健在をアピールした。闘いは始まったばかりだ。

 仮に現職の政治局委員である国家副主席、李源潮本人に手を付けるなら、2012年の薄熙来以来の大事件になる。当時、北京では中南海周辺での銃声事件やクーデター騒ぎもあった。習には二つの道がある。一つは李源潮を実際に摘発する選択肢だ。リスクも高いが、来年に迫る党大会人事を考えれば効果は絶大だろう。一方、李源潮と共青団が恭順の意を示すなら、「寸止め」にする手もある。

 もう一人、鍵を握るのは共青団の裏にいる前国家主席、胡錦濤の動きだ。そして江沢民ら長老の思惑も絡む。夏の「北戴河会議」に向けて、複雑かつ危うい駆け引きが続く。(敬称略)

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