『米国はいつ「韓国放棄カード」を切るのか 真田幸光教授と「金融」を通してアジアの火薬庫を読む(2)』(11/1日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

11/1日経朝刊アジア投資銀、18年債券発行 金総裁が表明 不参加の日米に「扉は開かれている

アジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁は31日、香港で日本経済新聞の単独取材に応じた。2018年にAIIBとして債券を発行する見通しを表明。同行の資金調達力が高まる。主要7カ国(G7)のうち参加を見送っている日米両国に「常に(参加の)扉を開けている」と粘り強く参加を呼びかける意向も示した。

日本経済新聞のインタビューに答えるアジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群総裁(31日、香港)

AIIBはすでにS&Pグローバル、ムーディーズ・インベスターズ・サービス、フィッチ・レーティングスの米英格付け会社から最上位の格付けを取得している。今後はいつ国際金融市場で債券を発行して資金を調達するかが焦点となる。

金総裁は「ドル建ての債券、ユーロ建て、円建て、人民元建てなどと、資金調達の機会を幅広く探っている」と述べ、円建てのAIIB債を発行する可能性に言及。発行時期は明言を避けたものの、「来年の可能性は高い」と明言した。

アジア域内で電力、道路や鉄道、通信などのインフラ需要は大きい。アジア開発銀行(ADB)によれば、インフラ需要は16年から30年にかけて総額で約26兆ドル(約2950兆円)にのぼる。

膨大な需要を各国の財政資金や、AIIBやADBといった国際機関の融資だけで賄うのは難しく、民間資金をいかに活用するかがカギを握っている。金総裁は「民間資金の動員はとても重要」として、その方法などをめぐってADBの中尾武彦総裁と緊密に協議していることを明らかにした。

ADBは域内のインフラ整備のための民間資金を呼び込むための基金をつくっているが、金総裁は「こうした資金の集め方はADB加盟国にとってもよい」と評価。今後もADBと協力していく立場を強調した。

AIIBは「世界銀行やその他の国際金融機関を補完するために設立された」と強調した。中国主導のAIIBが中国の広域経済圏構想「一帯一路」に活用されるとの懐疑論が出ている点は「多くの懐疑的な見方や懸念があったとしても、私はとても我慢強い人間である。日本人職員を採用するために懸命に努力している」と語った。

一帯一路に関しては「参加する国が共同で作業するための広範なプラットフォームだ。AIIBは80の国・地域が参加し、(一帯一路と)重なる部分は出てくる」との認識を示した。

同時にAIIBは投融資する事業を選ぶ際に(1)金融面で持続可能である(2)環境面に配慮されている(3)地域住民の利益になる――という3つの原則を掲げ、一帯一路のために「原則で妥協することはない」と強調した。

AIIBの加盟国・地域の数はADBの67をすでに上回る。一方でG7のうち日米は参加を見送り、加盟した独英仏などとの間で対応が分かれている。

金総裁は「米国からもAIIBに否定的な反応は聞こえてこない」と説明。日本の国際協力銀行(JBIC)や国際協力機構(JICA)の名前を挙げ、日米の金融機関などとも幅広い協力を模索する方針を示した。(編集委員 瀬能繁)>(以上)

真田氏の言う「ムーディーズを含む米欧の格付け会社がAIIBに対してトリプルAを付けたのです。日米の銀行は政治的配慮から、直ちにはAIIBにファイナンスしないと思います。

しかし、中国封じ込めに関心のない欧州の銀行は、この格付けを見てAIIBの債券を大いに買うでしょう。中国の金融を通じた周辺国への支配力は格段に増します。今では米国の比較優位は20年前とは比べものにならないほどに低下しています。」というのを見て、米国は本当に馬鹿だなあと言う思いを深くしました。真の敵を強大にすることにずっと手を貸してきたのですから。まあ、米国はユダヤ国際金融資本に牛耳られている国と思えば不思議でも何でもありませんが。ビル・クリントンがデビット・ロックフェラーの隠し子だとすれば、中国を優遇させてきたのも“one world”の構築を狙うグローバリズムの為せる業、永遠なる世界共産革命とマッチします。ロシア帝国が革命で打倒されたのもマルクスやレーニン等ユダヤ人によるものです。ソ連を崩壊させたのは、ユダヤ国際資本かどうかは分かりません。もし、ユダヤ人だとすれば何故ソ連で共産主義を無くす動きに出たのか、また代わりに中国の共産主義を助け、大きくしたのかも分かりません。

言えることは“one world”は理想の社会ではないという事です。中国の掠奪共産主義と米国の強欲資本主義どちらを見ても貧富の格差が甚だしいです。日本のやり方が一番良いと思われます。世界に日本流を広めていけば、世界の人々の暮らしも良くなるのではと思います。

また、真田氏は鈴置氏の言う「米国が韓国をIMF管理に追い込む」とはならないと述べています。韓国をハッキリ中国側に追いやるからという事です。でも、もう既に中国側になっているのでは。「戦時作戦統帥権を韓国に返し、米軍は韓国軍の下に入れ」とか「米国大使館への反米デモ」等やって米韓同盟を破棄させるような動きをしています。裏には北の工作があるのでしょうけど。

局面を打開するには、米中合同での北への攻撃、核・ミサイルの放棄をさせ、金漢率に北を統治させ、南北を分割したままにしておくのが良いのでは。それでも韓国は統一を願うのかどうか。核とミサイルを持てば、日本を攻撃できるという野望は潰えてなくなるにも拘らず。負担だけが大きくなるでしょう。日本は日米豪印の戦略対話を軍事同盟に発展させ、米印とニュークリアシエアリングすれば良いと思います。いざとなれば売って貰うという選択も持っておいて。

記事

トランプ政権が見据える新たな同盟構想に韓国の名は…(写真:ロイター/アフロ)

前回から読む)

米国は韓国をいつまで同盟国と見なすのだろうか。愛知淑徳大学の真田幸光教授と「通貨戦争」を通じ考えた(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)。

摩訶不思議な中韓スワップ

—中韓通貨スワップは、本当に存在するのでしょうか?

鈴置:多くの人が首を傾げています。中韓スワップの期限が切れた翌々日の10月12日になって、韓国銀行の総裁が「結び直した」「延長ではないが、延長と同じだ」などと、立ち話で語りました。

しかし正式発表はなく、韓国銀行のサイトは10月31日になってもこのスワップに関する報道資料を一切、載せていません。問い合わせを受けた中国側も「韓国に聞け」と言うだけです(「『懲りない韓国』に下す米国の鉄槌は『通貨』」参照)。

韓国の通貨スワップ(2017年10月31日現在)

相手国 規模 締結・延長日 満期日
中国 3600億元/64兆ウォン(約548億ドル)終了→再開? 2014年 10月11日 2017年 10月10日
豪州 100億豪ドル/9兆ウォン(約78億ドル) 2017年 2月8日 2020年 2月7日
インドネシア 115兆ルピア/10.7兆ウォン(約85億ドル) 2017年 3月6日 2020年 3月5日
マレーシア 150億リンギット/5兆ウォン(約36億ドル) 2017年 1月25日 2020年 1月24日
CMI<注> 384億ドル 2014年 7月17日  

<注1>CMI(チェンマイ・イニシアティブ)は多国間スワップ。IMF融資とリンクしない場合は30%まで。 <注2>カッコ内は最近の為替レートによる米ドル換算額 資料:韓国各紙

真田 幸光(さなだ・ゆきみつ) 愛知淑徳大学ビジネス学部・研究科教授(研究科長)/1957年東京生まれ。慶応義塾大学法学部卒。81年、東京銀行入行。韓国・延世大学留学を経てソウル、香港に勤務。97年にドレスナー銀行、98年に愛知淑徳大学に移った。97年のアジア通貨危機当時はソウルと東京で活躍。2008年の韓国の通貨危機の際には、97年危機の経験と欧米金融界に豊富な人脈を生かし「米国のスワップだけでウォン売りは止まらない」といち早く見切った。

真田:中韓の間に口約束はあるのでしょう。皮肉な言い方をすれば、協定を正式に結んだかはあまり関係ない。合意書があっても、様々の理由を付けて守らない国もあるのです(笑い)。

鈴置:確かに(笑い)。中韓スワップ協定が満期になる前から、THAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)の韓国配備により中国が協定通りに人民元を融通するのか、疑問符が付いていました。

ただ、「米国の向こうを張る大国」を中国は自称し始めました。正式な協定書にサインし世界に発表した後では、さすがに反古にしにくい。

中国は韓国に外交案件で譲歩させた後に、見返りの一部として正式にスワップを結ぶつもりと思われます。

米韓同盟廃棄の呼び水

—7「譲歩」とは?

鈴置:10月31日、韓国外交部はそのサイトに「韓中関係改善に関連した両国の協議の結果」という題目の報道資料を載せました。

これによると、韓国は「在韓米軍のTHAADは中国を狙ったものではない」と中国に一札を入れました。中韓合意のその部分を以下に訳します。

韓国側は、中国側のTHAAD問題に関連する立場と懸念を認識し、韓国に配置されたTHAADは、その本来の配置の目的からして第3国を狙うものではなく、中国の戦略的安全保障の利益を損なわないことを明らかにした。

「在韓米軍に配備されたTHAADは中国を狙ったものではない」と韓国は説明してきました。それを文書化させられたわけで、これは大きな譲歩です。

北朝鮮の核問題が何らかの形で解決すれば、中国がこの文書をかざして韓国に「もうTHAADは不要だろう。米国に撤収させろ」と要求するのは確実です。

一方、在韓米軍が中国の弾道ミサイルから自らを守るTHAADなしに駐留を続けるかは疑問です。結局、この合意は在韓米軍の撤収、ひいては米韓同盟廃棄の呼び水となります。

詫び状を差し出せ

—大きな譲歩ですね。

鈴置:中国は韓国に猛烈な圧力をかけていた模様です。一部の韓国紙は合意文の発表前に「中韓首脳会談に応じてもらうため『THAAD配備は中国の利益を毀損した』との詫び状を差し出す可能性がある」とまで報じていました。

これを報じたのは朝鮮日報。「韓中、THAAD葛藤の『出口戦略』を水面下で交渉」(10月26日、韓国語版)のポイントを訳します。

中韓両国は関係正常化を目指し、THAADによる葛藤を縫合し得る共同声明ないし合意文の発表を進めていることが確認された。

早ければ11月10日のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)など多者首脳会談の前後に発表できるよう、実務者の間で協議中だ。

政府消息筋は「韓国は当初、韓中首脳会談を開き、その共同声明文を通じてTHAAD問題を解決したいと望んだ。しかし中国側が「THAAD(配備への許可)を撤回するか、少なくともTHAAD配備が中国の核心利益を侵害したことを認めてこそ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の訪中は認めることができる」と、首脳会談の実現の前提条件として合意文を要求していると語った。

この記事により「中国に屈するのか」と韓国は大騒ぎになりました。10月27日には青瓦台(大統領府)が記事を全面否定しました。聯合ニュースの「THAAD巡る『中国への遺憾表明検討』報道 韓国大統領府が否定」(10月27日、日本語版)などで読めます。

結局、韓国は「詫び状」を差し出すことは許してもらったものの、米韓同盟破棄の呼び水となる一札を取られてしまったのです。

口約束に留め、食い逃げ防止

—「詫び状か」「同盟破棄か」の2択ですか……。

鈴置:そんな中で「スワップを延長してくれ」と哀願するのですから、韓国金融当局の立場は極めて弱かった。でも、中国はこの「大きな獲物」に満足し「正式なスワップ」を結んでやるのではないかと思います。

真田:私は鈴置説と比べ、もう少し韓国の運動空間は広いと見ています。前回に申し上げた通り、米ロがタッグを組む方向にあります。

当然、中国は国際社会でのポジションの悪化を懸念せざるを得ません。スワップで貸しを作り、韓国カードを確保しようと考えても不思議ではないのです。

ことに今、韓国は米国に寄り始めました。THAAD配備を認めたこともそうですし、米韓の共同軍事訓練にも力を入れている。高まる北朝鮮の脅威に対し、文在寅政権も知らん顔というわけにいかないのです。

中国は米ロの関係改善と、韓国の米国への若干の回帰という新たな状況に対応し、スワップで韓国の取り込みを図った。人民元スワップとはいえ、通貨危機に怯える韓国にとっては安心材料です。

ただ韓国はスワップを付けてもらったら調子に乗り、米国にさらに寄るかもしれない。そこで中国は、スワップは結ぶものの正式な締結ではなく「口約束」に留めたのだと思います。

鈴置:韓国は日本にスワップを付けてもらった瞬間、思い切り手のひらを返して卑日三昧しました。韓国は「食い逃げの達人」です(「5年前、韓国は通貨スワップを『食い逃げ』した」参照)。大甘の日本と比べ、脇の固い中国なら韓国に騙されないでしょう。

日本もスワップを結べ

—韓国が「中国とスワップを結んだぞ。日本は孤立した。日本も我が国と結んだらどうか」と言ってきませんか?

真田:2008年当時はそうしましたが、今回はさすがに言って来ないでしょう。安倍晋三政権はトランプ(Donald Trump)政権と完全にスクラムを組んでいる。

その米国は「通貨」を対韓圧力の一環として使っています。日本に結べと要求しても埒が明かないことは、韓国も承知していると思います。

日本にスワップ締結を要求して断られたら――今の段階ではそうなると思いますが、マーケットの韓国を見る目はさらに厳しくなりますしね。

—10月に入り、韓国株は連日のように史上最高値を更新しました。為替も落ち着いています。

真田:逆に、だから怖いのです。ヘッジファンドは韓国への投資をいったん手仕舞いする機会を見計らっています。売り抜けるのなら株も為替も高い方がいいに決まっています。彼らがそうしたポジションを作っていると見ることもできます。

米金利は年内に上がる可能性が高い。すでにドルとウォンの金利差はなくなっています。米利上げで、資金が韓国からどっと流れ出すかもしれないとの観測が高まっています。ファンドはそのタイミングを見守っていると思われます。

邦銀も韓国の金融機関や企業に対し、貸し渋っています。北朝鮮の核危機への懸念が主な原因ですが、韓国から資本が逃げるということでは同じです。

八方塞がりの韓国経済

—ウォン金利も上げればいいのでは?

鈴置:韓国経済は家計負債門問題というアキレス腱を抱えています。金大中(キム・デジュン)政権以降、歴代政府は国民に借金させて景気を維持してきました。

2016年末には家計負債はGDPに相当する額に膨らんでいます(日経・電子版「韓国経済に『家計負債の死角』 GDP回復も危うさ」=10月26日=参照)

ウォン金利を上げれば、借金の返済額が増えて消費が減ります。貸し倒れも増えるので金融システムに打撃を与えます。いずれも資本逃避の要因になります。

韓国は金利を上げても資本逃避に直面しかねず、上げなくても資本逃避の可能性が高い、という八方塞がりの状況にあるのです。

米国も許さない「敵塩」

—日本としては、資本逃避によるウォン安を防ぐため韓国とスワップを結ぶべきだ、と言う人が出そうです。

真田:それは「敵塩(てきしお)」――敵に塩を送ることになります。先ほど鈴置さんが韓国を「食い逃げの達人」と評しました。韓国政府の最近の対日外交姿勢を見ていると、私にも「義のない国」としか思えません。

日本からスワップを付けてもらった瞬間、強気になり、中国側にすり寄る可能性が高い(「『中国側に寝返る韓国』にスワップは追い銭」参照)。

だからこそ、現段階では米国も日韓スワップは認めないと思います。1997年の通貨危機の際もお灸をすえるために、韓国を助けようとした日本を止めました(「米国は『日韓スワップ』を許すか」参照)。

鈴置:2017年1月6日、日本がスワップ交渉を打ち切ったのは、釜山の日本領事館の前の慰安婦像を認めるなど、慰安婦合意を堂々と破ったからです(「『百害あって一利なし』の日韓スワップ」参照)。

韓国はその後も、念を入れて合意を踏みにじっています。日本大使館前の慰安婦像を自治体の管理下に置いて撤去しない姿勢を明確に打ち出しました。そのうえ、慰安婦追悼碑の設置を計画しています。日本はよほどのことがないとスワップ再開に応じないでしょう。

自民党の閣僚経験者の秘書から聞いた話ですが、韓国が「卑日」するたびに、代議士の事務所に支持者から「日韓議員連盟をやめろ」との電話が相次ぐそうです。いわゆる「リベラル派」が政権をとってもスワップ再開は困難でしょう。

スワップと民主党

—でも、日韓スワップがないとウォン安になって、日本企業が不利になりませんか?

鈴置:それは完全な誤解です。逆なのです。日韓スワップがあるから韓国は安心してウォン安に誘導できるのです。資本逃避が起きないかと市場が神経質になっている時、韓国の金融当局はその引き金になりかねないウォン安誘導策はとれなくなります。

2008年の韓国が通貨危機に陥りかけた際、李明博(イ・ミョンバク)政権は日米とのスワップを利用してウォン安を維持しました。

一方、日本は2009年9月から民主党が執権。米国との関係を悪化させたため為替政策でも米国の協調を得られず、対ドルで1ドル=80円を切る円高にもなりました。

「民主党の円高」と「スワップによるウォン安」が相まって、円・ウォンレートは2007年に1円=約8ウォンだったのが、2009年から2012年まで13―14円前後で推移したのです。

これでは日本企業は韓国の競合会社と勝負できません。日本はすっかり輸出競争力を失い、景気も低迷しました。

日経・電子版の「『最強連動通貨』と日本株の不思議な関係」(2013年1月14日)によると、2007年から2013年年初までの日経平均株価と円・ウォンレートの相関関数は、何と0.98。対円でウォン安になるほどに日経平均は下がったのです。これこそ「敵塩」でした。

IMFに追い込む

—しかし、スワップを付けないと資本逃避が激化し、韓国が為替をコントロールできなくなる。そうなったらウォン安が進みませんか?

鈴置:その時は手があります。韓国を一気にIMF(国際通貨基金)の救済に追い込めばいいのです。そしてIMFの指示として韓国に超高金利政策をとらせれば、ウォン安は回避できます。

米国も韓国の左派政権を通貨で脅しています(「14年前のムーディーズに再び怯える文在寅」参照)。今のところ、国の格付けを下げるぞ、と威嚇しているだけですが、韓国が言うことを聞かなくなれば20年前と同じようにIMFに追い込むことに躊躇しないと思います。

トリプルAのAIIB

真田:そこは微妙です。今回も米国がIMFカードを切るか――。私には疑問があります。20年前と比べ、米国は劇的に国力を落としているからです。

例えばカザフスタン。この国から中国はエネルギーをどんどん買っています。人民元で支払いますが、カザフは文句を言わずに受け取ります。

なぜなら、中国から生活必需品を輸入したり、インフラを整備してもらう際に人民元で支払えばよいからです。カザフは人民元経済圏に入りつつあります。

中国は、周辺国のインフラ整備のためにAIIB(アジアインフラ投資銀行)を設立しました。各国による出資金だけでは大した規模の融資ができませんので、債券を発行して資金調達することになります。

その際、格付けが重要ですが何と、ムーディーズを含む米欧の格付け会社がAIIBに対してトリプルAを付けたのです。日米の銀行は政治的配慮から、直ちにはAIIBにファイナンスしないと思います。

しかし、中国封じ込めに関心のない欧州の銀行は、この格付けを見てAIIBの債券を大いに買うでしょう。中国の金融を通じた周辺国への支配力は格段に増します。今では米国の比較優位は20年前とは比べものにならないほどに低下しています。

そのような状況で米国が韓国民の恨みを買う「IMFへの追い込み」を実施するか、私は首を傾げるのです。今度そんなことをしたら、韓国は完全に中国側に行きますからね。

「4カ国戦略対話」からも排除

鈴置:トランプ政権は――米国の金融界は別として、安保の専門家は韓国を同盟のネットワークから外すことは織り込み済みと思います。

北朝鮮と対峙する今現在は、米国は韓国との同盟が堅固なものと見せたがっている。北朝鮮への圧迫を最大限に強めるためです。しかし、北朝鮮の核問題を片付ける過程で「韓国放棄」カードを切る可能性があります。

トランプ大統領は公然と「歴史的に韓国は中国の一部だった」と語りました(「『韓国は中国の一部だった』と言うトランプ」参照)。

北朝鮮の核問題解決に協力したら、在韓米軍を撤収や米韓同盟をやめてもよいと中国に約束したのではないか、との推測が広がりました。

トランプ政権が推進する日・米・豪・印の「4カ国戦略対話」構想からも韓国は排除されています。中国の包囲が目的ですから、中国にすり寄る韓国を入れないのは当然ですが。

トランプ大統領の11月5日からのアジア歴訪にも、当初計画では韓国は訪問先に含まれていなかったようです。

CSISのマイケル・グリーン(Michael Green)上級副所長が中央日報の「トランプ氏、日本だけに行きたかった……訪韓の最大の目的は」(10月23日、日本語版)で語っています。

韓国のヌンチに苛立つ米国

真田:それは米国の韓国に対する「揺さぶり」ではないかと思います。北朝鮮もそうですが、韓国は状況変化に応じて立ち位置を替えていく力――韓国語で言うところの「ヌンチ」があります。

米・中・朝の間で上手く立ち回ろうとする韓国に、米国は苛立ちを見せているのです。

(次回に続く)

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