6/8ダイヤモンドオンライン 北野幸伯『「AIIB」後~米国の逆襲で、激変する日米中ロのパワーバランス』記事について

一昨日のBS日テレ「深層News」に宮家邦彦と朱建栄が出演していました。朱建栄は7ケ月も上海で監禁されたこともあって、中国の肩を持つ発言ばかり。(以前もそうでしたが)。朱の発言は他の中国人同様論理がムチャクチャ。中国にとって都合の悪い話になるとすぐ論理のすり替えをする。「中国だけが埋立している訳でない」(中国がやったから対抗上か、先制防御の意味だろうに。規模が違いすぎるし、中国と違って将来ミサイル基地にとか考えていないでしょう)、「戦争中は西南諸島(西沙諸島と南沙諸島?)は台湾が統治していた」(台湾と言う国はなかった。あるとすれば日本の統治だが、戦争中にそんな島が価値があったかどうか)とか。宮家が「日本の外務省は中国が領有権を主張するのであればキチンと説明してくださいと言っている」と言ってもそれは説明できるはずもない。盗み・パクリの得意な民族ですから。証拠があれば中国のことですから我先に出すでしょう。でっち上げてでも。それが出て来ないのはないからです。日本の尖閣領有を認めた中国の地図を日本が出した時に中国は何と言いましたか。「百枚、千枚でも出せる」と大見得を切ったにも拘わらず出して来ないではないですか。ないからです。言ったもの勝ちの発想でしょう。そう言わないとクビでしょうから。証拠のあるなしは関係なし。中国が如何に法治国家でないかという事です。法治国家であれば、挙証責任は訴える側にあり、明確な証拠が必要です。韓国の慰安婦のように証言だけで断罪するのでは法治国家とは言えません。明確な証拠が必要です。

日本は日米同盟機軸でしか生きる道はありません。核保有が理想ですが、時間的余裕がなければ、米国と早くニュークリアシエアリングすべきです。中国は基本的に「騙す人が賢く、騙される人が馬鹿」という価値観の民族ですから、まともに付き合ったら経済的な損失はおろか精神的にスポイルされます。中韓のような人たちと付き合えば発想が彼らのようになるでしょう。日本人は敬して遠ざけるべき。天心、新渡戸、鈴木大拙の英語で書いた本を読んでみると良いです。彼らが白人に英語で日本人の立場を主張していますので。ゴマスリ日本人とは志の高さと美に対する意識の違いを感じさせてくれます。

記事

AIIB事件」で世界的に孤立した米国が、中国に逆襲をはじめている。一方、これまで「主敵」だったロシアとの和解に乗り出した。一方、「尖閣国有化」以降、戦後最悪だった日中関係にも、変化がみられる。

コロコロ変わり複雑! 大国間の関係は今、どうなっているのか?
 

「AIIB事件」以降、米国の対中戦略が大きく変わってきた。南シナ海における「埋め立て問題」で中国を激しく非難するようになったのだ。一方で、これまで最大の敵だったロシアとの和解に乗り出した。

 対する中国政府は、日本からの訪中団を大歓迎し、「日中和解」を演出した。“昨日の敵は今日の友”を地で行くほどにコロコロ変わり、複雑にみえる大国間の関係。いったい今、世界で何が起こっているのだろうか?


 2015年3月に起こった「AIIB事件」は、後に「歴史的」と呼ばれることになるだろう(あるいは、既にそう呼ばれている)。

 3月12日、もっとも緊密な同盟国であるはずの英国は、米国の制止をふりきり、中国が主導する「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)への参加を決めた。その後、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、韓国、イスラエルなども続々と参加を表明し、米国に大きな衝撃を与えた。


 この問題の本質は、「親米国家群が米国の命令を無視し、中国の誘いに乗ったこと」である。「誰もいうことを聞かない国」を、はたして「覇権国家」と呼ぶことができるだろうか?「AIIB事件」は、「米国の支配力衰退と、中国の影響力増大」を示す歴史的な出来事だったのだ。しかし、米国は、あっさり覇権を手放すほど落ちぶれていない。



「米国は必ず『リベンジ』に動くだろう」。筆者はそう確信し、米国の過去の行動から予想される「リベンジ戦略」について書いた(詳細はこちらの記事を参照)。そして米国は、はやくも予測通りの行動をとりはじめている。


「南シナ海埋め立て問題」で 緊迫する米中関係

 もっともわかりやすいのは、米中関係が急に冷え込んできたことだろう。これは、特に世界情勢を追っていない人でも感じているはずだ。表向きの理由は、「中国が南シナ海で大規模な埋め立てをしていること」である。たとえば、米国のカーター国防相は5月27日、中国の行動を厳しく批判した。(太線筆者、以下同じ)



<米国防長官、中国を非難…「地域の総意乱す」
読売新聞 5月28日(木)12時6分配信

【ワシントン=井上陽子】カーター米国防長官は27日、ハワイ州で行われた米太平洋軍の司令官交代式で演説し、南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で岩礁埋め立てや施設建設を進める中国の動きについて「中国は、国際規範や、力によらない紛争解決を求める地域の総意を乱している」と強く非難した。>



 そして、数ヵ月前には想像もできなかったことだが、「米中軍事衝突」を懸念する声が、あちこちで聞かれるようになった。



<米中激突なら1週間で米軍が制圧 中国艦隊は魚雷の餌食 緊迫の南シナ海
夕刊フジ 5月28日(木)16時56分配信


 南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島周辺の領有権をめぐり、米中両国間で緊張が走っている。

 軍事力を背景に覇権拡大を進める習近平国家主席率いる中国を牽制するべく、米国のオバマ政権が同海域への米軍派遣を示唆したが、中国側は対抗措置も辞さない構えで偶発的な軍事衝突も排除できない状況だ。>

「中国が、他国と領有権問題を抱える場所での埋め立てをやめないから米国が怒っているのだ」というのは、「表向き」の理由に過ぎない。

 なぜなら、この問題は以前から存在していたからだ。中国が本格的に埋め立てを開始したのは、13年である。そして14年5月、フィリピン政府は、ミャンマーで開かれたアセアン首脳会議の場でこの問題を提起し、中国に抗議した(フィリピンは、中国が埋め立てを進める場所は、「自国領」と主張している)。


 つまり、この問題は、1年前には全世界の知るところとなっていた。ところが、米国はごく最近まで、この問題を事実上「無視」「放置」していた。米国が、急に中国の動きを大々的に非難しはじめたのは、「裏の理由」(=AIIB事件)があるからだろう。


中ロ両方は敵に回せない! 突如ロシアとの和解に動き出した米国

 前回の記事で筆者は、米国が中国にリベンジするにあたって、「ロシアと和解する可能性がある」
と書いた。米国はこれまで、「敵に勝つために、他の敵と組む」ことを繰り返してきたからだ。

 たとえば、米国は第2次大戦時、日本とナチスドイツに勝つために、「米帝打倒」を国是とするソ連と組んだ。戦後は、敵だった日本とドイツ(西ドイツ)と組み、ソ連と対峙した。1970年代にソ連の力が増してくると、米国は中国との和解に動いた。


 こういう過去の行動を見れば、米国がロシアと組む可能性は否定できない。誰がどう考えても、中国・ロシアを同時に敵に回すより、ロシアを味方につけて(少なくとも中立化させて)中国と戦うほうがいい。では、「AIIB」後、米ロ関係にどんな変化が生じているのだろうか?

 米国のケリー国務長官は5月12日、ロシアを「電撃」訪問した。


<露訪問の米国務長官、ウクライナ停戦履行なら「制裁解除あり得る」
AFP=時事 5月13日(水)7時13分配信


【AFP=時事】米国のジョン・ケリー(John Kerry)国務長官は12日、ロシアを訪問し、ウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領とセルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相とそれぞれ4時間、合わせて8時間に及ぶ会談を行った。

 その後ケリー氏は、ウクライナの不安定な停戦合意が完全に履行されるならばその時点で、欧米がロシアに科している制裁を解除することもあり得るという見解を示した。>


 引用部分は短いが、非常に重要な内容を含んでいる。まず、ケリー(そして、ケリー級の政府高官)のロシア訪問は、「クリミア併合後」はじめてだった。つまり、「ケリーが来た」こと自体が、ロシアにとっては「大事件」だった。


 そして彼は、プーチンと4時間、ラブロフ外相と4時間、計8時間も会談している(テーマは、シリア、イラン、ウクライナ問題だったと発表されている)。

 個人でも会社でもそうだが、仲良くしたくない相手とは、長く話さないものだ。「長話」はつまり、米国側もロシア側も「仲直りしたい」という意思があるということだろう。そして、ケリーは決定的なことをいった。


<ケリー氏は、ウクライナの不安定な停戦合意が完全に履行されるならばその時点で、欧米がロシアに科している制裁を解除することもあり得るという見解を示した。>



「制裁解除もあり得る!」これも、「AIIB事件」前には、想像できなかった事態である。ここには書かれていないが、ケリーはこの訪問中、「クリミア問題」を一度も口にしなかったという。つまり「クリミアのロシア領有権を認めることはできないが、『黙認』で『手打ち』にしたい」ということではないだろうか?


 このように米国は、ロシアとの和解に動いている。理由は、中国との戦いに集中するためだろう(ちなみに、米国は、中東最大の仮想敵イランとの和解にも動き、イスラエルから激しく非難されている)。

中国が日本に擦り寄る本音は やはり「日米分断」


 もう一つ、「AIIB」後の目に見える変化について触れておこう。そう、中国が日本に「擦り寄ってきた」件だ。習近平は5月23日、中国を訪問中の日本使節団の前に姿を現し、日本に「ラブコール」を送った。

<「朋(とも)あり遠方より来る、また楽しからずや。
3000人余りの日本各界の方々が遠路はるばるいらっしゃり、友好交流大会を開催する運びになった。われわれが大変喜びとするところだ」


 習氏は23日夜、北京の人民大会堂で開かれた交流式典に突然姿を見せ、孔子の言葉を引用しながら笑顔であいさつした。


 会場では二階氏とも面会し、安倍首相の親書を受け取り、「戦略的互恵関係を進めていけば、日中関係はいい結果になると期待している。安倍首相によろしく伝えてほしい」と語った。>(夕刊フジ 5月25日)

 これは、なんだろうか?これまで何度も書いてきたが、中国は、12年9月の「尖閣国有化」をうけて「反日統一共同戦線戦略」を作成した。その骨子は、


1.中国、ロシア、韓国で、「反日統一共同戦線」を作る。


2.日本には、北方4島、竹島、そして「沖縄」の領有権もない。


3.「反日統一共同戦線」には、「米国」も参加させる。

(驚愕の「対日戦略」の全貌はこちらの記事で詳しく解説している)。

 

 この戦略に沿って中国は、全世界、特に米国で、「反日プロパガンダ」を大々的に展開してきた。その効果は十分あり、13年12月26日に安倍総理が靖国を参拝すると、世界的「大バッシング」が起こった(小泉総理は、在任中6回参拝したが、騒いだのは中韓だけだった)。

 中国の「日米分断作戦」は成功しつつあったが、「AIIB事件」と安倍総理の「希望の同盟」演説で、日米関係は逆に「とても良好」になってしまった。

 では、今中国が日本に接近する理由はなんだろう?実をいうと「日米分断戦略」は、今も変わっていない。中国はこれまで「反日プロパガンダ」で、日米分断をはかってきたが、挫折した。


 では、「日中友好」を進めるとどうなるのだろう?実は、これも「日米分断」になる。たとえば、日中関係は、民主党・鳩山−小沢時代にもっともよかった。その時、日米関係は「最悪」だったのである。日本政府は、「反日統一共同戦線」戦略を常に忘れず、「中国が接近してくるのは『日米を分断するため』」ということを、はっきり認識しておく必要がある。


米国を信頼していいのか?
日本はどう動くべきなのか


 今、よほど鈍感な人でないかぎり、「米中関係が急に悪化してきた」ことに気がついている。そして、多くの「反米論者」は、日本が米国につくことに反対で、「米国はハシゴを外す!」と警告している。

 彼らの主張は「日本が米国を信じて中国と争っていると、米国は、突然中国と和解し、日本は単独で中国と戦うハメになり、ひどい目に遭う」ということ。要するに米国は「日本と中国を戦わせ、自分だけ漁夫の利を得ようとする」というのだ。

 これは「まっとうな指摘」と言わざるを得ない。われわれは、大国が「敵」と戦う戦略には、大きく2つあることを知っておく必要がある。

1.バランシング(直接均衡)
…これは、たとえば米国自身が「主人公」になって、中国の脅威と戦うのである。

2.バックパッシング(責任転嫁)…
これは、「他国と中国を戦わせる」のだ。もっとわかりやすくいえば、「米国は、日本と中国を戦わせる」のだ。

  そして、事実をいえば、どんな大国でも「敵国と直接対決するより、他の国に戦わせたほうがいい(つまり、2のバックパッシングの方がいい)」と考える。リアリストの世界的権威ミアシャイマー・シカゴ大学教授は言う。



<事実、大国はバランシングよりも、バックパッシングの方を好む。
なぜなら責任転嫁の方が、一般的に国防を「安上がり」にできるからだ。>
(大国政治の悲劇 229p)



「米国が直接、中国と戦うより、日本に戦わせたほうが安上がり」。ひどい話だが、これが世界の現実である。

 そして、われわれは、「バックパッシング」の例を知っている。たとえば、03年の「バラ革命」で、親米反ロ政権ができたジョージア(旧名グルジア)。この小国は08年8月、ロシアと戦争し、大敗した。そして、「アプハジア」「南オセチア」、2つの自治体を事実上失った(ロシアは、この2自治体を「独立国家」と承認した)
。

 もう1つの例は、ウクライナである。14年2月の革命で、親ロシア・ヤヌコビッチ政権が打倒され誕生した、親欧米・反ロ新政権。オバマ大統領は最近、CNNのインタビューで、ウクライナ革命が「米国の仲介で実現した」ことを認めた(その映像は、ここで見ることができる)。

 つまり、ウクライナは、米国に利用され、ロシアと戦うハメになったのだ。結果、ポロシェンコ政権はクリミアだけでなく、ドネツク州、ルガンスク州も事実上失ってしまった。これらの例から、日本は「米国に利用されること」には、常に敏感であるべきだ。

では、日本はどうふるまうべきなのか?「大原則」は2つである。

1.日本は、安倍総理の「米議会演説」路線で、ますます米国との関係を強化していくべきである。結局、日米同盟が強固であれば、中国は尖閣・沖縄を奪えないのだから。

2.しかし、中国を挑発したり、過度の批判はしない。これは「バックパッシング」、つまり米国にハシゴを外され、(米国抜きの)「日中戦争」になるのを防ぐためである。

 中国を批判する際は、「米国の言葉を繰り返す」程度にとどめよう。日本は、米国に利用されたグルジアやウクライナ、中国に利用されている韓国のような立場に陥ってはならない。

 日本が目指すのは、あくまで「米国を中心とする中国包囲網」の形成である。だから、米国が先頭に立って中国の「南シナ海埋め立て」を非難している現状は、日本にとって、とても良いのだ(もちろん、油断は禁物だが)。

6/4日経ビジネスオンライン 鈴置高史『ついに「核武装」を訴えた韓国の最大手紙 「米国は今度こそ許してくれるはずだ……」』記事について

韓国人の方がまともに見えます。脅威に対してどう手を打ったらよいかを真剣に考えたら、核保有も選択肢の一つになって然るべき。日本に核を持たせたくないのは米中露全部そうでしょう。ですから左翼を使って日本の核保有を邪魔してきました。韓国が核保有すれば当然日本も保有するようになるから米国は韓国の核保有に反対するでしょうけど。

問題は国内にいる敗戦後利得者です。自分たちが国を売ってきて利益を得て来た権益を手放したくないものですから「今そこにある危機」も見ようとしないし、分かっていても米国ではなく中国に隷従した方が良い(中国に代表されるように左翼は金に汚い)と思う人がいることです。国民の大多数が政治に無関心ですからいいようにやられる訳です。

弱腰のオバマを信じることはできません。自ら生き延びることを考えるのであれば、真剣に国民一人ひとりが、偏向メデイアや学者の権威に関係なく、自分の頭で考える必要があります。今の日本は享楽主義に染まっているといってよいのでは。GHQの3S(sex、screen、sports)政策が戦後70年蝕んできました。子子孫孫や国家のために何ができるかを自分の生き方として考えないと。

「安全の欲求」はマズローの欲求5段階説でも生理的欲求の次段階の根源的な欲求として、これが確保されてやっと上位の欲求に行くという説です。高邁に平和論を唱える人達は中国の南沙での侵略行為についてどうして黙っているのでしょう。第二次大戦の日本の行為を非難するのであれば当然今の中国を非難すべき。それができないのであれば、過去の日本の行動も非難できないと言うべき。(小生は日本軍の中国駐留は欧米列強と同じで侵略とは思っていませんが。中国人に聞きたい。欧米の取った行動と日本の取った行動とどこが違うのか教えてほしい。アへン戦争、円明園の焼き討ちとか。満州は漢人の土地ではなく(万里の長城の北側にある)、清朝(満州族の土地)の故郷です。詳しくは「紫禁城の黄昏」(レジナルド・ジョンストン著)を是非読んで戴きたい。見方が変わるでしょうから。)

安全保障を真剣に考えないと。右翼と言って発言を封じ込める時代は終わったというべき。覚醒してほしい。

記事

誰からも止められず、核武装を着々と進める北朝鮮。焦った韓国人が「我々も核を持つ」と言い出した。

次の核実験で宣言

鈴置:韓国の朝鮮日報が「核武装」を訴えました。朝鮮日報は韓国で最大の部数を誇る保守系紙です。日本の新聞業界で言えば、読売新聞のポジションと似ています。

 書いたのは楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹。政治部長、編集局長を経て論説委員会入りした、韓国保守論壇の本流中の本流の人です。それもあって、この「核武装論」は見過ごせません。

 以下は、その「金正恩も、恐れさせてこそ平和を守る」(5月21日、韓国語)のポイントです。

  • 朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は、北朝鮮のミサイルを先制打撃するシステムであるキル・チェーンと、韓国型ミサイル防衛(MD)で十分(北の核に)対応できると言う。だが、それが技術的に可能になるには相当の時間がかかる。
  • さらに核保有国を相手に、成功するか不確実な先制攻撃をするというのは机上の空論だ。今の韓国にそれを命令する大統領も、実行する軍も、耐える国民もいない。
  • MDの重要手段である終末高高度ミサイル防衛(THAAD=サード)も、数十発のミサイルを同時に発射された場合、対応できない。
  • 国家間の平和の本質は恐怖の均衡だ。「自分も死ぬ」という恐怖が双方にあってこそ戦争は防げる。核国家である北と、非核国家である南の間の最も大きな危険は、恐怖の不均衡にある。
  • それを均衡させるために、有事の際は金(正恩=キム・ジョンウン=第1書記)を含む北の指導部を「最優先」で「必ず」除去するという斬首作戦を、対北抑止戦略の第1の軸に据えるべきである。
  • 第2の軸は核武装の選択権を持つことである。今後、北が核によって挑発した時に、米国の拡大抑止の実効性がないことが確認された場合には、韓国も即座に核武装すると予告しておくのが核選択権だ。
  • 北が4回目の(次の)核実験を実施し、核ミサイルの実戦配置が確認された瞬間が、大韓民国が核選択権を明らかにすべき時期と思う。
  • 月城原子力発電所(慶尚北道慶州市)の重水炉を利用すれば、核武装には2年もかからない。我が国の技術をもってすれば、核実験の必要もない。

1年半以内に核選択権

 重水炉から出る使用済み核燃料は、核兵器への転用が比較的容易です。1970年代に朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が月城原発への重水炉の導入を決めたのは、核兵器開発を念頭に置いたためと言われています。

—「核武装論」とはいえ、今すぐの話ではないのですね。

鈴置:北は近く4回目――次の核実験を実施する可能性が高いのです。1回目は2006年、2回目は2009年、3回目は2013年です。このペースから判断して、2015年か2016年に4回目が実施されると見られています。

 そして4回目の実験で、核弾頭が実用化段階に達して――ミサイルに載せられるほどに小型化して――実戦配備される、と見る専門家が多い。

 ですから、もし楊相勲論説主幹の主張が採用されれば、1年半以内に韓国が「核選択権」を宣言する可能性が増すのです。

「弱腰のオバマ」は信頼できない

—でも「核選択権」の宣言から、次の段階の「核武装」に進むには条件が付いています。

鈴置:その通りです。「米国の拡大抑止の実効性がないことが確認された場合」との条件です。「米国の拡大抑止」とは、北朝鮮が韓国を核攻撃すれば、必ず米国は北を核報復する――との見通しから、北が韓国攻撃を思いとどまる、という意味です。

 ただ、韓国人はここを――米国が本当に核報復してくれるかを、疑い始めたのです。韓国が北によって核攻撃された際、米国が在韓、在日米軍基地、あるいはグアムへの核攻撃のリスクを甘受してまで北朝鮮を核攻撃してくれるのかと、韓国人は考えるようになったのです。

 

 この記事では触れていませんが、米国の大統領が「弱腰のオバマ」であることも、韓国人の不安をかきたてています。

 一方、北の指導者は粛清で権力を維持する、何をするか分からない若者です。韓国人にとっては最悪の組み合わせなのです。

 もっとも米国は北朝鮮の核の脅威の増大を受けて、日本とはMDを共同で開発する一方、在韓米軍基地やグアムへのTHAAD配備を計画するなど、努力しています。

侵攻後に「核を使うぞ」

—米国の拡大抑止、要は「核の傘」ということでしょうが、それが破れているのではないかとの恐れですね。

鈴置:その通りです。日本人だって「実は破れ傘ではないか」と心配してもいいのですが。

—韓国人はなぜ、米国を疑うのでしょうか。

鈴置:「米国に捨てられた」記憶があるからです。まずは、朝鮮戦争の引き金になったアチソン国務長官の声明。「韓国は米国の防衛線の外にある」ことを表明したもので、1950年の話です。

 もっと古くには米国と日本が、朝鮮とフィリピンの支配権をお互いに認め合った1905年の「桂―タフト協定」があります。

 韓国紙はいまだに「米国から捨てられる不安感」を大きく書きます(「日米の『同時格下げ宣言』に慌てる韓国」参照)。アチソン声明も桂―タフト協定も、彼らにとっては昔の話ではないのです。

 北朝鮮と領土を接する韓国ならではの、極めて困惑するシナリオもあります。北が通常兵力による攻撃と、核威嚇を組み合わせたらどうなるか、考えて下さい。

 北が韓国に侵攻した場合、米韓両軍は空軍の攻撃により北朝鮮の兵站線や指揮部を叩きます。これで侵攻を食い止める計画であり、空軍力が北の冒険主義を抑止しているわけでもあります。

 でも今後は、核武装した北が「爆撃への報復として核兵器を使うぞ」と恫喝するかもしれません。米韓両国は逡巡し、韓国の一部を北に占領されたまま、休戦に応じる羽目に陥るかもしれないのです。

未曾有の恐怖と混乱

—核を持った北は、通常兵力の使用を逡巡しなくなる、ということですね。

鈴置:その通りです。さらに注目すべきことがあります。このケースでは、北は核を使っているわけではない。ただ「使うぞ」と言うだけです。

 米国はその北に対し核攻撃はかけにくいのです。そして米韓両軍は、通常兵力による反撃もしにくくなってしまいます。

 楊相勲論説主幹の言う「北が核によって挑発した時に、米国の拡大抑止の実効性がないことが確認された場合」とは、このようなケースを念頭に置いているのです。

 この記事では、2010年に砲撃された延坪島を含む西海5島――ソウル西北の黄海上にあって、北朝鮮と目と鼻の先で対峙している韓国領の島です――に北朝鮮が侵攻する可能性が高い、と指摘しています。

 さらに楊相勲論説主幹は「こうした北の挑発に対抗できない場合、韓国社会には未曾有の恐怖と混乱、内紛が起きるであろう」と警告しました。

 結局、核を持った北朝鮮が次回、小規模なものでも通常戦力を行使した際に、韓国が「核武装」に動く可能性が大きいのです。その前に「核選択権」を宣言してあれば、ですが。

「核選択権」の元祖

—「核選択権宣言論」は韓国でどう受け止められていますか?

鈴置:掲載されて2週間経った今も、メディア上に大きな反応は見られません。ただ、この記事が掲載される少し前の5月12日に、保守運動の指導者、趙甲済(チョ・カプチェ)氏が同様の主張を訴えています。

 実は、趙甲済氏こそが「核選択権」の元祖的存在です。左派から「極右」と批判されるこの人の意見を、大手紙がついに掲載したのです。韓国の保守指導層に「核選択権」の合意が形成されつつあるように見えます。

 趙甲済氏の記事「核ミサイル実戦配備に対応する政策を国民投票に付せ!」(韓国語)の論旨は以下です。

  • 大韓民国の憲法72条には「大統領は必要だと認めれば外交、国防、統一、その他の国家の安危に関する重要な政策を国民投票に付すことができる」とある。大統領は「国民投票案」に「自衛的核武装の権利の確認」を入れることができる。
  • 国連と国際社会が北韓政権の核武装を防ぐことができなかったことにより、大韓民国は国家の生存次元で核武装を含むすべての自衛的な手段を考究する権利を持つとの宣言だ。国民は必要なら核拡散防止条約(NPT)も脱退する権限を政府に付与する。
  • NPT第10条の規定によれば、韓国は北韓の核武装を防げなかったNPT体制から脱退する権利がある。
  • 核選択権を政府に委任するとの案が国民投票を通過し、政府がNPT脱退を検討した瞬間、韓国が核問題解決の主導権を握ることになる。中国と北の指導部に深刻な悩みの種をもたらすであろう。

 楊相勲論説主幹の記事と比べ、より具体的です。「国民投票にかけて核選択権の権威を増す」とか「NPTからの脱退を検討する」とか、核武装が世界に受け入れやすくなる手法を提言しています。

 なお、趙甲済氏も「北韓の潜水艦が釜山港のそばから核ミサイルを撃ったなら?」(5月9日、韓国語)で、「西海5島への攻撃と、核を使うぞとの威嚇により、米国は北朝鮮にどんどん譲歩するのではないか」との懸念を表明しています。

70%弱が「核武装に賛成」

—国民はどう考えるでしょうか。

鈴置:被爆国、日本とは大いに異なり、韓国人には核兵器への忌避感が薄い。例えば、世論調査すると70%近い人が――3分の2の韓国人が核武装に賛成します。

 

 例えば、3回目の核実験(2013年2月12日)の直後に韓国ギャラップと、峨山政策研究院が国民に聞いています。

 核武装に賛成した人はそれぞれ64%と66.5%に上りました(「今度こそ本気の韓国の『核武装論』」参照)。もっとも、大手メディアが核武装を主張することはタブーだったのです。

 朴槿恵大統領の就任式の日の2013年2月25日――3回目の核実験の直後でしたが、朝鮮日報は社説で核武装を検討する必要性を説きました。

 ただ、この社説「北の核を切りぬける新しい国家安保戦略が必要だ」では「核」という単語は一切使いませんでした(「今度こそ本気の韓国の『核武装論』」参照)。

 「北朝鮮から核兵器で脅されている韓国としては、国際協力などとは別次元の軍事的・政治的な対処方法を独自に模索するしかない」と、読む人が読めば分かる書き方に留めたのです。

原子力協定改定で”解禁”

—なぜタブーだったのですか?

鈴置:朴正煕政権(1963-1979年)が核武装に動き、米国に潰された過去があるからです。朴正煕大統領暗殺もそれに絡むとの見方さえ韓国にはあるのです。もちろん米国もそれをしっかりと覚えています。

 娘の朴槿恵大統領が初めて訪米した時、米議会調査局(CRS)は「U.S.-South Korea Relations」(米韓関係)という報告書で「韓国の核武装への希求」をはっきりと指摘しました(「『独裁者の娘』を迎える米国の険しい目」参照)。

 それに加え、2010年から韓国は米国と原子力協定の改定交渉に入り、ウラン濃縮や使用済み燃料の再処理の権利を要求していました。

 大手メディアが核武装論など書こうものなら、米国から「ウラン濃縮などの要求は核保有が目的だな」と見なされ、交渉が不利になるのが確実でした。

 2015年4月22日に、新たな米韓原子力協定が仮署名されたので、核武装論が”解禁”になった面もあると思います。

水中発射が最後の一撃

—5月9日に北朝鮮が「潜水艦から弾道ミサイルを水中発射する実験に成功した」と発表しました。これも韓国の「核武装論」の背中を押したということですか?

鈴置:ええ。それが最後の一撃となったと思います。北朝鮮の実験が本当に成功したか、疑問を持つ向きもあります。しかし、もし本当なら、米韓両国は対北軍事戦略を根本から見直す必要に迫られます。

 これまでの計画では、北が核ミサイルを発射しようとしたら、それを察知し、発射前にミサイル基地に攻撃をかける――キル・チェーン――で防ぐつもりでした。

 でも「察知」が可能なのは陸上のミサイル基地。水面下から撃たれたら発射前に察知するなんて、とてもできないのです。

 このため、韓国が北の核ミサイルを防ごうと思ったら、韓国も核ミサイルを持つしかない――との結論に至るのです。

 日本とは異なって、国民の間に忌避感がありません。今後「核への希求」が一気に表面化する可能性があります。

核武装論のバイブル

 趙甲済氏は、韓国の核武装や、その前段階の「核選択権」の必要性を説いた本を、2014年に日本語で出版しています。『韓国の自衛的核武装論』です。

 朴正煕時代の核武装の試みと、米国の牽制によって断念した経緯を丹念に取材し書いています。韓国の参考になるとして、インドやイスラエルの核開発にも詳しく言及しています。韓国の核武装論のバイブルといえる本です。

—核武装に関し、韓国政府はどう考えているのでしょうか。

鈴置:分かりません。ただ言えることは保守の指導層には、核武装のような戦略的動きは朴槿恵政権にはできないと見る人が多いのです。

 ポピュリズムそのままに、その場その場で一番受けそうな行動をしているだけ、との冷ややかな見方です。

 だからこそ、核武装論者は「核選択権の宣言」や「国民投票」へのムードを盛り上げて、政権をそちらに動かそうとしているのでしょう。

日本も駒のドミノ

—「核武装するぞ」と韓国が言えば、日本や台湾もその方向に動く。それを嫌う中国が北から核兵器を取り上げるはず、との狙いも核武装論者にはあるのですか?

鈴置:そうした「口先介入によるドミノ効果」も、あることはあるでしょう。が、本音は「自分も核を持つ」ことではないか、と思います。なぜなら「口先介入によるドミノ」はさほど効果がないと韓国では見なされ始めているからです。

 趙甲済氏は『韓国の自衛的核武装論』の第4章「北核の後援者は中国」で、米国に対抗するため中国こそが北朝鮮などに核を拡散させてきたのだと説きます。

 そして第5章「イスラエル式の秘密核開発」(178頁)などでは「北は米中の間で緩衝の役割をしているため、中国は日本が核武装をすることがあっても、北の核武装を止めないだろう」とのリー・クアンユー・シンガポール首相の発言を引用しています。

 もし、核武装論者が期待するなら、中国ではなく米国でしょう。オバマ政権は北朝鮮にまんまと騙されて以来、北の核問題からは身を引いています。

 北が核やミサイルを実験しても非難するだけ。「戦略的忍耐」と呼んでいますが、はっきり言えばこの問題を放置したままなのです。

 6月16日に米韓首脳会談がワシントンで開かれます。朴槿恵大統領は、この場で切羽詰まる北の核問題の解決をオバマ大統領に迫るべきだ、との声が韓国にあがっています。

朴正煕の復讐劇

—「核武装論」を持ち出せば、オバマ大統領も少しは本気になって北の核阻止に動くかもしれない、ということですね。

鈴置:もう1つあります。「暗黙に」でしょうが、米国が韓国の核武装を認めるかもしれない、との期待が韓国にはあるのです。

 カーター(James Earl “Jimmy” Carter, Jr.)政権(1977-1981年)時代に大統領国家安全保障担当補佐官を務めたブレジンスキー(Zbigniew Kazimierz Brzezinski)氏が、2012年に『Strategic Vision: America and the Crisis of Global Power』を書きました。

 この本の114ページでブレジンスキー氏は「米国の力が弱まると、その核の傘の信頼性が落ちる。すると韓国や台湾、日本、トルコ、ひいてはイスラエルでさえ新たな核の傘を求めるか、自前の核武装を迫られる」と指摘しています。

 安全保障の専門家として名高いブレジンスキー氏が、韓国の核武装を自然な流れと認識し、食い止めるべき対象とは書かなかったのです。

 そしてこの本を、韓国各紙は一斉に社説で取り上げています(「『中国に屈従か、核武装か』と韓国紙社説は問うた」参照)。

 米国の大きな変化に気づかない日本人が「寝ぼけて」いるのであって、韓国人はそれを織り込んで「自前の核」を語り始めているのです。朴正煕の屈辱の歴史を塗り直す核武装を――。

6/4JBプレス 北村淳『南シナ海への認識が甘すぎる日本の議論 人工島の出現で迂回航路も危険な状態に』記事について

中国は西側世界が何もできないことを見越して攻めにかかってきています。欧州にとっては南シナ海は遠く、ウクライナのように近くてロシアの脅威に対抗するのを優先するでしょう。ましてや中国との貿易を考慮に入れれば、東南アジアの国々との領土係争地が中国のものになろうと関係ないと考えていると思います。アメリカも腰が引けているのも中国は見ているのでしょう。オバマは戦争できないと見てオバマが大統領の間に取れるものは取ろうという発想です。

ここに書かれていることが現実になれば、日本で生産するのはコストが高くなり、全産業が壊滅します。農業だって石油が高騰すればコスト高になります。失業者が山のように出るという事です。戦争せずに中国の野望を挫くには経済封鎖しかないでしょう。AIIBは勿論欧州も参加取りやめ、自由主義国は天安門事件に中国に課した経済制裁をするしかないでしょう。G7も非難声明だけでなく、中国の行動を見て次の段階まで来たらこの制裁、次はこの制裁というのを決める会議にすればやる意味も出ようというもの。イラン・北朝鮮・キューバには経済制裁を課してきたではないですか。中国は規模の問題なんて言っても、借金を重ねて大きくなってきただけです。返済できないし、するつもりもないでしょう。いざとなれば武力に訴えてでも借金を棒引きさせるでしょう。アメリカもここが正念場です。これ以上中国が大きくならないうちに罰を与えないと世界は暗いものになります。

日本も核武装して中国と対抗しないといけないのに、国会は集団的自衛権でグダグダやっています。日本国民も目先のことしか考えないから、相応の国会議員しか出てきません。昨日は新渡戸稲造について書きましたが、鳥内浩一氏の情報によると、新渡戸記念館のある十和田市の市長が「耐震強度の問題で廃館もやむなし」とのこと。偉大な先人の扱いを忘れた所業。財政的な問題があるのか、他の問題があるのか分かりませんが、歴史を大切にしない民族に明日はないと思います。県なり、国に相談するのが先で、それを市民に説明してからではないかと思います。国民も政治家を選ぶ時には良く人物を見て選んでほしい。

http://sp.kahoku.co.jp/tohokunews/201506/20150603_25008.html?utm_source=dlvr.it

記事

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南シナ海で接近する中国の沿岸警備隊の船舶(上)とフィリピンの補給船(2014年3月29日撮影、資料写真)。(c)AFP/Jay DIRECTO〔AFPBB News〕

安倍政権は日本国内での安全保障関連法案に関する説明では、中国の軍事的脅威を極力口にしていない。

 例えば、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威は繰り返し強調しているが、北朝鮮の弾道ミサイルとは比較にならないほど日本を脅かしている中国の弾道ミサイルならびに長距離巡航ミサイルの脅威(拙著『巡航ミサイル1000億円で中国も北朝鮮も怖くない』参照)はなぜか口にしたがらない。

 同様に、中国人民解放軍によって南シナ海を縦貫する海上航路帯を妨害される可能性についても沈黙を続けている。

南シナ海を機雷で封鎖するのは困難

 一方で、ホルムズ海峡でイランが機雷を敷設して海上航路帯を封鎖する可能性については安倍首相自らも繰り返し指摘し続けている。安保法制国会審議では「現時点では、ホルムズ海峡での機雷掃海しか、他国領域での自衛隊による集団的自衛権に基づいた武力行使は念頭にない」とまで公言している。

 もっとも、安倍政権はホルムズ海峡危機に関しては「機雷敷設による海峡封鎖」のみを想定しており、イランの地対艦ミサイルや潜水艦や小型攻撃艇それに航空攻撃といったアメリカ海軍が機雷戦以上に警戒している脅威に関しては何ら言及していない。

 日本政府は南シナ海の自由航行妨害という局面についても、このような思考回路の延長で想定しているようだ。つまり、「人民解放軍が機雷を敷設して南シナ海を封鎖する」というシナリオのみを対象にしており、南シナ海における中国軍事力の脅威は真剣に考えられていないように見受けられる。

確かに、日本にとって重大なチョークポイントとなるルソン海峡(バシー海峡とバリンタン海峡との総称=台湾とフィリピン・ルソン島の間の海峡部)を機雷により封鎖するのは、ホルムズ海峡を機雷で封鎖するようなわけにはいかない。海峡の最大幅一つをとっても、ホルムズ海峡が39キロメートルであるのに比して、ルソン海峡は250キロメートルにも及んでいるからである。

 さらに、広大な南シナ海を縦貫する航路帯のあちこちに機雷原を設置するにしても、いくら人民解放軍海軍がロシア海軍に次いで世界第2の機雷保有数(10万個と言われている)を誇っているとはいえ、極めて効率が悪い妨害手段と考えざるをえない。

 したがって、「航路妨害=機雷敷設による海峡あるいは海域封鎖」という単純な等式で考えるならば、南シナ海を封鎖するのは困難であり、いくら南シナ海が中国軍事力によりコントロールされても「重要影響事態」や「存立危機事態」とは見なしがたい。したがって、「南シナ海は迂回可能である」程度の認識が公言されることになったのであろう。

約1800キロ長くなる南シナ海の迂回航路

 しかしながら、南シナ海は迂回できるからといっても、中国によるコントロールが可能になってしまった場合、日本国民生活や経済活動が深刻に脅かされることにはなりえないのであろうか?

 現在、日本に原油や天然ガスその他の天然資源などを運搬するために、膨大な数のタンカーや貨物船が毎日ひっきりなしに南シナ海を航行している。そもそも、そうした船が「南シナ海を迂回」しなければならなくなる事態とは、中国共産党政府が「日本関連船舶の南シナ海での自由航行を妨害・阻止する」といった決断を下した事態を意味している。

 中国政府がこのような決断をした場合、人民解放軍は、日本に関係しない船舶にもダメージを与えてしまう可能性が高い機雷戦は行わず、日本関連船舶だけにターゲットを絞って、ミサイル攻撃・魚雷攻撃・爆撃・砲撃といった手段で航行を妨害するであろう。日本政府はそのことを覚悟せねばならない。

 そして、実際にタンカーに魚雷を打ち込む必要はなく、日本関連船舶が「南シナ海を航行した場合には、深刻な危害が加えられる」との認識を船会社に与えれば十分なのである。

そのような状況になっても日本向け物資を運搬しようとする船会社は、

「インド洋 → マラッカ海峡 → 南シナ海 → バシー海峡 → 西太平洋 → 日本」という南シナ海縦貫航路を避けて、「インド洋 → ロンボク海峡 → ジャワ海 → マカッサル海峡 → セレベス海 → 西太平洋 → 日本」という迂回航路を通航しなければならない。

 前者の中東産油国から南シナ海を北上して日本に至る航路はおよそ1万2200キロメートルであり、後者の迂回航路は、日本までおよそ1万4000キロメートルである。もっともこの迂回航路は、水深が浅いマラッカ海峡を通航できない超大型タンカー(UVLCC、30万トン超の原油を積載)などが平時においても利用している航路である。

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南シナ海航路(白色)と迂回航路(赤色)、大迂回航路(ピンク)

迂回の負担は燃料費だけではない

 大型タンカー(VLCC、20万~30万トンの原油を積載)で迂回航路を航行すると日本まで3日余計にかかることになり、燃料代も(もちろんタンカーごとに差があるが)およそ8万5000ドルから10万ドル余計にかかることになる(このような経済的理由によって、往復では1週間ほど無駄になるうえに燃料代も嵩んでしまう迂回航路を通過をせざるを得ない超大型タンカーは、建造されなくなってしまった)。

 もし燃料代だけを考えるのならば、迂回航路を通航した場合には、往復でおよそ2000万~2400万円の費用がかさむことになる。すると30万トン積みVLCCの場合、燃料代の増加分は1トンあたり67~80円程度となり、20万トン積みVLCCのそれは100~120円程度ということになる。すなわち迂回航路を経由したVLCCで運搬される原油1バレル(原油1トン=7.396バレル)あたりの燃料費増加分は“わずか9~16円”ということになる。原油1バレル60ドルすなわち7200円とすると、このような燃料代分の価格上昇は“取るに足りない額”ということになる。

 ところが、米海軍関係者や日本で船会社を営む専門家によると、燃料代の増加分だけで迂回航路経由の影響を論ずることは「論外」であるということになる。

 なぜならば、平時において迂回航路を通航するのとは違い、中国の軍事的脅迫により迂回航路を通航せざるを得なくなった場合には、国際海運マーケットが過敏に反応して船員費などが沸騰するとともに、船舶保険料も信じられないほど高騰することは必至であるからだ。

それに加えて、そもそも船員の確保そのものが極めて困難になると考えるべきである。というのは、日本船体の船員構成といえども、日本人は船長と機関長それに極めて少数の航海士と機関士だけであって、ほとんどの航海士、機関士、デッキ要員、機関部要員それに司厨員は外国人である(高級士官はクロアチア人、北欧系、台湾人、韓国人など、一般船員はフィリピン人、韓国人、中国人、インド人など)。したがって、中国に軍事的に圧迫された中での日本向け航海への乗組員調達は望み薄となるというのだ。

人工島出現により迂回航路も危険にさらされる

 さらに、日本にとって都合の悪いことに、日中間が上記のような険悪な関係に立ち至った場合には、南シナ海縦貫航路どころかマカッサル海峡経由の迂回航路すらも通航できなくなる可能性が現実のものとなりつつある。

 本コラムでも繰り返し取り上げているように、中国は南沙諸島の数カ所に軍事拠点としての人工島を構築している。そのうちファイアリークロス礁には3000メートル級滑走路が建設中であり、ジョンソンサウス礁をはじめその他の人工島にも本格的な軍用滑走路が出現するものと考えられている。

 それらの南沙諸島人工島の航空基地に人民解放軍戦闘機や爆撃機などが配備されると、迂回航路が通過するセレベス海やマカッサル海峡は人民解放軍戦闘機の攻撃圏内にすっぽりと入ってしまう。その外縁であるジャワ海やロンボク海峡その他のインドネシア海峡部だけでなくティモール海やオーストラリアの北西の要衝ダーウィンまでもが人民解放軍爆撃機の攻撃圏内に収まることになる。

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したがって、迂回航路を日本に向かって北上するタンカーも、中国軍戦闘機や爆撃機の攻撃の脅威に曝されることになり、マカッサル海峡経由の迂回航路は“危険回避”の役割を果たさなくなる。そのため、日本向けタンカーは、中国軍機による攻撃可能性がほぼ存在しない(そうでなければ乗組員は絶対に集まらない)以下のような“大迂回航路”を経由しなければならない。

「インド洋 → メルボルン沖 → 珊瑚海 → グアム沖 → 日本」

およそ2万2000キロメートルに及ぶ大迂回航路を通航する場合、航海日数は南シナ海経由の倍の6週間近くかかることになるため、もはや燃料費も無視しうるレベルではなくなってしまう。それに、航海日数が2倍になってしまうと、当然ながら必要な船腹数も船員数も全て2倍ということになる。そのため、中国軍機による攻撃の可能性はゼロでも、船腹数や船員の確保そのものが極めて困難になり、日本が必要とする原油や天然ガスの供給量は維持できなくなる。

やはり南シナ海は日本の死命を左右する

 中国は広大な南シナ海の8割以上の海域を“中国の海洋国土”と公言してはばからない。いくらアメリカや日本やオーストラリアが非難したからといって、中国がすでに巨額の建設費を投入している“中国の主権下における”人工島の建設を中止する見込みは全くない。

 中国に中止させる唯一の手段は、アメリカをはじめとする反中国勢力が人工島建設を武力によって阻止することであるが、当然それは中国との全面戦争を意味するため、実施可能性はゼロに近い。

 要するに、極めて近い将来に、南沙諸島に複数の航空基地や軍港を備えた強力な人民解放軍海洋基地群が誕生することは避けられそうもない。

ということは、日中関係が最悪の事態に陥った場合には、「南シナ海は迂回できる」などと言っていられない事態に日本国民は直面することになる。南シナ海は日本にとって「重要影響事態」も「存立危機事態」も発生しうる生命線であるとの認識を持って、安全保障関連法案に関する国会審議は進められなければならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6/2~6日経『変調 中国ビジネス』記事について

日経も中国の異変に気付きアリバイ作りを始めました。下の記事がそうです。今週ずっと特集していました。今まで中国進出を煽るだけ煽り、企業が苦しんできたことなどは全然報道してこなかったのに。「後から結うのは福助頭」(= Monday morning quarterback)でしょう。リスク管理が全然できない。中国を増長させた責任は日本のマスメデイアが大部分を負うべき。靖国問題、教科書問題、天安門事件後の天皇訪中等如何に中国を助けてきたか。それが南沙諸島の侵略に繋がっている訳です。いつも「平和」「平和」と唱えるだけで真に「平和」を実現しようとはしない似非平和主義者です。

中国から撤退するには時間がかかります。工商局、税務局等の認可を受けなければなりませんので。2年くらいはかかると見ておいた方が良いでしょう。日本人の経営者は債務(含む税、優遇措置)を支払わなければ中国から出ることはできません。経営者を中国人にするとjoyouの蔡みたいに堂々と不正をします。藤森も中国の実態を知らないで買収したのでしょうが責任問題です。辞任は当然でしょう。損失を払ってから辞めてほしい。株主は怒っているでしょう。裁判に訴えて勝てるつもりですかね。中国の司法は行政の一部で裁判官は賄賂を取るのが当たり前というのを知っていて言ってるのでしょうか。小生が中国の裁判・労働委員会で3勝1敗になった時と時代が違います。あの時の中国は外国の金と技術を欲しがっていましたから。今や外資を追い出そうとしている時代です。高い授業料です。他の日系企業も早く撤退した方が良いでしょう。

6/2もう逃げるしかない 中国ビジネス変調(ルポ迫真)記事

中国随一の経済都市、上海。空の玄関口、上海浦東国際空港にその日本人男性が現れたのは寒風吹き付ける1月の夜のことだった。「どこでもいい。国際線のチケットを1枚頼む」。切羽詰まった表情に気押されるように、発券カウンターの女性は日本行きのチケットを手配した。

 「支払いが確認できるまで放すわけにはいかない」。数時間前。男は上海市郊外の日系縫製工場で複数の取引先の中国人に詰め寄られていた。

 進出して20年。最盛期には200人の従業員を抱え、日本のアパレル大手に衣料品を供給してきた。安い労働力を活用して利益も上げていたが、この数年で急速に業績が悪化。ついに取引先に支払いすらできなくなった。

 日本の本社も資金を差し出す体力がない。仲裁役の中国人を挟みながら取引先にわびを入れ、返済の繰り延べを懇願するも形勢は明らかに不利。「生きて帰るには、逃げるしかなかった」。事情を知る関係者が語る。

 中国が対外開放して約40年。安くて豊富な労働力と巨大な市場をにらみ、日本企業は1980年代から続々と進出してきた。政治リスクに翻弄されながらも拠点を増やし、日系企業は2万社を超える。

 だが今の中国に少し前までの右肩上がりの成長は見込めない。この数年で一気に世界に名を知らしめた中国スマートフォン(スマホ)大手、小米(シャオミ)ですら成長に急ブレーキがかかる。

 4月末の週明けの早朝。日系電子部品メーカーが北京オフィスで東京と結んで開いたテレビ会議。日本人幹部らは中国人営業マンの報告に凍り付いた。小米による今年2度目の大がかりな部品納入の延期要請だった。「小米のスマホが売れなくなっている」。日本人幹部らは一様に落胆した。

景気減速の影響がじわり広がるなか、5年で2倍のペースで上昇する人件費も企業に重くのしかかる。日本企業に限れば、円安の逆風も吹く。

 企業は「撤退」も現実的な選択肢に据える。経済産業省が2014年7月に調べた「海外事業活動基本調査」によると、13年度に中国から撤退した現地法人数は205社と前年度を17社上回った。企業の事業再編を手伝う弁護士、賈維恒(44)は「景気減速で拠点の過剰感は強まっている。今後も撤退案件は増える」とみる。

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閉鎖されたシチズンの工場では最終の後片付けが静かに続けられていた(5月30日、広東省広州)

 5月30日。雨期に入り、灰色の雲が覆う広東省広州。シチズンホールディングスが2月に閉めた時計部品工場を訪れると、わずか4カ月前に起きた騒動の記憶を消し去ろうとするかのようにフォークリフトがせわしなく設備や資材を運び出していた。

 春節(旧正月)連休を目前に控えた2月5日。帰省を楽しみにする従業員の表情が一変した。「あしたで工場を清算します」。1千人いる従業員の一斉解雇通告だった。

 「なぜ、解雇する直前に通告するんだ!」

 従業員の不満を抑えつけるかのように雇用契約の解除を迫るシチズン。「書類にサインをしないと、あなた、近いうちに、ほんと大変なことになるよ」。深夜、見知らぬ男からこんな脅迫めいた電話を受けた従業員は300人を数えた。

 「日本人経営者が憎い」。今、閉鎖された工場で最終の後片付け作業をする総務担当の男性社員、劉俊穎(40=仮名)が声を震わせる。真面目に19年間勤め上げた末の突然の解雇通告。「我々は使い捨てか」

 撤退業務が完了する1カ月後には工場は完全に閉鎖される。劉の目が潤む。「私には中学生の息子がいる。お金がかかる。でも40歳を過ぎた私が働ける場所は簡単には見つからない」

 経営難に陥った工場に乗り込んで従業員を解雇する。沿海都市部の工場街ではこんな「撤退屋」が出没している。

 「この会社の資産を買い取った。これからは俺の言うことを聞いてもらうぞ」。企業から工場や設備などの機械を100ドル(約1万2千円)程度の破格の価格で買い取り、地元政府への面倒な手続きも口利きで解決する。手数料や資産売却で暴利をむさぼる。

 「高速成長時代の“遺産”を金を払ってでも手放したい」。そんな企業の思いを見透かしたように撤退屋が暗躍する。(敬称略)

 景気減速が当たり前の「新常態」に入った中国。現地企業に忍び寄る変調の現場を歩く。

6/3変調 中国ビジネス2

「やる気は全くないわ……」。 中国東北部の中核都市、遼寧省大連。同市内の日系電機大手の 工場に勤める40歳代女性従業員、李梅(仮名)がつぶやいた。10年以上も前に今の工場に入った李。とにかく毎日まじめに働いた。地道にモノ作りを続ける日本企業も自分に合った。そんな彼女が最近になって工場に背を向け始めた。きっかけは2013年末、近所の東芝の大連工場で起きたストライキだ。

「もっと補償金を出せ」。武装警察官が見守るなか、約900 人の従業員が声を張り上げた。

1997年からテレビを生産した大連工場。東芝は赤字を理由に閉鎖を決めたが職を失う従業員は退職金相当の補償金を少しでも多く得たいと経営側に抗議。東芝はやむなく要求をのんだ。あの日の事が、今の李には他人事に映らなくなった。

大連に今、景気後退の大波が押し寄せる。大連のある遼寧省の1〜3月国内総生産(GDP)は前年同期比1.9%増。中国が今年目標とする7%前後を大きく下回る全国最低に陥った。 2000社近い日系企業が集積する大連。李の工場も「いつ閉鎖されてもおかし<ない」。だから今は仕事より補償金を多く手にすることしか関心が向かな い。「今は補償金を楽しみに待つだけだわ」

3月5日、北京で開幕した全国人民代表大会(全人代)。午前10時すぎ、所信表明演説で首相の李克強(59)が「中国は製造大国から製造強国へ転換する」と読み上げていた頃、広東省東莞の工場街では5000人規模のストライキが勃発していた。

「未払いの給料を払え」。ナイキなどの1流ブランド靴を作る台湾系工場の従業員がロ々に叫ぶ。翌日には周辺の他の工場にも次々に波及。拳を突き上げた従業員数は数万人に達した。

「もう疲れた」。日本人幹部がこんな言葉を残して東莞から去った日本企業は過去5年で100社以上。輸出競争力は低下 し「世界の工場」は苦境に立つ。 「今、中国では何をすればよいのか」。厳しい現実を前に日系企業幹部の苦悩は深まる。

だが、今の中国の従業員は幹部らのそんな迷いに同情などしない。日系電機大手の工場で長く労働組合トップを務める共産党幹部はいらだちをあらわにする。「そんなに中国から出て行 きたいなら、早くそうすれぱいい。でも二度と中国ではビジネスはさせない。中国とはそういう国だ」

6/4変調 中国ビジネス3

中国首相の李克強(59)をうならせた新興企業は古びた雑居ビルの6階にあった。情報技術 (IT)企業が集積する北京・中関村。壁は薄汚れ、電気が消えた通路には段ボールや資材がうず高く積まれている。

IT専門の転職支援サイト 「拉勾網」を2年前に立ち上げた北京拉勾網絡技術。5月7日午前、創業者の馬徳龍(31)は 中関村に突然視察に訪れた李に自社の事業内容を説明した。「100人あまりの社員で昨年150万人の転職を支援しました」。 行政の効率化に熱心な李は感心した。「それは見事だ。政府も見習わないと」

拉勾網の飛躍のカギは中国I T企業2万社の膨大な求人情報にある。起業家に無料でオフィ スを貸し出す創業支援施設が整う中関村でもべンチャー企業が次々に生まれ、IT人材の需要は旺盛。成長企業でキャリアを積みたい若い人材もあふれている。馬はそこに目を付けた。

「何よりも中国企業で働きたかった」。3月に米系ソフト企業から中国のインターネット大手の部長職に転じた北京在住の張傑(仮名、29)が言う。魅力はその待遇。検索大手、百度(パイドゥ)や電子商取引最大手のアリババ集団など大手を中心に人材獲得競争は激しさを増し、中国IT企業では部長級で年数千万円の高給取りはざら。張の月給も2倍の5万元(約100万円)に跳ね上がった。

1990年代から米マイクロソフトなど外資系IT大手が進出して立ち上がった中国IT産業。「昔は給料が高い外資企業へ憧れがあったが、今は中国大手の方がいい。外資は好待遇を手にする踏み台」。張は言う。

「調査を妨害したらどうなるか。賢明なあなたたちなら分かりますね」。昨年冬、中国独禁法当局の突然の来訪を受けた米半導体大手クアルコムの関係者は調査員の高圧的な態度に驚いた。それからまもない2月。中国当局は60億8800万元という巨額制裁金の支払いを同社に命じた。自社技術をスマートフオン(スマホ)メーカーに押しつけ、不当に特許使用料を得たとの判断だ。

.アリババのような世界的企業が育ち、自信を深める中国IT 産業。習近平(61)指導部も「国産技術.製品の育成を」と外資排除をいとわない。「昔はとにかく技術を教えてくれと頼ってきたのに。時代は変わった」。 クアルコム関係者の言葉からは敗北感がにじむ。

6/5変調 中国ビジネス4

「不明朗な取引が行われている」。5月29日に子会社8社を化学品・医薬品販売興和グループ(名古屋市)に譲渡して創業109年の歴史に幕を下ろした化学薬品商社の江守グループホールディングス(HD)。解体のきっかけは2014年7月に寄せられた匿名の電子メールだった。

疑惑の中心は江守HD中国現地法人トップだった謝飛紅(50)。髪を短く刈り込み、縁なし眼鏡をかけた謝は上海ではやり手の実業家_として知られていた。「丸紅(の中国事業)を抜きますよ」。こう豪語する謝をHD社長の江守清隆(54)はかわいがった。HDの連結売上高は直近5年で3倍の約2200億円に膨らんだが、売上高の7割を謝が率いる中国事業が稼いだ。

その裏で謝は自身の親族がかかわる企業との取引を通じて見かけ上の売上高を膨らませていた。取引先の仕入れ代金を肩代わりして金利をつけて回収する。急成長を演出したビジネスモデルも景気減速で取引先から支払いが滞ったとたん、崩壊した。

「以前から危ない取引をしているのではと思っていた」と同社閏係者は明かす。だが、背後に清隆が控える謝には「誰も何も言えなかった」。

3日午前、上海で開幕した住設機器の大型展示会。水栓金具や温水便座など100点以上の商品を出展した中宇建材集団 (福建省)の営業担当者は「費用対効果の高さが私たちの強み」と来場者にアピールしていた。

どこにでもある展示会風景だが、その様子を苦々しく思っている日本人経営者がいる。同日、 最大660億円の損失を発表したLIXILグループ社長の藤森義明だ。

巨額損失の原因はドイツで上場する子会社ジョウユウの不正会計。創業者の蔡建設が財務諸表を改ざんしていた。その蔡が中国で率いるのが中宇。中宇はジョウユウの子会社だ。 5月22日にジョウユウはドイツで破産を申し立てた。だが、察は虎の子の中国事業を手放さない。中宇の40歳代の男性社員は「破産はドイツの話。私たちに影響はない」と言い切る。

「(蔡氏らに対する)法的措置も辞さない」。3日午後2時。 LIXILが都内で開いた記者会見で藤森は力を込めた。蔡の耳藤森のその言葉は届いただろうか。

6/6変調 中国ビジネス5

北京西部の住宅街の一角。3月末、イトーヨーカ堂が運営する「華堂商場右安門店」がひっそりと営業を終えた。今は看板も取り外され、店舗前の広場では地元の小学生たちがサッ力ーに興じる。のどかな光景を前に近所に住む主婦の王さん(56)は「昔は食品売り場がにぎわっていた」と教えてくれた。イトーヨー力堂が北京に出店したのは中国で近代的な小売店がまだ少なかった1998年。「従業員教育が大事」とヨーカ堂が主張すれば、{安いものを売る大衆店にすれぱいい」と国有企業 の合弁相手も譲らない。経営の軸は時にぶれたが、経済成長時代は利益を出せた。

中国全土が沸いた北京五輪が終わった2008年夏。客足がぱたりと止まった。「北京の上客は五輪向けインフラ工事に駆り出されていた出稼ぎ労働者だった」。ヨーカ堂中国総代表の三枝富博(65)は振り返る。地元客を呼び戻そうと必死になるほど周辺の競合店との価格競争に巻き込まれる悪循環。日本流のサービスで増収を続ける四川省成都での事業とは対照的に不振が続く北京はこの1年で4店舗を閉めた。

「生鮮品以外、お店に出向いて買い物をすることはほとんどない」。遼寧省大連の銀行員、鄒婷婷(27)は話す。最近購入した空気清浄機もインターネット通販サイトで買った。安くて種類.も豊富なネット通販は今や中国の小売市場の1割を占める。店舗を展開する既存の小売業を取り卷<環境は厳しさを増す。

人口1千万人を誇る内陸部の中核都市、湖北省武漢。昨年末に開業したイオンモール武漢店は平日の夕方にもなると、食材の買い出しやレストランで食事を楽しもうという地元客でにぎわう。現地法人の総経理、椎名孝夫48)は「日本の安心・.安全を求めて来店する顧客が多い」と手応えを口にする。 12年には山東省青島の店舗が「反日デモ」で破壊されたイオン。中国事業は赤字が続くが、 それでも購買力が高まる中国の消費市場で商機を見いだす。

世の中が上げ潮の時の事業拡大は簡単。逆に苦しい時に知恵を絞って顧客に受け入れられて こそ価値があるー—。イオンの源流の一つである岡田屋具服店はこんな戒めを家訓に込めた。「下げにもうけよ」。高速成長時代の終わりを迎えた中国で椎名はその家訓をいま一度、かみしめる。

 

 

6/3日経ビジネスオンライン 福島香織『赤い帝国主義下の言論出版統制 作家たちは権力とせめぎ合い、自粛心と戦う』記事について

中国の一番ダメな所はいつも言ってますように「騙す人が賢く、騙される人が馬鹿」という基本的価値観です。この考えが続く限り中国とはまともに付き合えません。日本人は人が好過ぎて騙されるだけ。東証1部上場の江守グループの倒産やLIXILのjoyouの660億円の特損等は中国で儲けようという下心の為せる業です。中国に進出している他の日系企業も似たり寄ったりでしょう。小生も在籍していた会社が中国で買った会社を調べて見たら資産の中に使えない井戸も資産計上されていて問題になったことがありました。デユーデリジェンスをしっかりという事で法律事務所に調べさせてもこの程度です。まあ如何に騙すのに長けているかという事ですが。また会社を売る局面にも関与しました。どう言う訳か本社は早く売れと言うばかり。高く買いそうな人もいたのに二束三文で別人に売り渡しました。背任ではと思ったものです。結局、保身を考えるから足元を見られてやられてしまう訳です。戦わないと。

ここに出てきます中国の真のジャーナリストと日本の植村隆のような似非ジャーナリストを比較すれば如何に日本のメデイアが腐っているか分かります。勿論、中国の共産党支配における「党の喉と舌」の役割を果たしている中国のメデイア人は圧倒的に多いですが。ですから命を賭けて自己の主張すべきところを弾圧にも拘らず主張するところが真のジャーナリストたる所以でしょう。植村はアメリカへ行ってまで嘘を吹きまくっているのだから何をか況やです。翁長もアメリカに行ってパフォーマンスだけやっているというのは見抜かれています。彼らは日本人の心象風景から遠い所にいます。

新渡戸稲造の「武士道」は、日本人は神を信じない(一神教の意味)のにどうして道徳が遵守されているのかという問いに対する回答として書かれました。日本社会の規範として武士の生き方が、身分差はあるにせよ下々まで尊ばれたのです。その中でも「義=rectitude of justice」「勇=courage」「仁=benevolence, the feeling of distress 」「礼=politeness」「誠=veracity and sincerity」「名誉=honor」「忠義=the duty of loyalty」を生き方に求めました。皆孔孟の教えです。それを発祥の地である中国人は守ろうともせず、日本人が守って生きてきたわけです。易姓革命の国では前の伝統文化が否定されるので、賢者の教えも根付かないと言ったところでしょう。

「持ち逃げ資産の半分を西側のリベートに」というのは中国人の面目躍如たるものがあります。賄賂が社会にビルトインされているため、「金を与えれば皆言うことを聞くだろう」という発想になりがち。FIFAの事件も過去に遡れば賄賂の得意な国が焙り出されてくるのでは。でも中韓のように道徳心の薄い民族を豊かにさせたのが間違いの素です。アメリカも良く民族性を知ることです。

記事

 今、北京にいる。知日派知識人と待ち合わせをしていたが、待ち合わせ場所に彼がなかなか現れない。さすがに約束の時間になって一時間が過ぎると、心配になってきた。なにせ、天安門事件26年目の記念日まであと5日という敏感な時期であり、しかも習近平政権の「知識人狩り」の凄まじさは、以前にこのコラム欄で紹介した通りである(「習近平の知識人狩り、希望を粛清」参照)

 ちょうど携帯電話を買い替えたばかりで、彼の携帯番号を新しい携帯電話に入れておくのを忘れていたので、電話で安否を確認できなかった。連絡が取れないまま、ヤキモキしていると彼が一時間半遅れて、謝りながらやって来た。遅れた理由は、次に出版する本に関して、いきなり出版社から呼び出されたのだという。「一番大事な一章をまるまる削らないと、検閲審査が通らないと言われて、もめていました。いきなり約束もなく、出版社の社長が訪ねてきて。連絡もできずにすみませんでした」という。

 彼は「中国は、あと2、3年もすると出版社は全部つぶれるんじゃないですかね。今、本を出すことはものすごくリスクが高い。出版社にとっても、ほとんどリスクだけで利益はでません。中国の出版市場はおそらく出版史上、もっとも暗黒時代を迎えていますよ」と、ため息をついていた。

自分の中に生まれた「自粛の心」こそ怖い

 こうした息苦しさを訴える知識人たちの言葉を、今回の中国旅行中に何度聞いたことか。

ある作家はこういっていた。「恐ろしいのは自分の中に自粛の心が出て来たことだ。賞をとり、大学の職を与えられ、安定した収入も約束され、息子たちが結婚して家庭を築くようになると、(当局の怒りを買うかもしれないというリスクを負って)自分の書きたいものを書くには、捨てなければならないものが多すぎる。だが、そうして筆を緩めることは、読者に本当に伝えなければならないもの、意義あるものを書けないということだ。自分が過去に書いたものを超える納得できる作品を生み出せる体力気力がもつのは、あとせいぜい10年くらい。これから、いかに自分の心と闘いながら、書いていくかが、作家としての真価が問われる」。

 メモを取るような場面ではなかったので、発言は私の記憶である。本当に恐ろしいのは、検閲そのものではなく、検閲を避けようとする自分の心だ、というのは心にしみるメッセージだった。

日本にいてモノを書く仕事をしていると、読者に受けるか、市場に受け入れられるかという悩みはあっても、政治権力によって身の危険を感じながら書くということはまずない。本の内容について出版社や編集者の好みと対立することはあっても、あるいは読者からのバッシングを恐れる気持ちはあっても、当局の検閲機関から隠密裏に物書き生命を絶たれる心配もまずない。中国当局の出版物に対する介入圧力は、日本人にはとうてい想像のつかない世界である。

 だが、その検閲に抗いながらエッジボールと呼ばれるぎりぎり編み出された表現というのは、書き手の執念のエネルギーが注ぎこまれている。圧力に抗う気持ちを完全に忘れてしまっては、物書きとしては完全なる敗北だが、圧力とのせめぎあいのなかでこそ生まれる研ぎ澄まされた表現というのも、確かに存在する。本当の政治圧力というものを知らないで、ちょっと書くなと言われたぐらいで被害者ぶって騒ぐとヒーローになれる日本の言論出版界にいると、なかなか到達できない表現の境地である。

文明のロマンも文化論も、ダメ

 で、最近どのようなものが検閲に引っかかりやすいかというと、聞くところによると文明論とか文化論が、結構リスクが高いらしい。胡錦濤政権時代も江沢民政権時代も当然、出版検閲があったが、それはほとんど政治批判、党批判や党の歴史認識を否定するような内容のもので、何が検閲に引っかかるか分かりやすかった。

 ところが最近は中華文明や中華文化の論評まで、なぜそれがダメなのか、というようなものも検閲当局から修正指導がくるそうだ。たとえば周の文明のルーツが、エジプトから伝播してきたものではないかとか、中国の「上帝」(シャンディ)は出エジプト記に出てくるシャダイが由来じゃないか、とかそういう文明のロマンみたいな話も、ダメらしい。あるいは改革開放30年で中国がどんな変化をたどったか、といった文化論や社会学的な検証もダメらしい。今の社会の問題点をあげて、その原因や背景を分析するといった内容も、大変厳しい細かい検閲をうけるという。

ある歴史学者にきけば、「習近平政権のイデオロギー政策の骨子は、西洋文明と西洋的普遍的価値観の否定と、中華文明の独立性と偉大性、中華的価値観を中心としたアジア世界の確立にあるので、中華文明・中華的価値観に対してき否定的な言論、研究の発表が難しくなった。中華文明にも西方の文明や宗教に影響を受けた部分があるなんて仮説は絶対受け入れられない」という。

 前述の作家が言うには、「今の中国人や中国が、なぜこんな風になってしまったか、そういうことに向き合うことが一番必要なのだが、それが一番許されない」と嘆いた。

 また、あるジャーナリストは、「今の中国は1930年代の日本に似ているかもしれない」という。幸いというべきなのは、中国の出版市場では、日本の軍国主義時代の批判を込めた日本の著作の翻訳モノは比較的問題なく出版できる分野であることだという。中国人読者の中には日本の過去の歴史の中に、中国の今の問題点を見出す者がいるかもしれない。日本の軍国主義批判や右傾化批判は、ひょっとすると反日的な思想の人たちだけでなく、中国習近平政権の行方に不安を感じている人たちから、ある種の比喩として発せられている可能性もあるかもしれない。

改革には向かわない「三つの自信」

 習近平政権がどういう政権であるか、ということを知識言論人たちに聞いてみると、3年前と比べて、批判的に言う人が増えた。3年前は、開明的な知識人の中にも、習近平政権を「(隠れ)改革派」だと信じる人はかなりいたが、それが甘い期待であったことを思い知るようになってきたということだろうか。「反腐敗キャンペーンや権力集中は習近平が後に思い切った政治改革を行うための準備であり、実は隠れ“改革派”である」という幻想が根強かったが、2014年から本格化した知識人狩りと、「一帯一路」政策を中心とする外交・経済路線から、習近平政権の目指す「改革」とは少なくとも、私たちが考えるものとは違うようである。

習近平政権の行方については、2013年の段階で、「赤い帝国主義」と早くに達観したのは、元「中国改革」誌社長で独立系政治評論家の李偉東だった。「赤い帝国主義」という形容は、昔、旧ソ連に適用されたものだ。フランス国際放送華字版RFIのインタビュー(2013年7月13日)で李偉東はこう語っている。

「習近平は伝統的権威主義方式を用いて、政治方面のある種の改良を進めている。それを“開明的な専制”と私は表現する。習近平が政権をとってから発表した論理の総論はおよそ三条でまとめられる。一つは進むべき方向は、邪な路(西側的普遍的価値感あるいはゴルバチョフ的改革の路)でもなく従来の路(旧来の社会主義的価値観、社会主義革命の路、文革の路)でもないという路論。二つ目は“中国の夢”(中華秩序の再興)という夢論。三つ目は“靴論”(靴が合うかどうかは履いている本人にしかわからず、傍にいる人が何といおうと無視すればよい、という外国の内政干渉を完全拒絶する)」「加えて習政権は“三つの自信”というのをあげている。すなわち路に対する自信、理論に対する自信、制度に対する自信。これほどの自信があれば、改革など必要あるだろうか。私が基本的に把握している習近平の政治改革とは、“党の指導をよりパーフェクトに強化に向けて改善すること”であり、これは本質的な意味での改革とはいえない」

APECブルーは赤いファシズム的美学の体現

 そして習近平の目指す中国が、「国家主義路線にナショナリズムを加えた赤い帝国の路」であり、それは1930年代のドイツや日本が歩んだ路と似ている、というのである。

この習近平の「赤い帝国主義」論については、賛同にしろ批判にしろ同意見の知識人は決して少なくない。賛同者は、習近平は(皇帝の専制君主制を確立し、名君との評価もある)「清朝の雍正帝」に匹敵する、といった言い方をしている。批判する人は、ドイツのナチズムに似ていると言う。

 そう考えると、最近中国が発表した国防白書で「海上軍事衝突に対する備え」が初めて明記されたことも、また「一帯一路」と呼ばれる外交・経済政策にあわせたAIIBの設立も、腑に落ちることだろう。習近平政権の国家グランドデザインは、日本の戦前の「八紘一宇」にも通じるものがあるといえば、なるほどと思う人もいると思う。ちなみに八紘一宇という言葉のオリジナルは中国であり、『淮南子』にもある。

とすると、現在の中国が国際社会にもたらしうるきな臭い可能性というのもいろいろ想像できるだろう。李偉東はアジア自由ラジオ局で2014年12月、北京APECの総括コメントとして、こんな発言をしていた。「APECブルー(APEC期間中に規制を徹底して大気汚染を軽減し青空を一時的に取り戻した現象)は、赤い帝国のファシズム的美学の体現である。この種の中国のファシズムは世界に危機をもたらすだろう」。

 彼はこの時、中国共産党をナチズムに例えながらこう指摘していた。「ナチズムが備えていて中国共産党が備えていない優位性が三つある。[1]己が全世界で最も優秀な種族であるという信仰にも似た頑強な信念、[2]ナチスは清廉であり、スキャンダルは少なかった、[3]ナチスの団結力は相当なものであった」。

 彼は、習近平が目指す赤い帝国主義への路は、根本的なところでナチスに及ばず、途中で破綻すると見ている。赤い帝国が世界に覇権を築き、今の米国のような新しい国際秩序を打ち立てるまでにいかず、激しい勢いで拡張に走った結果、内部から瓦解するとなると、その混乱に国際社会が巻き込まれるリスクは決して小さいものではない。

持ち逃げ資産の半分を西側へのリベートに?

 もう一つ、リスクがあるとすると、中華的秩序、中華的価値観に西側社会も染まり、アジアにおける中華秩序圏の成立を容認する可能性だ。習近平政権は表向き、オバマ政権に対しては比較的舐めた態度を見せているが、水面下の官僚レベルの交渉は日中よりもよほど密にあると言われている。

 最近、小耳にはさんだのは、財産を持ってカナダやオーストラリア、米国など西側諸国に逃げた反腐敗キャンペーンのターゲットの腐敗官僚、政商たちを西側諸国から引き渡してもらうための交換条件として、持ち逃げした彼らの資産の半分を西側諸国にリベートとして渡す、という案だ。この10年余り、海外逃亡腐敗官僚ら2万人が国外に持ち逃げした資産は軽く1兆元をこえる。

だが、この半額を受け取って、独裁国家から逃げてきた官僚を引き渡すということは、これは西側諸国として西側の普遍的価値観と違う中国の価値観を受け入れたということになるのではないか。汚職官僚だけでなく、海外に逃げた民主活動家や反共産党活動家などは、西側諸国の対応がどういったものになるか神経を尖らしている。

いずれのリスクにしても、中国のすぐ隣に存在する日本にとっては、今の習近平政権の路線は大いに警戒するに値するものだろう。

日本の自由さと安易さを痛感しながら

 さて、日本の安倍政権をナチスに例えて批判する日本人知識人は結構いて、日本が軍国主義化していると本気で心配している人も少なくないようである。私も少し、安倍政権と習近平政権の類似性を感じることもある。ただ、日本と中国の大きな違いは、報道、出版、言論に対する政府当局の本当の圧力の有無であり、日本が曲がりなりにも選挙を通じて、自らの手で為政者を選ぶシステムを保持している点である。

 私たちは、自分の国の政策に対して不安に思うことを誰でも口にすることができるし、執政党への信任不信任を表明する機会を平等に与えられている。そういう与えられた権利を十分に行使しないでの口先の批判に力が宿るはずもない。

 中国の言論知識人たちのモノを書くことへの執念や葛藤を垣間見るたびに、私は日本でモノを書くことの自由さと安易さを痛感するのである。

6/3日経ビジネスオンライン 高濱賛『慰安婦は棚上げ、焦点は北朝鮮に 迫る米韓首脳会談』記事について

朴大統領がアメリカでどういうことを言うか見ものです。告げ口外交を封じられたら言うことがあるのかどうか。父親と違い軍事センスがあるとは思えません。ですから北のSLBM発射実験成功(真偽不明)のニュースを聞いても動じないというか、リスクという感覚がないのでしょう。それは「慰安婦」で日本を叩いていればいいというレベルの話ではなく、戦争が起きるかもしれないということですから。何せ北の若殿は何をするか分かりませんので。自暴自棄にかられ戦争を始めるかもしれません。やるなら朝鮮半島だけでやってほしい。“civil war”ではないですか。

普通の感覚であればTHHADを配備せねばとなるのでしょうが、中国の反対に遭い、米中に良い顔をしようとするので無理が出ます。二股外交、蝙蝠外交の限界です。事大主義で結局外国の介入というかいろんな国につこうとして失敗、結局日本に統合された歴史があるのに。まあ、漢字をいとも簡単に捨てる国ですから、「歴史」を知るはずもない。それで都合よく「歴史」を改竄・捏造するのでしょう。

中国は北をソ連時代の東欧のように西側との緩衝地域のまま残したいと思っているでしょう。直接国境を接すると警護の義務が生じるので。そうでなければとっくに北は中国に呑み込まれていたハズ。南も中国領にしてしまえば、日本とは間に日本海がありますので可能かも知れませんが。中国の東北三省には朝鮮族が多く住んでいます。北の政権が安定していることを中国は望んでいるので、本音で言えば言うことを聞かない金正恩を外し正男に首を挿げ替えたいと思っているのでは。

オバマのアメリカもここにきて少しは変わるのかもしれません。G7宣言で南沙諸島の軍事基地化した中国を非難するようです。でも中国は織り込み済みでしょう。具体的な行動がない限り、舐めるだけ。中国の主張する12海里内に飛行機や艦船を入れないと。戦争になったら米軍は一瞬にして中国軍を制圧してしまうと日高義樹氏は言っています。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20150603/dms1506031140004-n1.htm

その方が中国国民にとっては共産党支配から逃れられて幸福かもしれません。米軍が12海里内に進出した時に中国はどうするのか。東シナ海に防空識別圏を設定した時のように何もできず、恥をさらすことになるのか。その場合は少なくとも習体制ではなくなるでしょう。

記事

朴槿恵(パク・クネ)韓国大統領が6月14日から5日間の日程で米国を訪問する。16日にバラク・オバマ米大統領と首脳会談を行う。その後、テキサス州ヒューストンに立ち寄り、先端医療や航空宇宙関係施設を視察する。

(”Statement by the Press Secretary on the Visit of President Park Geun-hye of the Republic of Korea,” Office of the Press Secretary, 5/26/2015)

(”Park, Obama Set to Tackle Alliance, North Korea Tension,” The Korea Herald, 5/27/2015)

(”Will Pres. Park get a red carpet in the US like Shinzo Abe did?” The Hankyoreh, 5/13/2015)

 さる4月の安倍晋三首相の訪米で日米同盟に「質的変化」(”qualitative change”)が生じた。首相が「歴史認識問題」や「慰安婦問題」で「河野談話」や「村山談話」を踏襲すると確約したことで、米側の「わだかまり」が解けたからだ(「安倍首相の議会演説で米国の『歴史認識問題』は決着」参照)。これを受けての朴大統領の訪米である。

 朴大統領の訪米は就任直後の13年5月以来、2度目。2年前を振り返ってみる――。朴大統領は、13年5月に訪米した際、米議会で演説し「歴史問題に端を発した対立が一層深刻になっている。歴史に正しい認識を持たなければ明日はない」と英語で訴えた。日韓の対立に米国を巻き込むことで対日外交圧力を強めようとした。

 ワシントンも韓国初の女性大統領の初の公式訪米ということもあって歓待した。朴大統領に思いの丈を述べさせる余裕を見せた。朴大統領が「慰安婦問題」を人権問題、とくに女性の人権に絡めたことが功を奏した面も見逃せない。

「日韓が歴史認識でツノ突きあっている場合ではない」

 だが米政府はそれ以後、日韓対立が膠着することに警戒心を抱き、事あるごとに日韓双方に譲歩を促してきた。米政府は、朴大統領が慰安婦問題に執着しなければならない韓国国内の政治社会情勢を理解している。しかし、朴大統領が安倍政権に対して「新たな謝罪・補償を執拗に求める頑なな対応」(米国務省OB)に苛立っているのも事実だ。いわゆる「Korean fatigue」(韓国に対する嫌気)である。

 そして今年4月の安倍訪米でワシントンの空気は一変した。米外交はどこまでもストレートでプラグマティック(実際的)だ。変わり身も速い。

 東アジア情勢は風雲急を告げている。例えば中国は南シナ海・南沙(スプラトリー)諸島で埋め立て工事を急ピッチで進めている。一方、朝鮮半島では北朝鮮の中枢で異変が起こっている。米国防総省元高官の一人はこう指摘する。「日韓が『歴史認識問題』などでツノ突き合わせている場合ではなくなってきた――こうした認識がワシントンで急速に広がっている。ケリー国務長官と尹炳世(ユン・ビョンセ)韓国外相が2月7日に話し合い、6月の米韓首相会談が急遽決まったのはこのためだ。朴大統領が再び『慰安婦問題』に触れ、日韓の和解を渋るようであれば、日米防衛協力体制を踏まえた日米韓同盟の再構築は遅れるばかりだ。これがオバマ政権の認識だし、この点では民主、共和両党とも一致している」。

 ケリー国務長官、アシュトン・カーター国防長官が相次いで訪韓し、緊迫する北朝鮮情勢への戦略を練る必要性を朴大統領に直接、訴えた。返す刀で両長官は、来るべき訪米では朴大統領が「慰安婦問題」を蒸し返さないよう求めた可能性大だ。

こうした米側の意向を察知した韓国政府の対応にも変化が見られる。「慰安婦問題」は事実上棚上げし、安全保障面では日米に足並みを揃えるスタンスにかじを切った。北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の日米韓首席代表が5月27日にソウルで協議した。29日にはシンガポールで日米韓3カ国国防相会談も行われた。すべて、朴大統領の訪米に向けた地ならしと見ていいだろう。

 ワシントンで6月3日、米戦略国際問題研究所(CSIS)が米韓シンポジウムを主催する。朴大統領訪米をにらみ、韓国に対する米国のスタンスを占う上で注目される。米側からはリチャード・アーミテージ元国務副長官、カート・キャンベル元国務次官補、クリスファー・ヒル元国務次官補、ロバート・ガルーチ元北朝鮮核問題担当特使、シドニー・サイラー北朝鮮核問題担当特使が出席する。このシンポジウムでのテーマも米韓軍事同盟、北朝鮮の動向に絞られている。「歴史認識」問題は完全に無視された格好だ。

(”Korea Going Forward,” Center for Strategic & International Studies, 6/3/2015)

「北朝鮮は容易ならざる事態」という現状認識

 北朝鮮は5月8日、日本海側のハンギョムナンドの新浦沖で潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射に成功した。「初期段階だが地域の新たな脅威」(米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際研究大学院米韓研究所の研究員)となってきた。

(”N.Korea Test-fires Submarine-launched Ballistic Missile,” Agence France-Presse, 5/10/2015)

 米下院軍事委員会の軍事専門スタッフの一人は筆者にこう述べた。「SLBMの開発はまだ初期段階で、実際の配備には4~5年はかかるだろう。ただ北朝鮮の脅威が増しているのは、核開発やミサイル開発といった軍事面での動きだけではない。問題は2012年夏の李英浩(リ・ヨンホ)朝鮮人民軍総参謀長の解任に始まった粛清人事の異常さだ。その後、張成沢(チャン・ソンテク)国防委員会副委員長や玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力相の処刑にまでエスカレートしている。金正恩党第一書記の訪ロが中止になった理由の一つにクーデターの危険を排除するためといった見方も出ている」。

 13年の米韓首脳会談で両首脳は「21世紀におけるいかなる挑戦にも立ち向かうために朝鮮半島およびアジア太平洋地域の平和と安全にとっての楔である米韓同盟を順応、強化させていく」ことを再確認した。

 首脳会談を受けて、米韓軍事協力は着実に進んでいる。具体的には、米韓合同軍事演習が予定通り実施されている。韓国は2014年1月、在韓米軍駐留経負担費(SMA)を6%(8億7000万ドル増)増額した。

(”U.S.-South Korea Relations,” Mark E. Manyin, Congressional Research Service, 6/24/2014)

北朝鮮のSLBMをタテにTHAAD配備交渉開始を要請か

 しかしながら米国が望んでいる、最新鋭ミサイル迎撃ミサイル「戦域高高度防衛ミサイル」(THAAD=Terminal High Altitude Area Defense Missile)を駐韓米軍基地に配備する計画は韓国との間で正式議題にすらなっていない。フランク・ローズ米国務次官補(軍縮・検証・履行担当)は5月19日、ワシントンで開かれたシンポジウムで米高官として初めて「永久配備」に言及した。米韓首脳会談で、THAAD設置についての交渉を開始するようオバマ大統領が自ら打診する可能性大だ。

(”Missile Defense and the U.S. Response to the North Korean Ballistic Missile and WMD Threat,” Frank A. Rose, Assistant Secretary, Bureau of Arms Control, Verification and Compliance, Institute for Corean-American Studies(ICAS), U.S. Department of State, 5/19/2015)

 日米韓3カ国は14年12月、北朝鮮の核とミサイルに関する情報交換に関する「軍事情報共有了解覚書(MOU=Memorandum of Understanding)」を締結している。しかし、この覚書は日韓が情報を直接交換することも共有することも明示していない(日韓両国はこれと類似した「軍事情報包括保護協定(GSOMIA=General Security of Military Information Agreement)の締結を目指したが、韓国国内の反日感情に押された韓国政府が署名直前で一方的に撤回している)。

(”A trilateral intelligence sharing accord between Japan, Korea and the United States: implications and challenges,” Sukjoon Yoon, PacNet #6A, Center for Strategic & International Studies, 1/22/2015)

 朴大統領の訪米を前に、MOUの適用範囲を広げようとする米側の意向が高官の口を通して聞こえてくる。北朝鮮中枢で広がる粛清の動きを含む北朝鮮情報の共有を示唆するものだ。

 デービッド・シアー米国防次官補 は3月27日にワシントンで開かれたCSIS主催のセミナーで次のように発言した。「日米韓3カ国が昨年、締結した『軍事情報共有了解覚書』はグッド・スタートだ。今後さらに追加的な協定を締結するチャンスがあると考える」。

(”U.S.-Japan Security Seminar 2015,” David B. Shear, Assistant Secretary of Defense for Asia and Pacific Security Affairs, Center for Strategic & International Studies, 3/27/15)

 シアー発言について、あるシンクタンクの米国人研究員の一人はこう筆者に述べた。「シアー次官補が言おうとしていることは2つ。1つは、情報共有の対象は、北朝鮮の核、ミサイルだけでなく、北朝鮮の中枢における政治的な動きも含む。核・ミサイル開発の動きと政権中枢部で起こっていることとはどのような相関関係があるのか。いま米国にとって最も重要なのは北朝鮮の軍事的ハード面の情報と政治的ソフト面の情報の両方だからだ。2つ目は、米国を仲介とする日韓間の情報交換という枠を取り除き、三者が自由に迅速に情報を共有することだ」。

 韓国系米国人で国家安全保障会議(NSC)アジア部長を務めたこともあるビクター・チャ ジョージタウン大学教授は、先の安倍訪米に比べ、「今回の朴訪米は格式ばらない、お互いに好意を持った同盟国指導者同士の胸襟を開いた親密な対話になるだろう」と予想している。

(”Not ceremony, but intimacy,” Victor Cha, Joongang Daily, 5/29/2015)

 あるシンクタンクの研究者はこう語る。「米韓両首脳が胸襟を開いた親密な対話をするのであれば、話し合うべきは朝鮮民主主義人民共和国という国家の崩壊の可能性だ。その時に備えて、米韓への影響にはどんな影響があり、何を準備しておくべきか。日本や中国の出方についても、米韓が調整しておく必要がある。金正恩第一書記が継承した金王朝が崩壊しても国家そのものは残るのか、あるいは北朝鮮という国家自体が崩壊してしまうのか――どちらに進むかによって対応が異なる。『北朝鮮の崩壊』の可能性を視野に入れた協力体制の強化が必要だ」。

 ランド研究所は2013年、「北朝鮮崩壊の可能性に備えて」(”Preparing for the Possibility of a North Korean Collapse”)と題する膨大な量の報告書を作成している。「金王朝崩壊→北朝鮮国家の存続」と「北朝鮮国家自体の崩壊→消滅」の2つのシナリオのそれぞれに対して、米韓がどう対処するのか、米国への影響、中国の出方などについての鋭い分析がなされている。

(”Preparing for the Possibility of a North Korean Collapse,” Bruce W. Bennett, RAND Corporation, 2013)

6/2宮崎正弘氏メルマガ「廣池幹堂氏の本」の紹介記事について

廣池幹堂氏は廣池学園理事長とのこと。廣池学園と言っても分かりにくいでしょうが小生が中国語の授業(台湾人の先生)を受けています麗澤大学や大学院・中・高、幼稚園があります。http://www.reitaku.jp/ 

廣池千九郎が創始者で今も連綿と続いていますモラロジーの研究が建学の精神です。惜しむらくは他の私立大学と同じく、日本人の人口減のあおりを受けて他国の留学生を多く受け入れていることです。孔孟の精神を持たない民族が日本に留学してモラロジーを勉強し、帰国した場合何を故国に齎すのでしょう。上海では7不規範を今でも掲げています。守られていないという事でしょう。①不随地吐痰= ところかまわず痰を吐くな②不乱扔垃圾= ゴミを捨てるな③不損坏公物= 公共物を壊すな④不破坏緑地=緑地をこわすな⑤不乱穿馬路=ところかまわず道路を横断するな⑥不在公共場所吸烟=指定(喫煙所)以外の喫煙をするな⑦不説粗話髒話=汚い言葉を使うな。日本に来ても普段守れてないことができるはずがありません。②⑤⑥⑦は日本への中国人観光客は当り前のようにするでしょう。

若泉敬は真面目に自分の生き方を考えたのでしょう。佐藤優の『イスラエルとユダヤ人に関するノート』の中に、手島郁郎先生と財津正彌の「三島由紀夫割腹事件」についての遣り取りがありました。少々長いですが抜粋します。若泉の「戦後の日本人は危機管理など考えたくないことには目をつむり耳を塞いできた。そしてきれいごとをいって、耳に心地よいことばかりを追い求めている。まるで愚者の楽園であり、精神的文化的に根無し草に陥ったようなものである」と東郷の「神明は唯平素の鍛錬に力め、戦はずして既に勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に、一勝に満足して治平に安ずる者より直ちに之を奪う。古人曰く勝って兜の緒を締めよと」に連なると思います。キリスト教信者であっても真剣に国あり方、人の生き方・死に方を考えていたのに今の日本人たるやと言う気がしてなりません。

美学と死の問題か?

財津先生は、三島事件についてこう記します。

〈十一月ニ十五日のこと、戦後の日本に民族魂の覚醒を訴えた衝撃的な事件が突発した。 作家の三島由紀夫が壮絶な割腹自殺を遂げたのである。

場所は東京市ヶ谷にある陸上自衛隊東部方面総監部の総監室、彼が自分の主宰する「楯の会」の若者四人を引き連れて、バルコニーから下に集まっている千人の自衛隊員に、天皇を中心とする精神的な日本国家を作るために、自衛隊が決起してその担い手となることを叫び訴えたが、それは無視され、その彼は会員の一人の介錯で割腹したのであった。

翌日の新聞に、妻は黙って見入っていた。新聞は、三島は自分の美学を自殺を通して実演した、と報じていたが、妻は芸術家志望だった自分の弟を、やはり自殺で亡くした十三年前の悲しみと思い合わせていたのであろう。

美を文学で極限まで追求してやまなかった義弟は、珠玉の文字を書き連ねて文学美を追求していたが、人間が生きていくということは、純粋に美の追求に徹し抜こうと努めても、それには限度があり、結局生きるということは妥協を続けて自分を醜にさらしゆくことに他ならず、そんなことは自分にはできぬと結論し、自分の生涯の絶頂は今だ、と自覚したその時に、美しい極みの文章だけを残し、自ら自分の生涯を断っていったのだった。二十一歳であった。>(前掲書三六五〜三六六頁)

財津先生は、義弟の自殺の問題に照らして、美学と死の問題について考えました。そして、人を死に誘う美の力に悪魔的なものを感じました。そこで当初、三島由紀夫氏の自決について否定的な評価をしました。

〈翌日曜日の感話では、話はそこで止めておけばよかったのだが、三島由紀夫の問題に自分なりの決着をつけなくてはと思い、彼の今回の行動を、その集会の場で言葉鋭く批判してしまった。

義弟の場合もそうであったが、今やサタンは美学や哲学や思想を使って若い魂を暗黒の深淵に引きずり込みつつある。三島の場合、私がどうしても許せなかったことがあった。この重大事件決行の一か月前に東武百貨店で《三島由紀夫展》なるものを開き、その入り口に、彼がボディ.ビルと剣道で鍛えた豪華な裸体で見事な居合い抜きの斬り捨ての一瞬をとらえた大写しの写真とその刀——それはそれから一か月後に彼の首を介錯するために使用されることになっていた銘刀「関の孫六」——その二つのものを「これを見よ!」とばかりに飾りつけ、三島は、何も知らずにこの展示場に入場してくるすベての者にそれを見せつけ、やがてすぐその刀を使って自決を遂げていったのだ。

私は、こういう芝居じみたことがいただけなかった。しかも、そういう芝居に、なぜ有為な若者までも巻き込んだのか。許せない、と思った。〉(前掲書三六七頁)

諫めるための死

この話を聞いた手島郁郎先生が、財津先生に重要な問題提起をします。

〈その時、先生は黙って聴いておられた。ただ私には、火曜夜の集会まで残るように、と言われた。それもそうだろうと思った。

三島が投げかけた問題は、今の日本にとって極めて重要な問題で、それに文字どおり自分の生命までたたきつけて叫んだ壮挙には、もっと威儀を正して注目すべきであって、美学の範囲に話をしぼり込んだのでは、大事な問題をとらえ損なうのではないのかと、自分のなかに異を唱えるもう一つの自分もあった。

だが、火曜集会の場では、私は日曜に話した立場に留めおかれて、先生はその私と対論風に話を進めながら、問題に入っていかれた。

先生の言いたかったことは、「財津くんは三島の死は狂死だったというが、ぼくは三島は偉いと思った。彼の死を人は狂死というが、だらけた日本を嘆いての憤死ではなかったのか、また諫死ではないのか。演技的行動をやってのけたからといって、それを単なる狂気と言い捨ててよいものか、どうか」ということであった。>(前掲書三六八頁)

手島先生の財津先生に対する問題提起は、外在的なものではありません。財津先生が心の中 に思っているが、明瞭な言語にできない「何か」を引き出すきっかけを手島先生は与えたのです。これこそが理想的な師弟関係と思います。手島先生は、ステパノの殉教との類比で三島由紀夫氏の自決について解釈します。

〈三島の死に引っかけて、先生は私たちに、否、私の魂に言うべきことがあったのだ。このことをさらに一週間後の聖日集会において、先生は「使徒行伝第六章」の殉教者ステパノの講義で激しく取り上げ、「愛に生き狂う生涯」と題して、今や書物の文字を通して強烈に叫び続けている。

「Zくんは『滅びの美学』だと言いますが、そういう面もあるかもしれない。しかし、狂気とも狂い死にとも見えるような行動をなぜしたのか。人間が自分で死ぬということは大変なことです」

「三島由紀夫は、『狂わないような人間は駄目だ』と言っているけれども、私もそうです。利口だったら、原始福音の伝道なんかしません。私は商売でも上手にやります。しかし、すべてを捨てて伝道に没頭しようとするのは、神の愛が私を狂わしめるんです」 「人間の死をもって訴える訴えは、大きい力をもっています。日本には昔から諌死ということがある。誰かの心を諫めるために死ぬ。三島の死は有島武郎や芥川龍之介の死と違って、今の時代に死をもって訴えたということは、ただでは終わらないと思う」

「アベルの血は今も叫んでいます。イエス•キリストの十字架は、宇宙に叫んでいるんです。このことが分からなかったら、宗教などというものは成立しません」

「死を覚悟しないような信仰なら、せぬ方がいい。もう死んでも構わぬというくらいの尊いものがあるから、私たちは命かけて神に信ずるんじゃないですか」

「私は他の人と違います。私をフアツショだと言って笑うなら笑え。そのくらいのことは平気です。もっと日本人の精神が復興することの方が大事だと思うからです」

先生の叫びはこうだ—神を知らぬ三島でさえ、戦後の日本が経済繁栄にうつつを抜かし、国の大本を忘れ、国民精神を失い、自ら魂の空白に落ち込み、国家百年の大計は外国に委ね、日本人自ら日本の歴史と伝統を漬している現状を見るに忍びず、自衛隊員の胸を揺さぶり、共に義のために立ち、日本を真の日本の姿に取り戻すために共に死のうと腹をかき切って死んでいったのだ。私はこの男は偉かったなあと思う……。 あれから四十年、先生は今なお私に問い続けている。 「財津くん、違うかね」と。〉(前掲書三六八〜三七〇頁)」

記事

人生において最も大事なことは何か、55の箴言に学ぶ教訓集 やはり孔孟にたどりつき、西郷、吉田松陰に語り継がれた   

廣池幹堂『人生の名言 歴史の金言』(育鵬社)

 著者の廣池幹堂氏は廣池学園理事長である。

 廣池学園では広く、モラロジーを教える。「道徳科学」を重視する教育方針で、そうとくれば孔孟から荀子老子はもとより佐藤一齋、西郷隆盛、吉田松陰、石田梅岩、新渡戸稲造とずらり並ぶのは当然だろうと予測がつく。

 想定外の金言、格言も挿入されていて、たとえばその一つが若泉敬である。

 若泉は若くして国際外交舞台で大活躍し、沖縄密約のときは、佐藤首相の密使として何回もアメリカへ飛んで、ニクソン、キッシンジャーと渡り合った。評者(宮崎)は、学生時代に何回か会って、また毎月一回は氏のオフィスで新聞のスクラップブック作りのアルバイトをしていた。

政治の現場を離れた若泉さんは京都産業大学で教鞭をとって、しずかな余生を送られ遺書のような大作を残して自裁したのは、つい昨日のような感じである。

 若泉さんは次の金言を残している。

――危機管理とは考えられないこと、或いは考えたくないことを考えることである。

 その通りである。

 日本人の多く、とりわけ付和雷同の人たちが嫌がる防衛論議、日本の核武装、戦争。これら「考えたくないこと」を、じつは真剣に近未来のシナリオとして考えなければならない。それが指導者の役目だ。

 若泉さんは次のことを書き残した。

 「戦後の日本人は危機管理など考えたくないことには目をつむり耳を塞いできた。そしてきれいごとをいって、耳に心地よいことばかりを追い求めている。まるで愚者の楽園であり、精神的文化的に根無し草に陥ったようなものである」と。

 まさにいまのニッポンは「愚者の楽園」だ。

  ほかにも紹介したい金言が廣池氏の選択によって並ぶが、もう一つ。

 日露戦争に勝った立役者のひとりは東郷平八郎である。

 「明治三十八年五月二十七日、対馬海峡付近に集結していた日本連合艦隊の旗艦『三笠』はZ旗と呼ばれる旗を高々と掲揚しました。このZ旗には、艦隊への信号として、次に意味があらかじめ割り当てられていました。

 「皇国の荒廃、この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ」

 (中略)もしも日本が負けていたら、満州や朝鮮半島だけでなく日本列島までロシアに飲み込まれていたことでしょう。陸軍の旅順攻略につづいて、海軍がロシアのバルチック艦隊を全滅させ、講和条約を結んだことで日本はその後も独立国として存続できたのです。

 (中略)「終盤、ロシア艦が白旗を掲げるのを見て、艦長らは砲撃停止を進言しましたが、東郷は威嚇砲撃を続けさせました。なぜならまだエンジンを停止しておらず、国際法上はまだ降伏の意思をしめしていない状態だったからです。それに気づいたロシア艦がエンジンを止めて、日本連合艦隊の完全勝利が確定しました」。

 当時の指導者は外国留学組が多く、国際法に通暁していたのである。

 「戦闘終了後、東郷は、負傷して佐世保の海軍病院で捕虜となっていたロシアのロジェストヴェンスキー司令官を見舞っています。敗軍の将をねぎらい、心を尽くして見舞ったことで、ロジェストヴェンスキーは感動の泪を流したそうです。

 東郷の真骨頂は、大勝利を収め、日本国民が勝利に沸き立っていたときも、少しも奢り高ぶることなく、謙虚な姿勢を貫いたところになります。一九〇五年(明治三十八)十二月に行われた連合艦隊の解散式における挨拶を次の言葉で締めくくりました。

 『神明は唯平素の鍛錬に力め、戦はずして既に勝てる者に勝利の栄冠を授くると同時に、一勝に満足して治平に安ずる者より直ちに之を奪う。古人曰く勝って兜の緒を締めよと』

 東郷の国葬には英米仏伊の海軍が儀礼艦を日本に派遣して、その武勇を称えた。日本にはこうした英雄達が歴史を引っ張った時代があった。

6/2藤岡信勝氏Facebook『西村幸祐・神社仏閣へ油を撒いた犯人』転載記事について

やはりというか想定通りと言うか神社仏閣に油を撒いたのは在日の帰化人のようですね。日本の帰化政策の誤りと通名制度が日本の弱体化を招いています。意図的に日本を貶めようと世界にアピールしようとしているNYタイムズの在日帰化人の大西哲光(国籍はカナダ)や田淵広子に繋がります。日本人は神仏を畏れているのでどんなに時代が変わろうとも、個人のレベルで天をも恐れぬ行動をできるはずがありません。信長の比叡山焼き討ちとか廃仏毀釈はありましたが。マスメデイアがキチンと名前を挙げて報道しないのは裏に反日勢力の手が伸びていると考えるのは自然でしょう。

西村幸祐氏は「中国時報」の記事も写真で掲載しています。本日麗澤大学図書館で本記事を読みました。韓国人と言うのは「ケンチャナヨ」精神旺盛と言うか、中国語の「没問題」(=mei2Wen4ti2)と同じでno problemではなく、必ず問題であるというところでしょう。中東のSARSでMERS(Middle East)と言われていますが、変な話、砂漠の国のサウデイにSARS菌が繁殖できたかどうか。根本原因は中国のような気がしてなりません。広東省がSARS発生の原因だったように。広東省は雨も多く、高温で鼠やゴキブリも生育が良く大型でした。まして広州のように動物を生きたまま売る市場までありますから。床は動物の血で血塗られていた記憶があります。でも中国と韓国は人命優先でないのは分かります。ハフィントンポストに記事が載っています。

関連記事  http://www.huffingtonpost.jp/2015/06/02/mers-asiana-air-nagoya_n_7489906.html

分かっていて中国や香港に出張するなんてどういう神経でしょう。テロリストと一緒。日本も油撒き犯人と同じく反日の人間がテロを起こす可能性がありますから。自分は安全と思うのが一番危険です。リスク管理の要諦は「最悪の事態を想定して準備する」ですから。

また、長江での客船の転覆で船長が逃げた可能性がありますね。今の所458人中20人しか救出されず、船長と機関長が助かっているというのはどう考えてもおかしい。我先に逃げたのでは。セウオル号と同じ。中韓は同じ精神構造をしているという事でしょう。

6/2午後7時のNHKTVのニュースで「ハイアール」の名前を堂々と出して宣伝に一役買っていました。いつからNHKは名前を出してもいいようにしたのでしょう。日本の企業名も出しているのでしょうか?http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150602/k10010100881000.html

ビールのラベルが出ないように気を使うほどなのに。如何にメデイアが他国に侵されているかの例証です

記事

コリアンがらみの奇妙な犯罪が相次いでいるのに、日本のメディアは報道管制状態だ。由々しき事態で、これを何とか暴露し、突破しなければならないが、報道の決定権は反日勢力に握られている。捏造報道よりも、歪曲報道よりも、報道遮断がメディアの最大の権力行使、国民支配の手段であることを忘れてはならない。西村幸祐氏のタイムラインからシェアーする。

Masahide Kanayama

 

 

 

 

 

 

 

 

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西村 幸祐さんが新しい写真3枚を追加しました

日本人に銃を向ける、韓国関連情報を隠蔽する異常なメディア。

完全に危険水域を超えた日本メディアの異常な情報統制。韓国人の非文明的な行動が原因でMERSによる初の死者が出て、隔離患者は現在682人に及んでいる。先週からアジア各国で大騒ぎなのに、日本メディアの報道はなかった。

また、今年なってから頻発する全国寺社へのテロは、僕が何回も予想した(https://twitter.com/kohyu1952/status/603271406122504192 )通り、やはり、韓国キリスト教カルトの反日テロだったことが判明したが、日本メディアは全てを隠蔽している。

 韓国特有のキリスト教を名乗るカルト集団の創設者、金山昌秀の犯行と明らかになったのに、容疑者の名前は出ない。しかも、最初は在米の「日本国籍」と報道し、次第に「日本人」と報道。メディアはしきりに「日本人」であることを強調する。

そして彼らは、この事件の本質である、元在日の韓国系日本人の反日カルト的な犯行であることを隠蔽している。韓国人MERS報道も先週から台湾で連日大きく報道されたのに日本人のリスクを無視する情報統制が布かれている。

 安保法制審議も異常な偏向報道が続き、逮捕歴のある辻元清美や5月27日に逮捕された北朝鮮工作員、斉藤まさしの支援を受けて議員になった民主党の後藤祐一の無意味なゴミのような質疑だけが取り上げられ、長島昭久議員(民主)との安保法制にとって有意義な質疑は全く報道されないのだ。

 一連の情報統制は、丹念な取材で韓国軍慰安婦の実態を掴み、報道しようとして自社に潰された、前TBSワシントン支局長、山口敬之氏の悲劇にまで繋がっている。この背景に一体何があるのか? 今、日本のジャーナリズムに問われるもの、そして、その危機は大きい。

※写真は全国の寺社への反日テロ実行犯(当然、組織的な犯行)。

 次の2点は、MERS感染の危機を大きく扱った先週の台湾紙の報道。

5/30産経ニュース 古森 義久 『安保法制、日本の敵は日本か』と6/1ZAKZAK『南シナ海“一触即発” 開き直り中国に日米反撃 警戒監視活動や共同訓練も』記事について

朝日も日本共産党も日本を中国共産党に売り渡そうと言う組織と思えば分かり易い。小生は中国に8年間居て、人権抑圧を目の当たりで見てきたため、当然ああいう社会が理想とは思えず、中国人には「可哀想」としか思えなかったです。今の日本の野党の政治家やメデイアのように政府批判、共産党批判すれば間違いなく逮捕状がなくても拘引されるか、罪名をデッチ上げてでも逮捕、拘留するでしょう。朝日の読者は分かっているのでしょうか?野党の政治家やメデイアは中国共産党的統治が良いと思っている確信犯ですが、読者はそこまで思っている人は少ないでしょう。自分の頭で考えないから、呪縛が解けないのでしょう。

南沙諸島の基地は軍事目的と解放軍は明言しました。日本の左翼メデイアはもっと中国を批判すべきでは。口を開けば「平和」「平和」と唱えているくせに、中国の侵略行為に口を噤むのであれば、彼らの言う「平和」はダブル・スタンダードであり、中国語の「和平」(he2ping2=日本語の「平和」。但し和して後平らげるとも読める、)のようなものではないか。報道しない自由を行使するのは、この場合侵略に手を貸すようなものです。

日本国民一人ひとりの自覚が必要です。国難に際して、大事なことは①左翼新聞は買わない②次の選挙で左翼・親中派・親韓派には投票しない、という事を今からでもやっていくことです。地道な取り組みが大事です。

5/30産経記事

日本の最大の敵は日本なのか-日本の安全保障関連法案の国会質疑やその報道は、そんな疑問を感じさせる。

「暴走」「思うがままに武力を」「ナチスの手口」など、同法案の核心の集団的自衛権行使容認に反対する朝日新聞の記事の見出しは、日本が自ら他国に戦争を仕掛けるためにこの措置を取る、と思わせようとしているのは明らかだ。

同法案の目的を「日本を、戦争をする国にする」と断じる日本共産党の主張も日本がいかにも侵略戦争を始めるかのような暗示がにじむ。なにしろ議論の最大焦点が日本を守るはずの自衛隊の手足を縛る「歯止め」だから、日本はそれほどに危険で自制のない国なのか、といぶかってしまう。

日本を軍事的に威嚇し、侵略しようとする勢力への「歯止め」がまず語られないのだ。

集団的自衛権自体を危険視する側は日米同盟がそもそも集団自衛であることは無視のようだ。日本領土が攻撃され、日本がいくら個別的自衛だと称しても、現実は米国に日本との集団的自衛権を発動してもらうのが日米同盟の抑止力そのものなのである。

自国防衛は集団自衛に全面的に依存しながら、その集団自衛の概念に反対するという日本の従来の姿勢は米側ではあまりに自己中心で他者依存とみなされてきた。

米国側は超党派でもう20年も日本の集団的自衛権解禁を切望してきた。米国が想定するアジア有事、つまり朝鮮半島有事や台湾海峡有事に対しては国防総省にはいつも「ジャパン・イン(内)」と「ジャパン・アウト(外)」という2つのシナリオが存在してきた。

「イン」は日本が米国の軍事行動に対し同じ陣営内部に入り、味方として行動する見通し、「アウト」は日本が集団的自衛権禁止を理由に米軍の後方支援も含めて完全に非協力、外部に立つという意味だという。

歴代の米国政権はもちろん「イン」を望んだが、常に「アウト」をも想定しなければならず、アジア戦略では大きな悩みだった。そして現実の有事で、もし「ジャパン・アウト」となった場合、「日米同盟はその時点で終結する」と断言する米側関係者が多かった。日米安保条約の米側からの破棄という意味だった。

 だから軍事にはあまり熱心ではないオバマ政権も今回の日本の動きは大歓迎するわけだ。米国側全体のいまの反応について大手研究機関AEIの日本研究部長のマイケル・オースリン氏は米紙への5月中旬の寄稿で「日本のいまの動きは自衛隊を他国の軍隊と同様な機能を果たせるように正常化し、米国との安保協力を深め、他のアジア諸国との安保連携をも可能にし、日本がアジアでの責任ある役割を果たせることを目指す」と歓迎の総括を述べた。

米国政府は日本政府に正面から集団的自衛権行使を求めることはしない。主権国家同士の礼儀だろう。だが本音としてのその要望は政府周辺から長年、一貫して発せられてきた。

しかも日本の集団的自衛権は禁止のままだ と日米同盟の崩壊につながりかねないとする警告が多かった。

超党派の研究機関「外交問題評議会」が1997年に日本の集団的自衛権禁止を「日米同盟全体にひそむ危険な崩壊要因」と位置づけたのもその 一例だった。

 こうした米国側の意向や状況は日本でのいまの論議ではまったく欠落したままなのである。(ワシントン駐在客員特派員)

6/1ZAKZAK記事

南シナ海が緊迫している。習近平国家主席率いる中国が国際社会の反発を無視して、岩礁を次々と埋め立てていたが、ついに中国軍幹部が「軍事目的だ」と明言したのだ。人工島には火砲まで配備しているという。一方、日米両国は、中国の「力による現状変更の試み」に反対することで一致し、警戒監視活動や共同訓練などで、牽制(けんせい)していく。

 「中国の主権の範囲内で、合法で正当かつ合理的な活動だ」

 中国人民解放軍の孫建国・副総参謀長は5月31日、シンガポールのアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で講演し、南シナ海での人工島建設について、こう言い切った。さらに、その目的に「軍事、防衛上のニーズ」を含めた。

 前日の同会議で、カーター米国防長官が「南シナ海で1カ国だけが、いかなる国をも大きく上回る規模と速さで埋め立てを進めている。それは中国だ」と名指しして、即時中止を要求していたが、中国軍幹部は開き直って「本性」をさらけ出したといえる。

 オバマ米大統領の対応を甘く見たのか、中国の暴走は加速している。

 米国防総省のウォーレン報道部長は先月末、中国が人工島の1つに(自走砲などの)火砲を配備したと明言した。米政府は「自走砲を手始めに今後、レーダーや艦船、航空機、ミサイルなどが徐々に配備されていくだろう」(軍事筋)と分析している。

 まさに、「人工島の軍事基地化」だが、南シナ海は日本のシーレーンでもあり、わが国としても中国の野望を看過するわけにはいかない。

 中谷元防衛相とカーター氏は5月30日に会談し、中国の「力による現状変更の試み」に反対することで一致。オーストラリアのアンドリュース国防相を交えた3カ国の防衛相会談では、日米豪3カ国が緊密に連携していくことを確認した。

 東南アジア諸国にも不安が広がっているが、中谷氏は翌31日、シンガポールのウン・エンヘン国防相との会談で「日本も地域の平和と安全に貢献していく」と強調した。

 高い警戒監視能力を誇る海上自衛隊のP3C哨戒機を派遣する可能性があるが、航続距離に問題がある。このため、フィリピンの旧米空軍クラーク基地を活用する案もある。また、中谷氏は同会議での講演で、南シナ海で自衛隊と米艦艇が共同訓練などを行い中国に対抗する考えも示した。

 こうしたなか、中国は分断工作を仕掛けてきた。

 前出の孫氏は同31日、韓国の韓民求(ハン・ミング)国防相との会談で、米国が韓国への配備を検討している地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」について「憂慮する」と通告したのだ。

 韓氏は「韓国の国益と安全保障上の利益を考慮し、わが政府が主導的に判断し決める」と反論したというが、どこまで耐えきれるのか。

5/31伊勢雅臣メルマガ掲載 『地球史探訪: 海洋国家の衰亡への道 ~ 月尾嘉雄『日本が世界地図から消滅しないための戦略』を読む』記事について

月尾氏は東大教授だったにも拘らず左翼に汚染されていません。東大の先生が全部汚染されている訳ではないですが。カルタゴについては昨年9月にチュニジアに行って見てきました。海に面して遺跡がわずかながら残っていました。床がモザイク模様でした。塩野七生の『ローマ人の物語 ハンニバル戦記』と森本哲郎の『ある通商国家の興亡』にカルタゴが出てきます。本記事に書かれているような浮かれた気持ちしか持てない国民は滅ぶしかないという警世の書だったと思います。特に『ある通商国家の興亡』では第二ポエニ戦役でローマが要求した講和の条件は第二次大戦で米国が要求した武力放棄(ローマの命なく戦争してはならない)と酷似しています。

集団的自衛権で後藤とか辻元とか民主党は下らん質問ばかり。中国が南シナ海を手に入れようとしているのに“clear and present danger”と言うのが分からない人達です。「一国平和主義」というのは覇権国アメリカですら難しいのに日本にできる訳ありません。鎖国すればよいのでしょうがグローバルな時代にそれは無理です。民主党は日本に対し「鎖国せよ」とか中国に「隷従せよ」とでも思っているのでしょうか。武力侵攻を喜んでするような国に隷従したら国民がどうなるか分かるでしょう。チベット、ウイグル、モンゴル族が如何に悲惨な目に遭ってきているか、本ブログで何度も書いてきました。多国間同盟で中国を封じ込めるしかありません。

今の日本の経済人は経済にしか目が行きません。金儲けのことだけ。戦後すぐ位は、財界人は「国家と共にある」と言うほどの人物が多かったですが。然るに今は志の低い人ばかり。勿論経済力は軍事力の基礎となりますから、成長させていくことは非常に大切です。しかし、儲かればよいと言って敵に塩を送るのはどうか。三島の諌言、前述の森本の警世など、聞く頭になっていないのでしょう。(今調べて、森本は朝日新聞の編集委員をしていたというのでビックリですが)

オランダの事例で言えば今の米軍に戦闘させて自分は金儲けだけと言うのではアメリカ人の反感を買うという事です。アメリカも日本に多く基地を置いていたのはいわゆる「瓶の蓋」の役目だったのでしょうが、時代と環境が変わりました。日本の基地こそが「自由を守る砦」に変わる訳です。キッシンジャーが周と約束したことは全部裏目に出ました。彼も中国から金を貰っている口でしょうけど。「騙す人が賢く、騙される方が馬鹿」という民族性を知らないためです。中国を恐れ、日本の基地を置き去りにしたらアメリカは末代まで「臆病者」の烙印を押されるでしょう。宮崎正弘氏の言うように「第七艦隊」を日本の持つ米国債で買ってくれとなりますか?

記事

 カルタゴ、ベネチア、オランダに見る海洋国家の衰亡への道。

■1.「日本という国家が消滅することはないという幼児のような楽観」

『日本が世界地図から消滅しないための戦略』というショッキングなタイトルの新刊が出た。著者の月尾嘉雄(つきお・よしお)東大名誉教授はもともとは建築学が専攻だが、最近は地球環境問題やメディア政策など幅広い分野で発信をされている。

 この本の前書きは次のような印象的な一節で始まる。

 国旗掲揚と国歌斉唱に異論のある人々が日本に増加しているようであるが、それをしたくてもできない民族の苦痛を想像してみれば、そのような異論が愚論であることが容易に理解できるはずである。それは日本という国家が消滅することはないという幼児のような楽観を根底とする幻想でしかない。[1,p1]

 チベットやウイグルなど、自らの国家を失い、少数民族として圧政に苦しんでいる民族は少なくない。第二次大戦後に消滅した国家は約180にもなるという。

■2.消滅した古代海洋国家カルタゴ

 我が国と同様の海洋国家で、長く栄えながら滅んだ国が歴史上、いくつもある。

 その一つ、カルタゴは、北アフリカの地中海沿岸、現在のチュニジアの近辺で栄えた古代海洋国家である。紀元前814年に建国されたという伝説を持ち、紀元前6世紀から西地中海の海運交易を握り、エジプトからモロッコ、さらには現在のスペインのあたりまで領土を広げていった。

 しかし、イタリア半島から発展したローマと紀元前264年から146年までの120余年間に3度も大きな戦いを繰り広げ、一時はハンニバル将軍が象の一群を率いてアルプスを越えてイタリア半島にまで攻め込んだが、最終的には敗北した。

 ローマは通常は「敗者さえも同化する」寛大な政策をとって発展したのだが、ことカルタゴに対しては特別で、1世紀以上の度重なる戦いの報復として、カルタゴ市民を虐殺し、都市はすべて破壊した。カルタゴは地上から消滅し、その遺跡は19世紀まで発見されなかった。

■3.滅亡の第1の要因:傭兵

 カルタゴが消滅したのはローマとの戦いに敗れたからであるが、実際にハンニバルのイタリア半島侵攻ではローマ征服の一歩手前までいきながら、最終的にはなぜローマに滅ぼされたのか。

 その理由として月尾氏が最初に挙げているのが、傭兵に依存したことである。海洋国家であるから海軍は自国民中心で構成されていたが、陸軍は大半が傭兵であった。傭兵の目的は金銭であり、カルタゴのために命をかけるという志はない。

 それに比してローマは当時は共和国であり、市民は祖国のために、子孫のために、命をかけて戦うことを名誉と考えていた。いかに名将ハンニバルが何年か活躍しても、1世紀以上も戦い続ければ当然この違いが出てくる。

 傭兵が頼りにならない事は、その後の歴史で何度も実証されている。たとえば、ロシアは日露戦争で当時属領として支配していたポーランド人をロシア軍に含めて送り込んだ。日本軍はポーランドの独立運動と連携して、ポーランド兵の脱走工作を行い、投降したポーランド兵数千人を松山の収容所で厚遇した。[a]

 対する日本兵はすべて国民兵であり、家族のため、国家の独立維持のために命を捧げることを厭わなかった。[b]

 大東亜戦争でも、日本陸軍は開戦後わずか2ヶ月でマレー半島のイギリス軍を駆逐してシンガポールを占領したが、その成功要因の一つに英軍10万の半分を占めるインド兵に呼びかけて、「インド独立のために一緒に戦おう」と呼びかけたことがある。ここで結集したインド将兵たちが、現在の「インド国民軍」の中核となった。[c]

 いくら経済的に繁栄しても、国家の独立を守るのは自前の防衛力である。金で雇った傭兵では、いくら優れた将軍や武器を備えていても、長期的に国家を守る真の防衛力にはならない。

■4.滅亡の第2の要因:経済史上主義

 敗戦の第二の原因が経済至上主義である。月尾氏は次の史家の言葉を引用している。

「カルタゴの歴史は文明の浅薄さと脆弱さを示している。彼らは富の獲得だけに血道をあげ、政治的、文化的、倫理的な進歩を目指す努力をしなかった」(J・トゥーテイン)

 目先の利益にだけに目を奪われていては、日ごろから防衛のための備えをすることもおろそかにされる。青少年には国家公共のために働くことを名誉とみなす倫理教育もできなかったろう。

 そもそも豊かな文化伝統なしに経済至上主義の中で育てられた青少年には、祖国のために尽くし、祖国の危機には立ち上がる祖国愛も育たなかっただろう。

■5.滅亡の第3の要因:ローマの敵意に対する鈍感さ

 滅亡の第三の原因として挙げられているのが、ローマの敵意に対する鈍感さである。

 第一次ポエニ戦争(紀元前264~241年)の敗戦では広大な領土放棄以外に、年間の農業生産に匹敵する賠償金を24年に渡って支払うこと、さらに第二次ポエニ戦争(紀元前149~201年)では、同程度の賠償金を50年間支払い続けることとされたが、カルタゴは、その通商での経済力でいずれも早めに完済してしまう。

 それほどの経済力を持ったカルタゴを危険視して、ローマの政治家たちはカルタゴを滅亡させるべきと決心する。

 第二次ポエニ戦争での敗戦にもかかわらず、その後も発展しているカルタゴを脅威とする人々がローマに増加していくが、その中心にあったのがローマの政治家マルクス・ポルキウス・カト・ケンソリウス(大カト)である。第二次ポエニ戦争に従軍して敗走した経験もあり、カルタゴへの敵愾心に満ちていた政治家であった。

 カトはカルタゴから輸送されてきた見事なイチジクを聴衆に見せ、このような立派な農産物を生産する国がローマから三日の航海の距離にあると演説し、その最後を「デレンダ・エスト・カルタゴ(カルタゴを殲せんめつ滅すべし)」と締めくくっていた。この繰返しが次第にローマ市民に浸透し、戦争の気運が高まっていった。これが第三の教訓である。[1,p31]

 ローマはカルタゴに、地中海に面した首都を捨て、内陸部に遷都せよ、という無理難題を要求して、ついに3度目の戦争に追い込む。そしてカルタゴを破った後は、その都市を跡形もなく破壊し、住民を虐殺するという、敗者に対して寛容なローマにしては珍しく残虐な措置をとったのも、こういう反カルタゴ感情がゆえであろう。

 不思議なのは、カルタゴがこういうローマの敵意に対して、鈍感だったことである。経済至上主義で国の安全に無頓着であれば、他国の脅威に対しても、敏感にはなれなかったのだろう。

■6.ベネチアの繁栄と衰亡

 カルタゴと同様に、地中海での通商を握って、長期間、栄えながら滅んだのがベネチアである。海上に浮かぶ小さな人口島を本拠地として、697年の初代元首就任から1797年にナポレオンに征服されるまで、実に1,100年間も独立を維持した[a]。優れた造船技術を武器に、最盛期には地中海最大の海洋国家として栄華を誇った。

 ベネチアについては本誌104号[e]で紹介したので、ここでは繰り返さないが、そこで強調したのは、発展の原動力となったのが貴族も平民も国家に尽くそうという強い同胞感だった事だ。この力によって、人口10倍もの大国トルコと250年間も戦い抜いたのは、カルタゴとは大きく異なる点である。

 しかし、最後には衰退し、ナポレオンに屈服するのだが、そこでの要因として、月尾氏は以下の3つを挙げている。

 第1は技術革新への乗り遅れ。15世紀にポルトガルで3本の帆柱を備えたキャラベル船が開発され、コロンブスのアメリカ大陸到達などの大航海時代が始まった。この船は造船単価が3.5倍にも跳ね上がるが、ベネチアは造船予算を1.5倍にしか増やさなかった。当然、保有する隻数は半分以下となり、海軍力も、交易力も大きく低下した。

 第2はアジアとの交易で、アフリカの希望峰周りの航路が開拓され、ポルトガルやスペインなどの大西洋に面した港湾都市が交易の中心となったこと。従来の東地中海から中近東を通る陸上ルートは危険で、コストも高いので廃れてしまった。

 第3に、国民の通商意欲の減退と、それを反映した人口の減少。海に向かう進取の気風が失われ、ベネチアの対岸の大陸部分に引き込むようになった。守りの生活に入ると、子どもの増加が財産の細分化につながるため、貴族の家庭で独身比率が高まっていった。16世紀の51%から、17世紀に60%、18世紀には66%と上昇していった。

 これは肉体的な精力が減退したというよりは、精神的な意欲の衰退と理解すべき現象である。一八世紀末のナポレオンの恫喝(どうかつ)に戦時問題首脳会議も大評議会も弱腰で右往左往し、簡単に屈服した下地は、二〇〇年近い社会と国民の性質変化によって出来上がっていたということになる。[1,p40]

■7.オランダの海洋覇権がいかにイギリスに奪われたのか

 月尾氏の著書にはないが、弊誌で紹介したオランダの盛衰も関連するので、簡単に触れておこう。

 大英帝国が築かれる前に、オランダはアフリカの希望峰から、セイロン、ジャカルタ、広東、そして長崎の出島に至るまで植民地や通商拠点を置き、17世紀の世界貿易を握っていた。

 オーストラリア大陸はオランダ人が発見し、オランダのホラント州から「ニューホラント」と名付けられていた。ニュージーランドは、同様にゼーラント州から付けられた名前がそのまま残っている。アメリカのニューヨークは、もとはニューアムステルダムだった。

 このオランダの海洋帝国は、その後、ほとんどイギリスに奪われ、大英帝国として「上書き」されてしまう。

 かつてオランダはスペイン帝国の一領地だったが、自由と独立を求めて同盟国イギリスと共に80年戦争を戦い抜く。戦争の途中、オランダの商人たちが実権を握ると、彼らは金はかかるが利益の少ない地上戦闘はイギリスに任せ、自らは海洋権益の拡大を目指した。こうしてオランダは一大海洋帝国を築き上げた。

 しかし、このオランダの姿勢は、イギリスの反感を買った。イギリスの当時の重商主義者トーマス・マンはこう語っている。

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 オランダ人が東西両インドを征服し、その交易の果実をわれわれからむしり取っている間、われわれはオランダの防衛のために血を流しているのである。[2,p219]

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 1648年にスペインとの講和が成立するや、わずか4年後には英蘭戦争が始まっている。その最中でもオランダ商人の中には、イギリスに軍艦用資材を売って大儲けする輩(やから)までいて、そんな状態ではオランダは勝てるはずもなかった。こうしてオランダの海洋覇権は次々とイギリスに奪われ、世界貿易の中心はアムステルダムからロンドンに移ったのである。

■8.日本が世界地図から消滅しないために

 カルタゴ、ベネチア、オランダと、一時は海洋大国として隆盛を誇りながら、その後、滅亡ないし衰退した国家を見てきた。

 これらの国々が発展する過程に共通して見てとれるのは、国民が経済発展を目指して自由に励む姿である。国民が自由に自らの利益を追求する時、個人の創意工夫によって新しい技術が生まれ、新たな航路が切り開かれ、交易が始まる。その活動が海洋大国を築く。

 しかし、いざ戦争となると、経済力とは別次元の力が必要となる。カルタゴの例で見たように金で雇った傭兵では、命を懸けてまで国を守ってはくれない。自分の家族、郷土、国家を自らの生命を犠牲にしても守ろうとする祖国愛を持った国民が必要なのである。経済至上主義では、国民一人ひとりが自分の利益を追求するだけで、そのような祖国愛は生まれない。

 各自が自分の利益だけしか眼中になければ、他国が敵意を燃やしていても気がつかない。カルタゴがローマの敵意に気がつかず、オランダがイギリスの怒りを買ったのも、経済至上主義の故だろう。祖国を守りたいという姿勢があってこそ、敵国や同盟国の動向・心理にも注意を払うようになる。

 また、経済至上主義では、ある程度の豊かさを達成してしまうと、それに満足してしまう。ベネチアのように結婚して子孫を作るよりも、独身のまま今の生活を楽しんだ方が良いと考える。子孫のために、何とか新たな繁栄の道を探ろうという志を持たなくなる。

 カルタゴ、ベネチア、オランダの歴史は、現代日本に二つの道を示している。一つは、経済至上主義で高度成長を遂げた現状で満足してしまって、十分な防衛努力もせず、近隣諸国の敵意や同盟国との連帯に注意を払わずに、少子化と経済停滞の道を歩むか。この道では、いざ敵国に攻め込まれたら、滅亡は必至だ。

 第二の道は、祖国愛を蘇らせ、自らの国は自ら守るという気概を奮い起こし、防衛の備えを怠らず、子孫のために新たな精神的、経済的発展を志す。

 日本が世界地図から消滅しないための岐路に我々は立っている。

(文責:伊勢雅臣)