11/10ZAKZAK 加賀孝英『中台会談の裏に「海峡危機」再来の懸念 不満鬱積で不穏な中国軍』11/11日経ビジネスオンライン福島香織『分断後初の中台首脳会談、意義見えず 名を残すために台湾を売る馬英九の愚』について

「92年コンセンサス(92共識)はなかった。誰かが自分のサインを捏造したものだ」と李登輝元総統が以前の「中国時報」の中で言っていました。同じ紙面で馬総統は「92共識は間違いなく存在する」と言ってサイン入りペーパーを示していたと思います。

馬総統も本省人=中国人ですから、改竄・捏造はお手の物でしょう。そんなものに基づき、「一つの中国」を解釈するのは台湾人に失礼です。会談は、結局台湾にとって何の利益も齎さず、習近平の訪米時の扱いや南シナ海の航行の自由等、外交の失敗を救済する形となりました。馬総統は愚かとしか言いようがありません。金を習から貰ってポケットに入れるか、買収資金にするかも知れません。国民党の主流は、何せ中国人のことですからスマートに賄賂を送るやり方を知っていますので。買収を断ると付き合い上マズイと言うのであれば、受け取って、「民進党」に投票すれば良いでしょう。不法原因給付なので後で返還請求できないし、違法行為なので訴えられることもないでしょう。習VS馬は同じ中国人同士、狐と狸の化かし合いのようなものでしょう。それで台湾向けミサイルのことを「台湾には向けていない」と習が言い、馬もそれ以上突っ込まないデキレースのようなものです。

福島氏の記事にありますように、会談後の民進党候補蔡英文の支持率が5ポイント上昇して46.7%、国民党候補朱立倫の支持率は1.7ポイント下落し19%とありますので、会談は国民党にとって、来年1月の総統選には役に立たなかったというかマイナス効果しかなかったという事です。さすがKYの馬英九としか言いようがありません。習が7年間の馬の努力に感謝して会談をセットしたということはないでしょう。やはり次の蔡英文の行動を制約するためでしょう。蔡英文が言っていますように日本と産業同盟(含むTPP)を結び、中国大陸にいる台商を台湾に戻した方が良いと思います。

加賀孝英記事

 中国の習近平国家主席と、台湾の馬英九総統が先週末、シンガポールで1949年の中台分断後、初の首脳会談を行った。世界のメディアが「歴史的握手」「1つの中国を確認」などと報じたが、日米情報当局者はまったく違った分析をしている。南シナ海をめぐって「米中対立」が深刻化した習政権が、新たな台湾海峡危機を演出しかねないというのだ。衝撃的な、人民解放軍による台湾総統府制圧訓練とは。ジャーナリストの加賀孝英氏が緊急リポートする。

 「両岸(中国と台湾)のリーダーが会うことは歴史的一ページだ。いかなる力も(一家族である)、われわれを引き裂くことはできない」

 習氏は会談冒頭、笑顔でこう語った。なごやかに始まった首脳会談だが、馬氏が、中国が台湾向けに配備している約1500発もの弾道ミサイルの撤去を求めると、習氏は「あれは台湾に向けたものではない」と、笑顔でウソをつき、それ以外の台湾側の提案にも、ゼロ回答で応じた。

 ご承知の通り、シンガポールで7日、分断後初となる中台首脳会談が開かれた。会談は約1時間。世界が注目するなか、両首脳は「一つの中国」を確認したとされる「1992年コンセンサス」を確認し、平和的関係を築くことで握手を交わした。

 萩生田光一官房副長官は同日、「両岸にとって発展的な良い会談になるのだとすれば、決して否定するものではない」と記者団に語った。

 世界のメディアは「歴史的握手」などと絶賛したが、本当なのか。言うまでもなく、日本を取り巻く東アジアの安全保障にとって、中台が対峙する台湾海峡の安定は、朝鮮半島のそれと同様、最重要課題だ。「良い会談」ならば大いに評価したい。

 だが、驚かないでいただきたい。舞台裏はまったく違う。

 台湾では昨年3月、共産党独裁の中国と結んだサービス貿易協定をめぐり、数万人の学生と市民らが「中国NO!」を宣言して、立法院(国会)を約1カ月も占拠する事件(=ひまわり学生運動)が発生した。馬氏の支持率は10%前後まで低下し、同年11月の統一地方選挙では、「中台接近(統合)」に傾く馬氏率いる与党・国民党が大惨敗した。

 今後の最大の焦点は、来年1月16日に実施される台湾総統選挙と、立法委員(国会議員)選挙のダブル選挙だ。外務省関係者が語る。

 「ダブル選挙では、国民党が大敗することが確実視されている。馬氏の狙いは、習氏に泣きつき、巨額の経済支援などを引き出し、劣勢をひっくり返すことだ。歴史的握手というパフォーマンスの裏で、大バクチを打ったともいえる」

 「現状では、独立志向の強い蔡英文主席と、彼女が率いる野党・民主進歩党が勝利する可能性が大だ。こうした結果は、『中華民族の偉大なる復興』を掲げ、『台湾の統一(併合)』を目標とする習氏と中国共産党には絶対に看過できない。習氏は首脳会談で馬氏を取り込み、台湾統一工作を加速させるつもりだろう」

 仰天情報がある。以下、複数の日米情報当局関係者から得たものだ。

 「今年7月、中国人民解放軍が、内モンゴル自治区の軍事演習場に、台湾総統府を実物大で再現した建物を完成させ、特殊部隊による『武力制圧訓練』(斬首作戦=奇襲による台湾首脳らの排除)を行っていると、カナダの民間研究機関が明らかにした。衛星写真も公表された」

 「西側情報当局は『蔡氏と民主進歩党が勝った場合、中国が軍を動かして台湾に圧力をかける危険がある』という分析もしている。最悪の場合、1996年に勃発した『台湾海峡危機』の再来もあり得る。情報当局関係者は緊張している」

 台湾海峡危機とは、96年の台湾総統選挙直前、独立志向派である李登輝氏の当選を阻止するため、中国が演習と称して、台湾海峡に何発ものミサイルを撃ち込んだ事件だ。対岸に集結した中国軍も台湾侵攻の動きを見せた。当時のクリントン米大統領は2つの空母機動部隊を台湾近海に急派させ、中国の暴走を食い止めた。

 状況は今と驚くほど似ているではないか。情報はこう続く。

 「ダブル選挙は来年1月で、新総統の就任式は4カ月後の同年5月だ。万が一、第2の『台湾海峡危機』が起こるとすれば、この『魔の4カ月』が危ない」

 現在、南シナ海では、米国が、中国の国際法無視の暴挙を食い止めるため、「フリーダム・オブ・ナビゲーション(航行の自由)作戦」を発動している。米中衝突の危機が生じている。

 旧知の外事警察関係者は、以下のようにいう。

 「中国は南シナ海で、米イージス駆逐艦による『航行の自由作戦』に、手も足も出せなかった。習氏の権威は地に落ちた。軍に不満が鬱積しており、造反の動きもある。習氏は相当焦っている。何が起こるか、分からない」

 こんな情報も飛び込んできた。

 韓国の韓民求(ハン・ミング)国防相が4日、ASEAN(東南アジア諸国連合)拡大国防会議で突然、米国の南シナ海での作戦を支持する発言をしたため、中国が「『あの韓国に裏切られた!』と激怒している」というものだ。

 事態は急変している。日本は情報収集を急がなければならない。

 ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

福島香織記事

来年1月に台湾の総統選挙が迫るなか、馬英九総統が、いきなり今月7日、シンガポールで中国共産党中央総書記の習近平国家主席と会談した。1949年の中台分断後、初めて中台の最高指導者が会談するという歴史的事件ではあるし、メディア関係者は当然大騒ぎなのだが、台湾世論も中国国内も国際社会も何か白けた空気である。

 支持率一桁の超絶不人気の、引退間際の、しかも国民党主席でもない馬英九が、習近平と会って互角に渡り合えるはずもない。一方、習近平は国内では権力闘争の真っ最中、党内でも国際社会でも政敵に足をすくわれないよう、細心の注意を払わなければならない時期だ。CCTVは馬英九の肉声を伝えず、襟の青天白日バッジにまでモザイクをかける小心ぶり。彼らは、いったい、何のためにこんな会談を今の時期に、急に開いたのか。

馬英九、ロスタイムの個人プレー

 オンラインで、この世紀の瞬間(?)を私も見たのだが、習近平も馬英九も非常にぎこちない笑顔で、まるで機械仕掛けの人形のように80秒以上握手し続け、シャングリラホテルの会見場につめかけた約600人のメディアの要請を受けて、あっちを向いたり、こっちを向いたりして、しっかり握りしめたお互いの手を見せつけた。次に、やはり機械人形のように30秒間、手を振り続けた。会場の記者たちはそれなりに興奮して、手を振った姿に、おーっ!と歓声を上げながら、フラッシュを浴びせかけていた。

 しかしながら、個人的な印象を言えば、2005年に野党時代の国民党現役主席であった連戦が初訪中して総書記の胡錦濤と初会談したときの方が感慨は強かった。あるいは、今年5月、与党の立場で国民党主席の朱立倫が北京の人民大会堂で習近平と会談したことの方が、国民党にとっては実質的な政治的意味はあったかもしれない。

 この会談がなぜ、急遽、今のタイミングで開かれたのか。

 個人的な憶測を言えば、馬英九にとっては、負け試合終了間際のロスタイムに、少しでも見せ場をつくっておきたくて個人プレーに走った、というところではないか。蒋介石、蒋経国、李登輝、陳水扁と歴代台湾の指導者は、いずれも何かしら偉業を成し遂げ、歴史に名を刻んだ。

 蒋介石は初代中華民国総統、蒋経国は戒厳令を解除し中華民国の台湾化を進めた。李登輝は台湾の民主化の立役者であり、陳水扁は最初の国民党以外の政権を台湾に樹立した。馬英九のやったことは台湾の中国化であるが、それをポジティブに語る台湾人は少ない。

 早い話が馬英九の政治に歴史的意義のある評価はひとつもなかった。それどころか、執政のまずさを酷評され続け、学生に立法院を占拠されるという前代未聞の事件も起きた。だが習近平と会談すれば、分断後、初の中台首脳会談を実現した総統、という箔はつく。実際、それぐらいしか、この会談の意義というのが、私には見いだせないのだ。

一部中国紙の論評では、この会談によって1月の台湾総統選および立法院選挙において国民党の追い風になる、というものがあったが、それは台湾民意に対する中国人識者の無知ゆえの過ったヨミであると思う。この馬英九政権7年半の間に、中国経済は台湾を侵食し、大手メディアのほとんどのスポンサーに中国が関わるようになったため、台湾の報道は中国ほどではないにしろ、中国批判を抑えるようになった。このため、メディアを通じてでは、台湾人がいかに中台接近、あるいは習近平政権の「中国の夢」に警戒心と拒否感を持っているかを分かっていない。

「自由時報がスクープ」の意味

 そもそも、この「歴史的会談」の一報を抜いたのは、自由時報である。アンチ国民党アンチ中国を旗印にしている新聞社だ。本来なら、この種のネタは親国民党の新聞の方がスクープしやすい。安倍政権のスクープを読売や産経が抜きやすいのと同じで理屈である。

 だが、この急な中台首脳会談のニュースは、台湾人にとってネガティブな情報として、アンチ国民党の自由時報がスクープした。単純に考えれば、ネタ元は国民党幹部筋であろう。あえて自由時報にリークしてネガティブ報道させたのは、国民党にとっても、この会談を忌々しく思う派が存在するということではないか。

 2014年3月の学生らによる立法院占拠から始まったひまわり運動を振り返っても、2014年11月の台湾統一地方選の結果を見ても、今の台湾民意はアンチ馬英九であり、アンチ中国である。国民党が公認の女性候補だった洪秀柱を突然、新北市長を休職した国民党主席の朱立倫に挿げ替えたのも、親中派を公言する洪秀柱では、立法院選挙まで惨敗するのが目に見えているからだった。今の国民党が受けている逆風は、すべて馬英九政権になってからの急激な台湾の中国化に対する台湾民意の抵抗から始まったのだから、この時期の中台首脳会談など、総統選・立法院選の足を引っ張る以外の何物でもない。

 参考までに三立テレビ(アンチ国民党派)の中台首脳会談を受けての民意調査では、民進党候補・蔡英文の支持率は会談前よりも5ポイント上昇して46.7%、国民党候補朱立倫の支持率は1.7ポイント下落し19%と、もともと開いていた支持率の差がさらに開いてしまった。一応、朱立倫は国民党主席としてこの会談について、台湾の国際的地位を上昇させ、両岸(中台)の未来の平和発展に貢献したとしてポジティブな評価をしてはいるが、総統選挙への影響力という点では、10日から16日の日程で組まれている朱立倫の国民党主席としての初訪米の方がよっぽど意味があるのは当然だろう。

 では、中国サイド、習近平側はどのような思惑で、この馬英九の晴れ舞台に付き合ったのだろうか。習近平の会談冒頭のスピーチを少し見てみよう。

習近平、かく語りき

 「尊敬する馬先生、みなさん、こんにちは。きょうは非常に特別な日です。両岸の指導者が一堂に会し、歴史の一ページをめくりました。歴史は今日のことを記録するでしょう。

 かつて両岸が海を隔てて軍事的に対峙し、親族も分断され、無数の家庭に骨身に染みる痛みを刻みました。その遺憾を補う方法はありません。そうして、海峡を隔てても、兄弟の情を断ち切れることはなく、故郷の父母への思念、家族が寄り添いたいという渇望、同胞の血縁の情の力を遮ることもできませんでした。前世紀の80年代に、ついに両岸は閉じていた門戸を開いたのです。

 2008年以来、両岸関係は平和発展の道をたどってきました。過去7年、台湾海峡情勢は安定し、両岸の平和発展の成果は実りあるものでした。両岸双方の広範な同胞が大量の心血を注ぎ、まさに7年の積み重ねによって、今日の歴史的一歩を踏み出すことができたのです。ここに私はすべての両岸発展推進に貢献してきた同胞、友人たちに心よりの感謝を示したい。66年の両岸発展の道のりにおいて、多少の風雨と長年の断絶があったとしても、いかなる力も我々をわかつことはできないのです。なぜなら、我々は骨を断たれても心はつながっている同胞であり、濃い血で結ばれた家族なのだから。

 今日、両岸発展の内容は、その方向性の選択に直面しています。我々が今日ともに会したのは、歴史の悲劇を繰り返さず、両岸関係の発展成果を二度と失うことなく、同胞が継続して平和で安定した生活を送り、子孫に美しい未来を共有するためです。両岸双方がこの発展の道のりの中で啓発を得て、民族の責任、歴史的責任を担い、歴史経験に基づいた正しい選択を行わなければなりません。

 我々は世の人々に行動でもって、両岸中国人が自分たちの問題を解決する完全なる能力と智慧をもっていることを表明し、共に世界と地域の平和発展の繁栄にさらなる大きな貢献をしていくのだと表明せねばなりません。私は、両岸双方がともに努力し、両岸同胞が手を取り合って奮闘し、92年コンセンサスを堅持し、共同の政治基礎を固め、両岸の和平発展の道をしっかり定めて、両岸関係の発展の正しい方向性を維持し、両岸の協力を深め、両岸同胞の福祉を増進し、共に中華民族の偉大な復興をはかり、民族の復興の偉大なる躍進を享受してほしいと思います」

中国と台湾は濃い血で結ばれた家族である、と強調し、台湾に未来の選択を間違わぬようにと訴え、中台問題について国際社会の介入を牽制し、台湾人民に中華民族の復興の果実をともに享受しようと呼びかけている。

 また、「歴史」と言う言葉を繰り返した。台湾紙・聯合報によれば、晩餐会では抗日戦争時の話題で盛り上がったらしく、馬英九が「総統府はかつて爆撃された」というと、習近平から「あなたがたの総統府とは、日本時代の総督府のことか」との質問があったとも。7月に提案されていた、抗日史を盛り込んだ共同歴史書作りに関しても一致したという報道もある。馬英九は9月3日の中国の抗日ファシスト戦争勝利70周年記念日に、習近平が、あたかも共産党が日本に勝利したように喧伝したことについて、さすがに当時は「遺憾」の意を示していたが、そういう国民党員としてのプライドはここにきて捨てたようである。

中国の成果は「都合の良い歴史」

 馬英九は国民党内でもかなり孤立しており、引退後の政治的影響力はゼロだろう。台湾民意は今のところ中国に対する警戒感が強く、台湾海峡に向けたミサイルを配備した状況での習近平の平和メッセージなど心に響かない。このメッセージはむしろ、中国人民に向けて、そして国際社会に向けてのものと考える方がいい。

 選挙で選ばれていない共産党政権は「中国共産党は日本軍から中国を守った」という歴史が、執政党としての正統性の根拠である。現実の歴史は、国民党軍が米国の支援を受けて日本軍を破ったのだが、続く内戦で既に疲弊していた国民党軍は共産党軍に敗れるのだ。国民党軍が日本と激戦を展開している間、共産党は延安での拠点づくりに勤しんでいた。日本軍とは極力戦うなという毛沢東の意向に背いて、百団大戦を指揮した彭徳懐は、後に失脚させられた。

 毛沢東が半分冗談めかしてだが社会党委員長・佐々木更三に「皇軍(旧日本軍)のおかげで政権がとれた」と語ったというエピソードも伝えられている。共産党は国民党とともに戦い日本軍に勝利したという中国に都合のよい歴史を総統に認めさせたというのが、中国にとっての会談成果かもしれない。

 もちろん習近平にとって任期中に中台統一を実現させることは悲願であり、中国に従順な馬英九の総統任期中に、中台首脳会談を行い、少しでも有利な状況を作っておきたいという希望はあった。南シナ海の問題が先鋭化し、中国にとっては対米戦略上も、また尖閣諸島をめぐる問題を含めた対日戦略上も台湾を抱き込むことは一層重要である。

 ただ、習近平のパートナーとなるべきは、台湾民意も国民党内の支持もついていない馬英九ではお話にならない。馬英九は半年後には何の権力も持たなくなる。今の習近平にとって重要なのは、馬英九との会談よりも、次の政権との関係性である。特に民進党政権になれば、中国の対台湾戦略は大幅な調整が強いられる。この会談でたとえ、何か密約めいたものが決められても、実際意味をなすとは考えにくい。

台湾を中国に売り渡した総統

 それでも、馬英九の最後の花道に習近平も付き合ったのは、中国国家主席としてのねぎらい、感謝の気持ちからではないか。中国が台湾をここまで経済的に支配でき、メディアコントロールを強化し、中国化を進めてこられたのは、馬英九政権7年半の積極的な協力があったからこそなのだ。

 李登輝政権後期から民進党政権樹立にかけてのころ、台湾アイデンティティと言う言葉がはやり、「一つの中国」というコンセンサスから、「一辺一国(中国と台湾は別の国)」に変わりかけたことがあった。この流れを馬英九政権が完全に止めて、中台急接近に動いてくれたのだから、中国にとっては大恩人だ。

 振り返れば、馬英九政権が行った政治の歴史的意味は小さくなかった。台湾独立の最初の芽を完全に摘んだのだ。馬英九の名前は、やはり歴史に残るかもしれない。だが、それは中台分断後「初の首脳会談に臨んだ総統」ではなく「台湾を中国に売り渡した総統」という評価にはなるが。