6/16・17宮崎正弘メルマガ中国関係記事について

ここまでアメリカが舐められたのもオバマ大統領のせいでしょう。もっと言えば選んだアメリカ国民に責任があります。日本の場合、ルーピー鳩山が首相になっても局地的な影響(それでも日本に負の影響をかなり与えました)ですが、アメリカは良くも悪しくも世界の平和を守ってきました警察官です。オバマが「止めた」と言ってしまいましたが。勿論アメリカが総て善などと言うつもりもなく、黒人奴隷、人種差別問題やインデイアン虐殺、原爆投下等、問題行動が多かったのも事実。モンロー主義で欧州の言うことを聞かなくなったのは良いですが、西部開拓が終わり、太平洋に出てきて日本に圧力をかけ、終いには戦争まで仕掛けた国です。FDRの腹黒い事たるや、中国人も真っ青でしょう。でも今世界の自由と平和を守れるのは悔しいですがアメリカしかありません。

日本はアメリカと一緒になって戦うしか生きる道がないと思うべきです。プラグマテイズムでどちらを味方につけた方が良いかという発想は当然アメリカにもあります。中国と手打ちすることも充分考えられます。でも日本は韓国と違い、二股外交は止めるべきです。蝙蝠外交何て言われたのでは末代までの恥となります。ユダヤ人の「マサダの戦い」が多くの人々を感動させ、歴史にも残って語り継がれる訳です。岡潔博士の「死を視ること帰するが如し。それができたのは日本民族だけ」と言うのは正しくそうです。玉砕も特攻も外国では評価されます。(真に勇気のある人だけですが)

AIIBも中国が拒否権を持つことが分かり、欧州も腰が引けてきたようです。そんなことはハナから分かっていたこと。欧州もオバマの弁護士体質に嫌気がさし、嫌がらせしようとしたのかも。オバマの人徳の無さ、リーダーとしての資質の無さでしょう。何せ決断できないのですから。リーダーとして一番要求される資質にも拘わらず。でも中国は次の大統領に誰がなるのか予測を始めていろいろ工作に走ると思います。

記事

6/17「南シナ海で、もし米中軍事衝突が起こるとすれば   米国専門家が三つのシナリオを提示」

 保守の論客アービン・クリストルが創刊した『ナショナル・インタレスト』誌は、『フォーリン・アフェアーズ』と並んで全米のマスコミがしばしば引用する有力なメディア(日本では後者しか知られていないが)。

かつてはフランシス・フクヤマの『歴史の終わり』も、この雑誌に連載された。2004年から発行元はナショナル・アフェアーズ社からニクソン・センターに移管した。

 この『ナショナル・インタレスト』誌最新号に『米中が南シナ海で軍事衝突にいたる三つのシナリオ』が提議されている。執筆はロバート・ファーレイ(パターソン・スクール準教授、海軍戦略専門家)。

 「いまや米中は南シナ海の埋め立て工事をめぐって言葉の戦争状態、日々、緊張が増大している。かといって中国の軍事態勢、その装備、準備具合などから勘案して、すぐに戦争状態に突入するとは考えにくい」としながらも、以下の三つのシナリオが描けるとする。

 第一の想定は小競り合いによる軍事衝突への発展であり、(a)は中国の人工島建設と軍事施設の完成がなされ、航海の自由をかかげる国連の立場からも、米軍は島外海域のパトロールを実行することになる。

 したがって米軍偵察機、あるいは米艦船に対して中国が妨害し、それが米側の損傷をともなく場合、当然だが米軍の報復がなされる。

 (b)米軍の対潜水艦哨戒機P3Cオライオンが、中国側に補足され、緊張が高まった事件があったように、機体とパイロットの返還に数週間を要した。

 つまり米軍の哨戒飛行への嫌がらせによる偶発的衝突が起こりうるだろう。

 (c)このシナリオは嘗てのKAL007便が『領空侵犯』を問われ、ソ連のミサイルで撃墜されたように、民間機の撃墜がなされるとすれば、米軍の報復があるだろう。なぜなら中国は南シナ海にも、一方的にADIZ(防空識別圏)を設定しようとしているからである。

▲偶発戦争というのは稀にしか起こらないが。。。

 第二は潜水艦の偶発事故によるケースである。

 冷戦時代、ソ連原潜ならびに通常の潜水艦と西側NATOの潜水艦にニアミスがよく起こった。

往時のソ連の海軍力と比べると中国海軍の潜水艦戦力はまだ完成の意気にはないが、その戦闘意欲は旺盛であり、また潜水艦をますます増加させている傾向にあり、近未来にニアミスが起こりうるだろう。

 第三は習近平の謳う『軍事外交』である。

いまや中国は後戻り出来ない地点に来ており、その政権維持をかけて軍事力の誇示は、かの政権の政治命題である。

 偶発戦争は起こりえない可能性が高いものの、危機を危機と認識できない指導者が、党内権力闘争の生き残りをかけて軍事突出にでてくる場合、それは起こりうる危険性に繋がるのである。

6/16「 中国軍事委員会副主席の訪米にオバマは会見せず、ゴルフ  「南シナ海は中国領であり、米国は言葉を慎め」と傲慢」

氾長龍(中国中央軍事委副主席=事実上の軍トップ)が、孫建国(副参謀総長)らを引き連れて訪米した。

6月12日にワシントン入りしたが、結局、カーター国防長官から「南シナ海の埋め立て工事を中止せよ」と言われ、きわめて冷たい雰囲気のなかで米中軍事交流となった。

オバマ大統領は、軍人等とは接見せず、ゴルフに興じていた。

 国務省ではケリー長官が交通事故で入院のためアントニー・ブリンケンン長官代理が接見した。

大統領補佐官のライスは会見に応じたものの実のある成果はなかった。

 ペンタゴンでは19発の礼砲で歓迎の儀式はおこなわれたものの、カーター国防長官の「南シナ海における一方的な埋め立て工事の中止」要求に対して中国側は「南シナ海(かれらは『南海』と呼称する)は昔から中国領であり、米国は言葉を慎むべきだ」と、ひっくりかえるような暴言を続けた。

 また中国側のスポークスマンは『米中関係の重要性と大局を鑑みれば、南シナ海の問題など小さな問題に過ぎない』とも発言している。

  米中軍事交流プログラムの一環行事とはいえ、これほど冷たいムードで行われた会談も珍しく、西太平洋における共同軍事演習(救援活動)へ中国軍は昨年に引き続き参加することなど、また軍人らの『文化交流』は続けることなどが決まったと在米華字紙が伝えている。

6/18日経『日韓慰安婦協議、合意にハードル 議題が判明 日本が財政支援 韓国は最終解決を保証』記事について

嘘吐き国民がまた何か言っているとしか思えません。今の安部内閣が朴大統領の言いなりになるとは思えません。国内では訪米時の約束の集団的自衛権を今国会中に通さなくてはならず、韓国のことなど頭の片隅にもないでしょう。彼らがアメリカの圧力を受けて勝手に、かついつも通りに彼らの夢想を話しているだけです。こんな記事を臆面もなく書く記者と言うのはレベルが低いのでは。国民はこんな記事に騙されませんよ、もう。韓国の言い分だけを聞いて記事にするからです。殆ど頭の悪いレベルでしょう。

お互いに主張して、結実しないことが日本の国益です。彼らを助けて日本が今までいいことがありましたか?植民地支配を怨み、従軍慰安婦で嘘を言いまくり、アメリカで嘘の証拠の像を建てまくる、殆どヤクザの手法でしょう。強制徴用裁判も、親日派の財産没収、産経新聞記者軟禁事件も、近代法の概念が分かってないから起こるのです。形だけ真似しても本質が分かっていない民族とは付き合わない方が良い。日本は批判はあるものの鹿鳴館や欧米に人材を派遣して法律を整備し、近代国家と認められました。韓国にはないでしょう。中国と同じく事後法が当たり前ですので。

二階俊博はどうしようもないですね。選んでる和歌山県民は恥と思わねば。2月に朴大統領と会った時に、彼女が前には単独で平昌オリンピックは開催できると言っていたのに雲行きがおかしくなると日本の援助を要請、簡単に平昌オリンピック・東京オリピックの相互協力などと言うのですから。利権政治家で有名。国会議員と言うか市会議員のレベルでしょう。翁長と同じ穴の貉です。

まあ、国民がキチンと監視しないといいようにやられますから。後から後悔しても間に合いません。情報強者になり、悪い政治家は落とさねば。後、メデイアの発する情報は眉に唾付けることが大切です。

記事

従軍慰安婦問題をめぐる日韓協議の議題の概要が分かった。日本がとる措置には元慰安婦への財政支援や、安倍晋三首相による謝罪や責任への言及を含む声明が挙がる。韓国がとる措置には朴槿恵(パク・クネ)政権での慰安婦問題の最終解決への保証などを列挙している。いずれも合意に向けたハードルが高く、結論は出ていない。

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 日韓両政府の外務省局長による昨年4月からの協議で、ネックになってきたのは損害賠償を含む請求権の問題だ。日本は1965年の日韓請求権協定により「完全かつ最終的に解決した」との立場。韓国は元慰安婦の個人請求権がなお残っているとして日本の法的責任を明確にすべきだとしてきた。日本は法的責任をあくまで否定している。

 論争の結論は出ていないとみられるが、判明した日韓協議の議題からは、それぞれがとるべき具体的な措置を議論している状況が分かる。

 たとえば元慰安婦への財政支援。韓国政府関係者は「政府予算を使うことで『日本政府が国家の責任を事実上認めカネを出した』と韓国国内に説明できる」と期待する。

 日本は90年代半ばにアジア女性基金をつくり、募金で集めた償い金を元慰安婦に支給した。人道措置との位置づけだった。韓国側が法的責任を帯びた財政支援にこだわるなら、着地は難しい。

 謝罪や責任への言及を含む首相声明も焦点だ。首相は4月の訪米時の講演で「人身売買の犠牲となった筆舌に尽くし難い、つらい思いをされた方々を思うと非常に心が痛む」と語った。旧日本軍の関与を認めた93年の河野洋平官房長官談話も見直さないと明言している。首相声明でさらに踏み込めば法的責任も絡んでくる。韓国側には「実質的に日本が責任を認めたと受けとれる表現でよい」との意見もある。

 韓国がとる措置もハードルが高い。日本側は「本当に朴政権がこの問題を蒸し返すことなく終わりにできるのか」と疑問視する。韓国世論の反発により一方的に撤回される危険があるからだ。

 ソウルの日本大使館前や米国で慰安婦を象徴する少女像を撤去することや、米国で慰安婦をテーマに集会を開く市民団体などを後押ししているとされることをやめることも、韓国がとる措置だ。いずれも日本を納得させる根拠が必要だ。

 協議は慰安婦問題の包括的な解決を探っており、最終決着には安倍首相と朴大統領の決断が欠かせない。朴大統領は11日の米紙インタビューで「相当な進展があった」と述べた。日韓がとる措置をめぐる話し合いを踏まえたとみられている。

6/15渡部亮次郎メルマガ Andy Chang『米国のアジア政策見直し(2)』記事について

来年1月の台湾の総統選で国民党の泡沫候補と言われていた洪秀柱の支持率が46%超になったという記事をみました。以前に読んだ中国時報の記事では3%しかなかったのですが。外省人がメデイアを支配していますから、中国人と同じく数字を操作しているのかも知れません。母数が3社で各1200人ですから操作は可能でしょう。

民進党の蔡英文が先月末から訪米して認知され、昨年11月の統一地方選の惨敗の余波が残る中ですので、次の次辺りを考えているのかも知れませんが。南シナ海での中国の傍若無人な振る舞いを見て、アメリカも流石に中国と台湾がこれ以上くっつくのは危ないと思っているはず。民進党が勝つと思います。

日本人ももっと国際関係に目を向けた方が良いです。無関心だから奸智に長けた国がそれを利用して間接侵略を果たそうとしているのに気が付きません。享楽主義も考え物です。或は学生時代に取った杵柄か、左翼脳から脱しきれない老人とか曲学阿世の徒とか困ったものです。自分たちは早く死ぬから良いとでも思っているのでしょうか?「平和」は「念仏」や「憲法9条」を唱えていれば実現できるものではありません。自明の理です。現実に中国の内蒙古、チベット、ウルグアイ、南シナ海の侵略を見ていれば分かりそうなもの。分からないとすれば空メクラか似非平和主義者でしょう。戦う姿勢を見せない限り、中国は嵩にかかって攻めてきます。こういう人たちは中国に隷従した方が良いと思っているのでしょうか?人権抑圧国家で自国民を何千万人も虐殺した国です。こういうことが判断基準に入ってないとしたら、何のために学問しているのでしょうか?単なる専門バカを造っているだけのように見えます。くれぐれもメデイアとか学者を権威と思わないように。常識・直観を大切にした方が良い。

記事

米国のアジア政策見直しとはアメリカが中国に強い態度を取るようになったこと、同時に日本重視、台湾重視と南シナ海への介入である。特に台湾問題でこれまでの態度を変えたのは良いことだ。

過去2か月の間に起きた台湾関連のニュースを拾ってみると米国の台湾に対する変化がわかる。(1)朱立倫の訪中と台湾民間の強烈な反対、(2)中台関係が中国拒否になった、(3)米国在台協会(AIT)主席・薄瑞光(Raymond Burghardt)の台湾訪問、(4)蔡英文・民進党党首の訪米で米国側の破格な歓待、(5)オバマの「アメリカは南シナ海の領有権を持っていない」発言。

これらの台湾で起きた一連の事件に前の記事(No.544)で書いた、シャングリラ・ダイアローグとG7首脳合同発表を合わせれば米国のアジア政策見直しが見えてくる。

  • 過去2か月に台湾で起きたこと

5月4日、国民党の党首で新北市長でもある朱立倫は中国を訪問して習近平と会見したが、この会見で習近平が「92年共識(中国は一つというコンセンサス)」が中国と台湾双方の平和の基礎であると強調したのに対し、朱立倫はコンセンサスを認めると言わず、代わりに「両岸同属一中(台湾と中国は同じく中国に属する)」と述べた。台湾は中国の領土であると発言したにも等しい。

これが報道されると台湾人民は激しく反撥し、朱立倫は台湾を売ったと批判された。朱立倫は「一つの中国とは中華民国のことだ」と弁解して嘲笑を買った。朱立倫の人望はガタ落ちとなり、国民党の三大政治人物から脱落した。中国の恫喝は人民の反感を強め、台湾では反中国と反外省人の声が高くなり、国民党は次の選挙で大敗するかもしれない。

5月10日にRaymond Burghardt(薄瑞光)米国在台協会主席が慌てて台湾に飛んできて馬英九と会談した。国民党党首が中国を訪問して習近平と会談をしたらアメリカは中国と中華民国にどんな(公開、非公開の)約束があったのか知りたがるのは当然である。だが彼はこの訪問で国民党側の公式説明を聞くだけでなく、台湾人民の総意が[NO CHINA]になったことを確認したと言える。

国民党は総統選挙に候補者を出せないでもたもたしている。中国政策も反対が強烈だから、Raymond Burghardtはこの時点で「国民党に見切りをつけた」のではないか。2012年の総統選挙にDouglas Paalを派遣して馬英九を支持した時とは大違いである。

Raymond Burghardtのもう一つの任務は、月末に米国を訪問する予定の民進党の党首・蔡英文とスケジュールの打合せだった。蔡英文のほかにも民間の有名人物に会ったと言われている。

  • 蔡英文の米国訪問

5月末から12日間の米国訪問に出発した蔡英文は、6月2日ワシントンで公式訪問を始め、参議院の軍事委員会主席John McCain、民主党議員のJack ReedとDan Sullivan などと会見した。蔡英文はこの後すぐAIT主任Raymond Burghardtの案内で米国貿易代表と会談した。

続いて3日にはホワイトハウスで米国国家安全会議を訪問し、4日には国務省でアントニー・ブリンケン国務副長官らと面会した。近年における台湾の総統候補者として、最も高いレベルの礼遇を受けた。このほか蔡英文は3日にアメリカのシンクタンクCSISにおいてKurt Campbellの主催で台湾問題について講演をした。

アメリカが1978年に中華民国と断交して以来、台湾の政治家がワシントンを訪問しても国会やホワイトハウスに招待されたことはなかった。蔡英文は野党の党首で総統選挙の候補者が、今回のワシントン訪問で破格な待遇を受けたのである。つまり米国は国民党に見切りをつけた、少なくとも来年は民進党が政権を取るだろうと予測したのだ。これは重要な政策変更である。

  • オバマの「南シナ海の領土主権否定」

6月1日、オバマ大統領はホワイトハウスでASEAN諸国の青年代表らと会見した際に、南シナ海における中国の勝手な岩礁埋め立てについて「もしも中国の主張が合法なら諸国はこれを認める。しかし肘で他人を押し退けるような行為で合法性を主張することはできない」と発言して中国の強引な領土主張を退けた。

その次にオバマは「アメリカは領土争議の片方ではなく、南シナ海の領土主権も持たない。しかしアジア太平洋の一国として、国際間の意見の相違は国際標準に従い、外交手段で平和に解決すべきで、これはアメリカにも利害関係のあることである」と述べた。

オバマは「アメリカは南シナ海(そして台湾澎湖)の領土主権を持たない」という非常に重要な発言をしたのである。日本はサンフランシスコ平和条約(SFPT)の第2条bで台湾澎湖の主権を放棄したが、同時に第2条fで新南群島(パラセルとスプラトリー群島)の主権も放棄した。しかし日本が放棄した領土の主権は明らかにされなかった。

放棄された領土の主権が明確でないため、台湾の台湾民政府(TCG)と米国台湾政府(USTG)のグループは、SFPT第23条に主要占領国アメリカと書いてあるからアメリカは台湾の占領権を持つ」と勝手に解釈して宣伝(主張)していた。

アメリカが領土主権を明確にしなかったから根拠のない主張ができたのである。だがオバマは「米国は南シナ海(そして台湾澎湖)の占領権を持っていない」と発言した。つまり「台湾民政府(TCG)と米国台湾政府(USTG)の主張には根拠がない」ことが明らかになったのである。

  • 「現状維持」とは緩やかな変遷

これまで米国のアジア政策は「現状維持」だけだった。つまり中国とイザコザを起こしたくないから、横暴な中国の領土拡張や武力恫喝に対し日本、台湾、東南亜諸国に我慢を要求してきたのである。米国のアジア政策見直しとは「我慢にも限度がある」ということだ。

米国が台湾の國民黨を支持してきた理由は、国民党は台湾独立をしない、民進党が独立主張をすれば中国が武力で恫喝する、だから米国は民進党を支持せず「現状維持」を押し付けてきたのだ。それが今回の蔡英文の訪米で米国の態度がガラリと変わった、国民党を見切り、民進党支持に回ったのだ。

米国は民進党が政権を取っても独立宣言はしないとわかった。それより國民黨の統一路線と中国の南シナ海の領土拡張のほうが危険で中国の台湾併呑はアジアで戦争が起きる。中国の急激な侵略を防ぎ、東南アジア諸国と連携して現状の緩やかな変遷で中国を抑え込む、これが米国のアジア政策見直しの要点である。

6/14藤岡信勝氏Facebook『米ハドソン研究所中国戦略センターのピルズベリー所長』記事について

昨日に続き、アメリカ世論が中国バッシングに変わってきたという記事です。それで中国は埋め立てをストップさせるようです。「【北京時事】中国外務省の陸慷報道局長は16日、中国が南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で進めている埋め立て工事について談話を発表し、「既定の作業計画に基づき、近く完了する」と明らかにした。その上で次の段階として、軍事・防衛のほか、海上救難や災害対策、航行安全などに使用する施設を建設すると表明した。中国による南シナ海での埋め立てに対し、米国は中止を要求し、継続するなら「人工島」周辺に米軍機や軍艦を派遣する構えを見せていた。23、24両日にワシントンで開かれる米中戦略・経済対話を前に、対立激化を回避したい中国は、埋め立て工事終結の方針を示すことで妥協を探った可能性もある」。中国のことですから相手がおとなしくなるのを待って、また仕掛けてくるでしょう。騙されてはいけません。時間稼ぎをしているだけです。アメリカが衰退するのを待って、然る後攻撃してくると思った方が良い。孫子を生んだ狡猾な国です。アメリカは原状回復を中国に要求した方が良い。日本にハルノートを突きつけたのだから、それくらいできるでしょう。

ブログ『ぼやきくっくり』に「役所にも中国の手が入っている」と青山繁晴氏が述べたとあります。憲法審査会で集団的自衛権は違憲と言った長谷部教授を選んだのは法務省です。ここはアカの巣窟です。リベラルな考えを持つ人間しか出世できないのでしょう。真面目に押付け憲法を擁護しないと司法試験や公務員試験に通らないのですから。中国は役人もハニーや金で籠絡していると思います。津上俊哉などは経産省の役人でしたが思い切り中国の味方をしてきました。今は論調が変わってきましたが。後から結うのは福助頭です。ピルズベリーと一緒。彼らは中国の上の人間としか付き合わないから中国人の民族性が分からないのです。如何に「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」かというのを。上になるには凄まじい権力闘争を勝ち抜かないと駄目で、騙してきた結果、上になってきたと見た方が良い。それで良く「中国通」とか言われていると思います。本当に戦った経験がないからでしょう。お粗末の一言。こういう人たちの意見を有難がって聞いてきた経営者はメクラとしか言いようがありません。

http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid1734.html

記事

江崎道朗氏の2時間前のFBへの投稿です。非常に重要です。ぜひお読み下さい。

(以下、引用)

【冷戦後、アメリカの「敵」は日本だとばかりに日本たたきに狂奔した背景には、米ハドソン研究所中国戦略センターのピルズベリー所長らCIAが、アメリカにとっての「敵」は「日本」であって「中国」ではない、という誤った分析をしてきたからだ。

おかげで、アメリカ政府は、経済的に日本を痛めつけることばかりする一方で、中国とは蜜月関係を築き、現在のような中国の軍事的台頭を助長してきた。

米ハドソン研究所中国戦略センターのピルズベリー所長は、自らの中国分析の間違いを反省しているそうだが、その結果、日本を含むアジア太平洋にどれほどのダメージを与えてきたことか。その点についての「反省」を、同著では書いているのだろうか。恐らく、何も書いていないだろう。

自らの判断の誤りが、日本を含むアジア太平洋諸国にとってどれほどダメージを与えることなのか、彼らには徹底して理解させるよう働きかけるべきだ。

十年近く前に、アメリカの首都ワシントンDCを訪問した際、保守系のシンクタンクでさえ、「アジア太平洋におけるアメリカのパートナーは、中国だ」と断言して憚らず、中国共産党政府の危険性をいくら訴えてもまともに相手にしてくれなかった。(唯一、共感してくれたのが、アメリカ共産主義犠牲者追悼財団のメンバーたちであった)。

どちらにしても、ピルズベリー所長らの議論をどのように受け止めるべきなのか、本来ならば、国会で議論すべきなのだが、「中国内の強硬派の力を過小評価」する国会議員が大半を占める、わが国の情況をどう打開したらいいのか。

(以下、引用)

米の中国分析のベテランが告白

「自分の対中認識は間違っていた」

2015年06月12日(金)岡崎研究所

 米ハドソン研究所中国戦略センターのピルズベリー所長が、今年2月発刊の著書“The Hundred-Year Marathon – China’s Secret Strategy to Replace America as the Global Superpower”において、中国は、2049年までに米国に代わって世界の支配国になることを目指している、と述べています。

 すなわち、米国は、中国を支援し続けていけば、中国が民主的で平和な国家になり、地域や世界を支配しようなどと考えないだろうと想定していたが、完全な誤りであった。我々は、中国内の強硬派の力を過小評価していた。強硬派は、中国建国100年の2049年までに経済、軍事、政治のすべての面で世界のリーダーになるとの計画(100年のマラソン)を有し、毛沢東に始まる歴代の政治指導者に助言することで、建国当初からそれを実施に移していたのだ。強硬派は、300年前の中国、すなわち世界のGDPの3分の1を占める中国を復活させたいのだ。中国の強硬派は、天安門事件以降特に力を強めた。

 2012年以降、中国人は、「中国主導の世界秩序」をおおっぴらに議論し、「中華民族の再興」とともに同秩序が訪れると信じている。最近になって、中国人は、私及び米国政府を最初(1969年)から騙していたと実際に語った。これは、米国政府史上最大のインテリジェンスの失敗である。

 中国は、最初から米国を「帝国主義者である敵」と認識し、米国を対ソ連カードとして用い、米国の科学技術を吸収、窃取するつもりだったが、米国の中国専門家はこれに気づかなかった。中国政府は公式に多極化世界の実現を主張しているが、実際には、それは、最終的に中国が唯一の指導国となる世界に至る途中段階に過ぎない。米国は中国に多大の支援と協力をしてきたにもかかわらず、中国の指導者は、150年以上にわたり米国が中国を支配しようとしてきたと考えており、彼らは中国が米国を逆に支配するためにあらゆることを行うつもりである。彼らにとって世界はゼロ・サムである。

 このような意図を有していたにもかかわらず、中国は、欺瞞、宣伝、スパイ等を用いて、中国が後進国で、軍事的に不活発で、弱い支援対象国であるとの誤ったイメージを西側諸国の関係者に与え続けた。中国はまた、西側諸国内の中国専門家をモニターし、様々な手段で操作してきた。

 中国は、「暗殺者の棍棒」と言われる非対照戦力をもって米国の通常戦力を破る作戦を考えている。実際に、この非対照(称の誤り?)戦力は有効であり、ペンタゴンの戦争シミュレーションで米軍が初めて敗れたのはこの中国の非対照(称の誤り?)戦力に対してだった。

 中国は、高い関税を課して重商主義的政策をとり、国営企業に補助金を与え、天然資源を直接コントロールしようとしている。中国の国営企業は今でも国内GDPの4割を占め、市場に反応するのではなく、中国共産党の指示に従っている。

 2049年に中国主導の世界秩序の中で中国が望んでいるのは、個人主義よりも集団主義を重んじる中国の価値、民主主義への反対、米国に敵対する諸国との同盟システムなどである、と論じています。

 出典:Michael Pillsbury, The Hundred-Year Marathon – China’s Secret Strategy to Replace America as the Global Superpower(Henry Holt and Company, 2015)

* * *

 本書は、『100年のマラソン』というタイトルや、その内容が一般の感覚では俄に信じがたいものを含んでいることから、いわゆる浅薄な「中国脅威本」の一つであると捉えられかねませんが、そういう類いのものとは全く異なります。米国の対中政策の転換に影響を与え得る書物です。

 まず、著者のピルズベリーですが、1969年から、CIA、国防総省、米上院特別委員会等に勤務し、対中政策の基盤となる中国の対米認識分析や米国の対中政策選択肢提示を地道に続けてきた人物です。2006年頃までは、米国の対中関与政策を支持する「対中協調派」の中心的人物でした。本書の中でも明らかにしていますが、ピルズベリーは、ほとんどの対中国インテリジェンスや米国内の対中国政策をめぐる秘密文書にアクセスしてきています。本書の内容、主張は、ピルズベリーが直接入手した関係者からの証言や、これまでアクセスした文書に基づいており、その信憑性は高いと思われます。

 ピルズベリーのような中国分析の大ベテランが、「自分の対中認識は間違っていた。中国に騙されていた」と本書で告白したわけですから、本書がワシントンの中国政策に関わる政府関係者や専門家に与えた衝撃は大きかったようです。

 本書の影響はすでに現れているようであり、例えば、本年3月には、米国のシンクタンクである外交問題評議会(CFR)が『中国に対する大戦略の変更(Revising U.S. Grand Strategy Toward China)」という小冊子を発表しています。同冊子は、米中関係は、戦略的ライバル関係になるとの可能性が高いとの前提で、対中政策をバランシングに重点をおくものに変更しなければならないと提言しています。米国の対中政策は南シナ海での中国の人工島建設などにより、強硬化しているように見えますが、今後どう推移していくか注目されます。

 なお、ピルズベリーは、昨年9月にも、1949年以来西側の対中観が誤って来たのは西側が中国を希望的観測から見て来たからである、と論じた論説を発表しており、2014年10月27日付本欄で紹介しています。】

6/11NewSphere『“中国共産党は崩壊しつつある”著名学者の主張、世界的話題に5つの論拠とは』記事について

アメリカの識者も中国を視る眼が厳しくなってきているという事です。中国のことですからいろんな人に金を配って味方にして来ました。でも中国の本音がアメリカに挑戦することにあると気付いてもう味方することはできないと思い出したという事です。金融面でAIIB設立、情報面で日米にハッキングを仕掛け、軍事面では南シナ海に九段線を引き、南沙諸島に中国の軍事基地を造り、多分防空識別圏を設定するつもりでしょう。ここまで中国を増長させた責任は日米にあります。ロシアは軍事大国と言ってもGDPはアメリカの1/8しかありません。中国は全経済主体で2600兆円の負債を負っていると言われますが、GDPでは1267兆円(2014年、1人民元=19.8726円で計算)あります。中国の出してくる数字をどこまで信用して良いかわかりませんが。それで自信を付けて、アメリカに反旗を翻そうとしているのでしょう。しかし中国の同盟国というか属国は北朝鮮しかありません。その北朝鮮ですら北京に核ミサイルを向けるかもしれません。如何に人望のない国か。戦争をしなくとも中国の石油輸入(輸入量は600万バレル/日、消費量は1000万バレル/日、日本の輸入量は300万バレル/日)ですから海上輸送できなくすれば、中国は干上がってしまいます。アメリカが圧力をかければ、寄港地として貸す国もなくなるでしょう。要はオバマにその覚悟があるかどうかです。

記事

3月に発表された、中国肯定派の学者による中国崩壊論が、「今度は本物か?」と識者に衝撃を与え、ネットやメディアでいまだに話題となっている。これに対し中国メディアは、西側のご都合主義と不満を露わにしている。

◆中国通から驚きの崩壊説

ウォール・ストリート・ジャーナル紙(WSJ)に、『来る中国の崩壊』と 題した記事を寄稿したのは、ジョージワシントン大学の国際関係の教授 で、中国政策プログラムのディレクター、デービッド・シャンボー氏だ。

ウェブ誌『Slate』は、「共産党崩壊寸前」説は目新しくもないとする が、以前から中国共産党の強さと適応力を強調してきたシャンボー氏のような学者の口から、このような大胆な話が飛び出したことが、中国ウォッ チャーに驚きを与えたと述べる。皮肉にも同氏は今年1月に、中国外交学院からアメリカで2番目に影響力のある中国専門家に選ばれている。

◆5つの兆候

シャンボー氏は記事の中で、政権のぜい弱性と党の組織的弱さに関する、 次の5つの兆候を提示している。

 1.中国の経済的エリートは、共産党システム崩壊を恐れ、海外に逃げる準備をしており、子弟を海外で学ばせ、市民権獲得のため子供を米国で出産し、海外で不動産を買いあさっている。

 2.習主席は政治的抑圧を強めており、民主主義など、西側の普遍的価値を信任するものの洗い出しを行っている。

 3.多くの体制支持者でさえ、そのふりをしている。プロパガンダは力を失い、指導者は裸の王様状態だ。

4 .汚職は政府や軍のみならず、中国社会にはびこっている。腐敗撲滅運動が進められているが、汚職の摘発が権力闘争につながっており、恣意 (しい)的な選択による粛清となっている。

 5.中国経済は停滞し、「体制的なわな」にはまっており、安易な出口はない。消費は増え、官僚主義も減り、財政改革も導入したが、経済改革 は既得権益を守るグループに阻まれている。

同氏は、解決には政治改革しかないと主張。しかし、習主席が恐れている のはソ連のゴルバチョフの二の舞になることで、解放よりも、統制を強めていくだろうと見ている。

◆中国メディアはほぼ否定的

『Slate』 は、シャンボー氏の記事に対し、中国国営メディアは脳卒中寸前と表現。人民日報傘下の『Global Times』は、すでに晩年を生きる同氏が「日和見主義者の仲間に入った」とし、「威厳を持ってふるまい、意見はよく考えるべき」と助言した。同じく政府系のチャイナ・デイリーは、 同氏が中国のポジティブな側面を完全に無視し、偏見を持って見ていると し、典型的な米メディアの書き方だと批判した。

ただし、中国の改革派歴史家、チャン・リーファン氏のように、シャンボー氏の意見を理解する声もある。ドイツの報道機関DPA通信に対し、 チャン氏は「習主席は権力を集中させ、反腐敗キャンペーンを続けており、大きな危機に直面している」とし、「もし失敗すれば、結果は政権の手に負えないものとなるだろう」と述べている(Slate)。

チャイナ・デイリーに寄稿した、アメリカのICA研究所のリサーチ・ディ レクター、ダン・スタインボック氏は、経済に関しての中国崩壊論に言及。崩壊論は、西側の経済が落ち込むと出てくる話題だと述べた。崩壊論者が根拠とする経済成長の停滞は、大きな絵のなかの一部にすぎないと説明。西側の政府と中央銀行では打つ手がなくなっているが、中国にはそれは当てはまらないとし、経済崩壊はないという認識を示した。

◆崩壊なしでも困難は続く

『Slate』は、世間一般の通念として、文化大革命、天安門事件などの危機を乗り越えた共産党は、新たな困難を克服するため、強く、抜け目ないままだと述べる。同誌はシャンボー氏の警告は真実であり、香港民主化運 動や環境汚染等の、指摘されなかった問題も多くあると指摘。党は崩壊の 危機にはないが、プレッシャーはかかっている、とまとめている。

6/11・12日経ビジネスオンライン 鈴置高史『米国も今度は許す? 韓国の核武装 核抑止論が専門の矢野義昭客員教授に聞く』記事について

2日分の記事で長いので短くコメントします。

①昨日も言いました通り、日高氏によれば中国の軍事力は「張り子の虎」、プロパガンダである。惑わされてはならない。いざとなれば海上封鎖、経済制裁すれば輸出入で成り立っている中国経済は崩壊する。アメリカは中国打倒について能力の問題ではなく意思の問題。矢野氏の見方はプロパガンダに踊らされている。まあ、プロパガンダであっても、最悪を考えての準備は必要ですが。

②朝鮮人への見方はキッシンジャーは他の白人と同じ。現実主義者だから当然と言えば当然。イザベラ・バードの『朝鮮紀行』は読んでいるでしょう。今の国務省も“Korea Fatigue”になっていますし。日本人も慰安婦の嘘が分かってきて韓国がいくら謝罪を求めて来ても、国民が日本政府の謝罪を許さないでしょう。

記事

 韓国で浮上する核武装論。核抑止論が専門の矢野義昭・拓殖大学客員教授(元・陸将補)は「今度は米国も認めるかもしれない」と言う(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。

朴正煕時代から核開発

矢野義昭(やの・よしあき)

岐阜女子大学客員教授、日本経済大学大学院特任教授、拓殖大学客員教授、博士(安全保障、拓殖大学)。専門は核抑止論、対テロ行動、情報戦。1950年大阪市生まれ。京都大学工学部機械工学科を卒業後、京都大学文学部中国哲学史科に学士入学し卒業。1975年、陸上自衛隊幹部候補生学校入校。以来、普通科幹部として第6普通科連隊長兼美幌駐屯地司令、第一師団副師団長兼練馬駐屯地司令などを歴任。2006年小平学校副校長をもって退官(陸将補)。2014年、フランス戦争経済大学大学院において共同研究。単著に『日本はすでに北朝鮮核ミサイル200基の射程下にある』(光人社、2008年)、『核の脅威と無防備国家日本』(光人社、2009年)、『あるべき日本の国防体制』(内外出版、2009年)、『日本の領土があぶない』(ぎょうせい、2013年)、『イスラム国 衝撃の近未来』(育鵬社、2015年)がある。

矢野:鈴置さんの記事「ついに『核武装』を訴えた韓国の最大手紙」を面白く読みました。

—誰も止めない北朝鮮の核武装。これに焦った韓国の保守が「いつでも核武装できる権利――核選択権――を我が国も持つと宣言しよう」と呼び掛けた、との話でした。

矢野:それを「宣言抑止」と言います。核兵器を持たない国が「あなたが核で私を脅したら、こちらも即座に持つよ」と予め宣言しておくことにより、仮想敵の核攻撃や威嚇を防ぐ手法です。

 もちろん核兵器を短期間に開発できる能力があることが前提となります。そして韓国はその能力を持っています。朴正煕(パク・チョンヒ)時代からプルトニウムの抽出技術に取り組んだ結果です。

 弾道ミサイルや巡航ミサイルなど、核の運搬手段もすでに保有しています。6月3日、韓国軍は射程500キロの地対地の弾道ミサイルの発射に成功しました。射程800キロのミサイルも開発中です。また、潜水艦から発射する巡航ミサイルも開発済みです。

朝鮮半島に「核の均衡」

鈴置:注目すべきは「作ってしまえば、米国も核武装を認めてくれる」と韓国人が考え始めたことです。

矢野:まさに、そこがポイントです。私も、韓国の核武装を米国が黙認する可能性が高いと見ています。北朝鮮の核武装を止める手立てがほぼない、という厳しい現実からです。

 鈴置さんがあの記事で指摘したように「北が核を持つことで、南を軍事的に挑発する可能性」が増しました。つまり、米国から見れば戦争に巻き込まれるリスクが高まったのです。

 このリスクを減らすには韓国にも核武装させて、南北朝鮮の間で「核の均衡」を作ればよい、という理屈になるのです。

 例えば、仮想敵に囲まれるイスラエルの核武装を米国が黙認したのも、中東での戦争に巻き込まれないためです。

—米国が日本と進めるミサイル防衛(MD)に韓国も加わればいいのではないですか。

MDでは撃ち漏らす

矢野:公式的には米国もそう言っています。でも、自分のミサイルで敵のミサイルを落とすMDは万全ではないのです。大量のミサイルで攻撃された時、撃ち漏らしが出てくるからです。

 これを「飽和状態」と言います。完全に核攻撃から身を守る手段がない以上、信頼できる同盟国の核保有を認めるのもやむを得ない、との考え方もあるのです。

 核兵器の製造技術は世界に拡散しており、核分裂物質と適当な資材があれば、誰でも初歩的な核兵器を作れるようになりました。米国は世界的に「同盟国の核」を黙認する方向にあると思います。

 中東をご覧下さい。先ほど申し上げたように、米国はイスラエルの核武装を黙認しました。イスラエルは公表していませんが、300発近い核弾頭を持つ、英仏並みの核保有国です。

 さらに、米国はイランとの核協議で和解し、その核保有を黙認する可能性が出てきました。「イスラム国」(IS)との戦いで、米国はイランの地上戦での協力を必要とするからです。

 今後、米国から核を黙認されたイスラエルとイランの間で、核の相互抑止体制が成立するのかもしれません。

 そのイランを念頭に、サウジアラビアが核保有に動く可能性が高まっています。中国から「東風3」など弾道ミサイルを輸入済みです。核弾頭に関してもパキスタンの核開発に当初から資金を提供しており、入手に障害はないと見られています。

緩くなった「韓国に対する縛り」

 中東で、地域の主要国に核を持たせて均衡する、という新たな核政策に米国は転換しつつあるように見えます。それが朝鮮半島にも及びかねないのです。

 兆候と言うべき動きがあります。2012年に米韓ミサイル協定が改定され、韓国は射程が800キロまでの弾道ミサイルを持てるようになりました。それまでは300キロでした。これでは北朝鮮の北東部へはミサイルは届きませんでした。

 2015年4月には米韓原子力協定が見直され、仮署名に至りました。様々の制限は付いていますが、韓国はウラン濃縮も可能になり、使用済み燃料の再処理も自由度を増しました。

鈴置:改定された原子力協定でもかなり制限が付いています。米国が「韓国の核武装」を黙認したとは言いにくいと思いますが。

矢野:でも、核の縛りが緩くなったのも事実です。米国の同意――暗黙裡の同意も含みますが――さえあれば、韓国は核開発に動けるようになったのです。

「黙認の時代」が始まる

—「核の黙認」の時代が始まるというのですね。

鈴置:米国の外交誌で「アジアの同盟国に核を持たせるべきか」で議論が起きました。

 2014年1月30日、The National Interestは戦略国際問題研究所(CSIS)のデヴィッド・サントロ(David Santoro)シニア・フェローの「Will America’s Asian Allies Go Nuclear?」を載せました。

 「韓国や日本が核武装に走る可能性が出てきた。その際、米国はそれらの国との同盟を打ち切るべきだ。核拡散防止条約(NPT)体制の崩壊を呼ぶからだ」との主張です。はっきり言えば、韓国や日本の核武装は何があっても止めるべきだ、との意見です。

 これに対し、新アメリカ安全保障センター(Center for a New American Security)のエルブリッジ・コルビー(Elbridge Colby)フェローが2月28日、同じ雑誌に「Choose Geopolitics Over Nonproliferation」を寄稿して反論しました。

 その主張は見出し通り「事実上破綻している核不拡散を守るよりも、同盟国をつなぎ止めておく方が重要だ」です。

 2つの意見は真っ向から対立します。が、共通点もあります。「北朝鮮が核兵器を持ち、中国が膨張するのに対抗し、韓国や日本が核武装に走るのは当然だ」との認識です。

日本も核を持て

矢野:ちょうどその頃、日本に対して核武装を勧める米国の安全保障専門家が登場しました。ウォルドロン(Arthur Waldorn)ペンシルバニア大学教授が2014年3月7日の日本経済新聞で「核武装の勧め」を書いています。

鈴置:そうでした。経済教室欄に寄稿した「米国との同盟、過信は禁物」ですね。肝心の部分は以下です。

  • 日本のミサイル迎撃システムは、おそらく世界の最先端だが、英国やフランスに匹敵するような安全保障を提供できないことは明確に理解する必要がある。
  • システムが「飽和状態」になってしまう、つまり対処できる以上の攻撃にさらされる可能性があるからだ。
  • 大規模な通常兵器と核兵器を開発している敵対的な中国を背景に、これらの事実は、日本がこれまで考慮してこなかった、政治的に微妙だが現実的で避けることのできない問題を突きつける。
  • 日本が安全を守りたいのであれば、英国やフランス、その他の国が保有するような最小限の核抑止力を含む包括的かつ独立した軍事力を開発すべきだ。

2014年に変わった米国の姿勢

—なるほど、はっきりと核武装を勧めていますね。

矢野:この記事が載った少し後、訪日した別の米国の安保専門家も少数の日本人の前で核武装の勧めを説きました。

 「日本は米国から原子力潜水艦を購入すべきだ」との言い方でした。核武装を前提にした議論でして、核ミサイルを発射するためのプラットフォームも必要だから整備しろ、という意味です。

 米国の専門家の間では「日本人に対し、核武装を認めるような発言をしてはならない」との暗黙の合意がありました。でもそれが、2014年初めを境に突然、変わったのです。

鈴置:矢野さんは2014年に核抑止に関する共同研究のため、フランスに滞在されました。欧州の専門家は「アジアの核」をどう見ているのでしょうか。

ドゴールの核の独立

矢野:フランスの複数の核の専門家が「韓国が核兵器開発を念頭に置いていることは我々も承知している。驚くにはあたらない。北朝鮮がそれを実際に進めていてかつ、韓国には潜在能力があるからだ」と語っていました。

 これが世界の常識的な見方でしょう。日本は被爆国ですから国民は核に対し強い忌避感を持ちます。しかし、韓国人に核アレルギーはありません。そして過去に侵攻してきたうえ、今も厳しく敵対する国が核兵器を持ちつつあるのです。

 東西冷戦下の1960年、フランスは初の核実験に成功し、核保有国となりました。「米国の核の傘の信頼性への不信」からです。

 米国は様々の特恵と引き換えに、仏の核の引き金も共同で持とうと持ち掛けました。しかし、フランスは拒否したのです。当時のドゴール大統領は「どの国も、自分のためにしか核の引き金は引かない」と信じていたからです。

 旧・西ドイツのアデナウアー首相も核を持ちたかった。しかし敗戦国であり、フランスや英国など他の欧州諸国からの不信感が根強く、とても持てなかった。そこで「核シェアリング」の権利を確保しました。

西独の核シェアリング

—「核シェアリング」とは?

矢野:西ドイツは米国が自国内に配備した戦術核の使用に関し平時から訓練しておく。緊急時には米大統領の承認を得たのちに核兵器を譲り受けて使用する――権利です。

 「核の引き金」は米大統領が握っているので真の「シェアリング」とは言えず、象徴的な権利に過ぎません。それでも西ドイツは、緊急時には核を使える可能性を確保したのです。

 ちなみに、韓国の軍事的な環境は西ドイツに似ています。国土が狭くて――つまり奥行きがないというのに――地続きの、北朝鮮と中国の強力な通常戦力の脅威に直面しています。

 英国は1952年に核実験に成功し、いち早く自前の核を持ちました。しかし国力の限界から、現在は抑止専用の自衛的な核戦力に留めています。

英国の切り札は潜水艦

—具体的には?

矢野:原子力潜水艦に核兵器を載せて、これを核報復力としたのです。

鈴置:先制核攻撃を受けても、位置を発見されにくい潜水艦は生存できる。そこで他国に対し「もし我が国を核攻撃したら、潜水艦から核で報復するよ」と脅せるわけですね。

矢野:その通りです。潜水艦は陸上の核ミサイル基地と比べ、敵の先制核攻撃からの残存性が高い。そこで、報復の切り札に使うのが合理的なのです。

 日経に論文を載せたウォルドロン教授も、訪日して「米国製の原子力潜水艦を導入せよ」と語った米国の専門家も、英国方式の――潜水艦搭載型の弾道ミサイルによる核抑止力を持て、と言っていると思われます。

 なお、英国は「潜水艦の核」に関し、自前の核弾頭と原子力潜水艦を運用していますが、潜水艦搭載型の弾道ミサイルは米国から「ポラリス」を導入しました。米英は1962年のナッソー協定(Nassau Agreement)でこれに合意しました。

 いずれにせよ、欧州各国の「核の歴史」からすれば、アジアの同盟国に独自の核戦力を持たせて抑止力を増そう、と米国が考えても何ら不思議ではないのです。

「衝動的な人々」と核

鈴置:日本は敗戦国のうえ、原爆を落とされていますから「核を持たせれば、それで復讐してくるかもしれない」との恐怖が米国にはあったでしょう。

 韓国人は「情緒的に不安定な人たち」との認識を米国の指導層からも持たれがちです。例えば1972年に訪中したニクソン大統領は、周恩来首相に以下のように語っています。

  • 朝鮮人は、北も南も感情的に衝動的な(emotionally and impulsive)人たちです。私たちは、この衝動と闘争的態度が私たち(米中)両国を困らせるような事件を引き起こさないよう影響力を行使することが大切です(『ニクソン訪中機密会談録』=日本語=100ページ)。

 原文は「Nixon’s Trip to China」の「Document 2」の17ページで読めます。

 米国にとって「自分たちと同じ人間が住む欧州」と比べ、アジアは「信用できない人たちの地域」でした。未だにそうした見方が根強いと思います。はて、アジアの核も「欧州並みに」と米国人が考えるでしょうか。

矢野:「韓国が核を持ったら、黙認してもいい」と米国が考える動機が急速に膨らんでいるのです。それは「北朝鮮の核武装」というローカルな理由に留まりません。米国の軍事戦略が根本から変化しているからです。

大戦争はできない米国

—前回の矢野さんのお話は、韓国の核武装を米国が黙認するかもしれない。北朝鮮の核武装に加え、米国の軍事戦略が世界的に変わったからだ、ということでした。

矢野:東アジアと西太平洋で、米中の軍事的な力関係が逆転する可能性が出てきました。米国は今後10年間で1兆ドル近い国防費を削減します。一方、中国は成長率の鈍化にもかかわらず毎年、軍事費を2桁のペースで増やしています。

 米国の陸軍と海兵隊は、アフガン戦争以前の水準に削減されます。そんな米国に、数10万人もの死傷者が出るような大規模の地上戦はもう、不可能なのです。

 米国が絶対に避けたいのは2つ。まず、中国との核戦争に拡大する恐れのある紛争に巻き込まれること。もう1つは大規模の地上兵力を長期に派遣すること、です。

鈴置:米国は、同盟国を守るという約束を果たせるのでしょうか。

矢野:難しくなります。米国は今でさえ、1つの戦争をすることで精一杯です。下手すると今後は、同盟国の領土の回復にさえ直接は関与できなくなります。

 そこで「韓国や日本などの同盟国が独自の核抑止力を持つことを黙認し、中国や北朝鮮の侵攻を防ぐ」という選択を米国がするかもしれない、との見方が広がっているのです。

有事の際、米軍は後退

鈴置:ブレジンスキー(Zbigniew Kazimierz Brzezinski)元・大統領国家安全保障担当補佐官が「米国の力が弱まると、その核の傘の信頼性が落ちる。すると韓国や台湾、日本、トルコ、ひいてはイスラエルでさえ新たな核の傘を求めるか、自前の核武装を迫られる」と書いたのも、そうした判断からなのですね。

 2012年に出版した「Strategic Vision: America and the Crisis of Global Power」の114ページです(「ついに『核武装』を訴えた韓国の最大手紙」参照)。

米国が「エア・シー・バトル」(Air Sea Battle)という、新しい戦争の方法を検討してきたと聞いています。

矢野:その構想でも、有事の際は中国のミサイルの集中攻撃を避けるため、在韓米軍も在日米軍もいったんは後方に分散退避することになっています。今後は基本的には韓国の防衛は韓国の、日本のそれは日本の責任となります。

 背景には、中国の中距離以下のミサイルの増強があります。その脅威から逃れるため、米軍はグアム以東に後退します。米国の一部シンクタンクは、米軍が反攻に転じるのは1カ月以上先になると見積もっています。

 2015年4月に18年ぶりに改定した日米防衛協力のための指針(ガイドライン)では、日本有事の作戦構想から地上作戦時の「極力早期の兵力来援」や、米空海軍による「打撃力の使用を伴う作戦」を示す文言は抜け落ちました。

必敗の精神

鈴置:そこで発生する問題は、アジア有事の際――つまり在韓米軍に後退されてしまった後の韓国が、北朝鮮の脅威に精神的に耐えることができるか、ですね。

矢野:そこなのです。韓国人の米軍に対する依存心の高さを見ると、とても耐えられるとは思えません。

鈴置:韓国国会の国政監査で議員が「米国の支援なしに我が国単独で北と戦ったらどうなるか?」と聞いたことがあります。核を考えずに、通常戦力だけで戦ったらどうなるか、との想定です。

 軍の幹部がきっぱりと「負ける」と答えたので問題になりました。 韓国の経済力は北朝鮮の40倍あります。どうやったら負けるのか、外国人には理解しがたいのですが、重要なのは多くの韓国人がそう信じていることです。

 韓国には徴兵制度があって、多くの男性が軍隊に行く。このため国軍の「必敗の精神」が国民に広く浸透してしまうのだ――と解説してくれた韓国の記者がいます。

 なお「負ける」発言が問題になった主な理由は「言ってはいけない本当のことを、軍幹部が語ってしまったから」でした。

崩れる「中台」軍事バランス

—有事に米軍が後退する可能性が高まったことも、韓国の核武装を加速する、ということですね。

矢野:その通りです。

鈴置:1970年代に朴正煕(パク・チョンヒ)大統領が核武装を考えたのも在韓米軍が削減され、いずれは完全撤収もありうる、と見られたからです。

 韓国を巡る安全保障の環境は今と似ています。1970年代の核武装計画は、米国の強力な圧力で挫折しましたけれど。

「在韓米軍や在日米軍が後方に引くような」有事とは、具体的にはどんな状況ですか?

矢野:例えば、中国と台湾の軍事衝突です。中国が台湾に侵攻した場合、米国はそれに「抵抗する能力を維持」することで台湾を支援せねばなりません。米国の台湾関係法で定められているからです。

 現在、台湾が持っている空と海の優勢――昔の言葉で言えば制空権と制海権ですが――は2020年代前半に、中国側に傾くと見られます。

 そうなれば中国が台湾を軍事的に威嚇する可能性が高まります。これが軍事的衝突に拡大する懸念があります。

 一方、台湾はそれを防ぐための核武装を考えるかもしれません。すると、ますます衝突の可能性が増します。中国は、台湾の核武装を侵攻の条件の1つに掲げているからです。

南シナ海が試金石

 あるいは中国が沖縄県の先島諸島――「尖閣」や与那国島、石垣島、宮古島に対し、今以上に挑発の度を高める可能性があります。

 この際、1995年と1996年の台湾海峡危機と同様に、ミサイル演習と称して中国が沖縄周辺に、あるいは東京湾を出たあたりの公海に多数の実戦用弾頭を撃ちこんでくるかもしれません。こうなっても在韓、在日米軍が後退する可能性があるのです。

 今、南シナ海で米中のつばぜり合いが激しくなっています。もし、中国の人工島の埋め立てを米国が阻止する力を見せないと、中国は「米国弱し」と見て台湾や沖縄でさらに強気に出てくるでしょう。

鈴置:20年前の台湾海峡危機の時、米国は空母打撃部隊を台湾周辺海域に送って中国を牽制しました。今度は反対に、後ろに引くかもしれないとは……。

矢野:中国のミサイルの性能が急速に向上しているためです。中国が最近開発した対艦弾道ミサイルの射程圏内――大陸から1000カイリ以内の東シナ界や南シナ海には有事の際、米空母打撃部隊は入らないでしょう。

米空母はもう、来ない

鈴置:「空母キラー」と言われる「東風21D」のことですね。でも、本当に実用化に成功したのですか? 超高速で大気圏に再突入する弾道ミサイルを、30ノットで動く艦船に当てられるものでしょうか。

矢野:確かに、そう疑う向きもあります。ただ、同時に多数の「東風21D」に狙われたら、直撃されなくても大きな被害が出るでしょう。

 至近弾に留まったとしても、炸裂した弾頭から放出される約1000発の子弾によって、米艦船は通信電子装備に深刻な損害を受けます。そのリスクを考えただけで、射程内の海域から空母を引き上げざるを得なくなります。

—結局、米中が衝突した時、これまで頼みの綱だった米空母は助けに来ないかもしれない、ということですね。

鈴置:その可能性を考えただけで、韓国人は核を手にしたくなるでしょう。北朝鮮の挑発があれば必ず米空母が急行してくれる――というのが韓国の常識になっていますから。

朴正煕時代の韓国ではない

—韓国が核を持った場合、米韓同盟はどうなるのでしょうか。

鈴置:韓国には「核兵器を開発しようとすれば経済制裁されて阻止される」「同盟を打ち切られる」と懸念する声もあります。朴正煕政権当時の米国の強力な圧力の記憶が、未だに残っているのです。

 保守運動の指導者で核武装論者である趙甲済(チョ・カプチェ)氏はこの懸念に対し、以下のように説得しています。「核開発して滅びた国はない」(5月14日、韓国語)から引用します。

  • 世界5大工業国、5大原子力技術国、7大輸出国、8大軍事力(通常兵力)、8大貿易国に浮上した韓国が中国側に傾けば、日本も対抗できないし、中国はユーラシア大陸の覇権国家になる。
  • こんな韓国が中国と北朝鮮を牽制するために核兵器を持とうとするからといって、米国が韓国を制裁できるのか? 韓米同盟は重要であり韓国にとって米国は大事だが、同じように米国にとっても韓国は大事なのだ。
  • 朴正煕大統領が1976年頃に核開発を放棄したのは、韓国の原子力発電所に協力しないと圧迫を受けたためだ。だが、2015年の韓国は1976年の韓国ではない。

核さえあれば、こちらのもの

 趙甲済氏ら核武装論者は「北の核にはどんなことをしても対抗しなければ、韓国は生き残れない」との悲愴な判断と「核武装すれば道は開けるし、それしか道はない」との覚悟を抱いているのです。

—米国が反対しようが韓国は核を持つということでしょうか。

鈴置:趙甲済氏らはそこまではっきり言っていません。しかし、そうなっていく――容易に強行突破論に転化し得ると思います。

 矢野先生との議論は「韓国の核を米国は黙認するか」がテーマでした。また、米国の外交誌「The National Interest」で起きた「同盟国に核を持たせるべきか否か」という論争も「米国が同盟を打ち切るぞと脅せば、同盟国は核武装をあきらめる」との前提がありました(「米国も今度は許す? 韓国の核武装」参照)。

 でも韓国の場合、米国の脅しの効果は急速に薄くなっています。「もう、昔の弱い韓国ではない。米国の言いなりにはならないぞ」という意識が強まっていますから。

—「核さえ持てば何とかなる」と、後先考えずに核武装に走るかもしれない、ということですね。

破綻する米韓同盟

鈴置:いわば、核至上主義――北朝鮮と同じ発想です。もう1つ、見落とすべきでないのは「完全中立化に伴う核武装」の可能性です。

 朴槿恵政権は2013年2月のスタート以来、事実上の米中等距離外交を採用しました。でも、限界に達したのです。

 米国が北朝鮮のミサイルに備え、在韓米軍に終末高高度防衛ミサイル(THAAD)を配備しようとしています。

 一方、それが自分の核の威力を減じる目的と考える中国は「配備を認めたら核攻撃の対象にするぞ」と脅します。韓国はどちらにも「NO」と言えないので頭を抱えています。

 北朝鮮の脅威から米国に守ってもらいながら、米国による防衛に反対する――。この韓国の奇妙な態度は、米韓同盟の矛盾に根ざしています。

 韓国の主要敵は北朝鮮であって、絶対に中国ではない。一方、米国のそれは中国であって北朝鮮ではない。米韓同盟は主要敵が完全に異なってしまった――はっきり言えば、破綻しつつあるのです。

南シナ海でも「離米従中」

矢野:THAADだけではありません。南シナ海を舞台に激化する米中対立もそうです。中国は各国の反対を押し切って、南シナ海で埋め立て工事を実施し、軍事基地を作っています。

 これに対し米国を中心に日本、豪州、フィリピン、ベトナムなど関係国がこぞって非難しています。というのに韓国は知らん顔です。

鈴置:韓国の気分は「もう、中立」なのです。韓国は「南シナ海の領有権と我が国は関係ない」と逃げ口上を打っています。

 しかしそれは言い訳です。中国は、米国とその同盟国を狙う核ミサイル原潜の隠れ家にしようと、南シナ海の内海化を進めているのです。

 中国の顔色を伺うばかりでそれに反対しない韓国を米国はどう見るのでしょうか――。6月3日、ラッセル国務次官補はワシントンのシンポジウムで、韓国に対し批判の隊列に加わるよう迫りました。

 米国も二股外交の韓国に、堪忍袋の緒を切ったのです。かといって韓国が対中批判に加われば、中国から苛め抜かれるでしょう。

 ラッセル発言は韓国で大きな問題となりました。中央日報の「米国務次官補『韓国が南シナ海紛争に声を高めるべき』」(6月5日、日本語版)で読めます。

独島を日本から取り返される

—韓国の「板挟み状態」は厳しくなる一方ですね。

鈴置:だから、悩んだ韓国が米韓同盟の破棄を考えるかもしれないのです。そうすれば、THAAD配備問題も南シナ海問題もきれいになくなります。

 もちろん今すぐ、という話ではありません。何らかの「引き金」がいると思います。例えば、米中の軍事的な対立が深まって、中国が韓国に対し「在韓米軍基地を攻撃するぞ」と脅した場合です。

 韓国は米国に対し「軍隊を引いてくれ」と頼む可能性が高い。そうなったら米韓同盟は消滅します。同時に韓国は核武装に乗り出さざるを得ない。

 対北朝鮮はもちろんのこと、中国や日本に対しても核が必要になるからです。米国の後ろ盾がなくなれば、中国が韓国に対し無理難題を突きつけるのは確実です。日本も独島――竹島を取り返しに来る、と韓国人は信じています。

 でも「核さえ持っていれば中国や日本になめられないで済む」――のです。「韓国の核」は北朝鮮専用ではありません。

グリップが効かない核保有国

矢野:韓国は北京や東京にも届く弾道ミサイルの開発に取り組んでいます。これに通常弾頭を載せても効率が悪い。日本や中国への核威嚇が念頭にあるのは間違いありません。

 朴槿恵政権の米中等距離外交も「仮に米国と縁が切れても、核を持っておけば中国の言いなりにならないで済む」という発想が根にあるように思えます。

鈴置:世論もそうです。「核さえ持てば、慰安婦問題だって日本は頭を下げてくる」などと上手にナショナリズムに火を付ければ、韓国社会に核武装論が一気に盛り上がると思います。

 そもそも国民の70%弱が核武装に賛成です。日本とは異なって核アレルギーはありません。だから強力な反対勢力は存在しないのです(「ついに『核武装』を訴えた韓国の最大手紙」参照)。

 むしろ韓国には「核を持たないから馬鹿にされるのだ」との思いの方が強い。「慰安婦」で米国が日本の肩を持ったとの理由で、ネットに「核武装して米国から独立しよう」との声が溢れる国なのです(「『ヴォーゲル声明』に逆襲託す韓国」参照)。

 もっとも「同盟国でなくなる韓国」の核に関しては、米国は阻止するかもしれません。米国のグリップの効かない核保有国は何をするか分からないからです。情緒が安定した国とは言えませんしね。米国や日本にとって“北朝鮮”がもう1つできては困るのです。

『朝鮮半島201Z年』

—鈴置さんは近未来小説『朝鮮半島201Z年』で米中が取引し、韓国が核武装する前の段階で北の核を取り上げたうえ、朝鮮半島全体を中立化する――と予想しました。

鈴置:米国は同盟国を1つ失う代わりに、戦争に巻き込まれるリスクを軽減する。中国は北朝鮮への軍事作戦という汗をかく代わりに、韓国から米軍を追い出す――という談合が米中間で成立するのです、この小説では。

 中国だって韓国に核を持たせたくはない。台湾や日本の核武装の呼び水となりかねないからです。それに南北双方が核を持てば、この半島を操りにくくなる。

—朝鮮半島の非核化を実現するためとはいえ、米国が簡単に同盟国を手放すでしょうか。

鈴置:先ほど申し上げたように、米韓同盟自体が巨大な矛盾を抱えています。いつまで持つか分からない同盟なのです。苦労して維持する必要があるのか、首をひねる米国の安全保障専門家が出始めました。

 「米国との同盟がなくなった後、中国の恐ろしい素顔を見れば韓国は戻ってくる」と言う専門家もいます。米軍基地を追い出した瞬間、中国にミスチーフ礁をとられた「フィリピン体験」を韓国にもさせよう――というわけです。

米中は「半島」では仲がいい

—米中関係は悪化する一方です。小説のように米国と中国が朝鮮半島に関し「談合」できますか?

鈴置:十分可能です。米中はこの半島に関しては一種の合意があるからです。前回も引用しましたが、1972年に訪中したニクソン大統領は、周恩来首相に以下のように語りました。今回は後半部分に注目下さい。

  • 朝鮮人は、北も南も感情的に衝動的な(emotionally and impulsive)人たちです。私たちは、この衝動と闘争的態度が私たち(米中)両国を困らせるような事件を引き起こさないよう影響力を行使することが大切です(『ニクソン訪中機密会談録』=日本語=100ページ)。

 原文は「Nixon’s Trip to China」の「Document 2」の17ページです。

 「感情的に衝動的な朝鮮人」が起こした朝鮮戦争のために、米国は5万人もの若者の命を失いました。中国は数10万人の戦死者を出したと言われています。

 米中がいかに敵対しようと「この不愉快な地域に再び足を取られてはならない」との共通の思いは変わらないのです。

核はこっそり開発できる

矢野:米中の思いは確かにそうでしょう。でも「鈴置シナリオ」には難点があります。核兵器はこっそり開発できるのです。「非核化」させたはずの南北朝鮮が、いつのまにか核を持つかもしれない。

 そうなったら元の黙阿弥です。それよりか、インドとパキスタンのように「顕在化した核均衡」の方が安定的です。

鈴置:なるほど、そうかもしれません。「中立化」によって南北が米中との同盟を破棄した後は、大国の監視や干渉は受けにくくなるでしょうしね。

矢野:結局、2020年代前半に――10年以内に日本は、潜水艦に搭載した核ミサイルを持った南北朝鮮と対峙することになる可能性が相当にあるということです。

鈴置:そうなるかもしれないし、そうはならないかもしれない。でも可能性が出てきた以上は、そうなった時のことを考えておかねばならないでしょうね。

6/10日経ビジネスオンライン 奥山真司『中国がかわしたい米国の“海峡封鎖” 大国の世界展開は「内海」の確保に始まる』記事について

日高義樹氏の『中国敗れたり』によると①米海軍は中国の知らない内に、中国を海上封鎖できるキャプター型機雷を近海に敷設するのは可能とのこと。特殊原潜で敷設は気づかれないそうです。衛星で操作することなく必要時点で浮き上がってきて艦船(軍事用、民間船を問わず)を撃沈。海底に長期間敷設可能とのこと。これをやれば、中国経済は崩壊間違いなしです。もう既にやっている可能性もありますが。②A2/AD戦略を中国はプロパガンダしていますが、中国の空母キラーと言われるクルージングミサイルDF-21D(中国名:東風-21D)はマッハ5~6で非常に遅い(普通の大陸間弾道弾のスピードはマッハ20~30)し、破壊力もハープーン程度(?)で大したことがないとのこと。米空母は最大30数ノット(50数Km/h)で走り、ミサイルが飛んでくる間に位置を変えれるし、中国側のレーダーを攪乱してDF-21Dの飛行を妨害できるとのこと。これによりエアシ-バトル戦略を採らなくても中国軍はなす術がなくなります。

問題は能力でなくて意思の問題です。オバマが宥和政策を取れば(民主党と言うのは日米とも碌でもない政党です。中国から多分オバマは献金を受けているでしょう。ヒラリーがそうであったように。なにせ大統領選時、投票者登録をごまかして大統領になったと言われている史上最低の米大統領です)中国はつけあがり、ドンドン侵略して行って既成事実化を図るでしょう。内蒙古、チベット、ウイグルのように。米軍は中国の主張する12海里に艦船を通過させるべきです。中国の主張は国際法違反、何の強制力も持たないことを世界に知らしめるべきです。

日本は相変わらず民主党や共産党が国際環境の変化を考えない議論をしています。このままいけば日本の独立も危うくなります。女でミソを付けた山崎拓がしゃしゃり出て来て集団的自衛権にイチャモンつけていました。中国でハニートラップに遭い、今回も中国から言わされているのでしょう。裏に古賀や野中、加藤、河野辺りが蠢いているのかも知れません。野党が充分な議論が足りないというなら通年国会にすべき。国民はもっと怒るべきです。民間企業でそんなに休むことはできないでしょう。選挙対策でなく、議員本来の仕事である国会で法案作成に専念すべき。Lawmakerの名が泣くでしょう。中国と比較すればアメリカの方がずっとマシです。日米同盟が基軸で多国間で中国を封じ込めるべきです。中国に有利な発言をする政治家やメデイアの人間は裏に何かあると見た方が正解です。

記事

 マッキンダーが提唱した言葉に「内陸海」がある。英語では「ミッドランド・オーシャン」(Midland Ocean)。大西洋を囲む自由主義陣営の国々がソ連(ロシア)に対抗するイメージを表すために使ったものだ。マッキンダーの死後、この概念は北大西洋条約機構(NATO)として結実した。

 地政学ではこのように、ある海を囲む、つまり「内海化」する国家や同盟国が、シーパワー国家としての土台を獲得し、世界展開を目指す傾向があると見なすことが多い。古代に栄華を誇ったローマ帝国は地中海を内海化した。英国も地中海と大西洋を内海化したことがある。

 オスマン・トルコも地中海と黒海を囲い込んだ。ソ連は黒海やバルト海、それにオホーツク海を内海化した。そして日本も「大国」であった戦前は、日本海と東シナ海を内海化していた。

カリブ海の内海化から米国の世界展開が始まった

 では米国の場合はどうなるか。現在は上記のように大西洋をはじめ、世界のほとんどの海を「内海化」している。とりわけ世界展開を始めた時期に最初に内海化したのが、自国のすぐ南側にあるカリブ海であったことが重要だ。

 当時のカリブ海は、砂糖の原産地や奴隷貿易の拠点として、英国をはじめとする欧州の列強たちが関与していた場所であった。これに対して米国は1823年にモンロー大統領が提唱した、いわゆる「モンロー・ ドクトリン」に従って、西欧の列強を西半球(南北アメリカ)から排除する方針を取り始めた。

 当初は、カリブ海最大の勢力であった英国(1833 年に奴隷制を禁止)と協力する形で奴隷貿易を取り締まる警戒活動などを行っていた。だが、1899年の米西戦争でスペインを排除し、20世紀前半に英国がこの海域から撤退すると、米国政府は彼らがこの海域に二度と復帰してこられないように様々な手段をとっている。

 その後、第一次世界大戦の時期に、米海軍がこの海域での覇権を握った。このため、カリブ海全域が「アメリカの地中海」(American Mediterranean)と呼ばれるようになった。

 つまり、米国が本格的に世界展開を始めるきっかけとして、自国周辺の海域の「内海化」があったと言えるのだ。

南シナ海を巡る米中の攻防

 このアナロジーをそのまま中国にあてはめて考えると、興味深いことが分かる。「アメリカの地中海」に相当するのは、スパイクマンが「アジアの地中海」(Asiatic Mediterranean)と呼んだ、南シナ海を含む海域だ。

 ご存知のように、中国は現在、南シナ海の領海化を必死に進めている。その証拠に、南沙諸島周辺で7カ所の岩礁を埋め立てていることが最近確認されており、フィアリー岩礁をはじめとする少なくとも3カ所の海域で、ジャンボ機も発着可能な3000メートル級の滑走路を建造中であると報じられている。

 これはまさにスパイクマンが予測した、「アジアの地中海」において中国が覇権を確立するための第一歩と言えるものだ。もしこの「内海化」が実現すれば、中国はユーラシア大陸のリムランドの南部の海域と空域をコントロールする力を持つことになる。

 もちろんこれが実現するかは未知数だ。少なくとも現時点の米国は、この「アジアの地中海」から手を引く意志はないように思える。そうなると、この海域を巡る米中の権益の衝突は当面続くことが予測される。ただし19世紀末までカリブ海を抑えていた英国が、20世紀初頭にアメリカに覇権を譲り渡して撤退した事実は気になるところだ。アメリカも「その時」が来れば撤退する可能性もある。

海上交通路とチョークポイント

 このような「内海化」のもう一つの側面として重要になるのが、海上交通路(SLOCs:スロックスと読む)とチョークポイント(choke points)の確保である。

 英国がシーパワーとして世界の海を管理できたのは、この海上交通路やチョークポイントにおいて覇権を握っていたことが大きい。日本も日露戦争でこの恩恵を受けた。ロシアのバルチック艦隊が日本に向かうのを、スエズ運河のようなチョークポイントや海上交通路で英国が妨害をしてくれたおかげで、日本海海戦(1905年)に快勝することができた。

 米国も同様に、海上交通路やチョークポイントの確保に熱心だ。前述した米西戦争が起きた原因の一端は、カリブ海の海上交通路の確保にあった。米国は1914年、フランスが着工していた工事を譲り受けて、チョークポイントの典型であるパナマ運河を完成させている(ちなみにマハンはこの年に亡くなった)。

 後に2つの世界大戦に参戦した米国は、まさに英国の海上交通路とチョークポイントを引き継ぐことで世界覇権を握ったことを忘れてはならない。

 現在の主な海上交通路とチョークポイントは、米国が管理しており、それには当然ながらこの南シナ海も含まれる。ヒラリー・クリントン前国務長官が2010年のASEAN地域会合で「米国は航行の自由を守る」と宣言したのは、世界最大のシーパワー国家として、海上交通路(とチョークポイント)の覇権を確保する覚悟の表れであったと言える。

中国が抱えるマラッカ・ジレンマ

 他方、中国にとっての海上交通路とチョークポイントに関係してくる問題を考えると、彼らにとっての最大の懸念として挙げられるのは「マラッカ・ジレンマ」である。

 このジレンマとは、中国が経済的に発展して国力が高まると、米国(とシンガポール)に対する脆弱性が高まってしまうというものだ。経済発展するとエネルギーの需要が高まり、中東からの石油の輸入に頼らざるを得なくなる。その際の海上交通路のチョークポイントは、マラッカ海峡(中国が輸入する原油の80%がここを通過)だ。したがって同海峡を管理する米国(とシンガポール)との関係が重要になる。

 当然ながら中国には、このジレンマを解消しようという動機が働く。その解決策として北京は現在、3つの計画を進めていると言われている。

 第1がパキスタンのグワダル港と新疆ウイグル自治区のウルムチまで、パイプラインを結ぶ計画だ。グワダル港はイランとの国境のすぐ東にある。インド洋に向かって開けている砂漠の南端にある良港だ。最近の「一帯一路」につながる「中パ経済回廊」というスローガンの下で、中国政府がすでに大規模な投資を行っている。今後さらに深海港化――大型の船を着岸できるようにするため浚渫(しゅんせつ)工事を行う――や港湾施設の拡充を行う方針をパキスタン政府と決定している。

 ただし、プロジェクト全体の実現性が疑問視されている面もある。グワダル港周辺に住む民族(バルチ人)は、パキスタンの首都イスラマバード周辺に住む民族(パンジャブ人)と対立関係にあって、分離独立の機運もある。もし中国のパイプラインがグワダルまで延長されれば、イスラマバードに対抗するために「パイプラインを破壊し、中国人労働者を殺害する」と明言する独立運動側のリーダーもいる。また、北から吹く風が砂漠から運んでくる大量の砂によって港が埋まってしまう問題も抱えている。

 第2がミャンマーへのパイプラインだ。これは中国南部の昆明からチャウッピュー港まですでに伸びていて、今年の2月の時点で完成していると言われている(原油の輸送を開始しているかどうかは不明)。

 これはまさに戦前の「援蒋ルート」の再現だ。連合軍側が戦時中に、中国内の日本軍に対抗すべく整えた物資補給路が、現代において、マラッカ海峡をバイパスするための中国自身のための原油ルートとして復活したことになる。だが、北京政府が同時に敷設する予定だった鉄道のほうは、地元住民の反対などもあって中止している模様だ。

 第3が「クラ運河」――マラッカ海峡をバイパスする形で、マレー半島を横断して太平洋 (タイ湾)とインド洋(アンダマン海)の間の44キロを結ぶ――の建設である。つい先日、中国とタイの企業が計画を発表したが、こちらも、その実現性に疑問符がついている。報道が錯綜しており、タイ政府側はこの計画の存在自体を否定したという情報もある。

 いずれにせよ、中国側はマラッカ海峡という自らが権限をもたないチョークポイントを回避するため、新たな陸上ルートを開発する計画を次々に打ち出そうとしている。

米国が握る太平洋覇権に中国が挑戦

 マハンの頃から、まるで「太平洋を握るものは世界を制する」とでも言うべき現象が国際政治の場に現れている。第二次世界大戦では、この海域の覇権を巡って日米が激突した。日本の敗戦後は、米国がここの覇権を握った状態が続いている。言い換えれば、1945年以降、米国は太平洋を「内海化」しているのだ。

 ところが2000年代に入ってから、中国がこの覇権に異を唱え始めた。2006年にキーティング米太平洋艦隊司令官(当時)に対して中国海軍の司令官が「太平洋を2分割しよう」と提案したという逸話がある。

 習近平国家主席が2013年夏の米中首脳会談以来、「新型の大国関係」を唱え始めている。「G2論」の派生版だ。この頃から「広い太平洋には米中両大国を受け入れる十分な空間がある」というフレーズを使い始めた。つい最近も北京で米国のケリー国務長官に対して同様の言葉を発している。

 つまり中国は、太平洋において米国が覇権を握っている状態をよしとしていない。そこに国力に見合った自分たちの影響圏を確保し、覇権とは言わないまでも、米国と太平洋を分割し、できれば共存したいという意図を持っていると解釈できる。

 かつては、「米中は太平洋において共存できる」という楽観論も持ち上がった。米ボストン・カレッジ大学のロバート・ロス教授は、1999年に書いた論文の中で、このように主張した(ロス教授は後に考えを修正)。しかし、現在の南シナ海の状態を見て、米中が共存関係に向かっていると楽観的に判断する人々はすっかり減ってしまった。現状変更を積極的に進めようという中国の意図があまりにも明白に見えているからだ。

 いずれにせよ、「一帯一路」という広大なビジョンからも分かるように、中国が日本よりも大きなスケール、つまり「システム」レベルで国家戦略を地政学的に考えている点は、どうにも否定できない事実である。

米中に翻弄される日本

 米中という2つの「大国」は競争しながらも共存できるのかもしれない。だが、これまでの人類の歴史を見れば、この2国の間で戦争を含む大なり小なりの紛争が起こる可能性を否定することはできない。

 そして、東アジアという「サブシステム」の一角を占める日本は、今後もこの2国の関係に翻弄されることになる。

 このような中で、日本が考えるべきは、米中の覇権戦争に巻き込まれることなく、いかに相対的にパワーポジションを維持もしくは向上させるかだ。日本のリーダーたちには、日本をずる賢く立ちまわらせる知恵が必要になってくると言えよう。

6/10日経ビジネスオンライン 福島香織『長江クルーズ”人災”事故の背景 思想の自由を欠く国に事故を防ぐ想像力は育たない』記事について

中国は人民の生命を虫けら同様に考えているというベースを理解しておかないと。韓国も一緒です。日本人とは発想の仕方が違うのですから、彼らと付き合うことが本当に良いことかどうか真剣に考えるべきです。小生が長江下りをしたのは97年の10月ですからハッキリ外国人向けの船と中国人向けの船と分かれていました。中国人向けの船は過積載が当たり前。前にも書きましたが外国人向けの船であっても食事の後のゴミは黒いビニール袋に詰めて川に沈めていました。環境保護なんて考えてないという事です。

思想の自由の前に、「何をして良いか、何をしてはいけないか」の道徳の問題がある気がします。韓国同様責任者のトップが我先に逃げる文化があるとしたら日本人の育ってきた文化とは余りに異質です。孔孟の生まれた国と言っても誰も彼らの言い分をまともとに聞かず、社会で実践することがありませんでした。日本人は漢詩や論語の世界でしか中国を見ませんので、過つことになります。いつも言ってますとおり「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」な世界ですから。

記事

 中国湖北省荊州市監利県で江蘇省南京から重慶に向けて運行していた観光クルーズ船「東方之星」が6月1日午後9時半ごろ、湖北省監利県の長江上で転覆した事故は、確認されるだけで430人以上の死者を出す大惨事となった。長江三峡クルーズは、私も一度行ってみたいと長年、思っていた憧れの旅であり、自分が乗っていても不思議ではない。夜の暗闇の中、突然転覆し長江の水にのまれた乗客に自分がいたかもしれないと想像すると、その恐怖やパニックはいかほどであったかと胸がつまった。衷心より哀悼をささげる。

 ところでこの事故が、まったくの不運な天候による避けられない事故であったかというと、そうではないようだ。船の違法改築問題や、悪天候を押しての運行の責任問題が徐々に明らかになり、人災である可能性も濃厚になってきた。また、遺族の不満が当局に向かうことを避けようとするあまりの過剰な報道規制や、遺族の行動規制も中国特有のものとして日本などでは報道されている。中国では、確かに「小康社会」(ほどほどに豊かな社会)が広がるにつれて旅行人口が急激に増えているが、実は観光旅行をめぐる環境やリスク管理意識自体は、それに追いついていない。中国旅行に憧れる日本人も多いと思うが、中国の観光業界の問題点、リスクなどをこの事故から少し考えてみたい。

お手頃価格の文明船、改修改造に原因?

 東方之星号がどのような船なのか、まず説明したい。重慶東方輪船公司に所属する長さ76.5メートル、幅11メートル、深さ3.1メートル、2200トンの船で、定員は534人。GPSシステム、衛星テレビ、電話、カラオケルームなども備わり、一、二、三等に船室がわかれている。クルーズ船としては、ハイクラスの文明船として交通当局から高い評価を受けているが、クルーズ費用は1000元から2500元と「お手頃」価格の中国中間層向けだ。1994年に建造され、2度の改修を経ているが、中国における旅客船の強制廃船年限30年にはまだ達していない。

 重慶東方輪船公司は1967年に設立された国有企業で、長江旅客船運営会社の中ではかつては国内最高のサービスとされ、中国五大長江クルーズ船、東方之珠、東方王子、東方皇宮、東方皇苑、そして事故にあった東方之星、すべてこの会社の船である。

交通当局によると1997年と2004年に改修改造工事が行われている。

 このような大惨事を引き起こしたのはこの改修工事のせいではないか、という指摘もある。この会社の関係者や船舶検査士が中国紙・新京報に明らかにしたところによれば、船の構造を変え、船体の長さ長くしたことにより、重心が不安定になったことが、転覆リスクを増加させたのではないかという。

またあるメディアによれば、東方之星は重慶東風船舶工業公司が設計、重慶涪陵川東造船工場が建造したことになっているのだが、重慶涪陵川東はこれを否認しており、東方輪船が自分のところで建造したことが今頃になって明らかになった。つまり、東方輪船が、川東造船から既製の船舶構造の提供を受けて、それを東方輪船が自分のところで勝手に内装工事をしたというのだ。この方法で東方輪船は4年の間に6隻のクルーズ船を建造したという。

 となると東方輪船は実際のところ、東方之星を含む6隻のクルーズ船について、正規の旅客船造船工場でいちから建造したのではなく、かなりの節約方式で建造したということになる。ちなみに当時の東方輪船公司傘下の造船工場はすでに三峡ダム工事によって水没している。聞くところによると1992年以前は、その工場で建造されていた船は全部、小型の貨物船で、大型旅客船をつくるような設備ではもともとなかったとか。

節約方式で建造した船の事故、続発

 ちなみに同じ方式でつくられた6隻の船のうち、東方之珠、東方王朝、東方王子はいずれも事故を起こしている。東方之珠は1997年に西陵峡で衝突事故、幸い死者はでなかったが、かなりの賠償責任を負った。東方王朝は船上火災事故を起し、その後2001年に交通当局から改修工事に対して不合格評価をされて廃船、東方王子は2000年に座礁事故を起したほか、08年4月には、他の船との衝突事故を起している。

 東方之星は21年間無事故であったが、1997年の改修工事では、内装高級化のため、窓を増やしたり、客室の観音開きの扉をとって、中央に向かう廊下に改造したりしたという。このため、見た目はよくなったが、船の構造が複雑になり、事故が起きたときに脱出しにくくなったのではないか、という指摘もある。また客室ベッドを固定性のものから木造の移動性のものにしたため、船が傾いたときベッドが床をすべって移動してしまい、船が転覆しやすくなったとか、脱出のためのドアをふさいだのでは、という指摘もあった。またこの改修時、船体の長さが11メートル長くなった。しかし、この時の安定性に関する計算結果は、船舶検査でも合格ラインを十分に超えていたという。

 2004年の改修は、主に船上で出る汚水の浄化設備の設置やトイレの改修工事だったという。長江の環境保護のために船上汚水を垂れ流すことが禁止されたための措置だった。だが、構造や船体の重さ、バランスが変わった可能性もある。ちなみに船を改造した造船工場は10年前に破産して、もうない。

 こうなると船舶検査当局の検査能力の信頼性が問題となってくる。一般に、検査当局は地元交通局の主管となる。東方輪船は、設立当初は万州区交通主管部門傘下の国有企業で、1992年に四川省東方輪船公司、97年に重慶市東方輪船公司と名前を変える。03年には万州区国有資産管理委員会の主管となる。東方輪船公司の党委員会書記および総経理ら幹部は全員、万州区交通局によって任命され、はっきり言ってしまえば、交通局の身内みたいなものである。なので、船舶検査も身内同士で行っているようなもので、果たして客観的でフェアであったかというのは、中国の地方でありがちな例をみれば、今ひとつ信用のおけないものであったといえるだろう。

 当地の海事局関係者の地元紙の説明によれば、東方之星の安全検査の頻度は非常に多く、二カ月に一度は安全検査が行われていたとも言う。普通は一年に一度の検査で済むはずだが、それだけ老朽化し、故障が多かったとか。この船のこれまでの安全検査では故障個所は累計287か所であったという。

老朽化×過剰運営=人災の影濃く

 また管理運営方面では、過剰運営が指摘されている。暴風雨の悪天候の夜間、なぜ航行を強行したのか。他の船は運行を見合わせた船もある。おそらくは、いわゆる儲け主義優先からクルーズの中止などによる返金対応や、次のクルーズ客の予約などが埋まっていたことから、スケジュールを変える判断ができなかったのだろう。この会社は、かつて従業員の養老保険支払いをごまかしていたことが、従業員の告発でばれ社会問題化していた。このため2004年ごろから経営が悪化、2013年の企業年報によれば、総資産7720万元、負債総額が1億6846万元、2014年の企業総資産は8975万元、負債総額が1億8468万元だった。

 こういったことから、事故は目下、中国国内報道でも人災の側面がクローズアップされている。生存者14人中、船長と機関長がともに助かっていることも、遺族の反感を買っている。船長は、突風を受けたために左旋回して風を流そうとしたが間に合わなかったと証言している。彼は22歳で初めて船舵を取って以来30年、操舵手としての経験をもつベテランで、2007年から東方之星船長を務めている。2011年には「万州区安全先進」の表彰を受けていた。だが、そんなベテラン船長がなぜ、暴風雨の夜間航行を強行したのか。新華社の取材に船長は、背から風を受けて北上できると思ったが、突然風が強くなり、船体をコントロールできなくなったと話していた。ちなみに船長の月収は4000元と、都会の大卒新入社員以下だ。

 目下、事故の責任は国有企業と地元政府の問題に集約される形で世論が誘導されるような印象でもある。特に現場が、すでに失脚している元重慶市党委書記の薄熙来が執政責任者であった土地でもあり、現政権としてもメディアとしても遠慮なく批判できるという面もある。

 だが、この企業だけが特別問題を抱えていた悪徳企業であるのかというと、そうとはいえない。むしろ、企業の儲け主義、あるいは正常な市場競争経済でないため、経営悪化の続く国有企業が倒産せずに人の命を預かる観光クルーズ船経営を継続できる現状、中国に根付いているリスク管理軽視、地元検査当局との癒着体質、すべて中国のあらゆる産業に共通する問題があるといえる。

 ただ、観光業はこの10年の間、急激に拡張を続け、観光客が急増していること、また観光客の主流がやや豊かな市民たちであり、それなりの学歴があり情報収集能力や発信力がある彼らの批判や権利主張は、他の産業の事故、たとえば炭鉱事故などの犠牲者たちと違って、世論に影響しやすいという点が、当局にとっては他の産業界よりもやっかいなのである。今まで、事故犠牲者の批判や責任追及の声を無視することに慣れていた関係当局の官僚たちは、近年の観光産業に関しては思い通りにできず、ときのその反応や必要とされる対応が、彼らの想像力を超える。

 根っこは、昨年大晦日に上海市のバンドのカウントダウンイベントで発生した群衆雪崩事故などとも、同じといえる。あのイベント事故も、主催者側の危機管理能力、想像力を超える見物客の多さと行動があり、また、上海市民や上海に来ている観光客に事故犠牲者がでることの影響力を軽く見ていた。

 こう考えてみると、中国では普通の観光客が晒されている安全問題は、他の食品安全や環境汚染同様、結構深刻である。もし、あなたが、中国で観光旅行、とくに中国人庶民が参加するようなツアーに参加したり、ゴールデンウィークや春節時期のイベントなど、殺人的な人出が予想される観光地に赴くのであれば、当然そのリスクは理解しておいた方がよいし、保険などそのリスクから身の安全を守るための措置を自分で講じておいた方がよいだろう。

情報と思想の自由の欠如が、次の悲劇へ

 長江事故犠牲者のため、初七日には追悼式が行われたが、当局対応への不満と怒りに燃えて現場に駆け付けている遺族1400人は、混乱を避けるために招かれなかった。また、身元確認のDNA鑑定結果を待つ遺族は、当局の管理下におかれ、外国メディアの取材も勝手に受けられない状況であることに、不満はさらに募っているという。国内メディアに対しても、新華社の共通原稿を使い、独自取材を禁じる通達が出ているとか。いまだ、この国は、犠牲者や悲しみに暮れる遺族の立場よりも、権力サイドの立場を守るために情報をコントロールすることを第一に考える。

 こういった大事故の根本原因について、私は官僚から企業、そして普通の人民に至るまでの想像力の欠如だと思っているが、想像力というのは十分な情報と思想の自由があって初めて広がるもの。今の中国で最も欠けているものだろう。だから、こういった事故はまた起こるのではないかと懸念している。

6/10日経ビジネスオンライン 森永輔『国交正常化50年だが、韓国の日本外しは不変 武貞秀士・拓殖大学大学院特任教授に聞いた』記事について

武貞氏はTVで見る限り韓国に対して思い入れがあり、客観的な目を曇らしているのではという思いがあります。詮方なきことかもしれません。韓国に長く住み、それが飯の種になっていれば。相手国の悪口を言えば情報が入って来なくなるので。小生の場合、中国に8年いましたけど別にそれが飯の種になった訳でもなく、逆にしょっちゅうぶつかり合っていました。それで裁判やら労働委員会に訴えられたわけですが。でも行った当初は骨を埋める覚悟でしたが、余りの人間の厭らしさに唖然として止めました。

朴槿惠大統領の今月の訪米は中止になりました。MERSのせいと言われていますが、本人がアメリカに病原菌を運ぶのをアメリカが嫌ったのか、朴槿惠大統領が訪米するとTHAADの配備を押し付けられるのを嫌がったのが原因かは分かりません。でもペンタゴンはこれで益々韓国に対する目が厳しくなるでしょう。「戦時作戦統制権」は期限なしで延長していますが、裏を返せば期限を定めなかったのはアメリカが何時でも韓国に返しますよという事でしょう。そうなれば北は一気に攻め込みます。油が足りないと言っても韓国から奪えば良いので。ソウルを火の海にすれば韓国人ですからすぐに戦意喪失するでしょう。

軍艦島の世界遺産登録にも韓国は異議を申し立てています。東京オリンピックの時もそうでした。日本のやる事為すことに反対してきます。ここまではっきりした態度を示せば間違いなく敵国です。福島の農水産物の輸入禁止措置はまだ解除していません。日本が韓国をWTOに訴えたことだけは立派。ただMERSなんだから韓国人の日本入国と日本人の韓国への出国は禁止すべき。それができないようでは「腰抜け」と言われても仕方がない。相手がやってきたことに唯唯諾諾と従うだけでは舐められます。反撃せねば。別に戦争しろと言ってるのではなく、合法的に制限は可能と言ってるだけです。日本の政治家も官僚も根性が足りません。

記事

6月22日、日韓国交正常化から50年を迎える。

だが、日韓関係は5つの大きな問題――竹島、教科書問題、慰安婦、靖国神社参拝、戦時強制徴用工補償--を抱えたまま、膠着状態を抜け出せずにいる。いずれの問題も解決の目途がたっていない。

改善の兆しらしきものは見えてきた。3月には、岸田文雄外相と尹炳世(ユン・ビョンセ)韓国外相が会談をした。5月30日には、中谷元防衛相と韓民求(ハン・ミング)国防相が4年ぶりの会談を行った。

日韓関係の現状と今後の展望について、武貞秀士・拓殖大学大学院特任教授に聞いた。(聞き手 森 永輔)

—日本と韓国が日韓基本条約を結び、国交正常化から50年が経ちました。この間の歴史を振り返ると、現在の日韓関係はどれくらい悪いものなのでしょう。

武貞:最悪ではないと思います。朴正煕(パク・チョンヒ)大統領(当時)の陸英修(ユク・ヨンス)夫人が1974年に死去する事件が起こりました。この時には、朴正煕大統領が日本との国交断絶を検討するよう指示を出したほど険悪な状態になりました。

 朴正煕氏は現職である朴槿恵(パク・クネ)大統領の父親、陸英修夫人は母親です。在日朝鮮人の文世光が朴正煕氏を暗殺しようとして、その流れ弾が陸英修夫人に当たったのです。使用された拳銃は大阪府警の派出所から盗まれたものでした。加えて文世光は、偽のパスポートを使い、日本人を装って韓国に渡っていました。このため、日本政府の対策が十分でないとして韓国が態度を硬化させました。

 1973年に金大中(キム・デジュン)拉致事件が起きた時も日韓関係は悪化しました。1998年に大統領になる金大中氏を、韓国の情報機関である中央情報部が日本国内で拉致して韓国に移送した事件です。韓国政府が日本の主権を侵害したわけですね。この時は日本側が事件を問題視しました。

 これらの事件が起きた時に比べれば、現在の状況はましと言えるかもしれません。しかし、一層深刻とも言えます。2つの事件が起きた時には、問題は目の前の1つに限定されていたし、解決策も見えていました。現在は竹島、教科書、慰安婦、靖国神社、戦時強制徴用工補償といった5点セットが同時に問題になっています。そして、いずれの問題も落とし所があるわけではありません。

—日韓関係は、李明博(イ・ミョンバク)前大統領が竹島に上陸したのを機に悪化し、朴槿恵政権が強硬の度合いを強めるにしたがって現在に至るように見えます。

武貞:韓国はいま、満を持して国家の戦略を立てて日本に真っ向勝負を挑んでいます。安倍首相が歴史認識を改めないかぎり首脳会談はない。日本と北朝鮮が接近することは許さない。戦時中に犯した罪を謝罪すべき。70年談話はこれまでと同じ表現を用いるべき。慰安婦には国家による補償をすべき。さらに、こうした主張を欧米諸国に広めています。

 朴槿恵大統領は計算づくで「日本外し」へと舵を切ったのだと思います。その計算に最も大きな影響を与えたのは中国の台頭でしょう。中国は韓国にとって最大の貿易相手国です。韓国を訪れる中国人観光客も多い。済州(チェジュ)島の開発には中国企業が多額の投資をしています。韓国にお金をもたらす国に目が向いたわけですね。韓国にとって中国は不可欠な存在、日本よりも優先すべき存在なのです。

 韓国は、韓国と中国が戦略的パートナーシップを結び、両国が中心となって、東アジアの信頼を醸成し発展していく環境を築こうと考えています。朴槿恵大統領は大統領選挙の期間中からこの方針を決めていました。

 日本人は、アジアの発展を日中韓の3カ国でやれば、もっといいじゃないかと考えるでしょう。しかし、それは中国が許しませんでした。中国は、「日本に苦労させられた者同士でことを進めよう」と韓国を説得したのです。日中韓のFTA(自由貿易協定)にしても、中韓を先行するよう韓国に求めました。その勢いは韓国の想像を超えるものでした。

 だから、日韓関係が悪化している一連の動きについて、韓国は中国に乗せられた側面もあると思います。

 朴槿恵大統領はこれまで述べた中国と連携して進める政策とは別に、2013年10月に「ユーラシア・イニシアチブ」と呼ぶ政策も発表しました。アジアから欧州へとつながるユーラシア大陸をひとつの共同体に育て上げるという構想です。この構想は「その東の果ては韓国」と定義しています。つまり、日本外しですね。

日本の沈没を期待

 中国の台頭に加えて、韓国が対日強硬政策を取る引き金となったのは東日本大震災です。これを機に韓国で日本沈没論が力を得ました。被災地の復興には長い時間がかかる。日本経済は長期にわたって停滞するだろうと認識したからです。

 「沈没させたい」という期待もあったでしょう。韓国は「韓国の勝ち、日本の負け」ということをあらゆる機会を通じて確認せずにはいられないトラウマを背負っているからです。

 韓国は日本統治時代を通じて、日本に一度も勝つことができませんでした。韓国の1948年憲法は前文で「三・一運動で建立された大韓民国臨時政府の法統」を継承しているとうたっています。三・一運動はささやかな反日デモを計画したのですが、総督府によって規制されて不発に終わりました。その後、日本の統治から脱することができたのは第二次世界大戦終了によってです。つまり、韓国は自らの力で日本の統治を終えたのではありませんでした。これがトラウマになっているのです。

 一方、北朝鮮の1948年憲法は、抗日パルチザン闘争の経験をもとに、日本に勝ったという経験を強調しています。韓国は「日本に勝った」という爽快感がないまま建国しました。

日本叩きをしているうちに韓国自身が孤立する危機

—最近、日韓の政府レベルの交流が進み始めました。3月には岸田文雄外相と尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が会談しました。5月30日には、中谷元防衛相と韓民求(ハン・ミング)国防相が4年ぶりの会談を行っています。一連の会談は日韓関係が良好な方向に向かいつつあることを示しているのでしょうか。

武貞:そうは思いません。朴槿恵大統領の訪米を6月に控えているので、日本との関係改善を進めながら、米韓首脳会談の環境整備をしている印象を受けます。何もしないまま米国を訪れれば、米国が不満に思うことは必至です。

 韓国政府の最近の対話姿勢の背景には、韓国の国内世論の影響もあるでしょう。韓国ではメディアも学者も「韓国が日本叩きをしている間に、韓国そのものが孤立してしまった」という認識を示し始めました。

 こうした見方が浮上し始めた理由の1つは、4月に行われた安倍晋三首相と習近平国家主席との首脳会談です。韓国は直前まで、この首脳会談は実現しないと読んでいたので、さぞかし驚いたことと思います。習近平国家主席の表情が、2014年11月に行われた前回の日中首脳会談に比べて和らいだものになっていたこともショックだったでしょう。

 この5月に、自民党の二階俊博総務会長が全国旅行業協会の関係者など3000人を引き連れて訪中し、歓迎を受けました。日中の関係改善を目にして、韓国はまた驚きました。

 中国のお先棒を担いで日本叩きをしてきたのに、中国に梯子をはずされるのではないかと危機感を覚えるようになったのです。中国が推進するアジアインフラ投資銀行(AIIB)も、韓国は当初、中国と韓国、インドが主導するものと理解して参加を決めていました。だから日本に副総裁の座を提示していたとのニュースには唖然としたことと思います。

—韓国の世論が変化したことには、安倍晋三首相の訪米も影響したのでしょうか。

武貞:もちろんです。安倍首相の米連邦議会での演説について、韓国政府と在米韓国人は一体となって、あの手この手を使って阻止しようとしました。ですから韓国は、米議会が安倍首相に演説させることはないだろうと踏んでいました。しかし、結果は違った。

—韓国は安倍首相の演説をどのように評価しているのでしょう。

武貞:多くの人が「安倍首相は米国でひんしゅくを買った」「良識のある米国人は安倍演説を評価しなかった」と捉え、マスコミはそのように報道しています。

安倍首相が訪米で得た成果を相殺できるか

—朴槿恵大統領の訪米は何がテーマになるのでしょうか。

武貞:米国が韓国に対して、米韓関係と韓中関係のどちらを重視するのかを確認する場になると思います。韓国としては、経済面では中国が大事です。一方、軍事面は米国を頼りたい。米国の機嫌を損ねる事態は避けたいところでしょう。けれども、これを両立させるのは困難です。

 具体的な議題としては、まず有事の際の作戦統制権の移管問題があります。米国と韓国はこれを在韓米軍から韓国軍に移管することを決めました。しかし、韓国の都合で延期されています。韓国は、米軍が作戦統制権を持っている方が北朝鮮の核ミサイルなどに対する抑止力が働くと考えたのでしょう。米国は、一度決めたことなのだから実行するよう韓国に求めています。

 最も大きい議題は高高度防衛ミサイル(THAAD)、いわゆるミサイル防衛システムの配備に関する問題です。米国は韓国に、配備に同意することを求めるでしょう。しかし韓国は明言することは勘弁してほしいと訴えるのではないでしょうか。配備を受け入れれば、中国と北朝鮮から直接強く責められることになるからです。

—朴槿恵大統領はたいへんな立場ですね。さぞかし米国に行きたくないことでしょう。

武貞:でも行く必要があるでしょう。朴槿恵大統領は、安倍首相が米国で演じたパフォーマンスの効果をオフセットしたいところです。米国に大事にされるところを韓国民に見せつけ、韓国が孤立していないことを示したい。

—米国側の対応によっては、孤立していることをかえって浮き立たせることになりませんか。

武貞:その可能性は否定できません。しかし、米国に行かなければ、その方が孤立を一層際立たせることになります。

日韓関係を改善するには日本が強くなるしかない

—最悪とは言えないまでも深刻化している日韓関係を改善するためには、どうすればよいのでしょうか。

武貞:身も蓋もない言い方になりますが、短期間ではどうしようもありません。先ほど申し上げたように、日韓の間で持ち上がっている問題はいずれも構造的なもので、早急に解決できる性質のものではないのです。相互信頼と未来志向の日韓関係を築くためには、時間をかけて、これから挙げる政策に取り組んでいくしかありません。

 1つは、日本社会と日本人をよく知る韓国の人材を増やすことです。このためには交換留学などの交流を拡大していくことが大事ですね。日本で学ぶ韓国からの留学生はどこの大学でも激減しています。ウォン高・円安であるにもかかわらずです。日本を訪れる韓国人観光客の数は増えていますが、短期間の観光旅行で日本社会を理解することは難しい。

 金大中大統領の時代に日韓関係は大きく改善しました。これは金大中大統領が日本社会と日本人を熟知していたからです。今の日韓関係からは想像しがたいことですが、金大中大統領が1998年に来日した際に公表した日韓共同宣言には「両国間の安保対話及び種々のレベルにおける防衛交流を歓迎し、これを一層強化していくこととした。また、両首脳は、両国それぞれが米国との安全保障体制を堅持するとともに、アジア太平洋地域の平和と安定のための多国間の対話努力を一層強化していくことの重要性につき意見の一致をみた」とあります。これを機会に日韓の防衛分野の交流が進みました。

 2つ目の施策は日本の防衛力を高めることです。日本は非常に抑制的な防衛政策を取ってきました。非核三原則、武器輸出三原則等、防衛費のGNP(国民総生産)比1%枠。憲法9条はその最たるものです。

 こうした抑制的な防衛政策が、日本の軍事力は怖くないという楽観を韓国に与えてきました。これを改める必要があります。空対地ミサイル、弾道ミサイル、巡航ミサイル、作戦遂行に必要な数の空中給油機を装備するのがよいでしょう。いずれも、既に韓国が装備しているものです。日本も韓国と同じ発想で防衛を考えていることを示すわけです。こうすることで、韓国が日本とは仲良くしないといけないことを理解してもらう。

 日本が防衛力を高めれば韓国は反発するでしょう。しかし、自主規制しても反発されてきたのが日本の戦後史です。ならば、やることをやって反発された方がよい。

 第3は、日本の国際的な地位を高めることです。これにはいくつかの手段が考えられます。まず、国際連合の安全保障理事会で常任理事国になること。それから、国際的な金融体制を日本が主導することです。例えば、アジア開発銀行の本部を霞ヶ関に持ってくる。

—日本が力を付け、「沈没」しない国であることを見せる必要があるわけですね。そのためには経済力を復活させることが欠かせません。

武貞:おっしゃるとおりだと思います。

進歩派が政権に就いても大きく変わることはない

—日韓関係が悪化した背景には朴槿恵大統領の判断が大きいという話を伺いました。2017年の大統領選挙で政権が交代すると、日韓関係が改善する可能性はあるのでしょうか。保守政権が続いているので、例えば、韓国進歩派が政権を取ったらどうなるでしょう。

武貞:大きな変化は考えづらいでしょう。竹島、教科書、慰安婦、靖国神社、戦時強制徴用工補償を問題視する姿勢は、進歩派も、朴槿恵大統領と寸分違いません。むしろイデオロギー的な日本批判を強めることがあるでしょう。

 ただ、進歩派は親北朝鮮が多く、この点は朴槿恵政権と異なります。日本が北朝鮮との対話を継続し、関係が改善できるとすれば、韓国進歩派の政権と認識を共有できる部分があるかもしれません。

—進歩派の大統領候補になり得る人物で、親中派はいるのですか。

武貞:現在、名前が挙がっている文在寅(ムン・ジェイン)氏や安哲秀(アン・チョルス)氏、国連事務総長を務めている潘基文(パン・ギムン)氏はいずれも特に親中というわけではありません。朴槿恵大統領は個人として親中派です。しかし、いまの経済、政治、安保分野の動きを見ると、韓国の次の政権下でも中韓関係をさらに緊密化する以外の選択肢はないでしょう。

6/8日経ビジネスオンライン 白壁達久『天安門事件から26年後の香港の現実 中国化の波が迫る中で進む悲しい民主派の分裂』記事について

今の香港の姿を台湾の人達は良く見ていた方が良いでしょう。去年3、4月の台湾での太陽花学運では王金平立法院長の斡旋で中国とのサービス貿易協定にストップをかけることができました。外省人の馬総統が焦って中国との統一の足がかりとしようとしましたが、結局11月の統一地方選で国民党は惨敗を喫しました。来年1月の総統選は蔡英文民進党党首で決まりです。今回の訪米でも前回の総統選前の取り扱いと違い、アメリカは歓待しました。それはそうでしょう。総統になるのが確実な上に、中国がアメリカの覇権に挑戦しようとしているのですから。

それに引き換え中国と陸続き、かつ97年に法的にも中国の一部となった香港の運命は悲惨です。行政長官の民主選挙の約束も共産党はあっさり反故にしてしまいました。昨年9月の雨傘革命もポシャリ、本年6月4日の天安門事件追悼集会の参加者も少なくなったという事は、中国共産党の意思が香港内部にどんどん浸透してきているという事です。香港は今までは自由世界との経済的な窓口でしたが、上海や深圳が成長し、香港の地位はぐっと下がっています。共産党は強気で香港に臨めます。

民主派の分裂と言いますが多様な意見の存在は民主主義の根幹をなすものです。ただ、共産党という大なる敵を前にして大同団結しないといけないのでは。本記事を読んで、意見の違いというよりは世代間の人生観の違いかと感じました。年寄りは老い先長くないので「長いものに巻かれよ」式で、若い人は「将来の香港の基本的人権の一つである自由権」が確保されるかどうか心配という所。日本でも、南シナ海の中国の内海化を見ても年寄りは考え方が変わらず(新聞・TVから情報入手しているためと思われる)、集団的自衛権に反対している人が多い。若い人はいろんな媒体から情報入手できるので、年寄りよりは自分の頭で判断できるのではないかと思います。

共産党というか左翼の人間は、どの国であれ、平気で嘘がつけれる人達です。また虐殺が得意です。毛沢東、スターリン、ヒットラー(国家社会主義ドイツ労働者党)が御三家です。そこにポルポトも加わります。左翼の言うことは疑ってかかった方が良いです。

記事

「今年は明らかに人が少ない…昨年はもちろん、2年前に参加した時でさえもっと混んでいて、身動きもできないほどだったのに…」

 6月4日夜、香港島で最大の公園であるヴィクトリアパークにやってきた香港のある男子大学生(21歳)は、困惑気味にこう語った。

(6月4日に香港島のヴィクトリアパークで開かれた天安門事件の追悼集会。13万5000人が参加したが、昨年より25%も減少した。)

( 1人で参加する若い人も少なくなかった)

香港では毎年、6月4日の午後8時からこのヴィクトリアパークで、天安門事件の犠牲者を追悼する大規模集会が開かれる。参加者は配られたろうそくに火をともし、みんなで歌を歌い、黙祷を捧げるなどして天安門事件で命を落とした学生たちの魂を鎮めると同時に中国本土の民主化を願う。

 ただ、天安門事件から26周年となった今年6月4日の香港の追悼集会は、恐れていた通りの展開となってしまった。

参加者が前年比で25%も減少

 追悼集会を主催する香港市民支援愛国民主運動連合会の発表によると、今年の参加者は13万5000人と、昨年の18万人から大幅に減少した。昨年は天安門事件から25周年という節目の年でもあり、参加者数が過去最高を記録したのは自然なことで、その意味で今年の参加者数が減る可能性はあったとも言える。

とはいえ、香港市民の間で、民主化に対する関心が薄れているのかというと、そうではない。2017年以降の香港政府のトップである行政長官を選ぶ選挙の仕組みを巡って、昨年9月末から大学生が中心となって大規模なデモを繰り広げたことをご記憶の読者も多いだろう。

昨年9月にデモが起きたのは、同年8月末に中国の全国人民代表会議(全人代)の常務委員会が、2017年の行政長官選挙に立候補するには、「指名委員会の半数以上の委員の推薦が必要」との条件を盛り込んだからだった。指名委員会は中国共産党の意を受けたメンバーが多数を占めているため、指名委員会の推薦が必要となると、民主主義を求める人物は事実上、排除され立候補できなくなることを意味する。

そのため、一国二制度の下で自治権が認められていたはずと考えていた香港市民の間では、この選挙制度に対する失望が広がった。なかでも、大学生や高校生を中心とした若者たちが強く反発、大学の講義や学校の授業をボイコットし始め、さらに大規模なデモをしたり香港の経済の中心地である中環(セントラル)の一角を占拠したりと、3カ月にもわたって抗議活動を展開したのだった。

 そうした動きを踏まえれば、中国の民主化を求める今年の追悼集会には、昨年の25周年にも増して人が集まってもおかしくはなかったはずだ。だが、今年の追悼集会への参加者数は昨年に比べ25%も減り、2008年以来の少なさとなったという。

民主派が分裂、世代間で認識のギャップも

悼会への参加者数が減った背景には、香港における民主化を求める運動が、ここへ来て変質してきていることが大きい。追悼会場で参加者がなぜ減ったのかを聞くと、みな同じ答えを口にした。

 「分裂です」

 香港の民主化運動が、その求める民主化の内容によって分裂してきているのだという。まず従来から香港民主派を自称してきた一派の主張は、「中国本土の民主化を願い、進めること」だった。若かった頃、大陸で何らかの民主化運動に加わり、そのために政府から厳しい弾圧を受けるなどしたことから、当時はまだ英国統治下にあって自由が保障されていた香港へと逃れてきた人が少なくない。今や年配になったとはいえ、そうした香港人の多くは本土の民主化を心から願っている。だからこそ、中国における民主化を求めて1989年に立ち上がったものの、中国政府による武力弾圧で犠牲になった天安門の学生たちを今も追悼したいとの思いから毎年、6月4日に集っている。

 ところが、学生を中心とした若者たちが求める民主化の主張は異なる。昨年のデモで中核的存在となった香港大学など複数の大学の学生会は今年、天安門事件の追悼集会への不参加を事前に表明していた。中国本土の民主化ではなく、自分たちが住むこの香港の民主化の維持、発展にこそ集中すべきだ、というのが彼らの言い分だ。

 香港の民主化を重視する一派の中には、さらに香港そのものの独立を目指すべきだとして、抗議活動を展開している強硬派グループも誕生している。

 民主化運動が、その求める内容、主張によって分かれていく一方、追悼集会に参加した人たちに話を聞くと、彼らの間にも様々な意見、見方があることがうかがえる。

 友人と参加した18歳のある女子大生は、「(中国本土の民主化を求める)この追悼集会の主旨すべてに賛成しているわけではない。(行政長官の)選挙制度改革について、真の普通選挙の実現をもっと訴えるべきだと思う」と香港の民主化の必要性を主張する。一方、ある53歳の会社経営者の男性は「大陸の民主化こそが私の願いだ」と訴える。

民主派の弱体化は中国政府の思うつぼ

 このような状況に対し、ある中年の会社員男性は「この集会は、天安門事件で犠牲になった人たちを追悼する儀式のはずだ。それが最近、香港の民主化運動をまとめて論じる人が増えてきた。おかしい。本来の姿に戻すべきだ」と不満を漏らす。

年配の世代は自らの過去を振り返って中国本土の民主化を願い、若い世代は自分たちが暮らしていく今後の香港の民主化を願う。今後の行政長官選挙の在り方が明らかになった昨年以降、こうした世代間ギャップが、これまでひとくくりに論じられていた民主派を分裂させている。

 背景には年々、香港への圧力を強めつつある北京政府の動きに対する不安が高まっていることがあるのは間違いない。それを間近に感じているのは若年層だ。2012年、中国共産党は香港政府に対して、中国国民としての愛国心を育む「愛国教育」を導入するよう求めた。教育という仮面をかぶった洗脳には、教師や保護者だけでなく中高生も強く反発、香港の街中で住民も巻き込んだデモを起こし、愛国教育義務化の撤廃に持ち込んだ。

 自分たちがこれからの人生を送る香港の自由が侵されるのであれば、将来に不安を感じるのは当然だろう。しかし、年配者にとっては「若者の抱く将来への不安」を我がことのように理解するのは難しいかもしれない。

 本来、そうした逆風の時にある時こそ市民の一致団結が求められる。それだけに、筆者はこうしたこの世代間ギャップによる民主派の分裂という展開を恐れていた。

民主化を求める運動が分裂すればするほど、1つの抵抗勢力としては弱体化する。それは中国政府にとっては思うつぼだろう。香港市民が懸念する急速な中国化。民主派の分裂は、自らこの流れを早めることになるからだ。