11/2日経ビジネスオンライン 倉都康行『中国が歩む「平凡な新興国」への道 外貨準備高と失業率にも「??」』について

中国の発表する数字は全部当てにならないという事です。GDP然り、外貨準備高も失業率もです。GDP、外貨準備高は前に述べてきましたので失業率について見てみたいと思います。共産主義国で失業の概念がある事自体論理矛盾ではないかという気がします。格差の存在も本来であれば資本主義国と違ってあってはならないことです。鄧小平が白・黒猫の例で「先富論」を出し、「中国の特色ある社会主義」を標榜した時から、経済は資本主義、政治は一党独裁の共産主義と都合の良いシステムにしてきました。2001年にはWTOに加盟し、そこから日米欧の支援もあって経済発展を遂げてきました。ただ、中国お得意の人海戦術で生産すればいくら賃金が安くても、生産性は上がりません。それで改革開放以降、下崗(自宅待機)で失業を見かけ上、低いようにしてきました。土地を国に強制収用されて都会に出て来ても、知識がないため流民になるしかない人達を入れれば2桁の失業率は間違いないと思います。石平氏の本にも『暴走を始めた中国2億6000万人の現代流民』とありますから。景気が良ければ農民工として雇われるでしょうけど、不動産投資が減っている状況では建設労働者として雇われるのも難しいでしょう。

中国の経済政策は金融緩和政策を取るのか引締策を取るのか行き当たりばったりです。目先の問題解決を優先するため弥縫策の連続です。宮崎正弘氏は中国経済の実力からして人民元は30%の下げまで行くだろうと予測しています。そうなると、キャピタルフライトが起こり、外貨準備高も1兆$なんてすぐに底をつくのでは。IMFの人民元SDR入りが決まったような報道が多いですが、自由な資本取引から程遠い人民元を国際通貨として信認することが世界の平和にプラスになるかどうかよく考えた方が良いでしょう。欧州勢は日米に代わり中国を支援しているように見えますが、彼らの人権という理念に目を瞑り、金儲けに走って、平和について余り考えていない気がします。

本記事では、金融緩和(30%まで元が下がるかどうか別として)したら格差が広がり、社会不安のリスクが高まるという意見ですが、共産党はいざとなれば天安門同様躊躇せず血の弾圧を繰り返すでしょう。その前に「反スパイ法」で拘引し、人知れず処刑されるのでは。人民解放軍の一部が立上れば別ですが、火力の差があり過ぎて庶民が動乱を起こしても鎮圧されるだけです。今までの中国大陸の歴史は当てはまらないでしょう。庶民の不満を和らげるため、「ふたりっ子OK」政策を今回採ったのでしょう。高齢化対策には間に合いません。「未富先老」です。中国は人口を増やし、海外に送り出すことによって戦争をせずにその国を支配できると考えていますので、庶民の不満を抑えるのと併せ一石二鳥です。米国に代表される民主主義国は一票=人の頭数が大事となります。米国大統領も中国系から出すとなると悪夢です。

記事

 10月の世界の資本市場は、米国の利上げ観測や中国経済への警戒感が後退したことに加え、ECBが12月理事会での緩和拡大の姿勢を明確にし、さらに中国人民銀行が利下げと預金準備率を引き下げたことで世界的に株価は反発、一時低下圧力の掛かったドル円も底堅く推移している。日銀の追加緩和観測はまだ根強く残っており、8-9月の悲観論を払拭した市場には、金融緩和期待の相場が舞い戻ってきた。

 FRBによる12月利上げのシナリオはまだ残っているが、その確率が相当低下したことは事実である。雇用ペースの鈍化、製造業における景況感の低迷、米主要企業の冴えない決算、そして横ばいを続ける物価上昇率など、利上げムードにはほど遠いのが実勢だ。景気拡大局面の終焉が意識され始めれば、来年以降も利上げは難しくなるかもしれない。

 世界の実体経済を見渡しても、低迷ムードが鮮明になりつつある。黒田総裁は先月の金融政策決定会合後の記者会見で「日本の生産や輸出は横ばい」と強気を維持していたが、機関投資家は新興国経済への懸念を強めるドラギECB総裁の慎重な見方の方に共感を抱いているのは明らかだ。特に中国経済の成長鈍化は長期化する可能性が高く、ハードランディングのリスクは小さいにしても、日本を含む世界経済の厳しい下押し材料になりつつあることに疑問の余地はあるまい。

実態は5~4%台と見るのが妥当

 7-9月期の中国経済成長率は前期比年率6.9%と発表されたが、世界中の機関投資家は、メディアが「6年半ぶりの低成長率」と報じるこの数字自体にもはや目を向けてはいない。失速中の中国経済への視線は、もはや政府公約の水準が達成されるかどうかではなく、どこまで景気が悪化するのか、政府の対応は成功するのか、といった点に集約されつつある。

 輸入の急減や不動産開発投資の鈍化、工業生産高や固定資産投資の低迷、そして企業利益の悪化などを総合してみれば、GDP伸び率の実態は年率5%台から4%台のペースにまで落ち込んでいる、と見るのが妥当なところだろう。

 市場には、サービス業は堅調であり小売売上高や不動産市場にも回復の兆しが見え始めている、と期待する声もある。4%台の成長なら想定内とばかり、現状にむしろ安堵感を抱く機関投資家も少なくないようだ。金融・財政など景気刺激策出動の期待値もまだ残っている。

 だが、市場不安の暴発を発するマグマが、経済成長率ではなく人民元相場の不安定性や失業率の上昇によって増幅されるとすれば、この程度の景気減速で止まって欲しいという株式市場の願望は、単なる「Wishful Thinking」に終わってしまうかもしれない。中国懸念が金融緩和期待で相殺されるという、怪しげな市場思惑の均衡が崩れる可能性が全くないとは言えない。

 今世界の金融市場で「ブラック・スワン」と囁かれているのが人民元の急落リスクである。8月の唐突な切り下げ措置に対し、中国当局が明確な説明をしなかったことで市場は疑心暗鬼に陥って株価急落の引き金を引くことになったのは周知の通りだ。その後、人民銀行が徹底的に人民元を買い支え、習主席が訪米した際に「人民元のこれ以上の切り下げ根拠はない」と明言したことで、為替相場は何とか落ち着きを取り戻しているが、その火種はまだ燻り続けている。

 中国人民銀行は8月以降のドル売り・元買い介入で約2000億ドルを投入したと見られており、それが外貨準備高の大幅な減少要因になった。とはいえ、現在の水準も3.5兆ドルと巨額であり、人民元急落リスクを回避するには十分な金額である。投機筋もおいそれと売り攻撃を掛ける訳にはいかない。

 だが問題は、この公表数字の信憑性である。欧米市場には、GDPと同様に外貨準備高も信用できないのではないか、といった声が出始めているからだ。

 2014年6月に中国の外貨準備は3兆9900億ドルに達した後、大幅な経常黒字を保ちながら急減している背景には、為替介入以外に外国資本の海外還流や国内資金の国外逃避といった資本流出要因がある。市場には対外資産で巨額損失が発生したといった観測もあるが、政府がそれを評価損と認める筈はなかろう。単純に、景気への不安感が中国からの資本流出を加速していると見るのが妥当である。

 だが外貨準備高の水準自体を客観的に確認する術はない。そもそもの疑問は、その大半を占める米国債保有額が約1.2兆ドルと日本とほぼ同程度なのに、なぜ総額に3倍もの開きがあるのか、という点だ。

 中国には、米国債投資以外に日欧国債などへの投資、国家外貨管理局(SAFE)や2007年に設立された中国投資(CIC)などを通じた積極的な証券・不動産投資、アフリカや中南米などに対する融資、そしてAIIBや新興国インフラ銀行への出資など、日本とは違った外貨準備利用が存在するのは事実であるが、それにしても2兆ドルもの差額は埋め切れない。またオフショア市場で行っているドル売り・CNH買いの介入結果が外貨準備減少に反映されていないのではないか、といった疑問も浮上している。

利用可能な外貨準備高はせいぜい1兆ドル

 景気の先行き不安が誘発する人民元急落リスクへの対応策として、中国政府にどの程度の実弾が残されているのか解りにくいことは、大きな不安材料である。また、中国の外貨準備には国有銀行の対外借り入れが含まれている、との見方もある。仮にそうであれば、3.5兆ドルの外貨準備がGDPと同様に誇大広告に近いことも否定できなくなる。欧州系金融機関の中には、人民元対策として利用可能な外貨準備高はせいぜい1兆ドル程度、と推測しているところもある。

 もちろん、1兆ドル規模の「実弾」は、他の新興国に比べれば圧倒的な防御力ではあるが、8月のような急落局面があと5回来ればゼロになる勘定だ。その金額が、人民元レートを中国政府が狙う着地点に向けて円滑に誘導するために十分かどうかは、投機筋の判断次第である。

 中国に支援材料があるとすれば、米国が今でも「人民元は割安だ」と言い続けてくれていることだろう。先般発表された米財務省の報告書でも、従来の「著しく過小評価されている」との表現を「中期的な適正価値を下回り続けている」と後退させつつも、人民元安を牽制する姿勢は維持している。これには、人民元安への圧力を軽減する効果がある。

 米国は来年に大統領選を控えていることもあり、国内批判を招きそうな人民元の大幅下落を容認したくない気配が窺える。従って、本音では人民元買い介入を歓迎している筈だが、それは米国が主張する「為替水準は市場に任せる」という大原則に背くメッセージになるので、表立っては言いにくい。中国の人為的な通貨政策を批判している米国にとって、人民元の急落など許容し難いだろうが、現実には放置せざるを得ないと思われる。

どちらに転んでも世界を揺さぶる人民元

 中国経済が1990年代の日本経済と相似形の軌跡を辿っている以上、泥沼に陥らぬための人民元切り下げは避けて通れないだろう、とコロンビア大学のジェフリー・サックス教授は指摘している。巨額の財政投入に拠る不動産開発など信用バブル造成の過程で積み上がった過剰供給や過剰債務の調整に時間と労力を食われ、金融緩和によってゾンビ企業の非効率性が温存されて低成長構造が続くというプロセスは、我々には見慣れた姿である。日本は何度も景気回復へのツールとして「円安への転換」を利用しようとしてきたのである。

 但し欧米市場には「人民元を下落させるべきではない」との論調が根強く残っている。通貨切り下げ競争を再燃させるべきではないし、ドル建て債務が急増している企業財務にも配慮せねばならないからだ。SDR構成通貨入りなど準備通貨への道を目指すのであれば、通貨急落は逆効果になる。また昨今の金融市場は人民元の下落傾向を波乱材料と見做しており、無用の混乱を避けるためにも人民元を安定化させて欲しい、という願いを込めたような論評も少なくない。

 だがサックス教授は、加重平均ベースでみた2007年以降の人民元の主要通貨に対する上昇率は40%を超えたと指摘し、中国が「ジャパン・シンドローム」を回避するには割高な為替相場水準を修正せざるを得ない、と述べている。内需主導経済への転換が容易に進まない中で、投資や輸出に依存する成長構造への郷愁が強まる可能性は高い。

 だが習主席が「切り下げはしない」との約束を守れば、景気低迷の長期化の道は避けられないだろう。一方で、割高な為替レートに中国経済が耐え切れなくなれば、投機筋はすかさず人民元売り攻勢を強め、株式市場に再びショックが及ぶことも想定される。人民元はどちらに転んでも、世界を揺さぶる運命を背負っているかのようだ。

よほど怖い失業率の不透明さ

 そしてもう一つの中国経済の「信用できない数字」が失業率である。見方を変えれば、経済成長率や外貨準備高よりも、失業率の不透明さの方がよほど怖い。雇用こそが中国共産党の一党独裁制度の生命維持装置とも言えるからだ。

 中国も毎月、都市部における失業率を公表してはいるが、その数値は過去10年以上にわたって4.0-4.3%の範囲でほぼ固定化されており、景気動向から全く分断された水準が続いている。IMFはその正確性を問い続けているが、中国政府が修正に応じる気配は全く無さそうだ。

 この問題にメスを入れたのが、上海大学のShuaizhang Feng教授ら3人のエコノミストである。彼らは、景気サイクル転換点の定義などでお馴染みの全米経済研究所(NBER)から公開した報告書の中で、1988年から2009年までの期間において、公表された失業率と実際の失業率の間にどの程度の差があったのかを調査した結果を記している。

 同教授らはまずその31年間を国有企業時代の1988~1995年、過度期の1995~2002年、そして市場経済転換への2002~2009年の3つに分割して、雇用状態を観測している。まず1988~1995年の推定平均失業率は3.9%で、公的統計の2.5%を上回っていたものの比較的低水準であった。それは国有企業が大量の余剰人員を抱えていた結果だろう。だが市場経済への過渡期に入って大幅な人員削減が行われ、失業率は急上昇していく。

 1995年以降は農村部からの移民増も失業率上昇の一因となり、年間1%程度ずつ失業率が上昇することになった、と推計されている。その結果としてこの期間の最終段階での実際の失業率は10%の大台に接近したが、公表された失業率は3%前後に止まっていた。そして2002~2009年の平均失業率は10.9%と高止まりしていたと見られるが、政府の発表は平均で4.2%となっていた、という。

 公表数字の信憑性はさておき、問題は失業率の水準である。2009年時点での推計ではあるが、この分析は、一般的な理解と違って中国経済は市場経済への転換戦略の結果として国有企業が解雇した労働者や農村からの流入移民を民間企業が吸収し切れていないことを示している。昨今の景気減速局面にあって企業破綻数も増えており、雇用削減はさらに加速しているかもしれない。

 この調査対象には2010年以降が含まれていないので足許の状況は推論するしかないが、敢えて中国経済の現状を概観すれば、「4%台の成長と10%台の失業率を抱えてデフレ傾向に悩み始めている国」という、特に珍しくもない昨今の一つの新興国の姿が浮かび上がってくる。存外そのあたりが、中国の経済実像に近いのではないか。

世界金持ちランキングに並ぶ中国勢

 それでも中国の経済力を過小評価すべきではないかもしれない。世界の金持ちランキングにはビル・ゲイツ氏やウォーレン・バフェット氏など相変わらず著名な米国勢がずらりと並んでいるが、いまや中国勢も急伸しているからだ。

 その代表格は、香港財閥の長江実業創設者の李嘉誠(リ・カシン)氏やアリババの馬雲(ジャック・マー)氏、そして中国本土の不動産王として知られる王健林(ワン・チェンリン)氏らである。中でも王氏の資産総額は344億ドルと、全世界のTop 5にも迫る金額になっている。

 中国のHurun Rich Listに拠れば、同国で10億ドル以上の資産を持つ大金持ちの数は今年242人増えて596人となり、米国の537人を抜いた、という。香港、マカオ、台湾を含む「Greater China」での数は715人で、その差を広げている。もちろんその資産総額は株価によって変動するため、8月の中国株暴落で大きく減少した可能性もあるが、富裕層拡大のトレンドが急変することはないだろう。

 またクレディ・スイスの推計に拠れば、各国平均所得の2倍以上の資産を持つ個人を中間層と定義した場合、今年の中国の中間層の数は1億900万人と、米国の9200万人を初めて上回った、という。中国内で富裕層だけでなく中間層も着実に増加しているようだ。

格差拡大増幅によるリスク

 こうした富の蓄積は、長期的に見れば同国が先進国と同様に内需主導の経済シフトに成功する可能性を示すものとも言えるが、同時に、米国のように所得や資産における格差拡大を増幅する確率を高めるものでもある。

 中国政府が国有企業改革や不良債権処理を先送りして金融緩和を続け、安易な財政政策の発動に踏み込めば、短期的には株高や不動産高を通じて後者の現象が色濃く出ることになる。株式市場にとって中国の景気対策は朗報となるかもしれないが、失業率が二桁の国で格差拡大が増幅されることになれば、いずれ社会リスクが増大するシナリオも視野に入れておかねばならなくなるだろう。