古森 義久・石 平『自壊する中国反撃する日本』を読んで

日本のGDPと通貨発行量(M2+CD)の比較(=マーシャルのK)を見てみます。バブル期の94年には1.07位でした。アベノミクスによって、1.8位まで増えて来ています。ネットで解説を読みますと「過剰貯蓄」になるとマーシャルのKは高くなりやすいとのこと。中国と同じくらいなのに、日本は騒がれずアベノミクスが評価されているのは、個人金融資産が豊富で政府負債を大幅に上回っているせいか。中国は国全体で2600兆円も負債があり、裏付けるべき資産を持たないため批判されるのでは。

中国はインフレ亢進、バブル崩壊と噂されて久しいです。それもこれも嘘でデッチ上げた数字が基になっているため、正しい判断ができないのかと。AIIBに入るのは溝に金を捨てるようなものと思います。

『三菱UFJモルガン・スタンレー証券 2015年4月3日 嶋中雄二の月例景気報告 No.60~私が日銀に早期追加緩和を要望する理由より「日本のマーシャルのK」を抜粋』

japan k

 

 

 

 

 

 

 

また下記の記事も見つけました。

http://chugokukaigun-junnbi.blogspot.jp/2013/02/201328-1116-http-www.html2013年2月8日金曜日)より

レコードチャイナ 配信日時:2013年2月8日 11時16分

http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=69224&type=0

中国は世界最大の「紙幣印刷機」、メディアの報道に専門家が反論―中国メディア

2013年2月7日、各国が相次いで新たな量的緩和策を発表する中、あるメディアが「中国の通貨過剰発行も深刻だ。 2012年、中国の通貨増加量は世界の約半分を占め、世界最大の紙幣印刷機になった」と報じた。

 これについて専門家は、 「このような言い方はあまりにも常識外れで、一方的すぎる」との見方を示している。

 中国の通貨発行量が本当に深刻なのかどうか、1つのデータに基づいて当て推量することはできない。 通貨が過剰発行状態かどうかを判断する指標の 1つとして物価の安定がある。金融政策の良し悪しを判断する上で重要なのは、経済の成長率・規模と歩調が合っているかどうかだ。

▽.中国の通貨過剰発行は誇張

 中国の通貨過剰発行問題はここ数日、各方面で話題になっている。中国人民銀行(中央銀行)の統計データによると、 2012年末現在、中国のM2残高は「97兆4200億元(約1448兆8100億円)」に達し、世界一となった。 この額はすでに、世界のマネーサプライ総量の4分の1に近づいており、 米国の1.5倍だ。 さらに、M2の対GDP比は188%の過去最高に達した。ちなみに同期の米国の同比率は63%で、中国のわずか約3分の1だった。 一部メディアはこの差を根拠として中国を「世界最大の紙幣印刷機」と比喩し、多くの人が中国の通貨過剰発行が深刻であると考えるようになった。

 しかし、専門家はこれについて 「表面的に見て、中米のデータを比較すればこの結論も一理あるように感じるが、理論的に分析、もしくはもっと広範囲で比較すれば、この判断が大雑把であることが分かる。 特にM2残高と対GDP比だけで中国が通貨過剰発行状態だと断定するのはあまりにも単純で一方的だ。 各国のマネーサプライの統計範囲の違い、融資構造の違い、経済発展段階の特徴などの要素を全く考慮していない」と指摘する。

 中国人民大学財政金融学院の趙錫軍(ジャオ・シージュン)副院長は 「中国の通貨発行量は確かに多いが、中国経済の成長率を見ずに単純に過剰発行だと決め付けてはならない。合理的な通貨発行は、国の経済成長率・規模に応じたものであるべき。 例えば米国は経済成長が鈍化しているため、発行量を再度増やせば過度な発行になってしまう」とする。

▽.通貨発行量の増加には原因が

 中国人民銀行の周小川(ジョウ・シャオチュワン)総裁は、「中国がこれまで統計してきた実体経済には形のあるものしか含まれず、サービス業が含まれない。このため、市場化が進み経済発展が加速するに伴い、マネーサプライは統計範囲内の『実体経済』の需要をすぐに上回り、いわゆる『過剰発行』の状態になった。しかし実際のところ、マネーサプライは実体経済だけでなく、サービス業や金融市場の需要も満たす必要がある」と指摘する。

 興業銀行の魯政委(ルー・ジョンウェイ)チーフエコノミストは 「中国のM2対GDP比は前々から高かった。 この原因として、1つには中国のマネタイゼーションの進展が挙げられる。これまで市場で取引されてこなかった多くの製品が市場に流入し始め、自然とより多くの通貨が必要になった。

 もう1つの原因は、中国の社会融資構造だ。社会融資の大部分は銀行によるものであるため、M2が必然的に高くなる」とする。

 国家情報センター経済予測部世界経済研究室の張茉楠(ジャン・モーナン)副研究員は、「第1に、改革開放の深化と市場化の高まりに伴い、中国の通貨需要が絶えず高まり、マネーサプライの増加ペースが経済成長ペースを上回った。このためM2の対GDP比が高まった。

 第2に、WTO加盟以降、中国の輸出の高成長および蓄積された外貨準備高は、貨幣創造のメカニズムと供給構造を大きく変化させた。最後に、投資に対する過度な依存度もまた、通貨の受動的な過剰発行の主因となっている。金融資源の国有経済に対する過度な依存、国有部門の予算に対する『ソフトな制約』は、金融資源の効率低下を招いている。経済の高度成長を維持するためには、さらなる信用貸付・貨幣供給に依存する必要がある」と語る。

▽.市場を資源配分の主体に

 実際のところ、 「通貨の過剰発行」は表面的な現象であり、その裏には中国経済構造のアンバランスや金融体系発展の遅れといった問題が隠れている。 中国のマネタイゼーションの過程には、他国とまったく異なる構造的・制度的基礎が存在する。

 その核心は、

1).政府が主導となったマネタイゼーション、

2).国際資本の循環を受けた「受動的な創造」、

3).金融資源配分の効率低下

だ。

 張茉楠副研究員は、「通貨の中にいれば、通貨の仕組みを理解できないため、通貨の外に出て通貨を見直す必要がある。政府主導の資源配分モデルから脱却し、市場を資源配分の主体とし、投資への過度な依存をやめ、金融分野の全面的な改革を促進することで初めて、通貨の過剰発行を緩和することができる。

 人民銀行による通貨発行抑制や信用貸付規模に頼っていてはこの局面を変えるのは難しい」と指摘する。

 周小川総裁は、 「我々は2008年以降、世界的な金融危機に対応するために積極的な財政政策と適度に緩和的な金融政策をとってきた。政策自体は正しいが、副作用がもたらされることは確実だ。金融政策にはタイムラグが存在し、一部の効果や現象がやや遅れて現れることもある。 金融危機への対応の際は、マクロ経済調節に適度に力を入れる必要があるが、危機が過ぎた後は逆方向の調整が必要だ」と指摘する。

(提供/人民網日本語版・翻訳/SN・編集/内山)

 「お札を刷れる」というのは国家にとっての絶対的誘惑である。 その誘惑に負けて刷り過ぎるのが通常の動き。 通常はお札は貿易による外貨準備高を睨んで刷る。 ときにGDPを睨んで刷ることもある。しかし後者は先進国にのみ通用する判断とみるのが妥当。 お札を刷り過ぎるとは、上の条件から導き出せる数字をはるかに上回って刷ることをいう。外貨準備高に見あって刷っていれば、間違いなく安全である。GDPに合わせると、財政投融資といった公共投資まで組み込まれてしまうため、いわゆる「花見酒の経済」におちいる。

 さて、お札を刷りすぎると何が起こるか。こんなことはだれでも知っていることだが、確認しておく。

 巷にお金がだぶついてくる。よって、モノよりカネが多くなり、物価が上がる。 物価が上がるということは、それに合わせて賃金が上がるということになる。これをインフレ傾向と呼ぶ。このインフレ傾向を使って、賃金をあげ経済を上向きに引っ張るのが時の政府の政策になる。高度成長経済とはこれを正当な経済的裏付けをもってやることをいう。つまり、貿易黒字の充分な大きさを確保しながらお札の量を増やしていくことだ。成長経済とは永遠に続くものではない。成長が鈍っているのにお札をするとどうなる。モノの量に比べてお金だけが巷に溜まっていく。これが「インフレ」。

 貿易という場ではモノの価値は対外的に決まってくるので大きくは変わらない。モノの値段がある程度安定していると、今度はモノの量でお札を増やしていく。ものの量も限界がある。不必要には増えない。モノがたくさんあれば、それだけお金を巷に増やすことができる。しかし、それがピークに到達すると、刷り過ぎたお金は不動産に向かう。それがバブルとなる。経済破綻が待っている。

 中国でお金をジャカジャカ刷っているということは、充分な外資がある限り大丈夫だ。外資が足りなくなると、不動産に回してGDPを操作しながら、お札を刷る。そうするとバブルは弾ける。おそらく、中国は貿易的にピークを過ぎている。よって、GDPに合わせお札を刷っている。公共投資、財政融資でGDPの額を維持しようとしている。いまの、ロー・ミドルエンドの産業構造、環境破壊、インフレ化による賃金の高騰、ゴーストタウンの建設、ランニングコストを考えないミエだけのきらびやか建造物の増加、貿易経済の鈍化、中国からの国際資本の逃亡、といったところをみると中国は早晩、経済的に苦境に追い込まれる。通常なら引き締めにはいるべきなのだが、それを昔の夢追って拡大で乗り切ろうとするとバブル崩壊の悪夢に突入することになる。

 ちなみにデータをまとめると、

中国:GDPの「1.9倍」のお札を印刷

米国:GDPの「63%」のお札を印刷

 ということは、中国はアメリカの3倍のお札を刷っているということになる。いくらもっともらしい理屈を並べてみても、刷りすぎはみえみえ。早晩、インフレ、バブル崩壊へ向かう。 中国元が下落する。いまがピークだろう。

内容

P.95~97

太子党が持つオーナー意識

古森:メイン夕―ゲットは政治局常務委員と政治局委員だが、先に石平さんが説明したように、反腐敗運動の対象範囲は国有企業幹部、地方政府の中堅幹部まで広げられた。

産経新聞中国総局の記者の話では、習近平時代になってから逮捕された大物官僚の数は今年(2014年)の六月現在で約一〇〇人だそうだ。閣僚級、局長級も含まれるが、これぞ反腐敗運動 が権力闘争の手段であるという証左は、習近平と同根の太子党出身者が一人もいないことだ。

石平:習近平が中華人民共和国を樹立した毛沢東に心酔しているのは、よく知られるところだ。一九七〇年代半ばまで中国国内で絶対的なカリスマであった毛沢東を礼賛し、毛沢東を真似ることで、自らの存在感を示そうとしている。

たとえば習近平のスローガンである「中華民族の偉大なる復興という中国の夢の実現」は、中華思想にとらわれていた毛沢東の焼き直しであるし、反腐敗運動で政敵を次々と葬 っていく手口も毛沢東そのものである。 習近平が行ってきたキャンペーンは、この「反腐敗運動」と「反贅沢運動」と「反官僚主義運動」と「反日運動」の四つだが、反日を除く三つは毛沢東が建国直後の一九五一年に提唱した「三反運動」とまったく同じものなのである。対外政策も毛沢東を意識した「遠交近攻」であるし、好んで乗る車も、毛沢東が命じてつくらせた初代国産車「紅旗」だ。なぜそこまで習近平は毛沢東にこだわるのか。その答えは彼の出自である太子党に収斂する。

習近平のみならず太子党の面々は、中国共産党政権はわれわれのものである。われわれは、この政権のオ—ナ—なのだという独特の「オ—ナー意識」を持っている。

太子党である彼らの父親の世代が開国の父だった毛沢東と共に戦い、現在の中華人民共和国を建国したからだ。

習近平を領袖とする太子党の面々は、「われわれこそがこの国の正当なる継承者であり、政権を受け継ぐ当然の権利と使命があるのだ」と骨の髄から思い込んでいるわけである。

習近平たちにすれば、上海閥にしても共青団派にしても、それらの人たちは単なる政権の「雇われ経営者」であり、天下のオーナーである自分たちにとっての「使用人」にすぎない。たとえば、前の最高指導者胡錦濤は逆立ちしてもオーナーにはなれない。

そういう意味では太子党にとり、毛沢東は自分たちの血統と立場を“保証”してくれる絶対的な存在なのである。まずそれが一つ。

もう一つには、もうそろそろ共産党の中で毛沢東の権威を取り戻したいということだ。毛沢東の権威を取り戻すことで、共産党政権の一貫性を主張できると太子党の面々は信じている。

使用人であるはずの共青団の連中がこれから本気で天下を取ろうとするのであれば、自分たち太子党こそが身を挺してそれを阻止しなければならない。太子党の天下を取り戻して、革命の血を受け継いだ自分たちの継承権を確立しなければならない。これが偽らざる本音であろう。

そうした意味では、同じく太子党出身で、毛沢東主義を掲げて重慶市民の心を摑んだ薄熙来は習近平と同じ発想の持ち主であった。ただ、太子党のなかに二人の毛沢東主義を掲げるリーダーはいらない。習近平は薄熙来を失脚させる必要に迫られた。 だからこそ、本来ならライバルでもある共青団の胡錦濤とパーシャル連合し、薄熙来を潰した。

P.152~156

人民元を刷リ続けることができた理由

要は、中国政府が莫大な公共投資をすれば、さまざまな産業が繁栄するという方程式。たとえば、鉄道を敷けば土木建設、鉄鋼、機械関連の産業はみな潤うといった具合である。

では、こうした投資資金の出所はどこか。

中央政府が人民元をじゃんじゃん刷った。そして、中国がニ〇年間も毎年二桁近い経済成長を続けてこられた最大の要因は、土地ビジネスの成功であった。

「世界の工場」になった中国は、工場誘致した外国企業から三○〜五〇年分の土地使用権料を一度に、しかも外貨で獲得できた。土地所有を認めない自国のシステムが、中国を助けたと言えよう。外資系企業の進出ラッシュが続いた一九九五〜ニ〇〇五年は、各地各階層の共産党幹部、彼らにつながる連中にとり、土地はまさしく打出の小槌となった。

中国政府は外資企業から獲得した外貨を根拠に人民元を大増刷でき、それがケインズ政策実行の元手となったわけである。

だが、中国は図に乗りすぎた。

ニ〇〇八年のリーマン.ショック後、世界同時不況になり、中国の輸出は大幅に落ち込んだ。先にも述べたように、国内消費の弱い中国は輸出と公共事業に頼ってきた。その一方の柱が傾いてきたのだ。

中国政府が打った政策は、一つは財政出動。四兆元、日本円にして六八兆円という巨大な財政出動を行い、一気に公共事業投資を増やした。

もう一つの政策は、空前の金融緩和であった。要は、銀行からお金を大量に市場に回した。リーマン・ショック直後の一年間、中国の各銀行からの貸出総額は実に九•六兆元に上った。この額は当時の中国のG D Pの約三割という途方もないものだった。

この二つの政策は見事に奏功し、ニ〇〇九年には中国の経済は早くも回復を見せ、世界経済の「救世主」として中国がもてはやされたのは記憶に新しい。

当時の経済運営を任されていたのは温家宝首相で、彼もまた人民元札の輪転機をフル稼動させた。

終わリを告げた中国の経済成長戦略モデル

石平:だが、温家宝は経済の大原則を忘れていた。そうした財政出動や金融緩和には、必ず副作用があるということを。“無料の昼飯”などないのだ。どこかで必ず反動が出る。

人民元をバンバン刷って市場に回すと、市場に流通する金が溢れすぎる。通貨の量が、正常な経済活動に必要なレべルを上回る状態。つまり、過剰流動性に陥った。しかも大幅な過剰流動性に。

昨年末に中国国内で流通していた人民元は一〇九兆元にも上った。この一〇九兆元がどういうレベルかというと、昨年の中国のGDPが五ニ兆元だから、その二倍強となる。ドルに換算すれば、アメリカ国内で流通しているドル総額の一•五倍になる。

大幅な過剰流動性になると何が起きるのか。当然、国内では人民元の価値が下落する。逆に言えば、モノの価値が上がる。物価上昇、インフレとなる。その契機となったのがリーマン•ショック直後の政府の経済対策だったということになる。

ニ〇〇九年に中国でインフレが始まり、とくに食料品の価格上昇が目立ってきた。中国政府としては、大衆が食べていけないほどの物価上昇だけは阻止しなければならない。だが大衆が一斉に食えなくなったら、社会的大混乱に陥り、かつての「黄巾の乱」のような事態になりかねない。そうなれば共産党政権が持たなくなる。

結果的に政府は、こうしたインフレを退治するために金融を引き締めた。だが、金融引き締めもまた、重大な副作用が伴う。

金融緩和とは逆に、銀行から金を借りられなくなる。あるいは限定的にしか借りられなくなる。先刻古森さんが指摘されたように、国有銀行は国有企業に優先的に金を貸すので、この金融引き締めで犠牲になったのは当然民間の中小企業だった。

日本でも同じだが、中小企業は銀行から金が回ってこなくなったら、まず倒産する。中国でも同様で、全国の中小企業は酷い目に遭わされ、ニ〇〇九年から「国進民退」という言葉が大流行し始めた。

また、金融引き締めは公共投資も減少させた。これだけの副作用をもたらした挙句、個人消費も冷え込んだままだ。 おまけにここにきて、中国経済をずっと牽引してきた輸出に急ブレーキがかかった。 二〇一〇年までの対外輸出の伸びは毎年ニ五%以上だったが、昨年は七•九%まで落. 込んだ。さらに衝撃が襲う。今年の第一•四半期はついにマイナス六•四%まで落ち込んだのである。

輸出が完全に止まった。国内投資も止まった。中小企業は壊減状態。国有企業は国有銀行頼みで、競争力がまったくない。国内の人件費の高騰で、外資企業の中国離れが加速している。中国の経済成長の戦略モデルは完全に終わったのである。