4/25ZAKZAK 湯浅博『震災の弱みにつけ込む国々 国際政治の過酷な現実』、4/20中国時報(台湾)記事について

4/20発行「中国時報」(台湾)を麗澤大学図書館で読みました。

①WHOの世界衛生大会(WHA)の招待状が台湾に届かないという記事です。5/20蔡英文氏(台湾民進党)の総統就任を前にして、蔡次期総統が92共識(コンセンサス)を認めない限り、列車は衝突し合うだろうと中国が脅してきている記事です。確かに馬英九が08年に総統になった翌年からWHAにオブザーバーとして台湾は招待されています。2010年に尖閣で中国漁船が海保巡視船に体当たりした事件で、拿捕した中国人を釈放しない限り、レアアースは輸出しないと脅したのと同じで、中国はいつでも自分たちの主張を通すためには何でも使うという事です。脅しに屈するのはヤクザに屈するのと同じです。自由主義国で新たな組織を作り、台湾の参加ができるようにすれば良い。中国がガタガタいう国際組織何て意味もない。中国を抜いた組織を作った方が良いのでは。WHOの事務局長もマーガレット・チャン(香港人)で中共の圧力を受けているでしょう。

China Daily20160420-1

②4/18OECD国際鋼鉄会議がベルギーで開催されたときに、中国がベルギー政府に圧力をかけて、台湾のオブザーバー出席を認めないようにしました。ベルギー副首相が退席を要求し、台湾が抗議して翌日出席が認められたとのこと。ベルギー政府は謝罪し、中国政府からかなりの圧力があったと釈明したとありました。中国は鉄鋼だけではありませんが、投資過剰→生産過剰→ダンピング輸出の構図になっています。諸悪の根源は中国なのに、恥知らずにも自分の都合を優先主張します。中国を西側社会に組み入れたのが間違いです。自由・民主・人権・法治いずれもない国に経済的なメリットを与えたのが間違いです。今更言っても詮方ありませんが。封じ込めるしかありません。

China Daily20160420-2

③同じく中国時報には李登輝元総統が新党を作るとの記事。台湾団結連盟の党主とはうまくいってないとのこと。多分蔡英文次期総統の応援団&中共との融和の監視の役目でしょう。

本記事は、外国は悪い連中が多いと言う記事です。「世界は皆腹黒い」です。「隙あらば」と何時も窺っているという事です。ナイーブなだけでは国際社会で生きていけません。日本の偏向メデイアの情報だけで判断すると間違いますし、バランスオブパワーの感覚無しでは戦争に巻き込まれる可能性が高くなります。国民一人ひとりが国際政治・外交・軍事にもっと関心を持つようにしないと。英語を学ぶ以前に。

記事

安倍晋三内閣の危機対処は、立ち上がりが早かった。熊本県を襲った大地震発生から5分後には官邸対策室を設置し、被害状況の把握に努めた。実はこのとき、政府は東シナ海を遊弋(ゆうよく)する中国公船の動向をにらみながら、被災地の熊本に自衛隊員2万人の派遣を決めなければならなかった。  この日午前、沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺の領海を中国海警局の船3隻が侵犯していたからである。海警の3隻は午前中、2時間近く領海内をうろつき、西南西の方向へ出ていった。この間、海上保安庁の巡視船は海警が尖閣に近づかないよう警戒し、海上自衛隊の艦船も距離をおいて警戒していた。その夜の大地震発生であった。  海警の3隻が去った後も、政府・自衛隊は依然として南西方面に気を配らなければならなかった。  2011年3月、未曽有の東日本大震災の際に米軍はいち早く2万人動員の「トモダチ作戦」を展開してくれた。まもなく、中国からも15人の救援隊が送られてきたが、1週間して帰国した。入れ替わりに、軍艦を尖閣諸島に送りつけてきたのである。  当時、菅直人内閣の動きに「日本は御しやすい」と判断したのだろうか。ロシアの空軍機は、「放射能測定」を理由に日本の領空ぎりぎりを飛び、中国の艦載ヘリも尖閣沖の海自艦に異常接近して、結果的に復旧の邪魔をした。  香港の「東方日報」は地震発生から約1週間後、尖閣を奪取すべきだと指摘して、「日本が大災害で混乱しているこの機会が絶好のチャンスである」とホンネを吐いていた。

 内紛や天災で国が乱れると、そのスキを突いて敵対勢力がなだれ込むのは国際政治の過酷な現実である。腹に一物ある周辺国は、危機に陥ったときの日本のクライシス・マネジメント能力をじっと見ている。それが有事にも直結するからだろう。  過去にも大正12年9月の関東大震災の際、救援の外国勢と裏では虚々実々の駆け引きをしていた。  日本海軍は地震発生とともに、国内3つの鎮守府から艦艇が急行したほか、連合艦隊が東京湾に向かった。このとき、黄海にあった米国の太平洋艦隊も震災4日後に8隻が東京湾入りして、その早さに海軍当局者は度肝を抜かれた。  米軍の救援部隊の中には情報要員が紛れ込んでいた。驚いたことに、この時の震災と火災の関連調査が、後の日本本土空襲作戦の立案の際、焼夷(しょうい)弾使用の参考にされた(防衛研究所ニュース通算86号)。  東日本大震災から早くも5年が経過した。民主党から自民党政権にかわり、日本の危機対応能力は格段に向上している。制度面では、国家安全保障会議(NSC)を設置して効率的な意思決定システムを整えた。運用面でも、中国による領海侵入が繰り返されても、日本はそのつど押し返している。  安倍首相は集団的自衛権の一部行使が可能な安保法制を整備し、同盟国とは日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を改定し、いざというときの役割分担も整備した。  それでも足りないのは、予想される首都直下型大地震のような「国家存亡にかかわる事態」への対応である。現行憲法にない「緊急事態条項」を早急に補い、万全の態勢を組むのが国民への責務であろう。(東京特派員)

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4/22日経ビジネスオンライン 北村豊『つけ払いを拒否され、店主を殺した公務員4人組 理不尽な犯罪が、なぜか偶発事故扱いになる理不尽』について

本記事を読んで、泉幸男氏のブログにある日本の闇の部分を思い起こしました。日本を貶める謀略(図書館での「アンネの日記破損事件」。ユダヤ人に対して日本人の偏見があるように偽装工作したこと)について、何らかの政治的圧力がかかって、実名報道されませんでした。裏で動いたのは、国連を中心として反日活動している中国と朝鮮半島が考えられます。そこからダーテイマネーを貰っている日本の政治家が実名報道できないようにしたのでは。泉氏ブログで「平成28年4月20日に「国境なき記者団」(本部・パリ)が世界各国の報道自由度ランキングを発表し、日本は180ヶ国・地域のうちの恥ずべき「72位」だった。(アンネの日記破損事件のあった平成26年には、日本は「59位」。)」とありますが、小生も日本のメデイアは重要な事実を日本国民に知らせない、左翼イデオロギーに染まって偏向報道しているのでこんな程度の評価しか受けないと感じています。勿論記者クラブ制度も足を引っ張っていると思いますが。

http://plaza.rakuten.co.jp/yizumi/diary/201604240000/

中国は上から下に至るまで腐敗していますので、本記事のような報道になるのは、国民は理解しているでしょう。この記事にありますように、中国での腐敗撲滅運動は政敵打倒の意味しかありません。このことも国民は理解しているでしょう。習が中国5000年の歴史と言うのであれば、5000年も腐敗の歴史が続いてきたという事でしょう。民族の宿痾です。

役人は自分の天下だと思って傍若無人の振る舞いをすることは、中国駐在時代によく見ました。権銭交易で、自分の権限を裁量と言う形で賄賂を貰い、見逃してやるというパターンです。ただ、自分で独り占めすると危ないので、上司にも渡します。配分や配布先を間違うと収賄罪に問われるようになります。中国で法治の概念は成り立ちません。人治が総てです。台湾が中国の一部ではないことは、このことを考えても明らかです。華人の国シンガポールも独立国です。台湾も独立国で、中国の言っていることは嘘ばかりです。フィリピンの大統領選では華人のドウテルテが有利との報道がありました。「南シナ海について中国と対話の用意とか、レイプ殺人で亡くなった豪修道尼に対して最初にレイプしたかった、犯罪者は法の範囲内で殺害する」とかトランプでも言わないことを平気で言う人間が今の所人気が1位(4/25日経)と言うのも信じられません。まあ、中国人の子孫であれば「むべなるかな」ですが。民主主義がベストの統治形態でなく、ベターな統治形態であって、国民の成熟度によってしか善き政治、精神性も含めた国民の福利向上は期待できません。魯迅は「阿Q正伝」を書いて、当時の中国人の生き方を批判しましたが、今でも無知蒙昧・自己中心なのは変わっていないのでは。中華思想がある限り、世界で尊敬は受けないでしょう。

http://www.recordchina.co.jp/a127429.html

http://www.afpbb.com/articles/-/3084839

4/18日経

フィリピン版「トランプ人気」 革命30年の不信映す

大統領選、5月9日投開票

フィリピン大統領選挙が、5月9日の投開票まで1カ月を切った。ここにきて急速に支持を広げているのが「犯罪バスター」と呼ばれるロドリゴ・ドゥテルテ氏(71)だ。最新の世論調査で、女性上院議員のグレース・ポー氏(47)を抜いてトップに立った。

「犯罪者を殺害する」「汚職は許さない」などの過激で率直な発言が人気だが、それだけではない。根底には30年間にわたって有権者にくすぶる、民衆革命後の政治への不満がある。

■自前の暗殺団使って治安を改善した「実績」

「本当に汚職を撲滅できるのは俺だけだ。他はみんな、言うだけだろ?」。大きな歓声が沸き起こった。4月11日夜、ドゥテルテ氏がマニラで開いた街頭演説は、支持者ら約2万人の熱気が渦巻いていた。

南部ミンダナオ島のダバオ市で検事を務め、1988年に同市長に就いた。市長は3選までという規定のため、娘を市長にした時期もあるが、事実上の長期政権が続く。

自前の暗殺団を使ってダバオ市の治安を改善したとされ、これまでも「犯罪者は法の範囲内で殺害する」「私が大統領になれば、血を見る機会が増える」などの発言がある。

「犯罪バスター」の異名を持つほか、過激な物言いから「フィリピンのドナルド・トランプ」とも評される。

 3月に中部セブの大学で開いた候補者4人の公式討論会では、最も強い存在感を見せた。開始時間がずれ込むなか、壇上に並んだポー候補に「(時間つなぎに)歌でも歌ったらどうだ」と語りかけ、会場が笑いに包まれた。

過激なだけでなく、ユーモアあふれる言葉遣いが、親しみやすさを演出する。民間調査会社ソーシャル・ウエザー・ステーションの4月の支持率調査では、27%で首位に躍り出た。

もし過激な発言だけなら、ここまで支持は広がらなかっただろう。背景にあるのは貧富の格差や汚職、犯罪など、フィリピンが長年抱える根深い問題だ。

■格差、汚職、犯罪…歴代政権が先送りしたツケ

 2010年にアキノ政権が発足して以降、フィリピンは経済成長の軌道に乗り始め、いまや東南アジアでも高い成長率を誇る。だが、その恩恵は地方まで行き渡っているとは言いがたい。

 格差は犯罪の温床となり、汚職を生む。特に深刻なのは薬物問題で、最近はミンダナオ島の貧しい田舎町にまで覚醒剤の使用禁止を呼びかける看板がある。経済成長の「陽」から取り残された「陰」の部分を、これまでの指導者は無視してきた。

 故マルコス大統領の長期独裁にノーを突きつけた86年の「ピープルパワー革命」から30年。独裁政権下にはびこった言論弾圧や汚職は改善されたものの、それ以降の政権が問題すべてを解決したとはいえない。

 今回、副大統領選挙の有力候補としてマルコス氏の長男が挙がる。これも成長に取り残された民衆の不満を吸収している面で「ドゥテルテ人気」と同じ構図だ。革命から30年たっても変わらない現状への不満が、選挙戦で一気に吹き出している。>(以上)

Duterte

ドウテルテ・フィリピン大統領候補

記事

2016年4月16日、河南省“南陽市”で公務員による嘆かわしい殺人事件が発生した。

 南陽市は河南省の西北部に位置し、湖北省と陝西省に隣接する省境の市である。南陽市の面積は河南省最大の2.65万km2を有し、人口も河南省最大の1000万人を擁する<注1>。

<注1>南陽市の面積は、日本の長野県の面積(1.36万km2)と新潟県の面積(1.26万km2)の合計(2.62万km2)に等しい。ちなみに、両県の人口は、2015年10月時点で、長野県(210万人)、新潟県(231万人)の合計441万人。

昼に4時間飲み、店を壊し、店員を殴った挙句に

 事件が発生したのは、南陽市の北部に位置する“南召県”(人口:92万人)の“四果樹郷高峰庵村”である。メディアが報じた事件の概要を取りまとめると以下の通り。

【1】4月16日の土曜日、南召県“四果樹郷国土資源所”所長の“褚某”がその家族と、“農業局”職員の“武某”、南召県“人民検察院”職員の“張某”、南召県“白土崗鎮司法所”職員の“呂某”の3人を引き連れて郊外で遊んだ後、四果樹郷にあるレストラン“九龍湖農家楽飯店”を訪れて昼食を取った。酒を注文した4人は差しつ差されつ酒を酌み交わし、日頃の憂さを忘れて気勢を上げた。恐らく、4時間以上は酒を飲み続けたものと思われる。

【2】午後5時20分頃に酒宴を終えた4人は昼食代金を支払おうと、レストランの店員に「勘定」と言い、勘定書を持って来るよう命じた。店員(女性)が請求書を提示すると、褚某は南召県政府名義の“簽単(つけ払い)”とするように要求した。これに対して店員は、「当店では現金払いだけとさせていただいています」と拒否したが、4人はこれに激高し、両者の間で口論となった。そうこうするうちに、4人は怒りにまかせて店内の食器類を投げつけて破壊する行為に出たので、店員が彼らの破壊行動を制止しようとしたが、逆に彼らに殴られて負傷した。

【3】レストランの店主である“李金明”は、男たちが破壊行為を行うのを黙って見ていたが、店員が殴られるに及んで、4人の前に歩み寄った。李金明はこの店の店主であると名乗ると同時に、自分は南召県の“人民代表(県会議員)”でもあると身分を明かした上で、改めて4人に対し、県政府名義のつけ払いは受けないと述べて、現金払いをしてくれるように要求した。それでも4人が応じようとしなかったので、李金明は彼らが一見の客で馴染みではないので、現金払いしか受けられないのだと説明を加えた。

【4】彼ら4人が李金明に対してどのような感情を抱いたかは定かでないが、「県の人民代表だと思って、俺たちを馬鹿にしやがって」と考えた可能性は高いかもしれない。彼らのうちの数人は、李金明があくまで現金払いを主張するのに業を煮やして李金明に殴りかかった。運悪く拳をまともに受けた李金明は倒されて頭を地面に強打した。当たり所が悪かったのか、地面に倒れた李金明はピクリともせず、その場で絶命したのだった。

【5】記者のインタビューに応じた李金明の長男である“李向陽”は次のように述べた。

(a)事件後、李向陽たちは監視カメラの映像を確認したが、そこには地面に倒される前の李金明が、4人のうちの1人に首を絞められた上に顔を殴られ、別の1人には足で腹部を蹴られた場面が映っていた。このため、老齢の李金明はバランスを崩して踏み止まることができずに転倒し、頭を地面に強打していた。倒れた李金明が身動きしないのを見て、「まずい」と判断した4人は身を翻して逃げようとした。この時、時刻は午後5時26分だった。

(b)現場を逃げ出した4人は騒ぎを聞きつけて駆けつけた地元の村人たちによってレストランの大門内に封じ込められ、20分近く村人たちと対峙していた。村人の誰かが110番に通報したのを知った4人は、1人の村人を殴り倒して包囲を破って逃亡を図ったが、急行した警官隊によって午後5時50分に取り押さえられた。この間にも彼ら4人は警官隊と揉み合いになり、警官の1人が制服を引き千切られた。

(c)李金明は共産党員であり、地元の高峰庵村の党委員会村支部書記を務めると同時に南召県の人民代表でもあった。李金明は曲がったことが大嫌いで、家族連れで飲食した代金を公費のつけ払いにするような連中に反感を抱いていた。人民代表である父親の李金明が「四風」<注2>に反対したことにより、まさかこのような大きな禍を招くとは考えてもみなかった。

<注2>「四風」とは、中国共産党総書記の“習近平”が2013年6月に提起した言葉で、断固反対するものとして「形式主義」、「官僚主義」、「享楽主義」、「“奢靡(贅沢ざんまい)”」の風潮を指す。

徹底調査のはずが、報道と異なる公式文書に

【6】翌17日の午後、事件の現場となった“九龍湖農家楽飯店”を犯人たちが所属する南召県政府関係者が弔問に訪れ、李金明の遺骸に向かって頭(こうべ)を垂れて謝罪の意を示し、その後に李向陽を始めとする遺族に対して遺憾の意を表明した。来訪したのは、南召県国土資源局、地元の郷や鎮の党・政府の指導者であった。これらの人々を引率して来た南召県国土資源局の副局長は、「国土資源局の指導者として、部下がこのような問題を引き起こしたことは苦しみに耐えない。関係部門と協力して本件を徹底的に調査し、決して犯人をかばうようなことはしない」と述べた。

【7】この事件はメディアによって「公務員がレストランの店主を殴り殺す、公費のつけ払いを拒否されて」と題して大々的に報じられた。しかし、4月18日、“南召県党委員会宣伝部”が発表した事件に関する公式文書には以下の内容が記載されていた。

 4月16日、南召県農業局職員の武某、南召県四果樹郷国土資源所職員の褚某、南召県人民検察院職員の張某、南召県白土崗鎮司法所職員の呂某の4人が家族を引き連れて郊外に遊び、昼に四果樹郷にある“九龍湖農家楽飯店”で会食した。酒を飲んだ後に食器を壊したことで、店員との間で口論からつかみ合いのけんかに発展した。これを見て、レストラン店主の李某(=李金明)が制止に入ったところ、身体の衝突が発生し、李某は地面に倒れて死亡した。

【8】上記の公式文書にはメディアの報道と大きく異なるところが2つある。

(1)公式文書には4人がそれぞれ家族を連れていたとあるが、事件を詳細に報じた香港紙「文匯報」は家族連れであったのは四果樹郷国土資源所長の褚某だけであったとしている。また、褚某の役職が公式文書では単なる職員とあり、文匯報は所長となっている。役職が何だったのかはともかくとして、4人全員が家族連れであったとする必然性は何なのか。家族連れだと本人の罪が軽くなるとは思えない。一方、文匯報が間違っている可能性もある。

(2)公式文書は、4人が食器を壊したことが原因で、口論からつかみ合いのけんかに発展して、李金明の死亡につながったと述べているだけで、事件の起因となった公費のつけ払い拒否には一切触れていない。田舎のレストランで使用する食器が高価な品物であるはずがなく、食器が多少壊されたとしても、店主が文句を言うはずがない。南召県国土資源局の副局長は「決して犯人をかばうことはしない」と述べたはずだが、南召県党委員会宣伝部は犯人の4人が公費のつけ払いを要求した事実、その相手が四風に反対する南召県人民代表であったことで、告発されては困るから痛めつけようという魂胆があった事実を隠蔽した可能性が高い。

習近平の禁令に抵触、銀バエとして駆除?

【9】この事件が今後どのように進展し、裁判でいかなる判決が下るか見てみたいが、この種の公務員犯罪、しかも嘆かわしい犯罪はその報道が規制されるのが常である。南召県党委員会宣伝部は、本件が刑事事件である以上、事件の進展と調査結果を必ずメディアならびにネットの公式マイクロブログを通じて対外的に発表すると約束したが、果たしてどうなるか。但し、公務員が私的に消費した代金を公費のつけ払いとすることは、習近平が提起した“八項規定”、“六項禁令”<注3>および“反四風(四風反対)”に抵触する重大犯罪であり、対外的に隠蔽したとしても、犯人たちに対して厳罰が下ることは間違いないものと思われる。

<注3>“八項規定”と“六項禁令”は2013年1月に習近平によって提起されたもので、指導者ならびに党員および幹部の行動を厳しく規制したもの。本件の私的消費に対する公費の流用は、六項禁令の第5項に明記されている。

 2012年11月に中国共産党総書記に就任した習近平は、2013年1月に“反腐敗(腐敗撲滅)”を宣言し、「“老虎(トラ=高官)”も“蒼蠅(ハエ=中下級の役人)”も同時に叩く」というスローガンの下、現在に至るまで間断なく腐敗撲滅運動を精力的に展開している。上述した南召県で殺人を犯した4人はハエであり、ハエの中でも嫌われる銀バエとして駆除されることになるだろう。

ところで、米国のニューヨークに本部を置くアジアソサエティ(Asia society)内の米中関係センター(the Center on U.S.-China Relations)が発行するオンラインマガジン「中参館(ChinaFile)」は、2016年1月に中国の“反腐敗運動(腐敗撲滅運動)”に関する研究報告を発表した。1月22日付で「“徳国之声(ドイツの声)”」中国語ネットが報じた当該研究報告に関する記事の概要は以下の通り。

ハエ退治が9割、腐敗撲滅は透明度が不足

【A】米中センターのオンラインマガジン「ChinaFile」は腐敗撲滅運動が始まって以来明るみに出た腐敗案件1462件を整理して発表した。1462件の内訳は、トラ(=高官)が146件に対してハエ(中下級の役人)は1316件で、ハエが全体の90%を占めていた。

【B】習近平が政権を握ってから現在までに、合計で231人の官僚が裁判所で腐敗の罪を確定されて刑罰の判決を下された。これら腐敗官僚に対する裁判所の判決統計によれば、彼ら(231人)が流用・濫用した公金の総額は63億元(約1070億円)以上に達した。

【C】2016年1月初旬に“中央規律検査委員会”副書記の“呉玉良”は、2015年の「腐敗撲滅成績表」を公表した。2015年は中国の改革開放(1979年)以来、党・政府の規律に違反して処分を受けた人数および取調べ中の中堅幹部の人数が最も多い1年だった。その内訳は、合計の立件数が33万件で、処分された者が33.6万人、犯罪容疑で送致され司法機関の処理に委ねられた者が1.4万人であった。

【D】不思議なことに、福建省と浙江省では失脚した官僚が比較的少ないことが判明した。この両省は習近平がかつて統治した、彼にとっての権力の拠点である。この事実から、両省の官僚は比較的寛容に取り扱ってもらえる特権に恵まれていると考えられる。

 なお、上記の記事は文頭で、習近平が推進する腐敗撲滅運動は、透明度が不足しており、政敵を打倒して積年の恨みを晴らすための名目であるとの批評家の声を紹介している。

 これは今までに腐敗撲滅運動により失脚させられた“周永康”、“徐才厚”、“郭伯雄”といった政治家や軍人の構成を見れば明らかで、その大部分が習近平の政敵である“江沢民”のグループに属している。

 こうしたトラたちとは一線を画すハエたちは、基本的に政治の党派とは関係なく、公金の横領や流用、濫用といった私腹を肥やすことで、“八項規定”、“六項禁令”、“反四風”に違反して処罰を受けることになる。しかし、ハエたちは常に周囲の状況を見渡し、危険が迫れば頭を隠して危険が去るのを待ち、危険が去ればまたしても私腹を肥やすための活動を開始する。これは「モグラ叩きゲーム」ならぬ、「ハエ叩きゲーム」であり、たとえどんなに腐敗撲滅運動を徹底したとしても、ハエの習性を変えることはできないだろう。

 中国の歴史書「史記」の滑稽伝には、「“酒極則乱(酒極まって乱となる)”」とある。酒の量をほどほどに抑えてさえいれば、南召県の公務員4人はよもや殺人を起こすことはなかったはずである。「酒は飲むとも飲まるるな」、このことわざはまさに至言である。

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4/22日経ビジネスオンライン 池田元博『やはり2島が限界?北方領土交渉の落としどころ 領土交渉のハードル、さらに上がる可能性』、4/22日経 The Economist『プーチンの右腕、ロシア中銀総裁の実力を査定 辛うじて踏みとどまるロシア経済』について

4/24日経に「伊奈久喜日経特別編集委員」の死亡記事が載っていました。日経の政治担当の中では田勢康弘などと違い、マトモと感じていました。残念です。

ロシアとの北方領土交渉はハードなものになるでしょう。交渉のやり方として先方はゼロから、当方は100から始まるのが普通でしょう。中国人と交渉するときも、日本人と分かると大体10倍くらいの値段を吹っかけてきますから。騙される方が悪いと言えます。「2島(色丹、歯舞)返還、国後・択捉は話し合い継続」が現時点で望める最大限ではないか。領土問題は戦争か金でしか解決は出来ません。今の日本人で戦争してまで領土の失地回復することは考えにくいです。後は金で解決するかです。沖縄だって事実上そうでした。

ルトワックが言うように、日本がロシアを味方に付けられるか、せめて中立の立場を取るかが対中国にとって死活的な問題になります。火事場泥棒で領土を奪われた事実は事実として、世界は正義だけで動いている訳ではないという事を銘記しなければ。中国包囲網にロシア+中央アジアの国々にも参加して貰えれば、中国の軍事暴発の可能性は低くなります。現下の最大の敵国はロシアでなく、中国です。これに朝鮮半島が加わるでしょうが。

ロシアの経済運営は外貨準備を減らさないこととありました。外交面でのフリーハンドを握っておきたいとの思いでしょう。確かにルーブル安は資源輸出国のロシアには有利になります。でもインフレが進行していくときに、銀行救済だけでうまく行くかどうかです。中国と違い、データの改竄はないと思われますので、それが救いです。中国はデット・エクイテイ・スワップで債務危機を乗り越えようとしていますが、根本的解決にはならないでしょう。バブル崩壊の先送りだけ、もっと悪い結末が予想されます。

池田記事

安倍晋三首相が5月初めにロシアを訪問する。プーチン大統領との首脳会談を通じて北方領土問題解決の糸口を見いだそうとしているが、受けて立つロシア側の姿勢は想像以上に厳しい。最大限の譲歩でも2島が限界ではないか。

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プーチン大統領が生出演し、3~4時間にわたって国民の様々な質問に答えていく特別番組。年1回の恒例となっている。(Kremlin/Sputnik/ロイター/アフロ)

 「プーチンとのホットライン」――。プーチン大統領がテレビに生出演し、3~4時間にわたって国民の様々な質問に答えていく。ロシアで年1回の恒例となっている特別番組だ。今年は4月14日に実施され、全土で生中継された。

 大統領はスタジオに集まった聴衆や、テレビ中継で結んだ地方の人々と直接、対話しながら質問に答える。また、電話やメール、ツイッターなどを通じて寄せられた膨大な質問は原則、司会者がその一部を紹介し、大統領が返答する形式をとっている。市民たちが身近に抱える問題を訴えると、大統領がその場で解決策を指示することが多く、国民には人気の番組だ。

 もちろん政権にとっては、プーチン大統領への国民の支持をつなぎとめるための重要なメディア戦術となっている。今年はとくに、子どもたちからの質問を多く取り上げ、親しみやすさを訴えながら、頼れる指導者のイメージを植え付けようとしていた。例えばこんな具合だ。

アンジェラ:「もし金の魚を捕まえたら、3つのどんな願いをしますか」

大統領:「奇跡に期待せず、何事も自分の力でなし遂げるべきだよ」

アリーナ:「ロシアに女性の大統領は生まれますか。パパは米国に対抗できるのはプーチンさんしかいないといっています」

大統領:「我々が考えなければならないのは米国とどうするかではなく、国内の問題だよ。道路の整備や健康、教育をどうするか。経済をどう発展させ、成長させていくかなんだ」

なぜ今回、色丹島の現状をとりあげたのか

 今年は全国から300万を超える質問が集まったという。番組で紹介されるのはごく一部だけだ。毎回、大統領の当意即妙の受け答えが売り物となっているが、実際は大統領府が中心となって番組の構成から取り上げる質問、回答内容を含めてかなり入念に事前準備しているといわれる。

 ロシア経済紙RBKは、スタジオ参加者の多くが2日前にモスクワ郊外の宿舎に集められ、リハーサルを実施したと報じた。参加者は事前準備のことを親族などにも話さないよう口止めされ、番組当日まで宿舎を出ないよう要請されたという。

政権の監修が色濃い番組とされているだけに、今回、日ロ関係者の間で様々な臆測を呼んだ場面がある。モスクワのスタジオと極東のサハリン州を中継で結び、大統領と地元の市民が直接やりとりした次の部分である。

タチヤーナ:「私たちは昨秋、色丹島の魚加工工場で働きましたが、給料を支払ってくれません。人材派遣業者がだましてあの島に連れて行っています。労働条件も生活も悲惨です。人々はホームレス状態です。助けてください」

エレーナ:「あそこは島で周りは海ばかりです。逃げ出せないし、お金もない」

大統領:「何ということだ。言葉もみつからない。それ(賃金の不払い)は昨年の話ですか。あるいはもっと長期間にわたってですか?」……。

 大統領は謝罪し、番組の中で連邦検事局などに迅速な対応を指示した。さらに、これは後日談だが、さっそく連邦検事局の副検事総長、サハリン州知事、サハリン州検事、連邦労働雇用庁幹部らがこぞって色丹島入りして調査に乗り出し、工場側も未払い賃金の全額支払いを約束したという。

 給料の遅配、不払い問題は例年、市民が寄せる質問の“定番”のひとつだ。臆測を呼んでいるのはなぜ今回、北方四島の色丹島の現状をとりあげたのかだ。

 「色丹島もロシア領と日本に認識させるのが狙いだ」「いやいや、厳しい現状を国民に知らしめ、日本への将来の引き渡しの布石とした」……。いろいろな解釈が可能だが、大統領は番組では、日本との関係について一切触れていない。

 折から5月初めには、安倍晋三首相の訪ロが予定される。プーチン大統領もこの番組終了後に記者団の質問に答え、米国の圧力にもかかわらず訪ロする首相を「歓迎する」とした。北方領土交渉の行方にも触れ、「妥協はいつか見いだせるのではないか」と述べた。それだけになおさら、番組で色丹島を取り上げたのは、日本を意識したのではないかという疑心を生んでいるわけだ。

1956年日ソ共同宣言の重視を改めて主張

 意図的か偶然か、日本を意識したかしないかは別にして、客観的に言えることは、ロシアの隅々にまで気を配るプーチン大統領の姿を国民に誇示するため、色丹島の未払い問題が取り上げられたということだ。

 もちろん、大統領は日本が帰属問題の解決を求めている北方四島の一つと認識しているはずだ。一方で、番組をみた国民の多くは、日本と係争中の島という認識は全くないまま、すぐに忘れてしまうかどうかは別にして、「色丹」という島が極東の最果てにあることをなんとなく知ったということなのだろう。

 プーチン大統領はちょうど3年前、モスクワで開いた安倍首相との日ロ首脳会談後の記者会見でこんな発言をしている。北方領土で外国企業も参加してインフラ開発が進む現状に苦言を呈した日本側記者の質問に対し、怒りをこらえながら「これらの領土には他と同様にロシアの人々が住んでいる。我々が彼らのことを思い、彼らの生活を考えるのは当然だ」と答えたのだ。今回の番組で色丹島が取り上げられたのも、こんな文脈の延長なのだろう。

 では、肝心の北方領土交渉の行方はどうなるのか。

安倍首相の訪ロ準備を目的にラブロフ外相が来日し、岸田文雄外相との間で4月15日に外相会談を開いた。ラブロフ氏は「交渉を継続する用意はある」と前向きの姿勢を示す一方で、「第2次世界大戦の結果」を日本が認めるべきだという主張を繰り返した。

 つまり、第2次大戦の結果、北方四島がロシア領になったことを日本側が確認しなければ、交渉は前に進まないというのだ。ラブロフ氏は同時に、「両国(議会)が批准した唯一の文書」として、平和条約締結後に歯舞、色丹の2島を日本に引き渡すことに同意した1956年の日ソ共同宣言をロシア側が重視する姿勢も明示した。

4 nothern islands of Japan

出所・外務省

「歴代のロシア首脳として初の困難な言及」

 政権に忠実な職業外交官として知られるラブロフ氏の発言は、プーチン大統領の考えを忠実に反映しているとみるべきだ。とくに、日ソ共同宣言を日ロ交渉の基軸に据える路線は、プーチン氏が2000年に大統領に就任して以来、一貫してとってきた立場でもある。

 その意向が如実に反映されたのが2001年3月、森喜朗首相(当時)との間で合意した「イルクーツク声明」だ。同声明は択捉、国後、色丹、歯舞の4島の帰属問題の解決を明記するとともに、日ソ共同宣言を「交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書」だと確認した。

 プーチン大統領は当時、イルクーツク会談の直前にNHKとのインタビューで「この宣言(日ソ共同宣言)はソ連最高会議によって批准された。すなわち、我々にとって、これ(宣言の履行)は義務である」と表明した。

 当時の首脳会談でも大統領はこのインタビューに言及し、「歴代のロシアの首脳として初めての困難な言及であったと述べた」と日本側の公式記録に残っている。大統領が当時、この「困難な」決断によって日本との北方領土問題を決着できると期待していたのは確かだろう。

出発点が「ゼロ回答」?

 ところが日本側はこの決断にさほど注目せず、領土交渉は停滞した。日本の対応には落胆しただろうし、当時と比べて今は、交渉を進める意欲が衰えているのではないかと想像される。

 もちろん、日本で安倍政権が安定政権として誕生し、ウクライナ危機をめぐる空白はあったものの、日ロの関係改善を志向しているのはまんざらではないはずだ。それでも領土交渉で、かつて自らが表明した日ソ共同宣言の「履行義務」を超える譲歩をするとは考えにくい。

実はプーチン大統領はくだんのイルクーツク会談直前のインタビューで、「そこ(日ソ共同宣言)には、いかなる条件でそれらの島々(色丹、歯舞)を引き渡すか明記されていない」とも述べていた。イルクーツク声明は同宣言を「交渉プロセスの出発点」と規定したものの、大統領の思惑は当時から出発点がゼロ回答で、「最大限譲歩しても2島」だったのかもしれない。

 その当時と比べて、ロシアによる北方領土のインフラ整備は着実に進んでいる。約3000人のロシア人が暮らす色丹島でも病院などが新設され、昨年7月にはスクボルツォワ保健相が現地を視察した。

 加えて、ロシア社会でウクライナ領クリミア半島の併合以降、ナショナリズムが台頭する現状も踏まえれば、プーチン政権が領土交渉のハードルをさらに上げてくる可能性が大きい。ハードルをクリアするような”果実”を日本側から得られない限り、2島ですら手放すつもりはないとみるべきだろう。

 安倍政権はこうした厳しい現実を前提に、ロシアとの粘り強い交渉に臨む必要がありそうだ。

The Economist記事

ロシア中央銀行(CBR)総裁のエルビラ・ナビウリナは、大学時代に初めて資本主義を知った。「西欧経済理論についての批判」という授業を履修したのだ。近代の中央銀行総裁としては、いささか特異なスタートを切ったと言える。

the president of Russian central bank

ロシア中央銀行のエルビラ・ナビウリナ総裁(写真:ロイター/アフロ)

 ここにきてナビウリナ総裁は新たな矛盾を突きつけられている。ロシア経済は腐敗とレントシーキング*に足を取られ、何年にもわたって停滞を続けてきた。さらに最近は、西側諸国による経済制裁と、原油・天然ガス価格の下落が経済の一層の足枷となっている。原油・天然ガスはロシアにとって最大の輸出品目の一角をなす。

*企業が政府や官庁に働きかけて自分たちに都合のよいように法制度や政策を変更させ、その恩恵に与ろうとする行動。

 だがロシア中銀は有能な官僚が政策を運営しているモデルケースの1つだ。2013年にナビウリナ氏がロシア中銀総裁に就任して以来ずっと、同国経済は厳しい試練にさらされてきた。もし陣頭指揮を取るのがナビウリナ氏でなければ、ロシア経済はなお悲惨な状態に陥っていたことだろう。

2000年から経済政策の中心に

 穏やかな語り口が印象的なナビウリナ氏は、労働階級の出身だ。母親は工員で、父親は運転手だった。

 ロシアが市場経済への困難な移行を進めるなか、同氏は長きにわたり中核的な役割を担い続けてきた。ウラジーミル・プーチン氏は2000年に大統領に就任した際、「1990年代の混乱は一段落した」と宣言した。だが元経済相のエフゲニー・ヤシン氏によれば、経済に関する限り「プーチン大統領は確たる考えを持っていなかった」。

 このため、プーチン氏はオーソドックスな見方をする専門家集団に経済政策を委ねた。その1人がナビウリナ氏だった。ナビウリナ氏は2000年に経済発展副大臣に、2007年に同大臣に就任した。彼女は、この時の経験が、経済に対する自身の取り組みに「最も重要な」影響を及ぼしたと語る。

ロシア経済を襲う2つの危機 外貨準備高とルーブルの為替水準

foreign currency reserves in Russia

出所:The Economist/Bloomberg

 2008~09年に原油価格は下落し、世界経済は停滞した。この危機に臨んでロシア経済は、逃げ足の速い海外のヘッジファンドと個人投資家に依存していることを露呈した。これらの投資家が資金の引き揚げに走る間、ロシア中銀はルーブルの買い支えに動いた。この結果、たった数カ月間で2000億ドル超(約21兆7700億円)の外貨準備を流出させた(図表を参照)。経済全般を通じて貸し出しが減少し、2009年にはGDPが8%縮小した。

ロシア国債への投資拡大を目指す

 こうした状況を踏まえてロシアは、次に訪れる原油価格の下落に備えるべく、2つの改革に踏み切った。第1に、資金の調達先を分散化した。例えばロシア当局は2013年、世界の2大証券決済機関であるユーロクリアおよびクリアストリームにロシア国債の取り扱いを許した。これに伴い、ロシア国債市場に参加する機関投資家が拡大した。英ファンド運用会社アシュモアでファンドマネジャーを務めるジャン・デーン氏によれば、機関投資家は市場の乱高下に左右されることなく、割安感が高まった時に買いを入れる傾向がある。

 ナビウリナ氏に言わせれば、もう1つの安定した資金調達先であるロシアの国内投資市場も厚みを増した。国内投資家が保有するロシアの公的債務の比率は、2013年の1年間だけで66%から70%に上昇した。大手投資銀行の米ゴールドマン・サックスは、ロシア年金基金――ロシア中銀が監督している――が保有する資産は、現在の約600億ドル(約6兆5200億円)から2020年には約2000億ドル(約21兆7700億円)に拡大すると見込んでいる。

 前出のデーン氏によれば、調達先を分散することでロシア経済は、そうしなかった場合に比べて資金不足に悩まされことがなくなった。経済規模を考慮すると、2014~15年に生じた民間部門における資本逃避は、2008~09年と比べて軽微なものにとどまった。2015年にGDPは4%縮小したが、2008~09年と比較すれば健闘した。2015年の原油価格の下落幅は2008~09年より大きかったにもかかわらずだ。

外貨準備の残高維持を優先

 2008~09年以降に起きたもう1つの抜本的な変化は、ロシアの外貨準備高に関わるものだ。原油価格の値上がりを追い風に、同国の外貨準備高は2009~13年に1400億ドル(15兆2200億円)拡大した。現在の残高は5000億ドル(54兆3600億円、GDPのおよそ5分の1)を突破している。ロシアは、この分厚いクッションを支えの一つに、欧米に対抗する外交政策を打ち出した。1998年の時と異なり、IMFに救済資金を頼る必要がなくなったのだ。このような政策は最終的にはロシアのためにならないだろうが、ナビウリナ氏に政策運営の余地を与えた。

 原油価格が下落に転じた時、同氏は外貨準備高を維持すべく、ルーブルの変動相場制への移行を加速した。対ドルのルーブル相場は2015年1年間だけで40%も下落した。このような場合、一般的な対処法はルーブルを買い下支えることだろう。そうすれば一般のロシア国民の購買力を保つことができる。だが、そのような対策を講じれば、ロシアの外貨準備高は再び急減していたことだろう。

 ロシア中銀はルーブルを買い支える代わりに、経済制裁によって打撃を受けていた銀行やエネルギー企業に直接ドルを注入し、対外債務の返済を支援した。

 外貨準備高は財政赤字の穴埋めにも使われた。原油価格が回復するにつれ、ロシア中銀は外貨準備高を改めて積み上げている。5000億ドルの水準にまで回復させるもくろみだ。

銀行支援を柱にビジネスを支える

 ルーブル安に伴って輸入品価格が高騰、インフレが再燃した。その結果、実質賃金は2014年以降10%以上減少した(それでも、プーチン氏が大統領に就任した2000年以降、賃金は3倍に増加している)。

 ロシア中銀はルーブル下落を食い止める唯一の手段として利上げを実施。金利は2014年、17%に達した。これが奏功して、インフレ率は現在7%に低下。ロシア中銀が目標とする4%に向けて改善基調にある。このような(タフな)決定を下すことができたのは「政治状況にかかわらず、ロシアにとって正しいことをする能力がロシア中銀にあることを反映している」と、世界銀行のバージット・ハンスル氏は述べる。

 こうした措置は「痛みを伴うが必要だ」というのがナビウリナ氏の弁だ。痛みを和らげるため政府は、GDPの3%に上る資金を経営状態の良好な銀行の資本増強に振り向けた。経営状態が悪化した銀行の預金者に対する補償も実施した。加えて、銀行に対して、外貨建て債務を危機前の為替レートで再評価することを一時的に許した。ロシアの銀行のバランスシートを実態よりも健全にみせることができる。これが、貸し出しを一層拡大させた。

 さらにロシア中銀は、問題となっている債権について返済猶予や条件変更に応じることを銀行に認めた。IMFはこの動きに対して、慎重ながら歓迎する意向を示した。

 これらの措置はすべて成果を挙げつつあるようにみえる。不良債権は2008~09年の水準を依然下回っているし、与信は徐々に上向きつつある。

 これらの措置を講じるのと同時に、ナビウリナ氏は監視を強化した。「彼女は、以前なら手出しできなかった銀行を追及するための全権を大統領から委ねられた」。MDM銀行会長を務めるオレグ・ビューギン氏はこう述懐する。同氏はロシア中銀で副総裁を務めた経験を持つ。2014年以降、200近い銀行の免許が取り消された。これは全体のほぼ5分の1にあたる。

引き続き多難なロシア中銀

 ナビウリナ氏が様々な施策を取ってきたにもかかわらず、ロシア経済の長期的な見通しは厳しい。同氏に批判的な向きは、ロシア中銀が金融引き締め策を取っていることが、そもそもの原因だと非難する。金融引き締めが投資を抑制しているというのだ。

 だが昨年、ロシア企業は昨年50%の増益を達成した。ルーブル安のため海外収益が急増したのだ。企業は膨大な投資資金を抱えている。定期調査の結果を見ると、メーカーは投資の重大な制約要因として、高金利ではなく政策の不透明性を挙げた。

 ナビウリナ氏もこの見方に同意し、「ロシア経済が落ち込んでいるのは、構造的な要因が主に原因だ」と述べる。同氏が最も懸念しているのは長引く原油価格の下落ではなく、ロシアの事業環境を「いかに迅速かつ劇的に改善させることができるか」だ。この状況が整うまでロシア中銀は、ロシア経済の行方に対して極めて重要な役割を担い続けることになる。

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4/21ZAKZAK 『日本の弱点は英語力の低さという米識者「中韓よりも低い」』について

プレストウィッツは2050年に日本の英語力が飛躍的に高まると考えているようですが、“wishful thinking”でしょう。理由として

①英語が国際言語の地位を保持できるか?米国の覇権(基軸通貨と世界に展開する軍事力)が前提、トランプのように、世界から米軍を撤退させれば、英語が国際言語として使用されるかどうか。

②日本は日本語で世界の書物が読める数少ない国。植民地統治を受けないで来たからでもあります。SNS等で世界との繋がりが、低コストで容易にできる時代。言葉より映像の方が、インパクトがあります。日本から海外留学が減ってきているのも、海外へ出なくとも、日本で研究ができる環境にあるという事でしょう。また、海外へ出れば、治安や医療・子供の教育の問題も出てきます。日本人の得意とするところはチームワークで仕事をするところ。厳しい競争に晒されるのは好まないという部分もあるでしょう。

https://gakumado.mynavi.jp/gmd/articles/17319

軍事力で日本の核保有を認める発言はバック・パッシング(責任転嫁)の意味があるような気がします。「アジアのことはアジアで解決しろ」と言って、中国との戦争を日本だけに押し付けようと言うのでは。何時も言いますように中国と言うモンスターを作ってしまったのは日米です。製造物責任が日米ともにありますので、怪物退治は日米の責任です。ケナンのソ連封じ込めを中国に対してもすれば良かったものを、キッシンジャーのように金に転んだ戦略家が米国を誤らせて来ました。日米主導で中国封じ込めと「戦争になれば日米で対処」と公言することで抑止力を強化する方向にしないと。

記事

 「2050年の日本」は活力と魅力ある新型超大国として栄えるという大胆な予測の書『JAPAN RESTORED(日本復興)』がアメリカで出版され、話題となっている。著者のクライド・プレストウィッツ氏は、レーガン政権時に商務長官顧問を務め、自動車や半導体貿易交渉の前面に立ち、ジャパン・バッシャー(日本を叩く者)として知られた人物だ。  同氏は、日本は「2050年には英語力が飛躍的に高まり、日本の国力を高める」と予測する。その真意はどこにあるのか。産経新聞ワシントン駐在客員特派員の古森義久氏が、プレストウィッツ氏に問いただした。  --『日本復興』では、日本でも公用語に英語が加わり、英語力が飛躍的に高まるというシナリオが描かれている。だが、いまの日本を見ていると英語力向上は難しいのではないか。  「国際的にみた日本の弱点は英語能力が他の国々より低いことだ。スカンジナビア諸国やドイツだけでなく韓国や中国にくらべても低いと言える。  原因は英語の教え方だと思う。日本の英語の先生は読むことはできても話せない人が多い。それを変えるために英語教員に定期的にテストをする。落ちた人に2年間の再勉強を義務づける。それでもテストに受からない人は引退してもらう。  日本の公用語が日本語と英語になれば、日本の長所が諸外国に従来よりもずっと多く理解され、日本の地位も国力も飛躍的に高まる」  --英語力向上よりもさらにハードルが高いと思われるのが、日本の軍事力強化だ。本書では最終的に日本が核兵器を保有するとしているが、それにはさすがに内外で抵抗が大きいと考えられる。  「日本の安全保障環境が激変していくのだ。北朝鮮が核兵器の開発を断固として続け、アメリカや日本に核ミサイルを正確に撃ちこむ能力を確保する。中国も核武装を強化するだけでなく北朝鮮の冒険主義を許容する。  中国も北朝鮮も日本敵視だ。アメリカは北朝鮮に武力攻撃を仕掛けることはまず絶対にしない。こんな環境では東京にいる人間は切迫した不安を感じるだろう。核の脅威を封じるには日本も核を持つのが最適の措置だと考えられる。  日本はいざとなれば核武装を敏速に達成する能力を有する。ただしインドのように公然とそうするか、イスラエルのように秘密裡に動くか。私は公然たる方法がよいと思う。抑止効果が強くなるからだ」

--その際、アメリカはどう対応するのか。  「アメリカがこれから最も頼りにする同盟相手は日本だろう。その日本がこれまでより強く大きな役割を果たすことはアメリカの期待でもある。米英関係はよく『特別な関係』とされ、イギリスへの期待は大きかった。だがイギリスはもう国力が衰え、中国に接近している。日本がアメリカの最重要な同盟相手なのだ。  アジア情勢では中国の膨張がやはり最大の不安定要因だ。米側では中国をWTO(世界貿易機関)など既成の国際秩序に招き入れれば、穏和な行動をとると期待した。  だがその期待は完全に外れた。中国は対決姿勢を強めてきた。貿易の拡大で中国共産党の独裁的パワーが強くなった。だがその中国の膨張はアメリカにとっては当面は直接の脅威ではない。しかし抑えねばならない。一方で、中国は日本にとって直接の脅威である。そうなると日本がまず中国との対峙の先頭に立つことになる」  ※SAPIO2016年5月号

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4/20日経ビジネスオンライン 福島香織『熊本地震で中国人が「くまモン応援」の真意 政争を越える民間の交流、今こそ育むべき時』について

4/20レコードチャイナの記事には

<「日本の大地震を心からお祝いします」、西安市のレストランが横断幕=中国ネットユーザーの反応は?

celebrate Kumamoto earthquake in Xian

18日、中国陝西省西安市のレストランが、「日本の大地震を心からお祝いします」という横断幕を掲げて物議を醸している。 2016年4月18日、中国陝西省西安市のレストランが、「日本の大地震を心からお祝いします」という横断幕を掲げて物議を醸している。 西安の地元メディアの中国版ツイッター・微博(ウェイボー)アカウントによると、熊本県で大きな地震が相次いで起きたことを受け、西安市の某レストランの2階に「熱烈祝賀日本大地震(日本の大地震を心からお祝いします)」と書かれた横断幕が掲げられた。メディアは「あなたはこれをどう思いますか?」とネットユーザーに問い掛けている。 この投稿に、中国のネットユーザーから最も“いいね”を多く集めたのは、「実は店主は狭量な民族主義者。客観的に見て店主の行為は反人道的。決して褒められたものじゃない」というコメント。以下、評価が高い順に「西安人の顔を汚さないでくれよ。どんな無恥なやつが地震をお祝いなんてできるんだ?この店をボイコットしよう!」「この店の主は頭がおかしいだろ。まじで」「狭く偏った愛国主義思想の源は店主の教養。愚かで無知なパフォーマンスは批判と非難を浴びるだけ」「日本が嫌いでも構わないが、こういう行為は中国人からも嫌われる」といったコメントが並ぶ。 このほか、「この店には絶対行かない」「災害を喜ぶのは弱虫だけ」「文明からは程遠いな」「恥知らず。しかも幼稚」「西安人として顔から火が出そう」「同じ人類としてどうなんだ」など、ほとんどが同店を批判するものだ。(翻訳・編集/北田)>(以上)

「夕方以降入った客にはビール1箱(多分12本入りカートン)プレゼント」という商売のやり方です。この店の店主は愛国主義者ではなく、便乗商法をしているだけでしょう。散沙の民と言われる中国人に真の愛国主義者が多くいるとは思えません。

こちらは小中華の韓国の4/20  insight (韓国語)の記事。

<「地震で日本助けるよりは慰安婦ハルモニ助けよう」の戦いSNS状況

Asiana Airlines

写真提供=アシアナ航空 日本熊本地震の余波で数多くの死傷者が出る中、「日本災難現場に救援物資を送るべきか否か」をめぐりオンラインで議論が熱い。 最近、アシアナ航空、大韓航空など航空会社と忠南道(チュンナムド)、済州道(チェジュド)など地方自治体は日本災難現場に救援物資と寄付を送り、地震被害の苦痛に参加することにしたと明らかにした。 隣国で自然災害が発生した場合、企業や政府だけでなく民間次元でも救助の手を差し出すのは普通のことだ。しかし、今回の日本地震救護活動に対しオンラインの反応がとりわけ冷たい。 最近、あるオンライン・コミュニティでは「日本地震に寄付とは…慰安婦ハルモニや独立有功者、親日派清算募金運動をする方が意味がある。地震募金という言葉にカッとなる」というあるネチズンの文が爆発的な反応を得た。これを見たネチズンらは「救助隊も派遣してはならない」「前の大地震の時も寄付送ったら、独島(ドクト、日本名:竹島)は自分たちの土地だと主張したよ」と該当掲示文に共感するコメント100余りを付けた。 実際に韓国はこれまで日本に大きな自然災害が発生するたびに、企業、政府だけでなく民間次元でも救助の手を差し伸べてきた。しかし、時間が過ぎても慰安婦問題など歴史問題が解決される兆しが見られず、このような問題が持続的な問題に浮上しながら反日感情がより一層悪化し、これで救助の手を差し伸べる必要がないという感情が強化された。 コメントで意見を強力に表明するネチズンのうち約90%以上はこのような否定的な反応を見せている。しかし、一部では災難現場を助ける問題を歴史的背景から接近するのは正しくないという意見も存在する。自然災害は人類共同で対処しなければならない問題で、歴史的背景ではなく人類愛的次元から対処すべき問題ということだ。 少数意見ではあるが、実際に大地震など大きな自然災害が発生すれば国際社会で救助隊を急派し支援に参加することで国家を越える人類愛を確認できる場になった。実際、アシアナ航空関係者は「アシアナはいつも社会貢献をしてきたし、今回もそのような次元で臨んだ」とし、「日本だから援助レベルを下げたり援助をしないという案を検討したことはない」と話した。 隣国日本に対する国民感情か人類愛的支援か。寄付に対するネチズンらの意見が入り乱れている。 チョン・ウンヘ記者>(以上)

東日本大震災発生から半年の後の2011年9月27日、韓国全州で行われたサッカーのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)の対「セレッソ大阪」の試合で、韓国の「全北現代」のサポーターが「日本の大地震をお祝います。」という横断幕を掲げたことがありました。

celebrate Eastern Japan earthquake in S Korea

他人の不幸を喜ぶことを多くの人の前で表現できるのは、精神異常か民族としての特異体質の為せる業と思います。中華も小中華も長く反日教育をしてきたから、眉を顰める行動が平気で取れるのだろうと思います。日本の外務省の罪は重いし、親中・親韓政治家がそれに対し何も言ってこなかった罪も重いです。でも結局マスコミ報道を鵜呑みにしてきて相手の言いなりになるような政治家を選んで来た国民の責任が一番重いと言えるでしょう。民主主義とは国民の成熟度が問われる政治システムです。政治に無関心、特に国際政治や外交に無関心、金を儲けることしか頭にない状況では、行動の判断基準が徳ではなく、得のみになります。中韓から誹謗中傷を受けても黙って見過ごしてきたのが日本国民です。侮蔑されても反撃できない国民は、滅びることでしょう。

くまもんの偽物は中国では普通に売られています。自分が儲かるためには何でもするのは、山海関を開け清軍を通した呉三桂や「買弁」からの伝統です。

http://www.sankei.com/west/news/160122/wst1601220052-n1.html

pseud Kumamon

でも、中国国民のレベルでも少しずつ、日本への理解が進むことは良いことです。共産党統治の酷さを考えれば、日本政府と中国共産党の言ってることのどちらが正しいかは少し考えれば一目瞭然です。汪兆銘のように日本を理解した中国人もいました。共産党統治に疑問を持つ中国人が増えることを願ってやみません。

習は最初は尖閣で事を起こそうとしたと本記事にあります。今でも油断してはならないと思いますし、次の標的となっているフィリピンに日本は米軍と共に支援していかなければ。中国包囲網を作るのが急がれます。

記事

 

 熊本県一帯で4月14日から断続的に大地震が続いている。震度7の大きな前震のあとにさらに大きな本震があり、被災者の方々も、被災地に家族友人がおられる方々も眠れぬ夜が続いていることだろうが、少なくとも東日本大震災のような津波や原発事故の類は18日現在起こっておらず、どうかこのまま、余震が収束し、犠牲者に静かに哀悼が捧げられ、残された方々に少しでも安寧がもたらされ、そして一刻も早く復興にとりかかれるようにと、祈り続けている。

東日本大震災を揶揄した中国人、熊本地震では…

 ところで今回の大地震に関しては、中国人がずいぶんと心を寄せてくれているようだ。台湾人が日本の地震災害に毎回、ものすごい額の義援金(普通のビジネスマンでも、平気で1カ月分の給料などを寄付してくれる!)や関心を寄せてくれるのは、よく承知しているが、今回は多くの中国人が、インターネットの微博などのSNSで熊本への心配と応援を文章やイラストで表現しているのを見て、失礼ながらちょっと意外な気がした。

 というのも、2011年の東日本大地震のときは、中国でこういった被災地応援のネットブームは、すぐさまは起きなかったと記憶しているからだ。あの時は、むしろ先に「ざまあみろ」式の揶揄がネットの話題となり、良識のある中国人記者や中国人知識人のそれを諌めるコメントが散見された。これに対して台湾が外国の中で最高額の義援金を寄せてくれたことが、いかにも中国人と台湾人の違い、と言う形で日本人に印象づけられたのだった。

 熊本地震に関しては、中国で「小日本が大地震に襲われたので宴会を開いた」といった意地悪なSNS投稿もないわけではないが、それを上回る勢いで、傷ついた熊本県の“ゆるキャラ”くまモンを慰めるイラストやメッセージが流れたのである。

 なぜ、今回の熊本地震に関して、中国人がここまで同情と関心をよせてくれるのか。

一つの背景は、2011年春と2016年春の日中関係の状況がかなり違うからだ。

 2011年春は、2010年秋に、尖閣諸島海域で中国漁船衝突事件が起き、中国人船長が逮捕されるという事態に引きずられて、中国人の国民感情の表現が極めて“反日的”であった。この“反日感情”は、2012年秋の中国政権交代を控えた習近平サイドと現役政権の胡錦濤サイドの政争に利用される形で煽られ、中国各地で日系企業やショッピングセンターが打ち壊しや焼き討ちに遭う反日デモ暴動に発展するわけで、その詳細については拙著『権力闘争がわかれば中国がわかる』(さくら舎)などをお読みいただければと思う。

反中の台湾、香港から、日本へ流れる観光客

 一方、2016年春は、2014年から続く中国の訪日旅行ブームが最高潮に達し、もともと中国人の日本への関心が高くなっていた。中国の旅行代理店関係者に聞くと、台湾、香港での反中意識の高まりや、韓国における北朝鮮危機の高まりから、昨年まで台湾、香港、韓国に流れていた中国人観光客まで今年の春は日本に流れる傾向にあり、何より日本側のインバウンドの努力もあって訪日ツアーがダントツに種類も多く値段もリーズナブルになったことが訪日旅行ブームの一因だという。

 日本は欧米や東南アジアに比べてテロの危険も少なく、反中感情も他国と比べれば表面化しておらず、環境汚染も少なく、お買い物も楽しい。中国人の日本への親近感は2011年当時に比べるとぐっと高くなっている。

 別に中国人だけをターゲットにしているわけではないが、外国人観光客誘致で大活躍しているのが、各地の“ゆるキャラ”であることは疑いないだろう。中でも熊本県のくまモンは、中国語で“熊本熊”“熊萌”と呼ばれ、ダントツの人気である。実際、くまモンは、中国や香港でも“営業”しているし、それが熊本のキャラだと知らなくても、あの“ほっぺの赤い熊”といえば、見たことがあると答える人は多い。

もともと、中国語の“熊”には、おバカな人、無能、といったニュアンスがある。北海道の道路標識の「熊出没注意」などは、中国語では「おバカな人に気づきません」といった意味に取れ、このステッカーを北海道土産に買って帰ると大ウケする。車に貼れば、「注意力が足りない無能な運転手」という意味になり、若葉マークのない中国では、運転初心者が周囲への注意喚起で貼ることもあるとか。

中国人は“稼げる熊”がお好き

 このちょっと愛すべきおバカなイメージは、くまモンのキャラと完全に重なり中国人の琴線に触れたようでもある。だが、くまモンは無能そうな見た目と違い、2012年には周辺グッズの売り上げ300億円近くある“稼げる男”であり、こういうギャップも、中国人がくまモンが好きな理由かもしれない。

 中国人は基本、無能者よりは“有能で稼げる男”が好きである。なので、今回の大地震の被災地が熊本というと、くまモンの故郷だ、くまモンが被災した、と中国人にとっても非常に身近に感じることになった。実際、くまモンブームの影響もあって、中国人には阿蘇山ツアーなども大人気で、今回も南阿蘇の温泉地で中国人団体客20人が孤立し、ヘリコプターで救出された事態があった。

 日本、そして熊本に対するこうした中国人の親近感は、SNS上に、傷ついたくまモンや悲しんでいるくまモンを、パンダが慰めたり励ましたりするイラストや、くまモン頑張れ、といったメッセージの形であふれるようになった。イラストの中には、パンダが「私たち、みんな熊だもの」とキャプションがついていた。この際、パンダが実はクマのふりしたネコ科動物であることは気づかないふりをして、この慰めの言葉を素直に受け取りたい。

 中国の現政権が反日志向であることは、2011年も今も基本的に変化はない。だが中国の国民感情には変化がある。こう考えると、観光旅行という民間の商業活動・交流が、政府の外交を上回る効果を発揮したのだと解釈できる。

 日本の場合、商業活動は、本来は政治と無関係だが、ときに政治的にも大きな意味や効果をもつこともあるのだ。中国の場合、すべてが「党の指導」の名のもとに行われるので、観光のような商業活動といえども政治の影響を受け、たとえば台湾への中国人旅行の激減は政治のせいだ。だが、中国人の今の訪日旅行ブームは、習近平政権の反日志向に反して起きている。習近平って反日なの?と疑問に思う人は、くどいようだが「権力闘争がわかれば中国がわかる」を読んでほしい。

 簡単に説明すれば、習近平は“反日”を権力闘争、権力掌握に利用しようとしてきた。2013年1月の中国海軍が自衛艦に対しレーダーを照射しロックオンした事件は、習近平は無関係の現場の独断、という形で日中ともうやむやにしてしまったが、その後に漏れ伝えられるさまざまな情報を総合すると、やはり習近平が軍の権力掌握を進めるために東シナ海で局地的な准戦闘状態を引き起こそうと日本を挑発したというセンが今のところ一番強い。

 だが、この作戦は結果的に日本側の忍耐により失敗し、むしろ米国に中国の海洋覇権に対する強烈な警戒心を生み、尖閣問題が日米安保の対象であるとオバマ大統領が明言する決定的な契機となった。そこで、習近平が軍権掌握のために行う局地戦の場所を、南シナ海に移そうとしたのが今の南シナ海の現状である、と言われている。この場合、中国が具体的に戦火を交えたいターゲットとしているのはフィリピンのもよう。米国は中国の意図に気づいたので、フィリピンとの軍事協力強化に動いた。これに対して、中央軍事委員会副主席(解放軍制服組トップ)の范長竜が南沙諸島を米国牽制のために訪問した。

習近平の反日を、さらっとスルー

 習近平政権の反日志向は今にいたるまでぶれていない。習政権が日本の尖閣諸島に対して虎視眈々としていることは変わりなく、中国政府自身は、日本が大地震に見舞われて大変だからといって、気を回して尖閣周辺海域での中国海警船の挑発航行を控えるというわけでもない。熊本地震後も、尖閣諸島沖合の接続水域で中国海警船は挑発航行を続けている。だが、2016年春、いま習近平政権とガチで対立しているのは米国(とフィリピン)であり、だから、習近平政権の“反日志向”をさらっとスルーして、日本の製品を礼賛することも、訪日ツアーの魅力を語ることも、熊本への同情と応援の気持ちをネットのSNSで声高に表明することも、政治的にはセーフと見られている。

 こうして見てみると、政権の反日志向と、中国人個人の対日感情はもともと別物である。政治的風向きに関して敏感な中国人は、政権が反日的なメッセージを発すれば、それに乗って反日的な言動をとる。それは、あくまで独裁的な政権下での保身のために身にしみついた習性といえる。そういう言動をとる人が心底、反日というわけでもないのだ。

 では、政権が反日的メッセージを発しているにもかかわらず、あえてネットで日本への親近感を表明する場合はどうだろう。それもむしろ、心底親日というよりも、政権の発するメッセージをあえて無視することに意味があるのかもしれない。非常に消極的な政権への批判を無意識に込めているという意味で。最近、政権サイドが懸命に日本批判メッセージを発しても、国民の方が乗ってこなくなり、中国共産党は日本を北京ダックのように骨から皮までおいしく利用している、といった揶揄がネットで流れるようになったのは、つまりそういうことなのだと、私は感じている。

繰り返しになるが、中国人にとって、愛国心というのは、独裁政権下で平穏無事に暮らしていくための建前であって、本音ではさほど強い共産党政権への忠誠心は持っていない。習近平政権が個人崇拝キャンペーンを仕掛け、庶民的な肉まん屋で行列に並んで肉まんを買ったり、自分自身をゆるキャラ風のアニメキャラクターにして「習大大」(ビッグダディ習)のあだ名を広めるといった若者向け宣伝工作に力を入れたりしているものの、実際のところ「庶民の間で習近平が大人気」という現象は、作られたブームであり、庶民としては無意識の保身の習性からそのブームに乗っているだけだと私はみている。

 だから習政権の最近の政策や言動にほころびが出始めると、地方の農村はともかく、都市部の知的なネットを愛好する階層の間では、急激に習近平のやり方に批判的な気持ちが浮上する。もっとも、それを公然と口にすることができないので、習近平のあからさまな反日志向を無視する形で、ネット上で日本の製品が素晴らしいと礼賛したり、日本に旅行に行きたいといってみたり、くまモンカワイイ、と言ってみたりする。日本の熊本で大地震が起きれば、みな哀悼や同情や関心を寄せ、くまモンがんばれ、と声高にメッセージを送るのである。

「くまモンがんばれ」は外交的勝利

 だからといって、中国人からネットを通じて寄せられる被災地熊本への応援メッセージに心がこもっていないというつもりは毛頭ない。大地震での苦しみは中国人もたびたび経験しており、この同情と共感は本物だ。そういうものは、私たちが政治的にどのような状況であれ共有できるのだ。だが、それを声にして日本人に伝えるという行動の端に、政治的な中国人の事情というものも垣間見える。

 私たち日本人は、この中国人の同情と共感を感謝とともに受け止めつつ、隣の国の複雑な政治状況というものに、少し思いをはせることも必要だと思う。そうすれば、万が一、国家同士が激しい対立状態に陥っても、日頃、人として接する中国人をむやみに憎んだり恐れることもないだろう。そして政権同士の外交が対立のあまり暗礁に乗り上げていても、商業活動や民間交流、SNSでの普通の人々のコミュニケーション能力や発信力がその対立を乗り越えて外交的効果を発揮することが、しばしばあることを改めて認識することだ。

 ゆるキャラとして、商業的にプロデュースされたくまモンが、政治的に作られた習大大より中国人の心をとらえたとしたら、これもやはり日本の外交的勝利だ。

 そういう政権とは無関係なところでの民間の外交力が、意外にも紛争への歯止めになったり、震災復興での支えになったりするということを今、思い起こしておこうと思う。

notice of Kumamon's patent

くまモンオフィシャルホームページでは、通常であれば事前申請と許諾が必要な、くまモンのイラスト利用について4月19日に特例措置を発表。熊本地震支援のための募金活動やチャリティーイベントでの利用を届出制(許諾不要)とするとした

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4/19日経 小竹洋之『窮地の米共和党、忍び寄る分裂の危機』について

 

4/19NY州予備選ではトランプとヒラリーが勝ち、ヒラリーは予想通り民主党の指名獲得間違いなしです。トランプの獲得代議員数は847人で、過半数の1237人獲得に望みを繋げたとのこと。

4/21日経には

<クリントン氏、指名「見えた」 NYで勝利 過半数 26日にもメド トランプ氏も望み

the number of delegate in 2016

【ニューヨーク=吉野直也】米大統領選の民主党の候補指名争いは19日のニューヨーク州予備選で、ヒラリー・クリントン前米国務長官(68)が勝利した。ペンシルベニアなど東部5州の予備選がある26日にも指名獲得のめどが立つ。共和党の不動産王ドナルド・トランプ氏(69)も大勝し、7月の党大会前の過半数実現に望みをつないだ。

 「指名争いは最後の直線コースに入り、勝利が見えてきた」。クリントン氏は19日の勝利宣言で、こう力説した。「ニューヨークの皆さんはいつも私を支えてくれた」とも語り、喜びを表した。本命でありながら7連敗中の予備選で、今回の勝ちは流れを再び変えただけでなく、指名に必要な代議員の過半数に大きく近づいたからだ。

Hillary Rodham Clinton

19日、ニューヨーク州の予備選を制したクリントン氏(ニューヨーク)=ロイター

 民主党は特別代議員を含めた代議員総数が4765人で、過半数は2383人だ。米CNNテレビによると、クリントン氏はこの日の勝利で獲得代議員数を1930人に伸ばした。残りの代議員のうち30%弱を取れば、過半数に達する計算だ。逆にバーニー・サンダース上院議員(74)は70%程度獲得しなければならず、不可能な情勢だ。

 「最後の直線に入ってきた」というクリントン氏の発言は、こうした計算に基づいており、決して大げさな表現ではない。26日の東部5州の予備選に割り当てられた民主党の代議員数は462。世論調査ではクリントン氏が優位に戦いを進めており、調査通りの結果になれば、26日の時点で過半数に迫ることになる。

 勢いに陰りがみえていたトランプ氏も19日の勝利で、党大会前の過半数獲得がまだ現実的な目標といえる範囲にとどまった。共和党の代議員総数は2472人で過半数は1237人だ。米CNNテレビによると19日に勝ったことで、トランプ氏の獲得代議員数は847人まで増えた。

the primary election in NY

 19日以前は残り代議員数の61%以上を取らなければ、過半数に達しなかったが、19日に大勝したことで、その比率が57%程度に下がった。26日の東部5州の予備選を巡る共和党の代議員数は172人。トランプ陣営は5州すべてに勝って残り代議員数の50%を獲得すれば、過半数に届く計算をしている。

 トランプ氏が19日の勝利宣言で「最終的に誰の予想も超える代議員を取る」と宣言したのは、この数字が頭に入っているためだ。

 テッド・クルーズ上院議員(45)と競り合う5月3日の中西部のインディアナ州(57人)や同10日のネブラスカ州(36人)でトランプ氏が勝つと、過半数到達のために必要な残り代議員数の比率はさらに下がる。50%未満で、大票田カリフォルニア州(172人)などがある6月7日予備選を迎えれば過半数は可能というのがトランプ陣営の読みだ。

 一方、代議員数で2位につけるクルーズ氏は中西部で開く予備選で番狂わせを狙う。過半数を阻止さえすれば、党大会決選に持ち込めるためだ。

 26日の東部の予備選では3位のオハイオのジョン・ケーシック州知事(63)と票が分散する可能性が高く、これがトランプ氏優位の流れをつくり出している。党大会決選を見据えたトランプ氏とクルーズ氏らの攻防はこれから一段と激しくなりそうだ。>(以上)

共和党は誰が勝っても分裂含みです。GOP“Grand Old Party”の名が泣こうと言うもの。民主党も分裂して、第三、第四の政党が出て来るのを望みます。民主党では中国封じ込めはできないのでは。金とハニーで搦めとられていると思うからです。でも民主・共和とも民意を掴み損ねています。

記事

米南部ケンタッキー州の田舎町ホッジェンビル。ここは第16代米大統領アブラハム・リンカーン(1809~65年)の生誕地として知られる。

■不動産王が揺らす「リンカーンの党」

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競り合う共和党のトランプ氏(上)とクルーズ氏(4日)=AP

 丸太小屋で生まれた開拓農民の子供と、奴隷解放宣言をなし遂げた共和党初の大統領――。生家を再現した記念館もいいが、街中の広場で向き合う2つのリンカーン像がとりわけ印象に残った。

 約160年の歴史を持つ共和党には「リンカーンの党」という自負がある。それが多種多様な党員を束ねるよりどころにもなってきた。

筆者が注目した記事
・4月12日 日経朝刊9面「共和候補が代議員争奪」
・4月12日 時事通信「トランプ氏、党大会戦略で出遅れ」
・4月2日 日経朝刊6面「共和委員長、離党示唆の真意探る」

 その共和党がかつてない試練にさらされている。11月の大統領選に向けた候補指名争いが迷走し、分裂の瀬戸際に追い込まれかねない。

Hiroyuki Kotake

小竹洋之(こたけ・ひろゆき) 88年日本経済新聞社入社。経済部編集委員兼論説委員を経て、14年3月からワシントン支局長。専門はマクロ経済、財政・金融政策、国際金融。

 米CNNテレビによると、これまでの予備選や党員集会で確保した代議員は、不動産王のドナルド・トランプ氏が約760人、テッド・クルーズ上院議員が約540人、オハイオ州のジョン・ケーシック知事が約150人。首位を走るトランプ氏の代議員数が指名獲得に必要な過半数の1237人に届かず、7月に開く全国党大会の決選投票に持ち込まれる可能性が出てきた。

 全国党大会では過半数の代議員を獲得する候補が現れるまで、決選投票を繰り返す。1回目の投票は予備選や党員集会の結果に縛られるが、2回目以降は拘束が徐々に解けて自由度が増す。共和党の場合、決選投票に進んで1回で決着すれば1976年以来、2回以上続くようなら48年以来になるという。

 移民や女性に対する差別発言を繰り返し、孤立主義的な外交・安全保障政策や保護主義的な経済政策を唱えるトランプ氏。共和党の主流派は「このままでは多くの国民にそっぽを向かれ、大統領選の本選で民主党に敗れる」と懸念し、決選投票での逆転に望みをつなぐ。

候補者選びで2位に甘んじるクルーズ氏も決選投票に照準を合わせ、2回目以降に転向する代議員の取り込みに余念がない。これに憤慨するトランプ氏は「ねじ曲がった不正行為だ」「私の代議員が盗まれている」などと批判。全国党大会で指名を阻まれた場合は共和党を離党し、独立系の候補として本選に臨む考えをちらつかせる。

 トランプ氏が勝てば「反トランプ派」が収まらず、負ければ「親トランプ派」が離反する。共和党にとってはまさに分裂の危機だろう。

 経済格差の拡大や頻発するテロへの不満と、いっこうに問題を解決できない政治への憤り。「トランプ旋風」は、鬱屈した低中所得層の反乱であり、共和党自身が招いた混乱でもある。

■「政界再編のはじまりか」

statue of Lincoln

丸太小屋から大統領に登り詰めた偉人の共和党はどこへ…(米ケンタッキー州のリンカーン像)

 穏健な主流派と保守派の草の根運動「茶会」が不毛な抗争を繰り広げ、上下両院を制しているにもかかわらず党員が望む政策を実現できない。しかも「小さな政府」や「自由貿易」などの原則を振りかざすだけで、いまの低中所得層が抱える不満をくみ取ってはくれない――。共和党の理念や行動と党員の期待がこれほどかい離した時期はなかったようにみえる。

 「民主社会主義者」を自認するバーニー・サンダース上院議員が主流派のヒラリー・クリントン前国務長官を相手に予想以上に善戦している民主党も、程度の差こそあれ、同じ問題を抱える。「私たちが目にしているのは政界再編のはじまりなのかもしれない」。米コロンビア大のジャスティン・フィリップス准教授はこう指摘する。

 共和党は1860年の全国党大会で、3回の投票の末にリンカーンを大統領候補に指名し、党勢拡大につなげた。「リンカーンの党」は忍び寄る分裂の危機を乗り切れるのだろうか。

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4/19日経 The Economist『中国漁船、止まらぬ挑発』について

インドネシアのスシ海洋・水産相はサッチャーの「鉄の女」を髣髴させます。阿漕な中国漁船は爆破するに限ります。資源を強奪=強盗罪を構成しますので、二度とさせないためには漁船爆破が一番良い。インドネシアはモスリムの国家ですので、「目には目、歯には歯」というのが徹底しているのでしょう。「同害報復」です。「盗んだ手」の代わりに「盗んだ漁船」を跡形もなくしてしまうのは、抑止力としても有効と思われます。中国がこれで文句を言わないのは、「盗み」を正当化できないからでしょう。

法的には「国連海洋法条約(UNCLOS)第292条1項 締約国の当局が他の締約国を旗国とする船舶を抑留した場合において、合理的な保証金の支払又は合理的な他の金銭上の保証の提供の後に船舶及びその乗組員を速やかに釈放するというこの条約の規定を抑留した国が遵守しなかったと主張されているときは、釈放の問題については、紛争当事者が合意する裁判所に付託することができる。抑留の時から10日以内に紛争当事者が合意しない場合には、釈放の問題については、紛争当事者が別段の合意をしない限り、抑留した国が第287条の規定によって受け入れている裁判所又は国際海洋法裁判所(ITLOS)に付託することができる。」となっており、保証金を払って解決するようです。日本の尖閣での中国漁船の体当たり事件での釈放は法的には正しかったのかもしれませんが、その後赤珊瑚をごっそり盗まれましたことを考えますと、正しかったのかと。やはり、中国の圧力に屈してはならないという事です。中国は「尖閣」を中国の領土だと言い張り、また南シナ海も九段線内であるから中国の領海という論理を主張しています。それでも、インドネシアは外国漁船(主に中国漁船と思われる)170隻も爆破できるのですから。本記事にありますように人口2万人のパラオですら違法操業の中国船舶を射撃、船員一人を射殺しました。それが国際標準です。

日本は悪い奴に甘い世の中にしてしまった感があります。日弁連、日教組、偏向メデイ等左翼のせいでしょうが、国民も考えねば。大学の寮時代に勇気のない奴を蔑んで「このイ●ポ野郎」と呼んだのを思い出します。日本の男は皆「イ●ポ野郎」に成り下がったのか。

記事

それは抑止力としては無駄が多く、環境を汚染し、挑発的な手段ではあるが、インドネシア政府は極めて効果的な方法でもあると主張する。同国のスシ海洋・水産相は4月5日、インドネシア領海内で違法に操業したとして拿捕(だほ)したマレーシアとベトナムのトロール漁船計23隻が、木っ端みじんに爆破される様子を中継映像で見た。

ジョコ・ウィドド氏が2014年に大統領に就任し、地元の漁業権益を守ると約束して以来、インドネシアは170隻以上の外国船を破壊した。政府は密漁者の数が減り、国内漁業者による漁獲量が増えたとみている。

■違法操業の船押収、インドネシアが怒り

Susi Pudjiastuti

違法漁船の爆沈を待つスシ海洋・水産相(2015年2月、リアウ諸島州)=アンタラ通信

そして今、闘争的で(少なくとも国内では)人気のあるスシ海洋・水産相は、さらに10隻の漁船を破壊するのをインドネシア最高裁に認めてほしいと思っている。いずれも14年に密漁で押収した漁船。船籍は、どの国よりも多くの漁船がアジアの海で違法操業という巨大な成長ビジネスにかかわっている国、中国だ。

インドネシアはすでに、3月に起きた事件での中国の対応に怒りを募らせている。インドネシア当局がナトゥナ諸島沖で密漁していた中国漁船を拿捕し、港に曳航(えいこう)している最中に、中国海警局の監視船に漁船を奪還された一件だ。船員8人を拘束したが、別の1人が監視船に護衛され、漁船を中国南部の北海市の港まで戻してしまった。船員は米ニューヨーク・タイムズ紙に、自分たちがインドネシア領海で操業していたことは「あり得る」と語った。実際はほぼ確実だろう。

ナトゥナ諸島がインドネシアに帰属していることは誰もが認めており、中国の船員らは国際法で定められているナトゥナの排他的経済水域(EEZ)内にしっかり入っていた。それなのに中国は「伝統的な中国の漁場」海域にいたと主張し、船員を擁護した。問題の海域は、中国が南シナ海ほぼ全域に対する領有権を示すため、地図に(そしてパスポートにも)描く広大な「九段線」内に入っている。

中国の漁船員は日本、フィリピン、台湾、ベトナムでも拘束されている。いずれも海洋領有権の主張が中国のそれと重なるか、完全に重なっている国・地域だ。

■資源枯渇し遠洋に、政府は補助金で奨励

しかし、中国漁船が問題を起こすのは係争海域だけではない。中国人は近年、ロシア極東、北朝鮮、スリランカでも拘束されている。11年にはある中国船員が韓国の海洋警察隊員を刺殺した。翌年は太平洋に浮かぶ小さな共和国パラオで中国船員が警察に殺された。昨年12月には、20カ国以上のアフリカ諸国が中国に西アフリカ沖での違法操業をやめるよう要請した。そして4月中旬には、アルゼンチンで拘束されていた中国船員4人が釈放されたばかりだ。

中国の船員がこうした遠隔地に出て行ってまでリスクを冒す背景には、国家主権の問題以上に、同国がなんといっても世界最大の魚の消費国(かつ輸出国)だという事実がある。中国人1人当たりの魚の消費量は世界平均の2倍だ。需要増の大部分を水産養殖で賄ってきたが、漁獲量も圧倒的だ(12年は1390万トンで、インドネシアの540万トン、米国の510万トン、日本の360万トン、インドの330万トンを大きく上回る)。

しかし、乱獲と汚染で中国の沿岸漁業は死に体になった。漁業資源の枯渇ぶりは深刻で、世界の漁獲量の1割を占める南シナ海の沿岸漁場には、今や1950年代当時の5~30%しか残っていない。中国の漁業者はさらに沖合の遠洋へと追いやられているのだ。

中国政府がこの動きを後押ししている。食糧安全保障は優先事項であるうえ、漁業を雇用の源泉と見ているからだ(漁業の雇用者数は1400万人に達する)。習近平国家主席は2013年に中国南部の海南島の漁港、潭門を訪れ、漁業者に「もっと大きな船を造り、もっと遠くの海へ出て、もっと大きい魚を取る」よう奨励した。政府は新しい船や燃料、航行補助設備に補助金を出している。

だからといって、必ずしも漁業者が拡張主義的政策の道具になるわけではない。実際、政府は時折、中国の漁業者をコントロールするのに苦労しており、その軽率な行為にメンツをつぶされてきた。

シンガポールのシンクタンク、RSISの研究員、張宏洲氏はマリーン・ポリシー誌に寄せた「係争海域における中国人漁業者」に関する最近の論文で、潭門など中国の漁港の視察結果を報告している。潭門では多くの漁業者が習主席の激励に従うのではなく、違法だがもうかる商売に手を出していたという。保護の対象になっている絶滅危惧種のカメやオオジャコガイを捕獲していたのだ。

■常習的な海域の侵入、既成事実化が目的

それでも漁業は、戦略的な目的にもなり得る。中国が大量の資金を投入し、南シナ海の岩礁で人工島を建設しているように、係争海域に多数の中国船が常習的に存在すると、それが既成事実化し、争うのが難しくなる。同時に、中国には伝統的に領有権があるという概念を裏付けることにもなる。

実際、領有権の主張を強めるために漁業者が利用されている。1974年、武装したトロール漁船の船団が中国の前衛部隊として活動し、当時の南ベトナム政府から西沙(英語名パラセル)諸島の南部の島々を奪った。南シナ海の別の場所からフィリピンを追い出す際にも似たような作戦を用い、成功した。95年のミスチーフ(中国名・美済)礁、2012年のスカボロー礁(同・黄岩島)だ。

密漁や係争海域での操業に国としてのお墨付きを与えるのは危険だ。東シナ海の無人島、尖閣諸島を巡り、日本との間に緊張が劇的に高まった一件は、10年9月にさかのぼる。違法操業で捕まった中国のトロール漁船が、日本の海上保安庁の巡視船に衝突したのだ。

海の軍事化が進むにつれ、衝突のリスクは高まる。従来、中国海軍はまれにしか関与してこなかったが、一部の中国漁港は「海上民兵」(武装した民間船)を増やしている。中国や他国の沿岸警備隊も武装を強化しつつある。

ナトゥナでの中国の挑発行為を受け、インドネシア政府は海兵隊、特殊部隊、1個大隊、フリゲート艦3隻、新型レーダーシステム、ドローン(無人機)、それにF16戦闘機5機を派遣する方針だ。だが、中国と漁業者が一段と遠方へ網を放つのは、恐らく止められないだろう。

(c)2016 The Economist Newspaper Limited Apr. 16, 2016 All rights reserved.

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4/18日経BizGate 田中直毅『凄まじいバブルの崩壊が起きる』について

本記事は一言で言うと「社会主義市場経済」の矛盾が露呈してきたという事です。社会主義は計画経済で運営されるのに市場経済と言い募る所に言葉上の矛盾、自家撞着があり、また実態で見ても権銭交易で畸形市場経済です。

資源配分がうまく行かず(GDPに占める構成要素として不動産投資が多く、実需を無視したやり方)、また富の分配もうまくいってません(GDPに占める消費の割合が3割から4割というのは経済格差が大きく、党員や役人に富を収奪され、海外へ富が移転されていることを意味します)。共産主義は、本来は経済的に「結果の平等」を目指したはずですがそうはなっていません。やはりマーケット・メカニズムに調整を委ね、「機会の平等」を目指す資本主義の方が健全と思われます。政治的には、共産党統治は一党独裁≠民主主義、基本的人権を蔑ろにし、三権分立・法治の概念はありません。個人の生活においてこんな危険なシステムはありません。中国に8年駐在しての実感です。

中国でビジネスをするには必ず監督官庁に賄賂を贈らないとできません。中国人同士であれば当然と思っているでしょうけど、日本人にはこれは出来ません。雇った中国人が秘密裏にやるしかないでしょう。ですから中国人の金の持ち逃げも当然のように起きますし、財務部には「小金庫」という裏金をプールして、賄賂や接待時に使うようにしていました。中国の収賄側は日本の身分犯と違い、商業賄賂と呼ばれ、民間同士であっても法律上、罪に問われます。実際は皆やっていることですから、そんな例はなかったですが。

http://keieisha.zuuonline.com/archives/2252

田中直毅もやっと中国経済の危うさについて述べ出したかという気がします。宮崎正弘、田村秀男、渡邉哲也、近藤大介、石平氏辺りは1年以上前から「中国経済は危ない」と言ってきました。経営者や経済評論家に要請されるのは「先見性」でしょう。後出しジャンケンなんて誰でもできます。中国の危険性を無視して中国進出を煽った経団連と日経新聞の罪は深い。これらのトップはハニーでも咬ませられたのではと疑ってしまいます。その結果、軍事膨張を続ける「遅れて来た帝国主義国」というモンスターを作ってしまいました。中国支援をしてきた日米は製造物責任があり、中国包囲網を作って、台湾やASEAN、太平洋国家の安寧を守る義務があります。

記事

2009年時点において、中国のバブルの熟成とその崩壊の前兆はすべて整っていたといわねばならない。その前年のリーマン・ショックを受け、中国は4兆元にものぼる公共事業プロジェクトを表明。それまで「民進国退」とうたっていた産業政策が「国進民退」の様相を余儀なくされ、民間企業の収益が逼迫し、不良債権化していった。

早くも「喪失世代」が誕生

 ここで、2009年当時の状況を改めて点検してみよう。それは中国が正面から立ち向かわねばならなかった課題が顕在化していたからだ。バブルの発生はこうした課題から結果として目をそらす作用を及ぼしたといえよう。

 2009年に入ると、中国では2011年からの5ヵ年計画策定にあたって、雇用と賃金の分析が喫緊の課題となった。実際のところ、以下4点に関する問題点の噴出があった。

(1) 急増する大卒者に職場を用意できない。この点については4兆元の投資プロジェクトの緊急増がまったくといってよいほど寄与しないどころか、かえって状況を悪化させたことも明らかとなる。
(2) 沿岸都市部の工場労働者の賃金上昇率が、想定を上回る加速を見せつつあった。内陸部の農村の過剰就労状況に変化が見られない段階から、都市の賃金はしだいに上昇基調となった。「先富論」(可能な者から先に豊かになり、後から来る者を助ける)という不比例的経済発展論が前提としていた論理は、どこかで破綻をきたした可能性があった。
(3) 経済的機会が他の先進国に比して多い中国には、海外からの直接投資が相次ぎ雇用機会が増えるはずであった。しかし他方で、中国の内部で生まれるかなりの利益が、中国の内部で再投資に向かわず海外に流出することにより、雇用増の見通し、とりわけ高度な知識を要する職場の増大が予測外に小さい可能性を無視できなくなった。
(4) こうした大卒者をめぐる雇用市場の悪環境は、他国の経済発展の歴史との比較からすれば、あまりにも早熟な「喪失世代」の誕生に結びつき、中国が不安定な社会になりやすい可能性が出ていた。

 私は2009年秋の段階で中国共産党の内部で「構造改革派」が生まれつつあると実感した。5ヵ年計画の策定担当者と討論を繰り返すたびに、ほんの10年ほど前には「三農(農業、農村、農民)問題」の克服が唱えられたにすぎなかったが、この時点においては、中国は経済発展の全構造を再問しなければならない段階にきたと判断せざるをえなかった。

 当時の胡錦濤・温家宝政権の業績評価が中国の内部で芳しくないのは、この「構造改革課題」に十分な取り組みを見せなかったからである。経済発展の萌芽的段階が終了した以上、雇用については量も質もともに論じられなければならなかったにもかかわらず、見るべきほどの指導性が発揮されることはなかった。習近平総書記には、こうした無為の期間の経過ののちに登場せざるをえないという巡り合わせの悪さがある。

茫漠とした「新常態」構想

 習近平総書記は2014年河南省の視察に際して、「中国は新常態に適応する必要がある」と語り、それ以降、中国経済の進路に関連してこの言葉が頻繁に用いられるようになった。安定的な経済成長、新たな経済発展パターンの実現、市場経済化の改革促進を柱として、新たな経済への移行を謳ったものだとされる。しかし、「新常態」という言葉は登場したものの、その内容については茫漠としたものと言う以外にない。

 ほんの4、5年前までは「保八」という議論が根強くあった。これは、中国において年に1500万人増え続ける新規の労働参入を吸収するためには8%以上の経済成長率が維持されなければならないという意味で掲げられたスローガンである。

 このことは、部分的にはわれわれも見聞きする雇用の実態といえようが、実際にはさらなる精査が必要である。大学を卒業してもそれに見合う職場がないと考える人たちの溜まりがすでに数百万人から1000万人に達するという指摘は中国の諸方面からなされる。したがって、出来上がってしまった人材の皺を伸ばすために、高めの経済成長が不可欠という問題の立て方はたしかにこれまで存在した。

 しかし、さらに幅の広い観察をするならば、中国の労働力人口が2010年をピークに少しずつ減少に向かっていることも事実である。ここから中国における労働需給の全体的なマッチング問題、どのようにして職場を一つひとつ結びつけていくのかという巨大なマッチング課題の存在が明らかとなる。

 中国経済はすでに雇用問題でも従来とは異なる課題を抱えるに至っているが、その解決策を見出せずにいるのだ。

2011年には問題が煮詰まる

 そもそも、第12次5ヵ年計画が開始されようとしていた2011年の時点においても、すでにみたように問題は相当程度煮詰まっていた。5ヵ年計画に対する注目度も従来の計画と比べて飛躍的な高まりをみせていた。それは中国経済がいろいろな意味ですでに転機に入っていたからだ。

 これを改めて見定めるために、その5年前の第11次5ヵ年計画の開始当初との比較が有効と思われる。2006年当時は、民間企業が中国経済の骨格をどのようにして担っていくのかについての関心が非常に高かった。当時の情勢は「民進国退」という言葉で表現された。民有企業が経済の新しい担い手として期待され、事実、民有企業がカバーする領域が急速に拡大していたのである。

これに対し、国有企業は効率改善もままならず、中国経済におけるシェアを低下させつつあった。国有企業はいわゆるリストラに絡む問題も十分に論点整理ができていなかった。他方、民有企業には、どこまでカバレッジ範囲を広げることができるのかという前がかりのところで問題が存在した。

 だが、当時における民有企業の側の内部問題も深刻だった。そのひとつとして業界における供給者の極端な多さが挙げられた。米国でも自動車生産が開始された当初、1000社を超える自動車メーカーが群立していたが、これとほぼ同じ状況が2006年当時の中国に存在した。農業用耕作機に少し工夫を加えた程度のものも乗用車とされ、移動に使えるという意味だけの自動車生産も多かった。

 したがって、業界内の集約化、効率化のためにどのような基準を設けるかという課題が存在した。同様に、製鉄業においても電気炉が非常に多く、製鉄所も数百単位で林立するなど、産業としての合理化課題があり、環境問題の視点から鉄鉱石の過度の浪費がもたらす問題という指摘もあった。

 ところが、2011年から始まる第12次5ヵ年計画をめぐる様相は変貌した。2008年のリーマン・ショック以降、世界の需要が大幅に落ち込み、中国で生産した製品を欧米などに輸出し、そこから所得と雇用の場を確保するというメカニズムがいったん断ち切られることとなり、中国内部で財の新たな循環プロセスを作らなくてはならなくなった。そこで、2年間にわたり合計4兆元の資金を動員するプロジェクトが一挙に開始され、それによって中国経済の様子は一変したのである。

 先に触れたように、それまで「民進国退」と謳っていたものが完全に逆行し、「国進民退」となった。すなわち、政府が前面に出て発注作業を行い、受注するのももっぱら国有企業となった。4兆元のプロジェクトの90%以上を国有企業が受注したといわれる。逆にいえば、競争的市場において入札を競わせるような仕組みが中国では整っていなかった。

 職場を作る場合、民間企業が対応するならばいろいろな予測も可能である。民間企業では、収益条件や競争力維持の観点から必要とする人材についての具体的推計にも踏み込まざるをえない。しかし国有企業となると、その行動原理は中国の人々にとってもそれほど明らかではない。

 中国の国有企業の多くについては、受注して仕事を完了させ、粗利益が企業の内部にいったん入ったとしても、それがその後どこへ向うかがよくわからない面がある。国有企業の株式を保有する政府は支配者・所有者であり、当然、共産党の人材も国有企業に組み込まれる。共産党の諸機関はある時期から厳格な定年制度を採っているため、60歳以上の定年退職した人たちをどこで吸収するのかが大きな問題とならざるをえない。監査や政府とのリレーションシップ管理といった名目で国有企業にこれらの人材を押し付けることもある。

また、剰余金の性格を持つ資金を海外で企業を取得するために使うこともあるし、石油などのエネルギー企業の場合は、やがて来たるべき海外資源確保のための保蔵という名目も立つ。いずれにせよ、中国の国有企業でどのような仕事が増えるかを予測することは、民間企業の場合ほど簡単ではない。そのため国進民退に大きく転換するなかで中国の大卒雇用市場に大きな問題が生じてしまったのだ。その意味でも、第12次5ヵ年計画にいくつかの問題点があったことは明らかだろう。

日本と比較した投資効率は半分以下

investment for real estate in China

過大な不動産投資が工業生産の重荷に(重慶市)

 中国の高い成長率が持続している時期は、大雑把にいってGDPに占める投資比率が7割前後、あるいはさらに高く75%程度にまで達したとの声もあった。成長率が10%を超えた高度成長期の日本において対GDPの投資比率はその半分の30%から35%程度であったが、中国では、おそらくその倍近い投資比率になっていた。

 雑な比較であることを承知の上でいえば、投資額とそこから算出される所得からある種の効率性基準を作ると、日本の高度成長期に比べて中国の投資効率は半分程度だったといえよう。もちろん厳密な計算には相当な作業が必要だが、投資の半分は相当非効率なものである可能性がある。これは中国の分析者たちの指摘でもある。

 たとえば、中国では地方政府が所得を得ようとする場合、土地を処分したり不動産投資を行ったりする。それが地方政府の主要な収入源になっていたためだが、このことは結果として固定資本投資の比率を非常に高くすることにつながる。地方都市においては賃貸借契約に至らない非効率なビルディングが数多く建つ。これが投資効率の低さを掴みで把握するひとつの方法であろう。

 中国の地方政府改革にはさまざまな時機があった。たとえば朱鎔基が首相だった江沢民政権の時代は、地方の財源をいかにして中央に取り戻すかが大きな課題であった。地方政府の中には、自らの開発のために使える資金を朱鎔基改革によって中央政府に吸い上げられてしまったという意識を持つ人々が非常に多い。朱鎔基はその果断な決断力によって西側で非常に高く評価されたが、中国でいまひとつ人気が盛り上がらなかった理由のひとつは、地方政府から財源を奪ったことであろう。

 土地は基本的には公有となっているが、土地の処分については地方政府が圧倒的な力を持つ。ディベロッパーが地方政府と長期の賃貸借契約を結び、土地を借りて建物を建てる場合、ディベロッパーは不動産建設に関する仕事をする。地方政府にはディベロッパーとの契約締結権限を通じたお金が入る構図となる。このように、投資にかかわるかぎり、地方政府の収入が上がる仕組みといえよう。

 このように中国経済の歪みを生み出している重大な要因は、諸権限が圧倒的に国有企業や地方政府の手にあることだ。経済成長への寄与に大きくかかわっているのが投資であるがゆえに、地方政府や国有企業はここに注目するかたちで役割を果たそうとする。

これとは異なり、民有企業の場合はまったく別の視点に立つ。洗濯機やテレビなどで考えるとわかりやすい。消費者の選好に依存する非常に厳しい競争状態に置かれ、実際には過剰能力が存在するため売り値は容易に上げられない。しかも、わずか5年前までは資材価格は確実に上がり、賃金の上昇テンポは期を追ってさらに速まるという、利益を上げることがきわめて難しい情勢にあった。

地方では「取り付け」が発生か

 このような状態が生み出されるに当たって、一体どのような金融事象が随伴するものだろうか。ひとつ考えられることは、過剰な投資をファイナンスすることに適した構造が、国有銀行や地方の小規模な銀行にも当然見受けられるだろうということだ。投資促進のために融資が行われているが、投資の効率は非常に悪く、西側の普通の言葉でいえば不良債権になりがちなものが多い。

 少し前までの中国の金融監督の状況は、お金を借りた側の「あるとき払いの催促なし」が常態で、西側基準からすれば不良債権の定義にそのまま入ってしまうようなものが貸出金として計上された。この状況が是正されないままで銀行のマネジメントのミスがさらに重なったらどうなるか。不良債権比率が極端に高いという噂が出たりすれば、銀行に預金者が押しかけることがありうる。バンク・ラン(取り付け)である。預金通帳を持った人が銀行を取り囲むことになるかもしれない。

 昭和初期のわが国の金融恐慌においてはそうしたことが実際に起きたのだが、どうやら中国の地方都市ではバンク・ランが発生し始めているともいわれる。少なくとも中国人の分析家はそのように指摘する。その意味からも、中国の金融政策運営は、非常に危ういタイトロープを渡るかのごときものになり始めている。

 資源配分を改善するために資本自由化に取り組むべきという点については、中国でも少なからざる人が指摘するところである。だが、現実に資本自由化によって中国の人々が自由にお金を動かすことができるようになると、中国の銀行の不良債権比率が相当高まっている状況においては、海外の口座への資金流出が発生することも考えられる。

 その意味からも、中国における資本自由化は到底進められないという立論も根強い。もしそれを進めるのであれば、金融機関の不良債権問題に片をつけてからだということになるが、他方、投資の比重が高い経済体質が持続するかぎりにおいては、不良債権問題を片付けることは難しいという論理的関係にある。

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4/16JBプレス 古森義久 『米国が問題視、中国の圧力はケニアにも?45人の台湾人を台湾ではなく中国に強制送還』、4/16ZAKZAK 有本香『中国「反日」プロパガンダ溶解危機 ケリー米長官の広島献花の衝撃』について

中国は嫌がらせの名人、レアアースの禁輸、南京虐殺等、人の嫌がることを平気でします。自分たちにとって、その方が利益があると判断すれば果断に実行します。ただ、長期的な視点を持ち合わせているかどうかは別ですが。福田康夫の「人が嫌がることはしない」態度と真逆の態度であります。敵は日本人の人の良さに付け込みます。人の善意を信じる性格で”gullible”と言っても良いのでは。朝鮮人も小中華だけあって中国人と同じです。今度の熊本・大分地震でも人間の発言とは思えない言辞を弄しているのがネット記事にありました。ここに記載するのも憚れます。日本のメデイアは中韓北に籠絡されているので、記事にしないのでしょうけど。こういう国とは友好関係は結べないというのは国民レベルで広がっています。その結果が新聞販売量の結果となって現れています。

古森氏は「92共識」が存在するとの立場ですが、李登輝元総統は認めていません。中国人は文書偽造が得意です。大学の卒業証書や公的領収書も偽造して売っているくらいですから。中国人と台湾・外省人(=中国人)が手を握ってデッチ上げたのだろうと思います。でも、中国は45人を人質に取り、蔡英文次期総統を揺さぶろうと言うのが見え見えです。「92共識」を認めないと人質は返さないと言って来るのでは。日韓基本条約締結時と同じです。人質を取られた日本は、払わないで良い金を払ってしまいました。それが小中華を増長させることになったのです。日本は、小中華は相手にせず、台湾民進党をバックアップすれば良いでしょう。

http://fis.takushoku-u.ac.jp/worldnow/backnumber/17/shimojo.html

オバマ大統領の広島訪問は既定路線になった感があります。反日朝日と同じ反日NYTも賛意を示しました。ワシントン・ポストも賛成ですので、間違いないでしょう。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160416/k10010483611000.html

ケリーだけでなく、オバマが広島に行けば、中国の驚愕度合いはもっと大きくなるという事です。江沢民が反日腐敗大統領のビル・クリントンと会う時に、ハワイの真珠湾に寄り、戦艦アリゾナで「米中は第二次大戦で一緒に戦った」と言う演説をしたことを思い出しました。勿論中国で戦ったのは国民党で、共産党は逃げ回っていただけですが。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B1%9F%E6%B2%A2%E6%B0%91

米国も原爆投下を正当化する意見がまだまだ主流ですが、歴史の見直しが進み、如何にFDRがスターリンに手玉に取られていたのか分かれば、米国世論も変わってくると思います。ハミルトン・フィッシュ著(渡辺惣樹訳)『ルーズベルトの開戦責任』やフーバー大統領の回想録“freedom betrayed”を読めば、日本は嵌められたのが分かります。でも騙される方が悪いと思わねば。キッシンジャーのような中国から買収されている政治屋が居なくなれば米国での歴史の見直しが進むかも知れません。日本のメデイアはGHQのWGIP其の儘の考えで報道していますので。いい加減呪縛から脱却しなければ。

http://blog.goo.ne.jp/2005tora/e/fce93545125696bebb8f2a84f07e56c2

古森記事

Nairobi

ケニア政府はなぜ台湾人を中国に強制措置したのか。ケニア・ナイロビの市街地(資料写真)

 ケニアに滞在していた台湾籍の45人をケニア政府が拘束し、中国に強制送還した。

 この“異常”な措置が、「一つの中国」政策を拡大する中国の強硬戦略の表れだとして、米国で重大な関心を集めている。中国が経済援助の見返りとしてケニアに圧力をかけ、台湾の独立性を骨抜きにする外交攻勢に出ていると警戒されている。

「台湾とは国交がない」とケニア政府当局者

 台湾当局などの発表によると、ケニアに滞在していた45人の台湾人が、4月8日に8人、同12日に37人、中国本土の広州市に向かう中国旅客機に強制的に乗せられ、送還された。

 ケニア政府の発表では、45人はいずれもケニア国内での詐欺事件、サイバー犯罪に関与した疑いがあり、同じ容疑の中国籍約10人と同じ扱いで中国側に引き渡すことにしたという。

ケニア政府当局者は、ケニアと台湾(中華民国)の間には国交がないこと、ケニアは中華人民共和国が唱える「一つの中国」の原則を受け入れていることを強調した。この原則に基づけば台湾籍の人物の身柄を中国に引き渡すことは決して不自然ではないという。それを受けて中国外務省報道官は、「ケニアが『一つの中国』の原則を堅持していることを高く評価する」と言明した。

 8日にケニアを離れた台湾籍の8人はすでに北京に送られて拘留されているという情報もある。台湾政府は中国政府に対して、すべての台湾籍の人物の身柄の引き渡しを求めた。だが中国側は、「ケニアと国交を有するのは中国であり、管轄権は中国にある」と答え、台湾側の要求を拒否した。

 ケニアに拘束されていた台湾人たちは強制送還の先が中国本土であることを通告されると、留置所内部で抗議し、連行されることを拒否した。しかし、ケニア当局により無理やり航空機に乗せられたという。台湾政府はこの留置所内部での抵抗を録画したビデオを入手して一部を公開し、ケニア政府に抗議している。

蔡英文氏へのいらだちを隠さない中国

 米国務省報道官は、中国本土に送られた台湾人の1人が米国籍も有していることから、米国がこの事件に重大な関心を抱いていると語った。

 しかし、米側の中国・台湾問題の専門家たちの多くは、別の点からケニア政府の強硬な措置を問題視している。つまり、ケニア政府は「一つの中国」政策を徹底しようとする中国政府の意向を受けて強制送還を行ったというのだ。

中国と台湾の間には、共に「一つの中国」の原則を認めたとされる「1992年合意」が存在する。だが、2016年1月の総統選挙で当選し、5月に総統に就任する民進党の蔡英文氏は、その合意への態度を鮮明にしていない。むしろ、受け入れることに難色を示しているとも伝えられる。

 中国は蔡氏へのいらだちを隠さず、さまざまな形で「一つの中国」原則を受け入れるよう圧力をかけてきた。今回のケニア政府の措置も、中国が「一つの中国」原則を押し通すために台湾人の身柄を引き渡すようケニア政府に働きかけた結果であり、それによって蔡氏に揺さぶりをかけているという見方がある。

 中国は近年、アフリカへの経済進出を拡大させ、特に鉱山資源や石油資源の豊かな南アフリカ、ザンビアなどへの援助や投資を増加させてきた。東アフリカで最大の経済規模を誇るケニアに対してもインフラ建設などの面で援助を強化してきた。ケニア側はそうした中国の援助に応える形で、台湾人の中国への異常な送還を強行したというわけだ。

 米国では、中国が今後も台湾の民進党新政権に圧力をかけ続け、台湾の国際孤立を深める戦略を進めるだろうという見方が広まっている。

有本記事

Kerry offered flower in Hiroshima

原爆慰霊碑に献花するケリー米国務長官(中央)と岸田外相。右はハモンド英外相=11日午前、広島市の平和記念公園

またもや北京が激怒している。広島市で開かれたG7(先進7カ国)外相会合の後、参加各国の在中国大使らを呼び付けて抗議したほどにである。怒りは主に、南シナ海や東シナ海の件が議論され、声明に盛り込まれたことに対してとされている。これは表向きのことだろう。  国際社会では日々、大小さまざまな国々が、2つの「り」を最大化すべく、しのぎを削っている。1つは「利益(国益)」、もう1つは「理念」だ。理念は、価値観と言い換えてもいい。  今日までの世界は、G7に代表される西欧諸国の価値観によって支配され、それによって彼の国々の利益が最大となってきた。  日本は元来、異分子ながら、西欧グループに肩を並べて、「自由」「人権」「民主主義」「法の支配」などの価値観を共有している。  中国はこれに挑戦しているわけだ。挑戦の過程で、各国にカネをばらまき、中国ビジネスの利権ケーキの切り分けを絶妙に差配しながら、G7の国々を黙らせることに努めてきた。  ところが、広島宣言によって、中国の南シナ海・東シナ海での軍事行動は、アジアローカルの問題から、G7の共有する懸念材料へと格上げされた。だが、中国の「怒り」のポイントをこの件だけと見るのは誤りだ。むしろ、米国のケリー国務長官が、他のG7外相とそろって原爆慰霊碑に献花をし、原爆資料館を訪れたことの方が、大きな衝撃を与えたにちがいない。  なぜなら、中国がこれまで韓国を従えて、米国などを舞台に好き放題やってきた「対日歴史戦」が、方向を見失う可能性があるからだ。「南京で日本軍が40万人を虐殺した」だの、「20万人の朝鮮の少女が強制連行され、性奴隷にされた」という一連のウソは、米国という戦勝国の史観がお墨付きとなって野放しにされてきた。

日本は、中国や朝鮮で散々悪いことをしたのだから、原爆を落とされても当然、原爆投下は戦争を終わらせ、多くの人を救った正当な行為だった-という米国のロジックが、中国・韓国勢のプロパガンダの下支えになってきたのだ。

 今般のケリー長官の広島での言動から、オバマ米大統領の広島訪問が実現すれば、中韓のプロパガンダの根底は溶融しかねないのである。米大統領の広島訪問には、それだけの意義がある。

 「オバマ大統領の最後のパフォーマンスに広島を使うな」とか、「大統領に謝罪を」という声が日本国内にあるが、求めすぎるのは得策ではない。米国内の世論への配慮も必要だ。

 米中が、価値観(理念)の対立を鮮明にしていく。その新たな冷戦を、日本の「り」につなげていくための、強かで着実な前進が今求められているのである。 =おわり

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4/15日経ビジネスオンライン 北村豊『中国ホテル内暴行、「皆が無視」のおぞましさ ネット告発でホテルに非難殺到も、対応に誠意なし』について

中国のホテルのロビーにはそれと分かる女性が屯しています。米系ホテルと雖もです。外から女性を持ち込むと、彼女らの商売の邪魔をすることになり、ホテル側から公安に通報される危険性が高いです。

中国は力の信奉者が多いです。女衒のような輩も、絶対公安に賄賂を贈っています。でなければすぐに逮捕され、安心して商売ができないからです。その為、逆に過信に繋がり、「何をしても大丈夫」という気にさせてしまう訳です。中国駐在時にも日本料理店やカラオケ店に時々、視察と称して公安が回ってきました。裏で金を出していれば別に何も起きません。カラオケ女性は「三陪小姐」(男性客の「食事、遊び、寝る」の3つにつきあうことを生業とする女性の蔑称、①陪你聊天②陪你喝酒③陪你上床、〈備考〉「三陪」は「陪酒、陪舞、陪歌」、「陪吃、陪喝、陪聊」を指すこともある。)とよばれることもありますが、全員が売春する訳ではありません。また、話をしたり、酒を飲むときに女性は男性の横に座ってはいけないことになっていますが、守られることはなかったです。大体取り締まる側の公安が腐敗していますから。中国には立派な法律が通過していますが、守られた試しがありません。賄賂で曲げられてしまうからです。排水中のBOD、COD超過も罰金を払えばそちらの方が、設備投資するより安いので、中国の河川は汚れ放しになる訳です。中国憲法の第35条には「中華人民共和国は、言論、出版、集会、結社、行進、示威の自由を有する」とありますが、守られてないのは、香港・銅鑼湾書店の例を持ち出すまでもないでしょう。デモも官製デモだけです。共産党が認めないデモを許せば、国はすぐに持たなくなるでしょう。共産党は悪逆非道の統治をしていますので。

でも、今はSNSが発達してますので、おかしなことが起きれば、政治的に微妙な問題でない限り、本記事のように反撃できます。権力の横暴に対抗するには、このような手段を活用するしかありません。社会に「悪」を晒すことでしか。日本のメデイアは権力となって、彼らにとって「不都合な真実」は「報道しない自由」の権利を行使します。でもSNSの発達で、メデイアが批判の目に晒されるようになりました。また、玉石の石の情報は炎上するか、淘汰されます。インターラクテイブの凄さです。

記事

ホテルグループ“如家酒店集団(Home Inns Group)”に属する“和頤酒店(Yitel)”は中国国内でチェーン展開する準高級のホテルで、国内24都市に60か所のチェーン店を擁している。「北京望京798和頤酒店」(以下「和頤(わい)ホテル」)は北京市内に9か所あるチェーン店の一つで、北京市北東部に位置する“朝陽区酒仙橋北路”にあり、“望京科学技術園区”と芸術家が集うことで名高い“798芸術区”に隣接することから命名された。和頤ホテルは“首都国際空港”まで北東へ15km、北京市の中心部まで南西へ15kmと、空港と市街区の中間点にあって交通に便利なことから、宿泊客には地方から上京するビジネスマンが多い。

北京の和頤ホテルで暴漢に襲われる

 さて、4月3日の夜、その和頤ホテルに宿泊していたハンドルネームを“彎彎_2016”と名乗る女性がホテルの宿泊階で暴漢に襲われる事件が発生した。その事件の経緯は以下の通り。

【1】彼女が和頤ホテルにチェックインしたのは4月1日だった。彼女は北京市へ業務出張するついでに休日を楽しもうと、3月30日に旅行予約サイト“携程旅行網(ネット)”を通じて首都国際空港に近くて便利な和頤ホテルを4月1日から予約した。北京滞在3日目の4月3日の夜、彼女は北京にいる友人との食事を楽しんだ後、1人でタクシーに乗り、10時50分前に和頤ホテルへ到着した。ホテルの玄関を入ってエレベーターホールに進むと、そこには3人がエレベーターの到着を待っていた。間もなくエレベーターが1階に到着し、上りのエレベーターには彼女を加えた4人が乗り込んだ。

【2】和頤ホテルのエレベーターはセキュリティシステムを採用しており、宿泊客がエレベーターで宿泊階へ上るには、宿泊客が持つカード式ルームキーをエレベーターの停止階表示器に組み込まれたセンサーにタッチする必要がある。彼女の部屋は4階だったが、停止階表示器を見ると、誰かがルームキーをタッチしたらしく、4階の停止表示はすでに点灯していた。エレベーターは4人を乗せて上昇し、3階で1人が降りた後に4階へ到着した。エレベーターが4階に止まって扉が開くと、彼女はすぐにエレベーターを降りたが、停止時間が過ぎて扉が閉まる直前に1人の男が降りた。

【3】彼女がエレベーターホールでバッグから部屋のカードキーを取り出すのに手間取っていると、その男が彼女に近付き、「姉ちゃんは何号室」と声を掛けてきた。これはまずいと思った彼女は、「どうしてあんたにそんな事を言わなきゃいけないの。あんたは誰?」と応じた。すると、男は表情を変えて、「お前の部屋へ行こうじゃないか」と言いながら、彼女の腕をつかんで無理やり部屋のある方向へ引っ張った。彼女は男の乱暴な行動に怯えると同時に、男が凶器を持っていたらどうしようと考えつつ、身体を引っ張られまいと抵抗を続けた。彼女の抵抗が激しいので、男はさらに力を強めた。彼女は「私はあんたなんか知らない。放してよ」と大声で叫び続けたところ、男はその声を他の宿泊客に聞かれては困るとばかりに、彼女の首と顔を押さえつけて声を出せなくさせて、彼女を強引に引っ張った。

【4】彼女は何としても逃れようと、必死の思いで「助けて」と大声で叫び続けた。たまたま部屋のある通路から現れたホテルのボーイが、彼女の叫び声を聞いて近付いてきた。天の助けと考えた彼女はボーイに向かって、「この人は知らない人なの、早く助けて」と叫んだが、これを聞いた男はなおさらいきりたって、彼女の首をつかむ手に力を加えたので、彼女は息ができなくなり窒息しそうになった。この状況を見て、恋人同士の痴話げんかだと思ったボーイは、男の暴力行為を止めようとしないばかりか、優しい声で「ここでけんかしないでください。だめです、こんなことはいけません」と語りかけたのだった。

ボーイも客も傍観、1人の女性が救いの手を

【5】ボーイは助けてくれるわけでなく、ただ傍観しているだけ。どうしようもなくなった彼女は、床に座り込んで男に引っ張られるのを防ぎながら、110番へ通報しようと携帯電話を取り出した。しかし、目ざとくこれを見つけた男は、彼女の手から携帯電話を奪い取ると、彼女から目を離さぬまま、やおら誰かに電話を掛け、電話の相手に応援に来るように依頼したのだった。これを聞いて、彼女は焦った。誰だか知らないが、男の仲間が来たら連れて行かれるかもしれない。彼女は混乱の極にあり、恐怖に打ちのめされて、全身をわなわなと震わせていた。

【6】この間にも数人の宿泊客がエレベーターから降りて来たが、彼らは男女が痴話げんかしているものと思ったのか、見て見ぬふりして通り過ぎて行くだけだった。但し、1人の女性だけは彼女と男のただならぬ様子に不審を覚えたようで、ずっと彼ら2人を見つめながら自分の部屋へ向かった。そうこうする間に、男は再度電話を掛けようと、彼女から手を放して少し離れた場所へ移動した。逃げるなら、今がチャンスだ。一瞬の間隙をついた彼女はエレベーターまで突進して上下ボタンを押したが、これに気付いた男は走り寄ると、有無を言わさずに彼女を捕まえ、髪の毛をつかんで、彼女をエレベーターとは反対の側にある消防用避難通路へ連れ込もうとした。

【7】先に2人の様子に不審を抱いた女性は、一度は部屋に戻ったものの気掛かりで、部屋から出て、彼らの状況をうかがっていた。男が彼女の頭髪をつかんで消防用避難通路へ連れ込もうとした時、見かねて意を決した女性は、彼女に救いの手を差し伸べて、男の手から彼女を救い出すと、彼女の盾となった。すると、形勢不利と見た男は慌てふためき、消防用避難通路から脱兎の如く逃走した。危機を脱した彼女は救い出してくれた女性の腕にすがり、自分を女性の部屋へ連れて行って欲しいと懇願した。ホテルのボーイは男が逃走するまで現場にいたにもかかわらず、最後まで彼女を救出することなく、ただ木偶の坊のように傍観していただけだった。

 上記の事件は4月3日の夜10時50分から54分までの4分30秒の間に発生したもので、その状況は4階のエレベーターホールに設置されていた監視カメラによって全て録画されていた。しかし、和頤ホテルの警備員も管理職員も監視カメラの映像を見ていなかったため、事件の最中に現場へ駆けつける者は誰もいなかった。また、当直のフロント係は事件後に何度も電話を掛けた末に、ようやく彼女の所へ出向くという体たらくだった。彼女が事件を110番通報したことで、派出所の警官が和頤ホテルへ急行し、和頤ホテルでの現場検証と監視カメラのチェックが行われた。その後、彼女は警官とともに派出所へ移動したが、警官が彼女の調書を取り終えたのは午前2時過ぎだった。

 彼女は派出所の警官に、「犯人は27~28歳の男で、黒革の上着にGパンをはき、うりざね顔で凶暴な目つきをしていた。男は酔っておらず、素面だった」と述べて、犯人を早急に逮捕するよう要望した。しかし、警官は、「盗られた物もないし、負傷もしていない。酔っ払いが絡んで来ただけじゃないのか」とまともに取り合うとしなかった。

ホテルへの非難コメント200万以上

 その夜ホテルの部屋に戻った彼女はまんじりともせずに一夜を過ごした。翌4日の朝、ホテルのフロントへ出向いた彼女は、フロント係に今回の事件発生についてホテルはどう考えているのかを質したが、フロント係は事件が発生したことなど全く知らなかった。そこで、責任者に連絡を取るよう要求して、責任者と電話で話したところ、責任者はすでに公安局へ報告済みだから、公安局からの見解を待ちたいと言っただけで、ホテル内で事件が発生したことを謝罪しないばかりか、事件について何らの釈明もなかった。そればかりか、責任者は電話で応対しただけで、彼女の前に姿を現すこともなかった。それでも彼女はホテル側からの誠意を信じて連絡を待ったが、ホテル側は知らぬ顔の半兵衛を決め込み、彼女を一切無視した。このため、彼女は4日中にホテルを引き払い、飛行機で北京を去ったのだった。

 4月5日、彼女は自身のハンドルネーム“彎彎_2016”の“微博(マイクロブログ)”に4月3日夜に和頤ホテルで発生した事件の経緯を書き込むと同時に、ホテルで警官と共に監視カメラの映像をチェックした際にスマホで撮影した、事件発生当時の状況を示す動画を動画共有サイト“優酷(youku.com)”へ投稿した<注>。このマイクロブログの書き込みと投稿された動画は大きな反響を呼び起こし、ネットユーザーによって中国全土へ転送された。この結果、4月6日夜までに“彎彎_2016”のマイクロブログには15億件ものアクセスが殺到し、200万人以上がコメントを書き込んだ。その大部分は和頤ホテルの彼女に対する冷淡な対応を非難すると同時に、ホテルの管理能力と従業員教育に疑問を呈するものだった。

<注>“優酷”に投稿された動画の再生回数は、4月10日夜までに700万回を超えた。

 あるネットユーザーは、和頤ホテルが売春組織と結託して利益を得ているのではないかと疑問を投げかけ、犯人の男は彎彎_2016を自分が呼んだ売春婦と勘違いしたもので、そうならば、男が彼女を無理やり部屋の方へ連れて行こうとした理由が説明できるとした。後に判明したところによれば、和頤ホテルでは宿泊客以外は客室階へ上がれないようにするセキュリティシステムを採用しているというのに、なぜか客室には名刺大で煽情的な女性写真入りの売春ビラが多数配布されていたという。

ホテルの謝罪会見、5時間遅れ、5分のみ

 それはさておき、事件が公になり、大きな騒動に発展したことで、驚いたのは和頤ホテルだった。彼女からの問題提起を無視して、事件をうやむやのうちに終わらせようと考えていたホテル側は慌てた。彼女に電話を入れて、カネを払う代わりに、速やかにマイクロブログの書き込みと動画共有サイトの動画を削除するよう要請したが、彼女からは即座に拒否された。

 4月6日、和頤酒店チェーンを展開する如家酒店集団は、事件のあった和頤ホテルで記者会見を行った。会場となった和頤ホテルのホールにはメディアの記者が大挙して押しかけたが、会見は予定時間より5時間も遅れて始まった。会見には如家酒店集団を代表して2人の女性が出席し、そのうちの1人が原稿を読む形で、事件発生に対する遺憾を表明し、被害者および社会に対して謝罪した。さらに、今後は類似の事件が発生しないように改革を行い、公安局の調査には積極的な協力を行うと述べ、わずか5分で会見を打ち切り、記者たちの質問には全く応じることなく、会場を後にした。

 4月8日、あるメディアの記者が、事件の当事者である“彎彎_2016”は、浙江省“杭州市”にある某企業の従業員であることを突き止めた。彼女は出張で4月1日に北京を訪れ、事件生翌日の4月4日に杭州へ戻っていたのだった。一方、北京市公安局は公式マイクロブログで、4月7日の夜9時頃、和頤ホテル事件の専従班が河南省公安局の協力の下で、河南省“許昌市”で同事件の容疑者として李某(男、24歳、本籍:河南省)を逮捕し、現在取調べ中である旨を公表した。事件に対する世論の沸騰に北京市公安局も犯人逮捕に全力を上げざるを得なかったものと思われる。

 なお、某メディアは、犯人の男は和頤ホテルの客室に売春ビラを配るのを仕事としており、たまたま見かけた“彎彎_2016”を同業者であると思い込んで、彼女を連れ去ろうとしたと報じている。事件発生後、男は和頤ホテルに電話を入れて、彼女が同業者だと勘違いして犯行に及んだと話したと言う。これが本当ならば、北京市公安局が事件発生からわずか4日で北京市から約800kmも離れた河南省許昌市で男を逮捕できたことの説明がつく。

こうして事件は表面的に終わりを告げたが、事件の根は深い。その理由は以下の通り。

義侠心の復活は至難の業

【1】犯人の男が売春ビラを配るのを仕事としていたのならば、連日のように和頤ホテルに通っていたはずで、第一発見者となったボーイと顔なじみだった可能性がある。だからこそ、ボーイは、犯人の暴力行為を止めようとせず、「ここでけんかしないでください。こんなことはいけません」と犯人に呼びかけたものと考えられる。ボーイは“彎彎_2016”と犯人の2人が痴話げんかしているとは思っていなかった可能性が高い。

【2】それよりも、犯人が和頤ホテルの客室階へ自由に出入りできたのならば、彼は客室階へ上るマスターキーを持っていたことになる。恐らく、ホテル内のしかるべき役職にある人物が犯人に便宜を図り、見返りとして客がついた場合にリベートをもらっていた可能性が高い。和頤ホテルは準高級ホテルだから、そんなことはありえないと思うかもしれない。しかし、中国では高級ホテルでさえも売春婦が宿泊していて、館内電話を使って客室に電話をかけ、宿泊客に売春を持ち掛けることがあるくらいだから、客室に売春ビラが配られても決しておかしなことではない。果たして、北京市公安局が本件に関連して和頤ホテルと売春ビラの関係にまで踏み込んだ調査を行うかどうか。4月5日付のメディアは、民間企業である如家酒家集団が、110億元(約1980億円)で国有企業の“北京首旅酒店(集団)股份有限公司(略称:首旅酒店集団)”に合併されて、首旅酒店集団の傘下に入ると報じている。民間企業ならともかく、国有企業となった和頤ホテルの売春問題に北京市公安局が踏み込むことは恐らくないだろう。

【3】上述した事件の経緯を振り返ると、そこに見えてくるのは、人々の他人に対する無関心である。何人もの宿泊客が“彎彎_2016”に対する犯人の暴力行為を目にしながら、阻止しようとせず、無関心を装って通り過ぎた。2011年10月、広東省“佛山市”で2歳の女の子が前後2台の車にひかれて路上に倒れていたが、18人もの通行人が見て見ぬふりで救助せずに通り過ぎ、19人目の老婦人が救助して病院へ搬送したが、女の子は死亡した。また、「中国では老人が倒れていても助けるな」という考え方が一般化し、倒れている老人を見ても誰一人助けようとせずに、死亡する事例が多発している。これは自分の不注意で倒れた老人が、高い医療費を負担できないことから、助けた人に倒されたと主張し、裁判で勝利して医療費を騙し取る事件が多発していることに起因する。

【4】“彎彎_2016”は、今回の事件を踏まえて、こうした風潮に苦言を呈し、他人に無関心を装うことを止めて、困っている人を見たら助けなければならないと述べている。自分がその当事者として苦境に陥った場合を考えれば、誰かに手を差し伸べて欲しいはずではないかと彼女は言っている。かつての中国には「“路見不平,拔刀相助(路上で人の危難を見たら、刀を抜いて助ける)”」という言葉があり、義侠心を起こすという精神が存在していたが、いまでは言葉だけが残って、その精神は全く消え失せた。この精神を復活させることは至難の業だが、それをしない限り、中国社会は個々人がばらばらになり、新たな発展を遂げることはできないのではないだろうか。義侠心が存在しなければ、我々日本人が好きな、三国志や水滸伝に代表される中国古典文学は成立しなかったはずである。

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