3/19・20日経ビジネスオンライン 鈴置高史『「反米民族主義」が復活する韓国 「駐韓米大使襲撃事件」を木村幹教授に聞く』記事について

「歴史は繰り返す」と言いますが、日清・日露戦争あたりの朝鮮半島を彷彿とさせます。清・露・日の大国に挟まれ、アッチに付いたりコッチに付いたり。事大主義の典型です。今は米・中・露の3ケ国で韓国の手足を引っ張り合っている構図です。でも自業自得でしょう。蝙蝠外交は相手国総てから信頼されないという事が分からない民族性なので。安保は米国、経済は中国とか切り離して考えることが如何に危険か分かっていない。北朝鮮と戦争に成ったら、中国と経済がそのままという事はないと思います。中国としても北朝鮮の同盟を無視して、韓国を支援はできません。勿論北朝鮮は石油がなく、継戦能力はありませんが、ロシアが支援すれば別となります。ましてや北は核保有国、ロシアがウクライナに核使用の可能性を明言した通り、北も明言するかも知れません。韓国はそれを防ぐためにもTHAADの配備が必要なのにそれが分かっていません。

AIIB参加、THAAD配備でお茶を濁そうとしても米国が許すかどうか。米国も頭が悪いというか、中華・小中華の民族性が全然分かっていません。「裏切り」は常套手段です。THAAD配備しても軍事機密が中国に筒抜けになる可能性もあります。アチソン声明のように朝鮮半島から身を引き、台湾と日本で中国の軍事膨張を食い止めるようにした方が良いと思います。

記事

「反日の日」に反米デモ

—木村先生は3月5日のリッパート(Mark W. Lippert)米大使襲撃事件の当日、ソウルにおられました。韓国の空気はどんなものでしたか。

木村:まず、その4日前にソウルで繰り広げられた「3・1節」のデモに注目すべきと思います。「反米」が全面に出ていたのです。これには正直、驚きました。

 今回のソウル訪問の目的の1つは、例年行われるこのデモを観察することでした。米大使襲撃事件を考えるために、韓国の変化をくっきりと映したこのデモの話からいたします。

鈴置:1919年3月1日に起きた、日本からの独立運動が「3・1運動」。それをたたえるデモですね。この日は韓国では「反日記念日」です。

 私がソウルに住んでいたのは4半世紀前の話ですが、日本人はこの日は外出しないよう注意を受けたものです。一方、米国は日本から韓国を救ってくれた恩人。感謝されるべき日だったのですが……。

木村:だから、このデモで「反米」のメッセージが強く打ち出されたことに驚いたのです。今年はソウル大学医学部近くのマロニエ公園から、日本大使館そばの国税庁までデモ行進があるというので取材に行きました。

 集まったのは300人ほど。韓国の進歩派、分かりやすく言えば左派が組織したデモでした。しかもその中で、かなり過激な路線をとる主思派(チュサパ)――北朝鮮の主導原理である主体思想を信奉する流れのグループです。

 デモの先頭に掲げられたのは「反日の日」だけあって、さすがに日本を批判する「慰安婦」関連のプラカードでした。しかし次に出てきたのは「GSOMIA反対」。ここで反米色が一気に強まりました。

朴と安倍を操るオバマ

—GSOMIAとは?

鈴置:2012年6月に日韓の間で結びかけたけれど、韓国が当日になって署名をドタキャンした軍事情報保護協定のことです。日韓の軍事情報交換は日米韓の「中国包囲網」につながると懸念した中国が、韓国に圧力をかけた結果でした。

 結局、「情報の交換は北朝鮮の核・ミサイルに限り、かつ米国経由とする」と矮小化したうえ、覚書に格下げして2014年12月にようやく実現しました。中国の顔色を見る韓国に配慮して「中国包囲網ではない」形をとったのです。

木村:もちろん、GSOMIAも覚書も米国が勧進元です。だからデモ隊はこれをことさらに取り上げることで「危険な日本との軍事協力は、実は裏でワシントンが仕切っているのだ」と訴え、米国に対する拒否感を盛り上げたのです。

それを分かりやすく示すためでしょう、オバマ(Barack Obama)大統領のお面をかぶった参加者が、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領と安倍晋三首相のお面をかぶった2人にヒモをつけて後ろから操ってみせていました。

鈴置:米大使襲撃犯が訴えた「米国主導による日韓癒着」と全く同じ主張ですね。日韓関係の悪化に悩むオバマ大統領が見たら「そんな風に操れたらどんなにいいことか」と苦笑したでしょうけれど。

“習近平”もデモに登場

木村:全くその通りです。デモ隊の話に戻りますと「GSOMIA」の次は「NO! THAAD(サード)」が登場しました。新聞用語で言えば「終末高高度防衛ミサイル」です。THAADなど知らない人も多いからでしょう、紙で作ったミサイルをかぶった人がいました。

 デモの隊列もここまで後ろの方に来ると、先頭グループが訴えていた慰安婦問題はもちろん「日本」そのものがどこかにすっとんでしまっています。つまり「米中どちら側の言うことを聞くのか」と国民に迫るデモになっているわけですね。

 米国は今、ミサイル防衛(MD)の一環として在韓米軍基地にTHAADを配備しようとしています。

 一方、これを食い止めようと中国は今や、公式的にも反対している。THAADは名目こそ北朝鮮のミサイルに備えるものだけど、実際には中国の核戦力への防御手段である。そんな中国に対する敵対行為は容赦しない――というわけです。

 そして、それを裏打ちする形で、デモ隊の列の最後の方に、習近平のお面をかぶった人が登場しました。そして“習近平”の手にはプラカードが。

 書かれた文句は「中国から貿易黒字を稼いでいるのに、どうしてTHAADを配備するのか」――。”習近平”は「米中どちらをとるのか」と、改めて韓国人に迫ったのです。

矛先は日本から米国に

鈴置:彼らのシュプレヒコールは?

木村:最も多かったのが「戦争反対!」です。誰にでも受け入れられやすいからでしょう。

鈴置:韓国メディアによると、米大使襲撃犯も犯行直後にこのスローガンを叫んでいました。米韓合同演習の最中で、これが北朝鮮との戦争につながると中止を求めてもいた。

木村:「戦争反対!」を除くとシュプレヒコールの順番は、プラカードの並べ方と同じで「慰安婦」→「GISOMIA」→「THAAD」でした。

鈴置:韓国の民族主義の矛先が、日本から米国に向き始めたということですね。少なくとも、そうさせようと狙う勢力がいるということですね。

活動家育てる巧みなデモ

木村:ええ、参加者に対する教育効果も狙っているのでしょう。「戦争反対!」とか「安倍政権は慰安婦に謝罪せよ」とか、若い学生にも共感できるスローガンを叫ばせる。

 そのうちに、もともとは関心の薄かった「GSOMIA」や「THAAD」にも反対させ、無意識のうちに反米感情を彼らに植え付ける仕掛けと思います。この辺りは韓国の運動体のデモはなかなか巧みです。

 こうした「反米」デモは韓国ではこの5年ほどすっかりなりを潜めていました。それが今回、あまりにも露骨な形で登場した――しかも、すっかりノンポリ化しているはずの大学生を動員して――です。

 韓国で「反米」が復活しつつあるのです。まず、米国によって北朝鮮や中国との対立や戦争に巻き込まれる――との恐れから。そして「格差」です。朴槿恵政権が新自由主義的な経済政策をとっていることもあって、それには火が付きやすい。

鈴置:若者の失業率の高さは日本とは比べものにならない。それはいっこうに改善しませんし。

木村:ただ「韓米同盟破棄」というスローガンは私が聞いた限りはなかった。そこまで一気にいくと、普通の韓国人は引いてしまうからと思います。

 このデモは、要は「今のままだと中国との関係も取り返しがつかないほどに悪化するぞ。韓米同盟の危険性を見つめよう」――との呼び掛けでした。そしてこれこそ、デモを組織した勢力が一番言いたいことなのです。

朴政権も「民族主義」の標的に

—参加者は素人だった、ということですか?

木村:要所は活動家が固めていましたが、多くは”初心者”でした。例えばプラカードの持ち方がなっていない。道行く人に見せるのではなく自分たちの方に向けていたりしました。

 デモを指揮する活動家が、交通整理の警官ともめ事を起こした時には、”初心者”から「ムソゥオー」との声があがりました。日本語に訳せば「怖わー」です。

 普通の学生が過半だったと言っていいと思います。大学ごとに数10人のグループで参加していたようですが、彼らの話を聞くと「慰安婦問題に関心があって参加した人」が目立ちました。

 こうしてみると「慰安婦」を主たる材料に「反日民族主義」的な政策を打ち出してきた朴槿恵政権が、逆にこの「反日民族主義」の標的になりつつあることも分かります。

 学生らは「慰安婦」を入り口に運動に入る。しかし、この問題を解決できない、あるいは米国の圧力もあって一部では日本に協力せざるを得ない現政権を見て、批判を強める。そして運動は次第に「反朴槿恵」的な性格を濃くしていく――という流れです。

 今後、朴槿恵大統領が「慰安婦」で少しでも日本に譲歩したと受け止められるような動きをしたら、こうした民族主義者は黙っていないでしょう。運動家は好機到来とばかりに、それを利用することでしょう。

鈴置:デモに参加した学生らは、まだきっちりと組織化はされていないのですね。

高齢化する保守層

木村:ええ。大学から参加した人に聞くと、お互いの関係はまだ「デモ前に数回、集会で会ったことがある」くらいでした。組織としては、これから育てていく感じでした。

 韓国は3月が新学期ですが、入学したばかりの学生もいました。つまり、新入生は正式に入学する前から、このデモに勧誘されていたわけです。

 2014年12月に国会内では最左派の統合進歩党が解散させられたばかりです。北朝鮮の指示を受け、韓国の政体を暴力で破壊しようとする団体と憲法裁判所に認定されたからです。

 こうした北朝鮮に近い組織を再建するためにも「3・1節デモ」が使われている側面があると思います。

鈴置:昔、この日は「反日」を叫ぶ保守派が活動の中軸だったのですが……。

木村:そこです、時代の変化を感じさせたのは。今年は、保守派がいったんは申請したデモを取りやめたそうです。理由は「主催者の体調不良」。

 デモに参加するような積極的な保守層は高齢化が進み、まだ寒い3月初めのソウルの街頭に出るのはつらかったのかもしれません。

鈴置:300人のデモは数としては少ない気がします。1987年の民主化闘争の頃は、数10万人規模のデモもしばしばありました。

懐かしいスローガン、再び

木村:あの頃の韓国は政治の季節でしたからね。学生はデモに参加するのが当たり前だった時代です。

 しかし今は「ノンポリの時代」です。というのに突然「3・1節デモ」が最近にない盛り上がりを見せた。反日デモで参加者が数百人の単位になったのは、久しぶりのことです。

 注目すべきは「反日の皮をかぶった反米」が顔をのぞかせたことであり、突然に盛り上がった反米の空気の中で米大使襲撃事件が発生したことです。これを見落としてはなりません。

鈴置:1980年代に日本で叫ばれたスローガン「日米『韓』3角軍事同盟反対」を思い出します。1983年に中曽根康弘首相が日本の首相として初訪韓し、全斗煥(チョン・ドファン)大統領と会談しました。

  その後、日本では北朝鮮の意向を受けた団体が「米国が日本と韓国を癒着させ、戦争の道に押しやっている」と主張しました。おりしも米国はレーガン(Ronald Reagan)大統領の時代で、共産主義との対決姿勢を鮮明にしていました。

 勤務地だった大阪市東部の歩道橋の上に「3角同盟反対」の横断幕がかかっていたのを今でも覚えています。彼らは韓国を国とは認めないので「韓」とカッコでくくり、「3国」ではなく「3角」としたのです。

木村:同じ時期に韓国でも、日本以上に激しい「反日反米」運動が盛り上がりました。今回の「反日反米」運動はまだ、立ち上がったばかり。でも、あの時代の再来なのです。

 我々のように長く韓国を見ている人間にとっては「懐かしいスローガン」ですが、今の韓国の若者にとっては新鮮に響くのかもしれません。実際、デモに参加した学生たちはとても楽しそうでした。

「ここはイラクなのか?」

鈴置:韓国の保守も「突然に復活した反米」に警戒を強めています。だから、米大使襲撃事件後、彼らは「米韓同盟強化」を大声で叫ぶようになったのでしょう(「『米大使襲撃』で進退極まった韓国」参照)。

 さっそく柳根一(リュー・グンイル)という保守の長老が筆をとりました。襲撃事件当日の3月5日に趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムに「『3流エセ民族主義者』の蛮行を糾弾する」(韓国語)を掲載しました。

 柳根一氏は朝鮮日報の論説で鳴らした、韓国では知らぬ人のいない記者です。記事からは韓国保守の焦りがよく分かります。要旨は以下です。

  • 米国大使へのテロが起きるこの地は、イラクかアフガニスタンなのか? 第3世界の近代民族主義は、もともと植民主義、帝国主義に対するアンチ・テーゼから生まれた。
  • 韓国社会の一角にはいまだ、韓国を帝国主義者が支配する植民地、あるいは半植民地、貧農国家と見なし、それを支える韓米同盟を民族、民衆、統一、平和の敵と敵視する時代錯誤の「3流のエセ民族主義」が残っている。
  • 1980年代の新軍部(全斗煥政権)時代に、この「3流のエセ民族主義」が生まれ、頂点に達した。多くの国民は(民族主義を唱え活動する)学生に対し心のどこかで「彼らはそれなりの理由があって怒っているのだから、あれだけやるのも……」と考えもした。
  • だが、今日の大韓民国がいけないというのなら、ほかに何があるというのか。大韓民国が植民地というなら、休線ラインの北側は何だというのか。
  • 今回の米大使へのテロで、犯人とその同志らは宣伝戦で相当の得点を稼いだ。韓国があたかも反米運動の場であるかのように世界に宣伝した。米国国民の情緒の片隅に「そんな国となぜ同盟を結ぶのか」と反感を起こさせないとも限らない。

木村:保守派の危機感がよく現れた記事ですね。ただ、北朝鮮の影響を大きく見過ぎてはいけないと思います。重要なのは北朝鮮の動向以上に、「反米」が受け入れられやすい環境が韓国に生まれていることなのですから。

対韓融和派を傷つけた

—大使襲撃事件により、米国は韓国への姿勢を変えるでしょうか?

木村:短期的には大きな影響はないでしょう。米国は1人の跳ね返りの犯行に怒って、韓国への政策を変えるほど「子供」ではありません。

 でも構造的、あるいは長期的には影響が出るでしょう。犯人は大使、それも「米中間で板挟みになりがちな韓国の立場にも配慮すべきだ」と説いていた対韓融和派の大使を傷つけてしまったのです。この結果、ワシントンで対韓政策を決める際の勢力バランスが変わる可能性があります。

 朝鮮半島には関心が薄かったオバマ(Barack Obama)大統領も、この事件で朝鮮半島情勢、とりわけ韓国社会の雰囲気の変化に注目したことでしょう。

「3・1節デモ」がいみじくも示したように、韓国の「反日」は「反米民族主義」をカモフラージュする側面が強い。それに気がついた米国人も多いと思います(「『反米民族主義』が復活する韓国」参照)。

 実際、米専門家の間では事件前から懸念が高まっていて、生え抜きの外交官であるシャーマン(Wendy R. Sherman)国務次官が韓国に対し「安易な民族主義の利用はやめるべきだ。そうでないと外交を誤ることになる」と警告したばかりでした。

被害者ぶるな

鈴置:米国はこの事件をテコにして、朴槿恵(パク・クンヘ)政権の「二股外交」や「離米従中」をやめさせるつもりでしょう。

 3月8日にリッパート(Mark W. Lippert)大使が入院先で語った「これは米国への攻撃だ。米韓同盟を一層強固にすべきだ」 との発言がそれを物語っています。

 以下は私の見立てです。まず、米大使は「米国への攻撃だ」という言葉で「お前ら韓国人は被害者ではなく、加害者だろう。責任転嫁するんじゃない!」と叱った。

 韓国紙が社説で「大韓民国へのテロだ」などと自分も被害者になりすまそうとしていたからです(「『米大使襲撃』で進退極まった韓国」参照)。

 さらに米大使は「米韓同盟を強固に」という文言で「米韓同盟を維持したいなら、二股外交をやめろ。終末高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)の配備ぐらい、さっさとのんだらどうだ」と要求した――と読めるのです。

 韓国人もその辺の感じはよく分かっている。日本人に向かっては「雨降って地固まる」などと強がってみせます。でも内心は、米国の顔色を必死でうかがっています(「『米大使襲撃』で進退極まった韓国」参照)。

THAADで与党と青瓦台が対立

—被害者が言うならともかく、加害者側が「雨降って地固まる」というのも、すごい話ですね。

鈴置:そこが韓国人の韓国人たるところです。米国にすれば、逆手にとって「だったら地面を固めて見せろ。THAAD配備に直ちに賛成しろ」と突っ込めるわけですが。

木村:文字通り、大使襲撃事件が韓国にとって「中国側に行くのか、米国側に残るのか」の踏み絵となってしまいました。

 保守の与党、セヌリ党執行部からは早速「米国のTHAAD韓国配備に賛成すべきだ」との声が上がりました。しかし朴槿恵政権はおいそれとのむわけにはいかない。

 朴大統領は習近平主席から「配備を許すな」と釘を刺されているからです。3月15日の与党と政府の政策調整協議会で、この問題も話し合いましたが、結論は出ませんでした。

 踏み絵を迫られたのは、政府や与党だけではありません。最大野党である新政治民主連合の文在寅(ムン・ジェイン)代表は3月13日、フィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで「在韓米軍の役割は統一後も維持されなければならない」と語りました。

 THAADに関しては言及しなかったようですが、次期大統領選挙もにらんで「右」に翼を広げた格好です。THAAD配備に柔軟な態度を見せる伏線かもしれません。

始まった国論の分裂

鈴置:米大使襲撃事件の直後は「進歩派によるテロ」と批判され、一瞬はうろたえた左派ですが、反撃に出ました。

木村:左派からは「テロはよくないが、米韓軍事演習を減らせ」といった声も出てきました。

鈴置:左派系紙、ハンギョレの「韓国与党、従北世論つくりに続き、テロ防止法・サードまで推し進める」(3月9日、日本語版)や「米大使襲撃……それでも言うべきことは言おう」(3月13日、日本語版)がその象徴です。

木村:左派は反米色が濃く、総じてTHAAD配備に反対です。ただ、新政治民主連合は日本の民主党にも似て、様々のイデオロギーを持つ人が存在します。下手するとこの問題で分裂するかもしれない。

鈴置:それは保守も同じことですね。

木村:ええ、青瓦台(大統領府)と与党はさらに関係が悪化するかもしれません。韓国では国を挙げて「中国の言うことを聞くか、米国に頼るか」で国論の分裂が始まったのです。

中国も韓国を「金縛り」

鈴置:見逃せないのは中国の動きです。文在寅代表はFTと会見した3月13日に、邸国洪・駐韓中国大使とも会談しました。

 大使から中国訪問の要請を受け「できるだけ早い時期に訪中したい」と答えています。文在寅代表が次の大統領選で勝つ可能性もある。そこで中国は「次期大統領」を取り込み、THAADなどでの「米国回帰」に今から歯止めをかける狙いでしょう。

 米大使襲撃事件後、中国は形勢挽回に出ています。野党の代表だけではなく、韓国全体を金縛りにしようと動いているのです(「“4強”の動き」参照)。

米大使襲撃事件前後の“周辺4強”の動き(2015年)
2月23日 日韓の最後の2国間通貨スワップ枠(100億ドル)延長されず
2月25日 ロシアが「南北朝鮮への電力供給と、北の鉄道改修を推進」とロ朝ビジネス協議会で表明
2月27日 シャーマン米国務次官「歴史認識により日中韓の協力が妨げられている」
3月1日 朴大統領「慰安婦は必ず解決すべき問題。日本の歴史教科書の歪曲で関係悪化」
3月2日 日本外務省、韓国に関するHPの記述から「自由と民主主義など基本的価値観を共有する」を削除
3月5日 韓国の反米民族主義者、リッパート駐韓米大使をナイフで襲撃、ほほに80針の傷負わせる
3月8日 リッパート駐韓米大使、入院先で「米国への攻撃だ。米韓同盟を一層強固にすべきだ」
3月8日 中国の王毅外相が中朝首脳会談の開催可能性を示唆と聯合ニュースが報道
3月12日 米韓連合司令部「THAAD韓国配備に向け候補地を非公式に調査済み」と公表
3月16日 訪韓した中国の劉建超外務次官補「THAAD配備に憂慮」「AIIBに参加を」
3月16日 中国、抗日戦争勝利70周年記念行事に朴大統領を招待
3月16日 訪韓した米国のラッセル国務次官補、襲われ負傷したリッパート駐韓米大使に面会
3月17日 ラッセル米国務次官補「軍には北朝鮮の弾道弾の脅威に備えたシステムを考慮する責任」

3月8日に聯合ニュースが「中国外相 中朝首脳会談の開催可能性を示唆」(日本語)と報じました。この記事をよく読むと「示唆」とまで書くのは踏み込み過ぎと思います。

 しかし韓国では「大使襲撃事件を機に米国回帰しそうな韓国に対し、中国が『それなら北朝鮮と関係改善するぞ』と脅してきた」と受け止められました。

 例えば、朝鮮日報の社説「朝中関係改善を懸念、韓国外交に新たな試験台」(3月11日、韓国語)が、そう書いています。

AIIBは3月末が期限に

—中国が米国の無言の圧力を押し返すのに成功した、ということですか。

鈴置:いえいえどうして、中国の“反撃”に対しては米国も黙っていません。3月12日には、米韓連合司令部が「THAAD韓国配備に向け、候補地を非公式に調査済み」と公表しました。

 板挟みに困惑した韓国に泣きつかれたためでしょう、これまで米国は「THAAD問題では韓国と話し合っていない」という公式見解をとっていました。

 でも、この発表で「中国などは気にせず、さっさと配備を受け入れろ」と通告したも同然です。米韓連合司令部の副司令官は韓国人将官なのですから。

木村:韓国に突きつけられた踏み絵はTHAADだけではありません。聯合ニュース(日本語版)は「中国主導のインフラ投資銀行への参加 今月中に結論」と3月15日に報じました。

 アジアインフラ投資銀行(AIIB)に関しては、米国からは「参加するな」と言われています。韓国はTHAAD同様に、決断を先送りしていました。

 ところが最近、中国が「3月末までに加盟を決めないと創業メンバーに加われず、不利な状況に置かれるぞ」と“忠告”したと言われています。状況は急速に煮詰まっています。

米中がソウルで白兵戦

—ぐずぐずするな。「踏み絵」は3月末までに踏め、という中国の要求ですね。

鈴置:その通りです。韓国は「米中二股」を決め込み、THAADもAIIBに関しても曖昧な姿勢に終始してきました。

 でも突然に「中国側に行くのか、米国側に残るのか」立場を決めざるを得なくなりました。米大使襲撃事件をきっかけに、一気に外交ゲームが加速した感じです。

 THAADについて韓国が態度を決める締め切りを米国は設定していないようです。しかし、韓国内には「AIIBに参加し中国側に付くのなら、バランスをとってTHAADでは米国側の言うことを聞く――配備を容認すべきだ」との声もあります。AIIBにTHAADの問題が連動する可能性があるのです。

 3月16日は象徴的な日になりました。米中双方の外交当局の高官がソウルで“激突”したのです。

 訪韓した中国の劉建超外務次官補が同日、韓国政府に対し「THAAD配備に憂慮」と表明したうえ「AIIBに参加を」と要求しました。さらには2015年9月頃に開く、抗日戦争勝利70周年記念行事に朴槿恵大統領を招待しました。

 一方、米国のラッセル(Daniel R. Russel)国務次官補は同日、ソウルに到着、リッパート駐韓米大使を見舞いました。そして翌17日に韓国外務省幹部と会談しました。

 会談後、記者団に「軍には北朝鮮の弾道弾の脅威に備えたシステムを考慮する責任がある」と述べ、THAAD配備の必要性を訴えました。

 そのうえで「まだ配備もしていない、理論上の安全保障のシステムに対し、第3国が大声を出すのはおかしな話だ」と中国を批判しました。ソウルを舞台に、米中の白兵戦が始まったのです。

背景にはロシア

木村:ロシアの動きも見逃せません。ロシアは朝鮮半島の取り込みに力を入れています。2月25日にロシアは「南北朝鮮への電力供給と、北の鉄道改修を推進する」と表明しています。

 中国は米国だけではなく、ロシアも念頭に置いて動かねばならないのです。「中国外相が、中朝首脳会談を示唆」というのは韓国よりも、ロシアを意識した動きでしょう。下手すると、独占的だった北朝鮮への影響力をロシアに奪われますからね。

 2014年から、ロシアは北朝鮮との関係を急速に深めてきました。中国との関係が悪化した北朝鮮には願ってもない話です。そしてロシアはこれをテコに韓国まで「釣り上げよう」としているかに見えます。

 ロシアは5月に対独戦勝記念式典を開きます。南北朝鮮双方の首脳に招待状を送っています。ただ、ウクライナ問題でロシアと関係の悪化した米国は、韓国に参加しないよう求めている。

 しかし朴槿恵大統領は、訪ロを簡単にあきらめられない。ロシアに行けば、金正恩第1書記と会談できるかもしれないからです。もし南北首脳会談を実現できれば、一気に人気を回復できる可能性が大です。

日米外して「大陸会議」

鈴置:朴槿恵大統領が5月の戦勝記念式典に参加するために訪ロすれば、中国が9月にも開催を計画している抗日戦争の戦勝70周年記念式典にも参加する可能性が高まります。

 韓国はロシア以上に中国の言うことを聞かざるを得ないからです。でもそれは、中国と一緒に対日共同戦線を張ると受け止められるでしょう。日本とだけではなく、米国との関係もさらにおかしくなるかもしれません。

木村:ロシアからの圧力は、対中接近の格好の「言い訳」として使える――と韓国は考えているかもしれません。THAAD問題では、中国だけではなくロシアも韓国配備に反対している。ロシアも韓国の“米国べったり”には批判的なのです。

 そこで韓国は米国に対し「我々が少々、米国と距離を置くのを理解してほしい。中国だけではなく、ロシアからも圧力が高まっているのです」と説明し得るわけです。

鈴置:確かに、韓国人だったらそんな言い訳を考えつきそうですね。でも、米国はますます怒るかもしれません。中国だけではなくロシアの言いなりにもなる――大陸側に完全に寝返る、ということを意味するからです。

 これに関連、実に面白い記事を見つけました。中央日報の「北朝鮮は核保有…ドイツのような統一はない」(3月13日、日本語版)で、ロシア国立高等経済学院(HSE)のセルゲイ・カラガノフ教授が以下のように語っているのです。

  • 南北両首脳が(対独戦勝記念式典への)招請に応じれば、実質的な会談をしなくても公式的な席で会えるため、ロシア・韓国・北朝鮮には対話の開始点になる。
  • もし南北首脳が会談し、中国の習近平国家主席とプーチン大統領が会談に加われば、南北中露4者会談という新しいフォーマットも可能になる。

 日米という海洋勢力を排除して、4カ国で「大陸会議」を作ろう、との呼びかけです。北と一緒に南も取り込むロシアの作戦がよく分かります。

「反米」に中国の影

—朝鮮半島を考える時に、ロシアを見落としていました。

鈴置:冷戦終結後は極東に関心を失ったかに見えたロシアが、このところ明確にカムバックしてきました。

 ところで、前回の主要テーマとなった「突然盛り上がった韓国の反米民族主義」について、木村先生に伺います。

 韓国の保守は、こうした“3流の民族主義”は北朝鮮が仕掛けたもの、と見なしがちです(「『反米民族主義』が復活する韓国」参照)。でも、中国が裏で糸を引いていても不思議ではないと思います。

木村:前回に紹介したデモなり運動団体が直接、中国につながっているとは思いません。デモを主導した勢力は北朝鮮にシンパシーを抱いていても、中国に対しては必ずしもそうした感情は持っていないからです。

 むしろ中国は、彼らに「反米材料」を提供することで「上から目線で韓国を見る米国」への、韓国人の不満に火をつけることを狙っていると思います。

 韓国に対する中国の働きかけに関しては、表面に出てくる動き以上に、間接的な仕掛けを観察することが重要です。巨大な中国を支配する共産党にとって、外国の世論への工作はお手のものですからね。

 

3/18日経・ベルリン支局 赤川省吾『メルケル独首相が訪日で犯した3つの過ち』記事について

ドイツ政府が「日本に注文を付けに来たわけでない」という釈明と民主党・岡田の言ったことのどちらが正しいのか、真相は藪の中です。ネットでは、岡田・朝日がグルになり「またデッチ上げた」とか通訳が左翼で「故意に間違って訳したのでは」という意見もありました。

日本のメデイアの体質から言うと、産経を除き自分の業界の主張を押し通そうとします。メーカーは競争が激しく、談合の余地は独禁法強化で余りなくなっているのに、この業界は本当におかしく感じます。いわゆる従軍慰安婦について誤りが分かっているのに報道姿勢を変えようとしません。本来なら朝日を国益毀損で論難すべきなのに(普通のメーカーだったら相手のチョンボは徹底的に利用しますが)全然しません。自分も朝日の尻馬に乗って軍を批判したからかも知れませんが。でも事実でないのは秦郁彦が92年に論文発表した時点で分かっていたハズです。

ドイツが慌てて発言取消したのはギリシャから戦後賠償を請求されていることも影響しているでしょう。日本に「ドイツを見習え」と言うなら、ドイツも日本を見習いギリシャに賠償金を払わないといけなくなります。中国・韓国に名目は賠償金でなくとも金を払っていますので。西尾幹二によれば、ワイツゼッカーが謝罪したのは、国家としての謝罪でなく、ヒトラーの個人の責任に転嫁しているとのこと。ワイマール憲法下で出て来た政権という事はドイツ国民が選んだ政権です。その政権がユダヤ民族を虐殺したのですから、彼らは日本を非難できる立場にないことくらい分かろうものなのに。日本は満州にユダヤ人入植地を作っても良いと言ってたくらいです。

「南ドイツ新聞」は反日で有名な新聞です。皇室に対する中傷をずっと書き続けていました。アメリカの原爆投下同様、ドイツのユダヤ人虐殺は人類史に残る悪逆非道ですから、日本を自分のやったところまで貶めたいというのは分かりますが。Wikiで調べましたら「南ドイツ新聞」は戦後第一にアメリカから発行が許された新聞とのこと。

記事

7年ぶりに訪日したドイツのメルケル首相は、歴史認識やエネルギー政策で安倍政権に次々と注文を付けた。昨秋から積もり積もった不信感を伝えようと爪を研いでいたドイツ。だが信頼関係もないのに、いきなり本題を突きつけるというドイツ流を押し通したことで、日独関係には大きなしこりが残った。ただ視点を変えれば、たまっていた悪材料が出尽くしたともいえる。瀬戸際の日独関係を修復するには双方が努力するしかない。

■従軍慰安婦問題で安倍政権けん制

 9日の首脳会談後の記者会見だった。「アドバイスするために訪日したのではないが、ドイツがやってきたことは話せる」。日中韓が歴史認識で争っていることについて問われたメルケル首相は、どのようにドイツが「過去への謝罪」に取り組んだのかを安倍晋三首相の前で語り始めた。「アドバイスではない」と前置きしたものの、誰に何を求めているのかは明らかだった。

 久しぶりの訪日というのに、わざわざ歴史認識に言及したのはなぜか。

 日本が「右傾化」したと見るドイツ国内の雰囲気が背中を押した。メルケル首相の訪日を伝える公共放送ARDは看板番組の夜のニュースで安倍政権を「右派保守主義」と表現した。極右ではないが、国粋主義的な色彩があるときに使われる言葉だ。こうした政治思想は「国家保守主義」とも呼ばれ、ドイツでは第2次大戦前に活躍し、ナチスの政権掌握に手を貸した右派政党の「ドイツ国家人民党」がこれにあたる。日本でいえば、NHKの夜の7時のニュース番組で、そうした右派政党と安倍首相が率いる自民党をひとくくりにするほど風当たりは強い。

 日中韓の争いを本当に心配しているという事情もある。「東アジアでは軍事衝突のリスクがあると思っている」。そう語るドイツの政治家は少なくない。和平をもたらしたいという純粋な気持ちから日本にも口を出した。外交政策に自信を持つようになったドイツは、イランやイラクなどの中東和平にも積極的にかかわっている。

 もっともドイツは安倍政権の発足当初から歴史認識を問題視していたわけではない。むしろ関心が高かったのはアベノミクスのほうだった。当時は日本の財政赤字が膨らみ、世界の金融市場が混乱するという危惧があった。その証拠に2014年4月のベルリンでの日独首脳会談では、歴史認識にはほとんど焦点が当たらず、アベノミクスの進捗状況に注目が集まった。

 空気が変わったのは昨秋のことだった。従軍慰安婦問題を巡って日韓が争っているところに、自民党が朝日新聞社を厳しく追及したことがドイツに伝わり、日本への不信感に拍車がかかった。「報道の自由が抑圧されている」。独政府・与党の取材先は異口同音に語った。

 そこでドイツは異例の決断を下す。自ら従軍慰安婦問題の火の粉のなかに飛び込み、安倍政権をけん制することにした。あえて朝日新聞社で講演したメルケル首相は「(政府は)様々な意見に耳を傾けなければならないと思う」と発言した。「日本に対する警告」(シュピーゲル誌)と独メディアも伝えた。

ドイツ国内では訪日は成功したように映る。メルケル首相は歴史認識と脱原発について繰り返し触れた。安倍政権は周辺国と仲たがいし、「民意を踏みにじって原発を再稼働しようとしている」(独紙フランクフルター・アルゲマイネ)というのがドイツの共通認識。そんな安倍政権をけん制したことをドイツメディアは好意的に報じ、留飲を下げた。

 だが、せっかくの訪日だったにもかかわらず、日独友好は遠のいた。独政府筋は「日本とドイツは価値観を共有し、民間レベルの交流も盛んだ。だからこそ本音をぶつけても大丈夫」と言うが、本当にそうだろうか。

■「友好」と「批判」のバランスを欠く

訪日中のメルケル首相の主な発言
ロシア外交 「日米欧が制裁で緊密に連携」
エネルギー 政策 「(福島第1原発事故は)リスクがあるということを示した」
女性活用 「日本もドイツもまだ改善の余地がある」
歴史認識 「ドイツは自らの過去を総括することが(周辺国との)和解の前提だった。どの国も自分なりのやり方を見つけないといけない」
日韓関係 「韓国と日本が良い関係を結んでほしい。日韓には共通点がある」
報道・表現 の自由 「自由に意見を述べられないとイノベーションは生まれない。(政府は)様々な意見に耳を傾けなければならない」
日独関係 「多くの共通点がある。異なる点もあるが、関係は深めるべきだ」

 

 今回の訪日でドイツでは日独の疎遠さだけがあぶり出され、日本のイメージがさらに悪化した。筆者は幼少時代の1970年代にドイツに渡り、それから40年近くにわたって日独を行き来しながら両国の関係を追ってきたが、日本への冷たい視線をいまほど肌に感じたことはない。11日、出張先からベルリンに戻る機中でたまたま隣り合わせになったドイツ人の大学講師は初対面だったにもかかわらず、日本を面罵してきた。「男性優先の日本では女性の地位が著しく低く、吐き気がする」。連日のように報じられる日本批判を読んでいれば、そう考えるのも無理はない。こうした状況に対する危機感は、いまの独政府にはない。

 原因は日独の双方にある。日本がドイツとの意思疎通を怠っているあいだに、ドイツでは安倍政権の財政・金融政策やエネルギー問題、それに歴史認識への不満がマグマのようにたまった。いまでは北部欧州の多くの国がドイツに同調する。オーストリア政府筋は「対日関係が悪くなるから表だって言いたくないが、ドイツの批判は理にかなっている」と言う。成長力を取り戻すのに役立った構造改革や財政再建のやり方、それに戦後70年にわたる「過去への謝罪」などドイツの経験から日本が学べることは確かに多い。

 その一方でドイツも3つの過ちを犯した。

 一つはメルケル首相の訪日日程で「友好」と「批判」のバランスを欠いたこと。学識経験者らと脱原発を議論し、朝日新聞社を訪れ、首脳会談で歴史認識に言及した。民主党の岡田克也代表とも会った。対日批判が漏れやすい予定が多く組み込まれた一方で、「友好」のシンボルと呼べるのはせいぜいドイツ系企業の工場や二足歩行ロボット「ASIMO(アシモ)」の視察などにとどまった。

 いまの日独は共通の話題を見つけるのがやっとの状況。国際会議で同席した際、メルケル首相がアベノミクスの先行きについて安倍首相を質問攻めにしたこともあったという。そんな薄氷の関係だったにもかかわらず、「友好」というつっかい棒を用意せず、多くの「批判」を氷の上に載せた。認識が甘かったと言わざるを得ない。

 友好関係も築けていないのに「主張を伝える」という欧州流の外交にこだわったことが2つめの誤りだ。ドイツは日本を名指しして批判するのを避ければ、歴史認識に言及しても波紋を広げることはないだろうと高をくくっていた。ドイツなりに配慮し、「礼儀正しく批判した」(南ドイツ新聞)つもりだった。それゆえメルケル発言に日本が敏感に反応すると独政府は戸惑った。在日大使館ですら日本を知り尽くした知日派が細り、日本の実情にあわせた微妙なさじ加減ができない。

 外交日程を見ても日本の国民感情がわかっていない。英国のウィリアム王子は東日本大震災の被災地を訪れ、好印象を残した。だがメルケル首相は9~10日に東京周辺のみを訪れ、震災から4年となる3月11日を目前にして離日した。「日程が詰まっていて被災地訪問は無理だった」と独政府筋は釈明するが、帰国を半日ずらして犠牲者に黙とうをささげる姿を見せたならばドイツへの印象は変わっていただろう。大きなチャンスを逃した。

だがなんと言っても最大のミスは、準備万端ではないのに歴史認識に触れたことだった。

■日独の立場の違いがようやく明確に

 それはメルケル首相と民主党の岡田代表との懇談からもにじみ出る。「きちんと解決した方がいい。日韓は価値を共有しているので和解をすることが重要だ」。岡田代表は従軍慰安婦問題についてメルケル首相が、そう口にしたと語った。だが日本の国内外での論争に巻き込まれかねないとわかったとたんドイツ政府は慌てた。「そんなことは言ってない」(ザイベルト報道官)と火消しに回り、岡田氏ははしごを外された形になった。どこまで具体的に踏み込んだかは別として、昨秋からの独政府の空気を読めば歴史認識に触れた可能性は高いと言わざるを得ない。歴史認識に少しでも言及すれば日本で与野党の駆け引きに利用されたり、日中韓の争いの火に油を注いだりするのはわかりきっていたが、毅然とした態度を貫く勇気も覚悟もドイツにはなかった。

 専門知識を持つ人材を重用し、緻密に計算をしたうえで大胆な一歩を踏み出すというのがドイツ外交の特徴だったはずだ。東部ウクライナの停戦仲介では、ドイツは専門家を集めて対策を練り、首脳レベルだけでなく、閣僚・次官級でも折衝を重ねた。ロシアとウクライナの双方をさまざまなルートで粘り強く説得した。だが訪日では準備不足の感がぬぐえない。歴史認識の解決をドイツが本当に後押ししたいなら、官民に散っている知日派を結集した専門チームを立ち上げ、ドイツなりにビジョンを描くぐらいの気概を持つべきだった。ドイツ自身がメルケル氏の発言の重みを自覚していなかったのではないか。

 冷え込んだ日独関係が修復されぬうちから、中途半端に歴史認識問題に口先介入したツケは重い。6月に主要7カ国(G7)の首脳会議のために安倍首相が訪独、来年には日本でのG7会議のためにメルケル首相が再び訪日する。そのたびに歴史認識を話し合ったかどうかが焦点になり、日独関係の重荷になる。

 もっとも前進したことは一つだけある。独日の立場の違いがようやく明確になった。これまでは、それすら日本では認識されていなかった。日本がドイツの意見に真摯に耳をける一方で、ドイツも稚拙な対日外交を修正するのがあるべき姿。相互理解と歩み寄りで距離を縮めていくしかない。

3/19産経ニュース 石平『異例の?弁解?追い詰められる習近平主席』記事についてとチュニジア・バルドー博物館の写真

愈々習も追い込まれている感じです。上から下に至るまで賄賂を取らない中国人はいないので、虎・蠅叩きは政敵倒しの手段として使われているのは誰しも分かっている話です。叩かれている人間の数がこの政策を推し進める人間より多いのは勿論、糾弾される側も「アイツらだってやっているではないか」と思うのは必定です。

「経済」を借口(=口実)として習・王岐山の取締り強化を牽制する「指桑罵槐」のやり方です。江派と団派が手を握り出して動き出しているのかもしれません。三国志そのもので、強く出る者に対抗するために今までの敵とも手を握ります。

毛沢東も大躍進政策の失敗で失脚し、その後紅衛兵を動かして文化大革命を起こして権力奪回に成功しました。軍の経験のない習にそんな力技はできないでしょう。もうこの辺で虎・蠅叩きは手打ちになるのでは。

記事

今月6日、習近平国家主席は全国人民代表大会(全人代)において江西省代表団との座談会に臨んだ。座談会の中、代表の一人が「江西省の昨年の経済発展はすさまじい」と語ったところ、習主席は直ちに「だから反腐敗運動は経済の発展に影響することなく、むしろ経済の持続的発展を利する」と応じた。

翌日、「反腐敗は経済発展を妨げることはない」という習主席発言が新聞各紙に大きく報じられたが、座談会でのこの発言は実に異様なものであった。

反腐敗と経済発展との関連性を誰から聞かれたわけでもなく、反腐敗運動の主役である習主席が自らこう言い出したのは、いかにも自己弁護に聞こえるからである。

最高指導者の立場にある彼が地方からの代表団の前でこのような弁解をしなければならない理由は一体どこにあるのか。実は全人代が開幕した5日、関連があると思われる別の発言があった。

代表の一人で北京首都旅行 集団会長の段強氏はメディアの取材に対して、官官接待・官民接待の激減で北京市内60軒の五つ星ホテルが業績不振となったことを例に挙げ、反腐敗運動の展開は経済発展にマイナスの影響を与えた、との認識を示した。

翌日の習主席発言は、段氏の見解に対する「反論」とも捉えられる。国家主席の彼が一民間旅行会社の経営者に反論することは、まさに前代未聞の異常事態である。

その際、習主席にとってのけんか相手は決して段氏という一個人ではない。主席が強く意識しているのはやはり、段氏発言の背後にある反腐敗運動に対する 政権内の根強い反対意見と、それを政争に利用しようとする党内の反対勢力であろう。要するに、「経済の発展を妨げる」との理由で反腐敗運動への反発が党内で広がっているのである。

たとえば7日付の新京報という国内紙は別の角度から、「反腐敗運動」 の経済に対する悪影響を論じている。「官僚の不作為について」と題するこの記事は、一部の全人代代表への取材を基にして、中国の各地では今、反腐敗運動の中で身を 縮めている幹部たちが仕事へのやる気を失い、「不作為」的に日々を過ごしているありさまをリポートした。このような状況が各地方の経済発展に大きな支障を来しているとも論じている。

昨年7月10日掲載の本欄でも、反腐敗運動の中で幹部たちが仕事を集団的にボイコットする状況を報告したが、どうやら今になってもいっこうに変わって いない。共産党の幹部たちはそもそも、賄賂を取るために幹部になったようなものだ から、「腐敗」ができなくなると仕事への情熱を失うのは当然のこと。

5日の全人代で行われた李克強首相の「政府活動報告」でも幹部たちの「不作為」を取り上げて強く批判しているから、仕事をボイコットするような形で反腐敗運動に抵抗する幹部たちの動きがかなり広がっていると思われる。

そして党内の一部勢力が、顕著となった経済の減速をそれと関連づけて、経済衰退の責任を習主席の反腐敗運動になすり付けようとしていることも明らかだ。だからこそ、習主席は異例な弁解を行うこととなったのだが、一国の最高指導者が自己弁護を始めたこと自体、彼自身がかなり追いつめられていることの証拠でもあろう。

このようにして、反腐敗運動を急速に推進した結果、政権の手足となる幹部たちの「不作為」と抵抗が広がり、「経済への悪影響」を懸念する声とそれを理 由にした党内反発が強まってきているのは間違いない。

猪突(ちょとつ)猛進してきた習主席はまさに四面楚歌(そか)の状況であるが、民衆の期待が高まってきている腐敗摘発の手を緩めるわけにもいかない。主席の悩みは深まるばかりである。

【哀悼:チュニジアテロの被害者】

昨年9月に旅行した際に撮ったバルドー博物館の写真です。古い時代(カルタゴ、ローマ、アラブ)のモザイクが有名です。チュニジアは農業(オリ-ブ、棗、葡萄等)と観光で成り立っている国です。観光客が行かなくなると国の経済には大打撃です。

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台湾経験について

(1)バニラエアに成田で乗るときに言われてビックリしたことは「ポシエット」も荷物の一つとカウントされること。荷物二つしか許容されない格安

  航空とはいえそこまでとは思いませんでした。機内持ち込みの重量制限はシビアです。

(2)飛行機に乗って持ち込んだ「アサヒスーパードライ」は機内飲食禁止(持込不可)という事で、台湾内で飲みました。

(3)並ぶのに時間がかかる。阿里山→嘉義までのバスは当日朝8時から並ばないとダメとのこと。後ろに並んだ人と話したら北京人でした。

(4)新北投で泊まったホテルは外貨交換業務がなく、紹介された「中国信託銀行」へ行ったところ、「少額両替でも手数料が300台湾$かかるから郵便局

へ行った方が良い。手数料無料です。」と言われ行って両替しました。台湾人は総じて親切です。そこが大陸人との大きな違いかと。「いつも騙され

る」のではと思う人達と付き合い方は違います。

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台北・新北投温泉にて

天王月(一字)泉会館に泊まりました。裸で入れる温泉です。水美温泉会館は満杯でこちらにしましたが、温泉は只で何度でも入れるのでこちらが良かったかと。近くで食べました「火鍋世家」の火鍋はおいしかったです。

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     新北投の行きのMRT

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     天王月泉ホテル

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     温泉案内

台湾嘉義にいます

台湾嘉義にいます。桃園空港ではタクシーがなかなか来ず、サービスレベルはまだまだです。でも人はものすごく親切です。「KANO」の呉明捷の像の場所や夕食の場所を聞いた時は何人もの方が教えてくださいました。下は新幹線、呉明捷の像、夕食の「林聡明沙鍋魚頭」です。

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