12/18産経ニュース『慰安婦問題は外務省の戦後最大の失敗である-「国民集会」での発言詳報』記事について

目良浩一氏(歴史の真実を求める世界連合会(GAHT)代表)はアメリカで慰安婦像建立反対運動を展開しております。手弁当でやっていますが、訴訟社会のアメリカですので金がかかります。本ブログをお読みの方で良ければ是非寄付をお願いしたく。小生も寄付しました。裁判の進行状況をメールで教えて戴けます。本記事を知ったのもメールでの通知でした。日本人の名誉がかかっています。無関心では済まされません。「日本民族は倫理的に劣った民族」の烙印を押し、世界にアピールして、日本の国際競争力を弱め、あわよくば日本を属領にしようとする中国・韓国の謀略に負けてはなりません。

宜しくご協力の程を。

寄付先:https://gahtjp.org/

銀行名:三菱東京UFJ銀行

    ミツビシトウキョウユウエフジェイギンコウ

支店名:藤沢支店、支店番号257

口座番号:0351034 普通預金口座

口座名:歴史の真実の会寄付金口座 会計桝田淑郎

振込の際の記入口座名:レキシノシンジツノカイキフキンコウザ

記事

73年前の日米開戦日である8日、東京都内で「慰安婦問題と戦後日本外交の失敗」をテーマに、「新しい歴史教科書をつくる会」と「史実を世界に発信する会」による集会が開かれた。「つくる会」理事の藤岡信勝氏や、米カリフォルニア州グレンデール市に設置された慰安婦像撤去を求める訴訟の原告の一人、目良浩一氏らが、慰安婦問題と日本外交について、それぞれの視点から講演した。藤岡氏は「慰安婦問題は外務省の戦後最大の失敗だ」と指摘し、外務省改革を求めた。 集会の参加者は約170人。集会は、「日本人が名誉を回復するために、外務省の改革は不可避である」として、日本政府に(1)世界に正しい情報を発信するための独立機関を早急に設置(2)国連に世界各国で守る「特定国に対する敵対教育を禁止する条約」を提案(3)外務省改革のための内閣直属の会議を設置-を盛り込んだ決議を採択して閉幕した。

 以下、主な発言者の講演内容を詳報する。

 【藤岡信勝「つくる会」理事】

 「慰安婦問題の捏造(ねつぞう)を許した日本外務省7つの大罪」について報告する。

第1の大罪は近隣諸国条項の制定だ。1982年6月、歴史教科書の検定で「侵略・進出誤報事件」が起こった。その後、教科書検定基準に「近隣諸国条項」が入ったが、これは外務省の後押しで実現した。慰安婦問題とどうかかわるのか。近隣諸国条項の運用のガイドラインは文部省(当時)が定め、「朝鮮人強制連行」という言葉には一切検定意見をつけないことにした。以来、「朝鮮人強制連行」が小中高の全ての歴史教科書に載ることになった。朝鮮人強制連行の嘘は大手を振るって教科書に入り込んだのだ。この嘘があったからこそ、その上に慰安婦強制連行の嘘を建て増すことが可能になった。嘘の2階建て構造だ。肝心なことは、建物の1階がなければ2階は建てられないということ。慰安婦問題の原点は、朝鮮人強制連行を定着させた教科書問題にあった。 第2の大罪は宮沢喜一元首相の謝罪外交だ。1991年12月、翌月に控えた宮沢氏の韓国訪問について、慰安婦問題で何の調査もなされていないのに、首相が謝罪するという方針を外務省は決めた。外務省は首相に謝罪外交を指南したのだ。慰安婦問題を政治問題化する決定的な誤りだった。

宮沢氏は盧泰愚大統領との30分の会見の中で8回も謝罪した。一国の指導者は、国家と国民の名誉にかけて、謝罪なんかしてはならない。まして慰安婦については政府として何一つ調査もしていない。「この件は調査してから、政府としての見解を公表する」と言っておけばよかった。宮沢氏に振り付けをしたのは紛れもなく外務省。この間違いは、どんなに糾弾しても足りないほどひどいものだ。第3の大罪は「強制連行」を「強制性」にすりかえるへ理屈を製造したことだ。1992年1月の宮沢訪韓で、慰安婦問題は日韓間の政治・外交問題になった。さすがに、これは日本国家にとっての一大事であると考えた保守系メディアは、(朝鮮半島で女性を強制連行したと証言した)吉田清治の慰安婦強制連行の話を検証し始めた。同年4月30日、産経新聞に現代史家、秦郁彦氏の韓国・済州島調査の結果が載った。このほか、西岡力、上杉千年(ちとし)両氏の調査で、慰安婦問題は学問的・実証的には、この年の春までに決着がついていたといえる。 そのことに最も敏感に気付いたのは、実は朝日新聞だった。これ以後の紙面では、意図的に「強制連行」の言葉を使わなくなった。しかし、朝日はそれ以来22年間、嘘と知りながら吉田証言を22年間も取り消さなかった。

社会主義世界体制の崩壊によって行き場を失った左翼勢力は、戦前の日本の糾弾を生きがいにするようになる。慰安婦問題は赤ん坊のおしゃぶりのように、彼らにとって手放せないおもちゃになり、彼らは、3つのことをやり始めた。1つ目は、慰安婦問題を東南アジアに広げること。朝鮮半島での慰安婦の強制連行、すなわち奴隷狩りは、どうやら立証の見込みがないということがわかった。そこで、朝鮮がダメならアジアがあるさ、といって、反日弁護士たちが東南アジアの各地を手分けして、日本軍により「人権」を踏みにじられた「被害者」を求めて、調査に出かけた。そのうち、インドネシアで、調査票まで作らせたのが高木健一という弁護士だった。その結果、戦争中、インドネシアには2万人の日本兵しかいなかったのに、2万2千人の元慰安婦が名乗り出た。私が雑誌で高木氏の、この反日活動を批判したら高木氏は私を名誉毀損(きそん)で提訴した。言論で戦えないから商売道具の訴訟を仕掛けてきた。ついに私は高木氏と法廷で直接対決することになった。2つ目は、国連の舞台でこの問題を広げること。国内の論争に負けたので、事情を知らない外国を巻き込んで逆輸入しようという作戦だ。その宣伝のキーワードとなったのが、戸塚悦朗弁護士が考案した「sex slave」、「性奴隷」という言葉だった。3つ目は「強制連行」を「強制性」にすり替える、言葉のトリックだ。これを主導したのが外務省で、外からバックアップしたのが朝日新聞だ。宮沢訪韓のあと、韓国政府は盛んに「強制連行」だけは、慰安婦の名誉にかけて認めてほしいといってきた。そこで、政府は2回にわたる大がかりな調査をしたが、出てくるのは、もめ事を起こすなという、いわば「強制連行」のようなことを禁止する通達ばかりで、強制連行の証拠は何一つ見つからなかった。最近、米政府の官庁横断で行われた作業班(IWG)の調査結果が注目されている。米政府によっても、日本が強制連行や性奴隷制をとっていたなどという証拠はただの一件も見つからなかった。日本政府は調査結果を淡々と発表すればいいのだ。それなのに、慰安婦問題を何とか認めようとしてひねり出した詭弁(きべん)が、慰安所における「強制性」という問題のスリカエだ。第4の大罪は、河野洋平官房長官談話を出したことだ。詳細は省略するが、今年の6月20日、政府は河野談話の作成過程についての調査報告書を出した。報告書は、政府が強制連行を示す資料はないと認識していたのを、河野官房長官(当時)が記者会見で強制連行を認めたと報告した。個人プレーだった。河野氏の間違いは当然糾弾されなければならない。しかし、報告書は外務省の責任には全く何も触れていない。河野談話は強制連行を肯定しているともとれる曖昧な文面ととともに、「強制性」をうたっているのだが、この論理を用意したのは外務省だった。第5の大罪は、「クマラスワミ報告書」への反論を引っ込めたことだ。1996年、国連の人権委員会で、慰安婦を性奴隷と認めたクマラスワミ報告書が提出された。これに対し、外務省は珍しく、今読んでも立派な、事実関係に踏み込んだ反論文書を作った。ところが直前になって撤回してしまった。この後、外務省は一切、事実関係に踏み込んだ反論をしなくなった。第6の大罪は「新しい歴史教科書」を検定で不合格にする策動をしたことだ。2000年10月の、野田英二郎事件として知られている出来事だ。元インド大使で、教科書検定委員になった野田氏が、外務省の課長や課長補佐クラスのメンバーを7~8人集めて、検定で不合格にするためのプロジェクト・チームをつくっていたのだ。外務省の本質がよく表われている。 第7の大罪は、慰安婦問題で事実関係に踏み込んだ反論を全くしないことだ。不作為の罪と言えるが、実はそれ以上の罪を犯している。単に、事実で反論しないだけでなく、「日本は謝罪しています。見舞金を払っています」とわざわざ宣伝することで、むしろやってもいない罪を世界に自白したことになっている。外務省が犯した7つの大罪の結果、米カリフォルニア州グレンデール市に慰安婦の像まで建つことになった。この結果に、外務省は政府機構の中で最大の責任を負っていると思う。

【目良浩一・歴史の真実を求める世界連合会(GAHT)代表】

グレンデール市に設置された慰安婦像撤去訴訟の原告として、この訴訟についての要点について話す。

慰安婦像が設置されたのは2013年7月9日、訴訟を起こしたのは今年2月20日。この約10カ月でいろいろな動きがあった。この間、非常に手厚い支援をみなさまからいただき、深く感謝している。これまでの寄付金は日本から7200万円、米国では4万7000ドルぐらい、計7800万円相当となった。使途について説明すると、かなりの部分は裁判費用だ。この集会で講演するための米国からの航空運賃にも使われている。エコノミークラスだ。飲食代には一銭も使っていない。5つの点についてお伝えする。第一は、慰安婦像の設置にこぞって反対すべきであるということ。どうして反対しなくてはいけないのか。慰安婦像を建てるということは、日本人、日本国に対する貶めだ。これは、日本人は卑劣な人間で人道をわきまえず、冷酷で女性に対して非礼な人類であることを世界に広めようとする動き。日本人としては当然これに抵抗し、慰安婦像撤去に向かって努力すべきである。ところが日本政府は反論しない。従って、(韓国などは)別のところで噂を広げる。特に米国で「従軍慰安婦問題があって、女性たちは性奴隷で20万人もいた」という話を広めている。黙っていれば、世界の人は「そうか、日本軍は悪かったのか。日本人は冷酷であったのか」と思ってしまう。これに絶対に抵抗しなくてはいけない。一旦、日本人が卑劣な民族であるということが一般常識になれば永遠に続く。数世紀にわたって汚名が世界に広がり、消すことができない。消すとすれば現在、生きているわれわれの努力以外にはないとの思いでがんばっている。次に、米国における慰安婦像撤去訴訟は勝てるかという問題だ。一審で敗訴した。かなりの人が「訴訟を起こしても勝てない。無駄なことをやっている」と考えていると思うが、それは間違い。一審では、担当の連邦裁判所の判事の質が悪く、「原告には訴訟の資格がない」という奇妙な理由で敗訴した。しかし、ほかの司法関係者に意見を聞くと、これは明らかにおかしいという。二審では、こういう判断はないと考えている。現在、連邦裁判所の高裁に控訴しているが、それ以外に州裁判所にも裁判を起こしており、2つの裁判が進行中だ。裁判の成果はもっぱら弁護士の能力によるところがかなり大きい。最初の弁護士事務所だった大手メイヤー・ブラウンは、外的な圧力、つまり中国系反日団体の世界抗日戦争史実維護連合会(抗日連合会)から圧力を受けてわれわれの弁護から撤退した。しかし、現在は強力な弁護チームを抱えている。費用はかかるが、今回の判決はかなり有利ではないかと思っている。これまでも多くの資金援助をいただいているが、さらなる協力をお願いしたい。第3点は、グレンデール市の慰安婦像はカリフォルニア州韓国系米国人フォーラム(KAFC)という韓国系の団体が推進したが、その裏には中国系米国人がいる。抗日連合会だ。韓国系だけでなく中国系を相手にして戦う覚悟が必要だ。次に、米国人が公平であるかというと、実際にはそうではない。韓国系の情報につかっている。もう少し厳密にいうと、米国人は慰安婦について何も知らない、またはほとんど知らないというのが大多数。知っている人は韓国系の情報を信じている。日本の軍隊はアジアの女性を性奴隷にしたと考えている。オバマ大統領もそうだ。背景にはクマラスワミ報告書と、日本政府に謝罪と補償などを求めた2007年の米下院対日非難決議の存在がある。さらに、米国人は英語以外のものをほとんど読まないから、慰安婦問題については吉見義明・中央大教授の「Comfort Women」を読み、そこに書かれていることが真実と思っている。朝日新聞は、日本語版で誤報の告白を大々的にやったが、英語版では非常に小さく間違いを犯したと書いた。最近では読売新聞も英語版で誤りがあったと認めたが、米国人は朝日新聞の英語版も読売新聞の英語版もほとんど読まない。朝日新聞の英語版が書いただけでは全く影響を与えていない。日本では、朝日新聞が間違いを告白したので慰安婦問題は解決したと感じている人が多いが、米国でその影響はゼロだ。米国人の意見を変えるにはまだ大きなことをやらなくてはいけない。もう一点は、日本政府の対応が、いままでのところ全く手遅れであることだ。政府としてもっと明確に否定すべきところは否定して、反論すべきところは反論して抗議するべきだ。日本政府の対応をみていると、あたかも反論することが社会的に、国際的にいけないかのような感じを持っている。例えば、2007年に米下院が対日非難決議をやろうとしたとき、同じケースがトルコでもあった。トルコは明確に米政府に反論したため、対トルコ決議案は採択されなかった。最近、外務省にも少し、いい動きもある。たとえば、今年7月、ジュネーブの国連で開かれた自由権規約委員会で、外務省の課長が「慰安婦は性奴隷ではない」と明確に宣言した。これは結構なことだ。しかし、多くの場所で積極的に発表することが必要だと思う。

【山本優美子・なでしこアクション代表】

今年7月にジュネーブの国連で開催された自由権規約委員会を「慰安婦の真実国民運動調査団」の団長として傍聴した。慰安婦問題は、ヘイトスピーチなど多くのテーマのうちの一つだった。調査団が委員に訴えたのは3点。(1)慰安婦は性奴隷ではなく戦時中の売春婦(2)慰安婦を性奴隷と認定した国連クマラスワミ報告書は嘘の資料(吉田清治証言)を基に書かれているので性奴隷の論拠に値しない(3)証言は単なる話で検証さえされていない-。これらの主張を印刷した資料と、1944年の米軍報告書(ビルマ=現ミャンマーでとらえられた慰安婦たちの調書)を添付して各委員に渡した。日本政府代表団は「性奴隷という表現は不適切である」といった。これは非常に大切だ。というのも、委員会から日本政府への質問に、「慰安婦は日本軍性奴隷慣行の被害者である」と書いてある。これに日本政府は「不適切な表現である」といったわけが、もし言わないで黙っていたら、認めていたことになっていた。しかし、私たちの配布資料と日本政府の反論があったからといって、委員会が納得したかといえば全然納得していない。「慰安婦は性奴隷」という主張はすっかり浸透していた。(日本政府の反論後の)委員会の反応はというと、「日本政府は慰安婦を強制していないというが、本人の意思には反していたという。これは矛盾しているだろう。こんな曖昧な立場は慰安婦の名誉を貶め、再び被害者にしている」というものだった。対日審査後の勧告にそう書かれていた。簡単には切り崩せない。委員会の議長はすっかり信じていた性奴隷がそうではないということで、異物を飲まされた感じだった。慰安婦問題は歴史問題でもあるので、事実を主張していればどうにかなるといえば、そうではないと思う。これは情報戦だ。われわれは真実を訴えているが、嘘でもいいから自分たちの都合のいいように広めれば勝ちという情報戦だ。大東亜戦争でも、日本が悪いという情報戦にある意味負けた。戦後も負け続けている。国連を利用した「捏造(ねつぞう)慰安婦」を切り崩さなくてはいけない。どうしたらいいか。外務省を批判するのは簡単だが、官と民でやらなくてはいけないと思う。国連の人権関連委員会は民の出番だ。NGO(非政府組織)は好きなことを発言できる。2016年2月15日から3月4日まで「女子差別撤廃委員会」の対日審査がある。さまざまな女性の人権問題が持ち込まれるが、慰安婦問題が中心となる。日程は国連人権委員会のサイトに発表されている。この対日審査に先立つプレセッション(準備会合)が来年7月27日から31日の間にある。プレセッションは本セッションに向けて、日本政府への質問を検討する場となる。この場に対して何をできるのか。われわれは英文ではあるがリポートを出せる。私たちがこういうことをやっていかなくてはいけない。具体的にやるには、「なでしこアクション」のサイトにまとめているのでみてもらいたい。(http://nadesiko-action.org/?page_id=6865)。何でも先頭に立って水をかきわけるときは重い。でも、後からみんながついてくると、水の流れが大きくなり、うねりが大きくなる。みなさんにリポート出したり、現地に行ったりしてもらいたい。これは左の人たちがずっとやってきたことだ。彼らが20年以上やり続けたことをわれわれが切り崩さなくてはいけない。みなさんがうねりを作っていかなくてはいけない。行動しましょう。

【白石千尋・国際機関職員】

私の勤める国際機関は、多数の国連機関と協力しながら世界140カ国で活動しており、各国の官僚、大臣、また首脳や大統領と緊密に連絡を取り合っている。この職場を「国際関係の縮図」としてみると、日本人の価値観とは違った常識が国際社会にあることに気づく。まず、自虐史観にとらわれた日本と、日本を「普通の国」としてみる世界に乖離(かいり)があるということ。例えて言うと、自虐史観というバケツを頭からかぶり盲目になった日本に中国・南北朝鮮がやじを飛ばしていて、その他の193カ国は遠巻きに見て苦笑している感じだ。日本が憲法9条や非核三原則、専守防衛などを保持し、自分の手足を縛っているのは、国益を追求する「普通の国々」からすると理解できない。彼らは自分たちが奴隷制度や殺戮(さつりく)など、血で血を洗う修羅場をくぐり抜けているので、70年前の戦争が日本の侵略か自衛かなどには全く興味がない。世界の中でも日本の歴史はまれに見る平和国家だ。また、世界の代表には日本の近代史を知らない人も多く、それよりも自国の汚職、貧困、紛争などが喫緊の課題なのだ。日本では中韓の意見が何倍にも誇張して伝えられるため、あたかもそれが全世界の意見かと錯覚するが、それはプロパガンダだ。日本は自虐史観を捨て、普通の国として国体を守り、国益を追求するべきだ。次に申し上げたいことは、国際社会は平和と友好を目指した仲良しクラブではなく、各国の覇権争いの舞台であるということだ。日本の世論は国連を「神聖化」し、「平和で良い国際社会を他国と協力して作っていこう」と考える人が多いが、他の国々にとって国連は自国の国益を推進する「場所」であり、あくまで「道具」でしかない。日本は純粋に平和を望み、国際協力を通して平和の実現を試みているが、他の国は国益を促進する場合に限って平和を支持するだけだ。彼らの目的は国益の追求であり、平和ではない。現に、この7月の国連人権委員会で慰安婦問題が議論されたとき、議長は一方的に中国、韓国、日本の左翼の弁論を擁護し、日本政府の反対意見を検証もせずに糾弾した。国連とは政治的組織であり、真実など追究していない。各国は自分に都合のいい時に国連を使い、自らの立場を正当化させ国際世論を味方につけようとしているだけ。覇権争いの舞台で、これが現実だ。国家間の関係とは、ある意味お互い銃を向け合ってパワーバランスを保っていることだと思う。お互い銃を持っているからこそ戦争をせず話し合いで解決しようとするが、パワーバランスが取れておらず、一方が銃、もう一方が素手である場合、銃を持つ国が素手の国を搾取し、場合によっては殺す。これが過去400年に亘る植民地政策だ。国際社会では今も昔もこれが常識。だから軍事力に裏づけされていない外交は影響力がない。私たち日本人は、もっと国防について真剣に考えるべきだ。「平和・平和」と念仏のように唱え、「銃は使いません。軍隊はもちません」などと宣言しても、他国に襲われる危険を高めるだけだ。 中国・韓国が慰安婦問題を使って日本をゆするが、ある意味それは国際社会では普通の行為。付けこまれる隙を作った日本が悪いのであって、自国を防衛するのは国民と国家の義務。このような認識に基づくと、日本の外交は決定的な間違いを2つ起こしたことがわかる。第一の失敗は、国家間は戦略関係であるにも関わらず、戦略なしの外交を行ったということ。後で説明するが中国の究極の目的は日本の支配であり、慰安婦問題はその手段の一つに過ぎない。それなのに日本は、あたかも個人の関係のように、謝罪して誠意を見せて丸く収めようとする。相手は計算して動いているのに、誠意などというものが通じると考える甘さ。全く思考の次元が違う。謝罪して誠意を見せることは日本では美徳と考えられているが、国際社会では力に屈した弱者の象徴であり、責任を取らされる。謝罪は相手に付け込まれる隙を与えるものなので、普通の国はよっぽどのことがない限り謝罪はしない。日本が謝罪し続けているために、中韓につけ込まれてどんどん批判がエスカレートしている。国際社会では、謝罪は国家の尊厳を傷つけ、英霊を侮辱する行為。日本の謝罪外交は、国際関係の本質を全然わかっていない証拠だ。国際問題の多くは人為的に作られたもので、まず各国は戦略を定め、その目的に応じて問題を起こす。慰安婦問題はいい例だ。2012年11月、モスクワで行われた中国・ロシア・韓国の3カ国による会議で、中国からの参加者は、尖閣諸島(沖縄県石垣市)の奪取を宣言し、その戦略として慰安婦などの歴史問題を使って日本を孤立させ、日米を離反させることを明言した。尖閣・沖縄を中国に支配されると実質的に日本のシーレーンは中国に占領され、本州への攻撃もたやすく日本は中国の属国になりさがるだろう。近年、アメリカ、オーストラリア、カナダなど、日本と防衛協力を推進する国々でで慰安婦像・碑設置の動きが起きている。これらの国の世論を反日に仕向け、日本を国際的に孤立させるのが目的だ。中国の目的は日本を支配すること、そして慰安婦問題はその手段の一つなのだ。日本外交の第二の失敗は、日本の意見を国際世論に訴えなかったこと、世界への情報発信が不十分だった。日米合同であれば中国の侵略を阻止することができるが、日本単独だと中国に負ける。またロシアも味方につけ日米露で中国に対抗すれば、中国は完全に負けるだろう。他国との連帯は一国の安全保障を左右する。だから国際世論を味方につけることが大事だ。その重要な国際世論に対して日本は沈黙や妥協し、中韓の嘘に反論しなかった。反論するどころか30年間にも亘って朝日の捏造を放置し謝罪外交を繰り返してきた。これは世論対策を全く講じなかった証拠だ。だから国際社会が中韓の嘘を信じ、靖国参拝で安倍政権がバッシングされ、日米関係に亀裂が入った。世論は真実を支持するのではなく、拡散された情報を支持するのだ。日本が沈黙するということは、国際社会では「同意」を表す。嘘を暴露し、中韓の信用を失墜することで初めて相手は黙り、世論が日本の味方につく。国益に反したことは徹底的に声高に反対意見を主張しなければならないのだ。日本はどう動くべきか。まず、日本を支援する国際世論を形成するべきだ。それには、欧米・アジアの国々とのコミュニケーションを深め、緊密に連携すること。日本独自の意見をもっと頻繁に世界に発信し、事なかれ主義と決別すること。また、日本の誇りを傷つけるような言動に対しては断固とした対立姿勢を示すべき。そして、プロパガンダ対抗組織をつくり、どんどん真実の歴史書を英訳し海外に拡散すべきだ。また、日本は戦略的外交を強化すべきだ。それには、徹底的に歴史問題を議論して自虐史観を脱却し、国論を一致団結させる。国防についての教育を義務化し、国民全員が国を守るとはどういうことか、真剣に考えるべきだ。国益を見据えた戦略を立て、軍事力を強化し、国際社会の実情をよく認識する必要がある。

【加瀬英明「史実を世界に発信する会」代表、「つくる会」顧問】

福田赳夫内閣で、首相特別顧問の肩書で対米折衝にあたった。最後に同じ肩書をもらって米国と折衝したのは中曽根内閣だった。私は日本外交の第一線に立って闘ったことがある。日本の外交にあたって最も心すべきことが1点ある。私は「ミラーイメージ」という名前をつけているが、これは相手の国も国民も日本人と同じような価値観を持ち、同じように考え、行動するはずだと思い込んでしまうこと。自分の姿を鏡に映して相手と交渉するようなものだ。私は漢籍に親しんでいたので、中国は邪悪な文明であると信じるようになった。1972年に田中角栄内閣のもとで日中国交正常化が行われたときは、雑誌上で猛反対した。日本は米国が中国と外交関係を結んだ後で国交回復すればよかったのだ。当時、日本外務省の幹部の中には中国で学んだ人が少なくなかった。「中国人も同じ人間なんだ。心が通じる」ということを言う人たちばかりだった。しかし、中国人だけではなく、米国人も日本人と全く違う。中国や米国、他国と交渉するときは“鏡”を取り払って、相手にあたらなければいけない。しかし、ミラーイメージは反対の方向にも働く。というのは、日本の文化、日本の歴史と朝鮮や支那、米国などは全く異なっている。しかし、こういった外国の人々は日本も自分たちと同じような歴史を持っているに違いないと思い込んでいる。日本についてよく知らない。日本は奴隷制度がなかった珍しい歴史を持った国だ。また、日本中、どこを探しても大虐殺を行っていない。奴隷という言葉を一つとっても、明治に入ってから一般的に日本語で使われるようになった。それまでは日常的に使われることはなかった。日本の歴史、伝統文化がまったく違った国であることを海外の人に知らせなければいけない。先ほど白石さんが、「海外では謝罪すればその責任を取らされる」といった。日本は和の文化だから、一回わびれば水に流す。日本人はすぐわびる。しかし、海外の人にはなぜだかわからない。海外の人とは共通点が乏しい。このような相手とかけあっているという前提のもとに交渉を行わなければならないことを肝に銘じなければならない。慰安婦問題の主戦場は東京だ。米ワシントンに年に2度通っているが、米政権幹部や議会、シンクタンクの主要な研究員に「慰安婦は職業的な売春婦だった」と話しても、「しかし、日本政府がわびているではないか」といわれる。人類の歴史では戦場と兵士の性処理の問題は常についてまわる。しかし、人類の歴史で一国の政府が罪を認めて謝罪をし、その上、補償したのは日本以外ない。だから、よほど悪いことをしたに違いないと思われる。ワシントンで講演しても、この問題に触れると必ず質問があって、「ここの日本大使が謝罪しているではないか」といわれてしまう。河野談話が出されて以降、一度も日本政府は撤回していない。あるいはただそうとしていない。だから、まだ悪いことを隠しているに違いないともいわれる。本来は主戦場は東京にあるのだ。安倍政権は残念ながら河野談話だけでなく村山富市首相談話も継承していくといっている。なんとかして、河野談話、村山談話を撤回させなければならない。そうなれば、米国における戦いも大切だが、目良先生の戦いも容易になる。日本のためになると思う。(了)

12/17 ミアシャイマー教授公開講演要旨

「士気の会」代表の山田健司氏のメールから転載します。(許可取らずに掲載しております。山田さん申し訳ありません)。

地政学の大家のミアシャイマー教授ですが、地政学とはリアリズムに徹した学問です。Balance of powerを重視します。日本の左翼シンパに多い、意識的or無意識的に拘わらず現実を直視しない脳内お花畑の人達の考えとは全く違います。中国の台頭は歴史の必然、その阻止のためルトワックと同じようにロシアを日本の味方に付ける、核保有こそが日本の安全に繋がると言うのがミアシャイマー教授の言いたいことかと。

転載部分

◯Chinaの台頭の行方、ウクライナ危機の背景

・Chinaの台頭について

平和的な台頭はあり得ない。

中長期での経済成長継続を想定して検討している。

国家の生存を高めるため地域大国を目指す。その為に戦争も辞さず。

そもそも、国家こそ国際社会の主体であり、世界は無警察状態。

どんな国も生存のために強国を目指す。

米国も米国大陸での地域大国となってから、超大国となり他の覇権国を潰してきた。

Chinaも必ず真似る。

・ウクライナ危機について

実質は欧米対ロシアの戦い。主原因は欧米にあり。

ロシア勢力圏を侵し続けてきたNATO拡大への当然な防衛反応。

最大脅威はChinaであるのに、ロシアをChinaに寄らせてしまう米国の大失策。

しかもアジア重視といいながら、中東で手一杯でアジアで動けない。

日本は無核ながら周辺は核大国ばかり。国民に危機感があれば核保有も当然の選択肢。

ウクライナをみれば米国の協力確約は疑問。

Chinaが成長途上であるのがまだ助けであり、分析が外れるために成長鈍化を希望する。

12/17日経ビジネスオンライン 福島 香織氏『周永康は死刑になるのか?中国法治、権力闘争、その先は恐怖政治か』記事について

周永康が本当に死刑になるとすれば、権力闘争は激しくなるでしょう。彼以上に悪いのはいっぱいいる訳で、枕を高くして眠れなくなりますので。「虎も蠅も」と言っている習近平、追及の先頭に立っている王岐山だって周ほどではないにしろ賄賂を取っていることは中国人だったら誰でも知っています。そうしなければ権力の中枢には絶対行けませんので。受領拒否した時点で仲間はずれです。そういう清廉な人が出世を重ね、権力を握るのは中国の歴史では絶対無理です。『清官三代』なる言葉もあるくらいです。それでも日本の賄賂の額とは桁違いです。何清漣によれば「中国共産党は歴代王朝の中で一番腐敗が進んだ統治機構」だそうです。習が狙っているのは多分曽慶紅(上海派)でしょう。江沢民は実権を握っていなかったので。団派がどう動くか見物です。胡錦濤は党主席時代、上海派の横やりになす術もなく、自分の思いを実現できなかった恨みがあるので、上海派は潰したいと思っているはずです。しかし、習の独り勝ちを認めると次は彼らの番になりますので兼合いが難しいです。軍を団派が取るか、習近平が取るかで決まるでしょう。上海派の復活はないでしょう。彼らは共産党のエリート(団派)でも太子党(革命の相続人)でもなく、天安門事件の後に鄧小平から選ばれた利権集団ですので正統性がありません。もっと言えば時代の遺物である共産党なんて正統性があるはずがありません。悔しかったら中国でも真の民主選挙をしたらどうでしょう。香港にすら与えないのですから。多様な価値観を認めない社会は、この科学が進んだ世界にあっては長い目でみれば存続できません。

記事

かつて中国で警察・武装警察権力のトップにいた元政治局常務委員の周永康の党籍剥奪と逮捕がこのほど、ついに発表された。周永康については、元重慶市党委書記の薄熙来失脚に連座する形で転落への道筋が見えてはいたが、党籍剥奪と司法機関への身柄送致の正式発表を聞くと、さすがに習近平政権はここまでやりきったか、という感慨がわいてくる。しかも、その容疑の中に収賄などと並んで、女性関係、党と国家の機密漏洩といったきな臭いものが並び、「反党的な重大規律違反」を犯したという。国家機密漏洩がかかわっているとなると、おそらくは周永康の裁判は非公開となるのではないか。薄熙来は中国の法治国家ぶりをアピールする見世物サーカス的な公判で、結局は執行猶予付き死刑という判決であったが、新華社や人民日報の報道ぶりをみれば、周永康については死刑判決が出るのではないか、という憶測も流れている。周永康の死刑はありえるのか、考えてみたい。

党員は厳格な規律を要求され、それ自体が党の本質

新華社で周永康の処分が発表になった後、人民日報の微信アカウントが出した論評がすこぶる厳しく、周永康死刑説の裏付けになっている。以下抄訳をあげる。12月5日、習近平の虎狩りはさらに劇的な状況を更新した。中央政治局会議は中央規律検査委「周永康に関する重要規律違反審査報告」を審議、採択し、周の党籍剥奪とその犯罪容疑について、司法機関に身柄を送致することを決定。中央が発表した周の紀律違反行為の中で、「重大な反党的政治紀律、組織紀律、秘密保持紀律に違反した」「党と国家の機密を漏えいした」という部分は注目に値するだろう。かつて政治局常務委として、国家指導部幹部として、周が党と国家のどんな機密を誰に漏洩したというのか? 党の政治紀律、組織紀律、秘密保持紀律とはどのようなものか? 目下は知るすべもないが、周がしでかしたことは、党の歴史においてかつて出現した「叛徒」と大した差はないだろう。中国共産党と世界の多くの政党は同じではない。党員は厳格な規律を要求され、それ自体が党の本質であり、長期の闘争の経験における総括なのだ。このため、今日の入党誓詞の中に、「党の秘密を守る」「永遠に党に謀反を起こさない」「党への忠誠」「常に党と人民のために一切の犠牲を払う覚悟」などの言葉が散見するのである。党史上、多くの命を懸けて信条を守る誓いがあり、党の秘密を守った英雄的人物があった。しかし、敵の拷問に耐えられず、誘惑に負けて変節した叛徒もあり、その中には党の高級幹部も少なくなかった。…

こういう論評とともに、1930年代に党中央秘密特務組織の責任者でありながら国民党に投降し大量の党機密を漏えいした顧順章など党歴代の叛徒5人の名前を列挙している。「叛徒」「売国奴」というのは、中国共産党政治において死刑に値する罪であり、フェニックステレビなどが、この激しい論評が何を意味するのか、盛んに取り上げて解説している。「周永康が叛徒であると決めつける文章のあと、中国共産党史上の高級幹部叛徒5人の名を列挙し、その5人がいずれも死刑になっている。…では、この5人が例外なく死刑になっているということは、周永康の最後はどうなるのか? 非常に意味深な文章である」

巨額汚職、愛人たちが情報収集

ところで周永康はいったい何をしたと言われているのだろうか。もう一度整理してみたい。まず巨額汚職である。これまで中国メディアに報じられているところを総合すると、周永康は石油企業トップから政界入りし、党中央に石油閥を形成し、石油企業との癒着により巨万の富を得ていた。その汚職規模は数千億元に上るといわれている。また四川省の書記時代に築いた人間関係を四川閥と言う形でまとめあげ、後に周が中央政法委員会書記(公安・武装警察のトップ)の地位につくと公安関係人事も把握し、石油閥、四川閥、公安閥、そして彼の秘書経験をもつ側近たちのグループを束ねて、広範囲の利権グループを掌握していた。また家族・親族、友人、愛人たちを汚職や情報収集の手駒にも使っていた。中でも「百鶏王」と呼ばれる精力絶倫の周永康には大勢の愛人がおり、その中には軍属歌手で習近平国家主席夫人の彭麗媛の妹分にあたる湯燦や、CCTVの美人キャスター葉迎春、沈冰といった軍や報道の中枢にいる女性たちも多くいた。こういった女性たちをパイプに使い、軍との関係強化やメディアコントロールも行っていたと見られている。

また殺人容疑も噂されている。周永康の最初の妻・王淑華は不審な交通事故で死亡。これは周永康が仕組んだ謀殺ではなかったかといわれている。もちろん、裏のとれていない話ではあるが、当時、周永康は別の愛人と付き合っており、その愛人が今の妻でCCTV編成部に勤務していた賈暁燁で、彼女が妊娠した(後にウソだとばれた)と言ったことから、いつまでも離婚してくれない王淑華を殺害したというのがもっぱらの噂である。一説によると賈暁燁が、江沢民の妻の王冶平の妹の娘であり、江沢民の親戚になり中央権力へのコネを得るために、周永康が長年連れ添った妻を殺害したという見立てもある。

殺人容疑、クーデター首謀、機密漏洩…

周永康の妻が江沢民の親族であるという噂はかねてから流れていたが、それが最初の妻か二番目の今の妻かは情報が錯そうしていた。以前、このコラムでは王淑華が王冶平の姪であるという噂を紹介したと思うが、最近信じられているのは、四川省党書記時代の周永康に2001年に後妻に入った賈暁燁が、周永康と江沢民をつなげる女性であったという話である。また彼女の姉・賈暁霞は、中国石油カナダ支社の首席代表というポスト(現在離職、行方はしれず)についており、周永康事件の石油閥汚職に連座しかねない立場にある。そして、すでに失脚、服役中の薄熙来とともに、習近平政権からの権力奪取の計画に加担していたという噂がある。いわゆるクーデター首謀説である。もし「反党的」と言われる謀反の疑いがあるとしたら、このことではないか、とみられている。これらの容疑はすでに、中国メディアでも海外メディアでもふれられていたが、新華社発表では「党と国家の機密漏洩」という、いままでにあまり聞かなかった容疑がふくまれている。これは、何を指すのか。一つ推測されるのが、2012年6月にブルームバーグが報じた、習近平ファミリーの不正蓄財疑惑で、習近平の姉らが3.76億元を蓄財しているというスクープだ。この報道が習近平の逆鱗に触れ、ブルームバーグが強制捜査を受けたことはすでに報道されているとおりである。ブルームバーグのネタ元は、香港紙蘋果日報が報じているように李東生・元公安副部長(失脚済)らしい。李東生は元CCTV局長でテレビマン時代に周永康にCCTV美人キャスターらを愛人にあっせんした功績で、公安副部長に取り立てられた周永康の側近中の側近。また同じキャスターの愛人を共有する“義兄弟”関係にあり、また周永康と賈暁燁を引き合わせて結婚させた“仲人”とも言われている。李東生に習近平スキャンダルをブルームバーグに流させたのが周永康ではなかったか、と言われている。

もう一つは、2014年1月に世間を騒がせた「中国オフショア金融の秘密」報告。これは国際調査報道ジャーナリスト連合に匿名で送り付けられたデータを連合に加盟するメディア記者たちが手分けして裏をとり、習近平や温家宝の親族がどれほどの財産を租税回避地のオフショア金融に隠し持っていたかを報じたもの。誰がこの特ダネデータを送り付けたかは不明ながら、このオフショア金融リストに、当然入っているはずだと思われてきた江沢民、周永康、曽慶紅の名前が入っておらず、上海閥、つまり周永康筋がネタ元であるという推測はされていた。

愛人のスパイ容疑もリンクか

もう一つ興味深いのは、今年に入って、周永康や徐才厚・元中央軍事委員会副主席(失脚済)らの愛人であった軍属歌手の湯燦が、実は生きていて国家機密漏洩などのスパイ容疑で懲役15年の判決で服役中という情報が相次いで香港メディアに流れたことである。彼女については拙著『現代中国悪女列伝』(文春新書)でも紹介しているが2011年12月以降、突如行方不明となっており、秘密裡に処刑されたという噂も流れていた。だが、周永康の処分が発表される前後から香港紙で彼女が実は生きており、湖北省武漢の刑務所に服役中で、囚人たちに声楽指導をしているという情報が流れ始めた。報道によると、彼女は軍や党の幹部との愛人関係を通じて得た、中南海内の最高指導部の居宅や事務所の地図、軍事・経済情報を米国に渡していたという。彼女は米国に遊学中に、米国から工作員としての教育を受けたという話も伝えられている。 また最近、湯燦が周永康の秘書の一人・余剛(失脚し服役中)と同棲していたという情報も流れており、彼女のスパイ罪と周永康の国家機密漏洩がリンクする可能性もあるかもしれない。

在米亡命華人学者の何清漣氏が自分のブログでこんな指摘をしている。「少し前に中国が反スパイ法を発表し、すべての兆候からみると周永康が極めて重い刑を受ける可能性はあるだろう。類似事件ではこの10年以上の間、中共高官で外国への機密漏洩で死刑に処せられたのは劉連昆少将だけ。台湾に情報を漏らしたかどで1999年に死刑にされた。ほかに姫勝徳少将がアモイ遠華密輸事件で軍事情報を売って2000万以上の暴利を得たという事件では、検察側は収賄、汚職、公費横領罪など多数の罪名で起訴したが、軍事法廷一審では執行猶予付き死刑だった。姫勝徳の量刑はその父親が共産党元老の姫鵬飛であることを考慮し処置を軽減したものと思われる。周永康が、これまでの共産党の暗黙のルール“常務委員は罰せず”を考慮するかどうかによってその刑の重さが決まる」

恐怖政治の始まりか、権力闘争は続く

文革の終結とともに江青ら四人組が逮捕され1981年に裁判が行われたが、江青は死刑にはならなかった。この裁判について人民日報などは当時「法治国家到来の始まり」と評価している。とすれば、周永康に死刑判決が出るようなことがあれば、文革以前に戻るという言い方もできるかもしれない。“常務委員は罰せず”という最高権力者だけが優遇される暗黙のルールがなくなり法の平等が実現するというよりは、共産党体制内に、不満分子が増え、“死刑”という厳しい見せしめ無しでは、党の団結が守れない“恐怖政治”時代に入ってきたともいえないか。だが、実力を伴わない強権の発動は、内なる敵をさらに増やす可能性もある。周永康事件で江沢民氏の連座は免れたとしても、胡錦濤の大番頭と呼ばれた令計画・党中央統一戦線部長への包囲網はじりじりと狭まっているという話も聞く。反腐敗キャンペーンを建前にした権力闘争はまだ続くはずだ。こういう状況で、周永康事件は、中国法治の行方と共産党体制の盤石さを占う上でも重要な裁判になりそうだ。

12/11日経ビジネスオンライン 鈴置高史『閉塞感広がる韓国社会  「分水嶺の韓国」を木村幹教授と読む』について

日経記者の鈴置高史氏は日経の記者の中で春原剛氏と共に反日に染まっていない優れた記者です。鈴置氏の書いた『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』を読みましたが日米韓の問題を浮き彫りにした素晴らしい著作です。日経は経済専門紙のように思われますが、政治記者の汚染度はひどく、例の「富田メモ」なるものを全文掲載せずに憶測で報道したりしています。本日(12/17)の日経1面で秋田浩之記者が「安倍政権への注文」の中で「経済を入口に  ならば、まずは経済交流の「血液」を循環させ、日中関係の体温を上げつつ、首脳交流を回復していくのが次善の策だ。その間、衝突を防ぐため、危機管理の体制づくりも急ぎたい。従軍慰安婦問題でぶつかる日韓関係にも、同じことが言える。すぐに打開できないなら、とにかく経済から、両国の氷を溶かすしかない」と述べております。今の世界の国際力学が全く分かっていません。現在武力を用いての戦争は国際世論のバッシングに遭い、なかなかできません。アメリカ、ロシアがやっているのは局地戦です。それで各国は通商外交で「武器なき戦争」を戦っているのです。韓国が以前外交通商部を持っていたのはそれが分かっていたからです。日本を慰安婦問題や南京虐殺で貶め、不道徳な民族の烙印のイメージを世界に広めることで直接戦争しなくても彼らには強い日本製品へのダメージを与えることができます。そこが丸きり秋田氏というか大半の記者が分かっていません。相手国を経済的に富ませればそれが軍事力の拡大に繋がることが脳内お花畑の人達には見えないのです。日本は「中国・韓国と付き合わなくても経済的に困ることはない」ことを三橋貴明氏が論理的に証明しております。両国とも法治国家でなく暴力団国家です。個人で考えれば誰がヤクザに進んでみかじめ料を払いますか?自分の家の名誉を傷つける輩と付き合いたいと思いますか?今度の衆院選で自民党が圧倒的に支持を受けたのは他の政党では中韓にまともに対峙できないという国民の判断があったからです。中韓と経済面で付き合って日本にいいことは少しもありません。技術をパクられ、低価格・不安全な商品が日本に流入してきます。池尾慶大教授は「経済成長は資本の投入、労働力の投入、生産性の向上よりなる」と言っております。田村日経記者の言うように中国での工場を日本に回帰させ、池尾教授の言う3要素を伸ばすようにするのが正解と思います。

記事

韓国社会に急速に広がる閉塞感。木村幹・神戸大学大学院教授と読み解く(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。

名門大学も就職難

木村:2014年9月、高麗大学で1カ月間教えました。「韓国の早稲田」と言われる私立の名門校です。韓国の大学からは時々、講義を頼まれるのですが、以前と比べ、学生に元気がなくなったとの印象を強く持ちました。ひとことで言えば、閉塞感が漂っているのです。直接的な原因は卒業しても職に就けないことです。高麗大学は大規模の大学の中では一番就職率が高いのですが、それでも70%に達しません。非正規職を入れてです。3分の1弱の学生に職がないのです。 ただ、若者の就職難は5年ほど前――李明博(イ・ミョンバク)政権の時も同じでした。しかし、当時の学生はまだ、何かしらの希望を持っていた気がします。例えば、次のような感じです。入るのは難しいけれど、サムスン電子のような大財閥に入れば前途が大きく開ける。財閥企業は世界の強豪の一角として、成長し続けているのだから……。財閥に入らなくともベンチャー企業を起こせばよい。韓国は世界に誇る情報技術(IT)を持っているのだ……。彼らはこう考えていたのです。でも今や、財閥企業のフラッグシップたるサムスン電子でさえ、中国企業に押され、かつての勢いがなくなりました。 ベンチャーの方はもっと深刻かもしれません。一時期もてはやされたITベンチャーブームは、すっかり過去のものとなりました。その象徴が、ベンチャーの旗手的存在だった安哲秀(アン・チョルス)氏の権威失墜でしょう。政界入りして以降の彼は、人が変わったかのように輝きを失ってしまいました。

盛り上がらなかったアジア大会

–韓国の若者は元気がいい、というのが日本での通説でした。米国や中国の大学に、日本人とは比べものにならない大量の若者が学んでいます。

木村:「グローバル化」に関しても挫折感が広がっています。確かに韓国からは、大量の学生が米国や中国に留学します。でも当然ながら、すべての人が外国で成功できるわけではありません。海外で取得した学位を持っている人も増えましたから、希少価値も減りました。苦労して海外で勉強しても、韓国で簡単に就職できる状況ではなくなっています。だからこそ、不景気もあいまって韓国から留学する人の数さえ、この数年間、減少を続けています。韓国の若者は「脱出口をどこにも見いだせない」状況に陥っています。だから強い「閉塞感」を抱いているのです。

鈴置:若者だけでしょうか。

木村:「閉塞感」は韓国社会全体に広がっています。2014年9月から10月に仁川でアジア競技大会が開かれました。韓国でのアジア大会は1986年のソウル、2002年の釜山に続き3回目です。でも、今回は全く観客が集まりませんでした。韓国人からも「これだけ盛り上がらないのは予想外だった」との声があがりました。アジア大会はしょせん“ローカルな大会”だから、というのも原因でしょうが、それだけでは説明できません。今回の大会では南北が対決するサッカーや、韓国選手が大活躍するアーチェリーなど見どころがいくつかありました。注目すべきは、そのような会場にも観客がさほど集まらなかったことです。

「突破口」がない

鈴置:それはニュースですね。韓国選手が金メダルを取りそうな競技を韓国人が見に行かないとは。

木村:簡単に言えば、今の韓国人はスポーツイベントを通じてさえ、夢を見ることが難しくなっているのだと思います。 2002年のワールドカップでは「テーハンミング(大韓民国)!」と叫ぶ人々がソウルの中心街を埋め尽くしました。当時の韓国人は躍進する韓国チームに、自らの将来を重ねて興奮したのです。それに比べ、今の韓国人は明らかに白けています。

鈴置:ワールドカップは1997年の通貨危機の少し後でした。韓国社会には「国も個人も大きな犠牲を払いながら、力を合わせ危機から脱出した。世界よ、見よ」――との高揚感がありました。

木村:あの頃と比べ、今は韓国という国家の信用も高まったし、経済規模も飛躍的に拡大しました。でも、皮肉なことに国の安定感が増すと同時に、閉塞感も高まっているのです。

–なぜでしょうか。

木村:韓国は大きく、強くなりました。しかし「突破口が見いだせない」という、これまで経験しなかった悩みに直面しているのです。

タプタプハダ

鈴置:通貨危機の脱出法は自明でした。金融部門の不良債権を処理し、ゾンビ企業を潰し、残った企業も従業員を整理解雇する――。大きな苦痛を伴いましたが、進むべき道は分かっていました。実行力の有無だけが問題でした。韓国人の自信の源泉である、1960年代以降の急速な経済成長は、もっと簡単でした。すぐ隣に日本というお手本があって、その通りにすればいいのですから。でも、今抱えるのは「解決策が見当たらない問題」ばかりです。朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹のコラム「タプタプハダ」(韓国語、10月30日)が、それを鮮明に描いています(注1)。

(注1)この記事は朝鮮日報の有料会員だけが読める。

「タプタプハダ」という韓国語の形容詞は、日本語の1つの言葉には置き代えにくいのですが「心配事があるのだが、解決する方法もないのでますます憂鬱になる」といったニュアンスです。コラムの骨子は以下です。

中国製スマートフォンに負ける

•韓国が世界に誇ったスマートフォンも、中国の無名の企業が恐ろしく安い価格で売るようになった。産業研究院は4年以内に半導体と自動車を除いた全産業が中国に追い越されると予想している。

  • 1990年前後に生まれた子供は、小学校に入る頃、通貨危機に出会った。高校を卒業する頃、リーマンショックを経験した。受験地獄を乗り越えて入った大学を卒業しても、いい職に就くのは難しい。これが世界最低の出生率と、世界最悪の高齢化を生み出している。

•過去10年間で廃業した自営業は800万社に肉薄する。韓国銀行総裁は「家計負債が1000兆ウォン(約108兆円)を超え、消費を委縮させる段階に至った」と診断する。

•ある経営者は「我が国はピークを越えたようだ」と言う。国内外ともに低成長の今、官僚も「打てる政策手段はない」と打ち明ける。

•一時は世界で11位の規模だった韓国経済が15位に後退した。ブラジル、ロシア、インドに抜かれたのだ。さらに落ち込むのは時間の問題だ。

–問題は中国からの追い上げと少子高齢化で未来がない、ということですね。

高齢化への備えがない韓国

鈴置:ええ。いずれの問題も「未知との遭遇」です。韓国は日本の産業構造と技術を模倣することで成長を実現しました。常に追う側だったのですが、初めて追われる側に回ったのです。今度はお手本にすべき青写真がありません。ことに追撃者が巨大な中国ですから、恐怖感もひとしおでしょう。後者の少子高齢化も日本が“先輩”なのですが、その日本にも解決策がない。ことに韓国は公的年金や介護保険など、高齢化への備えが不十分です。このままでは国全体が、日本とは比べものにならない悲惨な状況に直面することは目に見えています。 楊相勲論説主幹が自営業の廃業数に触れたのは理由があります。韓国の民間企業の社員は、多くが50歳代半ばで退職を余儀なくされます。しかし、年金だけでは生活できない人がほとんど。そこで慣れない自営業に手を出し、失敗するケースが相次いでいます。大量の廃業は少子高齢化問題の、韓国独特の症状なのです。膨れ上がる家計負債を指摘したのは、低成長で所得が増えないため借金する人が増え、社会問題になっているためです。低成長も少子高齢化が最大の原因です。このところ、韓国紙に「タプタプハダ」を訴えるコラムが増えていました。ただ、韓国人は喜怒哀楽が極端です。新聞も一喜一憂します。昨日「韓国経済は絶好調」と書いていた新聞が、今日は「お先真っ暗」と嘆くのです。韓国紙を額面通り受け取ると間違えます。しかし、楊相勲論説主幹がそう書いたので「閉塞感は一時的な感情論ではなく、根深い問題になったのだな」と確信しました。楊相勲論説主幹は韓国には珍しく、情緒に流されないで記事を書く記者だからです。

財閥の総帥は悪者

木村:今回のソウル滞在中に驚いたことがあります。それはサムスン電子の李健熙(イ・ゴンヒ)会長の入院を、多くの韓国メディアが大事件として報じていたことです。会長の健康回復を、普通の韓国人が心から祈っているように見えました。

鈴置:興味深い観察ですね。韓国で財閥のオーナーは“悪者”。李健熙会長の父親で、サムスングループの創業者の李秉喆(イ・ビョンチョル)氏が1987年に亡くなりました。この時、ほとんどの韓国紙は訃報を1面トップで扱いませんでした。 その少し後に松下幸之助氏が亡くなったのですが、日本の各紙は当然、1面トップ。対照的な報道ぶりでした。当時ソウルに住んでいた私は、日本をよく知る、韓国有力紙の編集局長に「日本における幸之助の存在よりも、韓国における李秉喆の存在の方がはるかに大きい。だのになぜ、1面トップにしないのか」と聞いたものです。答えは「確かにそうだが、韓国では財閥は政権と癒着して儲けた悪い奴、というイメージが強い。大きく扱えば、読者から必ず反発を食う」でした。

木村:鈴置さんの指摘通り、韓国では財閥の総帥は「悪い奴」として扱われてきました。でも、今では多くの韓国人が「李健熙会長後のサムスン」に懸念を抱き、このカリスマ経営者の回復を心から祈っているのです。「この先どうなるか分からないのに、これでサムスンまでこけたら大変だ」という韓国人の不安が現れているように思います。

「人口オーナス期」に突入

–少子高齢化はもっと前から予測できたのではありませんか?

鈴置:その通りです。グラフは『老いてゆくアジア―繁栄の構図が変わるとき』を書いた日本総研の大泉啓一郎・上席主任研究員が作ったものです。グラフ1を見ると、日本と同様に韓国で急速な高齢化が進んでいることが分かります。

グラフ1:日中韓の高齢化率の比較

comparison of elderly rate

グラフ2からは、人口構成が経済成長にマイナスの影響を与える「人口オーナス」の時期に韓国も突入し始めたことがよく分かります。働かない年代の人口の数を働く年代のそれで割った「従属人口比率」が底を打ったのです。

グラフ2:日中韓の従属人口比率の推移(中位推計)

subordinate population rate

大泉さんは「韓国の専門家が真剣な顔で日本の状況を聞いてくるようになった」と語っています(「日本より重い『日本病』に罹る韓国」参照)。2012年には韓国の一部メディアも、日本の例をあげて警告を発しました(「『日本病にかかった』とついに認めた韓国」参照)。卸売物価上昇率も前年同月比で、2012年9月から2014年5月まで20カ月連続でマイナスを記録するなど、明らかに少子高齢化の症状が出ていました。ただ、その警告は世論に火を付けませんでした。「日本を追い越した」と韓国メディアは大声で謳いあげていたので「あの落ちぶれた日本と同じ道をたどる」ことを意味する予測は嫌われたのです。

「下り坂の韓国」に気づく

木村:韓国人は言わば「坂の上の雲」を目指し、ひたすら走ってきました。それは日本の背中を追うことでもあったのですが、ある日突然、前を走る日本の姿がかき消えた。 おかしいな、と思いながら走り続けていると突然、下り坂を降りていく――人口減少という名の坂を転げ落ちている――日本が視野に入った。「ああ、自分も今、峠を越えたのだ、後は下るしかないのだ」と、ようやく気がついた感じでしょうか。

鈴置:保守論壇の大御所、朝鮮日報の金大中(キム・デジュン)顧問も2014年11月11日に「韓国の行き詰まり」を書いたのですが、そのコラムの見出しが、まさに「我々は下り坂を行く」(韓国語)でした(注2)。(注2)この記事は朝鮮日報の有料会員だけが読める。なお、韓国の高齢化のスピードはこれから加速するので、“下り坂”では日本を追い越してしまうかもしれない、との恐怖感が韓国の専門家の間には生まれています。

セウォル号のトラウマ

–ではなぜ、少子高齢化が今になって、ようやく語られ始めたのでしょうか。

木村:現在の韓国の不安感、閉塞感の「公論化」のきっかけは、2014年4月の旅客船「セウォル号」沈没事件だと思います。

鈴置:悲惨な事故でした。テレビが中継する中、300人以上を乗せた船がなすすべもなく沈んでいく。多くは高校生で、船長以下多くの船員がわれ先に逃げ出す中、「船に留まれば安全だ」との指示を無心に信じて死んでいったのです。

木村:「若者が死んでいくというのに何もしてやれない」という無力感が国全体を覆いました。韓国の人たちが自らの国を見つめ直す、大きな契機になったと思います。

鈴置:韓国のメディアは「発展途上国型の事故だった」と声をそろえました。転覆しやすい構造に改造しても、簡単に荷崩れするやり方で貨物を積んでも、国の検査を通っていた。救命ボートも使える状態にはなかったのに、これも検査をパス。 そして船長以下の船員は乗客に向かって「船内にいれば大丈夫」と言い残して先に逃げたのです。救命ボートを使えないことが発覚するのを恐れたためだ、と指摘した韓国紙もあります。これら一連の無責任な行動に対し、韓国人は「我が国は一流の先進国になったはずではなかったのか」と怒り始めたのです。

より攻撃的になる韓国人

木村:事故の処理でも韓国人のトラウマは広がりました。国会で真相究明委員会を立ち上げようとしたのですが、一部の強硬な遺族の要求もあって、与野党は半年間近くも委員会を構成できなかった。その間、国会は完全にマヒし、経済活性化など緊急に処理せねばならない重要法案はたなざらしになりました。韓国人はここでも「我が国は本当に大丈夫なのか」と考え込みました。セウォル号による極めて深刻な「社会的ショック」を契機に、韓国人は少子高齢化や中国の追撃といった、これまであまり目を向けてこなかった問題に関して議論を始めたのです。

鈴置:木村先生と同じ時期に訪韓し、韓国の記者から「閉塞感の蔓延した韓国」を聞いた日本の専門家がいます。韓国記者は「この重苦しさを振り払うために、韓国人は攻撃的になるだろう」と予測したそうです。

閉塞感のはけ口は?

–今以上にですか? さらに反日をやるのですか?

鈴置:反日も続けるでしょうが、それに限らないと思います。政権としては、閉塞感へのはけ口が自分に向かないようにできるのなら何でもいいのです。歴代政権の定番の手口ですが、前の大統領を叩こうと考えるかもしれません。あるいは国内の左翼集団の“陰謀”を暴き、北朝鮮に対する国民の怒りに火を付ける手もあります。

木村:「反日」は今や、国内的に人気のあるテーマではない――正確には「あまりにしばしば用いられたために、飽きられつつあるイシュー」になってしまいました。朴槿恵(パク・クンヘ)政権が使うとしたら「北朝鮮カード」ではないかと思います。このところ韓国政府の対北政策が強硬姿勢に振れており、南北関係は悪化しつつあります。国民の「憂さ晴らし」を実行するにはちょうどいい環境が生まれつつあります。

 

決断できない大統領

–対北強硬策をさらに強める可能性があるということですね。

木村:ええ。ただ、こうした機会主義的ではあるものの、政権にとっては合理的でもある判断を、今の韓国政府が実行に移せるかは疑問が残ります。北朝鮮カードを使うなら「セウォル号事件」で政権批判が高まっていた時にこそ使うべきだったのに、そうはしなかった――あるいはできなかったのです。少子高齢化や中国の追い上げなどの経済問題も同様です。2013年2月に発足して以来、大統領選挙で公約したことを含めて、この政権は大きな成果をほとんどあげていません。 もちろんこれらは難問です。だから解決するには利害対立を調整する強いリーダーシップが必要なのです。ただ、朴槿恵大統領がそれを発揮しているとは見られていません。この「何も決断できない」朴槿恵大統領への不安こそが今、韓国社会で膨れ上がる閉塞感の温床になっているのだと思います。 はたして、分水嶺にある韓国をいい方向に引っ張っていく指導力が朴槿恵大統領にあるのか――。韓国の人々は今、青瓦台(大統領府)を不安の眼差しでじっと見つめているのです。

(次回に続く)

 

 

 

12/14産経ニュース 田村 秀男『日本企業は中国に見切りを』 記事について  

産経の田村記者の記事です。彼は元日経記者ですが日経とは肌が合わなかったのでしょう。日本のマスコミは狂っていますから。他社から産経に移ったのは古森義久氏、伊藤正氏がいます。中国批判の記事は日経では書きにくいのがあるでしょうから。日経は経団連の御用新聞で、経団連が中国進出を煽っていました。中国と言うモンスターを造り、軍事力で日本を制圧しようとする意図を持たせるまでの力を与えたのは間違いなく彼らです。「恥を知れ」と言いたい。会社のトップ連中の集まりがこの程度です。幕末から昭和にかけて真のエリートはいましたが、今は存在しません。自分のことと金儲けだけ。愛国的経営者は殆どいません。三島が言った「無機的な、からつぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るのであらう。」の予言の通りです。

日本人が豊かさを実感できるよう田村記者が言うように中国進出している日本企業は中国から撤退し、日本に工場を作るべきと思います。「海外で稼いだ金は日本人には分配できない」と考える経営者は自分を生んでくれた大地に対して感謝の念が足りません。

記事

今から29年前の1985年9月、ニューヨーク・セントラルパーク脇のプラザ・ホテルで日米欧5カ国の財務相・中央銀行総裁が集まって、ドル高是正で合意した。外国為替市場では円高ドル安が急速な勢いで進行していく。日本の某新興不動産業者一行はナマオケ楽団を引き連れ訪米し、夜はホテルで演歌に興じながら全米を回り、物件を見つけては札びらを切って買い漁った。米側は、日本企業に押されていた自動車や半導体・スーパーコンピューターなどハイテク部門で巻き返そうと躍起になっていた。円高ドル安に加えて、中央情報局(CIA)まで動員して半導体の海外市場のデータを収集して日本の半導体業界のダンピングの証拠をそろえ、通商法を活用して制裁条項を発動するほど徹底していた。結果は、日本の自滅同然だった。不動産業者はことごとく米市場で巨額の損失を出し、軒並み撤退。日本経済自体は成り上がり企業の失敗談で済むはずはなかった。

日銀による金融緩和マネーは株式や不動産市場に流れて、バブルを膨張させ、90年代初めに崩壊。今なお脱し切れていない慢性デフレの淵源(えんげん)はプラザ合意にあると言ってよいだろう。それほど、通貨水準の変更は一国の運命を狂わせる可能性がある。そこで、少し気になったのが、最近の急速な円安ドル高の進行だ。過去の円高期に大変な勢いで日本企業が中国に進出した。その通貨、人民元の方はドルに対して小刻みに上昇している。アベノミクスが始まって以来の1円当たりの元相場と、プラザ合意後の1ドル当たりの円相場の推移を照合したのがグラフである。円・元のトレンドはかなりの程度、プラザ合意後のドル・円に似通っている。プラザ合意当時の日本は今の中国、米国は日本とでも言うべきか。例えば、チャイナ・マネーによる不動産投資だ。カナダ、豪州やシンガポールでは、中国人による買いの影響で、住宅価格が上がり過ぎたとして、市民の間で反発が高まっているほどだ。今後は東京都心などの不動産の買い漁りに拍車がかかるかもしれない。元は円に対して50%以上も高くなったから、中国人にとって東京などの不動産は割安もいいところだ。中国国内の不動産市況が悪化しているのに比べ、中国人投資家の間では2020年の東京五輪に向け、相場が上昇するとの期待も高い。

肝腎なのは、日本企業である。プラザ合意後、米半導体産業はドル安に技術開発戦略の強化などを組み合わせてインテル、マイクロンが息を吹き返した。自動車ビッグ3も小型車開発の時間を稼いだ。今回、日本企業はどうするのか。円安に伴う収益増を国内外の株主への配当に回して喜ばせるだけなら、日本全体への波及効果に乏しい。割高になった中国での生産に見切りを付けて、本国にカムバックする戦略に本格的に取り組んだらどうか。 (産経新聞特別記者)

産経ニュース【お金は知っている】2014.12.14

$andRMB

 

12/13日経『中国景気、減速感なお強く 生産など伸び鈍化』記事について

日経にも中国経済の減速記事が載り出すようになってきました。あれだけ中国進出を煽っていたのが様変わりです。7%成長なんてありえないと思います。外国企業の投資誘致と官僚の出世のため、必ず上げ底をしています。前にも書きましたように21兆$もの借金を国の経済主体が負っています。この債務をどのように返済しようとしますか?多分踏み倒すだけでしょう。中国国内でやり合う分にはいいですが、外国企業の債務も勿論踏み倒されるでしょう。みかけ利益が出ている企業は配当、ロイヤルテイで早く資金を日本に還流させた方が良いです。下の若干古い2012年の融資と輸送量のグラフ(夕刊フジより)ですが、趨勢は変わらないと見ていいでしょう。李首相が言ったのは「電力消費、鉄道貨物輸送量、銀行融資を見ないと本当に経済成長しているかどうか判断できない」とのことですが、これを見ますと中国が嘘を言っているのが良く分かります。新規投資は避けるべきで、投下資本を如何に損を少くなくするかを考えた方が良いでしょう。ロイターの記事も似たように書いています。

WRAPUP 2-China’s factory and investment growth flagging, more stimulus seen Fri Dec 12, 2014 4:36am EST

BEIJING, Dec 12 (Reuters) – China’s economy showed further signs of fatigue in November, with factory output growth slowing more than expected and growth in investment near a 13-year low, putting pressure on policymakers to unveil fresh stimulus measures. In a sign that banks were already responding to Beijing’s instructions to reflate the economy, however, new lending jumped 56 percent in the month. Weighed down by a sagging housing market, China’s economic growth had already weakened to 7.3 percent in the third quarter, so November’s soft factory and investment figures suggest full-year growth will miss Beijing’s 7.5 percent target and mark the weakest expansion in 24 years. ”The data bodes ill for GDP growth in the fourth quarter, which is bound to slow further,” said Dariusz Kowalczyk, senior economist at Credit Agricole CIB in Hong Kong.

Growth in real estate investment also slipped for the first 11 months of 2014, though property sales registered their best month this year, buoyed by Beijing’s efforts to revive a sector on which so much of the economy depends.

After September’s move to cut mortgage rates and downpayments for some home buyers, the People’s Bank of China cut interest rates on Nov. 21 for the first time in two years. The surprise rate cut signalled policymakers’ growing concern that a sharper slowdown in the economy would raise the risk of job losses and loan defaults. Factory output rose 7.2 percent in November from a year earlier, down from October’s 7.7 percent, the National Bureau of Statistics said on Friday, and missing analysts’ forecasts of 7.5 percent. Fixed-asset investment, an important driver of growth, grew 15.8 percent in the first 11 months from the same period last year, slipping from 15.9 percent in the first 10 months.

FREER LENDING

The rise in new loans comes after sources told Reuters on Thursday that the People’s Bank of China (PBOC) had instructed banks to lend more and had quietly relaxed the enforcement of loan-to-deposit ratios to further that end. ”The lending numbers give hope that investment will pick up now that there is more funds available to pay for capital spending projects,” said Kowalczyk. Not all the new lending is being put to productive use, however, as some will just replace existing debt, and there is evidence that speculators are ploughing some of it into a wild stock market rally of recent weeks. Other data this week showed China’s export growth slowed sharply in November, while imports unexpectedly shrank. And despite the resulting expansion in the money supply, consumer inflation hit a five-year low, stoking expectations that Beijing may move more aggressively to stave off deflation, including a cut to banks’ reserve requirement ratio (RRR), which would allow them to lend still more. ”We’re ready for an RRR cut at any point. We think there will be 100 basis points of cuts over the next couple of quarters,” said Tim Condon, head of Asia research at ING in Singapore.

The closure of many factories in northern China early in November to reduce air pollution as Asia-Pacific leaders met in Beijing likely curbed industrial output, but demand for products such as concrete and steel was also hit by slackening growth in export orders and the cooling housing market. A bright spot in November was retail sales, where growth ticked up to 11.7 percent from 11.5 percent in October, which was the slowest pace since early 2006. Analysts expect further interventions by Beijing in 2015 after top leaders at the annual Central Economic Work Conference on Thursday pledged to make fiscal policy “more forceful” while keeping monetary policy “not too tight or too loose”. Economists who advise the government have recommended that China lower its economic growth target to around 7 percent in 2015. (Writing by Will Waterman; Editing by Kim Coghill)

China loan transportation

記事

【北京=大越匡洋】中国国家統計局が12日発表した11月の主要経済統計によると、生産と投資の伸びが一段と鈍った。建材や乗用車の生産の落ち込みが目立ち、雇用情勢にも影が差しつつある。中国人民銀行(中央銀行)は11月、2年4カ月ぶりの利下げに踏み切ったが、当面は減速感が強い景気の下支えに向けて緩めの金融政策を続ける構えだ。11月の工業生産は前年同月に比べ7.2%増となり、伸びが前月より0.5ポイント鈍った。住宅販売の不振を受け11月のセメントの1日当たり生産量は4.0%減り、減少幅が前月より2.9ポイント広がった。粗鋼や板ガラスの生産も前年水準を割り込んでいる。乗用車の生産量も4.5%減と、今年初めて前年を下回った。11月に北京で開いたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の影響を挙げる声もある。中国政府は期間中の大気汚染を減らそうと北京、天津、河北省など広い地域で工場の操業や建設を停止・制限した。交通規制で資材を運べず、減産を迫られた企業もある。一時的な減速とは言い切れない面もある。住宅はその典型例だ。1~11月の不動産販売額は前年同期比7.8%減った。1~11月の不動産開発投資は11.9%増と、伸び率はリーマン・ショック後の2009年1~7月以来の低水準に沈んだ。11月の利下げをきっかけに上海など大都市で住宅価格が下げ止まる気配はある半面、住宅市況の不振を背景にした景気の下押し圧力はなお強い。建設・設備投資の合計である固定資産投資も1~11月は15.8%増と、1~10月より伸びが0.1ポイント鈍った。2割近かった昨年通年の伸びを大きく下回る。消費の動向を示す社会消費品小売総額は11月に前年同月比11.7%増と、前月の伸びを0.2ポイント上回ったが、景気減速を押しとどめるほどの力強さはない。「高望みはしていないが、楽観もしていない」。12月初め、重慶市内の就職フェアに訪れた大学4年生の女性は不安げな表情を浮かべた。来年の大学卒業生は750万人近くで前年より20万人以上多いとされ、若者の就職戦線は厳しさを増す。浙江省の金融会社、陝西省の食品会社、広東省の照明会社……。10月以降、中国国内では経営者が「夜逃げ」したニュースが相次いだ。山西省の民営鉄鋼大手も破産した。連鎖倒産が広がるような深刻さはないものの、不振企業の増大によって習近平指導部が重視する雇用の確保に悪影響が及ぶ恐れはくすぶる。景気の一段の悪化を防ぐため、中国政府は鉄道などインフラ案件の着工を矢継ぎ早に認可した。一方で来年の経済成長率の目標は今年の「7.5%前後」から下げ、「7%前後」が軸となる見通しだ。習指導部は安定成長の軌道に軟着陸させる考えだが、中国経済の気流の乱れは増している。

 

 

 

西尾幹二著『アメリカと中国はどう日本を「侵略」するのか』を読んで

西尾氏の本を読んでつくづく感じますのはアメリカの悪意です。一番悪いのは戦後占領政策として採った検閲です。二番は憲法の押付けです。第三は戦中の原爆投下です。一は人権侵害、二と三は国際法違反です。もっと言えば戦前の1941年7月23日、FDR(ローズベルト)はフライングタイガースによる日本本土爆撃計画に署名しました。中立国義務違反です。当然、真珠湾攻撃の前です。検閲政策はアメリカの都合の悪い部分を焚書して日本人を洗脳したわけです。WGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)の一環です。もういい加減歴史の真実に日本国民は気が付くべきです。アメリカに安全を全面的に委ねるのは危険です。勿論中国と対峙するにはアメリカの力を借りねばなりませんが。

中国は昔から民族的特性は変わりません。韓国もですが。しかし、日本の経済人のレベルは間違いなく下がっています。目先の利益に拘り、自分だけ(或は自分の企業だけ)が良い思いをすればいいという経営者が多いのでは。日本の名誉について無関心、歴史についても学ぼうとせず、ハウツーのものだけ。中国の進出熱は収まったように見えますが、これから投資したものの回収をどうやるつもりなのでしょう。

本の内容

中国の持ち駒となる韓国、北朝鮮、台湾、そしてアメリカ

「中国海軍レーダー照射事件」(ニ〇一三年一月)が起こったとき、私は「盧溝橋事件」一九三七年)に似ていると思った。なんとかして日本に先に手を出させようする、昔の支那人のやり方とそっくりだった。日本国憲法の前文で、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という言葉がある。この言葉は、中国や韓国や北朝鮮の公正と信義に期待する、ということだとしたら、あまりにもまぬけで馬鹿馬鹿しい条文であることは最近ではみなわかってきている。 しかし、「諸国民」がその三国に限られるなら馬鹿げた前提だと嘲るだけでいいがそこにはアメリカも入っているのではないか。アメリカの公正と信義に信頼して、これらの安全と生存を保持するというのが、日本の現実なのではないか。だとしたら条文を嘲るだけでは済まない。すごく真に迫った、無責任な空手形を頼りにして生きている、薄氷を踏む思いのこの国の「不安の正体」に直面するのである。 アメリカ政府は、日本の安全保障や北朝鮮政策についてはあやふやである。ヒラリー・クリントン前国務長官は「日米安保条約第五条に適応する」と言ったし、バラ ク・オバマ大統領も二〇一四年四月の訪日で、ついにそう明言した。しかし中国は、表向き怒ってみせているが、「アメリカの信頼を勝ち得ているのは、 日本よりむしろわが国だ」と言わんばかりの態度もとっている。日本のうろたえぶりが外目に見えているのであろう。 韓国はすっかり中国寄りになっていて、アメリカの言うことをあまり聞かない。 「日韓秘密情報保護協定」(ニ〇一二年六月)をアメリカが要求したが、韓国は土壇場で拒否している。

翌々月(ニ〇 一二年八月)には、尖閣問題で日本国内が乱れているのを見て、韓国大統領李明博が竹島に上陸した。韓国は、日本がすぐ中国に屈服すると見越した。日本が全面敗北すると想定して、中国に擦り寄ったのだと見ていい。それが李明博の動きだった。韓国は昔もロシアに擦り寄り、清に擦り寄り、日本にも擦り寄り、いつでも事大主義で強いほうにつく。中国は今や労せずして、日韓分断に成功している。北朝鮮もにわかに混乱している。中国とアメリカが裏で動いている証拠ではないか。中国が北朝鮮を制裁するような国連決議にサインした。これはかなりアメリカに同調している。北朝鮮を処理することにおいて、米中で話し合いが進んでいるのかもしれない。しかし現実には、アメリカが中国に北朝鮮の処理を委ねている現状をそう簡単に変えることはできないだろう。北朝鮮が中国に反抗的になることはあつても、中国から完全に離れられないのも現実である。エネルギーと食糧供給で縛られている。ただ、韓国の中国への擦り寄りはかなり決定的で、今後動かない方向のように見える。台湾もまた、馬英九政権になって以来、中国寄りになっている。台湾が尖閣沖で「水鉄砲発射」(ニ〇一ニ年九月)をやったのを覚えている人は多いだろう。台湾がやったことが、私はショックだった。台湾もまた、中国から見ると使いやすい手駒のひとつになっている。台湾を手なづけた中国は、沖縄を奪取するために、利用価値を次第に高めるだろう。中国はずるい国で、威嚇はするが、実際にはなかなか軍事的に行動しない。へタすると、中国共産党が崩壊してしまうからだが、中国は自ら日本を侵略する必要はない。韓国、北朝鮮、台湾に侵略させればいい。その三国も反日勢力になってきている。 「三国(韓北台)を利用すればいい」。中国はそう考えているに違いない。

「真実」より「宣伝力」が物を言う国 (抜粋) 長野朗の『支那三十年』より

習近平はドイツ訪問に先立って、ホロコーストの犠牲者の施設で「反安倍」の演説をやろうと企てたが、さすがにこれはドイツ政府が断った。李克強は「尖閣は日清戦争のドサクサに日本が盗んだ」と、欧州旅行で言って歩いた。こういうとき、中国政府は各国駐在の外交官を総動員する。習近平の先の例において、 五十力国の在外公館が同じ内容の政治宣伝を繰り広げたらしい。何ともおぞましい限りだが、このような宣伝は中国の国内では有効でも、平和な地域の国際社会では、かえって逆効果となることも考えられる。ただ、「南京虐殺」は当時の国民党の「宣伝」がつくった虚構であり、それに「東京裁判」が悪乗りしたのであるが、今に至るも信じている人がいるのは、「宣伝」も激しく長くやれば「現実」になりかねないという恐ろしさがある。

「支那では車賃が非常に安い。一里で十銭ぐらいだから、日本から支那に行った人は、これでは可哀想だというので、二十銭も与える。すると支那人のほうでは、これに感謝するというよりも、「こいつは十銭でいいところにニ十銭も与えるのは馬鹿なやつだ。もう少し催促したらもっとくれるだろう」というので、「少ないからもっとくれ」と言ってどこまでもついてくる。それをくれると、またついてくる。ところが反対に、一里十銭のところに八銭ぐらい与えると、「こいつはなかなか喰えない」とそのまま引き下がっていく。ある米国の宣教師夫妻が山東を旅行しているときに、道に乞食がいたので、可哀想だと思って 一円銀貨を与えた。その乞食は大いに感謝すべきはずだが、彼が考えたのは、「一円あれば一力月くらい食える(普通、乞食が貰うのは、たかだか一銭銅貨一枚くらい)。乞食に一円銀貨を投げ出すような人は、余程の金持ちに相違ない」 というので、早速仲間を語らい、先回りして宣教師夫妻を殺してしまったという事実がある。これらが車夫と同じく、「支那人の考え方が日本人とまったく異なっている」ことを示している。カネのことでちょっと書いておかねばならぬことは、支那人はカネに非常に執着を持っていて、カネを見たら一種の魅惑を感じて頭が変になるらしい。買い物に行って、十円のものを三、四円くらいにまけろと言ってもなかなかまけない。そこで カネを三円出して、これを握らせ、「これでいいだろう」と言っても聞かない。「それならそのカネを返せ、品物はいらない」とやると、もう握ったカネを離したくないのでたいていまけてしまう。支那人にカネを見せるのは危険で、長く使っているボーイでも、カネを見ると気が変わって何をするかわからない。ある日本人の小学校の先生が、月給とボーナスを貰ってきて大金を持っているところを自分のボーイに見られて殺された。〈中略〉 話が脇道に外れたが、車夫の話で知るような支那人の気持ちは、外交の上によく現れている。山東問題が喧しかったときに、山東問題を中心に大正八年以来、排日が支那全国に起こり、九年にも再発して慢性的となり、日支間に一種の暗影を投げかけ、低気圧の中心は山東問題だから、これを解決すれば日支間の暗雲はすべて一掃され、日支親善は期せずして実現するだろうと思われた。そこで華府(ワシントン)会議で山東を日支に返した結果はどうであったか。なるほど返した当座十一一力月は支那側でも日支親善みたいなことを言っていたが、十二カ月すると今度は「旅大回収」を叫び出した。日本人の考え方からすれば、山東を返して支那人の要求を受け人れてやったから、支那人も感謝して日支親善ができるだろうと思ったのは、車夫に車賃を余分にやって車夫が感謝するだろうと考えたのと同じである。ところが支那人のほうでは、われわれがちよっと騒いだから山東を返した。今度はもっと騒いだら、旅順・大連も返すだろうと言うので、また騒ぎ出した。支那人は、日本人が予期した感謝の代わりに、日本に対して軽侮の念を生じたのだ。最近、旅大問題が日支問の癌のように見えるので、旅大を返したら日支関係は一 変するだろうと言っている人がいるが、それは支那人を知らない者の言うことで旅大を返せば、次は台湾、朝鮮と進んでくることは明らかである。」

実に驚くべき洞察で、支那人のこの現代に通じる正体を一九三〇年代に、しっかり見抜いている。靖國参拝で、最初に譲歩したのが間違いだった。中曾根康弘内閣最大の失敗である。このまま日本が首相の靖國参拝をもし止めたら、次に「靖國神を廃社にせよ」と言ってくるだろう。靖國をなくしたら、次に「皇室をなくせ」と言ってくる。それが彼らの論法である。このことをよく知っておかなければいけない。こちらが一歩後退すれば、二歩前進してくる。「相手が一歩後退したのだから、自分は控え目にしよう」とか、「恩義に感じる」という感覚はまったくない。逆に、軽蔑する。下手に出るとカサにかかってくる。日本流に言えば、「雲助の徒輩」の論理である。追い詰められたヤクザや盗人との取引である。こちらは彼らに、徹底して強く対応しなくてはいけない。 謙虚、へりくだり、控え目などの美徳は、露ほどの効果も上げない。

中国サイドからの「経済制裁」なんて笑うべきこと (抜粋)

中国のGDP (国内総生産)の約八割は、官製企業が握っている。内需をつくるのは民間企業である。これでは、内需が拡大するわけがない。そこで中国の成長する官製企業は、アメリカや日本などの先進国に進出し、外貨を稼ごうとし始めている。はっきり言っておきたいのは、中国に対して譲歩する姿勢で領土問題の落としどころを探り合うようなやり方をすれば、必ず相手はカサにかかって威嚇してくる。力で押しまくってくる相手には力で押し返すしかないのだが、日本のカは今のところ軍事力ではない。投資や技術の力である。これを政治の力ードとして、なぜ使おうとしないのか。中国経済は、日本から多額の援助をもらっているときでも、アフリカに援助していた。そして、その援助を楯に恫喝しながらアフリカを味方につけてきた。中国経済はそのあと大きくなってますます牙を持ってきている。アメリカ経済にも当然牙がある。日本経済にだけ牙がない。経済人に言っておきたいが、尖閣諸島を失えば、国際社会の中で日本は軽視される。 国債は暴落し、株は投げ売りされ、国家の格は地に墜ちる。その影響はたちどころに他の経済活勛に影響を及ぼす。経済は経済だけで成り立っているのではない。戦後の日本において「経済力が国家の格を支えてきた」ことは間違いないが、 逆に言えば「“国家の格”が経済力を支えてきた」とも言えるわけである。だからこそ、尖閣諸島は経済のためにも死に物狂いで守らなければいけないのである。そうい ことを、経済人はわかっていない。私はわが国の指導層を見ていると、将来が本当に危ういように思えてならない。

ヨーロツパの「地球分割」とアメリカの「グローバリズム」

今にしてよくわかったことがある。それは、世界帝国アメリカは「地域の覇権国家を許さない」ということだ。まずイギリスをつぶし、次にドイツをつぶし、それから日本をつぶし、ロシアをつぶしてきた。そして今、中国をどうしようかと思案している。一体こんなことがいつまで続くのであろうか。こういうアメリカの体質や思考を一言で表現すると、何と言うのか。これをグローパリズム」と称するのである。グローバリズムは、最近の日本人は何か新しいよいことだと思っているようだがその正体はアメリカン•スタンダードの全面拡大に過ぎない。「世界政府アメリカの基準」を「国際基準」にするということである。そもそも「グローブ」とは「地球」である。地球を人間が全体として支配するといいう発想はアジア人にはまったくない。空間を幾何学的に分割して統治することもアジア人には考えつかないが、これを最初に実行したのは、スペインとポルトガルの間で結ばれた一四九四年の「トルデシリヤス条約」である。両国による統治方式は、カトリックのローマ法王の勅許を得て実現したのである。両国の西海岸から一定の距離を取った地点から地上をずっと縦に真っ直ぐ線を引いて、 その線をぐるっと地球の裏側まで回して、これを分割線とするのである。驚くべき大胆な計画であり、行動であった。どうしてそんなことが起こったか。当時、ヨーロツバ人は東方へ出て行こうと懸命に努力したのだが、地中海の東の出口はイスラム教徒に完全に押さえられていて、インドに抜けたいと思っても抜けられなかった。しかもイスラム教徒は、次第にヨーロ ッパの内部に侵略さえしていた。何とか情勢を脱却したいと考えていたとき、クリストファー・コロンブスとバスコ・ダ・ガマが登場したのである。コロンブスは、スペインを出発して西へ西へと進んで新大陸に到達していた。一方、ポルトガルのバスコ・ダ・ガマは、アフリカの海岸を南へ南へと下って、喜望峰を回ってインド洋へ出てきた。ポルトガルはインド洋を東へ行き、イン ドへ出る。スペインは西へどんどん行って、やがてアジアに出てくる。両者はどこでぶつかるかというとモルッカ諸島、地球の反対側のインドネシアのセレベス島(最近はスラウエシ島と言う)の東側の諸島である。そこは香辛料の集産地だから、世界中の人々がそこを狙っていた。ぶつかって両国の争いになり、やがて線引きで分けっこをしたのである。そして最終の目的地は日本だった。やがてスペインとポルトガルは国力を失い、代わりにオランダが登場し、イギリス が登場し、そしてフランスが登場することになる。この地球分割で面白いのは、南アメリカ大陸にさしかかると、ブラジルに当たるところだけが境界線上にかかって、ポルトガル側に分割されてしまう。大陸の出っ張りにブラジルがあるからだ。そのようにして、ポルトガル領に相当するとわかると、ポルトガルは大喜びして、「ああ、俺のものだ」と言って植民地にした。今でもブラジルの国語がポルトガル語である所以である。他のラテンアメリカの国々の国語は、スペイン語か英語かのどちらかである。こんなとんでもないことが起こったのも、単純に幾何学的に線を引いたからだ。地球を分割するという発想、しかも占有する権利をローマ法王庁が与えたというそのような考え方は、アジア人にはなく、西欧を越えて、アメリカに真っ直ぐつながっている。 グローパリズムとは端的に言ってこのようなことなのである。このグローバリズム思考によって、次の時代にはイギリスとロシアが中近東から東へずーっと線を引いて、地球を南北に分割するように侵略した。どこでぶつかるかというと、再び日本列島である。日本はいつも運命的な位置にある。その結果が、「日露戦争」である。イギリスとロシアの戦いを、日本がいわば代理戦争させられたようなものなのだ。英露が線を引いたとき、どちらにも属さなかった国がある。アフカニス夕ンだった。一九七九年になって突然、ソ連がアフガニスタンを侵略したのは、じっと地図を見て「そういえば、ここはロシアとイギリスのどちらにも入らない場所だったな。それじゃあ、一発やってやろうじゃないか」ということで、ソ連が侵攻したのである。隙を見せると、そういうことが起こる。アフガニスタンは中間緩衝地帯だった。それ以外の国々はすでに一度は分割統治されていて、他国は手出しできないという暗黙の約束になっていたというわけだろう。制空権を決めることは、アメリカが今実行しているが、元をただせばスペィンとポルトガルによる地球分割計画に端を発するのである。それでは次章より、日本を初めとするアジア諸国がいかに、西欧列強やアメリカ、 ロシア(ソ連)に侵略されてきたかを見ていこう。何度も言うが、日本は侵略した国ではなく、侵略された国である。否、侵略された国々の中で、そうされまいと抵抗し、戦った唯一の国である。それで独立は成功したかに見えたが、残念ながら現在、必ずしもそうはなっていない。アメリカに多数の軍事基地を許している国である。これを異常と見做す感覚をすら失っているのは異常である。日本はアジアを西欧列強から解放したと自認しているが、その日本が未だ解放されていない唯一の国なのである。だからこそ今、「歴史観の転換」をしなければならない。

Tratado de Tordesilhas

12/11日経ビジネスオンライン加藤嘉一氏『“周永康逮捕”が経済改革に与える影響は 「四中全会の成果を強調する狙いがあった」』記事について

加藤嘉一氏についてWikiを見ますと「2012年10月31日、中国国内で「東京大学法学部への合格を蹴って中国に留学していた」と発言するなど複数の経歴詐称をおこなっていた事実が『週刊文春』誌上で報じられた」とあります。中国に長く関わっていると騙すのが普通になるので、何の違和感もなくこういうことが言えるのでしょう。まあ、東大法学部と言ったって大したことはありませんが。北京大学、同大学院修了とのこと、習近平だって理科系で最高学府と言われている清華大学に裏口で入ったと言われていますから。中国では裏口は当り前。家族の地位か金を積めば入れます。加藤氏のTVでの発言を聞いていると「自制しているなあ」と感じます。中国の情報を取るには、相手に媚び諂わないと次から情報が取れません。遠藤誉や富坂聰辺りにも言えることですが。操作された情報が日本国内で流通されることになります。よく眉に唾して吟味しましょう。

さて、記事ですが薄熙来は無期懲役(2000万元の収賄)なので、周永康は執行猶予付き死刑(1000億元)になるのではないかと思われます。腐敗撲滅で習近平は「虎も蠅も」と言ってますが、庶民は誰も信じないでしょう。権力闘争の手段で使われているだけです。政敵を倒すため、今回は江沢民一派の権力中枢からの追い出しが狙いです。野中広務と仲が良く裏から実権を握っていた曽慶紅辺りが狙われていると思われます。「法治」重視と言いますが、ご都合主義の国で法で統治できるとは思いません。今回も相手の力を慮って四中全会でのテーマにするかどうかと言ったレベルの話ですから。民主主義国の法治ではなくこれも権力闘争の一環です。贅沢禁止で軍の不満が蓄積していますので、それに江沢民一派が組めば、権力闘争で習近平が打倒されることもあり得ます。考えられるのは暗殺でしょう。

記事

12月6日0時、国営新華社通信は周永康・元政治局常務委員の党籍を剥奪し、刑事責任を追及するという記事を配信した。5日、中国共産党の最高意思決定機関である中央政治局が、中央規律検査委員会(書記は王岐山)から上がってきた《周永康が犯した重大な規律違反に関する審査報告》を審議した上で決定を下した。中央規律検査委員会は政治家・役人の汚職や腐敗に関する捜査・立案を担当する部署。この決定を受けて、最高人民検察院は周氏の逮捕に踏み切った。この記事によれば、中央政治局常務委員会(トップセブン)が2013年12月1日、周氏の容疑を本格的に捜査する旨を決定した。その後、2014年7月29日、中央政治局は周氏の立件・審査を決定。そして、今回の逮捕に至っている。中央規律検査委員会の捜査によれば、周氏は「党の政治規律、組織規律、保秘規律に重大な違反を犯した」。重大な規律違反は、権力乱用、収賄、金銭・女性問題、そして党と国家の秘密漏洩など多岐に及び、同委員会は「周永康の行動は党のイメージを著しく傷つけ、党と人民の事業に重大な損失をもたらした。その影響は極めて悪質である」としている。12月6日、党機関紙《人民日報》が掲載した評論記事《党の規律・規則に厳格に基づき、断じて腐敗を罰する》は全国各地のメディアによって転載された。同記事には以下のパラグラフが含まれている。「全党員が思想・政治・行動すべての分野で習近平同志を総書記とする党中央と高度な一致を保持し、中国共産党の権威を死守する自覚を持たなければならない。党の組織・規律を厳格かつ明確にし、派閥や特定のグループを結成することに断じて反対する。党内におけるいかなる形式の非組織的活動も断じて許さない。党の団結と統一を守るのだ」

習近平国家主席の今後の政権運営を占う上で示唆に富んでいる。筆者が指摘したいポイントは以下の3つだ。

(1)共産党指導部というよりは、習主席のリーダーシップと統率力に重点が置かれている。

(2)習主席は共産党の権威を高めるために反腐敗闘争を行っている。

(3)周氏の党籍剥奪・逮捕にまで至った重要な理由の1つは、周氏が共産党内で自らの地位や権力を濫用し、党指導部内の足並みや求心力を脅かすような動きをとったことにある。

3つ目に関して、周氏は薄煕来・元重慶市共産党委員会書記・政治局委員(当時)を支持していたとされる。同氏は2012年、共産党第十八党大会が開催された年に“落馬”(筆者注:政治家や役人、国有企業の幹部などが、汚職や収賄といったスキャンダルが原因で職を解かれ、かつ中央規律検査委員会による調査を受けること)、その後、刑事責任を追及された。薄氏は重慶の地で“打黒唱紅”というマフィア撲滅運動や毛沢東を過剰に礼賛する宣伝活動などを展開し、一般大衆の心をつかもうとした。そのやり方は文化大革命時代の“極左”を彷彿させ、共産党指導部が実行している改革開放政策に逆行するものと思われた。党指導部の方針に逆らい“路線闘争”を挑もうとしたことが、薄氏が“落馬”した核心的な原因であるとされる。そんな薄氏を、周氏が支持しようとした事実は、共産党指導部にとって脅威に映った。周氏は胡錦濤政権において政治局常務委員(序列9位)を務めた重鎮。加えて、政敵を粉砕する力を持つ公安システムを統括する立場にあったからだ。周氏と故郷を同じくする共産党幹部は“薄煕来落馬”前夜の情景をこう振り返る。「薄熙来が“落馬”する前、周永康はあらゆる場で薄煕来に対する支持を示していた。政治局常務委員が薄煕来の“落馬”を検討する際にも、他の8人が全員賛成するなか、周永康だけは最後の最後まで薄煕来をかばっていた」。共産党内で絶大な権力を握る周氏と、“打黒唱紅”を通じて大衆世論に絶大な人気を誇る薄氏がスクラムを組んだとき、党指導部や知識人、市場関係者の間に深刻な懸念が広まった。党指導部の分裂、共産党の団結力・求心力低下を招くのではないか? 下手をすれば、中国を文化大革命時代に引き戻してしまうのではないか?

習近平は党内権力基盤を強固にした

本稿は、かつて掲載したコラム《“周永康落馬”は中国をどこへ導くか》のアップデート版である。“落馬”から逮捕に至った4カ月強の間に起こった事象を元に、3つの問題を提起し、それぞれ検証を加えたい。まず、“落馬”→逮捕というプロセスを習主席の権力基盤という観点からとらえた場合、その基盤は“落馬”当時よりも強固になったと言える。この4カ月間、筆者が共産党関係者や中国の有識者、市場関係者と意見交換を重ねる中で、様々な意見を耳にした。「習近平は必ず刑事責任追及に踏み切る」、「党内バランスを考えた場合、逮捕は回避するだろう。“落馬”くらいが相当だ」、「なんとも言えない。習近平は何を考えているかわからない」。ただ一つだけ言えることは、周氏逮捕に踏み切るためには、相当程度強固な権力基盤が必要であることだ。江沢民・元国家主席や曽慶紅・元国家副主席をはじめ、周氏に近いと目されてきた大物政治家たちの反発や逆襲に耐えうるだけの権力を持たなければ、逮捕に踏み切った途端、逆に基盤を損ねてしまうリスクがあるからだ。周氏逮捕で習主席の権力基盤や党内統率力が相当程度強固であることが証明された。ただし、いくら習主席といえども、この逮捕によって生じるリスク、即ち反対勢力からの巻き返しには引き続き注意を払っていく必要がある。権力基盤を強化したことは、権力闘争が収束したことを必ずしも意味しない。習主席の権力基盤が万全だと言う根拠はどこにもない。

四中全会の意義を高める習近平の意図

次に、法治を集中討議した四中全会(2014年10月20~23日)と周永康逮捕の関係を考えてみたい。奇しくも、“周永康落馬”と“四中全会で法治を討議”は同じ日(2014年7月29日)に公表された。その後、この関係を巡って3つのシナリオが浮上した。

(1)習主席が、周氏やその側近・グループらの逆襲に遭い、法治を集中討議するというアジェンダが取り上げられなくなる。

(2)周氏を“落馬”させてからも反対勢力を抑えこみつつ権力基盤を固め、四中全会において予定通り法治を集中討議する。

(3)法治を集中討議する四中全会の場で、周氏に対する追加の処分を公表する。

(1)は習主席の権力基盤が最も脆弱な状態を、(3)は習主席の権力基盤が最も強固な状態を指す。今から振り返れば、結果は(2)であった。四中全会では“党による指導”“中国の特色ある社会主義”といった政治色・イデオロギー色の強い前提が付いていたものの、予定通り法治を集中討議した。

四中全会という政治の大舞台で周氏に対する追加の処分を回避した理由に関して、筆者は「反対派からの逆襲を懸念したから」「共産党内の権力均衡の維持することを優先したから」「江沢民・元国家主席や曽慶紅・元国家副主席など周氏に近い長老たちに配慮したから」という3つを考えている。 四中全会が閉幕して1カ月強が経ったタイミングで周永康逮捕を公表した背景として、中国検察関係者は筆者に次のように語った。「法治を扱った四中全会からあまり時間が経っていない時期に周氏に対する法的措置を行使することで、四中全会の成果を強調し、共産党の威信を高揚させる狙いが習主席にはあったのだろう」。ただし、法治が制度として根付くかどうかに関しては、引き続き情勢を注視していかなければならない。今後、薄煕来事件のときと同様、周氏が法廷に姿を現し、裁かれる模様が全国ネットで中継される可能性もある。だが、それでは習主席が“法治”に名を借りて、人民からの支持獲得を画策していることが露呈する。ポピュリズムである。と同時に、習主席が進める反腐敗闘争は依然として権力闘争という側面が強い。

萎縮する経済官僚たち

最後に、反腐敗闘争が経済政策に与える影響を考える。習主席の権力基盤が固まり、党内求心力・統率力が高まることは、改革を進める上で基本的に追い風だと言えるだろう。“法の支配の下で市場の活力を生かす経済政策”を推進するため、既得権や地方の保護主義などを突破するべく、権力を行使する。行政改革、財税改革、都市化、上海自由貿易区(パイロット版)構想などを進めるためには、既得権益層や地方政府を説得するだけの強い権力基盤が求められる。財税改革とは、財政と税制に関する改革を指す。一方でデメリットもある。習主席による“虎もハエも叩く”“腐敗分子を見つけたら断固として捜査する”という反腐敗闘争は、経済政策・改革事業に関わる多くの中央・地方官僚たちを怯えさせている。習主席による恐怖政治が経済官僚たちの事なかれ主義を招き、経済政策・改革事業を停滞させるリスクは軽視できない。北京市のある地方幹部は以下のように述べる。「我々が政策を進めるにあたって、地元の企業に接待されたり、中央の官僚を接待したりすることは不可欠だ。最近は、このプロセスに規律検査委員会による捜査が入る前提で動かなければならない。接待にしても、出張にしても、他機関とのやりとりにしても、全てが対象だ。当然、プロジェクトが進むスピードは鈍る。我々も慎重にならざるを得ない」。また、習主席が反腐敗闘争と同時に贅沢禁止令を進める過程で打撃を受けているのが、政府機関や公務員による消費活動である。政府機関や公務員による消費活動である。接待や贈り物を介して、政府・公務員は依然として重要な消費アクターの役割を担っている。このため、中国の消費市場、ひいては経済情勢の先行きをネガティブに捉える知識人や投資家は少なくない。今年4月、米コーネル大学で開催された中国フォーラムにて、筆者は貴州茅台(マオタイ)酒の季克良名誉会長とご一緒させていただいた。「反腐敗闘争は、多くの政府機関・役人をお客さんとして抱える御社にとって打撃なのではないですか?」と質問すると、季会長はこう答えた。「茅台酒も変わらなければならない。政府ではなく、日増しに購買力をつける一般の消費者に飲んでもらう銘柄になる必要がある。茅台酒は体に良い。茅台酒を飲み続けたおかげで、私の体はこんなに健康だ」。75歳の季会長は胸を張り、習主席による反腐敗闘争への支持を表明した。

12/10日経ビジネスオンライン福島香織氏『サンゴ密漁は軍と関係あるか 密漁船の拠点で聞いてみた』記事について

元産経記者で中国への突撃記事で有名な福島香織女史の記事です。小生北京在勤時、05年反日暴動について福島氏より「事実と違っていたら新華社相手に裁判を」と言われ、「国を相手に裁判はできない」と答えた経緯があることは既報のとおりです。中国はまともな日本人の感覚からすれば、総て狂っていると感じるはずです。逆に中国人からすれば日本人は愚かでどうしようもないと思っているのではないかと。「珊瑚の密漁船について海上民兵かどうか」は大した議論でなく、“Rogue State”なのだから「何でもあり」と考えた方が良いと言うのが福島氏の言いたいことではないかと思います。彼らの行動は多義的な目的があって、一つに絞ることはできないということです。平松茂雄軍事評論家は早くから「中国の尖閣奪取の目的は石油だけではなく軍事基地を作ること」と喝破していました。太平洋二分割論に基づいての行動です。珊瑚だけでなくあらゆる技術をパクって、恬として恥じない「泥棒国家」かつモンスターを造ったのは紛れもなくアメリカと日本です。人口の多さに幻惑されて経済進出して中国を豊かにしたのが間違いの基です。「豊かになれば民主化する」なんて中国の歴史を知らないものの発想です。世界が目標とする共通の理念や価値観といったものが中国にはありません。それはそうでしょう。ここに書かれていますように「上から下までアウトロー」なのですから。いつも言ってますように「上から下に至るまで賄賂を取る。ただ金額が違う」と言うのが少しは理解いただけたかと。中国に駐在すればすぐ分かります。分からない人は仕事をしていないか出世のために自分を偽っているだけでしょう。やはり経済崩壊させるしかありません。

記事

ちょっと、旬を過ぎた話題だが、中国漁船による小笠原の珊瑚密漁問題について考えたい。というのも先月半ば、福建省寧徳市霞浦県三沙鎮という、密漁漁船の拠点にふらりと訪れたからだ。霞浦県三沙というのは中国で一番美しい干潟として、ナショナルジオグラフィックにも紹介された景勝地で、実は国内外の観光客はそれなりに多い。霞浦というだけあって、普段は霞がかかって見通しの悪い海だが、晴れあがると、きらめく海にノリ養殖のいかだが並ぶ複雑な海岸線は確かに絶景だ。ちょうどAPEC首脳会議の場で開かれた短い日中首脳会談で、小笠原の珊瑚密漁問題に触れたこともあって、地元では、反珊瑚密漁摘発大キャンペーンが開かれ、あちこちに、珊瑚密漁に関するタレこみ奨励の張り紙や、珊瑚違法密漁を批判する垂れ幕を見かけることができた。三沙鎮出身のタクシー運転手が、私を日本人と知ってか知らずか、「先日、珊瑚密漁の船長が、釣魚島(尖閣諸島)の近くで、日本に逮捕されたそうだ」と耳打ちした。それで、私も以前から気になっていた疑問を、実家が漁師だというタクシー運転手にぶつけてみた。「珊瑚密漁は『海上民兵』も関わっているって本当?」

「海上民兵」ではないのか?

小笠原諸島付近の珊瑚密漁問題は、すでに繰り返し報道されているので、あまり説明する必要もないだろう。秋ごろからこの海域に急激に密漁船が増え、10月30日には200隻をこえる大漁船集団となった。それがAPECの日中首脳会談当日以降、急激に減少した。なので、日本の少なからぬ識者が、この密漁漁船は普通の漁船ではなく「海上民兵」であり、軍の総参謀部の指示で動いているのではないか、と指摘していた。密漁というのは建前で、本当は来るべきときに、尖閣諸島を奪うべく、海上民兵を動員した訓練、あるいは、APEC前の陽動作戦とみるべきではないか、というのだ。

ちなみに、タクシー運転手の先の質問に対する答えは「海上民兵だって普通の漁師だ。そりゃ密漁くらいするさ」というものだった。タクシー運転手によれば、「三沙だけで、珊瑚密漁船は200隻以上ある。そこに民兵が混じっていても不思議じゃないだろう」という。「でも、海上民兵って密漁を取り締まる任務もあるよね。三沙の民兵偵察部隊の建物の前に、赤サンゴの違法漁を厳しく取り締まる、と電光掲示板で告知がながれていたもの」と問い返すと、「海上民兵も解放軍の部隊も、そりゃ建前で密漁はいけない、と取り締まる立場だが、正直みんな顔見知りだからなあ、見逃すのが普通だろう」とうそぶくのだった。

漁をしながら領海主張、敵を探る

「珊瑚密漁漁船は海上民兵」説には、確かにいくつかの腑に落ちるところがある。小笠原諸島周辺で密漁している漁船は、霞浦県三沙鎮や浙江省象山県石浦鎮などの港から来ているが、いずれも比較的大きな海上民兵基地がある。 「民兵」は簡単にいえば、国家の予備武装兵力。普段は一般市民として生活しながら、省軍区、県(市)軍区の人民武装部の指揮下に入り、軍備軍務、防衛作戦や社会治安維持に協力する。基幹民兵と普通民兵に分けられており、基幹民兵は28歳以下で兵役を経験し軍事訓練を受けた経験がある男性、普通民兵は18歳から35歳までの公民男性。女性民兵もある。年に一回訓練があり、訓練時や軍務に従事するときは、旅費、給与なども支給される。基幹民兵は30年前まで3000万人もいたが、今は800万人に減らされた。 海上民兵に関しては、中国の海洋権益を守る尖兵としての役割があり、その任務の中には、「漁をしながらの海上偵察」や「海に漂う主権碑」といったものがある。普通に漁を行いながら領海を主張し、敵の軍事能力を探る、ということだ。

三沙には、尖閣(釣魚島)周辺に漁にでかける船も多いのだが、この場合、魚の豊かな尖閣周辺の海に出かけて漁をするという漁師としての実入りと、領海の主権を守るという軍務も兼ねており、軍部から旅費(燃料費)や給与補てんまで出ることになる。海上民兵が全体でどのくらいの規模になるのかは不明だが、南シナ海方面に繰り出している海上民兵組織の拠点である海南省では約2300人と報道されている。福建省寧徳市では海上民兵偵察部隊が256人、海上民兵輸送部隊が1436人、海上民兵救援部隊が354人。船の数にすれば58隻という。(寧徳市政府のオフィシャルサイト)。

建前もなく、中国の法律にも違反

尖閣界隈の漁が、自国の海を主張する任務を兼ねて、軍部より燃料費などの支援を受けているというのはまだわかるのだが、では、小笠原の海は中国にも文句の言い様のない日本の海であり、「領海の主権を守る」という任務には合致しないではないか。そこに入って貴重な珊瑚を密漁し、世界自然遺産に指定されている小笠原の自然を破壊しているとなると、それは何の建前もない海賊行為だ。しかも中国では赤サンゴは国家一級重要保護動物として漁を禁止している。尖閣周辺海域でサンゴ密漁をしているという話も聞いたが、それならば、中国の法律にも違反している、という話になる。誇りある海上民兵がそんなことをしていいのか。この質問にからんで、先のタクシー運転手はこんな面白いことを言っていた。

サンゴ密漁は10年前からポツポツあった。だが、200隻もの船が先を争って密漁するようになったのはここ2、3年のこと。当然、密漁サンゴ長者の噂が昨年暮れくらいから流れたからだ。霞浦のある船主は2億元分の密猟サンゴを売り抜けたとか、石浦のある船主は5000万元分を売り抜けたとか。それで、三沙の漁師たちはみな、自分もサンゴ密漁をしてサンゴ長者になりたいと考えた。ただ、漁船の建造は国家の補助が出るが、船籍がすべて登録されるので、密漁しにくい。密漁には新しく無籍の船を造って、漁政局の監視を逃れねばならない。そのための造船資金は最低でも200万元。漁師は親戚、友達に頼み込んで出資者をかき集める。では、どういうやつらが、サンゴ密漁でひと山当てる博打話に出資する余裕資金をもっているか。役人か軍人かマフィアじゃないか、という。

「出資」できるのは役人か軍人かマフィア

霞浦に来る前に、霞浦県城に住む会社員に、霞浦はどんな町なのか?と聞いたとき、こう説明した。鎮の書記までマフィア出身の汚職の町。しかも、三沙は解放軍の部隊が駐屯。海上民兵基地もあるという複雑な土地柄で、県民の人柄も、外部の人間にかならずしも善良友好的というわけではない。… タクシー運転手にその話をすると、「霞浦県の県書記をやると3年で1億の金がたまる」と冗談にも聞こえないことを言っていた。要するに、汚職役人、汚職軍人、マフィアがみなつながっている、という印象である。「役人も軍人も地元の漁師も顔見知りさ。今は中央からサンゴ密漁を取り締まれ、という命令があるから急に厳しくなったが、漁師が日本にサンゴを採りに行っていることは誰もが知っている」。またネット上に、こんな話も流れていた。 サンゴ密漁は船主や船長にとっては一攫千金を狙えるものだが、一方で雇われ漁師の労働条件は良くない。50日の航海で賃金1万元前後だが、密漁なので保険が掛けらず、事故のときの保障がない。 「サンゴ密漁船の安全設備はお粗末なものだ。しょっちゅう漁師が死んでいる。数日前にまた一人死んだ。だが保障はなにもない」「漁業企業が違法なサンゴ密漁を行っているのに、役人は咎めもしない。雇われの出稼ぎ漁師が賃金を踏み倒されて、漁政局に調停を頼んでも、密漁をやめさせようともせず、自業自得だと言い放つ。汚職役人が多すぎる」…

三沙には3日ほど滞在していたのだが、ある時、密漁サンゴの売人に出合った。彼らは、自分が経営する工場で、漁師から買い取った密漁サンゴを研磨し、指輪やペンダントにして北京から来た宝飾店経営者や観光客などに売りさばいていた。店舗を持っておらず、好奇心から教えてもらった電話番号にかけると、待ち合わせの場所が県城郊外の建設工事現場だった。なんか、マフィア映画にある麻薬密売の取引き現場みたいだなあ、と思っていたら、本当にやってきたのが、スキンヘッドの子分を2、3人従えた、スジモノみたいな雰囲気の男たちで驚いた。彼自身も指に大きな赤サンゴの指輪をしていた。聞けば、建設工事現場の作業員を監督するのが本業で、副業としてサンゴの研磨工場をやっているという。

「ほら、見事なアカだろう」

「ほら、見事なアカだろう」と、指輪とペンダントトップを見せた。アカと言うのは日本語の赤と同じ発音。サンゴの色は、アカ、モモと日本語を使うのはサンゴ漁そのものが、日本発祥だから、という。表面はつややかな血の赤。裏をみると、白いフが若干はいっている。私が見る限りホンモノで、日本の宝飾店ではプラチナの台にいれて、ダイヤで飾って50~100万円くらいの商品になるのではないかと思われる。安物のダイヤのついた18金のあまりセンスの良くない台に収められて、ペンダントと指輪で2万元(約40万円)と、言われた。おそらく本気で値切れば1万元くらいまでにはいくかもしれない。北京で購入する3分の1位の安さだ。彼らは、漁師が採ってきた赤サンゴのうち、特にいいものだけを買い取っている、すべて日本産だと言っていた。「北京人は赤サンゴを欲しがる。北京で売られているサンゴはほとんどモモだろう。牛血(血赤サンゴ)はめったにお目にかからないだろう」と胸を張って見せたが、私が、珊瑚を彼に売っている船長の居所などについて、いろいろ質問しはじめると、警戒したように、俺は忙しいから、買わないんなら、いいよ、と行ってしまった。 「最近は、警察がサンゴの密売にうるさくなっているからな」とも言っていた。

サンゴ密漁、サンゴ密売買の町を歩いて、なんとなくわかったのは、少なくとも三沙、霞浦という場所では、役人も警察も軍も海上民兵もマフィアも漁師もみんなつながっている。堅気の世界とスジモノの世界は、緩やかに混ざっている、というのが、中国の地方の漁師町の状況だろう。「三沙の漁師のほとんどは台湾に出稼ぎにいったことがある。その際、サンゴ漁のやり方なども覚えてくるし、海上貿易で密輸入などにも関わる。それが違法かどうかなんて、関係ないさ。海の上では法律など関係ないのさ」。霞浦で出会った別の運転手から、そんな話も聞いた。

上から下までアウトロー

そういえば、福建といえば、アモイ遠華事件と呼ばれる中国史にのこる解放軍海軍が密接にかかわった大密輸汚職事件もあった。権力があれば、その権力に頼って法を犯すし、権力をもたない庶民であれば、法をすり抜ける知恵を絞る。結局、上から下まで誰もが法を守らないアウトローの世界なのである。そう考えると、サンゴ密漁にたとえ海上民兵が混じっていたとしても、それが中央の政府や解放軍のトップから指令が下りた戦略的なものかというと、そうではないかもしれない。中国に蔓延する汚職体質が産んだ、官民グルの犯罪、というものにすぎないかもしれない。だが、彼らが中央の政治の風向きを見て、日中関係が悪化すれば、多少日本に無法を働いても、さほど取締が厳しくない、と舐めてかかるという傾向はあるだろう。正直、上からの指令で統率をもって動く組織とは全く違う、こういう政治的空気に左右される利権と犯罪の癒着との方が、日本にとって、厄介な状況と言えるかもしれない。日本は、自国の主権が及ぶ海域で起きた犯罪は、自国の警察力と司法でもって断固対応するしかないということなのだ。