韓国の朴大統領は日本の軍艦島の世界遺産について告げ口外交を再開したとのこと。また議長国のドイツを動かし、水面下で謝罪の碑文を造らせようとしているとも。そんなことをすれば、慰安婦と同じ展開になるでしょう。韓国は日本を道徳的に劣った民族と世界に認めさせたいためずっと工作してきましたし、今後も続くでしょう。こんな国に支援するのは愚かです。「非韓三原則」を貫かないと。今の日本人はヤワすぎます。徹底的にやらないとダメです。先ずは経済を崩壊させることです。
6月朴大統領の訪米で、アメリカは「THAAD」配備を必ず求めるでしょう。「もし配備しなければ米軍撤退もありうる」と脅すのでは。北が潜水艦によるSLBM実験をしたこともあって在韓米軍を守る必要があるのにその配備を許可しないのであれば何のために韓国を守るのか本質的な疑問が出ます。まあ、米軍基地は一種治外法権みたいなものだから朴を無視して設置するかも。しかし、ペンタゴンの南沙諸島の中国軍事基地に対する「12海里進入」発言を韓国はどう考えているのでしょう。自国のことしか考えない、国際的なセンスのない国と言えます。
参考:「ぼやきくっくり」 http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid1725.html
記事
「外交敗北」としょげ返った韓国。だが、直ちに元気を取り戻した。世界的な学者たちが「慰安婦」で助けに来てくれた、と信じたからだ。
日本孤立化作戦の失敗
—韓国の「外交敗北ショック」は大きかったようですね。
鈴置:ええ、「米中両大国を味方につける外交戦で日本に負けた」と大騒ぎになりました。韓国人は「朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が両大国をうまく操り、日本を孤立に追い込んだ」と信じていました。
でも「大成功した日本孤立化作戦」は、韓国政府とメディアの作った虚構だったことが露見してしまったのです(「ナポレオン3世に擬された朴槿恵」参照)。
4月の「日中」と「日米」の2つの首脳会談により、中国は日本との関係改善を、米国は日本との同盟強化に動いていることが誰の目にもはっきりしました(「朴槿恵外交に噴出する『無能』批判」参照)。
ことに、安倍晋三首相が米議会で演説したことに韓国人は大きな衝撃を受けました。「慰安婦で謝罪しない安倍には演説させるな」と国を挙げて米国に働きかけていたからです(「『アベの米議会演説阻止』で自爆した韓国」参照)。
そこで「韓国こそが孤立しているではないか」とメディアが政府の責任を追及するまでになったわけです。虚構作りには多くのメディアも加担していましたから、責任転嫁そのものですが。
「戦略的敗北」は無視
—では、韓国メディアは外交的な孤立から脱するために「米中どちらに付くべきだ」と主張しているのですか。
鈴置:そこが興味深い点です。大手メディアは米中の間の立ち位置に関しては、上手に言及を避けています。
ほとんどすべての新聞が社説で「日米が新蜜月関係に入った。韓国も米国との関係を強化すべきだ」と主張します。
しかし同時に、保守系、左派系を問わず「中国との関係ももっと良くすべきだ」と書くのです。要は「きれいごと」です。
「米中双方と良好な関係を築け」とは言っても、それが難しくなったからこそ、韓国は苦境に立っているのですけれどね。
—「大騒ぎ」になっているのになぜ、そんな曖昧な主張で終わってしまうのでしょうか。
鈴置:韓国人がショックを受けたのは、あくまで「日本を孤立に追い込んだはずが、実は自分が孤立していた」ことなのです。
大手メディアは、米国が「慰安婦」で日本に軍配を上げたのは日本のカネに負けたから――と総括しました。「カネ」とは議会工作や、対米軍事協力の拡大を指します。要は、戦術的な失敗と捉えたのです。
その結果、敗北の根にある戦略的な問題――「二股外交」の危さに目が行かなくなったのです。だからメディアは依然として「米中両大国と仲良く」と、理想論を書き続けるのです。
コウモリの末路
—でも「二股外交」は限界に達したと見るのが自然でしょう。
鈴置:確かにそうです。米中が対立を深める中で、双方の味方であるふりをする韓国は、誰からも信頼されなくなりました。典型的な「コウモリ外交」です。
でも「二股の失敗」を指摘する以上、メディアは米中どちらに身を寄せるべきか、社論をはっきりさせねばなりません。これを避けたいこともあるのだと思います。
メディアは今も、米中どちらが覇権を握るのか見極めてから立場を明らかにする――要は、勝ち馬に乗ろうとしているのです。
もちろん、朴槿恵政権も同じ発想で外交政策を組み立てています。韓国は依然として、国を挙げて機会主義に邁進中なのです。
それにメディアは、読者に語ってきた「米中両大国を操る夢」をいまさら引っ込められないのでしょう。この共同幻想を作りあげてきたのはメディアですから。
なお、趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムなど、親米保守のネットメディアは「そもそも二股外交が無理筋だった」と批判します。が、メディア全体から見れば、少数派に留まっています。
左派は「孤立」を利用
—では、国民は「米中を操る夢」を未だに見ているのですか。
鈴置:国民の方がメディアや政権より、冷静かもしれません。夢から醒めた人も多いようです。中には初めから「夢だ」と思いながら、夢見ていた人もいると思われます。
交流ソフト(SNS)や韓国紙の電子版への読者の書き込みを見ると「外交的な孤立」に対し、4つの解決策が語られています。
まず、米国側への復帰、です。日本が米国にぐんと接近した。だから慰安婦問題でも韓国は言い分を聞いてもらえなかったのだ。だったら日本に負けないよう米国との同盟強化に動くべきだ、との考え方です。
次が、中国側に走る、です。慰安婦問題で米国は韓国の肩を持ってくれなかった。それなら、一緒になって日本を非難してくれる中国との関係を強めよう、との発想です。
米国だろうと中国だろうと、どちらかに寄ろうという意見の人は「二股の夢」からは醒めていると言えます。
残り2つは、すぐには実現しない構想ですから「新たな夢」を見る人々と呼ぶべきかもしれません。まずは北朝鮮との関係改善論です。
「北朝鮮と対立しているから、米国など周辺国の顔色をうかがわなくてはならないのだ。北と関係を改善すれば、慰安婦で日本側に立った米国に対しても強く出られる」との理屈です。
この主張はハンギョレなど左派系紙にも見られます。北との対話に消極的な朴槿恵政権を批判する材料として、左派は「外交的孤立」を利用し始めたのです。
最後は核武装論です。米国に逆らえないのは軍事力がないからだ。核を持てば米韓同盟も不要だ。米国がいくら日本だけを可愛がっても、悩まなくてよくなる――というわけです。
渦巻く米国への不信感
—4つの意見は、それぞれどれぐらいの比重ですか?
鈴置:様々の記事への書き込みからの観察ですから、正確なデータはありません。まあ、ものすごく大雑把に言えば、4つの意見の登場頻度に大きな差はない感じです。
ここで注目すべきは、【1】「米国への復帰論」に代表される「親米派」が意外と少ないことです。
【2】「中国側に走る」はもちろん、【3】「北朝鮮との関係改善論」も【4】「核武装論」も、米国にはもう期待しない、との意識が根にあります。これらの、言わば対米独立論は合わせると過半数を超えるように思われます。
慰安婦に象徴される歴史問題に関し「米国は常に韓国の味方だ。必ず日本を叩いてくれる」との思い込みが異様に強かったためでしょう。その反動から米国への不満と不信が渦巻き始めたのです。
亀裂が入った米韓同盟
そんな空気を映す記事も登場しました。朝鮮日報の金泰勲(キム・テフン)デジタルニュース本部次長が書いた「米国が韓国人の心を得ようとするのなら」(5月7日、韓国語版)です。
まず「慰安婦を謝罪しない安倍晋三首相に対し、米国が議会演説を許したため韓米日の協力体制に亀裂が入った」と断じます。
そのうえで米国に強く反省を求めました。ポイントを要約します。日本人に馴染みのない韓国の人名は省きます。
- 米国が亀裂を縫い合わせようとするなら、韓国政府に「日本との関係を改善しろ」と要求するだけではなく、韓国の国民の心をつかむべきだ。
- 安倍首相の訪米中に米議会の前でデモした元慰安婦、ハーバード大学で沈黙デモを企画したり、安倍首相に質問した韓国系学生。彼らは韓国人がどう思っているかを米国に知らしめた。
- 彼らは、107年前に「韓国は日本の保護を受けるべきだ」と主張したD・W・スティーブンスを処断した2人の韓国の義士を思い起こさせる。
「外交的失敗」から韓国政府は弱腰になり、米国の求める日本との関係改善を受け入れるかもしれない。しかし、韓国の国民は怒っているし「対日懲罰」をあきらめない。韓国民を軽んじると韓米同盟に亀裂が入るぞ――との主張です。
米国人を誅する韓国の義士
—スティーブンスとは?
鈴置:1904年に日本の推薦で大韓帝国の外交顧問に就任した米国人D. W. Stevensのことです。一時帰国中の1908年に「愛国的な」2人の在米韓国人によって暗殺されました。
—駐韓米国大使が韓国のナショナリストによって殺されかけたばかり。なかなか大胆な記事ですね。
鈴置:ええ、米国人が読んだらぎょっとするでしょう。書いた当人は「アベに議会演説を許した米国への韓国人の怒りは、それほどに大きいのだ」と強調するつもりなのでしょうけれど。
政府が外敵に屈した後も、民間の志ある人々が――つまり義士が立ち上がって敵に一矢報いてきたのだ、という共通認識が韓国社会にはあります。
この記事中にも、ちゃんと3月の襲撃事件が言及されています。ただ、リッパート(Mark W. Lippert)駐韓米国大使は「韓国人の心をつかもうとしている」と評価されていますから、さらなるテロの対象になるわけでもなさそうですが。
世界の碩学がアベ批判
—「韓国はしょげ返っている」と思っていましたが、そうとばかりは言えないのですね。
鈴置:その通りです。5月5日、世界の187人の学者が英語と日本語で、慰安婦に関し「日本の歴史家を支持する声明」を発表しました。これで韓国人は元気を一気に取り戻しました。
187人は米国のアジアを研究する学会に所属する人々で、日本研究者が中心です。金泰勲デジタルニュース本部次長も、結語で以下のように触れています。
- エズラ・ヴォーゲル(Ezra F. Vogel)ハーバード大学名誉教授ら世界的な歴史学者たちが先頃、安倍首相に慰安婦問題の解決を求める声明を発表した。
- 韓国人の心をつかんで同盟を強化するという米国の韓米日協力外交は、この声明を尊重することから始めるべきだ。
孤立感を深める中で、韓国人は強力な援軍を得た思いだったのでしょう。各紙は直ちに社説でこの声明を引用し「世界の著名学者がアベを批判した」と一斉に主張しました。
知日派も韓国の味方だ
朝鮮日報の「日本の慰安婦歪曲、世界的学者が我慢ならないと立ちあがった」(5月7日、韓国語版)、中央日報の「安倍首相は軍の慰安婦を否定せず、歴史を直視せよ」(5月7日、日本語版)、ハンギョレの「安倍首相に対する世界の歴史学者の警告」(5月7日、日本語版)などです。
中でもエズラ・ヴォーゲル名誉教授は韓国でも「知日派」として知られています。「あのヴォーゲルが日本を叩いてくれた」と喜んだ人が多いのです。
187人の学者は声明で、日本は動員の強制性などに拘るが、残忍な行為を受けた慰安婦が存在するのは事実だ。日本は制度として女性を搾取した「慰安所」の存在から目をそらすな――と主張しています。そして結論部分は以下です。「ですます調」の日本語版からそのまま引用します。
- 今年は、日本政府が言葉と行動において、過去の植民地支配と戦時における侵略の問題に立ち向かい、その指導力を見せる絶好の機会です。
- 4月のアメリカ議会演説において、安倍首相は、人権という普遍的価値、人間の安全保障の重要性、そして他国に与えた苦しみを直視する必要性について話しました。
- 私たちはこうした気持ちを賞賛し、その1つ1つに基づいて大胆に行動することを首相に期待してやみません。
韓国批判には知らんふり
—この声明は、韓国をも批判していると聞きましたが。
鈴置:実はそうなのです。以下の部分です。
- この問題は日本だけではなく、韓国と中国の民族主義的な暴言によっても、あまりにゆがめられてきました。
- 元「慰安婦」の被害者としての苦しみがその国の民族主義的な目的のために利用されるとすれば、それは問題の国際的解決をより難しくするのみならず、 被害者自身の尊厳をさらに侮辱することにもなります。
でも各紙とも、社説ではこの対韓批判は完全に無視しています。そこを引用したら、対日批判がブーメランのように自分に戻ってきてしまうからです。
「韓国も批判されているのだ」と指摘した記事は、私が見た限りでは1本だけでした。朝鮮日報の金泰翼(キム・テイク)論説委員の「世界的な歴史学者187人が韓国に送った苦言」(5月12日、韓国語版)です。
「せっかく日本軍慰安婦を取り上げてくれたのだから、声明では米軍慰安婦にも触れてほしかった」――と書く韓国紙が出るかな、と思いましたが、それも見当たりませんでした。
朝鮮戦争以来、在韓米軍向けの、この声明風に言えば――制度として女性を搾取する――慰安施設が韓国に生まれました。ここで働いた女性から、韓国政府は訴訟も起こされているのですけれどね。
いずれにせよ「日本との外交戦に負けた」としょげ返っていた韓国人は「米国の学者が韓国を支持したのだ。それをテコに米国政府を揺さぶって味方に付ければ、対日外交戦争でまだ巻き返せる」と元気を出したのです。
韓国にはない「曲学阿世」批判
—でも、いくら「世界的に著名な学者」とは言っても、学者の主張です。
鈴置:そこが日本人と意識が根本的に異なる点です。韓国では学者が極端に偉いのです。1950年、米国との単独講和に反対した東大総長に対し、当時の吉田茂首相が「曲学阿世」――真理を曲げ、世間におもねるな――と批判しました。
一方、韓国では学者がどんなに空論を吐いても「曲学阿世」などと非難されません。「学者は偉い」からです。それに先ほども言いましたが、韓国人はとにかく援軍が欲しかったのです。
「日本の歴史家を支持する声明」が発表された翌日の5月6日、朴大統領が駐韓外交団向けのレセプションで「国際政治は国家利益で動くというが、本当に重要なのは信頼だ」と述べました。
米国を念頭に置いた発言と思われます。韓日間の外交戦で米国が日本の手を上げたのは、米国の利益に沿って日本が中国包囲網に積極的に協力すると決めたからだ――と韓国では報じられています。
朴槿恵大統領は米国に対し「そんな目先の利益だけで動くと、韓国の信頼を失うぞ」と釘を刺したつもりでしょう。
「離米従中」で信頼失った韓国
—米中間で二股をしながら、米国に「自分の信頼を失うぞ」と脅すのも変ですね。
鈴置:韓国では、論理的な整合性とか一貫性はさほど重視されないのです。実際のところ、米韓関係の最大の問題は「離米従中」に突き進む韓国に対し、米国が信頼を失ったことにあるのですがね。
とにもかくにも韓国は、日本との外交戦が終わったとは考えていません。朴槿恵大統領は6月中旬に訪米、オバマ大統領と会談します。その場を対日外交戦の第2ラウンドと位置づけて、逆転を図るつもりと思います。
米国が韓国に言い渡した。中国に対抗するため、米国は日本とスクラムを組んだのだ。「慰安婦」で我々の仲を裂こうとするな――。
韓国を見透かしたマイケル・グリーン
—前回は「日本との外交戦に負けた」としょげ返っていた韓国が、突然、元気になった、という話でした。
鈴置:エズラ・ヴォーゲル(Ezra F. Vogel)ハーバード大学名誉教授ら187人の日本研究者たちが、安倍晋三首相に慰安婦問題の解決を求める声明を発表したからです。
この「日本の歴史家を支持する声明」は、韓国の姿勢にも疑問を投げましたが、韓国各紙はそれをほとんど無視。この声明を援軍に外交戦で日本に逆襲しようと、メディアは戦意を盛り上げました。
実は、この状況を見越していたかのような記事があります。マイケル・グリーン(Michael Green)戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長兼ジョージタウン大学准教授が、安倍首相の訪米直前に中央日報に寄稿した「安倍の訪米に韓国は何を期待するのか」(4月24日、日本語版)です。
米国も左派は「反・安倍」
- ニューヨーク・タイムズ(NYT)のようなメディアは安倍首相の議会演説を非難するだろう。だが彼の演説を歓迎するメディアもあるだろう。
- 日本と同じように、安倍政権に対する米国エリートの見解は理念によって分かれている。米国人は一般的に日本に対して非常に肯定的な見解を持っている(もちろん韓国に対しても非常に肯定的だ)。
米国の左派は安倍演説を批判するだろうが、それに舞い上がって現実を見誤ってはいけないよ、とのアドバイスです。
なお、丸かっこの中の「もちろん韓国に対しても……」のくだりは日本語版と韓国語版(4月24日)にはありますが、大元の英語版「What to expect from Abe’s visit」(4月27日)にはありません。「日本とどちらが上か」を気にする韓国人読者に配慮して入れたのでしょう。
「慰安婦」で対中包囲網を妨害
—このコラムの狙いは?
鈴置:中国の横暴を抑えるため、日米は同盟関係を可能な限り深める。朴槿恵(パク・クンヘ)政権も日―米―韓の3国協力体制にしっかりと入ることが求められるよ――との忠告でしょう。結論部分で以下のように書いています。
- 日本に対する米国人の信頼度は実は、安倍首相になった後さらに高まった。日米首脳会談が成功裏に終われば、日米防衛協力指針と環太平洋経済連携協定(TPP)にはずみをつけることになろう。
- オバマ大統領にとっては政治的に大きな勝利になるだろう。米政府は首脳会談の結果として、韓日関係に突破口が用意されることとは期待していない。が、安倍首相の訪米が韓日首脳会談と韓日米協力の強化の契機になることを期待している。
中国は南シナ海で埋め立てを進めるなど、露骨な膨張政策に乗り出しました。それを阻止するため、米国は日本をはじめ豪州、ベトナム、フィリピンとの軍事協力を急速に強化しています。
一方、韓国はそれに加わらないどころか、対中包囲網を妨害しています。2014年7月には日本の集団的自衛権の行使容認に中国とともに反対しました。「慰安婦」で韓国が大声を上げるのも、その一環と見なされ始めました。
日本がいくら謝罪しても……
そんな韓国に対し、グリーン副所長以上に厳しい警告を発したのがビクター・チャ(Victor Cha)ジョージタウン大学教授です。
日米首脳会談の直後に中央日報に載った「韓日首脳に本当に重要な問題」(5月1日、日本語版)をご覧下さい。ハイライトは以下です。
なお、大元の英語版は5月4日に掲載された「Hard questions for Park and Abe」です。
- 今回の首脳会談準備期間に私は慰安婦問題をめぐる談論を絶えず反すうした。この問題に対する本当に難しい質問は、安倍首相ではなく韓国国民に投げかけられたと信じる。
- 次のような質問だ。もしある日本の首相が「侵略」「植民地支配」「反省」という言葉を慰安婦問題に関連する発言として使うなら、韓国はこれを謝罪と受け止めて最終的な解決のために動くのだろうか。
- (韓国は)日本が何と言おうと、これを「真情」ではなく「戦術」から出たものとして拒否する可能性が高い。日本があらゆる形態の悔いる権利を拒否し続けるのは、多くの人々にとって政治的に安全だ。不幸なことではあるが。
ゴールポスト論
日本がいくら謝罪しても、韓国は後から「日本はちゃんと謝罪していない」と言い出します。だから日本の謝罪は問題の解決につながらない――。ここを、ビクター・チャ教授は突いたのです。
これは「動くゴールポスト論」と呼ばれています。韓国は後から「やっぱり不十分だった」として「謝罪のゴール」の位置をどんどん移すからです。
ビクター・チャ教授は「もう、韓国の手口は米国にも見透かされている。どんなにうるさく言ってきても今後、米政府は日本に対し慰安婦で韓国に謝れと要求しないと思う。対米交渉の基本方針を変えた方がいい」と示唆したのだと私は思います。
そもそも、米国人が公開の場で「ゴールポスト論」を持ち出すのは珍しい。本当のこととはいえ、いや、本当のことだからこそ、これを指摘されると怒り出す韓国人が多いのです。そうなると、冷静な話し合いは期待できませんからね。
—では今回、なぜビクター・チャ教授は韓国紙でこれを書いたのでしょうか。
鈴置:同教授に聞いたわけではないので、その意図は分かりません。ただ、多くの米国のアジア専門家が「もう、韓国はかばえない」と言い出しています。
もう、韓国はかばえない
—いわゆる「韓国疲れ」(Korea Fatigue)ですね。
鈴置:ええ、韓国人が米国に押し寄せては「アベに議会演説させるな」「日本に謝らせろ」としつこく要求したからです。筋違いの要求に米国の専門家は困り果てていました(「『アベの議会演説阻止』で自爆した韓国」参照)。
5月18日、韓国での会見で「慰安婦」を聞かれたケリー(John F. Kerry)国務長官は「日本が謝罪を繰り返したことに留意している」と述べました。「もう、慰安婦の話は米国にするな」ということです。
それに加え韓国人のあまりのしつこさから、ワシントンには韓国を中国の手先と見なす空気が高まってきました。だから米国のアジア専門家も「もう、かばえない」と言い出したのです。
3月13日、ワシントンで米シンクタンクのアメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)は「Japan-Korea relations at 50: The weakest link in Asia」(英語による動画=日韓関係正常化50年、最も弱いアジアの輪)と題するセミナーを開催しました。
この場で、リチャード・ローレス(Richard Lawless)元米国防副次官は「中国は歴史問題を使って韓国との関係を強化し(「日―米―韓」協力の)現状を分断するつもりだ。それにはある程度成功している」と指摘しました。
ローレス元米国防副次官は朴正煕(パク・チョンヒ)時代から韓国を知る人、と言われています。この発言は動画開始後10分30秒後あたりからです。
ヴォーゲル声明に反発
中国は「日―米―韓」の対中軍事同盟を必死で突き崩そうとしています。そのパーツたる「日韓」と「日米」双方を一気に分断する必殺技が、慰安婦など歴史問題です。
韓国をけしかけ日本と対立させる。当然「日韓」関係が悪化します。さらには「日米」関係をもおかしくすることが可能です。
韓国の求めに応じ米国が日本に対し「慰安婦で韓国に謝れ」と要求すれば、日本人は米国に悪感情を抱くからです。
実際、米政府ではありませんが、エズラ・ヴォーゲル ハーバード大学名誉教授ら米国の学会に属する学者が「日本の歴史家を支持する声明」を発表すると、一部の日本人は米国に強く反発しました。
中国自身が日米離間を図るよりも、米国の同盟国である韓国にやらせる方が、はるかに効果が大きいのです。
対日歴史戦争で中韓が共闘
—「韓国を日本から引き離す」だけではなく「韓国を手先に使って日米関係も壊す」のが中国の作戦なのですね。
鈴置:中韓両国は対日歴史戦争で共闘体制を強めてきました。例えば、表に出たものに「慰安婦の証拠発掘プロジェクト」があります。
2014年12月15日に聯合ニュースが「中韓両国の政府系機関が慰安婦で共同研究の覚書結ぶ」と報じています。「韓中政府系機関 慰安婦問題共同研究へ=MOU締結」(日本語版)です。
見落とすべきでないのは、韓国は、日本とだけではなく米国からも離れ始めたことです。「日韓」だけではなく「米韓」も疎遠になっているのです(「米中星取表」参照)。
この立ち位置の急速な変化こそが「中国の手先化」の何よりの証拠――と米国のアジア専門家は見なしています。
米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか
(○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年5月21日現在)
案件 |
米国 |
中国 |
状況 |
日本の集団的自衛権 の行使容認 |
● |
○ |
2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致 |
米国主導の MDへの参加 |
● |
○ |
中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ |
在韓米軍への THAAD配備 |
▼ |
△ |
青瓦台は2015年3月11日「要請もなく協議もしておらず、決定もしていない(3NO)」と事実上、米国との対話を拒否 |
日韓軍事情報保護協定 |
▼ |
△ |
中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ |
米韓合同軍事演習 の中断 |
○ |
● |
中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施 |
CICAへの 正式参加(注1) |
● |
○ |
正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」 |
CICAでの 反米宣言支持 |
○ |
● |
2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か |
AIIBへの 加盟 (注2) |
● |
○ |
米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明 |
FTAAP (注3) |
● |
○ |
2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」 |
(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。
北朝鮮が水中発射に成功したのに
—「離米従中」ですね。
鈴置:米国が在韓米軍に終末高高度ミサイル防衛(THAAD=サード)を配備しようとしています。しかし、韓国は受け入れに応じません。中国から「反対しろ」と命じられたからです。
米国は、韓国を守るために駐屯する在韓米軍を防御するための装備も持ち込めないのか――と呆然としました。
4月16日にスカパロッティ(Curtis M. Scaparrotti)在韓米軍司令官は米上院軍事委員会で「私は司令官として米軍の防衛を考慮する必要がある」と述べています。
5月18日、ソウル市内の在韓米軍基地を訪問したケリー国務長官は「我々はすべての結果に備えなければならない。これが、我々がTHAADを語る理由だ」と述べました。
北朝鮮がミサイルの水中発射に成功した、と5月9日に発表したばかりです。THAADの在韓米軍への配備に必要性がどんどん高まっています。ケリー長官は韓国政府に「催促」したものと見られています。
というのに韓国政府はこの発言に対しても「ケリー長官との会談ではTHAADの問題は一切、話し合われなかった」と繰り返すばかりでした。
韓国に操られる米国
そもそも最近の韓国の「外交敗北論争」自体が米国離れを象徴しています。これは3月30日の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相の発言が引き金になりました(「朴槿恵外交に噴出する『無能』批判」参照)。
尹炳世外相は「米中の間に挟まれた韓国の境遇は厄介なことではなく、双方からラブコールを受ける祝福として受け止めるべきだ」と語ったのです。
外相が堂々と「二股外交をうまくやっている――米中を上手に操っている」と誇ったのです。「操られている」米国は面白くないに決まっています。
この発言には批判も出ました。でもそれは「二股が上手くいっていないこと」に対してだったのです。決して「同盟国の米国と、中国を等しく見るべきではない」との世論が高まったわけではなかった。
米国はますます韓国を疑いの目で見たことでしょう。そんな中、韓国が「慰安婦で日本を叱ってくれ」と言ってきたのです。素直に「分かりました」と日米離間策に乗るほど、米国はお人好しではありません。
「同盟国相場」の急騰
—米国の実務家は韓国の本性を見切ったのですね、学者はともかくとして。その米韓が6月中旬に首脳会談を開きます。
鈴置:会談では、韓国がどれだけ米国の要求に応じるかが見どころです。韓国は同盟国としての義務から逃げ回っています。
そのうえ安倍首相の訪米によって、米国の同盟国であることの「会員権相場」が一気に跳ね上がったのです。
このため朴槿恵大統領は、オバマ(Barack Obama)大統領に対しTHAAD受け入れぐらいは表明するだろう、と見る外交専門家もいます。
ただ、中国は強くこれに反対しています。朴槿恵大統領は9月に訪中の見込みです。「対日戦勝70周年記念式典」参加が目的で、習近平主席と会談する可能性もあります。オバマ大統領に安易に手形を切りにくい状況でもあります。
オバマに直訴して逆転
—結局、米韓首脳会談はどういう展開になるのでしょう。
鈴置:よく分かりません。ただ、興味深い主張が韓国紙に載るようになりました。「朴槿恵はオバマに慰安婦を語るな」との趣旨です。
逆に言えば「オバマ大統領に対し朴槿恵大統領が直訴すれば、日本との外交戦で逆転できる」との発想が根強いことを物語っています。
外交通商部北東アジア局長を歴任した、趙世暎(チョ・セヨン)東西大学特任教授は中央日報に「朴大統領の訪米、韓日関係に縛られるべきでない」(5月13日、日本語)を寄せました。注目すべきは以下です。
- 韓国人は、大統領訪米で韓日の過去の問題に対する米国の協力を引き出せるかに関心を持つ。米国の圧力だけが日本の姿勢の変化を引き出すことができるという主張が多い。
- しかし、今回の安倍首相の訪米に見られたように、米国は日本に圧力を加えて実利を失うことはしない。安倍政権が圧力を受け入れる可能性もほとんどない。
まだ、韓国には「米国に頼んで、日本に謝罪させよう」との意見が燻っていることがうかがえます。そして韓国では、朴槿恵大統領は「空気」に流されがちと見なされています。
実務に長けた外交専門家として、趙世暎教授はその火消しに出たのです(「ナポレオン3世に擬された朴槿恵」参照)。
THAADと慰安婦
朝鮮日報のペ・ソンギュ政治部次長も「大統領の訪米は『過去を巡る外交戦』の舞台ではない」(5月16日、韓国語)を書きました。ポイントは以下です。
- 韓国の外交当局には悩みが多い。安倍首相の訪米時に繰り広げた韓日外交戦でいいところがなかったとの無念さからだ。朴槿恵大統領の6月訪米を「歴史認識問題の外交戦の第2ラウンド」と考える一部の人の視線もプレッシャーになっている。
- 今、韓米間に必要なのは美辞麗句や対日競争外交ではない。韓米間の共通の利益と信頼性を高める実質的な成果だ。
—「慰安婦」に関し、米国が「もう言うな」とイエローカードを切っているのに、まだ韓国は言い募るつもりなのですか?
鈴置:「慰安婦」は日本をへこませるための道具に留まりません。米国が進める「日―米―韓」軍事協力体制に「NO!」と言うための言い訳でもあります。
オバマ大統領が「THAADを韓国に配備したい」と言い出したら「慰安婦で日本が謝らないから駄目だ」と反撃するかもしれません。
へ理屈を言い続けるしかない韓国
—「THAAD」と「慰安婦」は何の関係があるのでしょうか。理解できません。
鈴置:もちろんへ理屈なのですが、韓国はこれまでもそうした奇妙な理屈を言い訳にしてきました。
2013年9月30日、訪韓したヘーゲル(Charles T. Hagel)国防長官(当時)が朴槿恵大統領を表敬し、3国軍事協力体制の構築を持ちかけました。
朴槿恵大統領はそれを断るのに「慰安婦の苦しみ」を持ち出したのです(「ついに米国も韓国に踏み絵を突きつけた」参照)。
在韓米軍に配備されるTHAADは、在日米軍や日本のミサイル防衛(MD)と連携して運用される可能性が大です。
韓国は「慰安婦で謝らない日本とは軍事協力できない」と言い張ることで、THAAD配備に「NO!」と言えると考えているでしょう。
—でも、そのへ理屈は米国からすっかり見透かされているのではありませんか。
鈴置:その通りです。でも、米中間で板挟みになった韓国としては、米国から言い逃れるには「慰安婦」を使うしか手がないのです。