何義麟著『台湾現代史』を読んで

3/17~20まで「士気の集い」の大先輩と台湾・阿里山に旅行に行きます。それでこの本を読もうと思ったのですが、一読して座標軸のズレを感じ、読むのが嫌になりました。台湾だからと思って手にしましたが見事に裏切られました。彼は①東大留学で左翼に染まったか(東大は左翼が多い)②外省人かと思わせるほどヒドイ本です。事実誤認を東大の看板を使って日本人(日本語で書かれていますので)に発信するのは止めてほしい。事情を知らない日本人は信じてしまうでしょう。

何義麟氏は下につけたアンデイ・チャン氏の考えとは全く別です。アンデイ・チャン氏も漸進主義ではないから台湾人も受け入れがたいと思っている人が多いのではと推測していますが。

事実誤認部分

(1)「台湾は戦勝国」P.50・・・韓国と主張が同じ。当時、台湾・韓国は日本の領土、領民だった。日本と一緒になって欧米と戦ったのに国民党と一緒と位置付けるのは卑怯者のやること。ドゴール程の政治力があれば別でしょうけど。勿論国民党に接収されたから戦勝国という意味なのでしょうが。敵対国の一員として戦ってきて、負けて別の国に移管されたからと言って戦勝国と言うのには違和感を感じます。

(2)「犬が去って豚が来た」P.84・・・と言うのを紹介していますが、そう言われた背景について突っ込み不足。意図的とも思える。日本の治世を良く書きたくないという心理が働いているのでは。左翼が帝国主義を嫌うのは分かりますが、「歴史には時代の制約が伴う」ということに鈍感では。現在の価値観で過去を裁くことはできません。それこそ事後法の適用になるのでは。

(3)「台湾人留学生は本質的には留学に名を借りた亡命者なのである」P.156・・・これは言い過ぎでは。金美齢が聞いたらどう思うか。感想を聞いてみたい。亡命目的で留学した人が多いとは思えません。外国に出て初めて真実を知り、危機感を持って独立運動に走ったと思います。韓国の金完燮も海外に出て初めて真実を知り、「親日派の弁明」を書きました。今や彼は社会的に抹殺されています。中国で留学生が今や多くいますが、中国で他国に亡命して共産党打倒を訴える人がどこにいますか。専制政治と言う意味では当時の台湾と今の共産中国は同じです。「留学に名を借りた亡命者なのである」と言うのは、体を張って戦ったこともない人間が使うにしては傲慢と感じますが。

(4)「日本政府は国府に非友好的なこの5原則(国交回復5原則)をほぼ完全に承諾した形で、中国と国交を結んだのであった」P.171・・・前段に「一九四九年以降、国府と対峙している中華人民共和国はもともと国際社会にとって無視できない存在であった。一九六六年、中国は核実験を成功させ、国際社会における存在感をさらに高めた。この時期、日中間の往来も次第に頻繁となっていった。一九七一年七月、公明党訪中団と中日友好協会の間で、「国交回復五原則」の声明が発表された。この内容によると、一、中華人民共和国は中国人民を代表する唯一の合法政府であること。ニ、台湾は中国の一つの省であり、中国領土の不可分の一部であること。三、日華平和条約は不法であり、廃棄しなければならない。 四、米国が台湾海峡を占領していることは侵略行為であり、武装を解除しなければならない。五、 国連の安全保障理事会理事国として中華人民共和国の合法的権利を回復し、蔣介石グループの代表を国連から追い出さなければならない」と書いてあります。

日中共同声明には(Wikiによると)

・日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する。

・日中国交正常化の実現。

・日本国政府は、中華人民共和国政府(共産党政権)が中国の唯一の合法政府であることを承認する。

・中華人民共和国政府は、台湾(=中華民国)が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。

・日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。

・中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。

・日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。

・両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。

・日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。

・日中平和友好条約の締結を目指す。

彼が書いているのは中共の主張であって、日本がそれを認めた訳ではありません。こんなものは調べればすぐに分かる事であって、意図的に捻じ曲げて書いているとしか思えません。不値得買です。

次はアンデイの記事です。

Andy Chang 228事件68周年に思うについて

2月28日は台湾の228事件記念日だった。台湾各地で228事件記念集会が行われ、アメリカ各地でも台湾人同郷会で記念集会、講演会などが行われた。

事件から68年経っても台湾人が受けた傷は癒えていない。国民党は228大虐殺のあと38年にわたる白色恐怖、戒厳令を敷いた。台湾人が受けた恐怖心は馬英九のお座なりの和解談話で済むものではない。

海外各地で行われた集会では大部分の参加者がそれぞれ家族、親戚、友人が虐殺された悲惨な過去を語り、悲憤慷慨していた。海外の集会と違って台湾各地の集会では、真相追究、真犯人は総帥蒋介石と国民党軍の兵隊であると指摘していた。

事件から68年経っても恨みは消えないばかりか、ヒマワリ学生運動のあとの台湾人意識の高揚で真相追及の声が盛んになった。怨恨が消えていないのは国民党、中国人の和解談話に反省、誠意がないからである。

  • 蒋介石が虐殺を命じた

史実研究では、228事件の本質とは国民党軍による台湾人民大屠殺である。国民党軍の兵士が見境なく人民を屠殺したのは蒋介石の命令による、つまり真犯人は蒋介石で執行者は国民党軍である。

国民党は今日に至っても228事件について原因、経過、虐殺の記録などを公開していない。今日に至っても殺害された人の総数やどのようにして殺害されたか、正確な記録がない。

民間の調査では殺害されたものの家族や事件の経験者などと元にたくさんの記録文書が発表されている。しかし国民党は一部分の記録しか公開していない。台湾人民は真相の究明を要求している。

  • 蒋介石の銅像

228当日、台湾各地で蒋介石の銅像に卵やペンキ入りの玉を投げるなどの抗議が相次いだ。報道によると台湾には今でも学校や公園に蒋介石の銅像があり、その数は300を越えると言う。銅像にペンキを投げて抗議するなど2年前までは出来なかったことだ。去年のヒマワリ運動で国民党の権威失墜が起きてから可能になった。

蒋介石の228大虐殺で大量の青年や知識人、エリートが抹消された。蒋介石は228事件の最高責任者である。それにも拘らず殺人魔王の銅像が被害を受けた土地に設置され、68年が経過した今でも撤去されていない。世界に類のない状況がいつまで続くのか。これが228記念集会で討論されたことである。228事件の傷が未だに癒えていない原因がここにある。

  • 虐殺か民族浄化か

集会では経験談や親族が殺害されたたくさんの悲惨な物語の他に、228事件は虐殺事件か、または民族浄化(Ethnic Cleansing)だったのかと言う疑問が出された。

蒋介石が国民党軍に命令して台湾で大虐殺があったのは確かである。虐殺は中国人の日常茶飯事である。蒋介石は過去において中国で派閥闘争や批判者、政敵を抹殺するため数多い闘争で数千、数万の敵を殺した。

陳炯明、呉佩孚、孫伝芳などとの闘争、北伐の戦いで蒋介石が勝てば数千人が殺された。更に毛沢東の8000里大逃亡、戦後は毛沢東に追われて台湾に亡命しても共産主義者の追殺はあった。この過去を見れば蒋介石の殺戮は単なる「虐殺」かもしれない。

しかし蒋介石や国民党軍が台湾で行った虐殺は無差別でなく、台湾人のエリート抹殺であった。有名人、資産家、教師、学者など知識人を選別的に逮捕し殺害したのである。この点から見れば蒋介石の殺戮は「民族浄化」である。

また、このことから明らかになるのは中国人は台湾人とは違う民族で中国人は台湾人を奴隷視し、今でも台湾人を蔑視していると言う事実である。

  • 毛沢東、トウ小平、蒋介石

言えることは、数千年の中国歴史にある殺戮は蒋介石のほかにも数多くあったことである。世界現代史の殺人魔王4人とは、(1)スターリン4200万人、(2)毛沢東3782万人、(3)ヒットラー2095万人、(4)蒋介石1021万人と言われている。世界史に掲載された殺人魔王のうち2人が中国人である。

今の中国ではチベットと東トルキスタンで数々の虐殺事件がおきている。中国人の性格から見れば民族浄化は漢民族にとっては何でもないことであり、いくら弱小民族を抹殺しても罪業を感じないのである。このほか中国では法輪功信者の殺戮が報道されている。

この事実でわかることは、残忍な中国人と温和な台湾人はまったく違う人種であることだ。中国人が台湾を統治している限り、台湾に平和はない。おまけに凶惨中国人は台湾を中国の領土と主張し、武力行使で併呑すると公言している。台湾が独立しなければ中国人による民族浄化は避けられないだろう。

  • 虐殺の被害者に「和解」を求めるな

228記念集会で馬英九は、228事件は「官逼民反」だったと言った。つまり戦後台湾を占領した台湾省行政長官・陳儀が台湾でひどい掠奪をしたため、飢餓や厄病などが起き、警察がタバコ売りを殴り殺したかため民衆の抗議がエスカレートして反乱がおきたと言うのだ。この説明は国民党の結論だが台湾人は絶対に承認しない。

掠奪や警察の横暴はあったが、228事件の原因はもっと深い原因があり、国民党は今でも真相を理解せず、後悔も謝罪もしない。馬英九は事件が既に68年も前のことであり、中国人と台湾人が「和解して平和な発展」を遂げることを望むと述べた。

台湾人は被害者である。事件から68年が経過しても改悛の意志もない加害者が、被害者に対し和解しろと要求するのは加害者の傲慢である。

「赦すことはできる、忘れてはならない」と言う人もいるが、反対者も多い。虐殺は許せるるが民族浄化は許せない。台湾人にとって228事件は筆舌で言い尽くせることではないのである。