『G20開催礼賛で読み解くゴジラのいない中国 中国映画の黄金時代は規制とのせめぎ合いで生まれた』(9/29日経ビジネスオンライン 山田泰司)、『差別、格差、汚職生む「中国戸籍」…改革なるか 身元隠しから汚職に走った官僚の半生が映す、課題山積』(9/30日経ビジネスオンライン 北村豊)について

中国は気が狂ったとしか思えません。今度はインドに侵攻しました。米国ですら二方面が難しく、アジアピボット政策に転換したというのに。オバマのことですから口先だけというのはばれていますが。中国には三方面(東シナ海、南シナ海、インド)でバトルはできないし、敵国を多く作り、結束を強めるだけとしか思えませんが。軍部が習近平に嫌がらせしている可能性もあります。日本にとっては味方が増えるし、軍事力を他にも分散して貰えて有難いことです。日本のマスコミに洗脳された人はこういう現実を見てもまだ中国は平和愛好国家と思うのでしょうか?単なるゴロツキ国家でしょう。

http://news.livedoor.com/article/detail/12072087/

山田氏の記事について、天安門事件の見直しは毛沢東の額が天安門に飾られている間は難しいし、紙幣に毛沢東の顔が刷られている間は難しいという事です。毛沢東統治時代は毛だけが良い思いをし、残りは皆、恐怖政治の真っただ中にいました。No.2の周恩来もそう、国家主席だった劉少奇、党副主席だった林彪、朝鮮戦争の英雄だった彭徳懐など皆、毛の犠牲者です。

政府・社会・道徳・宗教を批判できる自由が無ければ良い作品はできませんし、科学技術の発展もあり得ません。今はノーベル賞の発表時期ですが、日本の20年後を危ぶむ人もいますけれど、自由でない国を恐れる必要はありません。ただ、盗まれないように細心の注意を払わないと駄目です。中韓は苦労するより、人がやったことを横取りする方が賢いと思っている民族ですから。中国人は拝金教ですので自由は二の次です。金が儲かればどんなことをしても許されるというのが彼らの発想です。今の中国人に体制批判を期待しても無理。それより、体制とくっついて金儲けした方が良いと思っている人が大半です。

北村氏の記事について、何時も言っていますように中国では賄賂は上から下に至るまで行っており、社会にビルトインされているという事です。「清官三代」の言葉どおりです。北村氏も認めているように、「張緒鵬」が農業戸籍でなかったら汚職に手を染めなかったかというと、全くそんなことはなかったでしょう。周りが汚職に励んでいるのに超然としていたら仲間はずれにされます。

興味がありますのは、どうして腐敗が発覚したかです。多分、敵の不動産会社がもっと上に取り入り、司法部門を動かしたのでしょう。勿論、そのためには金が必要です。いつも言っていますように賄賂が発覚するのは①(政)敵を倒すためか②配分先を間違えたか配分量を間違えたかのいずれかです。習近平がやっているのは正しく①です。中国人だったら皆分かっています。

農村戸籍と非農村戸籍の区別がなくなることは基本的人権の擁護の面で好ましいことです。今までがおかしかったわけです。結果の平等を目指す共産主義が現実面で大いに矛盾していたということですが、権力を監視する術を持たないシステムでは期待する方が野暮でしょう。まあ、一歩前進という所でしょうか。でももっと大きな問題があります。「档案」です。3代前の家族に遡り、共産党に反対したか、不満分子でないか等、素行の内申書で、地方の共産党幹部が書いて本人も見れないようになっていると聞きました。人権蹂躙も甚だしいですが、共産党が続く限り止めることはないでしょう。本当に共産党と言うのはどこの国でも腐っています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A1%A3%E6%A1%88

山田記事

g20-in-hanzhou

中国・杭州で開催されたG20首脳会議(写真:ロイター/アフロ)

原発事故や戦争を暗喩したと言われる「シン・ゴジラ」を観て、現代の中国で化身としてゴジラに成るとしたら何だろうか、ということについては前回書いた。同時にもう1つ頭に浮かんだことがある。それは、中国の映画人がもしいま、何かを暗喩して映画を撮るとすれば何だろうかということ。

文化大革命(文革)、官僚の腐敗、人権問題、政権批判などいくつも頭に浮かぶ。ただこれをもし、「何かを暗喩して撮る」ではなく、「暗喩でしか描けないものを撮る」と言い換えると、対象はぐっと絞られてくる。習近平国家主席に対する批判もできなさそうではあるが、政権が交代すれば可能性はなくはない。そこで、指導者が替わっても当面難しそうなテーマということで考えれば、私はその筆頭はダントツで1989年6月4日の天安門事件だと思う。

最大のタブーと暗黙の了解

民主化に理解のあった胡耀邦元総書記の死去に端を発した学生の民主化要求運動を当局が最終的に武力で弾圧した、というのが天安門事件についての日本や欧米での一般的な認識だ。ただ、中国政府は確か、「政治的波風に端を発した反革命暴乱」という具合に、いわゆる西側諸国とは異なる見解を示している。

ここで、「確か」「している」と曖昧に書いたのは、天安門事件は中国において検索のNGワードになっているため、中国でこれを書いている私は確かめることができないし、あえて調べようともしていないためだ。ともあれ、事件から27年が経過した今日に至るまで、死者の数などを含めいまだに真相は分からないし、中国ではいまだに最大のタブーだと言っていい。

事件当時、私は中国に留学していて、その秋から入る予定だった北京大学で入学の最終手続きをするため、事件前日の6月3日には北京にいた。手続きを終え、在籍していた山西省の大学に戻るため予定通り3日の夜行列車に乗り、翌4日の朝、山西省の太原に着き大学に戻ってみると、中国人の先生から「よく無事で戻ってきた」と迎えられた。ネットもない時代で情報は限られていたが、事件当日の4日朝の時点で、北京で起きたことのあらましを知らない中国人は誰ひとりいなかった。先に、天安門事件は中国にとって最大のタブーだと言ったが、最大の暗黙の了解でもある。もっとも、事件後に生まれた20代以下の若者の中には、事件の存在自体知らない人も大勢いるというのが現状である。

中国映画の黄金時代

さて、情報の統制が厳しく、映画に対する検閲もあり、表現に対する制約も多いとの印象がある中国だが、中国のタブーという話が出ると天安門事件と並んでよく名前の挙がる文革については、意外なほど批判的に扱ってる映画は多い。陳凱歌(チェン・カイコー)監督の「さらば、わが愛~覇王別姫」(1993年)はその代表で、日中戦争や文革など時代に翻弄された当時の京劇役者たちの人生を描いたこの作品は、同年のカンヌ映画祭でグランプリに当たるパルムドールを受賞している。

2008年北京オリンピックの開会式と閉会式の総合演出を手がけた張芸謀(チャン・イーモウ)監督が、その存在を世界に知らしめることになった代表作「紅いコーリャン」(1987年)は、人権問題を陰のテーマにしている。中国の農民が日本軍に虐殺されるシーンが有名なこともあり、抗日映画の印象がどうしても強くなりがちだ。ただ、監督の張芸謀は文革で農村に下放され農民として3年間労働、2012年にノーベル文学賞を受賞する原作者の莫言は農村出身という背景を持つこの2人が、人間扱いされているとは言いがたかった当時の中国の農民の苦しさ、言い換えればこの映画が撮られた当時もなお続いていた中国における人権の扱いに対する批判を込めて創った作品でもある。

ただ、例えば文革を映画のテーマとして取りあげることは許されても、制約が全くないわけではなかった。世の中を文革に至らしめた中国共産党を名指しで批判することは、当時も今もできないのだ。そこで、陳監督は文革、張監督は人権問題を、抗日戦争というテーマと1本の映画のなかに同時に盛り込むことで、当局の許可を得やすいようバランスを取る。もっとも、日本の侵略に対する怒りがあったのはもちろんのことである。

制約・規制に抗うことで生まれた表現

ただそれでも、直接的な当局への批判はできない。そこでわが愛~覇王別姫で陳監督は「音」、紅いコーリャンで張監督は「色」を、自らの思いや感情を表現すると同時に、見る者の想像力をかき立てる手段として効果的に使った。

例えばわが愛~覇王別姫のラスト。主人公の1人が自害するのだが、陳監督は直接、刃物を体に突き立てるようなシーンを描くことはしない。まず、盟友の死を目の当たりにしたもう1人の主人公が、相手の名前を絶叫する声。続けて、共に京劇役者である主人公2人を戯画的に描いた静止画に、京劇の舞台音楽としておなじみの「シャンシャンシャンシャン」という拍子木、シンバルを乱打し笛を吹き鳴らす音をかぶせた。悲しく重苦しい死の場面に続くにはおよそ似つかわしくない甲高く騒々しい音楽だが、観ている私たちに蝉時雨のように降り注いでくるその音は、戦争や文革という理不尽な時代に生きた京劇役者のやるせなさや、そのような時代を招いた政権を名指しで批判することはできない監督自身の憤りを私たちに体感させ、体と心を激しく揺さぶるには十分な効果を生んでいる。

「このような映画を撮れる国」として集めた敬意

一方、紅いコーリャンのラストシーンで陳監督は、大地一面に広がるコーリャン、その大地を踏みしめ仁王立ちする主人公と幼い息子、主人公の足下に転がる殺された妻、その3人を覆う空と、画面に映る何もかもを、夕日と血で燃えるような深紅に染め上げた。怒りと血を意味する赤で包み込むことで、農民がたどり着いた人生を表現してみせたのである。

この時代、中国映画はベネチア、カンヌ、ベルリンなど海外の映画祭で賞を総なめにした。紅いコーリャンも1988年、ベルリン国際映画祭で最優秀賞の金熊賞を受賞している。「竹のカーテン」で閉ざされた国という印象が強かった中国で、映画という表現が盛り上がり始めたことに世界が注目しだしたという時代的な背景もあったのは間違いない。

ただ、当時の中国で映画の撮影に制約がなく、言葉で名指しで批判するような単純な表現が多かったならば、言語も文化も違う他国でここまでの高い評価は得られなかったのではないか。表現が制限される中、人間の五感に訴える色と音で激情や思いを伝えようとした工夫が、国境を越えての共感につながった大きな理由であろう。そしてこの当時、いろいろ問題はあるようだが、でも、このような映画を撮れるのだからという理由で中国や中国人に敬意を抱いた人も、少なくなかったのである。

話題になるのは「カネ」と「市場」ばかりの現状

翻って現在。中国と映画ということで話題になることと言えば、巨大市場に成長した中国の観衆を意識して、舞台に中国が登場するハリウッドの大作が増えたということや、中国の不動産王、王達林氏率いる万達集団が、米国の映画館チェーンAMCエンターテインメントや、「ジュラシック・ワールド」の製作で知られる米レジェンダリー・エンターテインメントを買収した等々、市場やカネにまつわる話ばかり。これらの話題を凌ぐほど評判になる作品は、中国映画の中から久しく出ていない。

共に60代半ばになり申し分のない実績を誇る張芸謀、陳凱歌の両監督が映画界の大御所になったのは当然だとして、張氏は一人っ子政策に違反して億を超す罰金を科されたこと、一方の陳氏は昨年から上海電影学院のトップに就任したことなど、話題になるのは作品以外のことばかり。特に張監督は、五輪の演出をして悦に入っている姿を見ると、体制の側に行ってしまったという感が否めない。

ただ一方で、中国の映画界がいまもなお、何でも自由に描け、批判できるという状況にないことは、陳、張両監督の全盛期であり、中国映画の黄金時代と呼ばれた1980~90年代前半のころと変わるところがない。規制の中でのギリギリのせめぎ合いで表現を工夫しタブーに迫ったからからこそ、陳、張監督の時代の中国映画が強烈なインパクトを残すことに成功したのだということを肯定するならば、タブーや社会問題を暗喩することで名作が生まれる環境面での条件はいまも揃っていることになる。

「G20で締め出し」を市民は本当に怒ったのか

ではなぜ、印象に残るような中国映画が生まれなくなっているのか。9月上旬、日本でシン・ゴジラを観た私はそんなことに思いを巡らせたのだが、ちょうど同時期に中国浙江省杭州で開催された20カ国・地域(G20)首脳会議と、それに対する友人・知人らの反応に、インパクトのある中国映画が出なくなった一因を垣間見た気がした。

G20の開催に合わせ、開催地の杭州では9月1~7日まで、企業や学校が休みになった。大きな通りに面した商店も多くはシャッターが閉じられ、市民を閉め出した町はまるでゴーストタウンのようだったという。首脳らの安全確保に加え、各国のリーダーやメディアが集結する中、中国政府に不満を持つ市民が杭州で陳情などを強行するのを防ぐ目的があったと言われる。

このことについて、日本のメディアが報じているのをいくつか読んだが、おしなべて、閉め出された市民らが当局の強引な措置に不満を漏らしていた、という一点張りで伝えていたように思う。

もちろん、不満を覚える杭州市民も少なくなかったことだろう。ただ、杭州でG20を開催したことを喜び、誇りに思い、強制的な休業や排除を受け入れている市民が、不満を漏らす市民と同じか、私の印象ではそれ以上いたという事実については、伝えておく必要があると思う。

「安定・豊かさ」優先で「批判・評価」は先送り

私がこのことを知ったのは、中国最大のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「WeChat」でのこと。「朋友圏」すなわち友達・知り合いとして登録している人たちに向かってつぶやきや写真を載せる「モーメンツ」というスペースがあるのだが、ここに、G20用にライトアップされたビルなど町の様子の写真を多数載せ「世界の杭州!」「国際化を象徴するようなライトアップだ!」「世界に届け!HANG ZHOU(杭州)の誉!」「私の誇り、杭州!」と、読んでいるこちらが気恥ずかしくなるような文言と共に掲載している知人・友人が、1人や2人ではなかったのである。

中国ではこのWeChatでも検閲が行われていて、友人・知人らがこのモーメンツの欄に自分で書き込んだり、転載したりしている記事が、後になって「不適切なので削除しました」の通知と共に削除されていることもままある。こうした状況なので、中国人が、WeChatのモーメンツでつぶやいていることが、本音ばかりであるというわけでは当然ない。ただ、検閲しているといっても、庶民が中国当局を礼賛する書き込みをしたからといって、それを当局が目ざとく見つけ、「お、こいつは体制の支持派か。留意しておこう」などとなり、それを機に当局の覚えがめでたくなる、というほどでもない。

杭州のG20を礼賛していた友人・知人らの中には1度しか会ったことがない人もいるが、それでも直接会ったことがある人ばかりだ。だから、多少なりとも彼らの人となりは分かる。それから判断する限り、強制的な休業など不便、不利益を被ったことを差し引いても、杭州でのG20開催を心から誇りに思っている人が相当数に上るというのが実態ではないかと、私は思っている。つまり、世界に誇りたくなるような杭州を作り上げた中国当局を、少なくとも大筋では支持している人が、日本の報道、特にネットで流れている報道から受ける印象とは裏腹に、多数派だということである。

名作映画を連発してはいたものの、豊かさという点では今よりも劣っていた80年代。それから30年かけてG20が開催できるまでに築き上げたいまの世の豊かさを、崩したくないという思いも意識的、無意識的にかかわらず、中国人の中には働いているだろう。こうした状況で、安定を危うくする危険をはらむ、社会問題や歴史的事件を暗喩する映画は生まれにくいに違いない。規制という環境は1980~90年代と同じでありながら、いまの中国に強烈な印象を残す映画が出てこないのは、規制に抗ってまで主張したいことが少ない、あるいはあっても評価は先送りにしておきたいという、いまの中国人の意思の現れでもある。

北村記事

9月19日、北京市は正式に『戸籍制度改革をさらに推進する実施意見』を公表し、北京地区の“農業戸口(農業戸籍)”と“非農業戸口(非農業戸籍)”の区分を取り消し、登録する戸籍を“居民戸口(住民戸籍)”に統一すると宣言した。北京市の統計によれば、2012年末における北京市の常住人口は2069.3万人、そのうち農村人口は285.6万人で、2010年末の275.5万人に比べて10万人増加していた。

「差別の温床」戸籍制度の改革計画を公布

これは2014年7月24日付で中国政府“国務院”が公布した『戸籍制度改革をさらに推進することに関する意見』で提起された「“城(都市)”と“郷(農村)”の戸籍登録制度の統一による農業戸籍と非農業戸籍の区別の取り消し」に基づく措置である。9月20日の時点で、北京市を含む30の一級行政区(省・自治区・直轄市)<注1>が農業戸籍と非農業戸籍を取り消すことにより、これまで差別や偏見をもたらしてきた戸籍制度の改革計画が公布されている。

<注1>中国の一級行政区は31か所あり、30か所に含まれていないのはチベット自治区の1か所のみ。

中国では、1958年1月9日に公布された最初の戸籍法規である『中華人民共和国戸籍登録条例』によって、常住、暫住、出生、死亡、転出、転入、変更の7項目の登録制度を含む厳格な戸籍管理制度が確立され、全ての個人は農業戸籍と非農業戸籍に分類された。農業戸籍と非農業戸籍という分類は、計画経済下で“商品糧(商品化食糧)”を基準として区分けしたもので、農業戸籍とは「自分が生産した食糧に頼って生活する農村の農業従事者の戸籍」を指し、非農業戸籍とは「国家が分配する食糧に頼って生活する都市居住者の戸籍」を指す。

当初は農村部に居住する農業戸籍者には宅地と農地が保証されていたから、都市部に住む非農業戸籍者に比べて優遇されているように思われたが、工業が発展するに従い都市部と農村部の収入格差は拡大の一途をたどり、都市部の非農業戸籍者と農村部の農業戸籍者の間には収入、生活、文化、教育などのあらゆる面で大きな格差が厳然と存在するようになった。また、農民の都市部への移動は厳しく制限されたこともあり、都市部の住民は総体的に自分たちより貧しい農村部の住民を一段低い存在と位置づけた。それが、貧しい、汚い、礼儀知らず、無教養などといった農業戸籍者に対する差別と偏見に発展し、今日に至っている。

今まで農業戸籍者が非農業戸籍に転換して都市部住民になるには、非農業戸籍者との結婚や養子縁組、大学卒業、優秀人材、突出した貢献などの厳しい条件と審査があり、承認される人数には大きな制約があった。しかし、一級行政区の各地方政府が戸籍制度の統一に本腰を入れると宣言したことにより、今後数年以内に中国の戸籍は住民戸籍に一本化されるものと思われる。

さて、9月22日付の日刊紙「検察日報」<注2>は、安徽省“寿県”の元“県党委員会書記”(以下「元書記」)が生をうけてから汚職で摘発されて失脚するまでの経緯を詳細に報じた。元書記が汚職に手を染める引き金となったのは、貧しい農民である実家を援助するためであり、実家が貧しい農民であることで妻に見下されたくなかったからだという。本来の農業戸籍から非農業戸籍へ転換していた元書記は、貧しい農民出身であることを妻に隠し通すために汚職に走ったのだった。その概要は以下の通り。

<注2>「検察日報」は“最高人民検察院”の機関紙。最高検察院は日本の最高検察庁に相当する。

「戸籍」から始まった汚職への道

【1】1963年2月18日、“張緒鵬”は安徽省の省都“合肥市”の西隣に位置する“六安市”の管轄下にある“霍山(かくざん)県”の貧困な山村に居住する張家の三男として生まれた。しかし、貧しい張家には彼の出生を喜ぶ者は誰もおらず、家族は彼をどう養って行くのかと眉をひそめるばかりで、最終的に張緒鵬は他家へ養子に出された。養父母の家には2人の姉がいたが、男の子は張緒鵬だけであったことから、幸いにも張緒鵬は教育を受ける機会に恵まれた。1979年、張緒鵬は安徽省東南部の“宣城市”にある“皖南(かんなん)農学院”に16歳で合格して大学生となり、辺鄙な山里から抜け出るチャンスを得た。貧しい山村の学生が都会の大学で学ぶのは非常に困難な事であり、中国の常として、張緒鵬も一族の人々から経済的支援を受けたことは想像に難くない。

【2】1983年に皖南農学院の農学部を卒業した張緒鵬は、生まれ故郷の霍山県にある「符橋農業技術センター」に配属され、技術員、副センター長、センター長と順調に出世の階段を上って行った。2008年、張緒鵬は六安市の北部に位置する“寿県”へ転任となり、“寿県共産党委員会”副書記兼“寿県人民政府”副県長に任命された。寿県着任後の張緒鵬は地元の発展への貢献に目覚ましいものがあり、その実務能力が高いことは広く人々に認められた。

【3】結婚後の張緒鵬は家計管理の実権を妻に委ね、毎月の給与を全て妻に手渡していた。張緒鵬自身は家の中で唯一貧困な山村から抜け出て来た人間であり、生みの親と育ての親の兄弟姉妹は全員が農業に携わっていて貧しかったから、少しでも経済的な援助を提供したかった。しかし、親族が山村で貧困な生活をしていることで妻に見下されることを恐れた張緒鵬は、経済的援助の提供を妻に言い出せず、自分の学生時代に経済的に支援してくれた親族に対して強い負い目を感じていた。それが張緒鵬を腐敗の道に走らせることになった。

【4】2008年5月に張緒鵬が寿県に着任した後、従弟の“張緒剛”が寿県へやって来た。張緒鵬と張緒剛の2人は対外的に兄弟だと言っていたので、人々は2人が実の兄弟だと思っていた。張緒剛が寿県に来て間もなく、張緒鵬は隣接する“淮南市”で「生コンプラント」を経営する“李孟”を張緒剛に紹介した。張緒剛は寿県における生コンの販売で李孟に協力して仲良くなり、李孟を通じて“中景潤置業集団”(以下「中景潤」)<注3>の経営者である“陳中”と知り合った。

<注3>“置業”は「不動産購入」の意味。

5】2010年、張緒剛は寿県“寿蔡路”の南側で都市改造計画があることを知って、張緒鵬に自分が参入することはできないかと尋ねた。張緒鵬が実力のある会社でないと受注できないと答えると、張緒剛はそれならと中景潤を推薦した。早速、張緒鵬は中景潤の陳中と面談したところ、陳中は自社の規模や経営状況を紹介すると同時に、張緒剛は有能だとお世辞を言った。これに対して張緒鵬は、「あいつはそこそこの教育程度だが、事業をやるには経験が乏しく、経済的にも難しいから、できる限りあんたが面倒を見て欲しい」と述べ、別れ際に陳中と李孟で協力して中景潤の関係資料を準備して改めて打ち合わせようと言った。

賄賂攻勢から癒着の泥沼へ

【6】陳中は李孟経由で張緒剛に、都市改造計画が受注できたら、利益の10%を与えると伝えた。当該計画は大型の建設事業で、利益は数億元(約50億~60億円)に上るから10%は数千万元(約5億~6億円)となる。その後、張緒剛は幾度も張緒鵬に分け前が10%になると提起したところ、これに動かされた張緒鵬は具体的な金額はいくらになるかと聞いた。これに対して張緒剛が、少なくとも3000万元(約4.5億円)になると答えると、張緒鵬はその場で態度を表明し、「俺が必ず上手く行くようにするから、彼らに遠慮せずに県政府と話をさせ、何か問題があったら言って来い」と胸を叩いた。その後、中継潤と県政府の商談は急速に進展し、その後の難関である土地の競売、住民の立ち退きや建物の取り壊しも極めて順調に推移した。これは張緒鵬が自ら全てを取り仕切ったことによるものだった。2012年に張緒鵬が合肥市にある“安徽省立医院”で手術を受けた際には、陳中と李孟の2人から5万元(約75万円)の見舞金を受け取った。

【7】2007年、不動産開発企業である“安徽永順房地産開発集団”の経営者である“銭慶”は宴会の席で、将来寿県の県長になると噂されていた張緒鵬と知り合った。2008年に張緒鵬が寿県の県長に就任した後、同集団は寿県の一大開発事業である“泰州時代広場”建設計画を受注し、銭慶は張緒鵬と何回か面談した。2009年の“春節(旧正月)”期間中に、銭慶は張緒鵬へ連絡を入れて、高級酒“五糧液”を2箱(6瓶/箱)、高級たばこ“熊猫煙(パンダたばこ)”4カートン(10箱/カートン)と商品券1万元(約15万円)を張緒鵬に贈った。

【8】2009年10月、銭慶は張緒鵬が“安徽省党校(党学校)”で研修を受けているのを知った。研修期間の終了後は張緒鵬が寿県のNo1である“県党委員会書記”に就任することは明らかだった。抜け目のない銭慶は、すぐに研修中の張緒鵬に電話を入れてスーツを作ろうと誘い、党学校の宿舎の部屋に張緒鵬を訪ねた。銭慶は張緒鵬に気付かれないように20万元(約300万円)の札束を入れた袋を寝台の上に置いて掛布団で隠してから、張緒鵬を連れて紳士服店へ行き、オーダーメイドでスーツ1着とワイシャツ3枚を注文して、1.8万元(約27万円)を支払った。「自分が20万元を贈った後は、張緒鵬の自分に対する呼称が明らかに変わった」と銭慶は後に語った。銭慶の予想通り、2009年12月に張緒鵬は寿県の党委員会書記に昇進し、銭慶は張緒鵬という後ろ盾を得て、寿県で多数の建設案件を受注した。

【9】上述したのは、張緒鵬が行った汚職の代表的な例に過ぎない。「奢れるものは久しからず」の言葉通り、寿県の行政を意のままに動かし、我が物顔で寿県の財政を食い物にしていた寿県党委員会書記の張緒鵬は、2014年5月に“淮北市検察院”によって収賄の容疑で立件され取り調べを受けた。2014年7月21日、“安徽省検察院”の指示を受けた淮北市検察院は、張緒鵬を立件して取り調べ、張緒鵬とその従弟の張緒剛が“兄弟斉心, 共同撈金(兄弟心を一つにして、共同でカネを手に入れる)”という形で犯罪を行った事実を確認した。8月11日、検察機関は初歩的調査の結果として、張緒鵬が寿県党委員会書記ならびに寿県県長の在職期間中に、職務を利用して他人のために土地開発や建設工事の便宜を図り、見返りとして不法に他人の財物を受け取ったが、その額は巨大であり、収賄の嫌疑がかかっていると発表した。

行きつく先は一家全員の腐敗

【10】それから2年後の2016年7月19日、“淮北市中級法院(地方裁判所)”は同事件に対し以下のような一審判決を下した。

張緒鵬は職務を利用して他人の金品・物品を総額645万元(約9675万円)<内訳:単独収賄145万元、共同収賄500万元>受け取ったことにより、収賄罪で懲役11年および罰金210万元(約3150万円)、職権濫用罪で懲役3年とし、最終的に懲役12年、罰金210万元に処す。張緒剛は他人の金品・物品を500万元(約7500万円)受け取ったことにより、収賄罪で懲役10年および罰金175万元(約2625万円)に処す。

【11】7月29日、張緒剛は一審判決を不服として控訴し、二審を待つ状況にある。この事件について「検察日報」記者からコメントを求められた淮北市検察院“反貪局(汚職取締局)”副局長の“余権”は次のように語った。

事件の審議を取り進める中で、多くの人々が張緒鵬を業務能力が高いだけでなく、論理の水準も高く、非常に優れた人材であると評価していた。但し、この人材は「才」に溺れる形で、最終的には汚職の道に迷い込んでしまった。張緒鵬は自らほしいままに賄賂を受け取っただけでなく、その兄弟、娘、姪、妻などの親族までが彼の影響力を利用して“権銭交易(権力とカネの癒着)”を繰り広げ、“不義之財(道義に反して作ったカネ)”で大儲けした。張緒鵬は、“全家福(一家全員の幸福)”を求めて、最後には“全家腐(一家全員の腐敗)”に陥った。

上述したように、張緒鵬が汚職の道に足を踏み入れたのは、自分が出世する糸口を作ってくれた実家の人々に恩返しの援助をしたいという人の道としてまっとうな気持ちからだった。地方官僚として十分な俸給を受けているなら、その中から援助金を捻出すれば済む話だが、俸給全てを妻に上納していた張緒鵬は、貧しい農民である実家を援助すると言えば、妻に実家が見下されるばかりか、自分までもが出自が卑しいと軽蔑されると考えたのだった。

厳然とした格差、克服への道は…

地方官僚とはいえ、寿県党委員会書記は寿県の最高指導者であり、県民約140万人の頂点立つ役職である。その地位にまで上ってもなお、自身の出自が貧しい山村の農民であり、実家の人々は依然として貧しい農民であることは、張緒鵬にとっては一生背負って行かねばならない重荷だったに違いない。張緒鵬が都市に生まれた非農業戸籍者であったなら、汚職を行わなかったかと問われれば、汚職をしないという保証はなく、中国の役人の常として恐らく汚職をしただろう。しかし、張緒鵬の場合は農業戸籍であった出自を恥じる気持ちが汚職に手を染める契機となったことは否定できない事実である。

中国全土が早期に戸籍の統一作業を完了させ、戸籍による身分差別が払拭される日が近いことを祈りたい。但し、戸籍が住民戸籍に一本化されたとしても、都市と農村の格差が縮小される訳ではなく、所得、社会福祉、教育、医療など多岐にわたる格差は厳然として存在する。それでも、戸籍の統一は格差縮小の一歩と言えよう。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

『「死刑判決」を受けたドイツ銀行。1.4兆円では済まない絶望の訴訟リスト』(9/27MONEY VOICE)、『ドイツ銀に報酬返上圧力 不正行為の穴埋め 信頼回復に不可欠』(10/2日経朝刊 FT)、『ドイツ発金融不安に「日本化」の亡霊』(10/2日経電子版滝田洋一)について

リーマン以上の欧州金融危機について、9/23に開放されたリアルインサイトの藤井厳喜氏の解説VIDEOが一番分かり易いでしょう。そのときのパネルを掲示します。

20160923genkifujii-00120160923genkifujii-002

20160923genkifujii-00320160923genkifujii-004

20160923genkifujii-00520160923genkifujii-006

20160923genkifujii-00720160923genkifujii-008

20160923genkifujii-00920160923genkifujii-011

20160923genkifujii-01220160923genkifujii-013

20160923genkifujii-014

堅いと思われていたドイツの産業資本と金融資本の両方が不正に手を染めていたのですから。コンプライアンスが全然できていないという事でしょう。日本も三菱自動車とかありましたが、世界にインパクトを与えることはありませんでした。VWの排ガス数値捏造は米国の一般原告団、および44の州との間で、約150億ドルの賠償に合意しました。VWは世界売上の1/3を中国で稼いでいます(上海のサンタナが有名)。中国は実質マイナス成長と言われていますので、泣き面に蜂の状況です。またVWの大株主は当然ドイツ銀行です。ドイツ銀行は、その他にも、米国でのサブプライム層に対する不動産担保証券の汚い売り方や、LIBORの出鱈目な数字の報告とか、いい加減さが半端でありません。監査役会が機能していなかったという事でしょう。またドイツ政府は民間企業救済する前に、既存株主や債権者に痛みを感じて貰う必要があるとのこと、理論上は確かにその通りなのですが、システミックリスクを全然考慮に入れていません。日本のバブルも宮澤蔵相が銀行等への税金投入による救済を唱えた所、日共・マスコミの反対に遭い、実現できず、バブル崩壊後の経済低迷を齎し、長い期間と多くの金を投入することになりました、日本の例を研究すれば、税金投入しかないというのが分かりますが、今のメルケルは難民問題でミソを付けているので、ここで税金投入の話をすれば確実に次の選挙では勝てないでしょう。結局、経済崩壊するまで手が打てないのでは。

http://jp.techcrunch.com/2016/07/01/20160630how-the-vw-diesel-settlement-breaks-down-in-dollars/

英国のEU離脱は賢明だったのかもしれません。ただメイ首相は明年3月までに離脱通知をするとのことで、それまでにドイツ経済が破綻したら、連鎖して痛手を蒙る所が沢山出るのでは。勿論、日本もです。ドイツと多く取引している会社の株価は軒並み下がり、円高が進むでしょうし、ユーロの価値は暴落、$の信認が上がり、滝田記事にあるように$の調達が難しくなるかもしれません。中国経済も悪いことから、お互いに足の引っ張り合いが循環して、奈落へと突き進むような気がします。中国は人民元を増刷して逃れようとするでしょうが、実体経済が悪すぎます。電力消費量、銀行融資、鉄道貨物輸送量、純輸出、マイナスかマイナス付近です。2015年通年から貿易量以外のデータ公表はなくなりました。発表数字がGDPの数字と大幅に乖離するためです。貿易量は相手国があるため発表しています。本年7月の輸出は前年同月比4.4%減少、輸入は12.5%減少と両方ともにマイナスです。

http://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20160301/Searchina_20160301113.html

http://jp.reuters.com/article/china-july-tradedata-idJPKCN10J0FP?sp=true

頼りになるのは米国と日本だけになりかねません。後は日本の支援が期待できるロシアくらいかと。

MONEY VOICE記事

deutsche-bank

米司法省がドイツ銀行に対して14B$(1.4兆円)の和解金支払いを要求。これに対しドイツ銀行は絶対に飲めないと拒否していますが、いよいよ、本当に危険水域のようです。現在ドイツ銀行が抱える訴訟や調査は、数え切れないほどの件数に膨れあがっているのです。(『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』)

※本記事は、『いつも感謝している高年の独り言(有料版)』2016年9月27日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

集団訴訟、巨額デリバティブ…ドイツ銀行が抱える爆弾の中身

まずはUSA TODAYの報道から、ポイントを見てみましょう。

報道のポイント

消息筋によると、2008年の金融危機の際、ドイツ銀行がサブプライムローン市場で人為的に金融過熱を煽ったという理由で、米国司法省は14B$(1.4兆円)の罰金支払いを要求していることが分かった。

同行が、不透明で分かり難い金融商品であるMBS(不動産担保証券)を、投資家に売りまくったからである。

米司法省の要求する罰金が14B$にのぼると発表された時点で、NY市場のドイツ銀行の株価は8.4%急落し13.50ドルまで下落した。

【関連】ヒラリー余命1年説~匿名を条件に「専門家」が投稿した動画の中身とは

ドイツ銀行側は、この巨額の和解金支払い要求に対して絶対拒否の姿勢を見せており、「我々にとって、この規模の和解金は巨額すぎる。この数字のレベルでは応じる意志は全くない。現在、調停は始まったばかりだ。もっと少ない金額で妥結した類似の銀行と同様の扱いを期待している」と回答した。

今回の米司法省の和解金支払い要求は、ドイツ銀行が2005~2007年にかけて販売したサブプライム層に対する不動産担保証券のあざといやり口に対するものである。

ドイツのMagazin誌は、米司法省が、ドイツ銀行の違法行為、それを行った従業員氏名、罰金支払い要求額等を記載した100ページにわたる文書を、同行宛に9月中旬に送付したと報道していた。

現在進行中の集団訴訟

2016年第2四半期決算書のデータから、ポイントだけ抜き書きします。114~124ページにかけて、現在進行している集団訴訟や金融監視当局との調停の詳細が記述されています。項目だけでも非常に多いことに驚きます。

数え切れない訴訟を抱えるドイツ銀行

合計でいったい何件の集団訴訟や調査が入っているのか分からないほど、非常に多い状況です。これは長期負債を抱えているのと同じです。

  • Esch Funds Litigation
  • FX Investigations(外貨不正取引訴訟。米国だけでなくカナダ等多数の集団訴訟)
  • High Frequency Trading/Dark Pool Trading(超高速・高頻度取引での不正行為訴訟)
  • Interbank Offered Rates Matter(インターバンクレート不正訴訟。米国、欧州各国だけでなくアジア等の金融監視当局による調査、この分野だけで47件の民間訴訟)
  • 米ドルLIBOR 不正操作に関する複数の訴訟
  • 日本円LIBOR ユーロ円TIBOR不正操作
  • SIBOR及びSOR
  • 韓国株価KOSPI(指数操作疑惑で複数の訴訟)
  • サブプライム住宅ローン、不動産担保証券の不正発行
  • Trustee Civil Litigation(8件の集団訴訟)
  • 貴金属不正操作疑惑(金価格不正操作で早々に妥協、他行の手口を教えることで和解金額を下げた例の訴訟)
  • Referral Hiring 不正疑惑
  • ロシア・英国株式不正取引疑惑
  • 国債、機関債不正疑惑
  • 米国禁輸関連疑惑(スーダン、北朝鮮、キューバ、シリアの銀行との取引疑惑)
  • 米国債不正疑惑

長期負債なら金額が分かりますが、この訴訟や不正行為調査では、和解金額がどれほどになるのか分かりません。非常に恐ろしい事態です。

資金はまったく足りず

これらの集団訴訟や金融監視当局との争いに備えて、ドイツ銀行は予備の資金を準備していますが――

deutsche-bank%ef%bd%93provision

deutsche-bank%ef%bd%93litigation-reserves

(ア)黒枠が集団訴訟の和解準備金です。2016年6月30日時点で1.488Bユーロを準備しています。赤枠が金融監視当局の罰金準備金4.050Bユーロ。合計しても準備できたのは5.5Bユーロ(6.158B$)だけです。

今回、これに対して14B$の罰金を要求されているのです。思い出して下さい。先に示した訴訟や調査の長いリストを。

(イ)和解準備金の四半期の変化です。

これは「ドイツ銀行 対 米国金融当局」の問題から、「ドイツ政府 対 米国政府」の外交問題になるでしょう。もちろん、水面下での交渉となるでしょうが。

巨額デリバティブというアキレス腱

イタリアのマッテオ・レンツィ首相が、ドイツ連邦銀行(中央銀行)総裁に対し、ドイツの銀行問題を解決するべきだと発言。こちらは2016年9月19日のロイター電です。

報道のポイント

ドイツ連邦銀行のイェンス・ヴァイトマン総裁が、イタリアの巨額公的債務問題を取り上げ、債務を減らすべきだと述べたことに対し、イタリアのマッテオ・レンツィ首相は、「ドイツは自らの足元、ドイツの複数の銀行の問題を片付けるのに集中すべきだろう」と応酬した。

イタリアの首相はニューヨークでの記者会見で、ドイツの銀行は「100Bユーロの数万倍ものデリバティブを抱えているではないか。他国のことをとやかく言う前に、まず自分の身の回りを片付けるべきだ」と述べた。

イタリアはこの秋に国民投票を行うが、それに彼の政治生命は掛かっており、ここ数日間はEU首脳陣が経済問題や移民問題に不適切な対応をしていると批判している。

危険水域

イタリアのトップが、ドイツ銀行こそがドイツにとって一番痛いアキレス腱だと、すなわち破産の崖っぷちだと認識していることを吐露したのです。ドイツ銀行は、本当に危険水域のようです。誰も言いませんが。

昨年から言い続けていますが、EU圏は分裂せざるを得ません。経済統一ができても、それは利益を得ている間だけです。落ちこぼれ国家をどうするか?について、政治統一ができていなければ、総論賛成の各論反対で結局は分裂します。

EUの理想を語る政治家は、もういません。もしいても、その政治家は一般大衆多数派の支持を得られないでしょう。

FT記事

不正が発覚した場合、過去に払った報酬を返上させる――。金融業界における「クローバック」というこの概念は、これまで規制当局者の頭の中か、政治家が怒って発する言葉にしか存在しないかに思えた。だが、もはやそうではない。

ceo-of-wfc-n

不正営業問題に関し9月29日、米議会で証言するウェルズ・ファーゴのスタンフCEO=AP

■米銀のCEO、41億円を返上

米大手銀行ウェルズ・ファーゴは9月、顧客に無断で200万件もの口座を不正に開設したと認め、金融界に衝撃が走った。これは驚くべきことだが、同じくらい注目すべきは、取締役会がジョン・スタンフ最高経営責任者(CEO)に支給された4100万ドル(約41億4000万円)の株式報酬の返上を決めたことだ。リテール銀行部門のトップだったキャリー・トルステッド氏にも、年金と合わせ、権利未確定の株式報酬1900万ドルを返上させる。

見方によってはこの対応は不十分だし、タイミングも遅すぎるように思える。取締役会がこの措置を決めたのは、米民主党の上院議員5人が同行に不正を問題視する書簡を送った後のことであり、スタンフ氏は米議会ではあきれた内容の証言をした。取締役会が圧力の高まる前に自ら動いていたなら、もっと称賛されていただろう。

■株主からの要求増える可能性

だが、対応が遅すぎたとしても、この措置は後に歴史の大きな転換点になるかもしれない。スタンフ氏は極めて裕福なので、報酬を返上しても、それほどひどい痛手にはならないだろう。ただ、いかに米国の金持ちの基準が度肝を抜くものであるとはいえ、4100万ドルは決して少額などではない。しかも、企業の取締役会がこれほど多額の報酬返上を、しかもCEOに対して求めるのは初めてだ。

今回の措置は重要な意味を持つ。不正を働いた銀行員やその幹部が報酬を返上するというのは新しい考え方ではない。だが、2008年の金融危機以前は、取締役会がこの措置を実行するための法的な規定はほとんど存在しなかった。彼らの懐を突く唯一の方法は、一時金を削減する(あるいは解雇する)だけだった。

08年以降、大半の大手銀行は、報酬を3年分遡って返上することを要求できるクローバック条項を導入した。まだ広く適用されていないが、規制当局は圧力を強めている。米証券取引委員会(SEC)は15年、「誤って支給された成果連動型報酬の返還を経営幹部に義務付ける規定を導入する」ことを上場企業に求めた。この改革は2~3年内に実行に移されることになっており、7年分の報酬が対象になる。これとは別に、英国の規制当局は、10年分の報酬の返上が可能になるよう銀行に求めている。

このため、今やほかの銀行も不祥事に見舞われた場合には、ウェルズ・ファーゴの対策をまねる可能性が高い。実際、株主が次第にこの種の措置を要求するようになるだろう。

だが実に興味深く、今、最も注目すべきは欧州、特にドイツで何が起きるかだ。ドイツ銀行は金融危機発生前に、米国内で住宅ローン担保証券(MBS)を不正に販売していた件で、米司法省から140億ドルの罰金支払いを求められていることが9月15日に明らかになった。これを受け、同行の株価は9月下旬、30年ぶりの安値に落ち込んだ。ドイツ銀の経営幹部は、最終的な支払額を30億ドル近くに圧縮してもらおうと当局と交渉中だ。だが、たとえ交渉に成功したとしても、同行のバランスシートには穴が開くことになる。ドイツ銀の株式時価総額は160億ドルしかないからだ。

ドイツ銀は株式を使ったり資産を売却したりして、この穴を埋めることができるが、もう一つ、この穴を小さくできる選択肢がある。それは過去に与えた報酬の没収だ。

deutsche-bank-2

金融商品を不正販売したことに対して米司法省から巨額の罰金を要求されているドイツ銀行=ロイター

■1700億円以上没収可能か

例えば、調査会社オートノマス・リサーチのアナリスト、スチュアート・グレアム氏は、社員や幹部にすでに与えると約束した報酬のうち現時点でまだ権利が行使されていない株式に連動した報酬分を取り消し、さらに16年のボーナスも払わないことにすれば、15億ユーロ(約1700億円)ほど調達できると試算する。

元従業員の間には、ドイツ銀が徹底して強気に出れば、はるかに大きな金額を回収できるとみる向きもある。同行は06年と07年に総額40億ユーロ、08年に同20億ユーロに上るボーナスを従業員に払ったと彼らは言う。

驚くまでもなく、こうした話はドイツ銀の幹部らを内心、震え上がらせている。もちろん欧州の他の銀行の幹部も同じ気持ちだろう。欧州では銀行業界はすでに「投資に値しない」とのレッテルが貼られているだけに、彼らは過去の報酬をこれほど大規模に返上させるクローバックは、ますます人材の引き留めを難しくし、銀行業というビジネスモデルと、その価値をさらに損ねることになると主張する。極めて厳しい報酬没収については法廷闘争に持ち込まれることになるだろう。というのも、ドイツ銀には確かにクローバック条項が存在するものの、それは主に権利未確定の株式に連動した報酬を対象にしたものだからだ。

しかし、ウェルズ・ファーゴの取締役会の今回の動きと、ドイツで高まる金融機関への政治的な怒りから、ドイツ銀が行動を迫られる可能性は高まっている。当然だ。銀行員が高額報酬を含め、自分たちの稼ぐ手腕をあくまでも正当化するのであれば、彼らは株主や納税者とリスクをどう分けるかを真剣に考える必要がある。

金融機関やそこで働く人々が本当に再び信頼を勝ち取るには、そうした対策が不可欠だ。これらの改革が効力を発揮するのに、これほど時間がかかったのは極めて残念なことだ。報酬返上という取り決めが10年前に整備されていたら、ドイツ銀やウェルズ・ファーゴなどの不祥事はそもそも発生していなかったかもしれない。クローバックには、文字通り、クロー(かぎ爪)が必要だ。

By Gillian Tett

(2016年9月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

滝田記事

ドイツ発の金融不安が世界を駆け巡っている。ドイツ銀行やコメルツ銀行など大手行の経営問題が、金融・株式市場で警戒感を増幅させている。バブル崩壊後の日本を想起させる出来事。悩ましいのは当時よりもグローバルな連鎖の度合いが格段に大きいことだ。

deutsche-bank-3

ドイツ銀行の株価が急落するなど欧州銀行部門の財務健全性への懸念が高まっている=ロイター

「経営再建は順調に進んでおり、経営不安説には根拠がない」。9月7日、都内でインタビューした際、ドイツ銀のジョン・クライアン最高経営責任者(CEO)は、そう語っていた。

英国の金融界出身のクライアン氏は、ドイツ銀の再建を託されて2015年7月にCEOに就任した。過去のしがらみを断ち切って「複雑すぎる業務内容の簡素化」を掲げるクライアン氏が、隠し立てをしているとは思えなかった。

だが、悪いときには悪いことが重なる。今度は米国で05~07年に販売した住宅ローン担保証券(RMBS)の不正販売を巡って、米司法省から巨額の和解金を吹っかけられる。

その金額は最大140億ドルで、円換算すると1.4兆円である。和解金の要求規模が明らかになる前のドイツ銀の時価総額が180億ドルだったから、いくら何でも払いきれない。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルが「金融システムをリスクにさらす米当局」という社説を掲げたのもうなずける。

和解金問題については、54億ドルに減額されるという関係者の話を、AFPが伝えた。この金額だとドイツ銀は何とか対処できようが、増資をしてもなお自己資本が不足するようなら公的資金(税金)を投入するほかあるまい。ところが欧州連合(EU)の決まりでは、その前に銀行の債券保有者などが身銭を切ることを求められる。

cds-spread-in-europe

そもそもリーマン・ショック後の欧州で、公的資金投入を強く批判してきたのはメルケル首相の率いるドイツだった。地方選挙で敗北を重ねるメルケル政権は、この問題をとても切り出せない。ドイツ銀の経営陣も自力再建を繰り返す。

潜在的な自己資本不足というソルベンシー(支払い能力)の問題は、経営破綻した際の保険であるクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保険料にはね返る。加えてヘッジファンドの一部が、保有する上場デリバティブの一部を引き揚げ始めた。

カウンターパーティーリスク(取引相手としての危険性)が強く意識されだしたのだ。こうした動きが資金取引にも広がるようだと、銀行経営の命綱であるリクイディティー(流動性)が枯渇しかねない。

問題はドイツ銀だけにとどまらない。コメルツ銀も従業員の5分の1に当たる大規模なリストラと配当停止を打ち出さざるを得なくなった。日本でも大手行が軒並み崖っ縁に追い詰められた、1990年代末から2000年代初をほうふつとさせる事態だ。

当時の日本と違いドイツ経済は欧州主要国では最も好調で、ドイツ企業の国際競争力も高い。財政も健全である。経常黒字が国内総生産(GDP)の8%にのぼることもあって、いざ金融危機が起きても国内の資金だけで対処できる。

ただし日本と同様に、ドイツは銀行融資を主体とした間接金融が優位の経済である。大手行の屋台骨が揺らぐと借り手である企業の打撃は大きい。欧州経済の覇者であるドイツに依存する、ユーロ圏諸国の景気にも下押し圧力がかかる。

global-systemic-risk

さらに悩ましいのは、かつての邦銀と異なり、ドイツ銀が国際的な金融システムの中心に位置することだ。国際通貨基金(IMF)が6月に発表した、ドイツに対する金融安定審査報告でも、このシステミックリスクを重視した。

グローバルな金融システムに及ぼす影響の度合いは、世界の主要金融機関のなかで、ドイツ銀が最も大きい。その銀行に万が一のことがあれば、火の粉は思わぬ所に飛んでくる。

日本にとってさしずめ懸念されるのは円の急騰だ。海外での投融資を積み増してきた邦銀もドル資金調達に火が付きかねない。米当局には法外な和解金を自制し、ドイツ当局には金融危機を未然に防止するという、当たり前の対応を望むばかりである。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

『冷戦の再来、欧州で高まるロシアとNATOの緊張 プーチン訪日の真の狙いは?』(9/29日経ビジネスオンライン 熊谷徹)、『平和友好条約の勧め 日ロの領土交渉促すには』(10/2日経朝刊 池田元博)について

熊谷徹氏は元NHK出身だけあって、池上彰と同じ匂いがします。欧米の主張するのが正しい、日本もそれに沿った行動をせよと。左翼・リベラルにシンパシーを感じているのも同じでしょう。ロシア側から見た主張は余りされませんし、侵略を強める中国に強いことは言いません。

日本も遠く離れたヨーロッパ内のNATO VS ロシアの構図に関心がないのは、ヨーロッパ諸国が南シナ海や東シナ海に関心が薄いのと同じです。熊谷氏の関心は日本の安全より、ヨーロッパ諸国の安全に危惧を覚えている感じがします。メデイア人に多いデラシネでしょう。ドイツに帰化した方が良いのではと感じます。

日本は中国の尖閣侵略はおろか、沖縄、日本まで狙われています。中国は日本の左翼に金を出して、沖縄・高江のヘリパッド建設の邪魔をしています。そもそもで言えば、暴力革命を否定しない日本共産党が議席を獲得できるのがおかしい訳で、反自民というだけで共産党に投票するのは愚かとしか言いようがありません。中共の例を見るまでもなく、一党独裁・司法権の独立無し・人権抑圧国家を目指そうという政党です。反日民進党も選挙協力を続けるようですから、蓮舫の二重国籍問題もあって、次期衆院選では壊滅状態になるのでは。連合もこんな泥舟を未だ支援しようとしているのですから、危機感が足りないとしか言えません。化学総連が連合を脱退したように民間産別は今後も脱退が続き、官公労中心となるのでは。

http://www.sankei.com/region/news/160615/rgn1606150058-n1.html

ロシアとの領土・平和条約交渉は厳しいものとなります。当たり前で、失われた領土は「戦争」か「金」で解決するしかありません。平和愛好の人々が多い日本で「戦争」という方法は取れるはずがありません。尖閣を取りに来ている中国に国民レベルで怒りの表現すら発露できない民族に成り下がっていますので。ロシアとは「金」で解決することになります。それが政府の「8項目協力プラン」です。ロシア側からすれば、日ソ中立条約違反で奪った島とは言え、実効支配を続けてきました。それを無償で返還することはできないでしょう。池田氏の言うようにロシア国内で領土返還に否定的な見方が多い中での信頼醸成が大事と言うことになります。日本は中国包囲網の形成という大きな枠組みの中で考える必要があります。

熊谷氏はロシア人の入植を言いますが、中国だって同じことをやっています。日本に関心がないとしか思えません。そもそもで言えば、東西ドイツの統合時に欧米はNATOの東方進出はしないとロシアと密約しました。米国の裏切りでドンドン約束が破られて言ったわけですが、各国にはそのままロシア系住民が残っていて、多くなるのもむべなるかなです。況してやスラブ民族の兄弟国と思っていたウクライナ、ベラルーシの内、ウクライナが裏切ったと思ったことは間違いありません。ヨーロッパはロシアに経済制裁していますが、国際法を守らない中国に経済制裁を課す動きがありません。ヘタレ・オバマのアメリカが弱腰だからです。中国が日本に攻めて来た時にヨーロッパは助けてくれるのかです。そんなことも考えず、ヨーロッパの為に日本がロシアと交渉するのは考えた方が良いという論調は本末転倒でしょう。

熊谷記事

helicopter%e3%80%80apache

NATOの演習に参加するヘリコプター「アパッチ」(写真:ロイター/アフロ)

日本のメディアは今、ちょっとした「ロシア・ブーム」に沸いている。ロシア大統領のプーチンが日本の首相、安倍の招きで、今年12月に日本を訪れることが決まったからだ。日本側の目的は、経済協力をテコに北方領土の返還を引き出すことにある。安倍首相が北方領土の返還を切望する気持ちは、よくわかる。

ヨーロッパで高まる緊張

だが日本では、ロシアと欧米諸国との間で軍事的な緊張が高まりつつあることがほとんど知られていない。プーチン訪日を報じる日本のメディアも、ヨーロッパの緊張についてはほとんど触れない。ドイツに住んでいる筆者には、日本のメディアの沈黙が奇異に感じられる。

ヨーロッパでは、「東西冷戦」が再燃している。市民の間でも、「新たな戦争の時代が近づいているのか」という漠たる不安感が強まっている。

クリミア併合が引き金

そのきっかけは、2014年3月にロシアがクリミア半島に戦闘部隊を送って制圧し、ロシアに併合したことだ。同年2月にウクライナで起きた政変で、親ロシア派のヤヌコヴィッチ大統領が失脚し、親EU政権が誕生。新しいウクライナ政府は、EUやNATO(北大西洋条約機構)との協力関係の強化を希望した。

EUとNATOはベルリンの壁崩壊とソ連解体以降、かつてソ連の影響下にあった中欧・東欧諸国を次々と加盟させて「東方拡大」を続けてきた。かつての東側の盟主、ロシアの勢力圏は小さくなる一方だった。この際にEUとNATOは、シベリア出兵や第二次世界大戦中のナチスによる侵略など過去の経験から「外国勢力の介入」に強いアレルギーを抱くロシアの感情に、十分配慮しなかった。西欧諸国はかつてソ連の一部だった国・ウクライナと協力関係を深めたことで、虎の尾を踏んだ。

プーチンは、「ウクライナの新政権が、同国に住むロシア系住民にロシア語の使用を禁止するなど、その権益を脅かしている。我々はロシア系住民を守らなくてはならない」として、2014年2月末に、戦闘部隊をクリミア半島に派遣して軍事施設や交通の要衝を制圧。3月に同半島を併合した。

その後ロシア系住民の比率が多いウクライナ東部では、分離派とウクライナ政府軍との間で内戦が勃発。ロシア政府は分離派に兵器を供与するなどして、内戦に介入している。ウクライナ東部ではロシア軍の兵士が捕虜になっており、同国がウクライナ内戦に関与していることは確実だ。

EUとNATOは、ロシアの「奇襲作戦」によって、完全に虚を突かれた。21世紀に入って以来、ロシアに対するNATOの警戒感は緩んでいた。

たとえばロシアが2008年の南オセチア紛争で隣国グルジアに侵攻した時、NATOは強く反応しなかった。EUも本格的な経済制裁に踏み切らなかった。さらに、2014年2月にロシア軍はウクライナ国境付近で大規模な軍事演習を行ったが、NATOは反応しなかった。欧米諸国は、ロシアがウクライナの領土に戦闘部隊を送り、併合に踏み切るとは予想していなかったのだ。

欧米はクリミア併合に対し軍事的な手段で対抗せず、「冷戦終結後、最も重大な国際法違反」として非難し経済制裁措置を取るにとどめた。プーチンの「電撃作戦」は功を奏したのだ。ロシアがクリミアを併合した直後、プーチンに対するロシア国民の支持率は、一時約80%にまで上昇した。

焦点はスバルキ・ギャップ

プーチンの強硬な態度に驚いた欧米諸国は、2014年9月にウェールズで開いたNATO首脳会議で、緊急介入部隊の創設を決めた。NATOは、これにより欧州のどの地域にも数日以内に3000~5000人規模の戦闘部隊を投入できる体制を整えた。この措置は、「東欧のNATO加盟国にロシアが侵攻することは許さない」という欧米の意思表示だった。

NATO関係者は「東西対立がエスカレートした場合に、ロシアが次に併合しようとするのはバルト3国(リトアニア、ラトビア、エストニア)だ」という見方を強めている。その中で焦点となっているのが、ポーランド北東部にある、スバルキという町だ。日本ではほとんど知られていないが、欧米の安全保障、軍事関係者の間では「スバルキ・ギャップ」という言葉が頻繁に使われている。

ロシアは、バルト海に面したカリーニングラード(旧ケーニヒスベルク)周辺に飛び地を持っている。この町には、ロシア海軍にとって重要な軍港があるからだ。カリーニングラードの飛び地の北にはリトアニア、南にはポーランドがある。さらにこの飛び地の南東には、ロシアの友好国ベラルーシがある。

kaliningradskaya

ロシア領土の飛び地とベラルーシの間の距離は、わずか100キロメートル。この地峡部がスバルキ・ギャップだ。NATOは、東西間の対立が高まった場合、ロシア軍の戦車部隊がカリーニングラードの飛び地からスバルキ・ギャップに突入し、友好国ベラルーシへ向かうと推測している。そうすることでロシアは、バルト3国をそれ以外のNATO加盟国から切り離すことができる。NATOは、バルト3国に向けて地上から応援部隊を送ることができなくなる。ちょうどソ連が1948~1949年にかけてベルリンを封鎖したように、ロシアはバルト3国を袋小路に追い込むことができるのだ。

米国のランド研究所が最近作成した研究報告書も、バルト危機が勃発する場合、ロシアのスバルキ・ギャップ突破で始まる可能性が強いという見方を打ち出している。この報告書の作成には、NATOの最高司令官を務めたウエズリー・クラークも加わっている。

東西冷戦の時代、NATOはワルシャワ条約機構軍の戦車部隊が、西ドイツのフルダ付近で東西ドイツ国境を突破し、2日間でフランクフルトを占領するシナリオを想定していた。この付近には険しい山脈や森林地帯が多いが、フルダの前面だけは幅の狭い平原になっており、戦車部隊の移動に適していた。このため西側の軍事関係者は、ワルシャワ条約機構軍がこの「回廊」を通って西側に侵攻する可能性が最も高いと見て、「フルダ・ギャップ」という言葉をしばしば使った。その現代版が、スバルキ・ギャップなのである。

ロシア系住民の比率が高いバルト3国

リトアニア、ラトビア、エストニアは第二次世界大戦の初期にソ連、次いでナチス・ドイツ軍に占領された。戦後はソ連の一部に編入されたが、1990~1991年にソ連から独立。21世紀に入ってEUとNATOに加盟している。だが最大の問題は、ロシア系住民の比率だ。ラトビアのロシア系住民の比率は25.8%。エストニアでは25.1%、リトアニアでは4.8%がロシア系だ。これはソ連が第二次世界大戦後に多くのロシア系住民を移住させたためである。

ウクライナもロシア系住民の比率が17%と比較的高い。ロシアが併合したクリミア半島では、住民の約60%がロシア系だった。現在内戦が続いているウクライナ東部でも、ロシア系住民の比率が高い。

つまり「ロシア系住民の権益を守る」というプーチンの大義名分は、バルト3国についても使われる可能性があるのだ。

ロシアは2013年に、カリーニングラード周辺に7万人の兵士を動員し、「SAPAD2013」という大規模な軍事演習を行っている。またロシアは、カリーニングラード周辺にSA400型対空ミサイルを配置した。ロシアはこのミサイルを使うことで、NATOがリトアニア上空の制空権を確保するのを阻むことができる。さらにロシアは、戦術核弾頭を搭載できる短距離ミサイルをカリーニングラードに配備することも検討している。

2016年夏に大規模な軍事演習

このため、NATOは対ロシア戦略の重点をポーランドとバルト3国の防衛に置いている。

そのための具体策として、NATO加盟国は、今年7月8日にポーランドの首都ワルシャワで開いた首脳会議で、ポーランドとバルト3国にそれぞれ1000人規模の戦闘部隊を駐屯させることを決めた。1997年にロシアとNATOが調印した基本合意書によると、NATOは東欧地域に同じ戦闘部隊を常駐させてはならないことになっている。このためポーランドとバルト3国にいる合計4000人のNATO部隊は定期的に交替する。しかし、今年からNATOがこの地域の軍事的プレゼンスを強化したことに変わりはない。

NATOは今年6月にポーランドで、3万1000人の兵士を動員した軍事演習「アナコンダ」を実施した。この演習は、敵国がバルト海からポーランドに侵攻し、東の隣国からも戦闘部隊が侵入するというシナリオの下に行われた。

「アナコンダ」を終えた数日後には、演習「セーバー・ストライク」を実施した。これはエストニア領内の、ロシア国境から約150キロの地域で行なわれたもの。NATO加盟国から約1万人の部隊が参加した。これらの演習は、ロシアがスバルキ・ギャップを突破する誘惑にかられないように、牽制するためのものだ。

筆者は米軍のエイブラムス戦車や装甲兵員輸送車が大量に投入され、迷彩服に身を固めた兵士たちが榴弾砲を発射する訓練風景を見て、東西冷戦がたけなわだった頃のヨーロッパを思い出した。それは筆者にとって一種のデジャヴュ(Déjà-vu=既視感)だった。

筆者は、1980年に初めて西ドイツを訪れた。当時は、列車に乗るたびに車窓からNATOの戦車部隊の訓練を目撃したものだ。サンダーボルト・A10型地上攻撃機が激しい轟音とともに低空飛行し、ワルシャワ条約機構軍の戦車が西ドイツに侵攻する事態を想定した訓練を繰り返していた。もちろん東西ドイツを隔てる壁の向こう側でも、ワルシャワ条約機構軍がしばしば演習を行っていた。

1989年にベルリンの壁が崩壊して以降、ヨーロッパには雪解けムードが広がり、長い間このような演習は行われなくなっていた。だがロシアがクリミアを併合して以降、NATOは軍事演習を再開し、ヨーロッパの緊張感は確実に高まっている。欧米諸国は、「クリミアの二の舞は許さない」というメッセージをプーチンに送っているのだ。

NATOの盟主である米国は、ロシアとの緊張の高まりを背景に、防衛予算を少なくとも国内総生産(GDP)の2%まで引き上げるよう加盟国に求めている。2015年の時点で防衛予算がこの値を超えていた国は、米国を除くとギリシャ、英国、エストニア、ポーランドの4ヶ国だけだ。

ドイツの防衛予算もGDPの1.19%であり、目標にほど遠い。だが今年5月にドイツ連邦国防大臣のフォン・デア・ライエンは、「防衛予算を、2020年までに現在よりも約14%増やして、392億ユーロ(約4兆5080億円にする」と発表。またドイツ連邦軍の兵士の数も2023年までに1万4300人増やす。ロシア軍が得意とするサイバー攻撃に対応するための専門部隊も、大幅に増強する。

ドイツが将兵の数を増やすのは、東西ドイツ統一後初めてのこと。徴兵制を廃止したドイツ連邦軍の将兵の数は、1990年の58万5000人から17万7000人へと激減していた。こうした動きにも、東西冷戦の再燃が浮き彫りになっている。

他地域で盟友を求めるプーチン

筆者は今年8月、講演を行うために3週間日本に滞在した。ヨーロッパで緊張が高まっている現状がほとんど報じられておらず、「プーチン訪日」のニュースだけが盛んに伝えられていることに奇異な印象を抱いた。

ヨーロッパで欧米諸国との対決姿勢を強めているプーチンは、他の地域では新しい「盟友」を見つけようとするだろう。したがってロシアは、日本への接近を試みるに違いない。ロシアが、EUによる経済制裁の効果を減じるために、中国との間で天然ガスの長期販売契約に調印したのはその表れだ。

またプーチンは、トルコとの関係改善もめざしており、今年8月初めに同国の大統領、エルドアンと会談した。トルコが去年11月に、ロシア軍の戦闘機をシリア国境付近で撃墜して以来、両国の関係は悪化していた。

エルドアンは、クーデター未遂事件後に多くの軍人や市民を逮捕したために、EUから強く批判されている。EUに加盟するというトルコの悲願も、遠のきつつある。エルドアンと欧州諸国の間の関係は、極めて険悪化している。もしトルコをNATOから脱退させることができれば、プーチンはヨーロッパ南部での混乱、特に難民危機をさらに深刻化させることに成功するだろう。

さらにロシアは、フランスの右派ポピュリスト政党「国民戦線(フロン・ナショナール=FN)」に資金を援助している。FNは、英国と同様に、EU離脱に関する国民投票を実施するよう要求している。プーチンにとって、EUの足並みを乱す政党は味方なのである。またユーロ圏からの脱退を求めているドイツの右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」も、ロシアに友好的な態度を持っていることで知られている。

ちなみに日本では、ドイツ首相のメルケルとプーチンは仲が良いと多くの人が信じている。これは誤解である。むしろ、この2人は仲が悪い。メルケルは東ドイツで育った。多くの東ドイツ人は「占領国」であるソ連に反感を抱いていた。

メルケルはモスクワを訪問した際に、ロシア政府に批判的な人権団体のメンバーを訪ねたことがある。これはプーチンに対する面当てである。一方、プーチンはメルケルを別荘に招待した時に、メルケルが犬嫌いであることを知っていながら、会談をした部屋に犬を連れ込んだ。このためメルケルは顔面蒼白になった。明らかな嫌がらせである。

メルケルがロシア語、プーチンがドイツ語を流暢に話すことは事実だが、それは両者が親しいということを意味しない。プーチンの刎頸の友は、メルケルの前任者だったシュレーダーである。

プーチンがヨーロッパで、国外にいるロシア系住民の権益を守るという目標を前面に打ち出している中、彼は極東で、ロシア人が住む島を日本に返還するだろうか。我が国は、プーチンと北方領土の返還について交渉する際に、彼がヨーロッパでNATOと対峙し、軍事的な緊張が高まっている事実を念頭に置く必要があると思う。地政学的な変化が急速に起きつつある時代には、極東だけではなく、世界の他の地域にも目配りをする、複眼的思考が重要になる。(敬称略)

池田記事

ロシアのテレビ局「TVツェントル」で人気のトークショー「プラバ・ゴロサ(発言権)」が9月中旬、日ロ関係をテーマに取り上げた。

「日本式のリセット」と題し、各界の専門家らが議論を戦わせた。総じて日本への期待よりも、日本の経済停滞や日ロの貿易額が少ない現実などが指摘され、北方領土問題でも後ろ向きの発言がめだった。とはいえ、日ロの関係改善の動きがロシアでも、国民の関心事になってきた証しとはいえるだろう。

番組の題名でも明らかなように、最近の日ロ外交を主導しているのは日本側だ。安倍晋三首相は5月のソチ訪問に続き、9月には極東のウラジオストクで開いた東方経済フォーラムに出席し、プーチン大統領と長時間の会談を重ねた。ロシアとの経済協力を深めるための「8項目の協力プラン」も打ち出している。

「私たちの世代が勇気を持って、責任を果たしていこうではありませんか」。首相がフォーラムの演説で熱弁したように、その主な狙いが北方領土問題の解決と平和条約の締結にあることは、ロシア側も承知している。それでもプーチン大統領が8項目プランを「政治問題を解決する条件づくりにも重要だ」と評するなど、日本のイニシアチブを歓迎しているのは確かだ。

しかも、評価している点は経済だけではない。外交評論家のフョードル・ルキヤノフ氏は「安倍首相は明らかに米国が支持しない対ロ路線を打ち出した。かなりリスクの伴う行動だが、現代世界では多様性と柔軟性がカギを握る。ロシアの有識者や政権関係者は、日本が米国追随型の国家という先入観を修正しようとしている」と語る。ウクライナ危機で冷え込む米ロ関係を意識した発言といえる。

日ロ関係を進展させる動機はロシア側にもある。カーネギー財団モスクワセンターのドミトリー・トレーニン所長は極東開発を含めた経済的な利益に加え、「アジアで中国一辺倒の関係を変えようとする地政学的な意図がある。外交のバランスという意味で、日本は特別で大きな位置を占める」と指摘する。

米国や中国との関係といった地政学的な思惑も絡みながら進む日ロの接近だが、12月にプーチン氏が大統領として11年ぶりに来日し、首相の地元・山口県で首脳会談を開くことは決まった。領土問題を含めた条約交渉を進展させる道筋は描けるのだろうか。

プーチン大統領はかねて、1956年の日ソ共同宣言の有効性は認めている。「両国議会が批准したことが非常に重要だ」と最近の記者会見でも強調したばかりだ。同宣言は平和条約締結後に歯舞、色丹の2島を日本に引き渡すと明記している。ただし大統領は「どのような条件で返すかは書いていない」とし、問題解決には「非常に高いレベルの信頼が必要だ」と予防線を張っているのが現実だ。

ルキヤノフ氏は「プーチン大統領が国民の支持を得ているのは、大衆の気持ちを敏感に察して対応するリーダーだからだ。一般の人々が正しいと納得できるなら、彼は行動する」という。ちなみにロシアの世論調査会社レバダ・センターが5月末に実施した調査では、歯舞、色丹の2島だけを日本に引き渡す妥協案でも71%が反対し、賛成は13%だった。世論は厳しい。

では、打開策はあるのか。モスクワ国際関係大学のドミトリー・ストレリツォフ教授は「平和条約という交渉の名称を変えるべきだ」と提唱する。同教授によれば、平和条約は日本では北方領土問題の別名だが、ロシアの世論では第2次世界大戦の結果としての戦勝国と敗戦国の関係の固定化を意味するという。

「平和条約はロシアでは戦争の結果でしかない。一般市民はなぜ戦勝国が敗戦国に領土で妥協しなければならないのかと思ってしまう」。そこで条約を平等で未来に向けた位置づけにするため、例えば「平和友好条約」と命名して政治や国際連携、経済協力などのロードマップも盛り込んだ多面的な条約にすることが望ましいと強調する。

トレーニン所長も「いずれにせよ領土割譲につながる日本との条約締結は、プーチン大統領にとって歴史的功績にはならない。それだけに日本が信頼できるパートナーとなる確信が得られるかが交渉のカギを握る」と予測する。

今後の交渉で基軸になるであろう日ソ共同宣言は、今月で調印から60年を迎える。この間に両国関係も世界情勢も大きく変化した。日ロが真に条約締結をめざすのなら、文字通り「新たなアプローチ」が不可欠になっている。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

『討論されなかったヒラリー健康問題の深刻度 浮上する“ケーン大統領”の可能性』(9/29日経ビジネスオンライン 高濱賛)、『ヒラリーもトランプも消える、アメリカ大統領選「第3のシナリオ」とは』(9/27MONEY VOICE)、『ヒラリー対トランプ、勝者なき論戦 嫌われ者同士の戦いは第2戦に!』(9/30日経ビジネスオンライン 篠原匡)について

米国のマスメデイアも偏向していて、殆どが民主党支持です。でも、トランプを支持する層が半分近くいて、かつ民主党候補戦で敗れたサンダースのことを考えますと、米国民は大衆レベルで変化を望んでいる気がします。民主党は特別代議員の数が多いため、サンダースにとっては不利で、エスタブリッシュにとってはこの制度があることが有難いといえます。

健康不安を囁かれるヒラリーですが、余命1年説も流布されている状況で、メデイアの報道がなされないのもおかしいです。日本の蓮舫の二重国籍問題でアゴラが公開質問状を出し蓮舫に説明を求めているにも拘わらず、大手メデイアは無視しているのに似た構図です。

副大統領候補が重要になるという事でしょう。MONEY記事にありますように、核のボタンを押させることができないのはトランプではなく、ヒラリーです。また、中国の金塗れになっているヒラリーでは中国に強いことは言えないと思います。まあ、米国の要人は皆中国から金を貰っていると思います。中国社会は賄賂社会ですから。スマートに賄賂を贈ります。

10/1「士気の集い」で里見脩先生によりプロパガンダについて講演戴きましたが、その中で「中国は9000億円も対外広報に使っている。安倍首相は500億円まで増やしたと自慢げであるが、外務省主導であるため、3都市にジャパンハウスを作って、日本のスシやアニメの紹介をするだけ。戦略が無い。金の問題より、それをどのように使うかである。中国は170か国にTV放送機材を実質タダで送り、現地技術者も北京で研修、コンテンツも中国の放送を使えば中国から金が貰える仕組みを作り上げ、かつ多言語放送している(確かに小生が中国駐在時代(97~05年、中国中央TV局は多言語で放送していました。英仏独露の他、アラビア語までありました。日本のODAが中国の外交に使われていて日本人は何て愚かかとその時は思いました)。尖閣諸島も中国側表記の釣魚島で報道されるのが多くなってきた。プロパガンダが悪い訳ではない。どの国でもやっている。騙される方が悪いのである 」とのことでした。如何に日本の外務省は役に立たない存在か。幣原・吉田以降腐ってしまったのでしょう。陸奥宗光・小村寿太郎時代の栄光はありません。

デレクテイブ51何てのがあるのは知りませんでした。でもそれが簡単に発動できるとは思えません。いくらエスタブリッシュ・国際金融資本(≒ユダヤ資本)が動かそうとしても。大衆の反乱に遭うのでは。ただ、その混乱に乗じて共産主義者が米国を乗っ取るという話は恐ろしすぎです。米国はFDR政権時代そうなりました。FDRはスターリンにいいように操られ、日本を戦争に巻き込むよう誘導しました。でも騙された日本も悪いのです。明治の英傑の臥薪嘗胆の気持ちを当時のエリート達は持ち合わせていなかったからです。共産主義の蔓延を恐れてマッカーシ-旋風が起きて、米国は赤化するのを防ぎました。当時はソ連、今回は中共と相手が変わりますが。共産主義は人類を不幸にする仕組みです。ユダヤ人は頭の良い民族でいろんな発見・発明がなされましたが、それが人類の幸福の為に使われるかどうかは別問題です。

高濱記事

trump-vs-hillary-on-tv-debate-1

第1回目の討論会に臨むトランプ氏(左)とクリントン氏(写真:ロイター/アフロ)

—ヒラリー・クリントン民主党大統領候補(68)とドナルド・トランプ共和党大統領候補(70)が初のテレビ討論会に臨みました。

高濱 討論会に対する関心はいやがうえにも高まりました。直前に、大きな事件がいくつも起きたからです。クリントン氏の健康問題が浮上。9月18日には、ニューヨークのど真ん中で爆発事件が起きました。さらに、ノースカロライナ州シャーロットでは20日に暴動事件が発生しています。

討論会を視聴した人の数は全世界で約1億人に達したようです。米国では投票登録を済ませている有権者の75%、約950万人が討論会の実況中継を見たと推定されています。 “Trump-Clinton debate expected to shatter records,”Joe Concha, The Hill, 9/20/2016

ところが、クリントン氏の健康問題は一切議論されませんでした。この理由については後で触れたいと思います。

もう一つ、この討論会が注目されたのは、支持率競争での異変です。クリントン氏に大きく水をあけられていたトランプ氏が討論会直前にクリントン氏を2%上回ったのです。 “RealClear Politics, Latest Polls,”realclearpolitics.com., 9/26/2016

支持率の変化と相まって、異色の候補者トランプ氏と女性初の大統領候補クリントン氏とが初めての直接対決でどんなやりとりをするのか、まさに「史上最高のショー」(テレビのあるコメンテーター)となりました。

「勝ったのはヒラリー氏」、いや「勝者はトランプ氏」

—採点すると、どちらに軍配が上がったのでしょうか。

高濱 米国の主要メディアは、クリントン氏の勝ちと見ています。討論会をテレビでみた米国民はどうか。CNNが討論会直後に行った世論調査では、クリントン氏が勝ったと答えた人が62%、トランプ氏が勝ったと答えた人が27%でした。

私の印象はこうです。トランプ氏は「大統領らしさ」を意識してか、普段の暴言を抑制しました。これに対してクリントン氏は、トランプ氏の失言を引き出そうとかなり攻撃的な発言に終始しました。トランプ氏は、経済問題でも人種問題でも、さらに日本や北大西洋条約機構(NATO)など同盟国との関係でも、理路整然と話す「才女」に歯が立たなかった。これは想定内のことでした。 “Clinton puts Trump on defese at first debate,”Stephen Collinson, CNN, 9/27/2016

ところが驚いたことに、CNNとは逆の世論調査も出ています。ニュージャージー州のデジタル・メディア「nj.com」が討論会直後にインターネット上で行った世論調査(対象者11万777人)です。トランプ氏が勝ったと答えた人は54.2%(6万15人)、クリントン氏が勝ったと答えた人は41.2%(4万5594人)でした。 “Poll: Who won the presidential debate (9/26/16)? How did Clinton, Trump do in the first debate?” Susan K. Livio, NJ Advance Media for N.J.com, 9/26/2016

この結果について、ニュージャージー州に住むフリーランス・ジャーナリストは筆者にこう語っています。「トランプ氏はCNNをはじめとする主要メディアを目の敵にしている。支持者の中にも主要メディアが大嫌いな者がいる。この人たちはCNNなど見ていない」。

「nj.comはニュージャージー州最大のデジタル・メディアでローカル紙12紙を傘下に収めている。あまりにも完璧だったヒラリーのパフォーマンスに反発する庶民の声をピックアップしたのだろう。『ヒラリー嫌い』がどれほどいるかが分かるというものだ」

ヒラリーの「健康問題」はなぜ論じられなかったのか

—ところでクリントン氏の「健康問題」はなぜ討論されなかったのでしょう。

高濱 私にも不思議でなりません。一つ言えることは、司会者のレスリー・ホルト氏が事前に、この討論会のテーマを「繁栄の達成」「米国の先行き」「米国の安全」の三つに絞ったからでしょう。

第2回目の討論会は10月9日にミズーリ州で、第3回は同19日にネバダ州で行われます。その時にはクリントン氏の健康問題が議題に上るでしょう。70歳になったトランプ氏の健康問題も当然俎上に上るに違いありません。気づいたのですが、トランプ氏は討論会の最中、ひっきりなしにコップの水を飲んでいました。

ところで、討論会が開かれる前日の25日、筆者は大統領選をフォローしてきた主要紙の政治記者からこんな話を聞きました。「選挙の専門家たちが、第1回のテレビ討論会で一番関心を持っているのは、クリントン氏の健康状態だ。ヒラリー氏の皮膚の色つや、目、耳、口、喋り方、相手の発言に対する反応などだ。つまり、クリントン氏が大統領としての職務を全うできる健康状態に本当にあるのかを見極めようというわけだ」。

ところが健康問題は一切出ず。討論会の後、CNNをはじめとするテレビ局が数人の政治評論家を集めて、二人のパフォーマンスについてあれこれ論ずる番組でも、クリントン氏の健康問題を誰一人として取り上げなかったのです。

脱水症状は初めてではない

—クリントン氏の健康問題が急浮上したのは9月11日。ニューヨークで開かれた、9.11同時多発テロの追悼式に参列した際に体調を崩し、途中で退席したのが発端でした。

高濱 主治医は当初、「脱水症状を起こしたため」とコメントしました。ところがテレビの映像に、クリントン氏が式典会場を離れ、クルマに乗り込む際にふらつき、スタッフに支えられる姿が映りました。これをメディアが大きく報じたのです。

その後、主治医は「クリントン氏が肺炎にかかっていると9日に診断していた」ことを明らかにしたのです。

クリントン氏は国務長官在任中の2012年12月、自宅で静養中に脱水症状に見舞われて失神し、脳震盪を起こしたことがあります。この時、主治医が頭部に血栓を見つけ、急きょ入院することになりました。これは当時、トップシークレットでした。その後メディアが憶測として報道。つまりクリントン氏が脳震盪を起こしたのは今回が初めてではないのです。

病名は「右脳横静脈洞血栓症」

エドワード・クラインというジャーナリストがクリントン氏の健康問題について詳しく書いています。元ニューヨーク・タイムズ・マガジン(日曜日版付録)編集主幹で、辞めたあと何冊ものベストセラーを著している人です。クリントン氏の周辺や医師たちから情報を聞き出しています。

それによると、クリントン氏が2012年に倒れた際の病名は「右脳横静脈洞血栓症」(a right transverse venous thrombosis)でした。症状が悪化するのを防ぐためにクリントン氏は抗凝結剤(anticoagulant)を服用しているそうです。

クリントン氏は当時から手の震えを感じており、神経科医による検診を定期的に受けています、不眠症にも悩まされおり、アンビエン(Ambien)やルネスタ(Lunesta)といった睡眠薬を飲んでいるそうです。

こうしたことから医師たちは、大統領選キャンペーン中は専門医を常時同行させるよう進言しているそうです。

クリントン氏の健康問題を一番心配しているのはビル・クリントン氏。20年来の知人であるダン・オーニッシュ博士(予防医療研究所所長)に常に助言を求めているそうです。ヒラリー・クリントン氏が大統領に就任すれば、オーニッシュ博士が大統領主治医になるのは確実と言われています。

いずれにしてもクリントン氏の健康問題はそこまで深刻なようです。 “Unlikeable: The Problem with Hillary,”Edward Klein, Regnery Publishing, 2015

病状の深刻さをあえて報道しない米メディア

—だとすれば、クリントン氏が11月8日の大統領選投票日前に候補を降りる可能性もあるわけですか。

高濱 当然ありますよ。でもおかしなことにそれを指摘する米メディアはありません。大統領選の真っただ中にそういうことを言うのは「一種のタブー」になっているのか。その点について米国人のジャーナリストに質したのですが、満足な返答は得られませんでした。

ところが英国のメディアにはそういう自己検閲はありません。英語は共通語、情報は100%米メディアと共有しています。米国の政治情勢について、時として米メディアより深い読みをしています。英語が母国語でない私には英メディアによる米国政治の分析は客観的で非常に参考になります。

その英国の保守系雑誌「スペクテーター」*が9月11日、オンラインで、「ティム・ケーン副大統領が次期米大統領になる可能性はあるか」と大胆な見出しをつけて報じています。

*「スペクテーター」は英保守党の機関誌的存在で、英国屈指の保守系雑誌。1828年に創刊。発行部数は5万4000部。同誌の歴代編集幹部は保守党の要職に就いている。

筆者は同誌副編集長のフレディ・グレイ氏です。要旨は次の通り。

「ヒラリー・クリントンが大統領候補を降りたらどうなるだろう? ニューヨーク・タイムズをはじめとする米主要メディアはそう質問するのを躊躇し続けてきた。しかし9・11事件追悼式典で倒れたことで、同氏の健康問題が最大の関心事なってしまった。同氏が大統領になったとして3軍の最高司令官として4年間もつのか。いや、それどころか、大統領選挙の投票日前に倒れでもしたら、有権者の多くが渋々であれ、あのドナルド・トランプ氏に投票してしまうのか」

「トランプ氏の場合、主治医は『史上最も健康な大統領候補』と太鼓判を押しているが、それが事実でないことは皆知っている。同氏の肉体的能力に関していくつかの合理的な疑問がある。だがクリントン氏の場合はトランプ氏の健康状態とはレベルが違う。クリントン氏の咳は今や彼女の選挙運動のトレードマークにすらなっているからだ」

「だが、米国にとって、そして世界にとっての救いなのは、クリントン氏に万一のことがあっても、ティム・ケーン副大統領がピンチヒッターとしてベンチに控えていることだ」

大統領選の投票日までにクリントン氏が撤退することになれば、民主党は党規約第3条第1項により、代議員による後任選びをしなければなりません。この場合、副大統領候補のケーン氏が最有力ですが、予備選でクリントン氏を苦しめたバーニー・サンダース上院議員や「安全パイ」のジョー・バイデン副大統領も候補に挙がるかもしれません。さらにはリベラル派の実力者、エリザベス・ウォーレン上院議員も出てくるかもしれません。 “After Hillary Clinton’s collapse, is it time to consider the possibility of President Tim Kaine,”Feddy Gray, The Spectator, 9/11/2016

大統領就任後にもありうる「健康問題による辞任」

—クリントン氏の健康が投票日までなんとかもったとしても、大統領に就任した後、健康が悪化して大統領を辞める可能性があるのではないですか。

高濱 その通りです。むしろその可能性のほうが大きいかもしれません。

「ケーン大統領」説について何人かの政治専門家に意見を聞いてみました。大方は「クリントン氏の健康は来年1月20日の就任式まではもつ」というものの、「4年の任期を全うできるかどうか」と聞くと、全員が憂慮しているんですよ。

その場合は、副大統領が継承順位第1位ですからケーン氏が直ちに大統領に昇格します。その場合、副大統領を新たに選ばねばなりません。 “The Charter & the Bylaws of the Democratice Party of the United States,”The Democratic National Committee, 8/28/2015 “Who Would Replace Hillary Clinton If she had to drop out,” Stephanie Dube Dwilson, heavy.com., 9/11/2016

ヒラリーよりも大統領に適した「好感度抜群」のケーン

—ケーン氏とはどんな人物ですか。日本ではあまり馴染みがありません。

高濱 民主党内ではリベラル中道派。弁護士出身、バージニア州リッチモンド市長を経て、州副知事、知事を歴任し、その後、民主党全国委員長を経て上院議員を1期務めています。上院では外交委員会や軍事委員会のメンバーで外交、安保に精通しています。

ハーバード法科大学院在学中、イエズズ会の教徒として奉仕活動のためホンジュラスに滞在したことがあります。スペイン語が堪能で2013年には上院本会議で移民法改正法案を支持する演説を13分間すべてスペイン語で行いました。今年7月にはカリフォルニア州で開かれたクリントン応援集会で、支持を訴える演説をスペイン語でしています。 ” 5 Things To Know About Tim Kaine,” Meg Anderson, NPR, 7/22/2016

人工中絶には条件付き反対、TPP(環太平洋経済提携協定)には賛成の立場をとってきました。温厚な性格で好感度は抜群というのが玄人筋の評価です。奥さんはハーバード法科大学院の同窓。奥さんの父は共和党員でバージニア州知事でした。

ビル・クリントン元大統領やバラク・オバマ大統領らもケーン氏の政治手腕を高く評価しています。副大統領候補としてケーン氏をヒラリー氏に強く推したのはビル氏と言われています。「好感度」で問題のあるクリントン氏の弱点を埋めるに最適のランニング・メイトとみたのでしょう。

そのケーン氏と共和党副大統領候補のマイク・ペンス氏(インディアナ州知事)とのテレビ討論会は10月4日に行われます。「ケーン大統領」説があるだけにこの討論会も注目すべきでしょう。

MONEY VOICE記事

trump-vs-hillary

なぜヒラリーやオバマの背後に控える世界支配層は、こうした事態に至ることを重々知りながら、あえてヒラリーを推したのでしょうか。特にヒラリーを援助するソロスなどは…。(『カレイドスコープのメルマガ』)

※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2016年8月20日第169号パート1の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。割愛した全文もすぐ読めます。

ヒラリーもトランプも大統領にならない「プランC」がある

致命的なリーク

ここにきて、ヒラリー陣営にとって致命的な情報がリークされました。

フランスのセメント会社「ラファージュ」が、ISISに資金援助を行っていたという決定的な情報は、ウィキリークスのジュリアン・アサンジによってタイムリーにもたらされました。

ラファージュは、クリントン財団のスポンサーであり、ヒラリーはラファージュの取締役会に入っていることが分かったのです。

つまり、ヒラリーは、ISISに破壊の限りを尽くさせ、復興景気を演出することによって、このセメント会社への利益誘導を図ろうとしたのです。

それだけでなく、クリントン財団は、9.11の首謀者の一つと目されているサウジアラビアとも密接な関係を築いています。

米国製の最新鋭の武器の最大の輸出先は、あいかわらずサウジアラビアです。このサウジアラビアから、米国製の武器が、いわゆるアルカイダ系イスラム過激派に流れてきたのです。

【関連】「死刑判決」を受けたドイツ銀行。1.4兆円では済まない絶望の訴訟リスト

9.11の真相?

ドナルド・トランプが、「9.11の真相を暴露するぞ」「クリントンとサウジの並々ならぬ関係をぶちまけるぞ」と、ブッシュやクリントン夫婦、オバマを恫喝していますが、その意味は、ベンガジ事件から連綿と続いているネオコンの戦争屋ネットワークと、その背後で暗躍している、カザール・ユダヤ(似非ユダヤ)と言われる国際金融マフィアが、いかにして、ヒラリーのような政治家の衣を来た凶悪犯罪者を操りながら米国を破壊してきたかを有権者に暴露する、と言っているのです。

トランプは、やがて、ヒラリーの発作が止まらなくなることを知っていたのです。

ヒラリーが、脳血管にできた血栓のために長期入院した2012年からのことです。それ以前に、ヒラリーは演説中に咳き込んで、聴衆の面前でトローチをコップの水で流し込む場面が何度となく報道のテレビカメラに映し出されているのです。

なぜ、ヒラリーやオバマの背後に控えている世界支配層は、こうした事態に至ることを重々知りながら、あえてヒラリーを推したのでしょうか。特に、ヒラリーの選挙活動資金を援助していることを隠さないジョージ・ソロスなどは……

ここに「プランC」の存在を考えなければならない必要性が出てくるのです。

核のボタンは持たせられない

副大統領のバイデンが、8月15日、ペンシルべニア州でヒラリーの応援演説に立ったとき、「トランプは、日本などに核兵器の開発を促すなど、大統領になる資格はない」と公然と発言したことも異例中の異例ですが、それにとどまらず、バラク・オバマも、「トランプは大統領として務めるのは無理である」そして、「彼は嘆かわしいほどに大統領職の仕事に向かうための準備ができていない」と公的に述べました。

米国の有権者にとって、現職の大統領が一候補者に対して、あたかも人間失格者のように批難するのを見るのは初めてでしょう。歴代の大統領の一人として、ここまでの個人攻撃を行ったことはありませんでした。

それだけでなく、「トランプは興奮しやすい気性で、世界でもっとも強力な力を持ちうる米国の大統領の地位に就くだけの判断力、理解力を持っていない」とプレスに向けて、こきおろしたのです。お上品なオバマが、いったいどうしたことでしょう。

以下は、ホワイトハウスの公式サイトに8月2日付でアップロードされた、ドナルド・トランプを批難するオバマの発言記録からの抜粋です。

いったい、ホワイトハウス内部で何が起っているのか、じっくり考えてみましょう。

「……しかし、私が賛同しかねる共和党の大統領は(過去に)いたことはいたものの、彼らに大統領としての職務を果たす能力が欠けていたというようなことは断じてなかった。

……ミット・ロムニーとジョン・マケインは、政策に関しては間違っていた。 しかし、彼らに対しても同様に、大統領の職務を果たす能力がないなとど私は決して思っていない。

もし、過去の大統領選で彼らが勝っていれば、私は失望したことだろう。

しかし、私はすべてのアメリカ人に言いたい。「彼らは、それでもわれわれの大統領であり、必要な行動規範、ルール、常識によって忍耐強くことに当たる能力を有しており、経済政策、外交政策、憲法の伝統、その他の政府が従事する法の支配に関して十分な知識を有している人たちである」と。

……しかし、トランプが台頭している今の状況はそうではない。これは私だけの意見ではない。つまり多くの著名な共和党員の意見なのである。

米国の有権者のみなさんは、今こそ声を上げざるを得ない節目に差しかかっているのである。」

副大統領のバイデンなどは、「狂人トランプに核弾頭ミサイルの発射ボタンの暗号コードを教えたら、いったい世界はどうなることやら」とまで言っています。

しかし、ヒラリーの発作的で瞬間的な不随意運動の繰り返しを見てください。もはや、彼女は、自分で自分の所作が制御できなくなっています。

この反応を見た専門家たちは「ミオクローヌス(Myoclonus)」を強く疑っています。あるいは、モハメド・アリが生涯苦しめられたパーキンソン病であるという専門筋もいます。

この動画は、クリントン夫妻の上方で何かしらのサプライズが起こったのでしょう。ヒラリーに続いてビル・クリントンも、ゆっくりと視線を上に向けています。

ヒラリーの奇矯さが目立つのは、まさにこのようなケースです。

こうした誰も驚かない程度のささやかな刺激にも過敏に反応し、それが制御できない不随意的な身体的反応となって表れてしまう場面が多すぎるということなのです。

私には、そうした専門家の見立てなどはるかに及ばない重篤な事態が想像できるのです。 彼女は、確実に「狂人」となった……投薬によって……。

主治医によって投与されている劇薬の副作用もあるでしょう。しかし、彼女がつながっているイエズス会のバチカンを今でも信じているクリスチャンにさえ、「彼女にはエクソシストが必要だ」と言わしめるほどの奇怪な行動の数々。

核の暗号コードを絶対に教えてならないのは、トランプではなく、むしろヒラリーのほうであることは誰の目にも明らかです。

オバマの「プランC」

さて、バイデンとオバマは、本当にヒラリーを大統領にしたいと考えているのでしょうか?

まったく違います。オバマがヒラリーを擁護してきたのは、前述したようにベンガジ事件の真相を闇に葬るため、知りすぎたヒラリーが口を開かないように陰でサポートする必要があったからなのです。

しかし、オバマがFBI長官にジェイムズ・コーミーを任命したことによって、それは完全に封印されたといってもいいでしょう。

これから自制が効かなくなったヒラリーが何を言おうが、米国のメディアが「精神異常者のたわごと」と片づけてしまえば、誰もヒラリーの舌禍を取り上げようとしないでしょう。 「彼ら」は、これで完全にヒラリーをコントロールすることができるのです。

これが「プランB」であることは、前号パート1で説明しました。

有力なウェブサイト「WND」の主力コラムニスト、ジョセフ・ファラー(Joseph Farah)は、米国の良識派の心情を代弁しています。

「……他の誰もこの問題について尋ねないならば、私が質問したい。

「大統領閣下、トランプが選挙に勝って次期合衆国大統領になった場合、あなたは快く、そして平和裏にホワイトハウスを去り、ホワイトハウスの前任者すべてがそうしてきたように、同じような方法で権限の委譲を行うことを約束できますか?」」

この質問に答えるのは非常に簡単だ。これは、先週以来のオバマの言動に対する扇動的レトリックである。

そう、オバマ陣営と彼のシャドウ・キャビネットにとっての最大の問題はトランプなのです。

それでも、ドナルド・トランプが11月8日に勝利したとき、オバマは紳士的にすんなり辞任して、すべての権限をトランプに移譲するのでしょうか?

「トランプは狂人そのものである」と言い続けてきたオバマやバイデンが、世界中の人々が見ている前で、トランプにホワイトハウスのキーを手渡すのでしょうか?

それこそ、オバマは国家的反逆者ということになってしまうはずです。オバマとバイデンは、その矛盾に対する弁明を今のうちに考えておいた方がいいのかも知れません。

国家的非常事態

しかし、そうしなくても済むケースがひとつだけあります。それは、11月8日の大統領選挙が行われなくなるような国家的非常事態が起こった場合です

米国では、6月1日からハリケーン・シーズンに入ることから、毎年その直前にテレビ各局が国民に注意を呼びかけることは恒例となっています。

オバマも5月31日、「気候変動によって年々、ハリケーンが強力になっている」と国民に向けてスピーチを行い、その内容がホワイトハウスの公式サイトに掲載されました。

ハリケーンが大型化していることは確かなことですが、そもそもオバマが、それを公式に警告することは、この数年なかったことです。

ホワイトハウスの公式ページに目を通した人であれば誰でも大いなる違和感を感じることでしょう。

その内容は、ハリケーンに対する注意喚起というよりは、むしろ最寄りのFEMA避難所(造りは収容所に見えるが)への行き方を道案内する「FEMAアプリ」を、携帯電話にインストールするよう促す内容になっているからです。

「FEMAアプリ」は、米国民にハリケーンのような気象災害だけでなく地震などの天変地異、太陽フレアなどの宇宙的異変、大規模火災などの自然災害、また、経済災害による暴動、テロなど20種以上の危険に対して安全を確保するための情報を提供することができる、というものです。 (※メルマガ第160号「経済崩壊と世界規模の気候大変動と日本版FEMAの創設」にて詳述)

ある種の甚大な国家危機が、今から来年の1月の間に起これば、バラク・オバマは、過去数十年の間、大統領執務室において密かに受け継がれてきた並外れた強大な権力のいくつかを行使することができるでしょう。

仮にトランプが11月8日に行われる一般投票で大統領に選出されたとしても、正式に大統領に任命されるのは翌年1月です。それまでは、米国にどんな悲劇が起こってもトランプには対処する権限が与えられないのです。

されに、その間、米国内でカタストロフィーが起こればトランプは大統領に任命されません。

なぜなら、トランプを熱烈に支援している「99%」の米国の有権者でさえも、カオス状態になった米国の非常事態をトランプが収拾できるとは考えないからです。

オバマが、ホワイトハウスの公式ページにトランプに対する批判を堂々と載せて、その最後を「米国の有権者のみなさんは、今こそ声を上げざるを得ない節目に差しか掛かっているのである」と結んだのは、次のような含意があるのです。

「もうすぐ米国はカオス状態に入る。そのとき、一刻も早く事態を収拾しなければならない。大統領としての能力の一つもないトランプの言うことに惑わされてはならない。われわれこそが、みなさんを守ることができるのだから」と。

「オバマには反対だが、米国が本当の意味で破滅的事態に至る前に平静を取り戻すとのできるのはやはりオバマだ」と、米国の人々は思うようになるでしょう。

「99%」の人々は、あっさりとトランプ大統領の夢を反故にしてオバマ政権の延長をしぶしぶ認めるようになるのです。

オバマに無制限の権限を与える大統領令第51号

米国が非常事態に至った場合に行使できる大統領が保持している権限のすべてを含む、ただひとつの法規、ただひとつの政令、ただひとつの行政命令、あるいは大統領令はありません。

これらの権限は、プレジデンシー(presidency)の上に階層化されており、一本化されているというわけではありません。

国家非常事態を収束するためには、異なる法律、ルール、行政命令といくつかの大統領令の組み合わせによって初めて、その可能性が出て来るのです。

しかし、大統領に無制限の権限を与える最上位の大統領令がすでに用意されていることを、ほとんどの米国民は知りません。

それは、ブッシュ政権の間、密かに制定された「国家安全保障大統領令第51号(National Security and Homeland Security Presidential Directive)」、通称「Directive51」です。 これこそが、安倍政権でも頭をもたげてきた「国家連続性政策(National Continuity Policy)」の要です。

それは、米国の人口、インフラ、環境、経済、政府機能に影響を及ぼすような崩壊・分裂・混乱を生じるような異常レベルの重大事件や、付随的事件をも含めた「破滅的な非常事態」が起こったときに発動されることになっています。

グローバル・エリートの「シナリオ」では、複合的イベントによって米国のカオスを引き起こし、大統領に無制限の力を与える「Drective51」を発動させて事態の収拾を図るも、それが終わった後では、米国はまったく別の国になってしまうのです。<中略>

ヒラリー、トランプのどちらかが一般投票によって大統領に選出された後、「Drective51」を発動できるような非常事態を演出することです。彼らのどちらが大統領になっても、「プランC」は成功します。

また、彼らのどちらも大統領にならなくでも「プランC」は成功するのです。

それによって米国民は、資本主義の象徴であるワールド・トレード・センタービルが爆破されたとき以上に絶望の淵に追い込まれることでしょう。その後に現れるのが共産主義の独裁者です。

7月1日、なぜオバマが、米国を征服することを目的とした国連の平和維持軍を本土に持ってくる権限を与える大統領令に署名したのか、再度、考えてみましょう。

篠原記事

守勢に回る時間が多かったことを考えれば、負け惜しみの一つでも言いたくなる気持ちは分からないでもない。

9月26日、米ニューヨークで開催された米大統領選のテレビ討論会。大統領の座を争う2人による初の直接対決は、過去に例がないほどの高い注目を集めた。米ニールセンによれば、テレビで討論会を視聴した米国人は少なくとも8400万人と過去最高。ネットでの視聴も含めれば、それ以上の人が2人のバトルに釘付けになった。

trump-vs-hillary-on-tv-debate-2

討論会の冒頭で握手するトランプ氏(左)とクリントン氏(右)(写真:ロイター/アフロ)

大統領候補らしさが裏目

1960年のケネディ氏とニクソン氏、1980年のレーガン氏とカーター氏の時のように、討論会のパフォーマンスが勝敗の帰趨を決めたケースは過去にはあるが、最近は討論会そのものが選挙結果に決定的な影響を与えることは減っている。それでも、今回の討論会が注目を集めたのは両候補ともに好感度が低く、判断をしかねている有権者の有力な材料になるとみなされたためだ。

政治家としての経験や判断力は評価できるが、嘘つきで不誠実だいう印象のクリントン氏と、アウトサイダーとして閉塞感の漂う現状を打破するという期待がある半面、知識や言動、振る舞いなどあらゆる面で大統領の気質に欠けると思われているトランプ氏。いわば究極の消去法を迫られている米国民にとって、90分の真剣勝負はどちらがマシなのかを見極める重要な機会である。

それでは初戦はどちらが勝ったのか。既に様々なところで指摘されているように、メディアの評価や調査会社の数字を見ると、クリントン氏が優勢だったという見方が強い。

米ハーバード大学ケネディスクール政治研究所によれば、リアルタイムで開催していたバーチャルタウンホールミーティングに参加していたミレニアル世代(1981~98年生まれの世代)の63%がクリントン氏を勝者とみなした。また、様々な予想を提供しているPredictWiseのオッズを見ても、討論会の前に69%だった民主党候補の勝利確率は討論会後に73%まで上昇した。

市場を見ても、ダウ工業株30種平均は27日に上昇、トランプ氏の保護主義的な言動に最も影響を受けると思われるメキシコペソも反発した。“トランプ大統領”の誕生に伴う不確実性を嫌忌している市場も、クリントン氏に軍配を上げた格好だ。

挨拶代わりのジャブに激情

実際、討論会ではトランプ対策を入念に練ったクリントン氏と準備不足だったトランプ氏の差が明白だった。

ツイッターなどでよく使う「いかさまヒラリー」ではなく「クリントン長官」と敬称で呼ぶなど冒頭こそ大統領候補らしい雰囲気を醸し出していた。だが、冒頭にクリントン氏が「彼は父親から1400万ドルを借りてビジネスを始めた」と軽くジャブを放つと、早速、頭に血が上ったトランプ氏は「借りたのは小さな金額だ」と反論、その説明に貴重な時間を空費した。その後もオバマ大統領の出生地を巡る過去の発言、いまだ公開していない納税申告書、イラク戦争を過去に支持したかどうか――など過去に取った自身の行動の釈明に追われた。

その間、クリントン氏は「深い威厳を持った人間だ」とオバマ大統領を持ち上げつつ、自身を支持していないオバマ支持層にアピール。私用メールサーバー問題など自身のスキャンダルについては「間違いを犯した。それについては責任を負う」というひと言で難なく切り抜けた。討論会の前に浮上した健康不安についても、昨年11月に米下院で実施された公聴会を引き合いに出し、「11時間に及ぶ公聴会の証言を経験してから言ってほしい」と鋭いカウンターを放っている(クリントン氏が国務長官だった2012年9月に起きたリビア・ベンガジ米領事館襲撃事件に関する公聴会。この事件では駐リビア大使など4人が死亡した)。

クリントン氏は「トランプ氏を苛立たせて大統領に向かないという印象を与える」という作戦を遂行しつつ、的確にジャブを放ってポイントを獲得した印象だ。「トランプ氏を苛立たせるというクリントン氏の戦略の前に、トランプ氏は大半で守勢だった。第2戦ではもっとアグレッシブに出ようとするかもしれない。どれだけ効果があるかは分からないが…」。ワシントンのシンクタンク、センター・フォー・ア・ニュー・アメリカン・セキュリティのリチャード・フォンテーヌ会長は振り返る。

討論会の後、トランプ氏はFOXニュースで「誰も傷つけたくなかったので手加減した」と釈明。CNNのインタビューでも、ビル・クリントン元大統領の不適切な関係について問いただそうと思ったが、(クリントン夫妻の)娘のチェルシーが聴衆にいたのでやめたという趣旨のことを話している。実際、トランプ氏に対する司会者の質問がクリントン氏の追い風になっていたのは間違いないが、リビア・ベンガジ事件やクリントン財団の寄付金問題など、クリントン氏のアキレス腱を攻められなかった点を考えれば完敗といわれても仕方がない。

黒人支持率の不気味な下落

もっとも、大統領選の流れが決まったと考えられるほどの結果か、と問われればそこまでの差はないだろう。挑発に乗りやすく、政策に具体性がないトランプ氏の弱点が改めて浮き彫りになった一方で、クリントン氏自身が抱えている問題が解消されたわけではないからだ。

今回の結果を受けて、トランプ氏は次の討論会で私用メールサーバー問題やリビア・ベンガジ事件、クリントン財団などクリントン氏を巡るスキャンダルを容赦なく叩くに違いない(2回目をボイコットしなければ)。クリントン氏とトランプ氏は同様に嫌われているが、「不誠実」「嘘つき」「エスタブリッシュメントの代弁者」といった不信感は、クリントン氏の長年にわたる政治活動の中で培われているだけに、残り6週間で消えるようなものではない。

また、クリントン氏は民主党サポーターの支持を得ているが、オバマ大統領が2008年と2012年に得た支持率にはおよばない。既存の支持基盤のクリントン離れも進んでおり、女性やヒスパニック、黒人の支持率が夏場以降、低下している。若者層における不人気も深刻で、コロラド州やニューハンプシャー州では、サンダース氏を支持した若い有権者がクリントン氏ではなく、リバタリアン党のゲーリー・ジョンソン氏のような第3極に投票する可能性も指摘されている。少なくとも、オバマ大統領を支えた黒人や若者の熱狂は存在しない。

「クリントン氏は『私に対して話していない』という意識が有権者にはある。そこが彼女の試練だろう」。政治分析に定評のあるクック・ポリティカルレポートのナショナル・エディターを務めるエイミー・ウォルター氏はこう語る。

クリントン氏は職業政治家として高い能力を持っているが、理性的、理知的でありすぎるがゆえに、コンサルタントのような印象を国民に与えている。米国人が直面しているイシューに心の底から対峙しているのか、彼女自身がどういう人間で、何に心を振るわせるのか。そういう生身の姿が見えないために、有権者の共感を得られていない、という指摘である。

トランプ大統領のナローパス

もちろん、選挙人の過半数、すなわち270人を獲得すれば勝利という大統領選のルールを考えれば、クリントン氏の有利は変わらない。

クック・ポリティカルレポートによれば、トランプ氏が勝つ唯一の道は2012年の大統領選で共和党の候補だったミット・ロムニー氏が勝利した州のすべてを獲得した上で(激戦のノースカロライナを含め)、激戦州の多くを押さえる必要がある。

現時点でトランプ氏に勝機がある激戦州はフロリダ、オハイオ、アイオワ、ネバダといった州だが、これらをすべて取ったとしても過半数にわずかに届かない。残りをペンシルベニアかニューハンプシャーで補う必要があるが、今のところクリントン氏がリードしている。フロリダかペンシルベニアを押さえれば勝利に近づくクリントン氏に比べれば、かなりのナローパスだ(関連情報)。

嫌われ者同士の戦いと冒頭で書いたが、比較論で言えばトランプ氏の方が有権者に嫌われている。健康不安が取りざたされたが、それでも多くの専門家はクリントン氏が勝つとみている。ただ、ブレグジット(英国によるEU離脱)の例を引くまでもなく、直接選挙は直前まで何が起きるか分からない。そして、実のところクリントン氏がどれだけのマージンを持っているのか、確証を持って語れる専門家も恐らくいない。

今回の大統領選は究極の消去法だが、一方で現状維持か変化かという二択でもある。クリントン氏が大統領になれば米国は大きくは変わらない。トランプ氏がなれば、何が出てくるかは分からないが、何かが変わる可能性があるかもしれない。同盟国を含め各国は基本的に米国が変わらないことを望んでいるが、変化を望む国民が多ければ、そういった期待が裏切られる可能性は十分にある。個人的にはトランプ氏が大統領になる可能性は低いと思っているが、「プランB」は準備しておいた方がいい。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

『朴槿恵は「北爆」を決意できるのか 5回目の核実験で浮上した「北朝鮮への先制攻撃論」』『米国が北朝鮮を先制攻撃する日、韓国と日本は?軍事衝突が起きても起きなくても不幸だ』(9/29・30日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について 

昨日に続き、米国の北への先制攻撃の記事についてです。これだけ、米国が発言しているのを北は知らないはずはありません。金正恩が次にどういう手を打ってくるかです。軍の高官を粛清してきた手前、弱い所は見せられないでしょう。クーデターを起こされます。核開発も軍の手前もあり、ストップできないでしょう。行き着くところ(米軍の斬首作戦)まで行くのかどうか。途中、妥協できる余地があるのかどうかですが、米国は北に「核放棄」は最低線として譲らないでしょう。中国も北の核放棄には賛成でしょうから。戦争に突き進む可能性が高いと思います。ただそれが何時なのかは分かりません。ただ、昨日も書きましたが、戦争嫌いかつレイムダックのオバマに決定できるかどうか。況してや今は大統領選の最中です。民主党に不利になるやも知れず、やるとすれば選挙後となるのでは。日中韓には直前の連絡となると思います。イージスのSM3、地上のPAC3の準備をキチンとしておかねば。

9/30日経朝刊<韓国外務省「慰安婦合意で追加措置を」 「おわびの手紙」念頭 

【ソウル=峯岸博】韓国外務省報道官は29日の記者会見で、昨年末の従軍慰安婦問題をめぐる日韓政府間合意に関して「政府としても慰安婦被害者の心の傷を癒やす追加的な、感性に訴える措置に期待している」と述べた。韓国に設立した元慰安婦支援財団は、元慰安婦に現金を支給する際に安倍晋三首相が元慰安婦に「おわびの手紙」を添える案を検討しており、韓国政府としても後押しする立場を明確にした。

日本政府は慰安婦問題をめぐる昨年末の合意の内容が最善との立場をとっている。追加策をいったん受け入れれば、韓国内でさらに要求がエスカレートしかねないとの懸念もあり、現時点で新たな対応には慎重だ。>(以上)

韓国人の頭の中を覗いてみたい。昨年末の慰安婦合意は米国の仲介で「不可逆」としたはず。それが追加措置を要求して来るこの図々しさは。「日韓基本条約」で決着したものを、再交渉の末、慰安婦合意なるものを認めたからです。米国は「不可逆」について、裏書きした筈。日本政府は米国の圧力があっても跳ね返すべき。米国を裏切って中国に擦り寄って行った韓国と、AIIBにも参加せず、国際社会での中国の侵略行為の糾弾に声を上げ続けて来た日本とどちらを選択するのですかと問えば良い。慰安婦なんかで騒いでいる場合ではないのに、「日本に甘え」があります。今まで認めて来た日本が悪いのですが。通貨スワップ同様、毅然として断るべきです。

幸い明年1月解散・総選挙の話が流れています。蓮舫の二重国籍問題もあり、反日民進党を壊滅させる良いチャンスです。公明党も都議選にかからなければ良いとの判断を示しました。二階幹事長も心の中では選挙は引き延ばしたかったのでしょうが(本年5月の御坊市長選での息子のボロ負けで選挙地盤を固めてからとの思い)、流れは止められませんでした。1月の自民党大会を3月に延ばしたことからも1月解散は間違いないでしょう。安倍首相の選挙5連勝で総裁3選に弾みをつける戦略と思います。そこまで考えているのですから、「通貨スワップ」や「慰安婦へのお詫びの手紙」に答えたら、手痛いシッペ返しを受けると呼んでいる筈です。岩盤の保守層が逃げてしまいますので。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS29H3L_Z20C16A9PP8000/

問題は韓国より日本国民です。憲法9条に飼い馴らされて、危機への対処が分かっていないのでは。戦争をしたいと思っている日本国民は100%近くいないはずです。でも備えはしておかなければいけません。現実に中国は日本に戦争を仕掛けようとしています。それに対する対処を話しても(軍事の話になりますが)、「戦争反対」とか「右翼」とかレッテルを貼り、言論封殺してきたのが日教組と偏向マスメデイアです。でも危機は「平和」と念仏を唱えたからと言って、避け得るものではありません。日本人の覚悟が問われます。覚醒せねば。追い込まれた金正恩が核ミサイルを日本に撃つ可能性もあります。左翼の言うことを信じていたら我が身は守れません。不測の事態に備え、朝鮮総連や民潭に対する監視、在日中国人に対する監視も強化せねば。

THHAD配備候補地は韓国検察が会長を在宅起訴したロッテのゴルフ場とのこと。でも早い場合には、10月合同演習時に急襲するとなると間に合わないでしょう。韓国はどう判断するのでしょうか。でも、米中合意ができれば米国は韓国の頭越しで実行するのでは。

http://japanese.yonhapnews.co.kr/Politics2/2016/09/25/0900000000AJP20160925000100882.HTML

9/29記事

mullen

マレン元・米統合参謀本部議長は9月16日、「自衛的な次元で北朝鮮を先制打撃し得る」と発言した(写真:ロイター/アフロ ※写真は2011年のもの)

韓国軍が「北朝鮮への先制攻撃」をリークする。5回目の核実験の成功で、北朝鮮が近い将来に核兵器を実戦配備する可能性が高まったからだ。

北指導部を懲らしめる

—9月9日、北朝鮮が5回目の核実験を実施しました。韓国はどうするのでしょうか。

鈴置:核武装論に勢いが付きました。その偽装版ともいうべき原子力潜水艦の保有論も広がっています。注目すべきは、北朝鮮への先制攻撃論が浮上したことです。

戦術核の再配備を望む声が政界から上がりましたが、米国は応じてくれそうにない。韓国が自前の核を持とうにも、核弾頭も、第2撃能力――弾道ミサイルを発射できる潜水艦を造るにも時間がかかる。「目前の核」に対抗するには「先制攻撃しかない」との思いです。

核実験当日のハンギョレの記事「早期に帰国した朴大統領『金正恩の精神状態、制御不能』」(9月9日、韓国語版)。小見出しを読むだけで「先制攻撃論」浮上の経緯がよく分かります。それを引用します。

  • 4時間前倒しで帰国し、会議を招集
  • オバマ、安倍と連続して電話
  • 「国内不純勢力」の徹底監視も注文
  • 政府は即刻、非常対策会議に突入
  • 「核武器の被害時には北指導部を直接、膺懲」

ラオス訪問中だった朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は北朝鮮の5回目の核実験に虚を付かれました。あわてて帰国し、オバマ(Barack Obama)大統領だけではなく、日本の安倍晋三首相とも電話で話しました。

嫌いな安倍とも通話

日本など「大嫌い」なはずなのに……。

鈴置:「北の核の実戦配備が間近になった。大丈夫か」と、韓国人は不安に陥りました。政府は国民を何とかなだめねばなりません。

嫌いな安倍首相だろうが、使えるものは何でも使ったのでしょう。そんな空気の中、韓国軍も「北指導部を懲らしめる作戦計画」を発表したのです。

軍は「大量膺懲報復(KMPR、Korea massive Punishment & retaliation)」と名付けました。関連部分を先の記事から引きます。

  • 政府は北朝鮮が挑発に出る場合は北の指導部を直接、膺懲するとの強硬な手段を掲げた。イム・ホヨン合同参謀本部戦略企画本部長はブリーフを通じ「北の核武器により被害が出る時には、北朝鮮の戦争指導本部を含む指揮部に直接、膺懲・報復する」と明かした。
  • また「同時に、大量で精密打撃ができるミサイルなどの攻撃戦力と、先鋭的な専門の特殊作戦部隊も運用することになる」とも語った。

なお軍はこの計画を初めて説明した9月9日にはこれが「先制攻撃」であるとは明言しなかったようです。

が、韓国メディアはすぐに「これは北が核を使う兆候を見せ次第、発動する先制攻撃計画である」と報じ始めました。軍のリークによるものでしょう。

「兆候」だけで攻撃

2日後のハンギョレは「韓国軍、『大量反撃報復』概念を電撃公開…実際の効果には疑問」(9月11日、日本語版)で以下のように書きました。

  • イム・ホヨン合同参謀本部戦略企画本部長が9日、記者に説明した大量反撃報復…(中略)…には「(核兵器使用の)兆候」が捉えられ次第、攻撃を敢行するということから「先制攻撃」概念が盛り込まれている。

朝鮮日報も「軍『北の核使用の兆候あれば、地図から平壌を消す』と言うのだが…」(9月12日、韓国語版)で「先制攻撃」計画であると断じました。

  • 軍関係者は11日、「平壌のある地域を地図上から完全に消し去る大量膺懲報復(KMPR)作戦を最近、国会に報告した」と述べた。
  • さらに「平壌を一定の区域に分けておき、核兵器使用の兆候が出れば戦争指導部が隠れる区域を焦土化する」と語った。

韓国軍は北朝鮮の核攻撃には、韓国独自と称するミサイル防衛システム(KAMD)と、北朝鮮の核・ミサイル施設をミサイルや航空機で先制攻撃する「kill chain」作戦で対抗する手はずでした。

後者は北が核兵器を使う兆候だけで発動しますから、今回明らかにされたKMPRが初の先制攻撃計画というわけではありません。

ただ、攻撃対象に「北の指導部」を含めることで、金正恩委員長に対し「核戦争を始めたら真っ先に殺すぞ」と脅しの強度を高めたわけです。

左派系紙も両論併記

—「先制攻撃」に対する韓国メディアの評価は?

鈴置:総じて賛成でした。左派系紙のハンギョレは「南北の緊張を高める」との批判的な意見も紹介しました。しかし同時に「緊張を高めるとは限らない」との意見も載せました。

先に引用した「韓国軍、『大量反撃報復』概念を電撃公開…実際の効果には疑問」(9月11日、日本語版)は、まさに両論併記でした。

北の核の脅威が急速に高まっている時に、対抗策を否定するような記事を載せたら「やはりハンギョレは北の手先だ」と非難されると恐れたからと思われます。

軍が公式の場では「先制攻撃」と言わないのも、北朝鮮を刺激したと批判されることを避けるためでしょう。2010年11月の延坪島砲撃事件のように、今後も北が軍事挑発を仕掛けてくる可能性が高い。そんな時に、韓国の「先制攻撃計画」を名分に掲げられても困るのです。

撃鉄を起こしたら手遅れ

軍よりも積極的な「先制攻撃」を主張する保守系紙も出ました。中堅紙、文化日報のファン・ソンジュン論説委員が「『条件付き対北予防打撃』準備論」(9月13日、韓国語)を書きました。安保問題に造詣が深い記者です。ポイントを訳します。

  • 実弾を装填した銃をこちらに向ける凶悪犯が、撃鉄を起こす直前に先制打撃するのは事実上、不可能だ。むしろ「実弾を装填するな」と警告し、それでも弾を込めるのならその瞬間に打撃することが現実的だ。
  • これと同じように、北朝鮮に対し「核弾頭をミサイルに載せれば予防打撃する」と予め公式に宣言したうえで、(攻撃するための)実質的な準備に入っておかねばならない。

国際社会では、敵からの差し迫った脅威を除去するための「先制」(preemption)攻撃と、敵の潜在的な脅威を除去するための「予防」(prevention)攻撃を区別しています。

前者は認められやすい。個人に例えれば正当防衛です。弾を込めたピストルを向けてくる悪漢を攻撃する権利は誰にもあるからです。

一方、後者は過剰防衛と見なされかねません。ピストルを自分に向けていない悪漢を攻撃することに相当するわけです。

でも、ファン・ソンジュン論説委員が指摘するように、ピストルを向けていないからと言って、悪漢を放置していたら我が身が危うくなる。

そこで「予め警告する」との条件付きながら、事実上の「予防」攻撃を準備しておき、いざという時は実行すべきだ、との主張になるのです。

核の在りかを知らない韓国軍

—韓国は「先制攻撃」で盛り上がっているということですか。

鈴置:それが今一つ、盛り上がりに欠ける感じです。確かに左派系紙を含め、真っ向から反対するメディアは見当たりません。でも、多くのメディアが「先制攻撃」の実効性に首を傾げています。

まず、韓国軍の情報力の低さです。韓国軍単独では、北の核・ミサイル施設がどこにあるか分かりません。偵察衛星や高性能の偵察機で北朝鮮を見張っている米軍から「どこを攻撃すべきか」教えてもらう必要があります。

でも、米軍が教えてくれるとは限らない。延坪島砲撃事件の際、民間人まで殺された韓国が北朝鮮に強烈な報復を実行しようとしたら、米国に止められてしまったのです。米国はとにかく戦争に巻き込まれたくないのです。

この経緯は、当時、国防長官だったゲーツ(Robert Gates)氏が回顧録『Duty: Memoirs of a Secretary at War』(497 ページ)で明かしています。

オバマ大統領、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)国務長官、マレン(Mike Mullen)統合参謀本部議長、そしてゲーツ国防長官がそれぞれのカウンターパートに電話し、大規模な反撃をしないよう韓国を必死で説得したのです。

米国は「韓国の報復」を許さない

—韓国には「どうせ米国は、韓国の報復を許さない。北の軍事情報も貰えない」との諦めがあるのですね。

鈴置:その通りです。だからメディアもそれを前提に「韓国は先制攻撃などできっこない」と書くのです。

ハンギョレの「韓国軍、『大量反撃報復』概念を電撃公開…実際の効果には疑問」(9月11日、日本語版)の以下のくだりをご覧下さい。

  • 軍事専門家であるキム・ジョンデ正義党議員は「指導部を膺懲するのなら、正確さと精密さが必要だ。だが、核実験さえ把握できない我が軍の水準で、有事に指導部の位置の把握などの作戦を実行できるかは疑問だ」と言う。

保守系紙の朝鮮日報の「軍は『北の核使用の兆候あれば、地図から平壌を消す』と言うのだが…」(9月12日、韓国語版)も結論部分で韓国軍の実力に関し、こう書いたのです。

  • 米軍の支援なしに我々単独で平壌を焦土化するのは限界がある。「金正恩・除去部隊」には、レーダーに探知されず夜間でも密かに浸透できる輸送機やヘリが要る。だが、我が軍にはそんな特殊な機体はなく、米軍に依存しているのが実情だ。
  • 何よりも北朝鮮の核挑発の兆候を捉えられる偵察衛星、無人偵察機を持たねばならない。しかし、そのほとんどを米軍に依存しているのだ。

「核の反撃」を覚悟できるか

—記事の最後で「盛り下がった」のですね。

鈴置:もっとも、最大の難関は「米国」ではなく「韓国」にあります。韓国人の決意に疑問符が付くのです。

北朝鮮を先制攻撃すれば当然、反撃を受けるでしょう。「核による反撃」もあり得ます。仮に米軍から情報を貰っても、北の核爆弾をすべて破壊できる可能性は低いのです。

北はそれらをミサイルやロケットに積むほどには小型化していないかもしれない。しかし、旧型のソ連製爆撃機は持っています。それに積んでソウルを核攻撃することも可能なのです。

朴槿恵大統領は口では勇ましい。北朝鮮を罵倒しまくっています。でも、先制的に北爆――北朝鮮を爆撃、あるいはミサイル攻撃する覚悟があるかは、韓国でも疑われています。

朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹が「決意」に関し次のように書いたことがあります。「金正恩も、恐れさせてこそ平和を守る」(2015年5月21日、韓国語版)から引きます。

  • 核保有国を相手に、成功するか不確実な先制攻撃をするというのは机上の空論だ。今の韓国に、それを命令する大統領も、実行する軍も、耐える国民もいない。

この記事は核武装を訴えるものでした。当時から「kill chain」という先制攻撃計画は公表されていました。が、楊相勲論説主幹は「決意」の欠如から発動できるかに疑問を呈し「結局、核には核で対抗するしかない」と主張したのです(「ついに『核武装』を訴えた韓国の最大手紙」参照)。

「先制」に前向きになった米国

—なるほど、メディアも盛り上がらないわけですね。「先制攻撃」を実行するまでに、いくつもの難問が待っている……。

鈴置:軍の「本心」も核武装だと思います。ただ、現時点では大声で言えない。しかし国民を安心させねばならない。そこで北の核への「特効薬」とはならないにしろ「精神安定剤」を提供したのです。

実現可能性を考えると、先制攻撃は「偽薬」に近いのですが。多くの国民は、それに気づいていると思います。韓国人は政府の言うことなど信用しませんしね。

—では結局、韓国も核武装に走るのですか?

鈴置:方向的にはそうでしょう。でも、9月中旬、状況ががらりと変わりました。先制攻撃に冷淡と見られていた米国が、突然に前向きに転じたからです。

それを報じたのは朝鮮日報でした。「米国から出てきた『対北先制打撃論』」(9月18日、韓国語版)です。ポイントを引用します。

  • マレン元・米統合参謀本部議長は9月16日、米外交問題評議会(CFR)が主催した討論会で「万が一、北朝鮮が米国を攻撃する能力の保持に極めて接近し、それが米国を脅かすものなら、自衛的な次元で北朝鮮を先制打撃し得る」とし「理論的には(ミサイル)発射台や、過去に発射した場所を除去することができる」と述べた。
  • 彼は「北朝鮮が米国を攻撃し得るように核弾頭を小型化した。挑発の水位が限界を超えた」「先制打撃は多様な潜在的な選択肢の1つだが、金正恩(労働党委員長)がどう出るかによる問題だ」とした。

この討論会の模様は「Report Launched of CFR-Sponsored Independent Task Force on U.S. Policy Toward North Korea」(9月16日、音声付き)で読むことも聞くこともできます。朝鮮日報が引用したマレン元議長の発言前後の原文は以下です。

  • We address this from a standpoint, actually-and I’m not overly fond of the word “preemptive,” really from a self-defense perspective. Meaning, if we believe that they’re very close to developing this capability, which can threaten us, it will-it is important for us to develop the capability to defend ourselves, which could theoretically take out launch capabilities on the launch pad or take them out once they’re launched.
  • North get to a point where they are actually about to cross the threshold, being able to target-being able to nuclearize-miniaturize and nuclearize a warhead that they could hit with the United States with, we can’t let them get to that point.
  • we certainly have capability to respond. But it covers a vast array of potential options. And so it would really depend on what he did.

イラク戦争が契機だった

—韓国人には驚きだったでしょうね。

鈴置:先制攻撃しようにも、どうせ米国は手助けしてくれないと多くの韓国人は思っていた。だから「北による核を使った反撃」を心配する必要もなかった。「韓国による先制攻撃論」という、副作用のない偽薬を掌で転がして遊んでいたのです。

ところが米国が「副作用満点」の本物の薬を自分に飲ませようとしていることに気づいた。さて、どうしようと頭を抱えたのです。

—米国主導でも先制攻撃すれば、国際社会で問題ありとされる「予防攻撃」にならないのですか。マレン元議長は「米国を威嚇しただけで攻撃し得る」と言っているのですから。

鈴置:米国はイラク戦争を契機に「予防」に限りなく近い「先制」攻撃を辞さなくなりました。

この点に関し獨協大学の岡垣知子教授が、防衛研究所主任研究官だった2006年に『「先制」と「予防」の間』(防衛研究所紀要第9巻第1号)という論文を書いています。

ブッシュ(George W. Bush)政権下の変化を分析したもので「先制」と「予防」との境目が薄れた原因や、「先制」が対象国の体制転換と一体化して捉えられるようになったことを分かりやすく説明しています。

「米国を核攻撃する」と言うのなら……

—確かに、サダム・フセイン(Sadam Husein)は「大量破壊兵器は持っていない」と言っていたし、実際に持っていなかった。でも米国に攻撃され、滅ぼされてしまった……。

鈴置:一方、金正恩は「核を持った」と世界中に宣伝しています。さらに韓国だけでなく、米国も核攻撃の対象と宣言しました。

それは世界にも知れ渡りました。例えばBBCも「北朝鮮、米国と韓国に核攻撃の警告」(2016年3月7日、日本語版)で「北朝鮮は、米韓が合同演習を実施するなら『無差別の核攻撃を実施する』との談話を発表した」と報じました。

米国の標準から言えば、イランではなく北朝鮮こそを先制攻撃すべきなのです。そして米国ではマレン元議長に続き、国防長官も北朝鮮と即刻戦うのも辞さない姿勢を見せました。ホワイトハウスの報道官も先制攻撃に言及しました。米国が「北朝鮮処分」に本気になってきた、と受け止めるのが普通でしょう。

(次回に続く)=9月30日掲載予定

9/30記事

ashton-carter

カーター国防長官曰く「準備はできている」。米国が北朝鮮への「先制攻撃」を口にし始めた(写真:ロイター/アフロ)

前回から読む)

米国が北朝鮮を先制攻撃したら、韓国はどうするのか。日本はどうするのだろうか。

今晩にも戦う準備ある

前回は、韓国人がうっぷん晴らしで「北朝鮮への先制攻撃」を言って回っていたら、米国が本当にやりそうだと気づいて慌てている、という話でした。

鈴置:9月16日、マレン(Mike Mullen)元・米統合参謀本部議長が「北朝鮮が核で米国を攻撃できる能力を持ったら、先制攻撃も辞さない」と述べました(「朴槿恵は『北爆』を決意できるのか」参照)。

北朝鮮の核の脅威にどう対応するかを論議するシンポジウムでの発言でした。「Report Launched of CFR-Sponsored Independent Task Force on U.S. Policy Toward North Korea」(9月16日、音声付き)で読むことも、聞くこともできます。

3日後の9月19日、今度はカーター(Ashton Carter)国防長官が北朝鮮との戦争を辞さない姿勢を明確に打ち出しました。在韓米軍のスローガン「fight tonight」(今晩にも戦う)を引用したうえ「その準備はできている」と語ったのです。

フーバー(Hoover)研究所のシンポジウムでの発言でした。発言は米国防総省のサイト「Remarks by Secretary Carter on Innovation in Defense Policy at the Hoover Institution, Washington, D.C.」(9月19日)で読めます。ポイントは以下です。

  • the slogan of U.S. Forces Korea, as many of you probably know, is fight tonight. Not because that’s what we want to do but because that’s what we have to be able to do. And we are ready to do.

そのまた3日後の9月22日、ホワイトハウスのアーネスト(Josh Earnest)報道官が「北朝鮮を先制攻撃(preemption strikes)する計画はあるか」と聞かれ「一般論だが、先制的な軍事行動に関しては事前に論議しないものだ」と答えました。

ホワイトハウスのサイトの「Press Briefing by the Press Secretary Josh Earnest, 9/22/16」の最後のくだりです。

  • Just in general — not specifically to North Korea — as an operational matter, we’re not going to discuss any preemptive military actions in advance.

表「米国の『先制攻撃論』(2016年9月)」を見れば一目瞭然、米国の威嚇は矢継ぎ早です。

米国の「先制攻撃論」(2016年9月)

5日 北朝鮮、高速道路から3発の弾道ミサイル連射、1000キロ飛び日本のEEZに落下
9日 北朝鮮が5回目の核実験を実施し「戦略ミサイルの核弾頭の生産が可能になった」
   
10日 稲田朋美防衛相、韓民求国防相に電話会談で、GSOMIA締結を呼び掛ける
12日 韓国国防相報道官「日本とのGSOMIAは必要な雰囲気。ただ、国民の理解必要」
16日 マレン元米統合参謀本部議長「北の核の能力が米国を脅かすものなら先制攻撃しうる」
19日 カーター国防長官、在韓米軍のスローガン「fight tonight」を引用「その準備はできた」
20日 北朝鮮「推力重量80トンの静止衛星運搬用ロケットの新型エンジン燃焼試験に成功」
20日 ハイテン米戦略軍次期司令官「北朝鮮はいずれICBMを持つ。すぐに備えるべきだ」
22日 米大統領報道官、対北攻撃を聞かれ「一般に先制的軍事行動に関し事前に論議しない」
24日 ヴィクター・チャ教授、中央日報に「北朝鮮のICBMの破壊も検討」と寄稿
26日 米韓海軍、日本海で合同訓練。韓国軍「北朝鮮の核・ミサイル施設や平壌が攻撃目標」
 

北のICBMが最優先課題

—なぜ突然、米国は北朝鮮への先制攻撃を匂わせ始めたのでしょうか。

鈴置:北朝鮮の脅威が「限界」を超えたと見なしたからです。いくら核爆弾を持っても、米国まで運んで来なければさしたる脅威ではなかった。

が、北朝鮮は5回目の核実験(9月9日)の直後に「核弾頭の成功を確認した。生産に入る」と宣言しました(「北朝鮮、5回目の核実験」参照)。ミサイルに載せられるほどに小型化したということです。

米国まで届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発に関しても、北は近く持つと米国は判断しました。

9月20日に北朝鮮は「推力重量80トンの静止衛星運搬用ロケットの新型エンジン燃焼試験に成功した」と発表しました。

静止衛星は高度約3万6000キロの軌道を回ります。衛星をこれほどの高さにまで打ち上げられる推力を持つロケットとは、すなわちICBMを意味します。

「静止衛星用のロケットエンジン成功」に関し、9月20日にハイテン(John Hyten)米戦略軍次期司令官が「時期は断定できないが、北朝鮮はいずれICBMを持つ」と上院軍事委員会の公聴会で語りました。

「北が核を搭載するICBMを保有して何をするのか懸念しており、司令官に任命されたらこの問題を最優先課題に据える」とも述べました。

以上は、聯合ニュースの「米戦略軍次期司令官『北朝鮮いずれICBM開発する』」(9月21日、日本語版)が報じています。

USNINEWSの「Stratcom Nominee Gen. Hyten Warns Of North Korean Nuclear Advances」(9月20日)は、ハイテン次期司令官が「最も懸念すべきは北朝鮮とイランである」と語ったとも伝えました。

「戦争の危険」と朴槿恵

—なるほど、「限界を超えた北朝鮮」に米国が怒り出した。それを見た韓国人が「戦争になる」と困惑し始めたのですね。

鈴置:東亜日報の社説「米は『戦略的忍耐』から『先制打撃論』へ…韓国は共助しているのか」(9月24日、韓国語版)が、その「困惑」を率直に語りました。

  • ホワイトハウスが北朝鮮に対する先制打撃に言及した。敏感な事案に対しては「現時点では答えるのが難しい」と答えてお茶を濁すホワイトハウスが、奇襲攻撃の可能性に言及したこと自体が異例である。
  • 5回目の核実験の後、米政府は北朝鮮に実質的な打撃を与える方向に転じた。来月、韓米空軍はアラスカで寧辺の核施設を精密打撃する訓練を実施する。12日に我がF15戦闘機の編隊が在日米軍の空中空輸機と夜間給油訓練を実施したことも、北朝鮮の核基地打撃能力を確認するものだった。
  • 敵の攻撃が差し迫った際に、先制打撃でウラニウム濃縮施設などを軍事的に無力化するのは米国の作戦の1つである。そんなカードを見せつけなければ、金正恩に核を放棄させられない。
  • このような状況を念頭に(9月12日)、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が与野党代表に「戦争の危険があり得る」と語ったのかもしれない。だが、韓国軍の内部には懐疑的な見方もある。戦争の拡大を憂慮する我が政府が、米国の対北先制打撃に同意する可能性は低いとの指摘だ。
  • 軍当局者は「韓国の同意なしに北朝鮮を奇襲攻撃するとは考えにくい」と言う。しかし米国は「戦略的な忍耐」政策を立てた時も、それを捨てる時も我々の同意を求めなかった。
  • アジア太平洋地域に展開した米軍が北の脅威に晒されるというのに、米政府がそれを座視するわけがない。それに比べ我が軍には、命がかかっているとの覚悟があるのかも分からない。

株安恐れ「攻撃するな」

—北朝鮮を奇襲攻撃する前に、米国は韓国に通報するのですか、しないのですか。

鈴置:確かにこの記事はそこが分かりにくい。両方の可能性があって、韓国もどちらか判断できないということでしょう。日本のある専門家も「日本に対しても、事前通告があるかは分からない」と語っています。

韓国の、そして日本の直面する問題は2つあります。自分が知らないうちに米国が北朝鮮を攻撃し、戦争に巻き込まれるリスク。

もう1つは、仮に知らされて「戦争につながる対北攻撃はしないでくれ」と米国に答えれば「では、アジアから兵を引く」と米国から宣言されかねないことです。

韓国の保守言論を代表する、朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹が筆を取りました。韓国人に「覚悟」を求めたのです。「『北爆から核の人質まで』――心の準備を」(9月22日、韓国語版)を訳します。

  • 米国人は「軍事力を使う以外にない」と判断した時には躊躇しない。米国の都市が北朝鮮のような国の核の脅威に晒され、これによる政治的、外交的、軍事的な副作用が甘受できない水準を超えたとの分析が出れば、F22ステルス爆撃機が大量に北朝鮮の空を舞うことになる。
  • 私たちの社会には「国家の決定的な問題を解決するためには血を流すことも辞さない」との合意が全くない。株が下がっただけで騒動になる。米国の空襲により北の核の根源を断つことができるとしても、ソウルに砲弾が落ちれば、絶対だめだと言い出すだろう。
  • 我々は完全に北の核の人質になっている。時に警察は人質の犠牲を覚悟し鎮圧作戦を展開する。(北の核に関し)そんなことが本当に、絶対にないのか。心の準備をせねばならない。

昔は気合いが入っていた韓国人

—韓国人は案外と弱気なのですね。

鈴置:ソウル五輪(1988年)頃までだったら、多くの国民が北爆に賛成したと思います。しかし、10年間にわたった左翼政権が南北融和ムードを演出したため、韓国人はすっかり「平和的」になってしまいました。

五輪の頃までは、戦前の日本を知る韓国人が健在で、彼らから「最近の日本人は気合いが足りない」と叱られたものでした。韓国人が日本人並みの平和ボケに陥るとは当時、想像もできませんでした。

さて、楊相勲論説主幹は「もう1つの心の準備」を呼び掛けました。米国からの「見捨てられ」に対しての覚悟です。

  • 米国が最終的に北への空襲を放棄すれば、遠くない時期に米国と北朝鮮との直接対話が始まるだろう。交渉の結果の予測は難しいが、北の体制が強固になる一方、韓米同盟は弱体化に向かうだろう。
  • その中で最善の結果は、北の核の廃棄と米朝の国交正常化、国連と米中の保証による朝鮮半島の平和体制樹立だ。最悪は在韓米軍撤収を条件にした北の核の凍結である。
  • 最善と最悪の間のどこであろうと、米国に安全保障を全面的に依存し生きてきた大韓民国の国民の生きざまは激変する。それに対する心の準備もせねばならない。

北のミサイルを要撃

—戦争が起きても、起きなくてもいいことはなさそうだ、という悲愴な覚悟ですね。

鈴置:私は韓国人よりも、日本人の方が先に「心の準備」をする必要があると思います。朝鮮半島の安全保障の枠組みが変われば、もちろん韓国の方が大きな影響を受けます。

ただ、その前に日本が「同盟を試される」可能性があります。「北に対し軍事行動を発動」と言えば、米国、あるいは韓国があらゆる弾道ミサイルや長距離砲、空軍部隊で北を攻撃する――とのイメージが湧きます。

でも米国には、まずは北朝鮮が発射した弾道ミサイルを艦船の「SM3」――海上配備型の迎撃ミサイルで撃ち落とす手があるのです。

軍事力によって北の核・ミサイル開発に歯止めを掛ける方針に転換したにしろ、とりあえずは北の人命に被害を及ばさない、こうした「比較的軽い手段」から始める可能性があると思います。

米国がこの作戦に出た時、日本はどうするのでしょうか。日本海には常時、米海軍と海上自衛隊のSM3を装備したイージス艦が展開しています。

海上から撃ち落とす段階では、北の弾道ミサイルが米国に向かうのか日本に向かうのかほとんど判別できません。米艦がSM3を発射した時、自衛艦は何もしないでいいのでしょうか。最近、北は同時に複数発の弾道ミサイルを発射します。米艦だけでは手が回らないかもしれません。

発射台を攻撃するか……

—米軍はそんな作戦を実施するのでしょうか。

鈴置:米ジョージタウン大学のヴィクター・チャ(Victor Cha)教授が中央日報に「北朝鮮は米国の先制攻撃を自ら招いているのか」(9月24日)を寄稿しました。翻訳します。

なお、日本語版(9月24日)でも読めます。英語版「Invitation to a pre-emptive attack?」は9月26日に掲載されました。

北朝鮮はいずれICBMを発射実験するだろう。それは労働党創建記念日の10月10日になるかもしれない。

北がミサイルを発射台に据えた際、米国はその本当の目的を把握できない。人工衛星が搭載されるのか、偽弾頭(dummy warhead)か、それとも北朝鮮の政権が5回目の核実験で自慢した新しい「標準デザイン」の核弾頭なのか。

北朝鮮の政権はよくミサイルを幕で覆う。発射準備が完了するまで衛星映像で把握できないようにするためだ。責任ある米国の国家安保当局者なら、ミサイルが威嚇用でないとの北朝鮮の主張をそのままに解釈することはできない。

米当局は様々な案を検討するはずだ。発射台に設置されたミサイルを攻撃するか、あるいはミサイル防衛システム(ballistic missile defense system)で発射後のそれを空中で要撃するだろう。

日米海軍が展開中

—なるほど確かに、北のミサイルを撃ち落とせと言っていますね。

鈴置:それが米国の常識でしょう。日本のように自国の排他的経済水域(EEZ)に何発もミサイルを撃ち込まれても「断固抗議する」だけ、という国がおかしいのです。

チャ教授の「ICBM撃墜案」は米国の安全保障専門家の間で練られたものと思います。マレン元議長も「先制攻撃」が話題になったシンポジウムで「米海軍と海上自衛隊がミサイル防衛の能力を展開中だ」「発射前でも後でも(北のミサイルを)撃ち落とせばよい」と述べています。

Report Launched of CFR-Sponsored Independent Task Force on U.S. Policy Toward North Korea」(9月16日、音声付き)から、その前後を引用します。

  • Certainly THAAD is a part of that, the missile defense capabilities that actually we have deployed in the region on our U.S. Navy ships are a part of that, as well as the Japanese Self-Defense Force, Maritime Self-Defense Force. And so we also urge the continuing evolution of those regional self-defense, if you will, capabilities to neutralize that.
  • it is to prevent that threat from actually being effective, either before it’s launched or after it’s launched.
  • And we’re very clear in the report, that certainly―and Adam said this earlier―could include, you know, attacks in North Korea.

このシンポジウムは米外交問題評議会(CFR)が主催したもので「A Sharper Choice on North Korea」という報告書のお披露目が目的でした。マレン元議長もチャ教授もその執筆メンバーです。

軍事的選択を排除せず

—どんな報告書ですか。

鈴置:一言で言えば、これまでの対北政策「戦略的忍耐」は大失敗だった。もっと本腰を入れて取り組もうとの訴えです。だから「先制攻撃論」まで語られたのです。北朝鮮がICBMを実用化する段階に入って、遅ればせながら米国にも気合いが入った感じです。

この報告書の巻頭の辞はCFRのリチャード・ハース(Richard Haass)会長が書いています。「これから米国も本気になるから、関連国もいい加減なことはやめろよな」とのくだりもあります。

中国に対しては「もし、北朝鮮の非核化に真剣に取り組まなければ、地域と世界の責任あるプレーヤーになる意思があるのか真剣に疑う」と厳しい言葉を投げています。

そして韓国と日本に関しては「米国は両国と緊密に協議し、核兵器を世界に向けて振り回す北朝鮮に対し、軍事的な選択肢も排除しない新しい戦略的な役割を受け入れることも検討せねばならない」と呼び掛けました。本気です。原文は以下です。

  • If the United States does so and the Chinese government declines to go along, it would raise serious questions as to China’s willingness to be a responsible regional and global actor. It would also necessitate that the United States consult closely with both South Korea and Japan and consider adopting a new strategic posture, one that did not rule out military options against a nuclear-armed North Korea with global reach.

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

『大物強硬派のトランプ陣営入りで北朝鮮に先制爆撃?元CIA長官ウールジー氏が上級顧問に就任』(9/27JBプレス 古森義久)、『北朝鮮崩壊の前に事前協議を、米国が中国に働きかけ 政権崩壊時に危惧される米中の軍事衝突』(9/28JBプレス 古森義久)、『「北朝鮮への先制攻撃、中国が容認情報 米軍「斬首作戦」決行か』(9/28ZAKZAK 加賀孝英)について

9/27日経<米、中国企業を刑事訴追 北朝鮮支援で制裁対象に 

【ニューヨーク=高橋里奈】米政府は26日、北朝鮮による核兵器開発に関与し制裁逃れに加担したとして、中国・遼寧省の貿易会社と幹部4人を刑事訴追し、制裁対象に加えたと発表した。北朝鮮の金融機関の資金洗浄(マネーロンダリング)などに携わり、制裁逃れを手助けしたという。

制裁対象としたのは、北朝鮮と国境を接する遼寧省の丹東鴻祥実業発展とその幹部。米国は2月に成立した独自制裁法で、金融制裁の対象を北朝鮮と関係する第三国の企業や個人などに広げた。同法成立後、初めて中国企業を制裁対象とした。

丹東鴻祥実業発展は米政府と国連の制裁対象である北朝鮮の金融機関の制裁逃れに加担したという。司法省はマネーロンダリングに関与していたとして、丹東鴻祥実業発展と関連企業が持つ25の銀行口座の資産没収を申し立てる措置も取った。

丹東鴻祥実業発展は北朝鮮との貿易を手掛け、北朝鮮の核開発に必要な物資や原料を密輸していた疑いが出ている。中国の警察当局も同社を調査しており、北朝鮮の核開発計画に関与していた可能性が指摘されている。>(以上)

米国も本気で北の暴発を押えようとし出した感じです。ZAKZAK記事にありますように、軍事行動について、オバマが本当に承認したのかどうかですが。米中合作で金正恩の首を取りに行く作戦(米軍の行動を中国は黙認)でしょう。北の上の統治機構が変わるだけで、朝鮮半島の統一はないし、非核化もできるので、米中両国にとってメリットは大きいと思います。ただ、金正恩の最後の悪足掻きで核ミサイルを北京とソウル、東京に発射するかも知れません。数が少なければ、SM3やPAC3で撃ち落とせると思います。勿論、発射基地への先制攻撃が最も大事ですが。

石平・陳破空『習近平が中国共産党を殺す時』(P.161~164)で、陳氏が「北が核を持ったのは中国に向けて発射するためで米国、日本に向けてではない。1発で北京の中南海は破壊される。それで北の言うことを聞かざるを得なくなった。(中国のミサイル防衛の記事下記のようにありますが、実験回数が少ないため、精度は低いと思われます。精度が良くないためにTHAADに反対しているように見えます)」、まあ、陳氏は中国の民主化実現の為、共産党を打倒するには核が中南海に落ちることもやむを得ないと考えている節もあります。またその本のP.172には、「北はロシアと手を結び、金正恩の最後の後ろ盾になるかも。ロシアが介入することもありうる。」とありました。米中合意をロシアに通告すれば、北に漏れる可能性もあり、やるとすればロシアに通告なしで作戦は実行されるでしょう。首を挿げ替えてもロシアの利権は保護することで手打ちが図られるのでは。

http://japan.hani.co.kr/arti/international/24734.html

風雲急を告げている気がしますが、大多数の日本人は無関心でしょう。「自分の身は自分で守る」が国であれ、個人であれ基本原則です。国の防衛措置を信じたいと思いますが、何かあったら地下街へ逃げ込める人は逃げ込んだ方が良いと思います。外国の手先である反日民進党や偏向マスメデイアはこの状況について国民に知らせません。「平和ボケ」を助長するようにし、中国に隷従するよう誘導しているとしか思えません。

9/27記事

ttump-in-ohio

米オハイオ州トレドの選挙集会で演説する共和党大統領候補ドナルド・トランプ氏(2016年9月21日撮影)。(c)AFP/MANDEL NGAN〔AFPBB News

米国大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏の陣営に、元CIA(中央情報局)長官のジェームズ・ウールジー氏が国家安全保障政策の上級顧問として参加した。

ウールジー氏といえば、米国歴代政権の安全保障関連の枢要ポストを歴任した“大物”であり、これまで外交や安全保障に関して粗雑な発言の多かったトランプ候補の政策を修正し、改善する役割が期待される。

しかしウールジー氏は、北朝鮮の核武装を阻止するための拠点爆撃を主張するなど強硬な保守派としても知られ、トランプ陣営の政策をどう変えるかが注目される。

トランプ氏の「国防費削減を中止」の主張に賛同

j%e3%83%bbwolsey

ジェームズ・ウールジー氏(出所:Wikipedia)

9月12日、トランプ候補の選挙対策本部はウールジー氏の上級顧問就任を発表した。これまでトランプ陣営では、外交や安全保障の政策立案を支援するスタッフに著名人や政策実績のある人物はいなかった。そのためウールジー氏の就任は、初めての大物の登場として、ワシントンで一躍注目を集めた。

ウールジー氏は現在75歳。民主党、共和党両政権で安全保障関連の要職に就いてきた異色の人材である。

経歴として最も広く知られるのは、1993年に誕生した民主党ビル・クリントン政権で2年間、CIA長官を務めたことだ。また、2008年の大統領選挙では共和党ジョン・マケイン候補の国家安全保障政策の顧問として活動した。現在はワシントンの民間研究機関「民主主義防衛財団」の会長を務める。

ウールジー氏は、民主党ジミー・カーター政権では海軍次官、共和党ロナルド・レーガン政権では対ソ連軍縮交渉代表、共和党先代ジョージ・ブッシュ政権では欧州通常戦力条約(CFE)交渉大使などを歴任してきた。本来、民主党員だが、その政策は強硬で、むしろ共和党保守派に近い。

同氏は、なぜトランプ陣営に加わることを決めたのかと問われて、「トランプ候補はヒラリー・クリントン候補に比べて、米国の国防について現実的な政策を唱えている。オバマ政権が進める国防費の大幅削減を即座に中止するという方針を明確にしている点を支持する」と述べている。

「北朝鮮の拠点を爆撃せよ」と提案

2001年9月11日に米国で同時多発テロが起きると、ウールジー氏はテロ勢力への反撃としてアフガニスタンやイラクへ軍事攻撃することを強く支持した。

また、さらに広く知られるのは北朝鮮の核兵器開発の動きに対して「拠点爆撃」を提案したことである。ウールジー氏は2013年6月に開かれた米国議会内での会議で、北朝鮮の核の脅威に対して次のような発言をした。

「北朝鮮は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)に核弾頭を装備して米国本土に撃ちこむ能力を獲得した。その核弾頭には、米国本土に撃ち込まれた場合に強力な電磁パルス(EMP)を放射する特殊な核爆弾が含まれている」

「米国が、EMPを放射する核弾頭の攻撃を受けた場合、電力供給をはじめ国家のインフラが壊滅するほどの被害を受け、国家の存亡すら危ぶまれることになる。同盟国への『核の傘』も効力を失う」

「北朝鮮の核武装の脅威をここまで大きくしたのは、米国歴代の共和、民主両党の政権の宥和策、軟弱策の結果である。その脅威への対策としては、拠点爆撃に勝る効果的な方法はない」

ウールジー氏はこんな表現で拠点爆撃案を提起したのである。

当時のオバマ政権は、北朝鮮が米国本土に核弾頭を撃ち込む能力を獲得したことを認めていなかった。だが現在の状況をみると、ウールジー氏の北朝鮮の核開発能力に関する判断は正しかったといえそうだ。

ウールジー氏は現在も、軍事的手段によって北朝鮮の核兵器能力や長距離弾道ミサイル能力を破壊する攻撃を提案している。こうした対外政策が今後トランプ陣営の政策にどのような影響を及ぼすかが注視される。

9/28記事

kourai%e3%80%80hotel

北朝鮮・平壌の高麗ホテルから撮影した平壌の街並み(資料写真、2016年9月21日撮影)。(c)AFP/Ed JONES〔AFPBB News

米国の超党派の大手外交政策研究機関が、北朝鮮の核武装などへの対応の報告書を発表した。報告書によると、北朝鮮の「金正恩政権の崩壊」に備えて、米国当局が中国に具体的な調整を働きかけているという。

オバマ政権の北朝鮮政策はこのところ行き詰まりの観があるが、実際には、極めて高い確率で起こり得る金政権の崩壊を待ち構えている様子が明らかになった。

危惧される米中の軍事衝突

民主、共和両党の政治家や官僚、学者らから成る大手研究機関の「外交関係評議会」は9月中旬、「北朝鮮に対する先鋭的な選択=北東アジアの安定のための中国との関与」と題する報告書を発表した。

同報告書は、マイク・マレン元米統合参謀本部議長とサム・ナン元上院議員が議長を務め、17人で構成する専門委員会により作成された。内容は、北朝鮮の核兵器保有への動きを焦点に、現状の調査と政策の提案を主体としている。

同報告書はそのなかで「金正恩政権の崩壊は、数種類のシナリオの下で起こりうる。政権崩壊は北朝鮮の周辺諸国に予期せぬ重大な結果をもたらす」と強調していた。

そして、政権崩壊が引き起こす事態として、「北朝鮮からの困窮した難民の大量の脱出」「核、化学、生物各兵器と大量の通常兵器類の管理の混乱」「北朝鮮内部の反乱勢力への軍事的対応」を列記していた。

さらに注目されるのは、中国への働きかけである。同報告書によると、米国当局はこうした「政権崩壊後に起きうる非常事態」の危険性を中国当局に指摘して、米中協議を求めてきたものの、中国側はそれにほとんど応じていないという。

事前の米中協議がない状態で金正恩政権が崩壊した場合、米中両国の軍隊がともに北朝鮮領内に介入し至近距離で活動することになり、米中軍事衝突の危険が高くなる、と同報告書は警告していた。

政権崩壊時の軍事作戦を事前に中国に通告

北朝鮮の政権崩壊に伴う米中衝突をどう回避すべきなのか。同報告書は主に米国政府への政策提案として、以下の諸点を指摘していた。

・米国とその同盟国である韓国や日本は、北朝鮮の金正恩政権崩壊後の朝鮮半島統一への動きが中国の利益に損害を与えないことを、中国当局に確約する。

・韓国政府は、中国のこれまでの北朝鮮での経済利益が守られることを確約する。中国の北朝鮮への投資は保護され、補償されることを中国当局に伝える。

・中国との軍事衝突を回避するため、北朝鮮崩壊時の国境管理、難民管理、港湾管理などに関する米韓側の方針を中国側に伝えておく。

・米韓合同軍司令部は、金政権崩壊の際の軍事作戦を、事前に中国人民解放軍側に通告しておく。

その上で同報告書は、朝鮮半島での米国の基本的な戦略目標は、あくまでも「韓国の安全、自由、繁栄を保証すること」であり、「中国を封じ込めることではない」と改めて強調していた。

米国の軍事行動で金政権を崩壊させる可能性も

一方、同報告書は、北朝鮮の政権崩壊による南北統一などへの動きに対する中国の反応について、以下の諸点を指摘していた。

・中国当局は、北朝鮮の政権崩壊が米国の主導によって朝鮮半島統一へと結びつき、中国の隣に世界最強の米国の軍隊が迫り、事実上の封じ込めを強化されることを懸念している。

・しかし米軍は、現地の脅威のレベルに対応して朝鮮半島に駐在している。現在の北朝鮮政権は、米国の覇権との間の緩衝地帯というよりも、朝鮮半島の長期的な安定への障害となっていることを、中国側に認識させるべきである。

・これまで米国は、中国が朝鮮半島の安全保障に関して積極的な動きを示すことに反対してきた。だがその態度は改め、中国が北朝鮮の周辺諸国への脅威を抑えることをむしろ奨励するべきだ。

同報告書は、北朝鮮の金正恩政権がどのように崩壊するか、あるいは崩壊させるかについては触れていない。だが、北朝鮮による諸外国への攻撃が切迫したような場合は、米国が「北朝鮮の特定の軍事目標に対する空爆やミサイル攻撃を含む果敢な対応」を実行することを提案していた。米国の軍事行動で金正恩政権を崩壊させる可能性も示唆した提案と言ってよい。

また同報告書は、北朝鮮の軍事脅威に対して米国、韓国、日本は一体だとして、特に日本にとって北朝鮮の危険な行動は脅威であると強調していた。

ZAKZAK記事

北朝鮮の核やミサイルによる異常な恫喝に対し、米軍が「先制攻撃」を真剣に検討している。これ以上、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の暴走を許せば、アジアの平和と安全は脅かされ、数年で核ミサイルを米本土に撃ち込む能力を確保するからだ。「核なき世界」を掲げるオバマ米大統領は果たして、凶悪国家の強制排除に着手するのか。そのXデーとは。ジャーナリストの加賀孝英氏が最新情勢に迫った。  驚かないでいただきたい。「中国が、米国の北朝鮮に対する先制攻撃を認め、オバマ政権が作戦決行日のXデーの検討に入ったもようだ」という衝撃情報が浮上している。  まず、中央日報(日本語版)は20日、「中国が北朝鮮の核施設を狙った米国の軍事作戦を黙認する方針を決めた」と、中国情勢に詳しい台湾有力紙の報道を引用するかたちで報じた。  朝鮮日報(同)も24日、「北核実験:米報道官が「先制軍事行動」に言及」とのタイトルで、米ホワイトハウスのアーネスト報道官が22日(現地時間)のブリーフィングで、「一般論的に、そして北朝鮮と特定することなく言いたい」と前置きしつつも、「作戦事案の1つである『先制軍事行動』は、事前に論議をしない」と語った、と伝えた。  朝鮮戦争以来、中国と北朝鮮は「血の友誼」(=血で固めた同盟)を維持してきた。北朝鮮の「最大の後ろ盾」である中国が、暴走する正恩氏と北朝鮮を見捨てて、米国の先制攻撃を認めることが、あり得るのか。  日本の防衛省関係者が、こう明かした。  「実は、安倍晋三首相が出席した国連総会でも、『中国の李克強首相とケリー米国務長官が接触し、中国が条件付きで、米韓両軍の北朝鮮への先制攻撃を容認した』という未確認情報が流れ、各国が情報収集に走った」  米韓両軍は、北朝鮮への作戦計画「5015」を作成している。

最大の特徴は、米海軍特殊部隊「Navy SEALs」(ネイビーシールズ)などの最強特殊部隊が、正恩氏ら北朝鮮幹部を急襲し、確保・排除する「斬首作戦=正恩独裁体制殲滅(せんめつ)作戦」にある。  同時に、原子力空母と原子力潜水艦で、北朝鮮の周辺海域を封鎖する。そのうえで、米軍の最新鋭ステルス戦闘機F22や、戦略爆撃機B1やB2などで、ミサイル発射場や、地下秘密基地、核実験場など、約700カ所を徹底的に破壊する。  北朝鮮は通常兵器などで反撃するだろうが、米韓両軍の圧倒的軍事力の前に100%敗北する。正恩氏は絶対に逃げられない。  しかし、残り任期が少なく、「弱腰」との批判もあるオバマ氏に、そんな重大な決断が下せるのか。  以下、複数の米軍、米情報当局関係者から得た重要情報だ。  「米国は現在、『中国が、北朝鮮に兵器と関連した技術や物品も提供しないという国連安保理決議案に違反した疑いがある』と迫っている。中国は米国に強く言えなくなっている」  これを裏付けるように、米司法省と財務省は26日、北朝鮮による核兵器開発に関与し、制裁逃れに加担したとして中国遼寧省丹東市の貿易会社「鴻祥実業発展有限公司」と、4個人を刑事訴追したと発表した。  北朝鮮が8月に初めて発射に成功した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)にも、中国の技術が流れた疑惑が浮上している。  ふざけるな! だ。北朝鮮と直接対峙する韓国はどうなのか。  「韓国では強硬論が高まっている。米国は1994年、北朝鮮への先制攻撃を韓国に打診したが、当時の金泳三(キム・ヨンサム)大統領が反対したこともあり、断念した。朴槿恵(パク・クネ)大統領は違う。『北朝鮮の核攻撃の前に攻撃すべきだ』と考えているようで、24日に大統領府で開いた政策点検会議で対話路線を捨て、強硬姿勢に転じた」

米韓両軍が先制攻撃に着手するとすれば、Xデーはいつなのか。  正恩氏が、朝鮮労働党創立記念日の10月10日、6回目の核実験か、「人工衛星」と称して、米本土を狙う大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を強行する動きがある。重要情報は続く。  「オバマ氏は、北朝鮮の相次ぐ核実験やミサイル発射を受けて『なめられた』と激怒している。北朝鮮への先制攻撃論を主張したことのあるカーター米国防長官も最近、フーバー研究所で『ファイト・トゥナイト』(今夜でも戦闘開始できる)という表現を使った。まさに臨戦態勢だ」  米韓両軍は26日、北朝鮮への対抗策として、朝鮮半島東方の北朝鮮寄りの海域で、潜水艦を探知・攻撃する合同演習を実施した。さらに両軍は、10月3日から21日、米アラスカ州で核施設への攻撃を想定した空軍主体の合同軍事演習を行う。10月10日から15日は、韓国西方の黄海などで米韓合同演習を行う。この演習には、米原子力空母「ロナルド・レーガン」も参加する。  朝鮮半島危機が現実になりつつある。日本はこの国家的試練を乗り越えなければならない。それにしても、つくづく思う。安倍政権で良かった。もし、安全保障法制廃止を掲げる民進党(旧民主党)が政権を握っていたら、日本は潰れていただろう。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

『「万里の長城」の修復は、なぜ“お粗末”なのか 保護求める声の一方、地元民による破壊という現実も』(9/28日経ビジネスオンライン 福島香織)について

長城は1987年に世界遺産登録されました。1992年には天皇陛下・皇后陛下が訪中した際、長城に登りました。有名な観光地となっています北京市郊外の「八達嶺」です。男坂・女坂とあり、男坂は傾斜が急ですが、登攀時間が短くて済み、女坂はこの逆です。

emperor-empress-of-japan-visited-great-wall

ただ、紹介のありました小河口の野長城の修理の方式では登録抹消になるのではと思わざるを得ません。文化財保護の概念が中国人には無いようです。単なる石ころとしか思ってないのでしょう。本記事にありますように、近くの農民が長城の石を持って行って、自分の家を作るために使うという話は小生が中国駐在時代(97年~05年)にもよく聞きました。あの当時から何も変わっていないという事です。それはそうでしょう。真面な教育もせず、反日だけを刷り込むだけですから。でも文化財に脱糞するというのは民度の問題です。靖国の池に放尿した輩もいますが、同じく小中華といったところでしょう。公徳心が無いので、果物の食べかすは平気で道路に捨てたりします。また、今は北京の目抜き通りになっています王府井は、昔小生が居たときには屋台街で、子供に股割れパンツをはかせた母親が、所かまわず、大便やオシッコをさせたりしていました。日本人が付き合って良いことはありません。「悪貨は良貨を駆逐する」です。外来種が在来種を絶滅に追いやるようなものです。

article-of-urinating-in-yasukuni-pond

korean-urinate-in-yasukuni-pond

勿論、この修理工事でも賄賂は当然動いています。大なり小なり物が動けば必ずと言ってよいほど金も動きます。胡錦濤は江沢民・李鵬から迫られて「不折騰(buzheteng=余計なことをしない)」と言って自らも巨額賄賂に手を染めるようになったとのこと。石平・陳破空の『習近平が中国共産党を殺す時』の63ページに出てきます。確かに小生も05年帰国するとき、ある人からお土産を貰う時に聞いた話があります。「どんな優秀かつ志の高い役人でも、自分一人では生きていけない。周りが賄賂を取るのを見て最初は嫌な気になるが、周りの目もあり、賄賂を取らないと仲間外れになり、生きていけない」と。社会的に賄賂がビルトインされています。

記事

xiaohekou-great-wall

「コンクリート補修」で非難を浴びる万里の長城、小河口の風景(写真:Imachinachina/アフロ)

中国といえば万里の長城、という人も多いだろう。その万里の長城の修復があまりにもお粗末だということで、国内外から非難の声が轟々と上がっている。

万里の長城というと、八達嶺や慕田峪、司馬台あたりが観光地として有名だろうが、野長城と呼ばれる、修復の手がほとんど入っていない山間部に残る長城跡がほとんどである。だがこれも大変風情があって美しい。山歩きの好きな人は、あえてそういう人気のない、荒れた野長城を訪れることを好むし、いくつかのツアー会社ではそういった野長城ツアーもある。結構、険しい山の稜線にあり、秋口などは遭難の危険性もあるので、単独、ガイドなしでは絶対行ってはいけない。ちなみに、野長城は条例で、眺めるのはよいとしても勝手によじ登ると200元から500元の罰金が科される。ただ、この法律は有名無実化していて、北京郊外の野長城には年間20万~30万人が勝手に登っているとか。

長城保存、力を入れる方向が違う

万里の長城とはそれほど、ロマンを掻き立てる屈指の石造文化遺産なのである。それだけに、中国文化当局は長城保存に力を入れているのだが、その力の入れる方向がなんか違う。いったい、なぜこうなるのか。

野長城の修復問題が中国のネットで話題になったのは、2014年に修復された遼寧省中綏中県の小河口長城の写真が9月21日以前、現地を訪れた野長城愛好者のユーザーによってインターネットのSNSの微博にアップされたことがきっかけだった。この写真に写っていた修復部分は、崩れかけた石積の上を平たんに埋め立てるという単純なもので、修復後は明時代の磚(せん=煉瓦)は白いコンクリート状の層の下に隠れ、美観も風情も台無しであった。

ネットユーザーらの間で「最も美しい野長城をコンクリートで埋め立てた!」と非難の声が上がり、新京報など中国メディアも文化財破壊だという文脈で報じ始めた。CCTVなど中央メディアもこの件を報じ、海外メディアも注目、もともと、一部の野長城マニアにしか知られていなかった小河口長城は、一気に「修復」と言う名のもとで景観を破壊された野長城として国内外に知られるようになった。

ネットでは「爆破するよりひどい修復」「こういう仕事をする低能官僚がいるから、地元経済がよくならない」「これもワイロの結果か!」「ちゃんと(修復プロジェクトを)審査したのか? どのようにお金を使ったのか? 誰が審査し、誰が施行したのだ?」と、当局に対する激しい非難の声があふれた。

荒涼とした趣はコンクリと白灰土の下に

小河口長城は、遼寧省と河北省の省境に残る明時代の長城の主幹線であり、険しい燕山山脈の稜線に長さ8.9キロ、31座の敵楼、18座の戦台、14座の烽火台を残している。明の洪武14年(1381年)に青磚と白灰土で修繕され、防衛能力や軍用物資備蓄能力といった機能もさることながら、堅牢な外観に、敵台などの門枠に掘られた精緻な花紋など、芸術性も備わった歴史的遺跡だ。

2014年の修復前は、低木に覆われる稜線上に、崩れかけた石積がかろうじて残るような状態の部分が多く、それはそれで、700年間、人の手が入っていない荒涼とした趣があり、そこにたどり着くまでの険しい山道の疲れをかみしめながら悠久の歴史に思いをはせるには絶好の風景である。

だが、長城の風化が激しく、1メートル以上の石積みの壁は大雨などが降ればいつ崩れるかもわからぬ危険もあり、放っておけば長城の消失にもつながるとあって、修繕の必要性が指摘されていた。

問題は修繕の仕方だった。新京報によれば、施工者は「白灰土とコンクリートで壁面と路面を固める」という発注を受けていた。修繕の目的は倒壊崩落の危険を防ぐと説明されていたという。問題の写真に写っていた部分は、1、2キロの稜線に連なる野長城で、修繕前は磚は砕け、地面が露出し、壁部分は崩れていた。

3か月にわたる工事終了後は、もともとあった崩れた壁や青磚の残骸は全部のっぺりしたコンクリートと白灰土の舗装路に変わっていた。ただ崩落防止のために固めたというには、その舗装路の表面は非常に薄く、棍棒でたたくとすぐはがれるような代物で、最も薄い舗装部分は爪ぐらいの薄さ、という指摘もある。

新京報は修理に当たった専門家も取材している。その言い分をまとめると、国家文物局、遼寧省文物局、地元県文物局及び文化財修復施工業者四社の関係者による調査チームが現地調査に当たり修繕・修復方法を検討。すでに破損が激しく青磚や石材もなくなっていたので、原貌回復が不要と言う意味ではなく、最小の関与で現状保存する応急処置として、砕けていた磚などを集めて白灰土で固める修復案をとった。

新しい石はまったく使っていない、という。一番上の部分を保護するため厚さ平均12センチの白灰土3、コンクリート7の割合で作った保護層をかぶせたのでのっぺりした舗装路のような外観になった、と説明している。だが、風の強い稜線で、白灰土は3~5年の時間が経てば風化し、下の長城の砕けた磚は露出し、もともとの風景に近いようになるという。爪くらいの薄さ、と指摘されたのは、すでに保護層が風化したところだろうか。

注目と非難が高まり、反論も必死

遼寧省文物局長の丁輝は「修繕保護しなければ、大雨などが降れば、危険なだけでなく、かろうじて残った城壁も消失してまう。…破損部分に一層の保護層をかぶせる修繕方法を採択した。修繕部分全長8キロのうち、一部は修復し、一部は固定し、一部は保護した。…全部コンクリで平らに塗り固めたわけではない」と弁明している。

修繕方法は、国家文物局が2014年に批准し、(外観を元通りにする)修復は不可能で、ただ保護修繕しかできないと、専門家も判断した。「確かに見た目は悪くなったが、これが専門家たちが決めた唯一のやり方だ」と丁輝はその合法合理性を主張した。これだけ世間で批判の声が高まれば、下手をすれば当局関係者の処分もありうるので、彼らの反論も必死だ。

だが中国の著名な長城研究家であり、中国長城学会副会長の董耀会の見方は厳しい。長城修復の問題点をやはり新京報など中国メディア上で訴えていた。

「このような粗暴な長城修復は、長城の文化と歴史を傷つけることになる。人民と文化遺産の対話の断絶させる荒唐無稽な行為だ」「長城修繕は合理合法的で手続き上は問題ないということだが、結果的に文化財の風貌を破壊する原因になっている。目下全国の長城修繕の在り方に統一した方法はなく、その基準も操作可能だ」

つまり地方によって長城の修復のレベルというのは相当差があり、統一した修復基準や、施工、管理などの原則も決まっていないことが、そもそもの問題だという。

かつて新聞社の奈良支局で文化財担当だった経験を振り返れば、確かに700年前の石造文化遺産を保護するというには、ずいぶん雑で荒っぽい方法をとったものだという気がする。そもそも、保護層がすぐ風化するようなもろいものならば、景観をそこまで損なう保護層など本当に必要あるのだろうか。経年劣化そのものに文化遺産の価値を高める魅力がある石造文化遺産の保存修復は、風化プロセスのモニタリングや経年劣化の定量化測定も含め、土木工事というよりは科学技術の分野であり、もう少し繊細なものではなかったか、と思う。

でか過ぎる。早過ぎる。持ち去られる…

もっとも長城保護の問題は、普通の石造文化遺産保護のやり方では通用しない困難な問題もある。

まず、遺跡がでかすぎる。

総延長2万1196.18キロ、世界最大の歴史的建造物遺構の文化遺産である長城は、もともと秦の始皇帝の時代に建設が始まった。そのほとんどは風化しており、もっとも最近に作られた明時代の部分の6259キロ中、残存部は2500キロ以下で、比較的保存が良好で景観をとどめている部分が513.5キロ。さすがに、この残存長城すべてを、最先端の科学技術でもって保存するということは財政的にも不可能だろう。

長城保護条例を国務院が発布したのは2006年。今年でちょうど10年目だ。以来、毎年1億元が野長城保存に投入されているという。2000年から2016年まで北京市は45キロの野長城を修繕したが総額3.67億元がかかっている。専門家によれば1メートルの危険個所を固定するだけで1万元以上、1メートル分の磚を修繕するだけで2万元かかるとか。北京など比較的財政に余裕のあるところはまだいいが、野長城が残っている地域はだいたい貧困地域。河北省張家口の長城遺構は約1800キロに及ぶが長城管理署職員はわずか3人。これでは保護保存もくそもない。

もう一つの問題は、長城の消失スピードの早さだ。1984年に万里の長城残存部を踏破したという董耀会によれば、その当時から約20年の間に約2000キロ、つまり明時代遺跡の3分の1が消失したという。

消失の原因は、壁全体の倒壊、烽火台の磚脱落、風雨の浸食などに加えて、非常に中国的な理由がある。地元民らによる長城の破壊だ。つまり長城から磚を勝手にはがして、住居や家畜小屋の建築資材として持ち去ったり転売したりする問題が深刻で、改革開放以降の30年あまりで消失した万里の長城の約半分は、この農民の磚、石材持ち去りが原因とみられている。

特に、普段観光客もいなければ、管理人もいない野長城の被害が深刻だった。石造文化遺産の修繕保護という課題に対し、景観保存よりも、白灰土コンクリの保護層で磚を覆って隠してしまうやり方は、ひょっとすると、農民らの磚の盗掘を防止する発想が先にあるかもしれない。

文化財保護と観光資源化が混沌

そもそも、中国では、文化財保護、景観保護という意識がまだまだ低く、万里の長城の落書き問題、ゴミのポイ捨て問題など、文化財修復技術問題以前のモラルの問題もある。野長城も勝手に登っては罰金という条文があるにもかかわらず、そういった法律は完全に無視されている。長城愛好家で、野長城を大切に思って慎重に登るならまだ許せるとして、そこで脱糞したり飲料ペットボトルを捨てて帰る不届きものも少なくない。

また、文化遺産保護の概念自体が、統一されていない部分もある。文化官僚に文化財保護と観光資源化を混同している人も多いようで、世界遺産に指定されたとたん、テーマパークのような人工的な修復がされ、ネオンと土産物屋とガイドがあふれ、景観や風情を台無しにしてまうという問題が中国にはありがちだ。こういった感覚が、長城の修繕や保護の在り方にずれを生じさせるのかもしれない。

今回の修復に関しては、あまりにも騒ぎになったので中央当局も、修繕プロジェクトに不正がなかったか調査するという。だが責任を負う官僚をあぶりだすだけでは本当の長城保護にはつながるまい。最終的には、一人ひとりの市民や観光客による、文化遺産や歴史との向き合い方が問われる話なのだと思う。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

 

『第12回日中共同世論調査結果~観光客が増えても悪化する国民感情~』(9/25BLOGOS 田中弥生)について

本記事の元になった「第12回日中共同世論調査結果」は下記URLです。

http://www.genron-npo.net/world/archives/6365.html

本記事へのコメントの第一印象は、中国共産党の実態が分からない人が分析している感じがします。共産主義は全体主義の一種で、一党独裁です。多様な価値観を認めず、歴史も政治に従属、不都合な真実は伏せて、プロパガンダに徹します。「実事求是」から遙かに遠い状態です。自由な議論が許されない国、歴史解釈が共産党御用達しか許されない人達とどう議論するのでしょうか?またいつも言っていますように「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という民族性です。当然共産党政府が嘘を教え込んでいると知っても、自分の利益(日本から金が強請れる)となれば中国国民も黙認することでしょう。深く中国人と付き合ったことの無い人が書いている気がします。

本記事の爆買ですが、そもそも中国共産党は日本での爆買を快く思っておらず(日本だけを標的にしたものではなく、GDPが減るため)、お土産品に課税するようになったので、爆買は減ってるはずです。

http://www.news-postseven.com/archives/20160420_404278.html

http://hbol.jp/95287

日本人の中国訪問者数が減っているのは当り前のこと。人質になるかもしれない国にどうして安心していけるかという事です。特に尖閣がきな臭くなっている現状では。香港の銅鑼湾書店の経営者や店員が、海外・国内から拉致されたのは記憶に新しいです。北朝鮮と同じです。中国人が日本に来ても冤罪で逮捕されることはありません。中国ではフジタ社員のようなことが起きることは覚えておいた方が良いでしょう。民間交流と言いますが、安全面から言って中国内での交流は避けた方が良いでしょう。開催場所は日本のみにした方が良い。

習近平の姉・斉橋橋とその夫・鄧家貴には中国一の富豪と言われる王健林から万達集団(大連)の株を2800万$で譲渡を受け、後に2億$まで値上がりした話が石平・陳破空の『習近平が中国共産党を殺す時』(P.59)に出てきます。日本のリクルート事件の大型版でしょうが、共産党幹部だけやっている訳でもなく、お咎めなしです。こういう腐敗した国が日本を非難できる謂れはないでしょう。ソニーも万達と手を組むと言っていますが、この辺を知っているのかどうか。

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO07584630T20C16A9TI5000/

戦争を避けるにはバランスオブパワーが大事です。中国の封じ込め、いざとなれば経済制裁、米軍や多国間での軍事訓練、尖閣への機雷設置や対艦ミサイル砲の設置等、中国に目に見える形で戦争が如何に割に合わないかを見せつける必要があります。安倍内閣はもっとしっかりやってほしい。国民の生命に関わることですので。

中国人が日本に来て日本を理解すれば、見方も変わるのではという意見もありますが、日本人が短期の中国旅行で中国人への見方が変わったかと言うとそんなことはなかったでしょう。それと同じで、期待薄です。日本人が中国人の見方を変えたのは、尖閣への侵略行為、南シナ海の侵略行為を目の当たりにしたからでしょう。こんな行為ができるのは中国人としては当り前の行為です。騙す方が賢いのですから。鄧小平は「韜光養晦」で力を蓄え、それまでは世界を騙す政策を採ってきました。それに踊らされたのが米国と日本です。キッシンジャーやヒラリーのように中国の金塗れになっているのが米国要人の姿です。ピルズベリーは『China 2049』でやっと中国に騙されてきたことに気付いたとのこと、遅すぎます。日本も親中派政治家を筆頭に、官民を挙げて中国経済の離陸を助けました。その結果が尖閣侵略です。如何に日本は「騙される方が馬鹿」の典型かという所でしょう。2005年に中国から帰国して以来、中国の危険性に警鐘を鳴らしてきましたが、今でも朝日新聞を始めとする偏向メデイアの刷り込みが解けず、「平和ぼけ」が未だ治っていない人がいます。特に高齢者かつ女性が多い。新聞・TV以外から情報を取ることが無いからです。民主主義ならぬ衆愚政治の典型です。

記事

銀座を歩くたびに、日々増加する中国人観光客に驚いていたが、最近は普通の光景になりつつある。高級ブランド店からマツキヨまで、購買欲旺盛な中国語が飛び交っている。さすがにデパ地下は少なかったのだが、最近は、菓子売り場で姿を見かけるようになった。中国人観光客はすっかり上得意のお客様となっている。そのような中、意外な調査結果が発表された。日中両国の国民感情が悪化しているというのだ。

1. 中共同世論調査が示すもの ~悪化する国民感情~

(1)両国国民を対象にした調査  

日中共同世論調査を実施したのは、日本の「認定NPO法人言論NPO」と中国の「中国国際出版集団」である。この調査は、日中関係が最も深刻だった2005年から日中共同で毎年行われているものであり、今回で12回目にあたる。日本側の世論調査は、全国の18歳以上の男女を対象に訪問留置回収法で実施された(有効回収標本数は1000)。中国側の世論調査は10都市で、18歳以上の男女を対象に同様の方法で実施された(有効回収標本は1587)。この調査に加え、言論NPOと中国国際出版集団はそれぞれ有識者2000人にアンケート調査を行っている(http://www.genron-npo.net/world/archives/6365.html)。

(2)両国の国民感情の悪化  

調査結果のいくつかを見てみよう。日本人については、日中関係が「悪い」という回答が71.9%となり、2014年まで改善傾向であったものが悪化に転じている。中国人については、「悪い」という回答が昨年から11ポイント増加し78.2%となった。また、この1年間の日中の関係について尋ねているが「悪くなった」と回答したのは、日本人が44.8%、中国人が66.8%である。さらに「悪くなってゆく」と回答したのは、日本人は10ポイント増の34.69%、中国人は9ポイント増の50.4%となった。  過去11回の調査では、日中の国民感情の悪化にもっとも影響をもたらしていたのは、日中首脳会談の動向だった。しかし、両国首脳会談は昨年から再開し、最近は”笑顔”も見られるようになった。それにもかかわらず、両国感情は悪化しているのである。何が両国の国民感情を悪化させているのだろうか。

(3)何から情報を得ているのか   

まず、両国民は何から情報を得ているのか。本調査によれば、両国民とも直接的な交流は乏しく、相手国の認識は自国のメディア、特に、テレビ報道に大きく依存している。  この1年の報道内容は、2016年5月の伊勢志摩サミット、安倍首相、習主席との会談が行われた9月のG20のほか、7月には南シナ海をめぐる国際仲裁裁判所の判決や尖閣諸島公船侵犯ニュースである。調査分析者は、両国間のテレビ報道信頼への差異はあるものの、これらの報道が世論に影響を与えていると述べている。

2. 両国民の懸念 ~歴史認識からから安全保障へ  

では、両国民は何を懸念しているのか。それは、”安全保障面での両国政府の行動を不安視する見方が、昨年よりも大きくなっている”という点である。  中国人が日本にマイナスの印象を持つ理由として多いのが「歴史認識問題」「魚釣島(尖閣諸島)」であるが、今回は「日本が米国と連携して中国を包囲している」という回答が7ポイント増加し48.8%となっている。  日本人が中国にマイナスの印象を持つ理由としては「尖閣諸島の周辺での領海を侵犯している」(64.6%)、「資源やエネルギー、開発などの行動が自己中心的にみえるから」(49.1%)、「国際的なルールと異なる行動をするから」(48.1%)となっている。特に、尖閣に対する回答は前年に比較し20ポイント増となっている。   これまで歴史認識の問題が大きな障害となっていることが前回までの調査で明らかになっていた。今回の調査でも、歴史認識問題が日中関係の阻害要因として重視されている。だが、それよりも安全保障面での行動が両国民のより強い関心事となっていることが今回の調査から明らかになってきたのだ。

しかし、それがナショナリズム的な感情に直結していない点は特記に値する。本調査を主催した言論NPOの工藤泰志代表は「両国の国民意識はかつてのようにナショナリスティックな対立にはなっていない」と述べている。その要因として、首脳会談や国際会議の成功、経済協力を優先したことなどがあるとする。また、両国民の7割近くが日中関係を「心配している」「改善すべきだ」と回答している。そして、関係改善策として両国民の6割が挙げたのが「領土問題」と並んで「民間レベルの交流」である。つまり、政府レベルだけはなく、民間レベルでの取り組みが重要だと6割が考えているのだ。

3. 厚みが増したがバランスを欠く民間交流  

2015年に日本を訪問した中国人は過去最高の499万3,689人に到達した。民間レベルの交流が急速にその厚みを増していることの証左だ。だが、課題はいくつもある。例えば、日中間の移動人口数のバランスを欠いている点だ。中国を訪問した日本人はその半分以下(249万7,700人)で、しかも毎年減少傾向を示している。  本調査によれば、訪日経験のある中国人の58.8%が日本に「良い」印象を持っているが、訪日経験がない人は11.4%に留まることが明らかになっている。単純にこの結果を日本人に当てはめることはできないが、直接的な交流経験がプラスの影響をもたらすことを考えれば、日本からの訪中人数を増やしてゆくことは重要である。  そして、ソフトな民間交流だけでなく、ハード(硬派)の交流、すなわち、このような調査を行い、国民が最も懸念している事柄(今回でいえば安全保障や歴史認識など)について、民間レベルで直接、本音で話し合う場が必要ではないか。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

『シリコンバレーで再び高まる日本への興味 「組み合わせ」で世界に通じる価値を生む』(9/26日経ビジネスオンライン 御立尚資)について

昨日、トランプとヒラリーのTV討論をリアルタイムで見ました。BS1に出てきました解説の慶応大学教授は「僅差でヒラリーの勝ち」と言っていましたが、違った印象を受けました。トランプはヒラリーの「メール問題」と「健康問題」について、軽く触れただけでした。トランプがヒラリーに「スタミナがない」と言ったら、瞬間に「112ケ国も回って和平交渉やってきた。スタミナがないとは言わせない」と切り返していました。流石よく準備してきたと思いました。トランプは自分の税務申告問題でヒラリーに大分追及されていました。でも、一般人から見たらトランプが主張した「過去10年間ヒラリーはエスタブリッシュ側にいて、誤った体験をしてきた。イランの核合意がその典型」というのに賛同するのではと感じました。過去の政策が失敗だったから、米国はうまく行ってないというのを浮き彫りにした感じで、知識人は別にしてトランプの勝ちかと思いました。しかし、産経新聞によると、CNN調査でデベイトはヒラリー:トランプ=62:27でヒラリーの圧勝でした。

http://www.sankei.com/world/news/160927/wor1609270037-n1.html

ただ、トランプは中国が米国の雇用を奪っていると何度も名を挙げて非難したにも拘わらず、ヒラリーはハッキングの所で「イラン・ロシア」の名と並列に1度だけ名前を挙げただけです。彼女が大統領になれば、中国の金塗れですので、中国に強いことはできないでしょう。スーザン・ライスもそのまま使うのでは。トランプは日本の核武装について明言しませんでした。但し、同盟国は守る義務があり、応分の負担を求めると。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160927/k10010708081000.html

本記事を読んで感じますのは、第二次大戦で戦った国同士が手を結んで、いろんなことにチャレンジしようとしていこうとしている点です。基本は相手国の尊重から始まるのでは。中国のように歴史を改竄(米国も歴史家の主流はそうですが)していつまでも日本を歴史の檻に閉じ込めておこうとする国と、韓国のように一緒に戦った国でありながら、台湾と違い、反日(国民党は同じく反日ですが)に邁進する国があります。両国とも自由な言論が存在しません。日本に有利な言論は封殺されます。

それでは良いアイデアも出て来ないでしょうし、他人が成功したのを見てパクるだけになります。日本には金剛組のように1400年前に作られた企業もあります。中華・小中華は易姓革命をモットーとするため、長寿企業が存在する余地はありません。

http://kakunist.jimdo.com/2016/06/04/%E4%B8%96%E7%95%8C%E4%B8%80%E5%8F%A4%E3%81%84%E4%BC%81%E6%A5%AD-%E9%87%91%E5%89%9B%E7%B5%84-%E3%81%A8%E5%80%92%E7%94%A3/

民間レベルでも米国との連携を深くし、安全保障面や経済面での関係深化が望まれます。「自由・民主・人権・法治」を大切にする国同士ですので。

記事

cafe-exmi-in-us

連休の週末、米国西海岸に行ってきた。以前にこのコラムでもご紹介したスタンフォード大学のダニエル・オキモト名誉教授と船橋洋一さんが立ち上げたNPO「シリコンバレー・ジャパン・プラットフォーム」が主催したカンファレンスがナパバレーであったのだ。私自身もこの団体の趣旨に賛同してお手伝いしているので、どちらかと言えば主催者側の立場なのだが、そのひいき目を差し引いてもなかなかおもしろい会合だった。

日本企業とシリコンバレーをつなごう、という考えで立ち上がった集まりで、日本側からは大企業経営者やベンチャー創業者、投資家の方々などさまざまなビジネス分野の出席者が集まった。米国側も元CBSニュース社長や大統領候補のひとりだった上院議員から、ベンチャー経営者やキャピタリスト、あるいはロボットの専門家などなど、多士済々な顔ぶれが揃った。

相当バックグラウンドが異なる方々も多く、正直、議論がかみ合うかなと心配したのだが、会議のセッションだけでなくランチやディナータイムまで、結構、刺激的な議論が交わされていて興味深かった。

日本への興味はビジネスから文化まで幅広い

印象に残ったのは、日本で感じているよりも日本に対する興味が(再度)高まってきていること、そして、その興味の対象がビジネスから文化まで幅広いことだ。

たとえば、Toyota Research Instituteのギル・プラット氏が登壇したAI・データサイエンス・ロボットに関するセッションがあった。これを受け、セッション以外のさまざまな場で、(今はアルファベット、という社名だが、元々はグーグルの)Xのロボット事業GMやMITメディアラボの研究者、あるいは、ゴールドマンやプルデンシャルの出資を受けて急成長している野菜工場の創業者など複数の参加者と議論する機会があったのだが、「AIを含むソフトウェアとハードウェア(メカトロニクス)の融合」であるロボットが実用化に近付けば近付くほど、日本の製造業への期待感が強い、という意味のことを何度も聞かされた。

高い信頼性を担保できるハードがあってこそ、ソフトが社会で使われる形で実用化可能だということだ。

あるいは、デザインについてのセッションでは、「日本では当たり前に見られる細部に至るまでの徹底的なこだわりこそ、ユーザー体験(UX)を高いレベルに引き上げるための鍵だ」という意見が出され、米国人参加者からはデザイン力の優れた日本企業とのアライアンスを希望する意見が随分、出ていた(これには地域の伝統工芸から、無印良品まで、広い範囲の企業群が含まれる)。

日本で過ごしていると、「第4次産業革命で、日本企業は周回遅れだ」とか、「シリコンバレーはインドや中国を向いていて、日本にはもう興味がない」という考えが、あたかも当然のことのように語られている。

数年前の状況も含めて考えれば、一面の真理はあるのだが、いまこの時点では、かなりステージが変わっていて、積極的にネットワークを広げれば、いろいろなやりようがあるな、と実感した次第だ。

この傾向に一役買っているのが、普段我々が意識していない部分も含めての「日本文化」だということも、あらためて確認させられた。

「喫茶店」にインスピレーションを受けたBlue Bottle Coffee

たとえば、米国発のサードウェーブコーヒーの旗手として大流行のBlue Bottle Coffee。今回の中でも特に面白かったのが同社の経営者が語ってくれたストーリーなのだが、元々音楽家だった創業者がもっとも強いインスピレーションを受け、いまだに大好きなのが、日本の昔からの「喫茶店」だという。

特に、渋谷の裏通りにある「茶亭 羽當」がいかに好きか、というあたり、日本の(少しこだわりの強い領域での)生活文化は、こちらの想像以上に好きだと思ってくれる海外の人がいるのだな、と感じ入った。

ちなみに、清澄白河という東京中心部から離れた場所にBlue Bottle Coffeeの1号店を作ったとき、「12名採用しようとしたら、700名が履歴書持参(ネットで送付ではなくです)で並んでくれたのには、泣けた」という話も聞かせてもらった。

元々は日本にも存在したコーヒー文化を、一度米国のフィルターを通し、すみずみまで品質とデザインにこだわる形でパッケージし直すと、日本国内にも数多くの価値観共有者がいるということだろう。

これも、一般的なJVとかではない「組み方」について、考えさせられる話だった。

この手の集まりは、一回だけでは本当のネットワーク構築にならないのは重々承知しているので、今後長く続くジャーニーになるだろう。好むと好まざるに関わらず、日本と米国の組み合わせで世界に通じる価値を作っていくというのが、我々にとっての生き方の重要な一オプションだと思うので、多くの方々が同様のネットワーク構築をしてくださることを祈っている。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

『ブレグジット、思わぬ好機? うまみ増すロンドン和食 欧州総局長 大林尚』(9/26日経朝刊)について

EUの規制はおかしい部分が沢山あるのでは。健康を害さない基準値内であれば良いと思いますが、基準値がなく一律にダメということでしょうか?非関税障壁のようにも思えます。それでも日本人の凄さは規制をクリアするように技術開発してしまう所でしょう。

ビールの原材料や製造国などの説明書きを10ケ国表示したラベルが必要とのこと、そんなにラベルにスペースが取れるのかどうかですが、字を思い切り小さくして表示するのでしょう。英語と原産国語の2ケ国語表示で良いと思いますが、国の面子があるのでしょうか。

ブレグジットで£が安くなり、英国からEUへの輸出価格もそれにより、相殺されるという見立てもあります。確かに英国での商売でもEU基準適合商品として売り込めば良いかもしれませんし、日本の地域限定商品のように英国向け商品を開発する手もあるでしょう。

本記事にありますように、フュージョン料理の店は和食のブランド価値を下げるものです。淘汰されていってほしいと願っています。あれだけ反日を唱える中国人・韓国人が儲かるとなると日本の名前を使うのは止めてほしいと思っています。節操のない連中です。でも英国人も本物の和食とフュージョン料理の違いが分かってきたとのこと、喜ばしい限りです。

英国とは食だけでなく、安全保障面でも連携できれば良いと考えています。第二次日英同盟です。米国の力が翳り、トランプのように内向きの人間が大統領になるかも知れず、中国の力に対抗するには、米英同盟を結んでいる英国とも同盟を結んだ方が良いと思っています。幸い、パンダハガーのオズボーンやオニール財務次官も辞任したメイ内閣ですから。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM23H71_T20C16A9FF1000/

記事

東京・築地に本店を置くかつお節の老舗、和田久の3代目社長・和田祐幸さんは10年あまり前、パリのしゃれた和食店へ入ったのが一念発起するきっかけになった。満を持して注文した吸い物を一口すすったとき、うま味を感じなかった。

opinion-survey-in-london

調べてみると、欧州連合(EU)の行政機関である欧州委員会が日本産かつお節の域内への持ち込みを禁じていた。薪(まき)でカツオをいぶすときにできる焦げ目が発がん性物質のひとつベンゾピレンを含むというのが根拠だった。

もちろんその量は人の健康を害するほどではない。だが規制は規制。試行錯誤を経て、EU基準を満たすかつお節の出荷を2010年にロンドンで始めた。ところがその翌年、欧州委はさらに規制を強めた。和田さんは創意工夫を重ね、ベンゾピレンを含まない製法を3年前に編み出した。

薪を使わず木片でいぶすやり方だ。昨年春、大西洋に面するスペインの港町ヴィーゴにほど近い缶詰工場に間借りし、新しい製法で生産を始めた。今年からはより広い加工工場を稼働させた。かつお節は和食の基礎。いまやスペイン産は欧州に暮らす日本人家庭だけでなく、和食店の料理長に広く重宝されている。

ここにきてロンドンで和食ビジネスに携わる人の口の端に上り始めたのが、英国のEU離脱(BREXIT=ブレグジット)は好機ではないかという見方だ。日本からみると、たしかにEUの食品規制は過剰感がぬぐえない。

まず日本の乳製品を輸出できない。乳成分を含む多くの加工食品は、はじかれる。香料は欧州委が指定したものだけしか使えない。だから日本のビール会社が得意とする、本物に引けを取らないノンアルコールビールが飲めない。残留農薬の基準も同様だ。欧州委の指定外農薬を使った日本茶は、味わえない。

規制に触れる食品は最悪の場合、通関前に輸出国へ送り返される。その輸送費は業者もちだ。賞味期限を考えると返送後は廃棄処分ということがままある。

成分規制だけではない。ビールの場合、原材料や製造国などの説明書きを10カ国語で表示しなければならない。「ラベルは自社ではつくれない。専門業者に依頼しており、コストが上がる要因になっている」(英国に進出したビール会社)

数々の規制のくびきから仮に英国が解放されたら長年の努力が水泡に帰すのではと、和田さんに水を向けてみた。答えは「逆手にとってEU品質を売りに攻勢に出ます」。かつお節のグローバル化に粉骨砕身した自負がにじむ。

一般に、伝統的な英国料理はうま味が乏しい。出汁(だし)に凝縮されたうま味を味わう食文化が根づいてこなかったようにも思える。もっとも、この10年ほどの間にロンドンに広がった和食人気をみると、英国人の味覚は少しずつ豊かになってきた感がある。

昨年、日本大使館は英国人向けにうま味セミナーを開き、京都の3つ星料亭、菊乃井の村田吉弘主人がさまざまな効用を語った。「塩分を控えめにしても食事の味わいを損なわない」。それでも、うま味が必要な理由を質問した女性がいたが、健康で安全性が高いという和食文化へのイメージは浸透し、定着しつつある。

ロンドンの和食店は3種に大別できる。第一は、世界から集まる資産家に照準を合わせた客単価が数百ポンド(1ポンド=130円強)の高級店。すし、懐石料理、鉄板焼きなどだ。英国人よりもアラブ系や中国人、ロシア人を上得意にしている。

第二は、客単価が数十ポンドの中級店。典型はラーメンだ。ひと昔前、ロンドンでラーメンといえば伸びた麺と出汁が利いていない冷めたスープが定番だったが、この数年間に店舗網を広げた豚骨ラーメンチェーンの味わいは日本に引けを取らない。店内では日本酒を頼み、箸を器用に使う若い人を見かける。日本のラーメン屋と異なり流行の先端をゆく食べ物は、すしと並ぶ和食の代名詞だ。

第三は、中国や韓国風の味つけが施されたフュージョン(無国籍料理)店。料理人はたいてい日本人以外だ。最近は「現地の人も本物の和食とフュージョン和食の違いが分かる」(レストラン運営コンサルタントの小池道隆氏)。

話を食品規制に戻そう。今月半ば、EUはスロバキアの首都ブラチスラバで英国を除く27カ国の非公式首脳会合を開いた。トゥスクEU大統領は記者会見で英国との離脱交渉は来年1~2月に始まるだろうと語った。離脱手続きを定めたリスボン条約50条は、交渉期間を原則2年と規定する。ただし当事国を除くすべての加盟国が同意すれば、期間は延ばせる。

こまごましたEU規制を離脱後の英国がどう扱うかを展望すると「2年で交渉がまとまるとは考えにくい」と英外交官はみる。

国民投票のキャンペーン中、離脱派はEUの官僚統制をはねのけ、英国に主権を取り戻そうと説いた。与党保守党内に少なからずいる主権回復論者が意識したかどうかはともかく、時間をかけてでも科学的根拠が乏しく健康被害と関係がない食品規制から自由になる利は、小さくなかろう。

うま味をふんだんに味わう環境は、英国人の食文化に変革をもたらす。和食ビジネスのうまみも増す。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。