11/10日経夕刊 『新疆自治区成立60年 ウイグル 中国が抱く火種 「漢化」に反発、難民拡散』について

日経も中国の人権問題にやっと触れるようになったかと言う感じです。これも、アメリカの中国に対する態度が変わったのを見て書いたのでしょう。どうせなら、ウイグル族だけでなく、チベット族、南モンゴル族の問題をシリーズで特集を組めばよいのにと思います。

1997年小生が北京にいたときに、漢民族から聞いたのは、「ウイグル族はすぐ刀で人を傷つけるから怖い」と言っていた記憶があります。たしかにこの記事にありますカシュガルはナイフの産地でもあり、お土産屋で沢山売っていました。また、黄色いモスクとして有名なエイテイガール・イスラム寺院があります。

中国で少数民族(と言っても百万、千万単位ですが)の言葉や宗教を奪ったり、伝統をも奪うのは共産党支配だからです。それに漢民族の民族性が加わり、「人のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」ということで統治してきているのだと思います。韓国は日本が創氏改名を強制したとかありえないことをすぐデッチ上げますが、宗主国を見本として捏造しているのでしょう。

東トルキスタン共和国は第二次大戦中、中華民国から独立しましたが、国共内戦終結後すぐに共産党に奪われました。チベットも時間差があるものの同じです。中国こそ侵略国家です。

「一帯一路」は中央アジアに抜けるためには新疆を通らなければなりません。戦略的な要衝の地です。でも中央アジアはイスラムですので、逆にテロリストが中国に流入することが考えられます。今でも事件が頻発しているのに、「一帯一路」で道を開けていけば、ISのメンバーが流入する可能性もあります。エジプトでのロシア機爆破も青山繁晴氏によればインサイダーテロとのこと。内部のものの手引きで手荷物にプラスチック爆弾を入れたようです。(ブログ「ぼやきくっくり」より:

http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid1802.html )今後こういうケースは増えていくでしょう。

中国は内憂(イスラム)外患(米国)と二正面作戦を取らざるを得なくなるでしょう。習近平の権力奪取への焦りが失敗の元です。『あぶない一神教』の中で佐藤優は、イスラムは何故死を恐れないかと言うのを次のように説明していました。「とくにイスラム過激派は死の問題を簡単に迂回できますからね。私は人間にとって宗教が必要なのは、死の問題を扱うからと、考えています。しかし彼らは死の問題と向き合っているように思えない。彼らは、生き残っても死んでも目的を果たしたと考える。テロを行って失敗したらシャヒード(殉教者)になって、天国で72人の処女と楽しく過ごせる。もし生き残って戦闘に勝利した場合は地域の支配を任されて、現実の世界で力を誇示できる。生と死、どう転んでも勝ちが約束されている(P.128~129)」とありました。宗教的確信を持ったものは、一向一揆のように、戦闘では手強いです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%B3%E5%85%B1%E5%92%8C%E5%9B%BD

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%88

Id Kah Mosque

エイテイガールモスク

記事

中国新疆ウイグル自治区が成立から60年を迎えた。中国政府は高度な自治と経済開発の恩恵を強調するが、民族対立の火種はくすぶったままで、現地では当局に暴力で抵抗する負の連鎖が止まらない。根底にあるのは宗教や文化への締め付け、中国語の強要といった「漢化政策」への反発だ。各地に「ウイグル難民」があふれ出すなど、問題は世界に拡散し始めている。

xinjiang

 北京市の中央民族大学。9月に上京したばかりというウイグル族の那比さん(仮名、19)は予科クラスで漢語(中国語)を学ぶ日々だ。「いっぱい漢語を勉強して、将来は故郷で起業したい」。たどたどしく夢を語ってくれたが、自治区の治安悪化やタイの爆弾テロ事件に話題が及ぶと表情が一変した。「そんなこと知らない。ウイグル族はみんないい人……」

 那比さんは漢化政策の影響を最も受ける世代だ。出身地のカシュガル地区は自治区南西部に位置し、伝統的なイスラム教文化を残す地域として知られる。だが最近は国家主導の大規模開発が進み、現代風の高層マンションや大型商業施設が次々と立ち並び始めた。アニメ好きという那比さんも親が比較的裕福な公務員で、小さいときからテレビやスマートフォンなど高価な機器に囲まれて育った。

 「お祈り? 一回もしたことがない」。共産党は公務員の家庭に宗教行為を禁じている。さらに当局の統制を受け、中国の報道各社は民族問題に絡む「不都合な真実」を一切報じない。那比さんも自治区や世界でいま何が起きているか全く知らないという。「私はおかしいの?」

宗教慣習許さず

 自治区設置の1955年から60年、域内総生産(GDP)は120倍に急拡大したが、漢民族の大量入植も進み、今では自治区の人口をウイグル族と二分するまでに急増した。歴代の自治区トップは全員が漢民族で、地下に眠る石油などの豊富な天然資源も漢民族主体の国有企業が利権を独占する。自治区とは名ばかりの共産党支配が続く。

 カシュガル地区のウイグル族男性によると、昨年夏には車で赤信号を無視しようとした若者が「テロ分子」として武装警察に射殺される事件があった。礼拝のために民家に集まった主婦や老人が「テロを画策している」と連行されることも珍しくないという。

 現地では男性のひげや政府指定の民族衣装以外の着用を禁止するなど、宗教慣習への締め付けも強まる。これに反発したウイグル族による暴力事件や警官襲撃も止まらない。

 さらにいま深刻になっているのが「ウイグル難民」問題だ。ベトナムと国境を接する広西チワン族自治区の憑祥市では、警官隊が深夜の山岳地帯で象牙の密輸ルートを使って密出国を試みるウイグル族の集団を取り締まっている。今年1月にはウイグル族の1人が市内の住宅街に逃げ込み、警官隊の銃撃を受けて死亡する事件も起きた。

 新疆からは3千キロメートルも離れた場所だが、射殺される危険をも冒しながら、毎月5千人にも上るウイグル族が海外逃亡を試みているという。「新疆での弾圧から逃れるため」(関係者)で、7月にタイ政府が中国に強制送還したウイグル族も、こうした逃避行の果てに拘束された人々だった。

沈黙続ける世界

 8月にはバンコクでウイグル族組織が関与したとされる爆弾テロが起きたが、国際社会は中国の経済力になびいて見て見ぬふりを続ける。「中国政府の新疆建設に明るい先行きを持っている」。9月下旬には英国のオズボーン財務相が英閣僚として初めて新疆を訪れ、現地の発展ぶりを持ち上げてみせたが、世界が自治区の現状に対して沈黙を続ければ、漢化政策による「ウイグル問題」はさらに混迷を深めそうだ。

(北京=阿部哲也)

ウイグル族

 主に中国西部の新疆ウイグル自治区で暮らし、2200万人強いる同自治区の人口の約半数を占める。トルコ系遊牧民族を起源とし、シルクロード交易全盛期の9世紀ごろ、モンゴル高原から移住してきたとされる。イスラム教徒が多く、独自の言語を使い、中国の歴代王朝から「西域」と呼ばれる固有の文化圏を形成したが、18世紀半ばに清朝が一帯を征服して統治下に置き、1949年に中華人民共和国に統合された。