『高市首相の存立危機事態発言に対する反応 対中強硬一色にならない理由』(12/5日経ビジネス 森永輔)について

12/6The Gateway Pundit<HUGE WIN FOR TRUMP: Appeals Court Rules President Had FULL AUTHORITY to Fire Rogue ‘Independent Agency’ Heads=トランプ氏にとって大きな勝利:控訴裁判所は、大統領には「独立機関」の長を解任する完全な権限があると判決>

下級審は上級審の判決に拘束されると思うのですが・・・。

米国コロンビア特別区巡回控訴裁判所は、国民が選んだ指導者から説明責任を果たさない官僚を守ってきた長年の議会障壁を撤廃した。

金曜日、3人の判事からなる審理委員会は2対1で、ドナルド・J・トランプ大統領と将来の最高司令官は、全米労働関係委員会(NLRB)と能力主義保護委員会(MSPB)の委員を理由なく解任する無制限の権利を有するとの判決を下した。

判決は、トランプ大統領によって任命された2人の判事、ネオミ・ラオ・カツァス巡回裁判官が執筆し、ジャスティン・ウォーカー裁判官も賛同したが、解任するのに「正当な理由」が必要とする保護を過去の遺物ながら支持してきた下級裁判所の判決を覆すものである。

「議会は、大統領が相当の行政権を握っている主要職員を解任する権限を制限することはできない」とカツァス判事は、最高裁が2020年に下したセイラ法律事務所対消費者金融保護局の画期的な判決を引用して記した。

問題となったのは、統合された2つの異議申し立てだった。1つは、財務長官スコット・ベセント氏を訴えているMSPB残留メンバーのキャシー・A・ハリス氏によるもので、もう1つは、トランプ大統領とNLRB議長マーヴィン・E・カプラン氏を標的としたNLRB委員のグウィン・A・ウィルコックス氏によるものだった。

1月、トランプ大統領はバイデン氏が任命した全米労働関係委員会の民主党委員長グウィン・ウィルコックス氏と委員会の顧問弁護士を解任した 。

両氏は、大統領が「正当な理由」を証明しない限り、連邦法によって解任を免れることができると主張し、職場復帰を求めて訴訟を起こした。

地方裁判所は官僚の側に立ち、トランプ氏が越権行為を行ったとの判決を下した。

ベリル・ハウエル判事はトランプ大統領を「国王」や「独裁者」に例え、大統領には全国労働関係委員会の委員を解雇する権限はないと述べた。

また、オバマ大統領によって任命され、反トランプ派の偏見を持つルドルフ・コントレラス判事は、 能力主義保護委員会(MSPB)の民主党委員長であるキャシー・ハリス氏を復職させた 。

しかし、DC巡回裁判所はその論理をきっぱりと否定した。

裁判所は、NLRBとMSPBが、ハンフリーのエグゼキューターで論じられた1930年代の連邦取引委員会に類似した「独立した」機関であるという主張を体系的に解体した。

代わりに、裁判官は、両機関が以下を含む中核的な行政機能を行使していると判断しました。

  • 広範な規則制定権限
    NLRB は、全国規模の団体交渉を再編成する拘束力のある規則を発行することができます。
  • 政策主導の裁定
    NLRBは、単に「ボールとストライクを判定する」どころか、判決を通じて国の労働政策を頻繁に書き換えています。裁判所は、NLRBが「日常的に政策上の考慮を援用」し、政治構成に応じて判決を覆していると指摘しました。
  • 積極的な執行権限 業務
    停止命令しか発行できなかった 1935 年の FTC とは異なり、NLRB は復職、未払い賃金の支払い、さらには損害賠償のような救済措置を課すことができます。
  • 司法省から独立した訴訟権限
    NLRB は連邦裁判所に執行訴訟を直接提起することができます。
  • 全国組合選挙に対する権限
    大統領や裁判所ではなく、理事会が交渉単位の構造を決定し、全国の組合の運命を決定する選挙を監督します。

一方、MSPB は、連邦機関の懲戒処分を覆す権限、連邦職員に罰金を課す権限、損害賠償、復職、弁護士費用を支給する権限など、さらに広範な権限を有しています。

巡回控訴裁判所は、最高裁の最近の画期的な判決であるセイラ・ロー事件コリンズ対イエレン事件、トランプ対合衆国事件を明確に根拠として判決を下し、大統領には重要な権限を持つ行政官を解任する権限が必要だと再確認した。

判決では、最高裁判所自身が2025年の初めに下級裁判所の復職命令を差し止めた際にすでにこの結果を示唆しており、 NLRBとMSPBが「かなりの行政権を行使している」可能性が高いため、解任保護は違憲であると述べていると指摘した。

ロバーツ判事が、バイデン氏の留任分を復活させる下級裁判所の命令の執行停止を認めたことが思い出される。

https://www.thegatewaypundit.com/2025/12/huge-win-trump-appeals-court-rules-president-had/

12/5Insider Paper<Trump strategy shifts from global role and vows ‘resistance’ in Europe=トランプ大統領の戦略は世界の役割から転換し、欧州での「抵抗」を誓う>

https://insiderpaper.com/new-trump-strategy-says-us-to-readjust-global-presence/#google_vignette

https://x.com/i/status/1997027619435585598

https://x.com/i/status/1991937573015400543

12/7阿波羅新聞網<川普高筑两道墙 北京武统最大噩梦袭来=トランプは二つの壁を築く:北京にとって武力統一への最大の悪夢がやって来る>

「国家安全保障戦略」と題されたこの報告書は、インド太平洋戦略を核心としており、異例なことに国家戦略レベルで「集団防衛」と「特定国による台湾占領の阻止」を盛り込んでいる。国防安全保障研究所国防戦略資源研究所の蘇紫雲所長は、この文書は米国が公式に発表したに等しいと指摘する。

第一の壁、すなわち法律上も戦略上も「台湾防衛」が明確に定義された。

こうして台湾は歴史的な「第四次戦略的チャンス期」に入り、長年の「疑米論」は完全に打ち砕かれた。

蘇紫雲は、トランプ2.0の戦略スタイルはセオドア・ルーズベルト風だと分析している。言葉は少ないが、一文一文が中共の急所を突いている。報告書は表面的には穏健に見えるものの、構造的には北京を「国際秩序に挑戦する意図と能力を持つ唯一の競争国」と位置付けている。

最も重要なのは、この国家安全保障戦略で台湾に8回言及し、「一つの中国政策」という表現を完全に削除し、米中関係を全面的にリセットするための3つの中核的な声明に置き換えている点だ。

—現状の一方的な変更に反対する

—特定の国による台湾占領を阻止する

—集団防衛

これら3つの声明は、トランプが台湾に対して掲げる「第二の壁」、すなわちインド太平洋における軍事力と同盟国による包囲網を構成している。

蘇紫雲は、これは米国が「曖昧な一つの中国且つ明確な相互防衛」へと転換していることを示していると指摘する。つまり、戦略目標は公に表明されているものの、戦術は柔軟なままである。米国は台湾海峡の安全保障をインド太平洋地域の安定の「錨」と捉え、同盟国と省庁横断的な連携を構築している。

2024年から2025年にかけて、米国、日本、台湾の安全保障報告書は極めて一貫性を帯び、事実上の「未署名同盟」を形成するだろう。

—米国は台湾関係法と「六つの保証」を根拠とする。

—日本の防衛白書は、中共の軍拡を戦後最大の脅威としてさらに列挙する。

—台湾の防衛報告書は、「防衛態勢と多層的な抑止力」を強調する。

蘇紫雲は次のように指摘した。「これは、台湾海峡で戦争が発生した場合、日本は日米安全保障条約に基づいて支援を提供し、米国は台湾が中共の手に落ちることを許さないことを意味する」。

やはりトランプ共和党のほうが台湾の味方=中共の台湾侵攻抑止。

2025年米国国家安全保障戦略(全文)

https://note.com/makoto03/n/n2b302ece5794

https://www.aboluowang.com/2025/1207/2316417.html

12/7阿波羅新聞網<突发:中日紧张升级=速報:日中緊張高まる>

防衛省は本日、日本近海を航行中の中国空母「遼寧」から発進した戦闘機が、昨日午後、自衛隊機を2度にわたってレーダー照射したと発表した。小泉進次郎防衛大臣は早朝、記者会見を開き、「極めて遺憾な行為だ。中国側に厳重に抗議し、再発防止を厳重に求めている」と述べた。

TBSと日本経済新聞の報道によると、小泉防衛相は、昨日午後4時32分から4時35分にかけて、遼寧省から発進したJ-15戦闘機が、沖縄本島南東の公海上空で航空自衛隊のF-15戦闘機を断続的にレーダー照射したと説明した。自衛隊機は領空侵犯への対応任務を行っていた。

その後、午後6時37分から7時8分にかけて、別のF-15戦闘機も中国軍機のレーダーによる断続的な照射を受けた。自衛隊機および操縦士に被害はなかったとされている。

小泉は、「これは航空機の安全飛行に必要な範囲を超える危険な行為であり、このような事態が発生したことは極めて遺憾である。中国側に厳重に抗議し、再発防止を厳重に求めている」と述べた。

2013年1月、中国軍による自衛隊へのレーダー照射事案が発生した。当時、東シナ海の公海上で、中国海軍艦艇が火器管制レーダーを用いて海上自衛隊の護衛艦に照射した。

レーダー照射とは、航空機のレーダーを作動させ、ロックオンすることを指す。これは、発射前の準備が完了したことを意味し、非常に挑発的な行為である。

アポロネットの王篤然評論員は、このレーダー照射は技術的な動作ではなく、政治的な武器であると分析している。中共が2013年に遼寧空母で行った挑発行為を再現することは、日米同盟の即時対応を試すものであり、日本の軍備増強と「集団的自衛権」の主張を阻止しようとする試みである。北京は恐怖心を煽りたいと考えているが、これは東京をより強力な反中戦略へと駆り立てるだけである。

「レーダーが点灯した瞬間、中共は日本の戦闘機を標的にしているのではなく、東アジア全域に戦争のリスクを煽っているのだ。」

中共の高市発言への一連の嫌がらせ。

https://www.aboluowang.com/2025/1207/2316419.html

何清漣 @HeQinglian 11h

トランプ大統領がロシア・ウクライナ和平交渉を前進させようとしている一方で、米国、英国、欧州のメディアは「ゼレンスキー大統領の側近たちの汚職」について爆発的に報道している。

11月中旬、ウクライナの汚職対策機関は、複数の閣僚、政府高官、実業家、ゼレンスキー大統領の側近、そして元ビジネスパートナーが関与する1億ドル規模の汚職事件を発表した。この事件には、現金が詰まった旅行バッグや、政府高官がマネーロンダリングについて話し合っている録音が含まれていた。

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森氏の記事で、瀬口氏は相変わらずの中国崇拝者なのでは。どうして日本の官僚出身者はヘタレが多いのか?宮本雄二(元中国大使)も日本の国益より中国の有利になるような話ばかりだし、瀬口氏(元日銀で中国駐在経験あり)も同じようにいつも中国ベッタリの話で、聴くのが嫌になるくらい。富坂聰拓大教授も同じタイプ。何故日本ファーストにならないのか?出世のためか、左翼思想に取付かれているからなのか、マネトラかハニトラに罹っているからなのか?どちらにしろこういう人物を出して記事にすること自体、メデイアの立ち位置が知れるというもの。

瀬口氏は官製デモの定義が分からないらしい。中共の統治する社会で民衆主導のデモなんてありえない。それは反乱と位置付けられるので。何年も中国に住んでいても、中共統治を美化しているから気づかないのでしょう。もっと下々の住んでいる世界へ降りて行けば、官憲の過酷な取り締まりや、強制収用の酷さが見えるでしょうに。

今回中共が反日デモをやらせないのは、日本企業の撤退を早め、且つ他国の企業も雷同する可能性があるから。これ以上の経済的ダメージを受けたくない。劉勁松ポケットマンが大連に言って日本企業にすがったのはその表れ。また反日デモは上述の中国語記事のように反中共デモに転化しかねない。

日本は中国の大きさに恐れおののいてなんかいない。日本人は口に出して相手を非難することはしない。黙って嫌うだけ。瀬口氏は日本人の心情を理解していない。

記事

この記事の3つのポイント

  1. 高市首相が「台湾有事は存立危機事態になり得る」
  2. 中国政府は姿勢を硬化させたが反日デモには至らず
  3. 日本世論も対中強硬一辺倒にならず。背景に国力差

高市早苗首相が「台湾有事は存立危機事態になり得る」と国会で答弁したのを受けて、日中関係が冷え込んでいる。とはいえ、中国で反日デモや日本製品に対する不買運動は起きていない。瀬口清之キヤノングローバル戦略研究所研究主幹は「2012年当時に比べて、日中間の相互理解が進んだから」と見る。日本の世論も「12年とは異なり、対中強硬論一色にはなっていない」(瀬口氏)。同氏は「中国の国力が増大し、日本を圧倒していることが背景にある」と見る。

(聞き手:森 永輔)

瀬口清之キヤノングローバル戦略研究所研究主幹(以下、瀬口氏):今回は、高市早苗首相による11月7日の国会答弁を機に悪化した日中関係を取り上げます。

—高市氏が10月21日、首相に就任した直後から、中国政府は警戒感をあらわにしていましたね。

瀬口氏:そうですね。中国政府は日本の首相交代に際して、習近平(シー・ジンピン)国家主席名で祝電を送るのを常としていました。しかし今回の送り主は李強(リー・チャン)首相でした。とはいえ、深刻な問題が生じていたわけではなく、実現が危ぶまれていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議での日中首脳会談も10月31日に無事に行われました。

私は、11月1日まで2週間ほど中国に滞在し、中国の有識者や中国に駐在する日本政府や日本企業関係者と意見交換をしていました。その時点では、彼らは主に日中関係の改善面を指摘していました。7~9月は、反日機運が高じるリスクのあるイベントが続いていたのですが、大過なく乗り切ったからです。

盧溝橋事件(77日)
中国映画「南京写真館」(725日公開。テーマは南京大虐殺)
中国映画「東極島」(8月8日公開。中国人漁師による英国人捕虜救出)
抗日戦争勝利80周年記念軍事パレード(9月3日)
満州事変/柳条湖事件(9月18日)
中国映画「731」(9月18日公開。公開予定日は7月31日だったが延期された。テーマは細菌兵器などの開発のために人体実験を行っていた731部隊)

9月3日には、習国家主席がロシアのウラジーミル・プーチン大統領や北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記を招いて抗日戦争勝利80周年記念軍事パレードを挙行しました。とはいえ、反日をことさら強調することはありませんでした。

反日デモや不買運動には至っていない

風向きが変わったのは、やはり11月7日です。高市首相は、衆議院予算委員会で立憲民主党の岡田克也議員から質問され、台湾有事に関わる答弁をしました。これを契機に中国政府はその姿勢を激変させ、日中関係は急速に悪化したのです。それまで、中国政府は日本企業を積極的に誘致する姿勢を維持していました。今回の問題によってその積極的姿勢が逆方向に転換することになれば、日本企業への影響は深刻です。

すでに現在までの段階でアーティストによるコンサートが数多く中止されました。シンクタンクなどが主催する民間交流の開催も見送られています。中国各地での各種イベントに参加する予定だった日本政府関係者の出席はすべて拒絶され、中国政府関係者の日本関係イベントへの出席はキャンセルされました。

とはいえ、幸いなことに、反日デモや日本製品に対する不買運動の広がりは今のところ見られていません。日本政府が尖閣諸島を国有化した12年の時は、反日デモが拡大し、一般の中国人が日本人に対し敵意を抱くまでに事態がエスカレートしました。中国で働く日本企業の駐在員は、家族の身の安全を守るのに必死にならざるを得ない状況に陥りました。家族が日本に帰国するケースも見られたほどです。

—12年に激化した反日デモは官製デモだったと言われていました。

瀬口氏:その通りです。中国では、外交問題をめぐって民衆の不満が高じてデモが起こると、それが反政府デモに転化する傾向があります。このため当時、中国政府が、そのコントロールの下でデモを起こし、民衆のガス抜きをするとともに、デモが過激化するのを避けたのです。

今回は、民衆が主導してデモを起こすまでに至っていません。12年当時に比べて、日中間の相互理解が進んでいることが背景にあると感じます。例えば、日本を訪れる中国人旅行客の数は12年の143万人から19年の959万人へと急増しました。しかも、日本は、中国人が好む旅行先のトップになっています。日本に留学する中国人学生の数も12年の8.6万人から24年の12.3万人に増えています。

ちなみに、中国政府は「日本における治安の悪化」を強調していますが、木原稔官房長官が述べているように、これは事実に反すると見られます。日本で暮らす中国人が、日中関係の悪化を理由に日本人から身体的な危害を加えられたという話は聞いたことがありません。もちろん、子供が学校で嫌がらせを受けたといった話はありますが。

他方、中国に駐在する日本人ビジネスパーソンで、身の危険を心配し始めている人は少なくないと見られます。過去に、反日感情が高まり、身体的な危害を加えられた例が少なくないからです。

日本人が日中の国力の差を認識

中国人の受け止め方が12年の時と異なるのと同様に、日本人の受け止め方にも変化が生じていると感じます。

12年当時の日本の世論は対中強硬論一色でした。それと比較すると、今回は、中国との経済交流が深刻なダメージを受けることに懸念を示すコメントをメディアが数多く報じています。

それを受けて、ホテルや飲食店、商店などが高市氏の答弁に対して批判的なコメントをし、それが国民の間に広く流布しています。

日本人の受け止め方が変化した背景には、中国の国力増大が影響していると考えられます。中国の名目国内総生産(GDP)は、12年の約8.7兆ドルから24年の18.7兆ドルに拡大しました。日本のGDPとの比は、1.4倍から4.7倍に開きました。軍事力の格差はさらに拡大したと見られます。

国際社会におけるステータスは、中国が日本を圧倒しています。中国の国力の強さを米国も認めざるを得ません。ドナルド・トランプ米大統領は10月31日の首脳会談前後に、SNS上で米中関係を「G2」と表現しました。欧米諸国では、ウクライナ戦争の停戦協議においても中国に一定の役割を果たすことを期待する声があります。中東、南米、アフリカなどとの外交関係においてもプレゼンスが高まっています。

こうした実情を多くの日本国民が理解したが故に、受け止め方を改めたのだと思います。かつて存在した、中国を下に見る見方は減少しました。中国の薛剣・駐大阪総領事の発言など、中国側の非礼な対応に憤りを抱きつつも、経済や外交・安全保障の現実を考慮し、「対中強硬一辺倒の対応を主張するのは現実的ではない」と考えるようになった日本人がかなりの割合に達していると感じます。

こうした世論の変化は、安易に対中強硬姿勢を示していた政治家の認識にも変化を与える可能性があると思います。日本政府も、日中両国の国力差が拡大している現実を考慮して対応を取ることが求められます。

このような状況に直面すると、日本経済が1990年以降、長期にわたって停滞したことが、日本から政治外交力を奪ったことを実感せざるを得ません。

ただし、幸いなことに今、日本経済は30年ぶりに目を覚まし、少しずつ回復軌道を歩み始めているように感じられます。賃金も物価も上がり始めました。長期的な視点に立って、経済力をはじめとする国力を回復させる施策に本格的に取り組む時が来ていると考えます。経済力復活のかぎを握るのは人材です。人材の力を高めるためには、日本人が本来重視していた利他、至誠、知行合一の精神を復活させることが必要だと考えます。

こうした人格形成教育の重視は一見、経済力、人材の質といった国力の基礎を左右する要素と関係がないように見えます。しかし、日本が江戸時代以来、国民全体で培ってきた伝統思想に基づく利他、至誠、知行合一といった人間力は、世界からの高い評価につながります。野球のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)や、サッカーワールドカップにおいて、日本人観客が自席周辺の後片付けをしたことが世界から称賛されたのはその一例です。

米国や中国において日本観光の評価が急速に高まっているのも、こうした日本の伝統精神文化が支えるおもてなし、思いやり、社会の安定、治安の良さといった精神面の価値に対する高い評価が影響していると考えられます。

さらに経済面でも、日本の立派な経営者は渋沢栄一、豊田佐吉、松下幸之助など人格的にも優れた人物だったことが知られています。ノーベル賞を獲得した著名な学者や大谷翔平、栗山英樹、川上哲治といったスポーツマンも人格者として高く評価されています。特定分野において目覚ましい業績を上げるには特別な素質に恵まれた専門能力が重要ですが、それを超一流のレベルまで磨き続け、周囲の人たちから熱い支援を受け続けるには立派な人格を備えていることが必要です。

優れた人格は利他の精神、至誠、人一倍の努力、自己規律、他者への思いやりなど、全面的な人間力であり、経済、文化、政治・外交あらゆる面において立派な業績を修める土台となります。日本が国力を回復するためには、幼稚園、小学校から大学、大学院、企業内教育に至るまで、日本の伝統精神文化に基づくモラル教育、人格形成教育に注力することが重要です。

中国はいつまで強硬を続けるのか

—中国政府は、現在の厳しい姿勢をいつまで続けるつもりでしょうか。

瀬口氏:それは分かりません。しかし、中国経済は引き続き減速傾向が続いており、日本企業による投資を求めています。いずれ融和姿勢に転じる可能性はあると考えます。

直近の中国経済は「総崩れ」と形容できる状況です。2025年7~9月期には前年同期比7.0%増と堅調だった輸出が、10月は前年同月比0.8%減とマイナス成長に転じました。10月の消費は前月比2.9%増(7~9月期は前年同期比3.4%増)、投資は前月比1.7%減(7~9月期は前年同期比0.5%減)とマイナス幅を拡大させています。

こうした動向を受けて、11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)の値は49.2となり、4月以降8カ月連続で50を割り込みました。非製造業PMIの値は49.5。新型コロナウイルス禍の最末期に当たる22年12月以来の50割れとなりました。

こうした状況下、中国政府は11月、消費と投資両面において新たな景気刺激策を発表しました。ただし、その中身は供給力の質向上、民間企業のインフラ建設への参入促進策などが中心で、財政支援や補助金などの具体策を含んだものではなく、即効性は期待できません。このため、10~12月期の成長率が前年同期比4.4%に達するかどうか微妙です。4.4%に達しなければ、通年で同5.0%を達成することができなくなります。5.0%前後という通年目標の達成は問題ないと見られていますが、5.0%に達するかどうかについては見方が分かれています。

中国外務省の劉勁松アジア局長が中国で活動する日本企業を訪問し、「中国で安心して事業活動をしてほしい」と伝えたと報じられました。日本外務省の金井正彰アジア大洋州局長との協議の後、ポケットに手を入れたまま見送った、あの局長です。商務部、工業・情報化部、地方政府など日ごろから日本企業との接点が多い政府関係部門の高官が日本企業を重視するのはよく理解できますが、外交部の高官が日本企業を直接訪問するのは珍しいことです。これについても「上からの指示」があったのかもしれません。

中国にとって、対中直接投資の観点から実質的に重要なのは日本と米国、ドイツの3国に限られます。この状況が、中国政府に対日姿勢の転換を促す要因の一つになるかもしれません。

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