4/22日経ビジネスオンライン 池田元博『やはり2島が限界?北方領土交渉の落としどころ 領土交渉のハードル、さらに上がる可能性』、4/22日経 The Economist『プーチンの右腕、ロシア中銀総裁の実力を査定 辛うじて踏みとどまるロシア経済』について

4/24日経に「伊奈久喜日経特別編集委員」の死亡記事が載っていました。日経の政治担当の中では田勢康弘などと違い、マトモと感じていました。残念です。

ロシアとの北方領土交渉はハードなものになるでしょう。交渉のやり方として先方はゼロから、当方は100から始まるのが普通でしょう。中国人と交渉するときも、日本人と分かると大体10倍くらいの値段を吹っかけてきますから。騙される方が悪いと言えます。「2島(色丹、歯舞)返還、国後・択捉は話し合い継続」が現時点で望める最大限ではないか。領土問題は戦争か金でしか解決は出来ません。今の日本人で戦争してまで領土の失地回復することは考えにくいです。後は金で解決するかです。沖縄だって事実上そうでした。

ルトワックが言うように、日本がロシアを味方に付けられるか、せめて中立の立場を取るかが対中国にとって死活的な問題になります。火事場泥棒で領土を奪われた事実は事実として、世界は正義だけで動いている訳ではないという事を銘記しなければ。中国包囲網にロシア+中央アジアの国々にも参加して貰えれば、中国の軍事暴発の可能性は低くなります。現下の最大の敵国はロシアでなく、中国です。これに朝鮮半島が加わるでしょうが。

ロシアの経済運営は外貨準備を減らさないこととありました。外交面でのフリーハンドを握っておきたいとの思いでしょう。確かにルーブル安は資源輸出国のロシアには有利になります。でもインフレが進行していくときに、銀行救済だけでうまく行くかどうかです。中国と違い、データの改竄はないと思われますので、それが救いです。中国はデット・エクイテイ・スワップで債務危機を乗り越えようとしていますが、根本的解決にはならないでしょう。バブル崩壊の先送りだけ、もっと悪い結末が予想されます。

池田記事

安倍晋三首相が5月初めにロシアを訪問する。プーチン大統領との首脳会談を通じて北方領土問題解決の糸口を見いだそうとしているが、受けて立つロシア側の姿勢は想像以上に厳しい。最大限の譲歩でも2島が限界ではないか。

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プーチン大統領が生出演し、3~4時間にわたって国民の様々な質問に答えていく特別番組。年1回の恒例となっている。(Kremlin/Sputnik/ロイター/アフロ)

 「プーチンとのホットライン」――。プーチン大統領がテレビに生出演し、3~4時間にわたって国民の様々な質問に答えていく。ロシアで年1回の恒例となっている特別番組だ。今年は4月14日に実施され、全土で生中継された。

 大統領はスタジオに集まった聴衆や、テレビ中継で結んだ地方の人々と直接、対話しながら質問に答える。また、電話やメール、ツイッターなどを通じて寄せられた膨大な質問は原則、司会者がその一部を紹介し、大統領が返答する形式をとっている。市民たちが身近に抱える問題を訴えると、大統領がその場で解決策を指示することが多く、国民には人気の番組だ。

 もちろん政権にとっては、プーチン大統領への国民の支持をつなぎとめるための重要なメディア戦術となっている。今年はとくに、子どもたちからの質問を多く取り上げ、親しみやすさを訴えながら、頼れる指導者のイメージを植え付けようとしていた。例えばこんな具合だ。

アンジェラ:「もし金の魚を捕まえたら、3つのどんな願いをしますか」

大統領:「奇跡に期待せず、何事も自分の力でなし遂げるべきだよ」

アリーナ:「ロシアに女性の大統領は生まれますか。パパは米国に対抗できるのはプーチンさんしかいないといっています」

大統領:「我々が考えなければならないのは米国とどうするかではなく、国内の問題だよ。道路の整備や健康、教育をどうするか。経済をどう発展させ、成長させていくかなんだ」

なぜ今回、色丹島の現状をとりあげたのか

 今年は全国から300万を超える質問が集まったという。番組で紹介されるのはごく一部だけだ。毎回、大統領の当意即妙の受け答えが売り物となっているが、実際は大統領府が中心となって番組の構成から取り上げる質問、回答内容を含めてかなり入念に事前準備しているといわれる。

 ロシア経済紙RBKは、スタジオ参加者の多くが2日前にモスクワ郊外の宿舎に集められ、リハーサルを実施したと報じた。参加者は事前準備のことを親族などにも話さないよう口止めされ、番組当日まで宿舎を出ないよう要請されたという。

政権の監修が色濃い番組とされているだけに、今回、日ロ関係者の間で様々な臆測を呼んだ場面がある。モスクワのスタジオと極東のサハリン州を中継で結び、大統領と地元の市民が直接やりとりした次の部分である。

タチヤーナ:「私たちは昨秋、色丹島の魚加工工場で働きましたが、給料を支払ってくれません。人材派遣業者がだましてあの島に連れて行っています。労働条件も生活も悲惨です。人々はホームレス状態です。助けてください」

エレーナ:「あそこは島で周りは海ばかりです。逃げ出せないし、お金もない」

大統領:「何ということだ。言葉もみつからない。それ(賃金の不払い)は昨年の話ですか。あるいはもっと長期間にわたってですか?」……。

 大統領は謝罪し、番組の中で連邦検事局などに迅速な対応を指示した。さらに、これは後日談だが、さっそく連邦検事局の副検事総長、サハリン州知事、サハリン州検事、連邦労働雇用庁幹部らがこぞって色丹島入りして調査に乗り出し、工場側も未払い賃金の全額支払いを約束したという。

 給料の遅配、不払い問題は例年、市民が寄せる質問の“定番”のひとつだ。臆測を呼んでいるのはなぜ今回、北方四島の色丹島の現状をとりあげたのかだ。

 「色丹島もロシア領と日本に認識させるのが狙いだ」「いやいや、厳しい現状を国民に知らしめ、日本への将来の引き渡しの布石とした」……。いろいろな解釈が可能だが、大統領は番組では、日本との関係について一切触れていない。

 折から5月初めには、安倍晋三首相の訪ロが予定される。プーチン大統領もこの番組終了後に記者団の質問に答え、米国の圧力にもかかわらず訪ロする首相を「歓迎する」とした。北方領土交渉の行方にも触れ、「妥協はいつか見いだせるのではないか」と述べた。それだけになおさら、番組で色丹島を取り上げたのは、日本を意識したのではないかという疑心を生んでいるわけだ。

1956年日ソ共同宣言の重視を改めて主張

 意図的か偶然か、日本を意識したかしないかは別にして、客観的に言えることは、ロシアの隅々にまで気を配るプーチン大統領の姿を国民に誇示するため、色丹島の未払い問題が取り上げられたということだ。

 もちろん、大統領は日本が帰属問題の解決を求めている北方四島の一つと認識しているはずだ。一方で、番組をみた国民の多くは、日本と係争中の島という認識は全くないまま、すぐに忘れてしまうかどうかは別にして、「色丹」という島が極東の最果てにあることをなんとなく知ったということなのだろう。

 プーチン大統領はちょうど3年前、モスクワで開いた安倍首相との日ロ首脳会談後の記者会見でこんな発言をしている。北方領土で外国企業も参加してインフラ開発が進む現状に苦言を呈した日本側記者の質問に対し、怒りをこらえながら「これらの領土には他と同様にロシアの人々が住んでいる。我々が彼らのことを思い、彼らの生活を考えるのは当然だ」と答えたのだ。今回の番組で色丹島が取り上げられたのも、こんな文脈の延長なのだろう。

 では、肝心の北方領土交渉の行方はどうなるのか。

安倍首相の訪ロ準備を目的にラブロフ外相が来日し、岸田文雄外相との間で4月15日に外相会談を開いた。ラブロフ氏は「交渉を継続する用意はある」と前向きの姿勢を示す一方で、「第2次世界大戦の結果」を日本が認めるべきだという主張を繰り返した。

 つまり、第2次大戦の結果、北方四島がロシア領になったことを日本側が確認しなければ、交渉は前に進まないというのだ。ラブロフ氏は同時に、「両国(議会)が批准した唯一の文書」として、平和条約締結後に歯舞、色丹の2島を日本に引き渡すことに同意した1956年の日ソ共同宣言をロシア側が重視する姿勢も明示した。

4 nothern islands of Japan

出所・外務省

「歴代のロシア首脳として初の困難な言及」

 政権に忠実な職業外交官として知られるラブロフ氏の発言は、プーチン大統領の考えを忠実に反映しているとみるべきだ。とくに、日ソ共同宣言を日ロ交渉の基軸に据える路線は、プーチン氏が2000年に大統領に就任して以来、一貫してとってきた立場でもある。

 その意向が如実に反映されたのが2001年3月、森喜朗首相(当時)との間で合意した「イルクーツク声明」だ。同声明は択捉、国後、色丹、歯舞の4島の帰属問題の解決を明記するとともに、日ソ共同宣言を「交渉プロセスの出発点を設定した基本的な法的文書」だと確認した。

 プーチン大統領は当時、イルクーツク会談の直前にNHKとのインタビューで「この宣言(日ソ共同宣言)はソ連最高会議によって批准された。すなわち、我々にとって、これ(宣言の履行)は義務である」と表明した。

 当時の首脳会談でも大統領はこのインタビューに言及し、「歴代のロシアの首脳として初めての困難な言及であったと述べた」と日本側の公式記録に残っている。大統領が当時、この「困難な」決断によって日本との北方領土問題を決着できると期待していたのは確かだろう。

出発点が「ゼロ回答」?

 ところが日本側はこの決断にさほど注目せず、領土交渉は停滞した。日本の対応には落胆しただろうし、当時と比べて今は、交渉を進める意欲が衰えているのではないかと想像される。

 もちろん、日本で安倍政権が安定政権として誕生し、ウクライナ危機をめぐる空白はあったものの、日ロの関係改善を志向しているのはまんざらではないはずだ。それでも領土交渉で、かつて自らが表明した日ソ共同宣言の「履行義務」を超える譲歩をするとは考えにくい。

実はプーチン大統領はくだんのイルクーツク会談直前のインタビューで、「そこ(日ソ共同宣言)には、いかなる条件でそれらの島々(色丹、歯舞)を引き渡すか明記されていない」とも述べていた。イルクーツク声明は同宣言を「交渉プロセスの出発点」と規定したものの、大統領の思惑は当時から出発点がゼロ回答で、「最大限譲歩しても2島」だったのかもしれない。

 その当時と比べて、ロシアによる北方領土のインフラ整備は着実に進んでいる。約3000人のロシア人が暮らす色丹島でも病院などが新設され、昨年7月にはスクボルツォワ保健相が現地を視察した。

 加えて、ロシア社会でウクライナ領クリミア半島の併合以降、ナショナリズムが台頭する現状も踏まえれば、プーチン政権が領土交渉のハードルをさらに上げてくる可能性が大きい。ハードルをクリアするような”果実”を日本側から得られない限り、2島ですら手放すつもりはないとみるべきだろう。

 安倍政権はこうした厳しい現実を前提に、ロシアとの粘り強い交渉に臨む必要がありそうだ。

The Economist記事

ロシア中央銀行(CBR)総裁のエルビラ・ナビウリナは、大学時代に初めて資本主義を知った。「西欧経済理論についての批判」という授業を履修したのだ。近代の中央銀行総裁としては、いささか特異なスタートを切ったと言える。

the president of Russian central bank

ロシア中央銀行のエルビラ・ナビウリナ総裁(写真:ロイター/アフロ)

 ここにきてナビウリナ総裁は新たな矛盾を突きつけられている。ロシア経済は腐敗とレントシーキング*に足を取られ、何年にもわたって停滞を続けてきた。さらに最近は、西側諸国による経済制裁と、原油・天然ガス価格の下落が経済の一層の足枷となっている。原油・天然ガスはロシアにとって最大の輸出品目の一角をなす。

*企業が政府や官庁に働きかけて自分たちに都合のよいように法制度や政策を変更させ、その恩恵に与ろうとする行動。

 だがロシア中銀は有能な官僚が政策を運営しているモデルケースの1つだ。2013年にナビウリナ氏がロシア中銀総裁に就任して以来ずっと、同国経済は厳しい試練にさらされてきた。もし陣頭指揮を取るのがナビウリナ氏でなければ、ロシア経済はなお悲惨な状態に陥っていたことだろう。

2000年から経済政策の中心に

 穏やかな語り口が印象的なナビウリナ氏は、労働階級の出身だ。母親は工員で、父親は運転手だった。

 ロシアが市場経済への困難な移行を進めるなか、同氏は長きにわたり中核的な役割を担い続けてきた。ウラジーミル・プーチン氏は2000年に大統領に就任した際、「1990年代の混乱は一段落した」と宣言した。だが元経済相のエフゲニー・ヤシン氏によれば、経済に関する限り「プーチン大統領は確たる考えを持っていなかった」。

 このため、プーチン氏はオーソドックスな見方をする専門家集団に経済政策を委ねた。その1人がナビウリナ氏だった。ナビウリナ氏は2000年に経済発展副大臣に、2007年に同大臣に就任した。彼女は、この時の経験が、経済に対する自身の取り組みに「最も重要な」影響を及ぼしたと語る。

ロシア経済を襲う2つの危機 外貨準備高とルーブルの為替水準

foreign currency reserves in Russia

出所:The Economist/Bloomberg

 2008~09年に原油価格は下落し、世界経済は停滞した。この危機に臨んでロシア経済は、逃げ足の速い海外のヘッジファンドと個人投資家に依存していることを露呈した。これらの投資家が資金の引き揚げに走る間、ロシア中銀はルーブルの買い支えに動いた。この結果、たった数カ月間で2000億ドル超(約21兆7700億円)の外貨準備を流出させた(図表を参照)。経済全般を通じて貸し出しが減少し、2009年にはGDPが8%縮小した。

ロシア国債への投資拡大を目指す

 こうした状況を踏まえてロシアは、次に訪れる原油価格の下落に備えるべく、2つの改革に踏み切った。第1に、資金の調達先を分散化した。例えばロシア当局は2013年、世界の2大証券決済機関であるユーロクリアおよびクリアストリームにロシア国債の取り扱いを許した。これに伴い、ロシア国債市場に参加する機関投資家が拡大した。英ファンド運用会社アシュモアでファンドマネジャーを務めるジャン・デーン氏によれば、機関投資家は市場の乱高下に左右されることなく、割安感が高まった時に買いを入れる傾向がある。

 ナビウリナ氏に言わせれば、もう1つの安定した資金調達先であるロシアの国内投資市場も厚みを増した。国内投資家が保有するロシアの公的債務の比率は、2013年の1年間だけで66%から70%に上昇した。大手投資銀行の米ゴールドマン・サックスは、ロシア年金基金――ロシア中銀が監督している――が保有する資産は、現在の約600億ドル(約6兆5200億円)から2020年には約2000億ドル(約21兆7700億円)に拡大すると見込んでいる。

 前出のデーン氏によれば、調達先を分散することでロシア経済は、そうしなかった場合に比べて資金不足に悩まされことがなくなった。経済規模を考慮すると、2014~15年に生じた民間部門における資本逃避は、2008~09年と比べて軽微なものにとどまった。2015年にGDPは4%縮小したが、2008~09年と比較すれば健闘した。2015年の原油価格の下落幅は2008~09年より大きかったにもかかわらずだ。

外貨準備の残高維持を優先

 2008~09年以降に起きたもう1つの抜本的な変化は、ロシアの外貨準備高に関わるものだ。原油価格の値上がりを追い風に、同国の外貨準備高は2009~13年に1400億ドル(15兆2200億円)拡大した。現在の残高は5000億ドル(54兆3600億円、GDPのおよそ5分の1)を突破している。ロシアは、この分厚いクッションを支えの一つに、欧米に対抗する外交政策を打ち出した。1998年の時と異なり、IMFに救済資金を頼る必要がなくなったのだ。このような政策は最終的にはロシアのためにならないだろうが、ナビウリナ氏に政策運営の余地を与えた。

 原油価格が下落に転じた時、同氏は外貨準備高を維持すべく、ルーブルの変動相場制への移行を加速した。対ドルのルーブル相場は2015年1年間だけで40%も下落した。このような場合、一般的な対処法はルーブルを買い下支えることだろう。そうすれば一般のロシア国民の購買力を保つことができる。だが、そのような対策を講じれば、ロシアの外貨準備高は再び急減していたことだろう。

 ロシア中銀はルーブルを買い支える代わりに、経済制裁によって打撃を受けていた銀行やエネルギー企業に直接ドルを注入し、対外債務の返済を支援した。

 外貨準備高は財政赤字の穴埋めにも使われた。原油価格が回復するにつれ、ロシア中銀は外貨準備高を改めて積み上げている。5000億ドルの水準にまで回復させるもくろみだ。

銀行支援を柱にビジネスを支える

 ルーブル安に伴って輸入品価格が高騰、インフレが再燃した。その結果、実質賃金は2014年以降10%以上減少した(それでも、プーチン氏が大統領に就任した2000年以降、賃金は3倍に増加している)。

 ロシア中銀はルーブル下落を食い止める唯一の手段として利上げを実施。金利は2014年、17%に達した。これが奏功して、インフレ率は現在7%に低下。ロシア中銀が目標とする4%に向けて改善基調にある。このような(タフな)決定を下すことができたのは「政治状況にかかわらず、ロシアにとって正しいことをする能力がロシア中銀にあることを反映している」と、世界銀行のバージット・ハンスル氏は述べる。

 こうした措置は「痛みを伴うが必要だ」というのがナビウリナ氏の弁だ。痛みを和らげるため政府は、GDPの3%に上る資金を経営状態の良好な銀行の資本増強に振り向けた。経営状態が悪化した銀行の預金者に対する補償も実施した。加えて、銀行に対して、外貨建て債務を危機前の為替レートで再評価することを一時的に許した。ロシアの銀行のバランスシートを実態よりも健全にみせることができる。これが、貸し出しを一層拡大させた。

 さらにロシア中銀は、問題となっている債権について返済猶予や条件変更に応じることを銀行に認めた。IMFはこの動きに対して、慎重ながら歓迎する意向を示した。

 これらの措置はすべて成果を挙げつつあるようにみえる。不良債権は2008~09年の水準を依然下回っているし、与信は徐々に上向きつつある。

 これらの措置を講じるのと同時に、ナビウリナ氏は監視を強化した。「彼女は、以前なら手出しできなかった銀行を追及するための全権を大統領から委ねられた」。MDM銀行会長を務めるオレグ・ビューギン氏はこう述懐する。同氏はロシア中銀で副総裁を務めた経験を持つ。2014年以降、200近い銀行の免許が取り消された。これは全体のほぼ5分の1にあたる。

引き続き多難なロシア中銀

 ナビウリナ氏が様々な施策を取ってきたにもかかわらず、ロシア経済の長期的な見通しは厳しい。同氏に批判的な向きは、ロシア中銀が金融引き締め策を取っていることが、そもそもの原因だと非難する。金融引き締めが投資を抑制しているというのだ。

 だが昨年、ロシア企業は昨年50%の増益を達成した。ルーブル安のため海外収益が急増したのだ。企業は膨大な投資資金を抱えている。定期調査の結果を見ると、メーカーは投資の重大な制約要因として、高金利ではなく政策の不透明性を挙げた。

 ナビウリナ氏もこの見方に同意し、「ロシア経済が落ち込んでいるのは、構造的な要因が主に原因だ」と述べる。同氏が最も懸念しているのは長引く原油価格の下落ではなく、ロシアの事業環境を「いかに迅速かつ劇的に改善させることができるか」だ。この状況が整うまでロシア中銀は、ロシア経済の行方に対して極めて重要な役割を担い続けることになる。

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