『それでもサンダース氏が降りない理由 最も好感度の低い2人による激戦が始まった』(6/10日経ビジネスオンライン 高濱賛)について

6/10「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」

< 『もしサンダースがクリントンとチケットを組めば。。。。  トランプの当選は覚束なくなる』 

 オバマ大統領の秘策は、民主党予備選で最後までクリントンを猛追したバーニー・サンダースを説得し、「副大統領」のチケットを組ませることになる。そのために、オバマはサンダースをホワイトハウスに招く。

 民主党がふたつに分裂するほどの戦果をあげたサンダースが、もし、この仲介案を受けると民主党は一気に団結するため、トランプの当選の可能性は稀薄となる秘策である。

 予備選の結末はでた。残る問題は党大会での正副大統領チケットが、どのようなコンビとなるか、其れが次の見所だろう。>(以上)

6/12「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」

< 『役者はそろったが、帷幄は不協和音でギシギシと   トランプ、組織が団結に遠く、そして資金集めは立ち後れ

 人気投票ではヒラリー・クリントンと五分五分のドナルド・トランプ陣営、しかしクリントン陣営と決定的な差違は、組織化の立ち後れ、資金集めがようやく開始されるという泥縄的な遅れである。

 まず帷幄をみるとメンバーは揃いつつある。

 戦略チーフはフィクサーとして著名なポール・マニフォート、主将格は真っ先にトランプを支持したクリス・クリスチーヌ(ニュー・ジャージー州知事)。

 資金集めの応援団長格にブッシュ陣営の責任者だったウッディ・ジョンソンとジョン・カスティマテイディスが加わって、共和党からもベテランのライス・プライパスが急遽加わり、なんとか陣営の中核部分が形成された。

 選挙スタッフはと言えば、トランプは70名しかしない。

一方のクリントン陣営にはウォール街や労組からの派遣組で732名のもスタッフ。十倍の開きがある。

 資金面はどうか。クリントンはすでに10億ドルを集めた。

 トランプはこれまでの予備選で5600万ドルを使い果たし、資金切れとなる。

ようやく本格的な資金集めを開始するが、目標は10億ドル。半分も集まらないと予測されている。

 ウォール街と金持ちが依然としてトランプに冷淡だからだ。

 この遅れを取りもどそうと、トランプ陣営は6月10日にニューヨークのフォーシーズンズ・ホテルに幹部を集め、初めての資金キャンペーン対策会議を開催した。

 しかしカスティマティデスはいう。「彼の効果的なテレビ出演をCM費用に換算すれば、優に10億ドルに値する」と強気である。

 さて最大の難題は組織化だろう。

 共和党組織が強いのはニュー・ジャージー州、メリーランド州、そしてカリフォルニア州だが、選挙本番で死命を制するほどの影響力を持つフロリダ、ウィスコンシン、ペンシルバニア、オハイオ州でトランプ選対の組織化が遅れに遅れている。

 ところでバーニー・サンダースはまだ民主党の予備選から撤退しないが、もし「副大統領候補」としてのチケットを引き受けるとなると、トランプの勝ち目はまずなくなると見られている。

しかしサンダース支持者は「それなら棄権する」「トランプに入れる」というウィング現象も予測される状況下、直近の「ワシントンポスト」(6月11日)の世論調査では、第三候補のグレイ・ジョンソン(リバタリアン党)へ投票が相当数流れそうだという。

 1980年のカーター vs レーガンではアンダーソンが第三候補として出馬し、7%を取った。

92年にはブッシュ vs クリントンにロス・ペローが出馬し、19%もとって、優位といわれていたブッシュ落選となった。

 2000年にはラルフ・ネーダーが「緑の党」からでて、3%だったが、こんどはクリントン、トランプともに「嫌い」「大嫌い」とする反応があまりにも強力であり、思わぬ第三党の大飛躍があれば、予測はさらに難しくなる。>

①副大統領に誰が指名されるかによって投票行動が変わるかも・・・民主はサンダースになればトランプに勝ち目はないでしょう。ただヒラリーが受け入れるかです。選挙戦中、互いに遣り合ってきた関係で、プライドの高いヒラリーが呑むかどうかです。6/12日経には「エリザベス・ウオーレン上院議員」の名前が副大統領候補として挙がっていました。これが実現すれば、民主党は大統領・副大統領とも女性になります。ただ、ウオーレンは反ウオール街の立場ですので政策の擦り合わせには苦労するでしょう。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48069

共和党はコンドリーザ・ライスを副大統領にすれば黒人・女性で民主党に対抗できると思いますが、ライスは人種差別主義者と目されるトランプでは受けないでしょう。誰にするのかは予想がつきません。

②第三党の存在・・・リバタリアン党のジョンソンが出れば間違いなく共和党にはダメージで民主党が勝つことになるでしょう。トランプを支持しない共和党員の票が流れますので。

③ヒラリーへのFBIの聴聞・・・ベンガジ事件や私用メールアドレス使用問題で嘘をついてきたヒラリーにどこまでFBIが迫れるかです。この結果如何では大統領候補から辞退も考えられます。そうなれば民主党候補は誰になるのか?

ヒラリーの腐敗も槍玉に挙がっています。中国人から違法に献金を受けたのではないかとの疑惑です。彼女が大統領になれば中国にキツイことは言えないでしょう。共和党が勝ってほしいと思います。

http://www.sankei.com/world/news/160610/wor1606100002-n1.html

記事

—カリフォルニア州などの予備選・党員集会が6月7日に終了。民主、共和両党の大統領候補が事実上決定しました。もっとも、民主党のヒラリー・クリントン元国務長官(64)も共和党のドナルド・トランプ氏(69)も7日の予備選前に、指名に必要な代議員数を獲得していましたから何となく拍子抜けした感がありますが…。 (6月7日実施された両党の予備選・党員集会の投票結果、各候補者が獲得した代議員の総数はこちら

Hillary Rodham Clinton-3

米民主党の大統領候補への指名を確実にしたクリントン氏(写真:The New York Times/アフロ)

高濱:これで2月1日にアイオワ州から始まった予備選は、6月14日に行われるワシントン特別区を残すのみとなりました。長い長い闘いでした。

 史上初の女性大統領が誕生するのか、それとも政治歴ゼロのビジネスマンが第45代大統領になるのか――どちらが大統領になっても前代未聞の米大統領が誕生することになります。

史上最も好感度の低い候補者同士が対決

 もう一つ、クリントン、トランプ両候補ともに米国民からものすごく嫌われている点が気になるところです。5月中旬に実施された世論調査によると、クリントン氏の「非好感度」(unlikeability)は61%、トランプ氏は56%でした。

 なぜそれほど嫌われているのか。

 政策ではなく性格や態度が対象になっているようです。クリントン氏は「傲慢さ」「お高い」、トランプ氏は「人を見下した態度」「品のなさ」といった項目が上がっています。

 もっとも、「非好感度」が高いからといって大統領になる資格がないわけではありません。「好感度」が低くかったリチャード・ニクソン氏が第37代大統領になった例もあります。ただ一般有権者の目線で見ると、「好感度」はある意味で政策面より重要かもしれません。

 米有力紙の政治エディターの一人は筆者にこう述べています。「本選挙に勝つにはクリントン、トランプともにいかに好感度を高めていくかが極めて重要になる。が、一度有権者のマインドに入り込んだ好き嫌いの感覚を払しょくするのは至難の業だ」 (”Clinton’s negatetives surpass Trump’s,” Dana Blanton, FoxNews.com, 5/18/2016)

ヒラリー、トランプの「アキレス腱」はこれだ

 指名に必要な代議員数を獲得したあともトランプ氏の無責任な毒舌は続いています。これが続くようですと、クリントン氏の思うつぼになりかねません。

 当初、泡沫候補と見なされていたトランプ氏の発言は、半ばエンターテインメントとして、ある程度見過ごされてきました。しかし、いやしくも今は、共和党という二大政党の一つの大統領候補への指名を確実にしました。これからは、これまでのようにはいきません。一つ一つの発言が厳しくチェックされます。

 多民族・多文化国家の米国には数々の禁句(タブー)があります。とくに人種、宗教、性別に関する禁句は法的にも禁じられています。

 トランプ氏の暴言に政治的行動を起こした地方議会があります。カリフォルニア州ロサンゼルス近郊のアナハイム、ディズニーランドのある町です。その市議会に4月下旬、トランプ氏の発言を非難する決議案が上程されました。

 賛否両論が拮抗し、結局、同決議案は棚上げされました。「主要政党の大統領候補の発言をめぐって地方議会が非難決議案を論議するのは前代未聞」(同市議会関係者)だそうです。 (”Anaheim City Council to consider resolution denouncing Donald Trump,” Jason Song, Los Angeles Times, 4/25/2016)

 またトランプ氏には詐欺疑惑も浮上しています、自らが不動産投資オンライン講座と称して設置した「トランプ大学」の授業料返還訴訟問題です。この事件を担当した判事(メキシコ系)について、トランプ氏はテレビのインタビューで人種的侮蔑発言をしました。それでなくともメキシコ系移民を「レイプ犯」と言ってのけるトランプ氏のこと、米メディアは「トランプ氏はレイシスト(人種差別主義者)だ」とレッテルを張っています。

 一方のクリントン氏はいまだに「メールゲート」疑惑を引きずっています。私的メールで国家機密が漏えいしたかどうか、真相究明を進めてきた米連邦捜査局(FBI)が近日中に最終判断を下すようです。

 また、夫君と一緒に創設した「クリントン財団」への寄付金を外国政府などから集めるため、国務長官としての職権を乱用したのではないか、といった疑惑も指摘されています。サンダース氏は選挙演説の中でこの問題を取り上げました。 (”Sanders finally raises challenge to Clinton Foundation cronyism,” Larry O’Connor, hotair.com., 6/6/2016)

サンダースが副大統領になる可能性

—民主党全国党大会は7月18~21日までフィアディルフィアで、共和党大会は7月25~28日までクリーブランドでそれぞれ開かれますね。

高濱:クリントン氏とトランプ氏にとって、11月8日の本選挙までの約150日は二つのステージに分けられます。第一ステージは、それぞれが党大統領候補に正式に指名される全国党大会までの約50日間。第二ステージは党大会から11月8日の本選挙までの約100日です。

 第一ステージにクリントン氏がやらねばならない最大の仕事は、撤退を拒否しているバーニー・サンダース上院議員(74)を説得して候補者から降りてもらうこと。そして出来るだけ早期に党内一致結束体制を確立したいところです。

 指名を事実上獲得したとはいえ、同じ党の候補者に連日、自分を批判する発言をされるのは、クリントン氏にとって厄介です。反論せざるを得ませんが、すればするほど党内の亀裂が深まってしまう。トランプ氏との一騎打ちに注がねばならないエネルギーが削がれてしまいます。

 6月7日に6州予備選・党員集会が終わったあとも、サンダース氏は最後まで戦うと息巻いています。全く撤退する気はなさそうです。

 サンダース氏に降りてもらうため、クリントン氏はなんらかの条件を出さねばならないでしょう。可能性の一つはサンダース氏を処遇面で優遇すること。クリントン氏の周辺では「サンダース副大統領起用説」がまことしやかに流れているそうです。

 サンダース氏は5月29日、副大統領候補を受け入れる可能性があるかをテレビ・インタビューでただされて、こう答えています。「今、私の頭は民主党大統領候補の指名を勝ち取ることでいっぱいだ。そのあとどうなるか、わからない」。

 インタビューアーはこう応じました。「典型な政治家の発言だ。それで十分だ。あなたはその(副大統領候補を受け入れる)可能性を否定していない」 (”Bernie Sanders Is Sounding A lot Like A Guy Who May Want To Be Vice preesident,” Jason Easley, politicalusa.com., 5/29/2016)

トランプにとっての「時の氏神」は誰か

 一方のトランプ氏はクリントン批判のオクターブを一気に上げたいところです。が、それよりもなによりも党大会前にどうしてもやらなければならない最優先課題は、党内エスタブリッシュメント(保守本流)との和解にメドをつけることです。

 全国党大会を取り仕切るポール・ライアン下院議長の支持は取り付けました。しかし前々回の大統領選で共和党大統領候補に指名されたジョン・マケイン上院議員や、前回の候補となったミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事のほか、ブッシュ一家が党大会欠席を早々と決めています。トランプを指名する党大会なんかには出られるか、というわけです。

 政治的、道義的、個人的理由からトランプ氏を忌避する共和党員はこうした大物だけではなさそうです。そっぽを向いている共和党の大幹部たちとどうやったら和解できるのか。誰が仲介役になってくれるのか、トランプ氏にとっての「時の氏神」は誰なのか、注目されます。

サンダースが最後まで撤退しない三つの理由

—話を民主党に戻します。サンダース氏は指名獲得が不可能になったのに、どうして撤退しようとしないのですか。

高濱:三つほど理由があると思います。一つは、「貧富の格差を是正する」という自身の政治理念を最後の最後まで訴えたいのです。大統領選ほど効果的に訴えられる場はありません。

 その政治理念に照らして見てみると、「貧富の格差是正」に不熱心なクリントン氏は既成体制派であり、「ウォール・ストリート」に象徴される大企業の代弁者ということになります。

 サンダース氏は自らを社会民主主義者だと言って憚りません。一方のクリントン氏は自らをリベラル派と言わずに、むしろ「プログレッシブ」(改革者)と呼んでいます。

 最近発行された「Alter Egos: Hillary Clinton, Barack Obama, and The Twilight Struggle over American Power」の著者、ニューヨーク・タイムズのマーク・ランドラー氏はクリントン氏を評してこう書いています。「ヒラリー自身、かって『私の政治信条は生まれ育った保守主義的環境に根付いている』とまで言っている。その後民主党に転向、リベラル派の弁護士として社会の不正義や女性差別、人種差別に立ち向かってきた。だがヒラリーのプログレッシブな言動はあくまで保守的な基盤に根差していたと言える」

 社会民主主義者のサンダース氏からしてみれば、同じ民主党員とはいえ、保守主義的の基盤に根差したクリントン氏とは相いれないものがあるのでしょう。

 そのクリントン氏を当初から全面的に支援してきたのは党内エスタブリッシュメントです。サンダース氏が大統領選に立候補して改めて認識したのは、クリントン氏が一般民主党員の票とは無関係な「特別代議員」の票を独占的に集め、指名に必要な代議員数を獲得した事実です。確かにクリントン氏は特別代議員712人のうち571人(6月7日現在)を獲得しています。

 サンダース氏は、民主党のこうした旧態依然としたルールを変えるべきだと主張しています。けれども党執行部は現段階では耳を貸そうとしていません。

 二つ目は、サンダース氏自身が口癖のように言っている以下の理由です。「ここで引き下がるわけにはいかない。撤退は民主主義の常識の範囲を著しく侵す行為につながるからだ」。

 政治ジャーナリストのダニエル・デペトリス氏はこのサンダース氏の発言を次のように読み解いています。「サンダース自身、代議員獲得争いで負けたことは十分わかっている。ただし、予選選挙が進む中で、『代議員数争い』とか『従来からの選挙常識』といったものが、有権者のパッションや現状に対する憤りによってかき消され、隅に追いやられた」。

 「確かにサンダースは、(民主党大統領候補には指名されることのない)死人が歩き続けているようなものだ。彼は選挙運動を、民主党内の旧態依然とした悪習を外部に暴露する伝達手段として使っているのだ。自分の始めたことは、『党を改革する』という道義に基づく本物の一揆だと信じて疑うことがない」 (”Wjy Bernie Sanders Won’t guit,” Daniel R. DePetris, The National Interest, 5/26/2016)

 三つ目は、この「老兵」を最初から今まで支持し続けてくれた若者たちへの「仁義」(Duty)のようなものかもしれません。

 世論調査で、サンダース氏は17~29歳までの若年層から150万票を獲得していることが判明しました。これに対して、クリントン、トランプの両氏に流れた若年層の票の合計は120万票。つまり、二人の合計よりも30万票多い票を得たことになります。若者はどこの国でも理想を追い求めます。「貧富の格差是正」もさることながら、「公立大学授業料免除」も若者にアピールしたのでしょう。 (”Updated–Total Youth Votes in 2016 Primaries and Caucuses,” The Center for Information & Research on Civil Learning and Engagement, 4/28/2016)

 2月以降、サンダース氏を密着取材してきたソーシャルメディアの記者は筆者にこう述べています。「若者たちは手弁当で選挙運動を続けている。サンダースはこれまでついてきた若者たちを裏切るわけにはいかない。代議員獲得争いでは敗れたが、自分を応援してくれ、票を投じてくれた党員990万人の生の声を7月の党大会会場に届けなければならないと考えているのだ」。

第三の党「リバタリアン党」はトランプ票を食うか

—第三政党「リバタリアン党」から6月29日、ゲーリー・ジョンソン元ニューメキシコ州知事が立候補しました。クリントン氏とトランプ氏の一騎打ちに影響を与えるでしょうか。

高濱:リバタリアン党は共和党と同じく「小さな政府」を目指しています。連邦政府の支出を削減することで均衡財政と減税を実現すると主張する「財政保守」の党です。ただし社会政策は民主党寄りです。同性結婚の権利を擁護しており、人工妊娠中絶にも寛容です。

 リバタリアン党を取材するテレビ局の政治記者の一人は筆者にこう解説しています。「ジョンソンは08年大統領選でロン・ポール下院議員(16年の大統領選に共和党から立候補したランド・ポール上院議員の父親)を支持するなど共和党穏健派とのつながりが深い。今回の出馬はトランプに乗っ取られた共和党の反トランプ分子の受け皿になろうとする意味合いがある」。

 となると、ジョンソン氏の立候補によって票を奪われる可能性があるのはトランプ氏です。NBCとウォールストリート・ジャーナルが5月19日に実施した世論調査では「第三の候補に投票するか」との質問に、「検討する」と答えた人が47%もいました。 (”More Americans Consider Third-party Options,” Byron Tau, Wall Street Journal, 5/24/2016)

 また前述のFoxニュースの世論調査の支持率では、トランプ氏42%、クリントン氏39%に続き、ジョンソン氏は10%を獲得しています。トランプ氏を忌避する共和党支持者がジョンソン氏に流れることは十分考えられます。 (”Fox News Poll: Trump tops Clinton, both seen as deeply flawed,” Dana Blanton, FoxNews.com., 5/18/2016)

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