中国は人民の生命を虫けら同様に考えているというベースを理解しておかないと。韓国も一緒です。日本人とは発想の仕方が違うのですから、彼らと付き合うことが本当に良いことかどうか真剣に考えるべきです。小生が長江下りをしたのは97年の10月ですからハッキリ外国人向けの船と中国人向けの船と分かれていました。中国人向けの船は過積載が当たり前。前にも書きましたが外国人向けの船であっても食事の後のゴミは黒いビニール袋に詰めて川に沈めていました。環境保護なんて考えてないという事です。
思想の自由の前に、「何をして良いか、何をしてはいけないか」の道徳の問題がある気がします。韓国同様責任者のトップが我先に逃げる文化があるとしたら日本人の育ってきた文化とは余りに異質です。孔孟の生まれた国と言っても誰も彼らの言い分をまともとに聞かず、社会で実践することがありませんでした。日本人は漢詩や論語の世界でしか中国を見ませんので、過つことになります。いつも言ってますとおり「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」な世界ですから。
記事
中国湖北省荊州市監利県で江蘇省南京から重慶に向けて運行していた観光クルーズ船「東方之星」が6月1日午後9時半ごろ、湖北省監利県の長江上で転覆した事故は、確認されるだけで430人以上の死者を出す大惨事となった。長江三峡クルーズは、私も一度行ってみたいと長年、思っていた憧れの旅であり、自分が乗っていても不思議ではない。夜の暗闇の中、突然転覆し長江の水にのまれた乗客に自分がいたかもしれないと想像すると、その恐怖やパニックはいかほどであったかと胸がつまった。衷心より哀悼をささげる。
ところでこの事故が、まったくの不運な天候による避けられない事故であったかというと、そうではないようだ。船の違法改築問題や、悪天候を押しての運行の責任問題が徐々に明らかになり、人災である可能性も濃厚になってきた。また、遺族の不満が当局に向かうことを避けようとするあまりの過剰な報道規制や、遺族の行動規制も中国特有のものとして日本などでは報道されている。中国では、確かに「小康社会」(ほどほどに豊かな社会)が広がるにつれて旅行人口が急激に増えているが、実は観光旅行をめぐる環境やリスク管理意識自体は、それに追いついていない。中国旅行に憧れる日本人も多いと思うが、中国の観光業界の問題点、リスクなどをこの事故から少し考えてみたい。
お手頃価格の文明船、改修改造に原因?
東方之星号がどのような船なのか、まず説明したい。重慶東方輪船公司に所属する長さ76.5メートル、幅11メートル、深さ3.1メートル、2200トンの船で、定員は534人。GPSシステム、衛星テレビ、電話、カラオケルームなども備わり、一、二、三等に船室がわかれている。クルーズ船としては、ハイクラスの文明船として交通当局から高い評価を受けているが、クルーズ費用は1000元から2500元と「お手頃」価格の中国中間層向けだ。1994年に建造され、2度の改修を経ているが、中国における旅客船の強制廃船年限30年にはまだ達していない。
重慶東方輪船公司は1967年に設立された国有企業で、長江旅客船運営会社の中ではかつては国内最高のサービスとされ、中国五大長江クルーズ船、東方之珠、東方王子、東方皇宮、東方皇苑、そして事故にあった東方之星、すべてこの会社の船である。
交通当局によると1997年と2004年に改修改造工事が行われている。
このような大惨事を引き起こしたのはこの改修工事のせいではないか、という指摘もある。この会社の関係者や船舶検査士が中国紙・新京報に明らかにしたところによれば、船の構造を変え、船体の長さ長くしたことにより、重心が不安定になったことが、転覆リスクを増加させたのではないかという。
またあるメディアによれば、東方之星は重慶東風船舶工業公司が設計、重慶涪陵川東造船工場が建造したことになっているのだが、重慶涪陵川東はこれを否認しており、東方輪船が自分のところで建造したことが今頃になって明らかになった。つまり、東方輪船が、川東造船から既製の船舶構造の提供を受けて、それを東方輪船が自分のところで勝手に内装工事をしたというのだ。この方法で東方輪船は4年の間に6隻のクルーズ船を建造したという。
となると東方輪船は実際のところ、東方之星を含む6隻のクルーズ船について、正規の旅客船造船工場でいちから建造したのではなく、かなりの節約方式で建造したということになる。ちなみに当時の東方輪船公司傘下の造船工場はすでに三峡ダム工事によって水没している。聞くところによると1992年以前は、その工場で建造されていた船は全部、小型の貨物船で、大型旅客船をつくるような設備ではもともとなかったとか。
節約方式で建造した船の事故、続発
ちなみに同じ方式でつくられた6隻の船のうち、東方之珠、東方王朝、東方王子はいずれも事故を起こしている。東方之珠は1997年に西陵峡で衝突事故、幸い死者はでなかったが、かなりの賠償責任を負った。東方王朝は船上火災事故を起し、その後2001年に交通当局から改修工事に対して不合格評価をされて廃船、東方王子は2000年に座礁事故を起したほか、08年4月には、他の船との衝突事故を起している。
東方之星は21年間無事故であったが、1997年の改修工事では、内装高級化のため、窓を増やしたり、客室の観音開きの扉をとって、中央に向かう廊下に改造したりしたという。このため、見た目はよくなったが、船の構造が複雑になり、事故が起きたときに脱出しにくくなったのではないか、という指摘もある。また客室ベッドを固定性のものから木造の移動性のものにしたため、船が傾いたときベッドが床をすべって移動してしまい、船が転覆しやすくなったとか、脱出のためのドアをふさいだのでは、という指摘もあった。またこの改修時、船体の長さが11メートル長くなった。しかし、この時の安定性に関する計算結果は、船舶検査でも合格ラインを十分に超えていたという。
2004年の改修は、主に船上で出る汚水の浄化設備の設置やトイレの改修工事だったという。長江の環境保護のために船上汚水を垂れ流すことが禁止されたための措置だった。だが、構造や船体の重さ、バランスが変わった可能性もある。ちなみに船を改造した造船工場は10年前に破産して、もうない。
こうなると船舶検査当局の検査能力の信頼性が問題となってくる。一般に、検査当局は地元交通局の主管となる。東方輪船は、設立当初は万州区交通主管部門傘下の国有企業で、1992年に四川省東方輪船公司、97年に重慶市東方輪船公司と名前を変える。03年には万州区国有資産管理委員会の主管となる。東方輪船公司の党委員会書記および総経理ら幹部は全員、万州区交通局によって任命され、はっきり言ってしまえば、交通局の身内みたいなものである。なので、船舶検査も身内同士で行っているようなもので、果たして客観的でフェアであったかというのは、中国の地方でありがちな例をみれば、今ひとつ信用のおけないものであったといえるだろう。
当地の海事局関係者の地元紙の説明によれば、東方之星の安全検査の頻度は非常に多く、二カ月に一度は安全検査が行われていたとも言う。普通は一年に一度の検査で済むはずだが、それだけ老朽化し、故障が多かったとか。この船のこれまでの安全検査では故障個所は累計287か所であったという。
老朽化×過剰運営=人災の影濃く
また管理運営方面では、過剰運営が指摘されている。暴風雨の悪天候の夜間、なぜ航行を強行したのか。他の船は運行を見合わせた船もある。おそらくは、いわゆる儲け主義優先からクルーズの中止などによる返金対応や、次のクルーズ客の予約などが埋まっていたことから、スケジュールを変える判断ができなかったのだろう。この会社は、かつて従業員の養老保険支払いをごまかしていたことが、従業員の告発でばれ社会問題化していた。このため2004年ごろから経営が悪化、2013年の企業年報によれば、総資産7720万元、負債総額が1億6846万元、2014年の企業総資産は8975万元、負債総額が1億8468万元だった。
こういったことから、事故は目下、中国国内報道でも人災の側面がクローズアップされている。生存者14人中、船長と機関長がともに助かっていることも、遺族の反感を買っている。船長は、突風を受けたために左旋回して風を流そうとしたが間に合わなかったと証言している。彼は22歳で初めて船舵を取って以来30年、操舵手としての経験をもつベテランで、2007年から東方之星船長を務めている。2011年には「万州区安全先進」の表彰を受けていた。だが、そんなベテラン船長がなぜ、暴風雨の夜間航行を強行したのか。新華社の取材に船長は、背から風を受けて北上できると思ったが、突然風が強くなり、船体をコントロールできなくなったと話していた。ちなみに船長の月収は4000元と、都会の大卒新入社員以下だ。
目下、事故の責任は国有企業と地元政府の問題に集約される形で世論が誘導されるような印象でもある。特に現場が、すでに失脚している元重慶市党委書記の薄熙来が執政責任者であった土地でもあり、現政権としてもメディアとしても遠慮なく批判できるという面もある。
だが、この企業だけが特別問題を抱えていた悪徳企業であるのかというと、そうとはいえない。むしろ、企業の儲け主義、あるいは正常な市場競争経済でないため、経営悪化の続く国有企業が倒産せずに人の命を預かる観光クルーズ船経営を継続できる現状、中国に根付いているリスク管理軽視、地元検査当局との癒着体質、すべて中国のあらゆる産業に共通する問題があるといえる。
ただ、観光業はこの10年の間、急激に拡張を続け、観光客が急増していること、また観光客の主流がやや豊かな市民たちであり、それなりの学歴があり情報収集能力や発信力がある彼らの批判や権利主張は、他の産業の事故、たとえば炭鉱事故などの犠牲者たちと違って、世論に影響しやすいという点が、当局にとっては他の産業界よりもやっかいなのである。今まで、事故犠牲者の批判や責任追及の声を無視することに慣れていた関係当局の官僚たちは、近年の観光産業に関しては思い通りにできず、ときのその反応や必要とされる対応が、彼らの想像力を超える。
根っこは、昨年大晦日に上海市のバンドのカウントダウンイベントで発生した群衆雪崩事故などとも、同じといえる。あのイベント事故も、主催者側の危機管理能力、想像力を超える見物客の多さと行動があり、また、上海市民や上海に来ている観光客に事故犠牲者がでることの影響力を軽く見ていた。
こう考えてみると、中国では普通の観光客が晒されている安全問題は、他の食品安全や環境汚染同様、結構深刻である。もし、あなたが、中国で観光旅行、とくに中国人庶民が参加するようなツアーに参加したり、ゴールデンウィークや春節時期のイベントなど、殺人的な人出が予想される観光地に赴くのであれば、当然そのリスクは理解しておいた方がよいし、保険などそのリスクから身の安全を守るための措置を自分で講じておいた方がよいだろう。
情報と思想の自由の欠如が、次の悲劇へ
長江事故犠牲者のため、初七日には追悼式が行われたが、当局対応への不満と怒りに燃えて現場に駆け付けている遺族1400人は、混乱を避けるために招かれなかった。また、身元確認のDNA鑑定結果を待つ遺族は、当局の管理下におかれ、外国メディアの取材も勝手に受けられない状況であることに、不満はさらに募っているという。国内メディアに対しても、新華社の共通原稿を使い、独自取材を禁じる通達が出ているとか。いまだ、この国は、犠牲者や悲しみに暮れる遺族の立場よりも、権力サイドの立場を守るために情報をコントロールすることを第一に考える。
こういった大事故の根本原因について、私は官僚から企業、そして普通の人民に至るまでの想像力の欠如だと思っているが、想像力というのは十分な情報と思想の自由があって初めて広がるもの。今の中国で最も欠けているものだろう。だから、こういった事故はまた起こるのではないかと懸念している。