8/11日経ビジネスオンライン 鈴置高史『コリア・アズ・No.1 「従中」するにも「卑日」が要る』について

蝙蝠外交、二股外交の危険性について韓国は考えたことがあるのでしょうか?民族の宿啊なのか、歴史的に見ても事大主義で生きてきた民族ですから気が付かないのかも。日清・日露戦争に日本が勝って日本に近づいてきたわけです。それで1910年の日韓併合となります。それまでは大院君や閔妃のように裏切りは常態でした。世界は韓国を日本が統治することで評価した訳です。それを慰安婦や強制徴用等ありもしない話で日本を貶めようとする。韓国は日本をダシにして米国と中国の間をうまく泳ぎ渡ろうとしているとのこと。両国ともそんなに馬鹿でないから内心韓国人を侮蔑しているでしょう。利用するだけ利用しようと。日本もこんな国にまともに付き合う必要はありません。

日本人は友好が目的のように思っている人が多いですが、友好はあくまでも手段です。守るべき国益・名誉が汚されたなら友好的な付き合いは出来ないでしょう。個人に置き換えればすぐに分かります。所詮、他人事で考えているから名誉を汚されても怒らないのです。今やネットであらゆる情報(玉石混交ですが)が入手できる時代です。その努力を怠ると敵にいいようにやられます。

前にも書きましたが、「慰安婦」や「強制徴用」は歴史情報戦という形での戦争です。今や実際に武力を使うよりこちらが相手国を痛めるのに遙かに低コストで効果が大です。ですので、日本も武力でない戦争で有利な点を活かすことです。経済が日本の得意技です。素材部品の輸出額を他国より上げるとか法律的にクリアすることを考えて実行することです。敵は汚い手を使ってきていますので、一番やられたら困ることをしてやれば良い。人が良いのは国際的に見れば愚かと言うことです。

記事

(前回から読む)

 「卑日」は止まらない。韓国が中国に従う以上は。

「日本に勝った」と言い合っても……

—前回は「韓国人はなぜ世界で日本を貶めようとするのか」という話で終わりました。

鈴置:答えは「韓国人にはまだ、本当の自信がないから」です。韓国人同士で「日本を超えた」と言い合っても、確信が持てない。

 そこで世界の人に「韓国が日本よりも上だ」と言ってもらうべく、国を挙げて世界中で日本の悪口を言って歩くわけです。

 韓国の国際政治学者、李春根(イ・チュングン)博士の著書『米国に堂々と対した大韓民国の大統領たち』(日本語版)は、その意味で冒頭から興味深いのです。

 原著の韓国語版は2012年に出版されました。韓国人に対し米韓同盟の重要性を説きつつ、自分の国に誇りを持つように訴えた本です。書き出しは以下です(2ページ)。

  • 大韓民国は誇らしい国である。北韓を除けば面積はわずか10万平方キロメートルで、世界108位にすぎない小国だが、人口は世界25位、経済力は2011年基準で世界14位、輸出額は世界9位、国民の大学進学率、教育熱、インターネットの普及率と速度は世界1位、そして伝統的な国力の基準である軍事力は世界6位と、決して弱い国ではない(中略)。
  • 国際政治学者である筆者は、大韓民国の現在の総合的国力を世界200カ国中、12位と評価する。韓国の過去の歴史と比べれば12位でも大したものだが、われわれは間もなく統一を成し遂げ、世界5位レベルの国力が望める国際的な環境に生きている。

世界の中心にある韓国

—意気軒昂ですね。

鈴置:ええ。未来の歴史家は「2010年代初めの韓国は異様に高揚した気分に包まれていた」と書くと思います。この頃には「統一後は1人当たりGDPが主要国中2位になる」という主張も韓国紙上に踊るようになりました。

 韓国は2010年に20カ国・地域(G20)首脳会合の、2012年に核安全保障サミットのホスト国となりました。いずれも日本より先の主催でした。李明博(イ・ミョンバク)政権もメディアも「世界の中心となった韓国」を祝いました。

 この本も、そんな気分の中で書かれたのです。もっとも李春根博士も「世界に冠たる韓国」を韓国人がうたい上げているだけでは読者に信用されないと考えたのでしょう。62、63ページには以下のくだりが続きます。要約して載せます。

世界を指導する韓国、衰退する日本

  • 2012年、米国の著名な国際政治雑誌「フォーリン・ポリシー」(Foreign Policy)には、韓国が世界で一番うまくやっている国であるという論文が2編も掲載された。
  • 5月17日付にブルース・ジョーンズ(Bruce Jones)とトーマス・ライト(Thomas Right)が書いた「Meet the GUTS」という論文は、世界で今一番うまくやっている国、未来の世界を主導する新興西側強大国の4カ国をドイツ、米国、トルコ、大韓民国とした。一方、没落しつつある西側強大国は英国、フランス、イタリア、日本である。
  • 6月7日には、クライド・プレストウィッツ(Clyde Prestowitz)が書いた「韓国は一番だ」(Korea as Number One)という論文が掲載された。ハーバード大学教授のエズラ・ヴォーゲル(Ezra F. Vogel)が1979年『ジャパン・アズ・ナンバーワン』(Japan as Number One)という本を執筆したことがあるが、プレストウィッツは、今ヴォーゲルに「韓国が一番だ」という本の執筆をお願いしたいと述べている。

日韓は双子?

—なるほど「韓国が優れた国である」ことを確信するには外国の「認証」がいるのですね。

鈴置:あまり勉強のできなかった子が、初めて模擬試験でいい点をとったのと似ています。うれしくてしょうがない。でもこれはまぐれかもしれない、との不安も残る。

 そこで「秀才と言われた日本より韓国の方が賢い」と言ってくれる大人を必死で探す。それでも足りなくて「あの子は昔悪いことをした。だのにまだ、謝っていない」と町内を叫んで歩く、という構図です。韓国人の行動は、彼らの自信のなさを知らずには理解できません。

—「日韓は似ている。双子国家だ」という専門家もいます。

鈴置:ひと昔前、自信のない韓国人をおだてるためにそんなことを言う日本人もいました。そうした言説が韓国への誤解を生みました。日本と同じような国が隣にもう1つあるわけではないのです。

 日本は太平洋戦争で大負けし、しょげかえりました。1964年、東京五輪を開いた頃にようやく自信を取り戻しました。

 でも韓国人が今、感じる不安混じりの不確かな自信とは大きく異なります。戦前、「5大国」の一角を占めていた日本人にとって、それは「昔に戻った」という安堵に裏打ちされていたのです。

「戻るべき時代」がある日中

 戦争のため中止にはなりましたが、1940年に東京五輪を開くことになっていました。もちろん、アジアで初めての五輪となるはずでした。

 「もはや戦後ではない」と書いた経済白書(1956年版)があります。「戦前の水準に戻った」という感慨を吐露したもので、これも「けっこう豊かな戦前」があったがゆえの表現です。

 中国人も韓国人とは異なります。「失われた20年」を嘆く日本人に対し「こちらは失われた200年だ」などと言ってみせる中国人がいます。清朝末期に西欧や日本に領土を食いとられ、戦後も社会主義の採用で低迷した自分の国を自嘲してのことです。

 でも「失われた200年」の前の中国は、世界最大のGDPを誇る超大国でした。だから今の中国人に「栄光の昔に戻りつつある」という安堵はあっても「この栄光は本物だろうか」との迷いは薄いのです。

米国から自立した台湾

—同じ元植民地でも、台湾人は「落ちぶれた日本」に対し、威張り散らしたりしませんね。

鈴置:台湾人の民族的なベースは中国人ですから、自信を持っています。だから「崇日」にもならなければ、その反動としての「反日」や、まして「卑日」には陥らないのでしょう。

 韓国と同様に、日本統治時代に近代化しましたから、台湾には「日本好き」の人は残っていますけれど。

 もう1つの差は戦後、台湾は韓国ほどには日本に「世話にならなかった」からと思います。台湾政府も日本の産業政策を研究しましたが、韓国のように全面的にまねしたわけではありません。

 企業経営もそうでした。台湾には華僑の伝統があるわけで別段、日本人から「商売」というものを学ぶ必要はありませんでした。品質管理などの“手口”を日本から導入しましたが。

 一番大きな差は外交、軍事面で、韓国ほどには米国と日本に「世話にならなかった」ことでしょう。1970年代、日本と米国は中国を承認しました。

 台湾は米国からの全面的な軍事支援を期待しにくくなりました。中国の顔色を見る一部の日本企業も台湾と距離を置くようになりました。台湾は自分の足で立つことによって生き残ったのです。

 韓国でも1970年代、ニクソン(Richard Nixon)、カーター(Jimmy Carter)政権時代に米軍撤収が検討されましたが、朴正熙(パク・チョンヒ)政権は日本の協力もあって引き留めに成功しました。韓国は台湾とは異なり、ずうっと米国と日本に依存してきたのです。

ルトワックの深い省察

—外交はともかく、軍事面でも韓国が日本に依存してきたということですか。

鈴置:「日韓同盟」なるものは存在しませんから、表面的にはそうは見えません。しかし北朝鮮が韓国に侵攻した際、米軍は日本を兵たん基地として戦います。日本との良好な関係があってこそ、韓国は北朝鮮に対抗できるのです。朝鮮戦争を見れば明らかです。

—要は、韓国は米国や日本に依存してきたから嫌う、ということですか?

鈴置:人間は他者に絶対的に依存すると、憎しみがわいてくるものです。仮に好意ではあっても、生殺与奪の権を握られるというのは気持ちのいいものではありません。

 「相手が嫌いだから憎む」だけではないのです。世話になり過ぎても憎らしくなるものです。米国の戦略家、ルトワック(Edward N. Luttwak)が韓国の反米感情に関し、面白い観察をしています。

 『自滅する中国』の224―225ページから要約して引用します。原著『The Rise of China vs. the Logic of Strategy』では170ページの第3パラグラフです。

  • 教育を受けた韓国人は単なる事故でも容易に(米国に対する)怒りを爆発させてしまう。それは人間の感情として、最も根本的なものに根差しているからだ。見返りを求めない施しは、受け取る側の屈辱感へと容易に変化するのだ。

韓国のパンとサーカス

 「受け取る側の屈辱感」に関するこの分析は反米感情について語っていますが、もちろん「反日」にも適用できます。私がルトワック氏の論文を読むのは、人々の心情にまで踏み込んで国際情勢を分析するからです。

 「情緒」というものが「外交」を動かすようになっています。ことに韓国という国を分析する時には、彼らの心の底をのぞき込む必要があると思うのです。

—韓国政府は国民の情緒に乗って外交をする、ということですね。

鈴置:どの国にもそういう傾向はありますが、韓国の場合は極端なのです。

—例によって、韓国メディアも「情緒」をあおり続けているのでしょうか。

鈴置:その通りです。ただ最近になって「反日は人気取りだ」と政府を批判するコラムが、たった1本ですが朝鮮日報に載りました。

 書いたのは朴正薫(パク・ジョンフン)デジタルニュース本部長。東京特派員経験者です。「パンとサーカスの自殺コース」(5月8日、韓国語版)は渾身の力を込めて書いた感じです。長くなりますが、なるべくはしょらずに引用します。

反日ポピュリズムで没落

  • 今、我々は外交的な孤立のジレンマに直面している。主犯はもちろん安倍の右傾化暴走だが、それに翼を与えているのが我々だ。政治圏と外交マフィアらが「外交」の代わりに、反日ポピュリズムの「国内政治」をした結果が自縄自縛になって戻って来たのだ。
  • その端緒が2012年の李明博(イ・ミョンバク)大統領の突然の対日強硬策だったことに異見を挟む専門家はさほど多くない。日本に融和的だった李大統領は、執権の最後の年になって突如「静かな外交」を放棄し、独島(竹島)訪問を強行した。「日本の国力は昔ほどではない」との非外交的な発言まで吐いた。
  • 「日本に対する訓戒」パフォーマンスで支持率が上がると李大統領は期待した。しかし、これは日本の嫌韓心理を爆発させる起爆剤になった。
  • 1975年に日本の『文芸春秋』が「日本の自殺」という論文を載せた。知識人が共同で執筆したもので、古今東西の文明を分析した結果、すべての国家が外敵ではなく、内部要因により自ら分解したとの結論を出した。
  • 「国家の自殺」に共通する要因は利己主義とポピュリズムだ。ローマ帝国の没落もそうだった。市民は責任と義務を忘れ遊民と化し、大地主と政治家に「パン」を要求した。支配階級は彼らの歓心を買おうとそれを与えた。すると市民は「サーカス」まで要求した。
  • 「パン」は無償福祉を、「サーカス」はポピュリズムを象徴する。自分が40年前の論文を再び精読したのは、大韓民国の状況がまさにそうだからだ。「パンとサーカス」による国家の自殺の兆候は様々の分野で目撃されている。
  • 今、我々が本当に心配すべきは日本の右傾化でも中国の膨張主義でもない。病理を知りながらも治癒する力を失うという、自己解決能力の喪失がより問題なのだ。滅びる兆しの浮かんだ国は、他者に殺される前に自ら衰退する。

卑日をやめればアベへの敗北

—「反日はポピュリズムだ」とはっきり書いてしまっていますね。“愛国者”から怒られないのでしょうか。

鈴置:自分の国の外交への深い危機感からでしょう。朴槿恵(パク・クンヘ)政権は「卑日」をやり過ぎて米国との関係まで怪しくしてしまった。かといって中国から期待したほどの外交的な支持を得られていない。

 大声では言わないけれど、韓国の指導層の一部は「ここらで『卑日』に歯止めをかけるべきだ」と考えているようです。外交常識から考えてもそれは異常な様相を呈していますしね(「韓国の主な『卑日』」参照)。

韓国の主な「卑日」

「従軍慰安婦」像設置
2011年12月14日、韓国挺身隊問題対策協議会がソウルの日本大使館前に「従軍慰安婦」像を設置。日本政府が抗議したが、ソウル市と韓国政府は無視。その後、韓国と米国の各地に相次ぎ設置された。「像」以外に「碑」も世界中で立てられている。2014年1月には仏アングレームの国際漫画祭で、韓国政府主導の慰安婦をテーマにした企画展が開催。
大統領の竹島上陸
2012年8月10日、李明博大統領が竹島に上陸。日本政府は抗議し駐韓日本大使を一時帰国させた。同月13日これに関連、李大統領は「日本の影響力も昔ほどではない」と発言。同月17日、野田佳彦首相がこの問題に関し親書を李大統領に送るが、同月23日に韓国政府は郵便で送り返した。
天皇謝罪要求
2012年8月14日、李大統領が天皇訪韓について「独立運動をした人に心から謝罪をするのならともかく(昭和天皇が使った)『痛惜の念』だとか、こんな言葉1つなら、来る必要はない」と発言。
対馬の仏像窃盗
2012年10月8日、韓国人が対馬の仏像と教典を盗んだ。2013年1月に韓国の警察が犯人の一部を逮捕、仏像2体を回収。しかし韓国・大田地裁は「韓国から盗まれた可能性がある」と日本に返さず。2015年7月18日に1体だけ日本に返還。
中国人放火犯の本国送還
2013年1月3日、ソウル高裁が靖国神社放火犯の中国人を政治犯と認定、日本に引き渡さない決定を下した。日本政府は日韓犯罪人引渡条約をたてに抗議。犯人は2011年12月26日の靖国放火の後、2012年1月8日にソウルの日本大使館に火炎瓶4本を投げ、逮捕されていた。
朴大統領の「告げ口外交」
2013年2月の就任似来、朴槿恵大統領は世界の首脳やメディアに会うたびに、安倍晋三首相の「歴史認識」など日本を批判。
産経元支局長起訴
2014年10月8日、ソウル中央地検が産経新聞の加藤達也元ソウル支局長を在宅起訴。容疑は「大統領に関し虚偽の事実を報じ、名誉を棄損した」。報道の元となった朝鮮日報の記事に関してはおとがめなし。同年8月7日からの加藤元支局長への出国禁止措置は2015年4月14日に解除。

—では、朴槿恵政権は「反日」――鈴置さん風に言えば「卑日」をやめるのでしょうか。

鈴置:やめないと思います。理由は2つです。まず、朴槿恵政権にとって損だからです。ここで「卑日」をやめれば、国民から“サーカス”を取り上げるだけでなく「安倍に負けた」と思われてしまいます。政権にとって「自殺」です。韓国という国家の自殺を避ける道かもしれませんが

従中に必須の卑日

 もう1つは「卑日」が韓国の国益にかなっている可能性が大だからです。「卑日」を続ければ、日本人は嫌韓感情を高めますから、当然、日韓関係は悪化する。

 一方、台頭する中国と、それを警戒する周辺国とが引き起こす対立に韓国は絶対に巻き込まれたくない。例えば米国が主導する「日―米―韓」の中国包囲網には何があっても参加したくない。

 そのためには「卑日」で日本を怒らせ、日韓関係を悪化させるのが一番てっとり早いのです。米国には「参加したいが、日本との関係が悪く国民が納得しない」と言い張れます。

 また、実際そうしてきました。このへ理屈は米国からすっかり見抜かれていますが、いい訳がまったくないよりはいい。

 「卑日」を続けるうちに日本が「韓国との軍事協力は嫌だ」などと言い出せば、しめたものです。日本のせいで中国包囲網ができなかったことにできるからです。

中国につき従う韓国

—「他国との関係を悪化させる」という、乱暴な外交手法があるのでしょうか。

鈴置:あります。米国にミアシャイマー(John J. Mearsheimer)という国際政治学者がいます。実現困難な理想を追い求めるのではなく、現実を直視して世界を分析するリアリストです。

 彼の大著『大国政治の悲劇』の中に、参考になるくだりがあります。211ページの「バック・パッシング」の項です。原著の「The Tragedy of Great Power Politics」だと157ページの「Buck-Passing」です。

 ここでは「覇権を求める危険な国家が登場した時、周辺国家がどう対応するか」が検討され、対応別に2つの国に分類されます。私の言葉で言えば「立ち向かう国」と「つき従うことで危険な国の台頭に便乗する国」です。

—『中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』という本の題名そのままですね。

鈴置:ミアシャイマーは前者をバック・キャッチャー(buck-catcher)――侵略性国家の台頭阻止に責任を負おうとする国、後者をバック・パッサー(buck-passer )――その責任を回避する国と呼んでいます。そして後者のバック・パッサーは、以下のように行動する、と書いています。要約します。

仏ソはお互いを誹謗

  • 侵略主義的な国と良い外交関係を結ぶ。もしくは最低でも刺激するようなことはしない。侵略主義的な国の関心が常にバック・キャッチャーに向けられるようにするためだ。1930年代後半にフランスとソ連はともに、ヒトラーとよい関係を保とうとしていた。
  • もう1つは、普段からバック・キャッチャーとの関係を親密にしない方法だ。バック・キャッチャーとの外交関係が疎遠になればなるほど、同じ側に立って侵略主義的な国と戦うという危険な状況に巻き込まれないからだ。第2次大戦前、ヒトラーを恐れる仏ソ両国がお互いを誹謗したのもそのためだ。

—なるほど、韓国そのものですね。中国という侵略的な国とは良い関係を結ぶ。一方、中国に対抗する日本との関係は悪化させる。

鈴置:「すべての国と言い関係を結ぶのが外交だ」と信じるのは、能天気な日本人ぐらいです。韓国は今、アジアで中国が覇権国家になるか見極めようとしています。

 そうなると判明したら直ちに中国の勢力圏に入る。一方、米国が依然、影響力を維持するのならその傘下に居続けるつもりです。

 二股外交の結果、韓国は米国に守ってもらいながらも、中国の顔色を見て動く国になりました。「米中星取表」を見れば、米中が対立する案件で、ほぼ中国の指示に従っていることがよく分かります。

米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか

(○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年8月10日現在)

案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権 の行使容認 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の MDへの参加 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍への THAAD配備 青瓦台は2015年3月11日「要請もなく協議もしておらず、決定もしていない(3NO)」と事実上、米国との対話を拒否
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習 の中断 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの 正式参加(注1) 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの 反米宣言支持 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの 加盟 (注2) 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」
中国の 南シナ海埋め立て 米国の対中批判要請を韓国は無視

(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる

もちろん米国は韓国に怒り出しました。韓国は米中の間で危険な綱渡りをしているのです。そんな外交的な大勝負に出た韓国にとって、日本との関係悪化などは大した問題ではないのです。

泥沼化するしかない日韓関係

—朴槿恵政権は、そこまで考えて「卑日」をやってきたのでしょうか。

鈴置:どこまで意図したかは分かりません。しかし、今や「卑日」を手放せなくなったのは確かです。

 前回の「韓国人の『自嘲』が生んだ『卑日』」で説明したように「卑日」は「崇日」の反動でした。メディアがあおり、政権が利用した。初めは単なる人気取りの手段だったかもしれません。

 しかし、侵略主義的な国と戦わない「バック・パッサー」へとこの政権がかじを切った以上、「バック・キャッチャー」との関係を悪化させる「卑日」をやめるわけにはいかなくなったのです。

—「卑日」による日韓関係の悪化。その根には日韓を越えた国際情勢の変化があるのですね。

鈴置:そこがポイントです。日韓関係は米中関係の1局面に過ぎません。日本が中国に立ち向かうことを決め、韓国が中国につき従うことを決めた時から、日韓関係の泥沼化は約束されていたのです。

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