『中国はハリウッドを乗っ取るのか あるいは「自由な発想」が中国に入り込むか』(10/12日経ビジネスオンライン 福島香織)について

日本は対応が遅いです。ユネスコへの分担金支払い保留何て、「南京大虐殺の記録」が登録する前にやって圧力をかけるべきでした。外務省の無能が災いしたという所でしょう。普通の民間会社であればライバル会社の動向を広告会社や卸、小売、量販店辺りから情報を取ります。敵国である中国や韓国がどういう風に動いているか情報を取る国を見つけないと。ユネスコに影響を及ぼす国にアプローチできるようにしないと。結局、外務省は何もしていないという事でしょう。岸田外相はリーダーシップがありません。とても総理の器ではありません。「追い詰められてから」では遅いです。先手先手で動いて行かないと。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS14H0B_U6A011C1EAF000/

水野靖夫著『Q&A近現代史の必須知識』を今読んでいますが、「日本は追い詰められて行って大東亜戦争へ入っていった」とあります。FDR、チャーチル、スターリン、蒋介石、毛沢東の考えが読み切れていないことが大きかったと思います。大きく見ればコミュニスト(シンパも含む)の謀略にしてやられたという事でしょう。今も「南京」や「従軍慰安婦」問題でコミュニストの中共に追い詰められて行っています。歴史から何も学べなくなった日本人の感がします。官僚の劣化が著しい。まあ、自分の頭で考えることもせず、日教組の教科書や偏向メデイアの報道をプロパガンダと思わず信じている人達ですから。結局、GHQのWGIPの呪縛がまだ解けていないという事でしょう。

中国は人口の大きさを市場の大きさとして武器として使ってきます。それに靡かざるを得ない、経営者に自覚を求めても詮方なきことでしょうが。アンジェリナージョリ-の「アンブロークン」や韓国の「鬼郷」などプロパガンダ映画が作られているのに何もしないことに歯がゆさを感じます。「表現の自由の尊重」ではなく、単なる意気地なしではないですか。抗議の声を政府は上げるべきです。また正々堂々と「歴史の見直し」を進めるべきです。米国が歴史修正主義と非難しようとも。中国は数百年のタームで日本を手なづけようとしています。それで世界に嘘をバラマキ、日本を道徳的に劣った民族と刷り込みをかけて、侵略されても仕方がないと世界に思わせようとしています。その手先が韓国なだけです。単なる使い走りですが。

自由のない国、人権抑圧国家の国民になれば、どういう仕打ちを受けるか、ソ連のスターリンの粛清、中国のチベット、ウイグル、内モンゴルでの虐殺、大躍進、文化大革命、天安門事件を見れば分かるはずです。日本国民はもっと中国の間接侵略に敏感にならねば。沖縄の反基地闘争や日本のメデイア操作等、考えれば分かりそうなものですが。

記事

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大連万達の2つ目のテーマーパークが中国・合肥市に開業。写真中央が王健林(写真:Imaginechina/アフロ)

「王健林がハリウッドに侵食していると、米国人たちが慌てている」。そういう趣旨の記事が中国国内でも10月初旬に相次いだ。中国一の大富豪にして大実業家の王健林率いる大連万達集団が米テレビ制作会社大手ディック・クラークプロダクションを10億ドルで買収しようとしている、と米紙WSJ(ウォールストリートジャーナル)などが危機感をもって報じたことを受けての記事だ。

ディック・クラークプロダクションといえばゴールデングローブ賞やアメリカンミュージックアワード、ビルボードミュージックアワードなど、米国映画、音楽文化を代表する賞を主管する。今年1月に、ジュラシックパークなどを制作した米大手制作会社レジェンダリーを35億ドルで買収したことに続いて、いよいよ中国がハリウッド乗っ取りに王手をかけた、このままではハリウッドの魂が中国に奪われてしまう、と米国人が焦るのも当然かもしれない。

というのも2012年から始まる万達の米映画産業の“爆買い”は、明らかに一企業の経済行為以上の意味があるからだ。つまり中国の文化覇権戦略を背景にした政治的行為とみられるからだ。

グローバルな映画産業で発言力を勝ち取る

万達集団のハリウッドがらみの買収を時系列にみていくと、まず2012年、米国で二番目に大きい映画館チェーンAMCを26億ドルで買収した。これは万達にとって初の海外企業買収であった。

続いて、2016年1月、レジェンダリーの買収を発表。この調印式のとき、王健林は「世界の映画産業は少数の米国映画会社に牛耳られている。この買収がその局面を変えることになる」「中国企業にとって、このように巨大で、その一挙手一投足が業界に影響を与えるような大企業を買収できたことは、まさに奇跡」「中国企業はこれからグローバルな映画産業において“話語権”(発言力)を勝ち取っていく」と挑発的な演説を行った。

また、この直後からハリウッド6大スタジオのうちの一つを買収する意欲をみせ、その6大スタジオの一つ、パラマウント・ピクチャーズの親会社ヴァイアコムがパラマウント株の売却先を探していると知るやいなや、その49%を推定資産価値よりも高い50億ドルで購入する提案を出した。

結局、ヴァイアコムの創業者の92歳になる大富豪、レッドストーンの強い抵抗で、パラマウント買収計画は頓挫。だが、かわりに、6大スタジオの一つ、ソニー・ピクチャーズの提携を発表した。この提携はソニー・ピクチャーズの一作品につき10%を上限とした出資を行うというもので、万達の影響力は限定的とみられてはいるが、今持ち上がっているディック・クラークプロダクション買収計画となると、これは米国人をかなり焦らせるだろう。

9月半ば、米下院議員16人が連名で、万達集団の“ハリウッド買収”に反対する意見書を米政府に提出、米政府側も「権限の及ぶ限りで、今後4か月調査を行う」との返答をしたという。

一方、万達集団は9月30日に、山東省青島市に中国版ハリウッドというべき映画基地「青島万達東方影都」をオープンさせた。これは15以上の映画スタジオ、11のセットを備え、10月にはここで「パシフィックリム2」の制作も始まるとか。

映画と話題は少しずれるが、万達は今年6月、ディズニーランドに対抗する映画テーマパーク「ワンダ・シティー」を江西省南昌にオープンさせ、2020年までに全国で15か所のワンダ・シティーをオープンさせる計画を明らかにした。この南昌のワンダ・シティーのオープニングでは、白雪姫などディズニーキャラのコスプレ姿の店員が映り、失笑を買ったが、王健林自身は「ショップが勝手にやったこと」と一蹴しつつ、今後20年、中国ではディズニーにはもうけさせないと豪語している。

このように、映画・エンタメ世界で破竹の勢いで進撃する王健林の本当の狙いは何なのだろうか。ハリウッドを牛耳り、映画王と呼ばれることだろうか。エンタメは儲かるからだろうか。私は、これは一企業家の行動ではなく、中国・習近平政権の覇権拡大戦略の重要な柱であるとみている。

習近平の覇権拡大戦略の一手

王健林という人物を簡単に説明しておこう。1954年生まれ、四川省出身。父親は長征にも参加した革命家の王義全。いわゆる紅二代だ。軍隊時代に、大連陸軍大学、遼寧大学に進学、卒業後は、ちょうど軍の大リストラにあい、公務員に転身し、大連市の住宅開発問題に取り組む。このとき、国有企業の大連市西崗区住宅開発公司の責任者となる。この国有企業が大連万達不動産集団の前身だ。

やがて企業家として頭角を現し、万達集団を中国最大級のコングロマリットとして導いていく。大連と言えば、失脚した元重慶市党書記の薄熙来との関係も当然深かったのだが、幸運なことに薄熙来が失脚する以前に王健林は薄熙来とけんか別れしていたという。さらに幸運なことに習近平に気に入られ、習近平の姉の蓄財にも貢献したとみられている。

権力闘争の機微にも通じており、習近平の政敵の巣窟・遼寧省出身でありながら、目下、習近平の一番のお気に入り企業家とみられており、本人も習近平政権の意向にそった言動をしている。FIFA(国際サッカー連盟)のオフィシャルパートナーになったのも、儲からないと自分で言っているサッカーチームへの投資も、習近平の無類のサッカー好きを見越してだと言われている。

ところで習近平政権の政策でいくつか顕著なのは、文化産業のコントロールと振興である。党を支えるのは二本の棒、銃とペン、すなわち軍とメディアでありその双方の掌握が重要というのは毛沢東の時代からいわれていることだが、習近平はそれを忠実に守っており軍制改革と強軍化によって軍の掌握を進める一方で、メディアコントロールにも前政権以上に力を入れている。

このメディアというのは単に新聞テレビなどの報道分野だけでなく、「政治宣伝」を担うあらゆるメディアのことであり、その中には映画、アニメ、文芸、音楽、芸能なども重要な地位を占める。特に映画の伝播力、洗脳力については非常に警戒と期待があり、だからこそ、国内のハリウッド映画などの中国人への影響力を「文化汚染」「文化侵略」と呼んで排除しようとやっきになったりもしている。

だが、実際のところ中国の映画市場でハリウッドを締め出すことは困難である。

「西側の普遍的価値観」に危機感

中国の映画市場は2015年、約440億元の売り上げがあり、うち国産映画のシェアが初めて60%を超え、さらに年間売り上げナンバーワン映画が初めて国産映画の「捉妖記」となったことが「中国映画市場のハリウッド離れ」という文脈で報じられた。逆に言えば、2014年まで中国映画市場でハリウッド映画はずっと人気のトップを走り、中国側が輸入枠を設けて進出を制限し、厳しいセンサーシップを設けて、上映映画館を限定して、上映期間も国産映画よりも短期に設定したとしても、売り上げ上位はハリウッド映画にほぼ独占されていたということだ。

“ハリウッド離れ”と言われた2015年に関しても冷静にみれば国産映画は278本、輸入映画は80本しかないのに、興行収入の割合でいけば4割が輸入映画だ。この80本の輸入映画のうちハリウッド映画は44本までに制限されている。1億元以上の興行収入の映画は81本、うち中国国産映画は47本にとどまる。

中国当局がハリウッド映画を警戒しているのは、ハリウッド映画がエンタメを装いながら米国的な価値観を非常に効果的に観客に浸透させることだ。例えば、自由や民主、人権、そして米国は正義、米国はヒーローというイメージ。中国が受け入れられるものもあれば、受け入れがたいものもある。

たとえば、「アバター」という映画は、一見、完全な娯楽SFのように見えて、マイノリティへの迫害問題もテーマになっており、中国人にはどうしてもチベット迫害を想起させる内容になっている。審査のときには当局はそのメッセージ性に気付かなかったが、上映されたとたん、映画を見た中国人ネットユーザーが民族問題について語るようになったため、いったん許可した上映を急きょ取り消す事態になった。習近平政権は、9号文件に代表されるイデオロギー政策で強く打ち出しているように、「西側の普遍的価値観」(自由、民主、人権など)の中国への浸透を非常に警戒しているが、ハリウッド映画など娯楽は、センサーシップをうまく潜り抜けてそうした価値観を中国人に浸透させてしまうわけだ。

こうした状況に対して、中国が取り得る対抗措置はもはや国内にハリウッド映画の流入を防ぐことよりも、ハリウッド映画よりも面白い中国映画を作ること、あるいはハリウッド映画の中身に中国サイドが関わることしかない。万達のハリウッド投資は中国にとって好ましいハリウッド映画を作ることが狙い、ということになる。

2016年には中国映画市場の拡大にともない、ハリウッド映画の輸入枠上限が撤廃されることになったが、もはや本数の制限ではなく、中国にとって都合のよい映画をハリウッドに作らせることに力点が変わってきている、ということだろう。王健林のいう「話語権」とはまさに、中国が伝えたいメッセージをハリウッド映画に組み込んで世界に伝えるということであり、これはハリウッドの文化侵略、文化汚染を恐れていた中国が、一転して攻めの姿勢となって「文化覇権」を狙っていると言えなくもない。

マット・デイモンが中国人兵士役

実際に近年のハリウッド映画は明らかに、中国寄りになってきている。なにせ中国は2017年には米国を抜いて世界最大の映画市場となるのだから、中国人観客に受けないことには、ハリウッド映画も成功しない。例えば2015年に公開されたハリウッド映画「オデッセイ」は火星に取り残されたNASAの宇宙飛行士を救出するために万策尽きたとき、中国国家航天局が国家機密のブースターを提供するという、すごく頼りになる国家に描かれている。実際の中国は、こんなお人よしではない。

今年12月に公開予定のスターウォーズシリーズの最新作「ローグ・ワン/スターウォーズストーリー」には、中国人気俳優で監督でもある姜文と香港アクションスターのドニー・イェンが正義感あふれる役で登場するのも中国市場の受けを計算したと言われている。

さらに張芸謀監督、マット・デイモン主演で万里の長城を舞台にしたファンタジー映画「長城」が、来年春節前後に公開される。マット・デイモンは目覚めた古代中国人兵士役なので、なんで中国古代兵士を白人が演ずるのか、不自然だ、と一部中国人側からブーイングも起きている。確かに中国市場受けを狙うなら中国人俳優の起用の方がいいのではないか。だが、これは中国側の狙いとしては、中国の悠久の歴史や文化の深さ、美しさを世界に発信するため映画だという。つまり中国のポジティブイメージをハリウッドの手法で世界に発信するために、ハリウッドスターを主役に起用したわけだ。

習近平政権が目下、強軍化による海洋覇権をもくろんでいることや、人民元の国際化やAIIB(アジアインフラ投資銀行)の設立などで、通貨の国際化を進め、いずれは米ドル基軸体制に挑戦するという「通貨覇権」をねらっていることは、このコラムでも取り上げてきた。国際社会で影響力を拡大していくには軍事と経済の実力が欠かせない。だが同時に欠かせないのが文化の力なのである。

政権の安定に、治安維持力と経済成長とメディアコントロールによる世論誘導が必須であるのと同様、国際社会における影響力も軍事力、金融・経済、そして文化・情報発信力による国際世論誘導力が重要だ。強引な戦争を仕掛けても国際世論の誘導力があれば、それは正義の戦いとなる。世界の秩序が今、米国基準になっているのも、“普遍的価値観”が西側のデモクラシーが基本になっているのも、すべて米国の文化・情報発信力の強さのせいだとしたら、それをしのぐ発信力で中国の秩序、価値観を広めれば、中国が世界の正しさの基準になるわけだ。これが今の中国の考え方だ。

イデオロギーか、「自由な発想」か

ただし軍事、金融・経済に比べて、文化の覇権は難しい。軍事は金の力で強化できるが、文化は金があれば質の良いものができる、というものでもないからだ。そこには、「表現の自由、思考・思想の自由」という精神の問題も絡んでくる。自由な発想がなければ、そこに金や技術があっても優れたコンテンツは生まれない。

米国人はハリウッドが乗っ取られることを恐れているが、中国が本当にハリウッドの手法で世界市場に通用する映画を作ろうとすれば、表現の自由、思考・思想の自由を求めるように変わっていく可能性もあると、私は思っている。もちろんハリウッド映画がつまらなくなる、という可能性もあるが。

中国がハリウッドを乗っ取るのか。それとも、ハリウッドに引き込まれた中国の映画産業が政治やイデオロギーのくびきから自由になろうとするのか。それは今後、生まれてくるハリウッド映画や中国映画を見てみないことにはわからない。

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『ポピュリズム跋扈の中、日露急接近で世界史は動く 米国が最も恐れる対米独自外交路線に安倍は踏み切れるか』(10/7JBプレス W.C.)、『怒りのプーチンが西側メディアに警告した「第三次世界大戦」開戦の理由』(10/11MONEYVOICE)について

いやはや米ロ関係がここまで悪くなっているとは。第三次世界大戦、しかも核戦争の幕開けになりそうという記事です。日ロの信頼感構築が吹き飛んでしまうような問題でしょう。グローバリズムVSナショナリズムの戦いというふうに馬渕睦夫氏は見ていましたが。MAD(相互確証破壊)の概念は通用しなくなったという事でしょうか?米国のミサイル防衛がロシアの戈の核ミサイルを撃ち落とす危惧があるので、物量作戦で対抗するということです。でも戦争になれば、地球全体が汚染され、いくら核シェルターで暮らしても地上には出られず、生物も生きられず、水も飲めない状況に陥るのでは。ユダヤ人は罪作りです。国際金融資本を牛耳り、原爆を作り、キリストを生んで人類破滅の計画を立てさせるのでは。ユダヤ人の偉業は認めますが、核戦争はゴメンです。日本には米軍基地がありますのでロシアは当然そこに核ミサイルを撃ち込むでしょう。

日本が米ロを仲立ちできれば良いのでしょうが、軍事力(自衛隊は制約を受けているという意味で)を持たない国では両国から相手にされないでしょう。中国もわれ関せずで、漁夫の利を狙っていると思います。でも核戦争が始まれば、中国も生存できなくなります。

10/14宮崎正弘氏のメルマガに「ウィキリークスの暴露でばれたヒラリーの無知  中国が「南シナ海」と言うのなら「太平洋は『アメリカの海』ね」。

ウィキリークスが暴露したヒラリー・クリントンの中国に関して演説内容を読むと、彼女が中国に対して無知と誤解による幻像を抱いていることが明らかになった。  ヒラリーは国務長官辞任後、ウォール街の大手ゴールドマンサックスや、その関連会社、CMEグループなどへでかけて、高額な講演を行っている。そのときの講演録が、こんかい、ウィキリークスの手で暴露されたのだ。  「習近平は胡錦涛より、はるかにマシな政治家よ」と彼女は言い放った。  「胡錦涛がなしえなかった経済改革と社会改革に壮大なビジョンがありそう」。「なによりも彼は短時日で軍を統率して、権力を集中している」。  習近平をほめあげる理由として、「30年前にアイダホ農家に短期だが、ホームスティの経験があり、彼の娘がハーバード大学に留学していることは、発表はないが中国高官はみな知っている。つまりかれらの「中国の夢」って、「アメリカンドリームの中国版」なのよ」。  しからば、中国軍人たちの愛国心とは何かと問われたヒラリーは「人民解放軍の幹部、とりわけ50代、60代の軍人等は周りに親戚や家族や友人が「日本軍に殺された」というわ。中国のナショナリズムって、『反日』なの」。  講演したのは2013年の6月4日(天安門事件記念日に中国を褒める無神経に注目したい)、そして同年10月(日付け不明)と同年11月18日。いずれも習近平が国家主席となって数ヶ月ばかりの頃である。  中国へのあまい評価と幻像を抱いていることがこの演説からも読み取れる。」(以上)

とありました。ヒラリーこそが第三次大戦を齎す大統領候補ではありませんか。同盟国(属国?)をさておいて敵国と深く結びついているヒラリーが大統領にならないことを願っています。

12月の安倍・プーチン会談はそういう意味では「信頼関係構築」が大事になるのでは。

JBプレス記事

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露ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで挨拶を交わす安倍首相(左)とプーチン露大統領(右、2016年9月3日撮影)〔AFPBB News

文中敬称略

9月中旬に行われたロシア下院選挙は、周知の通り与党の圧勝という結果に終わった。50%を切るような投票率の低下に助けられた結果だ、と米紙は書く。だが、米国でも投票率の40%台は珍しくもないから、選挙への無関心についてそう偉そうなことをあまり言えたものでもあるまい。

その選挙直前の週に、日本のメディア関係の方々とモスクワを訪れる機会があり、選挙戦終盤の日本のイメージとは程遠いその街で、ロシアの政治や経済の専門家たちから様々な意見を聴取して回った。

9月初めにヴラジヴォストーク(ウラジオストク)で行われた日露首脳会談からまだ日も浅く、12月のロシア大統領V.プーチンの訪日が公表された後だったから、面談相手への質問は何と言っても日露関係、つまりは領土問題と平和条約交渉に集中する。

当たり前の話とはいえ、4島は多分日本に返還されるよ、などと頼もしいことを言ってくれる相手は皆無。その多くが、「プーチンは資金や投資ではなく、信頼関係を重視する。この信頼関係がなければ話はまとまらない」と強調する。経済支援という1990年代の発想はもはや通用しない、と念も押してくる。

相互信頼構築の皮算用

経済協力にいくら努めても4島が戻ってくるわけではない、となれば、日本で指摘される「ロシアが経済だけを食い逃げする」「いいとこ取りで終わる」という議論がもっともらしく聞こえもする。

しかし、一歩下がって考えれば、彼らがそのつもりなら、最初から「経済と島はバーターではない」などと自ら強調する必要もないはずではないか。

彼らの力点は一様に「信頼関係」に置かれている。「その点に日本は十分な注意を払っていないようだが」として、外交誌編集長でロシア外交のブレーンの1人でもあるF.ルキヤーノフは次のように解説する。

「過去20年以上にわたって(それは日本の責任でもないが)欧米がロシアへの約束を何度か破り、それが理由でロシアは誰も信用できなくなってしまった」

「それを考えれば、重要なのは平和条約締結という形ではなくその実体(相互信頼)に求められる。領土問題に関するプーチンの基本姿勢は『両国間の関係の質的変化を伴わねば、その解決はあり得ない』なのだ」

「それは、ロシアがこれまでに、中国、カザフスタン、エストニア、ノルウェーといった国々とどう領土問題を解決してきたかを見てみれば分かるはずだ。経済関係などを通じて信頼関係が醸成されれば、それが結果的に政治関係の緊張緩和につながっていく」

こうして両国間の相互信頼を強調するところは、ロシア人とこれまで付き合ってきた経験値に照らし合わせると確かにその通りと頷けなくもない。

肝胆相照らす、とまではいかないにしても、気持ちが通じ合える仲にならねば・・・飲んで無防備な泥酔状態に互いに陥る仲にでもならねば・・・仕事なんぞできない、である。

そうなると、これは理屈を超えた情の世界の問題でもあるということになる。互いにトモダチになれるのか? だが、それ以前に多くの日本人は「相互信頼」という言葉そのものに、そしてそれがロシア側から言われ出すことに引っかかってしまうだろう。

2国関係では得てして一方は、常に自分は友好的かつオープンであると自負してそれに何ら疑いを差し挟まず、そうした関係が達成されていないならそれは相手に何か原因があるから、という考えに流れやすい。日本人とてその例外ではない。

だから、「相互信頼」などと言われても、善意の塊のようなこちらにとっては当然至極の話で何をいまさら、と訝しく思い、さらには、ロシアが適当に何かを隠し立てする美辞麗句に過ぎないのでは、と推し量る結果になる。ロシアが相手だけに、有体に言えば「お前だけにはその言葉を吐かれたくはない」だろう。

どうやらロシアに対して、まだ相互信頼を積極的に見出していこうという流れには乗れそうもない。ならば、それがないままならこれから先は? を考えたならどうなるだろうか。

領土問題が平行線たるゆえん

領土問題のこれまでの日露間の議論は平行線をたどるのみであった。割り切ってしまえば、領土問題は元々が議論で片が付くような代物ではない。それは世界史の中で常に戦争を伴ってきた。奪われたら腕ずくででも奪い返すしかない。

だが、それが真実であっても、現実には意味がない議論だ。そのために新たに戦争をこちらからやらかそうと主張したところで、まあ今の日本では正気の沙汰とは扱われない。

ならば、言論の力で島を取り戻せるのだろうか。この点での歴史上の事実認識やその解釈を巡っての日露間の議論は、詳細をいじり出したらきりがないのだが、これまで平行線をたどるだけだったことは皆が認めざるを得ない。

議論とはいうものの、日本ではその根底に「米軍にコテンパンにやられ、倒れる寸前だったヨレヨレの日本に攻め込み、その後の敗戦のどさくさに紛れて他人の土地を分捕っていった奴ら」というロシアに対する思いが流れる。

だが、ロシア側にもそれに対抗する感情や理屈は星の数ほどある。そして、国際世論も、「法と正義」という人類普遍の価値を標榜する日本の主張の下になぜか集まってこない。

その中でロシア人も日本人も、世論調査に答える大多数がこうした相手から出てくる細かい議論や感情、それに第三者のスタンスを知らずに終わっている、というのが実情だろう。言論は、暴力の否定という意味で大変な価値を持つものなのだが、それは必ずしも問題解決の万能薬であることを意味はしないのだ。

ならば、ここでそうした恩讐を超え、思い切って問題に終止符を打つか、互いに歴史への蟠りを抱えながら半永久的に今の状態を続けるか、のいずれかしかない。そして今、首相の安倍晋三はその前者の道を選択したように見える。

恩讐を超える――それは多分に理屈の世界ではない。ロシアの専門家たちはそう言いたいのだろう。どちらがどちらを言い負かすか、の目的を捨てることでもあり、もしプーチンが「引き分け」と述べた際にそこまで思いを致していたとすれば、彼も中々の哲学の持ち主なのかもしれない。

彼らによれば、机上演習で構築された「相手が欲しがるものを与え、こちらが欲しいものを取る」というアプローチは、その中では通用しない。最初から、ギブ・アンド・テイク(Give and take)の構図を見せてしまったのでは、それはロシア人が受け止める「相互信頼」でもなんでもないということになってしまうからだ。

これにも異論はあろう。国際関係では「相互信頼」は外交辞令でしかない。そこら中の国際関係でこの用語は氾濫状態だ。それに、それが情に根差したと言うなら、そんな一時の感情に国の進路を委ねるなど危険極まりないではないか、となる。

英国の政治家がかつて喝破したごとく、永遠の敵も永遠の味方もいない、あるのは永遠の国益だけ、のはずだからだ・・・。

だが、もしロシア人が(そして、実は日本人も)、外交が駆け引き100%の世界でもなく、しょせんは人間と人間との関係であり、最後は情に行き着く「信頼」もその中の価値観の1つとして意味を持つ、と理解するのなら、それを無視することはもはや賢明ではないのかもしれない。

メディアのから騒ぎが領土問題を難しく

昨今、日本では領土交渉関係の記事がメディアを賑わす――2島で終わるのか(世論調査を根拠に、それすら難しかろうと評するロシアの専門家もいるが)、それ以上があるのか。12月までこの状態が続くだろう。それが衆院解散にまで結び付く話となれば尚更の話である。

この状況の中で、日本の外務省高官は日本のメディアに対して、「『国民に説明できる解決策が簡単に見いだされる』と、世論の過大な期待が高まることは望ましくない」と述べている。同じ趣旨を、F.ルキヤーノフも、「政治的に注目されなければそれだけ領土問題は解決が早くなる」と指摘していた。

世論が過熱し、蓋を開けたら皆が仰天し、その挙句に日比谷焼打ち事件勃発、などは政府にとって何としても御免蒙りたいところ。安易なポピュリズムよりは、まだ無関心の方がマシなら、年明けに選挙があってもロシアの下院選並の投票率で収まることをひょっとしたら期待しているのかもしれない。

今回の面談先との対話で日露関係以外のトピックスとなると、シリア問題と米露関係が出てくる。そのいずれもが、日露関係にも影響を与えかねない。

露紙の軍事評論家であるP.フェリエンガウエルによれば、8月下旬のロシア国防省幹部会議で極東大陸部北端からヴラジヴォストークに至る千島列島に沿った防衛線確立政策が承認された。

その目的は、オホーツク海での核兵器安全移動の確保で、この海を外国へ向けて閉ざして完全に支配下に置くことにあるという。

これは冷戦時代の対米防衛思想そのもので、このためには国後・択捉間の海峡のみならず、歯舞・色丹を除いたすべての島嶼海峡が重要になるという。つまりは、「軍事的にもはや歯舞・色丹以外の千島諸島を、一部たりとも外国に渡すわけには行かない」、なのだ。

この米露関係を悪化の一途に追いやるのはウクライナに続くシリア問題であり、これも周知の通りシリア政府軍とロシア空軍がアレッポ奪取に大手を懸け、そうはさせまいと動く米国との関係が冷戦後最悪の状態、と評されるまでになっている。

9月の初めに両国間で一度は和平交渉を成立させたかに見えたが、その直後に起こった米軍のシリア軍への誤爆や(ロシアの一部では誤爆とは信じられていない)、ロシア機の関与が疑われる国連の人道支援車列への空爆事件の発生で、それは頓挫してしまった。

米露双方ともに問題を抱える。レーム・ダックの米大統領、B.オバマの下でペンタゴンは徹底した反露路線を崩さず、何とか話をまとめようとする国務長官、J.ケリーの足を引っ張る。議会も同様、そしてボスのオバマとも方針が一致とはいかず等々で、同長官も、もうやってられない、と弱音の1つも吐く

ロシアとて米国を嗤えない。1年前にシリアへ参戦した際には、遅くとも今年の初め頃までにはアレッポを落してB.アサド政権を何とか維持できる状態に持って行こうとの目算だった

しかし、主役となるべきアサド政権軍が予想以上にだらしなく、そして肝心のアサドが、戦局の転換で気を良くし過ぎて誇大妄想にでも陥ったのか、ロシアの言いなりにはならなくなってしまった。

自らへの反省意識が全くない西側

その昔のアラブ民族主義の時代から、スラヴにアラブはしょせん理解できない、と言われてきた。今回も同じ轍を踏む憂き目に遭いかけている。なぜ性懲りもなく、なのか。

カーネギー・モスクワセンター所長のD.トレーニンは、西側との折り合いが悪くなってしまったために、ロシアが求めた独自の外交戦略の結果が、シリアへの介入とアジア・太平洋地域に向けての東進政策だったと言う。

折り合いが悪くなった理由の、西側に騙されたというロシアの思いについては何度かこのコラムでも触れた。要はソ連末期のM.ゴルバチョフと欧米が交わした合意 - 東にNATO(北大西洋条約機構)勢力を拡大はしない、がその後いとも簡単に破られたことに端を発している。

ロシアにとってみれば、その後のウクライナ問題も、泥沼化した中東問題も、無定見な西側が最初に踏み込んできた、だから防衛するしかない、ということになる。

だが、西側ではこれとは正反対に、先に狼藉を働き始めたのはロシア(と中国)で、だから「危機感を覚えた米英などの軍・情報機関が本気で巻き返しに動き出した・・・」と論じている

どちらが先に悪さをしでかしたのかで、見方は正反対になる。特に西側では自らへの反省意識が零に近い。これでは欧米とロシアの溝はその埋まりようがない。その中で欧米では、ソ連帝国復活を目指し、武力による領土拡張も厭わない「邪悪」なプーチンのイメージが形成されていく。

米の大統領選では、民主党候補のH.クリントンが、そのプーチンを悪の権化と名指して憚らない。ロシアが犯人とされる民主党へのサイバー攻撃がその火に油を注ぐ。外交儀礼などどこへやらのロシアへの罵詈雑言乱発に対し、ロシアの知識層はそこに、ベトナム戦争の時代ですら見られなかった米国の自信喪失、あるいは知的頽廃を垣間見ている(12)。

クリントンが次期大統領なら米露関係は絶望的だ、と多くのロシアの専門家が一致していた。ネオコンの続投を確信するからだろうし、さらにその深層には、今の米国は相手にできるようなまともな状態にはない、という見方が横たわる。

その中で安倍の対露外交は生き残れるのだろうか。そこに問題の本質が現れてくる。問われているのは日露外交と言うよりは、むしろ米国が最も危険視する日本の対米自主外交の可否なのだ。そこに膨張中国を見据えた日本の国家百年の大計を重ね合せなければならない。安倍の心労やいかばかり、である。

最近は、権力欲にまみれきっている「邪悪」なプーチン、と断じて憚らない西側のメデイアですら、実は彼が疲れてきており、再来年の大統領選では次の世代にその座を譲る可能性も、などと書き始めてきている

治世16年で漸く、である。これまでの働きぶりを見れば、疲れない方がおかしい。10倍近くの国力を持つ米国を相手に丁丁発止を演じるなど、誰にでもできることではない。

他国に彼の隠れファン(中国ウォッチャーによれば、習近平もその1人らしい)がいるのも、日本が大国・ロシアを打ち負かした日露戦争に新たな国際時代の幕開けを見ようとした当時の人々の気持ちに似た何かを、彼に感じるからなのかもしれない。

そのプーチンの姿は、彼に14回も会っている安倍の眼や心にはさてどう映っているのだろうか。

MONEYVOICE記事

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第三次大戦が迫っている――ロシアのメディアは去年早くから、こうしたことを自国民に向けアピールしてきましたが、西側が真剣に報じるようになったのはつい最近のことです。(『カレイドスコープのメルマガ』)

※本記事は、『カレイドスコープのメルマガ』 2016年10月6日第176号パート1、10月11日第176号パート2の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。割愛した全文もすぐ読めます。

「もう私は何も言わない、何も期待しない」プーチン怒りの理由とは

開戦前夜

「今は第三次世界大戦前夜である」

数年前から、米国の数多くのオールターナティブ・メディア(企業にスポンサードされていない中立メディア)が、その可能性について指摘してきたことですが、ほんの数ヵ月前からは、いわゆる西側の企業メディアと言われている主流メディアでさえ、それを隠さなくなっています。

英BBCが、独紙フランクフルター・アルゲマイネによって公表されたドイツ内務省の「民間防衛計画書」を取り上げて、ドイツ政府が国民に国家的緊急事態に備えるよう勧告していることを報じたのが今年8月。

それに先駆けて、オバマが5月31日のホワイトハウスの公式ページで「緊急事態に備えて、携帯電話にFEMAアプリをインストールすることを推奨」するだけでなく、同じく、ホワイトハウスの8月31日の公式ページでは、国家の非常事態に対処するため、国民一人一人に備えをしておくよう「国家準備月間 2016」を宣言しました。

さらに、その前の8月2日のホワイトハウスの公式ページでは、「米国で緊急事態が起こったとき、トランプではそれに対処する能力が十分ではない」と、来月に迫った大統領選でトランプを潰すための方便に利用することも忘れていません。 (※第160号「経済崩壊と世界規模の気候大変動と日本版FEMAの創設」、あるいは、第174号パート1「国民に計画的『大艱難』への準備を奨励するホワイトハウス(その1)」にて詳述)

大方は、もはや不可避となっているドイツ銀行の破綻が、リーマンショックを一ケタも上回る経済災害を引き起こすためであって、米欧の経済大国が注意喚起のために、こうした警告を出すに至ったのである、と見ています。

【関連】ヒラリーもトランプも消える、アメリカ大統領選「第3のシナリオ」とは

【関連】ドイツが恐れるテロでも金融危機でもない「第3の脅威」プーチン・リスク

ロシア緊急事態省が核戦争の危機を警告

しかし、その憶測は、9月29日のロシア・トゥディが、ロシア緊急事態省(EMERCOM)の「モスクワの全市民を地下シェルターに避難させる準備がととのった」との声明を報じたことによって、すぐに吹き飛んでしまいました。

そして、翌日の9月30日、今度は英語圏向けに「モスクワは、米国が核兵器使用の準備が済んでいることに留意し、その対応に備えている」と、明確に核戦争の危機が迫っていることを警告したのです。

これは、ロシア・トゥディだけでなく、同日のプラウダでも報じられました。

ロシア・トゥディもプラウダも、ロシア政府にコントロールされたメディアである以上、それらの英語圏向けの記事は、自国民向けの警告とともに、米国民に向けて核戦争の脅威を喧伝する目的も、その一方にあることは言うまでもないことです。

ロシア国民に向けて、(英語のように)バイアスのかかっていないロシア語で正確に伝えているロシアのメディアによれば、その内容は次のとおりです。

米国・ロシア間の核戦争は一触即発の危機

ロシア緊急事態省(EMERCOM)のNo.2であるアンドレイ・ミスチェンコ(Andrei Mishchenko)は、「民間防衛体制の新しいアプローチとして、核攻撃その他の非常事態が生じた場合に備えて、モスクワの都市人口の100%を保護することができる地下避難施設の準備を完了した」と述べた。

ロシア政府は、民間防衛体制を強化するために、制御および緊急警報システムを近代化するための法的枠組みを更新した。

さらに、ミスチェンコは、「われわれロシア緊急事態省は、民間防衛体制の分野において、市民の訓練システムの改善に取り組んでいる」と付け加えている。

ロシア情報技術・通信省、ロシア財務省、ロシア産業貿易省、ロシア連邦準備制度理事会、そしてロシア銀行は、ロシア軍の突然の立ち入り検査にも応じている。

これらの政府関連部門は、戦争の可能性に備えながら、戦時モードで各々のシステムの試験に取り組んでいる。

(ワシントンの権力者たちにとって都合の悪いニュースの暴露に専念している)ワシントン・フリー・ビーコン(Washington Free Beacon)は、ロシアが、突然、巨大燃料庫の建設を始めた、という米情報筋のソースを引用して記事にしている。

公表された情報によれば、このような掩蔽壕(えんたいごう)はロシアの国中に多数建設されているということである。

専門家は、これらの建造物は、予期される事態に対応するための統合化自動コマンドとロシアのミサイル戦力の第五世代コントロール・システムに関係していると指摘している。

それだけでなく、ロシアの民間防衛体制と緊急事態対応の組織に強い権限と責任を持っている部門によれば、この特別プログラムは2015年にモスクワでスタートしたということである。

その特別プログラムの範囲内で、空爆避難所と放射性降下物退避所がロシアの首都のあらゆる地区で建造され、あるいは再開されている。

2年前、ロシアは、モスクワへの核攻撃を阻止して、徹底的な報復攻撃を加えるために実戦的な演習を行った。

伝えられることろによれば、その実戦演習では、プーチン大統領は「核のスーツケース」を使用したということである。

2015年に、ロシアとアメリカ双方の将軍は、米国とロシアの間の核戦争は一触即発の危機にあると初めて述べた。

「モスクワ市民を含む大多数のロシア国民は、彼ら住人にもっとも近い空爆避難所の場所を知っているわけではないが、それにもかかわらず、避難所のリストは存在している。 避難所は、現在、人災によって引き起こされる非常事態、あるいは核攻撃に晒される数日間をやり過ごすことができるように維持されている」とロシア緊急事態省は述べている。

ロシアのメディアは、去年早くから、こうしたことを自国民に向けてアピールしてきましたが、西側の企業メディアが真剣に報じるようになったのは、つい最近のことです。

去年の暮、秘密結社のローマ法王フランシスコの言ったことを思い出してください。 「今年は、人類にとって最後のクリスマスになりそうだ」。

クリスチャンは、こんなことを言う聖職者が悪魔憑きであることが、どうして分からないのでしょう。

プーチン「怒りのスピーチ」

米ロの核戦争が現実味を帯びてきたのは、ロシア第二の都市、サンクトペテルブルクで6月16~17日の2日間にわたって開かれた国際経済フォーラムからです。プーチンが数ヵ国の報道機関の代表を招いて行ったスピーチで話したことが衝撃となっています。

その模様は、クレムリンの公式ホームページにアップロードされている動画によって確認することができます。

幸運にも、ここには、そのフル・スピーチが翻訳字幕付きでアップされています。 元の動画はコチラ。全世界で実に274万6千回も視聴されています。

プーチンは、集まった報道機関の代表者たちに、「私がこれから言うことを、あなた方が正確に報道するなどと期待してなどいない。しかし、私たちは大人である。大人としての対応を各人がすればいいことである」と、毎度、事実をゆがめて報道する西側メディアを牽制しながらも、率直に迫りつつある世界的危機について語りました。

おそらく、この10分間のプーチンのスピーチも、いつものように、西側メディアの多くは封印しようとするでしょう。

国境なきハザール・マフィアの国際金融資本と、彼らの世界支配のツールであるCIAにコントロールされた西側メディアによって洗脳されている西側世界のすべての人々が、このスピーチの中味を理解できるかどうかに、地球の運命がかかっています。

しかし、この動画の翻訳がところどころ間違っているため、予備知識や免疫のない人々には誤解を与えかねません。

以下は、スピーチの重要ポイントを抜き出して補足を加えながらも簡潔に要約した正確な内容となります。

この70年は、東西(米ソ)の核戦力が微妙なバランスを保つことによって第三次世界大戦は回避されてきました。

この二つの超核大国は、攻撃目的の戦略的核弾頭ミサイルの製造を停止しました。

理由は単純で、どちらか一方の軍事力が潜在的に支配的になったとき、核弾頭ミサイルの発射スイッチを押したくなるものだからです。

米ソ両国は、1972年5月に「戦略弾道ミサイルを迎撃するミサイル・システムの開発、配備を厳しく制限するABC条約」を締結しました。

本土から、あるいは、核弾頭ミサイルの搭載が可能な原子力潜水艦などから発射された核弾頭を搭載してミサイルを、迎撃ミサイルによって撃ち落とせば、両陣営の核抑止力が機能しなくなってしまうからです。

たとえると、同じ剣を持った同じ能力の戦士のどちらか一方が、決して突き破られない強固な盾を持って戦った場合、常識的には、その盾を持った戦士が戦いに勝利することになります。

その盾を制限することによって、互いに核による先制攻撃を思いとどまらせることこそが核抑止力になる、という考え方からABC条約が生まれたのです。

しかし、大陸間弾道ミサイルの製造停止は、世界的世論によって受け入れられたものの、戦争で利益を上げたいと画策している米・軍産複合体にとっては致命的なダメージとなったのです。

そこで、ブッシュ米大統領は、ABM条約から脱退する旨を露骨に表明して2002年6月13日に同条約から正式脱退したのです。

これによって、両核大国の軍事バランスは不透明になって、強い盾を持った一方が戦いに勝つことになってしまうのです。

そのため、ABM条約の正式脱退によって足枷を解かれた米・軍産複合体は、企業メディアを使いながら一方で(北朝鮮などを使いながら)核の脅威を実態以上に煽って弾道ミサイルの迎撃システムの市場を開拓していったのです。

私は(プーチンは)、ブッシュら、ネオコンの策動に気が付いていたので、ロシアは、核戦力を増大させることによって東西の核抑止力を取り戻そうとしたのです。

それは、事前に私(プーチン)から米側の支配者に通達されており、米支配者側も私(プーチン)の考えを受け入れたのです。

なぜなら、その当時、ロシアは経済的に疲弊しており、米支配者側も、ロシアが旧ソ連時代以上の核戦力を取り戻すことなど想像だにしなかったからです。

しかし、それは達成されたのです。

今では、ロシアの軍事力は、米国のそれ以上にハイテク化され、米国の戦力を凌駕するまでに巨大かつ強力になりました。

しかし、それは、今まで、約束を守らず世界に嘘ばかりついてきた米国の軍産複合体とネオコンに対する警戒心から、そうせざるを得なかったことであって、ロシアが米国に対して先制的に戦争を挑むつもりなど毛頭ない、ということだけは言明しておきたいと思います。

しかし、問題は、米国と米国の同盟国が配備しているミサイル迎撃システムの対ミサイルの種類です。

外形的にはトマホークなどの小型攻撃用ミサイルの形をしていても、小型の高性能核弾頭を搭載しているかどうかを知ることはできないからです。

それは、たった数時間で取り付け可能です。艦船の上での作業によって、急きょ、核弾頭ミサイルに造り替えることができるのです。

ワシントンのホワイトハウスにいる総司令官は、「非核から核へ」のたった一言で、すべてのことを済ませることができます。

また、私(プーチン)が米国側のパートナーと話をしたとき、米国は核弾頭抜きの弾道ミサイルを開発したいという意向を持っていることを知りました。

米国本土から、あるいは、原子力潜水艦が深く静かに潜航してロシアの領土に近づき、そこから弾道ミサイルを発射した場合、ロシアは、その瞬間、それが核弾頭を搭載した弾道ミサイルであると断定してしまうでしょう。

そのことによって、ロシアは自国防衛と、地球を核汚染でダメにしてしまう前に、それを止めるために大陸間弾道ミサイルを米国本土に向けて応酬するでしょう。

これは、ネオコンによる罠であって、運よく人類が生き残った場合、ロシアを核の狂人であると責め立てるためのプロパガンダに使うでしょう。

このプーチンのスピーチのテーブルについている西側メディアの報道機関の代表と言われている人々の表情を見てください。

彼らのうち、一人二人は気が付いたような表情をしていますが、大半の代表は、理解できないようです。

私たちは、こうした人々が毎日、送り出している捏造情報を鵜呑みにしながら、一歩一歩、第三次世界大戦に向かっているのです。

「それが何をたらすのか分かっているのか!」プーチンの真意とは

さて、ここで重要なことを思い出してください。

ロシア首脳陣による半ば非公式の公開討論会で、プーチンが、ISISが米国と、その同盟国によってつくられたことを正式に暴露した直後に、ロシアの戦闘爆撃機がシリアのISISをターゲットとして、果敢な空爆を行ったことを。

それまで、ロシアはシリアに対して援軍を送りませんでした。

しかし、主権国家であるシリアのアサド大統領からの正式な要請を受けて、プーチンのロシア軍は、ISISの掃討と同時に、米国とNATOが資金援助と武器を提供しているシリア反政府軍をターゲットとして本格的な反転功勢に出たのです。

結果、オバマの米軍が、それまで数万回もの空爆を繰り返しても、大した打撃を与えることができなかったISISを、たった2週間で、ほぼ殲滅させることに成功したのです。

その後、ISISの残党は、姿を変えて東に分散・移動し、東南アジアでテロを引き起こしたり、アメリカのワシントンの手引きによって米国本土に潜入していることは既報のとおりです。

プーチンは、今度のメディアに対するスピーチで、このように言いました。

「私たちは、全員、大人です。もう、私はあなた方には何も言わないし、何も期待しない」

恐らく彼は、最後に、こう言いたかったはずです。「それが何をたらすのか、分かっているのか」と。

前回同様、プーチンのロシアは、100%勝てることを確信した上で、こうした発言をするのです。これから何が起こるのか、それは自明です。

プーチンが西側メディアを集めて、彼らに説教するときは、常に戦闘体制に入った後のことであることを忘れてはならないのです。

一方のホワイトハウスも、間違いなく、第三次世界大戦の準備をととのえ終わったようです。

企業メディアでさえ、オバマ政権と彼の背後にいるグローバリストの戦争アジェンダを隠そうとしなくなりました。

200年以上も国際金融資本の寡頭勢力による新世界秩序と闘ってきたプーチンのロシアは、ロシアが米国によって攻撃されようとしていることを確信をもって感じ取ったからこそ、ロシアが防御モードに入ることを「国家主権に基づく措置である」と 国際社会に訴えるようになったのです。

西側のメディアによって、その声がかき消されてしまうことを知りながら。

米ロの直接対決は、米国の敗北を意味します。そして、グローバリストによる米国の破壊計画は、何十年も前から用意周到に練られてきたのです。

核弾頭17,000発分のプルトニウムを備蓄

定評のあるサバイバル・サイト「デイジー・ルーサー(Daisy Luther)」は、最近、ソースを明記した上で「ロシアとの戦いが切迫している8つの警告に値する兆候」という見出しの「まとめ記事」をアップしました。

それによると、「ロシアは、プルトニウムを備蓄している」ということです。

米・国務省は、ロシアが備蓄しているプルトニウムの総トン数は、17,000発の核弾頭を製造するのに十分な量となっていることを点に注目しているとのこと。

同時に、ロシアは、シリアへの米国の侵略を想定したミサイル防衛システムを展開していることを正式に発表しました。

これは、ロシアがヒラリーの勝利を前提として、彼女がシリアでの飛行禁止空域の設定を強行に進めようとすることを想定してのことであると思われます。

世界の人々は、米国の同盟国であるアラブ連合が、カダフィーを打倒するために国連に働きかけてリビアに飛行禁止空域を設定したことを忘れてはいないでしょう。

グローバリストの一民間組織に過ぎない国連のこの横暴な措置によって、NATOによるリビア侵略は国際世論の承認を得たことにされてしまったのです。

飛行禁止空域が解かれたのは、カダフィーが殺害された後のことでした。リビアのカダフィーというアフリカの盟主を失った北アフリカは、その後、アルカイダとISISの餌食になったことは周知されていることです。

プーチンのロシアは、シリアで再び、それが繰り返されることに危機感を募らせているのです。

ワシントンのプロパガンダ・メディアとして有名なFOXニュースは、ロシア外務省が、最近以下のような大変気がかりな声明を出したことを報じています。

「われわれは、ワシントンがシリアの首都、ダマスカスの政権をなんとしてでも交代させようと、悪魔と取引する準備ができていることを確信をもって言うことができる」と、ロシア外務相は述べました。

「シリアのアサド大統領を追い出す目的のために、米国は、歴史の道筋を引き戻そうとするかのように、非情なテロリストと同盟を組み、テロリストたちを再び放とうとしている」とつけ加えて…

FOXニュース自体が、米国のワシントンが、アルカイダ、そして、ISISと連携してロシアの同盟国を倒そうとしていることを報じているのです。

FOXニュースは、ロシア外相の声明を借りて、いったい何を言っているのでしょう。少なくとも、アルカイダはワシントンが創り出した、と言っているのです。

米国務省は、ロシア国内でテロ攻撃を実行に移そうとしている?

さすがのFOXニュースでさえ、第三次世界大戦が濃厚になって来たので、これを阻止しようとワシントンの暴露に動き始めた?

違います。事態は、もっと深刻です。

グローバル・リサーチに多数の記事を寄稿していることで知られているカート・ニモー(Kurt Nimmo)は、先週、そのグローバル・リサーチに、「米国は、まもなくテロリストがロシアの都市を攻撃するであろうとロシアに通達した。なんと、そのテロリストは米国と同盟関係を結んでいる」という記事を書き上げました。

国務省のスポークスマン、ジョン・カービーは、「シリアの急進的なサラフィスト(Salafist)のテロリストがロシアの都市を明日にでも攻撃するかもしれない」と、先週の水曜日にロシアに警告しました。

「過激派グループは、彼らの活動を拡大するためにシリアにある空白地帯を食いつくし続けている。それは、ロシアの利害に対する攻撃をも含んでいる。おそらく、ロシアの都市でさえも。

結果、ロシアは、ロシア兵を遺体袋に入れてシリアから帰還させることになるだろう。 そして、ロシアは、重要な戦力、そう航空爆撃機さえ失い続けるだろう」とジョン・カービーは言います。

シリアの領土に入り込んでいる「過激派グループ」は、米国とその同盟国である湾岸の首長国のパートナーよって支援されているので、カービーのこのコメントは、米・国務省がロシアを恫喝していると解釈する以外にないのです。

ワシントンとオバマの背後にいるグローバリストは、今まで彼らのアジェンダを必死に隠してきましたが、主権国家であるシリアにまったく事実に反する難癖をつけ、その同盟国のロシアまでテロによって脅迫するようになったことは、事実上、米国のグローバリストは、シリアとロシアに対して宣戦布告したことになるのです。

ワシントンと、グローバリストの操り人形であるオバマ、そして、すでに死んでいようが、影武者であろうが、その後釜に据えられようとしているヒラリー・クリントンが、明確にロシアのプーチン打倒を言い出したということなのです。戦いの準備はできています――

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『日本の将来に禍根を残す中国人へのビザ緩和 フィリピン人、ブラジル人とは全く異なる彼らの行動様式を直視せよ』(10/7JBプレス 森清勇)について

日本は外国に対して、本当に危機感の無い国だというのが分かります。反日教育をしている中国・韓国に対して自由に日本に入れるようヴィザ緩和し、かつ研修生名目や農業に対する外国人門戸開放とかセキュリテイに対する配慮が全然なされません。外国に暮らしたことが無い人間が政策を決めているのか、外国の侵略の手先として動いているのかが分かりませんけど。

タイのブミポン国王の容体が悪いようで、ここでもネパールと同じことが起こりうるかも知れません。タクシン(華僑の末裔)が中共の思惑通り動いていた可能性はあります。崩御後はタクシン・インラックVS国王派の戦いになるのかも。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161012/k10010726511000.html

中国は国防動員法ができてからは、国外にいる中国人に忠誠を誓わせることはおろか、中国国内の外資企業にも徴用を誓わせています。流石、一党独裁・共産主義国です。軍事独裁と言ってもいいでしょう。こんな国が日本を軍事国家呼ばわりし、それに手もなく乗せられてしまう多くの日本人がいることが残念です。平和ボケもいい加減に止めないと、と思うのですが、年寄りは刷り込まれたことがなかなか変えられません。小生のように中国に駐在し、中国人の腹黒さを目の当たりに見れば違うと思うのですが。世代交代しないと治らないのでしょう。昭和天皇は敗戦後「日本を立て直すのに300年かかる」と仰いましたが、そんな悠長なことは言っていられません。中国の毒牙にしてやられてしまいます。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%98%B2%E5%8B%95%E5%93%A1%E6%B3%95

日本で買った不動産は戦争状態になれば資産接収すれば良いと思います。その代り、中国にある日本企業の資産(不動産は所有権を持たず、使用権のみ)は没収されるでしょうけど。早く撤退した方が良いでしょう。日本の経営者は先見の明がないですね。ただ、日本にいる中国人は送還するでしょうが、中国に居る日本人は人質にされる可能性が高いでしょう。ITが発達したこの時代にそんなことはできないと日本人は思いがちですが、中国人にとって都合の悪いことは隠し通すのが彼らの性癖ですから。また帰化した中国系日本人も大陸に親戚をのこしていますので監視が必要です。勿論石平氏のように日本人以上に日本人の方もいますので、総てではなく不断の言動で判断すべきです。

記事

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都内で日中韓外相会談を行った岸田外相(中)、中国の王毅外相(左)、韓国の尹炳世外相(右、2016年8月24日撮影)〔AFPBB News

始皇帝は日出る蓬莱島に不老長寿の仙薬を求めて徐福を遣わした。今日は共産党指導部が中国系資本で瑞穂の国にやって来て、水などを求めて山林などを買い漁っている。

活用されていない離島や、人手も足りず買い手もなくて困っていた土地や山林所有者にとっては、有り難い上客、それが中国系資本である。

買い漁られている土地や山林は、個々には何の関連もなさそうであるが、近々100年の中国の動きに照らして眺めると、後日内乱を誘発するための行動拠点であり、また下流域の住民の死活を制する水源など、国家挙げての戦略が隠されていると見るべきであろう。

対日工作文書が中日文化交流協会などに対し、「純然たる奉仕に終始し、いささかも政治工作、思想工作、宣伝工作、組織工作を行ってはならない」と念を押していた手法そのものである。

土地や山林の買収も、「買ってやる」恩義を感じさせる私人や企業の営業的意志もさることながら、スパイなども暗躍する国家意思によるところが大きいと見なければならない。

農業や企業が受け入れる技能実習や留学生に対しても、日本人は純粋に技能の習得・伝授や向学心の視点からしか見ないだろうが、中国の場合は、共産党や在日中国大使館の指令下で、日本革命を目指していると見なければならない。

日本とも交流の深いタイ王国であるが、2001年のタクシン政権発足を発端に、「体制を揺るがすほどの深刻な政治的混乱が絶えない」。「中国がタイ王国の内乱への関与を認めるわけがないが、タイの王制を揺るがす混乱は、どう見ても中国の影が濃厚」であり、「タイ工作の最終目標がもし万一、タイの王制を廃絶することにあるならことは重大」で、「これはわが国にとっても他人事ではない」(関岡英之『中国を拒否できない日本』)のである。

水の枯渇で砂漠化する中国

日本人がODA(政府開発援助)で中国において植林支援を行っているが、中国人自身が植林の必要性を理解し、日本の植樹祭のように国家プロジェクトとして努力しなければ何の効果もない。

余計なお世話だろうが、人民解放軍(200万人)だけでなく、予備兵力(50万人余)、武警(70万人弱)、民兵(800万人)などを動員すれば、かなりの植林ができよう。

これまでの中国(人)は植林以上に伐採するので、国土全体としてはどんどん山林面積が少なくなり砂漠化・乾燥化してきた。その揚げ句、水資源を外国に求め、あるいは、下流に恩恵に与るべき水源を抑えて、自国の欲求のみを満たそうという姑息が目立つ。

かつて杜甫は自国を「城春にして草木深し」と詠んだが、今では中国の森林率は21.9%(日本は68.52%、世界平均は30.3%)でしかない。

森林が遍在しているとされる四川省でも1950年代は3年に1度の旱魃が、70年代には10年間に8回も起き、近年はほぼ毎年起きていると報じられる。

千湖の省と言われた湖北省には、建国時(1946年)は正しく1066湖あったが、81年には309湖に減ってしまったという。近年の報道では洞庭湖の5分の3は干拓され、鄱陽湖も半分が干拓され、湖底は年々3メートルも上昇して消失が懸念されている。

中国政府は河南の揚子江から大運河で北部に水を流す「南水北調」の大プロジェクトを進めているが、上述のように南部自体が枯渇しつつある。

インドシナ半島のタイ、カンボジア、ラオス、ベトナムを潤すメコン川、および南アジアのインド、バングラデシュを流れるブラマプトラ川にダムを造ってせき止め、下流の国々から問題提起されている。

日本の水源が狙われても不思議ではない。人里離れた北海道や和歌山県の山奥の買収は、水源確保の目的があるに違いない。メコン川などの事例からは、途中でせき止められ、根こそぎ持って行かれるかもしれない。

そうなると、下流に生きる村々や田畑が荒廃し、あるいは寒村・廃村の憂き目に遭うこと必定ではないだろうか。

日本では水源は下流に住む皆を潤す共同の恵みであり、決して独占したりはしない。しかし、中国人は違う。ウイグルで中国が行ったこと、またチベットに源流を持つメコン川やブラマプトラ川で行っていることからは、下流域に枯渇をもたらしても、自分たちが独占する意識しかない。

チベットやウイグルの二の舞?

フランスで起きたテロを契機にして、中国はテロ撲滅で国際協力をすることを口実に、自治区や少数民族の監視を強化していると報道されている。

2016年1月来日したチベット亡命政府のロブサン・センゲ首相は、近年、生体認証機能のあるIDカードの所持をチベット人に義務づけ、「中国当局が移動を厳しく管理して、政治活動を制限している」(「産経新聞」平成28.1.10)との認識を示している。

また、チベット高原の気温が世界平均の2~3倍のペースで上昇し、氷河消失が加速しており、「アジアの水源が深刻な危機に瀕している」と語り、原因は「中国政府によるインフラ整備や資源開発、人口流入」などであるという。

チベットは先述のメコン川とブラマプトラ川の水源である。中国がチベットを手放すはずがないとみられる大きな要因でもあろう。

中華人民共和国が成立して2年後に、中国は人民解放軍を進駐させる。その5年後に自治区準備委員会を発足させ、武力鎮圧を進めている。

中華人民共和国が成立する年に、東トルキスタン(現在の新疆ウイグル自治区)共和国政府の首脳陣が飛行機事故で死亡する。時を移さず人民解放軍が進駐し、共産党の実効支配がスタートする。

その5年後、進駐していた「西北野戦軍第一兵団」の退役軍人を中心に屯田軍事組織「新疆生産建設兵団」を発足させ、主要都市と主な水源地に配置する。

平時は役所や企業に勤務し、また農場を経営するが、いったん有事になると武器を取り、ウイグル人を鎮圧する予備役の大集団である。

南モンゴルでは1936年、毛沢東がモンゴル独自の国家・政府を樹立することを支持表明し、チンギス・ハーンの後裔である徳王の蒙古軍政府が、中華人民共和国成立後もやや距離を置いた状態で形を変えながら存続する。

しかし、1966年に徳王が死去すると、中国政府と中国人主導のモンゴル人ジェノサイドを開始する。69年、北京軍区が「内モンゴル生産兵団」を成立させ、草原開拓を推進し、環境破壊が進む。その半年後、モンゴル自治区は軍事管理下に置かれた。

研修生らはトロイの木馬?

「朝日新聞」(2010.4.26)に、中国の雲南省大理自治州から日本へ来る研修生(現在は特定活動と一体で技能実習というが、そのまま使用する)のルポがある。発展する中国沿岸部からの研修生は減る一方であるが、就職難の内陸部からの若者は増えているという。

研修生を求めて徳島県からやって来た農家の主人は、研修生約20人の中から最も好感を持った19歳の女性を選ぶ。山奥で暮らしているので足腰は強く、真面目な両親の娘だからしっかりしている、とべた褒めである。

派遣会社が労働者を海外派遣すると、国、省、地元州、それぞれの政府から会社に報奨金が出るという。社長は雲南省(人口約4500万人)からの派遣は始まったばかりで、研修生になる可能性がある人材は200万人おり、10~20年は続くとみている。

韓国や中東にも研修生を出すが日本の待遇が一番良いそうで、2003年に開業して以来、静岡や千葉などに約300人の研修生を派遣しているという。

このように、日本は農業や企業で中国の若者を研修生として受け入れ、労働力であると共に日本の理解者になってくれると単純に考えている。

しかし、こうした若者たちは中国共産党指導部の愛国心高揚策から、反日教育を受け、30万~40万人の市民を南京で大虐殺した、あるいは20万人の慰安婦を性奴隷にした悪徳な犯罪国家・日本というイメージを焼きつけられている。

個人個人は国家を感じさせる行動は取らないかもしれないが、北京オリンピック時の長野トーチ・リレーや福島原発事故で見せた集団行動のように、一朝ことがあるときは、日本に弊害をもたらしかねない若者でもある。

日本は農業や製造業で働く研修生を2008年は約10万2000人受け入れ、うち約7割の6万9000人が中国人であった。しかし、リーマン・ショックや福島原発事故が起きた時など、入国者が急減したり、一斉に引き上げたりするので日本は著しい影響を受けてきた。

ここ数年の中国人技能実習は4万人前後であるが、行方不明者が2012年度(1532人x0.7)1072人、13年度(2822人×0.7)1975人、14年度(3139人×0.7)2197人くらい出ているとみられる。

派遣会社社長は「日本に行けば、どんなに辛くてもやめられない。雇い主に服従する労働者の本分をしっかり理解させる」と強調し、出国前に3~4か月の合宿を行い、自己を厳しく律する訓練をするという。

礼儀作法や日本語も教えるが、合間には人民解放軍から派遣された教官の指導で、迷彩服を着て軍事訓練も受けている。

一地方の報道でしかないが、関岡英之氏は派遣事業が国策化し、軍事訓練までも受けていることから、「事実上、屯田兵すなわち『日本生産建設兵団』の要員の募集、養成、派兵制度ではないか」と訝り、「かつて東トルキスタンで起きたこと、そして王政が廃絶されたネパールや、王政が危殆に瀕するタイ王国で起きていることを思い起こせば、いくら警戒してもし過ぎることはない」と忠告する(『中国を拒否できない日本』)。

国防動員法公布直後の状況

2010年2月26日に国防動員法が成立し、7月1日に施行された。その間の3月1日には海島保護法を施行し、退役艦艇を漁業監視船に改造して無人島周辺の巡視を始めている。

この前後から、日本での山林等の買い漁りが目立つようになったと言われる。国防動員法公布後の中国の動きをざっと見ると以下の通りである。

4月8日:艦載ヘリコプターが海上自衛隊護衛艦に異常接近 4月10日:艦艇10隻が沖縄本島と宮古島間の公海を通過、潜水艦も浮上して示威行動 4月12日:鳩山由紀夫首相、ワシントンでの日中首脳会談で抗議せず 4月21日:艦載ヘリ、海自護衛艦を2周旋回して挑発行為をする 5月3日:海洋局監視船、奄美大島沖のEEZ内で海保の測量船に作業中止を要求して、4時間にわたり追跡

5月中旬:中国各地の外資系企業で賃上げ要求スト(広東省仏山のホンダ部品工場が皮切り) 7月1日:国防動員法施行、日本がビザを中流層まで緩和 9月7日:領海12カイリ内で操業中の中国漁船が、海保の巡視船に追突

このように、海自の護衛艦に示威・挑発行動を取り、領海侵入を警告する海保の巡視船に対して追突する行動に出たのである。

日本が船長を逮捕・拘留すると、事前に計画していたと思われるように、次から次に圧力をかけてきた。米国高官は「中国は日本を試した」と言ったそうである。

中国は国防動員法を補強する国防交通法を来年から施行する。「特殊な状況」と認定すれば、在中国日本企業の輸送手段も軍事目的に供出させられることになる。

おわりに

中国人へのビザはめまぐるしく緩和されてきた。ひとえに観光などで日本に来てもらいたいからである。しかし、富裕層が買い物でカネを落とすならばともかく、中流層の来日ではカネを落とすどころか、数次ビザを利用して、就職や永住権獲得目的で来日する者が増えていることが判明している。

来たる10月17日からは、商用目的や文化・知識人対象の数次ビザの有効期限が現行の5年から10年に延長される。同時に、学生らの個人観光ビザも申請手続きが簡略化される。只々入国者数の増加、3000万人目標を目指すビザの緩和である。

純粋に観光客などの増大に寄与するならば、取り立てて問題視することはない。

しかし、韓国人やフィリピン、ブラジル人などと違い、中国人の行動様式は全く異なり、日本の共産化を目指す中国共産党の意図が陰に陽に働いており、日本社会の安全・安定にかかわる大問題である。

中国大使館(東京)や名古屋・新潟総領事館の敷地が異常に広大であるばかりでなく、相互的である公館敷地は賃貸が基本であるが、中国に限って購入・所有している。

中国公館のある主要都市や、北海道や和歌山、その他全国にまたがる中国系資本で買い占めた山林の水源地を抑え、そうしたところに退役軍人や人民軍の教育・訓練を受けた技能実習や留学生、あるいは多数の行方不明者などが、「日本生産建設兵団」として活動すれば、ウイグルや内モンゴル、さらにはチベットの二の舞となること必定ではないだろうか。

まししてや、国防動員法の施行によって、平戦結合、軍民結合が可能になったときでもあり、内政・外交共に困難に直面しつつあるように思われる隣国である。

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『苦境の習主席、頻繁な軍視察の深い意味』(10/12日経)、『逮捕3回、服役23年「元・大富豪」の波乱万丈 3度目の釈放、75歳でなお捲土重来を期す』(10/7日経ビジネスオンライン 北村豊)について

10/10産経ニュースでは瀋陽軍区+北朝鮮VS習近平の構図で捉えています。中国が分裂した方が戦争は起こりにくいと思いますので、分裂に賛成ですが、中国の持つ債務や南シナ海の基地はどうなるのでしょうか?

http://www.sankei.com/premium/news/161010/prm1610100010-n1.html

また、北京の国防部前で元軍人がデモを行いました。軍規の乱れ、習近平に対する反感の表れと思います。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20161012/k10010726471000.html

日経記事は、習近平は未だ軍権を確立していないという記事です。ですから冒険主義で臨む確率も高くなります。鄧小平が中越戦争を越したように、習近平も東シナ海か南シナ海で戦争を起こすかもしれません。油断大敵です。

北村氏記事は中国人のバイタリテイを垣間見せる記事です。政治と結びつかなければ、大きなビジネスができないのが中国です。でも足を引っ張る輩は必ずいて、落とし穴に嵌まる場合も多く、場合によっては命まで奪われてしまいます。それだけ生存競争が激しいという事です。大多数の日本人はこれが理解できません。賄賂を贈る方も受ける方も命懸けです。日本では社会的に非難される行為ですが、中国は社会にビルトインされている行為です。悪徳の栄える国に生まれなくて良かったとつくづく思います。

日経記事

最近、中国国家主席の習近平が、人民解放軍の視察を繰り返している。かなりの頻度だ。そこには今、習が置かれた厳しい環境も絡んでいる。

まず8月29日。習は、新設した「戦略支援部隊」の視察に訪れた。これは、杭州で開いた20カ国・地域(G20)首脳会議に出席するため北京を離れた9月3日の前だった。

戦略支援部隊は旧来の戦闘部隊ではなく、「未来の軍」といわれる。中国紙、環球時報のインターネット版などによると、戦略支援部隊は3つの部門で構成される。

(1)ハッキングに備えるインターネット軍=サイバー戦部隊

(2)偵察衛星や中国独自の衛星ナビゲーションシステム「北斗」を管轄する宇宙戦部隊

(3)敵のレーダーシステム・通信をかく乱する電子戦部隊

これらはすべて、南シナ海などで対峙する米国や、中国周辺部の局地戦において、きわめて需要な役割を果たすとみられる。

■戦略支援部隊、ロケット軍など次々

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新設した「戦略支援部隊」を視察し、幹部一人一人と握手する習近平国家主席(8月29日、国営中国中央テレビの映像から)

そして9月13日。習は中央軍事委員会の下に新設した「聯勤保障部隊」の設立大会に出席した。この組織と関係が深い旧総後勤部は伝統ある陸軍4総部の1つだったが、汚職の巣窟でもあった。すでに谷俊山・前副部長が断罪されている。

総後勤部は、習が推し進めた軍再編で後勤保障部に改編。その核心を担うのが聯勤保障部隊とされる。総合的に全軍を後方支援する兵站(へいたん)部門で、食糧供給や戦闘員の確保・投入のほか、軍事衛星・通信衛星と連動する衛星ナビゲーションシステム「北斗」の運用にも関わるという。

さらに9月26日。新設した「ロケット軍」を視察した。これは大陸間弾道弾を含む戦略・戦術ミサイル部隊だった「第2砲兵」を格上げし、陸海空の3軍と同格にしたものだ。ロケット軍は、近代戦の主役であるばかりではなく、戦略支援部隊と同じように宇宙戦の核心を担う。

10月11日。人民解放軍機関紙、解放軍報は1面で、前日に北京で全軍の重要会議が開かれたと報じた。「全軍大組織・軍事委員会機関各部門共産党委員会書記の専門会議」と称するものだ。習自身は出席しなかったが、軍事委主席として習が批准した会議であると、あえて冒頭で説明した。

会議のテーマは、前中央軍事委員会副主席で断罪された郭伯雄、徐才厚(故人)らが軍内に浸透させた腐敗という「毒」の流れを断つという、おどろおどろしいものだった。

■軍の足場固めの重要性認識

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習主席は軍再編で「ロケット軍」を新設した(2015年9月3日、北京の軍事パレードに登場した弾道ミサイル「東風21D」)

なぜ、こうも頻繁に習の軍視察や、習が指示した軍の会議があるのか。かつて毛沢東は「政権は銃口から生まれる」と説いた。苦しい場面で軍を視察し、みずからのバックに軍が控えているとアピールするのは、毛沢東以来のセオリーに沿った行動である。

習は、清華大学を出た後、国防相だった耿飆(こうひょう)の秘書として中央軍事委員会で働いた経験を持つ。“青年時代から軍歴がある”というのが、習の自慢だ。その自信もあってか、苦しい局面で、あえて軍を訪問してきた。

今年は、軍トップとして軍の一大再編も指揮した。しかも肝煎りの戦略支援部隊、ロケット軍などは、中国の将来の安全保障を担う核になる。習は、それを一気に作り上げた功績を掲げ、難局を乗り切り、来年の共産党大会に臨みたい。

これだけの仕事をしたのだから、本来、すでに足場は固まったはずだった。しかし、この中国で軍を完全に掌握するのはそう簡単ではない。なにせ無期懲役に追い込んだ郭伯雄、周永康(前最高指導部メンバー)の元部下や関係者は、なお軍や武装警察の組織内に潜んでいる。彼らは表向き習の命令を聞いたふりをしつつ抵抗している。

それだけではない。習の「反腐敗」で身動きが取りにくくなった官僚組織そのものが、裏であらがっている。その一端が、図らずも露呈した事件があった。

■抵抗の実相、赤裸々に語る学者ら

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無期懲役になった陸軍のボス、郭伯雄・前中央軍事委副主席(2012年11月の共産党大会で)

この夏から秋にかけて、著名な中国の国際政治学者が内部向けに語った講演内容が大きな話題になった。それは彼の専門領域の話ではなく、内政に関して指摘した部分だった。

「習近平は柔らかい抵抗にあっている」――。こう題した文章は、講演録を基に別の人物が書いて、中国の公式なインターネットサイト上に流布された。きわめて刺激的な内容だった。習がトップに就いた2012年から14年まで、苛烈な「反腐敗」運動の目新しさから大衆人気も盛り上がった。官僚らも文句を抱えながらも、従うしかなかった。

だが、15年に一変したという。「反腐敗」をはじめとする習の指示は、実際上無視された。聞くふりをして誰も聞いていない。そして誰も仕事をしないので、経済もどんどんおかしくなっている。こんな内容だ。それを「柔らかい抵抗」と表現している。門外漢の国際政治学者が赤裸々に述べただけに、迫真のルポのような面白さがある。

しかし、その内容は数時間以内に中国のインターネット、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)監視当局によって削除されてしまった。中国内の一般庶民に苦しい習を取り巻く実態が流布されてはまずい、との判断だった。講演内容はいくつかのサイト上で繰り返し流れたが、その都度削除されている。いたちごっこだ。

この2、3年、習はずっと胸突き八丁のつらい坂を上ってきたつもりだろう。そして「反腐敗」、軍再編など力業の結果、ようやく苦しい局面から抜けられるかと思っていたら、そうは問屋が卸さなかった。目の前に再び高い壁が現れたのだ。

動かぬ官僚、不透明な経済、口うるさい長老たち……。17年党大会の最高指導部人事に向けて、まだまだ楽はできない。習の頻繁な軍視察は、政治情勢の厳しさを認識する彼の危機感の表れだろう。

習は今後の権力闘争を優位に進めるためにも、軍の後ろ盾を必要としている。とすれば、どうしても中国の対外政策、安全保障戦略は強硬に傾きがちになる。この点にも注意を払う必要がある。(敬称略)

北村記事

湖北省の“洪山監獄”は省都“武漢市”に属する“江夏区”の“廟山開発区”にある。9月27日朝6時15分、洪山監獄の正門脇に1台のワゴン車が横付けされた。車から降り立った1人の中年女性が正門脇の守衛所で入構の手続きを行った。入構許可を取得した女性が車に戻ると、守衛によって電動で開閉する正門の柵が開けられ、車は監獄の構内へ走り去った。それから35分後の6時50分頃、正門の柵が開けられて女性の運転する車が出て来たが、車の助手席には16年の刑期を終えて釈放された“牟其中(むきちゅう)”の姿があった。

かつての大富豪、詐欺罪で懲役18年

牟其中とはどのような人物なのか。筆者が牟其中という名を初めて知ったのは2006年頃で、まだ現役で東京都中央区勝どきに所在する商社に勤めている時だった。当時、中国へ送る書類がある時は会社が所在するビル群の中に事務所を構えるFedEx(フェデックス)社の国際宅配便を利用することが多かった。ある時、送付する書類があるとFedEx社の事務所に連絡を入れた所、送付する書類を受け取りに来たのがFedEx社の事務所長である中国人のX氏であった。X氏は業務の関係で我が社の入館証を持っていたようで、その後は我が社の社員食堂で何度も顔を合わせるようになり親しくなった。

ある時、X氏が国際宅配便で送る書類を受け取りに来社したのに、書類がまだ整っておらず、10分程待ってもらう必要があった。その待ち時間を筆者はX氏と会議室で雑談したのだが、その時にX氏の前歴を聞いたところ、彼から出たのが日本へ来る前は牟其中の秘書だったという話だった。当時は牟其中などという人物を知らなかった筆者は、「牟其中っていうのは誰」とX氏に質問したが、X氏から出た言葉は「中国の大富豪だったが、詐欺罪で懲役18年の刑を受けて、今は刑務所に収容されている」とのことだった。この時、X氏はそれ以上のことを話したくなさそうだったし、筆者も己の無知を恥じて、詳しいことは聞かなかった。X氏が帰ってから慌てて牟其中について調べてみると、後述するように驚くべき人物であることが判明したのだった。

X氏がそんな異色の人物の秘書だったと知って、牟其中について詳しい話を聞こうと思っていた矢先、X氏が勝どきにある超高層マンションの自宅から飛び降り自殺して亡くなったという訃報を聞いた。X氏はFedExの輸送機で毎週金曜日の夜に上海へ行き、日曜日に東京へ戻る日程で、中国国内でも個人的にビジネスを行っていたようだから金回りは良かったと思うが、見るからに精力的であり、人懐こく笑顔の絶えないX氏に一体何が起こったのか。筆者にはX氏の死が信じられなかった。牟其中が刑期満了で釈放されたというニュースを知って、筆者はすでに死後10年になろうとするX氏を思い出したのだった。X氏には筆者の中国人の友人が中国政府“国家安全部”により国家機密漏洩の容疑で逮捕された時にも、FedExの国際宅配便で“国家安全部長”宛に日本の友人が作成した嘆願状を届けるのにも尽力してもらった。

それはさておき、牟其中とはどのような人物なのか。牟其中は1941年6月19日に四川省重慶市“万県”(現在の重慶市万州区)に生まれたから、現在の年齢は75歳である。小学校時代の牟其中は非常に活発な生徒で、ある教師は牟其中を評して、もし彼が大言壮語する性格を改めることができれば、将来必ず出世するだろうと述べたという。若い頃の牟其中の夢は将来新聞記者になることだったが、1959年に受験した“高考(全国統一大学入試)”に不合格となったことで大きな挫折を味わった。その後も何とか大学に合格しようと湖南省や新疆ウイグル自治区にまで足を伸ばしたが、結局大学生にはなれずに故郷の万県へ戻った。

政治活動で死刑判決、釈放後に投機商売で拘留

万県で牟其中は最初の仕事につき、地元のガラス工場でボイラー工になった。しかし、牟其中は他の工員たちとは異なって政治に情熱を燃やし、マルクス・レーニンや毛沢東の著作を読み漁り、法律や哲学の書物まで目を通し、いつの間にかガラス工場内で最もマルクス・レーニンや哲学に精通した人物となった。1974年の春、すでに万県の青年たちの中で信望を集めていた牟其中は、情熱の赴くままに気心の知れた仲間と『中国は何処へ向かうのか』と題する文章を書くと同時に個人で2編の過激な文章を書いて世間に発表し、大いに宣伝を行った。ところが、こうした行為が社会に混乱を招くとして問題になり、牟其中は逮捕されて監獄に収監され、死刑に処せられることが内定した。幸運にも死刑は執行されず、4年4か月を獄中で過ごした牟其中は1979年12月31日に釈放された。

釈放されたが無職となった牟其中は、1982年4月に借金して賄った300元(当時のレートで約4万円)を元手に“万県中徳商店”(以下「中徳商店」)を開業した。当時の万県では、商品の販売に“三包(返品・交換・修理の保証)”の習慣は無かったが、牟其中は中徳商店の顧客に“三包”を導入し、都市部の顧客には3日以内、農村部の顧客には7日以内の商品交換に応じるなどして商売を発展させ、1年目で8万元(当時のレートで約1050万円)もの驚異的な利益を上げた。これは牟其中が商売で天賦の才を発揮する契機となった。1983年初旬に牟其中は、重慶市の兵器工場から超安値で買い取った銅製の鐘を上海市の多数の商店に相当の高値で売りさばき、驚くほどの暴利を得た。その後も同様な手口で投機的な商売を行って金儲けに専念した。

1983年9月17日、牟其中は投機商売を行った罪で拘留されて取調べを受けた。ところが、留置所の中で牟其中は突然に政治への情熱を復活させ、拘留11日目に中国共産党への『入党申請書』を書き上げると、大胆にも当時の総書記“胡耀邦”宛てに発送した。また、『中国の特色ある社会主義と我々の歴史的使命を論ずる』と題する文書を書いて、胡耀邦総書記に宛てて発送した。これらの文書が四川省“成都市”から北京市の“中国共産党中央委員会”へ届き、関係部門が注目したことで、1984年初旬に牟其中は11か月間の拘留を経て釈放された。

1984年9月18日、牟其中は慌ただしく「中徳商店営業再開懇談会」を招集して、中徳商店から“中徳実業開発総公司”(以下「中徳実業」)への格上げを決定すると、速やかに営業許可を取り付け、正式に営業を開始した。牟其中はたゆまぬ努力の末に、“重慶市農業銀行”から創業資金として250万元(当時のレートで約2.6億円)を借り受けることに成功した。この250万元は後に大きな成功を収める牟其中にとって実質的な起業資金になった。しかし、この1980年代初頭の時期に、重慶市農業銀行が大したカネも無い牟其中に250万元もの大金をどうして貸し出したのかは大きな謎だが、恐らく何らかの政治的意図があったものと思われる。

ソ連のジェット旅客機、仲介に成功

中徳実業が本格的に動き出すと、牟其中は1984年の年末までに、観光資源開発の“小三峡旅游資源開発公司”を皮切りに、“中徳服装工業公司”、“中徳竹編工芸廠”、“中徳造船廠”など10社以上の会社を設立した。1985年には中徳実業の本社を故郷の万県から重慶市の中心にある“中華路”に移し、企業名も“南徳集団”に変更して本格的に国内および国際貿易に取り組むことになった。

1989年のある日、牟其中は北京市で竹・籐編製品の販売促進を行うために万県から北京行きの列車に乗った。牟其中は車中で知り合った1人の河南省出身の男ととりとめのないほら話に興じていたが、その男の口から耳寄りな話を聞いた。それは、解体の危機に直面しているソビエト連邦(以下「ソ連」)が3発ジェット旅客機Tu-154(ツボレフ154)を売りたがっているが、買い手が見つからないということだった。男と話すうちに牟其中の飛行機取引への興味は掻き立てられ、北京市へ到着すると竹・籐編製品の販売はそっちのけにして、ツボレフ154の買い手探しに奔走した。飛行機の知識が皆無な牟其中は、手当たり次第に買い手になりそうな相手を訪ねて打診していたが、そのうちに1988年の開業を予定する“四川航空公司”が国産のプロペラ機である“運‐7(Y-7)”と“運‐12(Y-12)”に替えて大型飛行機の購入を計画していることを知った。

すぐさま四川航空公司に連絡を入れた牟其中は、押っ取り刀で四川省成都市にある四川航空公司の本社を訪ねてツボレフ154に対する興味を打診すると、先方は渡りに船の話に大乗り気であった。当時ツボレフ154の販売価格は1機当たり5000~6000万元(当時のレートで約18.4~22億円)であるのに対して、米国のボーイングなら2~3億元(当時のレートで約73.4~110億円)したから、ツボレフは格安だった。四川航空公司は速やかに中国政府“国家計画委員会”の承認を取得し、“中国民用航空総局(略称:民航総局)”の同意を取り付けると、牟其中にツボレフ154を4機買い付けるよう正式に依頼した。

それからが牟其中の面目躍如たるところで、山東省、河北省、四川省など7省の300か所以上の工場から売れ残っていた軽工業品(シーツ、靴下、皮コートなど)や食品(缶詰など)を買い集めて貨車500両以上に乗せてソ連側へ供給し、その交換として4機のツボレフ154の引き渡しを受けることに成功した。この取引によって牟其中は8000万元(当時のレートで約29.4億円)から1億元(同約36.7億円)の利益を上げた。

1995年2月に米誌「フォーブス(Forbes)」が発表した「1994年版世界富豪番付」で、牟其中は番付入りした中国の民営企業家17人中の第4位にランクされ、富豪の仲間入りを果たした。当時の牟其中の個人資産は20億元(当時のレートで約226億円)を上回っていた。一方、南徳集団は1994年にロシアと投資協定を結び、BS放送用の直接放送衛星である「航向1号」をロシアのバイコヌール宇宙基地から発射して軌道に乗せることに成功し、1995年11月には「航向2号」の発射にも成功した。衛星発射には莫大な費用がかかるが、1995年から始まった中国政府による経済の緊急引締め政策は南徳集団の経営に大きな打撃を与えた。

オーストラリア企業との訴訟の末に

こうした金詰まりの中で南徳集団に資金提供を申し出たのがオーストラリア企業“澳華集団(Austway Group)”駐華代表の“何君”だった。何君の資金提供を受けて南徳集団は「航向3号」の打ち上げることができた。しかし、何君が資金提供をする条件には、澳華集団が担保を提供し、中国国内の輸入権を持つ企業(湖北省軽工業進出口公司)が銀行(中国銀行湖北支店)から香港の某企業宛ての「ユーザンス付信用状(Usance L/C)」を開設し、香港で某企業が現金を受領した上で、資金を南徳集団に貸与する形式をとることが含まれていた。これが後に中国銀行湖北支店が湖北省軽工業進出口公司や南徳集団などに対して信用状立替金および担保の返還を求める民事訴訟に発展した。

民事訴訟が進むうちに、南徳集団および牟其中が信用状詐欺を行った容疑が固まり、1999年2月8日に牟其中は“武漢市公安局”によって逮捕された。同年11月から審議が始まった南徳集団および牟其中などによる信用状詐欺事件の裁判は、翌2000年の5月30日に一審判決が下り、牟其中は信用状詐欺罪により無期懲役並びに政治的権利の終身剥奪が言い渡された。牟其中は判決を不服として控訴したが、2000年8月22日に“湖北省高級人民法院(高等裁判所)”は一審判決を維持する公訴棄却の判決を下し、牟其中の無期懲役が確定した。2000年9月1日、牟其中は武漢市第二看守所から市内の洪山監獄へ移送され、囚人として収監された。

2003年の秋に牟其中の無期懲役は懲役18年に減刑されたが、刑務所内の規則を守り、服役態度も良好であることからさらに減刑されて、収監から16年後の2016年9月27日に牟其中は刑期満了により釈放された。

長くなったが、以上が牟其中の人物紹介である。まさに波乱万丈の人生と言えるが、現在75歳の牟其中は合計3回の拘留・服役で23年間を社会から隔離されて過ごした。一時はフォーブス誌によって中国国内で第4位の富豪にランクされた牟其中だったが、監獄から出所した彼には資産と呼べるものは何もないだろう。

刑期を終え、なお再起に意欲

9月27日に洪山監獄へ車で乗り付けて釈放された牟其中を出迎えたのは、牟其中の妻の妹であり、彼の唯一の指定代理人である“夏宗偉”であった。27日の午前中に夏宗偉はメディアに対して「南徳集団理事会の牟其中氏刑期満了釈放に関する声明」を発表したが、その最後に記載されていた南徳集団理事会の署名欄には夏宗偉の名が明記されていた。

さて、その声明に記されていた内容の概要は以下の通り。

【1】信用状詐欺事件は偽造された証拠に基づき判決が出されたものであり、再審を要求する。牟其中は再審における必勝を確信している。

【2】再審に勝訴したら、南徳集団は直ちに「南徳試験(Ⅱ)」をスタートさせる。それは知恵を中心とする生産方式で、資本を中心とする生産方式に比べて全ての面で生産効率が高い。それを幅広い範囲で実践して証明し、全世界の新しい企業に普及させる。

【3】牟其中氏はすでに数えで76歳だが、健康にはまだ問題がない。最近、彼は「人生すでに齢(よわい)百歳を超えても、再び少年のように奮い立つ感情を持つのを妨げるものはない」という詩を作った。これは宋の詩人“蘇東坡(本名:“蘇軾”)”の詩『江城子・密州出猟』にある「老人である自分にしばし少年の奮い立つ感情を発揮させよ」という一節に相通じるものがあり、牟其中氏は精神的に若く、まだ老いてはいない。

【4】かつての南徳集団は廃墟と化し、何も残っていないが、我々は必ず“東山再起(失脚から再起する)”を果たし、南徳集団を再建してみせる。

壮年時の牟其中は、身長182cm、体重75kgの頑健な体躯で、押しが強く、怖いもの知らずであったと思われるが、満75歳の今となっては南徳集団を再興することは難しいだろう。しかし、中国に牟其中という波乱万丈な人生を送った人物がいたことは歴史の一コマに刻まれることだろう。天国にいるX氏も牟其中が刑期満了で釈放されたことを喜んでいるに違いない。最後に衷心よりX氏の冥福を祈ります。

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『米軍と共同FONOPに乗り出しても時すでに遅し 南沙諸島の中国基地群の存在を前提とした戦略が必要』(10/6JBプレス 北村淳)について

北村淳氏は「穏当なFONOPは手遅れだから、日本も米軍と南シナ海で共同作戦を取ることは意味がない」と考えているようですが、そんなことはないでしょう。尖閣防衛には大きな意味があります。一緒に行動すれば、尖閣防衛の共同作戦も展開でき、大きな抑止力となると思います。自分の都合だけ考えて行動するだけでは信用されません。

況してや「穏当なFONOP」であれば、無害通航権の行使だけで中国にとっては痛くもかゆくもないとのこと。しかしよく考えますと「穏当なFONOP」というのは南シナ海を公海ではなく中国の海に認めたようなものではありませんか。公海であれば準軍事行動を取っても(ヘリの発艦等)おかしくありません。オバマはそれでもなかなか認めないというのはおかしい。足元を見られているし、腹違いの兄弟が中国でビジネスしている影響があるのかもしれませんが。民主党は中国の金塗れで腐っているのでは。

http://ameblo.jp/chanu01/entry-12012480407.html

無害通航を言うので、頻繁に中国軍艦が日本領海内を通過するようになりました。日本政府は国際法上認められていると言って傍観しないで、敵が無害航行を主張するのであれば、今の黄海での米韓合同演習に参加すべきでは(これは公海上ですが)。まあ、韓国が嫌がるでしょうけど。相手は法の抜け穴を利用したり、都合の良い所をつまみ食いしたり、こズルイ行動を取ります。孫子以来の伝統です。国際仲裁裁判所の判決を「紙屑」と言う国です。都合が悪い部分はそう言って無視するでしょう。中国人の本性です。日本はもっと相手の嫌がることをせねば、やられ放しになります。石垣島にTHHADを配備したらどうでしょうか。

http://www.sankei.com/politics/news/160615/plt1606150068-n1.html

記事

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南シナ海スプラトリー諸島のミスチーフ礁(2015年5月11日撮影、資料写真)。(c)AFP/RITCHIE B. TONGO〔AFPBB News

9月中旬に訪米した稲田朋美防衛大臣が、中国による覇権主義的な南シナ海進出に関して、「アメリカが南シナ海で実施している『公海航行自由原則維持のための作戦(FONOP)』を支持する」旨を明言した。そのためアメリカ軍関係者などの間では、日本がアメリカとともにFONOPを実施するものと理解されている。一国の大臣が明言した以上、アメリカ側の反応は当然であろう。

これを受けて中国側は、日本がアメリカに追従して南シナ海での中国の活動に介入することに対して不快感を露わにしている。先週も中国国防当局は、「日本がアメリカと共同パトロールや共同訓練などを中国の管理する海域で実施するということは、まさに火遊びに手を出すようなものだ。中国軍が座視することはあり得ない」と強い口調で日本に“警告”を発した。

オバマ政権が渋々認めた中途半端なFONOP

だが、当のオバマ政権は中国に対して腰が引けた状態が続いており、FONOPの実施すらもなかなか認めようとはしていない。

アメリカ軍関係者の中でも対中強硬派の戦略家たちは、数年前から南シナ海でのFONOPを実施すべき旨を主張していた。2014年春には、南沙諸島のいくつかの環礁(ジョンソンサウス礁、ガベン礁、クアテロン礁)で中国が埋め立て工事を開始したことがフィリピン政府などによって確認されたため、中国側をある程度威嚇する程度のFONOPを実施すべきであるとの声が上がった。しかし、オバマ政権に対しては暖簾に腕押しであった。

そして、2014年6月になると、ファイアリークロス礁で、埋め立てというよりは人工島が建設される計画が進められていることが明らかになった(本コラム、2014年6月26日「着々と進む人工島の建設、いよいよ南シナ海を手に入れる中国」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41041)。当然、アメリカ国防当局や連邦議会などの対中強硬派の人々から、軍事的色彩の強い強硬なFONOPの早期実施の声は強まった。だが、オバマ政権によるゴーサインはなかなか発せらず、ファイアリークロス礁、ジョンソンサウス礁、ガベン礁、そしてクアテロン礁で人工島の建設が進められていった。

2015年の3月には、それらの4つの環礁に加えてヒューズ礁とミスチーフ礁でも人工島建設が進められていることが確認された。そして、埋め立て拡張工事の規模の大きさから、本コラムなどでも人工島には3000メートル級滑走路が建設されるに違いないと予測した(2015年3月12日「人工島建設で南シナ海は中国の庭に」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43161)。

当然のことながら、アメリカ軍当局の対中強硬派の人々による“強硬なFONOP”実施の要求はますます強まった。それでもアメリカ政府は軍事力を使った対中牽制を許可しようとはしなかった。

そして2015年夏には、上記の6つの環礁にスービ礁を加えた7つの環礁での人工島建設が急ピッチで進んでいることが確認された。それだけではなく、ファイアリークロス礁、スービ礁、ミスチーフ礁には3000メートル級滑走路の建設が始められていることも明らかになった(本コラム、2015年9月24日「人工島に軍用滑走路出現、南シナ海が中国の手中に」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44833)。滑走路だけでなく、7つの人工島にはそれぞれ港湾施設が整備されつつある状況も航空写真に映し出された。

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南沙諸島の軍事バランス  この段階に至って、7つの人工島が3つの本格的滑走路を備えた海洋基地群となりつつあることが、誰の目にも明らかになった。さすがに対中牽制に極度に慎重であったオバマ政権といえども、しぶしぶ米海軍太平洋艦隊に南シナ海でのFONOPを許可せざるをえなくなった。

だがオバマ政権がアメリカ海軍に許可したFONOPは、かねてより対中強硬派が希求していた“強硬なFONOP”ではなく、ごくごく穏健な形式的FONOPであった。

すなわち「米海軍駆逐艦と米海軍哨戒機が中国が中国領と主張している島嶼や人工島の周辺12海里内領域を速やかに、かつ直線的に通航する」ことによって、「国際法で認められた『公海航行自由原則』を中国は尊重すべきである」ことを暗に要求する作戦である。

この“穏当なFONOP”は、2015年10月(人工島の1つ、スービ礁沿岸12海里内海域)、2016年1月(西沙諸島のトリトン島沿岸12海里内海域)、2016年5月(人工島の1つ、ファイアリークロス礁沿岸12海里内海域)の3回実施された。そして5月以降、4カ月以上たっても第4回目のFONOPは実施されていない。

(関連記事) ・本コラム2015年11月5日「遅すぎた米国『FON作戦』がもたらした副作用」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45163 ・本コラム2016年2月4日「それでも日本はアメリカべったりなのか?」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/45947 ・本コラム2016年5月19日「米軍の南シナ海航行で中国がますます優位になる理由」http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46862

メッセージにすらなっていない米国のFONOP

アメリカ側の考えでは、人工島やトリトン島などは中国が軍事的に実効支配をしているものの領有権紛争中の島々であり領有権が確定していない以上、その周辺海域は中国の領海ではなく公海である。したがって、公海をアメリカ軍艦が航行すること(その上空をアメリカ軍機が飛行すること)に対して、中国が異を唱えることは許されない。このような論理に基づいて、オバマ政権は、太平洋艦隊に軍艦と軍用機による“穏当なFONOP”を認めたのである。

しかしながら“穏当なFONOP”では、それらの島々に対して強固な実効支配体制を固めている中国にとっては、なんらの影響を与えることにはならなかった。なぜなら、トリトン島や人工島が中国の主張通り中国領だとしても、中国の領海内を軍艦が両国に対して軍事的脅威を与えない状態で通航することは、「無害通航権の行使」として国際法的に認められているからである。

オバマ政権が許可した“穏当なFONOP”は、まさに「無害通航権の行使の範囲内での軍艦による通過」そのもののため、FONOP実施海域が公海であろうが中国領海であろうが、いかなる軍艦にとっても合法な行為なのだ。

もしアメリカ側が「FONOP実施海域は公海である」ということを示したかったならば、“強硬なFONOP”を実施するしかなかった。つまり、12海里内海域で何らかの軍事的行動(たとえば艦載ヘリコプターを発進させる)を実施することによりアメリカの強い姿勢を見せつけなければ、中国に対する牽制には全くならないのである。このような行為は、公海上ならば問題はないが、他国領海内では無害通航権から逸脱した軍事行動そのものだからだ。

しかしながら、国際法的には「無害通航権の行使」にすぎない“穏当なFONOP”に対して、中国側は軍事的脅威を受けたとの姿勢を打ち出して、それを口実に、ますます南沙人工島や西沙諸島の“防衛措置”を強固にしつつある。

抜本的な戦略転換が必要

要するに、アメリカ側が実施したきわめて中途半端な形の“穏当なFONOP”は、単に「アメリカは中国に抗議している」というだけであり、“何もしないよりは少しはマシ”程度の状態なのである。そのような穏当なFONOPに日本が参加しても、南シナ海情勢を(日本にとって)好転させることにはなり得ない。

もっとも、日米共同でFONOPを実施することを契機として、かねてより対中強硬派が唱えている“強硬なFONOP”に切り替えれば、これまでとは違って強い対中姿勢を示すことになることは間違いない。

しかし、すでに7つの人工島がほぼ完成し、3つの3000メートル級滑走路も誕生した現在、いくら“強硬なFONOP”を実施したところで、中国が人工島を更地に戻す可能性は(中国が戦争により軍事的に撃破される以外は)ゼロと考えねばなるまい。

もちろん、アメリカも日本も、フィリピンなど南シナ海沿岸諸国も、中国との戦争などを望む国は存在しない。ということは、「アメリカに追随して共同FONOPを実施する」などという段階はもはや過ぎ去っており、中国の人工島軍事基地群の存在を大前提として南シナ海戦略を構築しなければならない段階に突入してしまっているということを認識しなければならない。

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『風前のTPP、米衰退映す』(10/9日経 FT)、『対中戦略で重要なTPPに反対』(10/8週刊ダイヤモンド 櫻井よしこ)について

日本の保守層はTPPに反対している人が多いですが、中国への経済的封じ込め政策と言うのが分かれば賛成に転じるのでは思います。しかし、オバマの政策をヒラリーが覆すとは、流石何でもありの政治家です。野心の為には節を折ることも厭はない、或は元々節なんて始めからなかったのかも。

Andy Chang氏の記事によると「米司法部が武器商人の訴訟を放棄

Fox NewsのCatherine Herridge とPamela Browne両記者が発表した10月5日の記事によると4日火曜日、米司法部は武器商人Marc Turi氏に対する告訴を放棄したと発表した。

この告訴は2012年に起きたベンガジ事件、スティーブンス大使ほか3名がリビアのベンガジ市においてアル・カイーダの攻撃にあって殺害された事件との関連で、オバマ大統領とヒラリー国務長官が深く関わっていた事件である。あと34日で11月8日の総選挙投票があり、この告訴がヒラリーとトランプの得票に大きな影響を及ぼすため告訴を取り下げたのである。

スティーブンス大使は2012年9月、リビアのトリポリ市からベンガジに赴いたが、この際に護衛を一人しかつけていなかった。ベンガジでテロ攻撃に逢った彼らに対しオバマとヒラリーはホワイトハウスで刻々と変わる状況を聞きながら救援を派遣しなかった。このため4名が死亡した事件である。

オバマとヒラリーはこの事件を反イスラムのビデオのせいで暴動が起きたとウソの発表をしたが、ヒラリーは事件直後に彼女の娘に事件がアルカイーダのテロ攻撃だったとメールしていた。オバマは事件後二週間たっても反イスラムビデオのために起きた暴動とウソを言いまくっていた。

その後の国会喚問でもヒラリーはスティーブンス大使を派遣した理由を述べず、重要人物を派遣してなぜ護衛を付けなかったのかという質問に答えていない。

オバマとヒラリーの嘘に拘らず今ではベンガジ事件はアルカイーダの攻撃だったとわかっている。しかもアルカイーダはアメリカの武器を使っていたのだ。アメリカは中東の独裁政権の反乱分子に極秘で武器を提供したが、この武器の大半が反米テロの手に入っていたのだ。オバマ政権、つまりオバマやヒラリーはこの失敗をMarc Turi氏の武器商人の責任として起訴したのである。

アラブの春と呼ばれる、2010年のチュニジア革命から中東各地に広がった暴動、革命運動などがリビア、エジプトの独裁者を打倒し、動乱がカタールやアラブ酋長国、イラクや現在のシリア革命などに及んだ6年来の中東動乱でアメリカは革命分子に極秘で武器を提供していたという。アメリカは数多い武器商人の名前を使って武器提供をしたが、実は国務院とCIAが影の主体であったという。

Turi氏によると、オバマは2011年に秘密の武器提供計画を許可し、カタールとアラブ酋長国がこれに加わった。つまりアメリカは革命軍に武器を提供するため、多くの武器商人の名を使って武器を「カタールに販売した形で」リビアに搬入したという。

Turi氏によると彼は実際に武器を扱っていない。それらは国務院に直属した政治と軍事局(Bureau of Political and Military Affairs)が 主体で、責任者はクリントン長官の直属部下Andrew Shapiroだったという。

だがTuri氏は、国務院のオペレーションが恐ろしく杜撰でリビアに到達した武器は「半分はあちら側、半分は向こう側に行ってしまった」と言う。

  • ベンガジ事件

Turi氏と彼のアドバイサー、Robert Strykによると、国務省はクリントンの失策を隠蔽するため彼を起訴したのであるという。クリントンの失策が2012年9月11日のベンガジ事件を引き起こし、スティーブンス大使など4名が殺害されたのだ。

事件が起きたのが2012年9月11日であるが、オバマは11月の総選挙でロムニーと争っていたので、ベンガジの大使殺害事件を反アラブのビデオのせいにしたが、すぐに嘘がばれて、攻撃はAl QaedaとAnsar al-Shariaの過激分子だったことが判明した。

Turi氏は2014年に武器輸出制限法違反と国務院の要員に虚偽の報告をした廉で起訴された。検察官はTuri氏が武器をカタールとアラブ酋長国に輸出すると虚の申告をしたという。だがTuri氏の弁護士によると武器輸出は政府が認可したリビアの反乱軍を援助するためだったという。

  • 秘密の武器輸出はオバマの政策だった

National Defense University のCelina Realuyo教授によれば、外部の武器商人を使って反乱分子に武器を提供することはオバマの政策の一部だったという。このためヒラリー国務長官時代には武器商人のライセンス許可が急激に増大した。Fox Newsの記事によると2011年に武器商人ライセンスの取得者が86000人で、武器輸出は前年の100億ドルから443億ドルに上がったという。

Fox Newsの記事によると2011年4月11日のヒラリーのメモにはFYI. The idea of using private security experts to arm the opposition should be considered,(参考までに;プライベートな専門家を使って反乱軍に武器を提供する事を考慮に入れるべきである)”と書いてあったという。

Turi氏は2011年5月に武器をカタールに輸出する許可を得た。ところが同年7月になったら武装した連邦警察がアリゾナの彼の住宅を急襲したという。つまり彼はベンガジ事件の生け贄にされたのだと言う。実際に起訴されたのは三年後の2014年であった。

ベンガジ事件が起きた後、2013年1月の国会喚問でPaul Ryan議員からベンガジの武器の行方について質問されたヒラリーは、「私は質問に関した情報は持っていませんが、どんな情報があるか探してみます」と答えたそうである。反乱軍に武器を提供するには外部の武器商人を使えとメモを書いた張本人のヒラリーが国会喚問で情報を持っていないとウソをついたのである。

オバマが反乱分子に武器を提供する許可を出した。ヒラリーは武器商人の名を借りて武器を輸出した。実際には国務省とCIAが関わっていた。計画が失敗して武器商人の責任にしたのであった。」(以上)

とありました。報道したのはやはり保守派のFOXだけと思われます。日本以上に左翼メデイアが多いと言われている米国ですから。「戦争嫌い」で有名なオバマが裏で戦争の種を撒いていたという事です。嘘つきヒラリーだけでなく、嘘つきオバマということで。日本の反日民進党の党首も嘘つきですが、やはり米国の二人と比べると「頭が悪い」印象は否めません。ヒラリーもオバマも弁護士上りで、三百代言ですから、嘘をつくことを何とも思っていないのかも。FOX記事がトランプ支持に回るようになれば良いのですが。

日本もRCEPなどに加盟するのでは「中国の経済的封じ込め」ができなくなります。日本が中心となり、シンガポールや他の参加国と協定を批准していって米国を急き立てるようにすれば良いでしょう。10/10日経朝刊に「パリ協定批准「見誤った」 官邸主導の盲点」という記事が載りましたが、官邸でなく外務省の無能が災いしたと思います。パリ協定は、参院では与野党とも賛成なので、今月下旬には衆院より先に通過、ただ衆院ではTPP法案に野党は反対するのでパリ協定は審議入りが遅れる可能性があるとのこと。パリ協定は外務省の失態でしょうが、批准は時間の問題です。それ程大きな問題ではありませんが、日経の書き方だと官邸が悪と思わせる内容です。メデイアに刷り込まれないようにしませんと。

http://www3.nhk.or.jp/news/imasaratpp/article15.html

FT記事

今後、米国の国力が衰退していく様子について歴史が書かれるとき、環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る大失敗はどう描かれるだろうか。丸1章を割くには値しないかもしれないが、間違いなく脚注よりは大きな紙幅を占めることになるだろう。

■大衆民主主義、危うさを示す

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ラストベルトではTPP反対の声が強い(写真はペンシルベニア州フィラデルフィアで開かれた7月の民主党全国大会)=米紙ワシントンポスト提供・ゲッティ共同  TPPは太平洋地域12カ国が大筋合意した貿易協定で、参加国の合計人口は約8億人と、欧州連合(EU)単一市場の人口(約5億人)より6割多く、国際貿易に占めるシェアは40%に上る。また、TPPはアジアや世界における米国の指導力を示す最も重要な試金石の一つにもなった。

だが、残念ながら米大統領選挙の主要候補2人はどちらの方がTPPにより強く反対しているか競い合っており、オバマ大統領もTPP発効に必要な承認を議会から得られる見通しが全く立っていないため、TPPが米国によって批准される可能性は急速に薄れている。もし批准されなければ、中国がアジア地域の覇権国として米国に取って代わろうと積極的に動いている時だけに、米国の失態による影響はアジア全域におよぶだろう。

中国は太平洋国家にして世界最大の財の貿易国であるにもかかわらず、TPPからはあからさまに外された。そのため中国政府からすれば、TPPが今にも崩壊しそうなことは不思議に思えるかもしれないが、喜ばしいに違いない。

TPPが頓挫しかねない状況に陥っている事実は、大衆民主主義の危うさを表す最新の事例ともいえる。つまり、国家は国益にからむ問題を、無関心で内容を十分に知ろうとしない大衆の手に決して委ねてはならないことを立証している。最近でいえば、英国が国民投票でEU離脱を決めたこともその一例だ。

鉄鋼や石炭、自動車などの主要産業が衰退してしまった「ラストベルト」と呼ばれる激戦州(編集注、米国の中西部から北東部のミシガン州、オハイオ州、ウィスコンシン州、ペンシルベニア州などを指す)の少数の有権者がこれほど明白な形で国益を害するのを許す米国とは一体どんな超大国なのか――。中国の指導者たちは間違いなくこう首をかしげているだろう。

■オバマ政権が矛盾した説明

問題の一端は、オバマ政権が発する矛盾したメッセージにある。TPPは非公式には「中国以外ならどの国でも歓迎されるクラブ」「経済版の北大西洋条約機構(NATO)」と説明されてきた。しかし、公の場では米国は、TPPが中国を封じ込める策の一環であることを必死に否定している。このためオバマ政権は国内では、TPPを単なる自由貿易協定の一つとして売り込まざるを得なくなった。多くの国民が自由貿易協定への疑念を高めている時に、だ。

オバマ氏がTPPの背景にある本当の狙いを明かしかけたのは、2015年1月だった。それはまさにTPPについて米国民を説得できたかもしれない瞬間だった。「中国は世界で最も成長の速い地域のルールを作りたがっている」とオバマ氏は語った。「そうなれば米国の労働者と企業が不利な立場に立たされることになる。そんなことを我々は許せるだろうか。そうしたルールは我々が作るべきだ」と。

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来年1月の任期切れが近づくなか、オバマ大統領はTPPの議会承認をとりつけるのが厳しくなっている=ロイター

カーター国防長官は昨年4月にさらに踏み込んだ発言をした。「TPPを可決させることは、私にとって空母をもう1隻増やすのと同じくらい重要だ」と述べた。カーター氏は恐らく空母というものの価値を過大評価したと思われるが、2人の言葉はいずれも真実だ。TPPを巡り米議会から承認を得られなければ、米国は事実上、世界最速で成長する地域の貿易と経済のルールを定める権利を事実上、譲り渡すことになる。日本のある外務省高官の言葉を借りれば、「中国の指揮下でアジアの貿易制度を確立する絶好のチャンス」を中国に与えることになる、ということだ。

■多大な影響力、譲り渡す危機

アジアでの影響力拡大を狙う中国の台頭を最大の脅威ととらえる日本でさえ、米国がTPPを批准できない場合は、中国が支持する東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に参加することを検討している。この交渉には東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国のほかオーストラリア、ニュージーランド、中国、インド、日本、韓国が参加する。RCEPは米国が加わらないだけでなく、知的財産やインターネットの自由、労働者の権利、野生生物と環境などに対する保護施策がTPPより不十分だ。

こうした分野に関しては、しかも米企業にとっては、TPPはクリントン氏がオバマ政権の一員だったときに評したように「ゴールドスタンダード(究極の協定)」だ。

中国がネットの自由や人権、環境保護を軽視するだけでなく、海外で事業展開する際も地元の違法行為を黙認するのを慣行としていることを考えれば、彼らはどんな貿易協定でもTPPほど高い基準を実現しようとは思わないに違いない。

米国やアジアでは、クリントン氏が大統領に選ばれたら、違う名称を付けてTPPを事実上復活させるのではないかという楽観的な観測も広がる。しかし、それには長い時間がかかるし、その頃には協定は恐らく意味をなさなくなっているだろう。その間も、中国は米国を参加させないような協定の締結を強く推進するはずだ。

米国がアジアでの影響力や地位を失わないようにするには、11月の選挙が終わってから来年1月に新大統領が就任するまでの「レームダック議会」で、オバマ氏が議会からTPPの承認を得るのが最も妥当なシナリオだ。

もしこれが実現しなければ米国はいわば墓穴を掘ることになる。つまり、中国に多大な影響力を譲り渡すこととなり、その結果、今後中国を中心に結ばれる貿易協定は企業や労働者、世界にとって、今より確実に悲惨なものになるということだ。

By Jamil Anderlini

(2016年10月6日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

櫻井記事

対中戦略で重要なTPPに反対 クリントン氏にも期待できない現実 

9月26日(日本時間27日)の米国大統領候補によるテレビ討論はあらためて、大変化に備えよという世界各国への警告になったのではないか。

討論の勝者は誰か。直後の世論調査ではクリントン氏の勝利とみた人が 62%、トランプ氏は27%だった。

一方、米国の保守派の論客、チャールズ・クラウトハマー氏は、「内容に関しては、どちらも相手を徹底的に追い詰められなかったという点で引き分け。その場合、挑戦者であるトランプ氏の勝利だ」と分析した。

現時点でクリントン氏がやや有利だが、最終的にどちらが勝利するかは、依然として分からない。しばらく前まで、私はどちらが次期大統領になるのか、非常に気になっていた。外交も安全保障も理解しているとは思えないトランプ氏よりも、親中派だが、経験を積み、中国の実態を冷静に見詰め、戦略的に思考できるクリントン氏の方が日本にとってふさわしいと考えていた。

しかし、今はそうは思わない。外交や安全保障でクリントン氏にも期待できないと感ずる。理由は環太平洋経済連携協定(TPP)についての彼女の変遷である。彼女は、第1期オバマ政権の国務長官としてTPPの戦略 性を認識し、支持したはずだ。TPPに込められた戦略とは、経済や価値 観を軸にして、中国と対峙する枠組みをつくるということだ。

対中関係で軍事と並んで重要なのが経済である。中国はアジアインフラ投 資銀行(AIIB)などを創設して中国主導の不透明な経済・金融の枠組みをつくった。だが、中国的価値観に主導される世界に、私たちは屈服するわけにはいかない。経済活動を支える透明性や法令順守などの価値観を重視したTPPは、21世紀の中華大帝国とでも呼ぶべき枠組みに対処する重要な役割を担っていくはずだ。

無論、TPPはそのような対中戦略の理念だけで成り立つものではない。 日本企業や農家の舞台を国内1億2700万人の市場から8億人のそれへと拡大 し、必ず、繁栄をもたらすはずだ。

こうした中で厳しい交渉を経て、TPPは12カ国間で合意された。それをクリントン氏は選挙キャンペーンの最中の8月11日、「今も反対だし、大統領選後も反対する。大統領としても反対だ」と言い切った。さらに、今 回の討論で、「あなたはTPPを貿易における黄金の切り札(gold standard)と言ったではないか」と詰め寄られて、彼女はこう切り返した。

「それは事実とは異なる。私はTPPが良い取引(deal)になることを願っていると言ったにすぎない。しかし、いざ交渉が始まると、ちなみに私はその交渉に何の責任もないが、全く期待に沿わない内容だった」

ここには、TPPを対中戦略の枠組みと捉える視点が全くない。何ということか。対中戦略の重要性など、彼女の念頭には全くないのである。であれば戦略的とは到底思えないののしり言葉で支持を広げるトランプ氏と、信念も戦略もないという点で、クリントン氏はどう違うのか。

日米同盟に関して、トランプ氏は「日本はカネを払っていない。他方で 100万台規模の車を米国に輸出し続けている」と強い不満を表明した。こ のような考え方は日米同盟の実質的変革につながる。クリントン氏は日米同盟重視だと語るが、TPPを認めない氏に期待するのも難しいだろう。

両氏の討論から、日本の唯一の同盟国が、頼れる相手でなくなりつつあることがより明確に見えてくる。安倍晋三首相は臨時国会の所信表明で、 TPPの早期成立と憲法改正に言及した。日本の地力を強化し、それを もってアジア・太平洋地域に貢献するのにTPPも憲法改正も必須の条件だ。国際社会の速い変化の前で、日本も急がなければならない。

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『「人民元、SDR入り」で何が変わるのか 「ドルに取って代わる」中国の野望の行く先は』(10/5日経ビジネスオンライン 福島香織)について

産経新聞が人民元について特集記事を配信しています。

http://www.sankei.com/world/news/161001/wor1610010007-n1.html

http://www.sankei.com/world/news/161002/wor1610020011-n1.html

http://www.sankei.com/premium/news/161003/prm1610030007-n1.html

http://www.sankei.com/premium/news/161004/prm1610040006-n1.html

http://www.sankei.com/column/news/161005/clm1610050002-n1.html

「日本円や米ドルで投資した中国でのプロジェクトで人民元ベースの収益を上げても、その資金を自由には持ち出せないため、「収益の大半は中国内で内部留保するか再投資に回すしかない」(同)のが実情だ。 さらに、SDR本来の目的であるIMFからの緊急融資の際、外貨不足に陥った国がSDRをIMFから受け取っても、中国当局の為替管理の壁で自由な交換ができなければ、人民元の構成比率10・9%分は使えないとの問題が生じる。」とあります。

市場経済認定国のせめぎ合い、欧州はドイツ経済を破綻させない限り、中国に大甘の政策が採られかねません。南シナ海での国際仲裁裁判所の判決を臆面もなく「紙屑」と言ってのける国なのに。

「「中国の不良債権規模は12・5兆元(約190兆円)と公式統計の10倍」。 今夏、大手シンクタンクの日本総合研究所が、中国経済が隠し持つ、金融危機を招きかねない“爆弾”の潜在規模をはじき出した。」とありますが、企業の持つ債務は2600兆円×156÷249=1628兆円で、隠れ不良債権はもっと多いのでは。不良在庫が多く、投げ売りしないといけない状況ですので、損切りすれば金融機関の持つ不良債権はもっと大きいと感じます。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160903/frn1609031530002-n1.htm

「だが、企業が撤退しようとしても、当局の規制が足かせとなる。日中経済協会など財界トップらで組織する訪中団は9月、商務省との会合で撤退ルールの整備などを求める要望書を手渡した。外資企業が進出する際は、一元化した窓口で迅速に手続きできる。だが、撤退時は行政府の複数の部署での認可が必要となり、長期にわたって撤退できないケースもあるという。」

後からゆうのは福助頭の典型でしょう。日本企業の横並び体質と経団連や日経があれだけ中国進出を煽り、「バスに乗り遅れる」感を持たせた罪は大きい。中国駐在員に聞けば一発でこんなことは分かるのに。騙されやすいのです。何時も言っています中国人の基本的価値観の「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」から言えば、日本人は典型的な馬鹿、カモです。

次は、10/7石平メルマガを見て見ましょう。

李首相の「外交復権」は「団派」の巻き返しだ   激化が予想される中国共産党の権力闘争」

先月21日、中国の李克強首相は国連総会で演説を行い、その前日にはオバマ米大統領との会談をこなした。中国首相には普通の外交活動のように見えるが、李首相自身にとって、それは記念すべき出来事となったのではないか。

2013年3月に首相に就任して以来、彼が国連の会議に出席したのもアメリカの土を踏んだのも、

それが初めてだからである。中国の首相として最重要の外交相手国、アメリカを公式に訪問したことは一度もない。今回も国連総会出席のためにニューヨークを訪れただけである。

一方の習近平国家主席はすでに2回にわたって訪米した。2015年9月の訪米は国賓としての訪問であり、その時は国連総会でも大演説をぶった。国家主席と首相との格差があるとはいえ、李首相の外交活動はかなり制限されていたことが分かる。

実は習主席は就任以来、首脳外交を自分の「専権事項」にして、国際舞台で「大国の強い指導者」

を演じてみせることで自らの権威上昇を図った。権力闘争の中で共産主義青年団派(団派)の現役リーダーである李首相とは対立し、本来なら首相の活躍分野である経済と外交の両方において

李氏の権限と活動をできるだけ抑え付けようとした。

その結果、今年の上半期、習主席自身は7カ国を訪問して核安全保障サミットや上海協力機構などの重要国際会議に出席したが、同じ時期、李首相は何と、一度も外国を訪問できなかった。状況が大きく変わったのは、今年9月に入ってからである。

同7日から、李首相はラオスを訪れ、中国・東南アジア諸国連合(ASEAN)(10+1)首脳会議、

東アジアサミットなどの一連の国際会議に出席した。その中で李首相は、合従連衡の外交術を駆使し、中国のアキレス腱(けん)である「南シナ海問題」が焦点として浮上するのを封じ込めるのに成功した。

その直後から、中国国内では、新華社通信と中国政府の公式サイトを中心にして、李首相の「外交成果」に対する絶賛の声が上がってきた。「李首相は東アジアサミットをリード、中国は重大勝利を獲得」「首相外遊全回顧、外交的合従連衡の勝利」など、李首相の帰国を英雄の凱旋(がいせん)として迎えるかのような賛美一色の論調となった。

今まで、外交上の「成果」や「勝利」が賛美されるのは習主席だけの「特権」となっていたが、今夏までの数年間、首相としての外交活動すら自由にならなかった李氏がこのような待遇を受けるとはまさに隔世の感がある。

その間に一体何が起きたのか。

1つの可能性として推測されるのは、今年8月に開かれた恒例の「北戴河会議」において、

習主席の内政・外交政策が各方面からの批判にさらされ、習氏の勢いがかなり削(そ)がれたことではないか。

だからこそ、9月になると、習主席の腹心である天津市の黄興国党委員会書記代理が突如失脚させられ、同じ時期に李首相の外交的活躍がクローズアップされた。

そして9月21日から人民日報は、李首相の後ろ盾である共産党元総書記、胡錦濤氏の「文選」の刊行を記念して、胡氏を褒めたたえる文章を連続3日間、1面で掲載した。つまり、李首相の「外交復権」の背後には、今まで習主席との権力闘争においてやや劣勢に立たされた共産主義青年団派の勢力が、例の「北戴河会議」をへて再び勢いを巻き返してきたことがあったのではないか。

そうなると、来年開催予定の第19回党大会に向け、次期最高指導部の人事をめぐる権力闘争は

ますます激しさを増してくるだろう。この「最後の決戦」の行く末によって、中国の政治と外交の方向性は大きく変わっていくに違いない。>(以上)

習近平の力が「北戴河会議」によって削がれたという見立てでしょう。権力争いが益々激しくなるのでは。軍を巻き込んでの展開になれば暴発、あるいは功名争いで戦闘を仕掛けるかも知れず、要注意です。しかし、日本人の危機感のなさは絶望的です。危機に備えて準備しておかなければ、何も対応できないのは明らかなのに。

国慶節で無料のバイキングで食い散らかした映像がありましたので紹介します。自己中、民度が低いとしか言いようがありません。こういう民族が尖閣侵略を狙っているのを肝に銘ぜねば。何でもしゃぶりつくすという事です。

http://www.wenxuecity.com/news/2016/10/06/5659547.html

福島氏の記事はそのまま読んで戴ければと思います。

記事

中国の人民元がSDR(特別引出権)入りを無事に果たした。人民元のSDR入りは、為替市場の自由化、透明化など改革推進が交換条件だったはずだったが、実際のところその条件はまだ満たしていない。それでも加入させるとは、IMF(国際通貨基金)は中国に対しよほど寛容であるということなのか。それとも、その方が国際金融にとって“お得”なのか。

人民元SDR入りで、いったい何が変わるのかは気になる。中国内外で報じられている分析を少し整理してみたい。

「世界金融支配」への第一歩

IMFの加盟国に対し、出資額に比して配られ、通貨危機に陥った際には外貨に交換できる仮想通貨「SDR」。従来は米ドル、ユーロ、円、英ポンドが構成通貨であったが、ここに5番目の通貨として人民元が加わることになった。構成比率はドル、ユーロに続く10.92%で日本の8.33%を上回る。現実にはSDR入りしたからといって、各国中央銀行がすぐ外貨準備高として人民元保有を増やすようになるとか、人民元に対する信用が一気に上昇するというわけではないだろう。なぜなら、人民元は今なお、制限なく自由に外貨と兌換できる通貨ではないし、その相場は市場原理ではなく政府の介入によってなんとか安定しているからだ。

米国はこれまでも、たびたび、中国を為替操作国と批判してきた。大統領選共和党候補のトランプ氏は、当選の暁には中国を為替操作国認定する、と言明している。SDR通貨は5年に一度見直され、その時、もし資格がないと判断されれば、SDRから外される可能性もある。今後5年の間で、人民元が市場化されるのか。本当に自由化されるのかによっても、影響力は変わってくる。

一方、自由化市場についてあまり肯定的な姿勢ではない習近平政権にとっては、政治的な意味が大きい。人民元の国際通貨の仲間入りを政権として実現させた。ちなみに中国が長年、人民元のSDR入りに拘り続けてきたのは、米ドル基軸体制を切り崩し、人民元こそが国際基軸通貨として世界金融を支配するという遠大な野望の第一歩という位置づけだからだ。

米国が今、世界を牛耳る権力を握っているのは、ドル基軸体制を確立し、ドルを刷り、その強弱を使ってグローバル資本市場の盛衰を主導できるだけでなく、他国の内部の富の分配から政権の交代までに影響力を持てるからだ、と中国は考えている。

かつて金本位制だった時代は金の保有量が国家の対外購買実力、経済力を示す指標だったが、ドル基軸体制ではドルの保有量がそれとなる。一国の購買実力、経済実力はドルを通じて米国に支配されている。だからこそ、米国に世界の技術と人材が集まる。この米ドル貨幣覇権に立ち向かうものこそ、世界最大の(潜在的)市場を誇る中国の人民元であるべきだ、米ドルから貨幣覇権を奪うのは人民元だ、というのが中国の遠大すぎる野望である。

「資格に欠ける」「1兆ドル流入」「開放次第」…

中国の野望はひとまず置いておくとして、人民元SDR入りについて、各国の論評はけっこう差がある。米財務長官ジャック・ルーは「本当の意味での国際準備通貨の地位には程遠い。中国は引き続き人民元をさらに国際水準に近づける改革が必要だ」と話した。日本財務相の麻生太郎は「すぐ通貨の価格管理などをやることになると、SDRを維持する資格に欠ける」と牽制した。

ドイツフランクフルター・アルゲマイネ紙は「人民元がグローバル貿易、金融取引において大量に使われるようになり、今後5年以内に1兆ドルが中国市場に流入するだろう」と論評。スイス連邦銀行集団は「もし人民元が準備通貨としての潜在能力をさらに発揮するとなれば、全世界の外貨準備高の5%を占めるようになるだろう。つまり外国の中央銀行が保有する人民元資産は4250億ドル相当になる」と、各国で人民元資産を外貨準備高として保有するようになっていくという予想を示した。

逆に仏パリ銀行は「将来、国際投資家たちが人民元資産を持つようになるのかどうか、結局中国経済がどうなるかによる。SDRに入ったかどうかではなく、中国資本取引の開放がある程度進み、米MSCI指数などに、中国A株が組み入れられるかどうかの方が重要なのだ」と論評した。

新華社など中国公式メディアの反応はもちろん「人民元がついに国際通貨の天井を破った」「中国が世界経済の舞台の中心に近づいた」「これは中国と世界のウィンウィンだ」と大喜びだ。しかし中国人民銀行側はSDR入り後も引き続き人民元を管理していくべきだという姿勢を強調しているので、人民元が、自由な取引や市場原理で相場が動く透明性を備えた国際通貨にすぐなるわけではない。

人民日報の「人民元SDR入りがどのような影響を与えるか」という論評を見てみると、「人民元は対米ドルに対し下落速度が加速し、米ドルが今後利上げの方向に行けば、中国の相当の資金が米国に流れ込む」(中国欧州陸家嘴国際金融研究院院長・曹遠征)というのが喫緊の影響として、予想されているようだ。

投機筋と政府の攻防で不安定化

SDR入りすれば、やはり多少は人民元介入を減らしていこうと考えているのだろうか。そうなると、それまで実質の中国経済に比して人民元高に誘導されていた分、人民元安は急速に進む。だが、こうした人民元の下落によって、中国経済が強烈な影響を受けるとまでは言えない、という。

「論理上は、人民元がSDR入りしたことで、国際通貨としてのお墨付きを得たのだから、各国中央銀行が人民元を外貨準備として保有することができるようになる。そのことで人民元の信用が上がり、中国は人民元による対外貿易決済、対外投資を行えるようになっていく。そうなれば中国企業にとっては為替損益を減少させ、対外経済の効率改善を図る上でプラスの影響がある」(中欧国際工商学院金融学教授・張逸民)という見方もある。この期待どおりになれば中長期的には人民元は上がっていくことになる。

中国にとって予想されるリスクはなにか。政府の介入が減っていく一方で、外国投資家が投資できるような人民元商品が増える。外国の投機筋も人民元市場に参入していく。そうすると、人民元価格が下落するにしろ、上昇するにしろ、中国経済・金融実力に応じた水準に安定するまで、外国の投機筋とそれに対する政府の対策の攻防の間で不安定化する。外国のヘッジファンドにとっては、久しくなかった大博打場となる。これまで安定した人民元にしか慣れていない中国企業は阿鼻叫喚の目にあうかもしれない。

株式市場や不動産市場にはどういう影響があるだろうか。

資金を引き上げるのが難しい

「日本円がSDR入りした時、日本の株式市場は大高騰し、日経指数で7倍に膨れ上がった。ならば中国A株市場は? 今週の上海総合指数でいえば、0.96%の下落だ。牛市(全面高)とはいえない。当時の日本の市場にはいろいろからくりがあり、指数が低く処理されていた一方で、プラザ合意で円高が引き起こされた。30年前の日本のようにはいかない。世界経済の成長が減速し、米ドルの利上げ予測が人民元の下げ圧を増強しているので、いったんは中国からの資本流失現象が起きて、A株市場は悪化すると予想される」

「不動産市場は、人民元の兌換が開放されていくに従い、国内投資家たちは手持ちの不動産を投げ売りして、海外の不動産を購入するようになる。外国の不動産の中には、永久の所有権を保障されているところもあるからだ(中国は所有権に期限がある)」(南方財富)

いわゆる資金流出の加速によって、株式、不動産とも大幅な下げ圧にさらされる。特に不動産市場はバブルがこれでもかというほど膨れ上がっているので、SDR入りがバブル崩壊のきかっけをつくるかもしれない。長期的にみれば、外国の投資家が中国の不動産購入に参入できるという期待もあるようだが。

債券市場についていえば、「3、4年後には外国投資家が保持する中国国債は新興国政府債券よりも多くなっているはず。2020年までに累計投資は4兆元になる」(チャータード銀行)という予想もある。外国投資家が所持するオフショア人民元建て債券総額は今年3月から6月までに1000億元増加しており、この傾向が加速するというのだ。だが、中国の債券市場は外国投資家が投資するのは簡単だが、金を引き上げるのは難しい。この予測通り順調に増えるとは、私には思えないのだが。

中国の経済政策、とくにシーノミクス(習近平経済学)の柱であった一帯一路戦略(陸のシルクロードと海のシルクロード経済一体化構想)と、それを支える目的もかねて創設されたAIIBは、これを機に息を吹き返すのだろうか。

一帯一路戦略とは、中国と中央アジア、ヨーロッパを結ぶ地域、また東南アジアから海を通ってインド、アフリカにいたる海岸線に、中国の主導する投資と企業力によって交通インフラや産業パークなどを建設、そこでは人民元決済を中心にして、人民元経済圏を確立するという構想である。中国国内の生産過剰な建設資材を消費でき、中国企業の対外進出の足掛かりとなる。将来の夢である米ドルに対抗できる人民元基軸体制の経済圏を打ち立てる中国の壮大な野望に向けての実験みたいなものでもある。

覚悟なしで好転なし

人民元のSDR入りで、人民元の国際認知度と信用が高まり、人民元決済がやりやすくなれば当然、一帯一路戦略に弾みがつくし、中国産業と国際企業の協力や中国企業の対外進出もやりやすくなる。AIIBも人民元建て債券をどんどん発行して、うまく回る…のか? 一帯一路構想が事実上、停滞しているのは、資金ショートに陥っていること、どだい経済的利益度外視のプロジェクトを政治的目的優先で行っているので、現場でサボタージュも起きているという話だ。

人民元がSDR入りすれば、どんどん人民元を刷って、人民元で支払うので資金不足は解消、といいたいところだが、人民元を好きなだけ刷れば大暴落、信用も落ちてハイパーインフレ、国内が大変なことになってしまうだろう。リターンの見込めないプロジェクトそのものに無理があるのだから、人民元がSDRに入ろうがは入るまいが、あまり関係ないかもしれない。

人民元がSDR入りするほど成熟していないのに、SDR入りしたら成熟するんじゃないか、という期待が先行してSDRに入れてもらったが、実力不足の選手がメジャーリーグに入れば、強くなるというものではない。ちょうど国慶節連休に入ってからの発表で、マーケットの反応があまりないので、休みが明けてからの市場を見ないと何ともいえないのだが、意外に、あっさりと期待も懸念も流れてしまうのではないだろうか。SDR入りがどうのというより、習近平政権が、どのような痛みを伴っても人民元改革を進めるのだというような覚悟を、今のところこれっぽっちも見せていない以上、中国経済の何かが好転するという期待は持ちにくい。

良ければ下にあります

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『北方領土「2島先行返還」は日本にとって損か得か?』(10/3ダイヤモンドオンライン 北野幸伯)について

10/4Facebook 吉田康一郎氏投稿は産経新聞の記事を引き合いに出してコメントしています。<露極東管区の人口は630万人。満洲東三省の人口は約1億人。人口が減少する露極東は、中国に呑み込まれる惧れ。中国は、清から露西亜に割譲された外満洲を「奪われた」と見做すが、満洲人の領土であり、漢人の領土ではない。

私はかつて日ロ関係のシンポジウムで、ロシア側有識者と対話し、「極東を全て中国に呑み込まれて失うくらいなら、千島・樺太を全て日本に返還して日本と同盟を結び、極東開発を進めてはどうか」と提案し、意外にもロシア側と大いに盛り上がりました。

《「奪われた領土」極東ロシアに流れ込む中国人…“スーツケースで侵略”は危険な火ダネ》2016.10.04 産経新聞

人口が希薄なロシア極東に中国人が流入し、ロシア人を心理的に圧迫している。ロシアの調査機関は今世紀半ばを待たず、中国人がロシア人を抜いて極東地域で最大の民族になると予測する。中国人には19世紀の不平等条約でウラジオストクなど極東の一部を奪われたとの思いがあり、ロシア人には不気味だ。欧米に対抗して蜜月ぶりを演出する両国首脳の足元で、紛争の火だねが広がっている。 (坂本英彰)

■ 中国人150万人が違法流入

「中国人がロシアを侵略する-戦車ではなくスーツケースで」

米ABCニュースは7月、ロシア専門家による分析記事を電子版に掲載した。露メディアによると、国境管理を担当する政府高官の話として、過去1年半で150万人の中国人が極東に違法流入したという。数字は誇張ぎみだとしつつも、「国境を越える大きな流れがあることは確かだ」と記す。

カーネギー財団モスクワ・センターによると在ロシアの中国人は1977年には25万人にすぎなかったが、いまでは巨大都市に匹敵する200万人に増加した。移民担当の政府機関は、極東では20~30年で中国人がロシア人を抜いて最大の民族グループになるとしている。

インドの2倍近い広さがある極東連邦管区の人口は、兵庫県を少し上回る630万人ほど。これに対し、国境の南側に接する中国東北部の遼寧、吉林、黒竜江省はあわせて約1億人を抱える。

国境を流れるアムール川(黒竜江)をはさんだブラゴベシチェンスクと黒竜江省黒河は、両地域の発展の差を象徴するような光景だ。人口約20万人の地方都市の対岸には、近代的な高層ビルが立ち並ぶ人口約200万人の大都市が向き合う。

ABCの記事は「メキシコが過剰な人口を米国にはき出すように、ロシア極東は中国の人口安全弁のようになってきている」と指摘した。ただし流入を防ぐために「壁」を築くと米大統領選の候補が宣言するような米・メキシコ関係と中露関係は逆だ。中露間では人を送り出す中国の方が、ロシアに対して優位に立つ。

■ 20年後の知事は中国人!?

ソ連崩壊後に過疎化が進行した極東で、労働力不足は深刻だ。耕作放棄地が増え、地元住民だけでは到底、維持しきれない。

米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿したロヨラ大シカゴ校のコダルコフスキー教授によると、過去10年で日本の面積の2倍超の約80万平方キロの農地が中国人に安価にリースされた。そこでは大豆やトウモロコシ、養豚など大規模な農業ビジネスが展開されている。

中国と接する極東のザバイカル地方は今年、東京都の半分にあたる1150平方キロの土地を中国企業に49年間長期リースすることで基本合意した。1ヘクタールあたり年500円余という格安だ。これに対しては「20年後には知事が中国人になりかねない」などと、ロシア国内で猛反発も起きた。

ロシア政府はロシア人の移住や定着を促すため土地を無償貸与する法律を制定したが、ソ連崩壊後の二の舞になる可能性も指摘されている。1990年代、分配された国有企業の株は瞬く間に買収され、政府とつながる一部特権層が私腹を肥やす結果となった。

極東は中国なしでは立ちゆかず、結果として中国人の流入を招く。コダルコフスキー教授は「中国はアムール川沿いのロシア領を事実上の植民地にしてしまった」と指摘した。

■ 「未回復の領土」

中国人が大量流入する状況で「領土回復運動」に火がつくと、ロシアにとっては取り返しのつかない結果となりかねない。

欧米列強のひとつだったロシア帝国は1858年と1860年、弱体著しい清帝国との間で愛琿条約、北京条約をそれぞれ締結し極東地域を獲得した。沿海州などを含む日本の数倍に匹敵する広大な領域で、これにより清帝国は北東部で海への開口部を失った。アヘン戦争後に英国領になった香港同様、清にとって屈辱的な不平等条約だ。

中国と旧ソ連は1960年代の国境紛争で武力衝突まで起こしたが、冷戦終結後に国境画定交渉を加速し、2008年に最終確定した。現在、公式には両国に領土問題は存在しない。

にもかかわらず中国のインターネット上には「ロシアに奪われた未回復の領土」といったコメントが頻出する。

ニューヨーク・タイムズは7月、近年、中国人観光客が急増しているウラジオストクをリポートした。海辺の荒れ地を極東の拠点として開発し、「東方を支配する」と命名した欧風の町だ。吉林省から来た男性は「ここは明らかにわれわれの領土だった。急いで取り戻そうと思っているわけではないが」と話す。同市にある歴史研究機関の幹部は「学者や官僚がウラジオストクの領有権について持ち出すことはないが、不平等条約について教えられてきた多くの一般中国人はいつか取り返すべきだと信じている」と話した。

■ アイスで“蜜月”演出も

台湾やチベット、尖閣諸島や南シナ海などをめぐって歴代政権があおってきた領土ナショナリズムは、政権の思惑を超えロシアにも矛先が向かう。極東も「奪われた領土」だとの認識を多くの中国人が共有する。

9月に中国・杭州で行われた首脳会談でプーチン大統領は、習近平国家主席が好物というロシア製アイスクリームを贈ってまさに蜜月を演出した。中露はそれぞれクリミア半島や南シナ海などをめぐって欧米と対立し、対抗軸として連携を強める。

しかし極東の領土問題というパンドラの箱は何とか封印されている状況だ。ナショナリズムに火がつけば、アイスクリームなどいとも簡単に溶かしてしまうだろう。

http://www.sankei.com/west/news/161004/wst1610040001-n1.html>(以上)

吉田氏のコメントにありますように、旧満州(現東北3省)は満州族の土地であって、漢族の土地ではありません。英語でもManchuria(満州)、 Manchu (満州人)となっています。ソ連のフルシチョフもこのことは良く分かっていました。「古来中国の国境は、万里の長城を越えたことがない。もし神話を持ってきて理不尽な主張をするならば、それは宣戦布告である。」と言ったそうです。

http://blog.goo.ne.jp/minsuto2008/e/f24e6410325160389d6df922b9158207

デンゼルワシントン、メリルストリープの映画に“Manchurian Candidate”(日本名:クライシスオブ・アメリカ)というのがありましたが、「洗脳された人」という意味があるそうです。大清帝国を治めていた満州族は、当時の白人から見ると、簡単に洗脳されたのかも。

中国のマンパワーを利用した侵略は長野朗が力説しています。西尾幹二著『GHQ焚書図書開封7-戦前の日本人が見抜いた中国の本質-』のアマゾン書評欄のスワン氏記事に「アメリカの侵略は資本を押し立てて行われる「資本による侵略」であり、ロシアの侵略は「武力による領土侵略」であり、シナの展開は「民族移住的な侵略」である》(228ページ)」とあります。

https://www.amazon.co.jp/GHQ%E7%84%9A%E6%9B%B8%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%96%8B%E5%B0%817-%E6%88%A6%E5%89%8D%E3%81%AE%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%8C%E8%A6%8B%E6%8A%9C%E3%81%84%E3%81%9F%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%9C%AC%E8%B3%AA-%E8%A5%BF%E5%B0%BE%E5%B9%B9%E4%BA%8C/product-reviews/4198634556

また、英語のChinese Mandarin (中国語の標準語の意)は 満大人”man da ren”から来たという説もあります。

北野氏記事にありますように「ロシア人の発想は、領土は戦争によって変わるもの」というのは正しいでしょう。勿論、他には金で買うしかありませんが。日本人だけでしょう、余りに平和ボケしていて、要求すれば土地を返還してもらえると考えているのは。領土返還は、戦争か金かしかありません。勿論、香港返還の例もありますが、あれは租借契約を履行しただけのことです。

ルトワックのいう「北方領土」を脇に置きというのは出来ないでしょうが、戦略的に中国封じ込めが優先事項であることは言を俟ちません。やはり、二島返還+継続交渉ができれば良いかと。安倍首相は1月解散するとの新聞記事が賑わっていますが、ロシアと一気に平和条約までは行かないでしょう。ただ民進・蓮舫の二重国籍問題がありますから叩き潰すには早く解散した方が良いと思います。

記事

プーチンが12月に訪日することが決まり、日ロ関係が動いている。日本政府もロシア政府も、訪日時に成果を出すべく、活発に交渉していることだろう。日本側最大のテーマは「北方領土」だ。一方、経済危機まっただ中のロシアは、「経済協力」の大きな進展を期待する。今回は、北方領土問題の展望と、日ロ関係の現状と未来について考えてみよう。

「2島先行返還」か、「4島一括返還」か 悩ましい北方領土問題

9月23日付読売新聞に、「北方領土、2島返還が最低限…対露交渉で条件」と題した、とても興味深い記事が載った。引用してみよう(太線筆者、以下同じ)。

<政府は、ロシアとの北方領土問題の交渉で、歯舞群島、色丹島の2島引き渡しを最低条件とする方針を固めた。  平和条約締結の際、択捉、国後両島を含めた「4島の帰属」問題の解決を前提としない方向で検討している。安倍首相は11月にペルー、12月には地元・山口県でロシアのプーチン大統領と会談する。こうした方針でトップ交渉に臨み、領土問題を含む平和条約締結に道筋をつけたい考えだ。  複数の政府関係者が明らかにした。択捉、国後については日本に帰属するとの立場を堅持する。その上で、平和条約締結後の継続協議とし、自由訪問や共同経済活動などを行いながら、最終的な返還につなげる案などが浮上している。>

整理してみると、

1.歯舞群島、色丹島を引き渡してもらう。 2.平和条約を締結する。 3.択捉、国後については平和条約締結後に継続協議し、最終的返還を目指す。

putin-abe

「2島先行返還論」が浮上するなど、動きが出てきた北方領土問題。北方領土問題が日本にとって非常に重要な課題であることは間違いない。しかし、安倍総理は領土問題以上に、対中戦略に重きを置いた舵取りをすべきだ Photo:Kremlin/Sputnik/Reuters/AFLO

つまり、「まず歯舞、色丹を返してもらい、平和条約を締結」(あるいは、平和条約を締結し、歯舞、色丹を返してもらう)、「択捉、国後については、継続協議」。これは、鈴木宗男氏が主張している、「2島先行返還論」と同じだろう。

ちなみに菅官房長官は、この記事について「そうした事実はまったくない」と明確に否定している。しかし、読売新聞が、「複数の政府関係者が明らかにした」と書いているように、「日本が大きく譲歩する可能性がある」という話は、いろいろな方面から流れてきている。総理も「今までとは違うアプローチで解決を目指す」と言っている。「今まで」とは、「4島一括返還論」のことだろうから、「違うアプローチ」が、「2島先行返還論」だったとしても不思議ではない。

ところで、「4島一括返還」は、なぜ実現が難しいのだろうか?これを知るために、ロシア側が北方領土問題をどう捉えているか考えてみよう。

日本外務省のホームページには、以下のように説明されている。

・ソ連は、日ソ中立条約を破って対日参戦した。 ・ポツダム宣言受諾後の、1945年8月28日から9月5日までに、北方4島を占領した。

それで、日本側は「不法占拠だ!」と捉えているのだが、ロシア側の意識は、日本とまったく異なっている。ロシア人と話していて感じるのは、彼らには、「固有の領土」という言葉の意味がわからないということだ。

ロシア人が「北方領土は自国の土地」と単純に信じているのはなぜか?

なぜだろうか?ロシア人は、「領土というのは、戦争のたびに変わるもの」という意識なのだ。これは、おそらくロシアの歴史と深く関わっている。ロシアの起源は、882年頃に成立したキエフ大公国だ。首都はキエフだったが、現在はウクライナの首都になっている。ロシアの起源である都市が、外国にあることに注目だ。

キエフ大公国は1240年、モンゴルによって滅ぼされた。その後、モスクワ大公国(1263年~1547年)→ロシア・ツァーリ国(1547年~1721年)→ロシア帝国(1721年~1917年)と発展した。このように、ロシアは東西南北を征服して領土をひろげ、ついに極東にまで到達した。

つまり、ロシア領のほとんどは、歴史的に繰り返された領土争いによって獲得した「征服した土地」で、いわゆる「固有の領土」は、比率的にとても小さい。

こういう歴史を持つロシアに、「固有の領土だから返してくれ!」と言っても、「固有の領土とは何ですか?」と逆に質問されてしまう。だから、北方領土について、「ロシア(ソ連)は日本に戦争で勝った。結果、北方4島はロシア(ソ連)の領土になった」という意識なのだ。

インテリになると、もっと論理が緻密になる。

「1875年、樺太・千島交換条約で、樺太はロシア領、千島は日本領と決められた。ところが日ロ戦争の後、勝った日本は南樺太を奪った。ロシアが、南樺太を返してくれと言い続けていたら、日本は返還してくれただろうか?」と質問をされることがある。

筆者は、「返さなかっただろう」と正直に答える。

さらに、「日本は、日清戦争で勝って台湾を奪ったが、清が返せと主張し続けたら、返しただろうか?」と続ける。筆者は、「返さなかっただろう」とまた答える。

すると、ロシアのインテリは「日本は戦争に勝って奪った領土を、話し合いでは返さない。しかし、自分が負けた時は、『固有の領土だから返せ!』という。フェアじゃないよね」と言う。

日ソ中立条約を破った件や、ポツダム宣言受諾後に北方4島を占領した件については、「1945年2月のヤルタ会談で決められたこと。米英も承認している」とかわされる。つまり、ロシアは「米英がソ連の参戦を要求した。その見返りとして、南樺太、千島はソ連領になることを認めた」ということで、まったく「悪いことをした」という意識がないのだ(ちなみに日本は、北方4島は千島ではないという立場を取っている)。

「2島返還」実現のハードルは低いがその後の方向性が難問に

こういう歴史的国民意識がある中で、いくら親日プーチンでも、「4島一括返還」は厳しいといわざるを得ない。

しかもロシアは現在、「経済制裁」「原油価格暴落」「ルーブル暴落」の三重苦で苦しんでいる。プーチンの支持率は、依然として高い。与党「統一ロシア」は、9月18日の下院選挙で大勝した。しかし、経済危機が長期になれば、プーチンも安心していられない。このような状況下で、「4島返還」を発表すれば、プーチン人気が急落し、政権の安定が崩れるかもしれない。

政治的にも4島返還は、簡単ではないのだ。

では、「2島先行返還論」は、実現可能なのだろうか?実をいうと、「2島返還」は、「法的基盤」があるので、両首脳が決断すれば実現は可能だ。

「法的基盤」とはなんだろうか?1956年の「日ソ共同宣言」のことだ。

日ソ共同宣言の内容を簡単に書くと、「日ソ両国は引き続き平和条約締結交渉を行い、条約締結後にソ連は日本へ歯舞群島と色丹島を引き渡す」である。この宣言は、日ソ両国の国会で批准されており、「法的拘束力」をもっている。そして、日ソ共同宣言については、ロシアでも広く知られている。

つまり、プーチンがこれを根拠に2島を返還しても、大きな反対運動は起こらない。しかし、「2島返還」には、問題もある。2島返還後のことだ。

日本は、返還対象外の残り2島について、「継続協議」としている。これが、「先行返還」(=先に2島を返してもらい、後で残りの2島を返してもらう)の意味だ。ところが、ロシアは、「2島返還」で「画定」したい。つまり、歯舞、色丹は日本領、択捉、国後はロシア領で最終決着し、後々話を蒸し返さないつもりだ。

ロシア側は、ここ数十年間「北方領土の話しかしない」日本に正直うんざりしている。4島返すにしても2島返すにしても、現状からすると、ロシアに「大損」だからだ。

日本の主張する「2島先行返還論」を認めると、これからも永遠に、「択捉、国後をいつ返してくれますか?と言われ続ける」と考えている。ところが、日本側は2島で終わりにすることができない。

ロシアとの平和条約締結は、「歴史的」だが、それが善か悪かは、わからない。

「2島先行返還」なら、2島取り戻したことで、安倍総理は「歴史的偉業」を成し遂げたと賞賛される可能性がある。しかし、2島返還で「終わり」であれば、残り2島を切り捨てたことで、逆に、「国賊」と批判されるリスクもある。この辺をどう調整するのだろうか?

ロシアは国民に、「最終決着しました」と説明し、日本政府は国民に、「2島は取り戻しました。残り2島は継続協議です」と言うのだろうか?

このように2島返還は、「日ソ共同宣言」という「法的根拠」があるので、実現は可能だ。しかし、大きな問題を残したままとなる手法なのだ。

日本がロシアと和解する最大の理由は「対中国」であることを忘れるな

これまで何度も書いてきたが、日本がロシアと和解しなければならないのは、「安全保障上の理由」があるからである。「安全保障上の理由」とは、はっきりいえば、「対中国」だ。

筆者は、2008年から「尖閣諸島から対立が起こり、日中が戦争になる可能性がある」と書いてきた。日中関係はその後、「尖閣中国漁船衝突事件」(10年9月)、「尖閣国有化」(12年9月)などで「戦後最悪」になってしまった。

12年11月、中国はモスクワで、「反日統一共同戦線」戦略を、ロシアと韓国に提案した。いつも書いているが、戦略の骨子は、

1.中国、ロシア、韓国で「反日統一共同戦線」をつくる。 2.中ロ韓で、日本の領土要求を断念させる。日本には、尖閣だけでなく、沖縄の領有権もない。 3.米国を「反日統一共同戦線」に引き入れる。 (詳細はこちらの記事を参照)

中国は以後、全世界で大々的に反日プロパガンダを続けている(それで、安倍総理が13年12月に靖国参拝した際、中韓だけでなく、米欧ロ豪、台湾、までがこれを非難した)。さらに軍事的挑発を徐々にエスカレートさせ、領海、領空侵犯を常態化させている。今年8月、中国公船15隻と漁船400隻が尖閣周辺の海域に集結したことは、日本国民に衝撃を与えた。

筆者が08年に「日中戦争」の可能性を書いたとき、「妄想」だと言われたが、今では普通に「あるかもしれないですね」と言われる。そして、日本の領土をあからさまに狙う中国は、すでにGDPで日本の2.5倍、軍事費で8倍の大国である(世界銀行のデータによると、日本の防衛費は15年470億ドル、中国は3858億ドル)。

つまり、日本一国で中国に勝つのは、非常に難しい。では、同盟国の米国はどうなのか?トランプは、「日本がもっと金を出さなければ、米軍を日本から撤退させる」と宣言している。ヒラリーは、長年中国から金をもらっていたことが明らかになっている(詳細はこちら)。   一方、ロシアは「クリミア併合」時、「唯一味方になってくれた」ということで、中国とは事実上の同盟関係になっている。

北方領土問題の最善策は「棚上げ」である理由

つまり、現状は以下のように整理される。

1.中国は、はっきりと尖閣・沖縄を狙っている。 2.米国は、トランプ、ヒラリーどちらも親日ではない。 3.ロシアは、中国と事実上の同盟関係にある。

このような状況がさらに悪化すれば、日本vs中国・ロシアの戦争に発展しかねない。その場合、米国は中ロを非難する声明を出すが、事実上は不干渉を貫くかもしれない。そうなれば尖閣は中国領になり、沖縄も危険な状態になってくる。

こういう緊迫した現状で、北方領土問題の解決は、(重要ではあるが)「最優先課題」ではありえない。

では何が「最優先課題」なのか?まず第1に、米国との関係をますます強固にすることだ。これは、ヒラリー、トランプ、どちらが大統領になってもやらなければならない。

第2に、ロシアとの関係を強化し、結果的に中ロを分裂させることだ。そのためには、ロシアの望むもの(=経済協力)を与えなければならない。しかし、ロシアに対し「慈善事業をしろ」といっているわけではない。「長期的に良好な関係を築こう」とすれば、「WIN-WIN」になれる案件を発展させる必要がある。

ちなみに世界一の戦略家エドワード・ルトワックは、北方領土問題について、著書「自滅する中国」の中で、こう書いている。

<日本政府が戦略的に必要な事態を本気で受け入れるつもりがあるならば、北方領土問題を脇に置き、無益な抗議を行わず、ロシア極東地域での日本の活動をこれ以上制限するのをやめるべきだ。  このこと自体が、同地域での中国人の活動を防ぐことになるし、ロシアが反中同盟に参加するための強力なインセンティブにもなるからだ。>(192p)

このように、ルトワックは、北方領土問題の「棚上げ」を勧めている。

もちろん、「2島先行返還論」をロシアが受け入れれば、それでもよいだろう。しかしロシア側が妥協するしないにかかわらず、ロシアが望む経済協力は推進していくべきだ。総理は、「日ロ関係深化は、対中国」という「大戦略観」を常に忘れないでいただきたい。

「北方領土返還実現」は確かに「歴史的」だが、「戦わずして、中国の戦略を無効化させる」ことは、真の意味で「歴史的」である。

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『極右政党党首が初の女性仏大統領になる確率は?「反欧州」「反移民」を掲げるマリーヌ・ルペン』(10/3JBプレス 山口昌子)について

「士気の集い」主催の山口氏の講演を昨年1月に聞きました。マリーヌ・ルペンをもはっきり人種差別主義者だと言っていました。父親と違い、党を華麗なる変身させたけれども、中身は変わっていないという思いだったのでしょうか。でもヨーロッパで極右政党と呼ばれているのは「反移民・反EU」なだけなのではと感じています。メデイアの人間が偏っていて、上から目線で国民を領導すると思っているだけなのでは。国民感情から遊離しています。

要はグローバリズムとナショナリズムの戦いでしょう。確かに国民国家ができた歴史は長くはありませんが、近年世界を覆ってきたグローバリズムの限界が見えてきたと思います。カネ・モノ・情報の自由な移動は国際分業の観点から言っても、奨励されるところでしょうけど、ヒトは感情があり、言語や環境によって違った受け止め方をすると気があります。同じ日本人同士でもそうなんですから、外国人であれば猶更です。

トランプの大統領選での躍進、英国のEUの離脱、独国の地方選でのAfDの第二党躍進、ハンガリーの国民投票で投票率50%以上の規定に及びませんでしたが98%も難民受入反対という結果になりました。多文化共生といって宗教や言語、発想法の違う人々を安易に受け入れれば必ずや摩擦は起きます。敵はそれを狙って来る訳です。チャインタウンやコリアタウンなどは治外法権になってしまいます。世界の潮流はグローバリズムでなく、「国民自決主義」と言えるのでは。

日本も在日問題を抱え、かつ中国人が日本にドンドン入り込んできています。中国韓国とも日本の敵国です。世界遺産に南京虐殺やら従軍慰安婦を登録しようとしている国です。丹東の歴史博物館には「北朝鮮に攻め込んだのは南鮮と米国」と嘘のプロパガンダを臆面もなく飾れる国です。日本の役人の馬鹿な所は、農業にも外国人を受け入れしようとしている所です。来るのは敵国の中韓人になるでしょう。スパイや工作員も当然紛れ込むでしょう。今でも大学等で反日活動に勤しんでいる中韓人がいるというのに。農業法人を積極的に認めていけば良いだけのこと。農民を守るのでなく、農業を守ればよいだけでしょう。今や有事を前提に政策を考えて行かなければならないのに、この緊張感のなさは何でしょう。

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国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首(2015年12月13日撮影)。(c)AFP/DENIS CHARLET 〔AFPBB News

米国の大統領選は最終コーナーを回って最後の直線コースに入り、米国初の女性大統領が誕生する可能性が高まってきた。では、2017年春のフランスの大統領選で女性大統領が誕生する可能性はあるだろうか。

最新の各種世論調査によると、極右政党「国民戦線」(FN)の女性党首、マリーヌ・ルペン氏が決戦投票に進出する可能性が高い。大統領の椅子は決戦投票に進出した上位2人によって争われる。

右派政党「共和党」(LR)では、11月20日、27日に予備選を実施して、7人の大統領選立候補者の中から公認候補を選出する。各種世論調査によるとアラン・ジュペ元首相が目下のところ優勢だが、LRの党員だけを対象にした調査では党首のニコラ・サルコジ前大統領が優勢である。

複数の世論調査では、ルペン氏、ジュペ氏、サルコジ氏の中で今のところジュペ氏の支持率が最も高い。次いでルペン氏、サルコジ氏と続く。ルペン氏は決戦投票の相手として、サルコジ氏が相手なら「十分に勝ち目がある」(FN幹部)と見ている。

党の本質は相変わらず排外主義的

FNは、マリーヌ・ルペン氏の父親であるジャンマリ・ルペン氏が1972年に立ち上げた政党である。ジャンマリ氏が党首だった時代は、ナチスによるユダヤ人大虐殺を「歴史の些細な事件」と言い放つなど、徹底的な反ユダヤ主義、外人排斥、人種差別を標榜していた。

ところが、三女のマリーヌ氏が2011年に党首に就任してから、FNは路線を変更する。テロや難民の増大を背景に、「シェンゲン協定」(ヨーロッパの国家間を国境検査なしで行き来することを許可する協定)や単一通貨「ユーロ」圏からの脱退を主張するなど、「反欧州」や「反移民」を全面的に打ち出すことで、人種差別的な“危険な政党”“悪魔の政党”のイメージから脱却した。

ただし、排外主義的な党の本質は変わっていない。

FNはバカンス明けの8月半ばに南仏フレジュス市で党のセミナー(一種の親睦大会)を開催した。ルペン氏は約5000人の支持者を前に、大統領選に向けての実質的なキャンペーン第一声を発した。

その演説の中でルペン氏は、「フランス人」とは「フランス国への愛、フランス語やフランス文化への愛着によって一致団結している何百万もの男女」であると定義。フランス国民でありながらフランス語の習得を嫌い、イスラム教徒の風俗習慣に固執するイスラム(アラブ)系フランス人を暗に非難した。

ちなみに、このセミナーでルペン氏は、大統領選の選挙キャンペーン隊長に弱冠28歳のダヴィット・ラクリーヌ氏を任命している。

ラクリーヌ氏の祖父は、ウクライナからのユダヤ系移民である。だがルペン氏はラクリーヌ氏を「若くて働き者で、才覚があり、忠実」と絶賛し、信頼を寄せている。

ラクリーヌ氏は15歳の時にFNに入党し、2014年に26歳の若さでフレジュス市長に選出された。第5共和制下で史上最年少の市長である。次いで、南仏ヴァル地方選出の上院議員にも当選した(フランスは公職を2つまで兼任できる)。

この夏、ラクリーヌ氏はフレジュス市長としてイスラム教徒の女性の水着「ブルキニ」の着用を真っ先に禁止し、フランス中の注目を浴びた。禁止を無効とする裁判所の決定が出たが、他の3人の市長とともに、現在係争中である。

決選投票でルペン氏が勝つ見込みは?

FNが大統領選の決戦投票に進出するのは、今回が初めてではない。2002年の大統領選では父親のジャンマリ氏が大方の予想を裏切って、1回目の投票で社会党のリオネル・ジョスパン首相(当時)を破り、シラク大統領(当時)とともに2回投票に進出した。

治安悪化、高失業率を背景に「諸悪の根源は移民や移民2世、3世にある」と強調し、当時の政権の寛容な政策を糾弾したのが勝因だった(ただし、決戦投票では、「自由、平等、博愛」を謳うフランス共和国の旗の下、社会党から共産党、緑の党

までがシラク氏に投票。約82%の投票率でシラク氏が圧勝した)。

今回、ルペン氏が決戦投票に進出した場合、勝利の見込みはあるのか。

各種世論調査の結果では、LRのジュペ氏が勝利するだろうとの予測が出ている。また、サルコジ氏が予備選で選出された場合はサルコジ氏が微差で勝利するとの予測が多い。だが、サルコジ氏は大統領時代の係争事件などのマイナス要素を抱えているため、予断を許さない。

来年、アメリカとフランスの大統領が2人とも女性になることはあり得るのか。世界の注目が集まっている。

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『トランプに票を入れる衆愚たちのデモクラシー 米若手学者の衝撃の一冊、「賢人統治主義の勧め」』(10/3JBプレス 高濱賛)、『今まで全勝の米大統領選予測、今回は異変が・・・ 

デモクラシーの胡散臭さは常々感じていました。本記事にありますように、民主主義は衆愚政治に陥りやすいという事です。日本もGHQの洗脳から未だに解放されずにいる人が大半を占めています。でなければ朝日新聞などはとっくに潰れていて当り前です。それでもじわりじわり販売部数を落としてきました。ピーク時には800万部を超えていました販売部数は昨年末で662万部とのこと。押紙があるので8割が実売部数とすれば、500万部が相当でしょう。図書館等で取るのも止めた方が良いでしょう。しんぶん赤旗も販売部数低迷で日曜刊以外は休止するかもしれないとのこと。慶賀の至りです。いい加減呪縛から解き放されてほしいと思っています。近隣諸国は裏金を使い、日本の名誉を貶め、世界で日本を孤立させ、日本を乗っ取ろうとしています。それが見えない人は空めくらでしょう。

http://diamond.jp/articles/-/85459

http://www.dailyshincho.jp/article/2016/10040557/?all=1

米国の若手学者は、エピストクラシーが良いとのことですが、誰が選ぶのでしょうか?君主制、共和制(独裁官を含む)であっても統治の正統性が問題になります。蓮舫の二重国籍問題の他に、自民党の小野田紀美もそうとのこと。統治の正統性から言って両者とも議員辞職に値すると思います。でも日本維新の会の足立康史氏によれば小野田は昨年10月に国籍選択して(参議院議員になる前)、指摘を受けて直ぐに戸籍謄本を開示したとのことで、こちらは免罪すべきでしょう。

話を戻しますが、賢者の定義は難しいでしょう。神ならぬ身なので。謀略が跋扈する世界になるかもしれません。元々近代資本主義は人間の欲望の極大化を認めて発展してきました。資本家・経営者にとって選挙は邪魔なものであっても、資本主義は一党独裁の共産主義よりは民主主義の方が遙かに親和性を持ちます。賢者の政治はモーセの時代ならともかく、独裁に道を繋げるのを危惧します。今でも学者等は顧問と言う形で、どの国でも政権にアドバイスしているでしょう。それでもうまく行かないのは、政権に学者の意見を聞く気がないからか、学者が間違っているかです。イタリアの学者首相のマリオ・モンテイもうまく行きませんでした。

結局は衆愚になるかもしれませんが、民主主義を選ばざるを得ません。国家はその国民に合った政府しか持てないという事でしょう。ドウテルテ暴言大統領を選んだのはフィリピン国民です。米国無しでどうやって中国と対峙するのでしょうか。

堀田氏の記事は11/8以降に再読したいです。やはり、ヒラリー有利とするのが多いという事ですが。

高濱記事

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米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏〔AFPBB News

「歴史の終わり」以後、激動し始めた世界と米国

フランシス・フクヤマ博士の「歴史の終わり」(The End of History and the Last Man)が世に出てから24年、その仮説は完全に突き崩された。同博士はこう予言していた。

「国際社会においてリベラル・デモクラシー(Liberal Democracy)が他のすべての政治形態を打ち破り、最終的勝利を収め、社会制度の発展は終わりを告げる。そして世界は平和と自由と安定を未来永劫、享受できる。リベラル・デモクラシーという政治形態を破壊するような戦争やクーデターはもはや生じない、まさに『歴史の終わり』だ」

ところがあれから24年、世界はどうなったか。イスラム教過激派集団IS(イスラム国)はリビア、イラクの既成体制を脅かし、過激派思想の影響を受けた「ホームグローン・テロリスト」は欧米社会で顕在化している。

内政面でもリベラル・デモクラシーは破綻し始めている。

なまじ国家の一大事をレフォレンダム(国民投票)に託したために欧州連合(EU)から離脱せざるを得なくなった英国。党エリートが手をこまぬいていたために「ナルシスト的アジテーター」(独シュピーゲル誌)に党を乗っ取られてしまった米共和党。

「一般大衆の声を尊重しすぎ、地方自治体が外交安保問題に至るまで中央政府と対等関係にあるかのような錯覚を起こした日本の某県知事」(米主要シンクタンクの日米防衛問題研究者)・・・。まさに大衆迎合主義万々歳である。

「デモクラシーが生んだトランプ現象」

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Against Democracy(反デモクラシー論) By Jason Brennan Princeton University Press, 2016

米国内を吹き荒れた不動産王のドナルド・トランプ氏は、自らの選挙運動についてこう叫んでいる。

「俺の選挙は単なるキャンペーンではない。これはムーブメント(運動)なのだ」

トランプ現象を「デモクラティック・トランパリズム」(Democratic Trumpalism=トランプ的愚民主義)と命名した新進気鋭の米若手政治学者がいる。

今回紹介する本の著者、ジョージタウン大学ビジネススクールのジェイソン・F・ブレナン准教授(政治哲学、政治倫理、公共政策=37)だ。

「Against Democracy」(反デモクラシー論)の著者である。

同氏は、ニューハンプシャー大学を卒業、アリゾナ大学で博士号を取得し、ブラウン大学助教を経て現在ジョージワシントン大学准教授。2011年に著した「投票の倫理」(The Ethics of Voting)で脚光を浴びた。

社会正義と経済的自由・市民的自由を結合させる政治哲学、「Bleeding Heart Libertarian」(熱狂的なリベタリアン)という概念を打ち立てている。

ワシントン・ポストの著名なコラムニスト、イリヤ・ソミン氏はブレナン准教授を「投票動向の分析では世界をリードする学者の1人」と高く評価している。

Democracyの訳語は「民主主義」、それとも「衆愚主義」?

政治学概論的に言えば、デモクラシーとは「人民が権力を所有し、それを行使するという政治原理」「国家の権力者・指導者がその国家を構成するすべての人民の合意を得て行う政体」である。

日本語では「民主主義」という訳語が定着している。

が、評者が本文で「民主主義」とはせず、あえてカタカナで「デモクラシー」と書いてきたのにはわけがある。

英語のDemocracyを「民主主義」と素直に和訳すると、ブレナン氏が本書で論じている論考の基軸と相いれない可能性があるからだ。

平たく言えば、同氏は「Democracy」を日本語の「民主主義」のニュアンスではとらえていない。

日本人にとって、「民主主義」という単語には特別な響き、概念がある。米大学で教鞭をとる日本人政治学者の1人は、匿名でこう指摘している。

「戦後、GHQ(連合軍総司令部)によって行われた『洗脳』によって日本人のマインドに沁み込んだ『デモクラシー=民主主義』という概念は、『絶対的な正当性』があるとの認識だった。『民主主義』には神聖にして侵すことのできない、これ以外にはすべての国民にとって正しい政治形態はないと信じ込まされてしまった面がある」

ところがブレナン氏の「Democracy」に対する概念は、日本人(少なくとも評者)が日本語で見聞きする「民主主義」という概念とは程遠い。むしろ日本語に訳せば「衆愚主義」に近いのだ。

Democracy(デモクラシー)の語源は、古代ギリシャ語の「デーモクラティア―」である。「デーモ」とは「人民・民衆」。「クラッティア―」は「権力・支配」の意味だ。「民主主義」という訳語が定着する以前には「衆愚政治」「民衆支配」といった訳語もあったようだ。

野口忠彦・拓殖大学元教授は、「Democracy」の訳語に言及した「『民主主義』は適訳か」と題する論文(政治・経済・法律研究、拓殖大学論集)を著している。学界にも論議があったことを示す証左だ。

「国家の構成員全員が政治参加する必要はない」

ブレナン氏によれば、米国の衆愚が「トランプ」に熱狂しているのは、次の3点について「そう思い込んだ」からだと分析している。

(A)衆愚がトランプ現象で「デモクラシーとは、国家の構成員すべてが政治的パワーを平等かつ根源的に分かちあえる基本的権利を享受できる政治形態だ」と思い込んだこと。

(B)衆愚がトランプ現象で「デモクラシーとは、国家の構成員すべてが政治参加することこそ善(Good)であり、人民にはその権限が授けられている」と思い込んだこと。

(C)衆愚がトランプ現象で「デモクラシーとは、人民が欲するものをすべて享受でき、それによって人民はより善良な市民になれる素晴らしい政治形態だ」と思い込んだこと。

だが、ブレナン氏はこう反論する。

「デモクラシーとは、少なくとも最初の2つ、AとBを享受できる政治原理ではない。最後の1つ、Cすら受け入れるに足るものとは言えない。

理由はこうだ。

第1に、政治参加はほとんどの構成員にとっては価値あるものではない。構成員のほとんどは政治的決定にはあまり役に立たないどころか、政治への参加は多くの構成員を卑劣で粗野にさせてしまうからだ。

さらに言えば、国家の構成員であるすべてのものに選挙権、被選挙権が基本的権利として与えられているわけではない。

選挙権とは、個々の構成員に与えられる『言論・表現の自由』のような権利とは異なる。選挙権とは立候補している第三者に自らの権限を貸与することを意味する。

デモクラシーとは、それ自体が目的ではない。それは、ちょうどハンマーの価値に似ている。ハンマーは釘を打つから価値がある。それ自体には何ら価値はない。

デモクラシーとは、公正かつ効率的な政策を作り出すための有効なインスツルメンツ(道具、手段)にすぎない。もしデモクラシーより性能のいいハンマーを見つけたらそれを使うべきだ。デモクラシーよりも優れたハンマーはエピストクラシー(Epistocracy=賢者統治主義)*1かもしれない。

自由共和的賢者統治主義(Liberal Republican Epistocracy)の方が自由共和的愚民主義(Liberal Republican Democracy)よりも勝っているかもしれない。それを試してみてどちらがいいかを探り当てる時期に来ている」

*1=新語だけにまだ定訳はない。中国語では「由智者統治」と訳されている。

「デモクラシー=民主主義」の呪縛からの解放

デモクラシーからエピストクラシーへの転換を訴える学者はブレナン氏だけではない。ジョージメイソン大学のギャレット・ジョーンズ准教授もその1人だ。ジョーンズ氏はエピストクラシーのメリットについてこう述べている

「デモクラシーの下で選ばれた政治家は、国家のために良しとする長期戦略を立てても選挙民の目先の要求に応じることを優先せざるを得ない」

「選挙の洗礼を受けずに、つまり一般大衆の声よりも国家の利益を優先して考えることができる政治家による政策立案、立法化には大きなメリットがある。むろんそうした政治家には抜きん出た知性と徹底したモラルが必須であることは言うまでもない」

注意すべきは、ジョーンズ氏が指摘している「エピストクラシー」における政治家の質の問題だ。いくら賢人であろうとも社会正義感覚やモラル感覚に欠けているものは最初からご遠慮願うことは言うまでもない。

卑近な例で言えば、いくら東京都政に精通した地方政治家だろうとも金銭感覚とモラル感覚に欠けている実力者らが暗躍すると、豊洲市場移転をめぐるスキャンダルめいたことが起こる。

もっともこうした輩を選んだのはデモクラシーの名のもとに行われた選挙となると、これは政治形態の問題ではなくなってくるが・・・。

「デモクラティック・トランパリズム」が吹き荒れる中で、トランプ氏が大統領になるにしろ、ならないにしろ、大衆迎合主義に危機感を抱く米国の若手学者は黙ってはいない。

彼らによる「衆愚主義」に代わる選択肢の模索は今後、強まることはあっても弱まることはなさそうだ。

堀田記事

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米大統領選の第1回テレビ討論会を終えて握手する民主党候補ヒラリー・クリントン前国務長官(右)と共和党候補ドナルド・トランプ氏(2016年9月26日撮影)〔AFPBB News

米大統領選の投開票日(11月8日)まで1か月あまり。民主党ヒラリー・クリントン候補(以下ヒラリー)と共和党ドナルド・トランプ候補(以下トランプ)のいったいどちらが勝つのか。

第1回テレビ討論会が終わり、両候補はいまレース最後の直線に入ったところだ。毎日のように発表される世論調査結果を眺めると、両候補の数字は拮抗している。ヒラリーが数ポイント差でトランプをリードしている調査結果もあれば、逆の結果もある。

勝者を予測することは危険であるが、米国では当選予測モデルがいくつもあり、大統領選の専門家が予測を公表している。

当欄では単なる「直感的な予想」ではなく、少しマニアックであるが「学究的な予測」を中心に、数字とともに示していきたい。

米大学の政治学者が公表する9つのモデル

米国で最初の当選予測モデルが紹介されたのは1912年のことである。当時は、近年のような学究的なアプローチを駆使したものではなく、予備選の結果を考慮したモデルだった。

政治学者が学会の場で予測モデルを公表したのは1996年のことだ。全米政治学会(APSA)で勝者を分析する予測モデル(Forecasting Models)が発表されている。

1996年というのは、ビル・クリントン元大統領と共和党ボブ・ドール候補が戦った年で、同年の予測だけでなく、過去をさかのぼって大統領選の勝者を割り出すモデルが紹介された。

近年になると、主な予測モデルだけで9つも登場している。すべて米大学に在籍する政治学者が公表しているものだ。いくつか紹介したい。

ニューヨーク州立大学バッファロー校のジェームズ・キャンベル教授のモデルは、過去にさかのぼっても「ハズレ」のない予測を出している。

今年の予測は「ヒラリー勝利」である。同教授が使う指標は、民主・共和両党の全国大会前後の支持率の推移、第2四半期のGDP(国内総生産)実質成長率、政権を担う政党が何年継続しているかを測っている。

8月26日時点でのヒラリーとトランプの勝率は51.2%対48.6%。ヒラリーに軍配が上がっている。同教授の予測モデルだけでなく、他のモデルも数式化されて小数点まで割り出されている。

ジョージア州にあるエモリー大学のアラン・アブラモウィッツ教授のモデルも「勝率」は100%。なにしろ1948年からデータを取り始めて、これまで1度も外していない。

今年の同教授の予測はなんと「トランプ勝利」である。筆者は10年以上前から両教授の予測を見ているが、これまでは予測が一致していた。だが今年初めて予測が割れている。

同教授が使う指標は、現職大統領の6月末時点でのギャラップ調査の支持率、第2四半期GDPの実質成長率、現職大統領が1期目か2期目かの3点である。前出のキャンベル教授との差異は、現職大統領の支持率か候補の支持率かの違いだけだ。

入手可能な情報をすべて使うアームストロング教授

ブラモウィッツ教授の予測数値は51.4%対 48.6%で、キャンベル教授と真逆の結果である。ただ前出の2教授が使う指標が3点だけということが多少、気になる。

予測モデルの発案者の1人として忘れるべきではないのが、ペニンシルバニア大学ウォートンスクールのJ・スコット・アームストロング教授である。

同教授は政治学者ではなくマーケティングの研究者で、ビジネススクールの教授らしく入手可能なあらゆる情報を使い、数値化してエラーが生じない予測を試みている。しかも1日1回のペースで数値を更新している。

支持率や経済指標だけでなく、民間の予測やアイオワ電子市場の勝率予測まで考慮する点に特徴がある。

アームストロング教授の最新の数字(9月29日)は、ヒラリーの52.3%に対しトランプが47.7%。今年の選挙は「ヒラリー勝利」と予測している。この数字は今年2月1日にアイオワ州で党員集会が始まった時からほとんどぶれていない。

当欄では3教授の予測結果を紹介したが、前述した主要9教授(3教授含む)の予測モデルでは7教授が「ヒラリー勝利」を、アブラモウィッツ教授を含む2教授だけが「トランプ勝利」と予測している。

ただ投票日までは1カ月以上ある。多くの方はあと2回残っている討論会での両候補のパフォーマンスや、不測の事態によって予測が外れる可能性があると考えるかもしれない。

けれども過去10年以上、インターネットによる情報量の増加などにより、約9割の有権者は現段階でどちらの候補に一票を投じるか決めている。

最新のウォールストリート・ジャーナルとNBCテレビの共同世論調査によると、討論会を観て心が動かされ、支持候補を替える可能性のある有権者は11%に過ぎなかった。

つまり、討論会は自身の支持する候補がどういった討論をするのかを確認する場になっているのだ。1960年のジョン・F・ケネディ対リチャード・ニクソンのテレビ討論の時代とは討論会の意味合いが違う。

堀田モデルの内容と結果

筆者は一応、大統領選をライフワークと公言しており、1992年の予備選からずっと取材を続けている。そうした経験も踏まえ、おこがましいが「堀田モデル」を作っている。

指標にしているのは以下の6つである。

(1)過去1年の世論調査5社(ロイター、ニューヨーク・タイムズ、ギャラップ、キニアピッグ、エコノミスト)の支持率の中央値 (2)集金額 (3)選挙対策本部の組織力 (4)候補の資質 (5)経済指標(最新の1人あたりの経済成長率、失業率、インフレ率) (6)ガソリン価格

以上の指標を元に一般投票の獲得率を計算している。

自身のブログでは今年6月にヒラリー勝利を予測し、得票率を51%とした。ただ第3政党の候補として、リバタリアン党のギャリー・ジョンソン候補と緑の党のジル・ステイン候補が出馬している。

ジョンソンは全米50州で、ステインは最低45州で投票用紙に名前が刻まれる。米大統領の歴史の中で第3政党の候補が勝ったことはなく、今年も両者が勝つ可能性はほとんどゼロに等しい。

ここまで紹介した政治学者の予測モデルには両候補が加味されておらず、紹介した数値はヒラリー・トランプ両候補がとり分ける値が示されている。しかしジョンソン・ステイン両候補はほぼ間違いなく計1000万票超を獲得するので、ヒラリーとトランプの票数は自ずと減る。

いずれにしても、実際に4人が票をとり分けることになり、「堀田モデル」ではヒラリーが47%、トランプが43%、ジョンソンが7%、ステインが3%で、「ヒラリー勝利」と予測する。

もちろん予測に過ぎないが、かなり近いものになると考えている。

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