愈々習も追い込まれている感じです。上から下に至るまで賄賂を取らない中国人はいないので、虎・蠅叩きは政敵倒しの手段として使われているのは誰しも分かっている話です。叩かれている人間の数がこの政策を推し進める人間より多いのは勿論、糾弾される側も「アイツらだってやっているではないか」と思うのは必定です。
「経済」を借口(=口実)として習・王岐山の取締り強化を牽制する「指桑罵槐」のやり方です。江派と団派が手を握り出して動き出しているのかもしれません。三国志そのもので、強く出る者に対抗するために今までの敵とも手を握ります。
毛沢東も大躍進政策の失敗で失脚し、その後紅衛兵を動かして文化大革命を起こして権力奪回に成功しました。軍の経験のない習にそんな力技はできないでしょう。もうこの辺で虎・蠅叩きは手打ちになるのでは。
記事
今月6日、習近平国家主席は全国人民代表大会(全人代)において江西省代表団との座談会に臨んだ。座談会の中、代表の一人が「江西省の昨年の経済発展はすさまじい」と語ったところ、習主席は直ちに「だから反腐敗運動は経済の発展に影響することなく、むしろ経済の持続的発展を利する」と応じた。
翌日、「反腐敗は経済発展を妨げることはない」という習主席発言が新聞各紙に大きく報じられたが、座談会でのこの発言は実に異様なものであった。
反腐敗と経済発展との関連性を誰から聞かれたわけでもなく、反腐敗運動の主役である習主席が自らこう言い出したのは、いかにも自己弁護に聞こえるからである。
最高指導者の立場にある彼が地方からの代表団の前でこのような弁解をしなければならない理由は一体どこにあるのか。実は全人代が開幕した5日、関連があると思われる別の発言があった。
代表の一人で北京首都旅行 集団会長の段強氏はメディアの取材に対して、官官接待・官民接待の激減で北京市内60軒の五つ星ホテルが業績不振となったことを例に挙げ、反腐敗運動の展開は経済発展にマイナスの影響を与えた、との認識を示した。
翌日の習主席発言は、段氏の見解に対する「反論」とも捉えられる。国家主席の彼が一民間旅行会社の経営者に反論することは、まさに前代未聞の異常事態である。
その際、習主席にとってのけんか相手は決して段氏という一個人ではない。主席が強く意識しているのはやはり、段氏発言の背後にある反腐敗運動に対する 政権内の根強い反対意見と、それを政争に利用しようとする党内の反対勢力であろう。要するに、「経済の発展を妨げる」との理由で反腐敗運動への反発が党内で広がっているのである。
たとえば7日付の新京報という国内紙は別の角度から、「反腐敗運動」 の経済に対する悪影響を論じている。「官僚の不作為について」と題するこの記事は、一部の全人代代表への取材を基にして、中国の各地では今、反腐敗運動の中で身を 縮めている幹部たちが仕事へのやる気を失い、「不作為」的に日々を過ごしているありさまをリポートした。このような状況が各地方の経済発展に大きな支障を来しているとも論じている。
昨年7月10日掲載の本欄でも、反腐敗運動の中で幹部たちが仕事を集団的にボイコットする状況を報告したが、どうやら今になってもいっこうに変わって いない。共産党の幹部たちはそもそも、賄賂を取るために幹部になったようなものだ から、「腐敗」ができなくなると仕事への情熱を失うのは当然のこと。
5日の全人代で行われた李克強首相の「政府活動報告」でも幹部たちの「不作為」を取り上げて強く批判しているから、仕事をボイコットするような形で反腐敗運動に抵抗する幹部たちの動きがかなり広がっていると思われる。
そして党内の一部勢力が、顕著となった経済の減速をそれと関連づけて、経済衰退の責任を習主席の反腐敗運動になすり付けようとしていることも明らかだ。だからこそ、習主席は異例な弁解を行うこととなったのだが、一国の最高指導者が自己弁護を始めたこと自体、彼自身がかなり追いつめられていることの証拠でもあろう。
このようにして、反腐敗運動を急速に推進した結果、政権の手足となる幹部たちの「不作為」と抵抗が広がり、「経済への悪影響」を懸念する声とそれを理 由にした党内反発が強まってきているのは間違いない。
猪突(ちょとつ)猛進してきた習主席はまさに四面楚歌(そか)の状況であるが、民衆の期待が高まってきている腐敗摘発の手を緩めるわけにもいかない。主席の悩みは深まるばかりである。
【哀悼:チュニジアテロの被害者】
昨年9月に旅行した際に撮ったバルドー博物館の写真です。古い時代(カルタゴ、ローマ、アラブ)のモザイクが有名です。チュニジアは農業(オリ-ブ、棗、葡萄等)と観光で成り立っている国です。観光客が行かなくなると国の経済には大打撃です。