『米中は金正恩を「アジアのムガベ」にできるか 「テロ支援国家」再指定は「ならず者」の烙印』(11/28日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

11/29宮崎正弘氏メルマガ<北朝鮮、ICBMを日本海に飛ばしたが  新型か「火星型」は不明。ロフテッド軌道。4000キロを「遙かに超えた」>

http://melma.com/backnumber_45206_6615297/

11/29ZAKZAK<正恩氏“軍事的沈黙”破るか 北にミサイル発射兆候、「年内有事」の可能性も>

http://www.zakzak.co.jp/soc/news/171129/soc1711290006-n1.html?ownedref=not%20set_not%20set_newsList

11/28ZAKZAK<12・18、米の北朝鮮攻撃Xデー警戒 各国緊張の極秘情報、世界最強ステルス戦闘機6機投入の狙い>

http://www.zakzak.co.jp/soc/news/171128/soc1711280007-n1.html?ownedref=not%20set_not%20set_newsList

11/28ZAKZAKの加賀孝英氏のレポートでは12/18に米軍の先制攻撃があるかもしれないとのこと。クリスマス休暇を待たずと言うことは事態がそれだけ逼迫しているのでは。

11/27中国観察<金正恩逼得習近平再下手-局勢極其緊張?阿波羅網=金正恩は習近平が再び動き出すよう追い詰めた 情勢は極度に緊張している アポロネット>

http://chinaexaminer.bayvoice.net/b5/trend/2017/11/27/381410.htm%E9%87%91%E6%AD%A3%E6%81%A9%E9%80%BC%E5%BE%97%E7%BF%92%E8%BF%91%E5%B9%B3%E5%86%8D%E4%B8%8B%E6%89%8B-%E5%B1%80%E5%8B%A2%E6%A5%B5%E5%85%B6%E7%B7%8A%E5%BC%B5%EF%BC%9F.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=facebook

この記事によりますと、「①北部戦区は中朝境界付近で実戦演習をする予定②読売新聞を引用して鴨緑江にかかる「中朝友誼橋」の修理は12月中旬まで延ばす③陳破空氏によれば中国は北朝鮮と戦って3度とも敗れている。一、張成沢の粛清、二、金正男の毒殺、三、金正恩毒殺の失敗、習は党内では連戦連勝であるが北に対しては恥をかかされ放し。」とのこと。習は中朝間で戦争になったら江沢民派の北部戦区軍を投入し、毛が第一次朝鮮戦争でやった国民党の敗残兵を投入して始末したのと同じことをしようとしているのでは。またジンバブエのムガベを下ろした背後に中国がいることも宋濤特使が伝えた可能性もあります。

11/29長尾たかし衆院議員は「我国がしなければならない「圧力を最大限まで高める」事とは、朝鮮総連の破産申立てと金正恩本人を資産凍結対象者とする事です。政府の決断で実行できる事だと確信しています。」と述べています。「遺憾」砲だけではなく、敵基地攻撃能力を持つよう国民に呼びかけなければ、国民に切迫度が伝わりません。

鈴置氏の記事や他の記事を読みますと戦争は不可避との印象を強く持ちました。而もクリスマス休暇にかこつけたNEO実施後の年明けでなく、12/18と中朝友誼橋の封鎖時期とも重なります。難民が中国に押し寄せるのを防ぐためでしょう。

米国は戦術核の使用を躊躇わないとのこと、バンカーバスターで地中深く軍事施設・核施設だけ壊滅させれば、国際世論も認めるのでは。何せ金正恩は鈴置氏の言うようにMAD(相互確証破壊)が成り立たないMadman ですから。

在韓邦人は自己責任で帰国した方が良いでしょう。会社の指示を待っていたら手遅れになる可能性もあります。日本へのミサイルよりソウルの砲弾飛来の可能性は高いですから。最悪の場合、核ミサイルが飛んでくる可能性もあります。

記事

北朝鮮兵が韓国に亡命する事件が発生。兵士が境界線を越える映像が公開された(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

金正恩(キム・ジョンウン)委員長はジンバブエのムガベ大統領の末路をたどるのだろうか。

「イスラム国」と同列

—北朝鮮の兵士が韓国に亡命しました。

鈴置:兵士は板門店(パンムンジョン)のJSA(共同警備区域)を走って南側に駆け込みました。ハンギョレの「映像・北朝鮮、軍事境界線を越えて銃撃……停戦協定に2回違反」(11月22日、韓国語版)などで、動画を見ることができます。

北朝鮮の枯野の一本道を飛ばすジープ型自動車。車がJSAに到着すると、北側の警備兵が慌てて走り出す。何かにはまり込んで動けなくなった車。そこから飛び出て南側に走り出す兵士。背後から狙い撃ちする警備兵。南側に少し入ったところで撃たれて倒れ込んだ亡命兵士。そこまで匍匐前進で近づき、引きずって救出した南の2人の兵士……。

スパイ映画のスリリングな1シーンを見るようです。が、これはすべて現実です。冷戦時代を生きた人は、ベルリンの壁を東から西に越えようとして撃たれた市民を思い出したでしょう。

この映像の公開により、世界の人は北朝鮮という国の異様さに改めて思い至りました。事件発生は11月13日。映像を公開したのが9日後の11月22日。

ちょうど米国が世界に向け「金正恩政権は危険な、ならず者集団だ。放置すれば世界が危機に瀕する」と訴えている最中でした(「金正恩に『ならず者の烙印』を押すトランプ」参照)。

  • 金正恩に「ならず者の烙印」を押すトランプ(2017年)
9月19日 国連演説で邪悪(wicked)な北朝鮮と戦うよう、世界に呼び掛け
11月6日 日本で拉致被害者家族らと面会「拉致はとんでもない行為だ」
11月8日 韓国国会演説で北朝鮮の人権侵害と対外テロなど非道ぶりを列挙
11月9日 米中首脳会談後の会見で「北朝鮮が向こう見ずで危険な道を放棄するまで経済的圧力を強める必要があるとの認識で一致した」と強調
11月15日 帰国後の会見で「習近平主席も『北朝鮮の核は中国にとって極めて深刻な脅威だ』と認識している」「我々は『凍結対凍結』は受け入れないことで合意した」
11月20日 「テロ支援国家」指定発表の席で「北朝鮮は世界を核で廃墟にすると脅し、何度も外国での暗殺を含む国際テロを支援してきた」
 

9月19日のトランプ大統領の国連演説では北朝鮮を国家と見なさず「金政権」(Kim regime)と呼んで「イスラム国」(IS)と同列に扱いました。11月8日の韓国国会演説でも「狂信的なカルト集団」と規定しました(「トランプ大統領の韓国国会演説のポイント(1)」参照)。

■トランプ大統領の韓国国会演説(2017年11月8日)のポイント(1)

北朝鮮の人権侵害を具体的に訴え

10万人の北朝鮮人が強制収容所で強制労働させられており、そこでは拷問、飢餓、強姦、殺人が日常だ

反逆罪とされた人の孫は9歳の時から10年間、刑務所に入れられている

金正恩の過去の事績のたった1つを思い出せなかった学生は学校で殴られた

外国人を誘拐し、北朝鮮のスパイに外国語を教えさせた

神に祈ったり、宗教書を持つクリスチャンら宗教者は拘束、拷問され、しばしば処刑されている

外国人との間の子供を妊娠した北朝鮮女性は堕胎を強要されるか、あるいは生んだ赤ん坊は殺されている。中国人男性が父親の赤ん坊を取り上げられたある女性は「民族的に不純だから生かす価値がない」と言われた

北朝鮮の国際的な無法ぶりを例示

米艦「プエブロ」の乗員を拿捕し、拷問(1968年1月)

米軍のヘリコプターを繰り返し撃墜(場所は軍事境界線付近)

米偵察機(EC121)を撃墜、31人の軍人を殺害(1969年4月)

韓国を何度も襲撃し指導者の暗殺を図った(朴正煕大統領の暗殺を狙った青瓦台襲撃未遂事件は1968年1月)

韓国の艦船を攻撃した(哨戒艦「天安」撃沈事件は2010年3月)

米国人青年、ワームビア氏を拷問(同氏は2016年1月2日、北朝鮮出国の際に逮捕。2017年6月に昏睡状態で解放されたが、オハイオに帰郷して6日後に死亡)

「金正恩カルト体制」への批判

北朝鮮は狂信的なカルト集団に支配された国である。この軍事的なカルト集団の中核には、朝鮮半島を支配し韓国人を奴隷として扱う家父長的な保護者として指導者が統治することが宿命、との狂った信念がある

11月20日(米国東部時間)の「テロ支援国家」再指定は、その総仕上げでした。その直前に、思いもかけず亡命事件が発生。米国は「烙印」にダメ押しできたのです。

戦争を避けるクーデター

—いよいよ、戦争ですか?

鈴置:米国がその覚悟を固めたことは明らかです。北朝鮮を、雑居ビルに立てこもって通行人に銃を乱射するカルト集団と認定したのです。武器を捨て、両手を上げて出て来ない限り、小屋ごと爆破することになります。

—でも、金正恩委員長は核を捨てるつもりはない。

鈴置:その通りです。習近平主席が11月17日に送った特使にも会いませんでした。例え話を続けるなら、ビルの大家さんの説得も無視し、徹底抗戦を宣言したのです。

—やはり、戦争ですね。

鈴置:それを避ける道があります。カルト集団の中堅幹部がボスから銃を取り上げるか、あるいはボスを射殺して投降するか、です。要はクーデターか暗殺です。

米国も戦争はしたくない。悲惨な結果が見えているからです。先制攻撃すれば、米国や日本の被害を最小化しつつ、北朝鮮の核関連施設を破壊できるとされています。ただ、そのためには核兵器――少なくとも戦術核を使う必要がある、と専門家は見ます。

戦術核は最低、使う

—核まで使うのですか?

鈴置:普通の人は皆、驚いてそう聞いてきます。しばしば「ピンポイント攻撃」という、限定的な戦闘をイメージさせる単語が使われているからでしょう。

実際、シリアやアフガンで米国が敵の重要施設を破壊する時は、巡航ミサイルやドローンを使って「ピンポイント攻撃」し、民間人の被害を減らしています。

しかし北朝鮮はアフガンとは完全に異なります。核武装しているのです。米国が先制攻撃した瞬間、核弾頭を搭載した弾道弾を撃って反撃してきます。

弾道弾の多くは地下サイロに隠されています。上空から赤外線センサーを使ってその大まかな位置は割り出せますが、完全には絞り込めません。そこで広範囲な地域を壊滅できる戦術核を使うのです。

日本人は「核まで使うのか」と驚きますが、米軍は「戦術核」と「通常兵器」の間に線を引かないのだそうです。全面戦争を引き起こす「戦略核」と、そこまでは至らない「戦術核・通常兵器」という区分があるに過ぎないと専門家は言います。

ただ、トランプ大統領が国連演説で「完全に破壊する」(totally destroy)と述べました。この言い方から、戦略核を使う可能性もあると見る人もいます。

8月29日と9月15日の弾道弾は首都、平壌(ピョンヤン)の順安(スナン)空港から発射されました。「移動式発射台を使えば、平壌を含めどこからでも核ミサイルを撃てるぞ。多くの非戦闘員が住む平壌も核で先制攻撃する根性があるか」と米国に凄んで見せたのです。

それに対しトランプ大統領は「完全に破壊」との言葉を使うことで「どこだろうと、何だって使ってやってやるぞ」と言い返したというわけです。平壌市内を動き回る発射台を殲滅するには戦術核ではなく、戦略核が要るのです。

北はすでに「先制核攻撃」宣言

—本当に、米国は核も使う先制攻撃に踏み切れるのでしょうか。

鈴置:北朝鮮に対してならやるでしょう。北朝鮮は2016年ごろから米国や韓国に対する先制核攻撃を公言してきました(「朴槿恵は『北爆』を決意できるのか」参照)。

日本に対しても2017年9月13日、朝鮮中央通信が「日本列島の4つの島を核爆弾で海中に沈める」と威嚇しました。

先制核攻撃されても、北朝鮮は文句を言えないのです。トランプ政権も「先制核攻撃するぞ」と威嚇する国を許しません。

大統領自身が韓国国会演説で「我々は米国と同盟国への威嚇と攻撃を許さない。米国の都市を破壊するとの脅迫を許さない」「我々は身を守るためには戦うし、死も恐れない」と言い切っています(「トランプ大統領の韓国国会演説のポイント(2)」参照)。

■トランプ大統領の韓国国会演説(2017年11月8日)のポイント(2)

「戦争を辞さず」と決意表明

朝鮮半島周辺海域にF35とF18を搭載した3隻の巨大な空母が、適切な海域には原潜が展開中だ。私は力を通じた平和を求める

北朝鮮の政権はこれまでの米国の抑制を弱さと見なしてきた。決定的に誤った判断である。現政権は過去の米国とはまったく異なるのだ

米国は紛争や対立を望まないが、それから逃げはしない。米国の決意を愚かにも試してうち捨てられた数々の政権が歴史には満ちている

我々は米国と同盟国への威嚇と攻撃を許さない。米国の都市を破壊するとの脅迫を許さない。我々は史上最悪の残虐な行為がこの地で繰り返されるのを許さない。我々は身を守るためには戦うし、死も恐れない

「北朝鮮と戦おう」と世界に呼び掛け

この地に――自由で繁栄する韓国の心臓部に私が来たのは、世界の自由を愛する国々に1つのメッセージを伝えるためだ

それは、見逃す時が終わったということだ。今や力の時である。平和を求めるのなら、常に力強く立ち上がらねばならない。核による荒廃をもって脅迫する、ならず者政権の脅威に世界は寛容ではありえない

すべての責任ある国家は北朝鮮という野蛮な政権を孤立させ、いかなる形であってもそれを否定せねばならない。支持しても、与えても、受け取ってもならない

中国とロシアを含む、すべての国に呼び掛ける。国連安全保障理事会の決議を完全に履行し、北朝鮮の政権との外交関係を格下げし、貿易と技術に関わるすべての関係を断ち切らねばならない

この危険に、ともに立ち向かうことは我々の責任であり義務である。なぜなら我々が手をこまねくほどに危険は増し、選択肢が少なくなるからだ。この脅威に対し見て見ぬふりをする国は、つまり脅威をいっそう高める国は、自身の良心にこの危機の重みを問わねばならない

MADは成り立たない

北朝鮮が米国や日本に対し、先制核攻撃するぞと堂々と威嚇するという事実――。これを見落としてはなりません。なぜなら、こうした国とは「核の均衡」がなり立たないからです。

核兵器による報復が恐ろしくて容易に核で先制攻撃できない――。ざっくり言えば、これが核均衡による平和です。専門用語で「相互確証破壊」(MAD)と言います。冷戦時代に核戦争が起きなかったのはMADのおかげだ、との見方が一般的です。

最近、これをもって「米国はソ連や中国の核を認め共存した。同様に北朝鮮の核保有も認めるべきだ」と言う人が出始めました。「米国も核を持つのだから、核武装した北朝鮮とは核の均衡を図ればよい」との理屈です。

でも、冷戦時代の中ソは「先制核攻撃するぞ」とは言いませんでした。核の均衡は「『先制核攻撃すれば自らも悲惨な目に遭う』と冷静に判断する常識を相手も持つ」との認識が双方にあって成立します。

北朝鮮は少しでも自分が気に入らないことがあると「先制核攻撃するぞ」と大声で叫ぶ。こんな非常識な国とは核の均衡など期待できないのです。

トランプ大統領が韓国国会演説で北朝鮮をカルト集団と規定したのも、その異常さを指摘することで「北朝鮮の核武装を認めよ」との意見を封じ込めたのでしょう。

俺の後ろには中国がいるぞ

—状況は煮詰まっていますね。

鈴置:だからこそ、暗殺やクーデターという「平和な手段」が求められるのです。7月にCIAのポンペオ(Mike Pompeo)長官が政権交代を目指すと公言しました。米国では、一番妥当な解決策として議論されているようです(「『金正恩すげ替え論』を語り始めた米国」参照)。

ただ、暗殺やクーデター――つまり金正恩政権の打倒は中国かロシア、あるいは双方の暗黙の支持が不可欠です。

仮に誰かが金正恩委員長の殺害に成功しても、それだけでは逮捕されて終わりです。「俺の後ろには中国がいるぞ!」と叫んでこそ、皆が付いてくるのです。クーデターの際はなおさらです。金正恩委員長が生きているうちに軍を動かすわけですから。

—「俺の後ろには米国がいるぞ」と叫んだら?

鈴置:それは効き目がありません。陸上の大兵力を直ちに平壌に送れる国でないと金正恩側に勝てませんから。米国の名を出しても誰も付いて行かないでしょう。

ちなみに1979年に朴正煕(パク・チョンヒ)大統領を暗殺した金載圭(キム・ジェギュ)KCIA部長も、拘束された時に「自分の後ろには米国がいる」と叫んだとの噂が当時、韓国で流れました。大兵力を駐屯させる米国の存在は韓国では桁はずれに大きいのです。

WP「米中は崩壊後を協議」

—中国は米国の「金正恩打倒」作戦に乗るのでしょうか。

鈴置:分かりません。ただ、金正恩委員長にとって不気味な情報がいくつか流れています。

トランプ大統領はアジア歴訪からワシントンに戻った後の11月15日、会見で「習近平主席も『北朝鮮の核は中国にとって極めて深刻な脅威だ』と認識している」と語りました。原文は以下です。

President Xi recognizes that a nuclear North Korea is a grave threat to China,

「金正恩打倒」に中国も同意したとは言っていません。ただ、金正恩委員長が核放棄を拒絶しているところに、習近平主席が「北の核は中国にとって極めて深刻な脅威」と語ったのです。米中は金正恩政権の存在が危険だとの認識では少なくとも一致しているのです。

11月21日には、ワシントンポスト(WP)のコラムニスト、イグナティウス(David Ignatius)氏が興味深い記事を載せました。「Rex Tillerson’s secret survival weapon」で、その中に以下の1文があります。

the United States continued a high-level, secret dialogue with China about how to secure North Korea’s nuclear weapons if the regime implodes.

この記事も「米中が政権崩壊に向け協力している」と書いているわけではありません。でも「金正恩政権崩壊後の北の核兵器をいかに安全に確保するか、米中は高いレベルで秘密裏に協議してきた」というのです。

「政権崩壊後」の問題を米中が相談しているというのなら「崩壊に至るプロセス」も話し合っていることでしょう。

中国軍が平壌進撃

—ニュースですね。

鈴置:多くの専門家が「金正恩政権崩壊後の朝鮮半島の安保の枠組み」について、米中が話し合っているだろうと想像していました(「第2次朝鮮戦争か、金正恩体制崩壊か」参照)。

米中首脳会談(11月9日)のすぐ後にこの記事が載ったので、専門家はますます疑いを深めました。北朝鮮の外交関係者は、絶望的な気分でこの記事を読んだと思います。

すでに中国の学者は「中国軍の北朝鮮侵攻で政権交代を実現すべきだ」との過激な意見を公開の席上、語っています(「米中が朝鮮半島で談合する時」参照)。

「米中は崩壊後を話し合うべきだ」程度の“穏健な主張”は中国では普通になりました。最近では11月16日、ソウルで開いたシンポジウムで同済大学の政治・国際関係学院の夏立平院長が主張しました。

東亜日報の「中国学者『中国は躊躇せず、韓米と北の急変事態を論議すべきだ』」(11月21日、韓国語版)から引用します。

夏立平院長は「2017北東アジア協力フォーラム」で中韓米3カ国の「緊急計画対話」を提案した。議題として「北朝鮮の体制崩壊時、誰が核兵器を制御するのか」「北朝鮮からの難民問題をどう処理するか」「北朝鮮の秩序回復は誰が責任を負うのか」「危機後の朝鮮半島の政治の枠組みをどう整理すべきか」を提示した。

金日成から学んだムガベ

—確かに、北朝鮮にとっては不気味な記事が続きますね。

鈴置:記事だけではありません。ジンバブエのムガベ政権の崩壊という「現実」に、金正恩委員長は青ざめているでしょう。

—ジンバブエですか?

鈴置:ムガベ大統領は北朝鮮と深い関係を持ち、独裁の手法も故・金日成(キム・イルソン)主席を見ならったとされています。

韓国保守派の指導者、趙甲済(チョ・カプチェ)氏が、自身が主宰するサイトに「金日成から学んで国を滅ぼしたムガベの失脚、金正恩に衝撃を与えていることだろう」という記事を載せています。以下、要約します。

アフリカで最も生活水準が高いとされたローデシア(現・ジンバブエ)を37年間で台なしにした独裁者、ムガベが事実上の軍事クーデターで失脚した。

一時はまともな指導者と評されたムガベは1980年に金日成と会って、人が変わった。崇拝の対象となっているのを見て羨ましかったのだろう。

(北朝鮮の)主体思想を利用した鉄拳政治を導入し、ムガベは「アフリカの金日成」と呼ばれるようになった。独裁者は自分よりも強力な独裁者に会うと羨望し、真似をする。チャウシェスクとムガベは金日成の弟子だったのだ。

チャウシェスクとは1989年に処刑されたルーマニアの独裁者のことです。金日成主席と関係が深く、冷戦当時、ルーマニアは北朝鮮と並び東側の中でも強権ぶりで悪名をはせていました。

北からの亡命者によると、チャウシェスク政権が崩壊した時、金日成政権は深い衝撃を受けたそうです。当然のことですが。

北朝鮮<ジンバブエ=韓国

—ジンバブエ軍は独裁者を倒せたのですね。

鈴置:韓国の保守はそこに注目しました。「未来志向」というペンネームの識者が趙甲済ドットコムに「アフリカの軍人よりもダメな北朝鮮軍」(11月17日、韓国語)を寄稿しました。ポイントを訳します。

ジンバブエの軍人は勇気を出した。北朝鮮の多くの軍人の中で長期政権と独裁に対し立ち上がる軍人は1人もいないのか。彼らの奴隷根性には語る言葉もない。本当に金正恩を尊敬してじっと服従しているのか。

北朝鮮の軍人に、決起を呼び掛けたのです。

—韓国紙はこうした視点で書きませんね。保守系紙を含めて。

鈴置:それは当然です。ムガベ政権を倒したのは軍だけではありません。退陣を要求するデモと、議会の弾劾手続きも貢献しました。

—デモと弾劾……。北東アジアのどこかの国と似ていますね。

鈴置:そこです。韓国の大手メディアは朴槿恵(パク・クネ)退陣を実現したデモを称賛し「世界に誇る快挙」と自画自賛していました(「『名誉革命』と韓国紙は自賛するのだが」参照)。

東亜日報は「日本人は羨ましがっている」、朝鮮日報は「外国メディアも感嘆」と書きました。韓国では朴槿恵弾劾騒動が「英国の名誉革命の再現」「フランス革命などと並ぶ世界4大革命」ということになっている。

というのに「なんだ、我が国はジンバブエと同じ水準だったのか」と読者に思わせる記事は載せられません。韓国人はアフリカを露骨に下に見ますしね。

韓国の弾劾騒動を「衆愚政治の極み」と批判していた趙甲済ドットコムくらいでないと、ジンバブエで起きた「韓国に続く名誉革命」を報じにくいわけです。

クーデターは訪中直後

—なるほど。「ジンバブエの軍人のように勇気を出せ」と揺さぶられたら、金正恩は「韓国はジンバブエと同じじゃないか」と言い返せばいいわけだ。

鈴置:「韓国はジンバブエだ」なんて言っている余裕は金正恩政権にはないでしょう。ムガベ退陣の後ろには中国がいたとの見方が広がっているからです。

CNN・日本語版が「ジンバブエの『クーデター』、中国関与か 軍幹部が直前に訪中」(11月20日)で報じています。引用します。

チウェンガ司令官が中国から帰国した数日後、ジンバブエの首都ハラレで同司令官率いるジンバブエ軍が政変を起こして実権を握り、ムガベ大統領を自宅軟禁状態に置いた。

この経緯からチウェンガ司令官の中国訪問に注目が集まり、同司令官がムガベ大統領に対する行動について中国政府による暗黙の了解を求めたのではないかという臆測が浮上している。

要は、中国がムガベ大統領を見限った、ということです。中国はジンバブエに多くの経済的な利権を持ちます。そんな国が政情不安に陥ったら困るのです。

ひょっとすると中国は、こうした情報をリークし「ムガベになりたいか」と金正恩委員長を脅したのかもしれません。中国の安全保障にとって、北朝鮮の安定はジンバブエのそれとは比べものにならないほど重要ですから。

(次回に続く)

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