6/10日経朝刊で小原凡司氏は中国の軍艦の尖閣接続水域侵入について、「日ロ双方の艦艇に対抗か」として「中国は尖閣を中国領と明記した領海法を制定し、国連海洋法条約に規定する無害通航を認めていない。中国海軍の艦長は中国が主張する「領海」に進出する可能性があるロシア海軍の艦艇と、それを警戒監視する海上自衛隊の護衛艦に対処したのではないか。ロシアと共同で行動したのではないだろう。中国が接続水域に入ったと言っても、尖閣諸島の久米島と大正島の付近をなめるような抑制的な動きだ。中国が事態をエスカレートさせる意図はないように思える」とありました。それなら、南シナ海も無害通航を認めないのでしょう。現実には尖閣も南シナ海も米艦艇、海自艦が遊弋しています。抑止できないのは中国海軍の実力が伴っていないからでしょう。
接続水域侵入はアドバルーンの一種で、当然中国政府と一体となってやっていると思われます。斎木次官が程駐日大使へ「政府と軍は連携を取れているのか」という抗議(6/10日経朝刊)したのは、政府と軍が別々な行動を取っているという前提です。胡錦濤時代は上海派が軍の中枢を握っていて江沢民が嫌がらせで胡錦濤の知らない所で軍を動かしていましたが、習は軍の人事を自派で固めました。勿論、上海派の軍人の怨念は物凄いものがあると思われますが。接続水域侵入は、6/6小生のブログで書いた「サラミ・スライス戦略」の一環で、日本と米国の対応の仕方をジックリ見極めようとしているのでは。ただ「民間漁船」を侵入させてという「キャベツ戦術」には反します。軍艦が出れば海自艦が出動し、ひいては米軍の出動も可能となりますので。
韓国の歴史を加害者と被害者と区別して見る見方はおかしいのでは。それであれば韓国の最大の加害者は中国ではないか。中国に文句も言わず、日本にだけ難癖をつけるのは二重基準です。そもそも、加害者と被害者の区別を誰がするのか?判断基準は法律or道徳になるのでしょう。それは世界各国で違いがあります。中華・小中華の自己中と韓国の事大主義の為せる業でしょう。日本人の誰もがオバマの訪広で免罪符を貰ったなんて思っていないでしょう。「和解が進んだ」とだけ。中韓は日本との歴史戦で日本の名誉を失わせ、金を強請り取ることしか考えていません。欧州の和解はドイツに対して寛容な国があったればこそです。「千年たっても加害者と被害者の立場は変わらない」という国家元首のいる国とは永遠に和解できないだけでなく、正真正銘の敵国と認識すべきです。戦争の善悪はともかく、戦争は人類の歴史上繰り返されて来たもので、今も世界のどこかしこで起きています。国際法上も戦争は「国際紛争の解決手段」として違法ではありません。侵略戦争は違法ですが、自衛戦争と侵略戦争の区別は難しく定義も明確ではありません。実質、戦争は現実的に起きていることを見ると、国際法上合法と見るしかないのでは。石川明人准教授は『戦争は人間的な営みである』という本を書いています。小生は、他の動物には見られない同種の生物への攻撃をするのは多分人間だけと思っています。知的レベルの高い動物としての性かも。
韓国国民は特異体質の持主です。「妬み」「嫉み」「恨み」「駄々こね」「嘘つき」「強請り」「タカリ」と挙げればキリがありません。「火病持ち」で合理的精神のない未熟な民族です。韓国・中国がここまで増長した原因は日米の甘やかしにもあります。日米両国はもっと毅然たる態度で臨むべし。カーター国防長官の韓国外しは当然です。韓国はレッド・チームも同然な行動を取ってきた訳ですから。もう後戻りはできないのでは。時すでに遅しです。韓国は中国の属国に、北朝鮮は米国と平和条約を結び、捻じれが起きるかもしれません。日本とロシアも対中包囲網として平和条約締結が必要となるでしょう。山縣有朋ですら、ロシアと結んで英米に対抗し、中国には武力を用いて積極的に介入しようという意図を有していたのですから。(川田稔 著『原敬と山県有朋―国家構想をめぐる外交と内政』)
6/9記事
6月4日、シンガポールで開催されたアジア安全保障対話で、米国のカーター国防長官が列挙した「安全保障のネットワークに前向きな国」に韓国は含まれなかった(写真=AP/アフロ)
(前回から読む)
「やはり、オバマ(Barack Obama)は日本に免罪符を与えた」と韓国で不満が渦巻く。
たった150メートルなのに
—オバマ大統領が5月27日、広島の平和記念公園を訪れました。韓国メディアはどう反応しましたか?
鈴置:どの新聞の社説も「オバマ大統領が韓国人被爆者に十分に気を配らなかったこと」を中心に論じました。
半面「米中の間で韓国が二股外交を展開し得る空間が一気に狭まった」との指摘は見当たりませんでした。
朝鮮日報の姜天錫(カン・チョンソク)論説顧問が「大局を見落とすな」と懸念した通りになりました(「韓国は『尊敬される国』になるのか」参照)。
保守系紙、中央日報の社説(5月28日、日本語版)の見出しは「惜しまれるオバマ大統領の広島訪問=韓国」でした。
「惜しまれた」のは、韓国人被爆者の慰霊碑に大統領が足を運ばなかったことです。その部分を引用します。
- オバマ大統領は原爆犠牲者慰霊碑に献花し、故人を追悼した。しかしそこからわずか150メートルの距離にある韓国人犠牲者慰霊碑には足を運ばなかった。演説で「数万人の韓国人」に言及しただけだ。韓国人の慰霊碑に行って韓国人の霊を慰めるべきだった。
- オバマ大統領は韓半島の非核化にさえ言及しなかった。米国の核兵器が韓国人に残した傷と、韓半島の厳然たる現実に背を向けたまま日本との歴史的な和解に傍点を打った(強調した)広島訪問が、我々を残念な気持ちにさせた。
安倍に与えた免罪符
—オバマ大統領は演説で「数万人」ではなく「数千人の朝鮮半島出身の人々」と語っていませんでしたか。
鈴置:韓国では、広島と長崎を合わせて3万人の韓国人が原爆によって亡くなったとされています。中央日報は米大統領の発言を「韓国説」に合わせて書き変えたと思われます。
東亜日報も5月28日に社説を載せました。日本語版では「原爆慰霊碑を訪れた米大統領、北朝鮮の核を頭上に載せて暮らす韓国」の見出しで掲載されました。
ただ、大元の韓国語版の「日本の原爆慰霊碑を訪れた米オバマ、北の核の解決はどうするのか」と内容がかなり異なります。そこで韓国語版をテキストにし、ポイントを翻訳します。
- オバマ大統領は韓国人原爆被害者にも言及したが、150メートル離れた韓国人慰霊碑にはついに訪れなかった。我々としては物足りなさを感じる他はない。
- 彼は原爆投下に対し謝罪の発言はしなかった。しかし安倍晋三総理と並んで献花し、日本人被害者を抱擁する姿を全世界に見せた。
- これにより「被害者イメージ」を政治的に利用しようとする安倍政権に免罪符を与えたと言えよう。
左派も保守もオバマに不満
—いまだに「日本の被害者コスプレ」「米国から免罪符」と書いているのですね。
鈴置:韓国メディアはオバマ大統領の広島訪問前から、小ずるい日本がうまく立ち回って免罪符を得ようとしている、と報じてきました(「日本の『被害者なりすまし』を許すな」参照)。
広島訪問の後は「オバマが韓国人慰霊碑を無視した」と強調されたこともあって「ずるい日本」と「日本を許した米国」への憤まんが増幅したのです。
左派系紙、ハンギョレの社説は「オバマ大統領は原爆投下で民間人が被害を受けたことに関し明確に謝罪していない」と書きました。これは保守系紙にない批判でした。が、基本的な主張は保守系紙と同じ「韓国にはちゃんと謝らなかった」との難詰でした。
「方向を誤ったオバマ大統領の広島訪問」(5月28日、日本語版)のポイントが以下です。
オバマ大統領が韓国人慰霊碑に足を運ばなかったのは言い訳の余地がない。韓国人被爆者は日本の植民地支配と原爆の被害を同時に受けた、まさに最も罪とは無縁の民間人だ。
オバマ大統領は式典に日本人被爆者を参加させながら、現地を訪れた韓国人原爆被害者とは会おうともしなかった。
安倍政権は早くも今回の訪問を「被害者日本」のイメージ作りに活用している。
なお、「被害者日本のイメージ作り」に関し、この社説は具体例を挙げていません。記事の中でこの文章だけがぽつんと浮いています。
ハンギョレも声を大にして「被害者コスプレ」と批判してきたので、それを裏付ける事実が出て来なくとも「安倍がコスプレに活用し始めた」と書かざるを得なかったのでしょう。
音無しの朝鮮日報
—最大手の朝鮮日報の社説は「広島訪問」をどう書いたのですか?
鈴置:それが何と、社説では一切取り上げなかったのです。ほぼすべての韓国紙が社説で論じたというのに……。異様でした。
冒頭でも触れたように「広島訪問」2週間前の5月13日、姜天錫論説顧問が「広島での米日の平和ショーを見守る韓国人慰霊碑」(韓国語版)を書いたばかりでした。
「我々はオバマ広島訪問に関し『韓国人も謝罪の対象になるのか』という点にこだわっている。米中が対決姿勢を明確にするという世界の大勢の変化を見落とせば、また、国を滅ぼす」との主張です。
大記者がそう論陣を張ってしまった以上「韓国はちゃんと謝ってもらえなかった」ことを軸にした社説はさすがに書きにくかったと思われます。
もちろん「韓国人被爆者」には一切触れずに、姜天錫顧問張りの「大局論」を載せる手もあります。でも、そんな社説を載せたら「韓国人被爆者をなぜ無視したのか」と抗議が殺到したでしょう。
そこで朝鮮日報の論説委員会はこの日「広島」に関してはパスすることにしたと思われます。
保険をかけた?
—少数説は語りにくいのですね。
鈴置:それは日本でも同じことです。反対に、他の人と同じことを言っておけば、誰からも文句は来ない。
ただ、朝鮮日報も「保険」をかけたくなったのかもしれません。5月30日になって「萬物相」という名物コラムに、姜仁仙(カン・インソン)論説委員が「広島のオバマ」(韓国語版)を書きました。
このコラムは「オバマ大統領は150メートル離れた朝鮮人の慰霊碑は訪れなかった」と一言だけ韓国人被爆者に触れた後、以下のように――他紙の社説と同様の主張を展開しました。
- 原爆で被害を受けた最初の国とのイメージが強くなるほど、日本が第2次世界大戦の加害者であるとの歴史は曖昧になる。
- 米国は、広島訪問は謝罪ではないと明言した。だが、日本の被害国のイメージを浮き彫りにした。日本が誠意ある謝罪をしていないという事実は薄れた。
一犬、虚に吠ゆれば
—なるほど。大記者、姜天錫論説顧問の「顔」は立てつつも「免罪符論」では他紙に追従したのですね。
鈴置:韓国では一度、被害者に認定してもらえば相手を高みから攻撃できます。だから当然、日本もその作戦で来ると思い込んでいる。
そこでメディアは、謝罪はなかったのに、その事実には目を向けず「また、日本にやられた」と悔しがっているのです。韓国人は「自分の影」に怯えたのです。
でも、皆が怯えたので韓国では「日本が免罪符を得た」ことになってしまいました。まさに「一犬、虚に吠ゆれば万犬、実を伝う」です。
—そう言えば中央日報の社説が、日本の政府だけではなくメディアに対しても「オバマが広島へ行っても、免罪符を貰ったといい気になるなよ」と予め威嚇していましたね。
鈴置:「オバマ大統領の性急な広島訪問は遺憾=韓国」(5月12日、日本語版)です。その部分は以下です。
- 日本の世論はオバマ大統領の広島訪問自体を謝罪として受け止める可能性が高い。すでに日本メディアはオバマ大統領の広島訪問を「歴史的事件」として特筆大書している。
- 戦犯国が被害者に化けるという、あきれるような事態が生じないよう、日本政府・メディアは我田引水式の解釈や過度な意味付けを自制しなければいけない。
日経も朝日も
—日本のメディアは「謝罪はなかった」と書いています。
鈴置:実際、そうだったからです。別段、中央日報に脅されたから「謝罪はなかった」と書いているわけではありません。
日経新聞の大石格編集委員は5月28日の1面のコラム「『歴史的訪問』どう生かす」で「オバマ大統領は謝罪のために被爆地に足を運んだのではない」とはっきり書きました。
朝日新聞は5月28日付の社説「核なき世界への転換点」でオバマ大統領が謝罪はもちろん、原爆投下への責任に触れることもなかったとして「失望の声も上がった」と書きました。
日経の記事が「それでもなお、今回の訪問が日米双方の心に残るわだかまりを解きほぐす大きな一歩になった」と前向きに評価したのとは異なります。
でも日本では――米国でもそうですが、広島訪問への評価は様々であるにしろ「謝罪はなかった」という事実は共有されたのです。
というのに韓国だけが「事実上の謝罪により、日本は免罪符を得た」と信じ「自分は外された」とひとり不満を募らせているのです。
始まった「本当の韓国外し」
—韓国は、大丈夫でしょうか。
鈴置:大丈夫ではないと思います。「日米から外された」と韓国が勘違いして怒っているうちに、本当に米国から外され始めました。
カーター(Ashton Carter)米国防長官は6月4日、シンガポールで開かれた安全保障対話での演説で「原則に立脚した安全保障のネットワーク(principled security network )」の重要性を繰り返し強調しました。
米国とアジアの国々が安全保障に関する多国間の協力体制を作る――との構想です。もちろん、軍事力でアジアの海に勢力を拡大する中国が念頭にあります。演説のテキストと動画はこちらで見られます。
カーター長官は安全保障のネットワークに前向きな国の名をいちいち挙げ、その国と米国の具体的な協力の中身も紹介しました。挙げられた国は日本、豪州、フィリピン、インド、ベトナム、シンガポールの6カ国です。
ここには韓国の名は出てこず「北朝鮮の挑発に対応するための米日韓3国協力」のくだりでチラリと登場しただけでした。
米韓同盟はいつまで持つのか
—露骨な「韓国外し」ですね。
鈴置:米国が「外す」のは当然です。韓国は中国と敵対するのを避けようと、米韓同盟を対北朝鮮専用に変えようとしている。韓国自身がこっそりと外れようとしているのです。事実上の対中包囲網の参加国リストに、韓国の名がないのは驚くべきことではありません。
今回のカーター演説のニュースは「韓国は枠外の国」と米国がはっきりとさせたことです。これを聞いて「米韓同盟がいつまで持つか分からない」と考える日本の専門家が増えました。
というのに韓国人は「憎い日本に免罪符を出した米国」に、ひとり身を焦している。お門違いのうえ、世界の流れを見落とした議論に没頭しているのです。姜天錫論説顧問が「韓国人よ、目を覚ませ!」と叫びたくなるのは当然でしょう。
(次回に続く)=6月10日に掲載予定
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日米両国政府は「謝罪」を抜きにすることで、オバマ大統領の広島訪問を乗り切った(写真=AP/アフロ)
(前回から読む)
感情のまま、思い付きで動く韓国外交。それを懸念する声が、さすがに内側から出てきた。
謝罪はオバマでなく安倍に求めよ
—前回は、韓国は自分たちだけで通じる独自の世界観と理屈で動いている、との話でした。
鈴置:それを誰かが指摘するのかな……と思って見ていたら、6月1日に朝鮮日報の蘇于鉦(ソヌ・ジョン)論説委員が「ベトナム、広島、リ・スヨン」(韓国語版)を書きました。
2005年から2010年まで東京特派員を務めた後、国際部長などを歴任した記者で、名文家としても名高い。この記事は実に興味深いのです。
主張の骨格は前回にも紹介した、朝鮮日報の姜天錫論説顧問の「オバマ広島訪問の本質を見落とすな」と同じです。
ただ、枝葉に当たる部分で「韓国人特有のロジックが外国では奇妙に受け止められるであろう」と指摘したのです。
記事の構成上は「枝葉」に当たりますが、その割には書き込んであるので筆者は、本当はこれを書きたかったのではないかと思えます。以下、その部分を引用します。
- 米大統領の広島行きで日本の戦争責任と植民地支配の責任が薄らぐ可能性がある。だから韓国は反対し、懸念してきた。だが、その思い通りにはならなかった。
- すると今度は反対側の歴史を持ち出した。米国の原爆により数万人の韓国人が命を落とした。韓国は被害国だ。だから米大統領が広島に行くなら、韓国人慰霊碑も参拝せねばならない、という理屈だ。
- 我々はこうした論法を当然だと考えている。しかし、支配・被支配の善悪論理に慣れていない他国は二律背反的に聞くかもしれない。
- 韓国は「原爆投下を招いたのは日本だ」と信じている。「韓国人の犠牲が出たのも日本のせい」だ。
- そうだとするなら、韓国人慰霊碑への訪問を要求する相手は日本の総理ではないのか。なぜ米大統領に韓国人慰霊碑への訪問を要求するのか。米大統領の広島訪問を懸念して反対する一方で、韓国人慰霊碑への訪問を要求するのは矛盾ではないのか――。
- こうした視点から、米大統領に様々の要求をする韓国をおかしいと考える人々が世の中には存在する。
日本になら何をしてもいい
—全くその通りですね。日本がすべて悪いと言うのなら、韓国人被爆者への謝罪を米国の大統領ではなく、日本の首相に要求すべきでした。韓国人はなぜ、こんな奇妙な理屈をこねるのでしょうか。
鈴置:蘇于鉦論説委員は理由をはっきりと書いていません。以下はあくまで私の見方です。
オバマ(Barack Obama)大統領が広島に行くかもしれないと聞いて「日米関係が深化する」と恐れ、本能的に反対した。行くことが決まった後は、少しでも「深化」の度合いを減らそうと「謝るな」と米国に要求した。「行くこと自体が謝罪だ」との意見が出たので、今度は「自分がのけ者になる」と慌て「韓国にも謝れ」と言い出した……。
「韓国は『尊敬される国』になるのか」で説明したように、韓国という国は日本が得になると見たら、理屈抜きでとにかく邪魔をします。その結果、しばしば言動のつじつまが合わなくなってしまうのです。
蘇于鉦論説委員は「支配・被支配の善悪論理」という抽象的な表現を使っています。これは「我が国を植民地化した日本に対してなら何をしてもよいとの韓国人の行動原理」を指していると思われます。
米国の「うんざり」が「嫌韓」に
—日本が絡むと冷静に考えられなくなる、ということですね。
鈴置:簡単に言えばそういうことです。特に、朴槿恵(パク・クンヘ)政権は条件反射的に動きます。しかし韓国人はその脈絡のなさと言いますか、奇妙さに気づかず「自分を無視する世界」に不満を募らせるのです。
2015年にも朴槿恵政権は、安倍首相の米上下両院議会演説を阻止しようと執拗に米国に働きかけ、失敗しました(「『安倍演説阻止』に向けた韓国の動き」参照)。
「安倍演説阻止」に向けた韓国の動き(2015年)
2月14日 | 聯合ニュース「在米韓国人、安倍首相の議会演説阻止に動く」と報道 |
3月4日 | 訪米した韓国国会の鄭義和議長、安倍首相の米議会演説に関し米下院議長に「日本の真の謝罪と行動が必要」 |
3月19日 | 聯合ニュース「米議会、安倍総理の上下院合同演説を許可する方向」と報道 |
3月20日 | 韓国外交部「安倍首相は米議会演説で歴史への省察を示すべきだ」 |
3月29日 | 韓国の尹炳世外相「安倍首相の米議会演説と70年談話が日本の歴史認識の試金石になる」 |
4月2日 | 鄭議長、訪韓した民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務に「日本の首相は米議会演説で過去を認め謝罪すべきだ」 |
4月2日 | 尹外相、ペロシ総務に「安倍演説は侵略、植民地支配、慰安婦に関しすでに認めた立場を具体的な表現で触れねばならない」 |
4月2日 | 朴槿恵大統領、ペロシ総務に「慰安婦問題の解決は急務」 |
4月16日 | 日米韓外務次官協議で韓国の趙太庸第1次官「安倍演説は正しい歴史認識を基に」と注文 |
4月21日 | 韓国国会の羅卿瑗・外交統一委員長、リッパート駐韓米大使に安倍首相の歴史認識について懸念表明 |
4月21日 | WSJ「韓国政府が安倍首相の米議会演説に韓国の主張を反映させるべく米広報会社と契約」 |
4月22日 | 韓国の柳興洙駐日大使、戦後70年談話で「(侵略、植民地支配、反省の)3つの言葉を使うよう期待」 |
4月22日 | 韓国外交部、バンドン会議での安倍演説に関し「植民地支配と侵略への謝罪と反省がなかったことが遺憾」 |
4月23日 | 米下院議員25人「安倍首相が訪米中に歴史問題に言及し、村山・河野両談話を再確認する」ことを促す書簡送る |
4月23日 | 韓国系と中国系の団体、元慰安婦とともに米議会内で会見し「安倍首相は演説で謝罪を」と要求 |
4月24日 | 韓国外交部「尹外相とケリー米国務長官が電話、歴史対立を癒す努力で一致」と発表 |
4月24日 | ブラジル訪問中の朴大統領「日本に、正しい歴史認識を基にした誠意ある行動を期待」 |
4月24日 | ローズ米大統領副補佐官「安倍首相に対し、過去の談話と合致し、地域の緊張を和らげるよう働きかけている」 |
4月24日 | メディロス米NSCアジア部長「歴史問題は最終解決に達するよう取り組むことが重要」 |
4月28日 | 安倍首相、ワシントンでオバマ大統領と会談 |
4月29日 | 安倍首相、米上下両院で議会演説。日米同盟の強化を訴え万雷の拍手受ける |
「日本の肩ばかり持つ米国」に怒った韓国人は「それなら我々は中国側に行こう」とも言い出しました。逆恨みです(「『ヴォーゲル声明』に逆襲託す韓国」参照)。
一方、日米離間を図る韓国に対し、米国の外交界は大いに不信感を抱きました。安倍演説阻止を狙った官民挙げての活動に「韓国疲れ」(Korea Fatigue)という単語までできたのです(「米国の『うんざり』が『嫌韓』に変わる時」参照)。
なお、韓国独特の奇妙な主張を――つじつまが合わず、時には韓国自らに損をもたらす論理を「コリアン・ロジック」と呼ぶ日本のビジネスマンもいます。
「広島訪問」では「米議会演説」の時ほどには、朴槿恵政権は露骨な反対運動を繰り広げませんでした。ただ、韓国メディアによると、水面下では米国政府に訪問に対し「強い懸念」を伝えたり、韓国人慰霊碑へのオバマ大統領への献花を要求したりしたようです。
「議会演説阻止」の失敗に懲りて政府は表に出ず、メディアに米国説得の応援を頼んだ感もあります。「日本の『被害者なりすまし』を許すな」で説明したように、韓国各紙の「ヒロシマ・キャンペーン」には異様な熱が入っていました。
たった1行も書いてないのに
蘇于鉦論説委員は、こんなことをやっていると世界から――ことに米国から奇異の目で見られるぞ、と警告したのです。このコラムでは、以下のくだりが続きます。
- ホワイトハウスは、大統領の広島訪問は原爆投下に対する反省や謝罪を意味するものではないと何度も主張してきた。日本の戦争責任に免罪符を与えるものでないとも言った。
- 日本の政府と主要メディアはやはり、たった一言も、1行もそうした解釈をしなかった。事実、オバマ大統領は謝罪しておらず、頭を下げもしなかった。ひたすら、「核兵器のない世界」を強調した。
- オバマ大統領が韓国人慰霊碑を訪問しなかったことも、同じ脈絡で理解できる。韓国を無視しているからではなく、自身の訪問が歴史問題、特に植民地支配問題として解釈されたくなかったからではないか。そんな友邦をできるだけ理解すべきではないだろうか。
蘇于鉦論説委員は、韓国は事実関係及び、米国の真意を誤認していると指摘、「現実を素直に見ようではないか」と呼び掛けたのです。
「日本政府と主要メディアはたった一言も、1行もそうした解釈をしなかった」とのくだりに、その思いがこもっています。
勘違いし続ける韓国人
日米両国政府は「謝罪なしの広島訪問」で合意していたのです。「歴史をどう見るか」あるいは「歴史の責任」に関する議論に足をとられることを避けるためでした。
広島訪問は、任期満了間際のオバマ大統領の実績作りの側面が大きかった。しかも日米関係悪化という巨大なリスクもあった。
そこで両国政府は、双方の責任を露骨に問うことのない「謝罪なし」によって乗り切ったわけです(「日本の『被害者なりすまし』を許すな」参照)。
もし、韓国が米国を批判したいのなら「米国が日本に対し謝罪しなかったのは不当だ。それにより日本も謝罪を逃れたではないか」と言うべきだったのです。
というのに韓国人は勘違いして「事実上の謝罪だった。けしからん」と米国へのフラストレーションを高めてしまいました。蘇于鉦論説委員はそれを諌めたのです。
オバマは日本ばかり可愛がる
—韓国人の誤認により、何か問題が起きたのですか。
鈴置:まだ、表面化はしていません。しかし、この手の誤認は、韓国にとって極めて危険です。韓国の唯一の同盟国である米国への不信感をどんどん膨らますからです。
新聞記事はともかく、それへの書き込み欄や交流サイト(SNS)は「オバマは日本に騙されて免罪符を渡した」「結局、米国は日本ばかり可愛がる」「韓国はいつも無視される」「それなら我々は中国側に行こう」といった韓国人の怒りで満ちています。もちろん、韓国メディアの虚報が原因です。
前回、東亜日報の社説の日本語版と韓国語版が大きく異なると説明しました。早版に「まずい部分」があったために大きく書き直した。しかし早版を翻訳して作る日本語版では、そのまま掲載されてしまった――のではないか、と思われます。
以下は、日本語版の「原爆慰霊碑を訪れた米大統領、北朝鮮の核を頭上に載せて暮らす韓国」(5月28日)だけに載っている文章、つまり遅版になって削除されたと見られる部分です。
(1)韓国は、日本が加害者から被害者に化ける状況に拍手することはできないということを米国は知らなければならない。 (2)核のない世界を主張しながらも、いざ北朝鮮の核に対しては「戦略的忍耐」で一貫したオバマ大統領が、今回朴槿恵大統領を招待して北朝鮮(の)核への日米韓共同対応を強調しなかったことは残念だ。
米国に八つ当たり
—米国に対し高飛車ですね。
鈴置:東亜日報もオバマ大統領に対し「韓国人慰霊碑に行け」と強硬に要求していました。5月12日の「米オバマ大統領の初の広島訪問を注視する」(韓国語版)では以下のように書いています。
- オバマ大統領は韓国人慰霊碑も訪れ、日本の過ちに間接的にでも警告することを望む。
韓国人読者の前でこれだけ突っ張って見せたのに完全に無視された。そこで「高飛車」に書いたのでしょう。ただ、あまりの高姿勢に、どこかからモノ言いが付いて慌てて差し替えたのではないかと思います。
ことに(2)はめちゃくちゃな理屈です。「オバマが広島へ行くなら我が国の大統領も誘うべきだった。誘いがないのはけしからん」との難癖です。
朴槿恵大統領は中国の目を気にして「日米韓」の協調行動を徹底的に避けています。誘われたら広島へ行ったと考える外交関係者は、まずいないでしょう。
今回の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)にも日本から招待されたのに、アフリカ歴訪の先約があることを理由に断ったとされています。もちろん「中国包囲網」に加わったと見なされないためです。
現実から完全に遊離した主張――八つ当たりそのものでした。早版の社説のまま行っていたら、東亜日報はソウルでも物笑いの種になっていたでしょう。
ますます現実と遊離
—韓国人の、現実とはかけ離れた世界観や奇妙なロジック。知れば知るほどに驚きます。
鈴置:前回も話しましたように、米国が韓国を見限る可能性も出てきた。それでも韓国では天動説的な議論が続いているのです。
—6月4日のカーター(Ashton Carter)米国防長官のシンガポール演説のことですね。
鈴置:軍事力で勢力を拡大する中国を念頭に、カーター国防長官は「原則に立脚した安全保障のネットワーク(principled security network )」の結成を呼び掛けました。
米国とすでに協力を進めている国の名を挙げましたが、そこに「韓国」はありませんでした。同盟を結んでいる日本、豪州、フィリピンはもちろん、同盟のないインド、ベトナム、シンガポールまで「リスト」入りしたというのに。
「韓国の天動説」は最近、特にひどくなっている感じです。趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムのヴァンダービルド氏は孤軍奮闘、声をからして警告を発してきました。
こんな中、ようやく大手紙にも自分たちの「奇妙な現実認識」への反省が載り始めたというわけです。懸念するのは蘇于鉦論説委員だけではありません。
(次回に続く)
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