昨日に続きAIIBについての話です。日経でも乗り遅れのイメージを振りまいている気がします。暴力団が運営する国家に丁半博打に参加せよと迫られても普通の感覚を持っていたら参加しないでしょう。日経は中国進出を煽った罪があるのにまた同じように政府に出資させようと誘導している気がします。福島女史も中国で勤務していたので如何に中国は人権抑圧、騙す人間が多いかを皮膚感覚で分かっていると思います。産経以外の記者は伊藤正さん(共同→産経へ移籍)を除いて骨がなく、中国を批判してVISA取消にあうと中国語を活かす場所がなくなり出世に響くと言う理由で見たことも書かずにいます。勿論日中記者交換協定の縛りもありますが。でも福島女史のように産経を辞めてフリーになれば良いのにと思います。他人への批判は声を大にしてしますが、自分に優しく、自分が生きる術として「長いものに巻かれる」卑怯な輩が多いという事です。
AIIBは陳志武氏の言うように中国経済の債務リスクが大きいと思います。それでも50ケ国ほど参加表明した国は何を調べているのでしょうね。借金で何でも造れるなら皆そうするでしょう。返す気がない人たちだから督促しても後は知らん振りするのは必定です。それといざとなると軍事力行使を仄めかすでしょう。暴力団の真骨頂です。
米国の衰退ぶりが世界に知られるようになりました。選んだのはアメリカ国民です。オバマを操って、アメリカを弱体化し、世界に戦乱を導き、戦争で儲けようと考えている人がいるのかもしれません。日本は国民全体がもっと危機感を持つ必要があります。
記事
中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)にしてもシルクロード基金にしても、すでに中国経済の専門家を含むエコノミストの方々が、その本質をいろいろと議論されている。だがAIIBについては日本が参加しないことを、さも判断ミスであるように批判する報道も多かった。確かに、日本企業がアジアインフラ建設におけるチャンスを逃すことになるのでは、という懸念もあるのだろうが、こればかりは、博打と同じで、大儲けになるか大損をこくかは、賽の目を見なければ分かるまい。
私は胴元が胴元なので、日本は慎重姿勢を維持してよかったのだと思っている。GDPやPPP(購買力平価)に応じた出資を求められるとしたら百数十億ドルくらいは拠出せねばならないわけだから、ちょっと運だめし、という気軽な気持ちの参加ではすまない。そもそも中国は日本が主導するアジア開発銀行(ADB)の最大融資先で今なお最大の融資残高を保有しているのだから、AIIBに参加せずともADBを通じて協力体制を築こうと思えば築ける。それよりもAIIBやシルクロード基金や、その先にある「一帯一路」政策が狙う地政学的意味をもう一度整理しておいた方がいいだろう。
バーバリアンハンドラーが英国の参加をつかむ
今さら感はあるのだが、AIIBとシルクロード基金の概略について紹介しておく。
AIIBは2013年10月2日のAPECの席上で、習近平国家主席が提唱。同月24日に中国、インド、シンガポールなど21カ国によって設立が決定された。これは本部が北京に置かれ、初代総裁も中国人で、中国が主導権を握る中国のための投資銀行で、米国が主導する世界銀行や日本が主導的役割を果たすADBに対抗し、既存の国際金融秩序に挑戦する試みだとされた。
だが、この設立準備の臨時事務局長に選ばれた金立群は、元財政部次官、世界銀行副執行理事、元ADB副総裁、中国国際金融公司(CICC)などを歴任した中国一、二の金融エリートで、しかも柔和で洗練された容姿とは裏腹に、「バーバリアンハンドラー」の異名もある交渉上手。2015年3月12日には、国際金融センター・英国に米国の反対を押し切って参加を決めさせ、これを皮切りにフランス、ドイツ、イタリア、ルクセンブルク、スイス、オーストリア、トルコ、韓国、ブラジル、ロシア、オランダ、グルジア、デンマーク、オーストラリアなどが参加を表明、参加国は40カ国を超えるに至った。
もちろん、日米にも参加が呼びかけられているが、この原稿執筆時点では、日本は参加に慎重な態度を崩していない。計画では中国の出資が500億ドル、他はGDPかPPPに応じた出資比率で資金を拠出し、およそ1000億ドル規模の法定資本金で2015年末から運用が開始される。本部は北京に設置され、初代総裁は金立群が就任する予定。本部に常駐理事は置かず、総裁と本部が融資先などの最終決定を任されるらしい。
表向きの設立趣旨は、2020年までに需要が見込まれるアジアのインフラ投資額が毎年7300億ドル(ADB推計)にのぼり、既存の世銀やADBだけでは到底資金不足であるという背景を踏まえ、すでに世界第3位の対外投資国である中国の主導で世銀やADBを補完する形の投資銀行を設立し、アジアの発展と世界経済の活性化に寄与しよう、ということである。もっとも世銀やADBのように貧困救済といった人道的な理念は掲げておらず、はっきりと「中国の対外進出大戦略」の一環としての位置づけを公式に打ち出している。
要するに、中国の過剰生産に陥っている基礎インフラ設備製造方面、つまり橋梁、トンネル、鉄道などのプロジェクト建設関連企業が国内で行き詰まっているので、各国の資金を借りて国際化を後押ししようという話である。国際金融機関なのだから、その融資を受けたプロジェクトは当然公平な国際入札が行われると誰もが思っているようだが、実際、中国で行われている競争入札が果たして本当にフェアであったかを考えれば推してはかるべしだろう。
シルクロード基金とセットで「一帯一路」推進
これはAIIBに続いて設立されたシルクロード基金とセットで考えると分かりやすい。シルクロード基金は2014年11月8日にAIIBを補完する形で設立された基金で、中国は400億元を出資。アジア域内の投資者の積極参与が呼びかけられた。
この基金の目的は、「一帯一路」沿線国の基礎インフラ、資源開発、産業協力に関するプロジェクトへの融資である。シルクロード基金責任有限公司はすでに登記され、会長には人民銀行総裁助理の金琦が就任している。これは設立時、外国から中国版マーシャルプランと呼ばれたが、人民銀行総裁の周小川はこれをプライベートエクイティファンドだと説明した。
全人代でも博鰲フォーラムでも強く打ち出された中国の外交経済戦略構想「一帯一路」とは、北京から北西部を通りカザフスタン、ウズベキスタン、イラン、ギリシャ、トルコ経由でロシアやヨーロッパにまで繋がるシルクロード経済帯と、南シナ海からインド洋を抜けてケニア、アフリカ大陸に至る海洋ルートの現代版シルクロードをめぐる沿線国との経済共同体構想である。2013年9月、10月に習近平が中央アジアおよび東南アジアを訪問した際に提案した。
目的は、国内の生産過剰、外為資産過剰をこの地域のインフラ建設に充てることで解消し、同時に資源輸送ルートの安全確保の意味が大きい。また沿海部に集中する工業・インフラ製造業が「外部の敵」に攻撃された場合も、内陸部に核心施設を移転しておけば安心、という発想もある。習近平のスローガンでもある「中国の夢」つまり「中華民族の偉大なる復興」を実現するための地政学的戦略構想であり、中央アジアからヨーロッパ、東南アジアからアフリカに至る一帯を中国の影響力下におき、将来的に米国に対抗できる、あるいはしのぐ大国の夢を実現するための重要な布石である。
この一帯一路構想を実現するためシルクロード基金が創られたが、それだけでは到底足りるわけもないので、欧州勢も参加するAIIBがシルクロード基金に融資し、シルクロード基金が直接投資を行う窓口となる。AIIBとシルクロード基金については人民元決済が優先される計画で、これにより人民元の国際通貨への道も切り開く狙いだ。
国家発展改革委員会、外交部、商務部が合同で発表した一帯一路構想の説明によれば、民生に関わる交通インフラ建設が優先され、「ヨーロッパまで高速鉄道に座ってゆくのは不可能ではない」とうたっている。2011年に公表されている中国三大国際高速鉄道計画(中央アジア線、汎アジア線、欧州アジア線)のうち、ウルムチから中央アジアを貫いてトルコ経由でドイツまでつなぐ中央アジア線建設は、一帯一路構想の核心プロジェクトの一つだといえる。もちろん、これは中国が日本やドイツやフランスの技術を買い叩いて少し中国仕様にしたものを「中国独自開発」として売り出し中の中国産高速鉄道である。
狙いは金融版中華冊封体制の構築
こうしてみると、一帯一路、AIIB、シルクロード基金は純粋なビジネス目的というよりは、金融版中華冊封体制の構築ともいえる。同時に米国を向こうにまわした地政学的な覇権争いでもある。南シナ海、中東、中央アジアは軍事上の要衝でもあり、中国が影響力を確立させておきたい地域である。
中国は主権防衛について、海洋(南シナ海と東シナ海)、宇宙、インターネット、金融に大きな障害があるという言い方をかねてからしているが、一帯一路とAIIBとシルクロード基金は、中国の海洋と国際金融界における主権拡大を同時に狙ったものだともいえる。人民元の国際化など夢物語だと誰もが思っていたが、気が付けば国際決済通貨としては今や5位だ。欧州勢がAIIBに雪崩を打って参加したのは、ユーロにとって強すぎるドルが好ましくないという動機もあるだろう。
こういう背景があるので、AIIBの融資するプロジェクトがまずシルクロード基金を通じた一帯一路構想だと考えられるし、これは基本的には中国国内で過剰生産に悩む基礎インフラ企業の海外進出を後押しするものであるし、利益よりも政治的意義を優先させるものである。つまり資源輸送ルート確保や軍事的要衝における米国の影響力を排除して中国の影響力を強める目的、人民元の国際化などを優先させるので、プロジェクトに人道的意義(貧困救済など)やビジネスの公平性や環境への配慮を求められてはいない。さらにいえば、中国政府の今の債務の大きさを全く考慮せずに、対外投資を煽る危険性も指摘されている。
米イエール大学の金融学の専門家・陳志武が中国・財経ネットのインタビューに答えてこう語っている。
「みな“一帯一路”が発展チャンスだと強調しているが、私は債務リスクがより大きいと見ている。一帯一路は中国の過剰生産を輸出できるという点で光明を見出すことはできるが、代価も非常に大きいのだ。まずもう少し冷静になるべきだ」
「金融危機後、中国の債務は平均して4倍に膨れ上がり、2014年中期の中国の債務負担額はGDPの282%に上る。これらは政府債務、銀行債務、企業債務、家庭債務を含む。これは発展途上国家の平均をはるかに上回り、オーストリアや米国、ドイツ、カナダなどの先進国平均も上回る」
「省・市レベルの一帯一路関連プロジェクトがすべて批准されれば、104兆元の資金が必要となる。これは中国GDPの1.6倍以上、中国は少なくとも総額でGDPの4倍以上の負債を抱えることになる」
「2014年の財政収入増加率は減速し23年以来最低を記録。昨年の土地(使用権)譲渡収入が2割ほど大幅減。…現在政府は財政方面の不良債権処理能力はますます落ちており圧力は徐々に増加している。こういう状況下で社会的な総負債額が大幅上昇し続ければ、これら不良債権は容易に金融リスクと経済危機を引き起こすだろう。…」
米国とも中国とも対等に付き合うには
こういう背景があるので、私は日本がAIIBに参加しなかったのはよかったと思っている。もちろん将来の中国の大国化シナリオを考えれば、擦り寄っておいた方がよかったではないかと言う人もいるだろう。私は現役の北京駐在記者時代から中国が今の体制を維持できない確率は3割位のイメージで取材するのがよい、と思っていた。同時に今は米中G2時代のシナリオも2割くらい頭の片隅においている。だが崩壊するにしろ、大国に化けるにしろ、日本が中国の“冊封体制”に入る選択肢はないと思っている。かつて大陸には巨大な帝国が何度も出現しているが、日本は小国ながらその冊封下に入ってこなかった。歴史の中で日本を支配したのは米国だけである。
だが、ひょっとして米中G2時代がくるかもしれない、という可能性が頭をかすめるようになったのは言う間でもなく米国の弱体化のせいである。日本の安定は米国の庇護のもとに実現してきたが、将来も同じように米国が頼りになるアニキかといえば、そうでなくなるかもしれない。その時、米国の代わりに中国に擦り寄ろうという意見も出てくるかもしれないが、私は米国とも中国とも対等の国として付き合うには、どうすべきか考えることが今、一番必要だと思っている。