『英EU離脱問題、日系金融機関も他人事ではない 「脱ロンドン」拠点大移動が始まる可能性も

明日、英国のEU離脱・残留の投票が為されます。結果判明は

『英EU離脱問題、日系金融機関も他人事ではない 「脱ロンドン」拠点大移動が始まる可能性も

』(6/16日経ビジネスオンライン 菅野泰夫)日本時間で24日昼頃とのこと。離脱派と残留派が拮抗していますのでずれるかもしれません。

ジョー・コックス下院議員の殺害のトーマス・メイア容疑者は単なるテロリストでしょう。或は、残留派が仕掛けたものという見方もネットの意見では出ていました。支持率を伸ばして来た離脱派が不利になるようなことはしないだろうとの読みですが、穿ちすぎと思います。MI5やMI6の伝統のある英国ですが、離脱派に不利になるようなことを黙認することはないと思います。メイア容疑者は狂信者です。宗教が理由でないとしても、無辜の市民を殺戮するイスラム過激派と同じでしょう。言論には言論で対抗すべきです。言論の自由のない国(中国共産党を代表とする一党独裁国家)ではすぐ言論には暴力で対抗します。況してや公安や軍を使ってですが。銅鑼湾書店店長で中国公安に拘束された林栄基氏の記者会見を受けて、香港ではデモも起こりました。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160618/k10010561211000.html

中国駐在者は中国軍艦が日本の領海侵入した事実をもっと深刻に考えた方が良いでしょう。

福島香織氏もツイッターでこう呟いています。

「福島香織 @kaori0516kaori

私が中国の駐在員だったら、とりあえず家族を日本に帰国させているレベル。

あと、中国の銀行においてある資産をどう脱出させるか悩む。

最悪の事態にならないと思うけれど、それくらいはする。

福島香織 @kaori0516kaori

何度もいうけど、別に煽ってるわけじゃないよ。最悪の事態にはならないと思っている。

でも、そこにある危機に対する認識がないと、危機を回避できない。

知らんふりしていたら勝手にすぎさっていく都合のよい危機ばかりではない。

https://twitter.com/kaori0516kaori/status/742987299076603904」と。

話を英国に戻します。欧州で極右は移民反対の立場なだけです。極端な国家主義者が国民の広範な支持を受ける訳ではありません。リベラルを標榜するマスメデイアはいずこの国も同じで、自国民のための政策を行おうとすると「極右」のレッテルを貼って邪魔します。舛添の韓国人学校敷地貸与未遂事件や韓国人向け老人ホーム建設事件について報道しない自由を行使します。

http://ameblo.jp/tubasanotou/entry-12142827105.html

蓮舫は台湾人ではなく中国人(国民党)がルーツです。都知事選には出ないと言ってますが、未だ分からないでしょう。東京都民も騙されないように。日本人のための政策をして貰わないと。都知事選は7/14公示、7/31投票ですので、参院選で勝利し、その枠を次点の議員に譲る(反日民進党になるとは限りません)可能性もあります。何せ都知事選では後出しが有利とのことですので。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B9%B0%E3%82%8A%E4%B8%8A%E3%81%92%E5%BD%93%E9%81%B8

国家が二つに分断されるのは時代の流れかもしれません。移民国家の米国でも、大統領選で見られるように、候補者の価値観の違いが大きい=支持者の価値観も大きく分かれています。宗教や人種の差、経済政策についての考えの違いが出てきています。

一方、国民国家重視派とグローバリズム(人・物・金・情報の移動をたやすく)派の争いもあります。

『英EU離脱問題、日系金融機関も他人事ではない 「脱ロンドン」拠点大移動が始まる可能性も

』(6/16日経ビジネスオンライン 菅野泰夫)記事

Cameron-3

写真:ロイター/アフロ

英国ではいよいよ6月23日にEU(欧州連合)残留の可否を問う国民投票が実施される。投票日まで2週間を切ったところでの世論調査によれば離脱支持がじわじわと伸びはじめている。

 特に一部の調査では離脱支持派が残留派を10%ポイント引き離すなど、離脱派が優勢な状況も出始めている。これによりポンドは大きく下落して余談を許さない状況が続いており、ロンドンのマーケット関係者からも“離脱は間違いないのでその準備を”などと物騒な声が日々増えている。

 ただし肝心の世論調査があてにならないことは有名な話で、代替策として挙げられる物差しの一つがブックメーカーの賭け率だ。それでも2015年5月の総選挙で、ブックメーカーの賭け率から選挙5日前に90%以上の確率でハングパーラメント(宙吊り国会)と予測されていたが、結果的に保守党単独政権が誕生し大外れとなった。今回は70%以上の確率で残留と予測されているが、総選挙時よりも確率が低いことが当然気になる。あてにならない指標より可能な限りサンプルを集めようと、保守党が単独政権となり国民投票の実施を決定した時から筆者は色々な場面で英国人に取材を試みている。

 ここで気がついたことは、世論調査で示された属性別の支持層の違い(図表1参照)は概ね筆者の取材ともその傾向が一致していることだ。たとえば、労働者階級、白人、高齢者の組み合わせからは、見事なまでに離脱派の意見が出てくる(同じ白人でも富裕層、スコットランド出身はほぼ残留派だ)。もともと英国では、欧州の中でも移民に寛容な国であり、反移民的な態度を人種差別の表れとして、移民政策の厳格化に反対する社会的な風潮も存在する。ただしこういった英国人ですら移民の大量流入に我慢できないという声を多く耳にする。

図表1 世論調査の属性別の比較

approval rating of the secession from EU

(出所)YouGovより大和総研作成

 日本人同様に本音と建前を使い分ける英国人から本音を引き出すことは難しい。

 ある英国人は、「まあ残留に入れるかな?」と淡々とした口調で答えてくれた。ところがその後、急に感情的な声色になり、「だけどね、EUから来るラトビア人やルーマニア人などは英語が全く話せないにもかかわらず、ロンドンで労働ビザ無しで働ける。一方、(英国女王を元首とする英国連邦加盟国の)オーストリア人やニュージーランド人たちは、英語を母語としながらも一定の年収や学歴のポイントがないと労働ビザが出ないので働けない。これは不公平だと思わないか?」と付け加えた。

 日本人である筆者に対し、面と向かって移民に対してNOを突きつける過激な意見を主張したりはしないが、EUからの移民に対して相当な不満が蓄積していることが垣間見られる。彼が当日“離脱”に投票することは明らかであろう。

 英調査会社YouGovによる調査でも若年層(18歳から29歳)のうち残留支持は約7割を超えていたが、若者たちは往々にして投票率が低く、実際の残留票に結び付くかは疑問視されている。特に、親元を離れている若年層が現住所で選挙登録してしまうと、実家に住民票を置いたままごまかしていた地方税(カウンシルタックス:日本の固定資産税の様に住居にかかる。賃貸では持ち主でなく借主が払う)の未払いが発覚し、遡及して払わなければいけない問題に直面するそうだ。このため特に学生の投票行動が制限されるのではないかとの指摘もある。

BREXITが起こったときの金融面の影響は…

 もし離脱が決定したとき、影響が直ぐに表れるのは、通貨ポンド、英国債(ギルト債)などの金融市場といわれている。英国の貿易収支は赤字が続き、特に過去3年間はその赤字幅が拡大している。

 英国債の国外投資家比率は過去10年一貫して25%を上回っており、英国のEU離脱(BREXIT)が決定した直後から国外投資家の資本逃避が一斉に起こる可能性も否定できない。それに加えて、今の英国では、さらなる経常赤字幅の拡大を止めることは難しく、年初来から大きく下げた通貨ポンドがさらに下落することが予想される。現段階では、いまだ大規模な資本逃避は確認されていないが、今後起こりうる影響を懸念して、新規投資を手控える動きから、足元、通貨ポンドは不安定な展開となっている。

図表2 英国債の国外保有状況と経常収支と対GDP比推移

Britain bonds

(出所)英国債務管理庁(DMO)、ONSより大和総研作成

 世界的な金融ハブ、シティを抱える英国の金融街としての側面における影響も必至だ。特に英国に拠点を置く日系金融機関は、今後、欧州拠点の中心を英国に置くことへの再考が求められる。現在は、英国に拠点を置き英国当局から認可を受けた金融機関は、英国以外のEU加盟国でも別途認可を必要とせずに、金融サービス業務を行うことが可能である(いわゆるEUパスポート制)。

 銀行業務は自己資本規制指令IV(CRD IV)、投資サービスはEU金融商品市場指令(MiFID)など、提供される金融サービスの違いにより各パスポートがありEU域内へのアクセスが可能となっている。

 邦銀等のEU域外国、すなわち第三国の金融機関は、ロンドンの金融街シティに拠点を構えこのEUパスポートを利用して、EU市場へのアクセスを享受していた。ただBREXITが実現した場合、英国は第三国となりEUパスポートが失われるため、EU加盟国内での金融サービス業務継続には何かしらの措置が求められる。唯一の例外として、英国がEEA(欧州経済領域*1)に加盟し直した場合は、そのままEUパスポートが維持され、EU域内での金融サービス業務が可能となる。

 ただし、2018年1月にMiFIDはMiFIDⅡに置き換えられることが予定されており、BREXITは最短でも2018年央となるため(リスボン条約50条により2年以内の脱退協定の締結が求められるため)、英国はたとえEUを離脱する場合でも、わざわざMiFIDⅡを国内法に移管する必要がある。

図表3 BREXIT後、英国に支店がある邦銀がEUの金融サービスへアクセスするには

BREXIT later

(※注1)サービス提供先となるEU加盟国で、リテール顧客に対する業務認可の条件に支店設立を含める条文 (※注2)各国により、子会社を設立すればアクセスが可能となるケースもある (出所)欧州委員会、Ashurstより大和総研作成

 一例を挙げると、BREXIT後、日本をはじめとする第三国や英国の銀行が、EU域内に支店を設立せずに、(EU域内の)機関投資家(プロ顧客)と取引するためには、欧州証券市場監督機構(ESMA)への登録が必要となる。この登録の条件は、当該の第三国の投資サービス規制の枠組みがEU相当として認められること(同等性評価*2 )であり、最終的に欧州委員会の承認が必要である。

 無論、日本や英国等の先進国の金融サービス規制のフレームワークが同等と認められないということは理論的に想定しづらい。それでもEU離脱後の英国に対して政治的な妨害が加わり、承認申請プロセスに相当の時間がかかる可能性は懸念材料となる。特にシティに拠点を置く第三国金融機関の取引の中心はユーロ域内の国債や社債であるため、欧州中央銀行(ECB)がこれを域内の監視下に置きたいという本音も見え隠れしている*3。

 さらに、CRD IV範囲の融資や預金預かり業務など伝統的銀行業務に関しては、(MiFIDⅡが導入されて以降)CRD IVでの同等性評価がどのように変更されるか、その詳細は明らかになっていない(MiFIDのEUパスポートと同様にCRD IVのEUパスポートも、BREXIT後に失効することだけは決定している)。日本を含む英国以外の銀行に至っては、英国からどの様にEU市場にアクセスするかのフロー詳細に関しては白紙状態となっている。

 具体的な取り決めが決まるまで同程度の時間がかかることは間違いなく、すなわち、英国に拠点を構える邦銀は(リスクシナリオとして)EU域内に別支店を設置せざるを得ない状況も想定されている。

離脱派を左右するテレビでの討論演説

 6月9日の公開テレビ討論会では、ボリス・ジョンソン元ロンドン市長率いる離脱派とニコラ・スタージョンSNP(スコットランド民族党)党首率いる残留派とが3対3での論戦を繰り広げたこの討論会を境に、世論が離脱支持にやや傾き出したといっても過言ではない。

1 EUとEFTA(欧州自由貿易協定)との自由貿易協定。EFTA加盟国のうちスイスを除く、アイスラ ンド、リヒテンシュタイン、ノルウェーが加盟。 2 EU域外の金融機関は、その国の規制がMiFIDでの規制内容と同等であることを認められて初めて、EU市場へアクセスする権限を付与される。 3 支店や子会社を域内に設置させ銀行同盟の監視下に置きたい。

 残留派は次期首相になることしか念頭にないとしボリス・ジョンソン氏に非難を集中させたが、むしろこれが個人攻撃として顰蹙を買い残留派の支持を下げる結果となった。一方、離脱派は再三、「実権を取り戻す(Take back control)」との発言を繰り返し、離脱が移民抑制と診療時原則無料の国営医療制度(NHS)を含む公共サービスの財源増加につながると主張したことが功を奏した。トルコがEUに加盟した場合7600万人が大挙して英国に移民としてやって来るなど具体手的な数値をあげ移民流入拡大の懸念を指摘したことも効果的であった。

 結果的にいえるのは、ここまで残留派が続けていた「EUを抜けたらオオカミが来るぞと脅かすキャンペーン(通称:fear campaign)」は限界に達しており、各国首脳や企業トップがEU残留への嘆願をすればむしろ、英国離脱による悲観的なシナリオがプロパガンダとしてとらえられている事実である。BREXIT による不安を強調すればするほど、有権者がむしろ懐疑的となり、逆説的にEU 離脱が現実化する可能性も指摘されている。米国オバマ大統領をはじめ主要国首脳が英国でEU への残留を呼びかけても、内政干渉との批判を招き、逆効果を指摘する声が大きくなりつつあることに残留キャンペーン陣営は早く気がつくべきである。

 今回の国民投票については党議拘束がかけられていないため、与党保守党内、野党労働党内でも残留派と離脱派とに別れ、激論を交わしていることにも不思議な感覚を覚える。前述の公開テレビ討論会でも、公の場で同僚である同じ政党の議員同士が罵り合うという英国ではめったに見かけない光景が繰り広げられた。残留、離脱のどちらに転んだとしても、この国民投票が終わった後、本当に英国は一つの国として同じ方向を目指すことができるのだろうかと心配になる。

 英国は、むしろ6月23日が過ぎた後が注目されるといっても過言ではない。

『[FT]英のEU離脱 その代償は』(6/19日経ビジネスオンライン FT)記事

英国の欧州連合(EU)離脱の是非を問う6月23日の国民投票を前に、離脱派はいわばEUへの抗議を表明している。EUにうんざり、あるいは移民問題が心配というなら離脱に投票をと訴えている。確かに今回の国民投票は英国民に第2次大戦以降、最も重大な選択を迫っている。それだけに離脱した場合と残留した場合、双方のケースをきちんと比較して考える必要がある。モノや人の移動に対し、バリケードを築くことが本当に賢明な選択肢なのか。有権者がいずれを選ぶのかは間もなく判明する。

caricature of FT

Ingram Pinn/Financial Times

 民主主義の素晴らしい点は、市民が考えを変える機会があることだ。政治家が約束を破ったら次の選挙で落とせばいい。だが今回は結果がもたらす影響があまりに大きい。英国が残留を選べば10年、20年後の再考は十分あり得る。だが離脱を決めたら、それは永遠の結果となり、連合王国の解体につながることになる。

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 英国を外から見守る人はなぜ今なのかと不思議に思うだろう。確かにEUは理想的な状態にはないが、近年数々の重圧を乗り切ってきた。国民投票のタイミングはEUの本質とは全く関係ない。すべては党運営の問題であり、キャメロン英首相は国民投票をすれば保守党をまとめておけると思ったのだ。首相としては賢明な判断ではなかった。

■西洋文明への脅威

 各国の中央銀行が金融市場に走るショックに対処する方法を学んだとしても、離脱が決定した場合の影響は英国外にも大きく広がる。EUのトゥスク大統領は、英国の離脱は西洋文明の終わりの始まりになりかねないと言った時、恐らく誇張していた。だが残るEU各国を含む西側諸国にも強烈な打撃となるだろう。

 EUがなし遂げようとしていることは3つの柱に基づく。国家の繁栄、安全、そして自由、民主主義、法の支配といった価値観だ。西側の利益と価値観が世界中の独裁者から挑戦を受けている今、これらは多くの英国民が自分たちのものだと考える価値観である。

 英保守党内の反EU勢力が強いだけに、あまり明らかにされてこなかったが、英国は1973年に欧州の病人としてEUに加盟して以来43年間、実は経済的繁栄を謳歌してきた。この間の英国の1人当たり国内総生産(GDP)の伸び率は年平均1.8%と、ドイツの1.7%、フランスの1.4%、イタリアの1.3%を上回る。

 加盟したことで、英企業は競争に直面し鍛えられ、同時に単一市場へのアクセスを得、さらに海外から大規模な長期投資がなされるなど英国は大きな利益を受けてきた。経済協力開発機構(OECD)が記したように、英国は欧州各国ほど労働規制が厳しくないことによっても競争力を発揮してきた。つまり、EUが英国の発展の足かせになっているという主張は根拠がないということだ。

 大きな声では言えないが、英国は欧州大陸から来る野心的で勤勉な若者からも恩恵を受けた。移民問題を巡る失敗は、大規模な移民流入に適応するために必要な資源を自治体に与えなかった歴代政権の失敗だ。

 戦後の繁栄は安全保障に依存していた。EUの加盟国が互いに協力してまとまった体制として存在することは、米国が平和の保証人として機能することと密接につながってきた。軍事問題では北大西洋条約機構(NATO)の役割が大きいが、米政府にとってはEUがまとまって政治や外交政策を出せることも同じくらい重要だ。ロシアのウクライナ侵攻に対し制裁を科したのはNATOではなくEUだ。成功を収めたイランとの核交渉のきっかけを作ったのもEUだ。

■欧州全体が弱体化

 ロシアのプーチン大統領の領土を取り戻そうとする姿勢、核拡散、過激派組織「イスラム国」(IS)のテロ、中東やアフリカ北部からの際限のない移民流入、国際的な犯罪組織ネットワーク、気候変動などはすべて集団的な対応を必要とする脅威だ。英国のEU離脱は欧州を弱体化させ、こうした脅威への対処を難しくする。同時に英国をも弱体化させ、その対応力を損ねる。

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 離脱派の考え方は啓蒙時代以前のように古く、道徳や倫理観といった発想があまりない。人権は欧州が勝手に考え出した概念だとみなしている。英国が欧州人権裁判所創設の原動力だったことも念頭にない。移住者は犯罪者、たかり屋として悪者扱いされる。皮肉にも彼らは議会主権こそが重要だと主張するが、英議員の3分の2は離脱に反対しており、矛盾している。

 離脱の是非を巡る議論には、難民の人権などの道義的側面に加え、経済的利害も絡んでいる。国の安全と繁栄の基盤となる開かれた国際体制は、法の支配があって成立している。英国もそうだ。だがルールを支える価値観を軽視するなら、無法状態にも近いカオスに舞い戻ることになる。

 離脱派にはこうした問題はどうでもいいようだ。彼らの信念は、昔から変わらぬポピュリスト(大衆迎合主義者)の主張で、「支配階級を攻撃せよ」と駆り立てる。そうしたい気持ちは分かるが、その代償に目を向けなければならない。

By Philip Stephens

(2016年6月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

(c) The Financial Times Limited 2016. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

『英国の女性議員殺害が問う“憎悪扇動”の大罪 EU離脱の国民投票直前に起きた悲劇の裏側』(6/20日経ビジネスオンライン 伏見香名子)記事

Jo Cox

英国のEU(欧州連合)離脱を問う選挙戦が終盤を迎えようとする中、6月16日、野党労働党の新人女性議員が白昼、地元で銃撃を受けた上に刺され、死亡するという事件が起きた。

 容疑者は50代の白人の男で、目撃証言によれば「ブリテン・ファースト!」と叫びながら議員を襲撃したとされている。

 「ブリテン・ファースト」とは反移民、反イスラムを掲げる英国の極右政党の名前とも同じであり、これが団体名を指したものなのか、言葉の通り“英国至上主義”を示したものなのか、本稿執筆現在(17日午後)、犯行に至った動機も含め、確認されていない。一部報道によれば、容疑者が精神的な疾患を持っていたとも、また、米国の白人至上主義の過激派団体より、銃の作り方を取り寄せたとも言われている。

犠牲になったコックス氏は人道支援を続けてきた

 犠牲となったのは、労働党議員のジョー・コックス氏(41)。国会議員になったのは去年5月で、政治家になる前は英国の大手NGO(非政府組織)、オックスファム(Oxfam)で人道支援キャンペーンを主導するなどし、ダルフールで性的暴力を受けた女性、ウガンダで戦わされた少年兵などを支援する活動を精力的に行った。また、セーブ・ザ・チルドレン、英国児童虐待防止協会(NSPCC)などのNGO団体に在籍した経験もあり、貧困や差別問題にも積極的に取り組んだ。

 議会での初演説においてコックス氏は「こんな多様な選挙区を代表できることは、喜びである(中略)私たちのコミュニティーはカトリック系のアイルランド人であれ、インドのグジャラート、あるいはパキスタンの、主にカシミール出身のイスラム教徒であれ、移民によってその価値がより深められた。こうした多様性を尊ぶとともに、選挙区を回るたび、私はいかに互いの中に、違いよりも共通項が存在し、より団結しているのかに驚かされる」と述べた。シリア難民の支援に関しても積極的に発言し、この問題に取り組む議会グループを設立、下院での議論も主催した。

 一方で、英国の大手新聞・テレグラフによれば、コックス議員は過去に極右政党「ブリテン・ファースト」の差別主義とファシズムを糾弾する発言を行っているとされる。「ブリテン・ファースト」は襲撃の直後、リーダーがビデオメッセージで、事件との関与を否定する声明を発表した。

bouquet for Jo Cox

「英国白人対その他民族」という構図

 弱い人たちを支援したいと政治の道を進んだコックス議員の情熱は、就任わずか13カ月で、突然絶たれた。

 コックス議員は現在、英国を揺るがしている「EU離脱を問う国民選挙」において、残留派の立場であった。6月10日付で固定されたツイートには「移民問題は確かに存在するが、EUを離脱する正しい理由ではない」と書かれている。

 民主主義の根幹を揺るがす殺人事件に驚愕しながらも、このところ筆者はEU離脱関連取材を通じ、選挙戦を取り巻く気持ちの悪い違和感に襲われてもおり、心の片隅で「起こるべくして起こってしまった事件」だとも感じている。白昼堂々、銃のみならず刃物まで使用して大の大人の男が女性を殺害するなど、どんな強烈な憎悪が渦巻いていたのか、知る術はない。しかし、EU離脱を問う今回のキャンペーンが、多分に英国白人対その他民族という構図を煽るような展開で来ている感は、否めない。

 殺害を受け、国民投票関連のキャンペーンは、離脱派、残留派が両陣営とも即日活動を一時停止し、コックス議員の死を悼むとした。筆者の元へは残留派のボランティアより、活動責任者らの言葉として「今は静かに内省するときだ。活動員としても、一個人としても、ソーシャルメディア上などで憶測に基づくコメントは差し控えるように。今は、政治ポイントを稼ぐときじゃない。議員の家族を思うべきだ」とし、活動停止の旨を知らせる一斉メールが届いた。

 BBCはコックス議員が死亡した16日夜、容疑者の動機の解明に至っていない段階で、看板報道番組「ニューズナイト」がいち早くこの事件に関連し、EU離脱を問う国民投票における、移民を悪とし社会に憎悪をあおる離脱派の分断的なキャンペーンの是非について討論を行った。また、大手新聞ガーディアンも同日夜、襲撃に直接加担したとは言えないまでも、最近社会に蔓延する憎悪に満ちたムードは、離脱派のキャンペーンの多くに「過激な言動、非難の応酬」さらに「公然とした差別主義」が含まれ、そうしたスタンスに起因するとのコラムを掲載している。

前ロンドン市長までも憎悪を煽るキャンペーン

 社会がなんとなくピリピリし、憎悪を糧とした事件の起こりかねない前兆は、年初以来、今回の国民投票がらみで行ってきた様々な取材の中、ロンドン各地や地方都市を訪れるごとに、特に最近感じていた。EU離脱派がメディアにおいて展開してきた、人々の憎悪を煽るアグレッシブさには、時に言葉を失うこともあった。この数カ月、離脱派は移民問題を選挙争点の核とし、現在、英国が直面する様々な課題の全てが、あたかもEUからの移民流入が原因だとするような情報を流し続ける戦略を展開してきた。

 キャンペーンの中には誤った情報も多数含まれている。例えば、残留すればいずれEUのトルコ加盟が起こり、膨大な量の移民が英国に流入するなどという情報だ。シンクタンク、オープンヨーロッパのアナリストによれば、現状、トルコのEU加盟には人権問題など様々なハードルがあり、直近では現実的ではない上、英国には加盟を阻止する拒否権があるというが、こうした背景は離脱派のキャンペーンに採用されていない。

コックス議員が殺害された当日、離脱を掲げる英国独立党のナイジェル・ファラージ党首は大量のシリア難民の画像を用い、移動の自由が可能なEUが難民問題を引き起こしたとのニュアンスを含め「EUから自由になり主権を取り戻そう」と掲げるポスターを選挙戦に投入したばかりだった。この画像は、去年スロベニアに押し寄せた難民を写しているもので、英国には到底入国などできない人々だとガーディアンは指摘している。このポスターには、民族的な憎悪扇動に関する法律に抵触するとして警察への通報があったほか、残留派の主だった政治家らはもちろん、他の主流離脱派からも敬遠され、強い反発を招いている。

 しかし、寛容性、多様性をうたい、移民を多く受け入れてきた英国社会を二分しかねない危険な要素は、議員殺害事件までにもあちこちに垣間見えていた。2度の大戦を引き起こした教訓から生まれたEUを、離脱派の旗印・前ロンドン市長のボリス・ジョンソンがこともあろうに「EUはまるでヒットラー」と煽るなど、選挙戦が盛り上がるに連れ政治家の大げさな舌戦も過熱した。それを日々見続ける市民同士の議論もヒートアップする中、社会を分断しかねない危うさが、日を追うごとに増幅していった。正直、このところ離脱がらみの取材にいささかうんざりしてきたのも、各地で憎悪を煽る政治家の声が聞くに堪えなくなってきたからである。

EU離脱の是非を利用する政治家たちの欺瞞

 ある選挙区で取材を進めていた時のことだ。その地区の超党派の離脱派会合に参加した。そこで飛び出したのは、残留派から誤送信されたメールを元に、残留派のビラ配りの場所を突き止め、同日同じ場所に行き「そこを潰してやろう」という話し合いの様子だった。

 当日その駅へ赴くと、離脱派が地元選出の国会議員を筆頭に、残留派のボランティアがビラ配りをしていた隣で自分たちもキャンペーンを展開し始め、通勤帰りの人たちへのビラ配り合戦と、ボランティア同士の激しい議論が始まった。別の日には、同じ選挙区で、離脱派が英国ではめったに見ない街宣車まで動員し、拡声器で残留派の真後ろを通り、その上、ビラ配りをしていた残留派のボランティアらの中に離脱派の一人が乗り込んできて、口論をふっかけ出した。

 ただし、筆者が見た限り、街頭で活動している多くの一般人のボランティアたちは、一人一人がそれぞれ純粋な思いを抱え、離脱、あるいは残留それぞれの支持を訴えている。離脱派すべてが極右でもフーリガンなわけでも、またどこかの党員なわけでもない。その多くが深刻な住宅問題で苦しんでいる人たちや、また、地元の小さな町に移民が押し寄せ、社会に統合してくれず悩む、という身近な問題を抱えている人たちだ。「東欧から移民の人たちがやってきたときは、本当にワクワクした。でも、彼らは英語も話さず、社会に溶け込んでもくれなかった」という若者の言葉が突き刺さる。

 こうした不安や不満がEUからの移民を遮断すれば解決するなどと声高に訴え、苦しむ人たちの真摯な思いを己の政治目的に利用せんとする政治家も、残念ながら少なからず存在する。移民が押し寄せているから住宅問題が急増するのだ、と唱えるある地区選出の保守党国会議員に「では、具体的に、貴方の選挙区のどこの地域・住所に住宅問題が生じているのか」と聞いたところ「秘書に聞け」という答えが返ってきたこともある。

 住宅問題があると言って選挙戦を展開しているのに、問題が地元のどこにあるのかすら知らないでいるのだ。こうした議員らにとってこの選挙は、地元の問題を解決するために行っているものではなく、いかに選挙後の自分たちの党内での立場を確保するか、彼らにとってはそのためだけに政治利用しているキャンペーンであることが透けてみえる。

ロンドン市長選でもあった対立煽るメディア戦略

 こうした不快極まりない政治家らによる選挙戦略を見ていて、ふと最近の類似キャンペーンを思い出した。先月まで行われていたロンドン市長選である(「トランプに屈しないイスラム教徒のロンドン市長」参照)。

 初のイスラム教徒の市長誕生に至るには、首相までもが便乗した、執拗な保守党陣営からのイスラム敵視キャンペーンがあった。ところが、全く根拠のない市長とイスラム過激派とのつながりを追及した当のキャメロン首相は、その舌の根も乾かぬうちに、今度は見事当選したそのカーン市長にEU残留キャンペーンでの協力を要請し、白々しく壇上を共にしている。ここへきて残留派がリードを広げられているのも、キャンペーンを率いるキャメロン首相のこうした態度が、人々の信頼を勝ち取れないからだとも言われている。

 ロンドン市長選において、保守党陣営を支えたのはオーストラリア人のキャンペーン・ストラテジスト、リントン・クロズビー氏率いるCTグループ所属の元タブロイド紙ジャーナリストだ。クロズビー氏はかつて、英国総選挙における保守党キャンペーンや、ジョンソン前ロンドン市長選出の際のキャンペーンを手がけている。英国の大手新聞ガーディアンは以前、クロズビー氏の切り札はネガティブ・キャンペーンで「人種や移民問題を強調し社会を分断することで、政治的勝利をおさめる手法を得意とする」と指摘した、対抗陣営ストラテジストのインタビューを引用している。

 クロズビー氏はオーストラリアのジョン・ハワード元首相のトップストラテジストでもあった。ハワード首相は移民に対する厳しい政策で4期もの続投を果たしたと言われており、メディア受けする巧みな難民蔑視ギリギリの言葉使いが保守層からの支持を得たとされている。同じくトニー・アボット前首相のキャンペーンでは「(難民を乗せた)ボートを追いかえせ」というスローガンが受けたと、ガーディアンは指摘している。

 今回の国民投票でクロズビー氏がキャンペーンに関わっているという情報は今のところ見当たらないが、少なくとも離脱派キャンペーンの一部には広告代理店がついていることが、現場取材で判明している。

社会の分断に加担するメディアの大罪

 こうしたメディア戦略家たちは、キャンペーンの成否については綿密な調査を行うのであろうが、社会の分断を煽り、憎悪を広めるようなキャッチフレーズや動画・ポスターなどの拡散が、長期的に社会におよぼす影響まで調査しているのか甚だ疑問である。

 だが自戒を込め、こうした分断的なキャンペーンに乗っかり「視聴率」という得体の知れないもののために、キャンペーンをそっくり垂れ流し続けるメディアの側にも全く責任がないとは言えない。「良いテレビ」企画を作るために、強い映像を撮れそうな現場を探し、解りやすいフレーズを切り取り、放送するのは制作者にとって必須だ。しかし、分断的な戦略を各陣営がとることを知りながら、それをそのまま流し続けることがより社会の分断に加担しているとすれば、メディアの功罪はとてつもなく大きい。

 コックス議員の3歳と5歳の幼い子供達から母親を奪った事件に加担してしまったのなら、憎悪を煽ってきた政治家同様、それを流し続けたメディアは取り返しのつかない大罪を犯したことになる。今後、この英国の国民投票のみならず、憎悪をばら撒き続けるドナルド・トランプが共和党候補となった米大統領選など、こうした戦略家たちによって手がけられているであろう「憎悪キャンペーン」を扱う放送関係者は、これを肝に銘ずるべきである。

 コックス議員の夫は、妻の死に際し以下の声明を発表している。

「彼女はきっと、何よりも2つのことを望むだろう。一つは、大切な2人の子供たちが溢れる愛で満たされること。そして、彼女を殺した憎悪と戦うため、私たちが団結することだ。憎悪には、信条も人種も宗教もない。ただ、有毒なだけだ。」

 この戦いに、メディアは無関係ではない。

a memorial for Jo Cox

追記:尚、地元警察は18日未明、事件に関連してトーマス・メイア容疑者(52)を殺人の罪で起訴したと発表した。19日、ロンドンの治安裁判所に移送され、初出廷で氏名を問われた被告は「私の名は「裏切り者に死を、英国に自由を」であると述べている。

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