6/8日経ビジネスオンライン 白壁達久『天安門事件から26年後の香港の現実 中国化の波が迫る中で進む悲しい民主派の分裂』記事について

今の香港の姿を台湾の人達は良く見ていた方が良いでしょう。去年3、4月の台湾での太陽花学運では王金平立法院長の斡旋で中国とのサービス貿易協定にストップをかけることができました。外省人の馬総統が焦って中国との統一の足がかりとしようとしましたが、結局11月の統一地方選で国民党は惨敗を喫しました。来年1月の総統選は蔡英文民進党党首で決まりです。今回の訪米でも前回の総統選前の取り扱いと違い、アメリカは歓待しました。それはそうでしょう。総統になるのが確実な上に、中国がアメリカの覇権に挑戦しようとしているのですから。

それに引き換え中国と陸続き、かつ97年に法的にも中国の一部となった香港の運命は悲惨です。行政長官の民主選挙の約束も共産党はあっさり反故にしてしまいました。昨年9月の雨傘革命もポシャリ、本年6月4日の天安門事件追悼集会の参加者も少なくなったという事は、中国共産党の意思が香港内部にどんどん浸透してきているという事です。香港は今までは自由世界との経済的な窓口でしたが、上海や深圳が成長し、香港の地位はぐっと下がっています。共産党は強気で香港に臨めます。

民主派の分裂と言いますが多様な意見の存在は民主主義の根幹をなすものです。ただ、共産党という大なる敵を前にして大同団結しないといけないのでは。本記事を読んで、意見の違いというよりは世代間の人生観の違いかと感じました。年寄りは老い先長くないので「長いものに巻かれよ」式で、若い人は「将来の香港の基本的人権の一つである自由権」が確保されるかどうか心配という所。日本でも、南シナ海の中国の内海化を見ても年寄りは考え方が変わらず(新聞・TVから情報入手しているためと思われる)、集団的自衛権に反対している人が多い。若い人はいろんな媒体から情報入手できるので、年寄りよりは自分の頭で判断できるのではないかと思います。

共産党というか左翼の人間は、どの国であれ、平気で嘘がつけれる人達です。また虐殺が得意です。毛沢東、スターリン、ヒットラー(国家社会主義ドイツ労働者党)が御三家です。そこにポルポトも加わります。左翼の言うことは疑ってかかった方が良いです。

記事

「今年は明らかに人が少ない…昨年はもちろん、2年前に参加した時でさえもっと混んでいて、身動きもできないほどだったのに…」

 6月4日夜、香港島で最大の公園であるヴィクトリアパークにやってきた香港のある男子大学生(21歳)は、困惑気味にこう語った。

(6月4日に香港島のヴィクトリアパークで開かれた天安門事件の追悼集会。13万5000人が参加したが、昨年より25%も減少した。)

( 1人で参加する若い人も少なくなかった)

香港では毎年、6月4日の午後8時からこのヴィクトリアパークで、天安門事件の犠牲者を追悼する大規模集会が開かれる。参加者は配られたろうそくに火をともし、みんなで歌を歌い、黙祷を捧げるなどして天安門事件で命を落とした学生たちの魂を鎮めると同時に中国本土の民主化を願う。

 ただ、天安門事件から26周年となった今年6月4日の香港の追悼集会は、恐れていた通りの展開となってしまった。

参加者が前年比で25%も減少

 追悼集会を主催する香港市民支援愛国民主運動連合会の発表によると、今年の参加者は13万5000人と、昨年の18万人から大幅に減少した。昨年は天安門事件から25周年という節目の年でもあり、参加者数が過去最高を記録したのは自然なことで、その意味で今年の参加者数が減る可能性はあったとも言える。

とはいえ、香港市民の間で、民主化に対する関心が薄れているのかというと、そうではない。2017年以降の香港政府のトップである行政長官を選ぶ選挙の仕組みを巡って、昨年9月末から大学生が中心となって大規模なデモを繰り広げたことをご記憶の読者も多いだろう。

昨年9月にデモが起きたのは、同年8月末に中国の全国人民代表会議(全人代)の常務委員会が、2017年の行政長官選挙に立候補するには、「指名委員会の半数以上の委員の推薦が必要」との条件を盛り込んだからだった。指名委員会は中国共産党の意を受けたメンバーが多数を占めているため、指名委員会の推薦が必要となると、民主主義を求める人物は事実上、排除され立候補できなくなることを意味する。

そのため、一国二制度の下で自治権が認められていたはずと考えていた香港市民の間では、この選挙制度に対する失望が広がった。なかでも、大学生や高校生を中心とした若者たちが強く反発、大学の講義や学校の授業をボイコットし始め、さらに大規模なデモをしたり香港の経済の中心地である中環(セントラル)の一角を占拠したりと、3カ月にもわたって抗議活動を展開したのだった。

 そうした動きを踏まえれば、中国の民主化を求める今年の追悼集会には、昨年の25周年にも増して人が集まってもおかしくはなかったはずだ。だが、今年の追悼集会への参加者数は昨年に比べ25%も減り、2008年以来の少なさとなったという。

民主派が分裂、世代間で認識のギャップも

悼会への参加者数が減った背景には、香港における民主化を求める運動が、ここへ来て変質してきていることが大きい。追悼会場で参加者がなぜ減ったのかを聞くと、みな同じ答えを口にした。

 「分裂です」

 香港の民主化運動が、その求める民主化の内容によって分裂してきているのだという。まず従来から香港民主派を自称してきた一派の主張は、「中国本土の民主化を願い、進めること」だった。若かった頃、大陸で何らかの民主化運動に加わり、そのために政府から厳しい弾圧を受けるなどしたことから、当時はまだ英国統治下にあって自由が保障されていた香港へと逃れてきた人が少なくない。今や年配になったとはいえ、そうした香港人の多くは本土の民主化を心から願っている。だからこそ、中国における民主化を求めて1989年に立ち上がったものの、中国政府による武力弾圧で犠牲になった天安門の学生たちを今も追悼したいとの思いから毎年、6月4日に集っている。

 ところが、学生を中心とした若者たちが求める民主化の主張は異なる。昨年のデモで中核的存在となった香港大学など複数の大学の学生会は今年、天安門事件の追悼集会への不参加を事前に表明していた。中国本土の民主化ではなく、自分たちが住むこの香港の民主化の維持、発展にこそ集中すべきだ、というのが彼らの言い分だ。

 香港の民主化を重視する一派の中には、さらに香港そのものの独立を目指すべきだとして、抗議活動を展開している強硬派グループも誕生している。

 民主化運動が、その求める内容、主張によって分かれていく一方、追悼集会に参加した人たちに話を聞くと、彼らの間にも様々な意見、見方があることがうかがえる。

 友人と参加した18歳のある女子大生は、「(中国本土の民主化を求める)この追悼集会の主旨すべてに賛成しているわけではない。(行政長官の)選挙制度改革について、真の普通選挙の実現をもっと訴えるべきだと思う」と香港の民主化の必要性を主張する。一方、ある53歳の会社経営者の男性は「大陸の民主化こそが私の願いだ」と訴える。

民主派の弱体化は中国政府の思うつぼ

 このような状況に対し、ある中年の会社員男性は「この集会は、天安門事件で犠牲になった人たちを追悼する儀式のはずだ。それが最近、香港の民主化運動をまとめて論じる人が増えてきた。おかしい。本来の姿に戻すべきだ」と不満を漏らす。

年配の世代は自らの過去を振り返って中国本土の民主化を願い、若い世代は自分たちが暮らしていく今後の香港の民主化を願う。今後の行政長官選挙の在り方が明らかになった昨年以降、こうした世代間ギャップが、これまでひとくくりに論じられていた民主派を分裂させている。

 背景には年々、香港への圧力を強めつつある北京政府の動きに対する不安が高まっていることがあるのは間違いない。それを間近に感じているのは若年層だ。2012年、中国共産党は香港政府に対して、中国国民としての愛国心を育む「愛国教育」を導入するよう求めた。教育という仮面をかぶった洗脳には、教師や保護者だけでなく中高生も強く反発、香港の街中で住民も巻き込んだデモを起こし、愛国教育義務化の撤廃に持ち込んだ。

 自分たちがこれからの人生を送る香港の自由が侵されるのであれば、将来に不安を感じるのは当然だろう。しかし、年配者にとっては「若者の抱く将来への不安」を我がことのように理解するのは難しいかもしれない。

 本来、そうした逆風の時にある時こそ市民の一致団結が求められる。それだけに、筆者はこうしたこの世代間ギャップによる民主派の分裂という展開を恐れていた。

民主化を求める運動が分裂すればするほど、1つの抵抗勢力としては弱体化する。それは中国政府にとっては思うつぼだろう。香港市民が懸念する急速な中国化。民主派の分裂は、自らこの流れを早めることになるからだ。