10/28大礒正美氏ブログ記事「自覚があるか安倍首相の三大矛盾」について

下記記事についてすべての面で同意します。前にも話しましたが、青山繁晴氏が評したように総理は「油断であり、傲慢であり、驕り」が出てきたのではと感じます。本来安倍内閣は憲法改正を使命として誕生したはず。それを忘れアベノミクスの経済政策だけで終わってしまう可能性もあります。このところ、新任大臣のマスコミバッシングが続いてるのもマスコミに戦う姿勢を見せないから、甘く見られているせいだと思います。ネットでは反安倍を閣僚に取り立て、潰しにかかったという声もありますが穿った見方です。以前議員会館の安倍事務所を訪ねたときに、吉田松陰の像が置いてありましたが、松陰先生のように生きてほしいと願っています。中国が良く言う三戦(法律戦、世論戦、心理戦)すべての面で日本は中韓に負けています。現在は武力行使型の戦争よりは、情報戦で戦争が行われる方が多い。日本は民主主義、法治国家なので中韓のような国より法案施行・国民喚起・安保整備に時間がかかるのは分かりますが、もっと相手に言葉で厳しく迫った方が良い。足を引っ張る議員と反日マスコミを恐れていては何も達成できず、中途半端で終わってしまいます。まあ外交は内政の延長ですから、簡単にマスコミの言うことに騙される国民が多いようではなかなかやりにくいのは分かりますが。オバマは11/4中間選挙後、弾劾されるかも知れないので、彼がどう感じようと関係ないと思っていますが、他の欧米人から見て「論理的でない」「言っていることと行動が一致しない」と思われるのでは、仲間とは思って貰えません。それでは抑止力になりません。現実を考えると、プーチン、金正恩に近づくにはアメリカとよく連絡を取り合ってやらないとダメですが、岡崎久彦が亡くなったのは対米追随ベッタリ路線ではやりきれない(米の国防予算削減もあって)象徴かも知れません。

 

国際政策コラム<よむ地球きる世界>No.187       by 大礒正美(国際政治学者、シンクタンク大礒事務所代表)

平成26年10月28日 【自覚があるか安倍首相の三大矛盾】 「鉄の女」サッチャー英首相が初めてゴルバチョフ・ソ連大統領と会談したあと、「We can do business with him.」と評したことはよく知られている。「話が通じる」という好意的な表現だ。残念ながら安倍晋三首相は、オバマ米大統領からそう言われるまでに至っていない。外交に熱心で約50ヵ国を歴訪したが、米欧の首脳たちの対応はかなり儀礼的であり、米英独などのメディアに至っては理不尽なほど辛口と言える。これは、東南アジアやインド、トルコなどでの歓迎ぶりと対照的である。サッチャーの好意的なゴルバチョフ評が世界を動かし、冷戦終結(ソ連の完敗)、ソ連崩壊へと歴史の雪崩が起きた。それほどのパワーでなくても、米大統領が「アベとは話が通じる」と一言言えば、日本を巡る国際環境はガラリと変わることが期待できよう。なぜそうならないのか、ひとつの理由は、安倍首相が矛盾したことを平気で言い続けているからである。それを3つの事例に分けて説明してみよう。 第1の矛盾は、「法の支配」を前面に出して外交の基本に据えているが、具体的行動が全く逆であることだ。たとえば、島根県の竹島に2年前、李明博・韓国大統領が初めて上陸して見せたとき、日本政府はとうとう、国際司法裁判所に提訴する準備を始めると表明した。過去2回、同じような意思表示をしたが、いつの間にか消えている。3度目にようやく提訴が実現するかと思われたが、安倍政権になって全く動きがない。フィリピンでさえ(?)中国相手に昨年、国連国際海洋法に基づく仲裁手続きに訴えたのに、日本は総理が止めているとしか思えない。また昨年初めに、日本が引き渡しを求めた中国人犯罪容疑者を、韓国は中国に送り返してしまった。日韓二国間の「犯罪人引渡し条約」違反であることを、どうして放置しているのか。 同じように、韓国は対馬の寺から韓国人が盗み出した仏像を、事件と関係なく、なぜ日本に渡ったのかを解明しないうちは返還しないと決定した。これは盗難美術品の返還義務を定めたユネスコの「文化財不法輸出入等禁止条約」違反であるが、日本政府は抗議を拒否されるとあとは何もしていない。もっと重要なのは、ソウルの日本大使館前に据えられた「慰安婦少女」の像と、日頃繰り返される抗議集会に関してである。これらの嫌がらせ行為を放置することは、「外交関係に関するウィーン条約」の違反になる。韓国政府は「公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止」する「特別の責務」を負っているのである(22条2項)。安倍首相は「前提条件なしに首脳会談を」と呼びかけているが、こうした幾つもの「法の支配」違反に目をつぶっているのはどういうわけか。 オバマ大統領以下の米首脳陣は法律家ばかりだから、とても理解できないと感じているだろう。つまり、日本側に弱みがあるから前提条件をつけないのだろう、と思われても仕方がない。 それどころか日本も、朝鮮総連本部ビルの強制売却手続きを、執行寸前に最高裁判所が差し止めた。これは時期的に拉致問題再調査合意と一致しているため、国内でも安倍政権の意向ではないかとささやかれている。 まさか三権分立の日本で、最高裁が行政の道具に使われるはずはないと信じたいが、実際、中国漁船の領海侵犯、巡視船体当たり事件のとき、菅直人政権が検察をウラ指揮して船長を釈放させた実例がある。これでは、「人治」の中国、「情治」の韓国に対して、「法治」の日本だと胸を張っても説得力はない。韓国人の国連事務総長が、韓国で、韓国語で、日本批判を行った際も、日本政府は決して「国連憲章違反」と言わず、「遺憾」で収めた。どこに「法の支配」の実態があるのか、国内外への広報の努力がどこにも見えない。 次に第2の矛盾だが、「積極的平和主義」を看板に掲げ、集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更を閣議決定したが、同時に靖国神社参拝などの際、「不戦の誓いを堅持」と世論に訴えている。「積極的」を英語の「アクティブ」と解釈すると、そういう平和主義は、実は宗教的・政治的な暴力否定・兵役拒否などの思想行動を意味する。米国のクエーカー教徒とか原始的生活をするアーミッシュなどのイメージが強く出てくる。そこに「不戦の誓い」を重ねると、「自衛隊は戦わないので、同盟諸国の皆さん、日本の防衛のために戦って下さい」という意味になってしまう。安倍総理の本意は、「平和は天から降ってくるものではなく、戦い取ることも必要な場合がある」ということだろうが、国民向けにはそう言わないので、米国においては特に矛盾がひどいと受け取られる恐れがある。 第3の矛盾は、いわゆる慰安婦問題の処理を間違ったことである。朝日新聞の誤報訂正によって、慰安婦の「強制連行」が事実無根だったことが、国内的には急速に認知が進んでいる。しかし、安倍政権が河野談話を継承すると言う限り、海外とくに米国においては何の是正も進まない。日本国内と国外の認識がどんどん乖離していくことになる。それどころか「談話は見直さないが、検証はする」「談話(文章)はいいが、あとの口頭発言が大きな問題だ」という具合に、外国からすれば何を言っているのか分からない対応が続く。日本に対する不信感が増すだけだ。つまり、よく言うところの「戦力の逐次投入(小出し)」という愚策をそのままやっているわけである。「ナニナニは元から絶たなきゃダメ」という格言が、ここでもそっくり当てはまる。河野官房長官談話(宮沢政権、93年)だけでなく、村山首相談話(95年)をセットで否定するところから、第2次安倍内閣はスタートするべきだった。村山談話は、米国であれば存在すら許されないような社会主義政党の、それも最左派という人物が思いがけず暫定的な首相になり、自分の自虐思想を置き土産にしただけのシロモノである(在任13ヵ月、河野は副総理・外相)。オバマはそんな日本政治の特殊事情を全く知らないだろう。この2人の談話が中韓両国の日本叩きに根拠を与え、日本を貶める国家的な運動を生み出したという認識も希薄だろう。しかし、すでに中韓の反日同盟が、米韓・米日の安全保障トライアングルを形骸化させ、米国の国益を大きく損ねていることは分かっているはずだ。オバマ政権に「積極的」に、その因果関係を分からせ、原因である2つの談話の破壊力を理解させることこそ、復活した安倍総理の歴史的責任というものではないだろうか。