11/12・13日経ビジネスオンライン 鈴置高史『「北朝鮮並み」の日本、「ロシア並み」の韓国 「ねずみ男

ねずみ男」で思い出すのは国連事務総長の潘基文氏です。いかにも小狡るそうな容貌で、人物の内面性を良く表していると思います。韓国人の典型とでも言うべきでしょうか。「息を吐くように嘘をつく」民族ですから。小中華ですので、中国と同じ「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」と思っているでしょうし、賄賂社会もその通りでしょう。

そもそも日本が甘やかしてきたのが、彼らを増長させた原因です。やはり、日本人は真のグローバル人材がいなかったという事でしょう。言葉ができるだけでなく、民族性も理解して付き合わないと。福沢の「脱亜論」を守っていれば、大東亜戦争も起こらなかったかもしれません。明治の人達の方が、今の軽薄な語学ができる猿のような人たちと比べると遙かにグローバルな見方をしていたと思います。メデイアの海外駐在なんて、外国の新聞やTV報道を日本に対して伝えるだけで、日本の立場を伝えようとしません。民間外交の最先端にいる人達でしょうに。逆に「従軍慰安婦」など喜んで海外で煽る始末です。語学の効用は否定しません。小生も今「英語」「中国語」を習っています。日本人の立場を英語・中国語で主張するためです。

日米共に韓国は歴史的に見て「裏切り者」体質があると思って付き合った方が良い。そういう意味で、中国元のSDR入りは韓国に有利に働くことになりますので反対ですが。元のスワップがありますので。アメリカのやっていることもチグハグです。金融面だけでなく、軍事面でも、11/9発記事では米中海軍が大西洋で合同演習したとのこと。まあ、米海軍の圧倒的強さを中国海軍に見せつけるにはいいでしょうけど。日本はいろんな意味で自立していかないとダメです。

記事

(前回から読む)

 米国の引力圏を脱し、中国を周回し始めた韓国。では、その韓国と日本はどう向き合うのか。神戸大学大学院の木村幹教授と考える(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。

Cold Peace

木村:「日韓関係はべったりとした昔には戻らない」。こう言い続けてきましたが、ようやく政治家や官僚の方々――日本の政策を決める人々に理解してもらえるようになりました。

 日韓は米国を媒介とした準・同盟国でなければ友好国でもない――。この現実を前提に新たな関係を考える必要があるのです。

鈴置:そう言えば、ジョン・ホプキンス大学のケント・カルダー(Kent Calder)教授が最近、木村先生と似た議論をしています。

 日韓関係をロシアと隣国との関係に見立てる意見です。朝鮮日報がインタビューし「韓日が不信を克服したいのなら、首脳の政治的な勇気が要る」(10月31日、韓国語版)という記事で紹介していました。

木村:ケント・カルダー教授は日韓関係の1つの落とし所を「Cold Peace」と表現しています。「信頼関係は存在しないものの、紛争にも至らない平和的な状態」という意味だと思います。

 「信頼関係の構築」などという高いハードルは諦めて、とりあえずは「紛争のない状態」を目指し努力すべきだ――とのアドバイスです。

 逆に言えば、米国のアジア専門家からそんな忠告をされるほどに、日韓は微妙な関係になったのです。

日韓戦争を予防する

鈴置:上手に管理すれば軍事的な衝突は避けられる――つまり、下手したら戦争になるぞ、ということですからね。ついに第3者から見ても、日本にとって韓国は「ロシア並み」の国になったわけです。

日本でも「中国の使い走りとなった韓国は信用できない。放っておけ」という空気が定着しています。韓国を完全に無視した安倍談話に、支持が集まったのもそのためです。

—安倍談話を分析した「『韓国外し』に乗り出した安倍政権」という見出しの記事は非常によく読まれました。

木村:日本人の心情としてそうなるのは分からないでもありません。でも「信頼関係がなくなった」からこそ、不必要な対立を避けるための対話やメカニズム――軍事的なものを含め、本格的な紛争に至らないようにする予防措置が必要となるのです。「むかつくから何の対処もしない」というなら外交なんて要りません。

鈴置:木村先生やカルダー教授のような議論の立て方をすると「戦争を望むのか」と言う人が必ず出てきます。

 でも、これだけ日韓が疎遠になると、現実を直視し「紛争を防ぐ」姿勢でモノを考えておかないと、かえって衝突を起こしかねないのですけれどね。

防衛費は日本の8割

—韓国は軍事的に日本の敵になり得るのでしょうか。

木村:韓国の防衛費は増え続け、現段階ですでに日本のそれの8割に達しています(グラフ「日韓・防衛費の推移」参照)。

グラフ●日韓・防衛費の推移

defence cost in Japan and Korea

注)縦軸の単位は100万USドル。SIPRI Military Expenditure Database(c)SIPRI 2015 のデータを基に木村幹教授が作成

念のために付け加えれば、韓国が意図的に防衛費を拡大させた結果ではありません。韓国のGDPに対する防衛費の割合は3%弱で固定されています。

 韓国のGDP、つまり経済規模が大きくなったからです。経済規模が大きくなれば、当然それにつれて防衛費も大きくなります。

 日本ではこのデータはあまり知られていませんが、昔の「貧しく弱い韓国」は軍事面でも、もう存在しないのです。

—韓国の防衛費が日本に追いついたとしても、その海軍力は極めて脆弱との評価が多いようですが……。

木村:それはそうです。でもこの先、東シナ海や南シナ海で中国海軍と一層厳しく向き合わねばならぬ日本とすれば、韓国との摩擦は避けた方が得策でしょう。余分な兵力をとられて、中国の脅威に専念することができなくなりますから。

薄気味悪いほどの丁重さ

鈴置:その思い――軍事的な摩擦や衝突を避けたいとの思いは、韓国側の方が強いのかもしれません。以下は最近、日本の安全保障専門家から聞いた話です。

  • 毎年、韓国でのシンポジウムに参加する。今年はなぜか異例の接遇を受けた。米国から参加したカウンターパートよりもはるかに良い待遇で、招待者側はしきりに日本との防衛協力を訴えてきた。

 韓国側の丁重さは、薄気味悪いほどだったそうです。衝突の防止に加え、日本の軍事的な能力や意図を探る目的もあるのでしょう。敵であるほど、その情報は必要になりますから。

 自衛官OBの中には日本の運用技術を取りたいのだろう、と見る人が多い。韓国はF15の整備や潜水艦救難艦の運用など、結構重要な技術を自衛隊から学んできました。

 「中国側に回った韓国」に対し、今後は米国が「教え渋る」可能性が高いので、日本とのパイプをなくしたくないのだ、との読みです。

木村:「韓国の丁重さ」には驚きません。10月20日には中谷元・防衛相が訪韓し韓民求(ハン・ミング)国防相と会談しました。

 4年振りの大臣同士の防衛対話です。安全保障関連法に理解を求めるのが訪韓の目的でしたが、防衛問題での交流強化でも合意しました。

「経済」ではなく「軍事」選ぶ

鈴置:10月18日の自衛隊の観艦式には韓国海軍の駆逐艦も参加しました。2002年の東京湾での国際観艦式に韓国海軍は艦船を送りましたが、自衛隊の観艦式に加わったのは初めてです。

木村:米国による「日韓関係の改善圧力」を受けた韓国は、その糸口に「軍事」を選んだのです。これまで日韓両国が関係改善に動く時には必ず「経済」を使いました。

 あえて「軍事」から入ったのは極めて興味深い現象です。日本との軍事的対立を避けたいとの思いが強い証拠だと思います。

 韓国から見ても、日本は危険な存在となっています。歴史認識問題や領土問題で両国の関係がどんどん悪化しているからです。

 もし、国民感情をさらに煽って領土問題などで強硬な政策を主張する政治家が現れれば、思いもかけない状況に陥る可能性もゼロではない。

 もちろん、今のところは日韓両国が戦争になる可能性はほとんどないと思いますし、両国の政治家もそれほど愚かではないでしょう。

 でも、北東アジアの情勢が不安定化していくなかで、長期的には敵対的な関係に移行しても不思議ではないと思います。

独島を日本から守れ

鈴置:同感です。韓国紙の記事を読んでも、書き込みを読んでも「昔のように簡単には謝らない日本」への苛立ちで溢れています。日韓関係が「べったりした昔」には戻らないことに、韓国人も気がつく過程にあるのです。

木村:領有権を争う竹島も、少し前までは日本が武力で奪い返しにくるとは――口ではともかく心の奥底では――韓国の人々は考えていなかったと思います。

 でも、今やそれもあり得る話と一部の韓国人は考えるようになりました。なぜなら、日本人が韓国を信じられなくなっているように、韓国人もまた日本を信じられなくなっているからです。

 つい最近も「竹島の隣の鬱陵島に、海兵隊の実戦兵力を配置する計画」との報道がありました。北朝鮮対策だとの説明が表向きは付いていますが、日本を意識したのは間違いありません。

笑いながら「日本は仮想敵」

鈴置:聯合ニュースの「韓国軍 鬱陵島に海兵隊配置を推進=独島防衛と対北圧迫」(11月6日、日本語版)ですね。「日本」とは名指ししていませんが「外部勢力の独島(竹島)侵攻に対する強力なメッセージ」と書いているところを見ると、対日防衛用です。

 そもそも見出しで「独島防衛」が「対北圧迫」より前に置いてあります。韓国人の本音が垣間見えます。

 1990年代初め――冷戦末期に、韓国国防部が白書で日本を仮想敵扱いしたことがあります。関係者に「ひどいじゃないか」と言ったら、にこにこ笑いながら「我慢してくれ」。

 北朝鮮は本当の敵だから、今更、白書で敵と強調しても予算は増えない。中国やソ連とはこれから国交を結ばなければならないから、余計なことは書けない。ここはひとつ日本に協力してもらい、敵ということになってもらわねば困る――というのです。

 当時は予算獲得用に「日本は仮想敵」と言っていた。誰もそうは思わないから、安心してそう言っていたのです。この頃は実に深い“信頼関係”があったのです。

米軍は助けてくれない

—「日本が攻めてくる」と考える韓国人が結構いるのですね。

鈴置:朴槿恵(パク・クンヘ)政権は中国と一緒になって、日本の集団的自衛権の行使容認や安全保障関連法案に否定的な姿勢を打ち出しました。

 それを支持した韓国メディアが「日本は戦争できる国になる。真っ先に襲われるのは韓国だ」と煽ったことが効いたと思います。

木村:韓国の人々が日本を本格的に仮想敵の1つと考えるようになった理由はいくつかあります。まず、彼らが今の日本社会の変化を「軍国主義への回帰」だと考えていることです。その証拠に日本は韓国に対し何やら強気になってきた――ように彼らには見える。

 さらに加え米韓同盟が揺れていることも、韓国人の対日警戒感を加速しています(「『南シナ海』が揺らす米韓同盟」参照)。

 米韓同盟が強固なら、日本とも同盟を結ぶ米国が日本の軍事的な挑発にはブレーキをかけてくれることが期待できた。

 でも米韓同盟がこれ以上、悪化すれば米国はいざという時に、韓国の側に立って動いてはくれないかもしれない。現実はともかく米韓同盟への不安は、日韓関係に対する不安にも繋がっています。

対馬を占領すればよい

鈴置:韓国の保守系サイトで面白い記事を見たことがあります。「独島に日本が攻めてくるかもしれない」と反日を煽り、日本の安保法制に反対する人に対し「そんなことはあり得ない。落ち着け」と諭した記事でした。

 筆者は「日韓関係は重要だ。つまらぬ反日をやめよ」との意図から記事を書いていました。しかし「日本の侵攻はあり得ない」理由の1つに「仮に独島を取られたら対馬を占領し、島民を人質に独島返還を交渉すればよいから」を挙げていました。

 これを日本人が読んだら日韓関係はさらに悪化するだろうな、と思ったものです。対馬攻撃論の背景には、韓国で最近高まる「対馬・韓国領土論」が背景にあります。日韓の領土紛争のタネは竹島に留まらないのです(「『対馬は韓国のものだ』と言い出した韓国人」参照)。

木村:先ほど鈴置さんは「日本にとって韓国はロシア並みの国になったか」との感慨を漏らしました。一方、韓国は日本を「北朝鮮並み」に扱うようになっています。金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)の進歩派政権は、危険な北朝鮮を対決ではなく、融和政策で抑え込もうとしました。

 「厳しい北風ではマントを脱がせることはできないが暖かい太陽なら……」というわけです。今度は日本に対し「太陽政策」を始めたように思われます。ただし、本当にいい関係を作れるとは考えておらず、あくまで計算づくの戦略として、です。

日本の頭を撫でる

—「日本は北朝鮮並み」ですか?!

鈴置:「日本人は野蛮で強大な軍事力を持つ。だから常に侵攻意図がないか調べ、頭を撫でておく必要がある」というのが韓国の伝統的な日本観です。昔から本音ベースで「日本は乱暴者」なのです。

 柳成竜(ユ・ソンヨン、1542-1607年)という文禄・慶長の役(1592―1593年、1597―1598年)当時の朝鮮の宰相がいます。この戦争――朝鮮の呼び方で言えば、壬辰倭乱を詳細に記録した『懲毖録』(ちょうひろく)を書きました。

 柳成竜は敗戦の原因を、日本を軽んじてその動向を見極めようともせず、軍備も怠っていた当時の朝鮮王朝に見出します。

 そしてこの本の冒頭には、彼よりも130年ほど前の宰相、申叔舟(シン・スクチュ、1417―1475年)が死の間際に、王に言い残した言葉を記しています。以下です。

  • 願わくば、わが国が日本との平和関係を失うことのありませんように(東洋文庫『懲毖録』7ページ、朴鐘鳴=パク=・チョンミョン訳)。

 1443年、若き申叔舟は朝鮮通信使の一員として室町時代の日本を訪れた経験がありました。1471年に刊行した『海東諸国紀』では日本の軍事力の強力なことと、上手になだめすかす重要性を説きました。

朴政権は壬辰倭乱を招く

—日本人は野蛮だから、乱暴してこないよう頭を撫でておくわけですね。

鈴置:その通りです。いまだに韓国の新聞では「何をしてくるか分からない日本」への警戒を呼び掛ける際『懲毖録』か『海東諸国紀』を引用することが多い。「そろそろ……」と思っていたらやはり、2冊とも引用する記事が登場しました。

 尹平重(ユン・ピョンジュン)韓神大教授が朝鮮日報に寄せた「日本、その永遠の烙印」(11月6日、韓国語版)です。以下がポイントです。

  • 『海東諸国紀』の序文で申叔舟は「外敵と向き合う方法は、外征ではなく内治にある」と強調した。日本を「力が非常に強い」国と規定した上で、将来の安全保障の危機に対処するためにも朝廷の綱紀を正すことが最優先課題だと力説したのだ。
  • およそ100年後に壬辰倭乱を招くことになった朝鮮王朝の国政の乱れを予見した記述であり、2015年現在の朴槿恵政権における、外交・安全保障チームの総てに渡る乱脈への警告としても読める。
  • 壬辰倭乱を省察した柳成竜は「日本と近しく」という申叔舟の遺言を『懲毖録』の冒頭に載せた。血と涙の遺言は、21世紀の今も有効だ。

 なお、尹平重教授は引用部分で日本を「外敵」と上品に表現していますが、朝鮮総督府が昭和8年に出版した『海東諸国記』を国立国会図書館のデジタルライブラリーで見ると、原文は「夷狄」(コマ番号6、2行目)です。岩波文庫版(田中健夫訳注)でも「夷狄」(14ページ)です。

 日本をなだめるどころか怒らせた朴槿恵政権への批判です。反日から卑日へ、そして警日へと韓国人はなかなか忙しいのです。

日中が衝突したら……

木村:日本との軍事対話により「軍国主義化する日本」の脅威が自らに向かないようにしたい――と今、韓国人が願っているのは間違いありません。

 韓国人のもう1つの懸念は中国です。日本と中国が尖閣諸島を巡って軍事衝突する可能性が生まれた。それには米国も何らかの形で関与する可能性がある。韓国には、日米VS中の争いにどうしたら巻き込まれずに済むか、という大きな課題が突きつけられています。

—やはり、日韓関係には中国の影が大きく差すのですね。

(次回に続く)

前回から読む)

 日中が衝突したら韓国は中国側に付くのか――。神戸大学大学院の木村幹教授と展開を読む(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。

半妖怪の韓国

前回は日韓関係が悪化し、信頼関係も消えた今こそ、紛争の予防を真剣に考える必要があるとの話でした。

鈴置:日韓関係が良くなることは――日本人が韓国に気を許すことは今後、まずないと思います。「韓国はねずみ男」との認識が広まったからです。

—「早読み 深読み 朝鮮半島」の書籍化第1弾である『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』で使った「ゲゲゲの鬼太郎」モデルですね。以下、プロローグの「中国の空母が済州島に寄港する日」から引用します。

  • 読んでくれた知り合いの1人は「韓国って『ゲゲゲの鬼太郎』に出てくる『ねずみ男』のような国なのですね」と言った。確かに、米国たる目玉親父や、日本たる鬼太郎の側にいるようで、肝心な時は妖怪側――中国につくのが「ねずみ男」だ。
  • 日本は今、韓国を注視する必要がある。中国を極度に恐れ、敏感に動く韓国を通じてこそ中国やアジアの先行き、あるいは「新グレートゲーム」の帰趨を見通すことができるからだ。
  • 鬼太郎はねずみ男の言動が怪しくなった時、妖怪がこっそりと近寄ってくるのを感得する。韓国を観察するのはそれと似ている(7ページ)。

尖閣で衝突したら……

鈴置:2013年2月に出版した本です。たった3年弱前の日本には「韓国はこちら側の国」と信じていた人が多かった。

 そのため「韓国は半妖怪」と書いたこの本は驚きを持って読まれました。それが今や「『半』も取れて完全に『妖怪』ですね」と言ってくる人が相次ぎます。

 韓国は中国による南シナ海の軍事基地化に関しても、米国を明確に支持しない。様々の米中対立案件でほぼ、中国側に立つようになったからです(「米中星取表」参照)。まだ、米韓同盟は存在するけれど、韓国の言動は中国の衛星国そのものです。

米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか (○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年11月12日現在)
案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権 の行使容認 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の MDへの参加 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍への THAAD配備 青瓦台は2015年3月11日「要請もなく協議もしておらず、決定もしていない(3NO)」と事実上、米国との対話を拒否
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習 の中断 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの 正式参加(注1) 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの 反米宣言支持 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの 加盟 (注2) 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」
中国の 南シナ海埋め立て 米国の対中批判要請を韓国は無視
抗日戦勝 70周年記念式典 米国の反対にも関わらず韓国は参加

(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。

木村:「妖怪」という表現はどうかと思いますが、かつてとは状況が変わってしまった。だからこそ、新たな関係をどう作るかを考えなくてはなりません。

 万が一、日本と中国が尖閣諸島を巡って軍事衝突する事態になれば、米国も何らかの形で関与する可能性も出てきました。韓国には「日米 VS 中の争いにどうしたら巻き込まれずに済むか」との死活的な課題が突きつけられた形です。

中国と一緒に日本を叩く夢

鈴置:韓国人の相当数が「中国側に立って日本をやっつけよう」という心情にあると思います。2015年2月、わざわざ私に「日中が戦争したら我が国は中国側に付くぞ」と言いに来た韓国人がいます。

 この人は近未来小説『朝鮮半島201Z年』を読んで、2012年2月に「離米従中などあり得ない」と“抗議”に来たことがありました。

 その3年後には「米中間では中立」とがらりと立場を変え、日本人に対しては「俺の後ろには中国がいるからな」と肩をいからせるようになったのです。

木村:日中両国が本当に軍事衝突した際には中国側に立ちたいと思う韓国人が、ある程度いるのは事実です。でも、実際にそれをやったら韓国は、米国を自動的に敵に回してしまいます。

 日中間で軍事的衝突が起きれば、一定の確率で日米同盟が発動されます。その時、韓国が中国に加担すれば、米韓同盟は基盤から崩壊してしまいます。

 TPP(環太平洋経済連携協定)に参加しなかったことで、すでに韓国は経済面では「中国側」と疑われています。

 軍事面でも「中国側」を完全に選択してしまうと、かろうじて握っている米国とのロープが切れてしまいます。

中立を宣言して洞ヶ峠

—「『南シナ海』が揺らす米韓同盟」で先生が使った例えですね。韓国はルビコン河で溺れ、中国側に流れ着いたがまだ、米国側につながる長いロープ――米韓同盟だけは握りしめているという……。

鈴置:韓国人に米韓同盟を打ち切るハラは今のところ、ないでしょう。

木村:だから韓国は、日中間で軍事衝突が起きた際に中立を宣言できる根拠を作っておきたい。中国が日本と衝突する時には韓国に対し、直接的な軍事的支援ではないにせよ、何らかの形で「支持」を要求するのはほぼ確実ですから。

 その場合、中国に対し言い訳するためにも韓国は、米国はもちろん、日本との軍事的なつながりを残しておく方が得策です。

 少なくとも最低限、日米の軍事的脅威が自らに向けられるのは絶対に避けたいところ。韓国が最近、歴史認識問題で対立する一方で、「軍事」で日本との交渉を急ぐ傾向にあるのは、そのための下準備でもあると思います。

—洞ヶ峠を決め込むわけですね、韓国は。

中国の談話をコピペ?

鈴置:でも、中国がそんな言い訳を認めるとも思えません。すでに「日本の再軍国主義化反対キャンペーン」には韓国も参加させています。

 2014年7月3、4日の中韓首脳会談で朴槿恵大統領は習近平主席とともに「日本の集団的自衛権の行使容認」に関し、「日本に対する憂慮」を表明しました。

 韓国政府筋は「中国に抵抗したが押し切られた」と弁解しています。しかし、そんな弁解をするほどに「中国にNOと言えない韓国」を告白することになってしまうのです。

 安全保障関連法案が2015年9月19日未明に成立すると、中国外交部は直ちに以下の談話を発表しました。

  • 戦後日本の安保政策でかつてなかった行動だ。平和路線を維持し安保面で慎重に行動し、地域の平和と安定に尽くすよう強く求める。

 韓国外交部は少し遅れ、同日朝になって以下のような報道官論評を発表しています。

  • 日本は戦後一貫して維持してきた平和憲法の精神を堅持し、地域の平和と安全に寄与するよう透明な形で推進すべきだ。

 よく似ています。韓国の論評は中国の談話をコピペしたかに見えます。対日批判する時も、中国に「右へならえ」するのです。韓国はヘビに睨まれたカエル状態になっています。

日本にスワップを要求

木村:鈴置さんの言うように、日中有事の際に韓国が中国に「NO」と言うのは次第に難しくなっていくでしょう。

 でも、そうした大状況を変えられないからこそ韓国は、何とか中国の言いなりにならないための材料を作りたいのです。そして材料は多ければ多いほど良いのです。

—11月2日の日韓首脳会談では話題にならなかったようですが、通貨スワップを日韓は結び直すことになるのですか?

鈴置:10月26日、経団連との会合で韓国の全国経済人連合会が「スワップ再開」を求めました。韓国紙にも必要性を訴える意見が2015年夏頃から載るようになりました。

 米金利の引き上げとともに資本逃避が起きて、また通貨危機に陥るとの危機感が高まったからです。

 でも、下手に大声で頼むと「やはり韓国は外貨不足なのだな」と市場に見なされ、本当に危機に陥ってしまう可能性があります。

—日本がスワップに応じれば、問題は起きないのでは?

非礼を覚えている日本

鈴置:日本が応じるかは不透明です。2008年にスワップが決まった後に、日経のインタビューを受けた韓国の企画財務相が「日本は決断が遅い。それでは大国に見なされない」と日本政府を叱りつけました。

 1997年の通貨危機の際は、米銀が逃げ出す中も邦銀が最後までドルをつないだのに、今や韓国紙は「日本のために通貨危機に陥った」と書くようになっています(「『人民元圏で生きる決意』を固めた韓国」参照)。

 財務省や金融界はこうした「非礼」を覚えています。政界にも韓国を助けてやろうとする有力者はほとんどいなくなった。

 李明博(イ・ミョンバク)前大統領の竹島上陸や天皇への謝罪要求、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の言いつけ外交に反発する支持者から「日韓議員連盟を脱退しろ」と議員に電話がかかってくる時代です。

 近未来小説『朝鮮半島201Z年』で、韓国に対し日本が「ドルが欲しければ中国から借りたら?」と突き放すくだりを入れました(129ページ)。2010年に出版した本ですが、その頃から日本、ことに金融界の空気は変化していたのです。

通貨は中国と同盟

—米国に「貸してくれ」と頼む手はありませんか?

鈴置:米国は日本以上に韓国に怒っている。米国に守ってもらっているのに、中国の要求ばかりきくからです。

 米国はスワップに応じないばかりか、1997年の通貨危機の時のように日本に「韓国とのスワップは拒否しろ」と指示するのではないか、と見る関係者が多いのです。

 「ねずみ男」に甘い顔をしていると「自分は妖怪の仲間とは見破られていない」と勘違いし、ますますつけあがるからです。

—米国も拒否するとなると、ますます『朝鮮半島201Z年』の展開ですね。

鈴置:そもそも通貨の世界で、韓国はドル陣営から人民元陣営に鞍替え済みです。韓国はスワップの7割を人民元に頼るようになりました(「韓国の通貨スワップ」参照)。

韓国の通貨スワップ(2015年11月12日現在)

相手国 規模 締結・延長日 満期日
中国 3600億元/64兆ウォン(約560億ドル) 2014年 10月11日 2017年 10月10日
UAE 200億ディルハム/5.8兆ウォン(約54億ドル) 2013年 10月13日 2016年 10月12日
マレーシア 150億リンギット/5兆ウォン(約47億ドル) 2013年 10月20日 2016年 10月19日
豪州 50億豪ドル/5兆ウォン(約45億ドル) 2014年 2月23日 2017年 2月22日
インドネシア 115兆ルピア/10.7兆ウォン(約100億ドル) 2014年 3月6日 2017年 3月5日
CMI<注> 384億ドル 2014年 7月17日  

 

<注>CMI(チェンマイ・イニシアティブ)はIMF融資とリンクしない場合は30%まで。

資料:ソウル新聞「韓国の経済体力は十分」(2015年2月17日)

 1997年の通貨危機の際、韓国はIMF(国債通貨基金)の救済を受け、その直後に日本からドルを借りました(「『人民元圏で生きる決意』を固めた韓国」参照)。当時は中国から外貨を借りるなどとは想像もできなかったのです。

 2008年の危機の際には米、日、中の3カ国にスワップを結んでもらい、実際は米国だけからドルを借りました。

 それが今や全面的な中国頼みになったのです。韓国は貿易、通貨戦線で陣営を替えたうえ「そろそろ安全保障でも」といった状況にあるのです。

対越輸出が対日超える

 ちなみに、2015年1―10月の韓国の輸出額の国・地域別順位は1位が中国で2位が米国。2001年以降、長らく3位だった日本は5位に落ち、代わりに香港が3位に、ベトナムが4位に上がりました。

 サムスン電子の大規模スマホ工場があるため、ベトナムへは韓国からの電子部品の輸出が増えているのです。それにしても、韓国の対日輸出が対越輸出に抜かれる日が来るとは、ほんの数年前まで想像もできませんでした。

木村:聯合ニュースが「中国で人民元建て韓国債発行 早ければ年内にも」(11月9日、日本語版)を打っていました。

鈴置: 10月31日の中韓首脳会談での合意を受けたものです。本来は需給調整用の外貨を調達するのが目的の国債です。中韓間の貿易決済で人民元建てが増えているのでそれへの備えだ――と、韓国政府は説明しています。

 でも、本当は中国への援護射撃が狙いでしょう。中国は今、人民元をIMFのSDR(特別引き出し権)の準備通貨に採用してもらおうと動いています。

 韓国が人民元建て国債を発行すれば「国際通貨」とのイメージが増すので、採用を後押しできるとの計算です。米国や日本にとっては「妖怪の通貨」が世界に広がるのは嬉しくないのですが。

脆くなった米韓関係

—米韓関係はそこまで脆くなっているのですね。

鈴置:オバマ(Barack Obama)大統領が朴槿恵大統領を横に置いて「米中どちらの味方なのだ」と追い詰めたのを見て、世界がそれを実感しました(「蟻地獄の中でもがく韓国」参照)。

—両国はそれを取り繕うことができるのでしょうか?

木村:米国とすれば、韓国が何か具体的な対米協力の意思を示してくれると嬉しいでしょう。例えば、現在建設中の済州島の海軍基地の、有事の際の使用許可です。

鈴置:韓国と北朝鮮が軍事的な衝突を起こした際、韓国はもちろん米海軍の済州島への寄港を大歓迎するでしょう。問題は日中の紛争時です。

 仮に米空母が済州島に寄港しようとすれば、中国は黄海封鎖が目的と見なし、韓国に「受け入れるな」と命じるのは確実です。

 これを見越して韓国は、米艦船が無制限に済州島に寄港しないよう、何らかの歯止めをかけておきたいでしょうね。

反日国家の苦境

木村:となると、韓国が米国に誠意を見せるのは、在韓米軍の駐留経費をこれまで以上に分厚くする――あたりが関の山かもしれません。

 見返りに、北朝鮮有事への警戒を強める韓国も米陸軍を呼び戻す――とまではいかなくても、その削減スピードを落とすことを期待できます。これなら中国の直接的脅威とはならないので、韓国が米中板挟みに陥る可能性も低い。

 米韓の綻びを取り繕う動きを日本は注視すべきです。例えばこの仮説のように、韓国が米軍への待遇を向上させれば、米国は当然日本にもそれを要求するでしょう。米韓同盟が揺らぐからこそ、日米同盟もまた、その内容が問われていくことになります。

 日本の一部に、韓国の状況を「反日国家が苦境に陥っている」と冷笑する向きがあります。しかし変化する国際情勢の中で、立ち位置が問われているのは日本も同じなのです。

2人の釣り師と2匹の魚

鈴置:同感です。韓国はいざとなれば米韓同盟を打ち切って、中立を宣言すればいい。それは実質的に中国の属国に戻る道ですが、だからと言って米国から軍事攻撃を受けはしません。

 一方、日本は中国に立ち向かうことを決めました。「南シナ海はすべて中国のものだ」などというめちゃくちゃな主張を認めるわけにはいかないからです。

 日本は中国から、軍事を含めますます圧迫を受けることになります。それは今後、ずっと続くのです。韓国よりも日本の方が大変なのです。

木村:米中両国が力任せに自国の国益を実現しようとする中、日本も何が最も重要な国益であり、それを守るためには何をすべきかをきちんと考えておくべきでしょう。

 日清戦争のころの新聞漫画に「朝鮮という魚を釣り上げようとして釣り糸を垂れる日清両国と、その魚を横取りしようと狙っているロシア」という有名なものがあります。

 今の国際情勢も似た状況になっています。うかうかしていると、米中という2人の「釣り師」の間で、韓国も日本も「釣り上げられていく魚」になるかもしれません