4/27現代ビジネス 高橋洋一『中国経済、調べてみたらやっぱりウソだらけ!~本当のGDPは、公式発表の3分の1!?』について

昨日のブログの続きです。高橋氏は「中国の実際のGDPは、公式発表されている数値の三分の一程度ではないか」と見ているようですが、論拠は彼の書いた『中国GDPの大嘘』を読まないと分からないようです。2003年にSARSが蔓延した時、4/3衛生部長(衛生大臣)は「患者は12人しかいないので大したことはない」と豪語しました。小生は当時北京にいて、地元の病院関係者に聞くと1000人以上いるとの話。4/20衛生部長解任後、少しずつ患者数を増やしていきました。1日当たり100人ずつ増やして、10日で正しい数字になるよう帳尻合わせしたのがハッキリ分かりました。中国は都合の悪いことは、1/10以下にし、自分を大きく見せるときは10倍にするのはよくやります。南京大虐殺もその例です。(便衣兵は殺害されても国際法違反ではありませんから)

http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CZ0200721.html

中国人との交渉も相手はこちらが日本人と分かると、10倍に吹っかけてきたものでした。当時(97年~2005年まで)人民元と日本円を換算すれば安く感じて、買ってしまう日本人は多かったです。今は中国の物価が上がっているので、どの程度吹っかけてきているのかは分かりませんが。小生が買物するときは、中国人が買った後、「今の値段で」と言って買ったものです。

メルマガ【国際インテリジェンス機密ファイル】によれば高橋氏は同書の中で次のように言っているとのこと。

<AKBを輸出して民主化を。私は講演などで、中国の民主化を促進させるため、中国にAKB48文化をどんどん輸出し、上海AKB(SNH48)のようなグループを各都市に作るべし、と提案している。講演会場からは笑い声が巻き起こるが、私は半分、本気だ。

AKBでは、選挙によって、立ち位置のセンターや映画出演などが決まる。選挙は民主主義の根幹である。中国の人々に、「選挙はいい、民主主義も素晴らしい」と思わせるのだ。すると、「なぜ為政者だけは選挙で選べないのだ」となる。>(以上)

中国人に民主化の意義を説いても無駄な気がします。満族の西太后ですら、「中華思想」に毒されて、西洋の文明を採り入れるのに時間がかかりました。それで、日清戦争に負ける訳です。「頤和園」造園に海軍予算を流用したからというのが言い訳として使われていますが。選挙しても銃剣で脅す北朝鮮方式になるのでは。香港の行政長官選挙や立法会議員選挙も共産党のお眼鏡に適った人間や親中派が多数を占めるようにしています。どんなに立派な法があっても、その通り遣ったためしがないのが中国ですので。

記事

Xi Jinping-2

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中国の首相自身も信用していない経済統計

発売即重版となった、高橋洋一氏の話題の書『中国GDPの大嘘』前編ではソ連のデタラメな統計と、その手法を中国が継承してしまったことを指摘したが、後編ではいよいよ中国の「間違いだらけの数値」を暴いていく。

「中国の経済統計、指標などまったく信用できない」

こう公言したのは、のちに首相の座に就く李克強である。

オフレコではあったが、この発言が飛び出したのは2007年9月、大連で開催された「第一回ダボス会議」でのこと。当時、李克強は遼寧省の共産党委員会書記、すなわちトップで、温家宝首相とともにダボス会議のホスト役を務めていた。

冒頭の衝撃的な発言が飛び出したのは、アメリカ経済界代表団との会食の席だった。オフレコという前提で、「中国の経済統計、指標は、まったく信用できない。遼寧省のGDP成長率も信用できない。私が信用してチェックしているのは、わずか三つの統計数値だけ。その三つとは電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行融資額。この三つの統計を見て、遼寧省の経済成長の本当のスピードを測ることが可能になる。他の中国の経済統計、とりわけGDPなどは、ただの『参考用数値』に過ぎない」と漏らしてしまったのだ。

同席していたアメリカの駐中国大使、クラーク・ラントは国務省に報告。これは部外秘だったが、2010年、機密情報を漏洩させるウィキリークスによって暴露されてしまった。この後、李克強が信用していたとされる三つの指標は「克強指数」とまでいわれるようになり、一部のエコノミストやメディアが信頼する数値となっている。

克強指数についても後述するが、李克強自身が「参考用数値」と述べたGDPに関しては、参考にすらならないという事実を、説明しよう。

中国の「実際の数値」を暴く方法

経済統計の数値の真贋を見抜くには、複数の統計を合わせてみるとわかる。そうして矛盾点があるか整合性があるかを見極め、統計数値の信頼性を計るのだ。たとえば前述したGDPと失業率の関係。ところが中国は失業率を発表していない。社会主義国の「建前」として失業はないということなのかもしれない。

そこで私が注目したのが貿易統計だ。中国が発表する統計のうち、数少ない、というか、唯一信用できるのが、この貿易統計。貿易統計は外国との関係もあって捏造しにくい。相手国の「正しい」対中国貿易量を集計すれば、正確な数値が求められるからだ。

この事実を踏まえて2015年の中国の貿易統計をチェックしてみると、輸出額は前年比8.0%減。輸入額たるや14.1%の減少となっているが、中国当局はその原因を資源価格の低下、としている。しかし、同年の中国のGDPに対する貿易依存度は40.25%……GDP成長率6.9%を達成したとしたら、内需が異常に上昇した、ということになる。

中国では、習近平が国家主席に就任すると、最低賃金を引き上げている。場所によってまちまちだが、おしなべて三年で四割ほど最低賃金は上昇している。それに合わせて物価も上昇。コンビニを覗いてみるとわかるが、商品によっては日本の物価より高くなっているケースも珍しくない。

前に紹介したように、イギリスのBBCニュースが疑問を投げかけているように、「成長率6.9%」という数値にも、大いに疑問が付いて回る。そこで、どうしてこの「偽装数値」が出てきたのか、私なりの推測を述べてみよう。

2012年の第18回中国共産党大会。習近平が「偉大な中国の夢」と語ったその大会で、具体的な夢を語っている。

「2020年にGDPと国民の平均収入レベルを、それぞれ二倍にする」 二倍の基準は2010年比だ。これを達成させるには年平均七%成長が求められる。習近平に限らず中国人のメンタリティでは、メンツを重んじる。なにより景気が悪くなれば、政権基盤を揺るがしかねない。それ以降、七%成長は政権の至上命題になったのだ。

「公式統計」によれば、2012年の固定資産投資総額はおよそ36兆人民元(610兆円)。前年比20%という高い伸びだ。投資の伸びで、この年の成長率も、かなり押し上げられている。

ちなみに、公式発表では2012年のGDP成長率は7.8%になっている。「中国の夢」という大風呂敷を広げただけあって、その年はどんなことがあっても高い成長率を維持しなければならなかった、そういう事情が強くうかがえる。

ところが2013年には景気が息切れしてきた。李克強は懸念を示し、「経済成長を達成させるための経済刺激、政府の直接投資に頼ろうとしても、その余地は決して大きくはない。市場メカニズムに任せなくてはならない」と発言したのだ。

無理に成長を維持しようとするなら、もう一段の投資を行わなければならない。李克強はそれには限界があるとし、低成長の痛みを受け入れるよう求めたのだ。

4年間で約2000兆円の景気刺激策を行った結果…

さらに中国には、2008年の四兆元(約68兆円)投資と、空前の金融緩和による後遺症がある。このとき、リーマンショックによる経済の落ち込みを防ぐための大型投資を行なったのだ。これが奏功し世界経済は立ち直りのきっかけをつかんだが、中国はその後、過剰設備などに苦しむことになる。

しかも四兆人民元のはずだった景気刺激策はその後も続き、2009年からの四年間で、なんと110兆人民元(およそ1900兆円弱)の固定資産投資が行なわれた。過剰な投資は、各地にゴーストタウンを生み出すなど、いまだに負の遺産を遺している。そのような背景もあって、李克強は経済政策の転換を匂わせた。

しかし中国政府内でも、これに同調する容認派と慎重派に分かれた。特に2014年には、全国人民代表大会(全人代=日本の国会に相当)の前に、習近平主席と李克強首相との間で衝突があったという。その年のGDP成長率7%を提案した李克強に対し、習近平は7.5%を主張して譲らなかったというのだ。

習近平の「中国の夢」にこだわる一面だった。さらに一年後の全人代では「7%前後」と、前年より目標値を下げている。しかも「前後」としているところがミソだ。それだけ自信がなかったかとも受け取れる。

そして2015年のGDPの伸び率は6.9%……かなりゲタを履かせた数字であることは容易に想像がつくが、実は発表前から「発表される数値は6.8とか6.9あたりではないか」という予想が、私の耳にも届いていた。

別に正確かつ実態を表した数字を予想してのことではない。「政治的に装飾された数値」としての数字だ。つまり、経済成長が続いている資本主義社会では、成長率7.0%や6.9%の違いは、さほどではない。この程度なら統計誤差の範囲であり、ほぼ目標達成と胸を張れる数値だ。 しかし中国では、これは多分に政治的なメッセージなのである。

すなわち対外的には、「やや経済成長は鈍化しているけれど、心配しなくてもいい」という、やや願望を込めたメッセージ。そして国内的には、「七%達成はなんとしてもやり遂げる」という強い意志の表明なのである。

が、その中国も、統計のゴマカシもそろそろ限界と見て、今後少しずつ数値を下げてくることは間違いない。日本のメディア、特にNHKを代表とする大メディアは、中国当局の発表をそのまま受けて、「7%成長を割り込むのは実に25年ぶり」などと伝えているが、実態はもっとかけ離れたところにある。

実際のGDPは発表数値の3分の1!?

ここでもう一度、2015年の「中国GDP成長率7%」について検証してみよう。

2015年通期の成長率は六・九%だったが、上半期に限っていえば7.0%を達成。年初に立てた目標に達したわけで、決して低い成長率ではない。

その一方で、中国政府は、2014年11月から翌年8月までの間、五回もの金利の引き下げを行なっている。さらに公共事業も追加で行うなど、景気刺激策に躍起になっていた。7%もの経済成長を達成したとすれば、そこまで景気刺激策を施さなくてもいいはずなのだが……。

別の角度から見てみよう。信用できない中国の経済統計のなかでも、農業生産と工業生産に関しては、しっかりデータを取っている節がうかがえる。小売や物流といった第三次産業に関する統計には弱点があるものの、計画経済を進めるために、1950年代からしっかり生産量のデータをとっていた。

この農業および工業の2015年のGDP成長率を産業別のデータのなかから見ると、農林業に畜産と漁業を加えたところで3.6%、工業が6.0%の成長となっている。この業種別GDPのほかに、自動車、鉄鋼、電力といった主要二七の工業製品の生産量データも出される。

これらをチェックしてみると、2015年上半期に六%以上の成長を達成した製品は四製品のみ。さらに、13の工業製品は、伸び率がマイナスを記録している。

工業製品の生産量の伸びは平均で一%程度。工業製品のデータに関しては割と正確に採取される。そうなると、産業別の成長率六%の伸びと、工業製品別の生産量の伸びとが、かなり乖離していることがわかる。

粉飾の匂いがプンプンするのは工業成長率6%だ。こういった数値を積み重ね、重ね合わせていくと、どうしても中国経済GDP6.9%成長というのは、相当にゲタを履かせた数値だということが判明する。

私は、中国の実際のGDPは、公式発表されている数値の三分の一程度ではないかと見ている。

(続きは本書をご覧ください)

big lie of China's GDP

中国経済の暗い未来を指摘する話題の書。世界、そして日本への影響は?

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4/26現代ビジネス 高橋洋一『中国「GDP世界二位」の大嘘を暴く!~デタラメな数字を産む統計偽装のカラクリが分かった』について

4/27~29までは日光にいますので、続きは4/30に報告します。

毛沢東がソ連と袂を分かったのは、スターリンが死んでフルシチョフの時代となり、フルシチョフがスターリンを批判したため、ソ連を修正社会主義と呼んで嫌ったためです。スターリンと毛沢東は極悪非道の三悪人の内の二人ですから、気も合ったのでしょう。因みにもう一人はヒットラーです。粛清・虐殺した人間の数が半端でないからです。ドラッカーの「イノベーターの条件:」にあります。

数字の改竄・捏造の根本原因は一党独裁にあり、その弊害があらゆる面で出て来ているという事でしょう。人類の叡智である三権分立や基本的人権について配慮しなかったマルキシズムの制度設計が誤りだったという事です。これに中国人の「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という基本的価値観が合わされれば、「何でもあり」となります。中国の数字が信用できないのは企業でも同じで、少なくとも3種類の財務諸表を作成、監督官庁、株主、銀行とそれぞれ数字が違います。所謂3重帳簿と言う代物です。

数字の誤魔化しは古くから行われ、毛沢東時代には穀物の収穫量を大目に報告したため、「大躍進」ならぬ「大量餓死」を引き起こすことになりました。人権の概念がないため、為政者は何人人民が死んでも、自分に関係がない限り、何も感じません。独裁者の特徴です。北朝鮮の金正恩もそうです。

近くはSARS患者数も誤魔化して発表していました。広州市呼吸病研究所所長の鐘南山氏が告発していなければ、被害はもっと大きくなったかもしれません。これに対し数字の改竄に手を貸していたと思われるのがマーガレット・チャン現WHO事務局長です。その論功行賞で事務局長の座を射止めたのではと思われます。悪を為すことによって出世する社会は唾棄すべきものです。日本もこうならないようにしないと。日本は悪を為すと言うより、不作為、見て見ぬ振りをする輩が多いと感じますが。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B3%E9%A6%AE%E5%AF%8C%E7%8F%8D

記事

Chinese crowd

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あまりに悲観的な中国の未来

2016年に入って世界経済が混沌としてきた。そして、この混乱はしばらくおさまりそうにもない。

その震源地の一つに中国経済の崩壊がある。中国の株式市場は2015年夏に始まり、2016年春の段階で立ち直りの兆しは見えない。株式市場の混乱は実体経済を脅かし、それがさらに株式市場を混乱させる「負のスパイラル」は今後も続く可能性大である。

さらにいえば中国経済の崩壊は、まだ序章に過ぎず、これから本格化すると私は見ている。それはあたかも、ソビエト連邦崩壊を想起させる状況であり、これは偶然の一致ではない。

元財務官僚で、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)などを歴任した高橋洋一氏の新著『中国GDPの大嘘』。発売即重版となった話題の一冊を特別公開する。

法政大学に日本統計研究所という研究機関がある。ここが興味深い研究レポートをまとめてくれた。ソ連の崩壊の原因にもつながった統計偽装について、その実態を生々しく伝えてくれているのだ。

ソビエトが崩壊したのは、その経済停滞が大きな要因だが、ソビエトを間違った方向に導いたのが統計偽装である。統計偽装はソ連崩壊まで続けられ、その日まで公にならなかた。白日のもとにさらされるようになったのは、ソ連が崩壊し、関係者がようやく自由に発言できるようになってからである。

中国は、ソ連をまねて中央集権的な統計組織を構築。現在では中国国家統計局として、各種統計を集中管理している。当然、統計の算出方法もソ連から指導を受けていると推察される。

現在の中国は、情報公開の面で国際機関による調査団を受け入れないだろう。ということは、しばらくの間、中国の統計は信用できない。

そこで私は、中国経済の実態に迫るとともに、中国統計の偽装についても調べてきた。そこから導き出された答えは、あまりにも悲観的な中国の未来である。今後、さらに混乱を招く中国情勢が、世界に波及する――この事態にどう対処したらいいのか。その解を求めるのはかなり困難かもしれない。

しかし看過しておけば、中国人民のみならず、日本を含めた諸外国まで災禍に巻き込むことになる。最悪の事態だけはなんとか避けられないものか。どこかに処方箋がないものか。いまからでも間に合うのではないか――。

そんな思いから、私は中国経済に関する新著を上梓した。その一部を、二回に分けて公開したい。

ソ連のデタラメ統計を受け継いだ中国

大きな船が航海に出たとしよう。安全な航海には信頼できる海図と、航路を綿密に調べ上げたデータ、そして船の正確な状況認識が必要だ。

そういった情報なしに出航したとしたら、どうなるだろうか。しかも自分のことしか考えない、チームワークの悪いクルーたちによって運航されているとしたら……誰がこんな船に乗りたいと思うであろうか。知らずに乗っている乗客は、不幸の極みというほかはない。 この船の航海は、国家の運営にもたとえられる。国家の政治・経済の運営に必要な「海図」は、各種統計データということになる。正確な統計データがあってこそ、国の進路を誤らない政策が打ち出せるというものだ。

ところが正確な統計データを出さない、作れない、データを捏造、改竄していたとしたら、どうなるであろうか。航海でいえば、いいかげんでデタラメな海図を作り、それを頼りに海に出るようなものである。遭難した船は沈没する。

では、遭難した国家はどうなるか……。

中国当局が発表する統計データや経済指標は、押しなべて信用できない。その解説は後述するとして、なぜ統計データがいいかげんに作成されるか、その理由から説明しよう。

中国の統計システムは、社会主義国家の「先輩」である旧ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)に学んでいる。1949年に誕生したばかりの中華人民共和国は、経済的な大改革を断行した。が、その司令塔は、ソ連大使館だった。

ソ連から一万人もの顧問が北京にやって来て、四万人のロシア語を習得した中国人ともに中国の産業育成に当たった。中国の経済は10年以内にイギリスを追い越し、15年以内にアメリカに追い付くという目標を打ち立てて――。

そのロシア人顧問団が持ち込んだなかに、旧ソ連の統計システムもあった。

アメリカに追い付くという壮大な目標は達せられなかったものの、それなりに産業は育っていった。すると1960年、毛沢東はロシア人の顧問団を追い返し、ソ連式のシステムを中国独特のシステムに改めようとする。そうして大躍進政策や文化大革命を経て、鄧小平の改革開放を迎える。その間、このソ連式の統計システムだけは脈々と生き残っていたのである。

その手法はソ連国内で50年間も使用され続け、デタラメ統計を生み出してきた。これをもとに国家運営するわけだから、国家が崩壊するのも無理はない。

問題は、そのデタラメ統計を世界が信じていたということ――。

捏造は、半端なレベルではなかった

たとえばアメリカのノーベル経済学賞受賞者のポール・サミュエルソン。彼はソ連が出すデタラメ数値を信じて、「ソ連は成長している」と言い切ってしまった。サミュエルソンほどの偉人ですら騙されてしまう。それだけ、統計データの虚偽を見抜くのは難しいことなのである。

しかも、ソ連がやっていた捏造は、半端なレベルではない。

ソ連が崩壊してみて初めてわかったことだが、実は、そのGDPは半分しかなかった。1928年から1985年までの国民所得の伸びは、ソ連の公式統計によると90倍となっているが、実際には6.5倍しかなかった。平均成長率に至っては、8.3%成長しているとしたのに、実際は3.3%しかなかった……。

この事実は、ソ連が崩壊して初めて明るみに出た。ゴルバチョフ書記長は人がいいので「ペレストロイカ」(改革政策)や「グラスノスチ」(情報公開)をやってしまい、白日のもとにさらしてしまったのだ。

この統計システムをそのまま引き継いでいる中国が、果たして正確な統計の取り方をしているかどうか。「お師匠」がデタラメだったから「生徒」は真面目にやります、ということが果たして起こりえるのか。

次にその検証を行いたい。

偽造統計はこうして作る

まず、ソ連が長年にわたって虚偽の統計を取り続けてきた理由と手法を探ってみよう。

旧ソ連およびロシアの統計に関して、興味深い研究レポートがある。一つは、法政大学日本統計研究所が発行した『ロシアにおける統計制度・政策の改革(Ⅱ)』(1994年)。これは経済学博士でロシア科学アカデミー・ヨーロッパ比較社会・経済研究主任のヴァレンチン・ミハイロヴィッチ・クロードフ氏の論文「1991~1993ロシア経済状況の統計と判断」と題された論文などを集めたものだ。

もう一つは、同じく法政大学日本統計研究所がまとめた『統計研究参考資料 No.32 ペレストロイカとソ連統計』(1989年)。これはソ連中央統計局長のエム・エス・コロリョフ氏の論文「統計のペレストロイカの諸課題」などを収録した論文集である。 いずれも旧ソ連の統計作成に責任者として直接関わった、あるいは間近にいた人々の書き記した論文だけに、生々しい実態が明らかにされている。 

結論からいうと、諸悪の根源は社会主義体制下における官僚主義だ。計画経済における無理な経済政策も元凶だと断言していい。

これは社会主義国・ソ連の誕生とも関係している。社会主義国の誕生直後は、アメリカを代表する資本主意国家陣営と張り合った。そうした構図が世界地図上に描かれた。「経済発展において、なんとしても資本主義国家には負けられない」という意識と自負心がソ連首脳部に強かったことは、これらの論文からもうかがえる。

当時、統計システムとして有効な手法が現われると、時の書記長、スターリンは「数字の遊び」と批判し、封じている。スターリンがなぜ、この有効な手法を封印したか正確な理由は記されていないが、想像はつく。

このスターリンの仕打ちを批判した経済学者で、ソ連中央統計局を指導したぺ・イ・ポポフが次のような言葉を書き遺している。

「統計は、それぞれの時点において希望される数字を与え得るものではない……それは現実を表現する数字だけを与えるのだ」

わかりやすくいうと、国が計画し目標とした数値に統計を合わせるのではなく、現実や実態を表すのが統計だ、というのだ。民主主義国家では当たり前のことが、統制経済下では、当たり前ではなかった。

疑うヤツは人民の敵

このように正確な統計データを集計しようとした指導的職員は、統計機関から追放された。多くの真っ当な統計家は、「人民の敵」というレッテルを貼られ、弾圧されていった。

わかりやすくいえば、国が立派な経済計画を立てたのだから、どんなことがあっても達成したことにしなければならない、統計はそれに合わせるべきだ、という国家の意志が強く作用している。

これは企業の粉飾事件にも似た構図がある、2015年に発覚した東芝の粉飾事件も同様の構図。歴代の社長が、自分が社長でいる間は好業績でなければならない。そこで、数字を操作して部下たちに好業績をでっち上げさせた。東芝と社会主義国の統計システムは二重写しになる。

上場企業の場合、監査法人による監査を受けて決算手続を終える。この監査は、企業の役員等とは利害関係のない、あくまで第三者でなければならない。独立性が保たれていなければならないのだ。つまり、監査に、情実による手心が加わってはならない。

同様に、統計データを作成する組織にも、独立性がなければならない。ソ連の統計システムの欠点は、この自主独立の統計活動が保障されていなかった点にある。

官僚主義の問題と偽造統計システムの手法は、それをそっくり導入した社会主義国家としての「後輩」である中国にも引き継がれている。そう、十分に想像がつくのだ。

明日公開予定の後編では、いよいよ中国経済の大嘘を暴いていこう。

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4/26JBプレス Financial Times 『難民危機やブレグジット騒ぎにかすむギリシャ危機 お馴染みの騒動に見えても、コストが段違いに大きい恐れ』について

EUが一つに纏まらなければならない必然性があるかどうかです。EUは二度の大戦の反省でできたことになっていますが、ドイツの域内封じ込めと米国への対抗で出来たと組織と考えています。言語も民族も人種も違う国々が集まって「ヨーロッパ仮想国家」の理念にどれだけ共鳴できるか疑問です。日本は地理的にアジアに属しますが、アジア共通通貨を望むことはないし、シェンゲン協定のようなものなんて治安を悪くするだけで誰も望まないでしょう。岡倉天心は「アジアは一つ」と言いましたが、当時植民地支配を受けたアジアの国々に同情して、アジアが纏まって欧米列強に対抗しようと思ったのではないでしょうか。アジアの多様性には目が行きませんでしたし、中国のような白人に仕えて利益を得ようとする国もありました。歴史・伝統・文化が違う国々を一つにすることは難しいと思います。況してや法律や財政政策も仮想共通国家の政策に拘束されるのであれば、戦争にならないというメリットくらいしかないのでは。それだってEUよりはNATOが機能しているからだと思いますが。経済的にはドイツの第四帝国が完成しただけと言われています。

6/23国民投票で、英国のEU離脱はないと思います。4/4日経FTの記事では、「若者はEU残留派が多く、高齢者に離脱派が多い」、2/23WSJは「英国が離脱すれば、スコットランドに英国からの独立とEU加盟を促しかねない。」とありました。FTとWSJは残留させようと必死なのかもしれませんが。

FT記事<英EU残留のカギ握る若者票(社説)

英国の欧州連合(EU)残留の是非を巡る6月23日の国民投票を前に行われた世論調査で、先行きの不透明さが明らかになった。依然として接戦で投票結果の予測は難しい。フィナンシャル・タイムズ紙の最新の世論調査では、残留支持が離脱支持を3ポイント上回るだけだ。電話調査では残留支持が多いなど、調査方法による違いも大きく影響しているように見える。

Leave.eu

ブレグジットを推進する圧力団体「Leave.eu(リーブ・EU)」のオフィス(ロンドン)=ロイター

 さまざまな世論調査が生んでいる不透明さの中、明白で一貫した調査結果が一つある。国民投票でどちらに投票するかを予測するための信頼できる判断材料は年齢であることだ。年齢が上がるほど、英国のEU離脱(ブレグジット)に賛成する傾向が強く、年齢が下がるほど残留を支持する傾向が強い。調査会社ユーガブの最近の世論調査によると、18~29歳までの回答者の63%がEU残留を支持し、60歳以上の56%が離脱を支持しているという。高齢者が投票する可能性は若者と比べて格段に高いことを考えると、年齢の違いによる支持の差はEU離脱派に大きく有利に働く。

 英国では住宅価格が高騰する一方で賃金は低迷したままで、近年、若者が不当な扱いを受けているという見方が定着している。EU離脱の影響の中で生きていかなければならない若者の願いに反して英国民が今EU離脱を選べば、世代間の不公平さの新たな一例と見なされるのは当然だ。

 同様の世代に関する議論は、英国からの独立について2014年にスコットランドで行われた住民投票でもあった。当時、スコットランドの若者は高齢者と比べて独立を支持する傾向が強かった。だが、英国のEU離脱を巡る国民投票とスコットランドの住民投票には重大な違いがある。あまり遠くない将来、スコットランドで再び住民投票が行われ、スコットランドの若者は改めて独立に投票する機会を持てる可能性が高いことだ。これに対し、英国がEU離脱を選べば、その後再び投票が行われて簡単に結果が翻る可能性は非常に低いと思われる。英国のEU離脱については、離脱してすぐまた戻るという選択肢は一切存在しない。

■現政権、若者票獲得になぜか無関心

 高齢者は大ブリテンという考えへの愛着がより強いが、スコットランド人の若者は連合王国からの離脱を支持する傾向が強い。そして、英国の若者は一般的に、英国の国家主権への執着が弱い。

 キャメロン政権は、英国のEU残留に向けた活動で、若者票獲得の必要性に対してなぜか無関心だ。スコットランドの住民投票では、16~18歳の若者に投票権を与えた。だが、EU離脱の是非を問う国民投票にはそうした規定は設けられていない。離脱の賛否が僅差になれば、若者を中心に20万人が集まるグラストンベリーのロックフェスティバルの開催期間中に国民投票が行われることはEU残留票を減らしかねないとさえ心配する向きもある。

 投票行動が年齢層で違う理由ははっきりしない。若者は国家主権についての議論に突き動かされることが少ないからかもしれない。また、移民や国境警備の問題が絡む投票で重大な判断材料となる多文化社会について、若者は高齢者より居心地良く思っているからかもしれない。また、5億人が住む28カ国からなる域内を自由に移動し、働く機会を若者は特に評価しているのかもしれない。英国のEU離脱はこうした機会を著しく狭め、恐らく、英国人が欧州で働くのにビザが必要だった時代に逆戻りさせるだろう。視野や機会が狭まることは、若者と高齢者のどちらにも影響するはずだ。

(2016年4月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)>(以上)

力の落ちているUKが4つのカントリーの内、スコットランドが独立すればEU離脱で得られるメリット(新聞論調では損の方が多いと言われていますが)よりかなり大きなダメージとなるでしょう。ただ、パナマ文書でキャメロン首相の父の名が挙がったことがどう影響するかです。

ギリシャは救済するに値するかです。企業再生だって再建可能かどうか判断して出資or融資します。リストラの徹底(BS上の資産圧縮、フローのコスト低減)だけではなく、売上を上げてキャッシュを稼ぎ、借入金を返済していく段取りとなると思うのですが、ギリシャには稼げるのは観光だけで、公務員の整理と言うリストラも進んでいないので、EUから離脱させるしかないのでは。EUから離れればドラクマを復活させることも可能、自前の通貨を持てば、自前の経済運営もできるようになります。売上に相当する収入も増えることが考えられます。今のままでは中国が国を買収するようになるでしょう。その前に中国が破綻するかもしれませんが。

記事

(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年4月22日付)

Lesbos in Greek

ギリシャ・レスボス島に設置された難民キャンプ(2016年4月3日撮影)。(c)AFP/ARIS MESSINIS〔AFPBB News

 欧州の政治家が欧州連合(EU)への難民流入と英国のEU離脱を防ぐのに忙殺されている間に、すべてのEU危機の母であるギリシャでは、マグマが再び静かにゆっくりと蓄積されつつある。

 アテネでの話し合いは今回も実りのないものに終わり、22日にはユーロ圏財務相会合が開催されることになっていた*1

 そしてEUを昨年振り回したギリシャ危機と同様に、新たな難局が間もなくこの地にやって来る。ギリシャ政府が次の金融支援を受け取ることができなければ、7月に期限が来る35億ユーロの債務返済でデフォルト(債務不履行)し、「グレグジット(ギリシャのEU離脱)」の可能性が再び高まる恐れがあるのだ。

 なぜそんなことが再度起こり得るのか。1年近く前、次第に切羽詰まっていった首脳会議でEUの指導者たちは860億ユーロの金融支援に同意し、ギリシャを崖っぷちから引き戻した。EUによる2度の同様な支援を批判することで政治家としての基礎を築いたギリシャの極左宰相、アレクシス・チプラス氏はこれに懲り、数カ月後には、3度目の支援プログラムのために厳しい財政政策を実行すると公約して選挙に臨んで再選を果たした。

 このとき、欧州委員会の幹部たちはチプラス氏を、別人のようになったと褒めそやした。短気なヤニス・バルファキス財務相も排除されたことから、ベテランの過激派が熱心な経済改革派に変身したとEU本部は思い込もうとした。ところが、EUは支援の金融面の現実は言うに及ばず、アテネの政治の現実を見落としていた。

 実際、昨年夏にまとめられた金融支援は、ギリシャのすべての災難に効く万能薬と言うよりは、関係者全員による問題の先送りにすぎなかった。年金制度や税制におけるごく一部の改革と引き換えに130億ユーロを緊急に貸し付け、ギリシャがデフォルトに陥るのを回避しただけだったのだ。

 そのときでさえ、政治的な腕力を必要とする難しい仕事の大半は、債務の減免という政治的に紛糾する恐れのある問題も含めて、この新しい支援の第1次事後評価(レビュー)に持ち越されていた。

*1会合では具体的な合意はなく、近く政治的合意を目指すことになった。

短命な合意であることを強調するかのように、国際通貨基金(IMF)は、チプラス氏が約束を守ると確信できるまではギリシャ支援に参加するか否かを決断しないとの姿勢を明らかにした。チプラス氏は、IMFへの返済をデフォルトした先進国指導者の第1号になったからだ。四半期ごとに行われるはずの第1次評価は、それから2四半期が経過してもまとまっておらず、ギリシャ、ドイツ、そしてIMFとの間の溝は深まっている。

 IMFはギリシャの債務再編を要求しているが、ドイツは突如、債務減免は不要だとの結論を下した。もっとも、IMFには支援への参加を依然呼びかけている。

 一方、IMFは昨年7月の合意の仕組みは良くないと判断し、財政黒字目標を引き下げるべきだとしている。チプラス氏は怒りっぽく、批判に過敏に反応する人物に戻ってしまい、外部からの圧力に毒づいている。さらなる改革や歳出削減を断行する政治力はギリシャにはほとんどないのが実情だ。

 「欧州の政治家はほかの難問にかまけているし、市場はギリシャの新しい支援策に内在するリスクに無頓着だ」。リスク・コンサルティング会社のユーラシア・グループで欧州分析部門を率いるムシュタバ・ラーマン氏はこう指摘する。「しかし、もしドイツ政府が今のアプローチを見直さなければ、支援は頓挫するだろう」

 登場人物やその主張はもとより、演出までもが昨年からほとんど変化していない。しかし、失敗がもたらす結果は変わったかもしれない。1年前、EUの首脳たちはギリシャを隔離できたと思っていた。ギリシャがEUを離脱する事態になっても、ギリシャ経済には深刻な影響が及ぶがそのほかのユーロ圏諸国への打撃はほとんどないと確信していた。

 ところが今では、シリアやイラク、アフガニスタンからの難民5万人を劣化しているキャンプに押し込めたEU加盟国の今後に、関係者は強い不安を抱いている。ほかのEU諸国は、欧州への移民流入と対峙する前線基地になってくれることをギリシャに期待しているからだ。

 そして、今日ではここに英国の問題が重なる。EUにとどまるか否かを問う国民投票を6月23日に控えたこの時期にギリシャ問題で再度もめても、自らの大義のためにならないことはEU幹部も認識している。交渉に関与しているある幹部によれば、ギリシャのユークリッド・ツァカロトス財務相は、5月の終わりまでに話をまとめなければ6月24日まで一切連絡を取らないからそのつもりでいるように、と警告されているそうだ。

 結局のところ、こうした汎欧州の政治の現実により、ギリシャとの再度の交渉はまとまる公算が大きくなっている。ただし、それが良い内容になるか否かは、また別の話だ。

By Peter Spiegel in Brussels

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4/25ZAKZAK 湯浅博『震災の弱みにつけ込む国々 国際政治の過酷な現実』、4/20中国時報(台湾)記事について

4/20発行「中国時報」(台湾)を麗澤大学図書館で読みました。

①WHOの世界衛生大会(WHA)の招待状が台湾に届かないという記事です。5/20蔡英文氏(台湾民進党)の総統就任を前にして、蔡次期総統が92共識(コンセンサス)を認めない限り、列車は衝突し合うだろうと中国が脅してきている記事です。確かに馬英九が08年に総統になった翌年からWHAにオブザーバーとして台湾は招待されています。2010年に尖閣で中国漁船が海保巡視船に体当たりした事件で、拿捕した中国人を釈放しない限り、レアアースは輸出しないと脅したのと同じで、中国はいつでも自分たちの主張を通すためには何でも使うという事です。脅しに屈するのはヤクザに屈するのと同じです。自由主義国で新たな組織を作り、台湾の参加ができるようにすれば良い。中国がガタガタいう国際組織何て意味もない。中国を抜いた組織を作った方が良いのでは。WHOの事務局長もマーガレット・チャン(香港人)で中共の圧力を受けているでしょう。

China Daily20160420-1

②4/18OECD国際鋼鉄会議がベルギーで開催されたときに、中国がベルギー政府に圧力をかけて、台湾のオブザーバー出席を認めないようにしました。ベルギー副首相が退席を要求し、台湾が抗議して翌日出席が認められたとのこと。ベルギー政府は謝罪し、中国政府からかなりの圧力があったと釈明したとありました。中国は鉄鋼だけではありませんが、投資過剰→生産過剰→ダンピング輸出の構図になっています。諸悪の根源は中国なのに、恥知らずにも自分の都合を優先主張します。中国を西側社会に組み入れたのが間違いです。自由・民主・人権・法治いずれもない国に経済的なメリットを与えたのが間違いです。今更言っても詮方ありませんが。封じ込めるしかありません。

China Daily20160420-2

③同じく中国時報には李登輝元総統が新党を作るとの記事。台湾団結連盟の党主とはうまくいってないとのこと。多分蔡英文次期総統の応援団&中共との融和の監視の役目でしょう。

本記事は、外国は悪い連中が多いと言う記事です。「世界は皆腹黒い」です。「隙あらば」と何時も窺っているという事です。ナイーブなだけでは国際社会で生きていけません。日本の偏向メデイアの情報だけで判断すると間違いますし、バランスオブパワーの感覚無しでは戦争に巻き込まれる可能性が高くなります。国民一人ひとりが国際政治・外交・軍事にもっと関心を持つようにしないと。英語を学ぶ以前に。

記事

安倍晋三内閣の危機対処は、立ち上がりが早かった。熊本県を襲った大地震発生から5分後には官邸対策室を設置し、被害状況の把握に努めた。実はこのとき、政府は東シナ海を遊弋(ゆうよく)する中国公船の動向をにらみながら、被災地の熊本に自衛隊員2万人の派遣を決めなければならなかった。  この日午前、沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺の領海を中国海警局の船3隻が侵犯していたからである。海警の3隻は午前中、2時間近く領海内をうろつき、西南西の方向へ出ていった。この間、海上保安庁の巡視船は海警が尖閣に近づかないよう警戒し、海上自衛隊の艦船も距離をおいて警戒していた。その夜の大地震発生であった。  海警の3隻が去った後も、政府・自衛隊は依然として南西方面に気を配らなければならなかった。  2011年3月、未曽有の東日本大震災の際に米軍はいち早く2万人動員の「トモダチ作戦」を展開してくれた。まもなく、中国からも15人の救援隊が送られてきたが、1週間して帰国した。入れ替わりに、軍艦を尖閣諸島に送りつけてきたのである。  当時、菅直人内閣の動きに「日本は御しやすい」と判断したのだろうか。ロシアの空軍機は、「放射能測定」を理由に日本の領空ぎりぎりを飛び、中国の艦載ヘリも尖閣沖の海自艦に異常接近して、結果的に復旧の邪魔をした。  香港の「東方日報」は地震発生から約1週間後、尖閣を奪取すべきだと指摘して、「日本が大災害で混乱しているこの機会が絶好のチャンスである」とホンネを吐いていた。

 内紛や天災で国が乱れると、そのスキを突いて敵対勢力がなだれ込むのは国際政治の過酷な現実である。腹に一物ある周辺国は、危機に陥ったときの日本のクライシス・マネジメント能力をじっと見ている。それが有事にも直結するからだろう。  過去にも大正12年9月の関東大震災の際、救援の外国勢と裏では虚々実々の駆け引きをしていた。  日本海軍は地震発生とともに、国内3つの鎮守府から艦艇が急行したほか、連合艦隊が東京湾に向かった。このとき、黄海にあった米国の太平洋艦隊も震災4日後に8隻が東京湾入りして、その早さに海軍当局者は度肝を抜かれた。  米軍の救援部隊の中には情報要員が紛れ込んでいた。驚いたことに、この時の震災と火災の関連調査が、後の日本本土空襲作戦の立案の際、焼夷(しょうい)弾使用の参考にされた(防衛研究所ニュース通算86号)。  東日本大震災から早くも5年が経過した。民主党から自民党政権にかわり、日本の危機対応能力は格段に向上している。制度面では、国家安全保障会議(NSC)を設置して効率的な意思決定システムを整えた。運用面でも、中国による領海侵入が繰り返されても、日本はそのつど押し返している。  安倍首相は集団的自衛権の一部行使が可能な安保法制を整備し、同盟国とは日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を改定し、いざというときの役割分担も整備した。  それでも足りないのは、予想される首都直下型大地震のような「国家存亡にかかわる事態」への対応である。現行憲法にない「緊急事態条項」を早急に補い、万全の態勢を組むのが国民への責務であろう。(東京特派員)

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4/22日経ビジネスオンライン 北村豊『つけ払いを拒否され、店主を殺した公務員4人組 理不尽な犯罪が、なぜか偶発事故扱いになる理不尽』について

本記事を読んで、泉幸男氏のブログにある日本の闇の部分を思い起こしました。日本を貶める謀略(図書館での「アンネの日記破損事件」。ユダヤ人に対して日本人の偏見があるように偽装工作したこと)について、何らかの政治的圧力がかかって、実名報道されませんでした。裏で動いたのは、国連を中心として反日活動している中国と朝鮮半島が考えられます。そこからダーテイマネーを貰っている日本の政治家が実名報道できないようにしたのでは。泉氏ブログで「平成28年4月20日に「国境なき記者団」(本部・パリ)が世界各国の報道自由度ランキングを発表し、日本は180ヶ国・地域のうちの恥ずべき「72位」だった。(アンネの日記破損事件のあった平成26年には、日本は「59位」。)」とありますが、小生も日本のメデイアは重要な事実を日本国民に知らせない、左翼イデオロギーに染まって偏向報道しているのでこんな程度の評価しか受けないと感じています。勿論記者クラブ制度も足を引っ張っていると思いますが。

http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/201604240000/

中国は上から下に至るまで腐敗していますので、本記事のような報道になるのは、国民は理解しているでしょう。この記事にありますように、中国での腐敗撲滅運動は政敵打倒の意味しかありません。このことも国民は理解しているでしょう。習が中国5000年の歴史と言うのであれば、5000年も腐敗の歴史が続いてきたという事でしょう。民族の宿痾です。

役人は自分の天下だと思って傍若無人の振る舞いをすることは、中国駐在時代によく見ました。権銭交易で、自分の権限を裁量と言う形で賄賂を貰い、見逃してやるというパターンです。ただ、自分で独り占めすると危ないので、上司にも渡します。配分や配布先を間違うと収賄罪に問われるようになります。中国で法治の概念は成り立ちません。人治が総てです。台湾が中国の一部ではないことは、このことを考えても明らかです。華人の国シンガポールも独立国です。台湾も独立国で、中国の言っていることは嘘ばかりです。フィリピンの大統領選では華人のドウテルテが有利との報道がありました。「南シナ海について中国と対話の用意とか、レイプ殺人で亡くなった豪修道尼に対して最初にレイプしたかった、犯罪者は法の範囲内で殺害する」とかトランプでも言わないことを平気で言う人間が今の所人気が1位(4/25日経)と言うのも信じられません。まあ、中国人の子孫であれば「むべなるかな」ですが。民主主義がベストの統治形態でなく、ベターな統治形態であって、国民の成熟度によってしか善き政治、精神性も含めた国民の福利向上は期待できません。魯迅は「阿Q正伝」を書いて、当時の中国人の生き方を批判しましたが、今でも無知蒙昧・自己中心なのは変わっていないのでは。中華思想がある限り、世界で尊敬は受けないでしょう。

http://www.recordchina.co.jp/a127429.html

http://www.afpbb.com/articles/-/3084839

4/18日経

フィリピン版「トランプ人気」 革命30年の不信映す

大統領選、5月9日投開票

フィリピン大統領選挙が、5月9日の投開票まで1カ月を切った。ここにきて急速に支持を広げているのが「犯罪バスター」と呼ばれるロドリゴ・ドゥテルテ氏(71)だ。最新の世論調査で、女性上院議員のグレース・ポー氏(47)を抜いてトップに立った。

「犯罪者を殺害する」「汚職は許さない」などの過激で率直な発言が人気だが、それだけではない。根底には30年間にわたって有権者にくすぶる、民衆革命後の政治への不満がある。

■自前の暗殺団使って治安を改善した「実績」

「本当に汚職を撲滅できるのは俺だけだ。他はみんな、言うだけだろ?」。大きな歓声が沸き起こった。4月11日夜、ドゥテルテ氏がマニラで開いた街頭演説は、支持者ら約2万人の熱気が渦巻いていた。

南部ミンダナオ島のダバオ市で検事を務め、1988年に同市長に就いた。市長は3選までという規定のため、娘を市長にした時期もあるが、事実上の長期政権が続く。

自前の暗殺団を使ってダバオ市の治安を改善したとされ、これまでも「犯罪者は法の範囲内で殺害する」「私が大統領になれば、血を見る機会が増える」などの発言がある。

「犯罪バスター」の異名を持つほか、過激な物言いから「フィリピンのドナルド・トランプ」とも評される。

 3月に中部セブの大学で開いた候補者4人の公式討論会では、最も強い存在感を見せた。開始時間がずれ込むなか、壇上に並んだポー候補に「(時間つなぎに)歌でも歌ったらどうだ」と語りかけ、会場が笑いに包まれた。

過激なだけでなく、ユーモアあふれる言葉遣いが、親しみやすさを演出する。民間調査会社ソーシャル・ウエザー・ステーションの4月の支持率調査では、27%で首位に躍り出た。

もし過激な発言だけなら、ここまで支持は広がらなかっただろう。背景にあるのは貧富の格差や汚職、犯罪など、フィリピンが長年抱える根深い問題だ。

■格差、汚職、犯罪…歴代政権が先送りしたツケ

 2010年にアキノ政権が発足して以降、フィリピンは経済成長の軌道に乗り始め、いまや東南アジアでも高い成長率を誇る。だが、その恩恵は地方まで行き渡っているとは言いがたい。

 格差は犯罪の温床となり、汚職を生む。特に深刻なのは薬物問題で、最近はミンダナオ島の貧しい田舎町にまで覚醒剤の使用禁止を呼びかける看板がある。経済成長の「陽」から取り残された「陰」の部分を、これまでの指導者は無視してきた。

 故マルコス大統領の長期独裁にノーを突きつけた86年の「ピープルパワー革命」から30年。独裁政権下にはびこった言論弾圧や汚職は改善されたものの、それ以降の政権が問題すべてを解決したとはいえない。

 今回、副大統領選挙の有力候補としてマルコス氏の長男が挙がる。これも成長に取り残された民衆の不満を吸収している面で「ドゥテルテ人気」と同じ構図だ。革命から30年たっても変わらない現状への不満が、選挙戦で一気に吹き出している。>(以上)

Duterte

ドウテルテ・フィリピン大統領候補

記事

2016年4月16日、河南省“南陽市”で公務員による嘆かわしい殺人事件が発生した。

 南陽市は河南省の西北部に位置し、湖北省と陝西省に隣接する省境の市である。南陽市の面積は河南省最大の2.65万km2を有し、人口も河南省最大の1000万人を擁する<注1>。

<注1>南陽市の面積は、日本の長野県の面積(1.36万km2)と新潟県の面積(1.26万km2)の合計(2.62万km2)に等しい。ちなみに、両県の人口は、2015年10月時点で、長野県(210万人)、新潟県(231万人)の合計441万人。

昼に4時間飲み、店を壊し、店員を殴った挙句に

 事件が発生したのは、南陽市の北部に位置する“南召県”(人口:92万人)の“四果樹郷高峰庵村”である。メディアが報じた事件の概要を取りまとめると以下の通り。

【1】4月16日の土曜日、南召県“四果樹郷国土資源所”所長の“褚某”がその家族と、“農業局”職員の“武某”、南召県“人民検察院”職員の“張某”、南召県“白土崗鎮司法所”職員の“呂某”の3人を引き連れて郊外で遊んだ後、四果樹郷にあるレストラン“九龍湖農家楽飯店”を訪れて昼食を取った。酒を注文した4人は差しつ差されつ酒を酌み交わし、日頃の憂さを忘れて気勢を上げた。恐らく、4時間以上は酒を飲み続けたものと思われる。

【2】午後5時20分頃に酒宴を終えた4人は昼食代金を支払おうと、レストランの店員に「勘定」と言い、勘定書を持って来るよう命じた。店員(女性)が請求書を提示すると、褚某は南召県政府名義の“簽単(つけ払い)”とするように要求した。これに対して店員は、「当店では現金払いだけとさせていただいています」と拒否したが、4人はこれに激高し、両者の間で口論となった。そうこうするうちに、4人は怒りにまかせて店内の食器類を投げつけて破壊する行為に出たので、店員が彼らの破壊行動を制止しようとしたが、逆に彼らに殴られて負傷した。

【3】レストランの店主である“李金明”は、男たちが破壊行為を行うのを黙って見ていたが、店員が殴られるに及んで、4人の前に歩み寄った。李金明はこの店の店主であると名乗ると同時に、自分は南召県の“人民代表(県会議員)”でもあると身分を明かした上で、改めて4人に対し、県政府名義のつけ払いは受けないと述べて、現金払いをしてくれるように要求した。それでも4人が応じようとしなかったので、李金明は彼らが一見の客で馴染みではないので、現金払いしか受けられないのだと説明を加えた。

【4】彼ら4人が李金明に対してどのような感情を抱いたかは定かでないが、「県の人民代表だと思って、俺たちを馬鹿にしやがって」と考えた可能性は高いかもしれない。彼らのうちの数人は、李金明があくまで現金払いを主張するのに業を煮やして李金明に殴りかかった。運悪く拳をまともに受けた李金明は倒されて頭を地面に強打した。当たり所が悪かったのか、地面に倒れた李金明はピクリともせず、その場で絶命したのだった。

【5】記者のインタビューに応じた李金明の長男である“李向陽”は次のように述べた。

(a)事件後、李向陽たちは監視カメラの映像を確認したが、そこには地面に倒される前の李金明が、4人のうちの1人に首を絞められた上に顔を殴られ、別の1人には足で腹部を蹴られた場面が映っていた。このため、老齢の李金明はバランスを崩して踏み止まることができずに転倒し、頭を地面に強打していた。倒れた李金明が身動きしないのを見て、「まずい」と判断した4人は身を翻して逃げようとした。この時、時刻は午後5時26分だった。

(b)現場を逃げ出した4人は騒ぎを聞きつけて駆けつけた地元の村人たちによってレストランの大門内に封じ込められ、20分近く村人たちと対峙していた。村人の誰かが110番に通報したのを知った4人は、1人の村人を殴り倒して包囲を破って逃亡を図ったが、急行した警官隊によって午後5時50分に取り押さえられた。この間にも彼ら4人は警官隊と揉み合いになり、警官の1人が制服を引き千切られた。

(c)李金明は共産党員であり、地元の高峰庵村の党委員会村支部書記を務めると同時に南召県の人民代表でもあった。李金明は曲がったことが大嫌いで、家族連れで飲食した代金を公費のつけ払いにするような連中に反感を抱いていた。人民代表である父親の李金明が「四風」<注2>に反対したことにより、まさかこのような大きな禍を招くとは考えてもみなかった。

<注2>「四風」とは、中国共産党総書記の“習近平”が2013年6月に提起した言葉で、断固反対するものとして「形式主義」、「官僚主義」、「享楽主義」、「“奢靡(贅沢ざんまい)”」の風潮を指す。

徹底調査のはずが、報道と異なる公式文書に

【6】翌17日の午後、事件の現場となった“九龍湖農家楽飯店”を犯人たちが所属する南召県政府関係者が弔問に訪れ、李金明の遺骸に向かって頭(こうべ)を垂れて謝罪の意を示し、その後に李向陽を始めとする遺族に対して遺憾の意を表明した。来訪したのは、南召県国土資源局、地元の郷や鎮の党・政府の指導者であった。これらの人々を引率して来た南召県国土資源局の副局長は、「国土資源局の指導者として、部下がこのような問題を引き起こしたことは苦しみに耐えない。関係部門と協力して本件を徹底的に調査し、決して犯人をかばうようなことはしない」と述べた。

【7】この事件はメディアによって「公務員がレストランの店主を殴り殺す、公費のつけ払いを拒否されて」と題して大々的に報じられた。しかし、4月18日、“南召県党委員会宣伝部”が発表した事件に関する公式文書には以下の内容が記載されていた。

 4月16日、南召県農業局職員の武某、南召県四果樹郷国土資源所職員の褚某、南召県人民検察院職員の張某、南召県白土崗鎮司法所職員の呂某の4人が家族を引き連れて郊外に遊び、昼に四果樹郷にある“九龍湖農家楽飯店”で会食した。酒を飲んだ後に食器を壊したことで、店員との間で口論からつかみ合いのけんかに発展した。これを見て、レストラン店主の李某(=李金明)が制止に入ったところ、身体の衝突が発生し、李某は地面に倒れて死亡した。

【8】上記の公式文書にはメディアの報道と大きく異なるところが2つある。

(1)公式文書には4人がそれぞれ家族を連れていたとあるが、事件を詳細に報じた香港紙「文匯報」は家族連れであったのは四果樹郷国土資源所長の褚某だけであったとしている。また、褚某の役職が公式文書では単なる職員とあり、文匯報は所長となっている。役職が何だったのかはともかくとして、4人全員が家族連れであったとする必然性は何なのか。家族連れだと本人の罪が軽くなるとは思えない。一方、文匯報が間違っている可能性もある。

(2)公式文書は、4人が食器を壊したことが原因で、口論からつかみ合いのけんかに発展して、李金明の死亡につながったと述べているだけで、事件の起因となった公費のつけ払い拒否には一切触れていない。田舎のレストランで使用する食器が高価な品物であるはずがなく、食器が多少壊されたとしても、店主が文句を言うはずがない。南召県国土資源局の副局長は「決して犯人をかばうことはしない」と述べたはずだが、南召県党委員会宣伝部は犯人の4人が公費のつけ払いを要求した事実、その相手が四風に反対する南召県人民代表であったことで、告発されては困るから痛めつけようという魂胆があった事実を隠蔽した可能性が高い。

習近平の禁令に抵触、銀バエとして駆除?

【9】この事件が今後どのように進展し、裁判でいかなる判決が下るか見てみたいが、この種の公務員犯罪、しかも嘆かわしい犯罪はその報道が規制されるのが常である。南召県党委員会宣伝部は、本件が刑事事件である以上、事件の進展と調査結果を必ずメディアならびにネットの公式マイクロブログを通じて対外的に発表すると約束したが、果たしてどうなるか。但し、公務員が私的に消費した代金を公費のつけ払いとすることは、習近平が提起した“八項規定”、“六項禁令”<注3>および“反四風(四風反対)”に抵触する重大犯罪であり、対外的に隠蔽したとしても、犯人たちに対して厳罰が下ることは間違いないものと思われる。

<注3>“八項規定”と“六項禁令”は2013年1月に習近平によって提起されたもので、指導者ならびに党員および幹部の行動を厳しく規制したもの。本件の私的消費に対する公費の流用は、六項禁令の第5項に明記されている。

 2012年11月に中国共産党総書記に就任した習近平は、2013年1月に“反腐敗(腐敗撲滅)”を宣言し、「“老虎(トラ=高官)”も“蒼蠅(ハエ=中下級の役人)”も同時に叩く」というスローガンの下、現在に至るまで間断なく腐敗撲滅運動を精力的に展開している。上述した南召県で殺人を犯した4人はハエであり、ハエの中でも嫌われる銀バエとして駆除されることになるだろう。

ところで、米国のニューヨークに本部を置くアジアソサエティ(Asia society)内の米中関係センター(the Center on U.S.-China Relations)が発行するオンラインマガジン「中参館(ChinaFile)」は、2016年1月に中国の“反腐敗運動(腐敗撲滅運動)”に関する研究報告を発表した。1月22日付で「“徳国之声(ドイツの声)”」中国語ネットが報じた当該研究報告に関する記事の概要は以下の通り。

ハエ退治が9割、腐敗撲滅は透明度が不足

【A】米中センターのオンラインマガジン「ChinaFile」は腐敗撲滅運動が始まって以来明るみに出た腐敗案件1462件を整理して発表した。1462件の内訳は、トラ(=高官)が146件に対してハエ(中下級の役人)は1316件で、ハエが全体の90%を占めていた。

【B】習近平が政権を握ってから現在までに、合計で231人の官僚が裁判所で腐敗の罪を確定されて刑罰の判決を下された。これら腐敗官僚に対する裁判所の判決統計によれば、彼ら(231人)が流用・濫用した公金の総額は63億元(約1070億円)以上に達した。

【C】2016年1月初旬に“中央規律検査委員会”副書記の“呉玉良”は、2015年の「腐敗撲滅成績表」を公表した。2015年は中国の改革開放(1979年)以来、党・政府の規律に違反して処分を受けた人数および取調べ中の中堅幹部の人数が最も多い1年だった。その内訳は、合計の立件数が33万件で、処分された者が33.6万人、犯罪容疑で送致され司法機関の処理に委ねられた者が1.4万人であった。

【D】不思議なことに、福建省と浙江省では失脚した官僚が比較的少ないことが判明した。この両省は習近平がかつて統治した、彼にとっての権力の拠点である。この事実から、両省の官僚は比較的寛容に取り扱ってもらえる特権に恵まれていると考えられる。

 なお、上記の記事は文頭で、習近平が推進する腐敗撲滅運動は、透明度が不足しており、政敵を打倒して積年の恨みを晴らすための名目であるとの批評家の声を紹介している。

 これは今までに腐敗撲滅運動により失脚させられた“周永康”、“徐才厚”、“郭伯雄”といった政治家や軍人の構成を見れば明らかで、その大部分が習近平の政敵である“江沢民”のグループに属している。

 こうしたトラたちとは一線を画すハエたちは、基本的に政治の党派とは関係なく、公金の横領や流用、濫用といった私腹を肥やすことで、“八項規定”、“六項禁令”、“反四風”に違反して処罰を受けることになる。しかし、ハエたちは常に周囲の状況を見渡し、危険が迫れば頭を隠して危険が去るのを待ち、危険が去ればまたしても私腹を肥やすための活動を開始する。これは「モグラ叩きゲーム」ならぬ、「ハエ叩きゲーム」であり、たとえどんなに腐敗撲滅運動を徹底したとしても、ハエの習性を変えることはできないだろう。

 中国の歴史書「史記」の滑稽伝には、「“酒極則乱(酒極まって乱となる)”」とある。酒の量をほどほどに抑えてさえいれば、南召県の公務員4人はよもや殺人を起こすことはなかったはずである。「酒は飲むとも飲まるるな」、このことわざはまさに至言である。

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4/22日経ビジネスオンライン 池田元博『やはり2島が限界?北方領土交渉の落としどころ 領土交渉のハードル、さらに上がる可能性』、4/22日経 The Economist『プーチンの右腕、ロシア中銀総裁の実力を査定 辛うじて踏みとどまるロシア経済』について

4/24日経に「伊奈久喜日経特別編集委員」の死亡記事が載っていました。日経の政治担当の中では田勢康弘などと違い、マトモと感じていました。残念です。

ロシアとの北方領土交渉はハードなものになるでしょう。交渉のやり方として先方はゼロから、当方は100から始まるのが普通でしょう。中国人と交渉するときも、日本人と分かると大体10倍くらいの値段を吹っかけてきますから。騙される方が悪いと言えます。「2島(色丹、歯舞)返還、国後・択捉は話し合い継続」が現時点で望める最大限ではないか。領土問題は戦争か金でしか解決は出来ません。今の日本人で戦争してまで領土の失地回復することは考えにくいです。後は金で解決するかです。沖縄だって事実上そうでした。

ルトワックが言うように、日本がロシアを味方に付けられるか、せめて中立の立場を取るかが対中国にとって死活的な問題になります。火事場泥棒で領土を奪われた事実は事実として、世界は正義だけで動いている訳ではないという事を銘記しなければ。中国包囲網にロシア+中央アジアの国々にも参加して貰えれば、中国の軍事暴発の可能性は低くなります。現下の最大の敵国はロシアでなく、中国です。これに朝鮮半島が加わるでしょうが。

ロシアの経済運営は外貨準備を減らさないこととありました。外交面でのフリーハンドを握っておきたいとの思いでしょう。確かにルーブル安は資源輸出国のロシアには有利になります。でもインフレが進行していくときに、銀行救済だけでうまく行くかどうかです。中国と違い、データの改竄はないと思われますので、それが救いです。中国はデット・エクイテイ・スワップで債務危機を乗り越えようとしていますが、根本的解決にはならないでしょう。バブル崩壊の先送りだけ、もっと悪い結末が予想されます。

池田記事

安倍晋三首相が5月初めにロシアを訪問する。プーチン大統領との首脳会談を通じて北方領土問題解決の糸口を見いだそうとしているが、受けて立つロシア側の姿勢は想像以上に厳しい。最大限の譲歩でも2島が限界ではないか。

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プーチン大統領が生出演し、3~4時間にわたって国民の様々な質問に答えていく特別番組。年1回の恒例となっている。(Kremlin/Sputnik/ロイター/アフロ)

 「プーチンとのホットライン」――。プーチン大統領がテレビに生出演し、3~4時間にわたって国民の様々な質問に答えていく。ロシアで年1回の恒例となっている特別番組だ。今年は4月14日に実施され、全土で生中継された。

 大統領はスタジオに集まった聴衆や、テレビ中継で結んだ地方の人々と直接、対話しながら質問に答える。また、電話やメール、ツイッターなどを通じて寄せられた膨大な質問は原則、司会者がその一部を紹介し、大統領が返答する形式をとっている。市民たちが身近に抱える問題を訴えると、大統領がその場で解決策を指示することが多く、国民には人気の番組だ。

 もちろん政権にとっては、プーチン大統領への国民の支持をつなぎとめるための重要なメディア戦術となっている。今年はとくに、子どもたちからの質問を多く取り上げ、親しみやすさを訴えながら、頼れる指導者のイメージを植え付けようとしていた。例えばこんな具合だ。

アンジェラ:「もし金の魚を捕まえたら、3つのどんな願いをしますか」

大統領:「奇跡に期待せず、何事も自分の力でなし遂げるべきだよ」

アリーナ:「ロシアに女性の大統領は生まれますか。パパは米国に対抗できるのはプーチンさんしかいないといっています」

大統領:「我々が考えなければならないのは米国とどうするかではなく、国内の問題だよ。道路の整備や健康、教育をどうするか。経済をどう発展させ、成長させていくかなんだ」

なぜ今回、色丹島の現状をとりあげたのか

 今年は全国から300万を超える質問が集まったという。番組で紹介されるのはごく一部だけだ。毎回、大統領の当意即妙の受け答えが売り物となっているが、実際は大統領府が中心となって番組の構成から取り上げる質問、回答内容を含めてかなり入念に事前準備しているといわれる。

 ロシア経済紙RBKは、スタジオ参加者の多くが2日前にモスクワ郊外の宿舎に集められ、リハーサルを実施したと報じた。参加者は事前準備のことを親族などにも話さないよう口止めされ、番組当日まで宿舎を出ないよう要請されたという。

政権の監修が色濃い番組とされているだけに、今回、日ロ関係者の間で様々な臆測を呼んだ場面がある。モスクワのスタジオと極東のサハリン州を中継で結び、大統領と地元の市民が直接やりとりした次の部分である。

タチヤーナ:「私たちは昨秋、色丹島の魚加工工場で働きましたが、給料を支払ってくれません。人材派遣業者がだましてあの島に連れて行っています。労働条件も生活も悲惨です。人々はホームレス状態です。助けてください」

エレーナ:「あそこは島で周りは海ばかりです。逃げ出せないし、お金もない」

大統領:「何ということだ。言葉もみつからない。それ(賃金の不払い)は昨年の話ですか。あるいはもっと長期間にわたってですか?」……。

 大統領は謝罪し、番組の中で連邦検事局などに迅速な対応を指示した。さらに、これは後日談だが、さっそく連邦検事局の副検事総長、サハリン州知事、サハリン州検事、連邦労働雇用庁幹部らがこぞって色丹島入りして調査に乗り出し、工場側も未払い賃金の全額支払いを約束したという。

 給料の遅配、不払い問題は例年、市民が寄せる質問の“定番”のひとつだ。臆測を呼んでいるのはなぜ今回、北方四島の色丹島の現状をとりあげたのかだ。

 「色丹島もロシア領と日本に認識させるのが狙いだ」「いやいや、厳しい現状を国民に知らしめ、日本への将来の引き渡しの布石とした」……。いろいろな解釈が可能だが、大統領は番組では、日本との関係について一切触れていない。

 折から5月初めには、安倍晋三首相の訪ロが予定される。プーチン大統領もこの番組終了後に記者団の質問に答え、米国の圧力にもかかわらず訪ロする首相を「歓迎する」とした。北方領土交渉の行方にも触れ、「妥協はいつか見いだせるのではないか」と述べた。それだけになおさら、番組で色丹島を取り上げたのは、日本を意識したのではないかという疑心を生んでいるわけだ。

1956年日ソ共同宣言の重視を改めて主張

 意図的か偶然か、日本を意識したかしないかは別にして、客観的に言えることは、ロシアの隅々にまで気を配るプーチン大統領の姿を国民に誇示するため、色丹島の未払い問題が取り上げられたということだ。

 もちろん、大統領は日本が帰属問題の解決を求めている北方四島の一つと認識しているはずだ。一方で、番組をみた国民の多くは、日本と係争中の島という認識は全くないまま、すぐに忘れてしまうかどうかは別にして、「色丹」という島が極東の最果てにあることをなんとなく知ったということなのだろう。

 プーチン大統領はちょうど3年前、モスクワで開いた安倍首相との日ロ首脳会談後の記者会見でこんな発言をしている。北方領土で外国企業も参加してインフラ開発が進む現状に苦言を呈した日本側記者の質問に対し、怒りをこらえながら「これらの領土には他と同様にロシアの人々が住んでいる。我々が彼らのことを思い、彼らの生活を考えるのは当然だ」と答えたのだ。今回の番組で色丹島が取り上げられたのも、こんな文脈の延長なのだろう。

 では、肝心の北方領土交渉の行方はどうなるのか。

安倍首相の訪ロ準備を目的にラブロフ外相が来日し、岸田文雄外相との間で4月15日に外相会談を開いた。ラブロフ氏は「交渉を継続する用意はある」と前向きの姿勢を示す一方で、「第2次世界大戦の結果」を日本が認めるべきだという主張を繰り返した。

 つまり、第2次大戦の結果、北方四島がロシア領になったことを日本側が確認しなければ、交渉は前に進まないというのだ。ラブロフ氏は同時に、「両国(議会)が批准した唯一の文書」として、平和条約締結後に歯舞、色丹の2島を日本に引き渡すことに同意した1956年の日ソ共同宣言をロシア側が重視する姿勢も明示した。

4 nothern islands of Japan

出所・外務省

「歴代のロシア首脳として初の困難な言及」

 政権に忠実な職業外交官として知られるラブロフ氏の発言は、プーチン大統領の考えを忠実に反映しているとみるべきだ。とくに、日ソ共同宣言を日ロ交渉の基軸に据える路線は、プーチン氏が2000年に大統領に就任して以来、一貫してとってきた立場でもある。

 その意向が如実に反映されたのが2001年3月、森喜朗首相(当時)との間で合意した「イルクーツク声明」だ。同声明は択捉、国後、色丹、歯舞の4島の帰属問題の解決を明記するとともに、日ソ共同宣言を「交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書」だと確認した。

 プーチン大統領は当時、イルクーツク会談の直前にNHKとのインタビューで「この宣言(日ソ共同宣言)はソ連最高会議によって批准された。すなわち、我々にとって、これ(宣言の履行)は義務である」と表明した。

 当時の首脳会談でも大統領はこのインタビューに言及し、「歴代のロシアの首脳として初めての困難な言及であったと述べた」と日本側の公式記録に残っている。大統領が当時、この「困難な」決断によって日本との北方領土問題を決着できると期待していたのは確かだろう。

出発点が「ゼロ回答」?

 ところが日本側はこの決断にさほど注目せず、領土交渉は停滞した。日本の対応には落胆しただろうし、当時と比べて今は、交渉を進める意欲が衰えているのではないかと想像される。

 もちろん、日本で安倍政権が安定政権として誕生し、ウクライナ危機をめぐる空白はあったものの、日ロの関係改善を志向しているのはまんざらではないはずだ。それでも領土交渉で、かつて自らが表明した日ソ共同宣言の「履行義務」を超える譲歩をするとは考えにくい。

実はプーチン大統領はくだんのイルクーツク会談直前のインタビューで、「そこ(日ソ共同宣言)には、いかなる条件でそれらの島々(色丹、歯舞)を引き渡すか明記されていない」とも述べていた。イルクーツク声明は同宣言を「交渉プロセスの出発点」と規定したものの、大統領の思惑は当時から出発点がゼロ回答で、「最大限譲歩しても2島」だったのかもしれない。

 その当時と比べて、ロシアによる北方領土のインフラ整備は着実に進んでいる。約3000人のロシア人が暮らす色丹島でも病院などが新設され、昨年7月にはスクボルツォワ保健相が現地を視察した。

 加えて、ロシア社会でウクライナ領クリミア半島の併合以降、ナショナリズムが台頭する現状も踏まえれば、プーチン政権が領土交渉のハードルをさらに上げてくる可能性が大きい。ハードルをクリアするような”果実”を日本側から得られない限り、2島ですら手放すつもりはないとみるべきだろう。

 安倍政権はこうした厳しい現実を前提に、ロシアとの粘り強い交渉に臨む必要がありそうだ。

The Economist記事

ロシア中央銀行(CBR)総裁のエルビラ・ナビウリナは、大学時代に初めて資本主義を知った。「西欧経済理論についての批判」という授業を履修したのだ。近代の中央銀行総裁としては、いささか特異なスタートを切ったと言える。

the president of Russian central bank

ロシア中央銀行のエルビラ・ナビウリナ総裁(写真:ロイター/アフロ)

 ここにきてナビウリナ総裁は新たな矛盾を突きつけられている。ロシア経済は腐敗とレントシーキング*に足を取られ、何年にもわたって停滞を続けてきた。さらに最近は、西側諸国による経済制裁と、原油・天然ガス価格の下落が経済の一層の足枷となっている。原油・天然ガスはロシアにとって最大の輸出品目の一角をなす。

*企業が政府や官庁に働きかけて自分たちに都合のよいように法制度や政策を変更させ、その恩恵に与ろうとする行動。

 だがロシア中銀は有能な官僚が政策を運営しているモデルケースの1つだ。2013年にナビウリナ氏がロシア中銀総裁に就任して以来ずっと、同国経済は厳しい試練にさらされてきた。もし陣頭指揮を取るのがナビウリナ氏でなければ、ロシア経済はなお悲惨な状態に陥っていたことだろう。

2000年から経済政策の中心に

 穏やかな語り口が印象的なナビウリナ氏は、労働階級の出身だ。母親は工員で、父親は運転手だった。

 ロシアが市場経済への困難な移行を進めるなか、同氏は長きにわたり中核的な役割を担い続けてきた。ウラジーミル・プーチン氏は2000年に大統領に就任した際、「1990年代の混乱は一段落した」と宣言した。だが元経済相のエフゲニー・ヤシン氏によれば、経済に関する限り「プーチン大統領は確たる考えを持っていなかった」。

 このため、プーチン氏はオーソドックスな見方をする専門家集団に経済政策を委ねた。その1人がナビウリナ氏だった。ナビウリナ氏は2000年に経済発展副大臣に、2007年に同大臣に就任した。彼女は、この時の経験が、経済に対する自身の取り組みに「最も重要な」影響を及ぼしたと語る。

ロシア経済を襲う2つの危機 外貨準備高とルーブルの為替水準

foreign currency reserves in Russia

出所:The Economist/Bloomberg

 2008~09年に原油価格は下落し、世界経済は停滞した。この危機に臨んでロシア経済は、逃げ足の速い海外のヘッジファンドと個人投資家に依存していることを露呈した。これらの投資家が資金の引き揚げに走る間、ロシア中銀はルーブルの買い支えに動いた。この結果、たった数カ月間で2000億ドル超(約21兆7700億円)の外貨準備を流出させた(図表を参照)。経済全般を通じて貸し出しが減少し、2009年にはGDPが8%縮小した。

ロシア国債への投資拡大を目指す

 こうした状況を踏まえてロシアは、次に訪れる原油価格の下落に備えるべく、2つの改革に踏み切った。第1に、資金の調達先を分散化した。例えばロシア当局は2013年、世界の2大証券決済機関であるユーロクリアおよびクリアストリームにロシア国債の取り扱いを許した。これに伴い、ロシア国債市場に参加する機関投資家が拡大した。英ファンド運用会社アシュモアでファンドマネジャーを務めるジャン・デーン氏によれば、機関投資家は市場の乱高下に左右されることなく、割安感が高まった時に買いを入れる傾向がある。

 ナビウリナ氏に言わせれば、もう1つの安定した資金調達先であるロシアの国内投資市場も厚みを増した。国内投資家が保有するロシアの公的債務の比率は、2013年の1年間だけで66%から70%に上昇した。大手投資銀行の米ゴールドマン・サックスは、ロシア年金基金――ロシア中銀が監督している――が保有する資産は、現在の約600億ドル(約6兆5200億円)から2020年には約2000億ドル(約21兆7700億円)に拡大すると見込んでいる。

 前出のデーン氏によれば、調達先を分散することでロシア経済は、そうしなかった場合に比べて資金不足に悩まされことがなくなった。経済規模を考慮すると、2014~15年に生じた民間部門における資本逃避は、2008~09年と比べて軽微なものにとどまった。2015年にGDPは4%縮小したが、2008~09年と比較すれば健闘した。2015年の原油価格の下落幅は2008~09年より大きかったにもかかわらずだ。

外貨準備の残高維持を優先

 2008~09年以降に起きたもう1つの抜本的な変化は、ロシアの外貨準備高に関わるものだ。原油価格の値上がりを追い風に、同国の外貨準備高は2009~13年に1400億ドル(15兆2200億円)拡大した。現在の残高は5000億ドル(54兆3600億円、GDPのおよそ5分の1)を突破している。ロシアは、この分厚いクッションを支えの一つに、欧米に対抗する外交政策を打ち出した。1998年の時と異なり、IMFに救済資金を頼る必要がなくなったのだ。このような政策は最終的にはロシアのためにならないだろうが、ナビウリナ氏に政策運営の余地を与えた。

 原油価格が下落に転じた時、同氏は外貨準備高を維持すべく、ルーブルの変動相場制への移行を加速した。対ドルのルーブル相場は2015年1年間だけで40%も下落した。このような場合、一般的な対処法はルーブルを買い下支えることだろう。そうすれば一般のロシア国民の購買力を保つことができる。だが、そのような対策を講じれば、ロシアの外貨準備高は再び急減していたことだろう。

 ロシア中銀はルーブルを買い支える代わりに、経済制裁によって打撃を受けていた銀行やエネルギー企業に直接ドルを注入し、対外債務の返済を支援した。

 外貨準備高は財政赤字の穴埋めにも使われた。原油価格が回復するにつれ、ロシア中銀は外貨準備高を改めて積み上げている。5000億ドルの水準にまで回復させるもくろみだ。

銀行支援を柱にビジネスを支える

 ルーブル安に伴って輸入品価格が高騰、インフレが再燃した。その結果、実質賃金は2014年以降10%以上減少した(それでも、プーチン氏が大統領に就任した2000年以降、賃金は3倍に増加している)。

 ロシア中銀はルーブル下落を食い止める唯一の手段として利上げを実施。金利は2014年、17%に達した。これが奏功して、インフレ率は現在7%に低下。ロシア中銀が目標とする4%に向けて改善基調にある。このような(タフな)決定を下すことができたのは「政治状況にかかわらず、ロシアにとって正しいことをする能力がロシア中銀にあることを反映している」と、世界銀行のバージット・ハンスル氏は述べる。

 こうした措置は「痛みを伴うが必要だ」というのがナビウリナ氏の弁だ。痛みを和らげるため政府は、GDPの3%に上る資金を経営状態の良好な銀行の資本増強に振り向けた。経営状態が悪化した銀行の預金者に対する補償も実施した。加えて、銀行に対して、外貨建て債務を危機前の為替レートで再評価することを一時的に許した。ロシアの銀行のバランスシートを実態よりも健全にみせることができる。これが、貸し出しを一層拡大させた。

 さらにロシア中銀は、問題となっている債権について返済猶予や条件変更に応じることを銀行に認めた。IMFはこの動きに対して、慎重ながら歓迎する意向を示した。

 これらの措置はすべて成果を挙げつつあるようにみえる。不良債権は2008~09年の水準を依然下回っているし、与信は徐々に上向きつつある。

 これらの措置を講じるのと同時に、ナビウリナ氏は監視を強化した。「彼女は、以前なら手出しできなかった銀行を追及するための全権を大統領から委ねられた」。MDM銀行会長を務めるオレグ・ビューギン氏はこう述懐する。同氏はロシア中銀で副総裁を務めた経験を持つ。2014年以降、200近い銀行の免許が取り消された。これは全体のほぼ5分の1にあたる。

引き続き多難なロシア中銀

 ナビウリナ氏が様々な施策を取ってきたにもかかわらず、ロシア経済の長期的な見通しは厳しい。同氏に批判的な向きは、ロシア中銀が金融引き締め策を取っていることが、そもそもの原因だと非難する。金融引き締めが投資を抑制しているというのだ。

 だが昨年、ロシア企業は昨年50%の増益を達成した。ルーブル安のため海外収益が急増したのだ。企業は膨大な投資資金を抱えている。定期調査の結果を見ると、メーカーは投資の重大な制約要因として、高金利ではなく政策の不透明性を挙げた。

 ナビウリナ氏もこの見方に同意し、「ロシア経済が落ち込んでいるのは、構造的な要因が主に原因だ」と述べる。同氏が最も懸念しているのは長引く原油価格の下落ではなく、ロシアの事業環境を「いかに迅速かつ劇的に改善させることができるか」だ。この状況が整うまでロシア中銀は、ロシア経済の行方に対して極めて重要な役割を担い続けることになる。

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4/21ZAKZAK 『日本の弱点は英語力の低さという米識者「中韓よりも低い」』について

プレストウィッツは2050年に日本の英語力が飛躍的に高まると考えているようですが、“wishful thinking”でしょう。理由として

①英語が国際言語の地位を保持できるか?米国の覇権(基軸通貨と世界に展開する軍事力)が前提、トランプのように、世界から米軍を撤退させれば、英語が国際言語として使用されるかどうか。

②日本は日本語で世界の書物が読める数少ない国。植民地統治を受けないで来たからでもあります。SNS等で世界との繋がりが、低コストで容易にできる時代。言葉より映像の方が、インパクトがあります。日本から海外留学が減ってきているのも、海外へ出なくとも、日本で研究ができる環境にあるという事でしょう。また、海外へ出れば、治安や医療・子供の教育の問題も出てきます。日本人の得意とするところはチームワークで仕事をするところ。厳しい競争に晒されるのは好まないという部分もあるでしょう。

https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/17319

軍事力で日本の核保有を認める発言はバック・パッシング(責任転嫁)の意味があるような気がします。「アジアのことはアジアで解決しろ」と言って、中国との戦争を日本だけに押し付けようと言うのでは。何時も言いますように中国と言うモンスターを作ってしまったのは日米です。製造物責任が日米ともにありますので、怪物退治は日米の責任です。ケナンのソ連封じ込めを中国に対してもすれば良かったものを、キッシンジャーのように金に転んだ戦略家が米国を誤らせて来ました。日米主導で中国封じ込めと「戦争になれば日米で対処」と公言することで抑止力を強化する方向にしないと。

記事

 「2050年の日本」は活力と魅力ある新型超大国として栄えるという大胆な予測の書『JAPAN RESTORED(日本復興)』がアメリカで出版され、話題となっている。著者のクライド・プレストウィッツ氏は、レーガン政権時に商務長官顧問を務め、自動車や半導体貿易交渉の前面に立ち、ジャパン・バッシャー(日本を叩く者)として知られた人物だ。  同氏は、日本は「2050年には英語力が飛躍的に高まり、日本の国力を高める」と予測する。その真意はどこにあるのか。産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が、プレストウィッツ氏に問いただした。  --『日本復興』では、日本でも公用語に英語が加わり、英語力が飛躍的に高まるというシナリオが描かれている。だが、いまの日本を見ていると英語力向上は難しいのではないか。  「国際的にみた日本の弱点は英語能力が他の国々より低いことだ。スカンジナビア諸国やドイツだけでなく韓国や中国にくらべても低いと言える。  原因は英語の教え方だと思う。日本の英語の先生は読むことはできても話せない人が多い。それを変えるために英語教員に定期的にテストをする。落ちた人に2年間の再勉強を義務づける。それでもテストに受からない人は引退してもらう。  日本の公用語が日本語と英語になれば、日本の長所が諸外国に従来よりもずっと多く理解され、日本の地位も国力も飛躍的に高まる」  --英語力向上よりもさらにハードルが高いと思われるのが、日本の軍事力強化だ。本書では最終的に日本が核兵器を保有するとしているが、それにはさすがに内外で抵抗が大きいと考えられる。  「日本の安全保障環境が激変していくのだ。北朝鮮が核兵器の開発を断固として続け、アメリカや日本に核ミサイルを正確に撃ちこむ能力を確保する。中国も核武装を強化するだけでなく北朝鮮の冒険主義を許容する。  中国も北朝鮮も日本敵視だ。アメリカは北朝鮮に武力攻撃を仕掛けることはまず絶対にしない。こんな環境では東京にいる人間は切迫した不安を感じるだろう。核の脅威を封じるには日本も核を持つのが最適の措置だと考えられる。  日本はいざとなれば核武装を敏速に達成する能力を有する。ただしインドのように公然とそうするか、イスラエルのように秘密裡に動くか。私は公然たる方法がよいと思う。抑止効果が強くなるからだ」

--その際、アメリカはどう対応するのか。  「アメリカがこれから最も頼りにする同盟相手は日本だろう。その日本がこれまでより強く大きな役割を果たすことはアメリカの期待でもある。米英関係はよく『特別な関係』とされ、イギリスへの期待は大きかった。だがイギリスはもう国力が衰え、中国に接近している。日本がアメリカの最重要な同盟相手なのだ。  アジア情勢では中国の膨張がやはり最大の不安定要因だ。米側では中国をWTO(世界貿易機関)など既成の国際秩序に招き入れれば、穏和な行動をとると期待した。  だがその期待は完全に外れた。中国は対決姿勢を強めてきた。貿易の拡大で中国共産党の独裁的パワーが強くなった。だがその中国の膨張はアメリカにとっては当面は直接の脅威ではない。しかし抑えねばならない。一方で、中国は日本にとって直接の脅威である。そうなると日本がまず中国との対峙の先頭に立つことになる」  ※SAPIO2016年5月号

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4/20日経ビジネスオンライン 福島香織『熊本地震で中国人が「くまモン応援」の真意 政争を越える民間の交流、今こそ育むべき時』について

4/20レコードチャイナの記事には

<「日本の大地震を心からお祝いします」、西安市のレストランが横断幕=中国ネットユーザーの反応は?

celebrate Kumamoto earthquake in Xian

18日、中国陝西省西安市のレストランが、「日本の大地震を心からお祝いします」という横断幕を掲げて物議を醸している。 2016年4月18日、中国陝西省西安市のレストランが、「日本の大地震を心からお祝いします」という横断幕を掲げて物議を醸している。 西安の地元メディアの中国版ツイッター・微博(ウェイボー)アカウントによると、熊本県で大きな地震が相次いで起きたことを受け、西安市の某レストランの2階に「熱烈祝賀日本大地震(日本の大地震を心からお祝いします)」と書かれた横断幕が掲げられた。メディアは「あなたはこれをどう思いますか?」とネットユーザーに問い掛けている。 この投稿に、中国のネットユーザーから最も“いいね”を多く集めたのは、「実は店主は狭量な民族主義者。客観的に見て店主の行為は反人道的。決して褒められたものじゃない」というコメント。以下、評価が高い順に「西安人の顔を汚さないでくれよ。どんな無恥なやつが地震をお祝いなんてできるんだ?この店をボイコットしよう!」「この店の主は頭がおかしいだろ。まじで」「狭く偏った愛国主義思想の源は店主の教養。愚かで無知なパフォーマンスは批判と非難を浴びるだけ」「日本が嫌いでも構わないが、こういう行為は中国人からも嫌われる」といったコメントが並ぶ。 このほか、「この店には絶対行かない」「災害を喜ぶのは弱虫だけ」「文明からは程遠いな」「恥知らず。しかも幼稚」「西安人として顔から火が出そう」「同じ人類としてどうなんだ」など、ほとんどが同店を批判するものだ。(翻訳・編集/北田)>(以上)

「夕方以降入った客にはビール1箱(多分12本入りカートン)プレゼント」という商売のやり方です。この店の店主は愛国主義者ではなく、便乗商法をしているだけでしょう。散沙の民と言われる中国人に真の愛国主義者が多くいるとは思えません。

こちらは小中華の韓国の4/20  insight (韓国語)の記事。

<「地震で日本助けるよりは慰安婦ハルモニ助けよう」の戦いSNS状況

Asiana Airlines

写真提供=アシアナ航空 日本熊本地震の余波で数多くの死傷者が出る中、「日本災難現場に救援物資を送るべきか否か」をめぐりオンラインで議論が熱い。 最近、アシアナ航空、大韓航空など航空会社と忠南道(チュンナムド)、済州道(チェジュド)など地方自治体は日本災難現場に救援物資と寄付を送り、地震被害の苦痛に参加することにしたと明らかにした。 隣国で自然災害が発生した場合、企業や政府だけでなく民間次元でも救助の手を差し出すのは普通のことだ。しかし、今回の日本地震救護活動に対しオンラインの反応がとりわけ冷たい。 最近、あるオンライン・コミュニティでは「日本地震に寄付とは…慰安婦ハルモニや独立有功者、親日派清算募金運動をする方が意味がある。地震募金という言葉にカッとなる」というあるネチズンの文が爆発的な反応を得た。これを見たネチズンらは「救助隊も派遣してはならない」「前の大地震の時も寄付送ったら、独島(ドクト、日本名:竹島)は自分たちの土地だと主張したよ」と該当掲示文に共感するコメント100余りを付けた。 実際に韓国はこれまで日本に大きな自然災害が発生するたびに、企業、政府だけでなく民間次元でも救助の手を差し伸べてきた。しかし、時間が過ぎても慰安婦問題など歴史問題が解決される兆しが見られず、このような問題が持続的な問題に浮上しながら反日感情がより一層悪化し、これで救助の手を差し伸べる必要がないという感情が強化された。 コメントで意見を強力に表明するネチズンのうち約90%以上はこのような否定的な反応を見せている。しかし、一部では災難現場を助ける問題を歴史的背景から接近するのは正しくないという意見も存在する。自然災害は人類共同で対処しなければならない問題で、歴史的背景ではなく人類愛的次元から対処すべき問題ということだ。 少数意見ではあるが、実際に大地震など大きな自然災害が発生すれば国際社会で救助隊を急派し支援に参加することで国家を越える人類愛を確認できる場になった。実際、アシアナ航空関係者は「アシアナはいつも社会貢献をしてきたし、今回もそのような次元で臨んだ」とし、「日本だから援助レベルを下げたり援助をしないという案を検討したことはない」と話した。 隣国日本に対する国民感情か人類愛的支援か。寄付に対するネチズンらの意見が入り乱れている。 チョン・ウンヘ記者>(以上)

東日本大震災発生から半年の後の2011年9月27日、韓国全州で行われたサッカーのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の対「セレッソ大阪」の試合で、韓国の「全北現代」のサポーターが「日本の大地震をお祝います。」という横断幕を掲げたことがありました。

celebrate Eastern Japan earthquake in S Korea

他人の不幸を喜ぶことを多くの人の前で表現できるのは、精神異常か民族としての特異体質の為せる業と思います。中華も小中華も長く反日教育をしてきたから、眉を顰める行動が平気で取れるのだろうと思います。日本の外務省の罪は重いし、親中・親韓政治家がそれに対し何も言ってこなかった罪も重いです。でも結局マスコミ報道を鵜呑みにしてきて相手の言いなりになるような政治家を選んで来た国民の責任が一番重いと言えるでしょう。民主主義とは国民の成熟度が問われる政治システムです。政治に無関心、特に国際政治や外交に無関心、金を儲けることしか頭にない状況では、行動の判断基準が徳ではなく、得のみになります。中韓から誹謗中傷を受けても黙って見過ごしてきたのが日本国民です。侮蔑されても反撃できない国民は、滅びることでしょう。

くまもんの偽物は中国では普通に売られています。自分が儲かるためには何でもするのは、山海関を開け清軍を通した呉三桂や「買弁」からの伝統です。

http://www.sankei.com/west/news/160122/wst1601220052-n1.html

pseud Kumamon

でも、中国国民のレベルでも少しずつ、日本への理解が進むことは良いことです。共産党統治の酷さを考えれば、日本政府と中国共産党の言ってることのどちらが正しいかは少し考えれば一目瞭然です。汪兆銘のように日本を理解した中国人もいました。共産党統治に疑問を持つ中国人が増えることを願ってやみません。

習は最初は尖閣で事を起こそうとしたと本記事にあります。今でも油断してはならないと思いますし、次の標的となっているフィリピンに日本は米軍と共に支援していかなければ。中国包囲網を作るのが急がれます。

記事

 

 熊本県一帯で4月14日から断続的に大地震が続いている。震度7の大きな前震のあとにさらに大きな本震があり、被災者の方々も、被災地に家族友人がおられる方々も眠れぬ夜が続いていることだろうが、少なくとも東日本大震災のような津波や原発事故の類は18日現在起こっておらず、どうかこのまま、余震が収束し、犠牲者に静かに哀悼が捧げられ、残された方々に少しでも安寧がもたらされ、そして一刻も早く復興にとりかかれるようにと、祈り続けている。

東日本大震災を揶揄した中国人、熊本地震では…

 ところで今回の大地震に関しては、中国人がずいぶんと心を寄せてくれているようだ。台湾人が日本の地震災害に毎回、ものすごい額の義援金(普通のビジネスマンでも、平気で1カ月分の給料などを寄付してくれる!)や関心を寄せてくれるのは、よく承知しているが、今回は多くの中国人が、インターネットの微博などのSNSで熊本への心配と応援を文章やイラストで表現しているのを見て、失礼ながらちょっと意外な気がした。

 というのも、2011年の東日本大地震のときは、中国でこういった被災地応援のネットブームは、すぐさまは起きなかったと記憶しているからだ。あの時は、むしろ先に「ざまあみろ」式の揶揄がネットの話題となり、良識のある中国人記者や中国人知識人のそれを諌めるコメントが散見された。これに対して台湾が外国の中で最高額の義援金を寄せてくれたことが、いかにも中国人と台湾人の違い、と言う形で日本人に印象づけられたのだった。

 熊本地震に関しては、中国で「小日本が大地震に襲われたので宴会を開いた」といった意地悪なSNS投稿もないわけではないが、それを上回る勢いで、傷ついた熊本県の“ゆるキャラ”くまモンを慰めるイラストやメッセージが流れたのである。

 なぜ、今回の熊本地震に関して、中国人がここまで同情と関心をよせてくれるのか。

一つの背景は、2011年春と2016年春の日中関係の状況がかなり違うからだ。

 2011年春は、2010年秋に、尖閣諸島海域で中国漁船衝突事件が起き、中国人船長が逮捕されるという事態に引きずられて、中国人の国民感情の表現が極めて“反日的”であった。この“反日感情”は、2012年秋の中国政権交代を控えた習近平サイドと現役政権の胡錦濤サイドの政争に利用される形で煽られ、中国各地で日系企業やショッピングセンターが打ち壊しや焼き討ちに遭う反日デモ暴動に発展するわけで、その詳細については拙著『権力闘争がわかれば中国がわかる』(さくら舎)などをお読みいただければと思う。

反中の台湾、香港から、日本へ流れる観光客

 一方、2016年春は、2014年から続く中国の訪日旅行ブームが最高潮に達し、もともと中国人の日本への関心が高くなっていた。中国の旅行代理店関係者に聞くと、台湾、香港での反中意識の高まりや、韓国における北朝鮮危機の高まりから、昨年まで台湾、香港、韓国に流れていた中国人観光客まで今年の春は日本に流れる傾向にあり、何より日本側のインバウンドの努力もあって訪日ツアーがダントツに種類も多く値段もリーズナブルになったことが訪日旅行ブームの一因だという。

 日本は欧米や東南アジアに比べてテロの危険も少なく、反中感情も他国と比べれば表面化しておらず、環境汚染も少なく、お買い物も楽しい。中国人の日本への親近感は2011年当時に比べるとぐっと高くなっている。

 別に中国人だけをターゲットにしているわけではないが、外国人観光客誘致で大活躍しているのが、各地の“ゆるキャラ”であることは疑いないだろう。中でも熊本県のくまモンは、中国語で“熊本熊”“熊萌”と呼ばれ、ダントツの人気である。実際、くまモンは、中国や香港でも“営業”しているし、それが熊本のキャラだと知らなくても、あの“ほっぺの赤い熊”といえば、見たことがあると答える人は多い。

もともと、中国語の“熊”には、おバカな人、無能、といったニュアンスがある。北海道の道路標識の「熊出没注意」などは、中国語では「おバカな人に気づきません」といった意味に取れ、このステッカーを北海道土産に買って帰ると大ウケする。車に貼れば、「注意力が足りない無能な運転手」という意味になり、若葉マークのない中国では、運転初心者が周囲への注意喚起で貼ることもあるとか。

中国人は“稼げる熊”がお好き

 このちょっと愛すべきおバカなイメージは、くまモンのキャラと完全に重なり中国人の琴線に触れたようでもある。だが、くまモンは無能そうな見た目と違い、2012年には周辺グッズの売り上げ300億円近くある“稼げる男”であり、こういうギャップも、中国人がくまモンが好きな理由かもしれない。

 中国人は基本、無能者よりは“有能で稼げる男”が好きである。なので、今回の大地震の被災地が熊本というと、くまモンの故郷だ、くまモンが被災した、と中国人にとっても非常に身近に感じることになった。実際、くまモンブームの影響もあって、中国人には阿蘇山ツアーなども大人気で、今回も南阿蘇の温泉地で中国人団体客20人が孤立し、ヘリコプターで救出された事態があった。

 日本、そして熊本に対するこうした中国人の親近感は、SNS上に、傷ついたくまモンや悲しんでいるくまモンを、パンダが慰めたり励ましたりするイラストや、くまモン頑張れ、といったメッセージの形であふれるようになった。イラストの中には、パンダが「私たち、みんな熊だもの」とキャプションがついていた。この際、パンダが実はクマのふりしたネコ科動物であることは気づかないふりをして、この慰めの言葉を素直に受け取りたい。

 中国の現政権が反日志向であることは、2011年も今も基本的に変化はない。だが中国の国民感情には変化がある。こう考えると、観光旅行という民間の商業活動・交流が、政府の外交を上回る効果を発揮したのだと解釈できる。

 日本の場合、商業活動は、本来は政治と無関係だが、ときに政治的にも大きな意味や効果をもつこともあるのだ。中国の場合、すべてが「党の指導」の名のもとに行われるので、観光のような商業活動といえども政治の影響を受け、たとえば台湾への中国人旅行の激減は政治のせいだ。だが、中国人の今の訪日旅行ブームは、習近平政権の反日志向に反して起きている。習近平って反日なの?と疑問に思う人は、くどいようだが「権力闘争がわかれば中国がわかる」を読んでほしい。

 簡単に説明すれば、習近平は“反日”を権力闘争、権力掌握に利用しようとしてきた。2013年1月の中国海軍が自衛艦に対しレーダーを照射しロックオンした事件は、習近平は無関係の現場の独断、という形で日中ともうやむやにしてしまったが、その後に漏れ伝えられるさまざまな情報を総合すると、やはり習近平が軍の権力掌握を進めるために東シナ海で局地的な准戦闘状態を引き起こそうと日本を挑発したというセンが今のところ一番強い。

 だが、この作戦は結果的に日本側の忍耐により失敗し、むしろ米国に中国の海洋覇権に対する強烈な警戒心を生み、尖閣問題が日米安保の対象であるとオバマ大統領が明言する決定的な契機となった。そこで、習近平が軍権掌握のために行う局地戦の場所を、南シナ海に移そうとしたのが今の南シナ海の現状である、と言われている。この場合、中国が具体的に戦火を交えたいターゲットとしているのはフィリピンのもよう。米国は中国の意図に気づいたので、フィリピンとの軍事協力強化に動いた。これに対して、中央軍事委員会副主席(解放軍制服組トップ)の范長竜が南沙諸島を米国牽制のために訪問した。

習近平の反日を、さらっとスルー

 習近平政権の反日志向は今にいたるまでぶれていない。習政権が日本の尖閣諸島に対して虎視眈々としていることは変わりなく、中国政府自身は、日本が大地震に見舞われて大変だからといって、気を回して尖閣周辺海域での中国海警船の挑発航行を控えるというわけでもない。熊本地震後も、尖閣諸島沖合の接続水域で中国海警船は挑発航行を続けている。だが、2016年春、いま習近平政権とガチで対立しているのは米国(とフィリピン)であり、だから、習近平政権の“反日志向”をさらっとスルーして、日本の製品を礼賛することも、訪日ツアーの魅力を語ることも、熊本への同情と応援の気持ちをネットのSNSで声高に表明することも、政治的にはセーフと見られている。

 こうして見てみると、政権の反日志向と、中国人個人の対日感情はもともと別物である。政治的風向きに関して敏感な中国人は、政権が反日的なメッセージを発すれば、それに乗って反日的な言動をとる。それは、あくまで独裁的な政権下での保身のために身にしみついた習性といえる。そういう言動をとる人が心底、反日というわけでもないのだ。

 では、政権が反日的メッセージを発しているにもかかわらず、あえてネットで日本への親近感を表明する場合はどうだろう。それもむしろ、心底親日というよりも、政権の発するメッセージをあえて無視することに意味があるのかもしれない。非常に消極的な政権への批判を無意識に込めているという意味で。最近、政権サイドが懸命に日本批判メッセージを発しても、国民の方が乗ってこなくなり、中国共産党は日本を北京ダックのように骨から皮までおいしく利用している、といった揶揄がネットで流れるようになったのは、つまりそういうことなのだと、私は感じている。

繰り返しになるが、中国人にとって、愛国心というのは、独裁政権下で平穏無事に暮らしていくための建前であって、本音ではさほど強い共産党政権への忠誠心は持っていない。習近平政権が個人崇拝キャンペーンを仕掛け、庶民的な肉まん屋で行列に並んで肉まんを買ったり、自分自身をゆるキャラ風のアニメキャラクターにして「習大大」(ビッグダディ習)のあだ名を広めるといった若者向け宣伝工作に力を入れたりしているものの、実際のところ「庶民の間で習近平が大人気」という現象は、作られたブームであり、庶民としては無意識の保身の習性からそのブームに乗っているだけだと私はみている。

 だから習政権の最近の政策や言動にほころびが出始めると、地方の農村はともかく、都市部の知的なネットを愛好する階層の間では、急激に習近平のやり方に批判的な気持ちが浮上する。もっとも、それを公然と口にすることができないので、習近平のあからさまな反日志向を無視する形で、ネット上で日本の製品が素晴らしいと礼賛したり、日本に旅行に行きたいといってみたり、くまモンカワイイ、と言ってみたりする。日本の熊本で大地震が起きれば、みな哀悼や同情や関心を寄せ、くまモンがんばれ、と声高にメッセージを送るのである。

「くまモンがんばれ」は外交的勝利

 だからといって、中国人からネットを通じて寄せられる被災地熊本への応援メッセージに心がこもっていないというつもりは毛頭ない。大地震での苦しみは中国人もたびたび経験しており、この同情と共感は本物だ。そういうものは、私たちが政治的にどのような状況であれ共有できるのだ。だが、それを声にして日本人に伝えるという行動の端に、政治的な中国人の事情というものも垣間見える。

 私たち日本人は、この中国人の同情と共感を感謝とともに受け止めつつ、隣の国の複雑な政治状況というものに、少し思いをはせることも必要だと思う。そうすれば、万が一、国家同士が激しい対立状態に陥っても、日頃、人として接する中国人をむやみに憎んだり恐れることもないだろう。そして政権同士の外交が対立のあまり暗礁に乗り上げていても、商業活動や民間交流、SNSでの普通の人々のコミュニケーション能力や発信力がその対立を乗り越えて外交的効果を発揮することが、しばしばあることを改めて認識することだ。

 ゆるキャラとして、商業的にプロデュースされたくまモンが、政治的に作られた習大大より中国人の心をとらえたとしたら、これもやはり日本の外交的勝利だ。

 そういう政権とは無関係なところでの民間の外交力が、意外にも紛争への歯止めになったり、震災復興での支えになったりするということを今、思い起こしておこうと思う。

notice of Kumamon's patent

くまモンオフィシャルホームページでは、通常であれば事前申請と許諾が必要な、くまモンのイラスト利用について4月19日に特例措置を発表。熊本地震支援のための募金活動やチャリティーイベントでの利用を届出制(許諾不要)とするとした

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4/19日経 小竹洋之『窮地の米共和党、忍び寄る分裂の危機』について

 

4/19NY州予備選ではトランプとヒラリーが勝ち、ヒラリーは予想通り民主党の指名獲得間違いなしです。トランプの獲得代議員数は847人で、過半数の1237人獲得に望みを繋げたとのこと。

4/21日経には

<クリントン氏、指名「見えた」 NYで勝利 過半数 26日にもメド トランプ氏も望み

the number of delegate in 2016

【ニューヨーク=吉野直也】米大統領選の民主党の候補指名争いは19日のニューヨーク州予備選で、ヒラリー・クリントン前米国務長官(68)が勝利した。ペンシルベニアなど東部5州の予備選がある26日にも指名獲得のめどが立つ。共和党の不動産王ドナルド・トランプ氏(69)も大勝し、7月の党大会前の過半数実現に望みをつないだ。

 「指名争いは最後の直線コースに入り、勝利が見えてきた」。クリントン氏は19日の勝利宣言で、こう力説した。「ニューヨークの皆さんはいつも私を支えてくれた」とも語り、喜びを表した。本命でありながら7連敗中の予備選で、今回の勝ちは流れを再び変えただけでなく、指名に必要な代議員の過半数に大きく近づいたからだ。

Hillary Rodham Clinton

19日、ニューヨーク州の予備選を制したクリントン氏(ニューヨーク)=ロイター

 民主党は特別代議員を含めた代議員総数が4765人で、過半数は2383人だ。米CNNテレビによると、クリントン氏はこの日の勝利で獲得代議員数を1930人に伸ばした。残りの代議員のうち30%弱を取れば、過半数に達する計算だ。逆にバーニー・サンダース上院議員(74)は70%程度獲得しなければならず、不可能な情勢だ。

 「最後の直線に入ってきた」というクリントン氏の発言は、こうした計算に基づいており、決して大げさな表現ではない。26日の東部5州の予備選に割り当てられた民主党の代議員数は462。世論調査ではクリントン氏が優位に戦いを進めており、調査通りの結果になれば、26日の時点で過半数に迫ることになる。

 勢いに陰りがみえていたトランプ氏も19日の勝利で、党大会前の過半数獲得がまだ現実的な目標といえる範囲にとどまった。共和党の代議員総数は2472人で過半数は1237人だ。米CNNテレビによると19日に勝ったことで、トランプ氏の獲得代議員数は847人まで増えた。

the primary election in NY

 19日以前は残り代議員数の61%以上を取らなければ、過半数に達しなかったが、19日に大勝したことで、その比率が57%程度に下がった。26日の東部5州の予備選を巡る共和党の代議員数は172人。トランプ陣営は5州すべてに勝って残り代議員数の50%を獲得すれば、過半数に届く計算をしている。

 トランプ氏が19日の勝利宣言で「最終的に誰の予想も超える代議員を取る」と宣言したのは、この数字が頭に入っているためだ。

 テッド・クルーズ上院議員(45)と競り合う5月3日の中西部のインディアナ州(57人)や同10日のネブラスカ州(36人)でトランプ氏が勝つと、過半数到達のために必要な残り代議員数の比率はさらに下がる。50%未満で、大票田カリフォルニア州(172人)などがある6月7日予備選を迎えれば過半数は可能というのがトランプ陣営の読みだ。

 一方、代議員数で2位につけるクルーズ氏は中西部で開く予備選で番狂わせを狙う。過半数を阻止さえすれば、党大会決選に持ち込めるためだ。

 26日の東部の予備選では3位のオハイオのジョン・ケーシック州知事(63)と票が分散する可能性が高く、これがトランプ氏優位の流れをつくり出している。党大会決選を見据えたトランプ氏とクルーズ氏らの攻防はこれから一段と激しくなりそうだ。>(以上)

共和党は誰が勝っても分裂含みです。GOP“Grand Old Party”の名が泣こうと言うもの。民主党も分裂して、第三、第四の政党が出て来るのを望みます。民主党では中国封じ込めはできないのでは。金とハニーで搦めとられていると思うからです。でも民主・共和とも民意を掴み損ねています。

記事

米南部ケンタッキー州の田舎町ホッジェンビル。ここは第16代米大統領アブラハム・リンカーン(1809~65年)の生誕地として知られる。

■不動産王が揺らす「リンカーンの党」

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競り合う共和党のトランプ氏(上)とクルーズ氏(4日)=AP

 丸太小屋で生まれた開拓農民の子供と、奴隷解放宣言をなし遂げた共和党初の大統領――。生家を再現した記念館もいいが、街中の広場で向き合う2つのリンカーン像がとりわけ印象に残った。

 約160年の歴史を持つ共和党には「リンカーンの党」という自負がある。それが多種多様な党員を束ねるよりどころにもなってきた。

筆者が注目した記事
・4月12日 日経朝刊9面「共和候補が代議員争奪」
・4月12日 時事通信「トランプ氏、党大会戦略で出遅れ」
・4月2日 日経朝刊6面「共和委員長、離党示唆の真意探る」

 その共和党がかつてない試練にさらされている。11月の大統領選に向けた候補指名争いが迷走し、分裂の瀬戸際に追い込まれかねない。

Hiroyuki Kotake

小竹洋之(こたけ・ひろゆき) 88年日本経済新聞社入社。経済部編集委員兼論説委員を経て、14年3月からワシントン支局長。専門はマクロ経済、財政・金融政策、国際金融。

 米CNNテレビによると、これまでの予備選や党員集会で確保した代議員は、不動産王のドナルド・トランプ氏が約760人、テッド・クルーズ上院議員が約540人、オハイオ州のジョン・ケーシック知事が約150人。首位を走るトランプ氏の代議員数が指名獲得に必要な過半数の1237人に届かず、7月に開く全国党大会の決選投票に持ち込まれる可能性が出てきた。

 全国党大会では過半数の代議員を獲得する候補が現れるまで、決選投票を繰り返す。1回目の投票は予備選や党員集会の結果に縛られるが、2回目以降は拘束が徐々に解けて自由度が増す。共和党の場合、決選投票に進んで1回で決着すれば1976年以来、2回以上続くようなら48年以来になるという。

 移民や女性に対する差別発言を繰り返し、孤立主義的な外交・安全保障政策や保護主義的な経済政策を唱えるトランプ氏。共和党の主流派は「このままでは多くの国民にそっぽを向かれ、大統領選の本選で民主党に敗れる」と懸念し、決選投票での逆転に望みをつなぐ。

候補者選びで2位に甘んじるクルーズ氏も決選投票に照準を合わせ、2回目以降に転向する代議員の取り込みに余念がない。これに憤慨するトランプ氏は「ねじ曲がった不正行為だ」「私の代議員が盗まれている」などと批判。全国党大会で指名を阻まれた場合は共和党を離党し、独立系の候補として本選に臨む考えをちらつかせる。

 トランプ氏が勝てば「反トランプ派」が収まらず、負ければ「親トランプ派」が離反する。共和党にとってはまさに分裂の危機だろう。

 経済格差の拡大や頻発するテロへの不満と、いっこうに問題を解決できない政治への憤り。「トランプ旋風」は、鬱屈した低中所得層の反乱であり、共和党自身が招いた混乱でもある。

■「政界再編のはじまりか」

statue of Lincoln

丸太小屋から大統領に登り詰めた偉人の共和党はどこへ…(米ケンタッキー州のリンカーン像)

 穏健な主流派と保守派の草の根運動「茶会」が不毛な抗争を繰り広げ、上下両院を制しているにもかかわらず党員が望む政策を実現できない。しかも「小さな政府」や「自由貿易」などの原則を振りかざすだけで、いまの低中所得層が抱える不満をくみ取ってはくれない――。共和党の理念や行動と党員の期待がこれほどかい離した時期はなかったようにみえる。

 「民主社会主義者」を自認するバーニー・サンダース上院議員が主流派のヒラリー・クリントン前国務長官を相手に予想以上に善戦している民主党も、程度の差こそあれ、同じ問題を抱える。「私たちが目にしているのは政界再編のはじまりなのかもしれない」。米コロンビア大のジャスティン・フィリップス准教授はこう指摘する。

 共和党は1860年の全国党大会で、3回の投票の末にリンカーンを大統領候補に指名し、党勢拡大につなげた。「リンカーンの党」は忍び寄る分裂の危機を乗り切れるのだろうか。

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4/19日経 The Economist『中国漁船、止まらぬ挑発』について

インドネシアのスシ海洋・水産相はサッチャーの「鉄の女」を髣髴させます。阿漕な中国漁船は爆破するに限ります。資源を強奪=強盗罪を構成しますので、二度とさせないためには漁船爆破が一番良い。インドネシアはモスリムの国家ですので、「目には目、歯には歯」というのが徹底しているのでしょう。「同害報復」です。「盗んだ手」の代わりに「盗んだ漁船」を跡形もなくしてしまうのは、抑止力としても有効と思われます。中国がこれで文句を言わないのは、「盗み」を正当化できないからでしょう。

法的には「国連海洋法条約(UNCLOS)第292条1項 締約国の当局が他の締約国を旗国とする船舶を抑留した場合において、合理的な保証金の支払又は合理的な他の金銭上の保証の提供の後に船舶及びその乗組員を速やかに釈放するというこの条約の規定を抑留した国が遵守しなかったと主張されているときは、釈放の問題については、紛争当事者が合意する裁判所に付託することができる。抑留の時から10日以内に紛争当事者が合意しない場合には、釈放の問題については、紛争当事者が別段の合意をしない限り、抑留した国が第287条の規定によって受け入れている裁判所又は国際海洋法裁判所(ITLOS)に付託することができる。」となっており、保証金を払って解決するようです。日本の尖閣での中国漁船の体当たり事件での釈放は法的には正しかったのかもしれませんが、その後赤珊瑚をごっそり盗まれましたことを考えますと、正しかったのかと。やはり、中国の圧力に屈してはならないという事です。中国は「尖閣」を中国の領土だと言い張り、また南シナ海も九段線内であるから中国の領海という論理を主張しています。それでも、インドネシアは外国漁船(主に中国漁船と思われる)170隻も爆破できるのですから。本記事にありますように人口2万人のパラオですら違法操業の中国船舶を射撃、船員一人を射殺しました。それが国際標準です。

日本は悪い奴に甘い世の中にしてしまった感があります。日弁連、日教組、偏向メデイ等左翼のせいでしょうが、国民も考えねば。大学の寮時代に勇気のない奴を蔑んで「このイ●ポ野郎」と呼んだのを思い出します。日本の男は皆「イ●ポ野郎」に成り下がったのか。

記事

それは抑止力としては無駄が多く、環境を汚染し、挑発的な手段ではあるが、インドネシア政府は極めて効果的な方法でもあると主張する。同国のスシ海洋・水産相は4月5日、インドネシア領海内で違法に操業したとして拿捕(だほ)したマレーシアとベトナムのトロール漁船計23隻が、木っ端みじんに爆破される様子を中継映像で見た。

ジョコ・ウィドド氏が2014年に大統領に就任し、地元の漁業権益を守ると約束して以来、インドネシアは170隻以上の外国船を破壊した。政府は密漁者の数が減り、国内漁業者による漁獲量が増えたとみている。

■違法操業の船押収、インドネシアが怒り

Susi Pudjiastuti

違法漁船の爆沈を待つスシ海洋・水産相(2015年2月、リアウ諸島州)=アンタラ通信

そして今、闘争的で(少なくとも国内では)人気のあるスシ海洋・水産相は、さらに10隻の漁船を破壊するのをインドネシア最高裁に認めてほしいと思っている。いずれも14年に密漁で押収した漁船。船籍は、どの国よりも多くの漁船がアジアの海で違法操業という巨大な成長ビジネスにかかわっている国、中国だ。

インドネシアはすでに、3月に起きた事件での中国の対応に怒りを募らせている。インドネシア当局がナトゥナ諸島沖で密漁していた中国漁船を拿捕し、港に曳航(えいこう)している最中に、中国海警局の監視船に漁船を奪還された一件だ。船員8人を拘束したが、別の1人が監視船に護衛され、漁船を中国南部の北海市の港まで戻してしまった。船員は米ニューヨーク・タイムズ紙に、自分たちがインドネシア領海で操業していたことは「あり得る」と語った。実際はほぼ確実だろう。

ナトゥナ諸島がインドネシアに帰属していることは誰もが認めており、中国の船員らは国際法で定められているナトゥナの排他的経済水域(EEZ)内にしっかり入っていた。それなのに中国は「伝統的な中国の漁場」海域にいたと主張し、船員を擁護した。問題の海域は、中国が南シナ海ほぼ全域に対する領有権を示すため、地図に(そしてパスポートにも)描く広大な「九段線」内に入っている。

中国の漁船員は日本、フィリピン、台湾、ベトナムでも拘束されている。いずれも海洋領有権の主張が中国のそれと重なるか、完全に重なっている国・地域だ。

■資源枯渇し遠洋に、政府は補助金で奨励

しかし、中国漁船が問題を起こすのは係争海域だけではない。中国人は近年、ロシア極東、北朝鮮、スリランカでも拘束されている。11年にはある中国船員が韓国の海洋警察隊員を刺殺した。翌年は太平洋に浮かぶ小さな共和国パラオで中国船員が警察に殺された。昨年12月には、20カ国以上のアフリカ諸国が中国に西アフリカ沖での違法操業をやめるよう要請した。そして4月中旬には、アルゼンチンで拘束されていた中国船員4人が釈放されたばかりだ。

中国の船員がこうした遠隔地に出て行ってまでリスクを冒す背景には、国家主権の問題以上に、同国がなんといっても世界最大の魚の消費国(かつ輸出国)だという事実がある。中国人1人当たりの魚の消費量は世界平均の2倍だ。需要増の大部分を水産養殖で賄ってきたが、漁獲量も圧倒的だ(12年は1390万トンで、インドネシアの540万トン、米国の510万トン、日本の360万トン、インドの330万トンを大きく上回る)。

しかし、乱獲と汚染で中国の沿岸漁業は死に体になった。漁業資源の枯渇ぶりは深刻で、世界の漁獲量の1割を占める南シナ海の沿岸漁場には、今や1950年代当時の5~30%しか残っていない。中国の漁業者はさらに沖合の遠洋へと追いやられているのだ。

中国政府がこの動きを後押ししている。食糧安全保障は優先事項であるうえ、漁業を雇用の源泉と見ているからだ(漁業の雇用者数は1400万人に達する)。習近平国家主席は2013年に中国南部の海南島の漁港、潭門を訪れ、漁業者に「もっと大きな船を造り、もっと遠くの海へ出て、もっと大きい魚を取る」よう奨励した。政府は新しい船や燃料、航行補助設備に補助金を出している。

だからといって、必ずしも漁業者が拡張主義的政策の道具になるわけではない。実際、政府は時折、中国の漁業者をコントロールするのに苦労しており、その軽率な行為にメンツをつぶされてきた。

シンガポールのシンクタンク、RSISの研究員、張宏洲氏はマリーン・ポリシー誌に寄せた「係争海域における中国人漁業者」に関する最近の論文で、潭門など中国の漁港の視察結果を報告している。潭門では多くの漁業者が習主席の激励に従うのではなく、違法だがもうかる商売に手を出していたという。保護の対象になっている絶滅危惧種のカメやオオジャコガイを捕獲していたのだ。

■常習的な海域の侵入、既成事実化が目的

それでも漁業は、戦略的な目的にもなり得る。中国が大量の資金を投入し、南シナ海の岩礁で人工島を建設しているように、係争海域に多数の中国船が常習的に存在すると、それが既成事実化し、争うのが難しくなる。同時に、中国には伝統的に領有権があるという概念を裏付けることにもなる。

実際、領有権の主張を強めるために漁業者が利用されている。1974年、武装したトロール漁船の船団が中国の前衛部隊として活動し、当時の南ベトナム政府から西沙(英語名パラセル)諸島の南部の島々を奪った。南シナ海の別の場所からフィリピンを追い出す際にも似たような作戦を用い、成功した。95年のミスチーフ(中国名・美済)礁、2012年のスカボロー礁(同・黄岩島)だ。

密漁や係争海域での操業に国としてのお墨付きを与えるのは危険だ。東シナ海の無人島、尖閣諸島を巡り、日本との間に緊張が劇的に高まった一件は、10年9月にさかのぼる。違法操業で捕まった中国のトロール漁船が、日本の海上保安庁の巡視船に衝突したのだ。

海の軍事化が進むにつれ、衝突のリスクは高まる。従来、中国海軍はまれにしか関与してこなかったが、一部の中国漁港は「海上民兵」(武装した民間船)を増やしている。中国や他国の沿岸警備隊も武装を強化しつつある。

ナトゥナでの中国の挑発行為を受け、インドネシア政府は海兵隊、特殊部隊、1個大隊、フリゲート艦3隻、新型レーダーシステム、ドローン(無人機)、それにF16戦闘機5機を派遣する方針だ。だが、中国と漁業者が一段と遠方へ網を放つのは、恐らく止められないだろう。

(c)2016 The Economist Newspaper Limited Apr. 16, 2016 All rights reserved.

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