3/29日経ビジネスオンライン 高濱賛『トランプの外交ブレーンに知日派おらず クルーズ陣営には「ネオコン」が結集』について

トランプが大統領になれば、ゴルバチョフのように米国の世界覇権は崩壊すると言うのが北野幸伯氏の見立てです。勿論トランプの今の発言通りの政策展開をすればという前提ですが。ルトワックが言うようにレーガンの前例もありますから、トランプが大統領になれば現実主義に転換する可能性も勿論あります。

http://archives.mag2.com/0000012950/20160329000000000.html

トランプはモンローイズムを徹底させ、内向きになるのでしょうか?モンローは米大陸への欧州の不当な干渉には徹底的に戦うとしましたが、後には米大陸の西漸金運動に繋がりました。先人たちが営々と築いてきた利権を簡単に放棄することは考えにくい。でも今のスタッフはアジアを知っている人が少ないという事で不安です。また露骨な人種差別が見え、日本人は日系人の強制収容所送りをしたFDRとイメージがダブります。如何に大化けするとしても・・・・。ただ中国から金を貰っていたヒラリーを大統領にするならトランプの方がマシかと。

ジェブ・ブッシュはクルーズを応援とのこと。ネオコンがスタッフと言うのがチト気になりますが。ネオコンは元々のルーツは左翼リベラルなので。でも対中強硬派なので、彼が現時点では一番良いかと。ブッシュ(息子)やレーガンの時のスタッフが多いと言うので。

ヒラリーのスタッフは知日派が多いと言ってもキャンベルを筆頭に日本弱体派です。ビンの蓋論で自主防衛させないと考えている連中です。中国よりも日本を心の中で敵視していると思われます。民主党は日本の旧民主党同様、碌でもありません。

記事

Cruz's staff

—アリゾナとユタの西部2州の予備選、党員集会ではドナルド・トランプ氏とテッド・クルーズ上院議員とが星を分け合いました。

クルーズ氏の外交ブレーンにはネオコンの面々が名を連ねる(写真:AP/アフロ)

高濱:アリゾナ州は得票率1位の候補が全ての代議員を獲得する「勝者総取り」でしたからトランプ氏は58人を全部取りました。これで獲得代議員数は739人。指名に必要な代議員数は1237人ですからあと498人です。(3月22日現在)

 一方ユタ州は「比例配分」です。しかし、今回から1位の得票率が50%を超えた場合には、「総取り」する例外規定が導入されたため、クルーズ氏が代議員40人を制しました。これで獲得代議員数は465人となりました。 (”Live March 22 Election results,” Lily Mihalik, Los Angeles Times, 3/22/2016)

 すでに予備選から撤退した保守穏健派のジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が23日、クルーズ氏を支持すると公言しました。同氏は共和党保守本流から圧倒的な支持を得て、いわゆるスーパー代議員数を一時は最も多く確保していた。ブッシュ氏がクルーズ氏についたことで、ブッシュ氏の「指名推薦人」がクルーズ氏に大量に流れることが予想されます。「ストップ・ザ・トランプ」の動きに拍車がかかる可能性があるわけです。

予備選をベルギー連続爆破テロが直撃

—ところで22日の予備選の最中に外交面でいくつもの大事件がありました――オバマ大統領の歴史的なキューバ訪問、ベルギーでの連続テロ、北朝鮮のミサイル実験。各候補者はこうした国際情勢にどう反応したのでしょうか。

高濱:これまで予備選では景気や雇用問題、それに不法移民問題など米国民にとって身近な事案が焦点でした。ところがここにきて米国民にも関わり合いのある国際的な出来事が相次いで起こりました。

 ベルギーの連続爆破テロは、すでに過激派組織「イスラム国」(IS= Islamic State)が犯行声明を出しており、ISへの対応をめぐって各候補が発言しています。

 トランプ氏はISのテロについて、「拘束したテロ容疑者から情報を得るために水責めなどの厳しい尋問をするべきだ」と発言しました。これに対し、マイケル・ヘイデン元CIA(中央情報局)長官が反論すると、「三軍の最高司令官が命じたら軍は従うべきだ」と制した。しかし、「拷問」が国際法(国連拷問等禁止条約=1987年採択)に違反していることを指摘されると、渋々撤回しました。

 ベルギーの連続爆破テロが起こると、「(法が許すなら)水責め以上のことをやる。(テロリスト容疑者から)情報を引き出す必要がある」と言い出しました。朝令暮改の繰り返し、です。

 民主党の指名を狙うヒラリー・クリントン候補は、さすが国務長官を経験しているだけに「水責めのような拷問に頼るべきではない。テロとの戦いは他の同盟国と一致協力して行うべきだ」とトランプ氏を批判しています。

 米主要シンクタンクの上級研究員の一人は筆者にこうコメントしました。「予備選の最中に大きな外交事案が出てくるのは良いことだ。各候補者のステーツマンとしての力量が白日の下にさらされるからだ。このトランプという男の発言は、外交が未経験であるというだけではない。何か大事件があるとすぐ感情的に反応する一般大衆を代弁している、いや、彼自身がその一般大衆の典型的な一人にすぎない」。

—共和党の保守強硬派のクルーズ氏はどのような反応を示していますか。

高濱:クルーズ氏は「もし自分の住んでいる街に(イスラム過激派分子のような)不穏な行動をとる可能性が大きいグループがいるなら、治安当局による監視を一層強めるべきだ」と述べています。これはイスラム教徒が密集して住んでいる地域に対する警察の監視・警戒態勢を強化することを意味しています。具体的には電話・インターネットの盗聴から警官による24時間パトロール体制を考えているようです。

 これに対しオバマ大統領は、訪問先のアルゼンチンで記者会見し、「こうした提案(クルーズ氏の提案)は間違いであり非米国的だ。米国が行ってきたイスラム教過激派対策を弱体化させるだけだ」と激しく批判しています。

 クリントン氏も23日、スタンフォード大学で行った演説で、イスラム教徒密集地域で監視・警戒態勢を強化することに真っ向から反対しました。返す刀でトランプ氏が主張しているイスラム教徒の米国入国禁止案や「水責め」実施に反対し、「口先のレトリックで我々の共有する価値や安全を強化することはできない」とトランプ、クルーズ両氏の主張を退けています。

 テロ対策をめぐる民主、共和両党の意見の食い違いは、本選挙での一つの大きな争点になりそうです。 (”Clinton at Stanford: Global alliances key to ending terrorism,” Clifton B. Parker, Stanford News, 3/23/2016)

 指名に向けて一歩一歩前進しているクリントン氏は、ここにきて、対抗馬のバーニー・サンダース上院議員との論争ではなく、本選挙をにらんだ方向に戦術転換を図っています。

キューバとの関係改善支持するトランプ

—オバマ大統領のキューバ政策について各候補はどのような反応を示していますか。

高濱:クリントン氏は08年の大統領選では対キューバ禁輸解除に反対の姿勢をとっていました。しかしその後「禁輸は目的達成には役立たない」との理由から賛成に回りました。

 今回は「共和党の対キューバ政策は、この国を冷戦のレンズで見ているようなものだ。対キューバ禁輸は今直ちに解除すべきだ」と主張しています。

 そして「もし私が大統領になった時に米議会が禁輸解除に反対していたら、私は大統領令を発動して解除する」とまで言い切っています。

 トランプ氏は対キューバ関係を改善することに賛成です。ただキューバの人権抑圧政策を厳しく批判しており、「関係改善はいいことだが、私ならオバマ大統領よりももっといい取引をしただろう」と述べています。

 オバマ大統領の今回のキューバ訪問は大々的に報道されているものの、政治体制や人権をめぐる首脳同士の違いを埋めるに至っていません。国交正常化も時間をかけてやるということで画期的な成果があったわけではありません。オバマ大統領は米議会に対して対キューバ禁輸の解除を求めることになりますが、大統領選後の民主、共和両党の対決懸案の一つになることは必至です。

 キューバとの関係改善について共和党内にはいろいろ議論があります。真っ向から反対しているのは、トランプ氏を急追しているクルーズ氏です。父がキューバ移民で反カストロ派です。

 クルーズ氏の主張は単純明快です。「オバマ大統領のアプローチはカストロが望んでいる経済援助と国際社会での合法性をくれてやるようなものだ。カストロと交渉するときには反カストロ派を参加させるべきだ。禁輸解除は人権抑圧を完全にやめさせるが前提となる」。 (”Cuba: Campaign 2016, The Candidates & the World,” Council on Foreign Relations, 2016)

クルーズは徹底した反中・嫌中

—今月31日には習近平・国家主席が核サミット出席のため、ワシントンを訪れます。各候補者たちの対中姿勢はどのようなものでしょうか。

高濱:クリントン氏は第1期オバマ政権の国務長官として、対中交渉を第一線で担った経験がありますから、今のオバマ対中外交をそのまま継承するでしょう。つまり「米中関係は友でもなければライバルでもない。対北朝鮮問題から温暖化まで国際的なチャレンジを克服するために不可欠な関係」との位置づけです。そのために相互信頼と協力精神を引き続き保たねばならないと考えています。

 むろん中国の軍事力増強、南シナ海・東シナ海における海洋権益拡大や軍事進出、さらには中国国内で行われている人権抑圧には厳しい姿勢を終始とっています。

 中国に対して最も強硬なのはクルーズ氏です。とくに中国の軍事力増強を警戒しており、台湾にF16戦闘機を供与するようオバマ政権に強く要求しました。また中国のサイバー攻撃に対するオバマ政権の対応を批判し続けています。

 クルーズ氏はレーガン政権の「力による平和」という対ソ連政策を高く評価し、「この方式を対中にも適用すべきだ」と主張しています。

 15年10月、習近平国家主席が訪米した際には、「在ワシントン中国大使館前の広場を『劉暁波広場』と命名しようではないか」と他の上院議員に呼びかけたりしました。劉暁波・元北京師範大学講師はノーベル平和賞を受賞した人権活動家。クルーズ氏は、中国政府が同氏を投獄したことに抗議したのです。

トランプは日中の為替操作を批判

—北朝鮮のミサイル実験についてはどうですか。

高濱:各候補者は北朝鮮による挑発行為を厳しく批判しています。しかしながら、クリントン氏がより一層厳しい経済制裁措置をとるよう提案している以外、他の候補の発言に具体的なものはありません。

 トランプ氏は「北朝鮮をコントロールしているのは中国だ。北朝鮮は中国なしには飯も食えない。北朝鮮の行動をやめさせるのは中国の責任だ」と批判。クルーズ氏は「北朝鮮に核武装させたのはオバマ政権だ。クリントンとオバマは対北朝鮮外交で過去に何度も失敗をおかしてきた」とこき下ろしています。

トランプの時代錯誤な対日批判に米識者も辟易

—対日政策ではトランプ氏が抜きんでて強い対日批判を繰り返しているようですね。

高濱:その通りです。トランプ氏の対日批判について米ニューヨーク・タイムズ(3月7日付)が「トランプ、80年代の対日通商の長広舌を持ち出して日本を手ひどく批判」という見出しで報じています。 (”Donald Trump Laces Into Japan With a Trade Tirade From the ’80s,” Jonathan Soble and Keith Bradsher, New York Times, 3/7/2016)

 記事は、米通商代表部(USTR)の副代表だったグレン・フクシマ氏の次の発言を引用しています。「トランプ氏の対日発言は70年代後半から90年代中葉、卓越した米国の経済力を脅かすライバルと日本が見られた時期を思い出させる。日本経済が20年にわたる不況に見舞われたにもかかわらず、米国の雇用を掠め取る経済的ライバルとしてよみがえっていると考えていること自体、興味深い」。

 トランプ氏は日米安保体制の在り方についても「もし日本が敵に攻撃されたら米軍は応援にいくのに、米国が攻撃されたときに日本は支援しない、というのは片務的だ」と言い出しています。さらに、中東から日本に原油を輸送するタンカーを守っているのは米軍だとして「そのカネは日本が払うべきだ」とも言っています。

 まさに70年代から80年代に米国を席巻した「ジャパン・バッシング」(日本叩き)を21世紀中葉になって持ち出しているわけです。

 たまりかねたゼーリック前世銀総裁など100人の共和党系外交・安全保障問題専門家が3月3日に共同書簡を発表して、「トランプ氏の日本へ対する防衛対価要求はゆすり以外の何物でもない」と厳しくいさめています。

 トランプ氏の時代錯誤な対日批判に共和党系の学識経験者も辟易としているのです。

—なぜ、トランプ氏はこんな発言をするのでしょうか。

高濱:トランプ氏は日米安保体制や通商問題について詳しいわけではありません。

 不動産ビジネスの経営者として耳にしたことやビジネス関係者たちとの話しの中で出てきた「対日不満」をストレートにぶちまけているだけです。それを、中学生でもわかるような表現でアジ演説するので、愛国心に燃えた比較的教育程度の低い一般大衆には受けるわけです。

 大統領になったときに日米同盟関係をどう堅持、強化していくのか、といったステーツマンとしての自覚など今の段階ではないということなのでしょう。

 しかしトランプ氏もやっと外交ブレーンを集めたようですから、今後はもっと冷静で理路整然とした対日政策を打ち出すことを期待したいところです。

トランプ外交ブレーンはテロやエネルギーの専門家

—外交・安全保障、通商問題が予備選中盤に入ってにわかにクローズアップされてきました。各候補者にアドバイスしているブレーンにはどんな人たちがいますか。

高濱:トランプ氏の外交ブレーンを総括しているのはアラバマ州選出のジェフ・セッションズ上院議員です。

 外交チームのメンバーは、まずレバノン生まれで米国に帰化したウォリッド・ファレス博士。反イスラム教でキリスト教信者です。それから米メリルリンチのパートナー、カーター・ページ氏。石油エネルギーの専門家、ジョージ・パパドポウリス氏。元国務省査察官のジョー・シュミット氏、それからケネス・ケロッグ米空軍退役中将らです。

 対日、対アジア政策の専門家は今のところ見当たりません。 (”Donald Trump names foreign policy advisors,” Philip Rucker and Robert Costa, the Washington Post, 3/2/2016)

クルーズ陣営には「イラン・コントラ事件」関係者が復活

 クルーズ氏の外交ブレーンは、レーガン政権やジョージ・W・ブッシュ政権で外交安保政策を担当したネオコン(新保守主義派)のメンバーが名を連ねます。徹底したイスラム教嫌い、オバマ嫌いの保守強硬派の人たちです。

 超保守派シンクタンクの米センター・フォア・セキュリティ・ポリシーを創設したフランク・ガフニー氏がその中心。さらに、エリオット・アブラムス外交問題評議会研究員、フレッド・フレイツ元CIA分析官、アンドリュー・マッカーシー「センター・フォア・ロー&カウンターテロリズム」理事長たちが名を連ねます。

 アブラムス氏は、レーガン政権の時、イラン・コントラ事件に直接関与した人物の一人です。イラン・コントラ事件とは、国家安全保障会議(NSC)がイランに対し、85年夏から86年秋にかけてイスラエル経由で対戦車ミサイルや対空ミサイルを秘密裏に輸出し、その代金の一部をニカラグアの反政府右派ゲリラ「コントラ」への援助に流用していた事件です。米国は当時、イランを「テロ支援国家」リストに載せており、武器の輸出は法的に禁じられていました。この事件は、高い人気を誇ったレーガン大統領の統治能力の欠如を浮き彫りにしたものでした。 (”Here Are Five of Ted Cruz’s Most Fanatical Foreign Policy Advisors,” Sara Lazare, Alternet, 3/17/2016)

クリントンは東アジア政策にキャンベル元国務次官補

—国務長官を務めたクリントン氏の外交チームは、大統領候補者の中では一番規模が大きく、充実しているそうですね。

高濱:その通りです。総括者はオバマ政権で国家安全保障担当大統領副補佐官を務めたジェイク・サリバン元プリンストン大学教授です。ヒラリー・クリントン大統領が誕生すれば、国家安全保障担当大統領補佐官になると噂されています。

 同氏を軸にシニア・グループがあり、そのメンバーはレオン・パネッタ元国防長官、トム・デニロン元国家安全保障担当大統領補佐官、ミシェル・フロノイ元国防次官(政策担当)、マデレーン・オルブライト元国務長官たちです。

 その下に、国・地域別、政策別などに分かれたサブ・ブループがあります。アジア、欧州、中東などから人権問題、テロ、サイバーなど、国務省さながらに細分化されています。

 対日、対中政策ではクリントン国務長官の下でアジア政策を取り仕切ったカート・キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)が控えています。ということはクリントン政権の東アジア政策はオバマ政権を踏襲することを意味しますね。

 関係者の一人は筆者に「サブ・グループは現在進行形のベトナム選挙からベルギーの連続テロまで最新情報を入手して分析している。その結果がクリントン候補の演説や記者会見にも反映している」と指摘しました。

 一方、対抗馬であるサンダース候補の外交ブレーンには、ローレンス・コーブ氏やレイ・テケイ博士らが名を連ねています。コーブ氏は、リベラル派シンクタンクの「センター・フォア・アメリカン・プログレス」の研究者。テケイ博士は、外交問題評議会に籍を置く、イラン系米国人の中東専門家です。

 クリントン氏の外交チームに比べると規模的にも質的にもちょっと見劣りがします。 (”Inside Hillary Clinton’s Massive Foreign-Policy Brain Trust,” John Hudson, Foreign Policy, 2/10/2016)

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