3/25 日経ビジネスオンライン 福島香織『パラオ海底の五星紅旗の愚 「天皇訪問」直前の挑発、「単なる悪戯」か?』記事について

パラオは本記事にありますように台湾と国交がある数少ない国です。小生が2011年末から2012年年始に家族と共に訪れたときには、中国人はいなくて台湾人が多かったです。台湾人はパラオに農業指導に来ていました。中国人が蔓延るのは所詮受入側の金のためでしょう。国防上の問題があるというのに。目先の利益だけしか見ないのは非常に危険です。国防動員法がありますから。

この行動は単なる悪戯とは思えません。軍の許可を取った行動と思います。「政府を批判する自由の無い国」でこんな行動は取れません。反日デモが中国共産党の指導でなされているのと同じです。中国のやり方はジワリジワリと人口を植民させていくやり方です。現在のシベリア然り、アフリカ然りです。1930年代の長野朗の『支那30年』にも明らかです。

中国人にマナーを守れと言っても無駄でしょう。バス内の標識には「吐痰請向外吐  提高個人素質」(痰を吐くなら外に、個人の資質を高めよう)と言うのが堂々と貼られている国ですので。

http://gakugo.net/unarigoe/2009/09/97913.html

記事

今年は中国にとって抗日戦争勝利70周年目ということで、おそらく中国政府や中国人の行動の中には、なかなか日本や日本人を刺激するものが出てくると予想している。たとえば共同通信が先日、特ダネとして報じたパラオ海底の旧日本海軍給油艦の船尾に中国国旗「五星紅旗」が結びつけられていた事件。あれはいったい、何だったのだろう。ありがちな中国人旅行者ダイバーのいたずらだと、やり過ごしていい話なのだろうか。

旧日本海軍給油艦「石廊」の船尾付近に中国国旗

 このニュースは、大手メディアでも詳しく報じられていると思うが、簡単に説明したい。

 パラオは、太平洋上にある島嶼国で、第一次大戦後、ドイツの植民地支配から脱し、日本の委任統治領となった。第二次大戦がはじまると北西太平洋方面の拠点となり、1944年9月から2カ月に渡るペリリュー島の戦いなどで日米軍に1万2000人を超える犠牲を出した激戦の地である。戦後はアメリカの信託統治を受け、1993年に独立している。

 このパラオに、天皇皇后両陛下が4月8~9日の日程で慰霊のために公式訪問されることが1月に発表された。パラオには、多くの戦争遺跡がある。日本軍1万695人、米国軍1794人という戦死者をだしたペリリュー島の戦いの現場などには、日米軍の遺構、戦車、ゼロ戦、破壊された停泊中の艦船や兵士の遺品などが点在している。

 この戦争遺跡の一つで、沈没している旧日本海軍の給油艦「石廊」の船尾付近に中国国旗が結び付けられているのを、21日、取材で海底に潜った共同通信記者が見つけた。石廊は太平洋戦争中の1944年3月30、31日、パラオ・コロール島沖で停泊中に米軍の大空襲を受け、多くの乗員と共に沈没。今なお、当時の船体をとどめたままコロール島西南8キロ、水深40メートルの水底に沈んでいる。五星紅旗は幅1メートルほどで、船尾の砲座を囲む柵の支柱だったとみられる水深約26メートルの場所に針金と白い結束バンドで取り付けられていたという。付着物が少ないので一週間以内に取り付けられたものらしい。人気のダイビングスポットであり、中国人ダイバーの仕業ではないかと見られている。

 パラオには毎年、多くの日本人が慰霊や観光に訪れており、日系人が大統領を務めたこともあり、「世界で一番の親日国」とも言われている。その一方で、去年あたりから急増している中国人観光客のマナーの悪さについては、現地の反感が高まっているようで、人民日報系タブロイド紙・環球時報(3月15日)も「珊瑚を破壊し、ゴミを海にポイ捨てすると、現地のタクシー運転手が苦言を呈していた」と報じていた。パラオはGDPの85%が観光収入という観光立国であるが、春節休みがあった2月の訪問観光客の62%にあたる1万955人が中国人だった。これはパラオ人口1.8万人の半分以上を占める。2014年のパラオ観光客は前年比34%増と急増だったが、この最大の要因が中国人観光客らしい。この年の中国人観光客は4万人を超え、国別では一番多かった。

 パラオは台湾と国交を持っているために中国とは国交がない。2012年4月にパラオ警察が同海域で保護されているサメの違法漁を行っている中国漁民を取り締まる際に、中国漁民を一人射殺し、漁民25人が逮捕される事件が発生するなど、パラオと中国の間にはトラブルも結構多い。だが観光立国としては、反感を持ちながらも、1400ドルのヘリクルージングなど金に糸目を付けずに遊ぶ中国人観光客増を歓迎せざるを得ない状況だった。

普通の中国人観光客の発想なのか

 こういう状況をかんがみると、石郎船尾の「五星紅旗」は、マナーの悪い中国人観光ダイバーの悪ふざけだろう、とは思う。実際、愛国を掲げる中国人が国旗を持って旅行に行き、無邪気に国旗を広げて記念写真を撮影する光景は実はわりと見かける。私は台北で、そういう中国人観光客を見かけたことがある。これは台湾の人々が相当鼻白む行為である。だが、多くの場合は、単に訪問国に対する知識が不足していたり、想像力が欠如していたりして、無礼なだけで、何が悪いか、本当に分かっていないようなフシもある。

 ただし、日本人にとって英霊の眠る海であり慰霊の場であるパラオの海で、天皇皇后両陛下が慰霊に訪れられる直前のタイミングで、わざわざ水底の旧日本軍艦に五星紅旗を掲げる行為は、あきらか日本のパラオにおける歴史を知り、日本とパラオの関係や国情を知った上での日本や日本人に対しての政治的挑発の意図があるだろう。日本人の死者に対する思いの深さ、慰霊や弔いの心を重視する国民性を知った上での侮辱行為ではないか。当然、パラオの誇る世界遺産の海を汚す環境破壊行為でもあるし、また独立国で国交のないパラオに対する失礼極まりない行為でもある。知りたいのは、こうした行為が本当に普通の中国人観光客の発想なのか、あるいは国家的意志のようなものが働いているのか、ということである。

 と言うのも、2013年8月1日、中国人民解放軍のあの過激なタカ派発言で知られる羅援少将が人民日報海外版主催の講演会で「五星紅旗を釣魚島(尖閣諸島)海底にさして主権を主張すべきだ」と発言していたことを思い出したからだ。その対談内容を簡単に紹介すると。

「五星紅旗を海底に挿して主権を主張すべきだ」

 「八一建軍記念日のおり、著名軍事専門家で軍事科学院世界軍事研究部の副部長である羅援少将が(人民日報海外版が運営する)海外ネット“名家講堂”のゲストとして、『中国領海をめぐる争いに対する策略』と題する講演を行った。人民日報の編集委員で海外版総編集長の張徳修が出席、海外版副編集長の王咏賦が司会を担当した。このとき、羅援は『目下我が国の平和崛起が直面する問題は外部からの挑発が“両海三領域”、つまり東シナ海、南シナ海、インターネット領域、宇宙領域、金融領域に集中していることだ』と語り、黄岩島(スカボロー礁)事件、仁愛礁(セカンド・トーマス礁)事件など、フィリピンとの領海問題および、釣魚島(尖閣諸島)をめぐる対立の文脈を分析。同時に中国がいかにこの争いに対応して主権防衛を行うかについて、具体的な提案をした。

 羅援は『我々は東シナ海と南シナ海で、六つの存在感を突出しなければならない。つまり行政、法律、軍事、執法、経済、世論における存在感である』と語り、『さらに国防は科学と相互に結合するべきだ。たとえば蛟龍号有人深海探査艇の技術をもって、釣魚島と南シナ海の島礁の海底に五星紅旗を挿し、中国の主権を喧伝するべきである』と語った。

 『万里海疆孤島咽、銅墻鉄壁誰能越』(万里の海の辺境と孤島に、銅墻鉄壁をはりめぐらせば誰も越えることはできない)と、岳飛の満江紅に習った自作の漢詩を披露。聴衆の大喝采を受けていた」…

解放軍は実際に2010年8月26日、国産有人深海探査艇蛟龍号によって南シナ海の深さ3000メートルの海底にまで潜り、五星紅旗を立てることに成功。その様子はCCTVでも放送されている。この蛟龍号は改良を重ねられて今は7000メートル位潜れるそうだ。

 こうした国家戦略と、親日国の海底に眠る旧日本軍艦に中国国旗を飾る発想はかなり似ている。30メートルの深さで国旗の取り付けなど、ツアー参加のにわかダイバーの所業というよりは、かなり慣れたダイバーではないだろうか。本当にただの観光客だろうかと、ひょっとして軍関係者じゃないのか、とかんぐりたくもなるだろう。

「遺憾の意」なければ「国家の意思」では?

 中国ではこの報道については、共同通信を引用する形の事実報道が中心で論評は23日の段階ではほとんどなかった。微博では、日本人を悔しがらせているぞ、といった賞賛や歓声が散見される。だが、日中の複雑な歴史関係に絡む感情を差し引いても、この行為は明らかに海にゴミをポイ捨てする中国人観光客と同じかそれ以上のマナー違反である。最近、パラオ周辺の海底には簡体字ラベルのついた食品の袋や缶などのゴミが落ちており、パラオ政府はこれを問題視して4月15日から中国人の入国者数を制限することにしている。中国人にとって神聖な五星紅旗も、こういう使い方をしては、海底に落ちている簡体字のついたゴミと同じ、海を汚しているだけである。

 個人的な意見を述べるならば、中国政府がこの件に関して正式に遺憾の念を示さない限り、こういった行為は中国の国家としての意志とみなしてよいと思う。海底の戦争遺跡に五星紅旗を結び付けた輩が政府や党や軍の指示を受けてやったのではないとしても、いまだに海底に旗を立てて主権を主張するが勝ちという発想で、領土をめぐるトラブルを解決しようと軍の少将が中央メディアで呼びかけている以上、このような国民の行為は党と政府の指導に従ったものだとはいえるだろう。

中国人観光客は世界の観光立国の救世主であるとみなされている。彼らが昨年海外旅行先で使った金は1兆元を超え、それは中国国内における中国人観光客の消費よりはるかに多い。日本で春節(旧暦正月)休みがあった2月、45万人の中国人観光客が訪れてくれて、百貨店や家電量販店などで引き落とされた銀聯カード(中国版デビッドカード)の総額は30億元を超えていたという。日本に興味を持ち、大量に買い物をして経済に貢献してくれたことに、日本人の多くは感謝し歓迎している。

「救世主」よ、最低限のマナーは守れ

 だが、ふと思うのだ。観光客が、単純に日本が好きで、日本をもっと知りたくて観光に訪れてくれるのならば、私たちは心をこめてもてなしたいと思うけれど、そこで声高に領土や領海の主権主張や政治的ロビー活動を展開されれば、それはもはや普通の観光客ではない。中国政府のプロパガンダを担った経済、文化進出の尖兵として、日本人の目には警戒すべき相手としか映らないだろう。

 私は中国人観光客を歓迎したい方なので、訪問先の環境を損なわない、遺跡・文物を傷つけたり汚したりしない、その土地の宗教、文化、歴史に配慮する、という最低限の観光客マナーをどこの国にいくのであれ守ってほしい。もし、中国が、観光客を公共外交戦略の一環と位置付けているのならなおさら、旗を振りかざして権利や存在感を誇示するようなやり方は逆効果であると気付いた方がいい。