余市-1

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ニッカウヰスキー余市工場

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ニッカウヰスキー余市工場

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ニッカのエンブレム

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南極の石

製麦

札幌-1

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駅前のエスタ・ラーメン共和国で昼食

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JRタワ-1

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JRタワー2

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JRタワー3

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JRタワー4

5/9日経ビジネスオンライン 篠原 匡『ヒラリー大統領を阻む難敵』、高濱賛『クルーズ撤退でも四面楚歌のトランプ 「原爆投下」を巡ってヒラリー攻撃に出るか』について

本日より、会社OB13人で北海道旅行へ出かけます。明日から札幌、小樽、余市の写真中心の記事となります。

ヒラリーの弱点は

①FBIの私用メール調査。ベンガジ事件の闇が暴露されるかどうか。高濱氏は「幕引き」のセレモニーと見ているようですが。

②エスタブリッシュに近い。サンダースにここまで追い込まれたのはトランプ旋風に通じるものがある。格差を放置してきた不満がサンダースに流れた。特別代議員(エスタブリッシュそのもの)がいなければもっともっと苦戦したと思われる。ヒラリーが大統領になっても、生活は良くならないだろうと大衆は思っている。

③「ガラスの天井」は2008年予備選のようにはないと思われるが、この8年で年をとって68歳。トランプが69歳でほぼ同じですが、長く政治に携わってきた垢が溜っている。それと健康問題。

トランプの弱点は高濱氏の言うように沢山あります。

①人種差別

②女性差別

③宗教差別

④共和党主流派

共和党員がトランプに投票しない人が多く出て来ると言われるように、民主党員もヒラリーに投票しない人が多く出て来ると言われています。結果はどうなるか?トランプがどのように軌道修正できるかがポイントでは。でも、時すでに遅しか?

でも、日本はトランプの提言を真面目に検討すべきと思います。戦後70年も経って占領統治時代と同じ発想で生きていくことが本当に良いことかどうか。「日本は本当に独立国家なのか」どうか考える良いチャンスです。子々孫々に自尊と名誉の観念を持たせないと。自虐史観に染まったままでは日本人ではなくなります。それが、軍事的・経済的に負担になろうとも。国民の意識覚醒こそが一番大事ですが。

①憲法改正問題。GHQの押付け憲法を今のままにしているのが良いかどうか。良いものは残せば良いと思うが、軍のない独立国家はない。(台湾はその意味で既に独立している。香港・澳門とは違います。人口規模の小さいパラオは米軍に依存しています。通貨も$です)。9条は自衛戦が法的にできるようにしておかないと中国の侵略時に超法規的措置で戦わざるを得なくなります。法治国家としてそれは避けたい。元々米国が日本を「カルタゴ」にしようとして入れた条文と思われますので。

②核保有の是非。キッシンジャーと周恩来の密約と言われる「瓶の蓋」を打ち破る良いチャンス。米国も中国の野心にやっと気づいてきたようで、誰が真の敵か分かってきた。ここで中国に対して楔を打ち込み、アジアの平和には日本の力が必要と米国に思わせないと。

③有事の際の国民の行動。国家にどう協力できるか。後方支援や道路通行等私権の一時的制限。

④日米安保の双務性の向上。

⑤スパイ防止法の制定。外患誘致している日本人(マスメデイアに多い)や在日(朝鮮総連等)の活動を牽制。また外国人のインバウンドを2020年に4000万人に増やすというのだからセキュリテイをもっと考えないと。反テロ法も必要。

篠原 記事

4月26日の予備選で、民主党のクリントン氏が獲得代議員数を積み上げた。この日の勝利でサンダース氏を引き離し、党候補に指名されるのはほぼ確実に。だが米経済の動向次第では、“輸出減”が壁としてクリントン氏に立ちふさがる。

Hillary Rodham Clinton-2

4月26日、フィラデルフィアで演説するクリントン氏。民主党の結束を訴えた(写真=The New York Times/アフロ)

 思いのほか長引いたが、民主党の候補指名争いはいよいよ最終局面を迎えたようだ。

 4月26日にペンシルベニアやコネティカットなど東部5州で開催された民主党の予備選挙では、初の女性大統領を目指すヒラリー・クリントン氏が4州で勝利、獲得した代議員総数は指名に必要な過半数の9割に達した。

 ライバルのバーニー・サンダース氏はロードアイランド州で一矢を報いたが、過半数の代議員を獲得するのはほぼ不可能な情勢。「最多の票、最多の代議員を獲得して、(7月に開かれる)フィラデルフィアの党大会に戻る」。この日の予備選後にフィラデルフィアで行ったスピーチで、クリントン氏はそう力強く宣言した。

 サンダース氏を振り切ったクリントン氏は、共和党の候補者選びで首位を走るドナルド・トランプ氏と舌戦を繰り広げるなど、11月の大統領選をにらんだ戦いにシフトしつつある。

 もっとも、クリントン氏の前途に立ちふさがる難敵は、共和党候補だけではない。それは米経済の状況、とりわけ為替と輸出入の動向だ。

輸出減はクリントン氏に逆風

 米ジョージタウン大学マクドナー・スクール・オブ・ビジネスのブラッドフォード・ジェンセン教授と同僚のデニス・クイン教授などは、今年1月に発表した論文で国際貿易が大統領選に与える影響を明らかにした。輸出が拡大すれば与党支持が上昇し、輸入が増加すれば与党支持が低下するという相関関係である。

 これが意味しているのは、大統領選の前に為替がドル高に振れて輸出が減少していれば、低スキル・低賃金の製造業が集まる州で与党の候補者が苦戦する可能性が高いということだ。特に、民主、共和のどちらが勝ってもおかしくない州(スイングステート)の場合は大統領選に大きな影響を与える。

 今回で言えば、アイオワ、ウィスコンシン、ミシガン、オハイオ、ペンシルベニアといった中西部や東部に位置する工業地帯の各州が該当する。こういった州のほかにも、雇用に占める製造業の比率が高く、大統領選でカギを握ると考えられる州として、ノースカロライナやニューハンプシャーが挙げられる(下の地図)。

輸出減が本選に与える影響は大きい ●雇用において製造業の影響が強い地域・弱い地域

Swing States

注:2016年2月のデータを基に作成。太枠はスイングステートと予想される州。スイングステートの判断はThe Cook Political Reportを基にした(どちらかと言えば共和党、どちらかと言えば民主党の州もスイングステートに含めた) 出所:米労働省

 経済動向が大統領選に与える影響については、選挙年とその前年の実質GDP(国内総生産)成長率との関係も広く知られている。大統領選が行われる年の実質GDP成長率が前年を上回れば与党候補が勝利、逆に下回れば野党候補が勝つという法則だ。

 事実、ロナルド・レーガン氏が当選した1980年以降を見ると、9回あった大統領選のうち8回でこの法則が当てはまる。「4年前と比べて豊かになったか」という問いに対して、Yesと国民が感じれば与党を信任する、Noだと思えばおきゅうを据えるということだ。「結局のところ、有権者は自分たちの“収入”に投票している」とクイン教授は語る。

低下する一途の「好感度」

 それでは、今年の大統領選は与党候補(クリントン氏)にとってどのような環境なのだろうか。足元を見れば、クリントン氏にフォローの風が吹いていると見えなくもない。

 2014年半ば以降、ドルは主要通貨に対して上昇を続けていたが、現在はドル安傾向にある。米企業の輸出額も2月は前月比プラスに転じた。もちろん、輸出が本格的に回復したと言えるような状況にはないが、最悪期は脱した感がある。1月から2月にかけて混乱した株式市場も今は落ち着いている。

 ただ、これは足元の話で本選が実施される11月までに経済情勢がどう変わるかは予断を許さない。

 「記録的な暖冬のため経済活動が一時的に活発になっているだけで、米経済はいまだリセッションの瀬戸際にいると考えている」。米ジェローム・レビー・フォーキャスティング・センターのデービッド・レビー会長がこう分析するなど、米経済の現状を危惧する声は相変わらず存在する。世界経済が冷え込めば、米国の輸出に悪影響を与える。

 経済が堅調に推移したとしても、今度は米連邦準備理事会(FRB)による利上げが首をもたげる。6月以降、FRBが利上げに踏み切れば、再びドル高に転じることも十分にあり得る。

 国際通貨基金(IMF)が予想する2016年の実質GDP成長率は2.4%で、2015年から横ばいだ。先日発表された2016年1~3月期の成長率が0.5%と弱かったことを考えれば、2016年全体は2015年を下回るかもしれない。トランプ現象が象徴しているように、豊かさを実感できない米国人が増えていることもクリントン氏には逆風だろう。

 「(クリントン氏は)金融機関やエスタブリッシュメントの代弁者」というサンダース氏からの執拗な攻撃もあって、クリントン氏の好感度は下落の一途をたどっている。

 4月に実施された米NBCテレビと米ウォールストリート・ジャーナルの世論調査で不支持率(56%)が支持率(32%)を大きく上回った。別の好感度調査でも数値の悪化が著しい。トランプ氏の数値が輪をかけて低いため、対トランプという面では優位を保っているが、好感度の低下がクリントン陣営のアキレス腱になっているのは確かだ。

 好感度が自身の対応によって改善可能なのに対して、経済動向はクリントン氏の意思でどうにかなるものではない。党候補としての指名は確実にしたが、大統領就任への道のりはすんなりとはいきそうにない。

(ニューヨーク支局 篠原 匡)

高濱 記事

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トランプ氏は共和党の結束を呼びかけるが…(写真:ロイター/アフロ )

—共和党では5月3日、インディアナ州での予備選が終了した直後に、テッド・クルーズ上院議員とジョン・ケーシック・オハイオ州知事が相次いで撤退してしまいました。その結果、不動産王のドナルド・トランプ氏の指名が事実上決まりましたね。

高濱:実は、クルーズ氏はインディアナ州予備選で負けても、もう少し頑張ると思っていました。意外と引き際が早かったですね。

 でも対抗馬がいなくなったとはいえ、トランプ氏が正式な共和党の大統領候補に直ちになるわけではありません。予定されている残り9州の予備選・党員集会は粛々と行われます。そして7月18日からクリーブランドで開かれる党大会で承認を得なければなりません。

 トランプ氏はこれまで対抗馬や共和党の既成の保守主流派を激しく批判してきました。ここに来て、そのツケが回ってきています。共和党主流派の大物の中にはトランプ氏が指名されるのを嫌がり、猛反発しているのです。

マケイン、ロムニー、ブッシュ一家は党大会ボイコットへ

 「トランプが共和党の大統領候補に指名されるような党大会には出ない」と言い出している党内の大物が後を絶ちません。

 前回の大統領選で共和党の候補となったミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事や、前々回の共和党候補となったジョン・マケイン上院議員はいずれも党大会をボイコットすると言い出しています。またブッシュ一家も全員欠席すると発表しています。ジョージ・W・H・ブッシュ第41代大統領、ジョージ・W・ブッシュ第43代大統領の両大統領、及び、今回予備選に出て途中で撤退したジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事ですね。

 党大会の委員長を務めることになっているポール・ライアン下院議長は5月5日、「現段階ではトランプ氏の指名はまだ認められていないし、支持しない」と発言しています。その理由として「トランプ氏が共和党の価値観や理念を共有しているかどうか、見極める必要がある」としています。 (”Romny skipping GOP convention, joins list of presidents, leaders,” Tom LoBianco, CNN, 5/6/2016)

 こうした動きにトランプ氏は「党大会に出たくない奴は出なくて結構」と負け惜しみを言っています。共和党内の亀裂は深まるばかりです。

—となると、いくら政治の世界の常とはいえ、共和党の一本化は一朝一夕にはいきそうにありませんね。

高濱:米大手紙政治記者の一人は私にこう囁きました。「ブッシュ一家の欠席は、氷山の一角にすぎません。共和党主流派の中には同調する者がまだまだいるはずです。彼らは『トランプでは本選挙でヒラリー・クリントン(前国務長官)には勝てない。その責任を俺たちはとらないぞ』と言っているわけです。『トランプが共和党候補に指名されてしまった後の党立て直しを真剣に考え始めなければならない』と発言する党幹部もすでに現われています」。

ヒラリーは早ければ5月17日には指名獲得

—一方、民主党のほうは、バーニー・サンダース上院議員が善戦していますね。

高濱:インディアナ州の予備選ではサンダース氏が総投票数の52.4%を獲得して、クリントン氏(47.6%)を抑えました。しかし民主党は同州で比例割り当て制をとっているため、サンダース氏の獲得代議員数は43人、クリントン氏は37人となりました。

民主党予備選は、インディアナ州のあとは、5月7日のグアム(代議員数12人)、10日のウェストバージニア州(同34人)と続きます。

 クリントン氏に投票する特別代議員が多いことを考えると、同氏は、早ければ5月17日のケッターキー、オレゴン州予備選あたりで指名を確定しそうです。指名獲得に必要な代議員数は2383人。クリントン氏の獲得代議員数は5月6日に現在、2205人です。

 クリントン氏を悩ませる心配事の一つだった国務長官時代の電子メール公私混同使用にまつわる国家機密漏えい疑惑も、4月上旬にはケリがついたとの報道が流れています。クリントン氏に最も近い側近である女性が米連邦捜査局(FBI)から事情聴取を受けて捜査は終結、つまりクリントン氏は「シロ」との判断がなされたようです。CBSテレビは5月7日、「FBIは今後数週間のうちにクリントン氏とインタビューする」と報じています。これが何を意味するのか分かりませんが、「幕引き」ではないかと観測する向きもあります。

「トランプ旋風」が吹き荒れるのは予備選段階まで?

—日本では、「トランプ大統領が実現する可能性は皆無ではないんじゃないか」といった見方が出始めています。米国のメディアや一般市民はどう見ているのでしょう。

高濱:トランプ氏とクリントン氏の一騎打ちになった場合、どちらを支持するかという各種世論調査では、クリントン氏がトランプ氏に10%から16%の差をつけています。 (” Latest 2016 Presidential General Election Polls.” RealClear Politics, 5/4/2016)”

 私が定点観測していて気付いたのは、二つの現象が同時に起こっていることです。一つは、メディアが「トランプ旋風」について報道すればするほど、「それじゃ、俺もトランプに一票入れるか」と考える一般の共和党員が増えたこと。

 こういう声を何人かの共和党支持者から聞きました。本選挙でクリントン氏に勝てるかどうかは眼中にないんですね。ある中年白人男性は「トランプに票を入れるのはエンタテインメント(余興)だよ」とまで言っていました。

 もう一つの現象は、「共和党の外」で起こっています。「反トランプ」現象が先鋭化し、燎原の火のように広がっているのです。トランプ氏は完全に四面楚歌の状況にあります。

 この現象は、今後強まることはあっても弱まることはないように思います。一般大衆だけでなく、外交専門家や宗教家も加わって楚歌を歌っているのです。日本や欧州の同盟国の学識経験者たちもこうした「反トランプ」に加わっているのではありませんか。ほかの国が米国をどう思っているのかを、米国人はすごく気にする国民です。

 ある主要シンクタンクで、大統領選を30年間研究してきたベテラン研究員が私にこう指摘しました。「この『反トランプ』現象は本選挙に突入すると、トランプ氏に対して原爆並みのインパクトを与えかねないと思います。その結果は、火を見るより明らかです。トランプ氏は惨敗するでしょう」。

反トランプで結集するヒスパニック、黒人、女性票

 「反トランプ」現象の中心的役割を演じているのはメキシコ系の人たちです。

 トランプ氏は、メキシコ系不法移民を「強姦魔」「殺人犯」と呼びました。不法移民の国外退去や不法入国を阻止するためメキシコ国境に壁を構築する計画を打ち出しています。これにメキシコ系をはじめとするヒスパニック系が黙っているはずがありません。

 ヒスパニック系は一世代前にはカリフォルニア州やテキサス州に集中していました。しかし今ではコロラド、ノースカロライナ、フロリダといった州にも拡散しています。カリフォルニア州についていえば、ヒスパニック系の人口が白人の数を2014年に、超えました。

 数だけではありません。ヒスパニック系国民の平均年齢(中央値)は28歳。これに対して白人は43歳です。若くなるほどヒスパニック系の割合が高くなっているのです。近年、これらヒスパニック系に対して有権者登録するよう呼びかけるキャンペーンをスペイン語のテレビ局などが中心になって続けています。

 彼らの大半は共和党員や支持者ではありません。従ってトランプ氏を指名した共和党予備選や党集会には参加していません。 (” The Nation’s Latino Population Is Defined by Its Youth,” Hispanic Trends, Pew Research Center, 4/20/2016)”

 私の住むカリフォルニア州で「反トランプ」の急先鋒となっているのはヒスパニック系の人たちです。5月1日のメーデーにはロサンゼルスなどで数千人が「反トランプ」を訴えるデモに参加しました。デモはサンフランシスコや、オークランドなどでも行われました。トランプ支持者と衝突して逮捕者まで出ています。 (”May Day rallies in Los Angeles,“, Los Angeles Times, 5/2/2016)”

「女性カード」を逆手にとったクリントン陣営

 本選挙になってトランプ氏に襲いかかるのは、ヒスパニック系だけではなりません。ヒスパニック系を「前門の虎」とすれば、「後門の狼」はトランプ氏を生理的に嫌っている女性と黒人です。

 トランプ氏は女性蔑視発言を繰り返しています。4月26日には「ヒラリー・クリントンが男だったら獲得した票の5%も取れないだろう。ヒラリーには『女性カード』(Woman Card)を使うしか手がないのだ」と発言しました。

 これに対してクリントン氏は「女性のために戦うことが『女性カード』だというのなら受けて立つ」と反撃しました。ピンク地の紙にトイレなどに使われる女性のマークをあしらった実物の「女性カード」を作成し「1ドル献金してくれれば誰にでも差し上げます」と募ったところ、女性有権者から注文が殺到しているそうです。 (” Woman Card,” The Official Hillary for America)”

「支離滅裂」「落第論文」と散々だったトランプ外交演説

—トランプ氏が4月27日に行った外交演説に対する米国内の反応はどうでしたか。その後もトランプ氏は「日本は駐留米軍の費用を全額負担せよ」などと発言していますね。

高濱:トランプ演説に対する外交問題専門家たちの評価は散々でした。トランプ氏を評価する専門家を探し回りましたが、一人もいませんでした。厳密に言うと一人だけいましたが、実名でコメントするのは拒否されました(笑)。

 専門家たちから見て、トランプ演説のどこが不評なのか。

 第一に米国の伝統的外交理念からあまりにもかけ離れた内容だったことです。米国は建国以来、「自主独立」(Sovereign Independence)、「国利・国益」(National Interests)、「全世界における自由のため」(Cause of Liberty in the World)を重視してきました。 (” America’s Founders and the Principles of Foreign Policy,” Matthew Spalding, www.heritage.org., 10/15/2010)”

 ところが「トランプ演説にはこういった言葉が1回も出てこない」(米国務省OB)のです。

 不評であるもう一つの理由は、いやしくも大統領候補を目指すにもかかわらず、演説の構成がめちゃくちゃなことです。

 カリフォルニア大学バークレイ校に籍を置く政治学教授の一人が私にこう言いました。「演説の内容は支離滅裂で、矛盾だらけ。国際情勢に疎い、一米市民の思いつきを並べ立てた即席スピーチとしかいいようがない。うちの学生がこんな論文を書いたら間違いなく落第点をつけるね」。

 著名な政治コラムニストのピーター・ベイナート元「ザ・ニューリパブリック」編集長は、トランプ氏が外交演説に盛り込んだ外交の基本理念についてこう指摘しています。「共和党大統領候補の指名を受けようとする者がこんなことを言うのは理解に苦しむ。撤退したマルコ・ルビオ(上院議員)、ジェブ・ブッシュ(元フロリダ州知事)、リンゼー・グラハム(上院議員)、ロムニー(前共和党大統領候補)だったらこんな外交演説はしないだろう」。

 「まともな共和党大統領候補ならこう言うはずだ。『国際社会にはイラン、北朝鮮、中国、シリア、キューバ、過激派イスラム集団など悪の政府や社会組織がある。こうした勢力がのさばり始めたのは、正義のために戦う国家であることを放棄してきたオバマ大統領とクリントン前国務長官のせいだ。私が大統領になったなら米国は正義のために戦う国家であることを再確認する。そして我が国の軍事力を再強化し、自由と束縛からの解放のためにその軍事力を行使する。ちょうどロナルド・レーガン(第40代大統領)がやったように』。」

 「レーガンは自らの理念を維持する一方で、実践ではより賢明に立ち振る舞った。対中接近を図る一方でソ連に圧力をかけている」 (” Donald Trump and the GOP Traditional Foreign-Policy Incoherence,” Peter Beinart, the atlantic.com, 4/28/2016)”

日本はトランプの対日政策に真正面から反論せよ

—トランプ氏の対日スタンスについて、米国内の専門家たちはどう見ていますか。

高濱:トランプ氏の対日批判の柱は大きく二つあります。一つは防衛面、もう一つは通商面です。

 トランプ氏は共和党候補への指名が事実上確定した後も「私が大統領に就任したら、日米安保条約に基づき日本防衛のために米軍が支出している国防費の全額を負担するよう日本に求める」とCNNテレビとのインタビューで答えています。 (” Election 2016: Donald Trump Wants Japan to Pay More For American Military Facilities,” Lydia Tomkiw, IBT, 5/5/2016)”

 トランプ氏はこれまで「日本が攻撃されたら米国は助けに行くのに、米国が攻撃を受けても日本は助けに来ない。日米安保条約は片務的だ。日本が米国に守ってもらいたいのであればもっと分担すべきだ」と言ってきました。その主張が今も変わらないことを明確にしたわけです。

 日米安保体制の経緯や内容について全く知らない米国の一般庶民は「そうだ、そうだ」と共鳴しています。トランプ氏はこの主張を本選挙でも繰り返すかもしれません。

 日米安保体制に精通している軍事・外交専門家たちは「呆れて開いた口が塞がらない」(元国務省高官の一人)といった感じです。トランプ氏が露わにした米大衆が抱く日米同盟への認識と専門家との間には大きなギャップがあるわけです。(関連記事:「 (大衆が抱く日米同盟への認識、トランプが露わに」)

 こうした認識のギャップを埋めるために、両国政府当局をはじめとする専門家が大衆を啓蒙することが必要であることを痛感します。

 藤崎一郎元駐米大使が5月1日付の「ザ・ワールド・ポスト」(米ハフィントン・ポスト系列のオンラインメディア)に「米国の友人たちへの手紙」と題する一文を寄稿しました。一般大衆が読むとは思えませんが、トランプ氏の主張に日本サイドからもきちんと反論することは重要だと思います。

 藤崎氏の主張は次のようなものでした。 1)日本は防衛面でタダ乗りしているというが、日本は在日米軍駐留費として1年間に20億ドル近くのカネを出している。 2)米国は日本を防衛する義務を受け入れる代わりに日本国内の施設使用を許されている。それにより極東地域の平和と安全を維持するという米国の国益を堅持している。さらに日本が昨年、集団的自衛権の行使に関する解釈を変更することで日米軍事協力が一層強化された。  3)日本の市場は閉鎖的で、その結果、米国の対日貿易赤字が増大しているという主張は80年代のものだ。日本の企業は今や米国内に工場を建設し、製品を現地生産している。これにより70万人の雇用を生み出している。米国製のクルマが日本で売れないのは貿易障壁のせいではなく、需要と供給の問題だ。 (” A Letter to American Friends,” Ichiro Fujisaki, The World Post, 5/1/2016)”

本選挙でクローズアップされる為替とTPP

—トランプ氏は、「日本は為替を操作している」とも批判していますね。クリントン氏も同様のことを、米紙への寄稿文で2月に主張しています。「日本や中国は何年にもわたって通貨の価値を下げて輸出品の価格を人為的に安くしてきた」と。

高濱:安倍政権がアベノミクスで大幅な金融緩和を行った結果、円安が進行しました。この円安傾向を見て、「日本は為替操作をしている」との声が米国内には以前からありました。

 米上院議員団は2月10日、輸出促進を目的とした為替操作への対応を強化するため貿易円滑化・貿易執行法を成立させました。議員団の一人、チャック・シューマー上院議員は記者会見で「日本や中国は為替操作し、米国から何百万もの雇用を盗み、米国をばかにしてきた」と述べています。

 こうした米議会の動きを反映してトランプ、クリントン両氏も日本や中国、韓国、ドイツ、台湾の為替操作を取り上げているわけです。

オバマ政権も為替問題が米大統領選で議論の的になっていることを真剣に受け止めています。その証拠に財務省は4月29日、日本など5か国・地域を為替政策の「監視リスト」に載せ、通貨安誘導を目的とした為替介入への警戒感を打ち出しています。

 5月3日の外国為替市場で円相場が急伸し、1年半ぶりに1ドル=105円台を付けました。日本政府は過度な円高をけん制しています。が、米財務省の「監視リスト」に載ったため市場介入に動きづらくなっています。

 為替問題とともに、安倍政権が重視する環太平洋経済連携協定(TPP)問題も本選挙でクローズアップされる雲行きになってきました。ご存知の通りクリントン、トランプ両氏ともにTPPには反対の姿勢を取っています。

トランプは「原爆投下正当論」を打ち上げるか

 日米関係にかかわることで危惧される問題がもう一つ、ワシントンの日米関係筋の間で浮上しています。5月26~27日に開かれる伊勢志摩サミットに出席するオバマ大統領による広島訪問です。広島への原爆投下について米国民の半数以上が「正しかった」と答えています。したがってオバマ大統領による広島訪問を「原爆投下への謝罪」と受け止める米国人がいるかもしれません。

 この広島訪問について、米メディアがトランプ氏にコメントを求めるのは必至です。そこでトランプ氏がオバマ攻撃をする可能性が十分考えられます。それを受けてクリントン氏との間で「原爆投下の是非」に関する論争が起こるかもしれません。

 国務省の元高官の一人が、私にこうコメントしています。「そうなるかどうか、神のみぞ知るだね。トランプは本質的にはnon-serious person(不真面目な男)。ナンセンスなことでも思いつくと口に出す。メディアはそれを喜んで取り上げる。衆愚の代弁者なのに」。

「宗教保守」は本選挙では棄権か

—クリントン対トランプの一騎打ちの話に戻ります。予備選の前半戦に大きな影響を与えた「キリスト教保守」や草の根保守「ティーパーティ」(茶会)の人たちの声はどこへ行ってしまったのでしょう。少なくともトランプ氏の言動には伝統的なキリスト教の理念とか思いやりは全く感じられないのですが。

高濱:予備選を振り返えると、緒戦のアイオワ州やニューハンプシャー州での共和党予備選・党集会でキーワードになっていたのは「キリスト教保守」でした。共和党各候補は「宗教保守票」を競い合いました。

 アイオワ州では宗教保守の支持を得たクルーズ氏がトランプ氏を破ってトップに立ちました。信仰心が篤いとされる元精神科医、ベン・カーソン氏も宗教保守票を集めました。しかし、予備選がここまで進んでトップを走っているのはキリスト教とは無縁の「暴言王」のトランプ氏です。

 トランプ氏の指名が確実視される中で、キリスト教プロテスタントの著名な神学者や牧師ら52人が4月29日、次の共同声明を発表しました。

 「トランプ氏は自らの政治的野心のために、米国民の間に潜在的に存在する憎悪を弄んでいる。米国内のキリスト教会は今、倫理的脅威に見舞われている。(トランプ氏によって)我が国とその歴史における最も悪質な価値観が俗悪な言動と手法によって露呈しているからだ。米国政治の底辺に潜在的に存在してきた人種、宗教、性別に対する頑迷さが(トランプ氏によって)今、白日の下に晒されている。この億万長者は倫理的、宗教的脅威を作り出している」

 署名者の中には権威ある宗教雑誌「ソジョナーズ」(寄留者)の編集主幹、ジム・ウォリス氏やブライアン・マクリーン牧師、ステーブン・シェネック米カトリック大学教授などリベラル派の神学者が名を連ねています。

 「キリスト教保守」の有権者たちはこうした神学者たちの意見に耳を傾けるでしょうか。

 プロテスタント宗派の一つ、メソジスト教団の牧師で、共和党を支持しているアジア系女性の一人が、私にこう述べています。「神学者や牧師による共同宣言がトランプ氏にとってマイナス要因になるのは間違いありません。だからと言って、彼らが本戦でクリントン氏に投票するとは限らない。棄権することも十分に考えられます。少なくとも私はその一人です」

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5/6JBプレス 伊東乾『トランプ大統領になれば、地に落ちるドルの信用 米国とEUの衰退が顕著ないま、通貨について改めて考える』、5/8日経『「予測不能」がトランプ流 前例打破し本選へ

伊藤乾氏のプロフィールは

「作曲家=指揮者 ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督

1965年東京生まれ。東京大学理学部物理学科卒業、同総合文化研究科博士課程修了。2000年より東京大学大学院情報学環助教授、07年より同准教授、慶應義塾大学、東京藝術大学などでも後進の指導に当たる。若くして音楽家として高い評価を受けるが、並行して演奏中の脳血流測定などを駆使する音楽の科学的基礎研究を創始、それらに基づくオリジナルな演奏・創作活動を国際的に推進している。06年『さよなら、サイレント・ネイビー 地下鉄に乗った同級生』(集英社)で第4回開高健ノンフィクション賞受賞後は音楽以外の著書も発表。アフリカの高校生への科学・音楽教育プロジェクトなどが、大きな反響を呼んでいる。他の著書に『表象のディスクール』(東大出版会)、『知識・構造化ミッション』(日経BP)、『反骨のコツ』(団藤重光との共著、朝日新聞出版)、『日本にノーベル賞が来る理由』(朝日新聞出版)など。」とあります。

ビットコインの仕組みに疎いので、ビットコインが世界通貨の主流になるのかどうか分かりません。でも日本円を売り、ビットコインを買う時には、金融市場の為替レートを参考にするのではと思いますが・・・・・。固定相場ではやりきれないのでは。新たな仮想国の通貨が出来たと考えるべきなのか?世界を旅するときに、それぞれの国で両替しなくて済むというのは便利です。(つづく)とありますので次回の説明を楽しみに待ちたいと思います。

トランプ大統領になると$の信用が地に落ちると言っていますが、今回はその説明がありませんので、論理的根拠が分かりません。$の基軸通貨としての地位がそんなに簡単に低下するとは思えません。指導者の道徳性で貨幣価値が減ずるとは考えません。そもそも米国は戦争経済ではないですか。

トランプが共和党大統領候補として残ったのは、エスタッブリッシュが米国国民の民意を掬い上げて来なかったからでしょう。「世界人口の半分と同じ富が62人の富豪に集中」(News Week)という資本主義から生じる極端な格差社会を放置してきたためです。日本の戦前、軍人によるテロで社会改革を行うより、選挙で社会を変えようとする方が健全です。トランプの物言いは下品で、好きにはなれませんが、選挙民の心を掴んだという事です。ポピュリズムの極みではありますが。

http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2016/01/62.php

5/8日経には「FBIがヒラリーを数週間内に私用メールアドレス使用の件で聴取」との記事が出ていました。ヒラリーが勝つとは限らないというか、本選に出られない可能性もあります。その時の民主党の候補はサンダースになるのかどうか?

日本国民ももっと国防について真剣に考えなければ。トランプは駐留米軍基地代を全部払わなければ撤退、核武装も認めると言っています。国民的議論を起こす良いチャンスです。黒船来航と同じと考えれば良いのでは。あの当時の日本国民の情報レベルは低かったと思いますが、今はいろんな媒体から情報が取れます。憲法(特に9条)、日米安保、核保有、スパイ防止法、国民の国防義務(徴兵制復活ではありませんので念の為)を議論するようにメデイアは旗振りすべき。

しかし外務省は相変わらずお粗末。トランプに対する人脈がなくてアプローチできないとは。「タダ飯食い」と昔は言ったものです。国民はもっと怒らないと。別な組織で外交しないと、日本は中国の属国にされてしまいます。

JB記事

Hamilton

米初代財務長官アレクサンダー・ハミルトンの肖像が印刷された10ドル紙幣〔AFPBB News

 ついにビットコインの発明者が名乗りを上げました

 オーストラリア・ブリスベンの情報工学者、クレイグ・ライト(1970-)が「サトシ・ナカモト」の正体は自分である、とカミング・アウトした。大きなニュースと思います。

 税制の問題に関連して、唯一最大の謎&置石になっていた「サトシ」の正体が知れたことで、これから暗号通貨は大きく動き出すように思います。そんなことも念頭に、現在進行形の「お金の問題」を考えてみましょう。

 さて、ここで改めてお金の価値って、いったい何で決まってくるのでしょう?

 「近代経済学」という言葉があります。正確には「ありました」というべきかもしれません。私がティーンの頃、つまり冷戦期の日本では、経済学は大きく「近代経済学」と「マルクス経済学」に二分されていました。

 早くに亡くなった父が果たせなかった学問への憧憬として「経済学」のファンであった中学高校時代の私にとって「経済学」とは「マル経」と「近経」を指すもので、両者をバランスよく学びたいと子供なりの頭で思ったりしていました。

 しかし、欧州に留学して冷戦期東側の実情を見て「マル経」に幻滅した経緯があります。

 果たして冷戦体制の崩壊後、急速に「マル経」という分野そのものが消滅するとともに、対概念に近かった「近経」という表現も下火になり、経済学はデリケートに分類されるようになっていきました。

 が、かつて「近代経済学」と言われた分野の本質はケインズ以降の経済学、より明確に特定するならケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」(1936)以降の「ケインジアン」のエコノミクスで「古典派経済学」クラシックスに対して「モダン」なケインズ経済学として「近経」が位置づけられていたように思います。

 ケインズの経済学は、時期的に見ても、また米国でフランクリン・ルーズベルト大統領が推進した「ニューディール」政策の強力な後ろ盾になったことからしても「世界恐慌(1929-)」という眼前の自体と切り離しては考えられません。

 端的に言えば、1930年代以降のあらゆる経済学は、当該時期のマルクス経済学を含め、「恐慌再発」をいかにして防止するかという究極の目標を持っているといっても過言ではないのです。

 こうした観点はあまりに大上段、かつ大時代がかって見え、精緻な分析を旨とするプロのエコノミストが言及されることは少ないかもしれません。

 しかし、いまデジタルマネーや暗号通貨、ビットコインやブロックチェーンの技術などを考えるとき、あえて改めてこうした大本の観点に立ち返って見ることにも、一定の意味があると思うのです。

 いま改めて「お金」とはいったい何なのか。また「お金のクライシス」通貨危機とはいかにして起こり得るものなのか。金融に端を発する経済恐慌は、どのような政策によって回避できるのだろうか?

 こうしたナイーブな疑問は「経済学の本質的課題」の1つとして、広く問われてよいと思うのです。

お金の価値とは何なのか?

 さて、改めて、お金の価値、その源泉はどこから来るのでしょうか?

 貨幣というものの歴史を振り返ると、古典的には2つの考え方が長く対立してきました。

 第1は「貨幣価値説」と呼ばれるもので「お金そのものに価値がある」という考え方です。例えば金貨はその「金」という物質そのものに価値があるから「お金」なのである・・・。

 仮にそうだとすれば、金地金は立派に「お金」として通用するはずです。が、翻って、現在私たちが使っている日本国の通貨はどうでしょうか?

 調べて見ると「10円玉の原価は約10円」という興味深い事実が分かります。なぜ興味深いかと言えば、非常に珍しく額面と原価が一致しているから。

 と言うのも、「100円玉の原価は約25円」で、決して10円玉の10倍ではありません。それどころか「50円玉は約20円」、「500円玉に至っては約30円」で、およそ額面に比例していない。

 もっと問題なのは「1円玉の原価は約3円」で原価の3分の1の額面価値しか持っていない。これは5円玉が約7円というのと同様、作れば作るだけ赤字ということにもなりかねない。ところが逆もあるわけで、

 1万円札の原価は約22円、つまり50円玉と大して原価が変わらないのに、額面としては50円玉の200倍、原価からすれば約500倍という「割りのいい通貨」になっている。

 つまるところ「貨幣価値説」は、少なくとも21世紀の日本ではまったく成立していない。お金の価値はそれを担う「通貨」の価値と無関係であることが知れます。

国や中央銀行が決めれば「価値」なのか?

 この「貨幣価値説」と並んで長らく唱えられてきたのが「貨幣法制説」つまり法律などルールによって決められているから、お金には価値があるのだ、という考え方です。

 なるほど、1円は1円、1万円は1万円と定められているから、そのように流通しているので、貨幣法制説の方がもっともらしいと思われるかもしれません。

 が、これもよく考えるとすぐに成立しない現実の局面が見えてきます。例えば「国」を跨げばどうなるか?

 私たちは日常的に為替レートの情報を目にします。円安は製造業にとっては歓迎すべき影響をもたらすことが多いですが、円を持って海外に出る人にとっては財布を直撃してなかなか厳しいことになる。

私たちは「円が高い」「円が安い」という相場の変動を当たり前のものとして認識しています。同じ製品を日本で円建てで購入するのと、欧州でユーロ建てで購入するのと、原価から流通コストまで様々な違いがあり乱暴なことは言えませんが、少なくとも「特定の国家が法で定めたから、その通貨にそれだけの価値がある」などと言えないことだけは間違いない。

 さらに、一国内での出来事で考えるなら「ハイパーインフレーション」のような事態を考えれば物事は如実に知れるはずです。

 かつて「ジンバブエ・ドルZWD」という通貨がありました。1980年に導入された当初は1USドル=約0.68ZWD、米ドルと同じ桁で通用する通貨としてのスタートだったはずが、2000年に始まった土地接収行政など政策的な失敗によって人類史上最悪のハイパーインフレ記録を塗り替え続けることとなります。

 2008年のジンバブエのインフレ率は5000億%だったそうです。こう言われても正直ピンと来ませんよね?

 これはつまり、正月に1円で買えたものが、暮れには50億するという話で、リヤカー一杯お札を持っていっても、「こんなもの何の信用も置けない!」と受け取りを拒否されるレベルの代物になっている。

 「貨幣法制説」をこれほど明確に否定する現象はないでしょう。昨年つまり2015年、ジンバブエ準備銀行(中央銀行)は最終的にこの通貨を廃止、3.5京ジンバブエドルつまり、

 35,000,000,000,000,000ZWD=1米ドル

 として残高を精算、通貨としての35年の命を閉じました。

 こんな状況になってしまえば財政政策も金融政策もへったくれもあったものではありません。市場が貨幣を信用しなくなってしまえば、国家がどのような法を定め、どんな財政出動をしようとも、あるいは中央銀行が金利を多少操作しようとも、まさに焼け石に水です。

 近代経済学の諸パラダイムが成立するのは、通貨(政体を含めるべきかもしれません)への信用が大前提、「信用なきところに通貨成立せず」あるいは「信用なき貨幣」に法制説は無用と言うべきかもしれません。

 どんなに政治権力が力で抑え込もうとしても、いったん信用を失った通貨は元来の価値を市場で通用させることができません。

「マルボロ本位制」と暗号通貨

 日に日に通貨価値が下落し、「ジンバブエ・ドル」に何の信用も置けなくなっても、現地で暮らす人々は日々の取引をせねばなりません。そこで彼らは何を用いたか?

 一部では「旧ソ連でルーブルが暴落したときと同様」の対処がなされたと言われます。いわば「マルボロ本位制」、つまり、封の切っていない米国フィリップ・モリス社製のタバコ「マルボロ」が通貨代わりに用いられていたらしい。

 これについては旧ソ連末期、ルーブルが紙くずとなり使い物にならなかったとき、日用品その他の売買にマルボロが使われていた現場に居合わせた佐藤優さんから「金でも銀でもルーブルでもない、マルボロ本位制」として体験談を伺ったことがあります。

 赤いマルボロ何個かが金のマルボロ1個に相当、といった、実際の価格とは独立した「マルボロ信用経済」がローカルに成立して、日用品や食物などが取引されていたという。

 国家の信用が崩れたとき、外国のタバコが信用を代替したという、笑うに笑えない現実です。

 さて、2016年の今日、私たちは1989~91年のモスクワやレニングラード=ペテルスブルクのように米ドルを信用することができるでしょうか?

 国際政治的に「世界の警察官」であることをやめ「米国の平和」はとうに終わってしまった超大国米国の通貨「ドル」。

 第2次世界大戦欧州全土が壊滅的打撃を受け、その復興時に米ドルが果たした役割、あるいは1960年代のスタグフレーションを切り抜け変動相場制に移行した時期に機軸通貨ドルが果たした役割・・・。

 いずれも2010年代後半、すでにパックス・アメリカーナが完全に終結し、ドナルド・トランプのようなキワモノ大統領候補が一定の風評を得てしまうところまで来てしまった米国通貨に、今後のグローバル経済が仮託できるものではないでしょう?

 「米ドルこけたら皆こけた」

 こういう状況を回避するために、私たちはどのような命綱を張ることができるのか。

 ここで欧州や日本、そしてなにより自国通貨としてのドルの先行きを案じる米国先覚層が期待を寄せるのが「暗号通貨」ビットコインなどのデジタル・マネーにほかならない。

 そう言っても大げさではないのでは、と思うわけです。

(つづく)

FT記事

米国の政治はもう後戻りできない。実業家のドナルド・トランプ氏が11カ月前、米大統領選挙に名乗りを上げた時、誰もが笑い飛ばした。今や共和党候補の指名獲得が確実だ。

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5日、ウエスト・バージニア州の集会で演説するトランプ氏=ロイター

 二大政党の1つがグローバル化と自由貿易に明確に異を唱える人物を大統領候補に指名するのは近代以降、初めてだ。長い歴史を持つ共和党が、このようにいきなり世界観を覆したのは民主主義史上、まずない。

 (インディアナ州の予備選があった)今月3日の夜、米大統領を選ぶ本選挙が事実上始まった。この選挙で世界の中の米国の立ち位置が変わる。トランプ氏とヒラリー・クリントン氏の戦いは、色々な意味で前例を打ち砕くものになる。

 選挙の構図は共和党対民主党ではない。造反者と支配階級、思いつきで物を言う人と道徳的、政治的に正しい発言をする人、混乱を呼び込む者と現状維持派、自国第一のポピュリストと他国との関係を考える従来型の国際主義者の戦いだ。

 なかんずく今回は、選挙で選ばれる公職に一度も就いたことがない者と、大統領選に勝つために人生をささげてきた者の一騎打ちなのだ。

 普通に考えれば、クリントン氏が勝つに決まっている。トランプ氏はこれまで次々とマイノリティー(少数派)など様々な集団を侮辱してきた。彼らを足し上げると有権者の大半を占める。女性を加えれば圧倒的多数になる。

 さらに言えば、トランプ氏のように有権者に嫌われながらも、本選で勝ちそうになった人物はこれまでいなかった。

 そもそもそうした人物は候補者として指名されることがなかった。この点でトランプ氏はこれまでの常識というものをずたずたにした。仮にこのニューヨークの大富豪が自分に有利になるよう、半数を超える共和党員の気持ちを動かせるとしたら(実際、すでに大きく動かしたが)、彼が本選でそうするのを誰が阻めるだろう。

 従来の判断基準はどれも当てにならない。党の候補者指名を勝ち取るには、党内有力者の推薦を取り付け、徹底した選挙組織を構築し、驚異的な集金マシンで寄付を集め、経験豊富なアドバイザーを複数抱えることが不可欠とされてきた。トランプ氏はこうした鉄則とは無縁のまま、予備選で勝利を収めてきた。今後の注目点は同氏がいつ党内の推薦を取り付け、本選に向け組織を組み立てるかだ。

 膨大な数の共和党のエリート党員がツイッターで展開してきた「トランプは絶対ダメ運動」などはどうでもいい。識者は社会の趨勢が読める。すでにツイッター上では「ようこそドナルド運動」にとって変わりそうな兆しが見える。

 (共和党全国大会が7月に開かれる)オハイオ州クリーブランドで暴動が起きるとは思えない。党大会で候補指名が争われる可能性は3日の夜、インディアナ州で消えた。党大会はトランプ氏の「即位式」になる。

 大統領選は今後、事実上の候補2人の重大な弱点に焦点が当てられていく。

 クリントン氏の最大の弱みは信頼感の低さだ。陣営の中には、信頼されていないことについて同氏が演説で率直に話したらどうかと提案する人がいる。過去の大統領選でも、ジョン・F・ケネディ氏が1960年にカトリック教徒であることをはっきりと語り、あまり成功したとは言えないが、ミット・ロムニー氏が2012年にモルモン教徒であることを明かした。どんな形であれ、発言する前から信用されなければ、クリントン氏は他の問題を打破するのに苦労するだろう。

◇ ◇ ◇

 トランプ氏の問題は、敵に回した有権者があまりにも多いということだ。支持者を扇動しアフリカ系米国人の活動家に嫌がらせをしたり、ヒスパニック系の不法移民を悪者よばわりしたり、女性を見下した発言を繰り返したりした結果、同氏にとっては間違いなくかなり不利な戦いになる。11月の本選で勝つには、驚くほど多くの白人票を獲得する必要がある。とはいえ、今年に入ってすでに常識では考えられないことが起きている。

 劣勢候補とみられていたトランプ氏は、今後も常に予測不能な言動をとることで強みを発揮するだろう。隙を突いてクリントン氏に不意打ちを食らわせ、米国政治で長らくタブーだったような侮辱をクリントン氏に浴びせもするだろう。

 大事なのは社会通念を信じるなということだ。各世代が長らく信奉してきた考えが通用しなくなる。向こう半年の間、近代史以降で恐らく最も興味深い政治劇が展開されるだろう。

 「我々は再び美しい愛すべき1つの国になる」。トランプ氏はインディアナ州の予備選の後、こう述べた。どうもそうはならない気がする。

By Edward Luce

(2016年5月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

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5/6JBプレス 藤和彦『パイプラインは日ロの架け橋となるか? 両国にメリットがあるサハリンからの天然ガス輸送』について

日露はルトワックの言うように、反中国と言う面で手を握ることは可能と思います。ロシアは、シベリアに進出して来る中国人を防ぐため、日本企業に進出して貰い、合理的管理の下、産業を発展させ、石油・ガスに依存したGDPの構成比を変えたいと思っているはずです。日本にとって最大の敵国は中国です。GDPの大きさから言っても、ロシアはシリアでの継戦能力を見ても、日本の敵となるのは考えにくいです。しかし、中国も高橋洋一氏によれば「中国GDPは公表数字の1/3」と言っていますから、400兆円くらいしかない計算となりますが。中国の社会主義市場経済は国際ルールに沿ったやり方でないので、バブルの延命策がどの程度持つか分かりません。バブルの間は予算措置して軍事拡張していくでしょう。

「サハリン2」の権益変更問題や日ソ中立条約を破棄したロシアをどこまで信用できるかという問題もあります。これが北方領土問題に繋がっている訳で、日本の国民感情としては、おいそれと経済協力に踏み込めないのは分かります。

http://www.knak.jp/livedoor/oil/sakhalin.htm

パイプラインを日本に敷くことは長期に購入するのが前提となります。メタンハイドレートや核融合等の代替エネルギーの実現をも踏まえるとその方法が正しいのかどうか。LNGで輸入した方が良くはないのかと思います。

5/6プーチンは安倍首相との会談を1時間遅らしたとのこと(5/7日経)。理由が書いていませんでしたのでどう判断したら良いのか分かりませんが、戦略的にそうしたというなら、武蔵でもあるまいし、失礼な話です。国内世論対策の面があるのかも知れませんが。

記事

Cape Soya

宗谷岬から樺太(サハリン)を望む。(出所:Wikimedia Commons

「パイプラインは日ロの架け橋となる可能性を秘めた重要な事業であると考えている」 

 ロシアとのエネルギー協力拡大をテコに日ロ関係の早期改善を願う自民党の議員たちが、3月末に来日した露ガスプロムバンクの最高幹部と会談した。上記発言は日本側の異例のもてなしに感激したロシア側からなされたものである。

 ガスプロムバンクは世界最大の天然ガス生産企業であるガスプロムの子会社であり、ロシア三大銀行の1つである。主な融資先はガス・化学・機械産業などのロシア製造業であり、日本では言えばかつての日本興業銀行のような産業金融の雄である。

日本の国内資源と言ってもよいサハリンの天然ガス

 ロシア側が述べた「パイプライン」とは、ロシアのサハリン州から日本へ天然ガスを供給するパイプラインのことである。

 北海道の稚内から南端まで最短43キロメートルのサハリン島、その約600キロメートルの海岸沿いの浅い海底下に膨大な量の天然ガスが眠っている。津軽・宋谷の2つの海峡を挟んでいるが、ほとんど地続きと言ってよく、東京からの直線距離は沖縄より近い。

国境を考えなければ、日本の国内資源と言っても過言ではないサハリンの天然ガスは、1980年代から日本とロシアの共同事業によって発見された。天然ガスの可採埋蔵量は約2.4兆立法メートル。日本全体の天然ガス消費量の約24年分である。

 サハリン2鉱区の天然ガスは2009年3月からLNG(液化天然ガス)という形で日本をはじめ中国・韓国などにも供給されているが、その他のサハリンの天然ガス資源の大部分は手つかずのままである。

 サハリン1鉱区の事業者は2000年頃、北海道を経由して首都圏を結ぶパイプラインによる輸送を日本政府に要請したが、買い手側の中心である電力業界が難色を示したため実現に至らなかった。

 国際的には天然ガス輸出の9割以上がパイプラインによる輸送であるが、日本の天然ガス輸入は100%がLNGである。液化・海上輸送・気化に多額の費用を要するLNGは長距離の輸送には利用されているものの、パイプラインによる生ガス輸送に比べるとコストが高い。日本から近距離にあるサハリンの天然ガス輸入は、国際的な常識からすればパイプラインによる輸送が適している

日露のエネルギー協力はLNG事業一色

 ガスプロムも最近日本向けパイプラインを提案したことがある。

 2012年5月民主党の前原誠司政調会長(当時)はモスクワ市内でガスプロムのメドヴェージェフ副社長と会談した。その際、ロシア側は日本向けガスパイプラインの敷設を提案した(2012年5月3日付日本経済新聞)。

 日本を含むアジアをガス輸出の有望市場と位置づけるガスプロムの提案に対し、前原氏は「政府・与党として可能性を検討する用意がある」と前向きな発言をした。だが、帰国後「ロシア・ウラジオストクのLNG輸出基地の建設計画が優先する」としてパイプラインについて消極的な態度を示した。

 日本側に袖にされたガスプロムのミレル社長は、翌6月末、サハリンから日本に天然ガスを輸出するためのパイプラインを敷設する構想について「検討課題ではなくなった」とし、「日本への輸出はLNGに専念する」考えを示した(2012年6月30日付日本経済新聞)。その後、状況は変化することなく現在に至っている。

 前原氏が発言を変更した背景には、ウラジオストクのLNG基地建設に丸紅や伊藤忠商事が事業参加していることがあったと考えられる。前述のサハリン2のLNG事業に三菱商事や三井物産が参画しているように、日本の経済界のロシアとのエネルギー協力はこのところLNG事業一色である。

 民間側の取り組みを後押しする立場の経済産業省も「ロシア側からのオファーはLNGのみである」との見解を有している。

ロシアの本音は「対中偏重を見直したい」?

 このような日本側の意向に対して、ロシア側が再びパイプラインに関心を持ち始めた。そこに「中国ファクター」が作用していることは確実である。

 ウクライナ紛争による欧米の経済制裁で窮地に陥ったロシアは中国との関係を強化してきたが、「すきま風」も吹き始めている(4月10日付日本経済新聞)。

 ロシア原油の最大の輸出先は昨年ドイツから中国へと変わった。資金繰りに苦しむロシア最大の石油生産企業であるロスネフチは株式公開による資金調達を検討しているが、中国石油天然ガス集団(CNPC)が株式の約2割を購入する意向を示している。

 このように石油分野で中国のプレゼンスが飛躍的に増大しているが、天然ガスでも同様の事態が生じようとしている。

 2014年5月にプーチン大統領が訪中した際に締結したロシアから中国への天然ガスパイプラインの東ルートに関するフィージビリティスタデイが4月に終了し、いよいよパイプラインの建設が秒読み段階に入った。

 天然ガスの分野でこれまでのところ中国のプレゼンスはないに等しかったが、パイプラインが完成すれば中国はロシア産天然ガスの大輸入国となる。

 ロシアから欧州に輸出されている天然ガス価格が下落している状況下で、タフな交渉相手である中国が2014年段階で決まったとされる価格でガスを購入するとは思えない。

 4月29日に訪中したロシアのラブロフ外相は「6月にプーチン大統領が訪中する」ことを明らかにした。ロシアは再び中国との蜜月関係を誇示するだろうが、ロシアの本音は対中偏重を見直し、日本に接近してバランスを取りたいということではないだろうか。

パイプラインの「相互確証抑制効果」とは

 パイプラインを結ぶと「ロシアに首根っこを押さえられるのでは」との懸念が日本では根強い。しかし、エネルギー専門家の間では「ガスの禁輸は使えない『武器』である」(本村真澄・石油天然ガス・金属鉱物資源機構主席研究員)というのは常識である。

 現在、各種資源間の競争が激化している中で、資源国が天然ガスの供給を一方的に停止すれば、消費国からの信頼を失い、以降天然ガスを一切購入してもらえなくなるからである。

 その証左が、2015年11月に戦闘機をトルコに撃墜されたロシア政府の対応である。ロシアのトルコに対する経済制裁のリストに「天然ガスの輸出停止」という項目はなかった(トルコ・ストリームという新規の天然ガスパイプラインの建設は棚上げになった)。天然ガス輸入の約半分をロシアに依存しているトルコが窮地に陥いることは火を見るより明らかであったにもかかわらず、である。

 エネルギー専門家たちは、むしろパイプラインが敷設されることにより当該地域の安全保障が向上する効果に注目している。冷戦時代の核の「相互確証破壊効果」をもじってパイプラインによる「相互確証抑制効果」と呼ばれているものだ。

 安全保障が向上する理由は、資源国がパイプライン建設という先行投資を着実に回収するために消費国に天然ガスを安定的に供給するという発想が強くなるため、消費国はもちろん資源国も敵対的な行動をすることができなくなるからである(冷戦時代にロシアと西欧間に敷設された天然ガスパイプラインは、ロシアと欧州の間の安全保障を支える基盤となった)。

 しかしLNGでの供給ではこうはいかない。点と点のつながりであるため、「協調」という要素が薄いからである。

 このような学習効果があったからだろう、ロシアへの経済制裁にもかかわらず2015年9月欧州企業はガスプロムとの間で「ノルドストリーム(バルト海を経由してロシア・ドイツ間をつなぐ天然ガスパイプライン)」の拡張に関する契約を締結した。

日露首脳会談で議題に上るか?

 しかし日本では経済制裁以降、ロシアとの経済協力は停滞したままである。

 5月6日のソチでの日ロ首脳会談も、開催までに紆余曲折があったようだ。

4月20日、モスクワのクレムリンで昨年12月に着任した上月駐露日本大使の信任状奉呈式の際に、プーチン大統領は「安倍首相が5月6日にロシア南部ソチを訪問する」との異例の発言を行った。

 これは、4月16日にロシア外務省の報道官が「米国の執拗な勧告を受けた日本は我々との連絡を狭め、二国間の仕事を中断した」と述べたことをロシアの一部メデイアが曲解して、「来月に予定されていた安倍首相のロシア訪問が米国の圧力により中止となった」と報じたことへの対応であろう。安倍首相との対談をなんとしてでも実現したいとするプーチン大統領の意向の表れでもある。

 プーチン大統領との会談に望む安倍首相は「両国の主張で深い溝がある領土問題に固執せず、経済分野や安全保障分野での連携強化など幅広い協力関係を築くことで、領土問題解決に向けた環境整備を図る」(5月2日付毎日新聞)意向である。

 統一直後にドイツに滞在した筆者は、多くのドイツ人が「旧ソ連がドイツ再統一を認めさせた影の功労者はパイプラインである」と述べていたことを今でも鮮明に覚えている。これにならえば、パイプラインの敷設は長期的には日本にとってプラスであろう。

 今回の首脳会談でパイプラインが議題になるかどうかは定かではないが、パイプラインは一度敷設すれば100年保つと言われている。この「国家百年の計」を実現するためには、ノルドストリーム実現に尽力したドイツのシュレーダー首相(当時)が指摘するように、安倍首相とプーチン大統領がトップ同士で合意することが不可欠であることは言うまでもない。

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5/4日経ビジネスオンライン 福島香織『中国が渇望する「南シナ海有事」に備えよ 日中外相会談、4時間20分の「先」を読む』について

日本人と言うのはどこまでも優しいという気がします。相手の気持ちを忖度して王毅に同情するなんて。小生は8年間中国人と付き合ってきて分かりますが、こちらが相手のことを考えて言ったり、行動すると、中国人はそれを利用しようとします。日本人の善意に付け込む訳です。中国人は日本人が考える以上に強かです。勿論、全部が全部と言う訳ではありません。日本人の価値基準で言うと、中国人の内悪い人は8割、日本人の内悪い人は1割くらいと主観的に思っています。民族的DNAと環境の為せる業でしょう。

岸田外相も叩頭外交だけでなかったようで、良かったと思います。主張すべきは主張しなければ相手に舐められます。中国には「内政の為の外交しかない」と福島氏は言いますが、その通りと思います。「指桑罵槐」、「殺鶏嚇猴」と言った手が良く使われます。日本はそれをよく読み、現象面を見てオタオタしないことが肝要です。

習の軍の実権把握は未だし、軍制改革も失敗というのはチャイナウオッチャーの大方の見方では。ただ南シナ海で事を起こして、陸軍の力を削ごうという見方は気が付きませんでした。前にも書きましたが、人民解放軍の海軍の英文名はPeople’s Liberation Army Navyです。Armyの後ろに Navyが来て陸軍と海軍を併記するのは違和感があります。US ArmyやUS Navy、Japan Ground Self-Defense Forceや Maritime Self-Defense Forceと別にするのが普通では。歴史的には陸軍から派生したものであっても。

鄧小平が起こした中越戦争も敗北したにも拘わらず、国内向けには勝利宣言したとのこと。習もそう考えれば、海軍を使って局地戦を展開する可能性はあります。ただ、陸軍の力を削ぐことにはならないのでは。米軍の介入、日本の後方支援と勝てる見込みはないでしょう。如何に情報遮断しても国民の知る所となります。しかし、経済やITに疎い習のことだから、リスクを考えずに、戦争に進むかもしれません。福島氏の言うように日本も対応を考えておかないと、次は尖閣になります。9条の会の言うことが如何に世界平和に繋がらないかです。

記事

Kishida & Wang

4時間20分に及んだ日中外相会談。駆け引きの先に見えてきたのは、「南シナ海有事」の色濃い影だ(写真=ロイター/アフロ)

 日本の外相・岸田文雄が実に4年ぶりに訪中し中国の外相・王毅と会談した。いよいよ日中関係改善かと期待した向きも多かっただろうが現実はそう甘くない。冒頭、王毅は「もし、日本側が本当に誠意をもってきたならば、中国側は歓迎する」と述べ、「中国の古語に聴其言、観其行(その発言を聞き、行動を見る)と言う言葉がある。今日は外相、あなたがどのような中日関係改善をもっているか、その意見を聞きたい。もちろん、同時に日本が本当に着実にそれを実行するかも見るつもりだ…」と、中国人ですら、何、この上から目線?と驚くほどの高圧的な態度であった。

 しかも以下の四つの改善要求を突きつけた。①歴史を直視、反省し、「一つの中国」を重要な政治基礎とすることを厳守。②中国脅威論や中国経済衰退論をまき散らさない。③経済面で中国を対等に扱い、互恵を基礎に各領域の協力を推進する。④日本は中国に対する対抗心を捨て、地域の平和・安定に尽力せよ。

岸田VS王毅、本命は南シナ海問題

 会食もいれた4時間20分もの会談の中身は報道ベースによると、中国の海洋覇権問題、つまり東シナ海と南シナ海をめぐる両者の応酬であったようだ。産経新聞によれば、岸田は、王毅の反論に対して「立場を述べるだけなら報道官でいい。その上でどうするか考えるのが外相だ」と、かなりキツイことを言ったようだ。中国の外相に何の権限も与えられていないことは当然承知しているだろうに。しかも、王毅は中国の対台湾外交の失策の責を負わされかねない立場にあり、ことさら傲慢な姿勢をテレビ画面で見せつけるのは、彼のきわめて官僚的保身意識の表れだと感じている。

 ちなみに私を含め、私より上の世代の記者にとって王毅は、日本メディアに対しても率直に意見交換をしてくれる「話のわかる官僚」というイメージを持っているだろう。国際会議の場のホテルロビーなどで王毅を見つけて「王毅さーん!」と日本語で呼びかけると、立ち止まって日本語で記者たちの質問に応じてくれることもよくあった。あのころの彼を思いだしながら、今の外相という責任だけ負わされる何の権限もないポジションで、日本に横柄な姿勢を示して、政権への忠誠をアピールするしかない姿を見ると、ちょっと哀れを催す。

 今回の岸田訪中の最大テーマは、喫緊の危機、つまり南シナ海問題ではないかと思う。中国は日本の介入を牽制したい。そのために、岸田を北京に招待したのだろう。その最大のテーマについての話し合いは、報道を見る限り平行線に終わったようだ。それが良かったのか、悪かったのかは最後に述べたい。

まず、南シナ海がどういう状況か整理しておこう。

 南シナ海関連の最近のニュースをざっと見返すと、まず4月25日付の香港紙サウスチャイナモーニングポストが、中国は年内に南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)の軍事拠点建設に着工すると報じた。ソースは解放軍周辺筋で、それによると南シナ海の上空監視を完璧にするための前哨基地にするつもりで、計画では滑走路建設も含まれているとか。中国船による測量がすでに開始され、これに懸念を強めた米国は連日のようにA10攻撃機を飛ばしている。A10は少々被弾しても帰還できる「不死身の攻撃機」の異名をとる対地攻撃専用機だ。米国の本気の怒りがうかがえる。

 だが中国国防部報道官・呉謙は記者会見(4月28日)で、スカボロー礁軍事拠点化計画に対する質問に対しては「私は承知していない。メディアの扇動じゃないか」とうそぶきながらも、「黄岩島は中国固有の領土であり、その主権と安全を守るために各種危機に対応する権利を有する」と言ってのけた。さらに米国が昨年10月来、三度に渡って行っている「航行の自由」作戦に対し「南シナ海情勢を攪乱している」と非難し、「中国に対する政治的軍事的挑発であり空海における不測の事態を招きやすい」と警告している。一方、米国防長官アシュトン・カーターもスカボロー礁問題について「軍事衝突につながるおそれ」に言及。つまり双方が、軍事衝突の可能性をにおわすチキンレース的な挑発合戦に入っている。

 大統領選を控えたフィリピンでは、対中外交も争点になっている。有力候補のロドリゴ・ドゥテルテ(現ダバオ市長)は「祖父が中国人だから中国とは戦争しない」と語る親中派候補。対する、マヌエル・ロハス(前内務自治相)やグレース・ポー(無所属上院議員)は「国際社会と足並みをそろえる」という表現で対米関係強化による中国との対立の方向性にある。フィリピン選挙の結果も多少関係しようが、南シナ海における偶発的軍事衝突というシナリオは十分に考えられるレベルの緊迫度である。

フィリピン、ベトナムとの係争を契機に

 こうした南シナ海危機の状況は、今、突然、降ってわいたものではない。

 スカボロー礁については、2012年のいわゆるスカボロー礁事件(フィリピン海軍の中国漁船拿捕をきっかけに。フィリピン海軍と中国監視船が一カ月以上対峙した事件)がきっかけで、中国の実効支配が進むことになった。

 フィリピン側が国際海洋法に従って提訴して、軍を撤退させたのに対し、中国側は自国の領土であることは明白だとしてこれを無視し、居座り続けた。翌年6月には、スカボロー礁に大量のセメントなどが運びこまれて軍事施設を建設しようとしているのではないかとフィリピン軍事関係者が衛星写真をもとに訴えていた。

 スカボロー礁埋め立て問題の前には、ベトナムとの領有を争うファイアリークロス礁(永暑島)の滑走路建設問題があった。ファイアリークロス礁は1988年のスプラトリー諸島(南沙)海戦によって中国が実効支配下に置き、軍事関係者が常駐し要塞化している。2014年8月にこの環礁の埋め立て造成がはじまり、2015年1月から突貫工事で3000メートル級の滑走路が建設され、2016年1月には民間機の離発着テストが行われた。4月には解放軍の軍用機(Y-8輸送機)が着陸したことが公表された。これは表向き重病の工事関係者を緊急搬送するためということだが、中国がこの滑走路が軍事使用に耐えうるかをテストしたかったということは想像できる。

時を前後して、パラセル諸島(西沙)のウッディー島(永興島)に解放軍の地対空ミサイルHQ-9を配備したほか、J-11戦闘機、JH-7戦闘爆撃機などの配備が確認され、西沙の軍事拠点化も着実に進めて来た。さらに党中央機関紙・人民日報傘下のタブロイド紙・環球時報が南シナ海における海上浮動式原発の建設計画を報じた。ソースは中国船舶重工集団幹部で、空母遼寧を改修したのもこの会社だ。報道では、目的は燈台などの民事用電力としているものの、これをそのまま信じている人はほとんどいない。

 南シナ海で原発が必要なほど膨大な電気需要があるというならば、それは軍事拠点化に伴う需要、あるいは海洋資源開発を進めるつもりだと考えるのが普通だろう。しかも、南シナ海に原発を造る意味というのは単なる電力供給というだけでない。原発の存在を理由に中国が民間機の飛行制限を求める可能性もあるし、実際、原発上空の飛行を安全のために民間機は避ける。そうなると事実上、中国の制空権を認めた、というような既成事実と受け取られる可能性もあろう。

中国には「内政のための外交」しかない

 2015年9月、習近平は訪米時、「南沙の人工島を軍事拠点化するつもりはない」と言明したにもかかわらず、南シナ海の人工島の軍事拠点化への布石を着々と打っており、そのことが11月のASEAN首脳会議の場で指摘されると「習主席は軍事拠点にしないとは言ったが、軍事施設を建設しないとはいっていない」(劉振民外務次官)という詭弁を弄した。

 4月頭には解放軍制服組トップ(中央軍事副主席)の范長龍がファイアリークロスを視察しており、「軍事拠点化しない」「民事利用」といった建前をもはや中国は守ろうともしていない。私の個人的な見解を言えば、挑発というレベルを超えて、どうみても中国は「紛争」「危機」を起こしたがっている、すでにそのための作戦は静かに進行中だろう。

 では中国は、なぜここまで、米国やフィリピン、ベトナム相手に危険な挑発をするのか。不測の事態、偶発的軍事衝突が起きて、中国が得をすることがあるのだろうか。

 ここで、重要なのは、中国には内政があって外交がない、あるいは内政のための外交という発想しかない、ということである。内政というのは簡単にいえば権力闘争である。中国の権力闘争が激化していることは各メディアで繰り返し述べられていると思うが、今一番、危ういのは軍制改革の行方である。

 習近平政権は年初から四大総部(総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部)を解体し、新たに作る15の専門部局に機能を分散、さらに陸軍中心の七大軍区から、陸海空が同等の存在感を発揮する五大戦区に大幅な軍制改革を行った。また、4月20日、中央軍事委員会統合作戦指揮総指揮(コマンダー・イン・チーフ)の肩書を自ら名乗り、迷彩服で統合指揮センターを視察。軍の総帥権は中央軍事委員主席にあり、習近平はその地位にあるのだが、さらに作戦総指揮を自らとるという姿勢を打ち出した。

 この軍制改革は、建前上は強軍化が目的であるが、実際のところ習近平個人の軍権の掌握が目的であるとしか思えない。軍令と軍政を分けないで軍が正常に機能するのか、とか、習近平に戦略や戦術が分かっているのか、といった問題以前に、左手で敬礼してしまうほど軍のしきたりにうとい習近平が自ら作戦指揮を執るなど、強軍化とは逆走しているだろう。

また習近平は政権のトップになってから、徐才厚、郭伯雄といった江沢民政権時代の権力を継承する軍長老を汚職摘発の名目で排除。その一方で、自分のお気に入りの将校を出世させてきた。趙克石や李暁峰、王安竜、苗華、蔡英廷といった面々で、多くが南京軍区出身、特に第31集団軍出身である。第31集団軍は通称アモイ軍とよばれ、習近平が福建、浙江省勤務にあった時代に人脈を築いた。だが、アモイ軍はいわゆるB級(乙類)集団軍。A級(甲類)集団軍よりも格下に見られている。

 このA級、B級は革命戦争中の戦績や活躍によって振り分けられている。B級集団軍出身者は解放軍内部的には“弱い格下部隊出身”という目で見られがちである。軍権掌握のために自分と仲のよい将校を出世させるやり方は、中国の指導者では当然の手法であるが、習近平の場合、“実力不足の将校がコネで出世”した感が丸出しで、軍内では不満のムードが蔓延している。商品紹介記事しか書けない窓際記者が、社長が変わったとたんいきなり外信部長とか政治部長になって、あれこれ指示を出すようになったら、生え抜きのスクープ記者たちは素直に従えるか? そういう不満である。

 たとえば、苗華は第31集団軍から陸軍政治畑を歩いてきて、2014年6月蘭州軍区政治委員となったが、その半年足らずでいきなり海軍の政治委員となり2015年7月には海軍上将になっている。陸軍中将からいきなり海軍上将、しかも人事権を握る政治委員となれば、海軍内で不満は起きないだろうか。

 七大軍区を五大戦区に塗り替える改革も、事実上、失敗と見られている。この軍制改革は、習近平に敵対する徐才厚派閥の多い瀋陽軍区と郭伯雄派閥の残る蘭州軍区の解体であったが、結局、瀋陽軍区と蘭州軍区は北部戦区と西部戦区としてほぼもとの形のまま残った。それだけ陸軍内の習近平改革に対する抵抗が強かったということでもある。

「フルシチョフの失脚」になぞらえて

 つまり、今のところ習近平の軍制改革は順調でなく軍内の不満はかなりくすぶっている。この状況を一発逆転する一番簡単な方法は「局地的戦争」で、習近平体制の軍で戦果を挙げることである。特に、海軍に具体的な戦果を上げさせ、陸軍の利権・権力を削ぐには海戦である。だから南シナ海危機を習近平は望んでいる、と私は思うのだが、どうだろう。

 これは私の思い過ごしであればよいのだが、例えば最近、日本に移住を表明した香港在住の著名軍事アナリスト平可夫も、こんな指摘をしている。彼は習近平の軍制改革を1964年のフルシチョフの失脚の原因となった旧ソ連の軍制改革になぞっている。フルシチョフは1955年から大幅な軍のリストラを行い1964年6月にはついに陸軍司令部を廃止する。それが軍の不満をよび、十月政変の直接の導火線となった。同じように、今回の軍制改革はおそらく習近平が決定的な政治的危機をもたらすことになると予想している。

 さらにキューバ危機を引き起こしたフルシチョフと、南シナ海で強硬な軍事拠点化を進める習近平は、ともに米国を見くびり、不必要に米国を刺激し、自分の力量を過大評価しているという点でも共通していると指摘している。キューバ危機は回避できたが、同じようなきな臭さが南シナ海に蔓延しているという認識は持つべきだろう。ただ平可夫は、南シナ海や東シナ海で限定的な衝突が発生すれば、むしろ軍事的メンツをつぶされるのは中国の方で、それが、軍の習近平に対する不満爆発の導火線となる、という見立てを示している。

もう一つ、習近平が局地的な軍事衝突を望んでいるのではないか、と想像するのは、鄧小平の先例に倣おうというのではないか、という見方だ。

 1979年の中越戦争、それに続く1984年の老山を戦場とした中越国境紛争は、鄧小平の軍権掌握と軍制改革推進が、その目的の一つであるという説がある。文革終了によって復活した鄧小平は、文革で混乱した軍の整理に着手するが、その過程で自分が信頼する第二野戦軍出身の将校を重用、その人事の正当性を戦争に勝利するという形で認めさせることが軍権掌握の早道であった。

 鄧小平は旧ソ連に強い敵意を持っていたが、さすがに大国ソ連に戦争を仕掛けるのは文革の疲弊が抜けきっていない中国には荷が重いので、その手先とみなすベトナム相手に“懲罰戦争”を仕掛けたとも言える。解放軍はベトナム民兵にぼこぼこにやられるのだが、国内では勝利宣言を行い、結果としては軍権掌握、軍制改革の推進力となった。さらに軍制改革と軍の近代化を確かめる場として84年に中越国境紛争を起こす。激戦ながらなんとか雪辱を晴らし、この勝利をもって鄧小平指導体制が確立することになる。

 こういう先例があるものだが、習近平も同じようなシナリオで動く可能性はあるだろう。習近平が抜擢した軍の幹部たちにも中越戦争、中越国境紛争経験者がけっこういる。

他人事ではない。妥協なく備えよ

 そういうふうに考えると今の南シナ海は非常に危機的な状況であると認識すべきである。キューバ危機のように、ぎりぎりのところで回避されるかもしれないし、中越戦争のように本当に局地戦が起きるかもしれない。だが具体的なことを少しは想像しておくことだ。

 たとえば、南シナ海危機が本当に起きたとき、安保法制の存立危機事態に相当するとみて、米軍やフィリピン軍の軍事行動に同盟国として参与するか否か。参与するとしたらどのレベルまでか。南シナ海問題に日本は無関係だと判断して静観の構えをすれば、結果としてどういう事態が想定されるか。

 日本にとってもシーレーンである南シナ海が中国の軍事拠点化すれば、これは日本の存立危機に通じる話であるし、次に中国の軍事実力によって実効支配のターゲットとなるのは尖閣諸島だろう。私は、他人事にしてはいけないと思っている。

 今回の外相会談の詳細はまだ明らかになっていないが、南シナ海の問題について、日本が妙な妥協をしていないのならば良かった。そのことで日中の政治的関係改善が遠のくことになっても、長い目でみれば、それは地域の平和に利することになるだろう。

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