3/18日経ビジネスオンライン 北村豊『「ゾンビ企業」解体が招く“600万人失業” 「鉄鋼」「石炭」に対策費1000億元も焼け石に水か』について

西側諸国は、世界に悪を為す中国社会を世界経済に組み込んだことが大間違いだったことに気付くべきです。封じ込めていればここまで中国の問題が世界の問題としてクローズアップされることはなかったでしょう。如何に中国人の詐術が上手かったかという事ですが。日米ともにナイーブすぎです。世界的にダンピングの嵐が吹き付けることになります。

政治的には共産党一党独裁、経済的には似非市場経済(権銭交易)が根本原因であることは明らかです。でも両方とも既得権者の利益を侵すことになりますので非常に難しいでしょう。新たな革命が起きない限り無理と思われます。

今度のゾンビ企業の淘汰はそのキッカケになるかもしれません。600万の失業者を新たに雇用できる産業は出て来ないでしょう。中国経済が実質マイナス成長と言われている中で受け入れ先を見つけるのは難しいと思います。AIIBが外国に投資し、その労働力として使おうと言うのであれば別でしょうけど。ただ、その場合、現地の雇用が増えず、富の収奪と看做されますので、いくら現地国の要人に賄賂をばら撒いたとしても持続可能かどうか。

中国人の主張する民族的特質から言って、政府の方針に唯唯諾諾と従うとは思えません。やはり禁止されているデモに訴え、流血の惨事を引き起こし、それが全土に拡大し、共産党打倒の動きに繋がる可能性もあります。なにせ1000億元を失対基金として用意しても、役人が中抜きするでしょう。どの程度実効を上げるか疑問です。

日本のスタンスは「お手並み拝見」が正しい態度です。間違っても通貨スワップで助けることのないように。9条支持者は戦争反対なのでしょうから、政府がそのように動いたら「通貨スワップ」反対の声を上げないとおかしい。今中国の採っている南シナ海・東シナ海の行動は戦争誘発行為です。経済封鎖に近い行為で中国を締め上げ、戦争を諦めさせなければ。それを言わないとしたら、中共の手先or日共のシンパでしょう。

中国封じ込めのために、5/20に蔡英文氏が台湾総統に就任されますので、「台湾関係法」を日本も作れば良いと思います。一気に無理であれば、日米安保上、米国の「台湾関係法」発動時の日本の役割を日米台で擦り合わせしておく必要があります。

記事

Li Keqiang's speech

全人代で李克強はゾンビ企業の処理を重点活動に挙げたが、前途は厳しい(新華社/アフロ)

 2016年3月5日の午前9時、北京市の中心にある“天安門広場”の西側に位置する“人民大会堂”で、中国の国会に相当する「第12期全国人民代表大会第4回会議」(以下「全人代」)が、3月16日まで12日間の日程で開幕した。当日、全人代の開幕が宣言された直後に、最初の発言者として登壇した“国務院(日本の内閣に相当)”総理の“李克強”は、約2時間をかけて“政府工作報告(政府活動報告)”を読み上げた。その内容は、(1)“2015年工作回顧(2015年の活動の回顧)”、(2)“十三五(第13次5か年計画<2016~2020年>)”時期における主要目標と重点施策、(3)“2016年重点工作(2016年の重点活動)”の3項目で構成されていた。

「余剰生産」と「ゾンビ企業」に対処せよ

 李克強が発表した政府活動報告の中で、内外メディアが最も着目したのは“化解過剰産能(余剰生産能力の解消)”と“積極穏当処置僵屍企業(ゾンビ企業を積極的かつ穏当に処置する)”であった。それは、李克強が、上述した(3)2016年の重点活動の中で言及したもので、「今年重点的に取り組む8分野の活動」の2番目の分野として提起した「供給側の構造性改革を強化し、持続的成長エンジンを増強する」の中に次のように言及されていた。

 余剰生産能力の解消とコストの低減とその効果の増大に注力する。鉄鋼、石炭などの困難な業界の余剰生産能力を除去し、市場のひっ迫性、企業主体、地方の構成、中央の支持を堅持し、経済、法律、技術、環境保護、品質、安全などの手段を運用して、厳格に生産能力の新たな増大を抑制し、断固として後れた生産能力を淘汰し、整然と余剰生産能力を除去する。合併・再編、債務再建あるいは破産・清算などの措置を講じ、“僵屍企業(ゾンビ企業)”を積極的かつ穏当に処置する。財政、金融などの支援政策に万全を尽くし、中央財政は1000億元(約1兆8000億円)の特別奨励補助資金を手配し、その重点な用途を職員の配置転換に置く。総合的な措置を取り、企業取引、物流、財務、エネルギー使用などのコストを低減し、企業が関与する勝手な諸費用の徴収行為を断固止めさせる。

 さて、中国語の“僵屍(jiangshi)”とは「硬直した死体」を意味し、かつて香港映画で一世を風靡した「僵屍(キョンシー)」が飛び跳ねていたのは、彼らが硬直した死体でありながら、長い年月を経ても腐ることなく、動き回ることができた妖怪であったからにほかならない。キョンシーは、何らかの力で死体のまま蘇った人間の総称であるゾンビ(zombie)と似たような存在と言う事ができるので、メディアは“僵屍企業”を「ゾンビ企業」と名付けたのだった。

それでは、中国のゾンビ企業とは何を指すのか。1月29日付の“中国共産党新聞網(ニュースネット)”は『経済発展のがんであるゾンビ企業を断固えぐり取れ』と題する記事を掲載したが、同記事はゾンビ企業を次のように説明していた。

【1】ゾンビ企業とはすでに発展と競争の能力を喪失した企業を意味する。これらの企業は生産停止あるいは生産休止の状態にあり、庶民の呼び方では“半死不活(息も絶え絶え)”の企業である。全体的に見て、大部分のゾンビ企業は“国有企業”である。これら企業の生産と経営は市場の発展法則から著しく逸脱し、主として政府の輸血などの非市場要素に頼って生命を維持している。それはまぎれもなく、これらゾンビ企業の背後に財政資金の支援があるからである。たとえ生産能力が余剰な状況の下にあろうとも、彼らはゾンビのように息も絶え絶えの状態で生存している。今やゾンビ企業はありふれた存在であり、決して珍しいものではなく、程度の差はあるものの中国各地に存在する。

【2】市場経済の環境下では、市場があれば競争があり、競争があれば生死がある。この過程の中で、企業の生死存亡はごく当たり前のことである。ゾンビ企業の存在は市場の機能発揮に極大な損害をもたらすばかりか、国家資源の浪費、公平な競争の市場秩序を破壊し、市場メカニズムの正常な運行に深刻な影響を与え、政府に持続的な重荷をもたらす。また、長期的に見れば、ゾンビ企業は全国の経済構造調整に影響を与える障害物でもある。

鉄鋼、石炭、セメント、ガラス、造船

 ゾンビ企業の大部分が国有企業というのであれば、そこに含まれる業界は何なのか。それは、過大な余剰生産能力を持ち、膨大な在庫を抱え、すでに生産停止あるいは生産休止の状態にあり、連年の赤字にあえぎ、政府の補助金や銀行からの借入によって辛うじて経営を維持している業界であり、その主体は、鉄鋼、石炭、セメント、ガラス、造船などの業界である。

 これら業界のうちで余剰生産能力が最も深刻なのは、鉄鋼と石炭の2業界である。全人代の開幕に先立つこと1か月前の2月初旬、中国政府“国務院”は李克強総理の承認を得て、2つの意見書を配布した。それは、『鉄鋼業界の余剰生産能力を解消し、苦境を脱却して発展を実現することに関する意見』(以下「鉄鋼業界意見書」)と『石炭業界の余剰生産能力を解消し、苦境を脱却して発展を実現することに関する意見』(以下「石炭業界意見書」)であった。この2つの意見書を念頭に国務院総理の李克強は、3月5日の全人代開幕直後の「政府活動報告」の中で余剰生産能力の解消とゾンビ企業の処置に言及したのだった。

それでは2つの意見書には何が書かれていたのか。その要点は以下の通り。

(1)鉄鋼業界意見書:  2016年から開始し、ここ数年来推進して来ている後れた鉄鋼生産能力除去の基礎の上に、5年の期間内に粗鋼生産能力をさらに1億~1.5億トン削減する。また、5年の期間内に、鉄鋼業界の合併・再編を実現して実質的な進展を図り、産業構造の最適化、資源利用効率の向上、生産能力利用率の適正化、製品品質とハイエンド製品供給能力の向上、企業業績の好転、市場予測の好転を図る。  

(2)石炭業界意見書:  2016年から開始し、3~5年の期間内に、石炭業界は生産能力を5億トン前後削減し、再編により生産量を5億トン前後削減する。この比較的大幅な石炭生産能力の圧縮、石炭生産量の適度な削減により、石炭業界の過剰生産能力を効率よく解消させ、市場の需要・供給の基本的バランス、産業構造の最適化、構造転換とグレードアップの結合により実質的な進展を図る。

180万人の配置転換と不満解消に1000億元

 中国の公文書は、1つの文章の中で「読点(とうてん)」を多用することにより、いくつもの事柄をだらだらと羅列する傾向があり、日本語に翻訳する際には骨が折れる。上記意見書の原文もその類だが、その要点を端的に言えば、鉄鋼業界は5年以内に粗鋼生産能力を1億~1.5億トン削減するし、石炭業界は3~5年以内に過剰生産能力を5億トン前後削減し、産出量を5億トン前後削減するということである。

 全人代初日に行われた政府活動報告の中で、李克強総理が過剰生産能力の解消とゾンビ企業の処置に言及すると、国際ニュース通信社の「ロイター」は、中国共産党指導部に近い複数の情報筋から聴取した話を引用して、2~3年以内にゾンビ企業から500万~600万人の国有企業職員が削減されると報じた。一方、2月25日に記者会見を行った「中国工業・情報化部」副部長の“馮飛”は、中国政府が工業企業構造調整特別奨励補助資金の設立を決定し、2年間に1000億元を支出して、主として石炭と鉄鋼の過剰生産能力とゾンビ企業を処置すると述べた。また、「中国人力資源・社会保障部」は2月29日付で、国有企業の削減予定人数は180万人で、その内訳は石炭業界が130万人、鉄鋼業界が50万人であると発表した。

 “中国国家統計局”のデータによれば、中国の石炭業界と鉄鋼業界の合計職員数は1200万人であるから、180万人は全体の15%に相当する。180万人もの国有企業職員が人員整理で削減されれば、大量の失業者が発生することは否めない。そうなれば、人々はそれに反発して抗議デモを行うだろうし、不満のはけ口を暴力に求めて、社会不安が引き起こされる可能性は高い。そうした人々の不満を配置転換によって抑制するための資金が1000億元の特別奨励補助資金であり、それが全人代の「政府活動報告」の中で李克強が言及したものだった。

世界鉄鋼協会(World Steel Association、略称:worldsteel)の統計によれば、2015年の粗鋼生産量(Crude Steel Production)は、全世界の総計が16.23億トンであったのに対して、中国は8.04億トンで、全体の49.5%を占めて、世界一だった。中国の粗鋼生産量は2014年には8.23億トンだったから、2015年は2.3%減少したことになる<注1>。一方、中国の資料によれば、中国の2015年における粗鋼生産能力は11.7億トン、粗鋼生産量は8.05億トン、粗鋼見かけ消費量(生産+輸入-輸出)は7.04億トンであったから、粗鋼生産能力利用率は68.8%、粗鋼の過剰生産量は1.01億トンとなっている。なお、中国の粗鋼生産能力は2003年には約3億トンに過ぎなかったが、その後急拡大を続け、2012年には10億トンを突破したのだった。

<注1>2015年の粗鋼生産量の世界第2位はEUの1.66億トン、第3位は日本の1.05億トン。

 また、石炭に関する“中国科学院予測科学研究中心(研究センター)”の統計によれば、中国の石炭生産量は2013年の39.74億トンをピークに、2014年には38.74億トン、2015年には37.58億トン(予測)と減少しており、2016年には36億トンになると予測されている<注2>。中国では国内の景気低迷に加え、経済構造の転換および大気汚染防止の影響を受けて、2015年における国内の燃料炭市場は疲弊し、石炭価格は30%近く値下がりした。このため、石炭業界は大量の在庫を抱え、利潤は大幅に低下し、多数の石炭企業が苦境に陥り、現在に至っている。

<注2>中国の石炭生産量は世界一だが、世界第2位の米国の2015年の石炭生産量は約9億トンで、1986年以来の最低水準だった。

世界8位「武漢鉄鋼集団」も妙手なし

 さて、“武漢鉄鋼(集団)集団”(以下「武漢集団」)は、上述したworldsteelの「2014年主要鉄鋼企業生産量ランキング」で世界第8位(33億トン)にランクされる中国の国有企業であり、“中央企業”<注3>の1つである。その武漢集団の“董事長(理事長)”である“馬国強”は、3月10日午前中にニュースサイト“人民網(ネット)”が放映した『第13次5か年計画に頑張る新国有企業との対話』と題する番組の中で、「武漢集団は現在職員の配置転換を行っており、半数以上の職員は今後鉄鋼業務に従事することはない」と述べた。

<注3>“国務院国有資産監督管理委員会”が直接監督・管理する大規模国有企業。

 馬国強は、「生産能力を削減するという大前提の下、我々はすでに8万人の職員全員が製鉄や製鋼に従事することはできないという共通認識に達している。3万人の職員だけが製鉄、製鋼に従事できるというのであれば、4万人あるいは5万人の職員は別の活路を見出さねばならず、武漢集団は現在それをやっている」と述べた。

 馬国強の発言は、上述した2月の鉄鋼業界意見書、2月29日に中国人力資源・社会保障部が発表した、国有企業の削減予定人数は鉄鋼業界が50万人、さらに李克強も言及した1000億元の特別奨励補助資金を踏まえたものだった。1958年に操業を開始した武漢集団は、1949年の中華人民共和国成立後に建設された最初の大型鉄鋼企業で、長期雇用の労働者は7万~8万人で、最大時には10万人にも及んでいた。

番組のキャスターが「生産能力削減の過程の中で、どのように職員を配置するのか」と問いかけたのに対して、馬国強は次のように応じた。

 武漢集団は次のような方法で職員の配置転換を行おうとしている。

【1】法定退職年齢<注4>まで5年以内の職員は、もしその当人に労働能力が無い、あるいは働く意向が無いなら、職場を離れて退職を待っても良い。

<注4>法定退職年齢は、一般労働者:(男)満60歳、(女)満50歳、特殊環境下の肉体労働者及び身障者:(男)満55歳、(女)満45歳。

【2】武漢集団の傘下にはいくつかの非鉄鋼産業があるので、一部の職員を受け入れることが可能。

【3】地方政府と共に職員を雇用してくれそうな外部の企業に照会し、職員の新たな職場を探す。

 上記の【1】は法定退職年齢まで5年以内の職員で、労働能力が無い者と労働意欲の無い者には、最低水準の給与を払うから退職年齢になるまで自宅待機しろという意味かと思える。それにしても、鉄鋼生産量世界第8位である武漢集団の理事長たる馬国強が、4~5万人もの職員の配置転換に当たって、ありきたりの方法しか述べることができず、何らの具体策も提示できないとは、開いた口が塞がらない。これは恐らく、鉄鋼業界の他社も石炭業界の各社も推して知るべしと言えるのではないか。

切り捨て人員、ゾンビ化して反旗?

 こんな調子では、鉄鋼業界と石炭業界の180万人の配置転換が順調に行われるとは考えられないし、ましてや彼らを含むゾンビ企業から削減される500万~600万人の労働者にまともな配置転換がなされるとはなおさら考えられず、彼らは失業するしかない。そうだとすれば、特別奨励補助資金の1000億元は、彼らの生活費の一部に充当されるだけで、配置転換の目的に使われることはないだろう。

 中央政府の役人が机上で考えた過剰生産能力の削減とゾンビ企業の処置のしわ寄せをまともに受けるのは一般労働者である。切り捨てられた彼らがゾンビとして復活し、大挙して反旗を翻さない限り、中央政府の役人も企業の経営陣も、誰一人として政策の失敗を疑わないのが、中国の悪しき伝統なのである。

3/16JBプレス 古森義久『中国の「欺瞞」外交にオバマもいよいよ我慢の限界 口では協調を求め、裏では米国に大胆に挑戦』について

日本の民進党の英語名が“DIP=Democratic Innovation Party”だったのを急遽”DP=Democratic Party” と元の民主党と同じにしました。ネット上で、“DIP”の意味が名詞ですと「【名】〔物を〕下げる[沈める・浸す]こと。〔液体や容器に〕手を入れること◆物を取り出すために。軽く泳ぐこと、一泳ぎ◆【同】quick swim。〔価格などの一時的な〕下落、低下。〔地面などの〕くぼみ、へこみ。〔地面などの〕下り坂[斜面]《地学》〔地層の〕傾斜(角)◆【同】dip angle。《地学》〔地磁気の〕伏角◆【同】magnetic dip。《食》ディップ◆【同】dipping sauce。〔羊などの〕洗浄[消毒]液◆【参考】sheep-dip

〔芯を浸して作る〕ディップ・キャンドル◆【同】dip candle。〔平行棒の〕ディップ◆【同】parallel-bar dip。〈俗・軽蔑的〉ばか、間抜け。〈俗〉すり◆【同】pickpocket。〔アイスクリームなどの〕スクープ1杯分、ひとすくいの量◆【類】scoop。」(アルク調べ)で良い意味がなく馬鹿にされたため変えたのではと思われます。況してや“DIP=Democratic Innovation Party”ではなく“DIP=Democratic Innovative Party”ではないかという気がしますが。台湾の”DPP= Democratic Progressive Party”は流石に使えないと思ったのでしょう。日本の左翼・リベラル・売国政党と台湾の中国国民党からの独立を掲げ戦ってきた政党とを同じにしないでほしい。でも国民は看板の挿げ替えをしても中味はアカかピンクというのは見抜いています。鳩山・菅・野田政権による国政の混乱を挙げるまでもなく、最近の野党の国会質疑の質問のレベルの低さ、野合と言われても仕方のない選挙区での候補者調整(共産党の候補取り下げ、新潟での民主党候補の取り下げ)のやり方を見ていれば日本の民進党に政治を任せる訳には行かないと思うでしょう。国民は朝日が主導する左翼偏向メデイアには騙されません。今後呼ぶときは日本民進党と呼び、台湾民進党と区別しましょう。日本と付く政党名は日本共産党と同じく実態は反日の意味です。分かり易く反日共産党とか反日民進党とか名前を変えればよいのに。

岸田外相が4月に訪中するとのこと。外交儀礼では中国訪問の順なのに世界は日本が中国に叩頭外交しているように見るでしょう。チャイナスクールの入知恵なのでしょうが、岸田も扱い易い大臣と思われていることでしょう。こんな自分の考えを持たない人間は総理の器ではありません。中国からの注文を聞きに行くようなことは止めてほしい。放って置くのが一番です。間違っても通貨スワップを認めることのないように。

アルゼンチンは中国の漁船を撃沈しました。違法操業でこれが正しい実力行使です。日本の海での赤珊瑚盗掘を許したのは恥と思わねば。正義が実行されない、非法治国家という事です。国の大小は関係がありません。2012年にはパラオの中国船員の一人射殺、他は全員逮捕、船は中国人が放火という事件がありました。しかし、昨日安倍首相は首相として初めて海保学校の卒業式に参列したとのこと、良いことです。

自民党は東シナ海ガス田開発を国際仲裁裁判に提訴することを政府に求めました。中国のいう3戦の内の法律戦です。こんなことは遠慮せずにドンドンやればよい。中国は国際法に合わない国内法を作って好き勝手やって国民を誑かしています。比の南沙諸島の問題はハーグの国際司法裁判所に提訴しました。また越は西沙諸島・南沙諸島の領有権についてやはりハーグの国際司法裁判所に提訴準備中とのこと。中国は無視を決め込むでしょうが、国際的に中国のやっている非道を訴えられれば良い。別に受けることを目的にしなくても。世論戦を戦わねば。竹島もさっさと提訴すれば良いのに。

オバマは今頃中国の欺瞞に気付くのは遅すぎ。だからトランプのような大統領候補が出るようになってしまったのです。

記事

Xi Jingping & Peng Liyuan 

米シアトルのペインフィールドに到着し、出迎えの人々に手を振る中国の習近平国家主席(左)と彭麗媛夫人(2015年9月22日撮影)。(c)AFP/MARK RALSTON〔AFPBB News

 中国の習近平政権は、米国を後退させながら勢力を拡大する対米対決戦略をとりながら表面上は穏健で協調的な対米政策をアピールするという欺瞞作戦を進めている。それに対してオバマ大統領もついに中国への批判を正面から表明するようになった──。

 米国のベテラン専門家が、最近の米中関係の変質をこのように報告した。

協調路線から攻勢的外交へ転換

 米国ジョージワシントン大学のロバート・サター教授は3月9日の同大学での講演で、習近平外交の現況と米中関係の変質についての見解を発表した。

 サター氏は米国務省、中央情報局(CIA)、国家情報会議などの中国専門官として30年以上を過ごし、中国の対外戦略研究では米国で有数の権威とされている。

 サター氏はこう総括する。中国は胡錦濤政権下の2002年から2012年までの間、「米国との実利的な協力」外交を進めていた。しかし、2013年3月に習近平氏が国家元首となって以来その外交を止めて、「アジアその他の地域で米国に挑戦する、大胆で攻勢的な外交構想」へと転換した。

その具体的な例としては以下があるという。

・東シナ海や南シナ海で、軍事力を直接行使する寸前の多様な強制的手段を実行し、近隣諸国と米国の権益をはぎ取ろうとしている。

・巨額の外貨準備や工業生産能力の余剰分を利用して、自己中心的な「国際経済開発のプログラムや機関」を開設する。それは米国のリーダーシップを侵害するか、米国を排除することになる。

・アジア太平洋地域で、米国を主要な標的とする軍事態勢の強化を進めている。

・米国の官民に対するサイバー攻撃によって、経済資産の収奪、知的財産権違反、市場アクセスの障害、通貨レート操作などを実施し、米国に重大な損害をもたらす。

習近平主席は「新型大国関係」を推進すると言明

 サター氏は、こうした中国の攻勢を受けてオバマ大統領の対応が明らかに変化してきたことを強調する。

 オバマ大統領は就任してから6年以上の間、中国との協調的な関係の構築を求めてきた。中国側がそれに反する言動を見せても抑制された態度を保ち、中国の名を挙げて批判したり非難することは一切しなかった。だが、最近はその協調政策を変えてきている。最近、オバマ大統領は頻繁に中国の名を挙げて批判するようになったという。

 一方で、習近平主席は、今なお米国とは「新型大国関係」の構築を推進すると公式に言明し続けている。オバマ大統領の声明も含めた米国側の不満や非難に対して、中国側は閣僚級もしくはそれ以下の官僚に対応させ、簡潔に反論を述べるだけで済ませてきた。だから国家主席としては、あくまで米国との協調を求めるという態度は変えていないというわけだ。

だがその一方で、中国当局は米国の利益を侵害する行動を取り続けている。サター氏は、中国がこうして裏表を使い分ける態度を「欺瞞作戦(ダブルゲーム)」と特徴づけた。

日本にも向けられる外交の二面性

 サター氏は、習主席のこの新たな外交攻勢を「近隣諸国や米国に不利益をもたらす大胆な構想」であり、「『国力の回復』や『中国の夢』などという曖昧な自己陶酔の探求」だと描写する。

 そして、中国がこうした野望を抱くことになった土台として以下の要因を列記した。

・経済(過去30年にわたって毎年平均10%以上の経済成長を達成し、製造業、貿易、外貨保有などで世界一の地位を得た。また外国から巨額の投資を受けた)

・軍事(過去20年にわたって毎年平均10%以上軍事予算を増大させた。その結果、アジアで最大かつアジア地域で米軍に挑戦できるだけの能力を持つに至った)

・政治(アフリカやブラジルの最大貿易相手国となり政治的影響力を発揮するようになった。その他の地域でも政治的な役割が増大した)

 習近平政権は、こうした外交の二面性を米国だけでなく日本に対しても行使する可能性が十二分にある。日本も要注意ということだろう。

3/17日経ビジネスオンライン 鈴置高史『「中国に立ち向かう役は日本にやらせよう」 結局は、中国に連れ戻される韓国』について

3/18北はまた弾道ミサイルを発射したようです。そんなお金があればもっと国民を豊かにするようにすれば良いと思いますが、共産独裁国家は聞く耳を持たないでしょう。金正恩は毛沢東と同様の残忍さです。やがて米中談合でフセインやカダフィのような運命を辿るかも知れません。

もう一つの朝鮮半島の国家である韓国は二股外交の愚かさに気付いていないようです。他人を利用しようとするだけの発想しか持ちえない哀れな民族としか言いようがありません。新渡戸の書いた「武士道」の中でも、必須と思われます義”rectitude”を欠く国です。日本に受けた恩を忘れ、世界に言いつけ外交、慰安婦の嘘を広めて来ました。米国もホトホト相手にするのに難渋したと見えます。平気で嘘をつくわ、直ぐに言い逃れる、あまつさえ「火病」を起こすのを見れば誰でも嫌になります。ここはやはり1000年宗主国である中国の出番でしょう。中国も平気で嘘をつくし、人を騙すのが評価される国なのでお似合いです。韓国も自由主義諸国に入っていますが、加藤産経ソウル支局長の軟禁事件に象徴されるように自由のない国です。かつ元記事を書いた朝鮮日報はお咎めなしと言うのですからネポテイズムの極みでしょう。3/18日経にあります2015年の報道の自由度ランキングを見ますと韓国60位で日本が61位です。何故韓国より下に日本がいるかと言うと、政府の責任と言うよりはメデイアの記者クラブの存在が大きいでしょう。自由に取材させない仕組みでこれは新聞・TVで良く批判している談合と同じ性質のものでは。メデイアも少しは数字を上げる努力をしたらと思います。記者クラブを止めれば、はるか上に行くでしょう。

3/18日経記事<香港のメディア事情、年々強まる中国の統制 

フォームの終わり

 外交・防衛以外で幅広い自治を認める「一国二制度」の下、香港は中国本土では認められない報道の自由を享受している。地元紙の多くは自らの政治的立場を示し読者の獲得を競い合ってきた。だが、中国政府によるメディア統制は年々強まっている。

Ranking of freedom of report 2015

 国際ジャーナリスト組織、国境なき記者団(RSF、本部パリ)による2015年の「報道の自由度ランキング」で香港は70位だった。ピークの02年(18位)に比べ大幅に後退した。RSFは「中国当局によるメディア統制が強まり、多くの記者は『所属組織は北京と問題が生じるのを避けるため自己検閲している』と証言した」と指摘する。

 中国の電子商取引最大手、アリババ集団は有力英字紙、サウスチャイナ・モーニング・ポストを買収した。アリババの蔡崇信副会長は「欧米の主要メディアは特殊なレンズで中国を報道している」と批判。「中国政府の意に沿わない原稿は載りにくくなる」(同紙記者)との懸念が強まる。

 中国共産党の主張を代弁してきた親中国派の二大紙、大公報と文匯報も2月に経営統合し新メディアを準備中だ。李立峯・香港中文大学教授(40)は「中国政府は経営資源やスタッフを紙媒体からインターネットに再配置する思惑だろう」と指摘する。>

記事

Launching THHAD

韓国へのTHAAD配備を巡り、米中の駆け引きが続く(提供:U.S. Department of Defense, Missile Defense Agency/ロイター/アフロ)

前回から読む)

 「やっぱり、中国の言うことを聞こう」――。韓国人が弱気になってきた。中国から激しく脅されたうえ、米国からは見捨てられる気配を感じ取ったからだ。

腰が引けていた韓国

—前回の「朴槿恵外交は「暴走」から「迷走」へ」の結論は「韓国が米国側に戻ると見るのは、まだ早い」でした。

鈴置:北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射した2月7日、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の在韓米軍への配備について、韓国は米国の要求を正式にのみました。

 配備は中国が強く反対していたので、韓国の「離米従中」が止まったかに見えました。日本でそう言って回る韓国人もいます。

 でもよく観察すると、韓国の中国に対する姿勢は及び腰でした。配備容認を明らかにした記者会見でも、韓国国防部は「米国に強要され仕方なく認めた」というニュアンスを必死で醸し出していたのです。

 もちろん、中国の目を意識してのことです(「『THAADは核攻撃』の対象と韓国を脅す中国」)。

 そこで「本気で米国側に戻るつもりはないな」と読んだのです。実際、THAAD配備容認から1カ月も経たないうちに韓国では「配備の容認により中国を敵に回した朴槿恵(パク・クンヘ)」への批判が高まりました。

「国を滅ぼす朴槿恵」

 当然と言うべきか、真っ先に批判したのは左派系紙のハンギョレでした。ことに激しい表現で目を引いたのが、オ・テギュ論説委員室長のコラム「国を滅ぼす朴槿恵外交の3大失策」(2月29日、日本語版)です。

 3つの外交失策として挙げたのは日本に完敗した「慰安婦合意」、開城工業団地閉鎖による南北関係の断絶、そして3つの中でも「痛恨の失策」である、THAAD配備容認による中国との関係悪化――です。それに関する部分が以下です。

  • THAADに対する中国の猛反発に「国連制裁とは関係のない純粋な安保次元の決定」という論理を(韓国政府は)展開した。だが、米中が制裁を議論する過程で駆け引きの材料になった痕跡が歴然としている。
  • THAAD配備カードが、中国が強力な制裁案を受け入れるテコとして作用したことは認めるとしても、中国の感情を傷つけるだけ傷つけておき、韓国の境遇を「鶏を追いかけた犬、屋根を見つめる」(一生懸命やったことが虚しく終わるという意味)にした判断ミスは重い。

経済人に圧力

—要は、朴槿恵大統領は中国を敵に回してしまった、との批判ですね。

鈴置:その通りです。これに続いて、対中関係の悪化を問題視したのが中央日報でした。保守系紙の中では最も中国に近いと見なされる新聞です。ハンギョレと比べれば、かなり大人しい表現でしたが。

 3月4日の社説「THAAD外交、安保と国益のための最適な戦略の模索を」(韓国語版)のポイントを翻訳します。3月5日の日本語版でも読めます。

  • (3月4日に)韓米はTHAAD配備のための合同実務協議団を発足させた。問題は中国の激しい反発をどう乗り越えるかだ。中国はTHAAD配備阻止に向け、総力で外交戦に取り組んでいる。
  • 最近、訪韓した中国の武大偉・朝鮮半島問題特別代表は数人の経済人にも会った。それだけで韓国への大きな圧力となる。中国でビジネスをする経済人が、THAAD反対論を聞かされただけでどれだけの負担になるか、容易に想像できる。
  • THAADの必要性に最も早く言及したケリ―(John Kerry)米国務長官も「(配備に)汲々とはしない」と言い出している。配備に関し、考慮すべき点が増えたとの意味だろう。
  • 我々こそ熟慮が必要だ。米中の競争と葛藤の状況を細かく研究し、その隙間でどんな選択をするのが安保と国益を守る最も良い方法なのか、長期的視点で精巧に戦略を描かねばならぬ。

 はっきりと書いていませんが、中央日報の言いたいのはこういうことでしょう。

  • 北朝鮮の核・ミサイル実験に驚いてTHAAD配備を認めてしまい、中国との関係が一気に悪化した。だが、米中は「THAAD」を取引のカードとし、我々の知らぬところで談合し始めたようだ。
  • THAAD配備問題はいつの間にか雲散霧消するかもしれない。配備を認め続けると、米国からはさほど評価されない一方、中国からは憎まれる可能性が高い。

中国の脅迫で下がった韓国株

—中国からの経済的な圧迫も気にしているようですね。

鈴置:中央日報はサムスングループの創業者である李秉喆(イ・ビョンチョル)氏が作った新聞です。一般紙ながら、経済界の利益には関心が深いのです。

 実害も出ています。「中国大使の“脅迫”で株価が下がった」事件が発生しました。韓国経済新聞が「中国消費関連株、韓中外交摩擦が『飛び火』」(2月25日、韓国語版)で報じました。

 企業名の前には業種を示すなど、韓国の産業に疎い読者にも理解しやすい形で翻訳しました。この記事は中央日報の日本語版にも翻訳、掲載されています。

昨年、証券市場を牽引した中国消費関連株がTHAAD配備問題で揺れている。

2月24日、化粧品メーカーのアモーレ・パシフィックは前日比1.80%安で引けた。2月に入り14.23%下落した。中国に工場を持つ化粧品の受託開発・製造会社、コスマックスも前日比0.41%安で引け、月初と比べ55.19%の値下がりとなった。

この日は化粧品・家庭用品のLG生活健康(マイナス2.35%)、製菓のオリオン(マイナス0.54%)、ホテル新羅(マイナス4.40%)などの中国関連株も一斉に下げた。

中国景気の減速に加え、THAAD配備に絡む韓中外交摩擦への懸念が高まったからだ。前日の取引終了後の邱国洪・駐韓中国大使の発言が影響した。

袁世凱に擬せられた中国大使

—中国大使に脅された、と韓国人が悲鳴を上げた事件でしたね。

鈴置:2月23日に邱国洪・駐韓大使がTHAAD配備に関連し「中国の安全保障上の利益が毀損されれば、両国(中韓)関係は避けようもなく被害を受けるだろう」と語ったことで、韓国はちょっとした騒ぎになりました(「『中国大使に脅された』とうろたえる韓国人」参照)。

 邱国洪・駐韓大使は、朝鮮朝末期に清朝から事実上の「朝鮮総督」として派遣された袁世凱に例えられるほど、韓国人の怒りの対象となりました。

 朝鮮日報の金基哲(キム・ギチョル)文化部長は「130年前の袁世凱を思い出した理由」(3月12日、韓国語版)なんて見出しの記事を書いて、「中国の圧政」に抗議したのです。

 発言1つで韓国株まで下げて見せるのですから、駐韓中国大使は今や、袁世凱以上の権力を持つのかもしれません。当時の朝鮮朝に株式市場はありませんでしたから、比べようはありませんが。

 2月28日から5日間も韓国に滞在した武大偉・特別代表は、駐日大使(2001-2004年)を務めた外交官です。その前には駐韓大使(1998-2001年)でしたから、言わば里帰りです。旧知の経済人に会ったほか、多くのメディアの個別のインタビューも受けました。

 邱国洪・駐韓大使のような威嚇的な発言はしなかったようで、韓国紙の反応も悪くなかった。現職大使が「悪い警官」、元の大使が「良い警官」の役割を分担し、韓国人を脅したり、すかしたりしている感じです。

一時は強気を見せた東亜日報も……

—ほかのメディアは「THAADで悪化した中国との関係」をどう評しているのですか。

鈴置:多くの新聞が懸念し始めました。中でも、東亜日報の変節が興味深いのです。

 東亜日報はTHAAD配備のための米韓合同実務協議団が発足した翌日の3月5日の社説「北の核先制攻撃の脅威……THAAD含む緊急対応が必要だ」(3月5日、韓国語版)で、諸手を上げて賛成しました。

 日本語版でも「金正恩氏の核恐喝にTHAAD含む対応が必要だ」(3月5日)で読めます。中国に対しても、以下のように強気でした。韓国語版を翻訳します。

  • 中国が頑なに反対したため、韓米の実務団発足に関する協議がしばらく停滞した。THAADが困ると言うのなら、中国は金正恩を説得するなり、圧迫するなりして核を放棄させれば済むことだ。

 中国の顔色をうかがう中央日報と比べ、気合いが入っているなあと感心したのですが、それは4日後に裏切られてしまいました。

 社説「独自制裁に出た韓国、米中の水面下の駆け引きに不覚を取ってはならない」(3月9日、日本語版)で、東亜日報は大きく軌道修正したからです。ポイントは以下です。

米中の本心を見落とし不覚

  • 米国務省のカービー(John Kirby)報道官は3月7日「米国は6カ国協議の再開を望み、完全かつ検証可能な非核化を望む」と強調した。THAAD配備に関しても「韓国との協議の必要がなくなる可能性もある」と述べた。
  • 米中が安保理決議と配備の保留を巡って、ある種の戦略的駆け引きをしており、非核化会談再開の方向へ局面転換を模索しているようだ。中国の「非核化・平和協定の並行」提案に米国は以前と異なって柔軟だ。
  • 制裁と圧迫だけで金正恩第1書記に核とミサイルを放棄させられるかは不確実だ。特に、北朝鮮政策の目標を金正恩政権の交代と崩壊、統一まで見通す圧迫に置くのかについては、韓米間に意見の相違があり得る。
  • 米中の本心を看破できず不覚を取ることがないよう、出口戦略も考慮し戦略、戦術的柔軟性を発揮しなければならない。

 東亜日報も米中の談合に警戒してはいたのです(「朴槿恵外交は『暴走』から『迷走』へ」参照)。

 でも、3月4日にTHAAD配備に向け実務協議が始まったので、米韓の結束は固いと読み誤り、翌日の社説で中国に「俺の後ろには米国がいるぞ」と凄んでみせてしまったと思われます。

 そこに3月7日のカービー報道官の発言。「米国がスクラムを組んでいるのは自分ではなく、中国だった」と気がついて、慌てて論調を変えたのでしょう。

韓国人の本音

—最大手紙の朝鮮日報は「THAAD」に関し、何か意見を表明しているのですか。

鈴置:3月5日の社説「準備せずに『統一の夢』は実現できない」でチラリと触れました。

  • 民族と国の運命を決める「北の核」の解決は、我々独自の意思だけでは限界があると痛感する。結局、国連が前に出ねばならず、米国と中国の取引を通じ、対北制裁とTHAAD配備問題が処理される過程を見守らねばならないのだ。

 現状認識を述べただけです。この問題で韓国が具体的にどう動くべきだとは主張してはいません。でも、同紙のシニア記者は署名記事で「米中間の立ち位置」に関し言及し始めました。

 3月9日、鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員が「活火山の火口役は避けるべきだ」(韓国語版)を書きました。韓国人の本音を吐露した記事なので、長くなりますがポイントを翻訳します。

ずる賢さが必要だ

  • 韓国にとって米国は「血盟」だ。3万6574人の米軍将兵が朝鮮半島で命を落とした。北朝鮮との軍備競争を避け、繁栄を享受できるのも在韓米軍のおかげだ。借りを返すにはほど遠い。とはいえ、いざこざの身代わりまで買って出ることはできない。
  • 同盟の限界はどこにあるのだろうか。韓米同盟の本質から明確にすべきだ。米国が、中ロを相手にする際に「パートナー」と規定している国は日本だ。韓国は北朝鮮を抑える「地域パートナー」との立場を越えたことはない。従って、アジアで米中間のいざこざの身代わりを進んで買って出る資格と責任は、日本にある。
  • 3月8日、韓国政府が北朝鮮制裁を発表した。開城工業団地の稼働中止を含め、取り得る圧迫手段はすべて動員した。残るはしっかりと履行することだけだ。
  • 同時に、韓国政府の対策の中に、過剰反応な部分がないかもチェックしなければならない。表に出さず静かにやるべき重要な課題も選別し、推し進めなければならない。
  • 指導者には、時としてずる賢さも必要になる。それでこそ「活火山の火口」役を避けることができる。

 米韓同盟を「対北朝鮮用」に明確に限定すればよい、との主張です。THAAD問題を期に韓国は中国からの圧迫と、米国から見捨てられる危険性に同時にさらされました。

 いずれからも逃れるには同盟の範囲を限って「中国を敵にしない」と宣言するしかない、との論理です。これは朴槿恵政権が当初から目指していたことです。米中間で迷走を始めた政権に、原点回帰を訴えているとも言えます。

 なお「過剰反応をチェック」とは、THAAD配備容認の見直しを含め、対中関係の改善に動こう――ということと思われます。「表に出さず処理する課題」とは、核武装の準備を密かに進めよう、との意味に受け取れます。

「やっつけられる日本」を見たい

—「中国に立ち向かう役割は日本にやらせよう」とも言っていますね。

鈴置:自分が中国に敵対しないだけではなく、日本を中国に敵対させる。そうすれば、より確実に中国との良好な関係を維持できる――との計算です。

 国際政治の常道として、隣国が強力になり脅威を感じた際に採る道は2つあります。強大な隣国に立ち向かうか、あるいはその侵略の方向を自分以外の国に向けさせるかです。

 ナチス・ドイツが台頭した時、フランスとソ連はお互いをドイツと仲違いさせようとしました。ドイツの自分への怒りを逸らそうとしたのです(「コリア・アズ・No.1」参照)。鮮于鉦・論説委員はまさに、この手を使おう、と言っているのです。

 感情的にも「日本をして中国に立ち向かわせる」作戦は、韓国人にとって心躍るものがあります。要は「中国が日本を攻撃するのを高みから見物しよう」ということですから。

 尖閣で中国が日本を圧迫するニュースを報じる時の韓国メディアは、実に楽しそうです。憎い日本がやっつけられるのを見るのは、韓国人にとって最高のショーなのです。それが将来、どんな不幸となって自分にやってこようと、です(「『尖閣で中国完勝』と読んだ韓国の誤算」参照)。

ずうずうしい韓国に嫌気する米国

—結局、韓国の新聞は左派系紙から保守系紙まで、米中等距離外交への回帰を訴え始めた、ということですね。

鈴置:その通りです。

—等距離外交はそんなに上手くいくものでしょうか。

鈴置:難しいと思います。「等距離」を語るのは簡単ですが、よほどハラを据えないと――中国に立ち向かう覚悟を固めないと、どんどん「怖い中国」の言いなりになってしまいます。過去3年間の朴槿恵外交がまさにそれを証明しています。

 そのうえ、米国から見捨てられる可能性も出てきました。中国に立ち向かわない韓国の面倒を、米国は見なくなるでしょう。もう米国は「困った人がいたら助けに行く世界の警察官」ではないのです。

 ことに韓国に対しては、米国のアジア専門家の多くが嫌気しています。65年前に一度、わが身を犠牲にして助けたら「血盟の関係だ」と勝手に言い出してすがりついてくる。最近に至っては、米国を裏切りながら「助けてくれて当然だ」と色々と要求してくるのです。

 鮮于鉦・論説委員の記事への読者の書き込みにも「卓説だ」との評価がある一方で、観念論だとの趣旨の批判が多々ありました。

 例えば、米中が南シナ海で対立した際「米国との同盟は北朝鮮専用ですから私は関係ありません」と言い張って米中間で中立を維持できるのか、との指摘です。そんな虫のいいことを言えば、米国から見捨てられるだろう、と懸念を表明した人もいました。

「足抜け」が始まる

—今後、米国はどう動くと思いますか。

鈴置:韓国を助けないどころか「米韓同盟の希薄化」カードを少しずつ切っていく可能性が高い。その見返りに、中国に「北朝鮮の核」を抑制させる作戦です(「朝鮮半島を巡る米中のカード」参照)。

朝鮮半島を巡る米中のカード
米国 中国
THAAD配備留保 従来より強い対北朝鮮制裁容認
米韓合同軍事演習の中断と一部制裁の解除 北朝鮮の核・ミサイル実験の中断
米朝平和協定(不可侵協定)の締結  ・米朝国交正常化  ・在韓米地上軍撤収  ・在韓米軍撤収  ・米韓同盟廃棄 北朝鮮の核兵器廃棄  ・核弾頭の増産中断  ・弾頭再突入技術の開発中断  ・弾頭小型化技術の開発中断  ・保有核兵器の全廃
「朝鮮半島の非核化・中立化」の制度的保障

注)左右の項目は必ずしも連動しない

 米国は、面倒な朝鮮半島から足抜けしていく方向にあります。もちろん一気に米韓同盟の破棄までは行きません。でも、中国と駆け引きを繰り返しながら「半島離れ」を進めていくでしょう。

 東亜日報の3月9日の「不覚をとるな」と訴えた社説。あれは「今から米国の足抜けが始まる」との悲鳴だったのです。

(次回に続く)

3/16JBプレス 堀田佳男『トランプ圧勝は確実、しかし本選はヒラリーの理由 党内の結束力に大きな差、経済の安定も強い追い風に』、3/16ZAKZAK『日本は「トランプ大統領」に備えた方がいい 快進撃の構図と底流』、3/17日経ビジネスオンライン 篠原匡『主流派が党大会に仕込む“トランプ抹殺”の策略』、3/17日経ビジネスオンライン 高濱賛『「トランプ」よりも「共和党」を守る可能性も 党保守本流が推した若手ルビオはついに撤退』について

①トランプは共和党の大統領候補になれるのか②本選でトランプVSヒラリーになった場合、トランプは勝てるのか、が本4記事の解説です。

①について・・・日経ビジネスオンラインの両記事は、共和党保守派はトランプ追い落としをいろんな手を使って図ろうとしているという事です。高濱氏は、指名推薦人が党大会でトランプ以外の候補に投票、党大会の場で指名に関する党規約を修正、対抗馬をクルーズに一本化する方法等、篠原氏は「トランプ氏が党大会までに過半数に到達しなければ、決選投票を繰り返す中で主流派が推す候補、例えばケーシック氏が過半数を得る場面が訪れるかもしれない。あるいは、2回目以降は予備選を戦わなかった人間も参加できるようになるため、待望論の強いライアン下院議長が名乗りを上げるというシナリオも囁かれる」という方法を考えているようです。でも民意から外れることをすれば、共和党から離脱する市民が増え、共和党自体の基盤が弱まると思いますので、そこまでしないのでは。

②について・・・堀田氏はヒラリーの勝利、ZAKZAKはトランプにも勝機があるとの立場です。ヒラリーとトランプではトランプの方がまだマシな気がします。ルトワックがWSJで言ったように選挙が終われば、普通の保守政治家に変わる可能性があるからです。ヒラリーは中国との裏の付き合いが見えて対峙できないでしょう。トランプであれば習近平に反対する中国人の人気も高く、かつプーチンともうまくやっていけそうで、中国包囲網を敷くには彼の方が向いています。しかし3/17日経で

<トランプ氏躍進、日本政府に危機感 パイプ乏しく

 米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が指名獲得へ前進したことを受け、日本政府は危機感を強めている。政府内には大統領選では民主党のヒラリー・クリントン前国務長官が有利との見方が多いが、トランプ氏が大統領になれば日米関係に大きな影響を与えるのは必至。トランプ氏とのパイプも乏しい中、情報収集と分析を急ぐ。

 菅義偉官房長官は16日の記者会見で「米大統領選は日本をはじめ世界に大きな影響を与える選挙だ。結果は当然注視している」と述べた。政府が懸念するのは、トランプ氏が安倍政権の重視する政策に否定的な言動を繰り返していることだ。

 首相官邸は外務省に、トランプ氏に政策を助言するブレーンが誰かを探るよう指示しているが、現時点ではっきりした人物は見えない。実業家時代や最近の発言などを集めてトランプ氏の対日政策を分析しているのが実情だ。

 政府内のトランプ氏への評価は「実際に大統領になれば、実業家らしく現実路線にカジを切るだろう」「30年前から主張を変えない筋金入りの対日強硬派だ」などと定まっていない。>

とありました。外務省は不断から人脈作りしていないという事です。

JBプレス記事

Trump-1

いまだに米大統領候補ドナルド・トランプの化けの皮は剥がれない。それどころか皮の厚さが増して、本物の皮膚に変化しつつあるほどだ。

 国内外でトランプが大統領になった場合の憂慮が真剣に語られ始めている。本当にトランプは大統領になるチャンスがあるのだろうか。

 筆者は昨年末から、活字・放送メディアを通して共和党ではトランプが代表候補になると述べてきた。大統領ではなく、あくまで共和党代表という立場である。

 3月15日に行われるミニ・スーパーチューズデー(5州)では、トランプが共和党候補マルコ・ルビオの地元フロリダ州で勝利すると思われる。と言うのも14日現在、トランプは各種世論調査でルビオに約20ポイントのリードを保っているからだ。「敵地」で圧勝する流れなのだ。

もはや勝ったも同然のトランプ

 さらにジョン・ケーシックが知事を務めるオハイオ州でも勝つ可能性がある。そうなるとルビオ、ケーシックの2人は早晩、選挙戦から撤退していくことになる。

 今後トランプが獲得する代議員数をシミュレーションすると、5月下旬からカリフォルニア州の予備選がある6月7日には、共和党の代表候補に決まるだろう。

 ここまでの予備選結果を眺めると、トランプは38%の得票率を得ており、今後この数字が大幅に下降するようには見えない。逆に2位につけているテッド・クルーズの得票率は約22%で、様々な観点から分析しても、トランプを逆転するのは極めて難しい状勢である。

 ましてや15日のミニ・スーパーチューズデーは、フロリダ州やイリノイ州、オハイオ州といった代議員の総取りとなる州が多く、「もう間に合わない」のだ。クルーズは15日の予備選では全州で、トランプの支持率に負けている。

 ヒラリー・クリントンも15日の予備選では圧勝してくるだろう。となると、11月8日の本選挙はトランプ対ヒラリーという戦いが見えてくる。

 ここからはトランプとクリントンが共和・民主両党の代表候補になったと仮定し、11月の本選挙でどちらが勝つ可能性がより高いかを記したい。

現時点での予想には多少の無理があるが、一言で述べると「クリントンに勝算あり」である。

 理由はいくつもある。過去数十年間の大統領選で勝敗を大きく左右する要因は経済と党内のまとまり、資金力、選対の組織力などで、ほとんどの要因でクリントンが優勢だからだ。

 今年は経済問題が大きな争点にならない珍しい選挙である。米国の失業率はいま5%を切り、インフレ率も1月に1%台に乗ったが依然として低率だ。

 失業率とインフレ率を合わせた数値を痛苦指数(ミゼリー・インデックス)と言い、数値が10%を超えると現職大統領であれば再選できないと言われている。現在は6%台で、バラク・オバマの再選はもうないが、政権党である民主党の候補が再びホワイトハウスに入る可能性はある。

党内が団結、経済も追い風

 2008年のように、米国経済が恐慌の一歩手前という状況であれば、クリントンにほとんどチャンスはなかっただろう。今年の討論会では財政再建策や経済刺激策が話し合われず、不法移民や安全保障問題に関心が注がれている。

 次の指標として、党内がどれほどまとまっているかも重要である。党が分裂状態にあると、11月の選挙で勝てる可能性は下がる。

 特に共和党はトランプが代表候補になった場合、党の首脳部をはじめとしてトランプの言動を容認しない党員たちが少なからずいる。しかも党内の亀裂はいま深くなっている。首脳部がトランプに代わる候補を推してくることさえ考えられる。

 実は1968年にそうした事態が起きた。民主党はリンドン・ジョンソン大統領が再選を求めず、上院議員のユージーン・マッカーシーとロバート・ケネディが代表争いをしていた。

 だがケネディが暗殺されてマッカーシーが有力視されると、民主党首脳部は予備選を全く戦わなかった副大統領のヒューバート・ハンフリーを党大会で代表にしてしまう。

 党大会は暴徒化した党員などで荒れに荒れる。結局、ハンフリーは本選挙で共和党ニクソンに敗れるのだ。

いまの共和党首脳部がトランプを阻止するためのウルトラCを考えているとしたら、1968年のシナリオが頭にあるかもしれない。そうなるとトランプは黙っていないだろうし、共和党は分裂してしまい、最終的には11月にクリントンに負けるという流れができてしまう。

 さらに選挙に勝つために必要なのが選挙対策本部の組織力だ。いくら候補に人間的な魅力があっても、全米レベルで効率的なキャンペーンが運営できないと勝ち目はない。

 この点で今年のトランプは例外中の例外だ。クリントンの選対には給料が支払われるスタッフだけで350人はいるが、トランプの選対はほぼ10分の1である。しかも専属の世論調査員やプロの献金担当者はおらず、政策立案者も最近まで採用していなかった。

 にもかかわらず、トランプは共和党の代表候補になりつつある。これまでの大統領選の常識を破りながら快進撃を続けている点で、例外的な候補だ。

トランプ30億にヒラリー211億円

 選挙資金にしてもそうである。過去30年間の大統領選を眺めるだけでも、ほぼ例外なくより多くの選挙資金を集めた候補が勝利を収めてきた。多額の選挙資金を集めることで、テレビやラジオの政治CMに多額の資金をつぎ込めるからだ。

 正比例ではないが、選挙資金と選挙結果には強い相関関係がある。クリントンは3月7日現在、約211億円(スーパーPAC*1を含む)を集金。バーニー・サンダース(約110億円)の集金額に100億円も差をつけている。

 しかしトランプは約30億円しか集金しておらず、自己資金を約50億円使っていたとしても大変効率よく戦っている。

 9月になると、勝者はかなり微細に見えてくる。考慮すべき指標はいくつもある。経済成長率、国民の実質所得、失業率、インフレ率、候補の支持率、選対の組織力、選挙資金額、党内の結束等を総合的に判断することで、勝者が浮かび上がる。

 米政治学者の中には当選予想モデルを考案している人たちが何人もおり、過去ほとんどハズレがないほど高い確率で当選者を言い当てている人もいる。

 しかし、今年の選挙はドナルド・トランプという「これまでの常識」が通用しない人物がいるため、本選挙でも波乱が起きる可能性がある。それでもトランプとクリントンであれば、現時点ではクリントン有利と記しておく。

*1=PACはpolitical action committee(政治行動委員会)の略。スーパーPACは特別行動委員会と呼ばれ、無制限に資金を集めることが許されている。

ZAKZAK記事

11月の米大統領選で共和党の不動産王、ドナルド・トランプ氏(69)は民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(68)に勝てるのか? トランプ氏が「スーパーチューズデー」に勝利したことで、米国では早くも本選に目が向かっている。結論を先にいうと、選挙戦の構図からみて打ち負かすことは十分に可能だ。 ■実際には自国批判  暴言王、トランプ氏の発言で誤解されている点は、日本、中国、メキシコを名指ししていることが「他国批判」をしていると受け止められていることだ。  日本人として、米軍による日本防衛のためのカネを払わせろというトランプ氏の主張は非常に不愉快だが、そうした言動の一つ一つが「自国批判」であることに気づけなければ、トランプ現象を見誤る。単なるヘイトスピーチで大衆の心をつかむことはできない。  たとえとして安倍晋三首相(61)について語った昨年8月の南部アラバマ州での演説を挙げる。  「日本は復活した。日本にはアベがいる。彼は本当に賢い。一度会ったことがあるが、頭が切れる人物だった」  中国との貿易不均衡に関する話の流れで日本に触れたトランプ氏はまず安倍首相を持ち上げ、矛先をキャロライン・ケネディ駐日米大使(58)に向ける。  「ケネディ氏はアベたちによってワインに夕食、それから朝食、昼食で接待漬けにされ、彼ら(日本人)の望むことは何でもやるようになった」  もちろん日本企業が米国内に製造拠点を置き、多くの雇用を創出していることや、日本政府が米軍の駐留経費を負担していることなど自らの主張に都合の悪い事実には触れない。トランプ氏の「ビジネスの能力も仕事を成し遂げたこともない人物を使っている」との大使攻撃はオバマ政権のせいで国益を損なっているというメッセージを送ることに主眼が置かれている。

■熱いムーブメント

 トランプ氏が圧勝したネバダ州党員集会の前日、1万人近くを集めた大規模演説会がラスベガスで開かれた。トランプ陣営は外国メディアに取材許可を出さないことが多く、テーマパークのアトラクション待ちのような長蛇の列に並んで会場に入った。トランプ氏がいう「ムーブメント」を実感させられる。

 トランプ氏の支持者で、「Hillary Clinton For Prison」(クリントンを刑務所に)とプリントされたTシャツを着たゲイリー・ウィルソンさん(43)に話を聞いた。「For President」(大統領に)のもじりで、ネット通販で手に入れたのだという。

 「エスタブリッシュメント(主流派)を打ち破れるのはトランプ氏しかいない。不満は中央政府が大きくなり、個人の自由が脅かされていることで、クリントン氏にこの路線を続けさせてはならない。トランプ氏が日本を批判しているって? 米国は世界の警察官ではないのだから、日本も軍を強くして自らを守ったらどうだ」

■アウトサイダーの強み

 オバマ政権の7年間で、共和党支持層3分の2に当たる66%は暮らし向きが良くなっていないと感じている。民主党支持層の71%が良くなったと答えたのとは対照的だ。米ギャラップ社が1月に実施した調査による。

 医療保険制度改革(オバマケア)による中小企業の負担増、不法移民問題、同性婚や人工妊娠中絶などの社会問題…。保守系草の根運動「ティーパーティー」(茶会)に後押しされた共和党の非主流派はオバマ政権を攻撃すると同時に主流派の「弱腰」をたたいてきた。共和、民主両党の二極化は「暮らし向き」をめぐる認識の差として表れている。

 同時に共和党内も主流派、非主流派に二分されたが、2014年中間選挙で上下両院ともに過半数を握りながら、公約したオバマケア廃止などをいまだに実現できていないことに対する支持者の怒りは非主流派のテッド・クルーズ氏(45)にも向けられている。

 ワシントン経験のない完全なアウトサイダーであるトランプ氏の「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大にする)というコピーに支持者が飛びつくのは自然な流れだった。

 米国政治は今、小泉構造改革をめぐって自民党が党内抗争を繰り広げた結果、09年衆院選で有権者に民主党の「政権交代」という主張ともいえない言葉が受け入れられた状況と似てきている。この流れは典型的なインサイダーのクリントン氏にはマイナスだ。

 日本として「トランプ大統領」に備えた方がいい。

 (ワシントン支局 加納宏幸)

篠原匡記事

今回の米大統領選において、「3・15」はスーパーチューズデーとして知られる「3・1」以上に重要な一日だった。

 米大統領選における共和党の指名候補として着々と代議員数を積み上げている億万長者の不動産王、ドナルド・トランプ氏。3月14日時点で獲得した代議員は全体の20%に満たないが、15日以降、得票率トップの候補がすべての代議員を得る「勝者総取り方式」の州やそれに準ずる州が相次ぐため、これまでのペースで勝利を重ねれば7月の党大会までに過半数を超えることは確実だ。

Trump-2

共和党の指名レースでトップを走るドナルド・トランプ氏。オハイオ州は落としたが、フロリダ州はしっかりとキープした(写真:AP/アフロ)

 一方、トランプ氏の指名を是が非でも避けたい共和党主流派にしてみれば、勝者総取り方式の州で対抗馬が勝利しない限り、トランプ氏の過半数獲得を防ぐ手立てはない。それだけに、フロリダ州(代議員数99人)やオハイオ州(同66人)など代議員の数が多い州で勝者総取り方式の予備選が開かれる「3・15」は、共和党主流派にとって剣が峰の一戦に位置づけられた。

 結果はどうだったかと言えば、オハイオ州知事ジョン・ケーシック氏がオハイオ州でトランプ氏に勝利し66人の代議員を獲得した半面、マルコ・ルビオ上院議員は地元フロリダで敗北、トランプ氏に99人の総取りを許した。

Kasich

オハイオ州知事のジョン・ケーシック氏は地元での人気を生かして勝利を収めた(写真:AP/アフロ)

 ケーシック氏はこれまでの獲得代議員数では最下位だが、2014年に州知事に再選された際に88郡中86郡で勝利を収めたように地元では抜群の人気を誇る。加えて、保守穏健的な立ち位置や、州知事や下院議員、州議会議員を40年近く務めた経験は共和党主流派にとって理想的なキャリアだ。予備選では低空飛行を続けていたが、オハイオ州の勝利でトランプ氏に対する対抗馬として生き残った。

自身のホームグラウンドであえなく敗退

 一方、主流派の期待を集めたルビオ氏は地元フロリダ州での敗北で「終戦」を迎えた。

 上院議員に当選した2010年以降、大統領選を見据えて若きリーダーというブランドを築き上げたルビオ氏。特に、予備選が始まってからはトランプ氏の独走を止める唯一の存在として共和党主流派の期待を一身に集めた。だが、ディベートで経験不足を露呈した上に、自ら中傷合戦を仕掛けてトランプ氏に叩きのめされるなど最後は自滅した感が強い。全国での遊説を重視して地元フロリダ州を軽視したツケだが、自身のホームグラウンドで政治的に引導を渡された恥辱は想像するに余りある。

Rubio

一時は主流派の期待を集めたマルコ・ルビオ上院議員だが、地元での敗北で引導を渡された格好(写真:AP/アフロ)

 最終的に、トランプ氏はオハイオ州でこそ敗北したが、同日予備選が開催されたイリノイ州、ノースカロライナ州、米自治領北マリアナ諸島で勝利、代議員数を積み増した(3月16日午前4時時点)。それでもオハイオ州での勝利を阻止し、トランプ氏の過半数阻止に希望をつないだという意味では、主流派も首の皮一枚でつながっている。

 なぜ共和党主流派がそこまで過半数阻止に血道を上げるのか。それは過半数を阻止しなければ、予備選におけるトランプ氏の勝利を“無効”にする奥の手が使えないからだ。

トランプ氏が7月18日から開催される共和党の全国党大会までに過半数を獲得すれば、トランプ氏は自動的に共和党の大統領候補に指名される。「(誰がなっても支持するという)私の立場は変わっていない」とポール・ライアン下院議長(共和党主流派)が明言しているように、指名獲得や党大会のルールを変えない限り、過半数に達したトランプ氏の指名を阻止することはできない。

 ただ、過半数に満たなければ様々な“策略”が可能になる。

「トランプ氏の成功を骨抜きにする準備している」

 7月の党大会で、大半の代議員は予備選や党員集会の結果に応じて割り当てられた候補者に投票しなければならない。例えば、トランプ氏が1000人の代議員を獲得していたとすれば、その1000人は党大会でトランプ氏に投票する。ただ、この縛りがあるのは1回目の投票だけという州が多く、そういう州の代議員は2回目以降、自由に候補者を選ぶことができるようになる。

 また、誰が州の代議員を決めるのかというところもポイントだ。オハイオ州のように予備選の勝者が代議員のリストを作成する州がある一方で、トランプ氏が50人の代議員を総取りしたサウスカロライナ州は既に代議員が決まっており、名簿づくりにトランプ氏が関与する余地がない。

フロリダ州に反トランプのテレビCMを大量投下したが、トランプ氏を止めることはできなかった。上はいかにトランプ氏が大統領としての品位に欠けるかを表現したCM。放送禁止用語の連続でピー音しか聞こえない

 同様に、党の州組織は主流派が強く、代議員選出プロセスで影響力を行使することが可能だ。「事実、各州の共和党のリーダーは、代議員の選定を通して予備選におけるトランプ氏の成功を骨抜きにする準備を始めている」。最先端のIT(情報技術)やデータ解析、行動心理学などが活用されている選挙の裏側を描いた『The Victory Lab』の著者でコラムニストのサーシャ・イッセンバーグ氏はこう指摘する。

仮にトランプ氏が党大会までに過半数に到達しなければ、決選投票を繰り返す中で主流派が推す候補、例えばケーシック氏が過半数を得る場面が訪れるかもしれない。あるいは、2回目以降は予備選を戦わなかった人間も参加できるようになるため、待望論の強いライアン下院議長が名乗りを上げるというシナリオも囁かれる。

 そうなった時に、指名候補者争いの先頭を走り続けたトランプ氏とその支持者がおとなしく引き下がるかどうかは現時点では分からない。ただ過半数に達していないとはいえ、それに近い数字を得ているであろう候補者をある種の謀議で抹消すれば、共和党も無傷では済まないだろう。ワシントンに対する国民の怒りが深いだけになおさらだ。

11月にトランプ、ヒラリーが消える恐れも

 鉄板と思われていたヒラリー・クリントン前国務長官は、格差解消と政治革命を掲げるバーニー・サンダース上院議員の粘り腰の前に苦戦している。しかも、国務長官時代に機密情報を私的メールサーバーで管理していた問題がいまだ尾を引いており、FBI(米連邦捜査局)に起訴される可能性も残る。現在、トップを走る2人が秋には姿を消しているという事態もジョークではない。

 混沌としている各党の候補者選び。まだまだ波乱が起きそうだ。

高濱賛記事

—大票田フロリダをはじめとする5州で同時に予備選が行われた「ミニ・スーパー・チューズデー」(3月15日)でもトランプ旋風は収まりませんでしたね。

高濱:共和党の候補は5州で367人の代議員数を争いました。これは指名に必要な1237人の約30%に当たります。

 ドナルド・トランプ氏は5戦で3勝1敗(ミズーリ州は16日東部時間午前3時現在で互角)。「勝者総取り方式」をとっているフロリダでは99人を一気に獲得しました。これでトランプ氏が予備選で獲得した代議員数は16日東部時間午前3時現在、621人となり、指名に必要な1237人にあと616人となりました。 (”live March 15 Election Results,” Lily Mihalik, Los Angeles Times, 3/16/2016)

Trump-3

フロリダ州で勝利を手にし、記者会見に臨んだトランプ氏(写真:ロイター/アフロ)

 共和党保守本流が推してきたマルコ・ルビオ上院議員は必勝を期した地元フロリダでも27%しか得票できず。ミズーリ、ノースカロライナ、オハイオ、イリノイでは、ジョン・ケーシック・オハイオ州知事にも敗れてしまいました。ケーシック氏はもう一人の穏健派で共和党保守本流が推している人物です。ルビオ氏は開票と同時に、予備選から撤退することを表明しました。

 ケーシック氏は地元オハイオで初勝利しました。同州も「勝者総取り方式」を適用しているので代議員66人がすべて同氏の手に入りました。「これで選挙資金が入ってくる。次は(手ごたえを感じている)ペンシルベニア(4月28日)での勝利を目指す」とインタビューに答えています。

 超保守派のテッド・クルーズ上院議員は事前の調査ではミズーリ(代議員数52人)、ノースカロライナ(同72人)、イリノイ(69人)でトランプ氏に迫る勢いでしたが、16日東部時間午前3時現在、互角のミズーリを除いてはトランプ氏の軍門に下りました。しかしクルーズ氏が「ストップ・ザ・トランプ」を実現できる事実上唯一の対抗馬であることに変わりはありません。

トランプに不利に働く「指名推薦人」制度

 共和党保守本流は今後どのように対応するのか。それを占ううえで、重要なのが「Endorsement Primary」(指名推薦人)の動向です。

 これまで紹介した獲得代議員は、一般党員による投票で選ばれた代議員です。ところが、前回お話しした通り、共和党にも「特別代議員」がいます。共和党では「指名推薦人」と呼ばれます。彼らは予備選での投票結果とは関係なく、自分が推薦する候補者に党大会で一票を投ずることができるのです。指名推薦人になるのは党所属の上下両院議員、州知事たちです。

 ニューヨーク・タイムズの選挙予測・分析サイト、「FiveThirtyEight」は候補ごとの「指名推薦人」獲得状況をポイント制で評価して紹介しています。他の代議員に対する影響力か強い上院議員は1人5ポイント、下院議員は1人1ポイント、知事は1人10ポイントで計算します。

 ミニ・スーパー・チューズデー直前までの結果は以下のようでした。  ルビオ上院議員     168ポイント  クルーズ上院議員    50ポイント  ケーシック知事     32ポイント  トランプ氏       29ポイント

 予備選では快進撃を続けるトランプ氏も、獲得した指名推薦人は上院議員が1人、下院議員が4人、知事が2人に留まっています。

 この調査ではルビオ氏がダントツでした。2位はクルーズ氏、3位はケーシック氏。トランプ氏は最下位なのです。

 ところがルビオ氏が撤退して以後、以下のように変わりました。  クルーズ上院議員    52ポイント  ケーシック知事     32ポイント  トランプ氏       29ポイント

 ルビオ氏を推薦していた指名推薦人はなくなり、そのうちの2人がクルーズ氏に回ったようです。ケーシック、トランプ両氏を支持する推薦人の数はまだ変わっていません。 (”The Endorsment Primary,” Aaron Bycoffe, FiveThirtyEight, 3/15/2016)

依然として指名に影響力を持つ党エリートたち

—なぜ、「指名推薦人」のポイントを獲得することが重要なのでしょうか。

高濱:民主、共和の両党とも、大統領候補を指名するプロセスで上下両院議員や知事が強い影響力を持ってきました。一般党員による予備選や党員集会での投票が党外やメディアでも注目されるようになり、一定の力を持ち始めたのは60年代に入ってからのことです。80年以降、党エリートたちの影響力は弱まりましたが、それでも党エリートたちの指名権限は強く、今回も予備選が始まる前から非公開の会合などで特定の候補を推薦する動きがありました。

 党大会までに指名争いの決着がつかなかった場合、党大会が開かれている最中に、党エリートたちが舞台裏で密談して一人の候補に絞り込むわけです。ここでは一般党員はいかんともすることができません。メディアはこれを「Smoke-filled room machinations」(タバコの煙が立ち込める密室での謀議)などと呼んでいます。 (”The Party Decides.” Marty Cohen, David Karol, University of Chicago Press, 2008)

トランプよりも「共和党ブランド」を守る?

—党エリートたちは徹底的にトランプ氏を嫌っていますが、このままいくと、トランプ氏を指名することが一般党員の投票で決まってしまうのではないですか。共和党保守本流はどうしようとしているのですか。

高濱:二つのシナリオが考えられます。

 一つは、トランプ氏の動向にかかわらず、ケーシックとクルーズの両氏らに撤退させず、党大会が開かれる7月18日まで頑張ってもらうという手です。そして党大会の場で指名に関する党規約を修正してしまう。

—そんなことをしたら、「非民主的だ」との理由で一般の米国民の顰蹙を買って、本選挙で民主党候補に負けてしまうのではないでしょうか。

高濱:その公算は大です。しかし、今回は大統領選に負けても、共和党のブランドを守ることの方が長期的には大事と思っている党エリートがいるようです。

 もう一つのシナリオは、目下、第2位のクルーズ氏に一本化することです。ケーシック氏には途中で降りてもらう。そして、クルーズ氏には3月22日のアリゾナ(代議員数58人)、ユタ(同40人)の予備選で圧勝してもらう。

 党保守主流系の「スーパーPAC」は今回のフロリダ州予備選だけで1億5700万ドルを使って、テレビやラジオ、インターネットで「反トランプ」広告を流しました。しかし望む結果は得られませんでした。こうした反トランプ・キャンペーンは今後も続くようです。 (”Why this day changes everything for GOP,” Buck Sexron, CNN, 3/15/2016)

護衛にかかるコストは史上最高

—トランプ氏の発言に猛反対する非共和党員が演説会場に押し寄せて抗議する動きが出ていますね。こうした動きは今後の予備選に影響は与えるのでしょうか。

高濱:オバマ大統領は15日、トランプ氏が行く先々で抗議デモに遭い、抗議する市民と支持者とのいざこざが常態化していることを憂慮し、「トランプ氏のレトリックは下品であり、国を分裂させる以外のなにものでもない」と厳しく批判しています。こうした混乱を招いているのはトランプ氏にあるという見方です。

 米国土安全保障省は、トランプ氏をはじめとするすべての候補者の身辺を警護するため護衛官を派遣しています。今年の警護費用は米大統領選挙史上最高額と言われており、同省は米議会に追加予算を要求しています。予備選が進む中でこれから候補者に何が起こるかわかりません。ある新聞記者は「これもトランプという候補者が出現し、怒りと対立を増幅させているからだ」とコメントしています。

3/15日経 エコノミスト『全人代が描く未来、信用できるか』について

英国・エコノミスト紙も習近平の権力奪取は未完成と見ています。5ケ年計画も基礎となる数字が出鱈目なので画餅に帰すことは明らかです。昨年度のGDPがマイナス成長と言われる中、どうして本年6.5%の経済成長が可能なのか?中国社会はハリボテ社会です。政府・企業とも、大躍進や文革同様、スローガンだけで中味がありません。プロパガンダで敵を欺くやり方を好みます。

でも、キャメロンやオズボーンのように中国に膝を屈した感のある英国で厳しい意見を載せるのは大したものと思います。日本のメデイアも自民党政府の揚げ足取りばかりしているのでなく、たまにはエコノミストの記事でも読んで精神の立て直しを図ったらどうかと思われます。

中国は過重債務、過重投資と言われているのに、新たなインフラ投資をするのが分かりません。膨大な借金を抱え、誰が支払うのか?デフォルトを防ぐために増札するのでしょうけど、ハイパーインフレを引き起こすのでは。国民の怨嗟の的となります。うまく切り抜けられるか?切り抜ける方法がないため、外に敵を見出し、戦争を引き起こすかもしれません。日本の尖閣に上陸するかもしれません。そのときに日本国民は自衛隊の有難さと憲法9条では国を守れないことに気付くでしょう。憲法9条は、戦後すぐは米国の為、今は中国の為に存在しているのです。憲法改正を邪魔する人間は中国か朝鮮半島の手先と思って間違いありません。

記事

指導者というのは時折、すべてが順調だと主張しすぎる傾向にある。年に一度、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の代表者およそ3000人が北京に集い、共産党の指導部がすでに秘密裏に下した決断を形式的に承認する。李克強首相は3月5日の開幕に際し、中国は今年までに完了するよう定めた5年前の主な目標をすべて達成したと発表した。

■成長目標の実現、中央政府頼み

Xi in APRC

習国家主席が政治的支配を確立したかを判断するのは難しい(9日、北京)=ロイター

 国家計画を担う高官は全人代を取材する報道陣に、中国経済がハードランディングに見舞われることは「絶対にない」とも語った。全人代の常務委員会委員長は、政府は憲法(言論と集会の自由が明記されている)を完全に順守して行動すると述べ、習近平国家主席は代表団に向かって、有能で正直な官公吏が昇進すると語った。

 全人代のこのとことん明るい調子に納得する人はほとんどいないだろう。李氏は演説で、成長を下支えするために追加刺激策が近く打ち出されることを示唆し、商品市場はそれに反応して多少上向いた。だが、2010年代末までの中国の経済見通しに対する弱気心理は、依然、国内外に蔓延(まんえん)している。

 中国の指導者たち――かつて、長く、目覚ましい経済成長期を実現したことで広く称賛された人々――が今、景気が減速する中で四苦八苦しているとの認識が広がり、その弱気心理はいっそう悪化している。

 今年についていえば、李氏は国内総生産(GDP)成長率の具体的な目標を掲げる従来の慣行を巧みに避けた。代わりに6.5~7%という目標レンジを発表することで、自身に一定の弁解の余地を与えた。

 世界的な基準に照らすと、まずまずの成長率といえるだろう。中国にとっては、昨年と同程度になるはずだが、追加の刺激策なしで目標を達成するのは難しい。また、中国の近年の実績を見れば、景気刺激策は結局、無駄なプロジェクトと成り果て、一段と大きな不良債権の山をもたらし、経済の首を絞めかねない。

 李氏は、成長目標を達成するために、各地方政府が建設プロジェクトを行うより、むしろ中央政府の財政・金融政策により重点を置いていく意向をほのめかした。さらに、財政赤字がGDP比3%に達し、昨年の2.3%の目標より高くなること、通貨供給量(M2)の伸びの目標を13%増とし、昨年の12%を上回るとした。小幅な調整に聞こえるかもしれないが、少なくとも短期的には、成長率を押し上げる一助になるはずだ。金融政策はすでに緩和されている。今年1月、中国の銀行による新規融資額は2.51兆元(3850億ドル)にのぼり、単月としては過去最大を記録した。

■新5カ年計画、達成容易でなく

 長期展望はより気がかりだ。10日間の会期における全人代の責務の一つは、習氏が起草を指揮した中国の第13次5カ年計画を承認することだ。李氏は予想通り、今年から20年までの計画の対象期間に、6.5%の平均年間成長率を目指すと述べた。だが、「極めて複雑で困難な国際環境」や国際貿易の減少といった問題のせいで、目標の達成は容易ではないと認めた。党内の迷信深い人は不安になるだろう。13という数字が中国で不運を暗示するからではなく、5カ年計画の創始者であるソ連が第13次計画に乗り出すや否や崩壊したからだ。

 本誌(英エコノミスト)が印刷に回された時点で、新計画の全文は公表されていなかった。だが、これまでに公開された断片的な情報は、中国がなんとしても行わなければならない経済改革を表現上は行うとしている。李氏は、市場の力の「決定的な役割」と「供給サイドの改革」の必要性に対する政府の信念を改めて表明した(後者については、経済の最重要分野における非効率な国有企業の支配を弱めるなど、構造改革の必要性を暗に示している)。

 しかし、これまでの指導部の改革の試みはさほど思い切ったものではなかったし、李氏は今回、新たな対策を近く打ち出す気配も見せなかった。実際、手に負えなくなった投機を抑制する策として長年温められてきた不動産税導入の可能性にさえ触れなかった。新計画には、効果の疑わしい投資計画が含まれている。20年までに新たに50の空港を建設したり、辺境チベットにつながる2本目の鉄道路線を建設したりするといった計画だ。

 5カ年計画は、30年までに中国と台湾を結ぶ総延長126キロの高速鉄道を建設することまで提案している。万一、実現するようなことがあれば、これは世界で最も長い鉄道トンネルになるが、台湾に発言権があるのなら、実現する可能性は極めて低い。

■習氏の関心は経済より権力か

 習氏は経済改革に専念するより、自身の政治的支配力を高めることで頭が一杯であるように見える。全人代が開幕するわずか数日前、当局は元不動産デベロッパーで共産党員の任志強氏が運営するソーシャルメディアアカウントを閉鎖した。彼は3800万人のフォロワーを誇るこのアカウントを使い、メディアに対する党の統制強化を図る習氏を批判していた。

 全人代の会期中には、検閲官らが、北京の経済誌「財新」が掲載したオンライン記事を1本削除した。財新は「違法なコンテンツ」を投稿したとされたが、見た限り、全人代のアドバイザーが「自由にものを言う権利は守られなければならない」と語ったと報じたことがその理由だった。

 楽観論者は以前、政治的な支配を確立した習氏がいずれ、改革に二の足を踏む人々を攻撃するためにその権力を使うようになると考えた。その期待は完全に消滅したわけではない。だが、習氏が望んでいた政治的支配力を手に入れたのかどうか、また改革にはあまり興味がないのか、それともまだ政治的には安泰だと感じていないのかを見分けるのは難しい。党総書記の座を引き継いでから3年以上たったが、反対勢力をつぶそうとする習氏の精力的な努力からは、絶大な自信はうかがえない。いずれにせよ、共産党の5カ年計画によって改革を進めるだろうという期待と、習氏の個人的な思惑を一致させるのは難しいのかもしれない。

(c)2016 the economist newspaper limited. Mar 12th 2016 all rights reserved.

3/14日経ビジネスオンライン 鈴置高史『朴槿恵外交は「暴走」から「迷走」へ どうせ、我々は「米中の捨て駒」なのだ』について

韓国は愚かですから、自分が大国をいいように操っていると思っていましたが、逆に米国からTHHADで梯子を外され、北とは秘密交渉で韓国は梨の礫の状況に置かれました。事大主義の咎めが出た形です。

クリントン政権時の北爆を断った韓国が道を誤ったとしか思えません。覚悟のない国はダメです。北は失うものがないので自由度が高くなります。韓国は守るべきものが見えていません。ですから保守派と雖も、反日に血道をあげ、逆に日本人の韓国嫌いは進んでいっているように思えます。

http://www.sankei.com/politics/news/160312/plt1603120010-n1.html

韓国嫌いの数字について、まだまだ数字上は低く感じます。友人の話を聞くと嫌いになっている人が増えています。韓国は中国の手先になって、反日を世界中に広めていますし、日本にいる所謂在日も日本共産党と組んで日本弱体化を図っています。国民も真実を知らされればもっと下がるのでしょうが、偏向したメデイア(新聞・TV)からだけ情報を取っていますと、正しい判断ができなくなります。

米国が朝鮮半島から足抜けするかもしれないとのこと。いい加減「火病」に振り回されるのは御免と思ってきたのでしょう。朝鮮戦争時の韓国軍の戦いぶりを見ていたらそんなものは分かっていたでしょうに。米国は如何に日本を恐れていたかという事です。反日をやらせ放題にしてきましたから。

それに引き換え今の日本は足抜けならぬ腰抜けばかり。日本の中枢が保身の官僚に牛耳られているようでは。財務省・外務省・文科省が三馬鹿ならぬ三悪トリオです。彼らをコントロールできる政治家がいないのが問題。国民主権が泣きます。でも「国家は国民に見合った政府しか持てない」と言われますので止む無しなのかと。

日本も傍観者の立場でいられるはずがありません。韓国が中国側に付いたなら、中国の軍事膨張を防ぐ自由主義諸国の最前線は日本と台湾になります。それを頭に描きながら外交をして行きませんと。やはりATO(Asian Treaty Organization)の早期創設が望まれます。ASEAN諸国とも連携して中国封じ込めを図ることが肝要です。

今度の参院選では与党+αで議席の2/3を取り、憲法改正の議論を俎上に載せ、国民投票まで持って行きたい。先ずは96条の改正から。自衛隊の国軍化より、硬性憲法を修正しないと。クライン孝子の『敗戦国・日本とドイツ 戦後70年でなぜ差がついたのか』を読みますと、1949年基本法制定から1997年まで44回も改正してきたとありました。世界の動きに機動的に対処するにはすぐに憲法改正できる仕組みにしないと。左翼メデイアの報道と違い、国民レベルでは2度の大震災もあり、自衛隊が如何に頼りになるか分かっていますので、9条改正は後で良いと思います。

しかし、民主党と維新の党の合併後の名前が民進党とは。台湾の民進党は国民党独裁の中で戦って政党を立ち上げた訳で、彼らにそんな覚悟もないでしょう。中味は共産党と同じく反日売国政党です。騙されてはいけません。民主党にも保守派が居ると言っても、姿が見えません。間違っても投票することのないようにしたいです。

記事

前回から読む)

 米国を離れ、中国に向けて「暴走」していた韓国。北朝鮮の核問題を巡り米中が取引に動くと、今度は「迷走」し始めた。

「南シナ海」とも交換?

前回は、韓国が「自分はのけ者か」と疑心暗鬼に陥ったという話で終わりました。

鈴置:朝鮮半島の未来を自分とは関係なく、周辺国が話し合って決めるのではないか――との恐怖です。

 きっかけは、米中が北朝鮮に対する国連制裁案を固める際、在韓米軍に導入予定の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)を交渉カードに使ったことでした。

 仮に、米国が満足できるほどの対北制裁を中国が実行したら、THAAD配備はなかったことになるかもしれません。それに、米中の取引の場はもっと広いと見る向きもあります。

 在韓米軍へのTHAAD配備と、中国が現在進めている南シナ海での対空ミサイル配備とを交換条件に米中が交渉する――との観測まで韓国紙に載り始めました。

 韓国は梯子を外されかけています。米国の顔色をうかがい、中国の報復まで覚悟して配備を容認したというのに……。これでは朴槿恵(パク・クンヘ)大統領はピエロです。韓国人の米国に対する猜疑心は膨らむ一方です。

WSJが抜いた米朝秘密接触

—それに加え、米国と北朝鮮が2015年末に、国交正常化を念頭に置いた秘密交渉に入りかけていたことが明らかになりました。

鈴置:ウォールストリートジャーナル(WSJ)が2月21日「U.S. Agreed to North Korea Peace Talks before latest Nuclear Test」(英語版)ですっぱ抜いたのです。骨子は以下です。

  • 4回目の核実験の数日前、オバマ政権は朝鮮戦争に正式に終止符を打つべく対話を開始することで北朝鮮と秘密裏に合意していた。米国が長い間掲げていた、北朝鮮が先に核武装を削減するとの条件を取り下げてのことだ。
  • 代わりに米国は「北の核兵器」を対話の一部とするよう求めた。しかし、北はこの反対提案を拒絶した。以上は、この動きに詳しい関係者が明かした。

 この記事により、韓国はちょっとした騒ぎになりました。「朝鮮戦争に終止符を打つ」とは、米朝の間で国交を正常化したうえ、平和協定なり不可侵条約を結ぶという意味です。

南ベトナムの二の舞に

—「平和協定」のどこが問題なのでしょうか。

鈴置:交渉で北朝鮮が「休戦協定を結んだだけの状態から安定的な平和体制に移行するのだから、在韓米軍を撤収すべきだ」と言い出すのは確実です。そもそも、それこそが北が平和協定の締結を主張する目的なのですから。

 韓国人、特に保守派は在韓米軍の撤収により南北朝鮮の戦力、あるいは心理的なバランスが崩れたら、北朝鮮が攻撃してくる可能性が高いと信じています。だから安易に平和協定を結ぶなんて、彼らにとってはとんでもないことなのです。

 保守運動の指導者の1人、趙甲済(チョ・カプチェ)氏は北朝鮮の平和攻勢に強い危機感を抱き、このニュース以降しばしば、国民への警告記事を自分のサイトに載せています。

 「韓国が参加しない米朝の平和協定交渉はベトナムの再現だ!」(3月1日、韓国語)では以下のように主張しました。警告のポイントは、平和交渉が「北の核」容認につながる、という点です。

  • 韓国が参加しない米朝の平和協定交渉は、南ベトナムの敗亡を呼んだ「パリ平和交渉」の再現となる。受け入れることはできない。
  • 平和交渉は北の核放棄の後に限って行うべきだ。核の脅威が進行中に平和交渉すれば、北の核武装を事実上、認めることになる可能性が高い。
  • パリ平和協定が北緯17度線の南に進入した北ベトナム軍を認める一方、駐越米軍を撤収させたことにより、(南ベトナムの)共産化につながった。

米国の変節に不意打ち食らう

 今回の「米朝接触」のニュースに、保守派だけではなく普通の韓国人までがショックを受けました。成立しなかったとはいえ、米朝がいったんは平和協定を話し合う交渉に入りかけたからです。

 米韓はこれまで「平和協定」に関する話し合いについて、北朝鮮が先に核兵器を放棄するのなら応じてもよい、との姿勢で足並みをそろえてきました。

 でもWSJの記事によれば、米国は「北の核放棄」と「平和協定」を同時に話し合ってもよい、と姿勢を変えたのです。

 東亜日報は社説「米中のTHAAD・平和協定の気流変化、韓国は不意打ちを食らうのではないか」(2月27日、日本語版)で、そこに危機感を表明しました。

  • 当分は北朝鮮への制裁が続くだろうが、危機的状況がある程度落ち着けば、中国と北朝鮮が6カ国協議と平和協定交渉の並行を提起し、米国も前向きに検討する可能性が高い。
  • 最近、米国の専門家の間では、25年間維持してきた「『先』非核化、『後』平和協定」という対北交渉の枠組みを見直す兆しがある。
  • 制裁だけでは北朝鮮の核問題を解けない現実をあげて、平和協定交渉が必要だとする主張も少なくない。ロシアも平和協定の必要性に共感している。
  • しかし、平和協定は北朝鮮が主張する在韓米軍の撤収、米朝国交正常化などと連動している。北朝鮮が核を放棄するまで、韓国は受け入れられない。

中国も平和協定を推奨

 韓国人の悩みをさらにかき立てたのは「平和協定」締結に向け、中国も露骨に動き始めたことです。

 WSJが特ダネを報じる4日前の2月17日、王毅外相は北朝鮮に核放棄を求めるだけではなく、休戦協定を平和協定に転換する協議を並行して進めるべきだと語りました(「表・THAADを巡る米韓中の動き」参照)。

1月6日 北朝鮮、4回目の核実験
1月7日  
朝鮮日報、社説で核武装を主張
与党セヌリ党幹部2人、核武装に言及
1月13日 朴大統領、国民向け談話で「THAAD配備は国益に基づき検討」
2月7日  
北朝鮮、長距離弾道ミサイル実験
韓国国防部「THAAD配備に関し、米国と公式協議に入る」
中国外交部、北朝鮮と韓国の双方の大使に抗議
Global Times社説「配備すれば戦略・戦術の両面で軍事目標に」
2月16日  
環球時報・社説「配備すれば韓国は中・米の碁盤の石だ」
朴大統領、国会演説で「配備の協議開始も抑止力の一環」
2月17日 王毅外相、平和協定締結のための米朝協議を提唱
2月21日 WSJ「2015年末、米朝が平和協定に関し秘密交渉」
2月23日 米国、配備に関する合同実務団結成のための約定書交換を突然に延期
2月24日 ケリー国務長官「配備に汲々としない」
2月25日 ハリス米太平洋軍司令官「必ず配備するわけではない」
3月2日 国連安保理、対北朝鮮制裁を採択
3月4日 米韓、配備に関する合同実務団結成のための約定書を交換

 

 こうした動きを考え合わせ韓国人は、自分の知らないところで米・中・北が談合して、勝手に話を進めていくのではないかと疑いを持ったのです。

—疑り深いですね。

鈴置:韓国には、米国の対北朝鮮政策がぶれ続け、それにより自分たちは引きずり回されてきた――との根深い不信感があります。

空爆考えたクリントン

 朝鮮日報の社説「政府は米朝の平和協定論議をちゃんと知っていたのか」(2月23日、韓国語版)がその思いを吐露しています。

末期のオバマ(Barack Obama)政権が北朝鮮との交渉に乗り出す考えを少しでも持っているのなら、我々は見過ごすことができない。過去20年間、米国の対北政策は制裁と対話の間で揺れ動き、別段の成果を生めなかった。

北の核施設の空爆まで考えたクリントン(Bill Clinton)政権は1994年、カーター(Jimmy Carter)元大統領の訪朝を期に、北朝鮮と電撃的にジュネーブ合意を結んだ。

しかし、北がこの約束を破ったため、次のブッシュ(George W. Bush)政権は強硬策に転じた。もっともこの政権も、末期に方向を変えた。

オバマ政権も北との合意が破れると「戦略的忍耐」に転じた。持続性のない対症療法を繰り返しては、北の偽装平和戦略に利用されたということだ。

政権末期には北と妥協

—こうして見ると確かに、米国の歴代政権は腰が据わっていませんね。

鈴置:米国からすれば韓国だって、クリントン政権が北の核施設を空爆しようとしたら怖がって「やめてくれ」と頼んできた。その後も北が核実験した直後は大騒ぎするが、すぐに忘れてしまうではないか、と言いたくなるでしょうが……。

—政権末期になると米国が北に接近するのは?

鈴置:歴代政権は北朝鮮に対し初めは強硬に出る。しかし、強硬策に出ると戦争になりかねないと次第に認識する。政権末期になると「外交上の実績作り」を目的に、表面的な妥協をしてしまう――というパターンです。

イランの核合意が後押し

 もう1つ、韓国人が恐れる理由があります。2015年に米国や中国など6カ国と、イランの間で核合意という先例ができたことです。

 イランが核開発のスピードを落とす見返りに、米欧は経済制裁の相当部分を解除する――との内容です。注意すべきはイランが約束したのは、決して「核兵器の完全廃棄」ではないことです。

 このスキームを朝鮮半島に当てはめれば、北は核・ミサイル実験を中断することで核開発の速度を落とす。見返りに、国連加盟国は制裁を一部解除し、米国も米韓合同軍事演習の中断など融和姿勢を見せる――ことになります。

 中国と北朝鮮はまずこの取引を実現し、それを手掛かりに「平和協定の締結」と「在韓米軍撤収」の交換を目指すでしょう(「表・朝鮮半島を巡る米中のカード」参照)。

朝鮮半島を巡る米中のカード
米国 中国
THAAD配備留保 従来より強い対北朝鮮制裁容認
米韓合同軍事演習の中断と一部制裁の解除 北朝鮮の核・ミサイル実験の中断
米朝平和協定(不可侵協定)の締結  ・米朝国交正常化  ・在韓米地上軍撤収  ・在韓米軍撤収  ・米韓同盟廃棄 北朝鮮の核兵器廃棄  ・核弾頭の増産中断  ・弾頭再突入技術の開発中断  ・弾頭小型化技術の開発中断  ・保有核兵器の全廃
「朝鮮半島の非核化・中立化」の制度的保障

注)左右の項目は必ずしも連動しない

 すでに米中の間で「THAAD配備の中断」と「従来よりも強い制裁」が取引された模様です。今後は「THAAD配備」ではなく「米韓同盟」がカード化されていくわけです。

朝鮮半島から「足抜け」

—表の「平和協定」の項目は「米朝国交正常化」「在韓米地上軍撤収」「在韓米軍撤収」「米韓同盟廃棄」と4つに細分化されています。

鈴置:下に行くほど強力な――中国・北朝鮮に得なカードです。ただし、米国にとっても必ずしも悪い話ではありません。面倒な手間ばかりかかる朝鮮半島から「足抜け」できるのですから。韓国の保守にとっては悪夢となりますけれど。

 もし一番下の「半島の非核化・中立化の制度的保障」まで状況が進むと、彼らは「米国に見捨てられた」「やはり、自分たちは米・中の捨て駒だった」と意気消沈するでしょう。

 韓国を脱出する人も出るかと思います。なおこの際、日本が大陸に向き合う最前線になります。他人事ではありません。

どうしようもない韓国

—結局、韓国はどうするのでしょうか。

鈴置:どうしようもありません。半島の将来を巡り、米中が繰り広げるゲームを見守ることしかできないのです。

 先に引用した東亜日報の社説「米中のTHAAD・平和協定の気流変化、韓国は不意打ちを食らうのではないか」(2月27日、日本語版)の最後の部分を要約します。

  • 北朝鮮の核問題で今回、米中は(韓国の背の届かない)高い空で駆け引きを繰り拡げた。当事者である韓国が脇役に追いやられる可能性があるという冷徹な現実に気づく。
  • 米中の気流変化を感知できずに両国の言いなりになることがないよう、政府は気を引き締めなければならない。

巨人たちのバスケットボール

 保守論壇の本流中の本流とされる、朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹も、コラム「THAAD問題はそんなに簡単ではない」(2月25日、韓国語版)で、似た例え話を使いました。以下をご覧下さい。

最近、米中という背の高い人たちがTHAAD問題に関し、我々の頭の上でバスケットボールを回し始めた。米中のやり取りの結果、韓国配備がなくなることもあれば、配備の後に我々が想像した以上の暴風が吹き荒れることもあろう。

我々が行く道の先に安全保障に関しどんな得失があるのか、可能な限り中長期的な視点で状況を見極めねばならない。たとえ背は低くとも、発想だけは背の高い人の上にいなければならない。そして、冷静に、冷静に、また冷静でなければならないのだ。

 ボス交渉が始まった。結論はまだ、分からない。軽挙妄動せず、その行方を見極めよう――との呼びかけです。楊相勲・論説主幹も「状況を見守ろう」と訴えるしかないのです。

「離米従中」に歯止めかからず

—韓国がTHAAD配備を認めたので、「離米従中」をやめて米国側に戻ったのかと考えていました。

鈴置:日本の外交関係者の間でもそう思い込んでいる人が多い。韓国人が「親中外交はやめた」などと言ってくることもあるのでしょう。でも、楊相勲・論説主幹の記事の見出しではありませんが「問題はそんなに簡単ではない」のです。

 今回、韓国は米国から強く命じられたので、THAAD配備を受け入れました。今後、米国が「配備はやめた」と言い出せば、恥ずかしい思いをしながらもそれに同意するしかない。

 反対にTHAADを配備したら中国からひどく苛められるでしょう。楊相勲・論説主幹の言う「暴風が吹き荒れる」はそれを指します。そのあげく韓国は海洋勢力側から引きはがされ、今まで以上に大陸側に引き込まれる可能性も高い。

 もう、韓国人は、自らの意思によって自分の国の針路を決められません。米中どちらかが大声で叱りつけるたびに、反射的に動いているだけなのです。

 これまで韓国は米国を離れ中国側に向かって暴走していた。暴走とはいえ、そこにはなにがしかの意思は働いていた。しかしここに至りついに、意志とは関係なく迷走し始めた――と見るべきでしょう。

日本の頭上のボール

—なぜ、韓国は自分の運命に関与できないのでしょうか。

鈴置:対立を深めた米中が、血相を変えて外交ゲームに取り組み始めたからです。横綱のような米中がガプリ四つに組めば、前頭級の国の出る幕はなくなります。

 北朝鮮の核問題も深刻になるほどに、解決には相当の軍事力と、国民の我が身を削る覚悟が必要になります。でも、韓国はいずれも持たないのです。

—日本はどう動けばいいのですか。

鈴置:「韓国外し」は人ごとではありません。東アジアの安全保障の構造変化に関与できないという意味では日本も、韓国と似た境遇にあるのです。

 日本人も、頭の上で飛び交うボールの行方から目を離してはなりません。ひょっとするとボールを瞬時でも、少しでもコントロールするチャンスが来るかもしれない。その時に備えるべきです。

(次回に続く)

3/9WSJ EDWARD N. LUTTWAK『Suffering From Trumphobia? Get Over It Before the 1980 election, Reagan’s opponents said he would ignite a nuclear holocaust. Didn’t happen.(トランプ恐怖症の苦悩?それは1980年の選挙の前に終わった話。レーガンの相手は、彼が核で虐殺を起こすと言ったが、そうはならなかった。)』について

エドワード・ルトワックのウオールストリートジャーナルへの寄稿記事です。誤訳があればご容赦ください。戦略論の大家もトランプ大統領の現実化に目を背けることはできないと考えているようです。レーガンの例を引いて今は過激発言で大衆の支持を受けていますが、本選が近づけば普通の保守政治家に戻るだろうと。そうしなければクリントンには勝てませんので。確かにSNSを利用した選挙は今までのTV広告を多用したお金のかかる選挙と区別されます。その意味ではイノベーターです。広告会社は真っ青でしょう。日本の政治にもネットの活用をもっと認め、米国と同じく戸別訪問も認めた方が良い。公職選挙法は厳しすぎて、政治家を知るチャンスを少なくしている気がします。

3/11日経電子版の記事にもトランプが豹変する可能性を示したものがありました。

<トランプ氏、暴言封印 討論会で主流派に支持呼びかけ

【ワシントン=吉野直也】米共和党は10日夜、大統領選の候補指名争いの大票田であるフロリダ州でテレビ討論会を開いた。15日の大票田決戦を控え、首位を走る不動産王ドナルド・トランプ氏(69)は自身のトレードマークである暴言を封印し、党主流派に支持を呼びかけた。指名争いから撤退したキリスト教保守派で元神経外科医ベン・カーソン氏は11日、トランプ氏への支持を表明した。

Trump & Cruz-2

フロリダ州の討論会の休憩時間に言葉を交わすトランプ氏(左)とクルーズ上院議員(10日)=ロイター

 「共和党主流派はこの現実を利用すべきだ」。トランプ氏は討論会で、無党派を含む幅広い層から支持を得ていると説明し「反トランプ」の立場を鮮明にする主流派に再考を促した。トランプ氏の指名を阻止したい主流派内には7月の党大会で決選投票に持ち込み、トランプ氏以外の候補を担ぐ構想もある。

 トランプ氏は予備選・党員集会を通じて共和党の新たな支持層を掘り起こしていると強調し、「(民主党の本命候補)ヒラリー・クリントン前国務長官(68)も倒せる」と語った。

 トランプ氏にとってキリスト教保守派に人気が高かったカーソン氏の支持が得られたことも追い風だ。カーソン氏と2位につける保守強硬派のテッド・クルーズ上院議員(45)の支持基盤は重なっており、同氏に打撃を与えられると読む。

 クルーズ氏は討論会でホワイトハウスがある首都ワシントンでも「トランプ氏は(大統領ではなく)スミソニアン(博物館)のトップとしては歓迎されるだろう」と皮肉った。主流派の党大会での画策にも触れ「惨事だ。投票者の意志を尊重すべきだ」と主張した。

 主流派のマルコ・ルビオ上院議員(44)は「あらゆる選挙は重要だが、今回の大統領選は世代間闘争だ」と支持を求めた。伸び悩むルビオ氏は地元フロリダで敗北するような事態になると、撤退が現実味を帯びる。世論調査ではトランプ氏に先行を許しており、厳しい戦いを強いられている。

 15日の大票田決戦はフロリダ、オハイオなど各州で予備選・党員集会がある。フロリダやオハイオは首位候補が州の代議員を独占する「勝者総取り」方式で、ここでトランプ氏が勝利すれば、指名獲得への流れが一気に加速する。>と。

日本にも厳しい物言いをするトランプですが、大統領になれば変わるでしょう。中国に対してはクリントンのように中国から金を貰って来たわけでないので、米国の覇権に挑戦していることが分かれば対峙すると思います。そのためには日米同盟を基軸とした自由主義諸国の結束こそが大事と理解するでしょう。

記事

Trump in WSJ

The candidate meets the press in Jupiter, Fla., March 8. PHOTO: JOE RAEDLE/GETTY IMAGES

By EDWARD N. LUTTWAK

March 9, 2016 6:13 p.m. ET

1024 COMMENTS

Unlike the fear of Islam, which is a rational response to Islamist violence across the world, the fear of Donald Trump really is a phobia. There is a precedent for this: the panicked Reaganphobia that preceded the 1980 election. We heard that Ronald Reaganwas a member of the John Birch Society—whose essential creed was “Better Dead Than Red.” He therefore rejected “mutual assured destruction,” the bedrock strategy of the liberal consensus to guarantee coexistence by nuclear deterrence. Reagan, it was said, believed in “counterforce,” that is in a disarming first strike to win a nuclear war.

Mr. Trump irritates many with his vulgarities but Reagan was insistently depicted as a threat to human survival, so that most of the columnists and editorial writers of the quality press reluctantly called for Jimmy Carter’s re-election, despite the clamorous failures of his hopelessly irresolute administration. In Europe there was no reluctance. In London, Paris and Bonn, then the capital of West Germany, the re-election of Jimmy Carter was seen as a necessity to keep the bomb-thrower Reagan out of the White House, and well away from the nuclear button.

So many eminent people, including W. Averell Harriman, adviser to five U.S. presidents and chief negotiator of the 1963 Limited Test Ban Treaty, asserted that Reagan wanted to start a nuclear war that the KGB went on maximum alert from inauguration day for more than two years, forcing its officers around the world to take shifts on 24-hour watches of all U.S. strategic air bases to detect the telltale simultaneous launchings of a nuclear first strike.

In 1983, two years into his first term, Reagan did send U.S. troops into action to fight a war . . . in tiny Grenada, whose 133 square miles was the only territory that Reagan invaded in eight years. As for nuclear weapons, Reagan horrified his advisers at the 1986 Reykjavik Summit with Mikhail Gorbachev with his eagerness for nuclear disarmament, thereby disclosing that he didn’t even believe in strike-back, let alone in attacking first. He wanted ballistic-missile defenses, not ballistic missiles.

Mr. Trump’s lack of good manners may be disconcerting, but as president his foreign policies are unlikely to deviate from standard conservative norms. He would only disappoint those who believe that the U.S. should send troops to Syria to somehow end a barbaric civil war, or send troops to Libya to miraculously disarm militias, or send troops back to Iraq to preserve its Iran-dominated government, or send more troops back to Afghanistan where the Taliban are winning because of the government’s incapacity and corruption.

President Trump would do none of the above. He will send troops home from Afghanistan and Iraq, while refusing to intervene in Libya or Syria, or anywhere else in the Muslim world, where U.S. troops are invariably attacked by those they are seeking to protect. Real conservatives want to conserve blood and treasure, not expend them lavishly to pursue ambitious political schemes.

As for trade, yes, Mr. Trump has called for tariffs against China and Mexico. Most economists now agree that wage stagnation in the U.S. and other advanced countries is caused by imports from China and other newly industrialized countries. Tariffs are unlikely, but one should expect vigorous antidumping measures, instead of allowing entire industries to be submerged.

What about the racism then? Born and raised in New York City, Mr. Trump has met one or two people during his life who are not white Anglo-Saxon Protestants. He is unlikely to be startled by an encounter with a person of “Hispanic” or “Latino” origin. He has worked successfully with any number of African-Americans, and he has certainly shared a meal or two with Jews, including his son-in-law, Jared Kushner.

True, Mr. Trump launched his campaign by denouncing the supposed crimes of illegal immigrants from Mexico. But given his personal history, one may seriously doubt the sincerity of his anti-Mexican sentiments. He must certainly find ways of undoing the damage—starting with a fulsome apology—but nobody should view Mr. Trump as a racist because of those remarks.

That said, Mr. Trump is unlikely to persist with the State Department’s “resettlement” programs that keep flying Iraqis, Somalis and assorted others to Maine and other states supposedly in need of diversity—although the locals think otherwise.

The hysteria in certain circles notwithstanding, a Trump presidency would offer only the prosaic changes of any conservative administration: less activism across the board, with a view to saving some money; less environmentalist extremism; fewer “programs” instead of more of them; and no special efforts to add to minority representation in new categories, such as the transgender Supreme Court nominee that some are calling for.

In practice, these are all changes at the margin—a matter of 5% less spending rather than 5% more. In this election, though, that in itself would offer a clear alternative to the huge increases in government spending advocated by Bernie Sanders and followed by Hillary Clinton. While Mrs. Clinton may not follow through, one should not count on her insincerity.

So those who are planning to emigrate if Mr. Trump is elected president—one heard lots of emigration vows when Reagan was winning—might wait a week or two after inauguration day before fleeing. They might discover that President Trump is as good an administrator of the public weal as he was in his presidential campaign—the cheapest by far, and successful too.

Mr. Luttwak’s books include “The Endangered American Dream” (Simon & Schuster, 1993) and “The Rise of China vs. the Logic of Strategy” (Harvard, 2012).

3月8日、候補者はフロリダ州のジュピターで記者会見した。写真: ジョーRAEDLE

エドワード・N.ルットワークの意見

2016年3月9日午前6時13分午後ET

1024コメント

世界に広がるイスラム教徒の暴力に対し合理的な対応はイスラム教を恐れることではないように、ドナルド・トランプを恐れることは恐怖症としか言いようがありません。前例があります。1980年の選挙を前にレーガン恐怖症と言われてパニックに陥りました。ロナルド・レーガンはジョン・バーチ協会のメンバーであり、協会の根本的な信条だった「アカの支配であれば死んだ方がマシ」の信奉者と聞きました。 彼はそれゆえ核抑止による共存を保証する寛大な合意の基本戦略である相互確証破壊(MAD)を拒否しました。レーガンは、核戦争に勝つためには敵を無害化する一撃、つまり「反撃能力」を信じていたと言われています。

トランプ氏は、その下品さにより多くの人を苛立たせていますが、レーガンは人類の生存を脅かすものとしてずっと描かれ、故に高級紙のコラムニストや論説委員のほとんどはジミー・カーターの絶望的に決断できない管理能力のなさにも拘わらず、しぶしぶ彼の再選を求めました。ヨーロッパではカーターは全く抵抗がありませんでした。ロンドン、パリ、西独の首都ボンでは、ジミー・カーターの再選は、爆弾投下魔レーガンをホワイトハウスから遠ざけ、核のボタンから離すので良いことと看做されていました。

多くの優れた人物、中でもW. アヴェレルハリマンは5代に亘って米大統領の顧問として仕え、1963年の部分的核実験禁止条約の交渉責任者でもありましたが、KGBがレーガンの就任日から2年以上も最大の警告を続けて来た核戦争を開始したいとレーガンは考え、すべての米国の戦略空軍基地において、核の一撃の発射の証拠となるものをチエックするために、スタッフに24時間監視のためのシフトを取る、と主張しました。

1983年、彼の1期目の2年目ですが、レーガンは小国のグレナダに米軍を派兵しました。そこは133平方マイルの領土しかないのに、8年間ずっと侵略しました。 核兵器について、レーガンは1986年のレイキャビクサミットでミハイル・ゴルバチョフとの会談で核軍縮について熱心に話をして顧問を震え上がらせ、彼は報復攻撃を信じてもいないが、やられ放しにもしない。ほしいのは弾道ミサイルではなく、ミサイル防衛だと明らかにしました。

トランプ氏の行儀の悪さにまごつくかもしれませんが、大統領になれば、彼の外交政策は、標準的な保守の規範から逸脱しそうにありません。米国は何とか野蛮な内戦を終わらせるためにシリアに軍隊を送ったり、民兵を奇跡的に武装解除するためにリビアに軍隊を送ったり、イランに支配された政権を維持するためにイラクに戻って部隊を送ったり、政府の無能と腐敗のためタリバンが支配しているアフガニスタンに再度派兵すべきと信じる人々を彼はガッカリさせるかもしれません。

トランプ大統領となれば、上記のいずれもしないでしょう。米軍は保護を求める人々によって絶えず攻撃されるようなイスラム世界や、リビアやシリアに介入することを拒否しつつ、アフガニスタンとイラクから撤兵させるでしょう。本当の保守派は、政治的野心を追求するためにムダに生命・財産を費やすのでなく、それらを守るものです。

貿易に関して、トランプ氏は、中国とメキシコに対する関税を要求しています。多くの経済学者は、現在米国および他の先進国における賃金の停滞は、中国やその他の新興工業国からの輸入が齎したものということに同意します。関税の見込みがなければ、人々は業界全体が沈下する前に、強力な反ダンピング措置を期待します。

それから人種差別についてはどうでしょう?ニューヨーク市で生まれ育ったトランプ氏は、彼の人生の中で1人か2人出会ったWASPではありません。彼はルーツが「ヒスパニック」または「ラティーノ」の人と出会っても、びっくりしそうもありません。彼は多くの黒人とも働いて結果を出し、確かに彼の義理の息子ジャレッドクシュナーを含むユダヤ人との食事を共にしています。

実の所、トランプ氏は、メキシコからの不法移民の犯罪を非難することによって彼の選挙キャンペーンを開始しました。しかし、彼の個人的な歴史を考えると、人は彼の反メキシコ感情が本物かどうか疑うかもしれません。彼の発言のせいで人種差別主義者と看做されないように、充分な謝罪から始めて、ダメージを受けない方法を見つけなければなりません。

トランプ氏は多様性の必要からイラクや、ソマリア、他の組み合わせからメイン州や他の州に「移住」させる国務省の計画に固執していないよう見えます。現地の人の思いとは関係なく。

特定の集団のヒステリーにもかかわらず、トランプ大統領となれば、保守派の平凡な行政に変わるでしょう。お金を節約するため、部局を跨る活動を少なくし、過激派の環境保護活動も少なくします。「計画」を増やすのでなくより少なくします。例えば誰かが要求している性転換した最高裁判事候補のような新しい分野で少数者を代表するものを加えていくことに特別な努力は要しません。

実際、これらは全て許容範囲の変化です。5%より多く消費するより5%少なく消費するという問題です。この選挙では、政府支出の大幅な増加を提唱するバーニー・サンダースとそれに従うヒラリー・クリントンに対して明らかに代替案を提供するでしょう。クリントン氏がそれに従わないかもしれませんが、彼女の不誠実さを期待しないでください。

トランプ氏が大統領に当選したら移住を考えている人は、レーガンが勝った時にも移民の誓いをたくさん聞いたものですが、脱出する前に、就任日から一週間か二週間待った方が良いかもしれません。大統領選挙のときにはるかに安いコストで成功したように、トランプ大統領は公共の福祉の良い管理者であることを発見するかもしれません。

ルットワック氏の本は、「絶滅のおそれのあるアメリカン・ドリーム」(サイモン&シュスター、1993)と「戦略の論理対中国の台頭」(ハーバード、2012)が挙げられます。

3/11日経ビジネスオンライン 北村豊『習近平、3大国営メディアに「党の代弁」要請 全権掌握へ、「江沢民の牙城」に乗り込む』について

習近平VS劉雲山(上海派)の争いはどう決着が付くかです。でも敵陣に乗り込む勢いからすれば、習の方が有利と見ます。劉は薄熙来と同じ運命を辿るかも。上海派は追い込まれています。逆転できるネタがあればとっくに出しているでしょうから。上海派は法輪功の弾圧をしてきていますので、信者に憎まれています。もし、習と上海派の立場が逆であれば信者から有益な情報が取れたかも知れませんが。

でも本記事の新華社の上部の媚び諂い方は中国人の典型です。まあ、問題を起こせばすぐ首になるから致し方ない面はありますが。それでも、社員のレポートでやんわり批判できるようになっただけ、昔と比べれば進歩したと言えるでしょう。勿論すぐ削除の憂き目にあったとしても。昔なら有無を言わさず拘束、人知れず殺されたと思います。IT技術の進歩で発表する場ができたことは大きいでしょう。昔は壁新聞の時代ですから。

任志強のような人は今後も出て来るでしょうが、習は力で押さえつけようとするでしょう。「国民の為」という大義名分は「共産党の利権の為」に今でもすり替わっています。自由競争の結果で格差が広がったのなら仕方のない面もありますが、銭権交易で不当に富を収奪してきたのは弁解の余地はありません。打倒さるべき政体です。

やはり、中国経済を崩壊させるのが世界平和の近道と考えます。中国が民主化したとしても民族性は変わらないでしょうから距離を置いて付き合うことが肝要です。勿論、中国がそんなに簡単に民主化するとは思っていませんが。日米欧は民主化の助けになる事であれば未だしも共産党の延命に手を貸すのは止めてほしい。黒田日銀総裁のように資本規制を言って中国を助けるような言動は慎むべきです。財務省も国賊が多いです。自分は頭がいいと思いこんで驕るのでしょうけど。学力は緊急時には役に立ちません。平時の時に前例踏襲するには便利でしょうけど。

記事

Xi visited media

3月5日から始まる第12期“全国人民代表大会(略称:全人代)”第4回会議を目前に控えた2月19日、中国共産党総書記の“習近平”は、中国国営メディアである“人民日報”、“新華社”、“中央電視台(中央テレビ)”を順次視察し、“党和政府的媒体姓党(中国共産党と中国政府のメディアは中国共産党の代弁者である)”と強調した。

中央テレビを視察した際には、中央テレビの職員が「中央テレビは“姓党(党の代弁者であり)”、絶対に忠誠ですから、どうぞ検閲してください」というプラカードを掲げて、習近平に媚びを売った。また、その後に行われた“高層宣伝工作会議(首脳部宣伝業務会議)”の席上、習近平は「メディアは党と政府の宣伝の拠点であり、“必須姓党(党の代弁者でなければならない)”」と述べた。

新華社、最高指導者の査察を熱烈歓迎?

その2日後の21日、ある新華社の職員はインターネットの掲示板に匿名で、習近平視察に際しての新華社の対応振りについて書き込んだ。この書き込みは瞬くうちにネット上で伝播されたが、たちまち削除された。その書き込みの全容は以下の通り。

【1】“春節(旧正月)”明けの出社2日目の2月15日、1枚の表を受け取り、個人情報を書き込んだ。聞くところによれば、それは政治審査表で、新華社職員の中から500人の“歓送隊伍(見送り隊)”を選ぶためのものであり、私はその中に1人に選ばれたのだった。なお、見送り隊とは別に“歓迎隊伍(出迎え隊)”も組織された。私は一貫して歓送迎などという儀礼的な行事には興味を持っていなかったが、上司がこれは政治的任務であり、参加しなければならないと言うので、どうしようもなかった。“習大大(習近平おじさん)”<注1>は我が国の最高指導者であり、非凡な人であり、機会があれば彼を見たかったし、それは自分にとっても光栄と思えた。2月18日午後の退勤時に、上司は私たちに、習近平が明日視察に来るので、明日は鮮やかで美しい衣装を着てくるようにと命じた。

<注1>“習大大”は習近平の愛称として作り出された言葉。“大大”はパパあるいはおじさんを意味する。庶民に親しまれる習近平を演出するのが目的か。

【2】今日(19日)家を出る時、私はいつも通り紺色のダウンコート(年齢も高いので保温が一番)を着て、赤いスカーフ(多少は色鮮やか)を首に巻いた。新華社ビルに到着すると、周辺には“便衣(私服警官)”、“武警(武装警察)”、“特警(特殊警察)”がくまなく配備されていた。8時50分に私たち500人はそれぞれ勤務する階から1階へ降りて講堂へ集合するよう命じられた。但し、その時には携帯電話などの電子機器の携行は禁止された。執務区域はすでに警戒が厳しく、出るだけで、入ることは許されなかった。指揮者は私たちに今後の予定を次のように説明した。すなわち、このまま1時間座って待ち、その後順番に列を作って安全検査を受けてから、南門の内側に整列して、習近平が新華社ビルを出てくるのを待ち、見送りを行う。

【3】これと同時に、指揮者は私たちに次のように指示を出した。もし習近平が見送りの人たちと握手をしようとするなら、握手するのは1列目の人だけに限定し、2列目の人は手を伸ばしてはならない。習近平が通り過ぎる時にはただ拍手して「“総書記好!(総書記こんにちは)”とだけ言い、自分勝手に声を掛けてはならないし、“近平,您好(近平、今日は)”といった類のプラカードや横断幕を掲げてはならないし、1列目の人は手袋などの使用も禁止。

【4】講堂ではあてがわれた番号順に座ったので、左右に座った人と必ずしも顔見知りというわけではなく、誰もが顔を見合わせるだけで手持無沙汰で、たまたま知り合いがいると世間話に花を咲かせた。私は本を読んでいたので、時間つぶしはさほど苦にならなかったが、近くに知り合いがいて話しかけてきたので、読書に専念できなかった。講堂内にいる人々を見渡すと、非常に多数の人が色鮮やかな衣装を身に着けていた。顔見知りで、間もなく定年退職する爺さんはすごく目立った。彼はめでたい日に着る真っ赤な綿入れの上着を着て、真新しい青色の中折帽をかぶっていた。彼は、日頃は濃いグレーの衣装ばかりで帽子などかぶったことなどなく、まるで春節に母親によっておめかしさせられた赤ちゃんみたいだと、皆は陰で彼を笑っていた。

【5】数十分が過ぎた頃、指揮者が安全検査の後はトイレに行くことはできないから、急いでトイレを済ますようにと指示を出した。人々は一斉にトイレへ殺到し、トイレの前には長蛇の列ができた。その後、待つこと1時間、1時間半、2時間と過ぎても、一向に安全検査を受けるようにとの指示はなかった。座るのに飽きた人々は講堂の入り口に集まったが、警戒は依然として厳重で、ビルの入り口には武装警察官が乗ったマイクロバスが停まっていて、車の窓から武装警察官が見張っていたので、人々はただ待つしかなかった。新華社の敷地内にある高層の住宅ビルの窓からは、武装警察官の頭が見え隠れし、武装警察官は住民の家にまで入って警備を行っているようだった。朝出勤と同時に、執務室の窓はすだれを巻き上げるよう指示を受け、併せて狙撃手に撃たれるから窓際でうろうろするなと注意喚起もあった。一方、この間も指揮者は盛んに携帯電話で連絡を取っていたが、何も動きはなかった。

「肩すかし」の対価はコメディ映画とまんじゅう

【6】この日の天気は暖かくないばかりか、風もあった。講堂の入り口に立って、自分の執務室の窓を見上げると、小鳥のように飛んで執務室へ入り、自分の椅子に座ってゆっくりと熱いお茶を飲み、ネットにログインしたいとつくづく思ったものだった。11時15分頃、執務ビルから出て来た1人の保安係が講堂入り口にたむろしている人々に対して、「あんたたち解散だ。総書記はもう帰った」と呼びかけた。一瞬の沈黙があったのち、失望と怒りが入り混じった声が鳴り響いた。そして500人の見送り隊は解散となり、人々は三々五々執務室へ戻った。ある者は総書記に会えなかったことを悔しがり、ある者はようやく自由の身になったことを喜んだ。誰かが「今日は“愚人節(エープリルフール)”か」と言えば、またある者は「我々500人はきっと政治審査をパスしなかったので、臨時的に閉じ込められたんだ」と冗談を言った。

【7】その日の午後、見送り隊は通知を受け取ったが、その内容は次のようなものだった。

午前中の行事は都合により取り消しとなった。皆さんの理解と協力に感謝の意を表し、映画『“美人魚(マーメイド)”』<注2>を特別上演します。日時は2月23日午後12時20分から、今日の見送り隊の番号札が入場券となります。同時に“慶豊包子舗(慶豊包子店)”<注3>の優待券50元(約1000円)を発給します。

<注2>『美人魚』は2016年春節元旦(2月8日)に封切られた映画で、富豪と人魚のロマンチックコメディ。 <注3>“包子”は中華まんじゅうを意味する。“慶豊包子舗”は2013年12月28日の正午に習近平がお忍びで立ち寄り、列に並んで順番を待って“包子”を食べたことで有名になった。

さて、国営メディアは“中国共産党中央委員会宣伝部(略称:中宣部)”の管轄下にあり、中宣部を主管しているのは、中国共産党中央政治局常務委員の“劉雲山”(序列第5位)である。劉雲山は“江沢民”元総書記のグループに属し、1993年に中宣部に着任してから副部長に就任し、2002年10月から2012年11月まで中宣部長を務めた。劉雲山退任後の現職の中宣部長は“中国共産主義青年団(略称:共青団)”グループに属する“劉奇葆”だが、政治局常務委員として中宣部を主管する劉雲山の力は強く、劉奇葆は名目上の中宣部長と言える。

「暗殺」恐れ厳重警備、ネット上では猛批判も

中宣部は中国共産党のイデオロギーや宣伝活動を統括する部門で、新聞、出版、教育、テレビ、ラジオなど広範な部門を指導、監督しているが、劉雲山は頻繁に習近平の意向に逆らう姿勢を示しており、中宣部は最後に残された江沢民グループの牙城と化していると言われている。従って、劉雲山は、習近平にとって目の上のたんこぶと言うべき存在なのである。その敵の牙城に習近平自身が視察を名目に乗り込んだのが、2月19日の一台(中央電視台)、一報(人民日報)、一社(新華社)の視察であった。

だからこそ、国営メディアの視察であるのにかかわらず、万が一の暗殺を恐れる習近平は、警備を極力厳重にし、新華社の視察では当初予定していた500人編成の見送り隊の送迎を受けぬまま、密かに新華社を後にしたのだった。習近平は2012年11月の総書記就任の当初、“軽車簡従出行(地位のある人物が供回りを質素にして出かける)”ことを公言したが、今や大量の兵士による厳重な警戒がそれに取って代わっているのである。

ところで、冒頭で紹介したように、習近平は「メディアは党と政府の宣伝の拠点であり、“必須姓党(党を代弁しなければならない)”」と述べた。従来、党メディアは“党的喉舌(党の代弁者)”と言われてきたが、“党媒姓党(党メディアは党の代弁者)”はその度合をさらに強めることを意味している。この発言に敢然とかみついた人物がいた。

それは“任志強”である。任志強は1951年3月生まれの64歳。2007年に亡くなった父親の“任泉生”は中国政府“商業部”の元副部長だった。1981年まで12年間を軍人として過ごした任志強は、その後不動産開発に従事し、1993年に“北京市華遠集団”を設立して“総裁”となる。彼の事業は順調に発展し、不動産業界では名の知られた存在となった。

任志強は優秀な“中国共産党員”であり、以前には北京市“西城区”の人民代表に選出されたことがあり、現在は“中国人民政治協商会議北京市委員会委員(略称:北京市政治協商委員)”である。

任志強は折に触れてネット上の自身の“微博(マイクロブログ)”にコメントを書き込んでいたが、その直截で批判的な口調はネットユーザーたちの人気を集めた。任志強の“微博”はフォロワー数が3700万人いるとされ、ネット上の重要人物を意味する“網路大V”の1人として知られている。

「人民の政府はいつから共産党の政府になったのか」

その任志強が上述した中央電視台のプラカード「中央テレビは“姓党(党の代弁者であり)”、絶対に忠誠ですから、どうぞ検閲してください」と習近平の“党媒姓党”発言に反発したのだ。彼は2月19日夜に“微博”で発表した文章の中で次のように述べた。

(1)人民の政府はいつから中国共産党の政府に変わったのか。使っているのは共産党の活動資金なのか。これは好き勝手に変えることはできない。納税者のカネを使って納税者にサービスを提供しないようなことをするな。

(2)対立する2つの陣営を徹底的に分けることはできるのか。全てのメディアが共産党の代弁者で、国民の利益を代表しないなら、国民は打ち捨てられ片隅に忘れ去られるだろう。

これに対して、国営メディア「北京日報」傘下のニュースサイト「千龍網(ネット)」は2月22日付で『誰が任志強に反党の自信を与えたのか』と題する文章を掲載した。その内容は、任志強が“党媒姓党(党メディアは党の代弁者)”に反駁して攻撃したと指摘し、任志強は共産党員であるにもかかわらず、その党員としての自覚を喪失したと論じたのだった。千龍網の文章を皮切りに、中国メディアは相次いで任志強を次のように糾弾した。すなわち、任志強は長期にわたり、党規約や政治規則に違反した言論を発表してきた。その行為はその宣誓を行った入党宣言と相反し、党員としての原則を忘却したばかりか、党のイメージに損害を与えた。党員が反党の言論を発表すれば、その威力と損害は非党員が同様のことを行うのとは比べものにならない。このような党内の反党分子は党規約と規律処分条例に照らし除去しなければならない。

2月28日、“中国国家互聯網信息辨公室(中国国家インターネット情報弁公室)”は“新浪(sina.com)”、“騰訊(QQ.com)”などのポータルサイトに対して、任志強のアカウントを閉鎖するよう命じた。アカウントが閉鎖されたため、現在、任志強の“微博”は「ごめんなさい。このアカウントは異常が出たので、当面訪問できません」と表示されるのみ。翌29日には、北京市西城区党委員会が『任志強の重大規律違反を正確に認識することに関する通知」を発表し、党員が党の方針・政策と一致しない言論を公表することは、それがインターネット上であろうともメディア上であろうとも、全て党規則が許すものではないと表明した。西城区党委員会は「中国共産党規律処分条例」に厳格に照らして、任志強を厳粛に処罰するという。

それは「裸の王様」への道

2015年10月に公布された『中国共産党規律処分条例』は、党員に対する規律処分を5段階に分けている。その内訳は、警告、厳重警告、党内職務解任、党籍保留のまま謹慎処分、党籍解除となっている。情報筋によれば、上述した北京市西城区党委員会の通知には、任志強と呼び捨てにして、敬称の“同志”を付けていないことから、任志強は最も重い党籍解除の処分になると思われるという。

2月19日の国営メディア視察を通じて、メディアの忠誠を確認した習近平は、今後宿敵の劉雲山を排除する形で、全権力を一手に握り、皇帝としての地位を確実なものとしようとしている。習近平にとって、任志強のような歯に衣着せない論客は、害虫以外の何物でもなく、排除するに越したことはないのである。イエスマンだけを重用する裸の王様の運命は、どうなるのか。それは神のみぞ知るである。

3/10日経ビジネスオンライン 長尾賢『海洋安保をめぐって激化する本物のスターウォーズ 日印は宇宙空間でも連携するべき』について

中国の衛星破壊事件では、宇宙ゴミ(スペースデブリ)が沢山出て、他の衛星を脅かしました。人の迷惑を顧みない国です。

http://www.sankei.com/world/news/150325/wor1503250042-n1.html

中国は三戦(世論戦、法律戦、心理戦)の他に、戦闘領域を宇宙・深海・インターネットの世界に広げています。昨年7/1国家安全法により定められました。日本も今までの戦争の概念に閉じこもっていたのでは、敗れることになります。第二次大戦の敗戦はABCD包囲網を築かれた時点で決まったようなものです。中国の軍事暴発を防ぐためにはATO(Asian Treaty Organization)による同盟構築が重要です。条約締結よりは具体的行動の積み上げで信頼関係を重ね、然る後に条約締結の流れが自然かと。中国包囲網を作ることが重要です。3/8王毅外相は日本に「日中関係の改善について日本側の対応が妨げになっている」と注文を付けて来ましたが、それだけ日本の行動が中国の軍事行動の牽制(南シナ海での)になっているという事です。中国の嫌がることはドンドンした方が良い。

インドとの宇宙部門での提携もした方が良いでしょう。「はやぶさ」が地球に帰還できるだけの技術力を持っている日本だから、インドと日本が協力して宇宙空間から中国の行動を監視できるようにした方が良いと思います。勿論、日米豪印で情報も共有化すべきです。またインドと核技術でも協力しあい、いざと言うときはインドから核を有償譲渡して貰えるだけの関係が作れれば良いと思います。

記事

海洋安全保障をめぐって宇宙空間でも競争が起きている。映画のスターウォーズほど派手ではないが活発な動きだ。今月、東京で「安全保障分野における日米宇宙協議」が行われた。先月は米国とインドが宇宙利用に関する協議を行い、海洋安全保障についても話し合った。

 特にインドは具体的な動きを進めつつある。南シナ海を囲むベトナム、ブルネイや、インドネシアにも衛星追跡局(厳密には、データ受信追跡テレメタリー局)を設置する計画だ。すでに1月、ベトナムの施設は完成した(図1参照)。

 こうした動きは何を意味しているのだろうか。それは地域の安全保障情勢、そして日本の国益にとってどのような意味を持つのか。本稿は、海洋安全保障と宇宙空間のかかわりと、特にインドが進める宇宙利用に焦点をおき、日本の国益について考察する。

図1:インドが衛星追跡局を整備しつつある国々(オレンジ色)

Tracing satellite office

出所:筆者作成(インドは、インド洋のモーリシャス、アンダマン・ニコバル諸島=インド、東南アジアのベトナムのホーチミン市、ブルネイ、インドネシアのビアク島、南太平洋のフィジーに、衛星追跡局を設置する)

海洋安全保障と宇宙空間が交わる3つ交差点

 このトピックを考える際に、まず気になるのは、そもそも宇宙が海洋安全保障にどうかかわるのか、ということだ。一見すると明確ではないかもしれない。しかし、実は大きなかかわりが出始めている。それは大きく3つに分かれる。南シナ海を例に説明しよう。

 1つ目は、南シナ海で何が起きているかを知るために宇宙が活用されている。例えば、南シナ海で中国が進める人工島建設や対空ミサイルの配備動向を把握するため、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)は人工衛星を使った画像を利用している。南シナ海のように、人があまり住んでおらず、周辺各国のレーダー網の整備も十分でない海で何が起きているのか把握するには、衛星の力に負うところが大きい。

 2つ目は、自分がどこにいるかを把握すること。中国が建設している人工島から12カイリの海域に米国が軍艦を航行させる場合、衛星を利用した位置測位(GPS)システムが有用だ。

 3つめは通信である。状況をいち早く届けるのに衛星通信を使用するのである。衛星通信は妨害されづらく、軍事用には最適だ。

このように現代の海洋安全保障のシステムは、平時から衛星に依存している。そして、もし戦争になった場合、衛星はより重要性を増す。特に、最先端の武器を保有している米国は衛星に依存する度合いが大きい。艦艇から巡航ミサイルを発射し敵の拠点を攻撃する場合、敵の拠点がどこにあるのかを衛星で把握し、発射したミサイルがどこを飛んでいるかを衛星で把握しながら誘導する。これらの情報を衛星を通じて通信し、命中したのかどうかまで衛星を使って確認する(図2参照)。

図2:巡航ミサイル発射と人工衛星のかかわり概念図

Artificial satellite & launching missile

出所:筆者作成

 結果、心配事が出てきたのである。2001年、米国議会が設置した宇宙委員会(正確には「米国国家安全保障宇宙管理・組織の評価委員会」)が報告書を発表した。この報告書が、米軍が衛星を使ったシステムに依存していること、衛星を攻撃される脆弱性があることを指摘したのである。

 実際、2007年、中国が衛星を破壊する実験を行った。地上から打ち上げたミサイルで、宇宙空間の衛星を破壊したのだ。衛星を破壊されれば、南シナ海で何が起きているのか把握できなくなる。把握できても攻撃できないかもしれない。これは海洋安全保障上、重要な問題である。米国も日本も、そしてインドも、宇宙の安全保障上の利用について認識を改めざるを得なくなった。結果、インドの宇宙利用が今、急速に進み始めている。

衛星追跡局防衛は軍事行動の理由になる

 インドの宇宙利用はどの点で急速に進んでいるのだろうか。最初にみるのは、何が起きているか把握するための衛星である。南シナ海沿岸国に衛星追跡局を配置したのはこの一環とみられる。これらの施設は、インドの衛星が撮影した画像情報を受信する役割を担う。同時に、沿岸国に情報を提供する。インドがベトナムに設置した施設は、南シナ海で何が起きているか、インドとベトナム双方が把握するための重要な情報源になる。

 この施設にはもう一つの役割がある。もし中国がこの施設を脅かす軍事行動を起こした場合、インドは自国の施設を守るために軍を派遣することができる。2012年12月、インド海軍の当時の参謀長がインドとベトナムが共同資源開発している施設の安全確保を理由に挙げて、インド海軍を派遣する用意があることを述べた。インド国防相が2015年12月に訪米した時には、南シナ海における米印共同パトロールについて話し合ったようだ。

 こうした動向から見て、インドが将来、南シナ海に海軍を派遣することは、まったくあり得ない話ではなくなりつつある。インドの衛星追跡局の誘致は、そのきっかけを作る役割を持ち、政治的に重要なものである。

2つ目はGPSをはじめとする位置測位衛星について。この分野でもインドの取り組みは積極的だ。インドは複数のシステムを複合的に構築している。GPSに加え、ロシア製のGLONASS、そしてインド国産のシステムIRNSSも構築している。こうすることで、特定の国に依存することのない外交的な自由が得られる。軍事的には、どれか1つの衛星が攻撃された場合でも、代替システムを確保することができる。

 3つ目の通信衛星についても同様だ。特にインドが2013年に打ち上げた衛星は、インド海軍が本国と通信する能力を飛躍的に向上させた。以後、インド海軍はインド洋北半分だけでなく、さらに遠方でも軍事作戦が可能になったといわれている。

衛星を攻撃する能力を、衛星を守る抑止力に

 そして、やはり衛星破壊兵器について動きが出始めた。インドは、日本と同じように、宇宙の軍事利用に反対する「宇宙の平和利用」を掲げてきた国だ。だから、この種の兵器の開発を長年にわたって忌避してきた。しかし、中国が2007年に衛星破壊実験を行って以降、インドが独自に開発しているミサイル防衛システムの開発計画(本来は弾道ミサイルを迎撃するためのもの)の中で、衛星破壊兵器も一緒に開発しているといわれている。インドの国防研究開発機構の長は2010年に、衛星破壊兵器を開発しているとはっきりと言及したことがある(注)。

 なぜインドに衛星破壊兵器が必要なのか。衛星破壊能力を保有することは、自国の衛星を守ることにつながるという論理があるからだ。例えば中国がインドの衛星を攻撃することを考えたとしよう、もしインドが中国の衛星を攻撃する能力を持っていれば、報復を恐れる中国は攻撃を躊躇するかもしれない。

 つまりインドは、衛星を利用して東南アジア各国との協力関係を構築するとともに、インド海軍の行動範囲を拡大しようとしている。その努力を、中国に衛星を破壊させないように、宇宙における抑止力を高めながら行っているのだ。非常に手堅い動きである。

(注)インドの衛星破壊兵器についてはGroup Captain RK Singh, “Indian Anti Satellite Weapon: Necessity, Urgency and the Way Ahead”, USI Journal, Jan-Mar 2013, Vol. CXLIII, No.591 (The United Service Institution of India, New Delhi), pp.85-92に詳しい。

衛星を守るべく、日米印で協力を

 こうしたインドの動きは、特にアジア地域で高まる海洋安全保障上の脅威と連結している。中国が東シナ海、南シナ海、そしてインド洋などで活動を活発化させる中で、海洋安全保障を支えるための宇宙空間での活動を活発にしているのだ。

 では、こうした環境における日本の国益は何か。日本の衛星も攻撃に対して脆弱ではないのか、考えなくてはならない。インドはすでに米国と、宇宙分野とミサイル防衛の両方で協力しつつある。日本も米国と宇宙分野、ミサイル防衛分野で協力しつつある。だとすれば、日本とインドは協力するべきではないのか。

 協力できる分野は少なくとも2つある。インドが他の東南アジア各国と宇宙分野で連携を深めるならば、日本、インド、東南アジアで衛星を介した情報共有や、東南アジア各国が衛星を活用するための日印協力が可能なはずだ。施設の重複を避けるなど、より効率的なシステムを作ることができるかもしれない。

 2つ目はミサイル防衛と衛星破壊兵器に関する協力だ。衛星破壊兵器について、日本は深刻にとらえる必要がある。衛星攻撃は相手国に効果的なダメージを与えるが、人を殺傷しない。だから、安易に使用される可能性がある。日本の衛星を破壊する動機をもつ国が現われたとき、その国の意思をくじいて抑止する力は何か。日本には手段が必要だ。

 日本はインドとミサイル防衛で協力できないか。米国を含めたミサイル防衛の中で、衛星破壊兵器の技術も共有できないか。検討してみる価値があるはずだ。

3/10日経ビジネスオンライン 鈴置高史『米国から「ピエロ役」を押し付けられた朴槿恵 北朝鮮への「最強の制裁」にも浮かぬ顔の韓国人』について

蝙蝠外交をすればどういう結末に陥るかは普通に考えれば分かりそうなもの。それができないのは民族性の為せる業では。「火病」という宿痾を持ち、情緒優先社会で合理的判断ができない、かつ反日以外に生きる目標を持たない民族です。中国の千年属国だったことを忘れ、文句の言い易い日本にストーカー行為をし続ける下劣な連中です。

韓国の国会議員が日本国旗を踏みつける写真や、日本の首相の顔に×を付けたり日本国旗を燃やしたりする韓国民の写真を見たことは沢山ありますが、昭和天皇の生首写真をネットに上げるとは何をか況やです。三島由紀夫は『サロメ』を愛しましたが、韓国民はサロメの結末を知らないのでしょう。やがて怒れる日本国民から鉄槌を下されるでしょう。その前に北から攻撃されて回復不能なダメージを受けるかもしれませんが。民度が低い民族と言うのは言を俟ちません。

the freshly served head of emperor

韓国は米中から馬鹿にされているというのにやっと気づいたようです。大国の間に入って振り回すだけの力があると思いこむことが如何に危険なことか身を持って経験するようになるでしょう。日本に統合される時だって、目立った反抗はなかったくらいと言うか、一進会は統合を進めていたくらいですから。被害妄想、誇大妄想で生きている国はツケを払わされることになります。それがチエスの”pawn”という表現に表れているのだと思います。あるときは中国に、あるときは米国に擦り寄り、而も都合の悪いことは全部日本のせいにして逃げるというのは成熟した国家のやる事ではありません。

北が攻撃を仕掛けても、日本は傍観すべきです。国家元首の生首写真をアップして平気でいられる精神異常の民族とは関わらない方が良い。何があっても助けることは避けるべきです。通貨スワップなぞは論外です。

記事

 

taiks about deploying THHAD between US & S.korea

3月4日、THAAD配備について米韓がようやく公式協議入りしたが、先行きは不透明(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

前回から読む)

 米国から梯子を外された――。北朝鮮に対する「最強の制裁」が発動されたというのに、韓国人は浮かぬ顔だ。

裏切り者の韓国

—北朝鮮に対する制裁がようやく決まりました。

鈴置:3月2日、国連安全保障理事会は全会一致で制裁決議を採択しました。今年に入って、北朝鮮が4回目の核実験と長距離弾道ミサイル実験を実施したからです。

 米国の国連大使によれば「ここ20年間の国連制裁のうち、最も強力なもの」です。しかし韓国紙は暗いムードの紙面を作っています。

—「どうせ中国は決めたことを守らない。制裁は尻抜けになって北朝鮮に核を放棄させるなんて無理」との諦めからですか?

鈴置:それが第1の理由です。もう1つは、制裁案を米中が固める過程で、韓国が「ピエロ」を演じる羽目に陥ったからです。

 北朝鮮の核・ミサイル実験を受けて2月7日、韓国は在韓米軍基地への地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の導入を認めました。

 2014年以降、米国が韓国に圧力をかけ続けた結果です。韓国を防衛するために在韓米軍基地が存在します。それを守るためのTHAAD配備なのです。これに難色を示す韓国は、米国からすれば裏切り者そのものでした。

 「北の核」の実戦配備が現実化した今、米国は韓国に対し「それでも配備を拒否するというなら、在韓米軍を引き揚げる」くらいは言ったと思います。

米国のドタキャン

 韓国が逡巡したのは中国の、これまた強力な圧力からです。中国は「THAADが韓国に配備されれば、そのレーダーにより自国のミサイルの動きを米国に捕捉される」との理由を掲げ、認めないよう韓国を脅してきました。

 米中の間で板挟みとなった韓国は、最後は米国の要求を入れ配備容認に動いたわけです。当然、その後も「核攻撃の対象にする」と中国から威嚇されています(「『THAADは核攻撃の対象』と韓国を脅す中国」参照)。

 韓国人は中国に反発しながらも「どんなイジメに遭うのか」と首をすくめる毎日です(「 『中国大使に脅された』とうろたえる韓国人」参照)。

 さて韓国に配備をのませた米国は、具体策を詰めるため韓国と合同実務協議団を設置することにしました。

 米韓両国は2月23日に設置の約定書を交わすことになっていたのですが、この日になって突然、米国側が延期を申し入れ、セレモニーはキャンセルされました。

中国との駆け引きに転用

 結局、国連で対北制裁が決まった後の3月4日、米韓は約定書を交換しました。10日間も遅れたのは、米国が中国との駆け引きのカードとして「THAAD配備」を利用したためでした。

 東亜日報の社説「米中のTHAAD・平和協定の気流変化、韓国は不意打ちを食らうのではないか」(2月27日、日本語版)がその間の事情と、韓国で高まった米国への不信感を率直に書いています。以下がポイントです。

  • ワシントンで2月25日、ハリス(Harry Harris, Jr.)米太平洋軍司令官が記者会見し「(韓国と)THAAD配備を協議することで合意したからといって、必ず配備するわけではない」と述べた。
  • 2月24日、ケリー(John Kerry)国務長官の「THAAD配備に汲々としない」との発言と比べ、さらに一歩後退した表現だ。
  • 米国の北朝鮮制裁に中国が積極的に参加する代わりに、米国がTHAAD配備による中国の憂慮を減らす方向で、米中が戦略的取引をしたようだ。
  • 朴槿恵(パク・クンへ)大統領は「THAADの配備は安全保障と国益によって検討していく」と語っていた。
  • それだけに韓国は苦しい立場となった。米中の駆け引きの可能性を、政府が果たして分かっていたか疑問だ。

碁盤の石に転落

 米国の強い要求に屈し、中国に脅されながらもTHAADの配備を認めた。というのに裏で米国は中国に「対北制裁案で譲歩してくれるなら配備をやめてもいい」と言っているようだ――という展開に、韓国人は腰が抜けるほどショックを受けたのです。

 そこで東亜日報をはじめとするメディアは政府に「『THAADのカード化』を米国からちゃんと知らされていたのか」と食ってかかったわけです。

 確かに、約定書を交わすセレモニーのドタキャンを食った時の韓国国防部の慌てぶりを見ると「韓国政府は米国から手の内を一切、知らされていなかったのだな」と考えるのが自然です。

 興味深いのは、韓国が梯子を外されたと気づくだいぶ前から中国が「このままでは、あんたはピエロになるよ」と忠告というか、警告していたことです。

 約定書の交換が突然に延期されたのが2月23日。その1週間前、ケリー国務長官やハリー司令官が「後退発言」を繰り出す10日以上も前の2月16日、環球時報が社説で「THAADを配備すれば韓国は、中・米両大国が打つ碁盤の石に転落する」と書いていました(「表・THAADを巡る米韓中の動き」参照)。

THAADを巡る米韓中の動き(2016年)
1月6日 北朝鮮、4回目の核実験
1月7日  
朝鮮日報、社説で核武装を主張
与党セヌリ党幹部2人、核武装に言及
1月13日 朴大統領、国民向け談話で「THAAD配備は国益に基づき検討」
2月7日  
北朝鮮、長距離弾道ミサイル実験
韓国国防部「THAAD配備に関し、米国と公式協議に入る」
中国外交部、北朝鮮と韓国の双方の大使に抗議
Global Times社説「配備すれば戦略・戦術の両面で軍事目標に」
2月16日  
環球時報・社説「配備すれば韓国は中・米の碁盤の石だ」
朴大統領、国会演説で「配備の協議開始も抑止力の一環」
2月17日 王毅外相、平和協定締結のための米朝協議を提唱
2月21日 WSJ「2015年末、米朝が平和協定に関し秘密交渉」
2月23日 米国、配備に関する合同実務団結成のための約定書交換を突然に延期
2月24日 ケリー国務長官「配備に汲々としない」
2月25日 ハリス米太平洋軍司令官「必ず配備するわけではない」
3月2日 国連安保理、対北朝鮮制裁を採択
3月4日 米韓、配備に関する合同実務団結成のための約定書を交換

中国の忠告は親切心から?

 この新聞は中国共産党の対外威嚇用メディアで、社説は「中韓は互いに冷静になるべきだ」(中国語版)。英語版のGlobal Timesでは「China, Korea must keep clear mind」です。英語版こちらでは碁石ではなく、チェスのポーン(Pawn)に例えています。

  • It will make the Blue House further lose its national independence, and become a pawn in the game between major powers.

—「青瓦台(韓国大統領府)は国としての独立性を一層失い、大国間のゲームのポーンになる」とはなかなか厳しいですね。

鈴置:「独立性を一層失う」――。要は「すでに独立国ではないのだが、さらに……」ということですからね。日本語に翻訳すれば「お前は将棋の歩だ」あるいは「捨て駒に過ぎないのだ」と言い切ったわけです。

—なぜ、中国はわざわざ韓国に「あんたはピエロを演じているよ」と教えたのですか。

鈴置:中国のやることですから、親切心からとは思えません。「米国に騙されているぞ」と韓国人の心を揺さぶるのが目的でしょう。

 韓国が「米国の裏切り」に気づく前にそれを指摘しておけば、効果はより大きいのです。実際、韓国各紙は環球時報のこの社説を引用し「碁盤の石」という表現を使うようになりました。

小憎らしい元・属国

 左派系紙のハンギョレは「韓国は米国の『碁石』にすぎないのか」(2月23日、日本語版)という寄稿を載せました。書いたのは金東椿(キム・ドンチュン)聖公会大学教授。ポイントは以下です。

  • ついに中国から「碁石」に過ぎないという屈辱的な言葉まで聞くことになった。
  • ウィキリークスが公開した資料によれば、米国が韓国に軍隊を維持している理由は北東アジアで自国の「利益」を守るためのものであり、特に「韓国が米国産兵器の主要顧客」であることを強調している。
  • 米国は北朝鮮の崩壊、あるいは朝鮮半島の統一には関心がない。 中国を屈服させ、米国の市場を拡大できるか否かが彼らの死活的利害だ。
  • 米中間に局地的衝突が起きても戦場は朝鮮半島であり、最大の犠牲者は韓国と北朝鮮の人民であろう。
  • 旧韓末、休戦協定期のように韓国は再び周辺国に自身の命運を任せなければならない存在に転落している。 政権にとって利益になるならば「超大国の防具」であっても構わないというのか?

—「碁石」という言葉を手がかりにして、ダイナミックに「反米論」を展開しましたね。

鈴置:古典的な左派の従属理論――韓国は米帝国主義に従属する存在だ、という主張です。久しぶりに見ました。

 中国は、米国が切ってきた「THAAD配備」というカードを上手に加工して「碁石」とし、反米用の素材として韓国に撃ち込んだのです。この寄稿はそれが功を奏したいい例です。

 もちろん中国が「碁石」と揶揄したのは、韓国が小憎らしかったこともあったでしょう。米国の軍事力を背景に「THAADを配備するぞ」と言い出した韓国――。中国人の目には、元・属国のくせに生意気な振る舞い、と映ったはずです。

THAADでのませた強い制裁

—「碁石」だろうが「ピエロ」だろうが、THAADのカード化によって中国に「極めて強い制裁」をのませたのではないのですか?

鈴置:その通りです。今後、中国が対北制裁の手を緩めた際にも、米国は再び「THAADカード」を発動して中国に圧力をかけることができます。

 THAAD配備を具体化するための米韓の実務協議は、これから始まります。実務協議は開かないか、あるいはゆっくりと進めておき、中国が本気で制裁に動かないと判断したら、協議のテンポを一気に速める――という手もあるのです。

 ハリス米太平洋軍司令官の「配備を協議することで合意したからといって、必ず配備するわけではない」との発言は、そうした作戦が念頭にあるのかもしれません。

 ただ韓国も、面白くはないにしろ「カード化」自体は我慢せざるを得ないでしょう。なにしろ今、一番大事なことは対北制裁の効果を上げることなのですから。

いつの間にか仲間外れ

—では、韓国メディアは何が不満なのでしょうか。

鈴置:「カード化」を米国から知らされていなかったことです。こんな調子なら韓国の運命に関わる、もっと重要なことまで自分の知らないうちにどんどん決められてしまう――と危機感を持ったのです。

 タイミング良くと言うか悪くと言うべきか、米国と北朝鮮が2015年末に、国交正常化や在韓米軍撤収につながる可能性の高い秘密交渉に入りかけていたことがこの頃、明らかになりました。

 この秘密交渉に関しても韓国政府は米政府から知らされていなかったのではないか、と韓国各紙は疑っています。

 米国と中国、果ては北朝鮮までが自分の知らないところでこっそり朝鮮半島の将来に関し話し合っている――と韓国人は疑心暗鬼に陥ったのです。「THAAD」だけならまだしも、「韓国」という国の運命までがカード化されたら大変です。

 韓国人は「米中を手玉に取り、両大国の力を生かして日本と北朝鮮を叩く」という“天才的な朴槿恵外交”に酔ってきました。

 そこに突然降ってわいた「周辺国に命運を任せる」予感。いくら楽観的な韓国人でも、これでは落ち込まざるを得ないのです。

そのあたりは次回に詳しく聞きます。

(次回に続く)=3月14日に掲載予定