5/4日経ビジネスオンライン 福島香織『中国が渇望する「南シナ海有事」に備えよ 日中外相会談、4時間20分の「先」を読む』について

日本人と言うのはどこまでも優しいという気がします。相手の気持ちを忖度して王毅に同情するなんて。小生は8年間中国人と付き合ってきて分かりますが、こちらが相手のことを考えて言ったり、行動すると、中国人はそれを利用しようとします。日本人の善意に付け込む訳です。中国人は日本人が考える以上に強かです。勿論、全部が全部と言う訳ではありません。日本人の価値基準で言うと、中国人の内悪い人は8割、日本人の内悪い人は1割くらいと主観的に思っています。民族的DNAと環境の為せる業でしょう。

岸田外相も叩頭外交だけでなかったようで、良かったと思います。主張すべきは主張しなければ相手に舐められます。中国には「内政の為の外交しかない」と福島氏は言いますが、その通りと思います。「指桑罵槐」、「殺鶏嚇猴」と言った手が良く使われます。日本はそれをよく読み、現象面を見てオタオタしないことが肝要です。

習の軍の実権把握は未だし、軍制改革も失敗というのはチャイナウオッチャーの大方の見方では。ただ南シナ海で事を起こして、陸軍の力を削ごうという見方は気が付きませんでした。前にも書きましたが、人民解放軍の海軍の英文名はPeople’s Liberation Army Navyです。Armyの後ろに Navyが来て陸軍と海軍を併記するのは違和感があります。US ArmyやUS Navy、Japan Ground Self-Defense Forceや Maritime Self-Defense Forceと別にするのが普通では。歴史的には陸軍から派生したものであっても。

鄧小平が起こした中越戦争も敗北したにも拘わらず、国内向けには勝利宣言したとのこと。習もそう考えれば、海軍を使って局地戦を展開する可能性はあります。ただ、陸軍の力を削ぐことにはならないのでは。米軍の介入、日本の後方支援と勝てる見込みはないでしょう。如何に情報遮断しても国民の知る所となります。しかし、経済やITに疎い習のことだから、リスクを考えずに、戦争に進むかもしれません。福島氏の言うように日本も対応を考えておかないと、次は尖閣になります。9条の会の言うことが如何に世界平和に繋がらないかです。

記事

Kishida & Wang

4時間20分に及んだ日中外相会談。駆け引きの先に見えてきたのは、「南シナ海有事」の色濃い影だ(写真=ロイター/アフロ)

 日本の外相・岸田文雄が実に4年ぶりに訪中し中国の外相・王毅と会談した。いよいよ日中関係改善かと期待した向きも多かっただろうが現実はそう甘くない。冒頭、王毅は「もし、日本側が本当に誠意をもってきたならば、中国側は歓迎する」と述べ、「中国の古語に聴其言、観其行(その発言を聞き、行動を見る)と言う言葉がある。今日は外相、あなたがどのような中日関係改善をもっているか、その意見を聞きたい。もちろん、同時に日本が本当に着実にそれを実行するかも見るつもりだ…」と、中国人ですら、何、この上から目線?と驚くほどの高圧的な態度であった。

 しかも以下の四つの改善要求を突きつけた。①歴史を直視、反省し、「一つの中国」を重要な政治基礎とすることを厳守。②中国脅威論や中国経済衰退論をまき散らさない。③経済面で中国を対等に扱い、互恵を基礎に各領域の協力を推進する。④日本は中国に対する対抗心を捨て、地域の平和・安定に尽力せよ。

岸田VS王毅、本命は南シナ海問題

 会食もいれた4時間20分もの会談の中身は報道ベースによると、中国の海洋覇権問題、つまり東シナ海と南シナ海をめぐる両者の応酬であったようだ。産経新聞によれば、岸田は、王毅の反論に対して「立場を述べるだけなら報道官でいい。その上でどうするか考えるのが外相だ」と、かなりキツイことを言ったようだ。中国の外相に何の権限も与えられていないことは当然承知しているだろうに。しかも、王毅は中国の対台湾外交の失策の責を負わされかねない立場にあり、ことさら傲慢な姿勢をテレビ画面で見せつけるのは、彼のきわめて官僚的保身意識の表れだと感じている。

 ちなみに私を含め、私より上の世代の記者にとって王毅は、日本メディアに対しても率直に意見交換をしてくれる「話のわかる官僚」というイメージを持っているだろう。国際会議の場のホテルロビーなどで王毅を見つけて「王毅さーん!」と日本語で呼びかけると、立ち止まって日本語で記者たちの質問に応じてくれることもよくあった。あのころの彼を思いだしながら、今の外相という責任だけ負わされる何の権限もないポジションで、日本に横柄な姿勢を示して、政権への忠誠をアピールするしかない姿を見ると、ちょっと哀れを催す。

 今回の岸田訪中の最大テーマは、喫緊の危機、つまり南シナ海問題ではないかと思う。中国は日本の介入を牽制したい。そのために、岸田を北京に招待したのだろう。その最大のテーマについての話し合いは、報道を見る限り平行線に終わったようだ。それが良かったのか、悪かったのかは最後に述べたい。

まず、南シナ海がどういう状況か整理しておこう。

 南シナ海関連の最近のニュースをざっと見返すと、まず4月25日付の香港紙サウスチャイナモーニングポストが、中国は年内に南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)の軍事拠点建設に着工すると報じた。ソースは解放軍周辺筋で、それによると南シナ海の上空監視を完璧にするための前哨基地にするつもりで、計画では滑走路建設も含まれているとか。中国船による測量がすでに開始され、これに懸念を強めた米国は連日のようにA10攻撃機を飛ばしている。A10は少々被弾しても帰還できる「不死身の攻撃機」の異名をとる対地攻撃専用機だ。米国の本気の怒りがうかがえる。

 だが中国国防部報道官・呉謙は記者会見(4月28日)で、スカボロー礁軍事拠点化計画に対する質問に対しては「私は承知していない。メディアの扇動じゃないか」とうそぶきながらも、「黄岩島は中国固有の領土であり、その主権と安全を守るために各種危機に対応する権利を有する」と言ってのけた。さらに米国が昨年10月来、三度に渡って行っている「航行の自由」作戦に対し「南シナ海情勢を攪乱している」と非難し、「中国に対する政治的軍事的挑発であり空海における不測の事態を招きやすい」と警告している。一方、米国防長官アシュトン・カーターもスカボロー礁問題について「軍事衝突につながるおそれ」に言及。つまり双方が、軍事衝突の可能性をにおわすチキンレース的な挑発合戦に入っている。

 大統領選を控えたフィリピンでは、対中外交も争点になっている。有力候補のロドリゴ・ドゥテルテ(現ダバオ市長)は「祖父が中国人だから中国とは戦争しない」と語る親中派候補。対する、マヌエル・ロハス(前内務自治相)やグレース・ポー(無所属上院議員)は「国際社会と足並みをそろえる」という表現で対米関係強化による中国との対立の方向性にある。フィリピン選挙の結果も多少関係しようが、南シナ海における偶発的軍事衝突というシナリオは十分に考えられるレベルの緊迫度である。

フィリピン、ベトナムとの係争を契機に

 こうした南シナ海危機の状況は、今、突然、降ってわいたものではない。

 スカボロー礁については、2012年のいわゆるスカボロー礁事件(フィリピン海軍の中国漁船拿捕をきっかけに。フィリピン海軍と中国監視船が一カ月以上対峙した事件)がきっかけで、中国の実効支配が進むことになった。

 フィリピン側が国際海洋法に従って提訴して、軍を撤退させたのに対し、中国側は自国の領土であることは明白だとしてこれを無視し、居座り続けた。翌年6月には、スカボロー礁に大量のセメントなどが運びこまれて軍事施設を建設しようとしているのではないかとフィリピン軍事関係者が衛星写真をもとに訴えていた。

 スカボロー礁埋め立て問題の前には、ベトナムとの領有を争うファイアリークロス礁(永暑島)の滑走路建設問題があった。ファイアリークロス礁は1988年のスプラトリー諸島(南沙)海戦によって中国が実効支配下に置き、軍事関係者が常駐し要塞化している。2014年8月にこの環礁の埋め立て造成がはじまり、2015年1月から突貫工事で3000メートル級の滑走路が建設され、2016年1月には民間機の離発着テストが行われた。4月には解放軍の軍用機(Y-8輸送機)が着陸したことが公表された。これは表向き重病の工事関係者を緊急搬送するためということだが、中国がこの滑走路が軍事使用に耐えうるかをテストしたかったということは想像できる。

時を前後して、パラセル諸島(西沙)のウッディー島(永興島)に解放軍の地対空ミサイルHQ-9を配備したほか、J-11戦闘機、JH-7戦闘爆撃機などの配備が確認され、西沙の軍事拠点化も着実に進めて来た。さらに党中央機関紙・人民日報傘下のタブロイド紙・環球時報が南シナ海における海上浮動式原発の建設計画を報じた。ソースは中国船舶重工集団幹部で、空母遼寧を改修したのもこの会社だ。報道では、目的は燈台などの民事用電力としているものの、これをそのまま信じている人はほとんどいない。

 南シナ海で原発が必要なほど膨大な電気需要があるというならば、それは軍事拠点化に伴う需要、あるいは海洋資源開発を進めるつもりだと考えるのが普通だろう。しかも、南シナ海に原発を造る意味というのは単なる電力供給というだけでない。原発の存在を理由に中国が民間機の飛行制限を求める可能性もあるし、実際、原発上空の飛行を安全のために民間機は避ける。そうなると事実上、中国の制空権を認めた、というような既成事実と受け取られる可能性もあろう。

中国には「内政のための外交」しかない

 2015年9月、習近平は訪米時、「南沙の人工島を軍事拠点化するつもりはない」と言明したにもかかわらず、南シナ海の人工島の軍事拠点化への布石を着々と打っており、そのことが11月のASEAN首脳会議の場で指摘されると「習主席は軍事拠点にしないとは言ったが、軍事施設を建設しないとはいっていない」(劉振民外務次官)という詭弁を弄した。

 4月頭には解放軍制服組トップ(中央軍事副主席)の范長龍がファイアリークロスを視察しており、「軍事拠点化しない」「民事利用」といった建前をもはや中国は守ろうともしていない。私の個人的な見解を言えば、挑発というレベルを超えて、どうみても中国は「紛争」「危機」を起こしたがっている、すでにそのための作戦は静かに進行中だろう。

 では中国は、なぜここまで、米国やフィリピン、ベトナム相手に危険な挑発をするのか。不測の事態、偶発的軍事衝突が起きて、中国が得をすることがあるのだろうか。

 ここで、重要なのは、中国には内政があって外交がない、あるいは内政のための外交という発想しかない、ということである。内政というのは簡単にいえば権力闘争である。中国の権力闘争が激化していることは各メディアで繰り返し述べられていると思うが、今一番、危ういのは軍制改革の行方である。

 習近平政権は年初から四大総部(総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部)を解体し、新たに作る15の専門部局に機能を分散、さらに陸軍中心の七大軍区から、陸海空が同等の存在感を発揮する五大戦区に大幅な軍制改革を行った。また、4月20日、中央軍事委員会統合作戦指揮総指揮(コマンダー・イン・チーフ)の肩書を自ら名乗り、迷彩服で統合指揮センターを視察。軍の総帥権は中央軍事委員主席にあり、習近平はその地位にあるのだが、さらに作戦総指揮を自らとるという姿勢を打ち出した。

 この軍制改革は、建前上は強軍化が目的であるが、実際のところ習近平個人の軍権の掌握が目的であるとしか思えない。軍令と軍政を分けないで軍が正常に機能するのか、とか、習近平に戦略や戦術が分かっているのか、といった問題以前に、左手で敬礼してしまうほど軍のしきたりにうとい習近平が自ら作戦指揮を執るなど、強軍化とは逆走しているだろう。

また習近平は政権のトップになってから、徐才厚、郭伯雄といった江沢民政権時代の権力を継承する軍長老を汚職摘発の名目で排除。その一方で、自分のお気に入りの将校を出世させてきた。趙克石や李暁峰、王安竜、苗華、蔡英廷といった面々で、多くが南京軍区出身、特に第31集団軍出身である。第31集団軍は通称アモイ軍とよばれ、習近平が福建、浙江省勤務にあった時代に人脈を築いた。だが、アモイ軍はいわゆるB級(乙類)集団軍。A級(甲類)集団軍よりも格下に見られている。

 このA級、B級は革命戦争中の戦績や活躍によって振り分けられている。B級集団軍出身者は解放軍内部的には“弱い格下部隊出身”という目で見られがちである。軍権掌握のために自分と仲のよい将校を出世させるやり方は、中国の指導者では当然の手法であるが、習近平の場合、“実力不足の将校がコネで出世”した感が丸出しで、軍内では不満のムードが蔓延している。商品紹介記事しか書けない窓際記者が、社長が変わったとたんいきなり外信部長とか政治部長になって、あれこれ指示を出すようになったら、生え抜きのスクープ記者たちは素直に従えるか? そういう不満である。

 たとえば、苗華は第31集団軍から陸軍政治畑を歩いてきて、2014年6月蘭州軍区政治委員となったが、その半年足らずでいきなり海軍の政治委員となり2015年7月には海軍上将になっている。陸軍中将からいきなり海軍上将、しかも人事権を握る政治委員となれば、海軍内で不満は起きないだろうか。

 七大軍区を五大戦区に塗り替える改革も、事実上、失敗と見られている。この軍制改革は、習近平に敵対する徐才厚派閥の多い瀋陽軍区と郭伯雄派閥の残る蘭州軍区の解体であったが、結局、瀋陽軍区と蘭州軍区は北部戦区と西部戦区としてほぼもとの形のまま残った。それだけ陸軍内の習近平改革に対する抵抗が強かったということでもある。

「フルシチョフの失脚」になぞらえて

 つまり、今のところ習近平の軍制改革は順調でなく軍内の不満はかなりくすぶっている。この状況を一発逆転する一番簡単な方法は「局地的戦争」で、習近平体制の軍で戦果を挙げることである。特に、海軍に具体的な戦果を上げさせ、陸軍の利権・権力を削ぐには海戦である。だから南シナ海危機を習近平は望んでいる、と私は思うのだが、どうだろう。

 これは私の思い過ごしであればよいのだが、例えば最近、日本に移住を表明した香港在住の著名軍事アナリスト平可夫も、こんな指摘をしている。彼は習近平の軍制改革を1964年のフルシチョフの失脚の原因となった旧ソ連の軍制改革になぞっている。フルシチョフは1955年から大幅な軍のリストラを行い1964年6月にはついに陸軍司令部を廃止する。それが軍の不満をよび、十月政変の直接の導火線となった。同じように、今回の軍制改革はおそらく習近平が決定的な政治的危機をもたらすことになると予想している。

 さらにキューバ危機を引き起こしたフルシチョフと、南シナ海で強硬な軍事拠点化を進める習近平は、ともに米国を見くびり、不必要に米国を刺激し、自分の力量を過大評価しているという点でも共通していると指摘している。キューバ危機は回避できたが、同じようなきな臭さが南シナ海に蔓延しているという認識は持つべきだろう。ただ平可夫は、南シナ海や東シナ海で限定的な衝突が発生すれば、むしろ軍事的メンツをつぶされるのは中国の方で、それが、軍の習近平に対する不満爆発の導火線となる、という見立てを示している。

もう一つ、習近平が局地的な軍事衝突を望んでいるのではないか、と想像するのは、鄧小平の先例に倣おうというのではないか、という見方だ。

 1979年の中越戦争、それに続く1984年の老山を戦場とした中越国境紛争は、鄧小平の軍権掌握と軍制改革推進が、その目的の一つであるという説がある。文革終了によって復活した鄧小平は、文革で混乱した軍の整理に着手するが、その過程で自分が信頼する第二野戦軍出身の将校を重用、その人事の正当性を戦争に勝利するという形で認めさせることが軍権掌握の早道であった。

 鄧小平は旧ソ連に強い敵意を持っていたが、さすがに大国ソ連に戦争を仕掛けるのは文革の疲弊が抜けきっていない中国には荷が重いので、その手先とみなすベトナム相手に“懲罰戦争”を仕掛けたとも言える。解放軍はベトナム民兵にぼこぼこにやられるのだが、国内では勝利宣言を行い、結果としては軍権掌握、軍制改革の推進力となった。さらに軍制改革と軍の近代化を確かめる場として84年に中越国境紛争を起こす。激戦ながらなんとか雪辱を晴らし、この勝利をもって鄧小平指導体制が確立することになる。

 こういう先例があるものだが、習近平も同じようなシナリオで動く可能性はあるだろう。習近平が抜擢した軍の幹部たちにも中越戦争、中越国境紛争経験者がけっこういる。

他人事ではない。妥協なく備えよ

 そういうふうに考えると今の南シナ海は非常に危機的な状況であると認識すべきである。キューバ危機のように、ぎりぎりのところで回避されるかもしれないし、中越戦争のように本当に局地戦が起きるかもしれない。だが具体的なことを少しは想像しておくことだ。

 たとえば、南シナ海危機が本当に起きたとき、安保法制の存立危機事態に相当するとみて、米軍やフィリピン軍の軍事行動に同盟国として参与するか否か。参与するとしたらどのレベルまでか。南シナ海問題に日本は無関係だと判断して静観の構えをすれば、結果としてどういう事態が想定されるか。

 日本にとってもシーレーンである南シナ海が中国の軍事拠点化すれば、これは日本の存立危機に通じる話であるし、次に中国の軍事実力によって実効支配のターゲットとなるのは尖閣諸島だろう。私は、他人事にしてはいけないと思っている。

 今回の外相会談の詳細はまだ明らかになっていないが、南シナ海の問題について、日本が妙な妥協をしていないのならば良かった。そのことで日中の政治的関係改善が遠のくことになっても、長い目でみれば、それは地域の平和に利することになるだろう。

良ければ下にあります

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兵頭二十八著『「地政学」は殺傷力のある武器である。』について

日本の地政学の研究は奥山真司氏が有名です。エドワード・ルトワックの本を翻訳し、最近も『中国4.0 暴発する中華帝国』を刊行しました。ルトワックへの6回にわたる連続インタビューをもとに作られた本とのことです。こちらも読んでみたいと思っています。

さて、本書は兵頭氏が地政学について分かり易く解説したものです。マハンの凄さと時代の制約を受けた限界について触れられています。日本の採るべき道についても。

スパイクマンの第二次大戦後の日独への扱いの戦中での予言は、米国の世界観構築の層の厚さと言えるでしょう。

機雷の凄さについて、日高義樹氏も『中国、敗れたり』で触れています。衛星操作に依らない敵艦自動識別・自動浮上できる機雷を中国沿岸に米潜水艦が敷設すれば、中国は輸入・輸出ができなくなり、戦略物資(特に、石油)の輸入ができず、戦わずして負けるというもの。大慶油田は質が悪く、水も多く出ますので、継戦能力は低いです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%85%B6%E6%B2%B9%E7%94%B0

中国がマラッカ海峡を通らず、インド洋に出口を持つため、ミヤンマーに港湾を造ろうとする意味が良く分かりました。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%82%A6%E3%83%94%E3%83%A5%E6%B8%AF

パールハーバーはセカンドアタックさせなかったことが悔やまれます。飛行総隊長の淵田三津雄氏もそう述べています。後講釈ですが、ハワイを押えておけば(日本統治)戦局も変わったのではと素人ながら思いました。

本書を読んで、筆者が大切と考えているのは

①ブロケード(海上封鎖)

②位置(ジブラルタルを押えた英国)

③後続支援できる生産体制・・・これが一番大切。1次、2次大戦の米国を見れば分かります。

④マッキンダーの独鉄道網への懸念。これも空からの攻撃で払拭された。

⑤石油の運搬路としての河川の活用

⑥100オクタン価ガソリンの大切さ。戦闘機の能力に差。

面白いですから、是非本を手に取って読んで戴ければ。

内容

①P.66~70

こんなにも先端的な実用工学を山のように蓄積しているフランスが(ナポレオンが、と言い換えてもいいでしよう。一時ウェストポイントにもナポレオン熱が風靡しました)、なにゆえに英国に圧倒されてしまったのか?

そこを、自分よりも若い海軍士官たちに説明ができないようでは、海大で先生面などはできないぞとマハンは考えたに違いないのです。

19世紀後半のアメリカ合衆国が近未来で直面し得る最強の仮想敵も、やはり大英帝国の海陸 戦力でした(その形勢は1920年まで続きます)。

当時英国は、カリブ海のあちこちに領地を保持しており、好機を捉えれば、いつでもその影響力を「中米運河」の工事候補地(パナマに決まって起工されるのは1904年ですけれども、運河が開鑿されることじたいは早くから確定的でした)に及ぼす可能性がありました。

メキシコ湾やペルー沖で何年も海上勤務してきたマハンには、それはアメリカにとっての悪夢だと信じられました。なぜなら、フランスが英国に勝てなかった理由のひとつが、〈ジブラルタルに英海軍が根拠地を持つことを許していた〉ことにあったと、彼には思えたからです。

フランスの大西洋岸にある大軍港ブレストの艦隊と、地中海岸の大軍港トゥーロンの艦隊とは、この英軍ジブラルタル基地によってまったく二つに分断されてしまって、常に一体集合的にそのどちらかに攻めかかってくる英国艦隊に対しては、フランス側は常に少数の一部分艦隊で立ち向かうしかなく、最初から勝ち目は薄かった     とマハンは結論しました。

なにしろ、フランス海軍を葬り去ってナポレオンの英国征服を不可能にした「トラファルガ—海戦」は、ジブラルタル軍港を根城に仏海軍を監視していた英国ネルソン艦隊が、ジブラルタル軍港からわずか50キロメートル先の海面で、もっと遠くから集まってきたフランス艦隊を「邀撃」するといった必勝パ夕–ンだったのです。幅14キロメートルしかない海峡を通航する敵性艦艇は、すべてジブラル夕ルの山の上からはお見通しでした。もしもパナマに英軍が「ジブラル夕ル要塞」を建造してしまったなら、アメリカの未来はどうなるでしょうか?

将来のアメリカ合衆国は大西洋にも太平洋にも艦隊を維持しなくてはなりません。しかしその艦隊をいつでも一体に集合できるようにしないならば、トー夕ルで優勢な英国海軍に対する勝ち目は無くなります。中米運河を「アメリカにとってのジブラル夕ル」にさせてはならないのです。そのためにはカリブ海と中米を、早くアメリカが制圧しておく必要がある、とマハンには思われました。

中米を英国に支配されたくなくば、カリブ海域におけるスぺイン支配地に英国の手が伸びる前に、極力、合衆国の手中に回収して軍事基地化しておくのが得策です。

この目的意識のもと、1898年にマハンが盟友セオドア•ローズヴェルト海軍次官を応援して起こさせたのが米西戦争です。米西戦争の結果、カリブ海での英軍勢力は米軍勢力に対して劣勢となって、英帝国は中米運河の支配を諦めるという流れができました。

太平洋から、英国の同盟者となるかもしれない外国海軍が、中米運河に接近するためには、 途中で貯炭場を利用しなければなりません。だったらその貯炭場も、米国が支配しておかなくてはまずい。この問題意識から、1890年の『海上権力史論』いらいマハンは「ハワイを併合せよ」という論陣を張り、やはり米西戦争中の1898年にそれが実現します。さらにスぺイン領であったフイリピンも奪い取って、シナ大陸と蒸気船で交易するための太平洋上の中間貯炭場を確保し終わりました。

マハンは、西部開拓ブームや、それに連動する鉄道ブームには、心の中で大いに反発をしていたろうと想像されます。このブームが続く間は、アメリカ人民は誰も海上貿易(特に対シナ貿易)の将来などには注意を向けないでしょう。しかしマハンが見るところ、英国が17世紀以降に強大化できたいちばんの理由は、スペインやオランダやフランスが不十分にしか実践をしなかった、商船隊と軍艦と私企業主体の海外市場開発を連動させる富国強兵策を、意図的に推進したことにあったのです。これを大衆に分からせることも『海上権カ史論』の意図のひとつでした。

第1章でも述べた如く、スペイン政府は、新大陸にせっかくの殖民地を得ながら、金銀をせっせと持ち帰らせるばかりで、現地と本国での私企業(製造業•運送業•小売業)の発達を妨害しました。おそらくその理由は、イベリア半島から苦労してイスラム教徒を追い出した、じぶんたちの国家建設過程にあったのでしょう。サラセン人を敗走させ、その財を奪った者が領主階級となって農民の上に君臨していたのがスペイン帝国でした。彼らの気風として、モノを作ったり売ったりするビジネスなんか、考えられるものじゃなかったのです。

オランダ人は国土が狭いので、遠い海外の殖民地を開拓するしかないという覚悟は決めていました。しかしオランダ人は、ライン川の河口港という一大販路も擁していた地勢から、どうしても発想が商人的になり、つかの間の平和を得ると、すぐに陸海軍への出費を減らして、効率.的に儲けることだけに集中しようとするのです。このような商業貴族たちからなる政府では、片時も戦争を忘れないで海軍力を整備しているイギリス人たちとの仁義なき競争において、敗者となるしかありませんでした。アメリカ人は、オランダ人のようになってはいけないと、マハンは『海上権カ史論』で議員さんたちに警告したのです。

フランス人は国土全部が恵まれた農地で、本国での生活の満足度が高いためか、たとえば<イギリスの息の根を止めてやる〉ような海外指向の大戦略に思い至りません。かつてドイツ人のライプニッツがルイ14世 (1661 年に宰相マザランが死んだあと半世紀以上もフランスの対外策を親裁しました)に進言したことがありました。〈隣国オランダと直接戦争するよりも、もっと得な策があります。フランスの陸海軍でエジプトを占領すればいいのです。さすればフランスが地中海を支配できるので、オランダの海運業は衰退し、やがてオランダの東方の宝庫もフランスの手に落ちてきます。直接戦争はしないのですから、インド洋で築いたフランス資産が破壊されることもありません〉と。

ルイ14世時代のフランス軍ならば、この遠征も楽に成就できたのに、帝王はそのコースを採用しませんでした。後にナポレオンがライプニッツと同じ結論に達したときには、すでに英国が、先行してインドまでの中間海軍基地(マルタ、キプロス、スエズ、セントへレナ、喜望蜂・・・)の布石を終え、盤面をすっかり支配しており、フランスには勝ち目はなくなっていたのです。フランス海軍の軍港は地中海ではトゥーロンの1箇所にしかなく、英海軍の根拠地から交通線の脚面を簡単に妨害されました。

マハンは、もしも太平洋のガラパゴス諸島や、カリブ海の島嶼に英軍が基地を作ると、米艦隊が中米運河を利用するときに、側面から牽制されてしまうと読者に注意を喚起しました。逆に米国こそが英国のように行動しなくてはならないのです。太平洋の島嶼を補給港として押さえ、シナ市場をアメリカ商船が支配することは、西部開発よりも大事です。それこそが、アメリカ合衆国が世界の富豪になるための最短コースなのです。

②P.235

米国はドイツと日本を手離すな

スパイクマンは、如上の大局的把握に基づいて、第二次大戦の結末をその渦中において鋭く予測し、アメリカ合衆国が取るべき針路をアドバイスしました。

まず、〈枢軸が敗北するのは決まっているものの、ドイツを無力化してはならず、戦後のソ連と拮抗させなくてはならない〉〈日本の敗戦後、ソ連は国境をめぐってシナと対立関係に入るだろう。リムランドであるシナは、かならず強大化する。ソ連は押されて、中央アジアを支配し続けられない。米国はシナによる日本併吞を阻止せねばならず、むしろ進んで日本と同盟することで、シナと拮抗しなければならない〉と説きました。

こんなことを、アメリカと日独との間の戦争が正式スタートしたばかりの1941年12月31 日に、「アメリカ地理学会」の質疑応答の中で公言しているのです。もちろん学者仲間から総反撃をくらいましたが、戦後にアメリカ政府が服用したのは、まさにスパイクマンの処方箋でした。

戦前のわが外務省に、スパイクマンの米国東部政治エリート層に対する影響力を偵知できるだけの情報収集力や人脈があれば、もうちょっとマシな終戦工作が可能だったかもしれません。

③P.295~305

真珠湾の大へマ?

日本海軍の情報系の幕僚たちが常に優先的に調べ上げなければならなかったことは、米軍は 対日有事のさいにどうやって油脂類を前線まで補給するのか、そのルートについてでした。それが分からなければ、敵の燃料補給線を遮断するプランも立てようがないわけです。しかし、日本海軍の中で燃料問題に最も詳しかった「機関科将校」たちが、日米開戦のプランニングには参画させてもらえなかったことが象徴しているように、日本海軍の首脳には、それについての関心は皆無でした。

日本の軍人は、石油のために国運を賭けて開戦すると叫びながら、敵軍の石油のことなどどうでもよかったのです。このために、日本にも実はわずかにあった勝利の可能性が、ゼロになったと思われます。

対米戦争が日本の完敗に終わって、徐々に、日米開戦時の米海軍幹部の回想録も発表される ようになり、その内容を聞き及んだ日本人たちが意外に感じたことのひとつは、〈真珠湾の油タンクを爆撃しなかった日本人は馬鹿だ)という論評でした。

1942年以降の中部太平洋作戦を指揮したニミッツ元帥(1885〜1966)が、1960年に出版した『The Great Sea War』の中で、〈カリフォルニアから1年以上もかけて運んだ重油450万パレルが、ことごとく真珠湾の地上タンクには入れてあったのに、日本軍はそれを攻撃しないで見逃した。もしその燃料が爆撃で炎上させられてしまっていたら、当時の米国は欧州へ大量の石油を送る約東をしていた関係上、真珠湾に再び大艦隊への重油補給機能が回復されるまでには数か月もかかり、その間、日本軍は西太平洋ではほぼフリーハンドが得られただろう〉と示唆したというのです。

この地上重油タンクは、巨大な茶筒蓋状の鋼製貯槽(1個の容量は7000トンくらいと思われるものの寸法データは調べても出てきません)で、当時の写真からはタンクの屋根は固定屋根だったように見えます。オアフ島の真珠湾軍港の潜水艦埠頭の東からヒツカム陸軍飛行場の北縁にかけて、これが相互に100フイート以上の間隔をあけて26基、配置されていました。

ニミッツは1940年には米海軍の埠頭施設や工廠を総括するポストでしたから、ハワイの重油貯蔵については何から何までも承知していました。また、平気でデタラメを書けるような「豪放軍人」でもありません(緻密な事務に向かないキヤラクターの将官は、日米どちらでも部内の頂点をきわめられないようになっていました)。

太平洋艦隊司令官としてニミッツの前任者で、41年末のハワイに所在したキンメル提督も、 <真珠湾で地上タンクが燃やされてしまっていたならば、ハワイからは大艦隊に対する作戦支援がもはや不可能となったので、いったんは、全艦隊が本土西海岸まで戻る必要があっただろう>と証言しているそうです。

これは、あり得るでしょうか?

確認しましょう。

1941年12月7日(現地時間)時点で、真珠湾の地上には26基の大容量重油夕ンクが存在し、すべて潜水艦阜頭に隣接していました(ただし潜水艦は軽油で走るものなので、当該貯槽と直接の関係はありません)。この重油タンク群は1939年秋に建設が始まり、1941年10月にはそのうち2基だけに対空迷彩として、ピルデイングに見せかける手の込んだ偽装がなされており、他のタンクも地面色の塗装だったのだと伝えられますけれども、1基1基があまりに巨大ですので上空からはまるわかりでした。位置は、陸軍のヒッカム飛行場からも、海軍のフォ-ド島飛行場からも、目と鼻の先です。ハワイ空襲に参加した搭乗員は、全員、そのタンク群を視野におさめたでしょう。

450万バレルという合計貯油量は、ハワイより西側の太平洋での米艦隊の作戦を2年半まかなうのに足るものでした(この数値は80年代よりも後から流布したもので、ニミッツが明かしたものではありません)。

タンクの側壁のスチールの厚さは、最上部のいちばん薄くてよいところでも「4分の1」インチから1インチ強はあったと想像されますので、当時の日本海軍機が装備した7. 7 mm機銃 (九九式艦上爆撃機はこれ2梃で前方を射撃できた)も、20mm機銃(これは零戦だけが装備)も、側壁の貫通は無理ではなかったかと思うのですが、連合艦隊の戦闘詳報によれば1942年4月9日にセイロン島のトリンコマレー軍港を空母『飛龍』の艦上機で空襲したさいに、重油槽×1を制空隊、すなわち零戦が銃撃炎上させたという記録があります。

重油タンクの天板の厚さは見当がつかないものの、空襲中に激しく射ち上げられた米軍の防空火器(12. 7mm機関銃から3インチ高射砲まで)の外れ弾や落下破片によってその天板が損傷を受けたという話は聞かれません(付近住民の間には落下物による死傷者が発生しています)。

一般論として、重油は、たとい空気と接していても、常温では容易には着火しないものです。パールハーバーの重油の夕ンクの中に60kg以上の日本海軍の爆弾が飛び込んで爆発すれば、 火災(もしくは大爆発)が生じたでしょう。しかしタンク1基の火災が、他の夕ンクも延焼さたかどうかは分かりません。

41年当時の空撮写真を見ますと、すべてのタンクとタンクの間にはタンク1基分以上の間隔がとってあって、しかも1基ごとに高い土手で地面を仕切っています。こうした防油土手は、タンクの内容液全量が漏れてもその外へは溢れ出さぬ高さに設計されていたはずです。

したがって日本機は26基のタンクにひとつひとつ爆弾を正確に配分せぬ限り、真珠湾所在の重油の全量を焼亡させてしまうことは不可能だったでしょう。

空母『翔鶴』と『瑞鶴』の艦上攻撃機隊と艦上爆撃機隊は、他の4隻の母艦飛行隊よりも技術が未熟だというので、真珠湾空襲時には対艦ではなく対地攻撃任務を割り当てられていました。この空母2隻分の艦攻や艦爆がよってたかって上手な爆撃を加えた場合は、貯槽26基を全部燃やしてしまうことはできたと思われます。

ただし、そこには悩ましい問題があったのです。それだけの有力な攻撃力を使って、ヒッカム飛行場やフォード島の海軍格納庫内や飛行場にズラリ並んでいる四発重爆撃機B -17や長距離哨戒飛行艇カタリナや単座戦闘機P—40の上に少しでも多くの破片爆弾を雨下させなくても、 よかったでしようか?

敵戦闘機が地上で撃破されれば味方の第二波や、第二次攻撃隊(これは実行されず)は迎撃を 受けないですみました。また、もし敵の大型長距離機を討ち洩らせば、それが帰路の空母艦隊を発見して、大きな仇を為すかもしれないのです。

当時の貧乏だった日本人の目には、工業的な付加価値のかたまりである新鋭航空機300機 を爆破してやれるチャンスこそがあまりにも貴重であると信じられたのではなかろうかと思われます。

真珠湾攻撃を計画した日本海軍の作戦参謀は、41年末の時点で米海軍が重油を安全な地中に 貯蔵していないはずはない、とも考えていたようです。

日本海軍では1914年以降、重油の蒸発損失をなくし、かつ、空襲にも脆弱でないものにしようと考えて、備蓄タンクを地中式、もしくは覆土式にするようになっていました。

ですから<ハワイ基地の地上に見えているタンク群を全部破壊しても、地下には別の貯蔵タンク群があって米海軍は痛痒を感じまい。もしかすると地上タンクは既に空に近い状態で、 せっかくの爆弾の無駄となるだけかもしれぬ〉と日本海軍の側で勝手に疑っていたとしても、それは無理はないです。

真相は、1991年の冷戦終了後に秘密が解除されて、一部があきらかになりました。オアフ島内の「レッドヒル」と呼ばれる丘陵地帯の地中100フィー卜のところに、1940年12月から海軍少将ニミッツの差配によって、たしかに総計20基もの巨大地下貯油槽が、極秘裡に築造されつつあったのです。それは全体で重油540万バレル+軽油60万バレルを貯蔵できるもので、すべてが完成したのが1943年9月だったといいますから、41年末の時点で一部は概成していたでしょう。日本海軍は、この大規模工事の「噂」を耳にしていたのかもしれません。

それでも、上述のジレンマにもかかわらず、もしも数機の「九七艦攻」が60kg爆弾複数を夕ンク群の上にバラ撒き、うまい具合に重油が全部燃えてしまった……としましよう。

米国指導層の筆頭の関心事は英本国をドイツに支配させないことでしたので、日本およびドイツとの戦争状態(12月11日にドイツから対米宣戦)が発生して以後は、パールハ-パーへの450万バレルもの重油再補給などは当分、後回しとされ、英本国およびソ連への油脂援助(ソ連向けは41年8月から本格化していました)に全力が傾注されたことは疑いありません。

米国内では早くも1941年9月25日に、陸海軍とF•D・ローズヴエルト大統領が、〈まずはドイツを敗北させるべし。そうなれば日本も、やっていけなくなるだろう〉という戦略見通しで一致しているのです。

ソ連への油脂搬入は、夕ンカーでイラン南岸(おそらくホルムズ海峡に面したバンダルアッバース港)にまず揚げ、そこから鉄道貨車でカスピ海南岸へ輪送しなければなりませんでした。日本の空母艦隊は、シンガボールを根城にして、ハワイ基地から米空母艦隊が出撃のできないでいる半年前後の間、インド洋を常続的に制海し、1隻の米英タン力―/貨物船もインド洋側からはホルムズ海峡に近づき得ぬようにできたでしよう。すると、どうなったでしょうか?

第4章でも解説しましたスターリングラード市(およびカフカス地方からパクーにかけて)のソ連軍は、カスピ海およびボルガ川を経由する米英両国からの補給品(特にトラック用燃料)を42 年1月以降は受け取れなくなったでしょう。その結果、42年6月発動のドイツ軍の「青作戦」 は、史実よりも弱い抵抗を排除するだけでよくなって、ドイツはグロズヌイ油田と、最重要水運結節点のスターリングラードを占領して、独ソ戦の流れを変えてしまったかもしれません。

もちろん米海軍も座視してはおらず、南アフリカのケープタウンに根拠地を構築して、大西洋艦隊所属の空母をインド洋へ差し向け、インド洋で日米間の初の空母同士の海戦が生起した可能性もあるでしょう。

アマチュアは戦術を語り、プロは補給を気にする

マハンは、帆船が汽走船に変わったことで、貯炭場の平時からのグローバルな確保が海軍の遠距離作戦能力を左右する時代になっているのだと、政治家たちを啓蒙しようとしました。第二次大戦は、石油時代でもそれがあてはまることを痛感させます。

石炭貯蔵所と違って、重油タンクは砲爆撃によって意図的に着火させやすいので、むしろマハン時代よりも防禦の配慮が必要となりました。

もし日本海軍が、ハワイの地上重油タンク群こそは米国太平洋艦隊の一大弱点であると見抜けたのならば、空母機による真珠湾攻撃の代わりに、潜水艦から発進させた特殊小型水上機によるタンク群への小型爆弾の投下と、潜水艦に特設させた8〜12インチクラスの長距離砲による攪乱砲撃を組み合わせた「ミニ奇襲」が選択されたかもしれません。じっさい英海軍は戦間期に潜水艦に12インチ砲を搭載して、発射後30秒で潜行する実験に成功していましたし、フ ランス海軍も1929年に潜水艦に8インチ連装砲塔をとりつけて、7マイルまで照準が可能であったといわれているのです。

7000トン容量のタンク1基の建設には、戦前の日本の場合ならば1年以上もかかったようです。米陸軍工兵隊の能力ならば、数か月で再建できたでしよう。

それが完成するまでの急場しのぎには、カリフォルニアから重油満載の油送船をハワイ、サモア、豪州方面の諸港へ派出し、そこで「浮かぶ貯油タンク」として待機させておく方法もあったはずです。なにも専用のタン力ー船や給油艦でなくとも、量産型の貨物船を小改造しても当座は間に合ったでしょう。

ここでまた仮に、ハワイ軍港の補給基地としての機能が一時的に麻痺したとしましょう。そのおかげで開戦後の半年から1年間、マレーや蘭印からの日本の石油還送がまったく妨害されることがなくなったとしたら、日本は内地に何百万トンもの原油を余計にストックすることが、可能だったでしょうか?

蘭印だけでも、開戦直前の時点で日量17万バレル=2万7030キロリッ夕―が生産されていました。かたや1941年度の軍用も含めた国内石油消費量は、42年5月に海軍省軍需局が作成した「本邦油槽船発達経過•概要」という資料によれば500万キロリッター、すなわち 1日に1万37 00キロリッターでしたので、もしも蘭印石油を全量内地へ持ち帰れたとしたなら、国内で消費をし続けたうえに、消費したのとほぼ同量の備蓄まで積み増せたという皮算用になりましょう。

しかし、それは実現できなかったはずです。まず、それだけの油を溜めるタンクが、内地にはなかったでしょう。また、それだけの原油を日本本土に持ち帰り得るタン力―を、日本は開戦前に整備していませんでした。19 3 9年に日本が保有していたタンカーは合計43万トンで、 これは日本の全船舶の8%に相当したそうですが、同じ年に、米国は280万トン(全船舶の24%、英国は326万トン(15%)もの夕ンカーを動かしていたのとは、大違いなのです。 迂闊にも大量整備を怠った希少で貴重なタン力ーを、米潜の雷撃から守るための措置も、連合艦隊は講じませんでした。トラック島やパラオ島の陸上の貯油施設が容量不十分であったために、動かすことのできる油槽船を何隻もいつまでも軍港内に浮かべてタンク代りに使わざるを得ず、それを米艦上機のいっぺんの空襲ですベて沈められるといった、二重にも三重にも無駄な戦争資源の運用をしていたのでした。終戦までには110隻もの日本のタン力ーが敵潜水艦によって沈められているそうです。貨物船の運航を打ち合わせるときに用いた日本の暗号まで、米海軍によって解読されていました。

④P.316~317

geopolitics-1

⑤P.327

geopolitics-2

⑥P.328~331

対儒教圏の理想的バリアーとなるハイテク機雷

日本のエネルギー環境が、以上述べました太平洋航路の活用によってこれから好転すると見られるのに比し、中共のエネルギー安全保障は、お先真っ暗です。

中共が経済成長する過程で、中共はエネルギーと食料のアウタルキー(国内自給自足体制)を失いました。ここに彼らのリカバー不可能な弱点ができてしまいました。

中共は2030年までに新たに110基もの原子力発電所を建設して運用開始するつもりで います。が、フランスにおける先行実験が教えているとおり、いくら原発を増やそうとも国家は石油燃料消費をゼロにできるものではありません。特に陸海空軍にとっては、石油は今も血液と同然です。

げんざい、中共が輪入したり輪出したりする必要のある物資の96% (重量換算)もが、海の上を運ばれるようになっております。

空輸や、陸上国境越しに交易されている物資は、重量換算では4%しかありません。これは何を意味するのか。

いまや中共は、「機雷戦」によって自滅するしかない体制となってしまっているのです。 日本では先の対米戦争の末期に撒かれた機雷を戦後に取り除く必要があって掃海部隊が最初に再建され、いらい一貫して機雷戦関係の戦技が磨かれてきています。もし中共軍が日本列島の外周に機雷を撒こうとしても、シナ沿岸ほど遠浅ではないので、「繋維機雷」という面倒なシステムにする必要があり、それは掃海隊にとっては除去は容易です。

また米軍も、冷戦中にもついにソ連が模倣することができなかったハイテク機雷のラインナップを複数、有しています。

かたや中共海軍は、彼らの遅れた技術力では探知が困難な米海軍の優秀潜水艦を首都北京に 近寄せないために、対米有事には漁船まで総動員して手当たり次第に数十万発の機雷を海中に 投入させ、黄海と東シナ海は機雷だらけにしてしまうつもりです。

シナ大陸の沿岸は、河川が吐き出す泥土のために、どこまで行っても遠浅の海です。安価でしかも非常に探知され難い「沈底式機雷」にとって、天津や上海ぐらい「封鎖」しやすい港はないでしょう。そんな機雷が、有事になれば、敵と味方の双方によって、無数に撒かれてしま うのです。

げんざい中共海軍は、沿岸のあちこちに潜水艦用の新根拠地を増やしているところです。が、今日のハイテク機雷は、ごく少数でも、それらの軍港への潜水艦の出入りをまったくできなくしてしまえます。米軍と自衛隊は、「水中ロボット」を使って繰り返し、対潜水艦用の機雷を敷設するでしょう。中共海軍には、それを排除する技術はありません。

中共がずうずうしくも国際海洋法を無視して領有を主張している南シナ海域でも、中共から領海主権を守らなければならない沿岸諸国が、おのおのの自衛のための機雷を敷設するでしょう。血迷った中共がこれらの諸国を攻撃すれば、これらの諸国は、マラッカ海峡、スンダ海峡、ロンボク海峡、マカッサル海峡、バラバク海峡、ルソン海峡、トンキン湾を、機雷によって封鎖してしまうことができます。

多数の機雷が敵味方によって敷設されますと、揚子江の出入用航路の部分だけでも1〜2年では掃海され得ません。中共は、石油の搬入を断たれて、軍隊の機能がまず停止し、軍隊がバックアップしている警察とともにそのまま「軍閥」化し、国内各地に反北京の暴動が起こって、いくつかの軍閥支配区の割拠状態が生じ、そのうちにまた、「ロだけ近代指向」の儒教専制的統一政体に収斂していくことでしよう。シナの地理が変わらぬ限り、シナの歴史も同じことの繰り返しです。かつて辛亥革命に手を貸してやった日本人には、身にしみているでしょう。 中共が長期戦の構えを取ろうが、短期で屈服しようが、機雷は、中共を包囲し続けます。

沿岸部だけに8億人もが集中して暮らすようになった今の中共にとり、その沿岸の海が、自分たちで闇雲に投入した機雷によって通航も漁労もできぬ海面に変わってしまいますと、電力も食料も得られなくなった彼らは、一斉に内陸部、それも水の得やすいチべットかミャンマー方面へでも移動するしかないでしょう。

誰にも除去不能な数万発の機雷は、日本とシナ大陸の間の戦後数十年間の汚れた関係を半永 久に断ってくれると期待できます。江戸時代の平和が復活するでしょう。われわれは、しばらくの間、厄介な儒教圏人たちとは無縁に暮らしていくことができるのです。これほど素敵な 「フリー.バリアー」(無料の障壁)が、他に考えられるでしょうか?

スパイクマンは、アメリカは孤立主義による安全は得られないと警告しました。

日本は逆に、遮断主義(大陸や半島の儒教圏人とは平時から縁を切る)によらなければ安全は得 られません。これは江戸幕府の智恵なのです。

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5/4JBプレス 古森義久『注目のトランプ「外交政策」、やはり中身はなかった 粗雑な孤立主義を米国の識者が厳しく批判』について

5/5朝日新聞デジタル

<米大統領選の共和党候補者指名争いで、獲得代議員数が2位だったクルーズ上院議員(45)が3日(日本時間4日午前)、選挙戦からの撤退を表明し、実業家のトランプ氏(69)が同党の指名を獲得することが確実な情勢となった。同日に行われたインディアナ州予備選で同氏が大勝し、クルーズ氏が選挙戦の継続を断念した。  クルーズ氏は、同日夜のインディアナ州での集会で、支持者を前に「我々は選挙戦から撤退する」と表明。一方、トランプ氏は早くも民主党のクリントン前国務長官(68)との対決を見据え、「我々はヒラリー・クリントン氏を打ち負かす。彼女は偉大な大統領にはなれない」と自由貿易に対する政策の違いなどを強調し、「(本選挙が実施される)11月に我々は勝利する」と述べた。  これまでの獲得議員数で3位のオハイオ州のケーシック知事は依然撤退の意向を示していないが、トランプ氏が7月の共和党全国大会前に候補者指名に必要な代議員総数の過半数を獲得するのは確実な情勢だ。  同党全国委員会のプリーバス委員長は同日、ツイッターで「トランプ氏が共和党候補となるだろう。我が党が団結し、クリントン氏を打倒することに集中する時だ」とコメントし、トランプ氏が指名を獲得するとの見通しを明らかにした。  一方、民主党のインディアナ州予備選ではサンダース上院議員(74)が、クリントン氏を僅差(きんさ)で破り、勝利した。クリントン氏が党の指名を獲得するのは確実な情勢だが、サンダース氏は選挙戦を継続する方針で、最終決着はしばらく先になりそうだ。(インディアナポリス=金成隆一、ワシントン=佐藤武嗣)>(以上)

米大統領本選はヒラリーVSトランプの戦いになりました。トランプが今後考えなければならないのは

(1)共和党全体を纏め上げれるか。特に共和党主流派はトランプを嫌っており、その関係修復をどうやるか。

(2)副大統領候補をクルーズはフィリオーナ(女性)にしていましたが、ペイリン(女性)を指名するかどうか。或は誰を指名するのか。

(3)女性を侮蔑する発言、人種差別発言をしてきたがこれをどう軌道修正していくか。

ヒラリーが共和党を分裂させるため、トランプを擁立させたとの噂がある中で、トランプはアジテーターの役割を止め、真剣に政策を訴えなければ本選でヒラリーに負けてしまうでしょう。

本記事のように矛盾を露呈するようではダメで、早急にスタッフを集めて、知恵を絞ってほしいと思っています。

記事

Trump-4

米首都ワシントンで、外交政策について演説するドナルド・トランプ氏(2016年4月27日撮影)。(c)AFP/Brendan Smialowski〔AFPBB News〕

 米大統領選で旋風を巻き起こしている共和党候補、ドナルド・トランプ氏が初めて外交政策について演説をした。

 トランプ氏が予備選挙戦で事前に草稿をきちんと準備して演説したのはこれが初めてである。だが、その外交政策は粗雑な孤立主義であるとして、保守派かもらもリベラル派からも厳しく批判される結果となった。

「アメリカファースト」を掲げオバマ外交を批判

 トランプ氏は4月27日、ワシントン市内のホテルで初めて外交政策について演説した。以下がその内容の骨子である。

 まず、トランプ氏は外交政策全体の最重要点として「アメリカファースト」(米国第一)という標語を強調した。アメリカの利害関係を何よりも優先する姿勢である。

 その姿勢は、オバマ大統領の好きな「国際協調」や「多国主義」へのアンチテーゼとも言うことができる。トランプ氏はオバマ外交を「ビジョンがなく、目的も方向もなく、戦略もない」と断じる。そして以下の5点をオバマ外交の弱点として挙げた。

(1)米国の資源を無駄使いしている

 オバマ大統領は米国の軍事と経済を弱体化した。他国の国づくりを唱えながら米国の国力をすっかり骨抜きにしてしまった。

(2)米国の同盟国の負担が不足している

 北大西洋条約機構(NATO)の加盟国28のうち、公約である国内総生産(GDP)の2%以上を防衛費にあてている国は4カ国しかない。これは不公正である。

(3)同盟諸国の米国への不信が増した

 オバマ大統領の「友を嫌い敵を好く」態度によって、米国の同盟諸国の間で対米不信が増した。

(4)競合相手から軽んじられている

 ロシアや中国はおろか北朝鮮までもが米国を恐れず、もちろん敬意も抱かない。特に中国は米国への敵対的行動を盛んに行っているが、米国は対抗措置をとらない。

(5)外交政策に明確な目標がない

 リビアの独裁政権を倒した後 民主主義勢力の崩壊を黙視した。イラクやシリアでもテロ組織IS(イスラム国)の跳梁を座視した。

「国益を守るために軍事力を断固として使う」

 以上のようなオバマ政権批判を踏まえ、トランプ氏は自らの外交政策目標として次の3点を挙げた。

(1)イスラム過激派の勢力拡大を阻止する

 この目標達成には米国だけでなく全世界の努力が必要である。米国は軍事力の行使もためらわないが、哲学的な闘争も必要とする。

(2)米国自身の軍事力と経済力を再強化する

 中国もロシアも軍備を強化して国威を発揚しようとしている。米国も軍備縮小の流れを逆転させ、世界最強の地位を確実にする。経済面でも米国を偉大にする。

(3)米国の国益に基づく外交政策を確立する

 まやかしのグローバリズムに流されるべきではなく、主権国家こそが国民の幸福や調和の真の基礎となる。国際的な連帯もそれ自体には価値がない。

 トランプ氏は以上のような要点を訴えるとともに、「米国の国益を守るために軍事力を断固として使う」「民主主義など欧米の基本的価値観を世界に広める」「NATOおよびアジアの同盟諸国と協議して、共同防衛の経費の負担のあり方を論じ、共通の脅威への対処を考える」とも誓約していた。

立場を異にする3人の識者の評価は?

 このトランプ外交演説を米国各界の識者たちはどうみたのか。米国には多様な政治理念の論者たちがいる。ここでは代表的な3人の識者の反応を紹介しておこう。

・共和党系保守派の見方

 第1は、共和党系保守派の大物政治評論家、チャールズ・クラウトハマー氏の意見である。

「トランプ氏はこの外交演説で、自らを揺るぎない信念の政治家、そして大統領にふさわしいリーダーとして示したかったのだろう。その狙いはある程度は成功したと言える。

 彼の演説の主眼は『アメリカファースト』という標語に集約されていた。その背後には、トランプ氏が誇りとするナショナリズムが影を広げている。トランプ氏のナショナリズムは、他国や他国の国民には米国民の血や資源を犠牲にしてまで介入する価値がない、とする孤立主義と一体となっている。だが、その孤立主義志向は、同盟国の対米不信を取り除こうとしたりイランの封じ込めを唱えるとなると、矛盾が露呈する。いずれも対外的に関与しなければ達成できない目標だからだ」

・民主党系リベラル派の見方

 第2は、民主党系リベラル派の外交ジャーナリスト、ファリード・ザカリア氏の意見である。

「今回のトランプ演説は、メキシコとの国境に壁を建設するとかイスラム教徒の入国を禁止するという実行不可能な措置を提示していなかった点では、改善あるいは前進だと言える。だが矛盾の目立つ演説だった。軍事増強を唱える一方で緊縮財政を主張する。人道的な理由で海外への米軍投入には反対しながらも、海外でイスラム教徒に弾圧されるキリスト教徒の救済には熱心な態度をみせる。

 だが全体として、トランプ氏の外交政策はできるだけ外国への関与を避ける孤立主義の傾向をちらつかせる。しかも大衆迎合のポピュリズム的な外交政策と言えるだろう」

・中立の立場の見方

 第3には、ほぼ中立の立場としてタフツ大学の外交問題専門家、ダニエル・ドレズナー教授の意見を紹介しよう。

「トランプ氏の外交演説はオバマ政権の外交の欠点を大きく取り上げ、激しく非難しているが、そこには代替案がほとんど入っていない。

 トランプ氏の基本的な信念は、米国が一国だけ強大で対抗できる勢力がいないときにこそ世界は最も平和で安定した状態になるということだろう。米国の覇権による平和の維持は、米国の対外関与や対外介入を必ずしも意味しない。

 混乱が続く中東に軍事介入して治安を維持することには反対しながら、その一方で中東で米国的な民主主義を拡大させるためにもっと関与すべきだと唱える。トランプ氏の外交戦略の基本は、なんとなく孤立主義をにじませた、論理や一貫性に欠ける国威の発揚にみえる」

 トランプ氏の外交政策演説は米国内でもこのように多様に評価されており、日本にとっての意味を読むことは難しい。だが日本にとって、日米同盟における負担の是非を問われることは間違いないだろう。

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5/2日経ビジネスオンライン 鈴置高史『米中の狭間で「フリーズ」する韓国 木村幹教授に朴槿恵外交の行方を聞く(2)』、5/2現代ビジネス『韓国の大誤算! 国益は中国より日米、それにようやく気がついた朴槿恵はまもなく習近平と決別する賢者の知恵 朴槿恵はまもなく習近平と決別する』について

5/1聯合ニュース

<4月の輸出額11.2%減 貿易黒字は51か月連続=韓国

【ソウル聯合ニュース】韓国の産業通商資源部は1日、4月の輸出額(速報値)が410億ドル(約4兆3600億円)で前年同月に比べ11.2%減少したと発表した。  輸出額は1月に6年5か月ぶりの大幅減となる18.9%減を記録した後、2月に12.2%減、3月に8.1%減と、減少幅が縮小傾向にあったが、再び拡大する様相を呈している。  輸出額の減少も16か月連続と最長になっている。これまでの最長は01年3月から02年3月までの13か月だった。  4月の輸入額は前年同月比14.9%減の322億ドルだった。  これにより貿易額(輸出・輸入額)も昨年1月から16か月連続の減少となった。  4月の貿易収支は88億ドルの黒字で、黒字は51か月連続。 csi@yna.co.kr>(以上) 5/1産経ニュース

韓国のお家芸だった半導体産業が中国の投資攻勢で危機的状況に 「年俸5倍、3年保証」の破格条件で人材流出も…

かつて日本を抜き去った韓国の半導体産業が今度は抜かれる立場に追い込まれている。中国の大規模な投資攻勢にさらされているためだ。中国は投資のみならず、韓国の優秀な半導体技術者を多額の費用をかけて盛んにヘッドハンティングしている。ヘットハンティングもかつて韓国が日本に行っていたことで、まるでデジャブをみているようだ。中韓の技術格差が年々縮まり、抜かれるのは時間の問題になりつつある。日本経済は半導体にかつての勢いはないものの、「失われた20年」を経て復活を果たした。基礎研究力の脆弱(ぜいじゃく)さをたびたび指摘される韓国。「お家芸」となった半導体が危機にさらされる中、蘇ることができるのだろうか。

                 ◇

 このところの中国の半導体投資の勢いはすさまじい。半導体ファウンドリー、武漢新芯集成電路(XMC)は、米半導体設計企業サイプレスと共同で240億ドル(約2兆7200億円)を投資し、湖北省武漢市にメモリー半導体工場を建設する。中国・清華大学傘下の清華紫光集団(清華ユニグループ)も半導体工場の建設に300億ドル(約3兆4000億円)を投資することを明らかにしている。

両社はいずれもスマートフォンやパソコンに搭載されるメモリー半導体のDRAMやNAND型フラッシュメモリーの生産を主力とする。サムスン電子、SKハイニックスなど韓国企業が得意とする分野で、真っ向から激突することを意味する。

 サムスン電子は昨年、半導体工場建設に当時としては過去最高の15兆6000億ウォン(約1兆5200億円)を投資すると発表したが、2社はそれを一気に上回った。

 韓国・朝鮮日報は、中国勢は強大な内需市場を掌握し、体力を高めた後、海外市場でサムスン電子など韓国企業と競合する戦略と指摘する。アップルのiPhone(アイフォーン)を受託生産する鴻海科技集団(フォックスコン)、家電大手の海爾(ハイアール)、通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)など最近数年で世界的企業に成長した中国企業を顧客として確保すれば、市場の底辺をすぐに拡大することが可能としている。

さらに、韓国半導体業界を警戒させる事態も発生している。日本の半導体設計企業サイノキングテクノロジーが、中国安徽省合肥市政府とメモリー半導体工場を設立することで3月末に合意した。サイノキングはかつてサムスン電子と競い合った日本の半導体メーカー、エルピーダメモリの坂本幸雄元代表が設立した企業だ。同社の中核人材のほとんどは台湾国籍という。

 韓国・中央日報によると、この量産工場建設は日本(設計)・台湾(量産)・中国(資本)が力を合わせて韓国をはさみ撃ちする格好になると分析している。エルピーダはご存じの通り会社更生法を申請し、米マイクロン・テクノロジの傘下に入り社名は消滅した。ただ、半導体業界の風雲児の異名をとった坂本氏が中国勢と手を組んだことに、韓国に対しリベンジを果たすとの見方も業界で広がる。

                 ◇

 加えて、韓国半導体業界を震撼(しんかん)させているのが、技術者の流出だ。朝鮮日報によると、中国企業はスカウトに多額の費用をかけており、半導体業界によれば韓国、台湾の半導体技術者を迎えるため「年俸5倍、3年保証」という破格の条件を提示しているという。

約20年前、日本の半導体業界も高額な報酬を提示され、海を渡って韓国の半導体企業に勤めた技術者が少なからずいた。結果として韓国半導体の隆盛につながり、日本の半導体は凋落の一途をたどることになった。日本の半導体企業は週末に空港に担当者を張り付け、技術者が訪韓していないか、チェックしていた。今、韓国では訪中する技術者に眼を光らせているかもしれない。

 さらに、韓国は半導体の技術人材不足という悩みに直面している。韓国の半導体産業を支える人材を多数教育し、修士・博士クラスの人材を多数輩出してきたソウル大学半導体共同研究所からの卒業生が細っているという。同研究所は、世界の半導体メモリー市場を握るサムスン電子、SKハイニックスでは、部長・役員クラスのほとんどがこの研究所で学んだとされ、韓国半導体研究の総本山といっていいような存在だ。

人材が流出し、その人材を育てる機関が機能不全を起こすという、ダブルパンチに見舞われている格好だ。

 ソウル大電気情報工学部の李宗昊(イ・ジョンホ)教授は朝鮮日報の取材に対し、「中国が世界的な企業の技術力まで確保するならば、韓国にとって大きな脅威になる。韓国企業が技術格差を維持できなければ、少なくとも低価格市場は予想よりも早く中国に食われることになりそうだ」と話す。

                ◇

 かつて日本がたどった半導体縮小の道を、韓国も歩むことになるのか。産業の新陳代謝が早まる今、韓国の知恵が問われようとしている。(小熊敦郎)>(以上)

中韓はバクチというか逆張りをして経済成長してきました。日本は投資に慎重に対応し過ぎて、市場シエアを奪われました。電機業界は米型マネジメントを真似て、リストラを断行、それが人材の韓国への流れに繋がりました。今や中国は定年退職した技術者を猛烈な勢いで採用しています。中韓にやられ放しになっているのは、日本の経営者の自社の利益極大化にしか目が行かない姿勢が合成の誤謬を起こしているためだと考えます。世界観・歴史観を持たない劣化した経営者が自分の価値観に合った次の経営者を選びますのでドンドン小さく纏まった経営しかできなくなります。根は深いです。最後は教育の問題にぶつかると思います。

韓国は先端技術を持った日本と内需人口を抱え大量生産による廉価販売できる中国との板挟みになっています。スマホも車もアッセンブリー産業ですが、裾野産業を自国で育成せず、安易に日本からの輸入に頼ったのが間違いのもとでしょう。儒教の両班思想が息づいているため手を汚す仕事を嫌うためです。ホンダ・松下・ソニーの創業者のような経営者は韓国には出て来ないでしょう。

中韓ともパクリが得意ですが、規模でいえば韓国は中国に対抗できないでしょう。また、人口規模から言って優秀な人材は中国人の方が多いと考えられます。両国とも反日教育といった畸形な教育をしていますが。これはそれを放置してきた日本が悪いです。経済制裁でも何でもやれたはず。相手を責めるだけでなく自責をもっと考えた方が良いでしょう。

武藤元駐韓大使は何を見ているのか分かりません。韓国語が話せる初の駐韓大使とのことですが、宮本雄二元駐中国大使と同じで、上の人間としか付き合ってないのでしょう。反日教育の凄まじさを実感していません。言葉が分かるのであれば、中国や韓国のネット言論を読んでみて下さい。中国人は豊かになり、多面的に物事を捉えられるような若者も増えてきていますが、朝鮮半島人はダメです。火病という民族病を持つせいでしょう。言葉ができると、その国の味方になる傾向があります。TVで武貞秀士、小此木政夫、富坂聰等のコメントを聞いていると甘すぎと感じます。彼らも生活が懸かっているので情報が取れなくなると困るのかも知れませんが。

木村・鈴置氏が日本外務省の対応について「韓国を笑えない」と言っていますが、その通りです。でも外務省には何の自覚もないのでしょう。幣原以降、外務省は公家と同じで下々の生活には関心を持たず、国益のために体を張ることもせず、蓄財に励んできた集団です。財務省が天下り先開拓に血道を上げ続けているのと同じ醜さです。エリート集団と言われますが、この程度です。やはり知識優先で、情操教育を疎かにしてきた咎めでしょう。歴史・道徳教育をしっかりしなければ。新渡戸の『武士道』を英語と日本語で読ませると良いと思います。後は内村の『代表的日本人』とか。日本は「非韓三原則」を貫くべき。多分通貨スワップで擦り寄ってくるでしょうが、取り合わないことです。慰安婦合意も守れない国が何を言うかという事です。嘘を世界に吹きまくり、日本の国民感情を大いに傷つけました。

5/3は憲法記念日ですが宮澤俊義の8月革命説は戴けません。そう根拠付けせざるを得なかったのでしょうけど。憲法を国民の手に取り戻さないと。邪悪な帝国が隣にありますし、超法規的出動するよりは、合法的出動にしておかなければと思います。抑止力にもなります。「憲法守って国滅ぶ」では何もなりません。日本の歴史を続けなければ。別に今の憲法が不磨の大典ではありません。歴史上17条憲法もありました。

日経ビジネスオンライン記事

Kerry

4月11日、G7外相会合に出席したケリー米国務長官が広島で会見。朝鮮半島の非核化と引き換えに「平和条約」「不可侵協定」を話し合えると言及した(写真:ロイター/アフロ)

前回から読む)

 「韓国は米中間で固まってしまった」――。木村幹・神戸大学大学院教授に朴槿恵(パク・クンヘ)外交の行方を聞いた(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。

対立の「ローカル化」

前回、米国は韓国に「中国側には行くなよ」とだけ申し渡したとのことでしたが、米国は中国と対立の度を深めています。そんな手ぬるいことでいいのですか?

鈴置:南シナ海で米中は激しく対立し、出口が見えません。でも、朝鮮半島では「協力して問題を解決すべきだ」との確固たる共通認識が両国にはあります。

木村:朝鮮半島の対立の構造は冷戦期と比べ大きく変わりました。30年前までは韓国を米国と日本が応援し、北朝鮮をソ連と中国が支えていた。

 でもそれは朝鮮半島が重要だったからではありません。朝鮮半島が冷戦期に存在した数多くの「前線」の1つであり、その状況が他のより重要な「前線」に直接影響を及ぼしかねなかったからです。

 しかし今の朝鮮半島の最大の問題は、核武装を目指す困った国が1つあることであり、しかもその国は孤立しています。

 周辺国はこの北朝鮮問題については基本的な認識を共有している。だから、朝鮮半島の事態の展開が、他の地域に波及する可能性は極めて小さい。

 北朝鮮という「冷戦の遺物」があるので、朝鮮半島は今でも大国間の対立の「前線」とのイメージで見られやすい。でも、米中は朝鮮半島で勝負するつもりはまったくない。現在の「前線」は朝鮮半島ではなく、「海」にあるのです。

半島では談合可能な米中

鈴置:もちろん米中の朝鮮半島に関する思惑は微妙に異なります。中国は、北朝鮮が第2次朝鮮戦争を始める引き金にならない限り、在韓米軍を撤収させたい。

 首都、北京の目と鼻の先に世界最強の軍隊が駐留するのは軍事的にも、威信の面からも面白くないからです。できれば米韓同盟を消滅させたいと考えているでしょう。

 米国も朝鮮半島への軍事的な関与を低めたい。ただ、米国の威信に傷が付くような「追い出される」格好での在韓米軍の削減・撤収は避けたい。

 思惑は微妙に異なります。が、180度対立するわけではない。交渉の仕方では妥協というか、談合が可能です。

 今、米中朝の3国が模索し始めたアイデア――6カ国協議を再開し「平和協定」と「非核化」を話し合う――は、まさに「米中がともに望む半島」に向け軌道を敷くものです(「交渉カードなき韓国は米中の『捨て駒』に」参照)。

朝鮮半島を巡る米、中朝のカード

米国 中国
THAAD配備留保 従来より強い対北朝鮮制裁容認
米韓合同軍事演習の中断と一部制裁の解除 北朝鮮の核・ミサイル実験の中断
米朝平和協定(不可侵協定)の締結  ・米朝国交正常化  ・在韓米地上軍撤収  ・在韓米軍撤収  ・米韓同盟廃棄 北朝鮮の核兵器廃棄  ・核弾頭の増産中断  ・弾頭再突入技術の開発中断  ・弾頭小型化技術の開発中断  ・保有核兵器の全廃
「朝鮮半島の非核化・中立化」の制度的保障

注)左右の項目は必ずしも連動しない

露骨になる北への「お声掛け」

—「中国との談合」で米国が韓国を「捨て駒」に使うのでは?

鈴置:そうなる可能性があります。木村先生が指摘されたように、米国は韓国の事情を察して「中国との海での戦いに加われ」とは要求しません。一方で、韓国の意向を無視して北朝鮮との交渉を進めています。

 4月11日、ケリー(John Kerry)国務長官は広島での会見で、非核化と引き換えに戦争を正式に終結する「平和条約」(peace treaty)に加え「不可侵協定」(non-aggression agreement)も話し合えると述べました。

 米国の北朝鮮への「お声掛け」は露骨になる一方です。韓国政府は相当にショックを受けたようです。

 北朝鮮との交渉カードとして米国は「半島から地上兵力を引く」くらいは用意していると思われます。それはもちろん、米韓同盟の希薄化を意味します。

 米国は韓国に同盟国としての義務を100%果たすよう求めなくなった。でも、代わりに韓国をちゃんとした同盟国として尊重しなくなったのです。

韓国が仕切っている

木村:最近、日本を訪れる韓国の政府関係者が興味深い話をするようになりました。以下がその内容です。

  • 北朝鮮の脅威は今年初めの核とミサイル実験で、全く異なるレベルに到達した。だから米国に加え中国までも、これまでにない強いレベルの対北制裁に動いている。
  • 米中両国をして強い制裁をとらせたのは、開城工業団地の閉鎖という断固たる姿勢を韓国が見せたからでもある。
  • にもかかわらず、日本政府や日本人はこの事実をきちんと認識していない。日本は新たなる状況の変化を十分に承知すべきである。

 中国の「強い対北制裁」は、米国のTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム=サード)配備留保や6カ国協議開催の合意が引き出した――と見るのが通常だと思います。

 でも韓国の人はそれを「韓国が引き出した」と主張したうえで、この情勢認識こそが正しいのだと言い張る。さらに「間違っているから、その認識を正すべきだ」と日本を教え諭すのです。

鈴置:実に面白い話です。韓国政府は「我こそが米中をリードし、国連の対北朝鮮政策も仕切っている」とのイメージを日本に広めたいのですね。

—いったいなぜ?

鈴置:実態が逆だからでしょう。注意深く観察する人なら、韓国がプレーヤーとしての地位を失い始めたことに気づきます。北朝鮮の非核化に絡み、米中朝が韓国を無視してゲームを始めたのです。

 でも、韓国としては日本人に本当のところを認識されてはまずい。相手にされなくなるからです。そこで「米中をリードし、半島を仕切る韓国」との、相当に無理筋のストーリーを宣伝するに至ったのでしょう。

幻想だった大国外交

木村:今の韓国の状況は、ここ10年間ほどの意識の変化を考えるとよく分かります。現在の朴槿恵政権の情勢認識は、前の李明博(イ・ミョンバク)政権時代に培われたものの延長線上に立っているからです。具体的には以下です。

  • 日本の民主党政権が「米中等距離外交」により、米国との関係を悪化させた。歴史認識問題でも日本は米国の怒りを買った。
  • 半面、米国から見て我が国は日本と同等か、それ以上に信頼される重要な国になった。オバマ(Barack Obama)大統領は一般教書演説などで韓国を何度も持ち上げたし、G20も核サミットも日本より先に韓国に主催させた。
  • こうして日本に優越する位置を獲得した我が国は、かつての日本のように外交面で大きなフリーハンドを得た。国際社会の主要プレーヤーになった以上、我々は少々のことでは米国の不興は買わない。

 でも韓国人は今になって、この認識なり自画像は的外れだったと思い知らされました。なぜなら「たかが天安門に昇ったことくらい」で大統領が満座の中、叱責されることになったのですから。

鈴置:韓国の肩を持ってくれていたはずの「慰安婦」問題でも、米国政府高官が「民族感情を利用するな」「歴史の罠にはまるな」と韓国を叱りましたしね(「『米大使襲撃』で進退極まった韓国」参照)。

木村:我々が展開してきた大国外交は幻想だったのだ――と、韓国人の高揚感は一気にしぼんでしまいました。

鈴置:確かに、李明博政権の後半以降の韓国人の高揚感はすごかった。このころから「世界で唯一、日本を見下す国が韓国だ」という言説が新聞記事や会話に登場するようになりました。

 日本を超えたことを実感するために、日本を小突いて楽しもうではないか――との思いです。日本が何度も謝った「慰安婦」をまた持ち出し、安倍首相を呼び付けて土下座でもさせてやろうと韓国人が考えたのも、この高揚感が背景にあったのです。

プレーヤーから転げ落ちた

—韓国外交はどちらに向かうのでしょうか。

木村:これまで通り、長期的には中国に引き寄せられます。しかし、今現在は米国からクサビを打ち込まれ、中国側には行きにくくなった。

 ただ、米国側に完全に戻るわけではないし、米国もそこまで圧力をかけるつもりはない。加えて、総選挙の敗北で朴槿恵政権自身が動けなくなってしまった。

 履行が極めて困難になった「慰安婦合意」はその典型です。ひょっとするとTHAADさえも野党の声に押され、米国との合意をサボタージュするかもしれない。韓国は米中間でフリーズしてしまった、と言えるでしょう。

鈴置:フリーズ――固まってしまった。言い得て妙ですね。

木村:ここで注意が必要なのは「フリーズ」とは中立化を必ずしも意味しないことです。韓国はその意思により、ポジションを決めることができなくなった。たまたま今、米中の中間点にいるだけなのです。

 だからこそ今後もまた両大国の思惑と力関係によって、その立ち位置を突き動かされる可能性が大きい。

鈴置:2012年から木村幹先生と一緒に韓国の「離米従中」を観察してきました。北朝鮮の核開発と並び、朝鮮半島の先行きを占う最大の要素だったからです。

 でも「突き動かされるだけの韓国」はプレーヤーの座から転げ落ちます。今後、主役を務める米中、そして北朝鮮がどう駆け引きを展開するかに観察の焦点を当てる必要があります。

韓国を屈服させた日本?

—「米中間でフリーズする韓国」ですか。日本の新聞を読んで、韓国は米国や日本側に戻ってきたと思い込んでいました。

鈴置:「海洋勢力側に戻った韓国」とのニュアンスで新聞が書くのは、日本の外務省がそう説明しているからでしょう。

 日本に来ては、そう言って回る韓国人も多い。対北朝鮮制裁で協力を得たり、通貨スワップを結んでもらうために「日本とよりを戻した」ふりをする作戦です。

—日本の外務省はなぜ、そんな説明をするのでしょうか?

木村:「そうだったらいい」との願望からかなあ、と思います。1990年代までの「歴史認識問題などでは強硬だけど、困った時にはびっくりするくらい素直に頭を下げてくる韓国」の印象を、一部の外交関係者は依然として持っているのでしょう。

 近年の「歴史戦」的な、日韓はゼロサムゲームを闘うとの認識がかぶさって、両国関係を勝ち負けで考えるようになったことも大きい。

 そんな空気の中で「最近の一連の外交ゲームで、韓国を屈服させた」と外交関係者が解説すれば、政治家も世論も喜びますし、功績として誇れるのです。

韓国を笑えない

鈴置:「韓国を屈服させた」のだとしても、その主語は日本ではなく、米国なのですけれどね。

木村:韓国を屈服させたと油断していたら、土壇場で逆襲されて慌てまくった「ユネスコの戦い」と同じ構図です。日本はあの失敗から何も学んでいないのかもしれません(「『世界遺産で勝った』韓国が次に狙うのは……」参照)。

鈴置:確かに。「世の中は我が国が仕切っている」と日本人の前でそっくり返って見せる、韓国政府関係者を笑うことはできません。

  • 急展開する朝鮮半島情勢
2015
9月3日 朴槿恵大統領、米国の制止を振り切り天安門で軍事パレードを参観
9月19日 日本で安全関連保障法が成立
10月5日 TPP創設に合意
10月16日 米韓首脳会談後の会見でオバマ大統領が韓国の中国傾斜を批判
10月27日 米iイージス艦「ラッセン」、南シナ海の中国の人口島に接近
12月28日 日韓が「慰安婦合意」
2016
1月6日 北朝鮮、4回目の核実験
1月7日 韓国の最大手紙の朝鮮日報と与党幹部、核武装を主張
2月7日 北朝鮮、長距離弾道ミサイル実験
韓国、在韓米軍基地へのTHAAD配備を容認
2月17日 王毅外相、非核化と平和協定を同時に進める交渉を提案
2月23日 米中外相、非核化と平和協定を話し合う6カ国協議をともに提唱
駐韓中国大使がTHAAD配備に関連「中韓関係は被害受ける」
3月2日 安保理、対北制裁案を採択
3月7日 米韓合同軍事演習開始(4月30日まで)
4月13日 韓国総選挙で与党が過半数割れ、「慰安婦合意」の履行に疑問符

現代ビジネス記事

Pak

総選挙で大惨敗を喫した朴槿恵(パククネ)政権は、任期2年を残してレイムダックとなるのか。「モノを言う大使」武藤正敏氏(前駐韓大使)が、「韓国の大誤算」について緊急直言。中国と決別し日米韓の連携強化こそが正しい道だと説く。

朴槿恵の反日は本心ではない

4月13日に実施された韓国の総選挙(全300議席)は、朴槿恵大統領率いる与党セヌリ党が、146議席から122議席と大きく減らし、目標としていた過半数に届かないどころか、第1党からも滑り落ちました。強引な政治手法への反発から、首都圏で逆風が吹いたのです。

朴槿恵大統領の5年の任期のうち、すでに3年2ヵ月が過ぎようとしていますが、実は選挙前からレイムダック化が進んでいました。

政権の支持率は、歴代大統領の同時期よりもよいのですが、与党が議席を減らしたこれからは、政権運営が大変です。韓国には、’12年5月に成立した「国会先進化法」という法律があり、与野党間で意見が食い違う法案は、本議会で在籍議員の5分の3以上の賛成がないと成立しないからです。

今回の選挙では、親日派の落選が目立ちます。せっかく昨年末に日韓で合意した慰安婦問題の進展が滞ってしまわないか、懸念されます。私が駐韓大使時代に日本大使館前に設置された「少女像」の撤去も遅れるでしょうが、日本はこの件で騒がず、冷静に対処を求めていくべきです。

韓国人と話すと分かりますが、いまや韓国で反日的な言動をする人はごく一部であり、多くの韓国人は日本のことを嫌っていません。ところが政治家とマスコミが「反日無罪」という精神文化に支配され、束縛されていて、それがまるで国民全体の意見であるかのような印象を与えるのです。

日本では、歴史問題にこだわる朴槿恵大統領が、そうした反日派の頭目のように思っている人もいますが、私はそうは思いません。慰安婦問題では、確かに頑なな姿勢が目立ちましたが、それは1965年に日韓国交正常化を成し遂げた父・朴正煕(パクチョンヒ)大統領が、「日本との歴史問題をないがしろにして国交正常化をした」と、批判されているからです。

私が駐韓大使をしていた時、まだ大統領になる前の朴槿恵さんを大使公邸に招待し、晩餐をともにしました。彼女は終始にこやかに、和食を召し上がっていました。

朴槿恵大統領は聞き上手で、自分から積極的に話すタイプではありません。そして、決して反日派ではありません。

私がソウルを離任する際にも、日本茶を贈ったのですが、「帰任前のご多忙な時に、私のことを気にかけていただきありがとうございます」と、丁寧にお礼を言われました。

日韓対立は中国の思うツボ

朴槿恵政権になって、韓国外交が迷走し始めたのは事実です。それは、「安保は米国、経済は中国」という韓国の戦略的な立場を崩し、ひたすら中国の機嫌を損ねないように振る舞ったからです。

その一方で、日本に対しては、執拗に歴史問題にこだわるばかりで、日本の能力を韓国の外交や経済活動に活用しようという視点が欠落していきました。

本来、「価値観を共有する重要な隣国」として、日本との協力関係を推進していくことが、韓国の国益につながるはずです。それを、相互協力そのものを否定してしまったのです。

しかし、昨年12月28日になってようやく、岸田文雄外相が訪韓して日韓外相会談を行い、慰安婦問題の解決を巡って二国間の合意がなされました。ここでは、日韓交渉のお家芸とも言える「白黒をはっきりつけずに決着へ持っていく」という外交手法が、巧妙に使われました。

この会談に先立ち、日韓局長級協議を12回も行いました。最大のポイントは日本政府の法的責任をどう取り扱うかでした。

その部分の表現は、「日本政府は責任を痛感する」となっていて、日本政府が難色を示していた「法的責任」は回避されています。一方、韓国側からすれば、元慰安婦の名誉回復につながるとして、納得できます。これで日韓は仲直りができたのです。

この合意は米国を始めとする国際社会も認めており、韓国は後戻りできません。

韓国経済が中国を抜きにして成り立たないことは明らかです。輸出全体の25%も占めているからです。

しかし、歴史認識に関わる問題についてまでも、中国に依存して日本を責め立てようとする韓国の姿勢には、大いに違和感がありました。

’14年1月、朴槿恵大統領が習近平主席に依頼していた「安重根記念館」が、開設されました。伊藤博文初代韓国統監を暗殺した犯人を記念する施設が、中国人の手で建てられたのです。韓国は「反日」という共通認識を持ち出して中国に擦り寄り、中国もその価値を認めて応じたわけです。

もともと中国は、ときの権力者が自分にとって都合よく歴史を作り替えてきた国です。最近では、天安門事件という歴史的事実を抹消しようとしています。そういう国と歴史問題で共闘するなどということ自体が、「原理原則」を貫く朴槿恵大統領の信念にそぐわない行動です。

そもそも歴史問題を持ち出すのなら、朝鮮戦争(1950年~’53年)で、100万人を超える韓国の市民が中国軍に殺されているにもかかわらず、中国には嫌味の一つも言えないのです。

一事が万事で、経済面を見ても、昨今の韓国の景気後退の原因が中国経済の減速にあるのは明らかなのに、アベノミクスの犠牲になっているという論理で片付けようとしてきました。

ともあれ、日本と韓国が仲違いすることは、中国の思うツボでした。中国は、日韓対立を利用して、アジア太平洋地域のパワーバランスを変動させてきたのです。

中国に期待しても無意味

韓国はこれまで、「中国と安全保障上の関係を強化するのは、北朝鮮への対処のためだ」と、日米に説明してきました。しかし、いくら韓国が擦り寄ろうとも、中国は本気で韓国のためになることはしてくれません。

1月に北朝鮮が核実験を強行し、2月に長距離弾道ミサイル実験を行っても、中国は国連安保理の制裁に渋々従ったような状況です。強い米国に対しては慎重ですが、弱いアジアの国々に対しては、強硬な態度に出るのが中国なのです。

私が韓国に言いたいのは、いくら中国に気を遣っても、いざという時には中国の都合で梯子を外される。だからそういう中国への従属外交はやめて、日本との緊密な連携をバックに国力を蓄えて、中国との交渉にあたるべきだということです。そのほうが中長期的に見て、はるかに韓国の国益にかないます。

朴槿恵政権は、ようやくそのことに気づくようになり、2月から、THAAD(高高度迎撃ミサイル)の配備交渉を、米国と始めました。これまではこの問題で、「米国から要請はない、話もしていない、決定もしていない」という「三無政策」を主張してきました。それを180度、方向転換したのです。

中国は国内で、汚職の蔓延や環境無視の経済開発を行っている国です。ウイグルやチベットでは反政府運動を力で弾圧し、民主的に行政長官を選ぼうとする香港市民の要求を突っぱね……。国内でルール無視で何でもやる国が、国際社会でルールをきちんと守る保証は、どこにもない。それどころか彼らは、日常茶飯事のように、自分の都合のいいように国際法を解釈しています。

中国は、周知のように現在、南シナ海で人工島の軍事要塞化を進めています。それが一段落すれば、次は東シナ海、黄海へと関心を広げてくるでしょう。

それなのに現在の韓国は、東アジアの地政学的状況を理解せず、中国に対する過度な期待や誤認が甚だしかった。それが日本軽視に結びつき、日韓関係の障害になってきたわけです。

フィリピンで上院の反対によって、米軍がスービック湾から出て行ったために、中国は南シナ海で人工島の建設を始めた。その轍を踏まないためにも、日米韓はしっかりと連携しなければならないのです。

韓国はいま、米中の狭間で苦悩しています。どちらかというと、中国寄りの姿勢を取り続けていた。その理由は、これまで米国は寛大でしたが、中国を怒らせてしまったら何をしでかすか分からないからです。

韓国は、米中が緊迫し、どちらかにつかねばならなくなった場合は、最終的には米国を取るでしょうが、その選択はできるだけ遅らせて時間を稼ぎ、ギリギリまで中国寄りの姿勢を取り続けるでしょう。

韓国にとって「反日」は常識であっても、外交戦略としての「反米」や「反中」はあり得ないのです。’13年11月に中国が東シナ海に「防空識別圏」を突然設定した時も、一方の当事者である日本は猛抗議しましたが、もう一方の当事者である韓国は沈黙しました。これからは変わるでしょう。

韓国経済はもう待ったなし

現在、韓国経済は深刻な景気停滞に陥っています。輸出は落ち込み、財閥から中小企業まで大変なことになっています。

韓国では「七放世代」という言葉が流行語になっています。これはいまの若者たちが、「恋愛、結婚、出産、マイホーム、友人との交際、夢、就職」を放棄した世代という意味です。それほど若者たちの将来ビジョンが見えなくなっているのです。韓国の’14年の自殺率は、人口10万人あたり27・3人にも上り、OECD加盟国中、最悪です。

韓国は、経済が悪化すると政府が「歴史」を持ち出して、日本を非難する傾向があります。

しかし歴代の政権で、韓国経済を発展させた政権は、いずれも日本と親密な関係を築いていました。それは、朴正煕、全斗煥(チョンドウホアン)、金大中(キムデジュン)の各時代、及び李明博(イミョンバク)時代の前期です。逆に反日を振りかざす政権ほど、韓国経済を悪化させているのです。

現在の日韓関係における最大の課題は、両国間に戦略的な対話がないことです。特に、安倍晋三首相と朴槿恵大統領が胸襟を開いて話し合う機会が少ないので、日韓双方の国益となるビジョンの構想ができなくなっています。

その際、最も重要なポイントは、中国に対する戦略です。まずは日韓で、中国に対する認識を共有し、中国が東アジアで開かれたパートナーとなるよう力を合わせて後押ししていくしかないのです。

むとう・まさとし/1948年生まれ、東京都出身。2010年~’12年、韓国語を話す初の駐韓大使として活躍。昨年『日韓対立の真相』(悟空出版)がベストセラー。第2作『韓国の大誤算』(同)を上梓

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5/1日経 FT『米、「英との蜜月」変質 アジア重視路線 経済分野で鮮明』、日経『アジア開銀、アジア投資銀と覚書 インフラ開発協力』について

英米が、仲が良いと言うのは、第二次大戦以降です。元々米国は英国から独立しましたので、最大の敵国は英国でした。米国独立(1776年)後、英米戦争(1812年)が起き、ワシントン陥落、大統領府も燃やされました。今のホワイトハウスは第二代目となります。1900年代初めにはレッド計画(対英戦争を想定、日本はオレンジ計画、独はブラック、仏は金)が策定されています。第一次世界大戦で、米国の英国支援(英国が米国債の支払いができなくなるため参戦)により、近づいただけです。子ブッシュ・ブレアのイラク侵攻は息の合ったところを見せましたが、大量破壊兵器がなかったことにより、ブレア辞任に繋がりました。英米が如何に仲睦まじいように見えても、ヘンリー・ジョン・テンプルの言った「国家には永遠の友も永遠の敵もない。存在するのは永遠の国益だけである。“We have no eternal allies, and we have no perpetual enemies. Our interests are eternal and perpetual, and those interests it is our duty to follow.”」を思い起こさせます。

英国のAIIB参加は親中派オズボーン財務相に唆されたキャメロン首相が決断したと思います。その前に米国はFATCAを制定、SHBCから罰金を取ったりしたのが米国離れを起こしたのではと考えています。

http://jp.reuters.com/article/tk8255222-hsbc-settlement-idJPTYE8BA03K20121211

オバマを始めとする民主党の「アジア重視」は信用できません。民主党は中国の金に汚染されているのでは。ADBもAIIBに協調融資する覚書締結とかやっていることが支離滅裂。中国に対し、ブレーキとアクセルを踏むようなものです。南シナ海の軍事膨張主義に対する牽制とAIIBという中国経済窓口支援とをする訳ですから。国防総省の思いと財務省の思いの違いがあるのかも。ルー財務長官も日本を中国同様為替操作監視国に指定しました。中国が米国債をたくさん持っているからでしょうけど。しかし、敵と味方の区別もつかないのかと言いたい。

清華大学留学計画とか打ち上げているようですが、元々清華大学は米国の義和団賠償金により設立されたものです。そんなところに米国人を行かせて何を学ばせるつもりでしょう。独裁のやり方でも学ばせるのでしょうか?建国の理念たる「自由」に反します。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%85%E8%8F%AF%E5%A4%A7%E5%AD%A6

FT記事

英国の欧州連合(EU)の離脱派はよく、英国は離脱したら大英帝国の遺産でもある「英語圏国家連合」(編集注、英国、米国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダからなる連合)なるものを築けばいいと主張する。それだけにオバマ米大統領が4月下旬、離脱の是非を問う英国の国民投票について言及した内容は、彼らにとっては衝撃的だった。その国家連合で最も力のあるメンバーになるはずの米国が、残留を強く訴えたからだ。

 形勢が不利になると恐れた離脱派は、オバマ氏は英国に敵意を抱いているのではないかと発言。ジョンソン・ロンドン市長は「ケニア人の血を引く大統領の家系」がそう言わせたのだろうとの見方を披露した。

US for Asia against UK

イラスト Ferguson/Financial Times(ブログ主の注:右下の魚の餌はBREXITです)

 

 オバマ氏の発言に特別な説明など必要ない。米国は長年、英国のEU残留を支持してきたからだ。

 だが、いくら両国の関係が特別だといっても、彼らはそれがオバマ時代に変質したことに気付いている。両国とも台頭するアジアをはっきり意識するようになり、その結果、世界やお互いへのかかわり方を見直さざるを得なくなったのだ。

 その点では、確かにオバマ大統領の経歴は意味を持つ。もっとも、大事なのは同氏が初のアフリカ系米国人大統領であることではなく、初の太平洋地域出身の大統領であることだ。同氏はハワイ育ちで、幼少時代の数年間をインドネシアで過ごした。歴代のどの大統領より、アジア太平洋地域がより重要になっていることを理解している。

■外交や軍事、経済的資源を振り向けたオバマ氏

 オバマ政権の外交政策の特徴は「アジア重視」だ。中東とウクライナで混乱が起きても、オバマ氏は厳格にかつ断固として外交、軍事、経済的資源をアジアに振り向けている。

 オバマ氏の訪英中、米国は英国がEUを離脱したら英国と貿易協定を結ぶか、それともEUとの環大西洋貿易投資協定(TTIP)締結の方により重点を置くかが話題になった。オバマ氏は個別の貿易協定の締結を求めるなら、英国は「列の後ろに並ぶことになる」と述べ、物議を醸した。

 だが、米国が貿易で最も優先する相手は今や英国でもEUでもない。アジアだ。TTIP交渉は結論が出るまでにまだ何年もかかるが、環太平洋経済連携協定(TPP)はすでに米国とその他11のアジア太平洋諸国の間で合意され、批准を待つばかりだ。

 英国や欧州には、オバマ大統領の退任で米国がアジアから大西洋に軸足を戻すのではないかと期待する人もいる。それは見込み薄だ。米国の戦略的な優先事項を考えれば、誰が大統領になっても、オバマ氏と似た結論に至るだろう。次期大統領に選ばれる可能性が最も高いヒラリー・クリントン氏は2011年、「米国の太平洋の世紀」と題した論文を発表し、アジア重視を明確にうたった。

英国はアジア太平洋に最も関心を払う今の米国に不満を述べる立場にはない。というのも、キャメロン政権は対米関係を犠牲にしてまでも、自国のアジア重視政策を実行してきたからだ。キャメロン首相は経済界の重鎮などを大勢引き連れて何度もアジアを訪問している。米国の意向に反し、中国主導のアジアインフラ投資銀行の創設にも参加した。オバマ政権のある高官は(フィナンシャル・タイムズ紙に)英国は中国に「いつも迎合している」と不満をこぼしたほどだ。

 もちろん、英米両国の間には歴史的、文化的な深い絆がある。米国の外交政策を担う有力者には、英オックスフォード大学で学んだ者が少なくない。国家安全保障担当のライス大統領補佐官、クリントン国務長官時代のバーンズ副長官、クリントン氏の側近で顧問のジェイク・サリバン氏などは皆、同大の卒業生だ。

■米国の指導者を目指すなら中国を理解できること

 こうした関係もあり、英国はワシントンで有力者に簡単に接触できる。しかし将来はわからない。米金融界の大物、スティーブン・シュワルツマン氏は最近、大規模な奨学金制度を立ち上げた。オックスフォード大のローズ奨学金にヒントを得て、優秀な米国人らを北京の清華大学へ留学させるのが狙いだ。将来、米国の指導者を目指す若者は中国を理解することがより重要になるだろうという同氏の発想は、あながち間違っているとはいえない。

 アジアの台頭は、歴史的な英語圏の主要国であるカナダとオーストラリアも変えつつある。オーストラリアの中国や日本との貿易額は、英国との金額の10倍にのぼる。カナダ最大の都市トロントでは人口の約35%がアジア系市民で、太平洋沿岸都市のバンクーバーでは40%を優に上回る。

 それでも英語圏に郷愁を抱き、オバマ氏の「列の後ろ」発言に憤慨した英国人は、自国がまだどれほど米国の文化的影響力の恩恵を受けているか、よく考えるべきだ。伝統的な英語圏は変質したかもしれないが、EUの機関では英語が共通言語となり、ブリュッセルに新しい英語圏が誕生したのだから。

By Gideon Rachman

(2016年4月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

日経記事

アジア開発銀行(ADB)が中国主導で発足したアジアインフラ投資銀行(AIIB)と政策対話や協調融資に関する覚書を結ぶことが30日、分かった。途上国への貸し付けや、インフラ開発で協力関係を築く。ドイツのフランクフルトで5月2日に開幕するADBの年次総会で表明する。

 AIIBは中国が中心になって2015年12月に設立した。もともとADBとの連携を表明しており、今回、具体的な内容を記した覚書を正式に結ぶ。第1号案件の候補に挙がっているパキスタンの道路建設への融資も、ADBと協調して実施する方向だ。

 政策対話では例えば、二酸化炭素(CO2)の排出量を減らすために最新鋭の石炭火力を導入する国に対し、ADBとAIIBが協力して排出量取引の市場を育成するよう促す。協調融資だけでなく政策立案やインフラ投資のノウハウでも協力し、増大するアジアのインフラ需要に対応する。

 ADBの年次総会は5日まで開く。AIIBの設立後では初めての総会となる。期間中の3日には日中韓財務相・中央銀行総裁会議や日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)の財務相・中銀総裁会議も開く。一連の会合には日本から麻生太郎副総理・財務相と黒田東彦日銀総裁が参加する。

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4/30 MONEY VOICE 子貢『今、あなたは幸せですか? 中韓に生まれた不幸、日本に生まれた幸福』について

露伯中韓と比べたら、日本人はどこの国にも行きたくないというのでは。況してや日本国籍を捨て、相手国の国籍を取るとなったら尻込みするでしょう。逆に、彼らの内で日本国籍を取りたいと思っている人は多いと思われます。豊かで自由、清潔で親切、誤魔化しのない国です。対極にあるのは中韓でしょう。「南京大虐殺」や「従軍慰安婦」等「息を吐くように嘘がつける」国です。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という価値観であれば、世界に嘘を垂れ流す彼らは賢く、日本国民は愚かと言うことですが。でも中国人、韓国人になりたいと思う日本人はいないでしょう。そういう社会は唾棄すべきものと純正日本人は看做すからです。今までは偏向左翼メデイアの報道に騙されて来ましたが、中国人や韓国人が日本にインバウンドで来た時の彼らの流儀を目の当たりに見れば、新聞・TVの報道はおかしいと気付くようになります。メデイアはそれでも報道姿勢を改められないのですから、滅びゆくのは当然でしょう。下図は、米・中・韓への国民の好感度調査です。韓国がまだまだ高い気がしています。韓流の残り香というところでしょうか。

reputation survey for US,China,Korea

日本は良い国と言うのは海外で暮らせばすぐに分かります。賄賂を取らない、「お客様第一」、水・空気がきれい、約束は守るといったことは日本では当たり前ですが、貧しい国や独裁国家ではそういう前提がない国が多いです。

国際化というのは相手の国を理解し、お互いに尊重することでしょう。相手が日本に敬意を払わないのであれば無理して付き合うことはありません。岸田外相のように、叩頭外交のためにわざわざ中国へ行く必要はありません。中国外相が来日する番なのに、何故それを崩すのか?軽くみられるだけ。素人外交はよしてほしい。

外国と比較すれば日本が良いことが庶民レベルで分かってきましたので、海外留学・駐在希望者が減ってきていると聞きます。ただ、やはり苦労は買ってでもするもの。ただ海外では主張すべき時には主張しないとダメ。舐められます。これができて初めてグローバル人材と言えるでしょう。言葉ができるだけではなく。

https://www.nna-au.com/wealth/feature_category/%E6%9C%89%E7%82%BA%E8%BB%A2%E5%A4%89/feature/%E7%AC%AC52%E5%9B%9E-%E6%B5%B7%E5%A4%96%E4%BA%BA%E6%9D%90%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%81%93%E3%81%AB%EF%BC%9F

記事

National flag of Japan

仮に今、あなたは幸せですかと世論調査等で問われたら、日本の若年層の多くは否と答えるでしょうし、或いは10年前と今とでは、全体でも否定的な回答が増えていると推察されます。

年代的に言えば若年層より高齢者を、分野別では民間よりも公務員を、企業では非正規雇用より正社員を、そして他人よりも縁者を優遇する傾向が強まっていることは否めません。

様々な分野で進歩が認められているにもかかわらず、「将来に希望が持てない」「社会の閉塞感が強まっている」というのが若年層を中心とした民意であるとするならば、残念な話と言わせざるを得ません。

では、日本国民がどれだけ「不幸せ」なのか、今回は海外と比べながら、検証してみたいと思います。(子貢)

プロフィール:子貢(しこう) 1960年、大阪府生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。一部上場化学企業にて約15年間にわたり、国内外の営業部門に在籍、その後は外資系金融機関と個人契約を結び、レポート等の翻訳業務に従事。投資サークル「千里眼の会」の発起人として主宰、現在に至る。

日本国民の幸福度をロシア・ブラジル・韓国・中国と比較する

「幸福」の最大公約数的な基準

幸福の基準は人それぞれですし、国や地域によっても異なります。

例えば、宗教観や思想信条等を優先する世界的風潮を鑑みれば、拝金主義が世界を席巻しているという誤解は、改めざるを得ません。

それでも、最大公約数的な部分を拾いますと、以下の項目に収斂されると思われます。

「富の再分配が機能しているか」 「公的秩序に従うことが国民の利益と合致するか」 「国家が国民に正直か」 「楽して暮らせると考える輩を少しでも減らせるか」 「生活が維持できるか」

これらを踏まえながら、各国の現状を分析していきますが、まず分かり易いところから、ロシアとブラジル(中南米)から取り上げたいと思います。

「生涯、何とか食わせてくれ」ロシアの場合

ロシア国民の幸福の基準は、日本などより遥かに低く、雇用(=収入)と年金を保障してくれということ、「生涯、何とか食わせてくれ」というのが、国民の切なる願いです。

旧ソ連崩壊後、ゴルバチョフ氏に代わってロシア共和国の全権を掌握したのがエリツィン大統領(当時)でした。

そのエリツィン氏が国民にもたらしたもの、それは国家経済の崩壊でした。

その過程で、給料の遅配や年金の支給停止は日常茶飯事となり、ロシア国民は好むと好まざるにかかわらず、裏経済に手を染めることになりました。

因みに、賃金が何か月も未払いと言ったニュースを見かけますが、それでも労働者が生きていられるのは、副業に精を出しているからです。

そして裏経済に身を沈めることを余儀なくされた点では、旧ソ連で諜報機関に籍を置いていた連中も同様、ここに一般国民と元諜報員との接点が生まれました。

他方、エリツィン大統領は、国民の生活向上や福利厚生と言ったものには眼中になく、唯一の関心は、旧ソ連の国有資産を手下に無料同然で払い下げること、結果として生まれたのが「新興財閥(オリガルヒ)」です。

資産を廉価で受け渡しして貰えるのなら、儲からない方が嘘ですから、オリガルヒとその関係者は、ロシアの経済危機もどこ吹く風、給料も年金も手に入らない国民を尻目に、我が世の春を謳歌しました。

対して、エリツィン氏の後継者プーチン大統領は諜報機関出身、そして立場上、反「新興財閥」であると共に、国民重視の政治を志向することになります。

賃金の支払いと年金給付は万難を排してやり遂げる一方、失業に繋がる工場閉鎖や人員整理は極端に嫌うのも、この辺りに理由があります。

ですから、オリガルヒが人員削減策を打ち出すようなら、怒鳴りつけてでも撤回させることになります。

プーチン政権が外圧にも強靭なのは、生活を保障することで国民の支持を取り付ける一方、諜報機関出身者を起用して「新興財閥」に睨みを聞かせているからで、加えてクリミア半島を「失地回復」した以上、政権崩壊は有り得ないと断言しても差し支えありません。

「その日暮らしもままならぬ」ブラジルの場合

一方、インフレと失業、それに不況に見舞われているにもかかわらず、大統領を筆頭に政府要人が汚職に勤しんでいるのがブラジル、これでは国民の不満も爆発して大統領弾劾に至ったのは致し方ありません。

一部の特権階級を除き、国民の大多数にとって、その日暮らしすらままならないのですから、ブラジルはロシアより、状況は数段悪化している、政権転覆はおろかデフォルト(債務不履行宣言)すら有り得ると言わざるを得ません。

余談ながら、借金踏み倒しの常習犯で、ブラジルの隣国アルゼンチンでは、左翼政権が倒れ中道右派政権が樹立された直後、国際金融市場から国債の大規模起債が認められました。

国際金融資本に刃向うか従順かで、その国の命運が分かれることを教えてくれる、格好の例と言えます。

以上より、ロシアが最低限の国民の要望を満たしているのに対し、ブラジルはその点で落第生なことが判明しましたが、それでは日本とその周辺国は、どの様な状況に置かれているのでしょうか。

「ヘル朝鮮」韓国の場合

「ヘル朝鮮」なる言葉をご存知でしょうか。

「ヘル」は地獄の意、地獄図の様相を呈している北朝鮮を指しているのではなく、韓国の現状を若年層が嘆く時に使います。

面白いのは、韓国人は「朝鮮」を用いるのを極端に嫌い、朝鮮半島という日本の呼称にも言いがかりをつけ、韓半島に改称しろと抗議する一方で、この場合だけ「ヘル韓国」とか「ヘル大韓」と名付けないのは、都合の悪いことは「朝鮮」に押し付けろとの考えが、無意識に作動しているからです。

意訳すれば「生き地獄」となる「ヘル朝鮮」、韓国の若者は何故、ここまで絶望しているかと言えば、まず大学の価値が低下した点にあります。

韓国の大学進学率は70%、「徴兵逃れのためにも大学進学は必須」というお国柄ですから、教育費が馬鹿にならず、受験勉強代や授業料も学生が背負うことになりますが、進学率が高すぎるため、「大学進学がエリート街道に直結しない」事態が出現しました。

次に学生が取得したのが資格、同国では「スペック」と呼ばれるそうですが、これも皆が習得しては差別化が図れず、結局は更に借金を重ねた挙句に、「団栗の背比べ」に留まっています。

ですから決め手は、学歴でも資格でもなく縁故(コネ)、目指すは財閥系企業への就職ですから、財閥とその周辺への伝手を求めて奔走することになります。

しかも運良く職を得たとしても、早ければ30歳台で肩叩きが始まりますから、入社後も息が抜けないのです。

韓国は財閥が官僚や公企業(天下り公的機関)を従えて、富を独占している国家であり、富の再分配が機能しない社会と言わざるを得ず、経済格差は当たり前、持たざる者が負債を抱えて社会の第一歩を踏み出すのとは、雲泥の差です。

そして、財閥支配がもたらす最大の悪影響が「競争原理の否定」、全てを財閥が仕切っていますので、特に政府の入札は談合にすらなりません。

その結果が、韓国海軍が誇る「魚群探知機搭載救助艦」で、最新鋭ソナーと言いながら現実には魚群探知機を積んでいました。

それでは韓国民は、財閥を解体して富の再分配を実現する意志があるのかと言えば、残念ながら「財閥の一員になりたい」というのが本音、つまり「楽して一生暮らしたい」というのが国民の総意ですから、結局のところ財閥支配を肯定し、現状維持を選択してしまいます、たとえ「ヘル」であっても。

「党政官癒着で競争原理が働かない」中国の場合

中国も似たり寄ったり、中国共産党員が「支配階級」で、それ以外は「被支配階級」、但し、実状はもっと複雑です。

中国には戸籍が二種類あり、「農民工」と「非農民工」に分かれます。

都市住民に与えられるのは後者、農民は都市に出稼ぎに行っても、農民工ということで一切の恩恵を受けることができません。

戸籍を一本化する試みは、胡錦濤政権で始まっていますが、習近平政権になってから停滞しがちです。

それから、共産党員と言っても格差があります。

俗に「太子党」と呼ばれる「世襲」党員と、地方支部で入党が認められる「生え抜き」、それに功績を理由に入党が許される「叩き上げ」に分類されます。

因みに、習近平国家主席と王岐山政治局常務委員を「竹馬の友」の様に表現する報道を時に見受けますが、これは真っ赤な嘘、習国家主席は21才で入党、対して王常務委員は35才、要は習近平主席が「親の七光り」なのに対し、王氏は「叩き上げ」、親友なら自分が入党する時に口利きしている筈です。

韓国が「財政官癒着」なら、中国は「党政官癒着」、いずれにせよ競争原理が働きませんから、色々なことをやらかします。

先日、国産ステルス戦闘機X-2の試験飛行が成功し話題になりましたが、日経によればステルス戦闘機を量産化しているのは、米ロ中の三ヵ国とのことですが、厳密には誤りです。

中国がロシアから輸入しているのは事実で、国産化にも成功したと自慢していますが、実は飛べるのはロシア製だけ、輸入した戦闘機を解体しても、それを自前の技術として消化できませんでした。

ですから、外見だけステルスに見える戦闘機を並べることになりますが、当然ながら離発着しません。

帳尻合わせだけすれば良く、そのために予算を注ぎ込んでも良いというのであれば、税金は幾ら徴収しても足りません。

「まだ救いがある」我が国、日本の未来

さて、話を日本に戻しますと、バブル崩壊後に国家経済が瓦解する寸前まで日本は追い込まれました。

三洋証券の破綻を契機に世界規模で「日本売り」が始まり、底なし沼に沈んでいく感覚の時代もありました。

現状も、本来ならば危機的状況である筈です。

GDP(国内総生産)の2倍に相当する1,000兆円以上の国債発行残高を抱えながら、安穏としていられる国は他にありません。

では、一部の識者の見解に従って、財政赤字削減に本腰を入れるべきかと言えば、その場合はそれこそ世界中から袋叩きに会います。

理由は簡単、米国債と肩を並べる安全資産が、日本国債だからです。

アベノミクスのお蔭で、大雑把に言って1ドル=80円から120円まで円安に振れましたが、裏を返せば、ドル換算で資産価値は3分の2に減価したことになります。

ならば国債を初め日本国内の金融資産は売る一手と思いきや、外資は手持ちの国債を売却することなく、それどころか買い増しを続け、2015年末時点で国債発行残高の10%を海外勢が占めるに至りました。

つまり金融危機が発生した時に備えて、日本国債を確保しておこうというのが、外資の総意なのです。

1997年の段階で経済が沈没していたら、現在の日本は有り得ませんし、今でもデフォルトに追い込まれたら、革命が起こります。

その意味で幸せですし、更に早晩、中韓経済が立ち行かなくなります。

両国だけでほぼ全ての製造業分野で、余剰生産能力を抱え込んでいますから、中韓の経済活動が麻痺すれば、世界的にみて需給関係が改善しますし、それは製造立国日本にも好影響をもたらすことになります。

「富の再分配が機能しているか」「楽して暮らせると考える輩を少しでも減らせるか」という点は、今後の課題であることは間違いなく、ですから行財政改革が必要との結論になります。

ですが、「公的秩序に従うことが国民の利益と合致する」と考えている限り、財閥を初めとする私的な「閥」が跳梁跋扈するのを防ぐことができますし、一度も国勢調査したこともない中国(従って正確な人口は今だ不明)や、失業率を操作する韓国と比較して「国家が国民に正直」な日本には救いがあります。

問題は「生活が維持できるか」、それは「税負担軽減が可能」かどうかにかかっています。

幸運に恵まれている内に、策を講じるに限ります。

追記:下記ブログも併せてお読み頂ければ幸いです。 ※近現代中国考真・現代の超克

(了)

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4/28日経ビジネスオンライン 鈴置高史『「韓国発のドミノ」にクサビ打つ米国 木村幹教授に朴槿恵外交の行方を聞く(1)』について

嘘吐き韓国が昨年末の慰安婦日韓合意に往生している様子。4/30日経には

韓国、6月にも元慰安婦支援の財団設立 参加者数などカギ

【ソウル=峯岸博】韓国は従軍慰安婦問題をめぐる昨年末の日韓合意を踏まえ、元慰安婦支援の財団を6月にも設立する方向で調整を急ぐ。同国政府は元慰安婦の参加をどれだけ取りつけられるかを重視。日本が移転を求めるソウルの大使館前の慰安婦を象徴する少女像の扱いを含め、合意全体の履行のカギを握る。

 日韓合意は、韓国が設立する財団に日本政府が10億円を拠出することなどを通じ、慰安婦問題を最終的に解決させるもの。合意は少女像に関して「適切に解決されるよう努力する」としている。

 韓国では政府と民間人の作業チームが財団の事業内容や人選などを議論中だ。駐日韓国大使も務めた柳明桓(ユ・ミョンファン)元外交通商相が民間人の事実上のトップで、大学教授らが集う。

 日韓は20日の外務省局長級協議から本格検討に入った。韓国は5月にも設立準備委員会を発足し「早ければ6月、遅くとも7月に財団を立ち上げる」(メンバーの一人)と段取りを描く。

 少女像移転が実現しない場合でも、日本政府は財団に10億円を拠出する方針。ただ、自民党内に少女像移転が前提との強硬論があり、財団設立にあたり韓国が最低でも解決に取り組む決意を示すべきだとの声が強い。

 総選挙で勝利した野党の出方も懸案だ。革新系の「共に民主党」トップの金鍾仁(キム・ジョンイン)非常対策委員会代表は26日、別所浩郎駐韓大使との会談で再交渉に言及しなかった。市民団体が反発すると27日、同党報道官は日韓合意を認めないとの基本姿勢を改めて表明。躍進した「国民の党」を率いる安哲秀(アン・チョルス)共同代表も合意に慎重姿勢だ。

 朴槿恵(パク・クネ)大統領は法案拒否権を握るため合意が直ちに破棄される事態は考えにくい。16年ぶりに少数与党体制になった国会で野党が追及を先鋭化させれば、世論を刺激し風当たりが強まる恐れはある。合意推進派は元慰安婦との対話を通じ財団への参加者を増やして理解を広げたい考えだ。>(以上)

Yahooニュース 4/27中央日報日本語版には

少女像撤去?…朴大統領「言及もされていない」vs日本政府「合意事項」フォームの始まり

日本の萩生田光一官房副長官が27日、在韓日本大使館前の慰安婦少女像の撤去問題もまた「韓日慰安婦合意」事項に該当するという立場を重ねて明らかにした。 萩生田副長官はこの日午前の記者会見で、慰安婦少女像の撤去について「(合意の)細部事項の1つに含まれているものと認識している」と述べたと産経新聞が伝えた。 一方で朴大統領は26日、韓国の報道機関編集・報道局長団昼食懇談会で「慰安婦少女像の撤去と(慰安婦合意が)関連しているという主張が出ているが、(韓日)合意の過程で言及も全くされていない問題」と話していた。 このように朴大統領の主張と日本政府の主張が正面から対峙しながら韓日政府間の慰安婦合意が再び両国の争点になっている。>(以上)

合意文書を作成しなかったのが良かったのかどうか?それ以前に捏造の慰安婦問題を認めたことが良かったのかどうか?米国の圧力があったにしろ、強制性を認めた訳ではないという言い訳があったにしろです。一旦認めた以上は元に戻すのは非常に難しいでしょうから、この合意を活かして、日本に有利な道を探らないと。韓国側の約束は実行できないので、韓国政府が世界にデイスカウント・ジャパンしてきたのをその間止めさすことができます。民間は抑えきれないという論理は西太后の「義和団の乱」時にこれを利用して、欧米列強・洋務派を抑え込もうとしたことを思い起こさせます。中華・小中華とも似たような発想・体質があるという事です。

https://kotobank.jp/word/%E7%BE%A9%E5%92%8C%E5%9B%A3%E4%BA%8B%E4%BB%B6-480663

4/28元朝日新聞主筆の若宮啓文氏が北京で亡くなったとのこと。「スパイとして用済みになったから殺された」という説がネットでは流れていましたが、中国内では何が起きてもおかしくありません。日本人は中国に旅行に行くのも考えた方が良いでしょう。

日本もGSOMIAやACSAを結ぶ必要はありません。いつ敵方に寝返るか分からない国に情報や物品支援をする必要はありません。駐韓邦人は早く帰ってきた方が良いでしょう。

木村氏の言うように米国が「韓国に「中国包囲網」に入れとは言わず、ただ「中国側には行くなよ」とだけ申し渡した」のであれば、ルトワックの言う「ロシア」と同じくらいの扱いでは。そうであれば、在韓米軍はお目付け役で最少人数で良いし、戦時作戦統制権も韓国に返還するようになるでしょう。

記事

Kishida & Yun

2015年12月28日、日韓の外相が従軍慰安婦問題で合意したが、先行きには暗雲が(写真:AP/アフロ)

  「米国は『韓国発のドミノ』にクサビを打つ」――。木村幹・神戸大学大学院教授は言う(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。

宙に浮く「慰安婦合意」

木村:韓国政府は外交的に動きが取れなくなりました。日本との「慰安婦合意」も、進めるうちにどこかで宙に浮く可能性が高くなりました。

—4月13日の総選挙で、与党が過半数割れしたからですか?

Kan Kimura

木村幹(きむら・かん) 神戸大学大学院・国際協力研究科教授、法学博士(京都大学)。1966年大阪府生まれ、京都大学大学院法学研究科博士前期課程修了。専攻は比較政治学、朝鮮半島地域研究。政治的指導者の人物像や時代状況から韓国という国と韓国人を読み解いて見せる。受賞作は『朝鮮/韓国ナショナリズムと「小国」意識』(ミネルヴァ書房、第13回アジア・太平洋賞特別賞受賞)と『韓国における「権威主義的」体制の成立』(同、第25回サントリー学芸賞受賞)。一般向け書籍に『朝鮮半島をどう見るか』(集英社新書)、『韓国現代史』(中公新書)がある。最新作の『日韓歴史認識問題とは何か』(ミネルヴァ書房)で第16回 読売・吉野作造賞を受賞した。ホームページはこちら

木村:最後の一撃がそれでした。合意では元慰安婦の人々を支援する財団をまず韓国政府が作り、日本政府も10億円出資することになっています。

 しかし野党が優位に立った政局で、不人気な合意案に基づく財団を設立するのは難しい。第1野党の共に民主党も、第2野党の国民党も「慰安婦問題は日本と再交渉すべきだ」と要求してきました。

 財団の理事を引き受ける人を見つけることも容易ではありません。進水するやいなや沈没しそうな船の船長や航海長をやろうという人はまず、いないからです。

 仮に財団が設立されるにしても、慰安婦問題に影響力を持つ人々は、次の大統領が決まって組織が確かなものになったのを見てから理事などに就任した方がいい、と考えるでしょう。

安倍の土下座が見たい

—総選挙での与党敗北がなければ、韓国政府は「慰安婦合意」を履行できたのでしょうか。

鈴置:そこがポイントです。韓国のほとんどの世論調査で「合意反対」が「賛成」を上回っています。総選挙以前から、履行は難しかった。朴槿恵(パク・クンヘ)政権がこの合意をのんだこと自体が不思議です。

 元慰安婦の前で安倍晋三首相が土下座する光景を見たい、というのが韓国の空気でした。これも念頭に置いてでしょう、朴槿恵大統領も「国民と当事者が納得する方法」を日本に要求していました。

 だから、2015年12月28日に「首相の謝罪の言葉」を岸田文雄外相が代読した後「たった、これだけ?」と不満の声が国民から上がったのです。

 さらに日韓は合意で「問題の最終的かつ不可逆的解決」も約束しました。長い間、外交的武器として愛用してきた「慰安婦カード」を韓国は放棄させられたのです。指導層の多くは、これを致命的な外交失策と見なしました。

 そもそも、韓国はこんなに焦って日本と「慰安婦合意」を取り交わす必要があったのか? 朴槿恵政権には「日本側に誠意がないので解決できない」と国内外で言い続ける手があったはずだ――との疑問がわきます。

米国の怒りでパニック

木村:韓国を動かしたのはひとえに米国の激しい怒りでした。それに火を付けたのは2015年の「天安門事件」です。

 米国の反対を押し切って、朴槿恵大統領は2015年9月3日の抗日戦勝70周年記念式典に参加しました。目玉行事は中国の軍事力増強を誇示する軍事パレードでした。朴槿恵大統領は、習近平主席やプーチン大統領と一緒に天安門の楼上に昇り参観しました。

 私はその少し後、10月14日にワシントンで開かれたシンポジウムに参加しました。韓国から来た外交関係者に対し、米国の専門家が一様に「大統領が天安門に昇るとは、いったい何を考えているのか」と問い詰める光景を何度も目撃しました(「ルビコン河で溺れ、中国側に流れ着いた韓国」参照)。

鈴置:ワシントンでは「韓国はレッドチーム(敵方)に回った」との表現も使われていると、当時の韓国紙は報じました。

木村:2日後の10月16日の米韓首脳会談でも、オバマ(Barack Obama)大統領は韓国を「裏切り者扱い」しました。朴槿恵大統領との共同会見の席上、はっきりと「韓国が中国側ではなく米国側に立つよう」求めたのです(「蟻地獄の中でもがく韓国」参照)。

 韓国政府はパニックに陥りました。「天安門に昇ったぐらいでこんなに叱られるなんて」と驚いた韓国人もいました。

 今までも中国に接近してきた。なのに「たかが中国の主催する式典に参加しただけ」で突然に米国から叱られるのは理不尽――と、彼らは考えたのです。

 しかし、米国の怒りに直面することになった韓国の外交当局としては放っておくわけにもいかない。米国に「誠意」を見せることで何とか怒りをなだめようと、日本との関係改善を急ぐことにしたのです。「慰安婦」はそのカードの1つでした。

THAADも似た構図

—日本との関係改善がなぜ「誠意」になるのでしょうか。

木村:中国の脅威が深刻化する中、米国は日米韓の3国軍事協力体制への参加を韓国に迫っていました。これに対し韓国は「慰安婦問題が未解決である間は、日本との軍事協力はできない。これは韓国の対日外交の大原則である」と言い続けて、拒否してきました。

 ことに朴槿恵大統領が「慰安婦問題の解決なしに日本との関係は改善できない」と繰り返し宣言してしまっていた。だから、米国の怒りを解き日韓関係を改善するには、自らがその前提条件としていた「慰安婦問題」の解決に積極的に動かざるを得なくなったのです。

 THAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム=サード)の在韓米軍配備も似た構図です。韓国は中国の顔色を見て事実上、配備を拒否してきた。この問題についても、米国から「裏切り者扱い」されないためには、受け入れるしかないと判断したのでしょう。

—米国の怒りを和らげるために「慰安婦」や「THAAD」でその意向に沿ったということですね。

木村:その通りです。

  • 急展開する朝鮮半島情勢                                                 
2015
9月3日 朴槿恵大統領、米国の制止を振り切り天安門で軍事パレードを参観
9月19日 日本で安全関連保障法が成立
10月5日 TPP創設に合意
10月16日 米韓首脳会談後の会見でオバマ大統領が韓国の中国傾斜を批判
10月27日 米イージス艦「ラッセン」、南シナ海の中国の人口島に接近
12月28日 日韓が「慰安婦合意」
2016
1月6日 北朝鮮、4回目の核実験
1月7日 韓国の最大手紙の朝鮮日報と与党幹部、核武装を主張
2月7日 北朝鮮、長距離弾道ミサイル実験
韓国、在韓米軍基地へのTHAAD配備を容認
2月17日 王毅外相、非核化と平和協定を同時に進める交渉を提案
2月23日 米中外相、非核化と平和協定を話し合う6カ国協議をともに提唱
3月2日 安保理、対北制裁案を採択
3月7日 米韓合同軍事演習開始(4月30日まで)
4月13日 韓国総選挙で与党が過半数割れ、「慰安婦合意」の履行に疑問符

「中等距離」に変化なし

—では韓国は「離米従中」をやめ、米国側に戻るのでしょうか。

木村:これは明確に「否」です。日本人は現在の米中関係を一種のゼロサムゲームと見がちです。一方、ほとんどの韓国人はそうは考えません。もちろん朴槿恵政権も同じです。

 彼らが追求しているのは、韓国の生存に重要な2つの国、つまり「米国と中国の双方」から支持を取り付けることであり、それは可能だと考えているのです。

 北朝鮮の核実験も含む最近の一連の出来事を通じ、韓国では「米国が大事」ということが再確認されました。が、それにより「中国も大事」という前提条件がひっくり返ったわけではないのです。

 韓国外交の基本路線に変化は全くありません。朴槿恵政権は今も、米中関係を対立構造として捉え両者を天秤にかけるような発言を慎んでいます。

大統領にブーメラン

 もし、韓国が本当に戻るつもりなら米国が求めていた、GSOMIA(軍事情報包括保護協定)やACSA(物品役務相互提供協定)など、日本との軍事協力強化を即座に進めるはずです。

 なぜなら、これらの軍事協定こそが、中国に対抗するための日米韓3カ国軍事協力を具体的に進めるのに必要だからです。でも韓国政府は依然として、少なくとも今のところはこれら協定を積極的に進める姿勢を見せていません。

 加えて、総選挙で与党が負けてしまいましたので、日本との軍事協力はさらに難しくなりました。それをやれば「朴槿恵=親日」を訴える野党の格好の攻撃対象になってしまうからです。

 反対は与党の中からも挙がるでしょう。次期大統領選挙をうかがう与党の有力者たちからすれば、現政権が不人気な軍事協定を無理押しすれば、自分たちの選挙に直ちに影響するからです。

 李明博(イ・ミョンバク)政権下で日韓GSOMIAが締結寸前まで進んだ時、当時与党の最有力大統領候補であった朴槿恵大統領が、この締結を阻止したことがありました。

 大統領は、自身が過去に行ったのと同じ行動が、今度は自分に対しなされるのを苦々しく見守ることになるかもしれません。

薄れた韓国への関心

—米国はそんな韓国をちゃんと引き戻そうとしないのですか?

木村:私の見立てでは、米国は韓国をそこまで神経質に管理するつもりはないと思います。2016年3月に別のワシントンでの会合に参加しましたが、わずか半年前とはうって変わって、米国の安全保障専門家の韓国への関心は大きく薄れていました。

 米国の専門家は、どんどん中国側に傾いていた韓国の進路にクサビを打ち込み歯止めをかけたことで、とりあえず満足していると思います。

 彼らは、もし再び韓国が中国側に傾くなら、その時にまた怒って見せればいい――くらいに考えているのでしょう。

「見せしめ」に叱る

 言い替えるなら、こうなります。南シナ海の軍事拠点化を進める中国に対し、米国は日本を含む周辺国を糾合し、対抗する態勢を取り始めている。そんな時、同盟国であるはずの韓国が中国側にどんどんなびいていくのは、他国に示しがつかない。

 米中双方から利を得る韓国を放置すれば、他のアジア諸国の中にも、韓国と同じように動けばいいと考え、米国を離れ中国に傾く国が出かねない。「米国も中国も」という政策が可能なら、彼らにとって得られるものも大きいし、何よりも楽なのです。

 アジア諸国の間で「韓国発のドミノ」が起きかねなかったのです。だからこそオバマ大統領も記者会見の席で、朴槿恵大統領に直接釘を刺して見せたわけです。その意味では、他のアジア諸国への「見せしめ」として韓国は叱られたのです。

 ただ、それは韓国そのものが米国にとって特段の重要性を持っているということではありません。南シナ海から遠く当事者意識に乏しいうえ、海軍力の脆弱な韓国には多くは期待できないからです。日本や豪州、ベトナム、フィリピンと韓国の立ち位置は基本的に異なるのです。

 そこで米国は韓国に「中国包囲網」に入れとは言わず、ただ「中国側には行くなよ」とだけ申し渡したのです。

(次回に続く)=5月2日に掲載予定

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4/27現代ビジネス 高橋洋一『中国経済、調べてみたらやっぱりウソだらけ!~本当のGDPは、公式発表の3分の1!?』について

昨日のブログの続きです。高橋氏は「中国の実際のGDPは、公式発表されている数値の三分の一程度ではないか」と見ているようですが、論拠は彼の書いた『中国GDPの大嘘』を読まないと分からないようです。2003年にSARSが蔓延した時、4/3衛生部長(衛生大臣)は「患者は12人しかいないので大したことはない」と豪語しました。小生は当時北京にいて、地元の病院関係者に聞くと1000人以上いるとの話。4/20衛生部長解任後、少しずつ患者数を増やしていきました。1日当たり100人ずつ増やして、10日で正しい数字になるよう帳尻合わせしたのがハッキリ分かりました。中国は都合の悪いことは、1/10以下にし、自分を大きく見せるときは10倍にするのはよくやります。南京大虐殺もその例です。(便衣兵は殺害されても国際法違反ではありませんから)

http://www.sozogaku.com/fkd/cf/CZ0200721.html

中国人との交渉も相手はこちらが日本人と分かると、10倍に吹っかけてきたものでした。当時(97年~2005年まで)人民元と日本円を換算すれば安く感じて、買ってしまう日本人は多かったです。今は中国の物価が上がっているので、どの程度吹っかけてきているのかは分かりませんが。小生が買物するときは、中国人が買った後、「今の値段で」と言って買ったものです。

メルマガ【国際インテリジェンス機密ファイル】によれば高橋氏は同書の中で次のように言っているとのこと。

<AKBを輸出して民主化を。私は講演などで、中国の民主化を促進させるため、中国にAKB48文化をどんどん輸出し、上海AKB(SNH48)のようなグループを各都市に作るべし、と提案している。講演会場からは笑い声が巻き起こるが、私は半分、本気だ。

AKBでは、選挙によって、立ち位置のセンターや映画出演などが決まる。選挙は民主主義の根幹である。中国の人々に、「選挙はいい、民主主義も素晴らしい」と思わせるのだ。すると、「なぜ為政者だけは選挙で選べないのだ」となる。>(以上)

中国人に民主化の意義を説いても無駄な気がします。満族の西太后ですら、「中華思想」に毒されて、西洋の文明を採り入れるのに時間がかかりました。それで、日清戦争に負ける訳です。「頤和園」造園に海軍予算を流用したからというのが言い訳として使われていますが。選挙しても銃剣で脅す北朝鮮方式になるのでは。香港の行政長官選挙や立法会議員選挙も共産党のお眼鏡に適った人間や親中派が多数を占めるようにしています。どんなに立派な法があっても、その通り遣ったためしがないのが中国ですので。

記事

Xi Jinping-2

【PHOTO】gettyimages

中国の首相自身も信用していない経済統計

発売即重版となった、高橋洋一氏の話題の書『中国GDPの大嘘』前編ではソ連のデタラメな統計と、その手法を中国が継承してしまったことを指摘したが、後編ではいよいよ中国の「間違いだらけの数値」を暴いていく。

「中国の経済統計、指標などまったく信用できない」

こう公言したのは、のちに首相の座に就く李克強である。

オフレコではあったが、この発言が飛び出したのは2007年9月、大連で開催された「第一回ダボス会議」でのこと。当時、李克強は遼寧省の共産党委員会書記、すなわちトップで、温家宝首相とともにダボス会議のホスト役を務めていた。

冒頭の衝撃的な発言が飛び出したのは、アメリカ経済界代表団との会食の席だった。オフレコという前提で、「中国の経済統計、指標は、まったく信用できない。遼寧省のGDP成長率も信用できない。私が信用してチェックしているのは、わずか三つの統計数値だけ。その三つとは電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行融資額。この三つの統計を見て、遼寧省の経済成長の本当のスピードを測ることが可能になる。他の中国の経済統計、とりわけGDPなどは、ただの『参考用数値』に過ぎない」と漏らしてしまったのだ。

同席していたアメリカの駐中国大使、クラーク・ラントは国務省に報告。これは部外秘だったが、2010年、機密情報を漏洩させるウィキリークスによって暴露されてしまった。この後、李克強が信用していたとされる三つの指標は「克強指数」とまでいわれるようになり、一部のエコノミストやメディアが信頼する数値となっている。

克強指数についても後述するが、李克強自身が「参考用数値」と述べたGDPに関しては、参考にすらならないという事実を、説明しよう。

中国の「実際の数値」を暴く方法

経済統計の数値の真贋を見抜くには、複数の統計を合わせてみるとわかる。そうして矛盾点があるか整合性があるかを見極め、統計数値の信頼性を計るのだ。たとえば前述したGDPと失業率の関係。ところが中国は失業率を発表していない。社会主義国の「建前」として失業はないということなのかもしれない。

そこで私が注目したのが貿易統計だ。中国が発表する統計のうち、数少ない、というか、唯一信用できるのが、この貿易統計。貿易統計は外国との関係もあって捏造しにくい。相手国の「正しい」対中国貿易量を集計すれば、正確な数値が求められるからだ。

この事実を踏まえて2015年の中国の貿易統計をチェックしてみると、輸出額は前年比8.0%減。輸入額たるや14.1%の減少となっているが、中国当局はその原因を資源価格の低下、としている。しかし、同年の中国のGDPに対する貿易依存度は40.25%……GDP成長率6.9%を達成したとしたら、内需が異常に上昇した、ということになる。

中国では、習近平が国家主席に就任すると、最低賃金を引き上げている。場所によってまちまちだが、おしなべて三年で四割ほど最低賃金は上昇している。それに合わせて物価も上昇。コンビニを覗いてみるとわかるが、商品によっては日本の物価より高くなっているケースも珍しくない。

前に紹介したように、イギリスのBBCニュースが疑問を投げかけているように、「成長率6.9%」という数値にも、大いに疑問が付いて回る。そこで、どうしてこの「偽装数値」が出てきたのか、私なりの推測を述べてみよう。

2012年の第18回中国共産党大会。習近平が「偉大な中国の夢」と語ったその大会で、具体的な夢を語っている。

「2020年にGDPと国民の平均収入レベルを、それぞれ二倍にする」 二倍の基準は2010年比だ。これを達成させるには年平均七%成長が求められる。習近平に限らず中国人のメンタリティでは、メンツを重んじる。なにより景気が悪くなれば、政権基盤を揺るがしかねない。それ以降、七%成長は政権の至上命題になったのだ。

「公式統計」によれば、2012年の固定資産投資総額はおよそ36兆人民元(610兆円)。前年比20%という高い伸びだ。投資の伸びで、この年の成長率も、かなり押し上げられている。

ちなみに、公式発表では2012年のGDP成長率は7.8%になっている。「中国の夢」という大風呂敷を広げただけあって、その年はどんなことがあっても高い成長率を維持しなければならなかった、そういう事情が強くうかがえる。

ところが2013年には景気が息切れしてきた。李克強は懸念を示し、「経済成長を達成させるための経済刺激、政府の直接投資に頼ろうとしても、その余地は決して大きくはない。市場メカニズムに任せなくてはならない」と発言したのだ。

無理に成長を維持しようとするなら、もう一段の投資を行わなければならない。李克強はそれには限界があるとし、低成長の痛みを受け入れるよう求めたのだ。

4年間で約2000兆円の景気刺激策を行った結果…

さらに中国には、2008年の四兆元(約68兆円)投資と、空前の金融緩和による後遺症がある。このとき、リーマンショックによる経済の落ち込みを防ぐための大型投資を行なったのだ。これが奏功し世界経済は立ち直りのきっかけをつかんだが、中国はその後、過剰設備などに苦しむことになる。

しかも四兆人民元のはずだった景気刺激策はその後も続き、2009年からの四年間で、なんと110兆人民元(およそ1900兆円弱)の固定資産投資が行なわれた。過剰な投資は、各地にゴーストタウンを生み出すなど、いまだに負の遺産を遺している。そのような背景もあって、李克強は経済政策の転換を匂わせた。

しかし中国政府内でも、これに同調する容認派と慎重派に分かれた。特に2014年には、全国人民代表大会(全人代=日本の国会に相当)の前に、習近平主席と李克強首相との間で衝突があったという。その年のGDP成長率7%を提案した李克強に対し、習近平は7.5%を主張して譲らなかったというのだ。

習近平の「中国の夢」にこだわる一面だった。さらに一年後の全人代では「7%前後」と、前年より目標値を下げている。しかも「前後」としているところがミソだ。それだけ自信がなかったかとも受け取れる。

そして2015年のGDPの伸び率は6.9%……かなりゲタを履かせた数字であることは容易に想像がつくが、実は発表前から「発表される数値は6.8とか6.9あたりではないか」という予想が、私の耳にも届いていた。

別に正確かつ実態を表した数字を予想してのことではない。「政治的に装飾された数値」としての数字だ。つまり、経済成長が続いている資本主義社会では、成長率7.0%や6.9%の違いは、さほどではない。この程度なら統計誤差の範囲であり、ほぼ目標達成と胸を張れる数値だ。 しかし中国では、これは多分に政治的なメッセージなのである。

すなわち対外的には、「やや経済成長は鈍化しているけれど、心配しなくてもいい」という、やや願望を込めたメッセージ。そして国内的には、「七%達成はなんとしてもやり遂げる」という強い意志の表明なのである。

が、その中国も、統計のゴマカシもそろそろ限界と見て、今後少しずつ数値を下げてくることは間違いない。日本のメディア、特にNHKを代表とする大メディアは、中国当局の発表をそのまま受けて、「7%成長を割り込むのは実に25年ぶり」などと伝えているが、実態はもっとかけ離れたところにある。

実際のGDPは発表数値の3分の1!?

ここでもう一度、2015年の「中国GDP成長率7%」について検証してみよう。

2015年通期の成長率は六・九%だったが、上半期に限っていえば7.0%を達成。年初に立てた目標に達したわけで、決して低い成長率ではない。

その一方で、中国政府は、2014年11月から翌年8月までの間、五回もの金利の引き下げを行なっている。さらに公共事業も追加で行うなど、景気刺激策に躍起になっていた。7%もの経済成長を達成したとすれば、そこまで景気刺激策を施さなくてもいいはずなのだが……。

別の角度から見てみよう。信用できない中国の経済統計のなかでも、農業生産と工業生産に関しては、しっかりデータを取っている節がうかがえる。小売や物流といった第三次産業に関する統計には弱点があるものの、計画経済を進めるために、1950年代からしっかり生産量のデータをとっていた。

この農業および工業の2015年のGDP成長率を産業別のデータのなかから見ると、農林業に畜産と漁業を加えたところで3.6%、工業が6.0%の成長となっている。この業種別GDPのほかに、自動車、鉄鋼、電力といった主要二七の工業製品の生産量データも出される。

これらをチェックしてみると、2015年上半期に六%以上の成長を達成した製品は四製品のみ。さらに、13の工業製品は、伸び率がマイナスを記録している。

工業製品の生産量の伸びは平均で一%程度。工業製品のデータに関しては割と正確に採取される。そうなると、産業別の成長率六%の伸びと、工業製品別の生産量の伸びとが、かなり乖離していることがわかる。

粉飾の匂いがプンプンするのは工業成長率6%だ。こういった数値を積み重ね、重ね合わせていくと、どうしても中国経済GDP6.9%成長というのは、相当にゲタを履かせた数値だということが判明する。

私は、中国の実際のGDPは、公式発表されている数値の三分の一程度ではないかと見ている。

(続きは本書をご覧ください)

big lie of China's GDP

中国経済の暗い未来を指摘する話題の書。世界、そして日本への影響は?

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4/26現代ビジネス 高橋洋一『中国「GDP世界二位」の大嘘を暴く!~デタラメな数字を産む統計偽装のカラクリが分かった』について

4/27~29までは日光にいますので、続きは4/30に報告します。

毛沢東がソ連と袂を分かったのは、スターリンが死んでフルシチョフの時代となり、フルシチョフがスターリンを批判したため、ソ連を修正社会主義と呼んで嫌ったためです。スターリンと毛沢東は極悪非道の三悪人の内の二人ですから、気も合ったのでしょう。因みにもう一人はヒットラーです。粛清・虐殺した人間の数が半端でないからです。ドラッカーの「イノベーターの条件:」にあります。

数字の改竄・捏造の根本原因は一党独裁にあり、その弊害があらゆる面で出て来ているという事でしょう。人類の叡智である三権分立や基本的人権について配慮しなかったマルキシズムの制度設計が誤りだったという事です。これに中国人の「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という基本的価値観が合わされれば、「何でもあり」となります。中国の数字が信用できないのは企業でも同じで、少なくとも3種類の財務諸表を作成、監督官庁、株主、銀行とそれぞれ数字が違います。所謂3重帳簿と言う代物です。

数字の誤魔化しは古くから行われ、毛沢東時代には穀物の収穫量を大目に報告したため、「大躍進」ならぬ「大量餓死」を引き起こすことになりました。人権の概念がないため、為政者は何人人民が死んでも、自分に関係がない限り、何も感じません。独裁者の特徴です。北朝鮮の金正恩もそうです。

近くはSARS患者数も誤魔化して発表していました。広州市呼吸病研究所所長の鐘南山氏が告発していなければ、被害はもっと大きくなったかもしれません。これに対し数字の改竄に手を貸していたと思われるのがマーガレット・チャン現WHO事務局長です。その論功行賞で事務局長の座を射止めたのではと思われます。悪を為すことによって出世する社会は唾棄すべきものです。日本もこうならないようにしないと。日本は悪を為すと言うより、不作為、見て見ぬ振りをする輩が多いと感じますが。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B3%E9%A6%AE%E5%AF%8C%E7%8F%8D

記事

Chinese crowd

【PHOTO】gettyimages

あまりに悲観的な中国の未来

2016年に入って世界経済が混沌としてきた。そして、この混乱はしばらくおさまりそうにもない。

その震源地の一つに中国経済の崩壊がある。中国の株式市場は2015年夏に始まり、2016年春の段階で立ち直りの兆しは見えない。株式市場の混乱は実体経済を脅かし、それがさらに株式市場を混乱させる「負のスパイラル」は今後も続く可能性大である。

さらにいえば中国経済の崩壊は、まだ序章に過ぎず、これから本格化すると私は見ている。それはあたかも、ソビエト連邦崩壊を想起させる状況であり、これは偶然の一致ではない。

元財務官僚で、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)などを歴任した高橋洋一氏の新著『中国GDPの大嘘』。発売即重版となった話題の一冊を特別公開する。

法政大学に日本統計研究所という研究機関がある。ここが興味深い研究レポートをまとめてくれた。ソ連の崩壊の原因にもつながった統計偽装について、その実態を生々しく伝えてくれているのだ。

ソビエトが崩壊したのは、その経済停滞が大きな要因だが、ソビエトを間違った方向に導いたのが統計偽装である。統計偽装はソ連崩壊まで続けられ、その日まで公にならなかた。白日のもとにさらされるようになったのは、ソ連が崩壊し、関係者がようやく自由に発言できるようになってからである。

中国は、ソ連をまねて中央集権的な統計組織を構築。現在では中国国家統計局として、各種統計を集中管理している。当然、統計の算出方法もソ連から指導を受けていると推察される。

現在の中国は、情報公開の面で国際機関による調査団を受け入れないだろう。ということは、しばらくの間、中国の統計は信用できない。

そこで私は、中国経済の実態に迫るとともに、中国統計の偽装についても調べてきた。そこから導き出された答えは、あまりにも悲観的な中国の未来である。今後、さらに混乱を招く中国情勢が、世界に波及する――この事態にどう対処したらいいのか。その解を求めるのはかなり困難かもしれない。

しかし看過しておけば、中国人民のみならず、日本を含めた諸外国まで災禍に巻き込むことになる。最悪の事態だけはなんとか避けられないものか。どこかに処方箋がないものか。いまからでも間に合うのではないか――。

そんな思いから、私は中国経済に関する新著を上梓した。その一部を、二回に分けて公開したい。

ソ連のデタラメ統計を受け継いだ中国

大きな船が航海に出たとしよう。安全な航海には信頼できる海図と、航路を綿密に調べ上げたデータ、そして船の正確な状況認識が必要だ。

そういった情報なしに出航したとしたら、どうなるだろうか。しかも自分のことしか考えない、チームワークの悪いクルーたちによって運航されているとしたら……誰がこんな船に乗りたいと思うであろうか。知らずに乗っている乗客は、不幸の極みというほかはない。 この船の航海は、国家の運営にもたとえられる。国家の政治・経済の運営に必要な「海図」は、各種統計データということになる。正確な統計データがあってこそ、国の進路を誤らない政策が打ち出せるというものだ。

ところが正確な統計データを出さない、作れない、データを捏造、改竄していたとしたら、どうなるであろうか。航海でいえば、いいかげんでデタラメな海図を作り、それを頼りに海に出るようなものである。遭難した船は沈没する。

では、遭難した国家はどうなるか……。

中国当局が発表する統計データや経済指標は、押しなべて信用できない。その解説は後述するとして、なぜ統計データがいいかげんに作成されるか、その理由から説明しよう。

中国の統計システムは、社会主義国家の「先輩」である旧ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)に学んでいる。1949年に誕生したばかりの中華人民共和国は、経済的な大改革を断行した。が、その司令塔は、ソ連大使館だった。

ソ連から一万人もの顧問が北京にやって来て、四万人のロシア語を習得した中国人ともに中国の産業育成に当たった。中国の経済は10年以内にイギリスを追い越し、15年以内にアメリカに追い付くという目標を打ち立てて――。

そのロシア人顧問団が持ち込んだなかに、旧ソ連の統計システムもあった。

アメリカに追い付くという壮大な目標は達せられなかったものの、それなりに産業は育っていった。すると1960年、毛沢東はロシア人の顧問団を追い返し、ソ連式のシステムを中国独特のシステムに改めようとする。そうして大躍進政策や文化大革命を経て、鄧小平の改革開放を迎える。その間、このソ連式の統計システムだけは脈々と生き残っていたのである。

その手法はソ連国内で50年間も使用され続け、デタラメ統計を生み出してきた。これをもとに国家運営するわけだから、国家が崩壊するのも無理はない。

問題は、そのデタラメ統計を世界が信じていたということ――。

捏造は、半端なレベルではなかった

たとえばアメリカのノーベル経済学賞受賞者のポール・サミュエルソン。彼はソ連が出すデタラメ数値を信じて、「ソ連は成長している」と言い切ってしまった。サミュエルソンほどの偉人ですら騙されてしまう。それだけ、統計データの虚偽を見抜くのは難しいことなのである。

しかも、ソ連がやっていた捏造は、半端なレベルではない。

ソ連が崩壊してみて初めてわかったことだが、実は、そのGDPは半分しかなかった。1928年から1985年までの国民所得の伸びは、ソ連の公式統計によると90倍となっているが、実際には6.5倍しかなかった。平均成長率に至っては、8.3%成長しているとしたのに、実際は3.3%しかなかった……。

この事実は、ソ連が崩壊して初めて明るみに出た。ゴルバチョフ書記長は人がいいので「ペレストロイカ」(改革政策)や「グラスノスチ」(情報公開)をやってしまい、白日のもとにさらしてしまったのだ。

この統計システムをそのまま引き継いでいる中国が、果たして正確な統計の取り方をしているかどうか。「お師匠」がデタラメだったから「生徒」は真面目にやります、ということが果たして起こりえるのか。

次にその検証を行いたい。

偽造統計はこうして作る

まず、ソ連が長年にわたって虚偽の統計を取り続けてきた理由と手法を探ってみよう。

旧ソ連およびロシアの統計に関して、興味深い研究レポートがある。一つは、法政大学日本統計研究所が発行した『ロシアにおける統計制度・政策の改革(Ⅱ)』(1994年)。これは経済学博士でロシア科学アカデミー・ヨーロッパ比較社会・経済研究主任のヴァレンチン・ミハイロヴィッチ・クロードフ氏の論文「1991~1993ロシア経済状況の統計と判断」と題された論文などを集めたものだ。

もう一つは、同じく法政大学日本統計研究所がまとめた『統計研究参考資料 No.32 ペレストロイカとソ連統計』(1989年)。これはソ連中央統計局長のエム・エス・コロリョフ氏の論文「統計のペレストロイカの諸課題」などを収録した論文集である。 いずれも旧ソ連の統計作成に責任者として直接関わった、あるいは間近にいた人々の書き記した論文だけに、生々しい実態が明らかにされている。 

結論からいうと、諸悪の根源は社会主義体制下における官僚主義だ。計画経済における無理な経済政策も元凶だと断言していい。

これは社会主義国・ソ連の誕生とも関係している。社会主義国の誕生直後は、アメリカを代表する資本主意国家陣営と張り合った。そうした構図が世界地図上に描かれた。「経済発展において、なんとしても資本主義国家には負けられない」という意識と自負心がソ連首脳部に強かったことは、これらの論文からもうかがえる。

当時、統計システムとして有効な手法が現われると、時の書記長、スターリンは「数字の遊び」と批判し、封じている。スターリンがなぜ、この有効な手法を封印したか正確な理由は記されていないが、想像はつく。

このスターリンの仕打ちを批判した経済学者で、ソ連中央統計局を指導したぺ・イ・ポポフが次のような言葉を書き遺している。

「統計は、それぞれの時点において希望される数字を与え得るものではない……それは現実を表現する数字だけを与えるのだ」

わかりやすくいうと、国が計画し目標とした数値に統計を合わせるのではなく、現実や実態を表すのが統計だ、というのだ。民主主義国家では当たり前のことが、統制経済下では、当たり前ではなかった。

疑うヤツは人民の敵

このように正確な統計データを集計しようとした指導的職員は、統計機関から追放された。多くの真っ当な統計家は、「人民の敵」というレッテルを貼られ、弾圧されていった。

わかりやすくいえば、国が立派な経済計画を立てたのだから、どんなことがあっても達成したことにしなければならない、統計はそれに合わせるべきだ、という国家の意志が強く作用している。

これは企業の粉飾事件にも似た構図がある、2015年に発覚した東芝の粉飾事件も同様の構図。歴代の社長が、自分が社長でいる間は好業績でなければならない。そこで、数字を操作して部下たちに好業績をでっち上げさせた。東芝と社会主義国の統計システムは二重写しになる。

上場企業の場合、監査法人による監査を受けて決算手続を終える。この監査は、企業の役員等とは利害関係のない、あくまで第三者でなければならない。独立性が保たれていなければならないのだ。つまり、監査に、情実による手心が加わってはならない。

同様に、統計データを作成する組織にも、独立性がなければならない。ソ連の統計システムの欠点は、この自主独立の統計活動が保障されていなかった点にある。

官僚主義の問題と偽造統計システムの手法は、それをそっくり導入した社会主義国家としての「後輩」である中国にも引き継がれている。そう、十分に想像がつくのだ。

明日公開予定の後編では、いよいよ中国経済の大嘘を暴いていこう。

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4/26JBプレス Financial Times 『難民危機やブレグジット騒ぎにかすむギリシャ危機 お馴染みの騒動に見えても、コストが段違いに大きい恐れ』について

EUが一つに纏まらなければならない必然性があるかどうかです。EUは二度の大戦の反省でできたことになっていますが、ドイツの域内封じ込めと米国への対抗で出来たと組織と考えています。言語も民族も人種も違う国々が集まって「ヨーロッパ仮想国家」の理念にどれだけ共鳴できるか疑問です。日本は地理的にアジアに属しますが、アジア共通通貨を望むことはないし、シェンゲン協定のようなものなんて治安を悪くするだけで誰も望まないでしょう。岡倉天心は「アジアは一つ」と言いましたが、当時植民地支配を受けたアジアの国々に同情して、アジアが纏まって欧米列強に対抗しようと思ったのではないでしょうか。アジアの多様性には目が行きませんでしたし、中国のような白人に仕えて利益を得ようとする国もありました。歴史・伝統・文化が違う国々を一つにすることは難しいと思います。況してや法律や財政政策も仮想共通国家の政策に拘束されるのであれば、戦争にならないというメリットくらいしかないのでは。それだってEUよりはNATOが機能しているからだと思いますが。経済的にはドイツの第四帝国が完成しただけと言われています。

6/23国民投票で、英国のEU離脱はないと思います。4/4日経FTの記事では、「若者はEU残留派が多く、高齢者に離脱派が多い」、2/23WSJは「英国が離脱すれば、スコットランドに英国からの独立とEU加盟を促しかねない。」とありました。FTとWSJは残留させようと必死なのかもしれませんが。

FT記事<英EU残留のカギ握る若者票(社説)

英国の欧州連合(EU)残留の是非を巡る6月23日の国民投票を前に行われた世論調査で、先行きの不透明さが明らかになった。依然として接戦で投票結果の予測は難しい。フィナンシャル・タイムズ紙の最新の世論調査では、残留支持が離脱支持を3ポイント上回るだけだ。電話調査では残留支持が多いなど、調査方法による違いも大きく影響しているように見える。

Leave.eu

ブレグジットを推進する圧力団体「Leave.eu(リーブ・EU)」のオフィス(ロンドン)=ロイター

 さまざまな世論調査が生んでいる不透明さの中、明白で一貫した調査結果が一つある。国民投票でどちらに投票するかを予測するための信頼できる判断材料は年齢であることだ。年齢が上がるほど、英国のEU離脱(ブレグジット)に賛成する傾向が強く、年齢が下がるほど残留を支持する傾向が強い。調査会社ユーガブの最近の世論調査によると、18~29歳までの回答者の63%がEU残留を支持し、60歳以上の56%が離脱を支持しているという。高齢者が投票する可能性は若者と比べて格段に高いことを考えると、年齢の違いによる支持の差はEU離脱派に大きく有利に働く。

 英国では住宅価格が高騰する一方で賃金は低迷したままで、近年、若者が不当な扱いを受けているという見方が定着している。EU離脱の影響の中で生きていかなければならない若者の願いに反して英国民が今EU離脱を選べば、世代間の不公平さの新たな一例と見なされるのは当然だ。

 同様の世代に関する議論は、英国からの独立について2014年にスコットランドで行われた住民投票でもあった。当時、スコットランドの若者は高齢者と比べて独立を支持する傾向が強かった。だが、英国のEU離脱を巡る国民投票とスコットランドの住民投票には重大な違いがある。あまり遠くない将来、スコットランドで再び住民投票が行われ、スコットランドの若者は改めて独立に投票する機会を持てる可能性が高いことだ。これに対し、英国がEU離脱を選べば、その後再び投票が行われて簡単に結果が翻る可能性は非常に低いと思われる。英国のEU離脱については、離脱してすぐまた戻るという選択肢は一切存在しない。

■現政権、若者票獲得になぜか無関心

 高齢者は大ブリテンという考えへの愛着がより強いが、スコットランド人の若者は連合王国からの離脱を支持する傾向が強い。そして、英国の若者は一般的に、英国の国家主権への執着が弱い。

 キャメロン政権は、英国のEU残留に向けた活動で、若者票獲得の必要性に対してなぜか無関心だ。スコットランドの住民投票では、16~18歳の若者に投票権を与えた。だが、EU離脱の是非を問う国民投票にはそうした規定は設けられていない。離脱の賛否が僅差になれば、若者を中心に20万人が集まるグラストンベリーのロックフェスティバルの開催期間中に国民投票が行われることはEU残留票を減らしかねないとさえ心配する向きもある。

 投票行動が年齢層で違う理由ははっきりしない。若者は国家主権についての議論に突き動かされることが少ないからかもしれない。また、移民や国境警備の問題が絡む投票で重大な判断材料となる多文化社会について、若者は高齢者より居心地良く思っているからかもしれない。また、5億人が住む28カ国からなる域内を自由に移動し、働く機会を若者は特に評価しているのかもしれない。英国のEU離脱はこうした機会を著しく狭め、恐らく、英国人が欧州で働くのにビザが必要だった時代に逆戻りさせるだろう。視野や機会が狭まることは、若者と高齢者のどちらにも影響するはずだ。

(2016年4月4日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)>(以上)

力の落ちているUKが4つのカントリーの内、スコットランドが独立すればEU離脱で得られるメリット(新聞論調では損の方が多いと言われていますが)よりかなり大きなダメージとなるでしょう。ただ、パナマ文書でキャメロン首相の父の名が挙がったことがどう影響するかです。

ギリシャは救済するに値するかです。企業再生だって再建可能かどうか判断して出資or融資します。リストラの徹底(BS上の資産圧縮、フローのコスト低減)だけではなく、売上を上げてキャッシュを稼ぎ、借入金を返済していく段取りとなると思うのですが、ギリシャには稼げるのは観光だけで、公務員の整理と言うリストラも進んでいないので、EUから離脱させるしかないのでは。EUから離れればドラクマを復活させることも可能、自前の通貨を持てば、自前の経済運営もできるようになります。売上に相当する収入も増えることが考えられます。今のままでは中国が国を買収するようになるでしょう。その前に中国が破綻するかもしれませんが。

記事

(英フィナンシャル・タイムズ紙 2016年4月22日付)

Lesbos in Greek

ギリシャ・レスボス島に設置された難民キャンプ(2016年4月3日撮影)。(c)AFP/ARIS MESSINIS〔AFPBB News

 欧州の政治家が欧州連合(EU)への難民流入と英国のEU離脱を防ぐのに忙殺されている間に、すべてのEU危機の母であるギリシャでは、マグマが再び静かにゆっくりと蓄積されつつある。

 アテネでの話し合いは今回も実りのないものに終わり、22日にはユーロ圏財務相会合が開催されることになっていた*1

 そしてEUを昨年振り回したギリシャ危機と同様に、新たな難局が間もなくこの地にやって来る。ギリシャ政府が次の金融支援を受け取ることができなければ、7月に期限が来る35億ユーロの債務返済でデフォルト(債務不履行)し、「グレグジット(ギリシャのEU離脱)」の可能性が再び高まる恐れがあるのだ。

 なぜそんなことが再度起こり得るのか。1年近く前、次第に切羽詰まっていった首脳会議でEUの指導者たちは860億ユーロの金融支援に同意し、ギリシャを崖っぷちから引き戻した。EUによる2度の同様な支援を批判することで政治家としての基礎を築いたギリシャの極左宰相、アレクシス・チプラス氏はこれに懲り、数カ月後には、3度目の支援プログラムのために厳しい財政政策を実行すると公約して選挙に臨んで再選を果たした。

 このとき、欧州委員会の幹部たちはチプラス氏を、別人のようになったと褒めそやした。短気なヤニス・バルファキス財務相も排除されたことから、ベテランの過激派が熱心な経済改革派に変身したとEU本部は思い込もうとした。ところが、EUは支援の金融面の現実は言うに及ばず、アテネの政治の現実を見落としていた。

 実際、昨年夏にまとめられた金融支援は、ギリシャのすべての災難に効く万能薬と言うよりは、関係者全員による問題の先送りにすぎなかった。年金制度や税制におけるごく一部の改革と引き換えに130億ユーロを緊急に貸し付け、ギリシャがデフォルトに陥るのを回避しただけだったのだ。

 そのときでさえ、政治的な腕力を必要とする難しい仕事の大半は、債務の減免という政治的に紛糾する恐れのある問題も含めて、この新しい支援の第1次事後評価(レビュー)に持ち越されていた。

*1会合では具体的な合意はなく、近く政治的合意を目指すことになった。

短命な合意であることを強調するかのように、国際通貨基金(IMF)は、チプラス氏が約束を守ると確信できるまではギリシャ支援に参加するか否かを決断しないとの姿勢を明らかにした。チプラス氏は、IMFへの返済をデフォルトした先進国指導者の第1号になったからだ。四半期ごとに行われるはずの第1次評価は、それから2四半期が経過してもまとまっておらず、ギリシャ、ドイツ、そしてIMFとの間の溝は深まっている。

 IMFはギリシャの債務再編を要求しているが、ドイツは突如、債務減免は不要だとの結論を下した。もっとも、IMFには支援への参加を依然呼びかけている。

 一方、IMFは昨年7月の合意の仕組みは良くないと判断し、財政黒字目標を引き下げるべきだとしている。チプラス氏は怒りっぽく、批判に過敏に反応する人物に戻ってしまい、外部からの圧力に毒づいている。さらなる改革や歳出削減を断行する政治力はギリシャにはほとんどないのが実情だ。

 「欧州の政治家はほかの難問にかまけているし、市場はギリシャの新しい支援策に内在するリスクに無頓着だ」。リスク・コンサルティング会社のユーラシア・グループで欧州分析部門を率いるムシュタバ・ラーマン氏はこう指摘する。「しかし、もしドイツ政府が今のアプローチを見直さなければ、支援は頓挫するだろう」

 登場人物やその主張はもとより、演出までもが昨年からほとんど変化していない。しかし、失敗がもたらす結果は変わったかもしれない。1年前、EUの首脳たちはギリシャを隔離できたと思っていた。ギリシャがEUを離脱する事態になっても、ギリシャ経済には深刻な影響が及ぶがそのほかのユーロ圏諸国への打撃はほとんどないと確信していた。

 ところが今では、シリアやイラク、アフガニスタンからの難民5万人を劣化しているキャンプに押し込めたEU加盟国の今後に、関係者は強い不安を抱いている。ほかのEU諸国は、欧州への移民流入と対峙する前線基地になってくれることをギリシャに期待しているからだ。

 そして、今日ではここに英国の問題が重なる。EUにとどまるか否かを問う国民投票を6月23日に控えたこの時期にギリシャ問題で再度もめても、自らの大義のためにならないことはEU幹部も認識している。交渉に関与しているある幹部によれば、ギリシャのユークリッド・ツァカロトス財務相は、5月の終わりまでに話をまとめなければ6月24日まで一切連絡を取らないからそのつもりでいるように、と警告されているそうだ。

 結局のところ、こうした汎欧州の政治の現実により、ギリシャとの再度の交渉はまとまる公算が大きくなっている。ただし、それが良い内容になるか否かは、また別の話だ。

By Peter Spiegel in Brussels

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