6/15渡部亮次郎メルマガ Andy Chang『米国のアジア政策見直し(2)』記事について

来年1月の台湾の総統選で国民党の泡沫候補と言われていた洪秀柱の支持率が46%超になったという記事をみました。以前に読んだ中国時報の記事では3%しかなかったのですが。外省人がメデイアを支配していますから、中国人と同じく数字を操作しているのかも知れません。母数が3社で各1200人ですから操作は可能でしょう。

民進党の蔡英文が先月末から訪米して認知され、昨年11月の統一地方選の惨敗の余波が残る中ですので、次の次辺りを考えているのかも知れませんが。南シナ海での中国の傍若無人な振る舞いを見て、アメリカも流石に中国と台湾がこれ以上くっつくのは危ないと思っているはず。民進党が勝つと思います。

日本人ももっと国際関係に目を向けた方が良いです。無関心だから奸智に長けた国がそれを利用して間接侵略を果たそうとしているのに気が付きません。享楽主義も考え物です。或は学生時代に取った杵柄か、左翼脳から脱しきれない老人とか曲学阿世の徒とか困ったものです。自分たちは早く死ぬから良いとでも思っているのでしょうか?「平和」は「念仏」や「憲法9条」を唱えていれば実現できるものではありません。自明の理です。現実に中国の内蒙古、チベット、ウルグアイ、南シナ海の侵略を見ていれば分かりそうなもの。分からないとすれば空メクラか似非平和主義者でしょう。戦う姿勢を見せない限り、中国は嵩にかかって攻めてきます。こういう人たちは中国に隷従した方が良いと思っているのでしょうか?人権抑圧国家で自国民を何千万人も虐殺した国です。こういうことが判断基準に入ってないとしたら、何のために学問しているのでしょうか?単なる専門バカを造っているだけのように見えます。くれぐれもメデイアとか学者を権威と思わないように。常識・直観を大切にした方が良い。

記事

米国のアジア政策見直しとはアメリカが中国に強い態度を取るようになったこと、同時に日本重視、台湾重視と南シナ海への介入である。特に台湾問題でこれまでの態度を変えたのは良いことだ。

過去2か月の間に起きた台湾関連のニュースを拾ってみると米国の台湾に対する変化がわかる。(1)朱立倫の訪中と台湾民間の強烈な反対、(2)中台関係が中国拒否になった、(3)米国在台協会(AIT)主席・薄瑞光(Raymond Burghardt)の台湾訪問、(4)蔡英文・民進党党首の訪米で米国側の破格な歓待、(5)オバマの「アメリカは南シナ海の領有権を持っていない」発言。

これらの台湾で起きた一連の事件に前の記事(No.544)で書いた、シャングリラ・ダイアローグとG7首脳合同発表を合わせれば米国のアジア政策見直しが見えてくる。

  • 過去2か月に台湾で起きたこと

5月4日、国民党の党首で新北市長でもある朱立倫は中国を訪問して習近平と会見したが、この会見で習近平が「92年共識(中国は一つというコンセンサス)」が中国と台湾双方の平和の基礎であると強調したのに対し、朱立倫はコンセンサスを認めると言わず、代わりに「両岸同属一中(台湾と中国は同じく中国に属する)」と述べた。台湾は中国の領土であると発言したにも等しい。

これが報道されると台湾人民は激しく反撥し、朱立倫は台湾を売ったと批判された。朱立倫は「一つの中国とは中華民国のことだ」と弁解して嘲笑を買った。朱立倫の人望はガタ落ちとなり、国民党の三大政治人物から脱落した。中国の恫喝は人民の反感を強め、台湾では反中国と反外省人の声が高くなり、国民党は次の選挙で大敗するかもしれない。

5月10日にRaymond Burghardt(薄瑞光)米国在台協会主席が慌てて台湾に飛んできて馬英九と会談した。国民党党首が中国を訪問して習近平と会談をしたらアメリカは中国と中華民国にどんな(公開、非公開の)約束があったのか知りたがるのは当然である。だが彼はこの訪問で国民党側の公式説明を聞くだけでなく、台湾人民の総意が[NO CHINA]になったことを確認したと言える。

国民党は総統選挙に候補者を出せないでもたもたしている。中国政策も反対が強烈だから、Raymond Burghardtはこの時点で「国民党に見切りをつけた」のではないか。2012年の総統選挙にDouglas Paalを派遣して馬英九を支持した時とは大違いである。

Raymond Burghardtのもう一つの任務は、月末に米国を訪問する予定の民進党の党首・蔡英文とスケジュールの打合せだった。蔡英文のほかにも民間の有名人物に会ったと言われている。

  • 蔡英文の米国訪問

5月末から12日間の米国訪問に出発した蔡英文は、6月2日ワシントンで公式訪問を始め、参議院の軍事委員会主席John McCain、民主党議員のJack ReedとDan Sullivan などと会見した。蔡英文はこの後すぐAIT主任Raymond Burghardtの案内で米国貿易代表と会談した。

続いて3日にはホワイトハウスで米国国家安全会議を訪問し、4日には国務省でアントニー・ブリンケン国務副長官らと面会した。近年における台湾の総統候補者として、最も高いレベルの礼遇を受けた。このほか蔡英文は3日にアメリカのシンクタンクCSISにおいてKurt Campbellの主催で台湾問題について講演をした。

アメリカが1978年に中華民国と断交して以来、台湾の政治家がワシントンを訪問しても国会やホワイトハウスに招待されたことはなかった。蔡英文は野党の党首で総統選挙の候補者が、今回のワシントン訪問で破格な待遇を受けたのである。つまり米国は国民党に見切りをつけた、少なくとも来年は民進党が政権を取るだろうと予測したのだ。これは重要な政策変更である。

  • オバマの「南シナ海の領土主権否定」

6月1日、オバマ大統領はホワイトハウスでASEAN諸国の青年代表らと会見した際に、南シナ海における中国の勝手な岩礁埋め立てについて「もしも中国の主張が合法なら諸国はこれを認める。しかし肘で他人を押し退けるような行為で合法性を主張することはできない」と発言して中国の強引な領土主張を退けた。

その次にオバマは「アメリカは領土争議の片方ではなく、南シナ海の領土主権も持たない。しかしアジア太平洋の一国として、国際間の意見の相違は国際標準に従い、外交手段で平和に解決すべきで、これはアメリカにも利害関係のあることである」と述べた。

オバマは「アメリカは南シナ海(そして台湾澎湖)の領土主権を持たない」という非常に重要な発言をしたのである。日本はサンフランシスコ平和条約(SFPT)の第2条bで台湾澎湖の主権を放棄したが、同時に第2条fで新南群島(パラセルとスプラトリー群島)の主権も放棄した。しかし日本が放棄した領土の主権は明らかにされなかった。

放棄された領土の主権が明確でないため、台湾の台湾民政府(TCG)と米国台湾政府(USTG)のグループは、SFPT第23条に主要占領国アメリカと書いてあるからアメリカは台湾の占領権を持つ」と勝手に解釈して宣伝(主張)していた。

アメリカが領土主権を明確にしなかったから根拠のない主張ができたのである。だがオバマは「米国は南シナ海(そして台湾澎湖)の占領権を持っていない」と発言した。つまり「台湾民政府(TCG)と米国台湾政府(USTG)の主張には根拠がない」ことが明らかになったのである。

  • 「現状維持」とは緩やかな変遷

これまで米国のアジア政策は「現状維持」だけだった。つまり中国とイザコザを起こしたくないから、横暴な中国の領土拡張や武力恫喝に対し日本、台湾、東南亜諸国に我慢を要求してきたのである。米国のアジア政策見直しとは「我慢にも限度がある」ということだ。

米国が台湾の國民黨を支持してきた理由は、国民党は台湾独立をしない、民進党が独立主張をすれば中国が武力で恫喝する、だから米国は民進党を支持せず「現状維持」を押し付けてきたのだ。それが今回の蔡英文の訪米で米国の態度がガラリと変わった、国民党を見切り、民進党支持に回ったのだ。

米国は民進党が政権を取っても独立宣言はしないとわかった。それより國民黨の統一路線と中国の南シナ海の領土拡張のほうが危険で中国の台湾併呑はアジアで戦争が起きる。中国の急激な侵略を防ぎ、東南アジア諸国と連携して現状の緩やかな変遷で中国を抑え込む、これが米国のアジア政策見直しの要点である。