『いつまでも犠牲者ぶる中国を米国人研究者が論破 何かにつけ「屈辱の世紀」を持ち出す狡猾な心理戦』(10/24JBプレス 古森義久)について

米国の中国支援の愚かさと日本の世界への発信のなさが、中国の好き勝手を許して来た大きな原因と考えます。米国もやっと共産主義の怖さと中国人の忘恩(「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という基本的価値観)について気が付き、かつ米国の世界覇権への挑戦阻止に少しずつ軌道修正しようとしていると感じます。無能オバマでは舐められきっていますが、中国の金塗れのヒラリーにも期待できません。民主・共和どちらが勝っても、副大統領が昇格することを望みます。

日本の対外発信の弱さが、尖閣を危ういものにしています。論理には論理を、事実で反論していけば良いのに、今の役人は保身に固まり、キチンと世界に向けて反論していません。大きくは外務省・総務省・官邸の責任ですが。国民から金を毟り取り、こっそり裏で反日報道に現を抜かすNHKを民放にして、国策放送局を創設したらどうでしょうか。今の民放は低俗過ぎて見る気もおきませんが、反日放送をした番組が世界に流されると日本の名誉を傷付けます。朝日新聞の「南京虐殺」や「従軍慰安婦」の捏造記事が世界にばら撒かれ、世界に信じさせることになったことと同じです。況してやNHKは国から予算が出ている報道機関で、新聞のように直接国から予算がついている訳ではない媒体とは違います。反日を売り物にする報道機関が生き延びているのは国民の責任です。購読する人がいるから、受信料を払う人がいるからです。日本人は知的誠実さに乏しいのでは。国民が反日民進党に投票すれば、中韓を利するだけです。国益を守るためにはしっかり情報を取り、投票行動を取りませんと。沖縄の左翼や在日の違法活動はキチンと取り締まってほしい。日本は中国と違い、法治国家のはずです。

今、ジョージ・ブロンソン・レー著の『「満洲国建国」は正当である 米国人ジャーナリストが見た、歴史の真実』を読んでいます。日本は満洲国を樹立し、傀儡として使おうとしたと言われていましたが、日本にもしそういう意図があったとしても、米国の「テキサス併合」や南北戦争時の「ヴァージニアから独立したウエストヴァージニアを合衆国に加盟」させたことと何ら変わらないとのこと。米国は併合しましたが、日本は満洲を独立国として扱ったがために世界から恨まれることになったのでは(世界がアジア・アフリカで悪逆非道の植民地政策を採っていたため)。

リットン調査団は極東情勢に疎い人間が調査したこと、満洲国は創設したばかりで英語できちんと経緯(辛亥革命1年後の1912年に支那共和国と清国皇帝退位協定締結、皇族の身分保障が謳われ、各国政府に電達される。1924年に支那共和国が約束を破り、宣統帝を紫禁城から追放、暗殺におびえた帝は最初英国大使館に亡命を希望するも断られ、仕方なく日本の天津領事館に逃げ込んだ。満洲事変により張学良の軍隊が満洲から追い出されて、故国である満洲に国を樹立した。これは宣統帝の英国人家庭教師であるジョンストンが書いた『紫禁城の黄昏』にも同じことが書いてあります。元々満洲には漢人を入れない政策(封禁政策)を採ってきましたが、日清戦争後それが緩み、張作霖のような漢人の匪賊が跋扈する社会となり、武力を持たない父祖の地を蹂躙されてしまった)を説明できなかったことが日本に不利になりました。日本としては世界に説明すれば分かって貰えると思ったのが浅はかでした。米国と国際連盟(米国は未加入だったにも拘らず)日本を孤立させるようにシナリオができていたという事です。スチムソンの「満洲国の不承認政策」や「大陸の門戸開放政策」が米国の二重基準であるとも。国務省は米国の民間の投資を「独占」になるからという理由で拒否し続けたともありました。仮定として中国大陸に満洲が含まれるとしても(万里の長城以北は漢人の土地ではない)満洲国設立が何故いけないのか?9ケ国条約には独立を認めないとは書いていません。米国がハワイを準州として併合したケースで考えれば、米国人の砂糖黍への投資はハワイ現地人の労働力では足りず、大量の日本人の移民で賄いました。満洲国に住む漢人の数が大きくなったからと言って満洲を漢人の土地とは言えません。それを認めるのであればハワイは日本の領土となるとも。

中国は日清戦争・三国干渉後、露清密約(1898年5月22日調印)を結び、軍事相互協力、遼東半島の租借や東清鉄道の経営権付与をしました。如何に薄汚い民族かと日本人は思ってしまいます。これが中国人の本性です。この存在は日本も気づかず、1922年のワシントン会議での中国の発表で分かったとのこと。昔も今も日本はインテリジェンスの弱い国と言うのが分かります。

本記事のフライングタイガーは中立義務違反の事例です。米国こそがキチンと歴史に向き合うべきです。都合が悪くなると「歴史修正主義者」のレッテルを貼り、言論封殺するのは止めた方が良いでしょう。米国の容共政策、中国支援は馬渕睦夫氏のいう「裏で国際金融資本(≒ユダヤ資本)が蠢いているから」というのをどうしても思い出します。

記事

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オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所は7月12日、中国には南シナ海の島々に対する「歴史的権利」を主張する法的根拠はないと裁定。中国は「犠牲者カード」を使って反論した。南シナ海が描かれた地図(資料写真)。(c)AFP/GREG BAKER〔AFPBB News

中国は他国と論争する際に「屈辱の世紀」という言葉をよく使う。清朝時代から西欧列強や日本に侵略されてきたという100年ほどの時代を指す言葉である。

中国はこの言葉を使って、いかに自国が帝国主義の犠牲者であったかを強調し、「だからこそ現在も犠牲者としての特権がある」と主張する。最近、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所から南シナ海での領有権主張を否定された際も、この「犠牲者カード」を使って反論した。

だが外部からみれば、中国の「犠牲者カード」は過去の歴史を都合よく持ち出して、現在の無法な行動を正当化する狡猾な心理戦にしか映らない。

いまだに外交で犠牲者カードを利用する中国の心理戦に対して、最近、米国の研究者が「中国に全面的に反論すべきだ」という内容の論文を発表した。米国は中国を侵略して搾取するどころか、逆に中国の近代化に大きな貢献をしてきたという。対中論争の手引きとして、日本にとっても大いに参考になり得る内容である。

中国の近代化や国際化を最も支援してきたのは米国

この論文は、米国議会調査局の中国専門官として長年活動してきたシャーリー・カン女史によって執筆され、ワシントンの外交関係者の間で広く読まれる外交政策雑誌「ザ・ディプロマット」10月号に掲載された。論文の題名は「中国の心理戦争に反撃する」である。

まずカン女史は、中国政府の代表たちが他国との対立や紛争の案件で自国の主張を表明するとき、ごく頻繁にこの犠牲者カードを使うことを指摘する。

最近の実例が、今年7月に常設仲裁裁判所が中国の南シナ海での領有権主張を不当だと断じる裁定を下した際の、中国側の反応である。裁定が下されると複数の中国政府高官たちが、「中国は過去100年もの間、外国の侵略により屈辱を体験してきた。今回の裁定も同様に、米国が中国を標的に展開する『アジア再均衡』戦略の犠牲になった結果だ」と述べていた。

しかしカン女史は次のように指摘して、そうした中国側の主張を退ける。

「米国上院軍事委員長のジョン・マケイン議員が最近強調したように、米国は過去100年以上、進歩的な政府の樹立、自由化、国民の教育向上などの面で中国を支援し、中国が国際社会の一員となることを助けてきた。米国ほど中国の近代化や国際化を支援してきた国は他にない」

米国が中国に被害を与え犠牲者にしたなどという中国側の主張はとんでもない、というわけだ。

日本にもある「反論」の材料

そのうえで同論文は、米国が過去に中国を支援した実例を挙げる。

第1に、米国は1800年代末期の清朝の頃、どの国にも市場を開く「門戸開放」政策の効用を説いて、中国国内での暴力的な衝突などを防いだ。この米国の動きによって関係諸外国は自制することになり、中国領土が分割される展開を阻止した。

第2に、1900年の義和団事件で清朝が米欧列強や日本に賠償金を支払うと、米国はその資金を、中国から米国へ留学する多数の学生のための奨学金とした。筆者(カン氏)の祖父の兄も、その恩恵にあずかった。

第3に、清朝が倒された1911年の辛亥革命から中華民国の建国にいたるまで、米国は一貫して新政権を支援した。中国の建国の父とされる国民党の孫文に対しても、ハワイへの留学など米国は手厚く保護した。

第4に、米国は日中戦争(1937~1945年)で中国側を支援した。特に国民党軍に武器や食糧を空輸で提供した米側の半官半民の「フライングタイガー」航空隊の貢献は大きかった。

第5には、米国は1970年代の中国への接近、中国との国交樹立、台湾関係法などを通じて、中華人民共和国と中華民国の両方への支援を続けた。特にその後の中国政府への関与政策は、中国が国際社会に参加する際の貴重な出発点となった。

以上のように、カン氏は自らの先祖の渡米も例に出し、米国が中国を犠牲者にするどころか、逆にその繁栄や近代化に大きく貢献してきたことを強調する。

日本がこの反論を教訓とするならば、明治時代の日本が国民党の孫文氏らを日本国内で保護し、その他のさまざまな支援を与えた歴史や、戦後も巨額の経済援助をODA(政府開発援助)として中国政府に与え続けた点を強調して、「中国を犠牲者にしたなど、とんでもない」という反論を十二分に行える、ということだろう。

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茨城県北芸術祭-2

1に続いて紹介します。

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チームラボ作品。若冲へのオマージュか(天心記念五浦美術館、北茨城市)

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チームラボ作品。

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イリヤ&エミリア・カバコフ作「落ちてきた空」(高戸海岸、高萩市)

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森山茜作(御岩神社、日立市)

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岡村美紀作(御岩神社、日立市)

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茨城県北芸術祭について-1

10月20日~22日まで二泊三日で家内と茨城県北芸術祭を見てきました。展示期間は9月17日~11月20日です。9/22日経朝刊茨城版によれば2ケ月で30万人予想であったのが、一月で30万人超との記事が出ていました。テーマは科学と芸術の結びつきといったところでしょうか。人工細胞やらロボット、光とかがアートを通して表現されています。開催主体は日立市、高萩市、北茨城市、常陸太田市、常陸大宮市、大子町です。本ブログのトップページにパンフの写しを掲載していますし、HPは次の通りです。

https://kenpoku-art.jp/

写真でその一部を紹介します。作品で面白いと思ったのは天心記念五浦美術館(北茨城市)のチームラボ(猪子寿之)の作品でした。天心記念五浦美術館は、天心の英語3部作を読んでいたので親しみがあったというのもありましたが。作品以外では袋田の滝や龍神大吊橋を回ってみると良いと思います。

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井上信太氏の看板による動物(常陸太田市)

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ジョン・ヘリョン氏の袋田の滝のトンネルの電気の龍(大子町)

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袋田の滝

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龍神大吊橋(常陸太田市)

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『広西チワン族自治区「文革大虐殺」の実相 殺害15万人、人肉食、性暴力…「絶密資料」発掘』(10/19日経ビジネスオンライン 福島香織)について

一読して思ったことは、これこそ世界遺産に登録すべきではないかと。既に通州事件については登録申請しています。嘘で固めた南京虐殺をユネスコのボコバ事務局長(ブルガリア共産党員・UNの事務総長に立候補、落選)は登録してしまいました。如何に共産党と言うのはでっち上げが得意かという事です。でもいつも感じますのは日本の外務省の無能さです。事前に情報をキャッチする能力もないのですから。敵は歴史戦を仕掛けてきているという自覚すらないのでしょう。それが子々孫々にダメージを与えることになります。今の日本人は自分の生きている間だけのことしか考えていないように見えます。

昔、小生が中国人のカニバリズムについて話した時には、露骨に人種差別主義者扱いをされましたが、本記事のような証拠を見れば反対できないでしょう。でも中国人は証拠書類を偽書と呼んでプロパガンダするでしょうけど。田中上奏文のように自分たちで偽書を流布させて来ましたから。然し乍ら、中国人の人肉喰いは歴史的に見てもあります。下のURLをクリックすれば出てきます。

http://amor1028.exblog.jp/16663172/

如何に日本人と中国人が違うかという事です。でも悪逆な中国人に簡単に日本人は騙されます。「同文同種」とか「一衣帯水」とか。食人文化を持つ中国人と一緒にはされたくないです。日本人はGHQのWGIPに手もなく騙されるのですから。まあ、抗って生きるよりは生き易いのでしょうけど。でも敗戦後利得者が大手を振って生きているのを見ると、「恥を知れ」と言いたい。不正義の権化みたいなものでしょう。左翼文化人やマスコミ人、教師がそうです。キチンと歴史を踏まえて発言してほしいです。反体制を気取るアホな東大教授の何と多いことか。彼らは有事の際には我先に逃げるタイプです。精神性で言えば、中国人と韓国人と同じでしょう。そう言う輩が大学の権力を牛耳るのですから、何をか況やです。くれぐれも権威と呼ばれる人の発言を無批判に受け入れることは無いようにしてほしいです。

記事

先日、明治大学で同学現代中国研究所主催の「『文革』とは何だったのか」というテーマのシンポジウムが行われた。いわずもがな、今年は中国の文化大革命発動から50周年であるので各地でこの手のシンポジウムが行われているのだが、特にこれに興味をもったのは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の宋永毅教授が「広西チワン族自治区極秘檔案に見る文革大虐殺と性犯罪」について講演すると聞いたからだ。

文革期に広西チワン族自治区で組織的で凄惨な人肉食を伴う大虐殺が行われたことは、知る人ぞ知る事実である。その事実について、実は共産党として詳細な報告書をまとめていたが、それは「絶密」(絶対秘密)扱いで、長らく公開されていなかった。ところが、今年、宋教授が中心となってその膨大な機密資料が編集され出版された。700万字以上36巻。

文革というものをとらえるとき、現場で何が起きたか、それを知らないでは語れない。同じ文革でも、北京で起きたことと、内モンゴルで起きたこと、チベットで起きたこと、そして広西チワン族自治区で起きたことは違うだろう。広西チワン族自治区の文革について、この資料や宋教授の講演の内容をもとに、ここで簡単に紹介しておきたい。

なぜここまで残虐を極めたのか

文化大革命とは1966年から1976年の毛沢東の死まで続き、77年に終結宣言がなされた中国全土で起きた大政治・社会動乱である。大躍進政策の失敗によって政権中枢から退かざるを得なかった毛沢東が、政敵・劉少奇らを失脚させ復権を図るために民衆を扇動して政治動乱をしかけた、というのが一般的な解釈で、その本質は権力闘争ともいわれているが、研究者の中には、もっとマクロな視点から、旧ソ連の社会主義に挑戦する中国式社会主義モデルの提起といった見方や、中国近現代史において唯一権力を公に批判できた時代という意義を見出す考えもある。

中国国内ではひそやかに文革再評価論も起きているし、農村部では文革時代を懐かしむ声もある。だが、具体的に文革で何が行われたか、という視点でみると、そういう政治論的な研究など吹っ飛ぶような残虐行為のオンパレードだ。政治理想論の建前にしろ、権力闘争にしろなぜ、ここまで残虐である必要があったか、ということの方が重要な本質テーマである気がしてくる。

この資料によれば、広西チワン族自治区では、文革期に約20万の冤罪事件があり、名前が判明しているだけでも約8万9000人が不正常な死を遂げ、行方不明者も2万人に及ぶ。名前の分からない死者は3万人以上で、少なくとも15万人が虐殺されたといわれている。民間の調査では20万人以上が殺害されたともいわれている。

文革終結後、広西の党委員会組織は10万人の人員を使って4年かけて、「文革遺留問題」処理にあたった。1986年から88年にかけて、党委員会はこの処理について上級機関に報告するための「広西文革檔案資料」を作成。この700万字にのぼるリポートでは、いつ、どこで、誰がどのように虐殺されたか、そしてどのように「喰われたか」まで、ほとんど実名で詳細に記録されていた。これは「絶密」文献として外部の者の目に長らく触れることはなかった。例外的に、のちに米国に亡命した中国人作家・鄭儀が、これら公式資料を見て、またその資料に記述されている関係者にも取材し、広西地域の大虐殺・人肉食事件を告発したノンフィクション文学「紅色記念碑」を書いている。

だが、それ以外にこの文革大虐殺の実体を世界に公式に発信したものは今までなかった。ちなみに「紅色記念碑」の人肉食記述の部分は、「食人宴席‐抹殺された中国現代史」(カッパブックス 黄文雄訳)のタイトルで邦訳出版されている。キワモノ本的タイトルになって残念だが、原作は緻密な資料と取材に裏付けられた渾身のノンフィクションである。

この絶密資料は米国に密やかにわたっており、主要大学のアジア関係の図書館に分散して保管されていることが近年判明。宋教授は、今年6月になって在米華字メディア明鏡出版集団傘下の国史出版から、この資料を整理して全36巻にまとめて出版した。

組織的な虐殺と食人

この資料で特に衝撃的だったのは、文革中、302人が殺害後に心臓や肝臓を摘出され、食べられた様子が詳細に記述されており、広西地域で食人行為が横行していたことを改めて明らかにしていることだ。

特に被害がひどかった武宣県ではこういった記述もある。

「(1968年)6月17日、武宣に市の立つ日、蔡朝成、劉鳳桂らは湯展輝を引きずりながら町を行進し、新華書店前まで連れていくと、龍基が歩銃で湯を打ち据えた。王春栄は刃渡り五寸の刀をもって腹をさばいて、心臓と肝臓を取り出すと、野次馬が蜂のように群がって、それぞれ肉を切り取って奪った。

肉が切り取られた後、ある老婆が生殖器を切り取り、県の服飾品加工工場の会計の黄恩范が大腿部を一本切り落として、職場に持ち帰り、工場職員仲間の鐘桂華とともに骨から肉を削り落として煮物にして食べた。

当時、この残虐な現場にいた県革命委員会副主任、県武装部副部長の厳玉林は、この暴虐行為を目の当たりにしても一言も発さなかった。当時、招集された四級幹部会で、会議参加者のそれぞれの代表は人肉を食べ、非常な悪影響を与えていた」

また、これは文革という混乱に乗じた無知蒙昧な民衆の事件ではなく、共産党、国家の機関が組織的に行った虐殺、食人であったことも、この資料からわかる。当時の広西チワン族自治区の党委書記の韋国清は文革中、失脚することなく自治区トップの座におり続け、軍隊、警察、民兵らから絶大な支持を得て、指揮し続けていた。虐殺のピークは、造反派と走資派が激しく戦った内戦時期の文革初期ではなく、1968年7月3日に党中央の革命委員会が七三布告を出したあとに起きており、武闘の混乱に乗じて起きたのではなく、毛沢東らが韋清国を支持した、比較的落ち着いた状況下で起きたものだった。

この資料で名前が判明している殺人者、殺人指揮者は200人以上、うち6割が武装部長、民兵指揮員、民兵および幹部だった。食人行為を働いた84%は中国共産党員、あるいは幹部であった。チワン族自治区と聞いて、食人行為が少数民族地域の特殊な文化背景があるという人もいるが、これは漢族が中心の行為でもあった。文革中、自治区の5万人近い共産党員が虐殺、殺人に加担した。

陰惨な性暴力も横行

資料中で、欽州地区の報告書には次のような記述がある。

「1968年9月7日から17日にかけて、上思県革命委員会が四級幹部会を招集し、上思中学で、群衆による公開殺人大会を開いた。このとき幹部、群衆12人が殺害されたが、一部の死者は腹をさばかれ肝臓を取り出され、県革命委員会の食堂で煮て食べられた。食人には県の幹部らが参加した。同県の思陽公社武装部長・王昭騰は大隊に殺人を命令し、その晩、鄧雁雄を殺害、肝臓を取り出して煮て、部下らと一緒に食べた。彼は部下らに、人の肝臓を食べると、大胆になると言って勧めた。翌日、王昭騰は、さらに4人殺し肝臓を取り出し、二、三の生産隊ごとで、一人分の肝臓を食べるように命令を出した」

宋教授は広西地区における文革の特徴として、食人以外に、軍の複数の師団兵力を使って組織的に民衆組織に対し攻撃と殲滅を行い、その派生事件として女性に対する性暴力が空前の規模で行われたということも指摘している。文革中、広西地区の農村では、父親や夫を殺害して妻や娘を凌辱することが常態化し、資料には、225事件1000人以上の被害者が記録されている。

特に、性的暴力を伴う殺害方法は多重性、計画性、残忍性、変態性がみられるという。例えば、「1968年4月25日、浦北県北通公社で、大隊が四度にわたり24人を殺害。肝臓を取り出して煮て酒とともに食べた。この公社では180人が殺害された。…主犯の劉維秀、劉家錦らは、劉政堅を殴り殺したのち、17歳に満たないその娘に対し輪姦後、殴り殺し、肝臓と乳房、陰部を切り取った」といった記述もある。

また、父親や夫を殺害後、犠牲者の妻や娘が、殺害当事者の妻にされることもあった。被虐殺者の妻を、虐殺当事者が妻とすることを「改嫁」と言った。

「浦北県北通公社の旱田大隊革命委員会主任は計画的に22人を殺害、殺害前に、犠牲者の財産を調べており、殺害後にその妻と娘四人が幹部らに嫁がされた。その時、改嫁証明費、出嫁費用として894元が支払われた」。

これは単なる性的暴行以上に、長期にわたる女性に対する精神的迫害ともなり、これにより正気を失った女性の報告もある。

「中国的特色」4点

虐殺やそれから派生する女性に対する暴行の本当の理由は、革命や階級闘争といった政治的目的以上に、地主や富裕層からの財産没収や、その美しい妻や娘を奪うという下品な動機があったとみられている。文革中、地元革命委員会は被虐殺者、被虐待者から「看守費」「専政費」「改嫁費」といった名目の罰金を徴収していた。

なぜ、ここまで残虐非道になれたのか。なぜ、食人が流行したのか。文革が特別であったのか。それとも広西地域が特別であったのか。わからないことはいっぱいある。

宋教授は講演の中で「中国的特色」という言葉を使った。

その特色とは、①地方政府が意図的に作り出した無政府状態。②高度な組織化による虐殺。③虐殺の目的が階級の敵の生命を絶つことから、殺戮に伴う官能と快楽を得ることになっている。④一族郎党を絶滅させるという方式が採られているが、これはその一族の財産(女性も含む)を奪うという動機が潜んでいる。これらの4点を挙げている。

そしてこういう特色は、実は文革で初めて起きたことではなかったという。

たとえば土地改革(1950-53年)でも、中国的特色の虐殺が起きていた。この土地改革で「一村一焼一殺」をスローガンに、紅軍は地主・土豪に対する徹底した略奪と殺戮を行った。殺害された地主は240万人以上ともいわれている。文革発動前の17年間、中国ではこうした高度な組織化による大虐殺の手法を政治運動の中で繰り返してきた歴史があり、文革だけが突出して残虐であったとはいえないかもしれない。文革の混乱期に、かつて経験した土地改革や右派運動といった政治運動の中で経験した略奪や婦女暴行の快楽を思い出した者もあろう。

「文革」の本質を問う

文革とは何だったのか、という問いに対して宋教授は「共産党が文革以前に実施した17年間の政策の結果である」と答えた。文革前の17年間の政策に対する錯誤をきちんと認めず、政治運動の中の醜悪な虐殺を正当化してきた結果、文革の10年が起きた。では、文革で何が起きたかについていまだタブーが多く、その後の天安門事件についてもいまだに再評価されず、共産党政治に対する批判を許さない今の中国では、また、大虐殺をともなう政治動乱が起きても不思議ではないということなのだろうか。

習近平政権が、あまりに苛烈な権力闘争を、文革を想起させるような個人崇拝キャンペーンを伴って展開している今だからこそ、文革とは何であったか、というその本質を問う作業を、中国問題にかかわる人たちは続けていかねばならないと思う。

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『ロシアに続き米国もネバダ砂漠で”核実験”緊張高まるNATOとロシア、核戦争の危険性も』(10/18JBプレス 堀田佳男)について

米ロが核で張りあえば中国を利するだけでしょう。本記事では、核弾頭保有数として米国が1750発、ロシアが1790発とありますが“Status of World Nuclear Forces ”によれば、米国が7000発、ロシアは7300発です。配備された核爆弾の数が堀田氏の数に近いです。Retiredがもう核弾頭として機能しないのかどうかは不明です。

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https://fas.org/issues/nuclear-weapons/status-world-nuclear-forces/

日本は唯一の被爆国だから米ロ・世界に核戦争が起こらないように説得する義務があるというのには違和感を感じます。勿論、核戦争を奨励する意味ではありません。被害の甚大さを訴えられるのは被爆国の日本だけという意味なのでしょうけど、核を持たない国が何を言っても聞くはずもなく、かつ被害の甚大さは日本への原爆投下前から分かっていたと思われるのに、2発も落とすような国が日本の言うことを聞くとは思えません。

やはり、MADを信頼するしかないのでは。通常兵器における、代理戦争で留めることになるのではないかと思っています。核ミサイルを米ロで撃ちあえば、地球は汚染され、生物は棲めなくなります。究極の自爆テロと一緒ではないですか。そんなことも分からないようではイスラムのテロリストを非難は出来ません。米ロとも同じキリスト教同士、キリスト教徒の罪深さを感じます。

記事

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米空軍が公開した、B52爆撃機の後継となる次世代爆撃機B21〔AFPBB News

10月初旬、米ネバダ州にあるネバダ国家安全保障施設に2つの爆弾が投下された。日本のメディアではほとんど報道されていない。

爆弾は「本来」、核爆弾であるはずだった。だが1993年以降、米国は爆発を伴った核実験を行っていないので、今回は仮の核爆弾ということになっている。

それでも、「核なき世界」を目指しているはずのバラク・オバマ大統領が、なぜ核兵器へのこだわりを捨てていないのだろうか。

米軍事専門メディアは「米軍がネバダ砂漠に仮の核爆弾を2発投下」と報じ、今回の爆弾投下の真意を探っている。

新型爆撃機B-2Aが爆弾投下

実験に使われたネバダ国家安全保障施設というのは、2010年までネバダ核実験場と呼ばれた場所である。ラスベガスから北西に約100キロ行った砂漠地帯で、鳥取県とほぼ同じ面積がある。

1992年に包括的核実験禁止条約が締結されたことで、同地での核実験は行われなくなったが、51年から92年までに900回以上(約9割が地下核実験)の実験が行われている。

その地の上空に姿を見せたのは、米空軍に所属する戦略爆撃機「B-2A」。垂直尾翼と水平尾翼がない、水中を泳ぐエイのような形状の機体で「スピリット」という愛称がある。

2機のスピリットは700ポンド(約317キロ)の爆弾を1個ずつ投下した。1つは「B61-7」、別の1個は「B61-11」と呼ばれており両爆弾とも戦術核兵器として使用される。

爆弾の開発はエネルギー省国家核安全保障局(NNSA)が担当しており、爆弾投下後にプレスリリースを発表している。

「両爆弾は仮の爆弾であり、核物質は含まれていません。実験は見事に成功を収め、性能を計測するためのセンサーと計測器は確かな数値を示しています。今回の実験目的は核兵器の保証期間を確かめることと、現在開発中の爆弾の耐久性、正確性、性能を検証することでした」

核物質が含まれていないはずだが、どこまで必要なデータが収集できるのかは定かではない。9月に当欄で、オバマ政権が新型核兵器「B61-12」を400個も開発・製造する予定で、連邦予算を約110億ドル(約1兆1330億円)も割くと述べた(「米国が新型核兵器投入、開発配備に1兆1000億円」)。

実は今回の実験も、新型爆弾への助走と考えられる。

NNSAの高官であるマイケル・ルットン氏は「米国は常に核戦略を3本柱(戦略爆撃機、大陸間弾道弾、潜水艦発射弾道弾)で整備しておく必要があります。B61はその中でも中心的な役割を担っていて、今回の実験はNNSAがどれだけ核兵器システムに前向きな姿勢でいるかの証です」と、米政府がいかに新型核爆弾の開発に前向きかを語った。

ただなぜいま、実験をする必要があったのか。

ロシア、NATOで高まる緊張

ネバダ砂漠での実験直後、「エアフォース・タイムズ」という米空軍の事情を伝える週刊誌はこう分析する。

「ロシアとNATO(北大西洋条約機構)の緊張が高まっている。しかも核兵器を使ったイザコザが起こる可能性が増しているので、核兵器実験はたいへん重要である」

日本ではいま、ロシアとの関係は悪化というより良好な方向に進みつつある。12月にウラジーミル・プーチン大統領が訪日することもある。だがロシアとNATOの関係はむしろ逆で、戦争に発展しても不思議ではない「新たな緊張関係」が生じている。

日本国内で大きく報道されないのが不思議なくらいである。緊張の度合いは冷戦終結以来、最も高いレベルとさえ言われている。

米軍の業界誌「ディフェンス・ワン」の記者であるマーカス・ワイズガーバー氏は書いている。「ロシアとの緊張関係が増していることが、今回の実験の背景にあっても不思議ではない。むしろNATOとの緊張が新たな核兵器レースの始まりを予感させもする」

発端はもちろんロシアが2014年3月にクリミア半島を軍事的に併合したことにある。米国をはじめ、西側諸国はプーチン大統領の強権的な軍事行動を読めていなかったばかりか、軍事力で対抗する選択肢を取らなかった。

ロシアの不穏な動きはそれで収まったわけではない。みずから緊張を増長するような言動をとっている。

例えば2015年3月、デンマーク政府に対し、「デンマークが米国主導のミサイル防衛計画(MD)に参加するならば、デンマークの艦船はロシアの核ミサイルの標的になる」と脅している。

リトアニアではロシアからの軍事的緊張を日常的に感じていることから昨年、7年ぶりに徴兵制を復活させている。

オバマ政権誕生後、本来であれば、米ロは核兵器の削減に尽力しなくてはいけなかった。それがオバマ大統領の目指した「核なき世界」のはずだった。しかし現実は違う。

米国で新たなICBM開発も

米国が保有する核弾頭の個数は今春の数字で1750発、ロシアが1790発。新戦略兵器削減条約(新START)は現在、交渉が進んでおらず停滞したままだ。

今年10月に入り、ロシア軍は原子力潜水艦などから核弾頭搭載可能な弾道ミサイルを1日に3発試射する軍事演習を行っている。それに呼応するように、米国でも新たな大陸間弾道ミサイル(ICBM)の建造の必要性が叫ばれている。新STARTとは全く逆の流れである。

すでに具体的に練られた計画があり、航空機・軍事機器メーカーのボーイングが「ミニットマンIII」を新しいICBMに置き換える可能性さえあるという。

ただ反対意見も根強く、コストがかさむばかりか反核の流れと逆行するため、ウィリアム・ペリー元国防長官などは「置き換えの必要はない」と主張している。

一方、米空軍核兵器センターのスコット・ジャンソン准将は戦略核兵器を推す立場にあり、「核の抑止力の効力を保つためには、米国は新しいICBMの製造を進めていくべき」と述べている。

ペンタゴンの中にも軍縮派と軍拡派がいるわけだが、現在はオバマ大統領の表向きの政策とは逆の方向に動いているのが現実のようだ。

つまり冒頭で紹介したB61シリーズの新型爆弾の開発・製造と同時に、長距離弾道ミサイルの新たな導入が本当に始まることになりかねないのだ。そうなると、米ロは核兵器を主体にした新たな軍拡競争へと進むことになる。

いつの時代も有事への備えをしておくことは重要である。最悪のシナリオを想定しておくことも必要だが、被爆国の日本としては通常兵器の戦争だけでなく核兵器による交戦を回避する努力を世界レベルで行う義務がある。

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『米国人が腹をよじって笑う大統領選のパロディショー もう笑い飛ばすしかない史上最低の大統領選』(10/18JBプレス 老田章彦)について

老田章彦氏は「 岐阜県高山市出身。元NHKディレクター/プロデューサー。1985年からクローズアップ現代・NHKスペシャルなど報道番組を制作、2010年フリーに。」とありました。やはり、トランプに対して良い印象を持っていないことが分かります。NHK出身の池上彰と同類でしょう。

ヒラリーは私用サーバーを使って外国政府に機密情報を売り、クリントン財団に寄付させていた売国奴です。こういう輩が罰せられないというのは、アメリカは国としておかしいのでは。警官や軍人がトランプ支持なのも頷けます。国際金融資本に害を為さなければ何をしても良いというのでは、政治家として尊敬されないでしょう。

性的問題を挙げるのであれば、FDRとケネデイ、ビル・クリントン(総て民主党)の方がもっとひどかったと藤岡信勝氏のFacebookにありました。FDRは妻妾同衾(山崎豊子の『華麗なる一族』同様、而も国のトップ)、ケネデイはモンロー他浮名を流したのは多数、ビルはモニカ・ルインスキー事件で有名。WASPというのは如何に低俗かという事です。ケネデイはアイルランドから祖先が渡ってきたのでカソリックですが。こういう道徳観念が希薄な人間が国のトップとして君臨するのですから、人種差別や原爆投下など当り前のようにできるのでしょう。

本記事の最後に性的問題で非難されるトランプを支持する白人女性が写っています。大衆レベルでヒラリーでは今までの延長線(国際金融資本によるグローバリズム)による政治しかできないということが分かっているからでしょう。黒人も民主党が本当に黒人の為の政党かよく見極めた方がよいでしょう。リンカーンは共和党です。

記事

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米ミズーリ州セントルイスのワシントン大学で、第2回大統領選討論会に臨むヒラリー・クリントン氏(手前)とドナルド・トランプ氏(2016年10月9日撮影)。(c)AFP/Paul J. Richards〔AFPBB News

近ごろアメリカでバカ受けしている「トランプ俳優」がいる。髪型をご本人そっくりに整え、唇をへの字に結んでのっしのっしと登場するだけで、観客は大喜び。ひとこと口を開けば、その声と仕草のあまりのトランプ氏ぶりに客席は爆笑につつまれる。

爆笑の大統領選パロディ

高視聴率で知られるNBCテレビのコメディバラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」は現在、大統領選のパロディに全力をあげている。その主力として気を吐いているのがアレック・ボールドウィン。若いころは二枚目として鳴らしたが、58歳の今は体にけっこうな肉がつき、とぼけ味のある脇役として活躍中の大物俳優だ。

ボールドウィンはトランプ氏の特徴を実によくとらえている。最初の大統領候補テレビ討論会の直後に放送されたパロデイ寸劇では、実際のトランプ氏がそうだったように終始不機嫌な様子を見せ、顔面を紅潮させて荒々しく発言し、クリントン氏の発言を再三(実際の討論会では50回以上)さえぎった。

一方で女性コメディアン演じる「クリントン氏」は冷静さを失わず、得意の政策論を自信たっぷりに展開。それに押された「トランプ氏」は次第に落ち着きを失い、ついには露骨な表現で女性やマイノリティーへの差別発言を連発してしまう。その様子をじっと見ていた「クリントン氏」が目に涙をあふれさせ、今日はうまく行きすぎてるわ、まるで夢みたい! と感激して爆笑を誘った。

第1回討論会のエッセンスを痛快に描き出し、ボールドウィンの怪演で爆笑をさそった寸劇の評判はSNSによってたちまち拡散し、放送後にアップロードされたYouTubeの映像だけでもすでに1600万回以上再生されている(注:リンク先の動画は日本国内では視聴できないようなので、ボールドウィン扮するトランプをご覧になりたい方は「Alec Baldwin」のキーワードでYouTubeの動画を検索していただきたい)。この人気ぶりをニューヨークタイムズ紙、ワシントンポスト紙、CNNなど主要メディアが追いかけて報じることにより、「トランプ俳優」の活躍はいっそう社会現象化している。

いったいなぜここまでの騒ぎになっているのだろうか。

有権者が首を長くして待っていたトランプ氏の秘策

10月9日に行われた2回目のテレビ討論会について日本のメディアは、非難の応酬に明け暮れた残念な内容という伝え方をしたところが多かった。だがアメリカでは、非難の応酬があったことよりも、政策論議がなされなかったことに失望した人が多いようだ。

そもそもトランプ氏は、選挙戦の当初から具体的な政策について多くを語ってこなかった。かわりにトランプ氏は「世界中がアメリカの敵になっている、アメリカの内部は壊れきっている」と危機感をあおり、「私が偉大なるアメリカを再生する」と太っ腹に請け負うことで大衆を引きつけてきた。

いまアメリカは大きな矛盾をいくつも抱えて苦しんでいる。既存の政治家にはない大胆な発想が、この国に思わぬブレイクスルーをもたらす可能性は否定できない。

一方のクリントン氏は、政策通ながら人物としていまひとつ信頼できないという評価などが災いして人気が低迷。何があってもクリントン氏だけには投票しないという「ヒラリーぎらい」は民主党員の中にすら数多い。

国の行く末を案ずる有権者の多くが、トランプ氏の口からぜひとも具体的な政策論を聞いてみたいと考え、両候補の初の直接対決となるテレビ討論に大きな期待を寄せたはずだ。だが、クリントン氏が熱弁する政策論にトランプ氏が応じることは少なく、政策論はほぼ一方通行に終わった。

結局のところトランプ氏は政策に精通しておらず、公約を具体的に説明する能力が乏しいことを露呈してしまった。このことに強いフラストレーションを感じた有権者がサタデーナイトライブに殺到し、中身のない「トランプ氏」を笑いのめし、わずかながらでも溜飲を下げたのだろう。

「パロディ寸劇並み」だった2回目の討論会

不毛なテレビ討論会だったが初回はトランプ氏も緊張していたのだろうと2回目に期待する声は多かった。だがその2日前になって、2005年に録音されたトランプ氏の「わいせつな会話」が公開され、大騒ぎになった。

会話内容が暴露された翌日、すなわち2回目の討論会の前日、サタデーナイトライブは先見の明に満ちた寸劇を放送した。

臨時ニュースで会話の内容を伝えた「CNN」のキャスターが、「トランプ氏」を呼び出してインタビュー。だがどうにも歯切れがよくない。

「あの件については、この場を借りて正式にシャア… ザイしたい」とトランプ氏。

「え、なんとおっしゃいました?」

「その、深くシャアザイする」

「謝罪、とおっしゃりたいのですか?」

「いや私は絶対にそんなことはしない。私はあの発言によって不愉快な思いをしたすべての人々にシャアザイ・・・というかあれを聞いてコーフンしてしまった人たちにシャアザイしたい。だいたい半数がコーフンしたと聞いてるのでね」

などと反省の色のない応答を繰り返したあと、トランプ氏は唐突に話題を転じてフロリダで大きな被害を出したハリケーン・マシューについて語り始め、ニュースキャスターを煙に巻いてしまった。

さて、この放送の翌日に行われた2回目のテレビ討論会に話を移そう。

討論会では、トランプ氏が「わいせつな会話」についてどう釈明し、これまで繰り返し引き起こしてきた女性蔑視の問題についてどうケジメをつけるのか、全米がかたずをのんで見守った。だがトランプ氏は「あれはロッカールームでの冗談のようなもの」とお茶を濁したかと思えば、唐突に話題を転じてIS(イスラム国)について話し出し、司会者からの再三の問いただしを完全に無視して逃げ切った。サタデーナイトライブそのままの展開にあきれ果てた視聴者は多かったに違いない。

「異世界の住人」を大統領にできるのか

とはいえトランプ氏のこの「逃げ」は、討論会の冒頭の出来事だった。残りの約80分間に望みをつなごうとした視聴者は少なくなかっただろう。トランプ氏は今度こそ「本気」を出して政策を語り出すのではないかと。

だが、やはり期待は裏切られた。クリントン氏が、質問をした有権者の目を覗き込みながら熱心に政策を説いた(政策の適否についてここでは問わない)のに対し、トランプ氏は質問者とはあまり目を合わせず、虚空に落ち着きなく目を泳がせながら話す時間が長かった。

元FBI捜査官が「人はウソをつくとき相手の顔の斜め上を見て話す」と書いたことを筆者は思い出してしまったが、実際にはどうだったのだろう。政治家の発言の真偽を確認するサイト「ポリティファクト」によれば、トランプ氏は大統領選を戦ったどの候補よりもウソが多いという。またエコノミスト誌は、「トランプ氏は、どれほど事実の裏付けのない言葉であっても、票さえ獲得できるのなら躊躇なく口にする」と分析している。

他方、この日も論戦を形づくることができなかったクリントン氏は、討論の終盤、トランプ氏を「異世界の住人」と評した。暖簾に腕押し、議論にならない相手という意味だろう。こうした言葉を対立候補の面前で口にするのはたいへん異例なことだから驚いた。クリントン氏はよほどのじれったさを感じたのだろう。政策論でトランプ氏を叩きのめそうという戦法は今や手詰まりに陥っている。

だが本当に手詰まりなのは、有権者だ。これほどまでにトランプ氏が政策を語らず、ウソをつき続け、そうかといってクリントン氏も信用ならないのであれば、いったいどうすればいいのか。人々は今週もまたサタデーナイトライブが用意しているに違いない新ネタに爆笑し、カタルシス(鬱積した心情の浄化、解放)を得るしかないのだろう。

本稿の執筆時点でトランプ氏は、続出するスキャンダルの火消しに躍起になっているように見える。11月8日の投票日までにトランプ氏が傾聴に値するメッセージを有権者に向けて発することはあるのだろうか。

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トランプ氏の「わいせつ会話テープ」が暴露されたニュースを伝えるCNNの番組。キャスターの後ろには「Women For Trump」というプラカードを掲げた女性が映っている。ここまで来てもトランプ支持をやめない女性が多いことに驚かされる(筆者撮影)

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『もしトランプが大統領になったら トランプの請求に日本は従うことしかできない 沖縄から見た駐留経費問題』(10/18 日経ビジネスオンライン 寺岡篤志)について

本記事の前泊博盛氏は沖縄国際大学教授とありますが、元琉球新報論説委員長です。さもありなん。中国を脅威と見ていなくて、遠くの米国と付き合うメリットはないと論じています。左翼リベラルの脳内お花畑の典型でしょう。中国は、共産党一党独裁の人権抑圧国家であるということと民族的特質である「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という人たちなのに、仲良くするという事がどういう意味を持つのか分かっていません。谷崎光著『国が崩壊しても平気な中国人・会社がヤバいだけで真っ青な日本人』(2016/8/5刊)を読んでもらうと良いでしょう。小生が本ブログで縷々述べてきたことが事例を挙げて詳しく説明してくれています。拝金主義、賄賂、黒社会の存在、騙すのは商慣習・戦場で兵法を使うのは当り前のこと(P.216)」、「平均値で言えば、中国人の能力が日本人に勝ることは、本当にない。仕事のチームワーク、人の誠実さ、ミッション達成の確実性、長期的な視野を持つこと、全部日本人が上である。ただ一つのことを除いては。日本人が中国人に金を積んでも学ぶべき、たった一つのことがある。それは、不安定な世をいかに生き抜くか、である。(P.41)」、中国と日本が戦争になったら、著者は「日本が勝つ」と言ったら中国人は「1億人の難民が日本に押し寄せる」(P.83~85)と脅されたそうな。冷静に考えれば、敗戦国の国民は戦勝国に難民として押し寄せられるのでしょうか?第二次大戦のドイツの敗戦のようにナチが崩壊して、政府がなくなったときのことを想定しているのでしょうか?或はベトナム戦争時のボートピープル?

トランプが大統領となって負担増を押し付けられても7000億円が1兆円になるだけ。単独防衛すれば小川和久氏によれば30兆円かかると言われていますし、自衛隊員の数も人口の1%弱の兵力120万体制(現在の5倍)に増やさないといけません。非常に非現実的な議論を前泊氏はしているような気がします。流石、琉球新報出だけあって、日本を中国の属国にしようと動いていることが見え見えです。今の時代中国の情報はいくらでも取れますし、新聞社OBであれば自由自在に取れるでしょう。暴動の記事や陳情の記事なども。それでも中国のような国と付き合うという気が知れません。

http://togetter.com/li/60708

自主防衛は賛成ですが、単独防衛は無理です。やはり、同盟で補わないと。蒋介石が取った戦略を日本がすれば良い訳です。

記事

「日本は米軍の駐留経費を全額負担せよ。払わなければ、米軍撤退も辞さない」――。米共和党の大統領候補、ドナルド・トランプ氏の在日米軍を巡るお騒がせ発言は、日米安保体制が持つ「金で安全を買う」というある種の歪みを映し出していると言える。

在沖縄米軍基地の全廃を訴える前泊博盛・沖縄国際大学教授は、もしトランプ氏が米大統領になったら「日本は唯々諾々と駐留経費を払ってしまう」と予想する。さらに「トランプ発言を契機に、日米安保条約が果たして何を守っているのか、日本がお金を払うだけの価値があるものか、考え直さなければいけない。中ロとの間に経済的な安保体制を組み立てることこそ日本の取るべき道だ」と主張する。(聞き手 寺岡 篤志)

日経ビジネスオンラインは「もしトランプが大統領になったら…」を特集しています。 本記事以外の特集記事もぜひお読みください。

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前泊博盛氏(まえどまり・ひろもり)氏。1960年、沖縄県宮古島市生まれ。明治大学大学院博士前期課程(経済学)修了。1984年に琉球新報に入社し、社会部や政治部の記者として、防衛省、外務省、旧沖縄開発庁の取材に従事。2011年から沖縄国際大学経済学部教授。専門は基地経済の研究。

—トランプ氏は、米軍の駐留経費の100%支払いを、日本を含む各国に求めると発言しています。これをどのように見ていますか。

前泊:まず前提として、トランプ氏は防衛に関して無知だと思いますね。誤った情報に基づく発言であることは踏まえておいた方がいい。

—日本はいわゆる思いやり予算など7000億円以上を負担していると言われています。過去のデータでは負担割合は7割超です。

前泊:トランプ氏はそのことを知らないと思いますよ。自分に都合のいい情報だけを元に発言を構成するのは、彼独特の論理展開の仕方ですね。刺激的な数字や情報があれば、そこを一点突破していく。そういう仕掛け方が非常に上手です。

「日本は十分な駐留経費を払っていない」と言えば、日本の安保体制に疑問を抱いている米国民は、なぜ日本のために米国の若者が血を流す必要があるのか、と反応する。事実でない情報で、米国民の頭の中の情報を勝手に操作してしまう。大統領候補の発言として一定の信頼がありますから。

—裏を返せば、トランプ発言を受け入れる素地が米国民にあるということですか。

前泊:やっぱり格差の問題があります。中間層から下のクラスが、この怒りをどこにぶつければいいか考えている時に、ターゲットが示されると、そこに向かってしまう。そういうところを上手に操作しているなという気がします。

「結局はみかじめ料か」

日本に対しては、「金を払わないならば守らないよ」とまるでみかじめ料をやりとりすることで日米同盟が成り立っているかのような印象を与えました。日本人は「結局、お金なのか」「相互信頼に基づくグローバルパートナーシップというのは建前だったのか」「トモダチってそんなものだったのか」と感じているでしょう。

トランプ氏はこのことをストレートに表現してしまった。米政府も「え? 本音を言っちゃった?」と思っているかもしれない(笑)。

—米軍が沖縄に海兵隊を配置しているのは、アジアでの抑止力のためと言われてきました。米国の中でその意味は薄れてきているのでしょうか。

前泊: 米軍は数百の基地を海外に展開しています。このうち沖縄の基地について、沖縄の四軍調整官を務めたウォレス・グレグソン氏が最も安上がりの基地だ、という趣旨の発言をしています。この発言は、「米軍の海外基地はコストが高すぎる。縮小を検討すべき」と米議会が問題提起した時のものです。グレグソン氏は、コストの低さから「沖縄からの撤退は最後でいい」と主張しました。

もう1つ大事なことは、マグネット論です。海外基地は、本国に攻撃を加えられないようおとりの役割を果たしているということです。

沖縄の基地は安上がりでマグネット効果があるという見方は、日米同盟を損なう可能性があるので、米政府はあまり流布しないようにしている。

—つまり、米国が保有する海外基地の重要性は薄れているものの、沖縄の基地にはまだ必要性がある。であるにもかかわらず、トランプ氏は必要ないとしているわけですか。

前泊:必要じゃないと思っている人も多いでしょう。というより、米国民は沖縄に基地があることをあまり知らないんですよ。米国民は政府がやっていることを全部知っている、と思ったら大間違いです。日米同盟があることすら知らない人も結構いるかもしれない。米連邦議会の議員だって沖縄に5万人も米軍人と関係者がいたことを知らない人が多い。

日本政府は、米軍は何から何を守っているのかを真剣に考えなくてはいけない。日米安保条約があっても米軍が日本を守るとは限らない。最近は防衛の専門家の口からもこんな言葉が出てきています。米国との同盟関係を今後も死守するなら、日米安保条約で日本が守るべき国益とは何なのかを検証する必要がある。

米国は国益委員会をつくってずっと議論している。米国が覇権国家として君臨できる体制をつくることが、最重要の国益として位置付けられています。同盟国において米国が国益を確保するためにどうするべきかも分析しています。例えば日本に対しては、自民党以外の政党を政権に就かせないという内容が出たこともあります。

日本も国益委員会をつくるべきだ、と2000年ごろに守屋武昌さん(元防衛事務次官)と話したことがあります。彼は内々に国益の検証を試みて、「この国は二律背反が多くて国益がまとまらない」と言っていました。自衛隊が何から何を守るのかという議論もまとまらない。だから場当たり的にしか自衛隊を動かすことができない。

日本はトランプ氏の負担増要求に応える

—翻って日本から見た米軍基地について。トランプ氏が大統領になっても本当に駐留経費を払えと言うかどうか疑問はあります。ここはしかし、仮定を重ねて、仮に大統領になり、仮に駐留経費を払えと言ったとする。日本は払うと思いますか。

前泊:払うと思いますよ。駐留経費を7000億円ぐらい払っているけれども、世界最高の軍隊を番犬として雇えるならまだ安上がりと思っているでしょう。日本の保守勢力はこのことをストレートに言わないようにしてきた。言ったら米軍が引き上げちゃうかもしれないから。

ただ、トランプ氏はそこを揺さぶってくる。日本が出すというなら、さらにつり上げてくる。もっと出せと、嫌だったら引き上げるよと。その時、日本人はどこまでなら許容できるのか。

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移設問題が過熱している普天間基地。沖縄国際大学に隣接している。

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沖縄国際大学から見た普天間基地。木の陰には垂直離着陸輸送機オスプレイも見える。

例えばオスプレイを17機買いますよね。これは全部で3700億円ぐらいと言われています。この支出が、高いのか安いのかの議論がないまま決まる。辺野古に普天間基地を移すことも、その移転費用が適正か、十分な議論はされていない。

日本の安全保障は結局、米国に全権を委任する形になっています。お金の請求も鵜呑みにするしかなかった。日本国民は戦後70年間、米国に求められるがままにお金を支払うことに疑問をもってこなかった。しかし、トランプ氏の発言を契機に催眠術が解けるかもしれない。国立競技場の建築費と同様に、米国に現在支払っている金額が正当なものかどうか考え始めることになる。

—もしトランプ氏が請求をつり上げた場合、どこまでついていくんでしょう。

前泊:今の体制だと、「どこまでも」でしょう。米国は交渉上手なのです。

米国は1960年代に辺野古に新基地を建設する構想を作ったことがあります。これは、ベトナム戦争の最中だったため、予算が付かずお蔵入りになった。でも今回、「辺野古への移設を求めたのは日本なんだから、日本がお金を出せ」と主張して辺野古に基地を造らせている。

こういうタフネゴシエーターが米国にはいるけれども、日本にはいない。だからどこまでもお金を持っていかれるだけ。

—さらに仮定を重ねてしまいますが、もし日本がもう付き合えないとなった場合、本当に米軍は撤退するのでしょうか。

前泊:撤退しても米国に痛みはないと思いますよ。原状回復義務もないし、むしろ残していく施設を売ってお金に換えるでしょうね。

「経済安保が生きる道」

—トランプ氏が大統領になったとき、日本の安保戦略をどう見直すべきだと思いますか。

前泊:日本が守るべき国益は何かを問い直した時、例えばアジア全体で作り出す経済的利益がある。今はなぜ日米安保体制だけを重視しているのでしょう? 米国はそれこそ世界100カ国と安保体制をつくっている。なのに、なぜ日本は中国やロシアと結ばないのか。

軍事力を使った安全保障体制ではなく、経済的な手段を使った安全保障の確保でいい。中国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)を作ったら、参加しないよう米国が牽制してくる。問われているのは自主的な外交をする能力です。

—中国とどういった距離感を保つかはものすごく難しい。そもそも沖縄に基地がある理由に中国を挙げる人も多い。

前泊:沖縄の基地はもともと日本を占領するための最前線拠点でしょう。それが朝鮮戦争やベトナム戦争に直面し、東西冷戦を戦うための基地に変貌した。そして今はアジアで米国の利権を確保するための基地になっている。

なぜ環太平洋という無理矢理な言い方で米国はアジアに入ってくるのか。アジアはアジアにおいて、アジアの人の血を一滴も流さない安全保障体制を作らないといけない。EU(欧州連合)と同じようにAU(アジア連合)をつくる。紛争が起きないよう話し合う利害調整機関をつくる。EUのような共同体ができれば、絶対に血は流れない。

自民党の重鎮でも危機意識を持って動いている人は居ますよ。ご近所とけんかをして、遠い米国と仲良くするっておかしな話でしょう。中国は脅威だと言われますが、最大の貿易相手国を脅威として見るのが正しいか。

「基地の撤収はむしろ沖縄を潤す」

—前泊先生の専門である基地経済について伺います。米軍が沖縄から引き上げた場合、問題はありませんか。

前泊:今、沖縄は空前の好景気です。国内外からの観光客が年間1000万人に届こうとしている。特にアジアからの流入が増えています。だから空港が足りない。米軍が嘉手納飛行場から撤退すれば、国際空港としてすぐ活用できますよ。撤退に至らなくても、岩国航空基地(山口県)のように軍民共用で使えばいいのです。

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観光需要に沸く沖縄。写真は北谷町の商業施設「アメリカンビレッジ」。

嘉手納飛行場の滑走路のように、米軍が撤退した後の基地には活用できるものがたくさん残ります。例えばF15の掩体壕。あれは横をふさげば、東京ビッグサイト以上の見本市会場になります。これらを一つ一つ検証し、何に使えるかを調べているところです。そういうビジネスを米国とできるようにしたいですね。

仲井真弘多県政時代から県庁が作っていた資料に、基地返還地における経済効果を予測したものがあります。例えば普天間飛行場が沖縄にもたらす経済効果は現在120億円ですが、返還されれば3800億円まで増える。すべての施設を合計すると、基地があることで逸失利益が1兆円ぐらいある。

日本政府が今、沖縄振興予算をカットすると揺さぶりをかけています。これは、県民に健全な危機感を持たせるむしろポジティブな効果があるのではないかと思っています。これまでは政府と協調路線を取る保守県政の方が振興予算が減る傾向にあった。逆に革新県政になると増える。直近の最も低額の時で年間2000億円強。この程度までなら減らされても沖縄は大丈夫ですよ。

米軍は尖閣を守っていない

—経済的手段で安保体制を築きリスクを減らすとして、米軍基地を全てなくすことは可能でしょうか。

前泊:駐沖縄米軍の縮小をうたった SACO(日米特別行動委員会)合意が生まれた背景には、沖縄県がつくった基地返還アクションプログラムがあります。このプログラムでは2015年までに基地を全廃することになっている。これは当時の橋本龍太郎首相も受け入れた計画です。基地が全部なくなってもよい体制を日本も沖縄も常に考えないといけない。

フィリピンは急に米軍が撤退して大変なことになった。日本は米軍が居なくなるときに備えてリスクヘッジしないといけないんですよ。

—経済的な安全保障体制で、米軍が持つ抑止力としての機能を完全に代替していくということですか。

前泊:例えば米軍から返還された土地に米ボーイングの整備工場や中国の物流企業のセンターを誘致し、経済安保の拠点にする。ほかにも香港、マレーシア、シンガポールといったアジアの国々が拠点を置いたら、沖縄をたたこうと思う国はないですよ。

使われない射爆撃場

—尖閣諸島に対する脅威は経済安保で排除できますか。

前泊:日米地位協定に基づいて日本が米国に提供している施設の中に、赤尾嶼 (せきびしょ)、黄尾嶼 (こうびしょ)という射爆撃場があります。これは尖閣諸島の大正島、久場島にあります。

大正島、久場島の接続水域にロシアや中国の軍艦が入ってきて大騒ぎになっても米軍は動かない。沖縄県の資料では、両施設は1979年から特に訓練が行われていません。もし米軍がここで演習したら抑止力になりますよね。中国軍機が入ってきたら自衛隊にはスクランブルがかかるのに、米軍はここを使わない。米軍は尖閣を守っていないんですよ。

—バラク・オバマ米大統領は、尖閣は安保条約5条の対象だと言っています。

前泊:対象だけど、自分たちで解決しろということでしょう。たかが岩山ごときのために、アジアにおける最大の貿易相手国である中国と対立することはないのです。日本との貿易量は中国とのそれに比べるべきもない。尖閣ごときのために中国とけんかして米国に何の得があるかと米国は考えていますよ。損得で見れば米国が動かないのは理解できます。

米国にとっての損得、中国にとっての損得、それを見定めた上で日本の安全保障を議論することが必要です。

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『日露会談、領土問題の先にある巨大な“果実” ロシアへのインフラ輸出は日本経済を潤す』(10/18日経ビジネスオンライン 管野沙織)について

10/17日経朝刊<北方領土に共同統治案 政府、日ロともに主権行使 12月首脳会談で協議探る

日本政府がロシアとの北方領土(総合・経済面きょうのことば)問題の打開策として日ロ両国による共同統治案を検討していることが16日、分かった。最終的な帰属の扱いで対立する国後・択捉両島などでともに主権を行使する手法で、双方が従来の主張を維持したまま歩み寄れる可能性があるとみている。北方四島のどの島を対象にするかや施政権をどちらの国にどの程度認めるかなど複数の案を用意し、ロシア側との本格協議に入りたい考えだ。(解説総合・政治面に)

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複数の日ロ政府関係者が明らかにした。5月のソチでの首脳会談で安倍晋三首相がプーチン大統領に示した「新しいアプローチ」による交渉の一環で、首相の地元・山口県で12月15日に予定する首脳会談での協議入りを探る。ロシア政府はこれまでの接触で日本側の意向を一定程度把握しているもようで、課題の洗い出しの作業に入ったとの情報もある。

日ロが北方領土問題を巡り共同統治による打開策で基本合意できれば、両国で結べないままでいる平和条約の交渉も加速するのは確実だ。

日本政府は北方四島の帰属を解決したうえで平和条約を締結する立場だが、1956年の日ソ共同宣言に明記した歯舞群島と色丹島を引き渡す「2島返還」での決着を目指すロシア側との接点を探るには一定の譲歩は避けられないとみている。

共同統治案を「引き分けによる解決を求めたプーチン氏の意向を踏まえた打開策」(首相周辺)と位置づける。4島を実効支配するロシア側にも譲歩を求める内容でもあり、プーチン政権は日本に要求している経済協力の進展も見据え、受け入れの可否を決めるとみられる。

共同統治は複数の国家が合意により同一地域や住民に共同して主権を行使する。過去には英国とフランスが南太平洋のバヌアツで80年の独立前に実施した例などがある。

日本政府は北方領土に共同統治を導入する場合、歯舞・色丹は日本に返還し、国後・択捉は共同統治とする案を軸に調整に入りたい方針。日本が強い施政権を確保することを条件に4島全域や歯舞・色丹、国後の3島を共同統治の対象とする案も用意する。

どの島を対象とするかや、施政権の範囲は今後のロシア側との調整に委ねられるが、ロシアが4島全体の強い施政権を求める可能性もある。

現在、北方四島にはロシア人約1万7千人が住み、日本人居住者はいない。共同統治を導入した際の施政権の行使については、まず元島民を中心に日本人の往来や居住を自由にし、北方領土に常駐する日本の行政官がこれを管理する方式の採用などが考えられる。

ただ島内の日本人の経済活動や、警察権、裁判管轄権をどう扱うかなど詰めるべき点は多い。それぞれ自国の法律を自国民に適用するか、共同立法地域にするかも決める必要がある。共同統治地域を米国が日本防衛の義務を負う日米安全保障条約の対象とするのかも課題だ。首脳間で基本方針の合意に至っても、実現に向けた事務レベル交渉や立法化の作業は数年かかるとの見方が多い。>(以上)

これに対し10/17産経ニュースは<菅義偉官房長官「事実ない」 日本政府が北方領土の日露共同統治案検討との「日経」報道を否定

菅義偉官房長官は17日午前の記者会見で、日本政府が日露両国による北方領土の共同統治を検討中との同日付の日本経済新聞朝刊の報道について「そうした事実はない。全く考えていない」と否定した。

菅氏は北方領土問題に対する日本政府の対応について「北方4島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する。その従来方針に全く変わりはない」と説明した。

日経新聞によると、共同統治は安倍晋三首相がロシアのプーチン大統領に示した「新しいアプローチ」による交渉の一環で、日本政府が北方領土問題の打開策として検討。今年12月15日に安倍首相の地元・山口県で開かれる日露首脳会談で協議入りを探るとしている。>(以上)

日経記事はアドバルーンで日本国民の思いを測るために打ち上げられたのでは。菅官房長官が即座に否定したのも演技かも。でも日経記事にありますように、12/15にここまで詰まることはないでしょう。時間がかかります。そうなれば1月解散もなくなるのかも。そうであるなら、11/30臨時国会閉幕に合わせて総選挙にした方が良いのでは。予算や税制も総選挙の後に議論して決めたらどうか。選挙で国民の反発を恐れて、踏み込めないままというのより、良い気がしますが。

本記事の著者は「菅野 沙織(すげの・さおり)

大和証券キャピタル・マーケッツヨーロッパ・経済調査部副部長/新興国市場エコノミスト

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モスクワ生まれ。中央大学の研究生として来日後、1998年に経済学博士号を取得。2002年日本に帰化。2005年に内閣府経済社会総合研究所の客員研究員に就任。2006年大和総研入社、2014年から大和証券キャピタル・マーケッツヨーロッパのエコノミスト。ロシアのプーチン大統領来日時、日本経団連幹部との会談の通訳を務めた経験もある。

◇主な著書  『ロシア人しか知らない本当のロシア』(日本経済新聞出版社) 2008 『ジョークで読むロシア』(日本経済新聞出版社) 2011」ということです。

ロシアから帰化したからと言って、簡単にロシア側の情報が入手できることはないでしょう。ただロシアが何を望んでいるかと言えば、経済協力①資源の安定買付②シベリア開発③中国人のシベリア入植防止のための日系企業進出辺りかと分かります。

中国への封じ込めは日ロにとっての共通課題です。ロシアは璦琿条約で清から領土割譲を受けた土地を中国人は「回帰」しようと考えていますし、日本の尖閣は名分もないのに奪おうとしています。この侵略大国の膨張主義を共同で、防げるようになれば良いと思います。ただ、米ロの関係がおかしくなってきているのが、交渉にどのように影響するかです。

記事

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今年9月、ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで会談した安倍首相とプーチン大統領(写真=TASS)

ロシアのプーチン大統領の来日まで後2カ月余りとなった。

12月15日には安倍総理の故郷である山口県長門市で首脳会談が行われる予定である。サミットでは、「静かな環境」の中で両首脳が膝突き合わせて行うフェイス・トゥ・フェイス(直接)会談が重視される模様である。今回の首脳会談の結果は大きく注目されており、領土問題の解決に向けた進展や近い将来の平和条約締結への期待が寄せられている。

戦後70年余りを経ても双方の歴代リーダーたちによる領土問題解決に向けた努力が実らず、日露間では平和条約がいまだに締結されていない状況が続く。ただ、この「異常状態」が今度こそ打開できるのではないかと期待する声が高まっている。実際、根拠はいくつか存在する。

一つは日本政府がロシア側に提示した、経済協力関係の拡大を重視する8項目からなる新アプローチの「形」と「中身」の効果である。このアプローチの強みは、目に見える形での経済協力をとっており、過去にはなかった新たな挑戦ということである。

これまで、70余年に渡り続いてきたロシアへのアプローチは、実質的に何の成果も得られず、失敗だったと言わざるを得ない。日本政府側にも、従来のアプローチを変えない限り、交渉が成功する可能性はゼロに近いという焦燥感はあるだろう。

その変化の結果が、新アプローチの中身ということになるが、ここでのポイントは、ロシア側が重視している経済協力関係の拡大に焦点を当てたことだ。ロシア人がよく使う「共同経済活動」を重視したアプローチは、相手の要望に耳を傾け譲り合う姿勢を示している。この点が、従来の日本政府にはない変化であり、関係者に今回の会談が成功につながる期待感を与えている。

もちろん、その最終的なゴールは領土問題の解決だ。仮に新アプローチが領土問題解決につながらないのであれば、こうしてロシアへの経済協力ばかりしていいのか、という疑問の声は実はよく聞かれる。

ただ、ここで重要なのは、視点を領土問題から少しずらし、対ロシアの新アプローチは日本経済にどういう影響を与えるかについて考察することである。なぜなら、外交戦略である「新アプローチ」は事実上、対ロシアに限らず世界を舞台にした日本政府のインフラ輸出戦略そのものだからである。

ロシアへの経済協力は「インフラ輸出戦略」

2013年5月に発表された「インフラシステム輸出戦略」(その後、毎年改定されているが、当初の構想やガイドラインの大枠は変わっていない)では、インフラ輸出による日本の経済成長の実現という同戦略の目的が強調されている。

官邸のウェブサイトに掲載されている「インフラシステム輸出戦略」の原文(2013年5月)によれば

「・・・新興国を中心とした世界のインフラ需要は膨大であり、急速な都市化と経済成長により、今後の更なる市場の拡大が見込まれる。このため、民間投資を喚起し持続的な成長を生み出すための我が国の成長戦略・国際展開戦略の一環として、日本の「強みのある技術・ノウハウ」を最大限に活かして・・・(中略)・・・我が国の力強い経済成長につなげていくことが肝要である。」(第1章総論、p.4)。

「インフラシステム輸出戦略」の上記のガイドラインには、目的はもちろんのこと、具体策も明確に書かれているほか、具体的な分野や地域別の取り組み方針も明記されている。対象地域は、驚くには及ばないが、ロシアも当初から含まれている。

2013年に発表された戦略には「ロシア」に対するインフラ輸出戦略とは「ロシアでは、我が国の経験を活かし都市環境、運用インフラ分野で協力」と書かれている(上記、p.26)が、16年の改訂版には、同じくロシアを対象とした戦略としては「・・・都市環境分野で、モスクワ等における都市開発、木造建築、廃棄物処理、管路更生等で両国の協力を推進。運輸インフラ分野で、シベリア鉄道等の鉄道事業、空港等について検討を深度化。医療・保健分野で、ロシア極東地域の拠点として画像診断センターを開設し、検診・診断の事業を展開。郵便分野で、日本製郵便区分機の納入や郵便事業間での協力促進を支援。」と掲載されている(p.46)

つまり、インフラ輸出を目的とする経済活動分野が拡大していることが分かる。

そして、本年5月の日露首脳会談の際にロシア側に提案された8項目の新アプローチは、以下の分野に及ぶ(日本外務省のホームページより)。

(1)健康寿命の伸長  (2)快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市作り  (3)中小企業交流・協力の抜本的拡大  (4)エネルギー  (5)ロシアの産業多様化・生産性向上  (6)極東の産業振興・輸出基地化  (7)先端技術協力  (8)人的交流の抜本的拡大

この内容を政府のインフラ輸出戦略と照らし合わせてみよう。新アプローチの(1)が医療、(2)が都市環境、(4)が資源確保の関連事業、(5)と(6)が文字通り極東の産業振興・輸出基地化、そして(7)はこの戦略を支えるために不可欠である人的交流の拡大に重なる。提案が、政府の日本経済成長と関連性のあるインフラ輸出戦略の一部であることは明らかである。

ここまで理解できたとして、次は、新アプローチの中身だ。これがインフラ輸出戦略に沿ったものであるとしても、日本政府がこのアプローチをあくまでも領土問題解決に向けて利用したとする。人口2万人弱の北方四島の開発関連のみが対象なのであれば、果たして日本全体に経済的な利益をもたらし、景気対策になりうるのだろうかという疑問が残る。

日本の景気浮揚につながる

この疑問に対する答えの一端を、今年9月のウラジオストクでの会談で垣間見ることができた。

9月、ウラジオストクで開催された今年で2回目となる東方経済フォーラムにおいて再度日露首脳会談が実現した。同フォーラム(9月2~3日)では、9月2日に行われた安倍総理とプーチン大統領の首脳会談、続いて3日に行われた安倍総理の基調講演が大きな注目を集めた。

9月2日の首脳会談では平和条約に関して率直な議論があったと見られるほか、プーチン大統領の訪日が確認されるとともに、12月15日に山口県長門市で首脳会談を行うことでも合意された。加えて、平和条約締結に向けての動きが加速していることを反映する形で、12月の首脳会談を前に、11月にペルーで開かれるAPEC会議でも首脳会談を実現することで合意したことも発表された。

実際、1回目の東方フォーラムは「中国重視」の色が濃かったが、今回は日本側の参加者の顔ぶれ(政府関係機関だけでなく日本を代表する事業会社や金融機関のトップなども参加)と参加人数から見て、「日本重視」であったのは明らかである。

同フォーラムでは具体的な大型案件についての正式な発表こそなかった。だが、日本政府は同フォーラムの前日である9月1日にロシア経済協力相を新設(世耕経済相が兼任)するほどロシアとの経済協力拡大への「本気度」を示した。

ロシア側もこうした動きに呼応する形で領土問題解決に前向きな姿勢を示し始めている。プーチン大統領はブルームバーグとのインタビューにおいて、平和条約の締結を重要課題と位置づけ、今後日本側との妥協案を模索しながら解決に向けて努力していくという、これまでに見られなかったスタンスだ。

フォーラムでは首脳会談と同じ時間帯に日露経済会議が開かれ、両国の経済関係の拡大について議論が交わされ、具体策についても話し合われた模様であり、12月のプーチン大統領の来日の際には大型案件が発表されると示唆されている。

日露間の会話が政府レベルで活発化していることから、大型投資案件については水面下で交渉が行われていることが窺われる一方、詳細についての公式な発表はまだない。一方、先日は日本のメディアが、シベリア鉄道を北海道まで延伸させ北海道とサハリンを鉄道で繋ぐという、ロシア側が提案したと言われることに対する日本側が検討中とされる案件についての「リーク」情報を報じた。

加えて、開通から100年余り経過しているシベリア鉄道の一部である、極東のウラジオストクとロシア連邦に属するタタールスタン共和国の首都カザンを結ぶ線(800km)を高速化する提案も存在すると報じられた。仮にこのような交渉が一定の成果を挙げるならば、日本の建設業界や高速車両メーカー、信号システムなど運営関連のIT(情報技術)事業を担う日本のメーカーには大きなビジネスチャンスが訪れるといっても過言ではない。

興味深いのは、日本の報道を受けたタス通信をはじめとするロシアのメディアが、シベリア鉄道の延伸・現代化のプロジェクトについて一斉に報道し、日露関係の行方についての高い関心を裏付けたことである。

経済協力の案件はシベリア鉄道の現代化プロジェクトだけでは終わらないようだ。他にも、ロシア極東で発電される電気を海底ケーブルで北海道あるいは本州までに送電する「エネルギーブリッジ構想」も検討されていると報じられている。

対ロシアの投資に限らず競争が激しい大型インフラ輸出の受注を勝ち取るには、やはりトップセールス、つまり総理の力と相手国のリーダーとの信頼関係が極めて重要である。その意味で、対ロシアの新アプローチはまさに、日本のトップによるインフラ輸出の売り込みとも言える。

ロシアにとっても経済支援は干天の慈雨

ロシア政府は領土問題解決に向けて軟化した前向きな姿勢を示し始めたが、その背景として、新アプローチの効果以外にもロシア側に事情があることは想像に難くない。実際、2014年3月のクリミア併合とウクライナ東部の紛争を巡り欧米との関係が著しく悪化した結果、対露制裁が課された。

同年の夏には一時100ドルを超えた原油価格が下落し、2年経過した現在も1バレルあたり50ドル前後で推移している。制裁により国際金融市場から事実上シャットアウトされた上、輸出の7割をエネルギー関連が占めるため原油価格下落によるマイナスの影響を大きく受けたこともあり、意外感はなかったであろうがロシア経済は2014年下期には景気後退状態に追い込まれた。

しかし、2015年の夏頃にはロシア経済も底打ちし、徐々ではあるが回復に向かい始めた。国内経済は制裁と低原油価格という「ニューノーマル(新常態)」に適応し始めた模様であり、規模は縮小したものの貿易黒字と経常黒字が維持されているほか、ルーブル相場も安定している。

1年前には2桁台だったインフレ率が半減し、経済成長は来年からプラス転換する見通しである。ロシア政府には極東地域開発に注力する余裕も生まれつつあるが、日本の協力を取り付けることができれば、その開発が極東地域のみならずロシア国内の景気を大幅に押し上げるとの期待が寄せられている。

日露両国、両政府には「事情」があるが、今回、両国には政治・外交面、及び互いの経済活性化に向けて効果が得られる環境が整っていると言えるだろう。領土問題解決と平和条約締結に向けての本格的な合意の準備が年内に完了する可能性があるとすれば、プーチン大統領の12月の訪日後、次の世代の歴史教科書には日露関係に新しいページを開いた「長門協定」が記載される可能性もある。

12月の訪日が、歴史に残る動きとなることが期待されている。

※本稿は著者の個人的な意見であり、所属する組織の見解を表しているものではありません。

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『米海軍に大変化の兆し、中国関連用語が使用禁止に A2AD(接近阻止・領域拒否)を使わせない意図とは』(10/14JBプレス 渡部悦和)について

リチャードソン大将の「A2ADの使用禁止」の意図は「自由な発想で、強い米海軍への回帰」にあるということのようです。中国の人民解放軍の発言に乗せられて、米海軍が委縮するのを嫌ったのでは。米空母が中国近海に入れないようにするというのであれば、機雷設置で海上封鎖することもできるし、海軍担当でないかもしれませんがICBMもあります。また、SLBMを搭載した原潜もあるでしょう。中国はハッタリで相手を威嚇して、強い相手を怯ませることが得意です。孫子の「戦わずして勝つ」「敵の強い点を避け、弱点を衝け」「偽計と予知を働かせよ」などがそうでしょう。

10/14ZAKZAKにはトニー・マラーノ氏の記事が掲載され、「【痛快!テキサス親父】南スーダンPKO中国部隊逃げた!? 新組織つくった方がマシじゃないかと思うぜ」の中で、解放軍はPKO活動中に武器を捨て逃げ出したというのですから、南京防衛に当たった唐智生を思い出すではないですか。

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20161014/dms1610141700011-n1.htm

また、10/15ZAKZAKでは「中国の最新鋭ステルス戦闘機 天津市の公園に墜落か」という記事が載りました。技術的に未熟であるにも拘らず、背伸びして大きく見せようとするから無理が生じる訳です。中国の良く言う「三戦」の内の「心理戦」で相手国の動揺を引出し、「世論戦」で中国の有利な道を相手国に選ばせるように仕向けることをしています。今の日本は中国の思惑どおりになっています。もっと、中国の現実を見よと言いたい。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20161015/frn1610151530004-n1.htm

いくら敵がハッタリをかましたと言っても、幾許かの真実が含まれている可能性がありますので、「最悪を想定しで準備する」必要はあります。何せ、中国はモノ余りが激しいほど、生産過剰、過剰在庫となっています。資本主義であれば生産調整に入りますが、社会主義市場経済のインチキな仕組みなので歯止めが聞きません。況してやモノが動く=賄賂の世界なので、生産を止める動機は何もありません。米国のFDRがニューデールで失敗した時のように、戦争で経済を立て直そうと、中国も考えないかと心配です。モノが余っていて、ドンドン消費すれば景気は回復すると。でも戦争になれば、中国に味方する国はなくて、敗戦、国の分裂となる可能性が高いでしょう。

記事

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神奈川県横須賀市の米海軍横須賀基地に入港する米原子力空母ロナルド・レーガン(2015年10月1日撮影)〔AFPBB News

素朴な疑問

米海軍のトップである海軍作戦部長ジョン・リチャードソン大将は、ザ・ナショナル・インタレスト(The National Interest)に投稿した小論文“Deconstructing A2AD”(「A2ADを解体する」)において、今後米海軍においてA2ADという用語を使用しないと発表した。

米海軍関係者のみならず世界中の安全保障専門家はこの発表に驚いたと思う。米海軍大学の教授との接触が増えてきた私にとっても驚きであった。

なお、リチャードソン大将は、ワシントン所在のシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)などでも同内容の講演を行っていて、YouTubeで視聴できる。

米海軍は、従来、中国人民解放軍のA2ADに対抗する作戦構想であるエア・シー・バトル(ASB:Air Sea Battle)を説明する際に、A2ADという用語を頻繁に使用してきた。

私もまたA2ADを頻繁に使用してきた。なぜなら、A2ADは非常に使い勝手の良い用語で、人民解放軍の脅威を素人にも分かりやすく表現できるし、A2ADに対抗する作戦構想も説明しやすいからである。

作戦部長の主張に初めて接した時の私の素朴な疑問は以下の通りであった。

・なぜ、作戦部長はこの使い勝手の良い用語の使用禁止をNational Interestで発表したのか? 世界中に展開する米海軍に徹底したかったのか。米海軍のみならず、世界中に周知したかったのか? 何か深い深慮遠謀があるのか?

・A2ADの使用禁止を一番喜んでいるのは誰か? 最大の受益者は中国ではないのか? 従来、A2ADに関係する国家として米国が指摘してきたのは中国、ロシア、イランである。特に人民解放軍はA2ADの代名詞であった。作戦部長は、A2ADを禁止することにより、対外的に強圧的な姿勢を堅持する中国にいかに対処しようとしているのか?

・A2ADは、米海軍の戦略・作戦構想・戦術、兵器の開発・取得、教育訓練、実際のオペレーションを説明する際のキーワードであった。作戦部長は、A2ADの代わりとなる用語を何も提示していないが、米海軍の現場において混乱はないのか? 代替案をしっかり提案してからA2ADの使用禁止を宣言すべきではなかったのか?

・A2ADは、我が国の南西諸島防衛を考える際にもキーワードであり、米海軍の戦略家たちは、A2ADを使用して日米共同の作戦を考察してきた経緯がある。日米共同にも大きな影響があるが、同盟国とよく調整をしてA2AD使用禁止令を発表したのか?

・米海軍の大きな変革の前触れとしてA2AD使用禁止令を出したのか?

以上のような素朴な疑問を持ったので、その真意を追求してみた。

なぜA2ADという用語が問題か:リチャードン作戦部長の主張

作戦部長の説明によると、A2ADが使う人によって様々な意味で使われ、混乱が見られるそうだ。

リチャードソン大将は、作戦部長として1年間が経過し、「明確な思考(クリア・シンキング)と明確な意思の疎通(クリア・コミュニケーション)」の時代を超えた重要性を再認識したと述べている。また、A2ADを使うことによる抽象的な議論ではなく、より具体的な議論の重要性も指摘している。

そして、A2ADを否定する理由として以下の4項目を列挙している。

  • 理由1:A2ADは、新しい特別な現象(phenomenon)ではない。

戦史によると、敵対する両者は、より遠くから敵を発見し、より破壊的な兵器で攻撃することにより、優勢を追求してきた。

ナイルでのネルソン提督、モビル湾でのファラガット提督、太平洋でのニミッツ提督やロックウッド提督を思い出してみなさい、A2ADは新しいことではない。海をコントロールし戦力を投入することは、国家が海軍に投資する第1の理由である。

  • 理由2:A2ADの「拒否(Denial)」という用語は、「既に終了した事項(fait accompli)」(拒否は完了している)として頻繁に使われるが、より正確には「願望(aspiration)」(拒否をしたい)である。

米海軍であろうと、その拒否地域(下図の第1防御層、第2防御層、第3防御層を参照)に入ると敗北を喫すると誤解したり、A2ADにおける拒否地域のイメージは「入ってはいけない地域」であると誤って認識されている。

しかし、「拒否」の脅威は、克服できないものではないし、不可侵なものではない。

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図「中国の重層的なA2AD能力」 出典:米海軍情報オフィス(ONI)

  • 理由3:A2ADは防御的な特徴があり、我は赤い円弧(例えば図1の第1防御層)の外から敵がいる内に接近する「外から内へ(アウトサイド・イン)」という固定観念に陥っている。

しかし、我に必要性があり意思があれば、敵の防御層の内側から戦うこともできるし、あらゆる方向から[内から外へ(インサイド・アウト)、上から、下から]攻撃ができるのである。

  • 理由4:A2ADの脅威は、現状で十分理解されている。A2ADは、すぐそこに潜む新たな解決すべき問題から我々を引き離してしまう。A2ADに集中すると、はるか前方が見えなくなる。より高いレベルの紛争における次の展開がどうなるのかという疑問を持たなくなる。

例えば、世界のどこでもリアルタイムのビデオをオン・デマンドで映像化されるような状況(つまり、リアルタイム情報を世界のどこでも見ることができる状況)では、敵に先んじるためには何をしなければいけないかという疑問を持たなければいけない。

世界各地の地勢は様々で、敵はその異なる地勢に基づき多様な構想や技術を使い戦う。「1つのサイズをすべてに適合するアプローチ(one-size-fits-all approach)」を使い、議論を過度に単純化する誘惑に抵抗しなければいけない。具体性が重要である。

海軍の焦点は、海洋優勢(海上優勢と海中優勢)の維持である。戦術と戦略の相互作用を深く理解し、具体的な脅威に対し、具体的な場所で目的を達成しなければいけない。

作戦部長の主張に対して当初浮かんできた反論

  • 理由1の「A2ADは、新しい特別な現象ではない」は、当然の認識であり、この認識を持っていない者の方が少数派ではないのか。A2ADを放棄する理由にはならない。
  • A2ADの定義が曖昧であれば、疑義がないように再定義すればいいではないか。理由2の「拒否」に対する誤解や理由3の「アウトサイド・インだけを考える」という誤解については、その誤解を正せばいいだけの話である。

A2ADに限らず、いかなる用語でもそれを使っていると様々な解釈をする者が出てくる。大切なことは、その解釈を本来あるべき解釈に戻すことであり、その用語の使用を禁止することではない。

  • 理由4で「A2ADに集中していると、そのはるか前方を見なくなる」のであれば、新しい用語を提示すればいいではないか。A2ADに代わる用語を提示しないでA2ADだけを排除するというのは適切ではない。
  • A2ADは中国の対米戦略として語られてきたし、A2ADと言えば、人民解放軍を連想する。もしも、中国に対する配慮でA2ADを禁止するのであれば非常に問題である。

人民解放軍は、米国がいかに配慮をしたとしても、米軍に追いつき追い越せ、米軍と戦い勝利するという最終的目標を捨てないであろう。

  • 作戦部長の人民解放軍に対する「関与策」に対する疑問

海軍関係者には、リチャードソン作戦部長の対中国関与策を厳しく批判する者(例えば、ジェームズ・ファネル大佐(退役))もいる。

また、海軍大学のジェームズ・ホームズ教授や東西センターのフェローであるデニー・ロイ博士は、対中国関与策をやんわりと批判している*1

ホームズ教授は、海軍の関与策は、戦術レベルの事項、意見の不一致、緊張の改善の助けにはなっても、米中の戦略レベルの根本的な意見の不一致を解決できないと言っている。

ロイ博士は、相互信頼を目的とした関与策は、米国と中国の目標のいくつかは、その違いゆえにいかに手に負えないものであるかが明らかになり、全く逆効果になると主張し、「(関与による)透明性は相互の猜疑心を取り除くのではなく、それを強化してしまう」と警告している。

しかし、彼はまた、「米中は、完全な戦略的信頼がなくても、多くの分野で協力ができるし、両国に緊張関係が生じた場合にそれを双方にとって有益な方法で管理する方策を見出すことはできる」とも主張している。

もしも、A2AD禁止令が対中国関与策の一環であれば問題があると思う。

*1= Steven Stashwick, “BEING REALISTIC ABOUT ENGAGEMENT WITH CHINA AND THE A2/AD THREAT”, Diplomat, September 23,2016

  • 海軍の戦略家たちの戸惑いが予想される

A2ADは中国の専売特許ではない。米国も中国に対するA2ADを同盟国(日本やフィリピンなど)や友好国の協力を得て実施し、米軍のアジアにおける作戦を容易にしようとしている。

例えば、自衛隊が実施する南西諸島の防衛は、我が国の防衛作戦であると同時に、米国の視点では「人民解放軍に対するA2AD」である。これは、米国特に米海軍の戦略家たちの主張である。

彼らがA2ADの使用を禁止されたら、いかなる用語を使い、いかに彼らの作戦構想を説明するのであろうか。

例えば、米海軍大学の教授であるトシ・ヨシハラとジェームズ・ホームズの共著である「米国式非対称戦」*2は、米国式の対中国A2ADを主張し、米国の同盟国や友好国に対中国A2ADを実施させようとしている。

特に、自衛隊が南西諸島において、人民解放軍に対するA2ADを実施することを推奨し、以下の様に説明している。

・米国単独で人民解放軍のA2ADに対抗するのではなく、同盟国を使い人民解放軍に戦闘力の分散を強いるべきである。

A2ADの実施に最適の場所が南西諸島であり、そこに自衛隊のA2AD部隊(陸自の88式や12式地対艦誘導弾や地対空ミサイルなどの部隊)を配置することにより、人民解放軍の水上艦艇、潜水艦、航空機のチョーク・ポイント通過を阻止する。

・人民解放軍に対するA2ADを実施する場所は、南西諸島、朝鮮半島の韓国、ルソン海峡を制するフィリピンのルソン島である。米国と日・韓・比が人民解放軍に対して同時に複数正面で米軍に協力すれば、人民解放軍は第1列島線の内側に封じ込められたと認識するし、北から南への移動にも危険を感じるであろう。

・第1列島線にA2AD能力のある陸上戦力を展開することにより、人民解放軍に犠牲を強要し、人民解放軍の戦力の分散を強要し、米海軍および空軍の作戦を容易にし、最終的には人民解放軍の侵攻を断念させる。

・ASB(エア・シー・バトル)が描く中国本土の目標に対する打撃ではなく、同盟国の配置部隊は、その致命的な打撃を公海などの公共空間(in the commons)で作戦する人民解放軍に限定することになる。

中国本土の打撃まで至らない公共ドメインでの打撃は、核攻撃に至るエスカレーションの可能性を減少させる。

以上が「米国式非対称戦」の要旨であるが、米国単独で人民解放軍に対抗するのではなく、第1列島線を構成する同盟国や友好国を使って人民解放軍に対抗することは、米国の立場からは至極当然の発想である。

そして、その利点がASBに対する批判の論拠であった「核戦争へのエスカレーションの危険」を回避する解決策になっているという説明は妥当である。

A2ADという用語を使用すると以上のような議論ができるのである。「米国式非対称戦」には何回もA2ADという用語が登場する。もしも、A2ADが使えないならば、米海軍の戦略家たちの議論はどうなるのか。大きな影響を受けることは間違いない。

*2= Toshi Yoshiharaと James R. Holmes、“Asymmetric Warfare, American Style”、Proceedings Magazine-April 2012

  • 我が国への影響

第1列島線を構成する同盟国や友好国の人民解放軍に対する戦いが対中国A2ADであるという発想は、米国の視点であり、同盟国や友好国にとっては自国の防衛そのものである。

特に日本にとっては南西諸島防衛そのものであり、死活的な意味を持つ。米国の戦略家たちとA2ADやASBをキーワードとして協議し、南西防衛構想を考えてきた者として、A2ADの禁止令の影響を実感する。

作戦部長の真意は何か?

ここまでA2AD使用禁止令に対して疑問を呈してきたが、“Deconstructing A2AD”を何回も読み返してみると、リチャードソン作戦部長の真意の一端が見えてきた。

作戦部長の狙いを一言で言えば「米海軍の原点への回帰」なのであろう。具体的には以下のような諸点を強調したかったのであろう。

・A2ADという用語を使用する弊害として、人民解放軍のA2AD能力(例えば「DF-21D」に代表される弾道ミサイルや対艦巡航ミサイル)に対する過度の警戒により、米海軍の発想が防衛的で縮こまったものになってしまっている状況を転換しなければいけない。

・A2ADを使用することにより、「1つのサイズをすべてに適合するアプローチ」で思考を過度に単純化することなく、具体的な状況に基づき、「明確な思考(クリア・シンキング)」と決定的な行動により、現在および将来の脅威に対抗して任務を遂行することが重要である。

・米海軍の存在意義は、いつでもどこでも作戦し、言葉ではなく行動によって米国の戦略的影響力を行使し、米国の国益に寄与することである。

そのためには、米海軍本来の攻撃的で強い海軍に回帰することが急務である。

・リチャードソン作戦部長の考えは、同盟国による対中国A2AD論における米海軍の消極的な行動に対する批判であり、米海軍本来のより強くて積極的な作戦をアジアにおいて実施することを示唆する。

もしもそうであるとするならば、日本としても歓迎すべき考えである。

さらなる深慮遠謀はあるか?

さらに考えると、今回のA2AD使用禁止命令には、いまだ明らかにされていないリチャードソン作戦部長の深慮遠謀があるのかもしれない。

米海軍の将来について大きな構想があって、その手始めとしてA2AD使用禁止令を出したのであれば、作戦部長の言動には今後とも要注目である。

以上が私の考察であるが、今回の禁止令は米海軍に限定されていて、米国防省全体にA2AD禁止令が出た訳ではないので、私は今後ともA2ADという便利な用語を使い続けることにしよう。十分にリチャードソン大将の真意に配慮しながら。

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『北への予防攻撃が頼みの綱だ 「自前の核武装」は間に合わない』(10/14日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

朝鮮民族同士で相争うのは勝手ですが、日本を巻き込まないでほしいという事です。日本も核武装を考えないと韓国のようになるでしょう。核の恫喝を受けたときに、平然と対抗できるかという事です。どこかの国から買って核配備をしたとしても、敵の手先となっている輩が大騒ぎし、それに大衆は煽動されるでしょう。貧者の恫喝、キチガイの恫喝程、手に負えないものはありません。政府はキチンと対応してほしいし、国民は動揺・慌てふためくことの無いようにしてほしい。

予防攻撃こそがポイントでしょう。北に継戦能力があり、かつ核を残存していれば撃つでしょうけど、米国のように遠くまで飛ばすうちに撃ち落される可能性があるので、ソウルor東京or北京になるのでは。無防備なのはソウルと北京でしょうからそちらに落とすのではと思います。日本はSM3やPAC3があるので途中で撃ち落とされる可能性がありますので。

韓国と米軍共同での予防攻撃に踏み切れるかという所でしょうけど、反米の韓国では共同では難しく、やるなら米軍単独になるのでは。中国と金正恩排除後の北の体制を話し合い、非核化させた上で中国の傀儡政権を作るようにするのでは。

この記事の続きが楽しみです。

記事

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米国が配備を迫り、中国が拒否を迫るTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)。韓国の保守派は「THAAD配備が実行できなければ、いよいよ北の核に対抗できなくなる」と焦りの色を隠さない(提供:U.S. Department of Defense, Missile Defense Agency/ロイター/アフロ)

前回から読む)

「自前の核」を唱えていた韓国の保守派が、北朝鮮への「予防攻撃」をも訴え始めた。北の核武装が予想以上に速いテンポで進むからだ。

脆い「米国の核の傘」

前回は韓国の保守の論客が「北の核」がいかに韓国の安全と独立を侵すかを必死になって国民に訴えているとの話でした。

鈴置:米国の「核の傘」が「北の核」の前ではいかに脆いものか、保守運動指導者の趙甲済(チョ・カプチェ)氏が極めて具体的に説明しています。

自身の主宰するネットメディアに載せた「仮想シナリオ・大韓民国最後の日(1)」(9月23日、韓国語)が圧巻です。シナリオの形式をとって、悲惨な韓国の近未来を描き出しました。

北朝鮮が核ミサイルを実用化した後の2018年か2019年頃の朝鮮半島が舞台です。要約しながら訳します。

  • 北朝鮮が軍事境界線付近の白翎島(ペンニョンド)を突然砲撃し、韓国の軍民に数百人の死傷者が出た。韓国軍は直ちに報復、同島の砲撃を命じた北の軍団司令部を空軍機で爆撃した。北朝鮮側も多数の死傷者を出した。
  • 翌日、金正恩(キム・ジョンウン)自身が直接「我々への攻撃命令を下した国防長官、参謀総長らを処罰しろ。損害を補償しろ。白翎島から韓国は出て行け」と要求したうえ「応じないなら韓国の都市1つに核兵器を使う」と宣言した。
  • 韓米両国の大統領は緊急に電話会談し「米国は約束通りに韓国に核の傘を提供する」と共同発表。さらに米国は空母と潜水艦を韓国周辺海域に派遣した。

日韓で「核戦争反対」デモ

—米国はちゃんと「核の傘」を提供すると宣言するのですね。

鈴置:ええ、そこは「従来の現実」通りです。北朝鮮が核実験するたびに、米国は核の傘を提供すると日韓両国に確認してきました。でも北が核を実戦配備すると、この先の展開が変わってくるのです。以下です。

  • 北朝鮮は「もし、米国が攻撃してくるのなら米西海岸を核攻撃する」と宣言した。
  • そんな中、韓国では「核戦争反対運動」が巻き起こった。大規模のデモ隊が平和を叫びながらソウル市内を占拠。彼らは北の核攻撃の脅威を糾弾するのではなく、米国を批判した。
  • 多くの国民が「とりあえず核戦争を防がねばならない」と米韓の強硬策に反対した。世論調査では70%以上の韓国人が「平和のために北の要求を聞かねばならない」と答えた。
  • 韓国の政界でも「北の司令部への攻撃はやり過ぎだった」といった批判が強まる半面、「一戦も辞さず」と主張する声は小さくなった。
  • そうした韓国の動きを見て、米国では議会とメディアを中心に「ソウルを守るためにロサンゼルスを犠牲にはできない」との世論が高まった。
  • 米軍基地がある日本でも「第2のヒロシマに反対する」と、米国の対北報復方針を批判する大衆運動が始まった。米韓両国政府はジレンマに陥った。

高まる米国の反韓感情

—確かに、多くの日本人は「あの不愉快な韓国と北朝鮮の内輪もめに巻き込まれ、核ミサイルを撃ち込まれるなんてとんでもない」と考えるでしょうね。

鈴置:そこです。北が核を持つと日本人の「巻き込まれ」への懸念がぐんと増します。「沖縄や三沢から米軍機を発進させるな」と要求する「平和運動」が起きるのは間違いありません。

韓国人でさえも、このシナリオでは70%強が「核戦争を避けられるのなら、北朝鮮の言うことを聞こう」と言い出すのですから。

北朝鮮は「核」をさらに活用するだろうと趙甲済氏は読みます。記事の翻訳を続けます。

この状況を見て、中国が6者協議を提案する。だが、北朝鮮は拒否したうえ「我々の要求をまず実行しろ」と韓国を圧迫。北朝鮮の無人島で小型の核兵器を爆発させた。

潜水艦から中距離ミサイルを垂直に近い角度で撃ち上げる実験でもあった。韓国が持っているお粗末な防衛システムではこうしたミサイルは防げないことが明らかになった。

ソウル市民は恐慌状態に陥り、仁川(インチョン)国際空港は国外に脱出する人で麻痺した。公務員も会社員も欠勤し、社会システムが動かなくなった。

将兵の家族は連日、国防部の前に集まり、戦争反対デモを繰り広げた。ついには「こんな危機を呼んだ国防長官らを拘束して捜査せよ」との主張が登場した。

こうした中、米国の反韓世論がより高まった。

白翎島で米韓合同演習

この後、どうしようもなくなった米国政府は北朝鮮との話し合い路線に転換します。待ち構えていた北は、米韓同盟破棄の伏線となる米朝平和条約の締結を持ち掛けます。

この記事の続編である「『閣下、それが韓国の最後の機会でした』」(9月24日、韓国語)では、米副大統領が大統領特使として訪韓し、韓国の大統領に同盟の根本的な見直し――事実上の破棄を通告するのです。

—不気味なシナリオですね。

鈴置:この暗い予測は韓国の保守派の間で共有されてきました。5回目の北の核実験を受けて、趙甲済氏が改めて国民に説明したのです。

「北朝鮮はまず、白翎島に挑発を仕掛ける」との予測も韓国では一般化しています。米韓の海兵隊は10月1日にこの島で合同軍事演習を行っています。

「来るなら来い」ということでしょう、米軍は演習の画像まで公開しました。「US-ROK Exercises in Northern Limit Line (Baengnyeong Island)」(10月8日)です。

韓国の核武装は時間切れ?

—趙甲済氏は北朝鮮の核にどう対抗しようと訴えているのですか。自前の核武装ですか?

鈴置:核武装も主張しています。ただ9月下旬に掲載した一連の「仮想シナリオ」では、北朝鮮の核・ミサイル施設への予防攻撃が必要だと力説しました。

中国と「非核化」を約束してしまった朴槿恵(パク・クンヘ)政権は自前の核武装においそれと動けません。仮にこれから取り組んだとしても、時間切れになる可能性が高い。

北朝鮮が核を実戦配備するのは2-3年後つまり2018年から2019年頃と見られています。一方、韓国が核武装に必要な第2撃能力――垂直発射管を備えた潜水艦とSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を配備するのは2020年です(「韓国が目論む『2020年の核武装宣言』」参照)。

核弾頭の開発にも2年程度の時間がかかる。今、核武装に乗り出しても、北朝鮮との実戦配備を巡るスピード競争に勝てません。韓国が核を持たない状況で、北に「白翎島砲撃」に始まるシナリオを実行されたら「国が消滅」します。

後は、予防攻撃しかない

そこで、趙甲済氏は北朝鮮が核を実戦配備する前の予防攻撃が必要だと主張し始めたのでしょう。9月7日にはソウル市内の講演でそれを訴えました(「北の核を予防攻撃で処理する時間はまだ残っている」=韓国語、動画付き=参照)。

予防攻撃とは敵が自分を攻撃する動作に入る前に、敵の軍事能力を叩いて取り除く作戦です(「朴槿恵は『北爆』を決意できるのか」参照)。

「核施設の在り処」を知り、強力な打撃力を持つ米軍が主体で実施するしかないのですが、米国も予防攻撃を辞さない姿勢に変わっています(「米国が北朝鮮を先制攻撃する日、韓国と日本は?」参照)。

しかしこの際、韓国に課題が残ります。北朝鮮がまだ核を実戦配備していないと見積もっても、ひょっとすると少数ながら実用可能な核ミサイルを持っているかもしれない。予防攻撃によってもそれらを完全に破壊できない可能性もあるのです。

当然、北朝鮮は核ミサイルを撃って反撃するでしょう。米韓はTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)やPAC3(地対空誘導弾パトリオットミサイル)、SM3(海上配備型迎撃ミサイル)で撃ち落とすことになります。

でも現時点で、韓国軍はいずれも持っていないのです。敵の核ミサイルに対し丸裸なのです。米国はPAC3を持っていますが、在韓米軍基地の防衛用でソウルは守れません。

米国はTHAADの配備計画も進めています。が、朝鮮半島南部に展開する米軍基地の防衛が目的で、これもソウルを防御できません。そのうえ中国や国内の反対で、本当に配備できるかも分からないのです。

THAADを導入しておけば……

—結局、米軍は予防攻撃できるのですか?

鈴置:趙甲済氏は「『閣下、それが韓国の最後の機会でした』」(9月24日、韓国語)で、韓国軍のミサイル防衛能力の不足と韓国人の反対により、米国が予防攻撃を決意できなくなると予測しました。

それだけではありません。このシナリオ――近未来小説で、予防攻撃できないことが米韓同盟崩壊の最後の一撃になると指摘したのです。米国の副大統領は韓国の大統領に対し以下のように語ります。要約しつつ翻訳します。

  • 今から考えれば、2018年が最後の予防攻撃のチャンスでした。我が国の情報機関は、この時までなら北の核ミサイルは実戦配備されていないと踏んでいたからです。
  • ただ、米国の情報も完璧ではない。我々の攻撃を受けても北は1、2発の核を維持するかもしれません。
  • もしこの時、韓国がTHAADをはじめPAC3や、SM3による多重的な防衛網を建設し、米国のMD(ミサイル防衛)システムと連結していれば、北の核攻撃による被害は最小化できたことでしょうに……。
  • 閣下(韓国大統領)は北朝鮮への予防攻撃に最も積極的でしたが、その計画が韓国メディアに流れたことですべてが水泡に帰しました。韓国で反戦デモが起こり、核攻撃するぞとの北の脅迫により韓国国会は圧倒的な賛成多数で軍事措置反対を決議しました。
  • そうなった以上、米国も軍事的解決を放棄するしかなかったのです。閣下、あれが最後の機会だったのです。

米国に見捨てられる韓国

—なるほど、見出しの「最後の機会」とは「予防攻撃が米国を引き留める最後のチャンスだった」ということなのですね。

鈴置:その通りです。THAADをはじめとするミサイル防衛網を韓国が造っておけば、予防攻撃も可能だった。でも予防攻撃ができなかったので、米国は北朝鮮と話し合うしか道がなくなり、韓国は米韓同盟を失った……とのシナリオです。そして北朝鮮と話し合いに入る米国が、その核武装を完全に食い止める保証はありません。

—では、近未来小説を離れ、現実の世界ではTHAAD、あるいは予防攻撃構想はどうなっているのでしょうか。

(次回に続く)

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