3/2日経ビジネスオンライン 福島香織『「過去20年で最も厳しい北朝鮮制裁」の意味 真の争点は、米中「アジア争奪」の駆け引き』について

米中主導で北への制裁がまとまりかけましたが、土壇場でロシアのクレームがつき、安保理採択は日本時間3時未明となりました。米中だけで決めさせはしないというロシアの思惑でしょう。中国が本気になって制裁すれば、金王朝はすぐにでも倒れるでしょう。やはり中国にとって、バッファーゾーンは必要だし、金正男に首を挿げ替えても北の人民が従うかどうか不明で、リスクは冒せないと思っているのでは。

韓国の二股外交を逆手に取って、米中が北のみならず、韓国をも懲らしめている構図にも見えます。蝙蝠国民は相応の報いを受けるべしと。韓国は米中を手玉に取った気でいましたがTHHADで手痛いしっぺ返しを受けた形です。その内、戦時作戦統制権も韓国に返還するかもしれません。一気に駐韓米軍撤退はないでしょうけど。朴大統領は益々苦しくなりました。昨年末の日本との慰安婦合意に続いて、THHAD配備検討に米国が梯子を外そうとしているのですから。桂・タフト協定、アチソン声明に続く朝鮮半島切り捨てに繋がるかも知れません。米中で宗主国の言うことを聞かない北と南の扱いを裏で決めている可能性もあります。

北の6者協議復帰は、核とミサイル開発の時間の利益を北に与えるだけです。米国も中国も北の封じ込めはできないと思っているはずです。拉致被害者の帰国については今度の制裁でも難しいでしょう。日本が北と交渉して、単独で制裁緩和は出来ないでしょうから。軍事作戦でしか救出は出来ないでしょう。ただどこにいるか分からないのでは作戦は展開できません。拉致被害者は戦後憲法の犠牲者です。左翼・在日が憲法擁護をして政府の改憲の動きを制約してきました。自分の子供たちが拉致され、取り戻せない現状について想像できないアホな似非学者・似非ジャーナリストが多すぎます。国民も拉致を自分のこととして考えてほしい。問題解決について根本的な部分で考えないと。

中国が一番恐れているのは本記事にありますように、アジア版NATOを作られることです。中国の嫌がることをすることが世界平和のためには必要です。中国の軍事膨張を防ぐためには、封じ込めが必要です。合従連衡策として、日米豪印比越でまずATO(Asian Treaty Organization)を作り、後にその他のASEAN諸国を巻き込むようにすれば良いと思います。

記事

Wang Yi VS Kerry

ワシントンで開催された米中外相会談。「北朝鮮制裁」の裏側で「アジア争奪戦」の駆け引きが続く。(写真:ロイター/アフロ)

 北朝鮮の核実験に対する国連制裁決議をあれほど渋っていた中国が一転、同意した。王毅外相が2月23日から25日に訪米し、ケリー国務長官らと会談、制裁案について合意に至った。報道によれば、50日に及ぶ長期交渉の結果という。ロシアは「検討に時間が必要」と言っているので、採決にはまだ時間がかかるかもしれないが、中国はすでに金融機関が対北朝鮮業務をストップしているという報道もあり、すでに独自制裁に踏み切っているもようだ。中国はなぜ、態度をここにきて変えてきたのだろう。

本気でやれば体制維持に影響も…

 米国が国連安保理に提出した北朝鮮決議草案は、過去20年の中で最も厳しい制裁だと言われている。禁輸措置は石炭、鉄鉱石、金、レアアースなど鉱物資源全般に及び、これらは北朝鮮の対外輸出総額の40%を占める。また、北朝鮮への航空燃料、小型兵器、軽武器などの輸出も全面禁止。同時に制裁参加国国内の銀行における金融資産の凍結を行い、北朝鮮への出国も禁止。北朝鮮を行き来する船舶はすべて厳格な審査を受け、制裁措置の履行を保証する。高麗航空機の国連加盟国領空の飛行も禁止する。また、北朝鮮の非合法活動を行う外交人員の退去も行う。例えば北朝鮮国家宇宙開発局など約30の組織および個人が制裁対象としてブラックリスト入りしている。

 北朝鮮を除く国連加盟国192か国にこれを履行する義務が課され、もし本気でやれば、北朝鮮の核兵器開発を阻止するどころか、その体制維持にすら影響するのではないか、というレベルだ。

 中国は当初、国連の対北朝鮮決議に対してなかなか賛同を示さなかった。核実験直後、米国などが国連による制裁の声を上げた時は、中国は「当面の急務は関係国が共同の努力でもって、北朝鮮を対話のテーブルに再びつかせることだ」と、制裁についての直接の言及を避けた。1月15日の段階で、「安保理が北朝鮮にそれなりの代償を求めることは支持するが、北朝鮮を崖っぷちに追い込むことには賛成しない。対話のテーブルに引き戻さねばならない」との立場だった。ミサイル実験が行われる前の2月初めまでは、強すぎる制裁は北朝鮮の不安定化を招く、として慎重に制裁内容を調整するように働きかけていた。

 その理由は、建前上は正常な中朝関係を損なう、あるいは民生を損なう制裁は人道的にも望まない、というものだったが、本音のところは、中国で報道されている専門家の見解を総合すると、

①国連の枠組みの中で制裁に参加するよりも、中国が独自のハンドリングで北朝鮮をコントロールしたいという思惑があった。 ②北朝鮮の核実験への対応よりも、国内の軍制改革や南シナ海の軍事拠点化を優先させたかった。 ③内心は北朝鮮に対し腹を据えかねていたが、北朝鮮のロシアへの急接近を警戒しており、いそいそと制裁に参加する態度を北朝鮮に見せたくなかった。 ④韓国との緩衝地帯でもある北朝鮮の体制維持は中国にとって必要不可欠であり、体制を弱体化あるいは崩壊させるレベルの制裁には参加したくなかった。 ⑤北朝鮮が不安定化して大量の難民が押し寄せてくることなどを警戒している。 …といったところだろう。

 それが、なぜ急に、このような厳しい制裁に同意するよう、態度を変えることになったのだろうか。これは中国の妥協なのだろうか。

THAAD延期と制裁同意の“取り引き”

 独立系華字ネットメディア・多維は、その理由を次のように報じている。多維はもともと米国に本部のあった反共産党的な報道が特徴であったが、近年はかなり北京の立場に近い報道を行うようになっている。

①制裁決議草案は、対外情報工作を担う朝鮮人民軍偵察総局、核・ミサイル開発を担う原子力工業省、国家宇宙開発局を対象に絞ったものである。中国の「民生を損なうことは人道主義にもとる」という建前の理由は必要なくなった。

②米国と韓国が韓国にTHAADミサイルシステムを配備しようとしたことが、中国の妥協を促した。中国はこれに一貫して反対しており、米韓のTHAAD配備規約締結の延期が発表されたのは、中国が対北朝鮮制裁に合意したことへの米国からの見返りだった。

③中国側は、安保理決議では、半島の核問題は解決しないとしている。最終的には対話のテーブルに戻って北朝鮮と米国の和平協議にもっていくしかない。制裁によって北朝鮮の現体制を崩壊させないこと、また米国側も、先に核放棄しなければ対話もしないという姿勢を軟化する、という感触を得たので妥協した。

 一方、中央ラジオの報道では、これは中国の妥協ではなく、高明なる策略であり、妥協しているのは米国の方だ、と報じている。

 「韓国は、北朝鮮の核実験を口実に、THAADミサイルシステムの配備を画策していた。…これは米国がアジア版NATOをつくろうとしているということではないか?」  「中米の北朝鮮に対する姿勢はもともと明らかな違いがあった。米国は『極めて厳しい制裁』を行おうとし、それを口実に『中国は北朝鮮をかばっている』というロジックでもって、中国を米国の原則に従わせようとしていた。米国は、北朝鮮を崩壊させるまでの制裁に中国を参加させようとしていた。これは中国の国家利益には全く合致しない。中国にとって、制裁は北朝鮮を崩壊させることが目的ではなく、話し合いのテーブルに回帰させることが目的である。中国は最後までこの国家利益のボトムラインを守り抜いた」  「北朝鮮の両弾(原爆と水爆)の軽挙が脅威か、それとも米韓の北朝鮮体制崩壊戦略やTHAAD配備が脅威か」  「王毅は半島の非核化と和平協議の推進を並行して行う考えを提示している。(今回の合意は)その具体的ステップ、プロセスを含めた話し合いである」

Xバンドレーダーによる封じ込めに危機感

 こうした報道を見てみると、中国にとっての脅威は、北朝鮮が核兵器を持つこと以上に、北朝鮮の崩壊であり、米国によるTHAADミサイル配備に象徴される“アジア版NATO作り”である。THAADは最大射程200キロ、ミサイルの探知、追跡、迎撃誘導を行うXバンドレーダーの探知距離は1000キロ以上という、イージス艦もびっくりの性能であり、これが韓国に導入されれば、北京もばっちりレーダー探知範囲に収まってしまう。

 北朝鮮の一発や二発の核兵器は1000発の核弾頭を保有する中国にとってさほど脅威ではないが、THAADのXバンドレーダーで中国のミサイルが封じ込められるのは、明らかに脅威であろう。さらに言えば、中国当局は日本が核兵器を持つと言い出すことを非常に警戒している。世界から孤立する極貧小国が持つ核兵器と、米国の同盟国、世界第三の経済大国の日本が持つ核兵器とは意味が違う。中国に対して、朝鮮戦争の血で固めた友誼を忘れ、嫌がらせのように核実験やミサイル発射を行う北朝鮮は、腹立たしい存在だが、喫緊の脅威ではないのだ。

 そして、中国は核保有の大国論理で、米国も北朝鮮の核兵器など本気で脅威とは思っていないはずだと考えている。米国がかくも北朝鮮の核の脅威を強く言うのは、それを口実に、アジアにTHAADを持ち込み、アジアのNATO作りを進めようとしているからだと警戒している。

 中国が目下、南シナ海の軍事化を急ピッチで進めていることからもわかるように、今、アジアにおいては、米中の軍事的陣取り合戦の真っ最中なのである。中国は南シナ海で軍事拠点化を進め、米国は極東で日米韓軍事同盟の強化を進めている。中国の立場からいえば、南シナ海を軍事問題化しているのは米国の方で、韓国のTHAAD配備問題以前から、米国が中国の南シナ海での脅威を煽るのは、アジアにおけるTHAAD配備の口実にするつもりだという警戒論もある。

本質は「北朝鮮の核問題」にあらず

 中国の立場から今回の件を見ると、問題の本質は「北朝鮮の核問題」ではなく、米中のアジアの軍事化競争における駆け引きであり、今後の展開も、アジアにおける米中対立のシナリオから見た方が分かりやすい。中国側がこれは妥協ではなく、策略だと言っているのが本音であれば、この合意によって中国の方が、アジアの軍事化のコマをより多く進めることができるだろう。実際、王毅とケリーの会談では、南シナ海における中国のミサイル紅旗9配備問題もテーマになったはずだが、こちらの話し合いは平行線に終わったようだ。このまま、南シナ海のミサイル配備やレーダー配備を恒常化し、最終的には防空識別圏の宣言まで行っても、米国は文句を盛大に言うぐらいで、具体的に対中関係を先鋭化させるようなアクションは起こさないかもしれない。

 さらに言えば、北朝鮮の“極めて厳しい制裁”によって北朝鮮が核開発を断念する、という結果を本気で期待しているのは、実際のところ日本ぐらいではないだろうか。繰り返すが、中国にとっては、制裁に効果があるかないかよりも、北朝鮮の核問題を口実とした米国のアジア軍事進出をいかに抑え、そして自らの南シナ海での軍事進出を有利に進めるかの駆け引きの方が重要なのだ。少々、北朝鮮に苦しい思いをさせて、今までの中国に対する舐めた真似を反省させれば、十分であり、北朝鮮の体制崩壊など望んでいない。国連の制裁により、北朝鮮の体制が崩壊すれば、その核兵器の安全を確保するために米軍などが北朝鮮内に派遣される可能性があるが、それは中国としては絶対避けたいシナリオだ。

 とすると、今回の極めて厳しい制裁も、中国として、北朝鮮の体制維持に影響するようなレベルにいかないように、かなり短期間で終わらせたい目算があるのではないか。

 中国は、北朝鮮が対話のテーブルに着くことに同意した時点で制裁をやめるだろうが、その対話のテーブルに着く条件は、米国がもともと主張していた、先に北朝鮮が核開発放棄してからというものではなく、王毅外相の主張する核廃棄と和平協議の同時進行となる可能性が高い。これでは、かつての六か国協議と同じで、北朝鮮に核開発を断念させるどころか、むしろ北朝鮮の核保有準備に時間的猶予を与える結果になろう。

 ちなみに制裁は北朝鮮の党大会が開かれる5月の前に解除されるのではないか、というのが中朝国境で貿易に携わる関係者らの感触である。正式に解除が発表されなくとも、「上に政策あれば下に対策あり」の中国で、中朝国境貿易の現場にはいくらでも抜け道は作れるだろう。もともと密貿易の多い地域である。国境守備の辺境の解放軍幹部がレアアース密貿易に加担していることも多く、北朝鮮の鉱山利権を中国側が握っている例も少なくない。軍制改革はそういった北朝鮮利権と癒着している将校を一掃する目的もあるとは思われるが、朝鮮族の解放軍将校らが遠い北京への忠誠よりも近くの北朝鮮利権の方を重視する傾向はそう簡単には是正されまい。

アジアのNATO化と南シナ海軍事拠点化の間で

 そもそも、中国も「ズボンをはかなくても核兵器を作って見せる」と言って、大躍進と右派運動と大飢饉で人民が飢えている最中に核実験を成功させた国である。そして核兵器を持ったからこそ、国際社会で承認され、今、米国とほぼ互角に渡り合える大国になった歴史がある。少々の経済制裁で開発を断念するはずがないと中国も自分たちの経験に照らしてみればわかっているだろう。

 こうした背景を考えれば、過去20年で一番厳しい制裁というのも、中国が本気で北朝鮮の制裁に参加するというのも、建前の新聞見出しであり、日本は制裁の効果に余り期待しすぎると、がっかりする結果になるかもしれない。それよりも、北朝鮮が核兵器を保有し、米国よる“アジアのNATO化”vs 中国による“南シナ海の軍事拠点化”という陣取り合戦が今後激化するという過程で、日本は自国の領土の主権と安全を守る具体的方策を練り直す必要があるだろう。