『現代思想界の長老、チョムスキーとハーバーマスがウクライナ戦争と停戦を巡る議論で陥った思想的な罠【著者に聞く】『悪が勝つのか?』の井上達夫が語る②、ウクライナ戦争に世界が対応できない理由』(5/1JBプレス 長野光)について

5/1The Gateway Pundit<Sen. Grassley Releases Emails of Biden FBI Agents Plotting and Celebrating Peter Navarro’s Indictment (VIDEO)=グラスリー上院議員、バイデンFBI捜査官がピーター・ナバロの起訴を計画し祝うメールを公開(動画)>

法執行機関が民主党の兵器化しているのは悍ましい。彼らの使命は、国民の安全を確保するのが第一では。

木曜日、チャック・グラスリー上院議員(共和党、アイオワ州選出)は、トランプ氏の顧問であるピーター・ナバロ博士の起訴を「計画し、祝っていた」トランプ嫌いのFBI捜査官からの内部メールを公開した。

元FBI職員のティモシー・ティボー氏は同僚に宛てた電子メールの中で、ナバロ氏の起訴が迫っていることを喜び、「すごい!素晴らしい!」と述べた。

しかしグラスリー氏は、ネリー・オーア(フュージョンGPSで働いていた)に対して刑事告訴が出された際に、FBIと司法省は彼女を告訴しないことを選択したと指摘した。

バイデン政権当局者がナバロ氏の起訴を企み、祝うメールのやり取り全文は、こちらでご覧ください。

https://x.com/i/status/1917950573757751391

2022年6月、連邦大陪審は、リズ・チェイニーの違憲な1月6日委員会への協力を拒否したとして、トランプ顧問のピーター・ナバロ博士を議会侮辱罪で起訴した。

ナバロ氏は2件の侮辱罪で起訴された。1件は委員会が要求した文書を提出しなかったこと、もう1件は下院調査官の召喚状による証言に出廷しなかったことである。

ナバロ氏によれば、 連邦政府は彼に足枷を付けて 独房に閉じ込めたという。

「彼らは私が飛行機に乗ろうとするのを阻止し、手錠をかけ、ここに連れて来た。足かせをはめ、独房に閉じ込めた」とナバロ容疑者は逮捕後、記者団に語った。

ピーター・ナヴァロ博士が逮捕について記者団に語る

ナバロ氏は 議会侮辱罪の罪状について答弁せず 、2023年9月に有罪判決を受けた。

2024年3月、ピーター・ナヴァロは4ヶ月の刑期で収監された。彼はバイデン政権下で投獄された最初のトランプ高官となった。

ナバロは2024年7月に刑務所から釈放された。

「FBI自身の統計によると、2022年の暴力犯罪は4.5%増加しました。一方、ワシントンD.C.連邦検事局は、まさにその年に首都で逮捕された犯罪者の3分の2の起訴を拒否しました。FBIワシントン支局とワシントンD.C.連邦検事局の職員は、一般市民に対する殺人や強姦の蔓延に焦点を当てるのではなく、トランプ大統領とその支持者を標的にする方法に執着していました。彼らの行為は恥ずべきものであり、非アメリカ的です」とグラスリー氏は書簡の中で述べた。「透明性は説明責任をもたらします。だからこそ、私はボンディ司法長官とパテル長官に対し、この政治の腐敗をさらに示すすべての記録の提出を求めます。」

https://www.thegatewaypundit.com/2025/05/sen-grassley-releases-emails-biden-fbi-agents-plotting/

5/1Rasmussen Reports<GOP Is The Man’s Party=共和党は男の党だ>

有権者の大半は民主党が女性の利益を代表していると信じているが、一方で共和党は男性の政党だと考えている。

ラスムセン・レポートによる最新の全国電話・オンライン調査によると、米国の有権者の52%が、民主党が米国女性の利益を最もよく代表する政党であると考えている一方、41%は共和党が女性の利益を最もよく代表すると回答しています。どの政党が米国男性の利益を最もよく代表するかという質問に対して、有権者の52%が共和党、37%が民主党、10%がわからないと回答しました。

https://www.rasmussenreports.com/public_content/politics/trump_administration_second_term/gop_is_the_man_s_party?utm_campaign=RR05012025DN&utm_source=criticalimpact&utm_medium=email

https://x.com/i/status/1918008901976445133

https://x.com/i/status/1917938983696293928

民主党支持者は我が身を「安全地帯」に置く。

5/2阿波羅新聞網<一份最新民调,对北京很重要=最新の世論調査は北京にとって非常に重要>昨日(4/30)発表された世論調査によると、中国人の半数以上がいかなる状況下でも台湾との統一のための武力行使に反対している。

サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙は、アトランタの非営利団体カーター・センターとエモリー大学が共同で企画した調査で、回答者の55.1%が「いかなる状況下でも台湾問題を解決するために武力を使うべきではない」という質問に賛成またはやや賛成したのに対し、24.5%が反対またはやや反対したと報じた。回答者の5分の1はこの問題について中立的だった。

回答者はロシア問題に関してよりタカ派な見解を示し、回答者の66.1%がウクライナにおけるロシアの行動を支持することは中国の国益にかなうと考え、5.8%が反対、28.2%が中立だった。

インド問題については、回答者の79.7%が、紛争のリスクがあっても、この南アジアの国との国境線の主張を維持することを支持した。残りの約5分の1の回答者は、より柔軟なアプローチを支持した。

同様に、回答者の81.1%は、国際法の定めにかかわらず、フィリピンとベトナムは南シナ海に対する中国の領有権の主張を尊重し、反対をやめるべきだと考えている。

調査会社ダイナタは昨年9月1日から25日まで、18歳から54歳までの中国国民2,211人を対象にオンライン調査を実施した。調査サンプルは、中国のインターネット利用者の分布を反映するように設計されている。

中国国民の外交政策に関する意見を調査するのはまれであり、専門家は回答者が政府の報復を恐れて本音を表明するのを控える可能性があるとかつて懸念していた。

この調査には関与していないプリンストン大学の政治学者ロリー・トゥルーエックスは、調査の正確な割合は慎重に解釈する必要があると述べた。しかし彼は、調査結果は、北京による台湾接収に対して中国国民の間に大きな反対があるかもしれないことを明確に示していると考えている。

北京にとって、こうした反対​​意見は重みを持つかもしれない。

北京は台湾統一のために武力行使する可能性を排除していないが、ワシントンは武力で台湾を奪取しようとするいかなる試みにも反対しており、台湾への武器供与の約束を堅く守っている。

ワシントンでは近年、中国による台湾接収の可能性に対する懸念が高まっており、一部の当局者は2027年がその時期になる可能性があるとみており、中国の習近平国家主席が日増しに厳しくなる経済問題から注意をそらすために侵略行動に走る可能性があると警告している。

調査結果では、中国国民が武力行使に強く反対していることが示されているが、多くの中国人が最終的には軍事行動を受け入れる可能性があることも示されている。

中国が軍事行動を起こすまでに台湾問題を解決するにはどのくらいの時間がかかるかとの質問に対して、「軍事行動の必要はない」と答えた人はわずか18.1%だった。

1年、5年、10年、25年、25年以上待つという選択肢の中で、最も多かった回答は「5年以内」で33.5%を占めた。

これに先立ち、「現代中国ジャーナル」は2020年末から2021年初にかけて実施された調査を発表しており、その調査では中国国民の55%が総力戦による台湾統一を支持していた。 「戦争以外の軍事的圧迫」、「経済制裁」、「現状維持」もそれぞれ58%、57%、55%で同様の支持率となった。

カーター・センターとエモリー大学の調査では、中国と米国の紛争発生の可能性についての意見を回答者に明確に尋ねなかった。しかし、米国と米国民に対する意見を尋ねられたとき、好印象またはやや好印象を持っていると答えた回答者はわずか23.5%だった。

それにもかかわらず、回答者の約70%は「中国の繁栄と経済発展を継続」するために両国が「友好的で平和的な」関係を維持することを支持している。

元の調査報告はこれ👇。左翼の調査は信頼できない。また、中国ではオンラインでも当局の監視の目は光っている。参考程度。

https://uscnpm.substack.com/p/sovereignty-security-and-us-china?open=false#%C2%A7download-the-full-report

https://www.aboluowang.com/2025/0502/2212952.html

5/2阿波羅新聞網<刚说完不跪!北京180度大转弯—中共官媒称“与美国谈判也没有坏处” 金融时报:北京态度软化=ひざまずかないって言ったでしょ!北京の180度転換—中国国営メディアは「米国との交渉は、悪いところはない」と報道 FT:北京は態度を軟化>中共国営メデイア中央テレビ傘下のアカウント「玉淵譚天」は5/1、微博に「米国は複数のルートを通じて積極的に中国と接触している」と投稿し、「現段階で中国に悪いところはない」と論調を変え、北京が交渉再開の意思があることを示唆した。FTは、これは中共の公式論調が明らかに軟化したことを示しており、米国に対する新たな交渉のシグナルだと指摘した。

「玉淵譚天」の投稿では、トランプ政権が交渉の進展に熱心と強調し、経済と世論の二重の圧力に直面していると述べ、関税の行き詰まりを緩和する意図で頻繁に発言していると詳しく述べた。記事は依然、「我々が間違っているわけではない」、「話し合いを望むなら扉は開いている。戦いを望むなら最後まで付き合う」と主張しているものの、全体的な論調は、商務省がこれまで主張してきた「交渉の前に関税を撤回しなければならない」という姿勢から、対話を受け入れ「米国の意向を観察する」姿勢へと変化している。

トリヴィアム・チャイナのエコノミスト、アンドリュー・ポークはFTに次のように語った。「この投稿は交渉の土台を築くものである。米国をより不安で、心配で、ストレスを感じている側として描くことで、中国は自らの力強さを見せつけようとしている。これは中国国内の聴衆を満足させ、交渉開始の援護となるはずである」

中国・グローバリゼーションセンターの研究員、王子辰は、中共の今回の動きは貿易交渉を再開し、ソーシャルメディアを通じてシグナルを送る準備ができていることを示していると指摘した。 「ソーシャルメディアを通じて情報を発信するこの方法は、中国ではまだ比較的新しいものだが、第一次米中貿易戦争の時にも見られた」と彼は語った。

アポロネット王篤然評論員は、中共がわずか数日間で「対話拒否」から「接触は悪くない」へと急転したと分析した。表面上は戦略的な調整だが、実際は香港の迂回関税に協力しつつ、ソーシャルメディアを通じて世論を試すという二重の作戦なのかもしれない。同時に、これは米中交渉の公開開始に向けた世論作りの道を開くものでもあり、内外に説明しやすいものとなる。実際、中共は最近、関税問題で米国と接触しており、数日前には韓国メディアも関連映像を撮影していた。トランプ陣営が、北京がこれを利用して関税攻勢を緩和することを確認した場合、次のステップはおそらく香港のような潜在的な「抜け穴」を正確に封鎖し、中共の迂回の余地を断つことになるだろう。

嘘つき中国人。自ら交渉を懇願したのに、米側から歩み寄ったと。

https://www.aboluowang.com/2025/0502/2212930.html

5/2阿波羅新聞網<突发!北京下发一道指令 后果不堪设想!—彭博独家:为中美脱钩做准备 北京发出一则指令=速報!北京は悲惨な結果をもたらす命令を出した! — ブルームバーグ独占:北京、米中のデカップリングに備えるよう命令>米国のブルームバーグ通信は水曜日(4/30)、独占報道を発表し、事情に詳しい関係者の話として、中国政府は米国が医薬品供給を脅かす可能性のある米中デカップリングに備えて、一部の国営製薬会社に対し、米国製医薬品や原材料への依存を減らす方法を検討するよう要請したと伝えた。

事情に詳しい関係者によると、中国の医薬品規制当局である国家薬品監督管理局は今年初め、国営製薬会社の幹部らにこのメッセージを伝えた。

現在、中国の大規模病院は、GEヘルスケア・テクノロジーズやメドトロニックなどの米国企業が製造する磁気共鳴画像装置や超音波スキャンなどの先進医療機器の主要な購入者となっている。

事情に詳しい関係者は、中国の規制当局は製薬会社が提案する代替案を審査し、関連医薬品の品質と安全性に影響が及ばないようにする必要があるため、短期的には米国製医療製品がすぐに置き換えられることはないだろうと指摘した。

早くデカップリングになるように。

https://www.aboluowang.com/2025/0502/2212906.html

5/2阿波羅新聞網<毁灭普京 500%惩罚性关税! 美两党罕见团结下重手—500%惩罚性关税! 打断普丁经济血脉 美两党罕见团结 重罚买俄石油、天然气国家=プーチンを滅ぼす!懲罰的関税500%!米国の両党が団結して500%の懲罰的関税といった強力な措置を取ることは滅多にない  プーチンの経済的生命線を断つ、米国の両党が珍しく団結 ロシアの石油や天然ガスを買う国を厳しく罰する>米国上院議員リンジー・グラハム上院議員は現地時間4/30、米上院がロシアに対する制裁法案を積極的に推進していると発表した。この提案は72人の上院議員からなる超党派の支持を得ており、これは珍しく一貫した強硬姿勢を示している。この法案は、ロシアの石油、天然ガス、戦略製品を購入し続ける国に最大500%の懲罰的関税を課し、ロシアの戦争経済の外部からの血脈を断つことを目的としている。グラハムは「これはロシア経済にとって史上最大の打撃となり、戦場外でプーチン政権への直接的な反撃となるだろう」と指摘した。

この法案は、ロ・ウ戦争が膠着状態に陥る中、経済的影響力を通じてロシアに再び圧力をかけようとするワシントンの大きな戦略的調整とも見られている。草案によれば、関連する制裁はロシアのエネルギー産業や軍事産業と取引するすべての第三国および企業にまで及び、特にロシアの石油を依然として購入しているアジアや中東の国々が対象となる。

WHは公式には支持を表明していないものの、民主党と共和党の有力上院議員数名が公に支持を表明している。アナリストらは、この法案が可決されれば、世界のエネルギー貿易パターンが変化するだけでなく、ロシアと依然として経済貿易関係を維持している国々、特に中国、インド、トルコなどの主要なエネルギー輸入国に大きな影響を及ぼす可能性があると指摘した。

WHのロ・ウ戦争調停にどんな影響を及ぼすか?中国、インド、トルコとの外交への影響も。

https://www.aboluowang.com/2025/0502/2213003.html

長野氏の記事は、『リベラルのことは嫌いでも、リベラリズムは嫌いにならないでください』の著者の井上達夫氏にインタビューしたもの。彼はチョムスキーやハーバーマスを対露宥和主義者や八方美人と非難するが、ではどんな形で停戦するのが良いのか案を示していない。「続く」とあるので、後々示されるのかもしれませんが。

議論を延々続けるのは良いが、その間にもウクライナ人は亡くなっていく。民族が全滅してでも戦う覚悟があればそれも良いでしょうけど、賢明であれば臥薪嘗胆を期すのでは。戦争を止めるのは政治家の責任。日本も日米戦争で負けて降伏した。歴史の中で戦争に負けることはある。別に正義が必ず勝つということではない。敗戦から復興し、民族としての誇りを持つことが大事では。

記事

ウクライナ戦争の早期終了を選挙公約のように掲げてきた米トランプ大統領だが、早期停戦の見通しは立たない(写真:ロイター/アフロ)

ウクライナ戦争の早期終了を選挙公約のように掲げてきた米トランプ大統領だが、交渉が困難だと察すると、協議の仲介を見送る可能性を口にし始めた。停戦のタイミングや形、その条件に関しては、専門家の間でも議論が分かれている。

 この戦争と停戦への導き方は正しく議論されているのか。『悪が勝つのか? ウクライナ、パレスチナ、そして世界の未来のために』(信山社)を上梓した法哲学者で東京大学名誉教授の井上達夫氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)

──チョムスキーやハーバーマスといった批判的知識人たちでさえ、ウクライナ戦争と停戦をめぐる議論では問題のある主張を展開していると書かれています。

井上達夫氏(以下、井上):話の前提として、彼らの言説の背景にある、対露宥和主義の問題に触れておきます。

対露宥和主義者は、「ウクライナが抗戦を続けるからロシアが攻撃を続けるのだ。だからウクライナ支援を止めてウクライナに停戦の妥協をさせろ」と言いますが、これは逆さまです。

ロシアが侵略を続けるからウクライナも抗戦を続けるのです。ロシアが侵略をやめればウクライナはいつでも抗戦をやめます。一番苦しいのはウクライナですから。

ウクライナが抗戦を止めてもロシアは侵略を止めません。

併合宣言したウクライナ東南部4州ですら、ロシアは完全制圧できていません。戦線の現状凍結で停戦など、「ロシアの論理」からすれば、自分たちの主権的領土の部分的放棄を意味するので、受け入れるわけにはいきません。

東南部4州を我が物にしたいだけでなく、侵攻当初、キーウを制圧しようとして失敗したことが示すように、プーチン大統領の狙いはウクライナという国家を我が物にすること、丸ごと征服するか、傀儡国家化することです。ウクライナが抗戦を止めれば、これ幸いと侵略を拡大するでしょう。

対露宥和主義者は、この戦争が続くと、第三次世界大戦にまで拡大する危険性があるから即刻停戦せよとも言っていますが、これも考え方としては少しおかしいと思います。

ウクライナに対する西側の支援には2つの条件が課されてきました。

1つは、ロシアが勝手に併合宣言したものの、国際社会ではまだロシア領として一般的承認を得ていないクリミアや東南部4州は別として、それ以外のロシアの固有領土に対しては、西側が援助した武器でウクライナは攻撃してはならないという条件です。

ロシア領内の基地からミサイル攻撃などを受けても、ウクライナは「敵地攻撃」ができません。「専守防衛」の範囲内で援助された武器を使うということです。

この条件は、2024年8月にロシアのクルスク州に侵攻したのを西側が認めてから緩和されましたが、2022年2月にロシアが侵攻開始して以来、2年半もの間、ウクライナはこの条件を基本的に遵守して、不利な非対称的条件でロシアに抗戦してきました。

もう1つは、西側諸国は軍事支援をするけれど、NATO (北大西洋条約機構)や自国兵士を派兵して戦争に直接参戦はしないということです。第一の「専守防衛ライン」が緩和された後も、この「不参戦ライン」は維持されています。

ウクライナ戦争が第三次世界大戦に発展するとすれば、NATO・西側諸国が不参戦ラインを越えて直接参戦した場合です。

不参戦ラインは西側諸国が自らの軍事的関与を限定するために設定したものであり、専守防衛ラインと違って、ウクライナがこれを自分で破れるわけではありません。

つまり、いくらウクライナが抗戦を続けたとしても、西側諸国は不参戦ラインを越えることを拒否し、ウクライナへの武器供給や軍事情報の支援の枠にとどまることができるということです。第三次世界大戦に発展するかどうかは、ウクライナが決められることではありません。

ロシアによるNATO攻撃があり得る怖い展開

──2月末に、ホワイトハウスでトランプ大統領とゼレンスキー大統領が口論になったときに、トランプ大統領が「第三次世界大戦に発展する可能性」を連呼していましたが、彼には恐らくそうした理解はないのですね。

井上:西側諸国の参戦がありうるとしたら、それはNATO加盟国をロシアが攻撃した場合です。

たとえば、ポーランドはウクライナへの武器支援の重要なポイントですが、ここをロシアが攻撃するようなことがあれば、集団的自衛権でNATOが参戦することもあり得ます。

通常兵器においてNATOはロシアに対して圧倒的に有利で、そんな攻撃を仕掛けるのはロシアにとって自殺行為ですから、プーチン大統領はそこまで愚かではないと思います。

ウクライナ侵攻以来、プーチン大統領はたびたび西側諸国に脅しをかけていますが、単なるブラフの域を出ていません。実際、プーチン大統領はこれまでNATO加盟国を攻撃したことはありません。

彼が餌食にするのは弱小とみなした相手だけで、自分も致命傷を負いそうな本当に強い相手とまともに喧嘩する気はありません。

ただ、NATOが分裂弱体化し、集団的自衛権を実効的に行使できず、ロシアを罰する力をもはやもたないとプーチン大統領が信じるような状況になれば、彼がそのような攻撃を仕掛ける可能性もあります。今、恐いのはそのような展開です。トランプ大統領が欧米の関係にまたヒビを入れている。

ロシアの再侵攻を西側が実効的に抑止する保証を与えることを条件に、領土問題では妥協する用意があることをウクライナは示しているのに、プーチン大統領はウクライナを傀儡国家化できる無条件降伏以外は認めないという高圧的な姿勢を取り続けています。

トランプ大統領が本当に停戦を実現したいのであれば、圧力をかけるべき相手はロシアです。

既にロシアは軍事的にも経済的にも消耗しており、攻勢を長期間続ける余裕はありません。トランプ大統領はディールの天才を標榜するなら、ロシアのこの足元に付け込んで圧力をかけるべきなのに、それができず、逆にウクライナに支援停止の圧力をかけて、プーチン大統領の高圧的姿勢を強化させています。

それに加えて、関税戦争で西側同盟国との対決的姿勢を強め、NATOを再び分裂弱化させてプーチン大統領をつけあがらせています。

──トランプ大統領という存在は、プーチン大統領にとって都合がいいですね。

井上:トランプ大統領は、プーチン大統領に手玉にとられているだけでなく、国際社会からも「口先だけで実際は政治的交渉能力のない男」とみなされていることに自分では気づいていません。トランプ第二政権ではイエスマンばかり集めたので、誰も彼に気付かせようとはしません。

ここで、ノーム・チョムスキー氏の問題に移ります。

チョムスキーが陥った「二悪二正論」

井上:チョムスキー氏はアメリカの一国覇権主義・覇道主義を厳しく批判してきたので、私はずっと彼はまともだと思ってきました。

ところが、ロシアのウクライナ侵攻については対露融和主義と同じことを主張してきたので、私はショックを受け、前著『ウクライナ戦争と向き合う』で「チョムスキーよ、お前もか」と題する節を設けて、彼が陥った思想の罠を剔抉(てっけつ)して批判しました。

彼が嵌った思想の罠は、私が「二悪二正論」と呼んでいるものです。「悪」が二つあれば打ち消し合ってどちらも「正」になるという詭弁。

これはまず、自己の悪を批判する他者に対して、「お前だって同じ悪事をやっているじゃないか、お前と同じことを俺がやってどこが悪い」という開き直りとして現れます。

プーチン大統領も、「ロシアは、NATOがコソボ紛争でやったこと、米国がイラク戦争でやったことを、ウクライナでやっているだけだ、どこが悪い」と開き直っています。

アメリカの一方主義的軍事介入や覇道主義的姿勢を批判してきたチョムスキー氏は、プーチン大統領の欧米に対する批判を承認するだけでなく、その勢いで、彼のウクライナ侵攻に対する開き直りまで受け入れてしまっています。

これは二悪二正論の屈折した現れ方です。他者の悪事を批判して自己の悪事を正当化する詭弁が、チョムスキー氏においては、自己の悪事を自己批判するがゆえに他者の悪事を断罪できず許してしまう倒錯に転化しているのです。

「ロシアはアメリカと同じことをやっているだけだ、どこが悪い」というプーチン大統領の開き直りを、チョムスキー氏は「ロシアと同じことをアメリカもしているのだから、ロシアを非難できない」として受け入れてしまっているのです。

アメリカもひどいことをやってきたから、ロシアの悪行も批判できない──。この理屈は、一見誠実で寛大に聞こえるかもしれませんが、アメリカの悪がロシアの悪を帳消しにできるなら、同じ理由でロシアの悪がアメリカの悪を帳消しにできますので、結果としてアメリカの悪に対するチョムスキー氏のこれまでの批判も根拠を失ってしまうことになります。

哲学的に正しい姿勢は、アメリカの悪が許されないのとまったく同じ理由で、ロシアの悪も許されないとして、誰の悪かに関わりなく悪への批判を貫徹することです。

井上教授が厳しく批判したノーム・チョムスキー氏(写真:Everett Collection/アフロ)

進歩派の学者に多い八方美人の姿勢

──チョムスキー氏はひたすらアメリカに反省を求めていますが、この戦争に対してアメリカがどう向き合うかは明言していないのですね。

井上:対露宥和主義者と同じく、西側はウクライナ支援を抑制し、ロシアに対する譲歩圧力をウクライナにかけて停戦させろという立場です。

強国が作る秩序に弱小国を従わせるというのはチョムスキー氏のこれまでの米国の覇道に対する批判を掘り崩してしまう思想的自殺ですが、自らの主張のこの自壊的な論理的矛盾を彼は分かっていません。やはり、90歳を過ぎるとそうなってしまうのでしょうか。

チョムスキーについては前著で批判しましたが、新著『悪が勝つのか?』では、現代思想界のもう一人の長老、ドイツの哲学者ユルゲン・ハーバーマスを徹底的に批判しました。彼の言っていることは対露融和主義よりもひどい。

彼は南ドイツ新聞に「交渉請願論」(Ein Plädoyer für Verhandlungen)というタイトルの論考を書いたのですが、読んで驚きました。「ウクライナを負けさせるな、しかし、ロシアに勝とうとするな」というわけの分からない二枚舌を弄しています。

ウクライナを負けさせないために支援するのはいいけれど、ロシアに勝とうとして支援が行き過ぎると、世界大戦に突入する恐れがある。だから西側諸国が交渉の主導権をとってロシアと一定の妥協をし、停戦を実現しなければならない。ハーバーマスはそう主張しています。

一見すると対露融和主義に聞こえますが、ではどんな風に妥協するのかというと、2014年のクリミア併合前の原状復帰は求めないが、「ウクライナを負けさせない」ために、2022年のウクライナ侵攻より前の原状に戻す形で交渉をまとめろという。

2022年侵攻以来、ロシアは膨大な兵力・火力を損耗させているのに、今回の侵攻で新規に制圧したウクライナの土地を全部放棄させて、手ぶらでロシア軍を撤退させろと言っているのです。

これのどこが妥協なのでしょうか。むしろ対露強硬主義と言うべきで、ウクライナは飲んでも、プーチン大統領は怒り、こんな交渉案は蹴とばすでしょう。

どうしてこういう奇妙な理屈になるのかというと、彼が進歩派の学者に多い八方美人の姿勢を取っているからです。

平和を重んじる早期停戦論者たちにもウケたいし、侵略を決して許してはならないという人たちからもウケようとしているのです。有名な知識人だからといって、このような言論をありがたがってはいけません。

しかも、「ウクライナはヨーロッパで最も遅れてきた国家で、民族形成の途上にある」とまで言っています。ウクライナに同情して言っているつもりかもしれませんが、ウクライナ国民にとってひどい侮辱です。

ウクライナは中世ヨーロッパの大国キエフ・ルーシ公国を自らの国家的原点とし、独自の言語・文化を長く保持し、科学技術や経済においても重要な基盤をもつ民族です。

その国家と民族の固有の歴史がソ連とロシアによってロシア史の陰に隠されてきたことを、元ウクライナ駐箚(ちゅうさつ)特命全権大使の黒川祐次氏のウクライナ通史の著書を援用して、私はこの本の中で示しました。(続く)

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